【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、貯蔵タンク内の液体の質量を測定する技術に関し、更に詳しくは、宇宙船の燃料貯蔵タンク内の液体燃料の量を測定する方法および装置に関する。 【0002】 【従来の技術】多くの状況において、貯蔵タンク内に残っている液体の量を正確に測定できることは必要なことである。 好ましくない事態が液体の消耗とともに発生する場合には、残っている液体を正確に算出できることは特に重要である。 上述した全てが存在する場合の一例はガスジェットまたは反動推進エンジンを使用した人工衛星の姿勢制御システムにある。 ジェット用のガスまたは反動推進エンジン用の燃料は通常人工衛星上の容器またはタンク内に液体の形で貯蔵されている。 ガスまたは燃料が使用し切ると、多くの人工衛星は動作できなくなるか、または少なくともかなり機能が低下する。 更に、タンク内に液体を貯める重力がない場合には、他の力に応じて液体自身を分散する傾向がある。 ここで使用される燃料は一般に液体が厳密に燃料と考えられるか否かに関わらず容器の流体内容物を意味している。 【0003】特定の積載量の燃料が人工衛星用のステーション維持を行う時間の長さは正確に予測することはできない。 これは太陽風圧力および磁気変動のような環境条件および反動推進エンジンの性能に依存しているからである。 更に、各操縦の間に使用される燃料の正確な量はコントローラの正確な特性に依存しているが、コントローラの特性は時間および環境に従ってわずかに変動する。 従って、宇宙船に残っている燃料の正確な量は、適当な測定装置を使用しない場合には、時間が進むにつれてわからなくなってくる。 【0004】例えば、静止衛星の寿命の終わりにおいては、残りの燃料を使用して人工衛星を割り当てられた軌道位置から外し、代わりの衛星がその軌道位置に挿入される。 古い衛星が対象の領域から立ち退くのに十分な速度を有している場合には、更に速度をどの程度与えるかは重要ではない。 衛星がその軌道位置から脱出するときにタンク内に残っている燃料の量が衛星を古い衛星の廃棄場に送り出すに必要な値を超えている場合には、余分な燃料は軌道において別の有益な時間のために使用することができたであろう。 ステーションの維持用に必要な燃料の量は非常に少ないので、軌道位置からの脱出があまり早く行われると、ステーションを維持することができる時間の何ヵ月かが無駄になる。 一方、決定があまり遅く行われると、衛星をその軌道位置から取り除くのに不十分な燃料となり、その衛星が占有している軌道位置を取り替え用の衛星のために使用することができない。 実際に、製造される衛星を指定するカストマーは所定の寿命が達成されることを契約上要求している。 【0005】通信衛星の重量は、ステーション維持用に最大の積載量の燃料を搭載することができるように厳密に制御され、これにより最も長い有益な寿命を達成することができる。 48の有効な通信チャンネルを有するように偏波多重化された24個のトランスポンダを有する衛星の場合には、使用可能な追加燃料の値は有効寿命の月あたり数百万ドルである。 【0006】従って、残りの燃料の量を測定できることは非常に有益なことである。 しかしながら、重量のない状態においては燃料はタンク中を広がってしまうので測定は複雑になる。 燃料がタンク中に広がってボール状に形成されることを防止するために、タンクはその内面近くに1つ以上の薄い周囲を取り囲むバンドを有している。 これらのバンドは形成されやすい中心の泡を捕捉し、外壁およびバンドに対して残りの燃料を保持する。 【0007】周囲を取り囲むバンドに関連する軽量の開放型電磁伝送ラインを使用する技術が特許出願平成1年第322813号に記載されている。 この装置は宇宙船の燃料タンクの内部に電磁信号を供給することができることを必要としているが、燃料タンクの側部を通って電気的に絶縁された1つ以上の接続部を必要とするので好ましくない。 貯蔵タンク内の液体または燃料の量を測定する改良された方法および装置が要望されている。 【0008】 【発明の概要】貯蔵タンク内の液体または流体の質量を測定する方法が記載されている。 また、既知の量の熱エネルギの供給に応じた空の貯蔵タンクの温度上昇が測定され、質量に空のタンクの比熱を掛けた積およびそれに熱的に関連する事項を設定する。 宇宙船を使用した特定の実施例においては、この第1の校正は真空状態のチャンバ内において推進薬貯蔵タンク(または場合によってはその模造品)に対して実行され、宇宙船が発射する前に軌道上の環境をシミュレートする。 宇宙船の実施例においては、正確に測定された質量の燃料がタンクに搭載され、宇宙船は軌道に発射される。 それから、第2の校正が実施される。 この方法の特定の形態においては、第2の校正は軌道が達成され、遠隔測定が確立した後に実施される。 この方法の更に別の態様においては第2の校正は燃料の燃焼噴射後に実施される。 燃焼噴射によって消費される燃料の質量は小さなエラー内に入ることが知られている。 全ての実施例において、第2の校正は、既知の質量の液体を有するタンクに第1の校正において供給された量に等しいことが好ましい第2の既知の量の熱エネルギを供給することによって行われ、システム(タンクと液体)の質量にシステムの比熱を掛けた積が形成される。 これらの2つの校正は直線関係を設定するので、この直線関係を使用して、貯蔵タンク内の液体の量を測定することができる。 未知の量の液体の測定は、正確に測定された値の熱エネルギ(好ましくは前の校正で使用されたものに等しい量)をタンクおよび液体のシステムに供給し、温度上昇を測定することによって後で測定され、未知の全体の質量にシステムの未知の比熱を掛けた積が算出される。 積の値を前もって設定された直線関係と比較することによってタンクおよび液体のシステムの全体の質量を正確に算定することができる。 タンクの既知の質量を差し引くことにより、液体の未知の質量を得ることができる。 【0009】 【実施例の記載】図1は、特許出願平成1年第3228 12号に記載されているような宇宙船150の燃料システムの簡略ブロック図である。 図1において、燃料貯蔵タンク64、66、76および78はヒドラジン(N2 H4)燃料を積み込まれている。 この燃料はタンク30 から供給されるヘリウムによって加圧されている。 また、酸化剤タンク106もタンク30からのヘリウムで加圧されている。 タンク64、66、76および78からの燃料は一元推進薬エンジン(ジェットまたは反動推進エンジン)1ないし14および18ないし20のいずれかおよび二元推進薬エンジン15および16に制御されて供給されている。 このように、全てのエンジンは同じ燃料を使用している。 酸化剤はタンク106から二元推進薬エンジン15および16に制御されて供給されている。 エンジン1ないし20は宇宙船を移行軌道から最終軌道に移動させたり、および/または南北ステーション維持および姿勢制御のために使用される。 【0010】タンク30の圧力は圧力変換器34によって監視されている。 サービスバルブ32はタンク30にヘリウムを入れるための入口を構成している。 タンク3 0のヘリウムは低い地球軌道に宇宙船を押し上げる間、 燃料タンクまたは酸化剤タンクに流れることを二重の、 すなわち冗長の常閉火工技術バルブ36によって防止されている。 ブースタから解放されると、火工技術バルブ36は点火され、燃料タンクおよび酸化剤タンクの加圧が可能になる。 別のサービスバルブ38は取り付けられたバルブ36とともにシステムの試験を可能にしている。 常開火工技術バルブがヘリウムフィルタ42に接続されている。 タンク30からバルブ36および40およびフィルタ42を流れるヘリウムはそれから二重冗長圧力調整装置44および別のフィルタ48を通過する。 サービスバルブ46は別のアクセスを形成している。 フィルタ48からヘリウムは3つの通路に分割され、二重冗長逆止めバルブ50および52を通って燃料タンクへ向って流れるとともに、二重冗長常閉火工技術バルブ54 を含む通路を通って流れる。 逆止めバルブ50を通って流れるヘリウムは別の冗長逆止めバルブ56および58 を通ってそれぞれタンク64および66に流れる。 サービスバルブ60および88がタンク64に関連し、サービスバルブ62および90がタンク66に関連している。 同様に、逆止めバルブ52を通って流れるヘリウムは別の逆止めバルブ68、70を通ってそれぞれ燃料タンク76および78に流れる。 サービスバルブ74および92が燃料タンク76に関連し、サービスバルブ72 および94が燃料タンク78に関連している。 燃料は、 要求があると、タンク64、66、76および78からそれぞれオリフィス80、82、84および86を通って流れることができる。 オリフィス80および82は互いに接続され、圧力変換器108によって監視される。 同様に、オリフィス84および86は互いに接続され、 燃料の圧力は変換器112によって監視される。 タンク64および66から流れる燃料はフィルタ110を通って共通燃料ライン111に流れる。 タンク76および7 8からの燃料はフィルタ114を通って共通燃料ライン111に流れる。 燃料ライン111から燃料は全てのエンジンに用いられる。 【0011】火工技術バルブ54が点火されると、バルブは開き、ヘリウムガスがサービスバルブ55を通過し、常開火工技術バルブ96、フィルタ98、逆止めバルブ100および102およびサービスバルブ104を通過して流れ、酸化剤タンク106を加圧する。 圧力変換器116はタンク内の圧力を監視することを可能にし、サービスバルブ118は適宜充填または排出用の通路を形成している。 酸化剤に対する要求があると、酸化剤はタンク106からオリフィス120を通って出て行く。 別の常閉火工技術バルブ126は酸化剤の早すぎる流れを防止する。 バルブ126は、点火されると、酸化剤をサービスバルブ134、常開火工技術バルブ14 0、フィルタ144を通って二元推進薬遠地点エンジン15および16の制御バルブに流すことができる。 【0012】ブースタが宇宙船を低い地球軌道に乗せた後に常閉火工技術バルブ124が点火されると、燃料はタンク64、66、76および78のいずれからサービスバルブ132を通過し、常開火工技術バルブ138およびフィルタ142を通過してエンジン15および16 の燃料制御バルブに流すことができる。 また、燃料は共通燃料ライン111からフィルタ122および128を通ってラッチバルブ130および136に流れる。 ラッチバルブ130および136はエンジン1ないし14および18ないし20への燃料の流れを制御する。 各エンジンは個別に制御され得る。 【0013】図2は図1の燃料タンク66の外観を示す簡略構成図である。 図2に示すように、燃料タンク66 はほぼ球形であり、入りパイプ55がタンクの入口57 に接続され、この入口57は液体出口210の位置に対して直径方向で対向している。 破線212は球形のタンクの「赤道部分」を通過する面の縁部分を表している。 「赤道部分」は「両極」の間のタンク66の中央部分を取り巻いている。 極は加圧用の入口57と液体出口21 0の位置にある。 球形タンク66は支持手段によって宇宙船の本体10に支持されている。 【0014】本技術分野で周知であるように、燃料の温度を維持するために各燃料タンクにヒータが関連して設けられている。 図2において、全体で24個の帯状ヒータがあり、各々が12個の電気的帯状ヒータである2組222a−1および222a−1がタンク66に関連して設けられている。 図2にはヒータの全てが示されてなく、ヒータのいくつかはタンクの裏側に隠れている。 図1に示す他のタンクも同様にヒータを備えている。 図2 に示すように、ヒータは燃料タンク66の外面に取り付けられ、その長手方向の軸は極から極、すなわち入口5 7から出口210に伸びている大円ライン(図示せず) になぞって伸びている。 各組の12個のヒータは半球体に関連している。 特に、ヒータ220は上側の半球体に関連し、ヒータ222は下側の半球体に関連している。 図2に示すように、例えば上側半球体のヒータ220c および下側半球体のヒータ222dのような各帯状ヒータは幅がテーパ状に形成され、面52によって画定される赤道部分に近いほど広くなり、極に近いほど狭くなっている。 このような構成によってタンクの表面が一様に過熱される。 各帯状ヒータは電力をヒータに供給するための一組の電力導体(図2には示さず)に関連している。 【0015】本発明の一態様によれば、温度センサは以下に説明する理由のために貯蔵タンク66の外面上の赤道部分の位置および上側半球体および下側半球体の直径方向に対向する位置に設けられている。 図2においては、第1の温度測定用熱電対226がタンク66の赤道上に設けられ、他の熱電対228が赤道部分と上側半球体上の入口57との間のほぼ中間部分に設けられ、別の熱電対が球形タンク66の下側半球体の隠れた部分の熱電対228に直径方向で対向する位置に設けられている。 これらはタンクの温度を測定するための十分な情報を高い信頼性をもって与えることができる最小の数の温度測定装置に対する位置である。 【0016】本技術分野で周知であるように、宇宙船の燃料、酸化剤または他の液体貯蔵タンクは熱制御または絶縁ブランケットによって取り囲まれている。 その横断面部分が図2において230で示されている。 図3は人工衛星150の遠隔測定報告制御システムの簡略構成図である。 図3において、宇宙船の電源はバッテリ310 として示されている。 このバッテリ310は電圧をブロック312として示されているデータエンコーダおよび制御システムに供給する。 バッテリ電圧はブロック31 2においてサンプルされて符号化され、アンテナ314 を介して地上局に監視のために送信される。 バッテリ3 10は制御可能なスイッチまたはリレー316を介して直列接続された抵抗ヒータ320および電流感知装置3 22の両端に接続されている。 電流感知装置322はブロック312に接続され、電流を表す信号をブロック3 12に符号化のため供給している。 電流感知装置322 は本技術分野で周知の簡単な分路である。 抵抗ヒータ3 20は図2に示す全てのヒータ220および222を相互接続したものを表している。 このような相互接続はヒータに供給される電力(エネルギの時間率)がたった1 回の電圧測定と1回の電流測定によって決定されるという利点がある。 本技術分野に専門知識を有する者はヒータ220a−1および222a−1が個別にスイッチされて回路に入ったり、外ずされたりしてヒータの全体の電力量を階段状に変更し得ることを理解するであろう。 また、図2の熱電対222、228の1つまたは全てに対応する熱電対または他の温度測定装置328がデータ符号化および制御ブロック312に接続されて示されている。 また、図3のデータ符号化および制御ブロック3 12はスイッチ316(および図示しない他のスイッチ)を開閉したり、電圧、電流および温度測定値を符号化して送信するための遠隔指令を受信する。 温度を測定するために使用されるいくつかの熱電対は通常平行に設けられるものでなく、個別に測定用に接続されることに注意されたい。 熱電対から読み取られた温度値は平均化されることが都合がよい。 以下、平均化温度が使用される。 【0017】以上説明したように、宇宙船の構造は通常対象外であるヒータ電流を測定する電流計および液体貯蔵タンク上の温度センサの位置を除いてほぼ従来のものである。 本発明の一態様によれば、タンク内の液体(燃料または酸化剤、または更に一般的には液体または流体)の量を測定する方法におけるステップとして電気エネルギ、すなわち電力がタンクのヒータに供給される。 この方法は一般にタンクに熱エネルギを供給し、熱エネルギに応じた温度上昇を測定するステップを有している。 これらのステップは貯蔵タンク内の液体の異なる量に対する校正のために行われる。 有益な方法は2つの校正測定値のみを使用しており、第1のものはタンク内の液体の量が0の場合であり、第2のものはタンク内の液体の量が知られている場合である。 宇宙船の燃料タンクの典型的な支持体は大きな熱伝導性を有していない。 熱の伝導が測定値に影響を与える程度において、測定毎に変化しないことにより影響は補償される。 絶縁ブランケットはタンクの表面からの過度の熱損失を防止している。 【0018】簡単化のため、本発明による方法の説明は宇宙船が1個の貯蔵タンクのみを有しているように説明する。 タンクおよびその支持装置、熱装置、液体推進薬およびヘリウムアリッジバブルを有する宇宙船のタンクシステムはシステムの構成部材の各々の加重比率に対応する比熱Cpを有している。 タンクおよび熱装置の質量は時間とともに不変であり、ヘリウムの質量は微々たるものであるので、タンクシステムの比熱は推進薬の質量に直接関係している。 【0019】液体の質量を測定する方法は一般にタンクに即知の量の熱を加えた結果発生する温度上昇を測定することによって推進薬の質量およびタンクシステムの対応するCpを決定する。 この方法の基本は次式に示すエネルギ式である。 QΔt=mCpΔT (1) ここにおいて、 Q=熱供給率から周囲への熱損失率を引いた値(J/ s)、 Δt=時間の変化(s)、 m=タンクシステムの質量(kg)、 Cp=タンクシステムの比熱(J/kg−゜K)、 ΔT=温度の変化(゜K)。 タンクシステムの比熱はタンク内の液体の量に依存している。 【0020】 mCp)system=m 1 C p1 +m 2 C p2 +m 3 C p3 +. . . (2) ここにおいて、下付き文字はシステムの構成要素を示している。 タンクシステムの場合、式(2)は次のようになる。 mCp)system=mCp)tank+mCp)He+mCp)propellant (3) この関係はエネルギの式に置き換えて、熱入力、時間、 温度変化、タンクの質量、ヘリウムアリッジバブル、およびタンクシステムの校正された比熱の関数として推進薬の質量を得ることができる。 【0021】 QΔt=mCp)systemΔT (4) ここにおいて、mCp)systemはタンク内の液体の量に依存している。 式(4)は次のように変形することができる。 【0022】 【数2】 【0023】式5は、所与の量のエネルギQΔtを供給した場合に、温度上昇ΔTが分母mCp)systemの大きさに依存していることを示している。 すなわち、ΔTはタンクシステムの質量mおよびその比熱Cp)systemに依存していることを示している。 これは、供給されるエネルギQΔtが勾配mCp)systemによって温度上昇Δ Tに関連していることを示している。 従って、供給エネルギに応じた温度上昇ΔTのプロットは直線になり、ラインの勾配はタンクの液体の量に依存する。 【0024】一般に、液体の未知の質量m 3は未知の量の液体および校正測定値を有するタンク上で行った測定値によって表され得る。 式(4)は次式のように変形することができる。 【0025】 【数3】 【0026】ここにおいて、下付き文字1は空の貯蔵タンクに対する第1の校正測定値を示し、m 1は貯蔵タンクとそれに関連する熱装置を加えたものの質量に等しい。 積(m 1 C p1 )はエネルギQΔtおよび温度上昇Δ Tを測定することによって直接測定されることに注意することは重要なことである。 同じ一般的形式の式は既知の質量の液体を有する第2の校正値のために使用され、 ここで比熱Cp2はタンクおよび液体のシステムの比熱に対する質量加重貢献度を反映している。 【0027】 【数4】 【0028】ここにおいて、m 2 Cpfはタンクに燃料を加えたものの質量と第2の校正におけるタンクに燃料を加えたものの比熱を掛けたものであり、下付き文字fは燃料を表し、下付き文字tは全体を意味している。 同様な式はタンク内に未知の量の液体を有している第3の測定値を表している。 【0029】 【数5】 【0030】式(7)および(8)から式(6)を引き、タンクの質量m 1から燃料の質量m 2およびm 3を分離すると次の関係が得られる。 【0031】 【数6】 【0032】式(9)はCpfについて解くと、次のようになる。 【0033】 【数7】 【0034】式(10)のCpfの代わりに式(11)を使用すると、次のようになる。 【0035】 【数8】 【0036】最後に、式(6)、(7)および(8)を式(12)に代入すると、次に示す所望の一般的結果が得られる。 【0037】 【数9】 【0038】 m 3は測定値からのみ決定することができる。 試験においては、12インチの直径の球状のステンレススチールのタンクがほぼ図2に示すようにヒータ、熱電対およびブランケットを備えていたが、温度分布を確めるために全体で28個の熱電対が使用された。 全体の質量が4.15kgであるタンクが100ミリトル以下に真空にされた真空チャンバ内に熱分離状態でおかれた。 チャンバ内の温度は安定すると、すなわちこの試験においては約20゜Cになると、0.87ワットの電力に対応するものであるが、420オームのヒータ抵抗に直流60ボルトを印加されることによりヒータはオン状態になる。 温度に伴うヒータ抵抗の変化によって若干不正確な供給電力が測定されることがわかり、電流計が電流を測定するために使用された。 供給電力は供給電圧とヒータ電流を掛けた積であり、供給エネルギは供給電力に供給時間を掛けたものである。 【0039】タンクの温度が軌道にのった場合の期待される最大タンク温度である30゜Cに達するまで、熱電対の温度は一定間隔の時間で記録される。 この処理はタンクがからの場合およびタンク内の水が満杯の状態から満杯の20%までの状態における異なる水位において6 回繰り返される。 タンクに入れられた水の質量は毎回記録された。 各テストの間、(a)システムの全質量、 (b)熱入力、および(c)時間当りの温度変化の増分が測定された。 未知のパラメータはシステムの熱損失および比熱であった。 図4はいくつかのこのような校正試験の結果を示している。 図4において曲線400はタンクが空の状態を示し、曲線482はタンクが満杯の状態を示し、曲線420、440、460および480はそれぞれ満杯の20%、40%、60%および80%を示している。 図4の各曲線の勾配によって示されるシステムの質量と比熱の積はタンク内の液体の質量を含むシステムの質量に依存していることに注意されたい。 図5に示すようにこの積を質量に対して示すと、この曲線は次式によって示されるラインになる。 【0040】 m=2.1808(10 -4 )mCp+3.7388 (14) ここにおいて、定数は上述した12インチのタンクシステムに対するものである。 タンク内に未知の量の液体を有するシステムが校正されると、熱エネルギに応じた温度上昇の測定値から得られるデータによって未知の液体の質量が計算される。 一例として、未知の量の水で満たされた上述した12インチのタンクシステムを加熱した。 この試験で収集されたデータから得られた熱エネルギQΔt対ΔTの曲線が図6に示されている。 勾配mC pは測定データから容易に1.8845(104)J/゜Cであると設定される。 この値を変数「mCp」として式(14)に代入すると、システムの質量「m」が7. 849kgとして得られる。 4.15kgのタンクの質量を差し引くと、水の質量は3.7kgと計算される。 この値は水の実際の質量の1g以内であることがわかり、この特定の試験における精度は±0.05%であった。 【0041】上述した試験において温度を測定するためにタンクの周りに間隔をあけて設けられた28個の熱電対が使用されたが、軌道上の人工衛星の状態は地上のものと異なっているので、より少ない熱電対を使用する必要がある。 地上の試験では、液体が重力によってタンクの底にたまるので、多数の熱電対が使用されている。 宇宙船システムの場合には、推進薬のような測定される液体自身がタンク中に分布し、タンクの外部に付着するので、より少ない熱電対が必要である。 この結果、直径方向に設けられた熱電対の対および赤道に設けられた熱電対の上述した分布によって測定される必要なデータ点の数を低減し、タンクを横切る加熱を等しくしている。 【0042】図1に関連して説明したように、宇宙船1 50は対に接続された4個の燃料タンクを有している。 一方のタンクの温度を変えることなく、他方のタンクの温度を変えると、燃料が他方のタンクから一方のタンクに流れる。 この結果、試験されるタンクを分離するために試験の間どちらかのバルブを閉じなければならないか、または温度差によって燃料の移動が生じることを防止するために相互接続された全てのタンクは同時に測定されなければならない。 相互接続された多数の推進薬タンクがある場合、良好な精度を得るには全てのタンクを同時に試験することが必要であると考えられる。 これは全てのタンクが異なる速度で低減し、それぞれ異なる量の燃料を有しているからである。 【0043】タンクは最初同じ温度条件になく、均一に加熱されていない。 図7は貯蔵タンク上の2つの温度センサの温度対時間を示す図であり、2つの温度センサのうちの一方は液体が満たされた領域上に設けられ、他方はアリッジバブルの上に設けられている。 図7において、曲線710は時刻toからヒータに一定の電力(エネルギの一定供給速度)を供給した場合においてアリッジの液体部分の上に位置する部分の宇宙船の推進薬タンクの外部に取り付けられた熱電対によって感知された温度を示している。 曲線712はアリッジのガス部分の上に位置する部分のタンクの外部に取り付けられた熱電対によって感知された温度を示している。 宇宙船の実施例の場合には、ガス状部分はヘリウムバブルである。 図7 の曲線710によって示されるように、液体がゆっくりと加熱され、ある時間の後には、時間に対する温度の上昇はほぼ直線になっている。 曲線712によって示されるように、ガス状部分はより迅速に加熱されるが、ある時間の後温度の上昇速度は低減し、液体の場合のものにほぼ等しくなる。 図7に示されるように、曲線712の上昇速度、すなわち勾配は時刻t 2近くにおいて曲線7 10の勾配にほぼ等しくなる。 勾配の同等性は各時間増分毎に各温度センサの温度増分を測定し、3個のセンサ(タンクあたり3個のセンサがある場合)に対する標準偏差σを測定することによって確認される。 勾配は、σ が3つの温度増分の平均値の1/10になったとき、等しいと見なされる。 期間to−t 2は、タンクおよびその内容物が安定した温度状態にない「変移」領域と考えられる。 温度測定は時刻toから開始して一定の時間間隔で行われ、変移領域を決定することを可能にするが、温度の測定値は本発明の方法によってCpおよびmCpを決定に使用するために時刻t 2まで平均化されない。 【0044】上述した方法の特定の用途は6年目の寿命において測定すべき燃料の量を有し、推進薬の使用に基づく寿命の終わりを±3カ月の精度で算定しなければならない宇宙船に関連している。 ヒドラジンの初期積載量は2536.0 lbmと予想され、推進薬の使用予測速度は4.16 lbm/月である。 ±3カ月の制限は推進薬の量が2536 lbmから±12.48 lb m以内、すなわち±0.49%の精度内で測定されることを必要とする。 上述した試験の精度は非常に高いものであったが、予想される軌道上の遠隔測定精度は±3. 56%、すなわち±2.98カ月である。 技術を工夫し、上述した測定方法を使用して必要な精度を達成している。 【0045】本発明の一態様によれば、タンクシステムは地上において真空チャンバの空の状態において校正される。 それから、タンクは既知の質量の推進薬を充填され、宇宙船は発進する。 推進薬は遠地点燃焼噴射のために所定のスケジュールに従って使用され、第2の校正が実施される。 第2の校正は遠地点燃焼噴射前には実施できない。 これは遠隔測定がその時点前では有効でないからである。 推進薬は更に例えば6年のような所定の期間の間宇宙基地の維持および姿勢制御のためにスケジュールに従って使用される。 使用スケジュールに基づくこの時点における推進薬の残りの質量の推定値は十分正確であり、質量消費についての実際の前もった知識は必要ないように考えられている。 推進薬の使用スケジュールに従って、推進薬の残りの量がその時点において348. 87 lbmと推定される。 本発明による測定が軌道上の宇宙船の6年点において実施される。 そして、この技術の必要な精度は348.87 lbmのうちの±1 2.48 lbmに低減され、すなわちおおよそ±3. 58%に低減され、これは容易に実施可能なものである。 【0046】本発明の他の実施例は本技術分野に専門知識を有する者に明らかであろう。 例えば、この方法はタンクを完全に満たしているヘリウムのような流体の質量を測定するのにも適用できる。 宇宙船推進システムにおいては、一元推進薬のみを使用するシステムまたは二元推進薬システムのみを使用するシステムが使用されるが、ここに記載した方法および装置は二元推進薬のシステムにおける燃料および酸化剤の量を別々に測定したり、または一元推進薬システムの推進薬の量を測定するために使用され得る。 【図面の簡単な説明】 【図1】従来の宇宙船の燃料システムの簡略ブロック図である。 【図2】図1のシステムの燃料タンクを詳細に示す図であり、本発明によるヒータおよび熱感知装置が示されている。 【図3】本発明による貯蔵タンクに関連するヒータおよび熱電対の電気的接続を示す簡略構成図である。 【図4】アリッジの種々の状態における液体貯蔵タンクの温度上昇対熱エネルギを示す図であり、質量×比熱(mCp)を示している。 【図5】全体の質量に対する図4の曲線mCpの勾配を示す図である。 【図6】特定の試験に対する図4に類似した曲線を示す図である。 【図7】連続加熱状態における液体およびガス状アリッジ部分のタンク上のセンサによって測定された温度対時間の曲線を示す図である。 【符号の説明】 1−14、18−20 一元推進薬エンジン 15、16 二元推進薬エンジン 64、66、76、78 燃料貯蔵タンク 220a−220f、222a−222f ヒータ 226、228 温度測定熱電対 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 キース・デビース アメリカ合衆国、ニユージヤージ州、ロビ ンスビル、アビー・コート、1番 (72)発明者 ジヨセフ・アレキサンダー・プルコウスキ アメリカ合衆国、ニユージヤージ州、リン ゴーズ、ルート31・ノース、533番 |