マルチジェット着火式デトネータ、該デトネータを備えるパルス燃焼器、およびデトネーション生成方法

申请号 JP2008502692 申请日 2007-02-14 公开(公告)号 JPWO2007099768A1 公开(公告)日 2009-07-16
申请人 タマティーエルオー株式会社; 发明人 光一 林; 光一 林; 佐藤 博之; 博之 佐藤; 浩章 足立; 浩章 足立;
摘要 【課題】本発明は、点火から爆轟に至るまでの所要時間を短縮化し、点火から爆轟に至るまでに要する距離を短距離化することが可能なデトネータ、該デトネータを備えるパルス燃焼器およびデトネーション方法を提供すること。【解決手段】デトネーション管の内部に形成される燃焼室に、イグナイタの点火 位置 側の第1の燃焼領域と燃焼ガスを放出する開口側の第2の燃焼領域とを分画形成するように多孔板として形成された第1の隔壁を設け、さらに、前記第2の燃焼領域を2以上の燃焼領域に分画するように同じく多孔板として形成された複数の第2の隔壁を設けることによって、高温気体反応生成物の拡散と、それに伴う 燃料 ガスとの混合を最大限に促進し、爆燃およびそれに続く爆轟状態への遷移を促進するデトネータ、および該デトネータを備えるパルス燃焼器を提供する。【選択図】図1
权利要求
  • 燃料ガスのデトネーションを生成するデトネータであって、前記デトネータは、燃料ガスに点火するためのイグナイタと、燃焼ガスを放出するための開口が形成されたデトネーション管とを備え、前記デトネーション管の内部に形成される燃焼室には、前記イグナイタの点火位置側の第1の燃焼領域と前記開口側の第2の燃焼領域とを分画形成する第1の隔壁と、前記第2の燃焼領域を2以上の燃焼領域に分画する第2の隔壁とが設けられ、前記各隔壁には複数の開口部が形成されるデトネータ。
  • 前記隔壁に形成される開口部の開口領域の単位面積が1π〜25πmm である、
    請求項1に記載のデトネータ。
  • 前記隔壁の空隙率が15〜65%である、請求項1に記載のデトネータ。
  • 前記隔壁の空隙率が15〜65%である、請求項2に記載のデトネータ。
  • 燃料ガスのデトネーションを生成するためのパルス燃焼器であって、
    燃焼ガスを放出するための開口が形成されたデトネーション管を備え、前記デトネーション管の内部に形成される燃焼室には、点火位置側の第1の燃焼領域と前記開口側の第2の燃焼領域とを分画形成する第1の隔壁と、前記第2の燃焼領域を2以上の燃焼領域に分画する第2の隔壁とが設けられ、前記各隔壁には複数の開口部が形成されるデトネータと、
    前記デトネータに燃料を供給する燃料供給機構と、前記デトネータに酸化剤を供給する酸化剤供給機構と、
    前記第1燃焼領域に配置され、燃料ガスをパルス的に点火させるためのイグナイタと を備える、パルス燃焼器。
  • 前記隔壁に形成される開口部の開口領域の単位面積が1π〜25πmm である、
    請求項5に記載のパルス燃焼器。
  • 前記隔壁の空隙率が15〜65%である、請求項5に記載のデトネータ。
  • 前記隔壁の空隙率が15〜65%である、請求項5に記載のデトネータ。
  • 燃料ガスのデトネーションを生成するデトネーション生成方法であって、前記方法は、
    燃料ガスにパルス点火するためのイグナイタによりパルス的に点火する工程と、
    前記燃料ガスの燃焼により発生した燃焼ガスを複数の燃焼室が内部に形成されたデトネーション管を通して爆轟を生成させ、パルス的に排出する工程と を備え、前記デトネーション管は、内部に形成される前記燃焼室は、前記イグナイタの点火位置側の第1の燃焼領域と前記開口側の第2の燃焼領域とを分画形成する第1の隔壁と、前記第2の燃焼領域を2以上の燃焼領域に分画する第2の隔壁とを含み、前記各隔壁には複数の開口部が形成される、デトネーション生成方法。
  • 前記隔壁に形成される開口部の開口領域の単位面積が1π〜25πmm であり、前記隔壁の空隙率が15〜65%である、請求項9に記載のデトネーション生成方法。
  • 说明书全文

    本発明は、燃料ガスの爆轟を生成するデトネータ、および該デトネータを備えるパルス燃焼器に関し、より詳細には、爆轟状態への遷移を促進する燃焼室構造を備えたデトネータ、該デトネータを備えるパルス燃焼器、および該燃焼機を使用するデトネーション生成方法に関する。

    近年、主に航空宇宙用のエンジンとして、パルスデトネーション・エンジン(以下、PDEとして参照する)が注目されており、その性能向上に関し種々検討がなされている。 PDEは、爆轟(デトネーション)を間欠的かつ高速で繰返し発生させ、超音速の火炎を放出することによって推進を得るものである。

    ここで、PDEにおける爆轟(デトネーション)の発生機構を説明すると、まず、イグニッションの点火を契機としてイグニッション近傍の燃料ガスの化学反応が生起され、該化学反応によって生じた高温気体反応生成物の対流・拡散が起こる。 対流・拡散した高温気体反応生成物のそれぞれが、燃焼室内の燃料ガスの未反応領域において新たな化学反応の着火源となることによって化学反応が連鎖的・加速度的に発生し、爆発的燃焼、すなわち爆燃(デフラグレーション)が生じる。 爆燃によって生じた衝撃波は、上述した連鎖反応において複合し増強されて、その伝播速度は超音速に達する。 最終的に、超音速に達した衝撃波のエネルギーは、燃料ガスの未反応領域を通過する際に瞬間的に燃料ガスの化学反応を生起しうるまでに増強される。 その結果、火炎と衝撃波とが共に超音速で伝播する、いわゆる、爆轟(デトネーション)が発生することになる。

    ここで、PDEの性能向上に関し、重要な検討事項は、爆燃から爆轟に至るまでに要する時間であるDDT(Deflagration to Detonation Time)をいかに短縮し、爆燃から爆轟に至るまでの距離であるDDL(Deflagration to Detonation Length)をいかに短くするかという点であり、この点につき、種々検討がなされている。

    例えば、この点につき、図10に示されるようなスチェルキン・スパイラル(Shcheikin spiral)と呼ばれるらせん状の金属線をデトネーション管内に挿設したデトネータ60が提案されている。 スチェルキン・スパイラル62は、デトネーション管内の燃焼室において、乱流火炎を生じさせ高温気体反応生成物の対流・拡散を促進するための乱流形成構造体として機能しており、DDTの短縮化に寄与することが分っている。

    一方、図11は、本発明者らによって考案されたジェット着火システムを用いたデトネータ70を示す。 デトネータ70は、点火位置72を含む副燃焼室74と、主燃焼室76とから構成されている。 副燃焼室74には、火炎の出口として小孔78が設けられており、副燃焼室74内で生じた初期火炎は、小孔78を通って主燃焼室76に放出される際にジェット噴流となって主燃焼室76に導かれるため、出口において乱流が生じ、着火源となる高温気体反応生成物は、主燃焼室76において急速に拡散することになる。 この急速な着火源の拡散によって、主燃焼室76における爆燃およびそれに続く爆轟がより速く生起されることになり、DDTが短縮化される。

    上述したデトネータ60およびデトネータ70は、いずれも、燃焼室において乱流を生じさせることにより、DDTを短縮することに成功しているが、爆燃から爆轟に至るまでの距離であるDDLの短距離化を実現するには至っていない。 この点につき、特開2005−315250号公報(特許文献1)は、燃焼ガス噴流をデトネーション管内に対向噴射してデトネーション管内で衝突させるPDEの着火方法を開示しており、特表平11−505472号公報(特許文献2)は、燃焼室内に燃焼ガスの燃焼を促進しかつ制御するための気体動力抵抗を設けた衝撃波発生器を開示するものの、点火から爆轟に至るまでの距離の短縮化について何らの示唆を与えるものではない。 すなわち、従来の技術は、DDTを短縮化することは開示するものの、DDLの短距離化に成功した例の報告は皆無であった。 PDEに代表される燃焼装置のデトネーション管の火炎噴射方向の長さは、DDLによって規定されるものであるため、DDLの短距離化は、燃焼装置のコンパクト化において不可欠な技術的課題であり、DDLを短くすることが可能なデトネータの構造設計について更なる検討が求められていた。

    特開2005−315250号公報

    特表平11−505472号公報

    本発明は、上記従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、本発明は、DDTを短縮化し、DDLを短距離化することが可能なデトネータ、燃焼器、およびデトネーション生成方法を提供することを目的とする。

    上述した技術的課題につき鋭意検討した結果、本発明者らは、燃焼室の中に複数の小孔を有する隔壁を設けることで、DDTが好適に短縮されることを見出し、さらに、燃焼室において該隔壁を複数設けることによって、DDLが短距離化することを見出し、本発明に至ったのである。

    本発明によれば、燃料ガスのデトネーションを生成するデトネータであって、前記デトネータは、燃料ガスに点火するためのイグナイタと、燃焼ガスを放出するための開口が形成されたデトネーション管とを備え、前記デトネーション管の内部に形成される燃焼室には、前記イグナイタの点火位置側の第1の燃焼領域と前記開口側の第2の燃焼領域とを分画形成する第1の隔壁と、前記第2の燃焼領域を2以上の燃焼領域に分画する第2の隔壁とが設けられ、前記各隔壁には複数の開口部が形成されるデトネータが提供される。

    本発明の前記隔壁に形成される開口部の開口領域の単位面積が1π〜25πmm とすることができる。

    本発明の前記隔壁の空隙率は、15〜65%とすることができる。

    また、本発明によれば、燃料ガスのデトネーションを生成するためのパルス燃焼器であって、
    燃焼ガスを放出するための開口が形成されたデトネーション管を備え、前記デトネーション管の内部に形成される燃焼室には、点火位置側の第1の燃焼領域と前記開口側の第2の燃焼領域とを分画形成する第1の隔壁と、前記第2の燃焼領域を2以上の燃焼領域に分画する第2の隔壁とが設けられ、前記各隔壁には複数の開口部が形成されるデトネータと、
    前記デトネータに燃料を供給する燃料供給機構と、前記デトネータに酸化剤を供給する酸化剤供給機構と、
    前記第1燃焼領域に配置され、燃料ガスをパルス的に点火させるためのイグナイタとを備える、パルス燃焼器が提供される。

    本発明の前記隔壁に形成される開口部の開口領域の単位面積は、1π〜25πmm とすることができる。

    本発明の前記隔壁の空隙率は、15〜65%とすることができる。

    本発明によれば、燃料ガスのデトネーションを生成するデトネーション生成方法であって、前記方法は、
    燃料ガスにパルス点火するためのイグナイタによりパルス的に点火する工程と、
    前記燃料ガスの燃焼により発生した燃焼ガスを複数の燃焼室が内部に形成されたデトネーション管を通して爆轟を生成させ、パルス的に排出する工程と を備え、前記デトネーション管は、内部に形成される前記燃焼室は、前記イグナイタの点火位置側の第1の燃焼領域と前記開口側の第2の燃焼領域とを分画形成する第1の隔壁と、前記第2の燃焼領域を2以上の燃焼領域に分画する第2の隔壁とを含み、前記各隔壁には複数の開口部が形成される、デトネーション生成方法が提供される。

    本発明の前記隔壁に形成される開口部の開口領域の単位面積が1π〜25πmm であり、前記隔壁の空隙率が15〜65%とすることができる。

    上述したように、本発明によれば、DDTを短縮化し、DDLを短距離化することが可能なデトネータが提供される。 したがって、本発明によれば、PDEに代表される燃焼装置において、連続的なパルスデトネーションを効率的に生成することができ、さらに燃焼装置のコンパクト化が可能となる。

    以下、本発明を図面に示した実施の形態をもって説明するが、本発明は、図面に示した実施の形態に限定されるものではない。

    図1は、本発明のマルチジェット着火式デトネータ10(以下、デトネータ10として参照する)を示す概念的斜視図である。 なお、本発明においてデトネータとは、デトネーションを生じさせる装置のことをいう。 本発明のデトネータ10は、ステンレススチール、ジュラルミン、チタン合金、ニッケル超合金などの耐熱性材料から形成されたデトネーション管12と、デトネーション管12の閉塞端部13の中心付近に設けられた燃料ガスを点火するためのイグナイタ14とを含んで構成されている。 デトネーション管12は、概ね火炎の伝播方向Fを長手方向とする直方体状の燃焼室16を形成しており、燃焼室16内には、多孔板として構成された隔壁18等が複数設けられている。 また、イグナイタ14が設けられた閉塞端部13に対向する側の開口19は、開放され、衝撃波および燃焼ガスをデトネータ10の外部へと放出させて火炎の伝播方向Fの反対方向への推進力を得ることができるよう構成されている。

    本発明において、デトネーション管12の燃焼室は、その形状を直方体状に限定されるものではなく、デトネーション管12を概ね円筒管として構成してその燃焼室を円筒状とすることもできる。

    また、本発明において、イグナイタ14は、スパークプラグを使用して点火を行う方式、プラズマを発生させて点火する方式、レーザを照射して点火する方式など、デトネーションを発生させるための初期火炎を生成させることができる限り、いかなる方式のイグナイタ14でも用いることができ、イグナイタ14は、デトネーション管12の端部に限らず、デトネーションを発生させるための初期火炎を生成させることができる限り、いかなる位置にでも設けることができる。 また、本発明の燃料供給機構および酸化剤導入機構としては、例えば、使用温度に応じた材料から製造されるソレノイド式の噴射バルブを使用することができる。 以下、本発明のデトネータ10の特徴的構成である、燃焼室16内に設けられる隔壁についてさらに詳細に説明する。

    図2は、本発明のデトネータ10の長手方向の断面を示す図である。 本発明のデトネータ10は、燃焼室16内のイグナイタ14の点火位置15の近傍に、第1の隔壁18が設けられ、燃焼室16は、この隔壁18によって、初期火炎が生成される点火位置15側の領域Sと、火炎が圧縮波を重畳しながらそのエネルギーを増加させるための開口19側の領域Dに分画される。 なお、本発明においては、イグナイタ14の点火位置15から第1の隔壁18までの離間距離lを最適化することができる。

    図3は、本発明のデトネータ10の燃焼室16内に設けられる隔壁18を示す図である。 本発明においては、隔壁18をステンレススチール、ジュラルミン、チタン合金、ニッケル超合金などの耐熱性材料から形成することが好ましい。 図3に示されるように、隔壁18の表面には多くの孔20が設けられており、隔壁18は、孔20を介して上述した領域Sと領域Dとが連通するようにデトネータ10の燃焼室16内に固設される。

    本発明のデトネータ10においては、燃焼室16内のイグナイタ14の点火位置15の近傍に、第1の隔壁18を設けることによって、DDTが好適に短縮化する。 この理由については定かではないが、おそらく、領域Sにおいて形成された初期火炎が、隔壁18に設けられた複数の孔20を通過して領域Dに放出される際、孔20に対応した複数の乱流が生じることによって、爆燃およびそれに続く爆轟状態への遷移が促進されるものと考えられる。

    なお、本発明においては、隔壁18における孔20の大きさ、および隔壁18の空隙率について最適化することができる。 なお、本発明において、空隙率とは、下記式1によって示される式によって求められるものとする。

    本発明において、孔20が円形である場合には、その直径を、1〜10mmとすることができ、より好ましくは、1〜4mmとすることができる。 換言すれば、本発明において、孔20によって隔壁18に形成される円形の開口領域の単位面積を、1π〜25πmm

    とすることができ、より好ましくは、1π〜4πmm

    とすることができる。 ただし、本発明においては、孔20の形状を円形に限定するものではなく、孔20を楕円や多形などによって形成することもでき、それらの孔によって隔壁18に形成される開口領域の単位面積を、1π〜25πmm

    とすることができ、より好ましくは、1π〜4πmm

    とすることができる。

    また、本発明においては、上述した空隙率を15〜65%とすることができ、より好ましくは、20〜45%とすることができる。

    さらに、本発明の第2の実施の形態においては、デトネータ10は、上述した第1の隔壁18に加えて、燃焼室16の領域Dに第2の隔壁22を設けることができ、また、第2の隔壁22を領域Dの複数箇所に設けることができる。 図4は、複数の隔壁が設けられたデトネータ10を示す。 本発明の第2の実施の形態においては、この隔壁22よって、燃焼室16の領域Dは、複数の領域D 〜D に分画される。 隔壁22には、隔壁18と同様に多くの図示しない孔が設けられており、その孔を介して領域D 〜D が互いに連通するように構成されている。

    第2の隔壁22における孔の形状および大きさ、ならびに、隔壁22の空隙率については、第1の隔壁18について上述したのと同様であり、適宜最適化することができる。 加えて、本発明の第2の実施の形態においては、イグナイタ14の点火位置15から第2の隔壁22までの離間距離L 〜L を最適化することができる。

    本発明の第2の実施の形態においては、燃焼室16内のイグナイタ14の点火位置15の近傍に設けた第1の隔壁18に加えて、さらに、第2の隔壁22を設けることによって、DDTが好適に短縮化するだけでなく、DDLが短距離化するという特異な効果を奏する。 この理由については定かではないが、おそらく、領域Sにおいて形成された初期火炎が、隔壁18に設けられた複数の孔20を通過して領域D に放出される際、孔20に対応した複数の乱流が生じ、さらにそれらの乱流が、第2の隔壁22に設けられた複数の孔を通過して領域D nに放出される際に、領域D における高温気体反応生成物の拡散と、それに伴う燃料ガスとの混合が最大限に促進されることによって爆燃およびそれに続く爆轟状態への遷移が促進されるためであると考えられる。

    なお、本発明で使用することができる燃料としては、可燃性のガスまたは液体または分散液を噴霧させて形成された気体、またはエアロゾルなどのいかなる気体でも用いることができ、例えば、素ガス(H )、天然ガス、メタン、エタン、プロパンなどの気体炭化水素化合物、ガソリン、灯油、ナフサ、ケロシンなどの汎用または航空機用の液体炭化水素化合物などを挙げることができる。 また、本発明で用いることができる酸化剤としては、酸素ガス(O )、空気、オゾン、硝酸ナトリウム溶液または分散液、塩素酸、過塩素酸塩溶液または分散液などを用いることができる。 上述した燃料および酸化剤としては、特に限定されることなく本発明で使用することができるが、環境的な負荷を考慮すると、燃料としては水素ガスを使用し、酸化剤としては、酸素ガスまたは空気を使用することが好ましい。

    以下、本発明のデトネータ10について、実施例を用いてより具体的に説明を行なうが、本発明は、後述する実施例に限定されるものではない。

    (実験装置)
    図5には、本発明のデトネータ10の特性を検討するために使用した基本的な実験装置を示す。 実験装置30は、概ね、本発明のデトネータ10と、観測用チャンバ32、ダンパ容器34とを含んで構成されており、それぞれが、接続フランジ36で連結されて、真空ポンプなどにより排気可能とされている。 観測用チャンバ32は、本発明のデトネータ10から後のデトネーション特性を観測するために設けられており、観測窓38と、複数の圧力トランスデューサ40およびイオンプローブ42とが設けられている。

    また、観測用チャンバ32のさらに下流側には、反射衝撃波を排除するためのダンパ容器34が配設されている。 ダンパ容器34の入口部分には、約101.325kPaの圧力差に耐えることができる、厚さ約250μmのマイラ膜(図示せず)が取り付けられている。 マイラ膜は、デトネーションにより発生した衝撃波により破られて、真空に排気されたダンパ容器に進行し、そのエネルギーを解放させることにより反射衝撃波による測定系の攪乱を排除するために設けられている。

    デトネーション発生実験の手順を簡単に説明すると、まず、燃料供給機構44および酸化剤供給機構46から燃料と酸化剤とをデトネータ10内に導入し、イグナイタ48をトリガ装置50によりトリガ信号を送って着火させる。 デトネータ10内で生成した初期火炎は、デトネータ10内を伝搬し、圧縮波を重畳しながらそのエネルギーを増加させて行き、それに伴う圧力変化および化学反応の状態は、圧力トランスデューサ40およびイオンプローブ42により検出され、コンピュータを含んで構成された波形検出システム52により処理される。 なお、圧力トランスデューサ40ならびにイオンプローブ42は、イグナイタ48の点火位置からの離間距離が、375mm、435mm、495mmの位置にそれぞれ配設した。 上述した実験装置30を使用して行った、本発明のデトネータ10の特性評価実験の詳細を以下説明する。

    (最適化実験)
    A.イグナイタの点火位置から第2の隔壁までの離間距離について 本発明のデトネータ10について、イグナイタの点火位置から第2の隔壁までの離間距離の最適条件について検討した。 図5に示した実験装置に対して、本発明のデトネータ10を連結した。 デトネータ10は、長さ(L)250mm、火炎の伝播方向の面の縦横が40mm×40mmの直方体状の管によって形成され、イグナイタの点火位置から10mmの位置に第1の隔壁を設けた。 本実験においては、第2の隔壁の設置位置を変えて、設定されたそれぞれの位置構成について、点火からデトネーション化が観測されるまでに要する時間を測定した。 具体的には、イグナイタの点火位置と第2の隔壁との離間距離を20mm、40mm、60mm、80mmとし、それぞれついて、点火からデトネーション化が観測されるまでに要する時間(DDT)を測定した。 なお、第1および第2の隔壁には、上述した直方体状の管の内壁の大きさに合わせて38.5×38.5mm、厚さ1mmのものを用い、いずれの隔壁にも、空隙率が22.6%となるように直径1mmの円形の孔を複数設けた。

    予混合燃料ガスは、燃料としては水素ガスを、酸化剤としては酸素ガスを使用し、燃料−酸素混合ガスの組成は、容量比でH :O =2:1とした。 また、燃料−酸素混合ガスは、デトネータ10から観測用チャンバ32までの間に定義される試験セクションを真空に排気した後に、70kPaの圧力となるように試験セクションに導入した。 その後、6000Vの電圧を生成することができるギャップ型点火プラグで燃料ガスに点火した。 点火後、生成した衝撃波の通過による圧力の変化を、圧力トランスデューサを使用してモニタし、化学反応の状態を、イオンセンサを使用してモニタした。

    なお、比較実験として、乱流形成構造体としてスチェルキン・スパイラル(線径3.5mm、ピッチ15mm、長さ200mmのスプリング形状)を、上述したのと同様の直方体状の管(40mm×40mm×250mm)に挿設したものについて同様の実験を行った。

    図6は、イグナイタの点火位置から第2の隔壁までの離間距離(mm)と、点火からデトネーションが発生するまでの時間(DDT)との関係を示す。 図6中で示される各プロット、×、▲、◆、*は、それぞれ、イグナイタの点火位置と第2の隔壁との離間距離を20mm、40mm、60mm、80mmとした場合の結果に対応している。 なお、図6中の、■で示されるプロットは、第2の隔壁を設けない場合の結果を示し、破線はスチェルキン・スパイラルを用いた比較実験の結果を示す。 なお、デトネーションの発生時点については、モニタリングされた圧力波形とイオンプローブによる波形とが、ほぼ同時刻で立ち上がっていることが観察された時点をその発生時点とした。 図6に示されるように、イグナイタの点火位置から第2の隔壁までの離間距離を40mmとした場合のDDTが一番短いことが確認され、図中の破線で示されるスチェルキン・スパイラルを挿設した場合のDDTよりも短いことが確認された。

    B. 隔壁に設けられる孔の大きさおよび空隙率について 本発明のデトネータ10について、燃焼室内の隔壁に設けられる孔の大きさ、ならびに空隙率の最適条件について検討した。 本実験おいては、上述した実験に使用したのと同様のデトネーション管を用い、イグナイタの点火位置から10mmの位置に第1の隔壁を、40mmの位置に第2の隔壁を設けた。 なお、使用する燃料ガスの組成および圧力については上述したのと同様の条件とし、デトネーションの発生時点についても上述したのと同様の方法で検出した。

    本実験においては、隔壁に設けられる円形状の孔の直径(mm)および空隙率(%)について設定を変え、それぞれの設定に従って開口部を形成した隔壁を含むデトネータ10について、デトネーション化が観測されるまでに要する時間を測定した。 具体的には、孔の(直径−空隙率)を1mm−22.6%、2mm−40.2%、3mm−32.6%、4mm−29.6%とし、それぞれついて、デトネーション化が観測されるまでに要する時間(DDT)を測定した。

    図7は、孔の(直径−空隙率)と、点火からデトネーションが発生するまでの時間(DDT)との関係を示す。 図7中に示される各プロット、◆、■、▲、×は、それぞれ、孔の(直径−空隙率)を1mm−22.6%、2mm−40.2%、3mm−32.6%、4mm−29.6%とした場合の結果に対応している。 図7に示されるように、孔の(直径−空隙率)を2mm−40.2%とした場合のDDTが一番短いことが確認された。

    (DDL短距離化の確認実験)
    本発明のデトネータ10によって、DDLの短距離化が達成されることを確認する実験を行なった。 本実験おいては、上述した実験に使用したのと同様のデトネーション管を用い、イグナイタの点火位置から10mmの位置に第1の隔壁を、40mmの位置に第2の隔壁を設け、各隔壁は、(直径−空隙率)を2mm−40.2%の設定に従って円形開口部を複数形成したものを用いた。 また、その他の設定については、上述した最適化実験における条件と同様とした。 また、比較実験として、上述した最適化実験と同様のスチェルキン・スパイラル挿設型デトネータについて実験を行った。 なお、デトネーションの発生時点については、モニタリングされた圧力波形とイオンプローブによる波形とが、ほぼ同時刻で立ち上がっていることが観察された時点をその発生時点とした。

    図8は、本発明のデトネータ10においてモニタリングされた、圧力波形およびイオンプローブによる波形を示し、図9は、スチェルキン・スパイラル挿設型デトネータにおいてモニタリングされた、圧力波形およびイオンプローブによる波形を示す。
    図8および9に示される波形は、上から、点火位置の後方375mm、435mm、495mmの位置、(すなわち、デトネータ10の後方開口部から125mm、185mm、245mmの位置)にそれぞれ配設した圧力トランスデューサ40ならびにイオンプローブ42が検出した波形であり、基準線から上が圧力トランスデューサ40が検出した波形を示し、下がイオンプローブ42が検出した波形を示す。

    図9に示されるように、スチェルキン・スパイラル挿設型デトネータについては、点火位置の後方375mm(デトネータ10の開口端部から125mm)の位置のモニタリングにおいて、圧力波形の立ち上がりが観察される時点に遅れてイオンプローブによる波形の立ち上がりが観察されており、点火位置の後方375mm(デトネータ10の開口端部から125mm)の位置においてはデトネーションに遷移していないことが確認された。

    一方、図8に示されるように、本発明のデトネータ10については、点火位置の後方375mm(デトネータ10の開口端部から125mm)の位置のモニタリング結果において、圧力波形とイオンプローブによる波形とが、ほぼ同時点で立ち上がっていることが観察されており、本発明のデトネータ10においては、点火位置の後方375mm(デトネータ10の開口端部から125mm)の位置でデトネーションに遷移していることが確認された。 上述した実験結果から、本発明のデトネータ10によって従来技術が達成しえなかったDDLの短距離化が可能となることが示された。

    以上、説明したように、本発明によれば、DDTを短縮化し、DDLを短距離化することが可能なデトネータ、該デトネータを備えるパルス燃焼器、およびデトネーション生成方法が提供される。 本発明のマルチジェット着火式デトネータを備えるパルス燃焼器は、航空宇宙用エンジン、船舶用推進器、ガスタービンエンジン用燃焼器、火力発電用タービン用燃焼器など、熱エネルギーを動力に変換して使用するいかなる装置に対しても適用することができ、デトネーション波を利用する動力機構のコンパクト化に資することが期待される。

    本発明のマルチジェット着火式デトネータ10を示す概念的斜視図。

    本発明のデトネータ10の長手方向の断面を示す図。

    本発明のデトネータ10の燃焼室16内に設けられる隔壁18を示す図。

    本発明の複数の隔壁が設けられたデトネータ10を示す図。

    本発明のデトネータ10の特性を検討するために使用した基本的な実験装置を示す図。

    イグナイタの点火位置から第2の隔壁までの離間距離(mm)と、点火からデトネーションが発生するまでの時間(DDT)との関係を示す。

    孔の(直径−空隙率)と、点火からデトネーションが発生するまでの時間(DDT)との関係を示す。

    本発明のデトネータ10においてモニタリングされた、圧力波形およびイオンプローブによる波形を示す図。

    スチェルキン・スパイラル挿設型デトネータにおいてモニタリングされた、圧力波形およびイオンプローブによる波形を示す図。

    スチェルキン・スパイラル挿設型デトネータ60を示す図。

    ジェット着火システムを用いたデトネータ70を示す図。

    符号の説明

    10…マルチジェット着火式デトネータ、12…デトネーション管、13…端部、14…イグナイタ、15…点火位置、16…燃焼室、18…第1の隔壁、19…開口、20…孔、22…第2の隔壁、30…実験装置、32…観測用チャンバ、34…ダンパ容器、36…接続フランジ、38…観測窓、40…圧力トランスデューサ、42…イオンプローブ、44…燃料供給機構、46…酸化剤供給機構、48…イグナイタ、50…トリガ装置、52…波形検出システム、60…スチェルキン・スパイラル挿設型デトネータ、62…スチェルキン・スパイラル、70…ジェット着火式デトネータ、72…点火位置、74…副燃焼室、76…主燃焼室、78…小孔

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