熱式空気流量計

申请号 JP2017049340 申请日 2017-03-15 公开(公告)号 JP2018151339A 公开(公告)日 2018-09-27
申请人 三菱電機株式会社; 发明人 森永 直樹; 有吉 雄二; 樋▲高▼ 慎一郎; 河合 正浩;
摘要 【課題】逆流を伴う脈動流が発生した場合にも 精度 の良い流量計測を安価な構成で実現し得る熱式空気流量計を提供する。 【解決手段】 信号 処理部3は、センサ25の出 力 信号に対してその交流成分の振幅増加処理を行った第1振幅増加信号と第2振幅増加信号をそれぞれ出力する応答補正部7と、第2振幅増加信号と予め設定された比較閾値THとを比較し、比較閾値に対して負側になる第2振幅増加信号の負側部分に応じた負側の比較信号を出力する比較信号出力部8と、比較信号を平均化した平均信号を出力する平均化処理部9と、平均信号に対して予め設定された調整係数を乗算した係数倍信号を出力する係数倍処理部10と、係数倍信号により第1振幅増加信号を減少補正した値を、流量信号として出力する信号補正処理部11とを備え、比較閾値THは、少なくとも吸入空気の順流方向について予め計測されたセンサ25の出力特性に基づいて設定される。 【選択図】図4
权利要求

内燃機関に吸入される吸入空気が流れる吸気管内に配置され、前記吸入空気の一部を取り込んで流すバイパス流路と、 前記バイパス流路内に配置された流量検出素子を有し、前記吸気管内を順流方向及び逆流方向に流れる前記吸入空気の流量に応じた出信号を出力するセンサと、 前記センサの出力信号を処理する信号処理部とを備えた熱式空気流量計において、 前記信号処理部は、 前記センサの出力信号に対してその交流成分の振幅増加処理を行った第1振幅増加信号と第2振幅増加信号をそれぞれ出力する応答補正部と、 前記第2振幅増加信号と予め設定された比較閾値とを比較し、前記比較閾値に対して負側になる前記第2振幅増加信号の負側部分に応じた負側の比較信号を出力する比較信号出力部と、 前記比較信号を平均化した平均信号を出力する平均化処理部と、 前記平均信号に対して予め設定された調整係数を乗算した係数倍信号を出力する係数倍処理部と、 前記係数倍信号により前記第1振幅増加信号を減少補正した値を、流量信号として出力する信号補正処理部とを備え、 前記比較閾値は、予め計測された前記センサの出力特性に基づいて設定されることを特徴とする熱式空気流量計。前記比較閾値は、前記センサの出力特性として逆流側の流量特性に基づき設定されることを特徴とする請求項1に記載の熱式空気流量計。前記比較閾値は、前記センサの出力特性における、少なくとも2つの順流側流量点の流量信号より算出した近似式により設定されることを特徴とする請求項1に記載の熱式空気流量計。前記比較閾値は、前記センサの出力特性における、順流側特性の1つの流量点と無風時の出力から算出した近似式により設定されることを特徴とする請求項1に記載の熱式空気流量計。前記センサは、前記流量検出素子として、前記吸入空気の上流側に配置された上流発熱抵抗体と、前記上流発熱抵抗体に対して前記吸入空気の下流側に配置された下流発熱抵抗体とを備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の熱式空気流量計。

说明书全文

本発明は、内燃機関の吸入空気の流量を検出する熱式空気流量計に関するものである。

自動車等に搭載される内燃機関の電子制御式の燃料噴射システムにおいて、吸入空気の質量流量を計測できる熱式空気流量計が広く使用されている。 しかし、内燃機関の回転数が低く、且つ高負荷の運転条件において、逆流を伴う脈動流が発生する。 そのため、逆流検出が出来ない従来の熱式空気流量計では大きな流量検出誤差が発生していた。 この逆流を伴う脈動流の計測時の流量検出誤差を低減するため、空気の流れ方向を検出し、逆流を検出したときに、流量信号を補正する方法が提案されている。

例えば特許文献1の技術では、逆流を伴う脈動が発生した場合、差動増幅部2にて逆流方向の流量信号を取り出しパルスに変換した後、LPF部にて平滑化し、元の流量信号から減算することで脈動補正を行っている。

特許第5558599号公報

しかしながら、差動増幅部2にて逆流方向の流量信号Vd1を取り出す際の基準電圧については設定方法が述べられておらず、他電子部品のばらつきが逆流方向の流量信号を取り出す際の基準電圧に影響を与え、結果的にセンサ個々での脈動特性のバラツキが大きくなる問題が挙げられる。

本発明は、従来技術における上記問題点を解決するためになされたものであり、逆流を伴う脈動流が発生した場合にも精度の良い流量計測を安価な構成で実現し得る熱式空気流量計を提供することを目的とする。

本発明は、内燃機関に吸入される吸入空気が流れる吸気管内に配置され、前記吸入空気の一部を取り込んで流すバイパス流路と、 前記バイパス流路内に配置された流量検出素子を有し、前記吸気管内を順流方向及び逆流方向に流れる前記吸入空気の流量に応じた出信号を出力するセンサと、 前記センサの出力信号を処理する信号処理部とを備えた熱式空気流量計において、 前記信号処理部は、 前記センサの出力信号に対してその交流成分の振幅増加処理を行った第1振幅増加信号と第2振幅増加信号をそれぞれ出力する応答補正部と、 前記第2振幅増加信号と予め設定された比較閾値とを比較し、前記比較閾値に対して負側になる前記第2振幅増加信号の負側部分に応じた負側の比較信号を出力する比較信号出力部と、 前記比較信号を平均化した平均信号を出力する平均化処理部と、 前記平均信号に対して予め設定された調整係数を乗算した係数倍信号を出力する係数倍処理部と、 前記係数倍信号により前記第1振幅増加信号を減少補正した値を、流量信号として出力する信号補正処理部とを備え、 前記比較閾値は、予め計測された前記センサの出力特性に基づいて設定される。

本発明によれば脈動補正に影響を与える比較閾値をセンサ個々にて精度よく設定でき、更には逆流特性を計測しない場合においても比較閾値を精度良く設定することが可能であるため、逆流特性計測用の設備投資が不要であること、また組み立て時の工数削減が可能である。

本発明の実施の形態1に係わる熱式空気流量計を吸入空気の流れ方向Xに平行な平面で切断した側断面図である。

本発明の実施の形態1に係わる熱式空気流量計の流量検出素子の平面図である。

図2のA−A線における流量検出素子の断面図である。

本発明の実施の形態1に係わる熱式空気流量計のセンサの回路図及び信号処理部のブロック図である。

本発明の実施の形態1に係るセンサの出力特性を示す図である。

逆流を伴う脈動流が発生した場合の、流量検出誤差の発生のメカニズムを説明する動作波形図である。

本発明の実施の形態1と異なる処理を行う場合の比較例について説明する動作波形図である。

図7の比較例における脈動誤差を示す説明図である。

本発明の実施の形態1に係る動作波形を示す図である。

本発明の実施の形態1における脈動誤差を示す説明図である。

本発明の実施の形態1における信号処理部の比較閾値設定について説明する図である。

本発明の実施の形態2において、ばらつきの上限値、中央値、下限値にて比較閾値を設定した際の脈動誤差を示す図である。

実施の形態1. 本実施の形態に係る熱式空気流量計1について図面を参照して説明する。 熱式空気流量計1は、内燃機関に吸入される吸入空気が流れる吸気管35に取り付けられる。 図1は、吸気管35に取り付けられた状態の熱式空気流量計1を、吸入空気の流れ方向Xに平行な平面で切断した側断面図である。 熱式空気流量計1の本体部26が、吸気管35に設けられた挿入孔36を通って吸気管35内に挿入された状態で、熱式空気流量計1のフランジ部30が吸気管35に固定されている。

熱式空気流量計1は、吸気管35内に配置され、吸気管35内を流れる吸入空気の一部を取り込んで流すバイパス流路29と、バイパス流路29内に配置された流量検出素子24を有するセンサ25と、センサ25の出力信号Vmを処理する信号処理部3と、を備えている。

本体部26には、熱式空気流量計1の吸気管35内への挿入方向に沿って、コネクタ部33、回路収納部27、バイパス流路29が形成されている。 回路収納部27内には、後述するセンサ25の差分電流出力回路18及び信号処理部3の処理回路が搭載された回路基板28が収納されている。 各回路の駆動電源22及び信号処理部3の流量信号Voutは、コネクタ部33を介して外部の電源及び制御装置に接続される。

<バイパス流路29> 吸気管35内の吸入空気は、内燃機関の運転中は、通常は、順流方向X1に流れる。 順流方向X1は、吸気管35の吸入口から内燃機関に向かって流れる方向である。 しかし、熱式空気流量計1よりも順流方向X1の下流側の吸気管35に設けられたスロットルバルブが開き、スロットルバルブの上下流の圧力差が減少すると、内燃機関側から熱式空気流量計1に圧力脈動が伝達する。 この圧力脈動により、熱式空気流量計1付近を流れる吸入吸気の流量が脈動する。 伝達する圧力脈動の振幅が増加すると、脈動流において逆流方向X2に流れる区間が生じる。 逆流方向X2は、内燃機関から吸気管35の吸入口に向かって流れる方向である。

このように吸気管35内の吸入空気は、順流方向X1だけでなく、脈動の影響により逆流方向X2にも流れる。 そして、バイパス流路29は、吸気管35内の吸入空気の順流方向X1又は逆流方向X2に応じた方向の空気を流すように構成されている。 すなわち、吸気管35内を吸入空気が順流方向X1に流れている場合は、バイパス流路29内を空気が順流方向X1に流れる。 一方、吸気管35内を吸入空気が逆流方向X2に流れている場合は、バイパス流路29内を空気が逆流方向X2に流れる。

本実施の形態では、バイパス流路29は、順流方向X1の上流側に向いて開口する流入口31と、流れ方向Xに直交する方向(本例では本体部26の挿入方向)に向いて開口する流出口32と、を備えている。 順流方向X1に流れる吸入空気の一部は、流入口31に流入した後、バイパス流路29内を順流方向X1に流れて、流量検出素子24を通過した後、流出口32から吸気管35内に流出する。 一方、逆流方向X2に流れる吸入空気の一部は、流出口32に流入した後、バイパス流路29内を逆流方向X2に流れて、流量検出素子24を通過した後、流入口31から吸気管35内に流出する。 流出口32は、流れ方向Xに直交する方向に開口しているので、順流方向X1及び逆流方向X2の吸入空気の流量が同じである条件において、流出口32に流入する逆流方向X2の吸入空気の流量は、流入口31に流入する順流方向X1の吸入空気の流量よりも少なくなる。 なお、本実施の形態では、バイパス流路29には、副流出口37が設けられているが、副流出口37が設けられなくともよい。

<センサ25> センサ25は、バイパス流路29内に配置された流量検出素子24を有する。 図2は、流量検出素子24の平面図である。 図3は、図2のA−A位置の流量検出素子24の断面図である。 センサ25は、流量検出素子24として、順流方向X1の上流側の発熱抵抗体である上流発熱抵抗体181と、上流発熱抵抗体181の順流方向X1の下流側に配置された発熱抵抗体である下流発熱抵抗体182と、を備えている。

空気が順流方向X1に流れる場合は、下流発熱抵抗体182に比べて上流発熱抵抗体181の温度が相対的に低くなる。 空気が逆流方向X2に流れる場合は、上流発熱抵抗体181に比べて下流発熱抵抗体182の温度が相対的に低くなる。 また、順流方向X1又は逆流方向X2の流量が増加するに従って、相対的な温度差が増加する。 発熱抵抗体181、182は、温度が低下するに従って、抵抗値が低くなる。 詳細は後述するが、相対的な温度差による抵抗差を利用することにより、流れ方向を検出することができると共に、流量の大きさを検出できる。

流量検出素子24は、シリコン基板241と、その表面に形成された絶縁膜242とからなり、絶縁膜242の内部に、上流発熱抵抗体181及び下流発熱抵抗体182が形成されている。 絶縁膜242における発熱抵抗体181、182の形成部分の裏面側のシリコン基板241は、エッチング等により除去されており、その結果、発熱抵抗体181、182の形成部分は、薄膜構造となっている。

図4は、センサ25の回路図及び信号処理部3のブロック図である。 センサ25は、上流発熱抵抗体181の両端電圧を予め設定された上流電圧値に保つために上流発熱抵抗体181に流れる上流電流Ihuと、下流発熱抵抗体182の両端電圧を予め設定された下流電圧値に保つために下流発熱抵抗体182に流れる下流電流Ihdと、の差に応じた出力信号Vmを生成する差分電流出力回路18を備えている。

本実施の形態では、差分電流出力回路18は、上流固定抵抗20、下流固定抵抗19、オペアンプ23、及び出力抵抗21を備えている。 オペアンプ23の出力端子と、オペアンプ23の−側入力端子とは、出力抵抗21を介して接続されている。 この接続により、オペアンプ23の−側入力端子と+側入力端子とに電位差が生じた場合に、電位差を無くすように、出力抵抗21に電流が流れる負帰還回路が構成されている。

下流固定抵抗19及び上流固定抵抗20は、この順で、電源22とグランドとの間に直列接続されている。 下流固定抵抗19と上流固定抵抗20との接続部が、オペアンプ23の+側入力端子に接続される。 よって、電源電圧Vcを下流固定抵抗19及び上流固定抵抗20により分圧した電圧が、オペアンプ23の+側入力端子に入力される。 電源電圧Vcを分圧した上流固定抵抗20の両端電圧が上流電圧値となり、電源電圧Vcを分圧した下流固定抵抗19の両端電圧が下流電圧値となる。 本実施の形態では、上流固定抵抗20及び下流固定抵抗19は、同じ抵抗値Rとされており、上流電圧値及び下流電圧値は、同じ電源電圧Vcの1/2となり、オペアンプ23の+側入力端子には、電源電圧Vcの1/2が入力される。

また、下流発熱抵抗体182及び上流発熱抵抗体181は、この順で、電源22とグランドとの間に直列接続されている。 下流発熱抵抗体182と上流発熱抵抗体181との接続部が、オペアンプ23の−側入力端子に接続される。 よって、電源電圧Vcを下流発熱抵抗体182及び上流発熱抵抗体181により分圧した電圧Vhが、オペアンプ23の−側入力端子に入力される。 本実施の形態では、下流発熱抵抗体182及び上流発熱抵抗体181は、同じ温度であれば、同じ抵抗値となる。

順流方向X1の流れの場合は、下流発熱抵抗体182に比べ上流発熱抵抗体181の温度が相対的に低下するため、下流発熱抵抗体182に比べ上流発熱抵抗体181の抵抗値が相対的に低下する。 その結果、オペアンプ23の−側入力端子の電圧Vhが、オペアンプ23の+側入力端子の電圧(Vc/2)よりも低くなる。 そのため、オペアンプ23の出力端子の電圧Vmが、−側入力端子の電圧Vhよりも高くなり、出力抵抗21を出力端子側から−側入力端子側に向かって電流Imが流れる。 また、上流発熱抵抗体181を流れる上流電流Ihuは、下流発熱抵抗体182を流れる下流電流Ihdよりも大きくなる。 出力抵抗21の電流Imは、式(1)のように表せられる。 順流方向X1の流量が増加するに従って、上流発熱抵抗体181の相対的な温度低下量及び抵抗値低下量が増加するため、電流Imが増加する。 Ihu>Ihd Im=Ihu−Ihd>0 ・・・(1)

一方、逆流方向X2の流れの場合は、上流発熱抵抗体181に比べ下流発熱抵抗体182の温度が相対的に低下するため、上流発熱抵抗体181に比べ下流発熱抵抗体182の抵抗値が相対的に低下する。 その結果、オペアンプ23の−側入力端子の電圧Vhが、オペアンプ23の+側入力端子の電圧(Vc/2)よりも高くなる。 そのため、オペアンプ23の出力端子の電圧Vmが、−側入力端子の電圧Vhよりも低くなり、出力抵抗21を−側入力端子側から出力端子側に向かって電流Imが流れる。 また、下流発熱抵抗体182を流れる下流電流Ihdは、上流発熱抵抗体181を流れる上流電流Ihuよりも大きくなる。 電流Imは、式(2)のように表せられる。 逆流方向X2の流量が増加するに従って、下流発熱抵抗体182の相対的な温度低下量及び抵抗値低下量が増加するため電流Imが減少する。 Ihu

Im=Ihu−Ihd<0 ・・・(2)

オペアンプ23の出力端子の電圧Vm、すなわち、センサ25の出力信号Vmは、式(3)のように表せられる。 ここで、Rmは、出力抵抗21の抵抗値である。 よって、図5に示すように、センサ25の出力信号Vmは、順流及び逆流のいずれにおいても、流量の増加に従って、単調増加する特性となる。 Vm=Vc/2+Rm×Im ・・・(3)

本実施の形態に係るセンサ25の出力特性を図5に示す。 順流方向X1の流量を正の値とし、逆流方向X2の流量を負の値としている。 すなわち、順流方向X1の流量の大きさが増加するに従って、流量が0(ゼロ)から増加し、逆流方向X2の流量の大きさが増加するに従って、流量が0から減少する。 センサ25の出力特性は、非線形の単調増加特性となっている。 また、センサ25の出力特性は、流量が0より大きい順流方向X1側と、流量が0より小さい逆流方向X2側とで異なる特性となっている。 具体的には、センサ25の出力特性は、順流方向X1側では、流量が0から増加するに従って、流量の増加に対する出力信号Vmの増加の傾きが減少する特性となっている。 センサ25の出力特性は、逆流方向X2側では、流量が0から減少するに従って、流量の減少に対する出力信号Vmの減少の傾きが減少する特性となっている。 また、バイパス流路29の流入口31及び流出口32の開口方向の差異等により、順流方向X1及び逆流方向X2の吸入空気の流量の大きさが同じである条件において、順流方向X1に比べて逆流方向X2の流量に対する出力感度が低くなっている。 すなわち、順流方向X1に比べて逆流方向X2の流量に対する出力信号Vmの傾きが小さくなっている。

流量の変化に対する発熱抵抗体181、182の温度変化には、発熱抵抗体の熱容量等による応答遅れがある。 そのため、真の流量に対して、センサ25の出力信号Vmには応答遅れがある。 脈動流が生じた場合に、脈動流の真の振幅に対して、センサ25の出力信号Vmに対応する脈動流の振幅が減少する。

<信号処理部3> 信号処理部3は、センサ25の出力信号Vmを処理して、流量信号Voutを出力する。信号処理部3は、図4に示すように、応答補正部7、比較信号出力部8、平均化処理部9、係数倍処理部10、及び信号補正処理部11を備えている。

信号処理部3の各処理部7〜11等は、処理回路により実現される。 本実施の形態では、信号処理部3は、デジタル処理回路により構成されている。 具体的には、信号処理部3は、DSP(Digital Signal Processor)等の演算処理装置、演算処理装置とデータのやり取りをする記憶装置、演算処理装置にセンサ25の出力信号Vmを入力するA/D変換器(アナログ−デジタル変換器)、外部に演算処理装置が処理した流量信号Voutを出力するD/A変換器(デジタル−アナログ変換器)等を備えている。 信号処理部3の各処理部7〜11等の各機能は、演算処理装置が、記憶装置に記憶されたプログラムを実行し、記憶装置、A/D変換器、D/A変換器等と協働することにより実現される。 なお、各処理部7〜11等が用いる比較閾値TH等の設定データは、プログラムの一部として、記憶装置に記憶されている。

逆流を伴う脈動流が発生した場合の、流量検出誤差の発生のメカニズムを説明する。 本実施の形態と異なる比較例に係る、逆流検出が不可能なセンサの場合、図6の右上のグラフに示すように、逆流発生域では、センサの出力信号は、無風時出力よりも高くなる。そのため、センサの出力信号をそのまま流量に換算すると、逆流発生時の波形が順流側に折り返されたような波形になる。 内燃機関の制御にとって重要になる、脈動1周期の検出平均流量は、真の平均流量よりも大きくなり、検出誤差(以下、脈動誤差と称す)が発生する。

本実施の形態のように逆流検出が可能なセンサ25を用いても、本実施の形態と異なる処理を行う比較例の場合は、図7に示すように、上述したセンサ25の非線形の出力特性、及び出力信号Vmの応答遅れにより、センサ25の出力信号Vmに基づいて検出した検出平均流量が、真の平均流量に対して正側にシフトする脈動誤差が発生する。

これは、上述したように、逆流発生域において、逆流流量の大きさが増加するに従って、流量に対する出力信号Vmの傾きが減少するため、逆流流量の大きさの増加に対する出力信号Vmの感度が低下する。 また、バイパス流路29の流入口31及び流出口32の開口方向の差異によって、逆流流量に対する出力信号Vmの感度が低くなる。 そのため、応答遅れがないと仮定した場合の出力信号Vmは、逆流流量の大きさの増加に対する感度が低くなり、応答遅れがある場合の出力信号Vmは、感度が高い順流流量側(正側)にシフトする。 よって、応答遅れがある出力信号Vmに基づいて検出した検出平均流量が、真の平均流量に対して正側にシフトする。

この比較例の場合は、図8に示すように、横軸を振幅比とし、縦軸を脈動誤差とすると、振幅比が1より大きい逆流発生域では、振幅比が1より大きくなるに従って、脈動誤差が正側に大きくなっている。 ここで、振幅比は、脈動流の平均流量Qaveに対する脈動流の振幅Qampの比(=Qamp/Qave)であり、脈動誤差は、真の平均流量に対する検出平均流量の比(=検出平均流量/真の平均流量−1)である。

そこで、本実施の形態では、以下で説明するように、逆流を伴う脈動流が発生した場合の検出平均流量の正側のシフト量を低減するために、流量信号Voutを減少させる減少補正を行うように構成されている。 すなわち、応答補正部7は、センサ25の出力信号Vmに対して交流成分の振幅増加処理を行った振幅増加信号を出力する。 比較信号出力部8は、振幅増加信号と予め設定された比較閾値THとを比較し、比較閾値THに対して負側になる振幅増加信号の負側部分に応じた負側の比較信号Vfcを出力する。 平均化処理部9は、比較信号Vfcを平均化した平均信号Vfcaを出力する。 係数倍処理部10は、平均信号Vfcaに対して予め設定された調整係数Kadを乗算した係数倍信号Vfkを出力する。 信号補正処理部11は、係数倍信号Vfkにより振幅増加信号を減少補正した値を、流量信号Voutとして出力する。

センサ25の応答遅れにより、出力信号Vmは、脈動流の交流成分の振幅が低下している。 応答補正部7により、出力信号Vmの交流成分の振幅を増加させ、センサ25の応答遅れの影響を低減することができる。 しかし、交流成分の振幅増加処理を行うだけでは、検出平均流量の正側のシフトを解消することはできない。 そこで、比較閾値THに対して負側になる振幅増加信号の負側部分に応じた負側の比較信号Vfcを出力することにより、逆流流量に対応する成分を抽出できる。 比較信号Vfcを平均化した平均信号Vfcaを出力することにより、逆流流量の平均値に対応する信号を出力できる。 平均信号Vfcaに対して調整係数Kadを乗算した係数倍信号Vfkを出力することにより、逆流流量によって生じた、検出平均流量の正側のシフト量に対応する信号を出力できる。 そして、係数倍信号Vfkにより振幅増加信号を減少補正した値を流量信号Voutとして出力することにより、逆流流量によって生じた、検出平均流量の正側のシフト量を低減することができる。

本実施の形態では、図4に示すように、応答補正部7は、センサ25の出力信号Vmに対してその交流成分の第1の振幅増加処理を行った第1振幅増加信号Vf1を出力すると共に、センサ25の出力信号Vmに対して交流成分の第2の振幅増加処理を行った第2振幅増加信号Vf2を出力するように構成されている。 そして、比較信号出力部8は、第2振幅増加信号Vf2と比較閾値THとを比較して、負側の比較信号Vfcを出力する。 信号補正処理部11は、係数倍信号Vfkにより第1振幅増加信号Vf1を減少補正した値を、流量信号Voutとして出力する。

この構成によれば、2つの振幅増加処理が行われるので、流量信号Voutのベース信号となる第1振幅増加信号Vf1を出力するために適した第1の振幅増加処理を行うことができると共に、シフト量の低減処理のために適した第2の振幅増加処理を行うことができる。 すなわち、応答補正及びシフト補正のそれぞれの目的に適した振幅増加処理を行うことができ、流量信号Voutの処理精度を向上させることができる。

図9に、本実施の形態に係る動作波形を示す。 図9(a)に示すような逆流を伴う脈動流が発生した場合、A/D変換されたセンサ25の出力信号Vmは、図9(b)に示すようになる。 センサ25の出力信号Vmは、応答遅れにより交流成分の振幅が減少している。

図9(c)に示す第1振幅増加信号Vf1は、応答補正部7の第1の振幅増加処理により、出力信号Vmよりも交流成分の振幅が増加されている。 また、図9(d)に示す第2振幅増加信号Vf2は、応答補正部7の第2の振幅増加処理により、出力信号Vmよりも交流成分の振幅が増加されている。 振幅増加処理には、センサ25の応答遅れ特性の逆特性となる応答進み処理等が用いられる。 応答進み処理の設定定数は、第1の振幅増加処理と第2の振幅増加処理とで、それぞれの目的に合わせて、異なる値に設定されている。

本実施の形態では、図9(d)(e)(f)、及び式(4)に示すように、比較信号出力部8は、第2振幅増加信号Vf2と比較閾値THとを比較し、比較閾値THに対して負側になる第2振幅増加信号Vf2の負側部分を抽出する。 そして、比較信号出力部8は、比較閾値THに対して負側になる第2振幅増加信号Vf2の負側部分がある場合は、第2振幅増加信号Vf2の負側部分の絶対値を、負側の比較信号Vfcとして出力する。 比較信号出力部8は、第2振幅増加信号Vf2の負側部分がない場合は、0を負側の比較信号Vfcとして出力する。 逆流流量が大きくなるに従って、負側の比較信号Vfcは大きくなる。 1)Vf2

Vfc=|Vf2−TH| ・・・(4) 2)Vf2≧THの場合 Vfc=0

図9(g)に示すように、平均化処理部9は、比較信号Vfcを平均化した平均信号Vfcaを出力する。 平均化処理は、移動平均処理、ローパスフィルタ処理等により行われる。 図9(h)、及び式(5)に示すように、係数倍処理部10は、平均信号Vfcaに対して調整係数Kadを乗算した値を、係数倍信号Vfkとして出力する。 Vfk=Kad×Vfc ・・・(5)

図9に示すように、信号補正処理部11は、第1振幅増加信号Vf1から正の値となる係数倍信号Vfkを減算した値を、流量信号Voutとして出力する。 流量信号Voutから算出される検出平均流量を、真の平均流量に近づけることができる。 また、逆流流量が大きくなるに従って係数倍信号Vfkが大きくなるため、逆流流量が大きくなるに従って増加する正側のシフト量を適切に低減することができる。 その結果、図10に示すように、振幅比が1より大きくなる逆流発生域において、脈動誤差を低減することができる。

しかしながら、上述した比較信号出力部8の比較閾値THついてはセンサ個々で逆流特性が異なることなるため、センサ個々で設定する比較閾値THも異なる。 よってセンサ個々で最適な比較閾値THを設定することが信号処理部3での補正精度を高めるに当たって重要である。

本実施の形態の比較閾値設定方法では、上流から下流に向かう流れを順流とし、下流から上流に向かう流れを逆流とした際に、センサの逆流側の流量特性を計測し、目標とする流量に相当する流量信号を比較閾値THとして設定する。 例として組み付けバラツキなどの影響により図11に示すようにセンサ1とセンサ2でセンサ単体の逆流特性は異なるが、センサ毎にて逆流特性を計測することにより目標とする比較閾値を精度良く求めることが可能である。

以上のように、本実施の形態によれば、内燃機関に吸入される吸入空気が流れる吸気管内に配置され、前記吸入空気の一部を取り込んで流すバイパス流路と、 前記バイパス流路内に配置された流量検出素子を有し、前記吸気管内を順流方向及び逆流方向に流れる前記吸入空気の流量に応じた出力信号を出力するセンサと、 前記センサの出力信号を処理する信号処理部とを備えた熱式空気流量計において、 前記信号処理部は、 前記センサの出力信号に対してその交流成分の振幅増加処理を行った第1振幅増加信号と第2振幅増加信号をそれぞれ出力する応答補正部と、 前記第2振幅増加信号と予め設定された比較閾値とを比較し、前記比較閾値に対して負側になる前記第2振幅増加信号の負側部分に応じた負側の比較信号を出力する比較信号出力部と、 前記比較信号を平均化した平均信号を出力する平均化処理部と、 前記平均信号に対して予め設定された調整係数を乗算した係数倍信号を出力する係数倍処理部と、 前記係数倍信号により前記第1振幅増加信号を減少補正した値を、流量信号として出力する信号補正処理部とを備え、 前記比較閾値は、予め計測された前記センサの逆流側の流量特性に基づき設定される。

実施の形態2. 実施の形態1においては、計測したセンサの逆流側の流量特性に基づき比較閾値THを算出したが、実施の形態2としては、計測した順流特性と調整値の値を用いて比較閾値を算出する例について説明する。 センサ組み立て時、順流特性の調整は所望の特性に合わせるように、以下式(6)に示すようにゲインGとオフセットDoffにてセンサの生出力Dmに対し補正が行われる。 ここでDmはセンサの生出力VmをA/D変換した値である。 Dout=G(Dm−Doff) ・・・(6) 実際の流量特性試験機で確認できるパラメーターは補正後の出力Dout、ゲインG、オフセットDoffであるため、比較閾値TH算出用に式(6)よりDmを求める。求めたDmを以下式(7)に代入することで、比較閾値THを算出することが可能となる。 TH=Dm(1)− K*(Dm(2)−Dm(1))/(Qm(2)−Qm(1)) ・・・ (7) ここでTHは比較閾値に相当するセンサの流量信号、K*は係数、Dm(1)、Dm(2)はセンサの順流側流量信号2点、Qm(1)、Qm(2)はDm(1)、Dm(2)それぞれに相当する流量値である。 式(7)を用いた場合でのセンサ個々での比較閾値THのばらつきを求め、ばらつきの上限値、中央値、下限値にて比較閾値を設定した際に逆流を伴う脈動条件1、2での脈動誤差を図12に示す。 比較閾値THが上限値、中央値、下限値全ての場合において脈動誤差は実使用環境にて実害無いレベルに収まっている。 また、実施の形態2では逆流を計測する必要がないため、逆流計測装置が不要であることや、組み立て時の工数を削減できる利点がある。 なお、比較閾値THの算出に用いたセンサの流量信号はA/D変換前の値を用いても可能なことは言うまでも無い。

実施の形態3. 実施の形態2で記述した式(7)にて、Dm(2)としてセンサの無風時の流量信号Dm(0)を用いた場合でも精度良く比較閾値THを求めることができる。 TH=Dm(0)− K*(Dm(1)−Dm(0))/Qm(1)・・・ (8) ここではTHは比較閾値に相当するセンサの流量信号、K*は係数、Dm(1) はセンサの順流側流量信号、Dm(0)は無風時におけるセンサの流量信号、Qm(1)はDm(1)に相当する流量値である。 実施の形態3にて比較閾値THを算出した場合においても、比較閾値THのばらつきは実施の形態2で述べた結果と同等レベルであり、脈動誤差に与える影響も実害の無いレベルである。 更には実施の形態2に比べ流量特性試験機にて流量を流しながら計測する点を1点削減することができ、組み立て時の工数を削減することが可能である。

なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。

1 熱式空気流量計、3 信号処理部、7 応答補正部、8 比較信号出力部、9 平均化処理部、10 係数倍処理部、11 信号補正処理部、18 差分電流出力回路、19 下流固定抵抗、20 上流固定抵抗、21 出力抵抗、22 駆動電源、23 オペアンプ、24 流量検出素子、25 センサ、26 本体部、27 回路収納部、28 回路基板、29 バイパス流路、30 フランジ部、31 流入口、32 流出口、33 コネクタ部、35 吸気管、181 上流発熱抵抗体、182 下流発熱抵抗体、241 シリコン基板、242 絶縁膜

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