【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、飛翔開始から所定時間経過後に分割し、分割部分の抵抗の増加により各分割部分を落下させ、飛翔距離が規定の範囲に制限されるよう構成された高速飛翔体、特にそれの翼部材に関する。 【0002】 【従来の技術】従来より、高速で飛翔すると共に、低融点合金でなる融解部材によって支持された作動シャフトが弾頭本体の内部に収容されて弾頭が構成され、飛翔時の空力加熱による前記融解部材の温度上昇によって前記作動シャフトの支持状態を解除して作動スイッチを作動させるように構成された高速飛翔体は知られている(例えば特開平4−328612号公報参照)。 【0003】そして、そのようなものでは、高速飛翔体の分割を行い、各分割部分の抵抗の増加により落下させ、飛翔距離を規定の範囲に制限することが行われている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】ところが、そのような高速飛翔体を構成する分割部分のうちの翼部材は、もともと飛翔体の飛翔の安定化のために設けられた要素部品であるため、分割後においても相当距離安定して飛翔し、それの飛翔距離を規定の範囲に制限することが困難であった。 【0005】一方、分割後あまり飛翔しないように翼部材の形状を変更することが考えられるが、そのようにすると、翼部材はもともと飛翔体の飛翔の安定化のために設けられたものであるから、分割前の飛翔に悪影響が出るおそれがある。 【0006】本発明は、分割前の飛翔に影響を与えることなく、分割後の翼部材の飛翔を不安定にし、飛翔距離を規定の範囲に制限することができる高速飛翔体を提供するものである。 【0007】 【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、翼部材(1)を備え、飛翔開始から所定時間経過後に分割し、分割部分の抵抗の増加により各分割部分を落下させ、飛翔距離が規定の範囲に制限されるよう構成された高速飛翔体を前提とし、上記翼部材(1)に、一端が前面部に開口し他端が側部に開口する通気孔(3)が形成されている構成とする。 そして、請求項2の発明においては、通気孔(3)が、途中に絞り部(4)が形成されている。 【0008】請求項3の発明は、翼部材(11)を備え、飛翔開始から所定時間経過後に分割し、分割部分の抵抗の増加により各分割部分を落下させ、飛翔距離が規定の範囲に制限されるよう構成された高速飛翔体を前提とし、翼部材(11)は、分割後に非対称になるように予め非対称に形成されている構成とする。 【0009】 【作用】請求項1の発明によれば、高速飛翔体の分割後、翼部材(1)の前面部が露出することとなるので、 よどみ点圧力を駆動力として、一端が前面部に開口し他端が側部に開口する通気孔(3)を通じて側部より空気が吹き出し、翼部材(1)の飛翔が不安定化する。 【0010】即ち、通気孔(3)を通じての側部よりの空気の吹出しにより、翼部材(1)は、半径方向の荷重を受け、吹出し前方部に発生する衝撃波により、吹出し側の空力抵抗が増加し、飛翔速度が低下する。 そして、 高速飛翔体の飛翔距離が規定の範囲に制限される。 【0011】請求項2の発明によれば、通気孔(3)に絞り部(4)を設けているので、通気孔(3)を流れる空気の流れが超音速となって衝撃波の発生が顕著となり、飛翔が、通気孔を設けるだけの場合に比べてより不安定となる。 【0012】請求項3の発明によれば、分割前の形状には影響がないので、分割前の飛翔にはほとんど影響がないのは勿論、所定距離飛翔して高速飛翔体が分割すると、翼部材(11)の形状が非対称であることから、非対称に空力抵抗を受けることとなり、飛翔が不安定になる。 それに加えて、回転時に起こる振れを助長し、空力抵抗を増加させるので、飛翔速度が大きく低下する。 そして、飛翔距離が規定の範囲に制限される。 【0013】 【実施例】以下、本発明の実施例を図面に沿って詳細に説明する。 尚、本実施例は、訓練用戦車砲弾に適用した場合について説明する。 【0014】ー実施例1ー 本例に係る高速飛翔体は、低融点合金でなる融解部材によって支持された作動シャフトが弾頭本体の内部に収容されて弾頭が構成され、飛翔時の空力加熱による前記融解部材の温度上昇によって前記作動シャフトの支持状態を解除して、弾頭、砲弾本体、翼部材等に分割されるように構成されている。 【0015】高速飛翔体の翼部材付近は、図1に示すように、飛翔開始から所定距離飛翔した後、翼部材(1) の嵌合凹部(1a)と、砲弾本体部(2A),(2B) の嵌合凸部(2),(2b)との嵌合関係が解除され、 そして翼部材(1)と、分割された砲弾本体部(2 A),(2B)とが分離されるようになっている。 【0016】翼部材(1)は、図2に示すように、前後方向に長い円柱状の本体部(1A)と、該本体部(1 A)の後部において半径方向に対称に立設された複数の尾翼(1B),…とを有する。 そして、上記嵌合凹部(1a)は、本体部(1A)の前部に形成されている。 【0017】翼部材(1)の本体部(1A)には、通気孔(3)が非対称に形成されている。 具体的には、通気孔(3)は、翼部材(1)の前面中央部に開孔し後方に延びる第1孔部(3a)と、該第1孔部(3b)の後端部に連通し外側になるほど後側に位置するように傾斜して本体部(1A)の側部に開孔する第2孔部(3b)とを有する。 【0018】上記のように構成すれば、高速飛翔体の分割後、翼部材(1)の前面が露出することとなるので、 よどみ点圧力を駆動力として、半径方向に空気が吹き出し、翼部材(1)の飛翔が不安定化する。 即ち、通気孔(3)よりの空気の吹出しにより、翼部材(1)は、半径方向の荷重を受け、吹出し前方部に発生する衝撃波W により、図2における上面側の空力抵抗が増加し、飛翔速度が低下する。 そして、高速飛翔体の飛翔距離が規定の範囲に制限されることになる。 【0019】また、分割前の状態では、通気孔(3)の前端部は閉塞されているので、通気孔(3)を通じての空気の流れはなく、高速飛翔体の飛翔にはほとんど影響がない。 【0020】上記通気孔(3)の形状は、分割時の速度等を考慮して先細末広ノズル形状にすることもできる。 また、翼部材(3)の回転が翼部材(3)の飛翔の安定性を生み出すので、これを抑制する周方向に通気孔の吹出方向を形成するようにしてもよい。 さらに、通気孔を複数個設けるようにすれば、さらに大きな効果が得られる。 【0021】そのほか、上記通気孔(3)の第2孔部(2b)に絞り部(4)を設けることもできる。 このようにすれば、通気孔(3)を流れる空気の流れが超音速となって衝撃波の発生が顕著となり、飛翔がより不安定となる。 【0022】上記実施例1では、翼部材(1)に通気孔を設けて翼部材の飛翔を不安定にしているが、次の実施例2に示すように、分割後に翼部材が非対称になるようにすることでも不安定にすることができる。 【0023】ー実施例2ー 概略構成を示す図3〜図5において、(11)は翼部材で、上側半分において、半円柱状の本体(11a)の両側に略半円筒状の突出部(11b),(11b)が突設された分割部品(11A)が、翼本体部(11B)及び複数の尾翼部(11C),…より分割されるようになっている。 翼部材(11)に分割部品(11A)が装着された状態では、分割部品(11A)の一方の突出部(1 1b)が翼部材(11)の上側半分に形成された半円円形状の係合孔部(11c)に係合するように構成されており、他方の突出部(11b)は、翼部材(11)が装着される上側砲弾本体部(12A)の断面半円筒状の凹部(12a)に係合するようになっている。 また、翼部材(11)の下側半分においては、翼部材(11)が装着される下側砲弾本体部(12B)の半円筒状の係合凸部(12b)が係合する半円形状の係合孔部(11d) が形成されている。 【0024】上記のように構成すれば、分割前の飛翔にはほとんど影響がないのは勿論、所定距離飛翔して高速飛翔体が分割すると、砲弾本体部(12A),(12 B)等と共に、分割部品(11A)が分離されて翼部材(11)も落下する。 この場合、翼部材(11)は従来とは異なり、翼部材(11)の形状が非対称であることから、非対称に空力抵抗を受けることとなり、翼部材(11)の飛翔が不安定になり、落下し易くなる。 【0025】それに加えて、翼部材(11)の非対称性が、翼部材(11)の回転時に起こる翼部材(11)の振れを助長し、空力抵抗を増加させるので、この点においても、飛翔速度の低下に寄与する。 そして、高速飛翔体の飛翔距離が規定の範囲に制限される。 【0026】 【発明の効果】請求項1の発明は、上記のように、翼部材(1)に一端が前面部に開口し他端が側部に開口する通気孔(3)を形成するようにしているので、分割前の飛翔に影響を与えることなく、分割後の翼部材(1)の飛翔を不安定にし、飛翔距離を規定の範囲に制限することができる。 【0027】請求項2の発明は、通気孔(3)に絞り部(4)を形成しているので、通気孔(3)を流れる空気の流速を制御して、より不安定にすることができる。 【0028】請求項3の発明は、上記のように、翼部材(11)の形状を非対称としているので、分割後に非対称に空力抵抗を受け、飛翔が不安定になるようにすることができると共に、回転時に起こる振れを助長し、空力抵抗を増加させることとなり、飛翔速度を低下させることができ、分割前の飛翔に影響を与えることなく、飛翔距離を規定の範囲に制限することができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】高速飛翔体の分割の説明図である。 【図2】翼部材の実施例1の説明図である。 【図3】翼部材の実施例2の説明図である。 【図4】分割部品の斜視図である。 【図5】図3のVV 線における断面図である。 【符号の説明】 1 翼部材 2A,2B 砲弾本体部 3 通気孔 11 翼部材 11A 分割部品 12A,12B 砲弾本体部 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高岡 康人 大阪府摂津市西一津屋1番1号 ダイキン 工業株式会社淀川製作所内 (72)発明者 三好 秀貴 大阪府摂津市西一津屋1番1号 ダイキン 工業株式会社淀川製作所内 |