音響信号変換器のための温度測定装置及び保護装置

申请号 JP2014526912 申请日 2013-07-22 公开(公告)号 JP6308130B2 公开(公告)日 2018-04-11
申请人 ヤマハ株式会社; 发明人 石井 潤; 大西 健太;
摘要
权利要求

コイルを有し、前記コイルに通電することにより電気信号を音響信号に変換する音響信号変換器のコイルの温度を測定する音響信号変換器のための温度測定装置において、 前記音響信号変換器の雰囲気温度を検出する雰囲気温度検出手段と、 前記コイルに印加される電圧を入し、前記入力した電圧を用いた前記コイルで消費される電力量の計算を含み、前記入力した電圧及び前記検出された雰囲気温度を用いた前記音響信号変換器の熱等価回路であって、前記雰囲気温度検出手段と前記音響信号変換器との位置の差を補償するためのフィルタを考慮した熱等価回路に基づく演算の実行により、前記コイルの温度を計算する演算手段と を備えたことを特徴とする音響信号変換器のための温度測定装置。請求項1に記載した温度測定装置において、 前記演算手段は、前記計算されるコイルの温度を前記電力量の計算にフィードバックして、前記コイルの温度に応じて変化する前記コイルの抵抗値と、前記入力した電圧とを用いて、前記コイルで消費される電力量を計算することを特徴とする温度測定装置。請求項1に記載した温度測定装置において、 前記演算手段は、前記コイルの抵抗値と、前記入力した電圧とを用いて、前記コイルで消費される電力量を計算することを特徴とする温度測定装置。コイルを有し、前記コイルに通電することにより電気信号を音響信号に変換する音響信号変換器のコイルの温度を測定する音響信号変換器のための温度測定装置において、 前記音響信号変換器の雰囲気温度を検出する雰囲気温度検出手段と、 前記コイルに流れる電流値を検出する電流検出手段と、 前記コイルに印加される電圧を入力し、前記入力した電圧及び前記検出された電流値を用いた前記コイルで消費される電力量の計算を含み、前記入力した電圧、前記検出された雰囲気温度、及び前記検出された電流値を用いた前記音響信号変換器の熱等価回路であって、前記雰囲気温度検出手段と前記音響信号変換器との位置の差を補償するためのフィルタを考慮した熱等価回路に基づく演算により、前記コイルの温度を計算する演算手段と を備えたことを特徴とする音響信号変換器のための温度測定装置。磁石による磁路を形成するためのヨークと、前記磁路中に設けられて通電により前記ヨークに対して変位するコイルとを有し、前記コイルに電気信号を流すことにより、前記電気信号を音響信号に変換する音響信号変換器のコイルの温度を測定する音響信号変換器のための温度測定装置において、 前記音響信号変換器の雰囲気温度を検出する雰囲気温度検出手段と、 前記ヨークの温度を検出するヨーク温度検出手段と、 前記検出された雰囲気温度及びヨーク温度を用いた前記音響信号変換器の熱等価回路であって、前記雰囲気温度検出手段と前記音響信号変換器との位置の差を補償するためのフィルタを考慮した熱等価回路に基づく演算により、前記コイルの温度を計算する演算手段と を備えたことを特徴とする音響信号変換器のための温度測定装置。請求項1乃至5のうちのいずれか一つに記載した温度測定装置において、さらに、 前記音響信号変換器の配置された雰囲気中の風速を検出する風速検出手段を備え、 前記演算手段は、前記検出された風速を、前記コイルの温度の計算における補正に用いるようにしたことを特徴とする温度測定装置。請求項1乃至6のうちのいずれか一つに記載した温度測定装置を有し、さらに、 前記計算されたコイルの温度が所定温度以上であるとき、前記コイルへの電気信号の通電を遮断又は前記コイルへの電気信号の通電量を減少させる保護手段を備えたことを特徴とする音響信号変換器のための保護装置。

说明书全文

本発明は、音響信号変換器のコイルの温度を測定する音響信号変換器のための温度測定装置、及び前記温度測定装置を有し、コイルの温度上昇を抑制して音響信号変換器を保護する音響信号変換器のための保護装置に関する。

従来から、例えば下記特許文献1に記載されているように、鍵盤の演奏に従って音源回路から発生された楽音を表す電気信号を、響板を加振するトランデューサのコイルに導き、楽音を表す電気信号に応じて響板を振動させて、小さな音量の楽器音を発生する響板付き鍵盤楽器は知られている。

また、下記特許文献2には、出増幅器とスピーカとの間に配置した1次巻線を、スイッチング電源回路内の高周波コイルにカップリングさせたトランスによって異常電流を検出して、CPUを介してスピーカ及び出力増幅器を保護するようにした技術が示されている。

特開2008−292739号公報

特開2006−197515号公報

しかし、前記特許文献1の響板付き鍵盤楽器においては、響板を振動させるためにコイルに大きな電流を流すことがあり、この大きな電流のためにコイルの温度が過剰に上昇して、コイル及びコイルの周辺装置に異常が発生したり、コイル及びコイルの周辺装置が焼損したりするという問題があった。この問題を解決するために、前記特許文献2に記載された技術を用いてコイル及びコイルの周辺装置を保護することも考えられる。しかし、前記特許文献2に記載された技術では、コイルの温度を直接測定しておらず、コイルを高精度で保護することができない。

本発明は、上記問題に対処するためになされたもので、その目的は、コイルに通電することにより電気信号を音響信号に変換する音響信号変換器に適用されて、簡単な構成でコイルの温度を高精度で測定することが可能な音響信号変換器のための温度測定装置、及び前記測定温度を用いて音響信号変換器及びその周辺装置を高精度で保護する音響信号変換器のための保護装置を提供することにある。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、後述する実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の各構成要件は、この実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。

上記目的を達成するために、本発明の構成は、コイル(16)を有し、コイルに通電することにより電気信号を音響信号に変換する音響信号変換器(40,48)のコイルの温度を測定する音響信号変換器のための温度測定装置において、音響信号変換器の雰囲気温度(Ta)を検出する雰囲気温度検出手段(21)と、コイルに印加される電圧(V)を入力し、入力した電圧を用いたコイルで消費される電力量(P)の計算を含み、入力した電圧及び検出された雰囲気温度(Ta)を用いた音響信号変換器の熱等価回路であって、雰囲気温度検出手段と音響信号変換器との位置の差を補償するためのフィルタを考慮した熱等価回路に基づく演算の実行により、コイルの温度を計算する演算手段(30,S11,S12)とを備えたことにある。

また、この場合、演算手段は、例えば、コイルの抵抗値(RL,RL (Tc))と、入力した電圧とを用いて、コイルで消費される電力量を計算する。特に、この電力量の計算においては、計算されるコイルの温度を電力量の計算にフィードバックして、コイルの温度に応じて変化するコイルの抵抗値(RL (Tc))と、入力した電圧とを用いて、コイルで消費される電力量を計算するとよい。

前記本発明の構成においては、雰囲気温度を検出する雰囲気温度検出手段を設け、演算手段は、検出された雰囲気温度とコイルに印加される電圧とを用いて、音響信号変換器の熱等価回路に基づいてコイルの温度を計算するので、音響信号変換器のコイルの温度が簡単な構成により精度よく測定されるようになる。また、雰囲気温度検出手段と音響信号変換器との位置の差を補償するためのフィルタを考慮するようにしたので、雰囲気温度検出手段と音響信号変換器とが離れて位置し、雰囲気温度検出手段の位置の空気温度と、音響信号変換器の位置の空気温度との間に差があっても、この空気温度の差もコイルの温度の計算に考慮されるので、コイルの温度が精度よく計算されるようになる。特に、コイルの温度を電力量の計算にフィードバックした場合には、コイルの抵抗値がより高精度で計算されることになり、ひいてはコイルの温度が高精度で測定されるようになる。

また、本発明の他の構成は、コイル(16)を有し、コイルに通電することにより電気信号を音響信号に変換する音響信号変換器(40,48)のコイルの温度(Tc)を測定する音響信号変換器のための温度測定装置において、音響信号変換器の雰囲気温度(Ta)を検出する雰囲気温度検出手段(21)と、コイルに流れる電流値(I)を検出する電流検出手段(24)と、コイルに印加される電圧(V)を入力し、入力した電圧及び検出された電流値を用いたコイルで消費される電力量(P)の計算を含み、入力した電圧、検出された雰囲気温度、及び検出された電流値を用いた音響信号変換器の熱等価回路であって、雰囲気温度検出手段と音響信号変換器との位置の差を補償するためのフィルタを考慮した熱等価回路に基づく演算により、コイルの温度(Ta)を計算する演算手段(30,S11,S12)とを備えたことにある。

前記本発明の他の構成においては、雰囲気温度を検出する雰囲気温度検出手段及びコイルに流れる電流値を検出する電流検出手段を設け、演算手段は、検出された雰囲気温度及び電流値と、コイルに印加される電圧とを用いて、音響信号変換器の熱等価回路に基づいてコイルの温度を計算するので、音響信号変換器のコイルの温度が簡単な構成により精度よく測定されるようになる。また、この場合、コイルに流れる電流値及びコイルに印加される電圧を用いて、コイルで消費される電力量が計算されるので、この電力量が高精度で計算されることになり、ひいてはコイルの温度が高精度で測定されるようになる。また、この場合も、雰囲気温度検出手段と音響信号変換器との位置の差を補償するためのフィルタを考慮するようにしたので、雰囲気温度検出手段と音響信号変換器とが離れて位置し、雰囲気温度検出手段の位置の空気温度と、音響信号変換器の位置の空気温度との間に差があっても、この空気温度の差もコイルの温度の計算に考慮されるので、コイルの温度が精度よく計算されるようになる。

また、本発明の他の構成は、磁石(43)による磁路を形成するためのヨーク(44)と、磁路中に設けられて通電によりヨークに対して変位するコイル(16)とを有し、コイルに電気信号を流すことにより、電気信号を音響信号に変換する音響信号変換器(40,48)のコイルの温度を測定する音響信号変換器のための温度測定装置において、音響信号変換器の雰囲気温度(Ta)を検出する雰囲気温度検出手段(21)と、ヨークの温度を検出するヨーク温度検出手段(25)と、検出された雰囲気温度及びヨーク温度を用いた音響信号変換器の熱等価回路であって、雰囲気温度検出手段と音響信号変換器との位置の差を補償するためのフィルタを考慮した熱等価回路に基づく演算により、コイルの温度を計算する演算手段(30,S11,S12)とを備えたことにある。

前記本発明の他の構成においては、雰囲気温度を検出する雰囲気温度検出手段及びヨーク温度を検出するヨーク温度検出手段を設け、演算手段は、検出された雰囲気温度及びヨーク温度を用いて、音響信号変換器の熱等価回路に基づいてコイルの温度を計算するので、音響信号変換器のコイルの温度が簡単な構成により精度よく測定されるようになる。また、この場合も、雰囲気温度検出手段と音響信号変換器との位置の差を補償するためのフィルタを考慮するようにしたので、雰囲気温度検出手段と音響信号変換器とが離れて位置し、雰囲気温度検出手段の位置の空気温度と、音響信号変換器の位置の空気温度との間に差があっても、この空気温度の差もコイルの温度の計算に考慮されるので、コイルの温度が精度よく計算されるようになる。

また、本発明の他の構成は、音響信号変換器の配置された雰囲気中の風速を検出する風速検出手段(28)を備え、演算手段は、検出された風速を、コイルの温度の計算における補正に用いるようにしたことにある。これによれば、音響信号変換器の雰囲気中の風速が変化して、音響信号変換器中の部材(例えば、ヨーク、ボビンなど)の放熱抵抗が変化しても、放熱抵抗の変化をコイルの温度に反映できるので、コイルの温度をより精度よく測定できる。

さらに、本発明の他の構成は、前述した温度測定装置を有し、計算されたコイルの温度が所定温度以上であるとき、コイルへの電気信号の通電を遮断又はコイルへの電気信号の通電量を減少させる保護手段を備えたことにある。これによれば、コイルの温度が所定温度以上になったとき、コイルへの通電によるコイルの温度上昇が抑制されるので、音響信号変換器及びその周辺装置に異常、焼損などが生じることはなく、音響信号変換器及びその周辺装置が的確に保護される。

本発明の第1実施形態に係り、ピアノに内蔵されて響板を加振するための電子回路を示す概略ブロック図である。

響板を加振するトランデューサの縦断面図である。

図1のマイクロコンピュータによって実行されるプログラムのフローチャートを示す図である。

(A)は図1のコイルの温度を計算するためのトランスデューサの熱等価回路を示す図であり、(B)は(A)の変形例に係るトランスデューサの熱等価回路を示す図である。

(A)は、図4(A)の熱等価回路に基づいて、マイクロコンピュータによるコイルの温度を演算するための演算ブロック図であり、(B)は、図4(B)の熱等価回路に基づいて、マイクロコンピュータによるコイルの温度を演算するための演算ブロック図であり、(C)は前記(A)(B)の一部の演算部の詳細演算ブロック図である。

(A)は、本発明の第2実施形態に係り、図4(A)の熱等価回路を変形したコイルの温度を計算するためのトランスデューサの熱等価回路を示す図であり、(B)は(A)の変形例に係るトランスデューサの熱等価回路を示す図である。

(A)は、図6(A)の熱等価回路に基づいて、マイクロコンピュータによるコイルの温度を演算するための演算ブロック図であり、(B)は、図6(B)の熱等価回路に基づいて、マイクロコンピュータによるコイルの温度を演算するための演算ブロック図である。

本発明の第3実施形態に係り、ピアノに内蔵されて響板を加振するための電子回路を示す概略ブロック図である。

(A)は、本発明の第3実施形態に係り、図8のコイルの温度を計算するためのトランスデューサの熱等価回路を示す図であり、(B)は(A)の変形例に係るトランスデューサの熱等価回路を示す図である。

(A)は、図9(A)の熱等価回路に基づいて、マイクロコンピュータによるコイルの温度を演算するための演算ブロック図であり、(B)は、図9(B)の熱等価回路に基づいて、マイクロコンピュータによるコイルの温度を演算するための演算ブロック図である。

発明の第4実施形態に係り、ピアノに内蔵されて響板を加振するための電子回路を示す概略ブロック図である。

(A)は、本発明の第4実施形態に係り、図11のコイルの温度を計算するためのトランスデューサの熱等価回路を示す図であり、(B)は(A)の変形例に係るトランスデューサの熱等価回路を示す図である。

(A)は、図12(A)の熱等価回路に基づいて、マイクロコンピュータによるコイルの温度を演算するための演算ブロック図であり、(B)は、図12(B)の熱等価回路に基づいて、マイクロコンピュータによるコイルの温度を演算するための演算ブロック図である。

第1乃至第4実施形態の変形例に係り、変形部分の電子回路を示す概略ブロック図である。

(A)は、第1乃至第4実施形態の変形例に係り、ヨークに放熱板を設けた場合のトランスデューサの熱等価回路を示す図であり、(B)は(A)の変形例に係るトランスデューサの熱等価回路を示す図である。

(A)は、第1乃至第4実施形態の変形例に係り、ボビン近傍に放熱ファンを設けた場合のトランスデューサの熱等価回路を示す図であり、(B)は(A)の変形例に係るトランスデューサの熱等価回路を示す図である。

(A)は、第1乃至第4実施形態の変形例に係り、ヨークにヒートパイプを設けた場合のトランスデューサの熱等価回路を示す図であり、(B)は(A)の変形例に係るトランスデューサの熱等価回路を示す図である。

a.第1実施形態 まず、本発明の第1実施形態に係るピアノについて説明する。このピアノは、鍵盤の打鍵操作及び離鍵操作に応じてアクション機構を介してハンマーを駆動し、ハンマーによる打弦に応じてピアノ音を発生するものであるが、電気信号によりトランスデューサを駆動制御し、トランスデューサにより響板を駆動して弱音を発生する機能も備えている。以降、本発明に直接関係する弱音を発生する部分について詳細に説明する。図1は、弱音のピアノ音又はその他の楽器音を発生するために、ピアノに内蔵されて響板を加振するための電子回路を示す概略ブロック図である。

このピアノは、鍵盤11及びペダル12を備えている。鍵盤11は、複数の白鍵及び黒鍵からなり、演奏者の手によって打鍵及び離鍵される演奏手段である。ペダル12は、ダンパペダル、ソフトペダル、シフトペダル、ソステヌートペダルなどからなり、演奏者の足によって操作される演奏手段である。

また、このピアノは、弱音の楽器音を発生させるために、センサ回路13、音源回路14、増幅回路15及びコイル16を備えている。センサ回路13は、鍵盤11における打鍵位置及び打鍵速度など、鍵盤11の打鍵操作によって駆動される図示しないハンマーの移動位置及び移動速度など、並びにペダル12の操作位置を検出する複数のセンサからなる。

音源回路14は、センサ回路13によって検出された鍵盤11における打鍵位置及び打鍵速度など、ハンマーの移動位置及び移動速度など、並びにペダル12の操作位置に基づいて、ペダル12の操作状態に応じて、鍵盤11にて打鍵された鍵に対応した音高の楽音信号を打鍵速度に応じた音量で出力する。なお、音源回路14から出力される楽音信号は、通常ピアノ音に対応したオーディオ信号(電気信号)であるが、ピアノ音以外の楽器音に対応したオーディオ信号(電気信号)である場合もある。この音源回路14からのオーディオ信号は、増幅回路15を介してコイル16に出力される。なお、図面において、この音源回路14からもう一つのオーディオ信号が出力されるようになっているが、このオーディオ信号は、他のチャンネル用のものであり、以下に説明する回路装置と同様な回路装置に出力されるもので、簡略化のために、この他のチャンネル用のオーディオ信号の出力先については図示省略している。また、音源回路14から出力されるオーディオ信号は、コイル16以外のヘッドフォン、他のオーディオ装置などにも供給され得る。

増幅回路15は、入力したオーディオ信号を増幅率Kで増幅して、リレー回路23を介してコイル16の一端に出力する。コイル16はトランスデューサ40内に設けられたもので、コイル16の他端は接地されている。これにより、音源回路14からオーディオ信号が出力されると、コイル16にはオーディオ信号に対応した電流が流れる。

トランスデューサ40は、図2の縦断面図に示すように、底面部41a及び上面部41bを有し、内部に円柱状の空間を形成した筐体41を備えている。筐体41は、底面部41aにてピアノの支柱に固定され、上面部41bの中央に円形の貫通孔を有する。筐体41内には、ヨーク42、磁石43及びヨーク44が収容されている。ヨーク42は、円盤状に形成された円盤部42aと、円盤部42aの中央位置にて上方に突出した円柱状の円柱部42bとを有し、円盤部42aの下面にて筐体41の底面上に固定されている。磁石43は、円筒状に形成されて、底面にてヨーク42の円盤部42a上に固定されるとともに、ヨーク42の円柱部42bを中央部の貫通孔に貫通させている。ヨーク44も円筒状に形成されて、底面にて磁石43上に固定されるとともに、ヨーク42の円柱部42bを中央部の貫通孔に貫通させている。これにより、図示破線で示すように、磁路が形成される。

また、トランスデューサ40は、ボビン45及び前述したコイル16を有する。ボビン45は、円筒状に形成され、その上端には円盤状のキャップ46が固着されている。ボビン45とキャップ46は、ピアノの響板48及び図示しない弦を支持する駒49を振動させるためのもので、キャップ46は、その上面にて、図示しない弦を支持する駒49の直下又は近傍位置にて響板48の下面に接着剤、両面テープなどにより接着されている。ボビン45は、筐体41の上面部41bの貫通孔を通過して、下部をヨーク42の円柱部42bの外周面とヨーク44の内周面との間の空間に侵入させている。コイル16は、ボビン45の外周面上に、図示破線で示す磁路の位置にて巻き回されている。コイル16の外周面とヨーク44の内周面との間には、磁性流体47が介装されている。

このような構造により、コイル16にオーディオ信号に対応した電流が流れると、コイル16及びボビン45が図示上下方向に振動して、響板48及び駒49をオーディオ信号に対応させて振動させるので、響板48の振動によってオーディオ信号に対応した音響信号が発せられる。したがって、トランスデューサ40及び響板48は、オーディオ信号すなわち電気信号を音響信号に変換する音響信号変換器を構成する。

ふたたび、図1の説明に戻ると、このピアノは、コイル16の温度を測定するとともに、コイル16を含むトランスデューサ40及びその周辺装置を保護するために、室温センサ21、A/D変換回路22、リレー回路23及びマイクロコンピュータ30を備えている。

室温センサ21は、例えばサーマルダイオード温度センサ、サーミスタ温度センサなどで構成され、ピアノが置かれた室内の温度Taすなわちトランスデューサ40の雰囲気温度Taを検出して、雰囲気温度Taを表す検出信号を出力する。この室温センサ21は、できるだけトランスデューサ40の近傍に配置することが望ましい。A/D変換回路22は、コイル16への印加電圧V及び雰囲気温度Taを表す検出信号を入力し、A/D変換してマイクロコンピュータ30に供給する。リレー回路23は、増幅回路15とコイル16との間に接続され、マイクロコンピュータ30によって制御されてオン・オフ動作するリレースイッチであり、コイル16への通電及び非通電を切換え制御する。なお、本第1実施形態では、コイル16とリレー回路23との接続点の電圧を印加電圧VとしてA/D変換回路22に供給するようにしているが、増幅回路15とリレー回路23との接続点の電圧を印加電圧VとしてA/D変換回路22に供給するようにしてもよい。

マイクロコンピュータ30は、CPU,ROM,RAMなどからなり、図3に示すプログラム処理により、A/D変換回路22から入力された雰囲気温度Ta及びコイル16への印加電圧Vを入力して、コイル16の温度Tcを計算するとともに、計算した温度Tcを用いてリレー回路23をオン・オフ制御する。

ここで、コイル16の温度Tcの測定方法について説明しておく。この温度Tcの測定は、トランスデューサ40の熱等価回路を想定し、熱等価回路に基づく熱等価回路演算により行う。なお、熱等価回路においては、電流の大きさ(アンペア)が電力(ワット)に対応し、電圧の大きさ(ボルト)が温度(℃)に対応し、抵抗の大きさ(オーム)が熱抵抗(℃/ワット)に対応し、かつコンデンサの容量(ファラッド)が熱容量(℃/ジュール)に対応する。図4(A)は、トランスデューサ40におけるコイル16の温度Tcを計算するための熱等価回路を示している。

この熱等価回路について説明すると、熱等価回路は、電流源51及び電圧源52を備えている。電流源51は、コイル16の消費電力Pで生じる熱源に対応しており、消費電力Pを計算する演算器53により制御されて、消費電力Pに対応した電流I1を出力する。この場合、コイル16の抵抗値をRL(Tc)とするとともに、コイル16に印加される電圧をVとすると、コイル16の消費電力Pは下記数1にように表される。なお、コイル16の抵抗値RL(Tc)は、詳しくは後述するように、コイル16の温度Tcの関数で表される。したがって、演算器53は、コイル16に印加される電圧V及びコイル16の温度Tcを入力して、下記数1に従ってコイル16の消費電力Pを計算する。

電圧源52は、トランスデューサ40が置かれた室内温度すなわち雰囲気温度Taに対応しており、室温センサ21によって検出された雰囲気温度Taに対応した電圧を出力する。

コイル16で発生された熱は、ボビン45を介して室内に放熱されるとともに、磁性流体47及びヨーク44を介して室内に放熱される。そして、Pbはボビン45で放熱される放熱電力を表し、Pyは磁性流体47及びヨーク44を介して放熱される放熱電力を表している。したがって、電流源51と電圧源52との間のボビン45による放熱路に対応した電流路には、コイル−ボビン間熱抵抗54及びボビン放熱抵抗55が直列に接続されている。これらのコイル−ボビン間熱抵抗54及びボビン放熱抵抗55の抵抗値は、それぞれR1,R2である。また、電流源51と電圧源52との間の磁性流体47及びヨーク44による放熱路に対応した電流路には、磁性流体熱抵抗56と磁性流体熱容量(磁性流体熱コンデンサ)57との並列回路と、ヨーク放熱抵抗58とヨーク熱容量(ヨーク熱コンデンサ)59との並列回路が直列に接続されている。これらの磁性流体熱抵抗56及びヨーク放熱抵抗58の抵抗値は、それぞれR3,R4である。また、磁性流体熱容量57及びヨーク熱容量59の容量値は、それぞれC3,C4である。そして、これらの抵抗値R1,R2,R3,R4及び容量値C3,C4は、予め測定された既知の値である。

したがって、このように構成した熱等価回路においては、電流源51と、コイル−ボビン間熱抵抗54と、磁性流体熱抵抗56と、磁性流体熱容量57との接続点の電圧が、コイル16の温度Tcに対応している。コイル−ボビン間熱抵抗54とボビン放熱抵抗55との接続点の電圧が、ボビン45の温度Tbに対応している。磁性流体熱抵抗56と、磁性流体熱容量57と、ヨーク放熱抵抗58と、ヨーク熱容量59との接続点の電圧が、ヨーク温度Tyに対応している。

次に、マイクロコンピュータ30が、この熱等価回路に基づいて、コイル16の温度Taを演算するための演算ブロックについて説明しておく。図5(A)はこの演算ブロック図であり、図5(C)は図5(A)の演算部78,79の詳細演算ブロック図である。図5(A)の演算ブロック図において、加算部71、乗算部72、逆数変換部73、2乗演算部74及び乗算部75は、図4(A)の演算器53及び電流源51に対応する。

ここで、コイル16の抵抗値RL(Tc)と、コイル16の温度Tcとの関係について説明しておく。従来から知られている抵抗法計算式によれば、下記数2が成立する。

前記数2において、T1は通電前のコイル16の温度であり、RL1は通電前のコイル16の抵抗値であり、T2は通電後のコイル16の温度であり、RL2は通電後のコイル16の抵抗値である。

前記数2を変形すると、抵抗値RL2は下記数3で表される。

ここでコイル16の通電前の温度T1を25.5℃とし、この温度T1(=25.5)でのコイル16の抵抗値RL1を測定しておく。この抵抗値RL1を値R25.5とすると、前記数3は下記数4のようになる。

コイル16の温度Tcを前記温度T2として、前記数4の演算を実行すれば、温度Tcにおけるコイル16の抵抗値RL(Tc)(=RL2)が計算されることになる。

ふたたび、図5(A)の説明に戻ると、この数4の演算が、加算部71及び乗算部72による演算処理に対応する。逆数変換部73は、前記計算された抵抗値RL(Tc)を逆数に変換する。また、2乗演算部74は入力したコイル16への印加電圧Vを2乗演算し、乗算部75が逆数変換部73及び2乗演算部74の両出力を乗算して出力する。これらの逆数変換部73、2乗演算部74及び乗算部75の演算処理は上記数1の演算に対応し、その結果、乗算部75からはコイル16の消費電力Pが計算されることになる。

減算部76は、乗算部75の乗算結果から乗算部77からの乗算結果を減算して、演算部78,79にそれぞれ出力する。乗算部77は、加算部80による加算結果に値1/(R1+R2)を乗算する。この乗算部77による演算処理は、コイル−ボビン間熱抵抗54及びボビン放熱抵抗55の両端電圧を、コイル−ボビン間熱抵抗54の抵抗値R1とボビン放熱抵抗55の抵抗値R2との和で除算する演算であり、コイル−ボビン間熱抵抗54及びボビン放熱抵抗55を流れる電流量を計算する演算処理である。前記熱等価回路では電流は電力に対応するので、乗算部77による演算結果は、ボビン45による放熱電力Pbに対応する。そして、減算部76が、コイル16の消費電力Pからボビン45による放熱電力Pbを減算して出力するので、減算部76の出力が磁性流体47及びヨーク44による放熱電力Pyに対応する。

演算部78は、磁性流体47及びヨーク44による放熱電力Pyに対応した電流を入力して、磁性流体熱抵抗56及び磁性流体熱容量57の両端の電圧、すなわち磁性流体47における温度上昇分ΔTcyを計算するものである。演算部79は、磁性流体47及びヨーク44による放熱電力Pyに対応した電流を入力して、ヨーク放熱抵抗58及びヨーク熱容量59の両端の電圧、すなわちヨーク44における温度上昇分ΔTyaを計算するものである。演算部78,79の詳細演算ブロックについては、図5(C)を用いて後述する。加算部80は、演算部78,79の両出力値を加算するもので、その出力は、磁性流体47における温度上昇分ΔTcyと、ヨーク44における温度上昇分ΔTyaとの合算値ΔTcaを計算すること、言い換えれば、磁性流体熱抵抗56とヨーク放熱抵抗58との直列回路の両端電圧を計算することを意味している。この加算部80の出力は加算部81に供給され、加算部81は、加算部80の出力値に雰囲気温度Taを加算して出力する。したがって、加算部81の出力は、コイル16の温度Tcを表すことになる。

演算部78,79は、それぞれ図5(C)に示すように、ゲイン制御部(乗算部)82,84,86,87、遅延部85、減算部83及び加算部88からなる。ゲイン制御部82は、放熱電力PyにゲインGを乗算して減算部83に出力する。減算部83は、ゲイン制御部82からの入力値から、ゲイン制御部84からの入力値を減算して、ゲイン制御部86及び遅延部85にそれぞれ出力する。遅延部85は、減算部83からの入力値を単位遅延して、ゲイン制御部84,87にそれぞれ出力する。ゲイン制御部84は、遅延部85からの入力値にゲインb1を乗算して減算部83に出力する。ゲイン制御部86は減算部83からの入力値にゲインa0を乗算して、加算部88に出力する。ゲイン制御部87は遅延部85からの入力値にゲインa1を乗算して、加算部88に出力する。加算部88は、ゲイン制御部86,87からの両入力値を加算して出力する。

演算部78においては、放熱電力Pyのサンプリング周期をT3とすると、ゲイン制御部82のゲインGはR3・W3/(α3+W3)であり、ゲイン制御部84のゲインb1は(α3−W3)/(α3+W3)であり、ゲイン制御部86のゲインa0は「1」であり、かつゲイン制御部87のゲインa1は「1」である。ただし、値α3は2/T3であり、値W3は1/C3・R3である。また、演算部79においては、放熱電力Pyのサンプリング周期をT4とすると、ゲイン制御部82のゲインGはR4・W4/(α4+W4)であり、ゲイン制御部84のゲインb1は(α4−W4)/(α4+W4)であり、ゲイン制御部86のゲインa0は「1」であり、かつゲイン制御部87のゲインa1は「1」である。ただし、値α4は2/T4であり、値W3は1/C4・R4である。

この場合、図5(A)及び図5(C)の演算ブロックで用いられている抵抗値R1、R2,R3,R4及び容量値C3,C4は前述のように全て既知の値であるので、コイル16への印加電圧V及び雰囲気温度Taを入力すれば、コイル16の温度Tcは、図5(A)及び図5(C)の演算ブロックに従って計算されることになる。

次に、前記のように構成した第1実施形態に係るピアノの動作について説明する。演奏者が鍵盤11及びペダル12を演奏操作すると、この鍵盤11及びペダル12の演奏操作はセンサ回路13により検出され、センサ回路13による演奏を表す検出信号が音源回路14に供給される。音源回路14は、この演奏を表す検出信号に基づいて、ピアノ音を表す電気的な楽音信号(オーディオ信号)を増幅回路15及びリレー回路23を介してコイル16に出力する。リレー回路23は、詳しくは後述するように、コイル16の温度Tcが予め決められた上限温度Tup以上であるときオフ状態に制御されるもので、少なくとも初期においてオン状態に設定されている。したがって、オーディオ信号が増幅率Kで増幅された電圧信号がコイル16に流れる。

この電圧信号により、コイル16には、前記電圧信号に比例した大きさの電流が流れる。このコイル16に流れる電流により、トランスデューサ40はボビン45及びキャップ46を図2の上下方向に振動させるので、響板48及び駒49も、このボビン45及びキャップ46の振動に対応して振動する。したがって、この響板48の振動により、オーディオ信号が音響信号に変換され、演奏者及び聴取者は、演奏者の鍵盤11及びペダル12の演奏に対応した演奏音を聞くことができる。なお、このトランスデューサ40を用いた響板38の振動による演奏音は、ハンマーによって弦を振動させた場合の音に比べて小さな音量の楽器音、すなわち弱音の楽器音である。

次に、コイル16の温度Tcの検出について説明する。前記ピアノの動作状態では、マイクロコンピュータ30は、図3のプログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行している。このプログラムの実行はステップS10にて開始され、マイクロコンピュータ30は、ステップS11にてコイル16への印加電圧V(オーディオ信号)及び雰囲気温度TaをA/D変換回路22を介して入力する。次に、マイクロコンピュータ30は、ステップS12にてコイル16の温度Tcを計算する。このコイル16の温度の計算は、図4(A)のトランスデューサ40の熱等価回路に基づく図5(A)(C)の演算ブロックで示された演算処理に従って行われる。前記ステップS12の処理後、マイクロコンピュータ30は、ステップS13にて、前記計算されたコイル16の温度Tcが上限温度Tup以上であるかを判定する。なお、この上限温度Tupは、コイル16が過度に上昇した温度である。この場合、コイル16の温度Tcが過度に上昇していなければ、マイクロコンピュータ30は、ステップS13にて「No」すなわちコイル16の温度Tcは上限温度Tup未満であると判定して、ステップS15にてプログラムの実行を終了する。したがって、この場合には、前述したオーディオ信号によるトランスデューサ40の駆動により、響板48の振動による演奏音が発生され続ける。

一方、コイル16の温度Tcが過度に上昇して上限温度Tup以上になると、マイクロコンピュータ30は、ステップS13にて「Yes」と判定して、ステップS14にてリレー回路23をオフ状態に制御する。これにより、この場合には、コイル16への入力信号路が遮断され、コイル16にはオーディオ信号が流れず、前記演奏音の発生は停止する。

上記説明のように、上記第1実施形態においては、マイクロコンピュータ30は、コイル16の印加電圧V及び室温センサ21による雰囲気温度Taを入力し、トランスデューサ40の熱等価回路に基づく演算処理により、入力した印加電圧V及び雰囲気温度Taのみを用いてコイル16の温度Tcを計算する。その結果、上記第1実施形態によれば、簡単な構成でコイル16の温度Tcを精度よく測定することができる。また、コイル16の温度Tcの計算においては、この温度Tcの計算に用いるコイル16の消費電力Pの計算過程において、コイル16の温度Tcをフィードバックして、この温度Tcに対応したコイル16の抵抗値RL(Tc)を消費電力Pの計算に用いるようにした。したがって、コイル16の温度Tcが変化しても、この温度Tcの変化によるコイル16の抵抗値RL(Tc)の変化がコイル16の消費電力Pに考慮されるので、コイル16の温度Tcが精度よく検出されることになる。

また、上記第1実施形態によれば、前記測定されたコイル16の温度Tcを用いて、コイル16の温度Tcが上限温度Tup以上になると、リレー回路23をオフ状態に切換えてコイル16に電流が流れないようにした。これにより、コイル16の温度Tcが過剰に上昇することがなくなり、コイル16及びその周辺装置に異常が発生したり、コイル16及びその周辺装置が焼損したりすることを回避することができ、ピアノの保護が的確に図られる。したがって、このリレー回路23は、コイル16及びその周辺装置を保護する保護手段として機能する。

なお、前記第1実施形態においては、室温センサ21がトランスデューサ40の近傍位置に配置されていることを前提として、室温センサ21によって検出された室内の温度Taがトランスデューサ40の雰囲気温度Taであるとして、コイル16の温度Tcを計算するようにした。しかし、室温センサ21がトランスデューサ40の近傍位置にない場合には、室温センサ21によって検出された温度Taを、トランスデューサ40の雰囲気温度として扱えない場合がある。すなわち、室温センサ21の位置とトランスデューサ40の位置とが離れており、室温センサ21の位置の空気温度Taと、トランスデューサ40の位置の空気温度Trとの間には多少の温度差が生じる場合がある。

この場合には、室温センサ21とトランスデューサ40の間の空間を考慮して、前述した図4(A)の熱等価回路は図4(B)のように変形される。すなわち、図4(B)の熱等価回路においては、図4(A)の熱等価回路に対して、電流源51と電圧源52との間に、室温センサ21とトランスデューサ40の間の空気の熱抵抗52aと、室温センサ21とトランスデューサ40の間の空気の熱容量52bとからなるローパスフィルタが追加される。この場合、熱抵抗52aの抵抗値はR5であり、熱容量52bの容量値はC5であり、いずれも予め測定により得られた既知の値である。

そして、この図4(B)の熱等価回路に対応した演算ブロック図は、図5(B)に示すようになる。この図5(B)の演算ブロック図においては、室温センサ21の位置の空気温度Taは演算部52cにより演算されて、トランスデューサ40の位置の空気温度Trとして加算部81に入力される。他の部分に関しては、前述した図5(A)の演算ブロック図と同じである。演算部52cは、前述した演算部78,79と同様に、図5(C)のように構成される。この場合、図5(C)においては、室温センサ21の位置の空気温度Taのサンプリング周期をT5とすると、ゲイン制御部82のゲインGはR5・W5/(α5+W5)であり、ゲイン制御部84のゲインb1は(α5−W5)/(α5+W5)であり、ゲイン制御部86のゲインa0は「1」であり、かつゲイン制御部87のゲインa1は「1」である。ただし、値α5は2/T5であり、値W5は1/C5・R5である。そして、この場合も、図5(B)及び図5(C)の演算ブロックで用いられている抵抗値R5及び容量値C5は前述のように既知の値であるので、コイル16への印加電圧V及び雰囲気温度Taを入力すれば、コイル16の温度Tcは、図5(B)及び図5(C)の演算ブロックに従って計算されることになる。

さらに、この変形例においても、マイクロコンピュータ30は、前記第1実施形態の場合と同様に、図3のプログラムを実行する。ただし、この場合には、ステップS12において、コイル16の温度Tcは、前記図5(B)及び図5(C)の演算ブロックに従って計算される。したがって、この変形例によれば、室温センサ21とトランスデューサ40とが離れていて、室温センサ21の位置の空気温度Taと、トランスデューサ40の位置の空気温度Trとの間に差があっても、この空気温度の差はコイル温度Tcの計算に考慮されるので、コイル16の温度Tcが精度よく計算されるようになる。

b.第2実施形態 次に、本発明の第2実施形態に係るピアノについて説明する。この第2実施形態に係るピアノの電子回路も、上記図1に示した第1実施形態の概略ブロック図と同様に構成されている。また、この第2実施形態に係るピアノのトランスデューサ40も、上記図2に示した第1実施形態のトランスデューサと同様に構成されている。そして、この第2実施形態は、コイル16の温度Tcを計算するための熱等価回路と、この熱等価回路に基づいてコイル16の温度Tcを計算する演算ブロックのみが上記第1実施形態の場合と相違し、他の点については上記第1実施形態と同じである。したがって、以降、第2実施形態の説明においては、上記第1実施形態と異なる点のみを説明し、同一部分については同一符号を付してその説明を省略する。

この第2実施形態においては、コイル16の温度Tcの変化によるコイル16の抵抗値RLの変化を無視して、抵抗値RLは常に一定であるものとしている。したがって、トランスデューサ40の熱等価回路においては、図6(A)に示すように、上記第1実施形態におけるコイル16の温度Tcのフィードバック経路を省略し、上記第1実施形態における演算器53に代えて、演算器61を備えている。演算器61は、コイル16に印加される電圧Vのみを入力して、下記数5に従ってコイル16の消費電力Pを計算する。なお、この場合の、抵抗値RLは予め測定した既知の値である。他の構成は、上記第1実施形態の場合と同じである。

この熱等価回路に基づくコイル16の温度Tcを計算するための演算ブロックは、図7(A)に示すようになる。すなわち、この演算ブロックにおいては、図5(A)に示した第1実施形態の演算ブロックにおける加算部71、乗算部72及び逆数変換部73が省略されるとともに、乗算部75に代えて、図6(A)の演算器61に関係した演算部91を備えている。演算部91は、2乗演算部74からの入力電圧Vの2乗値V2をコイル16の抵抗値RLで除算することによりコイル16の消費電力Pを計算して、加算部76に出力する。演算ブロックの他の部分は、上記第1実施形態の場合と同じである。

このように構成した第2実施形態の動作を説明すると、この第2実施形態においても、マイクロコンピュータ30は、図3に示すプログラムの実行により、コイル16の温度Tcを計算するとともに、計算した温度Tcが上限温度Tup以上であるかを判定する。ただし、この場合、ステップS12においては、コイル16の温度Tcが、図7(A)の演算ブロックに従って、印加電圧V及び雰囲気温度Taを用いて計算される。そして、計算された温度Tcが上限温度Tup未満であれば、リレー回路23はオン状態に保たれて、オーディオ信号(電圧信号)はコイル16に印加され続けて、オーディオ信号が音響信号に変換され、演奏者及び聴取者は、演奏者の鍵盤11及びペダル12の演奏に対応した演奏音を聞くことができる。一方、計算された温度Tcが上限温度Tup以上になると、リレー回路23はオフ状態に切換えられて、オーディオ信号(電圧信号)のコイル16への印加が遮断され、コイル16の温度Tcが過剰に上昇することがなくなり、コイル16及びその周辺装置に異常が発生したり、コイル16及びその周辺装置が焼損したりすることを回避することができる。

このコイル16の温度Tcの計算においても、マイクロコンピュータ30は、コイル16の印加電圧V及び室温センサ21による雰囲気温度Taを入力して、入力した印加電圧V及び雰囲気温度Taのみを用いてコイル16の温度Tcを計算する。しかし、前述のように、この温度Tcの計算においては、図7(A)に示す演算ブロックに従って、すなわちコイル16の抵抗値RLを固定値として、コイル16の消費電力Pが計算される。したがって、この第2実施形態によれば、温度Tcの変化によるコイル16の抵抗値RL(Tc)の変化が無視されるので、コイル16の温度Tcの精度が上記第1実施形態の場合に比べて多少悪化するが、コイル16の温度Tcの計算が上記第1実施形態に比べて簡単になる。

なお、前記第2実施形態においても、室温センサ21がトランスデューサ40の近傍位置に配置されていることを前提として、室温センサ21によって検出された室内の温度Taがトランスデューサ40の雰囲気温度Taであるとして、コイル16の温度Tcを計算するようにした。しかし、この場合も、室温センサ21の位置とトランスデューサ40の位置とが離れており、室温センサ21の位置の空気温度Taと、トランスデューサ40の位置の空気温度Trとの間には多少の温度差が生じる場合がある。したがって、この場合にも、室温センサ21とトランスデューサ40の間の空間を考慮して、前述した図6(A)の熱等価回路は図6(B)のように変形されるとともに、前述した図7(A)の演算ブロック図は図7(B)に示すように変形される。前記変形は、上記第1実施形態の変形例の場合における熱等価回路及び演算ブロック図の場合と同じであるので、同一符号を付してその説明を省略する。

そして、マイクロコンピュータ30は、前記変形例に係る図7(B)の演算ブロックに従って、コイル16の温度Tcを計算する。したがって、この変形例によっても、室温センサ21とトランスデューサ40とが離れていて、室温センサ21の位置の空気温度Taと、トランスデューサ40の位置の空気温度Trとの間に差があっても、この空気温度の差はコイル温度Tcの計算に考慮されるので、コイル16の温度Tcが精度よく計算されるようになる。

c.第3実施形態 次に、本発明の第3実施形態に係るピアノについて説明する。この第3実施形態に係るピアノの電子回路は、上記図1に示した第1実施形態の場合に対して、コイル16と接地間に予め決められた小さな抵抗値rを有する電流検出用の抵抗24(すなわち、電流検出手段としての抵抗24)が接続されている。そして、この抵抗24とコイル16との接続点の電圧Vr(すなわち抵抗24の端子電圧Vr)がA/D変換回路22に供給されるようになっている。なお、この抵抗24の抵抗値rは小さいので、コイル16に印加される電圧Vには影響しない。A/D変換回路22は、上記第1実施形態の場合のコイル16の印加電圧V及び室温センサ21によって検出された雰囲気温度Taを表す検出信号のA/D変換に加えて、抵抗24の端子電圧VrもA/D変換して、マイクロコンピュータ30に供給する。そして、この電子回路の他の部分については、上記第1実施形態の場合と同様に構成されている。また、この第3実施形態に係るピアノのトランスデューサ40も、上記図2に示した第1実施形態のランスデューサと同様に構成されている。したがって、この第3実施形態の場合も、上記第1実施形態と異なる点のみを説明し、同一部分については同一符号を付してその説明を省略する。

そして、この第3実施形態におけるコイル16の温度Tcを計算するためのトランスデューサ40の熱等価回路においては、図9(A)に示すように、上記第1実施形態におけるコイル16の温度Tcのフィードバック経路は省略され、上記第1実施形態における演算器53に代えて、乗算器62を備えている。乗算器62は、コイル16に印加される電圧Vと、除算器62aによって計算される電流Iとを入力して、下記数6に従ってコイル16の消費電力Pを計算する。除算器62aは、抵抗24の端子電圧Vrを抵抗24の抵抗値rで除算して、コイル16に流れる電流Iを計算する。なお、抵抗24として、端子電圧Vrを電流Iとみなせる基準単位的な抵抗値rを有する抵抗を用いることができたり、後続の演算処理によって端子電圧Vrを実質的にコイル16に流れる電流Iとみなせたりするような場合には、この除算器62aを省略してもよい。他の構成は、上記第1実施形態の場合と同じである。

この熱等価回路に基づくコイル16の温度Tcを計算するための演算ブロックは、図10(A)に示すようになる。すなわち、この演算ブロックにおいては、図5(A)に示した第1実施形態の演算ブロックにおける加算部71、乗算部72、逆数変換部73及び演算部74が省略されて、2乗演算部74及び乗算部75に代えて、前記図9(A)の乗算器62及び除算器62aにそれぞれ対応した乗算部92及び除算部92aを備えている。除算部92aは、端子電圧Vrを抵抗値rで除算することにより電流値Iを計算する。乗算部92は、電圧値Vに電流値Iを乗算することにより消費電力Pを計算して加算部76に出力する。演算ブロックの他の部分は、上記第1実施形態の場合と同じである。

このように構成した第3実施形態の動作を説明すると、この第3実施形態においても、マイクロコンピュータ30は、図3に示すプログラムの実行により、コイル16の温度Tcを計算するとともに、計算した温度Tcが上限温度Tup以上であるかを判定する。ただし、この場合、ステップS11においては、印加電圧V及び雰囲気温度Taに加え、端子電圧Vr(実質的には、電流値Iを表す)が入力される。また、ステップS12においては、コイル16の温度Tcが、図10(A)の演算ブロックに従って、印加電圧V、端子電圧Vr(実質的には、電流値Iを表す)及び雰囲気温度Taを用いて計算される。そして、計算された温度Tcが上限温度Tup未満であれば、リレー回路23はオン状態に保たれて、オーディオ信号(電圧信号)はコイル16に印加され続けて、オーディオ信号が音響信号に変換され、演奏者及び聴取者は、演奏者の鍵盤11及びペダル12の演奏に対応した演奏音を聞くことができる。一方、計算された温度Tcが上限温度Tup以上になると、リレー回路23はオフ状態に切換えられて、オーディオ信号(電圧信号)のコイル16への印加が遮断され、コイル16の温度Tcが過剰に上昇することがなくなり、コイル16及びその周辺装置に異常が発生したり、コイル16及びその周辺装置が焼損したりすることを回避することができる。

前述のように、このコイル16の温度Tcの計算においては、マイクロコンピュータ30は、コイル16の印加電圧V及び雰囲気温度Taに加えて、抵抗24の端子電圧Vr(実質的には、電流値Iを表す)を入力し、図10(A)の演算ブロックに従って、印加電圧V、端子電圧Vr(実質的には、電流値Iを表す)及び雰囲気温度Taを用いてコイル16の温度Tcを計算する。したがって、この第3実施形態によれば、コイル16に流れる電流値Iを検出する必要があるが、この電流値Iの検出は簡単な構成で可能であるので、コイル16の温度Tcの計算が上記第1実施形態の場合と同様に簡単になる。

なお、前記第3実施形態においても、室温センサ21がトランスデューサ40の近傍位置に配置されていることを前提として、室温センサ21によって検出された室内の温度Taがトランスデューサ40の雰囲気温度Taであるとして、コイル温度Tcを計算するようにした。しかし、この場合も、室温センサ21の位置とトランスデューサ40の位置とが離れており、室温センサ21の位置の空気温度Taと、トランスデューサ40の位置の空気温度Trとの間には多少の温度差が生じる場合がある。したがって、この場合にも、室温センサ21とトランスデューサ40の間の空間を考慮して、前述した図9(A)の熱等価回路は図9(B)のように変形されるとともに、前述した図10(A)の演算ブロック図は図10(B)に示すように変形される。前記変形は、上記第1実施形態の変形例の場合における熱等価回路及び演算ブロック図の場合と同じであるので、同一符号を付してその説明を省略する。

そして、マイクロコンピュータ30は、前記変形例に係る図10(B)の演算ブロックに従って、コイル16の温度Tcを計算する。したがって、この変形例によっても、室温センサ21とトランスデューサ40とが離れていて、室温センサ21の位置の空気温度Taと、トランスデューサ40の位置の空気温度Trとの間に差があっても、この空気温度の差はコイル温度Tcの計算に考慮されるので、コイル16の温度Tcが精度よく計算されるようになる。

d.第4実施形態 次に、本発明の第4実施形態に係るピアノについて説明する。この第4実施形態に係るピアノの電子回路は、図11に示すように、上記図1に示した第1実施形態の場合に対して、コイル16の印加電圧VをA/D変換回路22に入力するための接続線が省略され、それに代えて、ヨーク温度センサ25が設けられている。ヨーク温度センサ25は、例えばサーマルダイオード温度センサ、サーミスタ温度センサなどで構成され、図2に破線で示すように、ヨーク44に組付けられ、ヨーク44の温度(すなわちヨーク温度)Tyを検出して、ヨーク温度Tyを表す検出信号をA/D変換回路22に出力する。A/D変換回路22は、上記第1実施形態の場合のコイル16の印加電圧Vに代えて、ヨーク温度Tyを表す検出信号をA/D変換してマイクロコンピュータ30に供給する。そして、この電子回路の他の部分については、上記第1実施形態の場合と同様に構成されている。また、この第4実施形態に係るピアノのトランスデューサ40も、上記図2に示した第1実施形態のランスデューサと同様に構成されている。したがって、この第4実施形態の場合も、上記第1実施形態と異なる点のみを説明し、同一部分については同一符号を付してその説明を省略する。

そして、この第4実施形態におけるコイル16の温度Tcを計算するためのトランスデューサ40の熱等価回路においては、図12(A)に示すように、上記第1実施形態におけるコイル16の印加電圧Vの入力経路、コイル16の温度Tcのフィードバック経路、及び演算器53は省略されている。なお、この場合、コイル16の温度Tcを計算するためには、電流源51、コイルボビン間抵抗54及びボビン放熱抵抗55は不要であるが、トランスデューサ40の構成要素として存在するので、図12(A)においてもこれらの構成要素51,54,55を含めている。そして、この第4実施形態に係る熱等価回路においては、磁性流体熱抵抗56とヨーク放熱抵抗58との接続点と接地間に電圧源63を設けている。この電圧源63は、ヨーク温度Tyに対応しており、ヨーク温度センサ25によって検出されたヨーク温度Tyに対応した電圧を出力する。他の構成は、上記第1実施形態の場合と同じである。

この熱等価回路に基づくコイル16の温度Tcを計算するための演算ブロックは、図13(A)に示すようになる。この場合、磁性流体熱抵抗56とヨーク放熱抵抗58との接続点の電圧はヨーク温度Tyに対応し、ヨーク放熱抵抗58の両端電圧はヨーク温度Tyと雰囲気温度Taとの差Ty−Ta(ヨーク温度上昇分ΔTya)に対応する。この差を計算するために、演算ブロックにおいては、減算部93が設けられている。そして、この差Ty−Taに応じた電流が、磁性流体熱抵抗56と磁性流体熱容量(磁性流体熱コンデンサ)57との並列回路に流れ、この電流によって磁性流体熱抵抗56の両端電圧(磁性流体温度上昇分ΔTcy)が決定され、ヨーク温度上昇分ΔTya(温度差Ty−Ta)と磁性流体温度上昇分ΔTcyとを雰囲気温度Taに加算することにより、コイル16の温度Tcが計算される。これらの温度の計算が、減算部93、演算部78,79,94及び加算部80,81により実現される。具体的には、減算部93及び演算部78,94の演算処理により磁性流体温度上昇分ΔTcyが計算され、減算部93及び演算部79,94の演算処理によりヨーク温度上昇分ΔTyaが計算され、加算部80の加算処理により磁性流体温度上昇分ΔTcyとヨーク温度上昇分ΔTyaとが加算される。そして、加算部81の演算処理により、磁性流体温度上昇分ΔTcyとヨーク温度上昇分ΔTyaとの加算値ΔTcaが雰囲気温度Taに加算される。なお、演算部78,79及び加算部80,81の演算内容は、上記第1実施形態の場合と同様である。また、演算部94は、演算部79と同様な演算処理による値を逆数に変換する演算処理である。

このように構成した第4実施形態の動作を説明すると、この第4実施形態においても、マイクロコンピュータ30は、図3に示すプログラムの実行により、コイル16の温度Tcを計算するとともに、計算した温度Tcが上限温度Tup以上であるかを判定する。ただし、この場合、ステップS11においては、雰囲気温度Ta及びヨーク温度Tyが入力される。また、ステップS12においては、コイル16の温度Tcが、図13(A)の演算ブロックに従って、雰囲気温度Ta及びヨーク温度Tyを用いて計算される。そして、計算された温度Tcが上限温度Tup未満であれば、リレー回路23はオン状態に保たれて、オーディオ信号(電圧信号)はコイル16に印加され続けて、オーディオ信号が音響信号に変換され、演奏者及び聴取者は、演奏者の鍵盤11及びペダル12の演奏に対応した演奏音を聞くことができる。一方、計算された温度Tcが上限温度Tup以上になると、リレー回路23はオフ状態に切換えられて、オーディオ信号(電圧信号)のコイル16への印加が遮断され、コイル16の温度Tcが過剰に上昇することがなくなり、コイル16及びその周辺装置に異常が発生したり、コイル16及びその周辺装置が焼損したりすることを回避することができる。

前述のように、このコイル16の温度Tcの計算においては、マイクロコンピュータ30は、図13(A)の演算ブロックに従って、雰囲気温度Ta及びヨーク温度Tyを入力して、入力した雰囲気温度Ta及びヨーク温度Tyを用いてコイル16の温度Tcを計算する。したがって、この第4実施形態によれば、ヨーク温度Tyを検出するためのヨーク温度センサ25は必要であるが、上記第1乃至第3実施形態に比べて演算処理が簡素化されて、コイル16の温度Tcの計算がより簡単になる。

なお、前記第4実施形態においても、室温センサ21がトランスデューサ40の近傍位置に配置されていることを前提として、室温センサ21によって検出された室内の温度Taがトランスデューサ40の雰囲気温度Taであるとして、コイル温度Tcを計算するようにした。しかし、この場合も、室温センサ21の位置とトランスデューサ40の位置とが離れており、室温センサ21の位置の空気温度Taと、トランスデューサ40の位置の空気温度Trとの間には多少の温度差が生じる場合がある。したがって、この場合にも、室温センサ21とトランスデューサ40の間の空間を考慮して、前述した図12(A)の熱等価回路は図12(B)のように変形されるとともに、前述した図13(A)の演算ブロック図は図13(B)に示すように変形される。前記変形は、上記第1実施形態の変形例の場合における熱等価回路及び演算ブロック図の場合と同じであるので、同一符号を付してその説明を省略する。

そして、マイクロコンピュータ30は、前記変形例に係る図13(B)の演算ブロックに従って、コイル16の温度Tcを計算する。したがって、この変形例によっても、室温センサ21とトランスデューサ40とが離れていて、室温センサ21の位置の空気温度Taと、トランスデューサ40の位置の空気温度Trとの間に差があっても、この空気温度の差はコイル温度Tcの計算に考慮されるので、コイル16の温度Tcが精度よく計算されるようになる。

e.変形例 さらに、本発明の実施にあたっては、上記第1乃至第4実施形態及びそれらの変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。

上記第1乃至第3実施形態及びそれらの変形例においては、コイル16の端子電圧をコイル16への印加電圧Vとして、A/D変換回路22を介してマイクロコンピュータ30に入力するようにした。しかし、これに代えて、リレー回路23の入力側の増幅回路15の出力電圧を、A/D変換回路22を介してマイクロコンピュータ30に入力するようにしてもよい。また、増幅回路15の増幅率Kが一定であることを前提として、増幅回路15の入力電圧を、A/D変換回路22を介してマイクロコンピュータ30に入力し、マイクロコンピュータ30は入力電圧をK倍してコイル16への印加電圧Vとして利用するようにしてもよい。

また、上記第1乃至第4実施形態及びそれらの変形例において、トランスデューサ40が配置されている室内(雰囲気)における風速を考慮するようにすると、コイル16の温度Tcをさらに高精度で測定できるようになる。トランスデューサ40が配置された雰囲気中の風速が大きくなると、ボビン放熱抵抗55の抵抗値R2及びヨーク放熱抵抗58の抵抗値R4は小さくなる。したがって、トランスデューサ40が配置された雰囲気中の風速が大きくなるに従って、抵抗値R2,R4を小さくなるように補正するとよい。この補正計算においては、実験による測定結果を基に作成されていて、風速に応じて変化する抵抗値R2,R4を表す変換テーブル、変換関数などを用いるようにすればよい。

具体的には、図1,8,11において、破線で示すように、トランスデューサ40の近傍に配置され、トランスデューサ40の雰囲気中の風速を検出して、検出した風速を表す検出信号を出力する風速センサ28をA/D変換回路22に接続する。A/D変換回路22は、この風速を表す検出信号もA/D変換してマイクロコンピュータ30に供給する。マイクロコンピュータ30は、図4,6,9,12の熱等価回路及び図5,7,10,13の演算ブロックにおける抵抗値R2,R4を、検出された風速が大きくなるに従って小さくなるように補正して、コイル16の温度Tcを計算する。

また、上記第1乃至第4実施形態及びそれらの変形例においては、増幅回路15の後段に、オーディオ信号のコイル16への通電を許容又は遮断する保護手段としてのリレー回路23すなわちリレースイッチを設けて、コイル16の温度Tcの過剰な上昇を抑えるようにした。しかし、この保護手段としてのリレー回路23に代えて、トランジスタなどによって構成した電子式スイッチ回路を設けて、マイクロコンピュータ30により、電子式スイッチ回路のオン・オフを切換え制御するようにしてもよい。また、保護手段としてのリレー回路23又は電子スイッチ回路はコイル16へのオーディオ信号の通過又は遮断を制御するものであるので、コイル16へのオーディオ信号の通路であれば、リレー回路23又は電子スイッチ回路をどこに設けてもよく、リレー回路23又は電子スイッチ回路を、音源回路14と増幅回路15との間に設けてもよい。

また、上記第1乃至第4実施形態及びそれらの変形例において、前記リレー回路23又は電子スイッチ回路に代えて、図14に示すように、音源回路14と増幅回路15とを結ぶ接続線と接地間に通常オフ状態にある電子スイッチ回路26を設けて、コイル16の温度Tcが上限温度Tup以上になった場合に、マイクロコンピュータ30がこの電子スイッチ回路26をオンして、オーディオ信号のコイル16への通電を遮断するようにしてもよい。この場合、音源回路14と、電子スイッチ回路26の音源回路14側の端子との間に抵抗29を設ける。また、この電子スイッチ回路26に代えて、上記第1乃至第4実施形態及びそれらの変形例で用いたリレー回路(リレースイッチ)23と同様なリレー回路を用い、マイクロコンピュータ30は、このリレー回路を通常オフ状態に保ち、コイル16の温度Tcが上限温度Tup以上になった場合にリレー回路をオン状態に切換えて、オーディオ信号のコイル16への通電を遮断するようにしてもよい。さらに、この変形例においては、これらの電子スイッチ回路26又はリレー回路を、増幅回路15とコイル16との接続線と接地間に設けてもよい。

さらに、前述した電子スイッチ回路26又はリレー回路に代えて、電子ボリュームを用いることもできる。この場合、例えば、図14に破線で示すように、電子ボリューム27を、音源回路14と増幅回路15との接続線と接地間に設ければよい。この場合も、音源回路14と、電子ボリューム27の音源回路14側の端子との間に抵抗29を設ける。この電子ボリューム27は、マイクロコンピュータ30により制御されて、コイル16の温度Tcが上限温度Tupに達しない状態では最大ボリュームに保たれ、コイル16の温度Tcが上限温度Tup以上になった場合には、ボリューム値が減少されてコイル16へのオーディオ信号による通電量を減少させればよい。これによっても、保護手段としての電子ボリューム27により、コイル16の温度Tcが過剰に上昇することを防ぐことができて、コイル16及びその周辺装置に異常が発生したり、コイル16及びその周辺装置が焼損したりすることを回避することができる。また、この場合も、電子ボリューム27を、増幅回路15とコイル16との接続線と接地間に設けてもよい。

また、上記第1乃至第4実施形態及びそれらの変形例においては、トランスデューサ40内に磁性流体47を設けるようにしたが、磁性流体47を設けないトランスデューサにも本発明は適用され得る。この場合、図4,6,9,12の熱等価回路においては、磁性流体熱抵抗56及び磁性流体熱容量(磁性流体熱コンデンサ)57は、空気熱抵抗と空気熱容量に変更される。そして、空気熱抵抗の抵抗値は磁性流体熱抵抗56に比べて極めて大きく、図4,6,9,12の熱等価回路内の抵抗値R3は上記第1乃至第4実施形態及びそれらの変形例の場合に比べて極めて大きくなる。そのために、コイル16の消費電力P(発生熱)の大部分がボビン45で放熱されることになり、この場合には、コイル16の温度Tcは上記第1乃至第4実施形態及びそれらの変形例の場合に比べて高くなる。

また、上記第1乃至第4実施形態において、ヨーク44に放熱板を設けたトランスデューサにも本発明は適用され得る。この場合、図4(A)の熱等価回路は、図15(A)に示すように、ヨーク放熱抵抗58とヨーク熱容量(ヨーク熱コンデンサ)59に並列に、放熱板熱抵抗64及び放熱板熱容量(放熱板熱コンデンサ)65が接続されることになる。なお、図6(A)、図9(A)及び図12(A)の熱等価回路においても同様である。したがって、図4(A)、及び図6(A)、図9(A)及び図12(A)のヨーク放熱抵抗58の抵抗値R4が実質的に小さくなることになり、この場合には、コイル16の温度Tcは上記第1乃至第4実施形態の場合に比べて低くなる。

また、上記第1乃至第4実施形態において、ボビン45の近傍に放熱ファンを設けたトランスデューサにも本発明は適用され得る。この場合、図4(A)の熱等価回路は、図16(A)に示すように、ボビン放熱抵抗55に並列に、放熱ファン抵抗66が接続されることになる。なお、図6(A)、図9(A)及び図12(A)の熱等価回路においても同様である。したがって、図4(A)、図6(A)、図9(A)及び図12(A)のボビン放熱抵抗55の抵抗値R2が実質的に小さくなることになり、この場合には、コイル16の温度Tcは上記第1乃至第4実施形態の場合に比べて低くなる。また、前記放熱ファンを設けることで、ヨーク放熱抵抗58の抵抗値R4も併せて低くなる。

さらには、上記第1乃至第4実施形態において、ヨーク44にヒートパイプを設けてヨーク44の熱をピアノのフレームに逃がすようにしたトランスデューサにも本発明は適用され得る。この場合、図4(A)の熱等価回路は、図17(A)に示すように、ヨーク放熱抵抗58とヨーク熱容量(ヨーク熱コンデンサ)59に並列に、ヒートパイプ放熱抵抗67及びフレーム放熱抵抗68が接続されるとともに、フレーム放熱抵抗68に並列にフレーム熱容量(フレーム熱コンデンサ)69が接続されることになる。なお、図17(A)においては、ヒートパイプ放熱抵抗67の抵抗値をR6と表し、フレーム放熱抵抗68の抵抗値をR7と表し、フレーム熱容量69の容量値をC7と表している。また、図6(A)、図9(A)及び図12(A)の熱等価回路においても同様である。したがって、図4(A)、図6(A)、図9(A)及び図12(A)のヨーク放熱抵抗58の抵抗値R4が実質的に小さくなることになり、この場合には、コイル16の温度Tcは上記第1乃至第4実施形態の場合に比べて低くなる。

なお、前記変形例に係る図15(A),図16(A)及び図17(A)の熱等価回路においても、室温センサ21がトランスデューサ40の近傍位置に配置されていることを前提として、室温センサ21によって検出された室内の温度Taがトランスデューサ40の雰囲気温度Taであるとして、コイル温度Tcを計算するようにした。しかし、これらの場合も、室温センサ21の位置とトランスデューサ40の位置とが離れており、室温センサ21の位置の空気温度Taと、トランスデューサ40の位置の空気温度Trとの間には多少の温度差が生じる場合がある。したがって、これらの場合にも、室温センサ21とトランスデューサ40の間の空間を考慮して、前述した図15(A),図16(A)及び図17(A)の熱等価回路は、それぞれ図15(B),図16(B)及び図17(B)のように変形される。また、前記変形は、上記第1実施形態の変形例の場合における熱等価回路の場合と同じであるので、同一符号を付してその説明を省略する。

そして、マイクロコンピュータ30は、前記変形例に対応した演算ブロックに従って、コイル16の温度Tcを計算する。したがって、この変形例によっても、室温センサ21とトランスデューサ40とが離れていて、室温センサ21の位置の空気温度Taと、トランスデューサ40の位置の空気温度Trとの間に差があっても、この空気温度の差はコイル温度Tcの計算に考慮されるので、コイル16の温度Tcが精度よく計算されるようになる。

また、上記第1乃至第4実施形態及びそれらの変形例においては、音源回路14から出力された一つのオーディオ信号を一つのトランスデューサ40のコイル16に導いて、一つのトランスデューサ40により響板48を振動させるようにした。しかし、これに代えて、音源回路14から出力された一つのオーディオ信号を複数のトランスデューサのコイルにそれぞれ導いて、複数のトランスデューサにより響板38を振動させるようにしてもよい。

また、上記第1乃至第4実施形態及びそれらの変形例においては、本発明をピアノに適用した。しかし、本発明は、通常、響板を有さない電子楽器において、オーディオ信号により振動される響板を新たに設けて、新たに設けた響板をトランスデューサ40により振動させるようにした電子楽器にも適用できる。また、本発明は、響板を振動させるのに代えて、ボイスコイルへの通電によりコーン紙などの振動部材を振動させるスピーカにより、オーディオ信号を音響信号に変換する音響信号変換器にも適用できる。この場合、上記第1乃至第4実施形態及びそれらの変形例のコイル16を、スピーカのボイスコイルとして採用すればよい。

また、上記第1乃至第4実施形態及びそれらの変形例においては、鍵盤11及びペダル12の演奏操作に応じて音源回路14からオーディオ信号を発生させるようにした。しかし、これに代えて、鍵盤11及びペダル12以外の演奏操作子の演奏操作に応じてオーディオ信号を音源回路14から発生させるようにしてもよい。また、事前に記憶しておいた演奏データに応じて音源回路14からオーディオ信号を発生させるようにしてもよい。さらには、本発明は、楽器に限らず、トランスデューサ、スピーカなどを用いてオーディオ信号を音響信号に変換する音響信号変換器であれば、種々の音響信号変換器にも適用でき、音源回路14を有さなくても、録音しておいたオーディオ信号をトランスデューサ、スピーカなどに直接導いて音響信号に変換するようにしてもよい。

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