【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、古紙をパルプ化して半球形にモールド抄造形成した打揚げ花火用の古紙モールド玉皮に関する。 【0002】 【従来の技術】一般に賞揚されている尺玉、あるいは割物と称される打揚げ花火の構造は、玉皮と、これの内部に装填される割薬と、花火効果演出用の多数の星、及び玉皮外部に引出される導火線の四つの要素から構成されている。 【0003】玉皮は、伝統的に古新聞などの古紙を幾重にも張合わせて半球状に形成した内皮と、内皮の外面に厚く貼ったハトロン紙やクラフト紙などの丈夫な紙からなり、一対の内皮の内周にそれぞれ各種火薬類を団子状に形成した多数の星を配列し、その内側に割薬を充填した後、内皮同士を球形に組合わせ、次いで内皮の外周にクラフト紙などからなる外皮を厚く貼付けて一体化することで完成する。 このものの打揚げ方法は、玉を打上げ筒に入れ、筒内の揚薬に点火することによって打上げられる。 そして、玉が打上げ筒より発射されると同時に、 その揚薬の火炎によって導火線の外端部に点火し、上空の所望高さに到達するまで適当な延期秒時を保ち、次いで内部割薬に点火し、これによって玉皮が破裂すると同時に、星が菊花状に四散しつつ燃焼することで、空中にその花火の意匠が短時間のうちに形成される。 【0004】以上の構成における玉皮の機能は、割薬の爆発による四散効果を十分に発揮でき、しかもそれ自体が粉々になって飛散るものであることが要求される。 つまり、玉皮が固く丈夫に作られているほど、割薬の破裂エネルギーによる四散効果が高く、広がりの大きな形状となる。 【0005】ところで、以上の打揚げ花火づくりは基本的には伝統産業であり、手作り的な要素が高い。 しかし、昨今では各地における打揚げ花火ブームにより、花火需要が増加している。 これに対応して花火業者も増産体制を整えつつあるが、各製作工程において、玉皮を従来のように手作りしたのでは生産が追いつかず、特に内皮は新聞紙を幾重にも積層しつつ貼着し、半球状に造形する作業であるため、生産効率が悪く、造形にも熟練を要するため、増産のためのネックとなっていた。 【0006】この不具合を解消するため、最近では内皮として厚手硬質の紙をプレス成形により半球状としたものに代替されつつある。 この硬質紙プレス成形内皮は、 機械生産されるものであるため、形状が均一で量産性に富む。 また固く丈夫な紙から出来ているため、割薬による四散効果を内皮によって作ることが出来るとされていた。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】しかし、実際には、この硬質紙プレス成形内皮は、成形にあたり多大なプレス圧が必要で、かつプレス後に個々に周縁部をカッターで切断して半球形状に整えねばならず、よって成形加工性が良いとはいえず高価なものとなり、しかも強度も大きくなりすぎ、このため、割薬の爆発時に粉々になって粉砕されずに、複数の破片となって飛散ったり、割薬量が少ないと、合わせ目から割れて飛ぶ場合が多々見られ、 落下時に危険であるばかりでなく、四散する星に対する障害となることにより、思うような意匠効果を得られなくなる原因ともなっていた。 【0008】そこで本願出願人は、上記従来の問題点を解消すべく鋭意研鑽を重ねた結果、古新聞などの古紙をパルプ化して半球形にモールド抄造形成した後、熱プレスして内外周面を平滑にした再生厚紙成形体で内皮を構成した打揚げ花火用玉皮を開発し、先に出願した。 即ち、当該打揚げ花火用玉皮は、安価で量産性に富み、かつ固さや強度過剰に起因する不具合を解消でき、しかも熱プレスして内外周面を平滑に形成するので、星外周面の火薬剥離を防止でき、かつ外周面へのハトロン紙等の貼り込み性にも優れる。 【0009】しかしながら、その後さらに研究開発を進めていくなかで、当該先に出願した打揚げ花火用玉皮では、以下の点で改善の余地のあることが判った。 すなわち、古紙をパルプ化して半球形にモールド抄造形成した玉皮であるため、割薬の爆発によって容易に粉砕四散させることができる反面、その四散する破片の内周面に割薬がこびり付いていたりすると、特に10号玉程度以上の大玉の場合に、割薬の残り火が粉砕された砕断面から移ってしまい地表に落下した後も燻りつづけてしまう虞がある。 【0010】本発明は、上記課題を解決するものであって、その目的は、安価で量産性に富むと同時に、固さや強度に起因する不具合や、星外周面の火薬剥離を防止できるだけでなく、粉砕された破片に割薬の残り火が移って燻ることがない打揚げ花火用古紙モールド玉皮およびその製造方法を提供することにある。 【0011】 【課題を解決するための手段】以上の目的を達成するため、請求項1に係る発明の打揚げ花火用古紙モールド玉皮は、古新聞や段ボールなどの古紙パルプを用いて半球形状にモールド抄造されるとともに、内外周面が熱プレスにより平滑に形成された再生厚紙成形体でなる打揚げ花火用古紙モールド玉皮であって、該再生厚紙成形体の少なくとも内外表面には水溶性難燃剤が含浸圧縮されていることを特徴とするものである。 【0012】以上のように構成された内皮は、熱プレス時のプレス圧力を玉皮寸法等に応じて調整することで、 その大きさに拘わらず従来の新聞紙を積層貼着して得た内皮と同等の強度に成形でき、内部に各種火薬類の星等を充填配列する際の作業性を同等に保つことができる。 しかもパルプをモールド抄造形成したものであるから星割薬破裂時に粉々に粉砕され易く、従来の硬質紙のプレス成形内皮に比べて落下時の危険性や、意匠効果の逸失も防止でき、加えて、飛散して地表に落下した破片は、 土中のバクテリアによって容易に分解されて土に還るので、極めてエコロジーである。 また、量産効果が得られ安価に製造できる。 さらに、熱プレスにより内・外周表面が平滑に形成されるから、内周面に星が擦られることによる火薬の剥落を可及的に防止でき、外周面へのハトロン紙等の貼り込み性にも優れる。 更に、少なくとも玉皮の内・外周表面には難燃剤が含浸圧縮されているから、粉砕された破片の内表面にこびり付いた割薬の残り火が移って燻るのを防止できて防火性に優れる。 【0013】また、請求項2の発明に示すように、前記再生厚紙成形体の少なくとも内外表面には、水溶性難燃剤とともに防水剤をも含浸圧縮させるようにするのが望ましい。 この様に防水剤も含浸圧縮させれば、倉庫保管時などにおける耐湿性の向上も図れて、長期の保管にも耐え得るようになる。 【0014】請求項3に示す発明の打揚げ花火用玉皮の製造方法では、古新聞や段ボールなどの古紙を解離してパルプ化する工程と、該パルプ化した古紙から半球形状の再生厚紙成形体を抄造成形して乾燥させる抄造・乾燥工程と、抄造・乾燥工程後の再生厚紙成形体を水溶性の難燃剤の水溶液中に浸漬・含浸させてから乾燥させる難燃加工工程と、難燃加工工程後の再生厚紙成形体を熱プレスして表面を平滑に圧縮形成する熱プレス工程と、を有することを特徴とするものである。 【0015】この請求項3に係る発明の製造方法は、7 号玉以下程度までの玉皮の製造に適した製造方法であり、難燃剤には一般に建材用として用いられている廉価な水溶性のものを使用でき、7号玉程度までであれば、 再生厚紙成形体の玉皮を難燃剤の水溶液中に1回だけ数秒の短時間浸漬させてから乾燥させるだけで、その内外表面に難燃剤の含浸層を十分な厚みに形成し得、かつ熱プレスによりその内外表面を平滑な含浸圧縮層に容易に形成することができる。 難燃加工の前に抄造・乾燥工程で乾燥させて、再生厚紙成形体に含浸した水分を取り除いておくので、難燃剤水溶液の浸透は容易となり、十分な厚みの含浸層が形成される。 これにより、星割薬破裂時に粉々に粉砕され易くて意匠効果の逸失が防止でき、 かつ内周面に星が擦られることによる火薬の剥落も可及的に防止でき、しかも防炎性に優れた玉皮を廉価に製造できる。 【0016】また、請求項4に示す製造方法の発明は、 前記請求項3において、前記難燃加工工程の次に、再生厚紙成形体を防水剤水溶液に浸漬・含浸させて乾燥させる防水加工工程を設けたものである。 この様に、防水加工工程を設けることで、さらに倉庫などでの保管時の耐湿性に優れた玉皮を廉価に製造できる。 【0017】請求項5に示す製造方法の発明は、前記請求項4において、前記再生厚紙成形体を前記難燃剤と防水剤との混合水溶液中に浸漬・含浸させて乾燥させるようにして、難燃加工と防水加工とを同時に一工程で行わせるようにしたものである。 この様に、難燃加工と防水加工とを同時に、一工程の難燃・防水加工工程で処理することで、生産効率をより一層向上させて、防炎性と耐湿性とに優れた玉皮をさらに廉価に提供できるようになる。 【0018】請求項6に係る発明の打揚げ花火用玉皮の製造方法では、古新聞や段ボールなどの古紙を解離してパルプ化する工程と、該パルプ化した古紙から半球形状の再生厚紙成形体を抄造成形して乾燥させる抄造・乾燥工程と、抄造・乾燥工程後の再生厚紙成形体を水溶性の難燃剤と浸透剤との混合水溶液中に浸漬・含浸させてから乾燥させる難燃加工工程と、難燃加工工程後の再生厚紙成形体を水溶性の防水剤の混合水溶液中に浸漬・含浸させてから乾燥させる防水加工工程と、防水加工工程後の再生厚紙成形体を熱プレスして表面を平滑に圧縮形成する熱プレス工程と、を有することを特徴とするものである。 【0019】この請求項6に係る製造方法の発明は、7 号玉より大きな玉皮の製造に適したものである。 即ち、 7号玉より大きな玉皮になるとその肉厚も大きくなるので、難燃剤の水溶液中に再生厚紙成形体を数秒程度浸漬させる難燃加工工程だけでは、水溶液が内部まで十分に浸透し難くなり、防炎性能の面で難燃剤の浸透が不足してしまう。 そこで、防水加工に先んじて浸透剤を添加した難燃剤の水溶液中に再生厚紙成形体を浸漬・乾燥させる難燃加工工程を設けて、浸透剤により難燃剤を十分に含浸・乾燥させてから、防水剤の水溶液中に浸漬・乾燥させて防水加工を施す。 これにより7号玉より大きな肉厚のある玉皮にあっても、星割薬破裂時に粉々に粉砕され易くて意匠効果の逸失が防止でき、かつ内周面に星が擦られることによる火薬の剥落も可及的に防止でき、しかも防炎性と耐湿性とに優れた玉皮を可及的に廉価に製造できる。 ここで、この防水加工時にはその防水剤と共に難燃剤も一緒に混合させておくと更に良い。 【0020】 【発明の実施の形態】以下、本発明の好ましい実施の形態につき、添付図面を参照して詳述する。 図1は本発明に係る打揚げ花火用古紙モールド玉皮を構成する一対の内皮1を示す。 また、図2は第2の発明に係る打揚げ花火用古紙モールド玉皮の製造方法の一例を示す工程図であり、この第2発明の製造方法は7号玉以下の大きさの内皮1の製造に適する。 即ち、図2の工程図に示すように、この実施形態の製造方法によれば、内皮1は、古紙などを原料としてパルプを作製するパルプ化工程、 パルプから半球形状の再生厚紙成形体を抄造成形して乾燥させる抄造・乾燥工程、抄造・乾燥工程後の再生厚紙成形体を水溶性の難燃剤と防水剤との混合水溶液中に浸漬・含浸させてから乾燥させる難燃・防水加工工程、 難燃・防水加工工程後の再生厚紙成形体を熱プレスして表面を平滑に圧縮形成する熱プレス工程とを経て製造される。 以降に上記各工程について7号玉を例にして説明する。 【0021】パルプ化工程 古新聞や段ボール紙などを原材料とする古紙10を水中で撹拌・離解してパルプ化し、これに紙力増強剤やバインダーなどを添加するとともに水で所定量に希釈してパルプ原料11を作製する。 上記紙力増強剤としては、アニオン性アクリル系樹脂が好ましく、例えば、ポリストロン117(商品名 荒川化学工業株式会社製)等が挙げられる。 このポリストロン117はアニオン性アクリル系樹脂15%に対し水85%の水溶液である。 具体的には、段ボール屑40kgを水約0.5m 3中に投入して10分間ほどミキサーで撹拌して解離した後、紙力増強剤のポリストロン117を2.6リットル添加して、 更に2m 3の水で希釈してパルプ原料11とするのが良い。 【0022】抄造・乾燥工程 上記パルプ原料を、成型機12により半球形状の網製型枠14を用いて、例えば半球形状部分を6個有する複数個取りの再生厚紙成形体16にモールド抄造する。 このモールド抄造の抄上時間は35〜40秒程度が良い。 そして、この抄造成形された再生厚紙成形体16は吸引脱型機18によって取型して、2.2分ほど予備乾燥させる。 この予備乾燥後には、再生厚紙成形体16はその平均肉厚が約4.5mm程になる。 また、予備乾燥させた再生厚紙成形体16は、更に乾燥器20内で本乾燥させる。 この際、乾燥室温度は40±10℃に、乾燥室湿度は40±10%に維持して、約5時間乾燥させる。 【0023】難燃・防水加工工程 上記抄造・乾燥形成した再生厚紙成形体16を、共に水溶性の難燃剤と防水剤との混合水溶液17中にどぶ漬けで浸漬してから乾燥させる。 これらの難燃剤及び防水剤としては建材用が使用可能で、難燃剤には例えばノンネンR9711−5(商品名 丸菱油化工業製)等のリン・チッソ系化合物が好ましい。 なお、このノンネンR9 711−5はリン・チッソ系化合物を40%含有する水溶液である。 また、防水剤にはノンネンRM30(商品名 丸菱油化工業製)等フッ素系のものが好ましく、このノンネンRM30はフッ素系固形分を18%含有する水溶液である。 ここで、上記混合水溶液17は、水7リットルに対して難燃剤のノンネンR9711−5を3リットル、防水剤のノンネンRM30を0.5リットルの割合とするのが良い。 【0024】上記再生厚紙成形体16は、十分に撹拌した上記混合水溶液17中に約3秒間浸漬して液だれを切った後、乾燥器20で本乾燥させる。 乾燥室温度及び乾燥室湿度は上記と同じくそれぞれ40±10℃、40± 10%に維持して、約1時間乾燥する。 【0025】熱プレス工程 乾燥された再生厚紙成形体16は、網製型枠14で抄造されているからその内外周面側は細かい凹凸のある粗面に形成されていて滑らかな球面にはなっていないので、 乾燥の終了後にその内外周面を、半球形状の内外型枠を22a,22bを有する熱プレス裁断機22で熱プレス加工すると共に半球形状部分を打ち抜き裁断して、滑らかな内外周面を有する厚みが均一な6個の半球形状の再生厚紙成形体からなる内皮1に成形する。 ここで、熱プレス型温度は140〜150℃に、プレス圧力は200 kg/cm 2程度にして、ガス抜き2回プレスを行い、プレス後の肉厚は3.8mm程にするのがよい。 【0026】なお、上述の実施形態では難燃剤と防水剤とを混合させて、難燃加工と防水加工とを同時に一工程の難燃・防水加工工程で処理するようにしているが、これら難燃加工と防水加工とは分離された難燃加工工程と防水加工工程とで処理するようにしても良い。 その場合、難燃工程では難燃剤水溶液中に再生厚紙形成体を浸漬・含浸させて乾燥させ、防水加工工程では防水剤水溶液中に再生厚紙形成体を浸漬・含浸させて乾燥させる。 そして、難燃加工工程は防水加工工程に先んじて行う。 また、玉皮に高い耐湿性を要求しない場合には、上記防水加工工程は必ずしも要せず、省いても良い。 【0027】図3は請求項6に係る発明の打揚げ花火用古紙モールド玉皮の製造方法の一実施形態を示す工程図であり、この第3の発明の製造方法は7号玉以上の大きさの内皮1の製造に適する。 即ち、図3の工程図に示すように、この製造方法によれば、内皮1は、古紙などを原材料としてパルプ原料を作製するパルプ化工程、 パルプ原料から半球形状の再生厚紙成形体を抄造成形して乾燥させる抄造・乾燥工程、抄造・乾燥工程後の再生厚紙成形体を水溶性の難燃剤と浸透剤との混合水溶液中に浸漬・含浸させてから乾燥させる難燃加工工程、 難燃加工工程後の再生厚紙成形体を水溶性の難燃剤と防水剤との混合水溶液中に浸漬・含浸させてから乾燥させる難燃・防水加工工程、難燃・防水加工工程後の再生厚紙成形体を熱プレスして表面を平滑に圧縮形成する熱プレス工程とを経て製造される。 【0028】ここで、この第3発明の製造方法の実施形態が前述の第2発明の製造方法の実施形態と大きく相異する点は、肉厚が大きくなる7号玉以上の内皮1への難燃剤の浸透を確実となすために、難燃・防水加工工程に先んじての難燃加工工程を増やしている点にあり、 のパルプ化工程との抄造・乾燥工程、の難燃・防水加工工程、及びの熱プレス工程は基本的に前述の第1 実施形態の場合と同じである。 以降に上記各工程について10号玉を例にして説明する。 【0029】パルプ化工程 古新聞や段ボール紙などを原材料とする古紙10を水中で撹拌・離解してパルプ化し、これに紙力増強剤やバインダーなどを添加するとともに水で所定量に希釈してパルプ原料11を作製する。 上記紙力増強剤としては、アニオン性アクリル系樹脂が好ましく、例えば、ポリストロン117(商品名 荒川化学工業株式会社製)等が挙げられる。 このポリストロン117はアニオン性アクリル系樹脂15%に対し水85%の水溶液である。 具体的には、段ボール屑50kgを水約0.5m 3中に投入して10分間ほどミキサーで撹拌して解離した後、紙力増強剤のポリストロン117を3.2リットル添加して、 更に2m 3の水で希釈してパルプ原料11とするのが良い。 【0030】抄造・乾燥工程 上記パルプ原料11を、成型機12により半球形状の網製型枠14を用いて、例えば半球形状部分を6個有する複数個取りの再生厚紙成形体16にモールド抄造する。 このモールド抄造の抄上時間は54〜60秒程度が良い。 そして、この抄造成形された再生厚紙成形体16は吸引脱型機18によって取型して、2.5分ほど予備乾燥させる。 この予備乾燥後には、再生厚紙成形体16はその平均肉厚が約7.0mm程になる。 また、予備乾燥させた再生厚紙成形体16は、更に乾燥器20内で乾燥させる。 この際、乾燥室温度は40±10℃に、乾燥室湿度は40±10%に維持して、約6時間乾燥させる。 【0031】難燃加工工程 上記抄造・乾燥形成した再生厚紙成形体16を、共に水溶性の難燃剤と浸透剤との混合水溶液19中にどぶ漬けで浸漬してから乾燥させる。 これらの難燃剤及び浸透剤としては建材用が使用可能で、難燃剤にはやはりノンネンR9711−5(商品名 丸菱油化工業製)等のリン・チッソ系化合物が好ましい。 また、浸透剤としては例えばデノン1895(商品名 丸菱油化工業製)等のアニオン系界面活性剤が好ましい。 このデノン1895はアニオン性界面活性剤を30%含有する水溶液である。 【0032】上記再生厚紙成形体16は、十分に撹拌した上記混合水溶液19中に約3秒間浸漬し、液だれを切った後、乾燥器20で乾燥させる。 乾燥室温度及び乾燥室湿度は上記と同じくそれぞれ40±10℃、40±1 0%に維持して、約1時間乾燥する。 【0033】難燃・防水加工工程 上記難燃加工をした再生厚紙成形体16は更に、前述の第2発明の製造方法と同様に、難燃剤のノンネンR97 11−5と防水剤のノンネンRM30との混合水溶液1 7中にどぶ漬けで浸漬してから乾燥させる。 ここで、上記混合水溶液17は、やはり水7リットルに対してノンネンR9711−5を3リットル、ノンネンRM30を0.5リットルの割合とするのが良い。 【0034】上記再生厚紙成形体16は、十分に撹拌した上記混合水溶液17中に約3秒間浸漬し、液だれを切った後、乾燥器20で乾燥させる。 乾燥室温度及び乾燥室湿度は上記と同じくそれぞれ40±10℃、40±1 0%に維持して、約1時間乾燥する。 なお、この工程では難燃剤は必ずしも添加する必要はなく、防水剤水溶液に浸漬・含浸させてから乾燥させる防水加工工程としても良い。 【0035】熱プレス工程 乾燥された再生厚紙成形体16は、網製型枠14で抄造されているからその内外周面側は細かい凹凸のある粗面に形成されていて滑らかな球面にはなっていないので、 乾燥の終了後にその内外周面を、半球形状の内外型枠を22a,22bを有する熱プレス裁断機22で熱プレス加工すると共に半球形状部分を打ち抜き裁断して、滑らかな内外周面を有する厚みが均一な6個の半球形状の再生厚紙成形体からなる内皮1に成形する。 ここで、熱プレス型温度は140〜150℃に、プレス圧力は200 kg/cm 2程度にして、ガス抜き2回プレスを行い、 プレス後の肉厚は6.5mm程にするのがよい。 【0036】なお、古紙をパルプ化にあたっては漂白する必要はなく、従ってその色彩は灰色であり、古新聞などの古紙を積層貼着して半球状に造形したものと同じく柔軟性を帯びた半球に形成される。 また、6個取りの再生厚紙成形体16は、例えば5号玉の場合では3〜5m m厚程度に抄造形成して、熱プレス加工により2〜3m m厚程度に圧縮した後、当該熱プレス裁断機22で半球形状の個々の内皮1に裁断する。 また7号玉の場合では5〜10mm厚程度に抄造形成して、熱プレス加工により3〜7mm厚程度に圧縮した後、半球形状の個々の内皮1に裁断する。 【0037】この内皮1の直径及び肉厚は、その内部に詰める星及び割薬の量に応じた規格に従って複数種定められる。 即ち、難燃加工処理が施されて製造される内皮1は、少なくともその内外周表面に難燃剤が含浸圧縮されており、防炎性の可及的な向上が図られている。 更に防水加工処理が施されて製造される内皮1は、防炎性に加えて耐湿性の可及的な向上が図られている。 【0038】また、上記内皮1は二つ合わせにより球面を構成するが、いずれか一方の内底部中心には導火線用の孔1aを開けておく。 この場合、従来の硬質紙プレス成形内皮では、極めて硬質に成型されるため、プレス成型時に導火線用孔も打抜き形成する必要があったが、その柔軟性により、後からキリ孔加工によっても容易に形成できるし、当初から抄造時に孔抜き加工しても良い。 また、両内皮1の合わせ面の縁部を凹凸状に形成することも出来、この場合には二つ合わせ時の位置決めが確実となる。 【0039】次に以上の内皮1を用いた打揚げ花火の組立手順に付いて説明する。 まず、この内皮1は柔軟な素材でできているため、火薬の詰込み時に変形して歪になるおそれがある。 そこで、図4(a)に示すように、予めこの内皮1をこれの外径と同一内径の硬質紙プレス成形体からなる半球状の組立治具2内に嵌合し、次いで(b)に示すように、その内周に団子状に造粒された多数の星3を整列状態に配置する。 ここで、上記組立治具2は硬質紙プレス成形体に限らず、木製、樹脂製等であってもよい。 ただし、火薬の引火事故を防ぐ観点から、 この組立治具2には非導電性の材料を使うことが望ましく、金属は避けた方が良い。 【0040】その後(c)に示すように、新聞紙などからなる仕切り紙4を星3の内周に配置し、その内側に割薬5を充填する。 即ち、内皮1内に星3や割薬5を装填する組立時には、内皮1をその外面半径に等しい半球形状の内面を有した非導電性材料からなる組立治具2に嵌合させて、その内皮1を外周側から補強した状態で行う。 【0041】以上の作業が二つ完成したら、(d)に示すように、素早い作業により治具2ごと内皮1同士を二つ合せすれば、充填作業を完了し、真球状に形成される。 なお、一方の内皮1には予めその導火線孔1aを通された導火線6を割薬5の位置まで引込んでおくことは勿論である。 【0042】その後、内皮1の合わせ面外周にテープを巻いて固定した後、治具2を外し、後は定法に従ってその外周にクラフト紙などの丈夫な紙を多重に積層貼着すれば、図4に示すように内皮1の外周に厚手の外皮7を一体化した打揚げ花火が完成する。 なお、図中符号8は外皮7の頂部位置に突設され、花火を紐で吊下げるための吊下げ環である。 【0043】以上の構造の打揚げ花火は、空中で爆発させた際に、内皮1が粉々になって四散するため、危険や、意匠形状に対する障害がなく、また、基本的に古紙再生紙を用いているので、従来の硬質紙プレス成形内皮に比べて原材料費が安価で、しかも土に還り易くエコロジー的にも好適なものとなる。 【0044】また、内皮1は熱プレス加工が施されて圧縮成形されているので、火薬の詰込み時に内周面が凹んで変形することもなく、また内周面は滑らかに形成されているから、火薬の詰め込み時に星3の外周部が内皮1 の内周面に擦られても火薬が剥落してしまうことを可及的に防止することができる。 さらに外周面も滑らかに形成されているから、ハトロン紙等の貼り込み性にも優れる。 【0045】さらに加えて、内皮1の少なくとも内外周面には難燃剤と防水剤とが含浸圧縮されているから、粉砕された破片の内表面にこびり付いた割薬の残り火が移って燻るのを防止できて防火性に優れるだけでなく、保管時の耐湿性にも優れる。 【0046】なお、以上の実施形態では、いわゆる割物の打揚げ花火に付いてのみ説明したが、吊り物(ぽか玉)と称する非円を描く構図の打揚げ花火にも本発明を適用できることは勿論である。 【0047】 【発明の効果】以上の説明により明らかなように、本発明に係る打揚げ花火用古紙モールド玉皮及びその製造方法によれば、次のような各種優れた効果を奏する。 【0048】(1)請求項1に係る発明の打揚げ花火用古紙モールド玉皮にあっては、安価で量産性に優れるとともに、従来の新聞紙を積層貼着して得た内皮と同等の強度に成形でき、しかも割薬破裂時に粉々に粉砕されることで、従来の硬質厚紙をプレス成形した内皮に比べて落下時の危険性や、意匠効果の逸失も防止できるだけでなく、熱プレス加工が施されて滑らかな内外周面に圧縮成形されているので、火薬の詰込み時に内周面が凹んで変形してしまったり、火薬の詰め込み時に星の外周部が内皮の内周面に擦られて火薬が剥落してしまうことを可及的に防止することができ、さらに外周面へのハトロン紙等の貼り込み性にも優れる。 さらに加えて、少なくとも玉皮の内・外周表面には難燃剤とが含浸圧縮されているから、粉砕された破片の内周表面にこびり付いた割薬の残り火が移って燻るのを防止できて防火性に優れる。 【0049】熱プレス時のプレス圧力を玉皮寸法等に応じて調整することで、その大きさに拘わらず従来の新聞紙を積層貼着して得た内皮と同等の強度に成形でき、内部に各種火薬類の星等を充填配列する際の作業性を同等に保つことができる。 しかもパルプをモールド抄造形成したものであるから星割薬破裂時に粉々に粉砕され易く、従来の硬質紙のプレス成形内皮に比べて落下時の危険性や、意匠効果の逸失も防止できる。 また、量産効果が得られ安価に製造できる。 さらに、熱プレスにより内・外周表面が平滑に形成されるから、内周面に星が擦られることによる火薬の剥落を可及的に防止でき、外周面へのハトロン紙等の貼り込み性にも優れる。 更に、少なくとも玉皮の内・外周表面には難燃剤が含浸圧縮されているから、粉砕された破片の内表面にこびり付いた割薬の残り火が移って燻るのを防止できて防火性に優れる。 【0050】(2)請求項2に係る発明の打揚げ花火用古紙モールド玉皮にあっては、前記再生厚紙成形体の少なくとも内外表面には、水溶性難燃剤とともに防水剤をも含浸圧縮させるようにしたので、倉庫保管時などにおける耐湿性の向上も図れて、長期の保管にも耐え得るようになる。 【0051】(3)請求項3に係る発明の打揚げ花火用古紙モールド玉皮の製造方法にあっては、7号玉以下程度までの玉皮の製造に適した製造方法であり、難燃剤には一般に建材用として用いられている廉価な水溶性のものを使用して、7号玉程度までであれば、再生厚紙成形体の玉皮を難燃剤の水溶液中に1回だけ数秒の短時間浸漬させてから乾燥させるだけで、その内外表面に難燃剤の含浸層を十分な厚みに形成し得、かつ熱プレスによりその内外表面を平滑な含浸圧縮層に容易に形成することができる。 また、難燃加工の前に抄造・乾燥工程で乾燥させて、再生厚紙成形体に含浸した水分を取り除いておくので、難燃剤水溶液の浸透は容易となり、十分な厚みの含浸層を形成できる。 これにより、星割薬破裂時に粉々に粉砕され易くて意匠効果の逸失が防止でき、かつ内周面に星が擦られることによる火薬の剥落も防止でき、 しかも防炎性に優れる玉皮を廉価に製造できる。 【0052】(4)請求項4に係る発明の打揚げ花火用古紙モールド玉皮の製造方法のにあっては、前記請求項3において、前記難燃加工工程の次に、再生厚紙成形体を防水剤水溶液に浸漬・含浸させて乾燥させる防水加工工程を設けたので、さらに耐湿性に優れて、倉庫などでの長期保管にも耐え得る玉皮を廉価に製造できる。 【0053】(5)請求項5に係る製造方法の発明にあっては、前記請求項4において、前記再生厚紙成形体を前記難燃剤と防水剤との混合水溶液中に浸漬・含浸させて乾燥させるようにして、難燃加工と防水加工とを同時に一工程の難燃・防水加工工程で処理するようにしたので、生産効率のより一層の向上が図れ、防炎性と耐湿性とに優れた玉皮をさらに廉価に提供できるようになる。 【0054】(6)請求項6に係る発明の打揚げ花火用古紙モールド玉皮の製造方法にあっては、防水加工に先んじて浸透剤を添加した難燃剤の水溶液中に再生厚紙成形体を浸漬・乾燥させる難燃加工工程を設けて、浸透剤により難燃剤を十分に含浸・乾燥させてから、防水剤の水溶液中に浸漬・乾燥させて防水加工を施すので、7号玉より大きな肉厚のある玉皮にあっても、星割薬破裂時に粉々に粉砕され易くて意匠効果の逸失が防止でき、かつ内周面に星が擦られることによる火薬の剥落も可及的に防止でき、しかも防炎性と耐湿性とに優れた玉皮を可及的に廉価に製造できる。 ここで、この防水加工時にはその防水剤と共に難燃剤も一緒に混合させておくと更に良い。 【図面の簡単な説明】 【図1】第1の発明に係る打揚げ花火用の一対の内皮を示す斜視図である。 【図2】第2の発明に係る同内皮の製造方法を概略的に示す工程図である。 【図3】第3の発明に係る同内皮の製造方法を概略的に示す工程図である。 【図4】(a)〜(d)は同内皮を用いた打揚げ花火の組立手順を示す断面説明図である。 【図5】同打揚げ花火の完成状態を示す断面図である。 【符号の説明】 1 内皮(玉皮) 2 組立治具 3 星 5 割薬 7 外皮(玉皮) 10 古紙 11 パルプ原料 12 (抄造)成型機 14 網製型枠 16 再生厚紙成形体 17 難燃剤と防水剤との混合水溶液 18 吸引脱型機 19 難燃剤と浸透剤との混合水溶液 20 乾燥器 22 熱プレス裁断機 |