【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は計量装置に関し、特に、流量計や重量計の信号を取り込み、液体または粉体などの計量物を、タンクなどに一定の量だけ送り出して計量する計量装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】ストックタンクなどに貯留された液体を調製タンクなどに一定の量を計測して送り出すバッチ計量器などでは、流量計とバルブとを直列に接続して、ストックタンクから調製タンクへ液体を一定量だけ送り出している。 このような計量器では、送出停止信号を発してから実際に液体の送出が停止するまでのオーバー量をプリセット値として予め求めて、これを記憶している。 そして、流量計からの送り出し速度に基づき求めた送出積算量が、計量設定値から前記プリセット値に相当する流量値を差し引いた値になったときに、送出停止信号を出して、計量設定値分だけ調製タンクへ液体を送り出している。 【0003】また、計量時間を短縮するために、前記バルブとして、大口径バルブと小口径バルブとを並列に接続したものを用い、計量開始時点では高速に液体を送り出し、計量設定値から一定値を引いた値になったときに、大口径バルブを閉じて低速に液体を送り出すようにしている。 なお、液体の送り出し速度を高速から低速に切り換えるタイミングのために、前記一定値を予報値として予め記憶している。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】このような計量装置では、計量開始時点において液体の送り出し速度を高速にして行っている。 このため、計量設定値が小さい場合には、計量開始直後において送出速度出力が高速から始まるために、一瞬にして予報値を超え、その直後に低速への切り換えが起きる。 この結果、送り出し速度が短時間に高速から低速へ変化し、流速が安定する前に計量物の送出の停止が発生する。 これにより、大きなオーバーランが生じて計量精度が低下するという問題がある。 【0005】また、従来のものでは、計量物の送出速度が変動すると誤差が大きくなり、計量精度が低下するという問題がある。 【0006】本発明は上記課題を解決するためのものであり、計量物の送出速度の変動による影響を少なくし、 しかも少量計量でも計量精度が低下することがないようにした計量装置を提供することを目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために請求項1記載の計量装置では、計量物を送り出す計量物送出手段と、前記計量物送出手段による計量物の送出速度を検出する送出速度検出手段と、前記計量物の送り出しを停止する送出停止手段と、前記計量物の送出停止の信号を出してから実際に送出が停止するまでのムダ時間に基づき、前記送出速度検出手段による送出速度と前記ムダ時間とを乗じてプリセット値を求めるプリセット値算出手段と、前記送出速度検出手段による送出速度に基づき送出積算量を求め、この送出積算量が、計量設定値から前記プリセット値を引いた値となったときに、送出物の送りを停止する信号を前記送出停止手段に出す制御手段とを備えている。 【0008】なお、前記計量物送出手段は、前記計量物の送出速度を変える送出速度可変機構を有し、前記制御手段は、計量設定値から一定量の予報値を引いた値になったときに前記計量物の送出速度を高速から低速に切り換えるように構成されていることが好ましい。 また、計量開始時点で前記計量設定値と前記予報値とを比較し、 計量設定値が予報値以下のときに、前記送出速度可変機構を介して送出速度を低速にして計量物を送出することが好ましい。 【0009】請求項4記載の計量装置では、計量物の送出速度が切り換え可能な計量物送出手段と、前記計量物送出手段による計量物の送出速度を検出する送出速度検出手段と、前記計量物の送り出しを停止する送出停止手段と、前記送出速度検出手段による送出速度に基づき送出積算量を求める送出積算量算出手段と、前記送出積算量算出手段の送出積算量が、計量設定値から一定量の予報値を引いた値になったときに、前記計量物の送出速度を高速から低速に切り換え、この後に前記計量物の送出停止の信号を出してから実際に送出が停止するまでのムダ時間と前記送出積算量とに基づき送出物の送りを停止する信号を前記送出停止手段に出す制御手段と、計量開始時に前記計量設定値と前記予報値とを比較し、計量設定値が予報値以下のときに、前記計量物の送出速度を低速にする送出速度切替手段とを備えている。 【0010】 【発明の実施の形態】図1は本発明を実施したバッチ計量装置を示す概略構成図である。 ストックタンク10内に貯留された液体11は、流量計12、大口径バルブ1 3、小口径バルブ14を介して、調製タンク15に送られる。 大口径バルブ13と小口径バルブ14とは配管1 6,17により並列に接続されている。 また、大口径バルブ13及び小口径バルブ14とストックタンク10との間には、配管16、18を介して、流量計12が直列に接続されている。 【0011】流量計12は、ストックタンク10からの液体11の流量を検出し、この流量信号Vfを計量装置本体20に出力する。 計量装置本体20はPLC(プログラマブルコントローラ)を用いて構成されており、ソフトウェアによって、デジタルフィルタ21、プリセット値算出部22、流量積算器23、メインシーケンス部24、出力器25、高速タイマ26、高速出力器27などの各機能ブロックが設けられている。 そして、デジタルフィルタ21、プリセット値算出部22、流量積算器23、メインシーケンス部24、出力器25は、1秒の低速スキャンで実行され、高速タイマ26、高速出力器27は0.01秒の高速スキャンで実行される。 【0012】また、外部からは人手により動作ムダ時間T、計量設定値A、予報値B、計量開始信号St が図示しないキーボード等の入力部28を用いて入力され、動作ムダ時間T、計量設定値A、予報値Bなどがメモリ2 9に記憶される。 また、人手によるキー入力等に代えて、別の制御系のシステムコントローラから、これら所定の値が入力される。 【0013】デジタルフィルタ21では、流量計12の流速信号Vf (mL/s)に対してデジタルフィルタ処理を行い、低域を通過させるフィルタとして機能させる。 これにより、プリセット値算出部22における算出結果を安定させることができる。 プリセット値算出部2 2では、デジタルフィルタ21からの流速信号Vf とメモリ29に記憶された動作ムダ時間Tとを乗じることで、プリセット値Vprを算出する。 このプリセット値V prはメインシーケンス部24に送られる。 【0014】また、流量計12からの流速信号Vf は流量積算部23に送られ、ここで流速信号Vf に基づき積算流量PVが求められる。 求めた積算流量PVはメインシーケンス部24に送られる。 【0015】メインシーケンス部24では、入力部28 から入力されてメモリ29に記憶された計量設定値A及び予報値Bと、入力部28から入力された計量開始信号Stとに基づき、計量処理を実行する。 【0016】図2は、メインシーケンス部24における計量処理を示すフローチャートである。 先ず、電源投入後の初期化後に、動作ムダ時間T、計量設定値A、予報値Bがメモリ29から読み出され、これが図示しないディスプレイに表示される。 これら動作ムダ時間T、計量設定値A、予報値Bは入力部28のキーボードや入力つまみ等の操作により予め入力され、この入力されたものが更新されない限り同じものが表示される。 これらの値は、必要に応じてキーボードなどからの入力操作や、他の制御系からの信号入力によって更新される。 【0017】次に、計量開始信号St の入力待ち状態になり、計量開始信号St が入力されると、先ず、計量設定値Aと予報値Bとが比較される。 そして、計量設定値Aが予報値Bを超えている場合には、大口径バルブ13 と小口径バルブ14とが開けられる。 また、計量設定値Aが予報値B以下の場合には、小口径バルブ14のみが開けられる。 このように、計量設定値Aが予報値B以下の場合に、小口径バルブ14のみを開けて、ストックタンク10の液体11が低速で送られる。 したがって、少量計量の場合であっても、安定した流速のもとに計量開始することができ、オーバーランすることもなく精度のよい計量が可能になる。 【0018】大口径バルブ13が開いている状態では、 流量積算器23により、流量計12からの流速信号Vf に基づき積算流量PVが求められる。 そして、計量設定値Aから予報値Bを引いた値を基準にして、積算流量P Vがこの値以上になったときに、大口径バルブ13が閉じられる。 この後は、計量設定値A、プリセット値Vp r、積算流量PV、及び流速Vfに基づき、小口径バルブ14を閉じるタイミングが決定される。 【0019】プリセット値Vprは、プリセット値算出部22によって、デジタルフィルタ21を介して入力される流速信号Vf に動作ムダ時間Tを乗じることで求められる。 このプリセット値Vprは1秒間隔で求められ、流速変動に追従している。 したがって、液体11の流速変動が生じても安定した計量精度を確保することができる。 【0020】しかも、小口径バルブ14の制御系は、 0.01秒の高速スキャンで実行されるため、小口径バルブ14を瞬時に閉じることができ、液体11の送出を精度よく止めることができる。 【0021】図3及び図4は、大口径バルブ13と小口径バルブ14との開閉動作と、流量計12からの流速信号Vf と、流量積算器23からの積算流量PVとの関係を示している。 図3は、計量設定値Aが予報値Bを超えている場合のものであり、図4は、計量設定値Aが予報値B以下の場合のものである。 【0022】図3に示すように、先ず、計量開始信号S t が入力されると、大口径バルブ13と小口径バルブ1 4とが開かれて、ストックタンク10の液体11が調製タンク15に高速で送り出される。 そして、流量が安定するまで待った後(実際にはマスクタイマにて計測される一定時間の後)に、流速が一定時間(例えば1秒)毎にチェックされる。 そして、得られた流速に基づきプリセット値Vprが求められる。 また、流量積算器23により積算流量PVが1秒毎にチェックされる。 そして、計量設定値Aから予報値Bを引いた比較値(A−B)に、 積算流量PVが達すると、出力器25を介して大口径バルブ13が閉じられる。 【0023】次に、流速変動に追従して求められるプリセット値Vpr、計量設定値A、流量Vrに基づき、小口径バルブ14を閉じるか否かの判定が行われる。 この判定は、現在の積算流量PV、プリセット値Vpr、1秒後の予測増加流量Vr(=現在の流速Vf(mmL/s)× 1(s))を加算したもの(PV+Vpr+Vr)と計量設定値Aとを比較し、比較値(PV+Vpr+Vr)が計量設定値A以上の場合に、小口径バルブを閉じる高速処理を実行する。 また、比較値(PV+Vpr+Vr)が計量設定値A未満の場合には、PV,Vprの算出処理と、 計量設定値A及び比較値(PV+Vpr+Vr)の比較処理とが1秒間隔で続行される。 【0024】小口径バルブを閉じる高速処理は0.01 秒周期の高速スキャンで実行される。 この処理では、計量設定値Aが得られる小口径バルブ14の閉じるタイミングをΔtとして求める。 このΔtは、次式から求められる。 【0025】Δt=(A−PV−Vpr) /Vr 【0026】次に、このΔtが高速タイマ26にセットされ、このΔtを経過したときに、高速出力器27を介して小口径バルブ14が閉じられる。 【0027】図5は、小口径バルブ14を閉じるタイミングを説明するためのグラフである。 時間を示す横軸において、t1,t2,t3は、それぞれ低速スキャンの開始時点を示している。 上記判定式によって、次の低速スキャンのタイミングt3前に積算流量PVが計量設定値Aを超えると判定される場合には、このt2〜t3の時間内で小口径バルブ14を閉じる高速処理が行われる。 そして、高速タイマ26によって、Δtを経過した後に小口径バルブ14が閉じられるため、積算流量PV が計量設定値Aに精度良く達する。 【0028】また、図4に示すように、計量設定値Aが予報値B以下の場合には、計量開始信号St により小口径バルブ14のみが開けられ、ストックタンク10の液体11が低速で送り出される。 そして、上記同様にしてプリセット値Vprが流速Vfに基づき求められる。 また、流速変動に追従して求められるプリセット値Vpr、 計量設定値A、流量Vrに基づき、上記と同様にして、 小口径バルブ14を閉じるか否かの判定が行われる。 そして、判定結果により小口径バルブ14を閉じるときには、上記同様にして、高速処理によりΔtを算出し、このΔtが高速タイマ26にセットされ、このΔtを経過したときに、高速出力器27を介して小口径バルブ14 が閉じられる。 【0029】なお、上記実施形態では、大口径バルブ1 3と小口径バルブ14とを用いて、液体11の送出速度を高速と低速とに切り換えたが、この他に、1つのバルブを用いて、その開度を2段階または連続的に切り換える場合に本発明を実施してもよい。 【0030】また、上記実施形態では、PLCを用いて計量装置本体20を構成したが、この他に、図6に示すように、ローパスフィルタ50、プリセット値算出部5 1、流量積算器52、コントローラ53、出力器54、 高速出力器55、入力部56などをハードウェアで構成した計量装置本体57を用いてもよい。 この場合にも、 ローパスフィルタ50により流速信号Vf の低域を通過させ、この流速信号Vf を用いて、プリセット値算出部51で、流速値と動作ムダ時間Tとを乗じて、プリセット値Vprを算出する。 なお、図1に示す構成部材と同一の構成部材に同一符号を付して重複した説明を省略している。 この場合には、図7に示すような処理手順にしたがって、各バルブ13,14が閉じられる。 【0031】上記実施形態では、ストックタンク10の液体11を調製タンク15に一定量送り出す場合に本発明を実施したが、この他に、液体に代えて粉体等を一定量送り出す場合に本発明を実施してもよい。 また、流量計12などを用いて送出速度を検出する代わりに、重量計などの計量値を直接に計測する場合に、計量値の変化を求め、この計量値変化に基づき動作ムダ時間Tと計量値変化量とを乗じてプリセット値Vprを求め、このプリセット値Vprに基づき計量物の投入動作を停止させる場合に、本発明を実施してもよい。 更には、一定量のバッチ計量装置のみならず、位置決め制御において、位置を前記計量値に置き換えることで、精度のよい位置決め制御も可能になる。 【0032】 【発明の効果】本発明によれば、計量物の送出停止の信号を出してから実際に送出が停止するまでのムダ時間に基づき、送出速度検出手段による送出速度とムダ時間とを乗じてプリセット値を求めたから、送出速度の変動に応じてプリセット値を追従させることができる。 したがって、計量物の送出速度の変動によって誤差が生じることがなく、計量精度が低下することがない。 また、送出速度からプリセット値を求めてこれを用いるだけでよく、既存の計量装置にも簡単に実施が可能になる。 【0033】計量物の送出速度を変える送出速度可変機構を有する計量物送出手段を設け、計量設定値から一定量の予報値を引いた値になったときに計量物の送出速度を高速から低速に切り換えるように制御手段を構成することにより、計量速度を低下させることなく、精度のよい計量を行うことができる。 【0034】計量開始時点で計量設定値と予報値とを比較し、計量設定値が予報値以下のときに、送出速度可変機構を介して送出速度を低速にして計量物を送出するから、少量計量において、流速変動を抑えて、精度の良い計量を実施することができる。 したがって、広い計量設定レンジを持つ計量装置が簡単に提供可能になる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明を実施したバッチ計量装置の概略構成を示す機能ブロック図である。 【図2】バッチ計量の処理手順を示すフローチャートである。 【図3】計量設定値が予報値を超えている場合の各バルブの動作と、流速及び計量値との関係を示すグラフである。 【図4】計量設定値が予報値以下の場合の各バルブの動作と、流速及び計量値との関係を示すグラフである。 【図5】小口径バルブの閉じ動作を説明するためのグラフである。 【図6】他の実施形態におけるバッチ計量装置の概略構成を示す機能ブロック図である。 【図7】同実施形態におけるバッチ計量の処理手順を示すフローチャートである。 【符号の説明】 10 ストックタンク 11 液体 12 流量計 13 大口径バルブ 14 小口径バルブ 15 調製タンク 16,17,18 配管 20 計量装置本体 21 デジタルフィルタ 22,51 プリセット値算出部 23,52 流量積算器 24 メインシーケンス部 25,27,54,55 出力器 50 ローパスフィルタ 53 コントローラ |