Volume measuring device and method

申请号 JP2006511309 申请日 2005-03-23 公开(公告)号 JP4911460B2 公开(公告)日 2012-04-04
申请人 国立大学法人京都大学; 株式会社前川製作所; 独立行政法人産業技術総合研究所; 发明人 暁洋 中納; 智輝 山下; 貴久 西津; 康雄 鳥潟;
摘要
权利要求
  • 被測定物が収容される容器に一端が連通された音響管と、
    該音響管の他端に連通された他の容器と、
    該他の容器に隣接配置されている密閉空間を規定すると共に、該密閉空間と前記他の容器の内部空間とを仕切る仕切り板を含んでなる仕切り室と、
    前記密閉空間内に配置されると共に、前記仕切り板に対して音波出力面が 前記密閉空間内に含まれる空間を隔てて対向配置されている動電型スピーカと、
    前記音波出力面から前記仕切り板を介して前記他の容器内に出力される音波に係る音響信号に基づいて前記被測定物の体積を求める処理手段と を備えたことを特徴とする体積計測装置。
  • 被測定物が収容される容器と、
    該容器に一端が連通されると共に他端が周囲環境に開放された音響管と、
    前記容器に隣接配置されている密閉空間を規定すると共に、該密閉空間と前記容器の内部空間とを仕切る仕切り板を含んでなる仕切り室と、
    前記密閉空間内に配置されると共に、前記仕切り板に対して音波出力面が 前記密閉空間内に含まれる空間を隔てて対向配置されている動電型スピーカと、
    前記音波出力面から前記仕切り板を介して前記容器内に出力される音波に係る音響信号に基づいて前記被測定物の体積を求める処理手段と を備えたことを特徴とする体積計測装置。
  • 被測定物が収容される容器と、
    該容器に一端が夫々連通されると共に他端が周囲環境に夫々開放された複数の音響管と、
    該複数の音響管のうちの一つを介して前記被測定物を前記容器内に搬入すると共に、前記複数の音響管のうちの他の一つを介して前記被測定物を前記容器外に搬出する搬送手段と、
    前記容器に隣接配置されている密閉空間を規定すると共に、該密閉空間と前記容器の内部空間とを仕切る仕切り板を含んでなる仕切り室と、
    前記密閉空間内に配置されると共に、前記仕切り板に対して音波出力面が 前記密閉空間内に含まれる空間を隔てて対向配置されている動電型スピーカと、
    前記音波出力面から前記仕切り板を介して前記容器内に出力される音波に係る音響信号に基づいて前記被測定物の体積を求める処理手段と を備えたことを特徴とする体積計測装置。
  • 前記動電型スピーカを駆動する定電流駆動型の増幅器を更に備えており、
    前記処理手段は、
    前記動電型スピーカに係るボイスコイルの電圧を測定する測定手段と、
    該測定された電圧に基づいて、前記被測定物の体積を演算する演算手段と を含むことを特徴とする 請求項1から3のいずれか一項に記載の体積計測装置。
  • 前記演算手段は、前記測定された電圧に基づいて、前記音響信号に係る周波数解析を行う第1演算手段と、該行なわれた周波数解析の結果に基づいて、前記被測定物の体積を演算する第2演算手段とを含むことを特徴とする 請求項4に記載の体積計測装置。
  • 前記第1演算手段は、前記測定された電圧のスペクトルでピークを与える周波数として、前記音響信号に係る共鳴周波数を決定し、
    前記第2演算手段は、前記決定された共鳴周波数に基づいて前記体積を演算することを特徴とする 請求項5に記載の体積計測装置。
  • 前記容器内には、前記被測定物が極低温状態で収容されており、
    前記増幅器は、最大エントロピー(MEM)法を行うのに十分な時間だけ前記動電型スピーカを定電流駆動し、
    前記第1演算手段は、前記最大エントロピー法により前記共鳴周波数を決定することを特徴とする 請求項6に記載の体積計測装置。
  • 前記音波を受信するマイクロフォンを更に備えており、
    前記処理手段は、前記マイクロフォンにより受信された音波に係る前記音響信号に基づいて前記被測定物の体積を求めることを 特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の体積計測装置。
  • 前記仕切り板は、前記音波出力面から出力される音波を、前記他の容器内に効率良く伝搬するように、前記音波の周波数特性に応じた厚さ及び弾性を有する板として構成されることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の体積計測装置。
  • 前記被測定物は液体であり、無重力又は微小重力状態において前記液体を気相から分離させる分離手段を更に備えたことを特徴とする 請求項1から9のいずれか一項に記載の体積計測装置。
  • 被測定物が収容される容器に一端が連通された音響管と、該音響管の他端に連通された他の容器と、該他の容器に隣接配置されている密閉空間を規定すると共に、該密閉空間と前記他の容器の内部空間とを仕切る仕切り板を含んでなる仕切り室と、前記密閉空間内に配置されると共に、前記仕切り板に対して音波出力面が 前記密閉空間内に含まれる空間を隔てて対向配置されている動電型スピーカとを備えた体積計測装置における体積計測方法であって、
    前記音波出力面から前記仕切り板を介して前記他の容器内に音波を出力する出力工程と、
    該出力された音波に係る音響信号に基づいて前記被測定物の体積を求める処理工程と を備えたことを特徴とする体積計測方法。
  • 被測定物が収容される容器と、該容器に一端が連通されると共に他端が周囲環境に開放された音響管と、前記容器に隣接配置されている密閉空間を規定すると共に、該密閉空間と前記容器の内部空間とを仕切る仕切り板を含んでなる仕切り室と、前記密閉空間内に配置されると共に、前記仕切り板に対して音波出力面が 前記密閉空間内に含まれる空間を隔て対向配置されている動電型スピーカとを備えた体積計測装置における体積計測方法であって、
    前記音波出力面から前記仕切り板を介して前記容器内に音波を出力する出力工程と、
    該出力された音波に係る音響信号に基づいて前記被測定物の体積を求める処理工程と を備えたことを特徴とする体積計測方法。
  • 被測定物が収容される容器と、該容器に一端が夫々連通されると共に他端が周囲環境に夫々開放された複数の音響管と、該複数の音響管のうちの一つを介して前記被測定物を前記容器内に搬入すると共に、前記複数の音響管のうちの他の一つを介して前記被測定物を前記容器外に搬出する搬送手段と、前記容器に隣接配置されている密閉空間を規定すると共に、該密閉空間と前記容器の内部空間とを仕切る仕切り板を含んでなる仕切り室と、前記密閉空間内に配置されると共に、前記仕切り板に対して音波出力面が 前記密閉空間内に含まれる空間を隔てて対向配置されている動電型スピーカとを備えた体積計測装置における体積計測方法であって、
    前記搬送手段により前記被測定物が前記容器内に搬入された際に、前記音波出力面から前記仕切り板を介して前記容器内に音波を出力する出力工程と、
    該出力された音波に係る音響信号に基づいて前記被測定物の体積を求める処理工程と を備えたことを特徴とする体積計測方法。
  • 说明书全文

    本発明は、例えば、宇宙環境技術や製造ラインにおける密閉系(閉鎖系)容器内又は開放系容器内の物体体積を計測する、体積計測装置及び方法に関する。 より詳細には、例えば、無重下や微小重力下、人工衛星の軌道上のような真空状態の環境下、或いは製品の製造工場ラインのような騒音下で、気体を除く物体の体積計測に応用可能な、体積計測装置及び方法の技術分野に関する。

    この種の体積計測装置及び方法として、ヘルムホルツ型の計測がある。 このうち「開放系」容器内の体積計測については、例えば特許文献1及び2に開示されている。 これらの技術によれば、開放された音響管を容器に設けて、スピーカ等から音波を容器内へ出力して、そのヘルムホルツ共鳴音を、マイクロフォンで収集することで、その共鳴周波数から液体の体積を求めている。

    他方、ヘルムホルツ型の計測のうち「閉鎖系」容器内の体積計測については、例えば特許文献3から5に開示されている。 これらの技術では、閉鎖された二つの容器を音響管で連結して、スピーカ等から音波を容器内へ出力して、そのヘルムホルツ共鳴音を、マイクロフォンで収集することで、その共鳴周波数から液体の体積を求めている。

    また、特許文献6には、超電導スピーカを用いたタンク内液量計測装置が開示されている。

    特開平08−327429号公報

    特開平07−083730号公報

    特開2003−004503号公報

    特開平06−201433号公報

    特開平06−201434号公報

    特開2002−291093号公報

    しかしながら、上述の如きスピーカから容器内に出力した音響信号の応答を、容器内に設置されたマイクロフォンで検出するような計測方法では、例えば、人工衛星の軌道上のような無重力状態の場合、容器内を浮遊する液体などの被測定物が付着することによるマイクロフォンの損傷を防止する策を講じる必要性が生じるという問題点がある。 或いは、スピーカ自体に被測定物が付着することにより測定不能や測定困難となる問題点も生じ得る。

    また、被測定物が、例えば、可燃性或いは爆発性の物質の場合には、スピーカからの発熱を抑制するために音量を可能な限り低くすることが望ましいが、このことにより音響信号以外の外部騒音によりマイクロフォンのS/N(信号/ノイズ)比が低下し、計測精度が低下してしまうという技術的問題点もある。

    他方、製品の製造工場ラインのような騒音下で、液体等の被測定物のヘルムホルツ型の計測を行う場合には、やはり外部騒音によりマイクロフォンのS/N比が低下し、計測精度が低下してしまうという技術的問題点もある。

    本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、閉鎖系又は開放系容器内において、例えばスピーカ又はマイクロフォンなどの計測用素子が液体などの被測定物に接触することを避けることが可能である、体積計測装置及び方法を提供することを課題とする。

    本発明は更に、閉鎖系又は開放系容器内において、例えばマイクロフォンなどの計測用素子を不要としつつ体積測定が可能である体積計測装置及び方法を提供することを他の課題とする。

    本発明の第1の体積計測装置は上記課題を解決するために、被測定物が収容される容器に一端が連通された音響管と、該音響管の他端に連通された他の容器と、該他の容器に隣接配置されている密閉空間を規定すると共に、該密閉空間と前記他の容器の内部空間とを仕切る仕切り板を含んでなる仕切り室と、前記密閉空間内に配置されると共に、前記仕切り板に対して音波出力面が前記密閉空間内に含まれる空間を隔てて対向配置されている動電型スピーカと、前記音波出力面から前記仕切り板を介して前記他の容器内に出力される音波に係る音響信号に基づいて前記被測定物の体積を求める処理手段とを備える。

    本発明の第1の体積計測装置によれば、例えばネックチューブである音響管は、例えば液体燃料等の被測定物が収容される容器に一端が連通されており、他の容器は、音響管の他端に連通されている。 即ち、閉鎖系における二つの容器が音響管で繋がれている構成が構築されるので、ヘルムホルツ型の計測が可能となる。 ここで特に、仕切り室は、他の容器に隣接配置されている密閉空間を規定しており、この密閉空間と他の容器の内部空間とは、仕切り板によって仕切られている。 動電型スピーカは、この密閉空間内に配置される。 そして、通常は動電型スピーカのコーンの前面である音波出力面が、仕切り板に対して対向配置されている。

    計測時には、動電型スピーカが、例えば所定周波数帯域の音をスイープするなど、その音波出力面から音波を出力すると、この音波は、仕切り板を介して他の容器の内部空間内へと出力される。 処理手段は、この音波に係る音響信号に基づいて、例えば閉鎖系のヘルムホルツ型の計測によって、被測定物の体積を求める。 この際、これらの被測定物が収容された容器、音響管及び他の容器は、「密閉系容器」とされており、即ち閉鎖系であるので、例えば宇宙空間等の高真空雰囲気においても、計測が可能となる。 しかも、動電型スピーカは、例えば液体、流体、粘性体等である被測定物に接触することはない。 これにより、動電型スピーカが被測定物によって損傷或いは故障したり、腐蝕したり、短寿命化したり、計測不能な状態になったりすることが効果的に防止される。 他方で、被測定物が動電型スピーカによって汚染等されることも効果的に防止される。 更に、計測中に動電型スピーカから発生する熱が被測定物に直接伝達することもないので、仕切り板の密閉空間側にて適当な断熱手段を設けことで、或いは、例えば短時間のみ音波を出力する等により発生熱量を抑制することで、動電型スピーカによって被測定物を殆ど加熱しない構成を容易に構築できる。 これは、例えば被測定物に関して加熱により爆発等の危険性がある場合や加熱による化学変化が懸念される場合などに、大変有利となる。

    以上の結果、第1の体積計測装置によれば、例えばスピーカ又はマイクロフォンなどの計測用素子が液体などの被測定物の一部又は全部に接触することを避けることが可能である。 これにより、例えば人工衛星の軌道上に置かれた容器内の被測定物の付着防止構造を不要としつつ、該被測定物の計測用素子への付着による計測不能状態の発生を効果的に排除できる。 更に、計測用の音響信号以外の外部騒音によるS/N比の低下を抑制し得る。 これにより、外部騒音に影響を受け難く、高精度での体積計測が可能となる。

    このように第1の体積計測装置によれば、例えば、宇宙空間、特に地球周回や惑星周回における液体酸素、液体素、液化メタン(液化天然ガス)等の極低温推進剤の軌道状における貯蔵・移送の際に重要となる、無重力或いは微小重力下における液量計測が可能となる。 これは、宇宙空間において燃料を、運搬・貯蔵・再補給したり、軌道間宇宙輸送機OTV(Orbit Transfer Vehicle)に供給するのに大いに役立つ。

    特に、無重力或いは微小重力下における液量計測では、ヘルムホルツ共鳴を利用した液量計測方法、即ちヘルムホルツ型の計測が好適である。 ヘルムホルツ型の計測は、周波数の体積依存性を利用しての音波による液体、固体、流体、粘性体等の体積計測方法の一つであり、被測定物の形状に左右されないという特色を有するためである。 但し、ヘルムホルツ共鳴現象は、一般に液量が少ない時の液量変化に対する周波数の変化量は小さい。

    本発明の第2の体積計測装置は上記課題を解決するために、被測定物が収容される容器と、該容器に一端が連通されると共に他端が周囲環境に開放された音響管と、前記容器に隣接配置されている密閉空間を規定すると共に、該密閉空間と前記容器の内部空間とを仕切る仕切り板を含んでなる仕切り室と、前記密閉空間内に配置されると共に、前記仕切り板に対して音波出力面が前記密閉空間内に含まれる空間を隔てて対向配置されている動電型スピーカと、前記音波出力面から前記仕切り板を介して前記容器内に出力される音波に係る音響信号に基づいて前記被測定物の体積を求める処理手段とを備える。

    本発明の第2の体積計測装置によれば、例えばネックチューブである音響管は、例えば液体、固体等の被測定物が収容される容器に一端が連通されており、音響管の他端は、周囲環境に開放されている。 即ち、開放系における一つの容器が音響管で周囲環境に開放されている構成が構築されるので、ヘルムホルツ型の計測が可能となる。 ここで特に、仕切り室は、容器に隣接配置されている密閉空間を規定しており、この密閉空間と容器の内部空間とは、仕切り板によって仕切られている。 動電型スピーカは、この密閉空間内に配置される。 そして、通常は動電型スピーカのコーンの前面である音波出力面が、仕切り板に対して対向配置されている。

    計測時には、動電型スピーカが、例えば所定周波数帯域の音をスイープするなど、その音波出力面から音波を出力すると、この音波は、仕切り板を介して容器の内部空間内へと出力される。 処理手段は、この音波に係る音響信号に基づいて、例えば開放系のヘルムホルツ型の計測によって、被測定物の体積を求める。 この際、動電型スピーカは、例えば液体、固体等である被測定物に接触することはない。 これにより、動電型スピーカが被測定物によって損傷或いは故障したり、腐蝕したり、短寿命化したり、計測不可能な状態になったりすることが効果的に防止される。 他方で、被測定物が動電型スピーカによって汚染等されることも効果的に防止される。 更に、計測中に動電型スピーカから発生する熱が被測定物に直接伝達することもないので、仕切り板の密閉空間側にて適当な断熱手段を設けることで、或いは、例えば短時間のみ音波を出力する等により発生熱量を抑制することで、動電型スピーカによって被測定物を殆ど加熱しない構成を容易に構築できる。

    以上の結果、第2の体積計測装置によれば、例えばスピーカ又はマイクロフォンなどの計測用素子が液体などの被測定物の一部又は全部に接触することを避けることが可能である。 更に、計測用の音響信号以外の外部騒音によるS/N比の低下を抑制し得る。 このように第2の体積計測装置によれば、例えば、工場、検査場、研究所、実験室など各種環境における液量計測や固体量計測が可能となる。

    本発明の第3の体積計測装置は上記課題を解決するために、被測定物が収容される容器と、該容器に一端が夫々連通されると共に他端が周囲環境に夫々開放された複数の音響管と、該複数の音響管のうちの一つを介して前記被測定物を前記容器内に搬入すると共に、前記複数の音響管のうちの他の一つを介して前記被測定物を前記容器外に搬出する搬送手段と、前記容器に隣接配置されている密閉空間を規定すると共に、該密閉空間と前記容器の内部空間とを仕切る仕切り板を含んでなる仕切り室と、前記密閉空間内に配置されると共に、前記仕切り板に対して音波出力面が前記密閉空間内に含まれる空間を隔てて対向配置されている動電型スピーカと、前記音波出力面から前記仕切り板を介して前記容器内に出力される音波に係る音響信号に基づいて前記被測定物の体積を求める処理手段とを備える。

    本発明の第3の体積計測装置によれば、例えばネックチューブである音響管は、例えば液体、固体等の被測定物が収容される容器に一端が連通されており、音響管の他端は、周囲環境に開放されている。 即ち、開放系における一つの容器が音響管で周囲環境に開放されている構成が構築されるので、ヘルムホルツ型の計測が可能となる。 音響管の少なくとも一部は、搬入用の管又は搬出用の管としても機能しており、搬送手段によって、被測定物が一つの音響管を介して容器内に搬入され、他の一つの音響管を介して容器外に搬出されるように構成されている。 ここで特に、仕切り室は、容器に隣接配置されている密閉空間を規定しており、この密閉空間と容器の内部空間とは、仕切り板によって仕切られている。 動電型スピーカは、この密閉空間内に配置される。 そして、通常は動電型スピーカのコーンの前面である音波出力面が、仕切り板に対して対向配置されている。

    計測時には、搬送手段によって、被測定物が一つの音響管を介して容器内に搬入される。 動電型スピーカが、例えば所定周波数帯域の音をスイープするなど、その音波出力面から音波を出力すると、この音波は、仕切り板を介して容器の内部空間内へと出力される。 処理手段は、この音波に係る音響信号に基づいて、例えば開放系のヘルムホルツ型の計測によって、被測定物の体積を求める。 この際、動電型スピーカは、例えば液体、固体等である被測定物に接触することはない。 これにより、動電型スピーカが被測定物によって損傷或いは故障したり、腐蝕したり、短寿命化したり、計測不可能な状態になったりすることが効果的に防止される。 他方で、被測定物が動電型スピーカによって汚染等されることも効果的に防止される。 更に、計測中に動電型スピーカから発生する熱が被測定物に直接伝達することもないので、仕切り板の密閉空間側にて適当な断熱手段を設けることで、或いは、例えば短時間のみ音波を出力する等により発生熱量を抑制することで、動電型スピーカによって被測定物を殆ど加熱しない構成を容易に構築できる。 計測後には、搬送手段によって、被測定物が、他の一つの音響管を介して容器外に搬出される。 その後、次の被測定物が容器内に搬入され、流れ作業的に体積計測が順次実施されてもよい。

    以上の結果、第3の体積計測装置によれば、例えばスピーカ又はマイクロフォンなどの計測用素子が液体などの被測定物の一部又は全部に接触することを避けることが可能である。 更に、計測用の音響信号以外の外部騒音によるS/N比の低下を抑制し得る。 このように第3の体積計測装置によれば、例えば、工場、検査場、研究所、実験室など各種環境における液量計測や固体量計測が可能となる。

    本発明の第1から第3の体積計測装置の一態様では、前記動電型スピーカを駆動する定電流駆動型の増幅器を更に備えており、前記処理手段は、前記動電型スピーカに係るボイスコイルの電圧を測定する測定手段と、該測定された電圧に基づいて、前記被測定物の体積を演算する演算手段とを含む。

    この態様によれば、増幅器によって動電型スピーカを定電流駆動しつつ、測定手段によって、前記動電型スピーカに係るボイスコイルの電圧が測定される。 ここでボイスコイルの電圧は、ボイスコイルのインピーダンスに概ね比例するので、演算手段によって、このボイスコイルの電圧に基づいて、被測定物の体積が演算可能となる。 即ち、処理手段が計測に利用する音響信号としては、動電型スピーカのボイスコイルのインピーダンスに概ね比例する電圧の測定によって間接的に、「密閉空間内へと出力される音波に係る音響信号」を取得できる。 よって、容器内における気相部分についてのヘルムホルツ共鳴周波数を特定或いは同定できる。 このように、容器内にマイクロフォンを設置する必要はなくなる。 マイクロフォンの場合、音響信号に外部騒音が重畳される結果、S/N比が低下する可能性があるので、当該マイクロフォンを用いないで済む計測は、計測精度を高める観点からも有利である。 言い換えれば、外部雑音等の音響信号以外の騒音が、動電型スピーカの機械系に変換される部分で、仕切り板を介しての変換による損失がマイクロフォンに比して顕著に大きいため、マイクロフォンを用いた検出法よりも外部音響による影響を受け難いという効果がある。

    このように構成した場合更に、前記演算手段は、前記測定された電圧に基づいて、前記音響信号に係る周波数解析を行う第1演算手段と、該行なわれた周波数解析の結果に基づいて、前記被測定物の体積を演算する第2演算手段とを含むように構成してもよい。

    このように構成すれば、第1演算手段によって、例えばFFT法(高速フーリエ変換法)や、MEM法(最大エントロピー法)による周波数解析が行なわれる。 特にMEM法を用いれば、短時間の音響データから、ヘルムホルツ共鳴周波数を求めることが可能となる。 尚、容器内における正確な音速を特定して体積計測を行うのには、即ち、容器内における気相部分の体積を正確に測定するには、容器内の気相部分の温度分布を把握して、これに基づいて補正すればよい。

    このように構成した場合更に、前記第1演算手段は、前記測定された電圧のスペクトル上でピークを与える周波数として、前記音響信号に係る共鳴周波数を決定し、前記第2演算手段は、前記決定された共鳴周波数に基づいて前記体積を演算するように構成してもよい。

    このように構成すれば、第1演算手段によって、ボイスコイルのインピーダンスを直接計測するのではなく、このピーク時におけるボイスコイルのインピーダンスに概ね比例するボイスコイルの電圧を測定して、該ボイスコイルの電圧のピーク時における値に基づいて、即ち、測定された電圧のスペクトル上でピークを与える周波数として、共鳴周波数が決定或いは同定される。 更に第2演算手段によって、この決定された共鳴周波数に基づいて体積が演算される。 従って、閉鎖系又は開放系におけるヘルムホルツ型の計測によって、比較的短時間で且つ高精度で体積を求めることが可能となる。

    このように構成した場合更に、前記容器内には、前記被測定物が極低温状態で収容されており、前記増幅器は、最大エントロピー(MEM)法を行うのに十分な時間だけ前記動電型スピーカを定電流駆動し、前記第1演算手段は、前記最大エントロピー法により前記共鳴周波数を決定する。

    このように構成すれば、例えば液体燃料等の容器内に極低温状態で収容された被測定物について、MEM法によって、共鳴周波数が決定される。 更に、この決定された共鳴周波数に基づいて体積が演算される。 特にMEM法を用いれば、例えば数十m秒から数百m秒といった非常に短時間の音響信号から、共鳴周波数を求めることが可能となる。 他方で、FFT法の場合には、例えば5〜10秒程度の比較的長時間の音響信号が用いられる。 従って、動電型スピーカが、その動作時に発熱体として発熱することに鑑みれば、高温にすることが許されない或いは望ましくない極低温流体を取り扱う場合、このようにMEM法を採用すると有利である。

    尚、上述した第1から第3の体積測定装置において、動電型スピーカを、定電流駆動するのではなく定電圧駆動することで、動電型スピーカのボイスコイルに係るインピーダンス曲線の反共振周波数を特定或いは同定し、この反共振周波数によって体積を測定することも可能である。

    本発明の第1から第3の体積計測装置の他の態様では、前記音波を受信するマイクロフォンを更に備えており、前記処理手段は、前記マイクロフォンにより受信された音波に係る前記音響信号に基づいて前記被測定物の体積を求める。

    この態様によれば、計測時に、動電型スピーカが、その音波出力面から音波を出力すると、この音波は、仕切り板を介して他の容器の内部空間内へと出力される。 すると、被測定物が収容された容器内など、所定位置に配置されたマイクロフォンにより、この音波が受信される。 そして、この受信された音波に係る音響信号に基づいて、例えばヘルムホルツ型の計測によって、被測定物の体積が求められる。 このようにマイクロフォンを用いても、動電型スピーカについては、液体等の被測定物に接触することはなく、その損傷等は起きないで済む。

    尚、このようなマイクロフォンによる音響信号の検出と、前述したボイスコイルのインピーダンス測定による音響信号の検出とを併用或いは組み合わせるように構成してもよい。

    本発明の第1から第の体積計測装置の他の態様では、前記被測定物は液体であり、無重力又は微小重力状態において前記液体を気相から分離させる分離手段を更に備える。

    この態様によれば、無重力又は微小重力状態にある容器内で、例えばグルーブ、メッシュ、スチールウール、スポンジ、ウイック材等の静的な分離手段や、回転子、攪拌機等の動的な分離手段によって、被測定物たる液体は、容器内における気相から分離される。 従って、宇宙空間等の無重力又は微小重力状態であっても、ヘルムホルツ型の液量計測が可能となる。

    勿論、前述の通りに、第1から第の体積計測装置によれば、被測定物として「固体」について、その体積を測定可能である。

    本発明の第1の体積計測方法は上記課題を解決するために、被測定物が収容される容器に一端が連通された音響管と、該音響管の他端に連通された他の容器と、該他の容器に隣接配置されている密閉空間を規定すると共に、該密閉空間と前記他の容器の内部空間とを仕切る仕切り板を含んでなる仕切り室と、前記密閉空間内に配置されると共に、前記仕切り板に対して音波出力面が前記密閉空間内に含まれる空間を隔てて対向配置されている動電型スピーカとを備えた体積計測装置における体積計測方法であって、前記音波出力面から前記仕切り板を介して前記他の容器内に音波を出力する出力工程と、該出力された音波に係る音響信号に基づいて前記被測定物の体積を求める処理工程とを備える。

    本発明の第1の体積計測方法によれば、上述した本発明の第1の体積計測装置の場合と同様に、例えば閉鎖系におけるヘルムホルツ型の計測によって、無重力或いは微小重力下における被測定物の体積を、比較的容易に且つ高精度で求めることができる。

    本発明の第3の体積計測方法は上記課題を解決するために、被測定物が収容される容器と、該容器に一端が連通されると共に他端が周囲環境に開放された音響管と、前記容器に隣接配置されている密閉空間を規定すると共に、該密閉空間と前記容器の内部空間とを仕切る仕切り板を含んでなる仕切り室と、前記密閉空間内に配置されると共に、前記仕切り板に対して音波出力面が前記密閉空間内に含まれる空間を隔て対向配置されている動電型スピーカとを備えた体積計測装置における体積計測方法であって、前記音波出力面から前記仕切り板を介して前記容器内に音波を出力する出力工程と、該出力された音波に係る音響信号に基づいて前記被測定物の体積を求める処理工程とを備える。

    本発明の第2の体積計測方法によれば、上述した本発明の第2の体積計測装置の場合と同様に、例えば開放系のヘルムホルツ型の計測によって、例えば、工場、検査場、研究所、実験室など各種環境における液量計測や固体量計測が可能となる。

    本発明の第3の体積計測方法は上記課題を解決するために、被測定物が収容される容器と、該容器に一端が夫々連通されると共に他端が周囲環境に夫々開放された複数の音響管と、該複数の音響管のうちの一つを介して前記被測定物を前記容器内に搬入すると共に、前記複数の音響管のうちの他の一つを介して前記被測定物を前記容器外に搬出する搬送手段と、前記容器に隣接配置されている密閉空間を規定すると共に、該密閉空間と前記容器の内部空間とを仕切る仕切り板を含んでなる仕切り室と、前記密閉空間内に配置されると共に、前記仕切り板に対して音波出力面が前記密閉空間内に含まれる空間を隔てて対向配置されている動電型スピーカとを備えた体積計測装置における体積計測方法であって、前記搬送手段により前記被測定物が前記容器内に搬入された際に、前記音波出力面から前記仕切り板を介して前記容器内に音波を出力する出力工程と、該出力された音波に係る音響信号に基づいて前記被測定物の体積を求める処理工程とを備える。

    本発明の第3の体積計測方法によれば、上述した本発明の第3の体積計測装置の場合と同様に、例えば開放系のヘルムホルツ型の計測によって、例えば、工場、検査場、研究所、実験室など各種環境における液量計測や固体量計測が可能となる。

    尚、第1から第3の体積計測方法では、第1から第3の体積計測装置の各種態様に夫々対応する各種態様を採ることができる。 更に、動電型スピーカを定電流駆動しつつボイスコイルの電圧を測定して、この測定結果に基づいてヘルムホルツ共鳴周波数を同定してもよいし、或いは、動電型スピーカを定電圧駆動して反共振周波数を同定してもよい。 何れの場合にも、ヘルムホルツ型の体積測定が可能となる。

    本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施の形態から明らかにされる。

    本発明の第1実施形態に係る体積計測装置が有する、共鳴器部分の構成を示す概略断面図である。

    第1実施形態に係る体積計測装置における、共鳴器部分の他に計測部分を含む装置全体の構成を示すブロック図である。

    本発明の第2実施形態に係る体積計測装置が有する、共鳴器部分の構成を示す概略断面図である。

    第2実施形態に係る音響システムにおける、振動板からみた電気的類推回路を示す等価回路図である。

    第2実施形態に係る音響信号の周波数と動電型スピーカの振動板速度との関係を示す特性図である。

    本発明の第3実施形態に係る体積計測装置が有する、共鳴器部分の構成を示す概略断面図である。

    本発明の第4実施形態に係る体積計測装置が有する、共鳴器部分の構成を示す概略断面図である。

    本発明の第5実施形態に係る体積計測装置が有する、共鳴器部分の構成を示す概略断面図である。

    第5実施形態による騒音試験の結果を示す信号波形図である。

    第4実施形態による騒音試験の結果を示す信号波形図である。

    第5及び第4実施形態について、同様の条件下で、ヘルムホルツ共鳴周波数を100回測定した際の、同定共鳴周波数の変動係数を示す表である。

    共鳴時の波長が共鳴器サイズよりも大きく、集中定数系で近似できるとして、第1実施形態に係る閉鎖系音響システムにおける、スピーカコーン(振動板)からみた機械系および音響系振動をすべて機械系に置き換えて得た電気的類推回路を示す回路図である。

    第2容器に対して液体を0、10、20%入れたときの振動板速度の周波数特性を示す特性図である。

    符号の説明

    1、21、31…仕切り室2、22、32…動電型スピーカ3、23、33、仕切り板4…第1容器5、25、35in、35out…音響管6…第2容器7、27…液体試料8…駆動用増幅器9…発信・受信コントローラ10…計測用増幅器11…演算器36…搬送ベルト37…固体試料42…攪拌子43…マグネティックスターラー2a…スピーカコーン(振動板)

    以下では、本発明の実施の形態について図を参照しつつ説明する。

    (第1実施形態)
    図1及び図2を参照して、体積計測装置の第1実施形態について説明する。 ここに図1は、第1実施形態に係る体積計測装置が有する共鳴器部分の概略構成を示し、図2は、第1実施形態に係る体積計測装置における、図1に示した共鳴器部分の他に計測部分を含む装置全体のブロック構成を示す。 第1実施形態の体積計測装置は、本発明に係る「第1の体積計測装置」の実施形態であり、閉鎖系のヘルムホルツ型の計測装置である。

    先ず、第1実施形態の構成について説明する。

    図1において、体積計測装置は共鳴器部分として、仕切り室1、動電型スピーカ2、第1容器4、ネックチューブ5、及び第2容器6を備えて構成されている。 この際、仕切り室1は、内部に密閉空間を規定しており、この密閉空間内に動電型スピーカ2が配置されている。 仕切り室1は、仕切り板3を含んでなり、動電型スピーカ2の音波出力面(図中、下側に位置する前面)は、仕切り板3に対して対向配置されている。 スピーカ2と仕切り板3との間の空間は、密閉されており、その空間の体積は第2容器6に比して十分に小さいことが好ましい。

    第1容器4は、本発明の第1の体積計測装置に係る「他の容器」の一例であり、仕切り室1が隣接配置されている。 第2容器6は、本発明の第1の体積計測装置に係る「容器」の一例であり、本発明に係る「被測定物」の一例である液体試料7が収容されている。 ネックチューブ5は、本発明に係る「音響管」の一例であり、第1容器4及び第2容器6を相互に連通しており、閉鎖系のヘルムホルツ共鳴器を構築している。

    仕切り室1、第1容器4及び第2容器6の壁は夫々、例えば、液体試料7の性質や周囲環境に応じて、金属、合金、樹脂、プラスチック、セラミック等から構成されたり、真空断熱壁から構成される。 また、仕切り板3は、動電型スピーカ2から出力された音波を、第1容器4内に効率良く伝搬するように、該音波の周波数特性に応じた厚さ及び弾性を有する、金属、合金、樹脂、プラスチック、セラミック等の板として構成される。 より具体的には例えば、厚さ1mmのアクリル板を用いることができる。 また、このような仕切り板3は、多層膜から構成されてもよい。

    本実施形態では特に、動電型スピーカ2を含む仕切り室1は、完全密閉された密閉空間を規定している。 これにより、液体試料7が動電型スピーカ2に直接触れないように構成されている。 動電型スピーカ2の背面に位置する仕切り室1は、周囲環境が、真空環境以外であれば、存在せずともよい。 但しこの場合にも、仕切り板3とスピーカ2とが相互に接触してしまうことのないように、仕切り板3とスピーカ2との間にできる密閉空間は存在することが望ましい。 逆に、周囲環境が宇宙空間等の真空環境であると、仕切り室1により密閉されると共に適当な圧力に維持された密閉空間内に、動電型スピーカ2が配置されることになるので、動電型スピーカ2による音波出力動作が、仕切り室1内で良好に行なわれることになる。 また、仕切り室1により、周囲環境からの粉塵等が、動電型スピーカ2へ付着することを予防するように構成されている。

    尚、図1から分かるように、第1実施形態では、計測用のマイクロフォンは設置されていない。

    図2において、体積計測装置は、図1に示した共鳴器部分の他に計測部分として、駆動用増幅器8、発信・受信コントローラ9、計測用増幅器10、及び演算器11を備えて構成されている。 尚、電源については省略する。

    駆動用増幅器8は、本発明に係る「増幅器」の一例であり、動電型スピーカ2を定電流駆動する。 発信・受信コントローラ9は、動電型スピーカ2から音波を発信させたり、動電型スピーカ2のボイスコイルの電圧信号を受信(測定)させたりの制御を行う。 計測用増幅器10は、動電型スピーカ2のボイスコイルの電圧を測定するための増幅器である。 演算器11は、本発明に係る「演算装置」、「第1演算手段」及び「第2演算手段」の一例を構成しており、例えばCPU等を含んでなり、ボイスコイルを定電流駆動することによってボイスコイルのインピーダンスに概ね比例することになる「ボイスコイルの電圧」に基づいて、ネックチューブ5、第1容器4及び第2容器6からなる閉鎖系のヘルムホルツ共鳴器に係るヘルムホルツ共鳴周波数を求め、更にこれから液体試料7の体積を演算するように構成されている。

    次に、第1実施形態による体積計測の原理及び動作について説明する。

    計測の際には、発信・受信コントローラ9よって、信号時間が数十ミリ秒から数秒であり、且つ第1容器4、音響管5及び第2容器6を「共鳴器」としてみた場合におけるヘルムホルツ共鳴周波数を含む帯域のスウィープ波を出力する。 この際、駆動用増幅器8を用いて、動電型スピーカ2を、定電流駆動する。

    ここで仮に、マイクロフォンで上記「共鳴器」における応答を検出すると、特に動電型スピーカ2による発熱を抑制するために音量を絞った場合には、音響信号以外の外部雑音がマイクロフォンにより検出されることになる。 よって、最終的には、ヘルムホルツ共鳴周波数の同定精度の低下をきたす。

    しかるに本実施形態では、駆動用増幅器8は、一定電流で動電型スピーカ2を駆動し、動電型スピーカ2のボイスコイル電圧を、計測用増幅器10を経由して、発信・受信コントローラ9にて受信する。 この際、動電型スピーカ2による発熱を抑制するために音量を絞ることはない。

    続いて、演算器11は、このように音響信号に対応するボイスコイル電圧に係る電圧信号を、発信・受信コントローラ9から受けて、最大エントロピ(MEM)法を用いて、パワースペクトルを算出する。 続いて、卓越周波数ピークを決定する。 この際、演算器11は、MEM法を用いることで、信号時間が数秒以下と短い信号でも、1Hz以下の周波数分解能で、パワースペクトル上でピークとなる周波数の同定が可能となる。 続いて、このピークを与える周波数を、ヘルムホルツ共鳴周波数として、例えば、公知である次式に代入して、第2容器6の気相部の体積を決定する。

    f=(C/2π)×[(A/L)×{(1/V1)+(1/V2)}] 1/2
    但し、
    f :音響信号のヘルムホルツ共鳴周波数 C :音速 A :音響管5の断面積 L :音響管5の長さ V1:第1容器4の気相部の体積 V2:第2容器6の気相部の体積 ここで、音速C、音響管5の断面積A、音響管5の長さL及び第1容器4の体積V1は、既知(固定値)であるので、第2容器6の気相分の体積V2の変化が周波数fの現れることになる。 よって、周波数fの解析によって、第2容器6内の気相部分の体積V2を算出することができる。 そして、第2容器6の全容積は、既知(固定値)であるので、結局、第2容器6内に収納された液体試料7の体積を演算できることになる。

    以上の結果として計測された体積値は、例えば、不図示の表示パネルなどに表示されたり、レコーダ等の記録装置に液体試料7の種類や時刻に対応付けられた形で記録される。

    ここで、仕切り板3と動電型スピーカ2との間の空間が小さくされることで、その部分のスティフネスが大きくなると、理論式では共振と反共振周波数の間に共鳴周波数が来る。 しかるに、共振と反共振周波数との差は小さく、体積の増減により両者とも同じように変動する。 実際に計測すると、インピーダンスの凸しか殆ど観察されない。 本実施形態の如く、定電流駆動方式で駆動されるボイスコイルの電圧を測定することで体積測定を行う場合は、空の場合の共鳴周波数をもとに理論式中の定数項をキャンセルする。 このため、ヘルムホルツ共鳴周波数を共振周波数としても、それほど誤差は大きくない。 そこで、このような定電流駆動式での計測を行なっているのである。

    従って、第2容器6以外の各構成要素に係るインダクタンス値、容量値及び抵抗値が与えられれば、第2容器6の気相部分の体積V2に依存して変化するヘルムホルツ共鳴周波数に対応する、動電型スピーカ2のボイスコイルのインピーダンスから、体積V2を一義的に特定することができるのである。 よって、このように定電流駆動することで、ボイスコイルのインピーダンスに概ね比例することになる、ボイスコイルの電圧を測定することで、該測定された電圧から、体積V2を一義的に特定することができるのである。

    以上のように第1実施形態によれば、予め第2容器6内に収容される液体試料7の各体積に対して共振によって得られるヘルムホルツ周波数を夫々求めておき、これらの値をテーブル化しておけば、或いは、各体積とヘルムホルツ共鳴周波数との関係を所定関数で近似して求めておけば、後に、実際の計測に際しては、ボイスコイルの電圧計測により得られるヘルムホルツ共鳴周波数から、第2容器6内の気相部分の体積V2を得られる。 そして、第2容器6の体積は既知であるので、結局、第2容器6内に収容された液体試料7の体積を一義的に特定できることになるのである。

    (第2実施形態)
    図3から図5を参照して、体積計測装置の第2実施形態について説明する。 第2実施形態の体積計測装置は、本発明に係る「第2の体積計測装置」の実施形態であり、開放系のヘルムホルツ型の計測装置である。

    先ず図3を参照して、第2実施形態の構成について説明する。 ここに図3は、第2実施形態に係る体積計測装置が有する共鳴器部分の概略構成を示す。 尚、第2実施形態に係る体積計測装置における、図3に示した共鳴器部分を除く計測部分については、図2に示した第1実施形態の場合と同様であるので、共鳴器部分及び計測部分を含む装置全体のブロック構成については図示を省略する。

    図3において、体積計測装置は共鳴器部分として、仕切り室21、動電型スピーカ22、容器24及びネックチューブ25を備えて構成されている。

    仕切り室21は、内部に密閉空間を規定しており、この密閉空間内に動電型スピーカ22が配置されている。 仕切り室21は、仕切り板23を含んでなり、動電型スピーカ22の音波出力面(図中、下側に位置する前面)は、仕切り板23に対して対向配置されている。

    容器24は、本発明の第2の体積計測装置に係る「容器」の一例であり、仕切り室21が隣接配置されており、本発明に係る「被測定物」の一例である液体試料27が収容されている。 ネックチューブ25は、本発明に係る「音響管」の一例であり、容器24の内部空間を周囲環境に連通させている。 このように容器24及びネックチューブ25は、開放系のヘルムホルツ共鳴器を構築している。

    本実施形態では特に、動電型スピーカ22を含む仕切り室21は、完全密閉された密閉空間を規定している。 これにより、液体試料27が動電型スピーカ22に直接触れないように構成されている。 仕切り室21により密閉されると共に適当な圧力に維持された密閉空間内に、動電型スピーカ22が配置されることになるので、動電型スピーカ22による音波出力動作が、仕切り室21内で良好に行なわれることになる。 また、仕切り室21により、周囲環境からの粉塵等が、動電型スピーカ22へ付着することを予防するように構成されている。 更に、仕切り板23が、ネックチューブ25を介しての或いは液体試料27からの粉塵等が、動電型スピーカ22の音波出力面へ付着することを予防するように構成されている。

    図3から分かるように、第2実施形態では、計測用のマイクロフォンは設置されていない。

    次に図4及び図5を参照して、第2実施形態による体積計測の原理及び動作について説明する。 ここに、図4は、動電型スピーカ22及び仕切り板23を含んでなる、開放系音響システムにおける振動板としての仕切り板23からみた等価回路を示す。 図4は、第2実施形態に係る音響信号の周波数と動電型スピーカの振動板速度との関係を示す。

    図4に例示するように、第2実施形態に係る「ヘルムホルツ共鳴器」における、振動板としての仕切り板23からみた等価回路では、(i)振動板の等価機械質量Msp、振動板の等価機械抵抗Rsp、及び振動板の等価機械スティフネスSsp、(ii)背後空洞部の等価機械抵抗Rbk、及び背後空洞部の等価機械スティフネスSbk、(iii)共鳴器空洞部の等価機械抵抗Rca、及び共鳴器空洞部の等価機械スティフネスSca、(iv)管部の等価機械質量Mpo、及び管部の等価機械抵抗Rpo、(v)仕切り板−振動板間空洞部の等価機械抵抗Rme、及び仕切り板−振動板間空洞部の等価機械スティフネスSme、並びに(vi)仕切り板の等価機械質量Mwl、仕切り板の等価機械Rwl、及び仕切り板の等価機械スティフネスSwlが、図示の通りに電源又は振動源に接続されている。

    図5は、第2実施形態に係る体積計測装置内で、ヘルムホルツ共鳴を起こす音響信号の周波数と動電型スピーカ22の振動板速度との関係の一例を示している。 図5に示したように、動電型スピーカ22の振動板速度には、第2実施形態に係る開放系音響システムにおけるヘルムホルツ共鳴周波数に対応する共振点及び反共振点で、明らかなピーク値が出現する。 従って、ボイスコイルのインピーダンスに概ね比例するボイスコイルの電圧を測定し、該測定されたボイスコイル電圧信号スペクトルのピーク周波数として、ヘルムホルツ共鳴周波数を特定或いは同定できることになる。

    以上のように第2実施形態によれば、予め容器24内に収容される液体試料27の各体積に対して共振によって得られるヘルムホルツ周波数を夫々求めておき、これらの値をテーブル化しておけば、或いは、各体積とヘルムホルツ共鳴周波数との関係を所定関数で近似して求めておけば、後に、実際の計測に際しては、ボイスコイルの電圧計測により得られるヘルムホルツ共鳴周波数から、容器24内の気相部分の体積を得られる。 そして、容器24の体積は既知であるので、結局、容器24内に収容された液体試料27の体積を一義的に特定できることになるのである。

    (第3実施形態)
    図6を参照して、体積計測装置の第3実施形態について説明する。 第3実施形態の体積計測装置は、本発明に係る「第3の体積計測装置」の実施形態であり、開放系のヘルムホルツ型の計測装置である。 ここに図6は、第3実施形態に係る体積計測装置が有する共鳴器部分の概略構成を示す。 尚、第3実施形態に係る体積計測装置における、図6に示した共鳴器部分を除く計測部分については、図2に示した第1実施形態の場合と同様であるので、共鳴器部分及び計測部分を含む装置全体のブロック構成については図示を省略する。

    図6において、体積計測装置は共鳴器部分として、仕切り室31、動電型スピーカ32、容器34、ネックチューブ35in、ネックチューブ35out、及び搬送ベルト36を備えて構成されている。

    仕切り室31は、内部に密閉空間を規定しており、この密閉空間内に動電型スピーカ32が配置されている。 仕切り室31は、仕切り板33を含んでなり、動電型スピーカ32の音波出力面(図中、下側に位置する前面)は、仕切り板33に対して対向配置されている。

    容器34は、本発明の第3の体積計測装置に係る「容器」の一例であり、仕切り室31が隣接配置されており、本発明に係る「被測定物」の一例である固体試料37が収容される。 ネックチューブ35inは、本発明に係る「搬入用の音響管」の一例であり、ネックチューブ35outは、本発明に係る「搬出用の音響管」の一例である。 ネックチューブ35in及び35outは、容器34の内部空間を周囲環境に連通させている。 このように容器34並びにネックチューブ35in及び35outは、開放系のヘルムホルツ共鳴器を構築している。

    搬送ベルト36は、本発明に係る「搬送手段」の一例として、例えば、ベルトコンベアから構成されており、固体試料37をネックチューブ35inを介して容器34内に搬入し、更に、ネックチューブ35outを介して容器34外に搬出するように構成されている。 このように搬入される固体試料37が、容器34の中央に到達した時に体積測定が実施される。 尚、搬送ベルト36は、固体試料37が容器34の中央に到達した際に、搬送動作を停止させてもよいし、体積測定が十分な精度で実施可能であれば、計測中に搬送動作を停止させなくてもよい。

    本実施形態では特に、動電型スピーカ32を含む仕切り室31は、完全密閉された密閉空間を規定している。 これにより、固体試料37が動電型スピーカ32に直接触れないように構成されている。 仕切り室31により密閉されると共に適当な圧力に維持された密閉空間内に、動電型スピーカ32が配置されることになるので、動電型スピーカ32による音波出力動作が、仕切り室31内で良好に行なわれることになる。 また、仕切り室31により、周囲環境からの粉塵等が、動電型スピーカ32へ付着することを予防するように構成されている。 更に、仕切り板33が、ネックチューブ35in及び35outを介しての或いは固体試料37からの粉塵等が、動電型スピーカ32の音波出力面へ付着することを予防するように構成されている。

    尚、図6から分かるように、第3実施形態では、計測用のマイクロフォンは設置されていない。

    (第4実施形態)
    図7を参照して、体積計測装置の第4実施形態について説明する。 第4実施形態の体積計測装置は、上述した第1実施形態の変形形態であり、閉鎖系のヘルムホルツ型の計測装置である。 ここに図7は、第4実施形態に係る体積計測装置が有する共鳴器部分の概略構成を示す。 尚、第4実施形態に係る体積計測装置における、図7に示した共鳴器部分を除く計測部分については、図2に示した第1実施形態の場合と同様であるので、共鳴器部分及び計測部分を含む装置全体のブロック構成については図示を省略する。 また、図7において、図1に示した第1実施形態と同様の構成要素については同様の参照符号を付し、それらの説明については適宜省略する。

    図7において、体積計測装置は共鳴器部分として、仕切り室1、動電型スピーカ2、容器4、ネックチューブ5及び容器6を備え、更に攪拌子42及びマグネティックスターラー43を備えて構成されている。

    攪拌子42及びマグネティックスターラー43は、本発明に係る「分離手段」の一例を構成している。 マグネティックスターラー43は、攪拌子42を磁力によって回転させる。 攪拌子42が液体試料7を攪拌することで、慣性力等を利用して液体試料7を容器6内における気相から液体試料7を分離する。 従って、宇宙空間等の無重力又は微小重力状態であっても、ヘルムホルツ型の液量計測が可能となる。

    尚、図6から分かるように、第3実施形態では、計測用のマイクロフォンは設置されていない。 マグネティックスターラー43は、その作動時には、容器6内に音響信号以外の騒音、振動を発生させる。 従って、マイクロフォンを用いて音響信号を得るよりも、動電型スピーカ2のボイスコイルのインピーダンス測定によって音響信号をえた方が、マグネティックスターラー43からの騒音、振動の悪影響を低減できるので有利である。

    尚、このような攪拌子42に代えて、容器6内に回転子を、動的な分離手段として設けてもよい。 或いは、例えば、容器6の内壁にグルーブを設けて静的な分離手段としてもよいし、例えばメッシュ、スチールウール、スポンジ、ウイック材等の多孔質部材を容器6の内壁に貼り付けて分離手段としてもよい。 更に、これらの分離手段を組み合わせて採用することも可能である。

    (第5実施形態)
    図8を参照して、体積計測装置の第5実施形態について説明する。 第5実施形態の体積計測装置は、上述した第4実施形態の変形形態であり、閉鎖系のヘルムホルツ型の計測装置である。 ここに図8は、第5実施形態に係る体積計測装置が有する共鳴器部分の概略構成を示す。 尚、第5実施形態に係る体積計測装置における、図8に示した共鳴器部分を除く計測部分については、図2に示した第1実施形態の場合と同様であるので、共鳴器部分及び計測部分を含む装置全体のブロック構成については図示を省略する。 また、図8において、図1及び図7に示した第1及び第4実施形態と同様の構成要素については同様の参照符号を付し、それらの説明については適宜省略する。

    図8において、体積計測装置は共鳴器部分として、仕切り室1、動電型スピーカ2、容器4、ネックチューブ5、容器6、攪拌子42及びマグネティックスターラー43を備え、更にマイクロフォン51を備えて構成されている。

    マイクロフォン51は、スピーカ2から容器6内に出力された音波を受信するように構成されている。

    尚、マグネティックスターラー43は、その作動時には、容器6内に音響信号以外の騒音、振動を発生させる。 従って、第5実施形態におけるマイクロフォン51を用いて音響信号を得るよりも、第4実施形態の如く動電型スピーカ2のボイスコイルのインピーダンス測定によって音響信号を得た方が、マグネティックスターラー43からの騒音、振動の悪影響を低減できるので有利である。

    加えて、図1から図7に示した第1から第4実施形態に対して、第5実施形態の如きマイクロフォン51を取り付けることも可能である。 マイクロフォン51を用いても、動電型スピーカが仕切り室1により規定された密閉空間内に配置されていることによる、前述した各種の長所は相応に得られる。

    次に、図9から図11を参照して、マイクロフォンを用いて直接的に音響信号の検出を行う第5実施形態に比べて、ボイスコイルのインピーダンス測定により間接的に音響信号の検出を行う第4実施形態によって、相対的に高いS/N比が得られることについて検証を加える。 ここに、図9は、第5実施形態による騒音試験の結果を示しており、図9(a)が騒音がない場合、図9(b)が騒音がある場合を示す。 図10は、第4実施形態による騒音試験の結果を示しており、図10(a)が騒音がない場合、図10(b)が騒音がある場合を示す。 また図11は、同様の条件下で、ヘルムホルツ共鳴周波数を100回測定した際の、同定共鳴周波数の変動係数を示す。

    第5実施形態において、第2容器6に攪拌子42以外に何も入れない状態で、マグネティックスターラー43を作動させることにより、容器6等からなるヘルムホルツ共鳴器内部に、信号音以外の騒音或いは振動が発生する。 図9(a)に応答信号(音響信号)を示した如き200Hzの信号音を動電型スピーカ2より発生させると、無騒音下及び攪拌子42が発する騒音下では、図9(b)に示した如き、応答信号(音響信号)がマイクロフォン51によって検出される。 即ち攪拌子42を回転させた場合、マイクロフォン51によって検出される200Hzの検出信号に、その周波数以外の騒音が重畳している。 このように第5実施形態において、外部騒音や攪拌子の回転による騒音が発生すると、図9(b)に示したように、マイクロフォン51で雑音として拾われる。 よって音響信号(応答信号)におけるS/Nが悪化する。 即ち、第5実施形態は、要求されるS/N比が低い場合に有効な実施形態である。

    これに対して、第4実施形態において、図2に示した駆動用増幅器8を用いて計測した動電型スピーカ2のボイスコイルの電圧の場合、同様の条件下で、図10(a)に応答信号(音響信号)を示した如き200Hzの信号音を動電型スピーカ2より発生させると、図10(b)の如く、該200Hzの検出信号に、その周波数以外の騒音或いは雑音が殆ど重畳されていない。 このように第4実施形態において、外部騒音や攪拌子の回転による騒音が発生しても、ボイスコイルの電圧測定により間接的に得られる音響信号(応答信号)中に、雑音として現れる成分は殆どない。 よって、動電型スピーカ2のボイスコイルは、音響信号(応答信号)におけるS/Nは、雑音に殆ど依存することなく相対的に高く維持されると言える。 即ち、第4実施形態は、攪拌子を利用したり、外部雑音が大きい場合であって且つ要求されるS/N比が高い場合に有効な実施形態である。

    例えば、同様の条件下でヘルムホルツ共鳴周波数を、100回測定した際、図11に例示した如き、同定共鳴周波数の変動係数が得られる。 尚、図11の表1中に示した“変動係数[%]”は、平均値に対する標準偏差の百分率を示している。 第5実施形態の如くマイクロフォン51を用いる場合、或いは、前述した特許文献1から6等の如くにマイクロフォンを用いる場合には(表1中の左欄参照)、無騒音時に比べて騒音下での変動係数が100倍以上となる。 これに対して、第4実施形態或いは第1から第3実施形態の如く動電型スピーカを定電流駆動する駆動用増幅器8を用いる場合には(表1中の右欄参照)、無騒音時と騒音時の変動係数はほぼ同じである。

    図9から図11を参照して説明したように、音響信号の検出のためにマイクロフォンを利用しない実施形態は、試料を気相から分離するために攪拌子や回転子等の動的な分離手段を利用したり、試料を搬送する際に雑音が伴ったり、周囲環境における外部雑音が大きい場合には、特に有効な実施形態であると言える。 外部雑音がボイスコイルのインピーダンスに及ぼす影響は、マイクロフォンに及ぼす影響に比して小さいので、S/N比の向上を期待することができる。 このように第1から第4実施形態は、耐騒音性で顕著に優れている。

    (その他の変形形態)
    上述した第1から第5実施形態では、スピーカの前面に仕切り板が設けられているが、その他の変形形態として、このような仕切り板を取り外しても、マイクロフォンが設置されていないことによる利益は相応に得られる。 この場合、ヘルムホルツ共鳴周波数に対応する、測定されたボイスコイル電圧信号スペクトルのピークは、上側に凸型のピークではなく、下側に凸型のピークとなるが、該下側に凸型のピークを与える周波数としてヘルムホルツ周波数を特定或いは同定できる。 即ち、仕切り板を設けなくても、動電型スピーカを定電流駆動しつつそのボイスコイルの電圧を測定することで、(仕切り板による効果は当然に失われるが)体積測定は可能となる。 このような変形形態は、上述した本発明に係る「第4から第6の体積測定装置」の実施形態に相当することになる。 例えば、第2実施形態の変形形態として、仕切り板23を用いない場合には、予め容器24内に収容される液体試料27の各体積に対して反共振(ディップ)を与える周波数を夫々求めておき、これらの値をテーブル化しておけば、或いは、各体積と反共振を与える周波数との関係を所定関数で近似して求めておけば、後に、実際の計測に際しては、ボイスコイルの電圧計測により得られる反共振を与える周波数から、容器24内の気相部分の体積を得られる。 そして、容器24の体積は既知であるので、結局、容器24内に収容された液体試料27の体積を一義的に特定できることになるのである。

    以上詳細に説明したように本実施形態によれば、例えば定電流駆動型の増幅器により動電型スピーカを駆動し、そのボイスコイルの電圧信号を計測或いは解析することで、マイクロフォン等の検出器を用いることなく、閉鎖系容器及び開放系容器中の被測定物体積の計測が可能となる。 このことにより、液体等の被測定物の接触による損傷の可能性のあるマイクロフォンを用いる必要がなくなり、特に宇宙空間のような無重力環境下で被測定液体が浮遊していても、液体体積を測定できる。 更に、外部雑音等の計測用の音響信号以外の騒音がスピーカの機械系に変換される部分で、変換による損失がマイクロフォンに比して大きいため、マイクロフォンによる検出法よりも外部音響による影響を受けにくいという効果がある。 更に加えて、測定システムの耐騒音性が向上することにより、スピーカの駆動電力を従来法よりも低く抑えてスピーカの発熱量を低下させることができる。 このため、可燃性或いは爆発性の物質の体積計測の際の安全性を向上させることも可能である。 また、計測装置が安価な部品より構成され、スピーカが被測定物と直接接触しない構造よりメンテナンスフリーで長寿命となり、一般製造現場への導入が容易である効果もある。

    特に第1実施形態によれば、地球・月その他の惑星周回の軌道上で、軌道間宇宙輸送機OTVに燃料を供給する、いわゆる燃料ステーション構想において必要不可欠な燃料タンク内残存液量の把握に適用できると考えられる。

    また第2又は第3実施形態は、工場のような比較的騒音レベルの高い環境下での体積計測を可能にし、また開放系容器のように外部騒音が直接容器内部に入ってくる場合にも有効である。 このため、ベルトコンベア上の製品体積の連続計測にも適用でき、既存施設への導入コストなどのメリットも含め工業的に大きな波及効果を期待できる。 例えば、食品工場・選果場での製品体積計、ホイップクリームなど泡沫食材などの製造工程中のオーバーランモニター、製パン・製菓工場でのドウの膨化モニター、焼き上がり評価計などの各種用途が考えられる。

    本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う体積計測装置及び方法もまた、本発明の技術的範囲に含まれるものである。

    (コイルインピーダンス計測と等価モデル)
    次に、第1実施形態の閉鎖系容器について、図12及び図13を参照して、等価モデルを用いた共鳴周波数同定の理論的裏づけを行う。

    入力音波に対する応答音波を検出するために、通常マイクロフォンが用いられる。 閉鎖系容器の場合、容器外にマイクロフォンを設置できないため、燃料容器内部に露出させる必要がある。 液体燃料の接触によるマイクロフォンの損壊が懸念されるため、何らかの保護措置が必要となるが、密封しない限り接触を完全に断つことはできない。 そこで、マイクロフォンを別途設置せず、入力側のスピーカのボイスコイルインピーダンス変化を検出することで、共鳴周波数を同定する。

    スピーカコーンの振動は機械系振動であり、この振動が音響系振動に変換され音となる。 仕切り板付きの共鳴器の場合、共鳴時の共鳴器内部での音圧が、仕切り板と密閉空間を介してスピーカコーンの機械系振動に影響を及ぼす。 スピーカコーンの振動はボイスコイルの電気系振動に影響を与える。

    ボイスコイルの電気インピーダンスは、コイルの静的な特性としてのインピーダンスと、コイルの動きに対応する動的な特性としてのインピーダンスが合成されたものである。 電気インピーダンスはボイスコイルの速度を反映する。 共鳴時には、このコイルの振動速度が極値をとるため、インピーダンス曲線から共鳴周波数が推定できると考えられる。

    共鳴時の波長が共鳴器サイズよりも大きく、集中定数系で近似できるとして、スピーカコーン(振動板)からみた機械系および音響系振動をすべて機械系に置き換えて得た電気的類推回路を図12に示す。

    図12の等価回路の駆動力を一定とした時、振動板であるスピーカコーン2aから負荷をみた時の等価機械インピーダンスは次式であらわされる。

    但し、
    sp :スピーカコーン(振動板)の等価機械質量 R sp :スピーカコーン(振動板)の等価機械抵抗 S sp :スピーカコーン(振動板)の等価機械スティフネス R bk :スピーカ背後空洞部の等価機械抵抗 S bk :スピーカ背後空洞部の等価機械スティフネス R md :スピーカコーン(振動板)-仕切り板間の空洞部の等価機械抵抗 S md :スピーカコーン(振動板)-仕切り板間の空洞部の等価機械スティフネス M wl :仕切り板の等価機械質量 R wl :仕切り板の等価機械抵抗 S wl :仕切り板の等価機械スティフネス R c1 :第1容器の空洞部の等価機械抵抗 S c1 :第1容器の空洞部の等価機械スティフネス R c2 :第2容器の空洞部の等価機械抵抗 S c2 :第2容器の空洞部の等価機械スティフネス M po :管部の等価機械質量 R po :管部の等価機械抵抗 駆動力、振動板速度の実効値をそれぞれF、Vとすると次式が成立する。

    音響系における気相部の抵抗R bk 、R md 、R po 、R c1 、R c2が無視できるほど小さく、かつ、
    {(S c1 +S c2 )/M po } 1/2 << [{(S sp +S bk +S wl )+S md }/(M sp +M wl )] 1/2
    が成立するとき、即ちスピーカコーンと仕切り板の間の空間を第1容器4、第2容器6に比して十分に小さくしてS mdを大きく取った場合、(1)式、(2)式より、ω={(S c1 +S c2 )/M po } 1/2で、振動板速度は極大となる。 ヘルムホルツ共鳴系を、ネックチューブ中の気柱質量と容器内空洞の空気バネからなる1自由度振動系と仮定したとき、S c1 、S c2 、M poはそれぞれS c1 =γP /V 、S c2 =γP /V 、M po =ρALと表すことができ、これをωの式に代入し、気体の音速式c=(γP /ρ) 1/2を用いて整理すると、極大点周波数f は次のようになる。
    f =(c/2π)×[(A/L)×{(1/V1)+(1/V2)}] 1/2
    (3)
    但し、
    γ:空気の比熱比 ρ:空気密度 :空気圧力 c:空気中の音速 V :閉鎖系共鳴器の容器1の空洞部容積 V :閉鎖系共鳴器の容器2の空洞部容積 A:閉鎖系共鳴器のネックチューブ断面積 L:閉鎖系共鳴器のネックチューブ長
    (3)式は発明者が導出した閉鎖系容器のヘルムホルツ共鳴式と一致する。 等価回路素子の各パラメータについて、図1の共鳴器の寸法と空気の物性値から推定可能なものはそれを用い、それ以外は任意の値を与え、(1)、(2)式から第2容器6の容量に対して液体を0、10、20%入れたときの振動板速度の周波数特性を計算したものを図13に示す。 やや右上がりのベースライン上に一つの共振点が認められる。 別途(3)式より算出した共鳴周波数は、201.62、204.95、209.04Hzとなり、図13中の共振周波数と一致する。

    ヘルムホルツ共鳴周波数は、その空洞部分に物体があると共鳴周波数が増加する。 これは物体体積を除く空洞部の空気の音響容量が減少するため、換言すれば空洞部の等価機械スティフネスS c2 (第2容器6に物体を入れた場合)が増加するためである。 図13より、ヘルムホルツ共鳴周波数と同じく、S c2の増加とともに極大点周波数も増加していることが確認できる。 ボイスコイルの速度が大きくなると、その電気インピーダンスも増加する。 従って、電気インピーダンスの周波数応答を計測することによって、その極大点周波数から共鳴周波数が推定できると考えられる。

    実際の計測においては、白色雑音や掃引信号に対する応答信号からスペクトルを推定し、共鳴周波数を同定する。 その場合、スペクトル推定のために高速フーリエ変換(FFT)が用いられることが多い。 演算が高速なため、計測系に組み込んでも実時間処理が十分可能である。 しかしFFTを用いた場合、データ長が小さくなると周波数分解能が低下するため、発熱抑制を目的とした信号印加時間の短縮は、周波数から計算される体積の推定精度の低下につながる。

    そこで本発明では、FFTに替えて、短いデータからでも分解能の高いスペクトル推定ができる最大エントロピ法(MEM)を用いる。 通常、スピーカは定電圧で駆動されるため、電気インピーダンス計測はコイル電流の測定により行う。 この場合、電気インピーダンスの逆数に比例した出力になるため、電気インピーダンス曲線で極大値をとる周波数では、逆に極小値になる。 しかし、MEMは極小点の推定に適用することが困難なため、スピーカを定電流で駆動し、そのボイスコイル間電圧を計測することで、電気インピーダンスの変化に比例した出力を取り出すのである。

    本発明に係る体積計測装置及び方法は、例えば、宇宙環境技術や製造ラインにおける密閉系(閉鎖系)容器内又は開放系容器内の物体体積を計測する、体積計測に利用可能である。 更に、燃料電池車の液体水素タンク内の燃料残量計測に利用可能である。 また本発明は、クリーンエネルギーとして自動車以外に水素が用いられる場合においても、燃料タンク内の液体水素計測にも利用可能である。

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