【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、弾発射方法及び装置に関し、特に、反応物としてアルミニウムの量を極力少なくし酸化アルミニウムによる砲内汚染を防止し、連続射撃を可能とするための新規な改良に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、用いられていたこの種の弾発射方法及び装置に準ずる技術としては、図3で示される特開平7−318299号公報に開示された高純度水素発生方法及び薬莢の構成を挙げることができる。 すなわち、 図3において符号10で示されるものは全体がほぼ筒形をなす容器であり、この容器10の軸中心には、着火部6が設けられている。 ここで、着火部6は、従来の材料からなる火薬、又は、アルミニウム粉と酸化鉄等で構成された点火剤50により構成されている。 この着火部6 は容器10の端部10aに設けられた雷管11を介して外部から点火できるように構成されている。 【0003】前記容器10の内部には、前記端部10a と離間した状態で隔壁12が設けられていると共に、この隔壁12と離間した状態で容器蓋部13が設けられ、 この容器蓋部13の中心に形成された孔部14には弾1 5が装填されている。 【0004】前記端部10aと隔壁12との間には反応室16が形成され、この反応室16の軸心位置には前記着火部6が棒状に設けられており、この着火部6は雷管11によって起爆するように構成されている。 また、前記隔壁12の外周位置には膜17を有するノズル18が形成されていると共に、この隔壁12と容器蓋部13との間には遠心分離室19が形成されている。 この遠心分離室19は、前記ノズル18から吐出したガス状の反応生成物が容器10の内壁10bに沿って十分に回転できるようにノズル18の吐出角度が軸方向からずれて設計されている。 【0005】前記反応室16内には、粉体又は粒体等からなるアルミニウム20と水21がスラリー化した状態で収容されており、前記着火部6の外周位置には、この着火部6と同軸配置のアルミニウム管体22が配設され、このアルミニウム管体22内には水と還元反応を起こすマグネシウム23が粉体又は粒体等の形態で内設されている。 前記マグネシウム23は、前記反応室16内の還元反応の速度を制御することができるように構成されている。 【0006】次に、前述の構成において、まず、高純度水素を発生する場合について述べる。 まず、雷管11を介して着火部6を点火することにより反応室16内のアルミニウム20と水21は還元反応により反応生成物である水素と高温水蒸気及び酸化アルミニウムを発生する。 この還元反応による高温状態によりアルミニウム管体22内に閉じ込められたマグネシウム23は、このアルミニウム管体22の温度が1000℃を越えて軟化すると、既にマグネシウム23は沸点(約1097℃)に達するため、アルミニウム管体22は急速に膨張して破裂し、反応室16内の高温水蒸気と急激な発熱性還元反応により反応生成物である酸化マグネシウムと水素を発生すると共に、周囲の残ったアルミニウム20を加熱させて反応をさらに促進させる。 前述の各還元反応により発生した反応生成物は、膜17を破壊してノズル18から反応室16に隣接する遠心分離器19に入射し、この遠心分離器19によって質量の重いものと軽いものが遠心分離されて純化され、高純度の水素が容器蓋部13の孔部14から噴射する。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】従来の高純度水素発生方法及び薬莢は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。 すなわち、推進薬として多量の水とアルミニウムを使用しており、反応生成物として酸化アルミニウムが大量に発生していた。 遠心分離器で捕捉できなかったこの酸化アルミニウムは、付着性が強いため、砲身の内壁において、砲口からある内部方向の位置まで強固に付着し、砲腔の内径を縮めることになり、その後の連続射撃に悪影響を与えることになっていた。 【0008】本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、使用する推進薬として使用するアルミニウム粉の使用を避け、マグネシウム粉を用いることにより、酸化物が遠心分離室から漏れ出た場合でも酸化アルミニウムより付着性が弱いため自然にかつ容易に剥離・除去され、連続射撃が可能となるようにした弾発射方法及び装置を提供することを目的とする。 【0009】 【課題を解決するための手段】本発明による弾発射方法は、点火部からの発生熱により反応物を反応させ、前記反応物からの反応ガスを遠心分離して得た軽ガスによって弾を発射する弾発射方法において、前記点火部として酸化鉄とアルミニウムのテルミット反応を用い、前記反応物として酸化剤の水和物とマグネシウムを用い、前記反応ガスは、酸化マグネシウム及び水素よりなる方法である。 【0010】さらに詳細には、前記酸化剤として、過塩素酸カリウムを用いる方法である。 【0011】さらに詳細には、弾を有する発射筒に接続されたケーシングに設けられた点火部からの発生熱により反応物を反応させ、前記反応物からの反応ガスを遠心分離室にて遠心分離して得た軽ガスによって弾を発射する弾発射装置において、前記点火部を構成する酸化鉄及びアルミニウムと、前記点火部に第1隔壁を介して隣接する反応室と、前記反応室に設けられ互いに独立すると共に前記反応物を構成する酸化剤の水和物及びマグネシウムと、前記反応室と遠心分離室との間に設けられた第2隔壁及び噴射板とよりなる構成である。 【0012】 【発明の実施の形態】以下、図面と共に本発明による弾発射方法及び装置の好適な実施の形態について述べる。 なお、従来例と同一又は同等部分には同一符号を用いて説明する。 図1において符号10で示されるものは、弾15を装填した発射筒1を有するケーシングであり、このケーシング10の後端10aには絶縁物2を介して設けられた電極4が外方に露出している。 なお、このケーシング10は導電材料にて形成されている。 【0013】前記ケーシング10内には、前記電極4に連通する点火室10B、反応室10C及び遠心分離室1 9が各々順次形成されており、この点火室10Bと反応室10C間は導電性の薄い材料からなる第1隔壁3で仕切られ、この反応室10Cと遠心分離室19間は第2隔壁5及び噴射ノズル6を有する噴射板40によって仕切られている。 【0014】前記点火室10B内には、酸化鉄とアルミニウム粉の混合体30とフィラメント31とからなる点火部32が設けられ、前記フィラメント31は前記電極4と第1隔壁3間に接続して設けられている。 前記反応室10C内には、マグネシウム粉7及び酸化剤である水和物(例えば、過塩素酸カリウムからなる)8とからなる反応物9が収容されており、この水和物8は通常、マグネシウム粉7と反応しないようにするため、膜体35 によって覆われている。 【0015】前記第2隔壁5の隣には、複数の噴射ノズル6を有する噴射板40が設けられており、前記反応室10C内の反応物9が反応した時に発生する反応ガスはこの第2隔壁5を破壊してこの噴射ノズル6から遠心分離室19内に噴射するように構成され、各噴射ノズル6 の傾斜角度は、周知のように、反応ガスが前記遠心分離室19内で渦状の遠心運動をするように設定されている。 【0016】次に動作について述べる。 まず、図1の状態で、前記電極4とケーシング10間に電源(図示せず)を供給すると、導電体からなるケーシング10及び薄い導電金属からなる第1隔壁3を経てフィラメント3 1の両端間で電流が流れ、フィラメント31は高温状態となり、この高温状態により酸化鉄(Fe 2 O 3 )とアルミニウム粉30とによる周知のテルミット反応により、 Fe 2 O 3 +2Al→Al 2 O 3 +2Fe+849.8(K J)となる。 この849.8KJのエネルギー出力は、 生成した1モルの酸化アルミニウムと2モルの鉄に分配され、このエネルギーによって鉄は溶融し、その温度は少なくとも鉄の融点である1808K以上である。 この温度は第1隔壁3を溶融するために十分であると共に、 酸化剤の水和物8として過塩素酸カリウムを用いた場合、その分解温度673Kより十分大きく、また、余ったエネルギーは水を気化させるのに十分なエネルギーである。 このようにして発生した水蒸気と酸素は溶解した第1隔壁3を通過して反応室10C内のマグネシウム粉7と混合し、Mg+H 2 O→MgO+H 2 +315.87 (KJ)の反応が起こり、発生した水素ガスは2H 2 + O 2 →2H 2 O+571.66(KJ)の反応を起こし、 エネルギーがさらに大きくなる。 この場合、前記反応物9からの反応生成物である反応ガスは、酸化マグネシウム、水蒸気、水素及び塩化カリウムよりなり、噴射ノズル6を経て遠心分離室19内で渦状となり遠心分離され、重い成分がその壁19aに付着して軽い水素からなる軽ガスのみが発射筒1内に供給されて弾15が発射される。 また、この遠心分離時に、分離しきれずに酸化マグネシウムが砲腔の壁に付着した場合でも、その付着が従来の酸化アルミニウムほど強くないと云う性質から砲腔の内壁には殆んど強固には付着せず、弾15の連続的な発射が可能となる。 【0017】また、前述の実施例においては、反応室1 0C内の膜体35内に水和物8を収容した場合について述べたが、図2で示すように、こま膜体35の内側にマグネシウム粉7を収容し、膜体35の外側に水和物8を収容した場合も、前述と同じ反応を得ることができる。 【0018】 【発明の効果】本発明による弾発射方法及び装置は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。 すなわち、点火部のみにわずかなアルミニウム粉を用いているのみで、反応物においてもマグネシウム粉を主として利用しているため、砲腔内を汚染するAl 2 O 3の発生を最小とすることができ、連続射撃を行うことができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明による弾発射方法及び装置を示す断面構成図である。 【図2】図1の他の形態を示す断面構成図である。 【図3】従来の薬莢を示す断面構成図である。 【符号の説明】 1 発射筒 3 第1隔壁 4 電極 5 第2隔壁 7 マグネシウム 8 水和物 9 反応物 10 ケーシング 10B 点火室 10C 反応室 15 弾 19 遠心分離室 32 点火部 |