【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、電熱化学銃弾に関し、 特に、水と化学反応させるアルミニウムとしてのアルミニウム壁体を真空室内に設け、加熱中の熱損失を最小化し効率よくアルミニウム壁体を溶融させるための新規な改良に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、用いられていたこの種の電熱化学銃弾としては、一例として図4に示す構成が開発されている。 すなわち、図4において符号1で示されるものは電気絶縁体よりなる筒形の容器であり、この容器1の一端1aには、電極2が螺合して設けられ、この容器1の他端1bには、金属体の筒形をなす連結子3が螺合されている。 前記連結子3と容器1間には、アルミニウム製の円板4が設けられ、前記電極2と円板4の一面2a, 4aは、前記容器1内に形成された空隙部1c内に露出している。 前記各一面2a,4a間には、線状の各アルミニウム体5,6が接続して設けられ、この空隙部1c 内には水7が充填されている。 なお、前記各アルミニウム体5,6は、水14による腐蝕が起こらないようにホウ素コーティングがなされている。 また、前記連結子3 内には、弾丸8が装填され、この弾丸8の底部8aには、酸素を発生する装薬9、例えば、硝安が装填され、 図示しない砲身(銃身)の砲口(銃口)から発生する水素の爆轟を防止するように構成されている。 従って、このアルミニウム体5,6に通電されると、このアルミニウム体5,6が溶融して高温アルミニウム蒸気となる瞬間に水と化学反応を起こし、高温水素ガスが発生して弾丸8がこの圧力により発射される。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】従来の電熱化学銃弾は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。 すなわち、各アルミニウム体が直接水室内に埋設されていたため、このアルミニウム体を加熱する際に、熱が水中に逃げる(つまり、水を熱する)ことにより、この水中に逃げる熱量をはるかに上まわる電力を各アルミニウム体に印加しなければならず、電源が極めて大型化することになり、実戦配備上において大きい問題となっていた。 【0004】本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、水と化学反応させるアルミニウムとしてのアルミニウム壁体を真空室内に設け、加熱中の熱損失を最小化し、効率よくアルミニウム壁体を溶融させるようにした電熱化学銃弾を提供することを目的とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明による電熱化学銃弾は、ケーシング内に設けられた水とアルミニウムの化学反応により弾丸を発射するようにした電熱化学銃弾において、前記弾丸に隣接し水を有する反応室の後方位置に形成された真空室に設けられたアルミニウム壁体と、 前記ケーシングの後壁に露出して設けられ前記アルミニウム壁体に接続された電極とを備えた構成である。 【0006】さらに詳細には、前記アルミニウム壁体は、円錐形よりなる構成である。 【0007】さらに詳細には、前記反応室は、前記弾丸に嵌合しコップ形をなす金属容器よりなる構成である。 【0008】さらに詳細には、前記アルミニウム壁体の一端は、前記金属容器に接合し、かつ、前記ケーシングのねじ孔部に螺合している構成である。 【0009】 【作用】本発明による電熱化学銃弾においては、アルミニウム壁体が真空室内に配設されているため、小電力をアルミニウム壁体に供給することにより、アルミニウム壁体は瞬間に溶融し、印加時の電流の電磁力によって圧縮されて細いひも状の高温アルミニウム融体となりつつ前方の容器側に加速される。 そのため、容器の後部壁がこの高温アルミニウム融体によって破壊され、この高温アルミニウム融体と水が化学反応を起こして高圧の高温水素及び酸化アルミニウムの粒が発生し、この高温水素及び酸化アルミニウムの圧力によって弾丸が前方に発射される。 【0010】 【実施例】以下、図面と共に、本発明による電熱化学銃弾の好適な実施例について詳細に説明する。 なお、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を用いて説明する。 図1から図3迄は、本発明による電熱化学銃弾を示すもので、図1は全体構成を示す断面図、図2は図1の動作開始状態を示す断面図、図3は、図2の動作がさらに進行した状態を示す断面図である。 【0011】図1において符号1で示されるものは全体形状がほぼ筒形をなし電気絶縁体よりなるケーシングであり、このケーシング1の後端部1aの後壁1aAの軸中心に形成されたねじ孔1aBには、アルミニウムである円錐形のアルミニウム壁体10を一体に接続して有する電極2が螺合して設けられている。 【0012】前記ケーシング1の先端部1bの内壁には、ねじ孔部11が形成されており、このねじ孔部11 内には前記アルミニウム壁体10の一端10aに形成されたねじ部10aAが螺合されている。 【0013】前記一端10aの内壁10aB内には、全体形状がコップ形をなす金属等の導電性の容器3が嵌合して設けられ、この容器3の内壁3aの長手方向におけるほぼ中央位置迄には弾丸8が嵌入され、この容器3の後部壁3bと弾丸8の後端面8aとの間には、水7を密封状態で保持するための反応室12が形成されている。 【0014】前記後端面8aとアルミニウム壁体10及びケーシング1の後部内端面1dとにより密閉状の真空室13が形成されており、この真空室13は高真空状態に保持されていると共に、この真空室13内には前記アルミニウム壁体10が位置している。 【0015】前記電極2と容器3間には、スイッチ14 と電源15が直列に接続されている。 【0016】次に、前述の構成において、スイッチ14 をオンとすると、電極2と容器3間に電源が供給されることにより、真空下のアルミニウム壁体10は、図1の状態から図2で示すように変化し、円錐形が崩れ始め、 その後、印加した電流の電磁力によって圧縮されて細いひも状の高温アルミニウム融体10B(周知のノイマンジェット状態)となる。 【0017】このアルミニウム融体10Bは、前方の容器3側に加速されるため、容器3の後部壁3bがこれによって破壊され、この高温アルミニウム融体10Bと水7が化学反応を起こして高圧の高温水素40及び粒状の酸化アルミニウム41が発生し、この高温水素40と酸化アルミニウム41が高圧で弾丸8を押圧し弾丸8は発射される。 なお、前述の各部の形状は一例を示したもので、若干その形状に変更がある場合においても、前述と同様の作用効果を得ることができる。 【0018】 【発明の効果】本発明による電熱化学銃弾は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。 すなわち、銃弾内の真空の空室部内にアルミニウム壁体が配設されているため、従来の水中に位置する構成に対し、アルミニウム加熱中の熱損失を最小化し、 高効率で溶融することができるため、電源を従来よりも大幅に小形化した電熱化学銃を得ることができ、実戦配備上、限りない有益性をもたらすことができるものである。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明による電熱化学銃弾を示す断面図である。 【図2】図1の動作開始状態を示す断面図である。 【図3】図2の動作がさらに進行した状態を示す断面図である。 【図4】従来の電熱化学弾を示す断面図である。 【符号の説明】 1 ケーシング 1aA 後壁 2 電極 3 容器 7 水 8 弾丸 10 アルミニウム壁体 10a 一端 11 ねじ孔部 12 反応室 13 真空室 |