【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、粉粒体の乾燥方法と装置に関するものである。 詳しくは、乾燥機内の温度分布を安定してカーボンブラックなどの粉粒体を乾燥する方法と装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】例えば、カーボンブラックなどの粉粒体を連続的に乾燥する場合、得られるカーボンブラックの物性値は乾燥条件に左右されるので、常に一定の乾燥条件で乾燥することが要求される。 従来、粉粒体の代表例であるカーボンブラックの乾燥機としては、例えば、乾燥機内の搬送路の前半用と後半用とに分割された複数の熱源を有する円筒回転型乾燥機が用いられている。 前記乾燥機の熱源の熱量の制御は乾燥機に供給される、水を含んだカーボンブラックの熱容量を予め算出し、前半熱源用燃料流量は前記熱容量と同等の熱量を与えるように調節し、後半熱源用熱量流量は、乾燥機出口カーボンブラック温度に応じて調節していた。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】前記円筒回転型乾燥機の燃焼制御方法によるときは、乾燥機出口カーボンブラック温度だけにフィードバック制御をかけることによって、該温度だけは希望する温度に制御される。 ところが、製品カーボンブラックの品質の指標となる製品中の水分量および酸化度は、出口温度だけでなくカーボンブラックがどのような経緯で加熱されたか、すなわち、乾燥機内の温度分布に大きく影響される。 なぜなら、一定した含水量のカーボンブラックを乾燥機に供給しているつもりでも、実際の工業操作ではカーボンブラックの含水量や供給速度が微妙に変化し、その結果、乾燥により回収されるカーボンブラックの物性値も微妙に変動するものである。 したがって、この方法によるときには、出口温度は希望する温度になっても、カーボンブラックの品質の指標である製品中の水分量、酸化度は希望する値になるかどうかは不明である。 また、乾燥機に供給される、水を含んだカーボンブラック量に応じて前半熱源の熱量を調節するときには、該熱量の影響が出口温度にまで及ぶため出口温度が変動してしまう。 【0004】そこで、本発明の目的は、カーボンブラックなどの粉粒体製品の品質を希望する値にするための乾燥機内の温度分布制御方法の開発および乾燥機の温度分布を長時間にわたり安定に運転できる乾燥方法および装置を提供することである。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明者らは粉粒体の乾燥法につき鋭意研究を重ねた結果、乾燥機内に設置した複数の温度計によって測定した温度を演算処理し、粉粒体が恒率乾燥から減率乾燥に移る変化時点を算出し、該変化時点と、乾燥機出口の粉粒体温度を被制御変数とし、乾燥機前半熱源用燃料流量と後半熱源用燃料流量を操作変数とする多変数制御システムを設計し、演算処理によって操作変数である燃料流量を決定する時は、乾燥機内の粉粒体の温度分布を長時間に亙り安定させて運転ができることを確認して本発明を完成した。 【0006】すなわち、本発明は次の構成からなるものである。 (1)粉粒体を複数に分割された熱源を有する乾燥機の一端から導入し、他端から排出するまでの間に乾燥する粉粒体の乾燥方法において、乾燥機内の粉粒体の温度を測定し、前記温度測定結果と乾燥機出口における粉粒体の温度をベースとして、粉粒体の乾燥状態が恒率乾燥から減率乾燥に移る変化時点を演算により推定し、前記粉粒体の乾燥状態の変化時点の推定結果を基に、複数の熱源の熱量をそれぞれ独立に操作して、乾燥機出口の粉粒体の温度および前記変化時点を制御する粉粒体の乾燥方法。 (2)一端の粉粒体入口と他端の粉粒体出口とを結ぶ粉粒体流路を持つ乾燥機内に配置される複数に分割された熱源により粉粒体を乾燥する粉粒体乾燥装置において、 乾燥機内の複数の粉粒体流路領域で粉粒体の温度をそれぞれ測定するための粉粒体温度手段と、該各温度測定手段の粉粒体測定結果をベースとして、粉粒体の乾燥状態が恒率乾燥から減率乾燥に移る変化時点を演算により推定する乾燥状態変化時点推定手段と、乾燥機出口の粉粒体の温度および前記変化時点を制御するために、前記粉粒体の乾燥状態変化時点推定手段の推定結果および乾燥機出口の粉粒体温度を基に、複数の熱源の熱量をそれぞれ独立に操作する燃焼制御装置とを備えた粉粒体の乾燥装置。 【0007】本発明で対象とする粉粒体としては、通常、カーボンブラック、肥料、染料、顔料、ポリアミド樹脂などからなる合成樹脂ペレットなどが挙げられるが、特に本発明はカーボンブラックの乾燥に適したものである。 また、これらの粉粒体に含まれる液体は水だけでなく、有機溶媒でも良い。 【0008】 【作用】図2は乾燥機の代表例である円筒回転型乾燥機内部の粉粒体カーボンブラック(以下、粉粒体の典型例であるカーボンブラックを例に説明する。)の温度分布を示す略図である。 縦軸は温度、横軸は乾燥機入口からの距離を示している。 約60℃で供給された粉粒体(カーボンブラック)は加熱され、水の沸点である100℃ に至る(A点)。 その後は100℃で一定の期間(恒率乾燥期間)が続くが、やがて表面の自由水の蒸発が終了すると減率乾燥期間に入り(B点)、温度100℃を越えて上昇する。 ここにおいて、少なくとも先頭のカーボンブラック温度測定手段をB点付近に、また、最後尾の温度測定手段を乾燥機出口(C点)に設置し、その間に複数の温度測定手段を設置すれば良い。 B点の位置については、温度測定手段の位置を実験的にずらしながら運転することによって決定することができる。 【0009】本発明の粉粒体の乾燥法において、乾燥機内部に設置した複数の温度測定手段によって測定した温度から、カーボンブラックが乾燥機内で恒率乾燥から減率乾燥に移る変化時点を推定し、その推定変化時点と乾燥機出口の粉粒体温度により乾燥機の複数に分割された熱源の熱量をそれぞれ操作して、乾燥機出口のカーボンブラックの温度および減率乾燥への変化時点を制御することによって、乾燥機内の温度分布を安定させ、水分含有量および酸化度の安定した製品カーボンブラックを取得するものである。 以下にその演算の詳細を説明する。 【0010】本発明では、乾燥機内の恒率乾燥から減率乾燥への変化時点は、円筒回転型乾燥機の内部に設置した複数の温度測定手段によって測定された温度から求めることができる。 すなわち、水を加えて造粒されたカーボンブラックの場合、恒率乾燥中のカーボンブラックの温度は水の沸点である100℃であるが、減率乾燥中であれば100℃を越えるため、100℃を示している温度測定手段と100℃を超えている温度測定手段の間に減率乾燥への変化時点があるとすることができる。 【0011】したがって、温度測定手段の数は多ければ多いほど恒率乾燥から減率乾燥への変化時点の測定精度は上がるが、温度測定手段を支持するための支柱の強度あるいは温度測定手段の設置コストなどの関係であまり多くの温度測定手段を設置できない場合は、少ない温度点数から前記変化時点を推定することもできる。 【0012】すなわち、カーボンブラックが燃焼ガスによって均一に加熱されているとすれば、その温度上昇は加えた熱量の畳み込み積分で表される一次容量系として、次式 t=K−B×exp(−x/T) で近似できる。 ここにおいて、tは温度、xは乾燥機入口からみて先頭の温度測定手段(少なくとも温度測定手段は図2のB点とC点間に配置されることが条件)からの距離、K、B、Tはそれぞれ定数である。 この近似式を得るにはK、B、Tを求める必要があるが、等間隔の3点の温度測定点があれば3元連立方程式を解くことができ、この近似式と100℃との交点をもって減率乾燥への変化時点と推定することができる。 このように温度測定信号から変化時点を算出するため、温度測定手段の数は最低でも3個必要である。 しかし、何らかの理由で外乱を受けて先頭の温度測定手段の測定値が100℃を超えないときは、2点の温度しか利用できないので、前記連立方程式を解くことができないため、4点以上の温度測定手段を設置することが望ましい。 【0013】こうして得られた変化時点と乾燥機出口カーボンブラック温度を制御するには、次のような手順による。 まず、予めプロセスのステップ応答モデルを用意する。 これは、燃料流量あるいはカーボンブラックの処理量を単位流量変化させたときの、被制御量であるカーボンブラックの処理量を単位流量変化させたときの、被制御量である変化時点と出口温度の挙動の経時変化を示すものであり、実験によって得ることができる。 すなわち、まず、燃料流量およびカーボンブラックの処理量を一定にして定常状態にする。 このとき、乾燥機内の温度は全て一定となるため、恒率乾燥から減率乾燥への変化時点も一定となる。 次に、前半用燃料流量だけを1Nm 3 /hと瞬間的に増加させ、乾燥機出口温度の挙動を定周期で記録する。 同時に前記減率乾燥への変化時点も推定し、同様に記録する。 これらの処理は当然、コンピュータを用いて行うのが良い。 【0014】前半用燃料流量を増加させると乾燥機内の温度は上昇し、やがて一定値になる。 このとき、前記変化時点も一定となるがその時点で記録は終了する。 この手順を後半用燃料流量についても同様に行う。 また、カーボンブラック処理量についても同様に行うが、このときは1kg/hの瞬間的増加とする。 【0015】こうして得られた乾燥機出口温度および前記減率乾燥への変化時点の時系列データを操作量を変化させた時点での値をa 0として古い順に並べると、つぎのようになる。 a 0 、a 1 、a 2 、……… a s-1 、a sここで、sは再び定常状態となった時点である。 プロセスが線形に近いと仮定すると、時刻tにおいて△u (t)というステップ状の入力がプロセスに加えられたときに時刻t+jにおけるプロセスの応答は、 y(t+j)=a j ×△u(t) と表せる。 【0016】そこで現在までに行われた操作を、一定周期で大きさの異なるステップ状の入力が順次加えられたものと見なすと、時刻t+jにおけるプロセスの応答は過去のステップ状の入力の影響が加え合わされたものと考えることができ、次の数式1のように表すことができる。 【0017】 【数1】 【0018】これがステップ応答モデルである。 ここで、△u(t+j−k)はu(t+j−k)−u(t+ j−k−1)であり、一周期前の入力からの変化量を表す。 【0019】プロセスのモデルにはステップ応答モデルのほか、インパルス応答モデルあるいはARXモデルでも良い。 このプロセスモデルを用いることによって被制御量の将来を予測することができる。 【0020】インパルス応答モデルはステップ応答モデルと同様に実験によって求めることができる。 ステップ応答モデルを得る実験においてはステップ状の入力を与えたが、インパルス応答モデルを求める実験においてはパルス状の入力を与える。 例えば、前半用燃料流量については1Nm 3 /hの瞬間的増加を行った後、次の周期が来れば元の値に戻し、同様の時系列データを得る。 これを並べると、 h 0 、h 1 、h 2 、……… h s-1 、h sとなる。 ここで、sは再び定常状態となった時点である。 プロセスが線形に近いと仮定すると、時刻tにおいて大きさu(t)というパルス状の入力がプロセスに加えられたときに時刻t+jにおけるプロセスの応答は、 y(t+j)=h j ×u(t) と表せる。 【0021】そこで現在までに行われた操作を、一定周期で大きさの異なるパルス状の入力が順次加えられたものと見なすと、時刻t+jにおけるプロセスの応答は過去のパルス状の入力の影響が加え合わされたものと考えることができ、次の数式2のように表すことができる。 【0022】 【数2】 【0023】これがインパルス応答モデルである。 また、ARXモデルとは、現時刻tのプロセスの応答y (t)が過去のプロセスの応答y(t−1)、y(t− 2)、… と過去の操作入力u(t−1)、u(t− 2)、… の関数として決まるようなモデルであり、例えば、 y(t)=b 1 ×y(t−1)+b 2 ×y(t−2)+b 3 ×y(t−3)+ c 1 ×u(t−1)+c 2 ×u(t−2)+c 3 ×u(t−3) のような構造をしている。 【0024】次に、目標となる挙動を与える。 被制御量を一定にしたいのであれば一定量を、また変化させたいのであれば希望する値までの滑らかな曲線を算出し、目標値軌道とする。 燃焼制御装置は、ある操作を行った場合の被制御量の将来の挙動をプロセスモデルを用いて予測し、この予測した軌道と目標値軌道との誤差面積を最小とするような操作量を、最小二乗法を用いて求め、得られた値と等しくなるように前半用燃料流量および後半用燃料流量を調節して乾燥機内の熱源の熱量を制御する。 【0025】この操作量の詳しい求め方を次に説明する。 まず、将来のどの時刻から何時間の間のプロセスの予測値と目標値軌道との誤差面積を最小にするのかを決める。 例えば、現在よりL時刻先から時間Pの間の誤差面積を最小にするものとする。 具体的には、例えばLはプロセスの最も長い無駄時間よりも1サンプリング周期分長い値とし、Pは6サンプリング分とすれば良い。 次にプロセスモデルを用いて現在よりL時刻先から時間P の間のプロセスの応答を予測する。 すなわち、y(t+ L)、y(t+L+1)、……、 y(t+L+P− 2)、y(t+L+P−1)を予測する。 これには前述のようにステップ応答モデル、インパルス応答モデルあるいはARXモデルを用いれば良い。 【0026】現在よりL時刻先から時間Pの間の目標値軌道、すなわち、y(t+L)、y(t+L+1、)、 ……、y(t+L+P−2)、y(t+L+P−1)の算出は以下のようにする。 時刻t+L−2までの操作量を、今から求める操作量に保ち続けると仮定し、時刻t +L−1におけるプロセスの応答y(t+L−1)を予測する。 その予測値と目標値を1−α:αに内分する点をy(t+L)とする(αは0より大きく1より小さい数)。 y(t+L+1)は1−α 2 :α 2に内分する点、 y(t+L+2)は1−α 3 :α 3に内分する点というように順次求めて目標値軌道とする。 【0027】ここで、現在よりL時刻先から時間Pの間のプロセスの予測値と目標値軌道を次のようにベクトルで表す。 YP=[y(t+L) y(t+L+1)・・・y(t +L+P−2) y(t+L+P−1)] T YR=[y(t+L) y(t+L+1)・・・y(t +L+P−2) y(t+L+P−1)] Tここで添字Tはベクトルの転置を表す。 YPとYRの誤差面積を最小にするには評価関数Jを最小とするような△u(t)を求めればよい。 J=(YR−YP) 2 Jを最小とする△u(t)は、次の数式3(方程式)を解くことによって求められる。 【0028】 【数3】 【0029】得られた△u(t)は一周期前の入力からの変化量を表すため、前回求めた操作量に△u(t)を加えることによって今回の操作量とすれば良い。 これら、恒率乾燥から減率乾燥への変化時点の決定から熱源の熱量の調節までの一連の演算処理はコンピュータによって行うことができる。 【0030】 【実施例】本発明の一実施例をカーボンブラックの乾燥方法を例にとり、図と共に説明する。 実施例1 図1は本発明の実施の態様の一例を示す概念図である。 図1において、カーボンブラックは入口1から、水は入口2からそれぞれ造粒機3に導入され、造粒されたカーボンブラックはライン4から円筒回転型乾燥機5に導入され、製品カーボンブラックはライン6から排出される。 乾燥機前半用燃料ライン7、乾燥機後半用燃料ライン8からそれぞれ乾燥機5の前半用と後半用の各々のバーナ9に供給される。 乾燥機5内の温度は温度計10で測定される。 温度計10は温度計の支柱11に支持され、温度信号12は燃焼制御装置13に送信され、乾燥機5の熱源の熱量は乾燥機前半用燃料流量の制御信号1 4、乾燥機後半用燃料流量の制御信号15によりコントロールされる。 【0031】造粒機3には略同等量のカーボンブラックと水が供給され造粒される。 造粒機3の形式としては種々のものが使用できるが、連続運転でカーボンブラックを造粒するには、円筒形で撹拌ピンを植え付けた回転シャフトを内部に備えたものが好適である。 造粒機3で造粒され、水分を含んだカーボンブラックは円筒回転型乾燥機5へ供給され、乾燥されて製品カーボンブラックとなる。 【0032】回転円筒型乾燥機5の燃料は各種の燃焼ガス、水素、メタンなどの可燃性ガス、あるいは重油、ナフサなどの化石燃料が用いられる。 該燃料は乾燥機前半用燃料ライン7と乾燥機後半用燃料ライン8の二つ以上に分割されて供給され、それぞれ独立に調節される。 該燃料ラインの分割数は3以上でも良いが、多すぎると制御装置13が複雑になりすぎるので、分割数は2ないし3、好ましくは2が良い。 【0033】二つ以上に分割された燃料はバーナ9で燃焼される。 バーナ9は燃料ライン7、8に対し一つずつでも良いが、熱効率の面からは該燃料をさらに複数に分割して複数のバーナ9で燃焼した方が良い。 バーナ9で燃焼して生じた排ガスは、廃棄しても良いが乾燥機5内部に還流させることによって効率よく利用することができる(図3参照)。 【0034】温度計10は、円筒回転型乾燥機5の内部に設置される。 設置の方法としては温度計の支柱11に複数の温度計10を設置し、該支柱11を乾燥機5内部に挿入して温度計10が乾燥機5内に流れるカーボンブラックに接触するようにして固定すれば良い。 温度計の設置位置については本実施例の場合は図1に示す通り、 乾燥機後半用燃料ライン8のバーナ9上に配置している。 その理由は乾燥機前半用燃料ライン7のバーナ9は専ら円筒回転型乾燥機5内の温度を上げるために用い、 カーボンブラックの乾燥状態が恒率乾燥から減率乾燥に移る変化点が形成される乾燥機後半用燃料ライン8のバーナ9上の温度を測定することが経済的に有利であることによる。 【0035】図3に、本実施例の水添造粒カーボンブラックの円筒回転型乾燥機5の具体例を示す。 図3の一点鎖線よりも上部は乾燥機5の断面図を示し、下部は側面図を示す。 バーナ9を有する外被炉17と、その内部で回転するステンレス製のドラム18から構成されている。 外被炉17の直径は3.7m、高さ5.5m、長さ24mであり、その内部は等間隔で4個の燃焼室19に分割されている。 水添造粒カーボンブラックはドラム1 8の図面左端のカーボンブラック入口21から導入され、右端の出口22より排出される。 【0036】供給される燃料は、乾燥機の前半用ライン7と後半用ライン8により二つに分割され、それぞれ独立に調節される。 4個の燃焼室19のうち前方2室に前半用燃料が、後方2室に後半用燃料が供給され、それぞれ複数のバーナ9で燃焼される。 バーナ9の数は前半用燃料には20本、後半用燃料には12本が設置されている。 すなわち、4個の燃焼室19のうち、前方2室には1室あたり10本のバーナ9が設置され、後方2室には1室あたり6本のバーナ9が設置されている。 したがって、本実施例においては、前半用燃料バーナ9の20本に供給される燃料の総流量、あるいは、後半用燃料バーナ9の12本に供給される燃料の総流量を独立に調節する。 バーナ9で燃焼された燃焼ガスは、ドラム18を外側から加熱した後、燃焼室19上部のダクト23で集合し、該ダクト23が接続するドラム18の後方からドラム18内部へ供給される。 カーボンブラック入口21近傍の排ガス出口25側に設置したブロワー(図示せず) でドラム18内部の燃焼ガスを吸引することによって、 後方から供給された燃焼ガスは、カーボンブラックと向流に接触して、排ガス出口25側から排出される。 【0037】燃焼ガスがカーボンブラックと接触する際に酸化反応が生じるが、その酸化の程度は温度と密接な関係にある。 したがって、酸化度を一定にして製品カーボンブラックの品質を安定させるためにはドラム18内の温度分布を一定にする必要がある。 本実施例ではドラム18内部を流れるカーボンブラックの温度を複数の点で測定し、これらの温度からカーボンブラックが恒率乾燥から減率乾燥へ移る変化時点を推定し、この推定結果と乾燥機出口温度とをベースとして前半用燃料流量および後半用燃料流量をそれぞれ独立に操作して温度分布を制御する。 【0038】本実施例ではドラム18内のカーボンブラックの温度は後方2室の燃焼室19に配置した4本の温度計10によって測定した。 すなわち、4本の温度計を2.5mの等間隔で支柱(図示せず)に固定し、その支柱をドラム18出口から挿入し固定する。 【0039】これらの温度計10によって測定された温度は、オンラインで10分周期で制御装置13(図1) に入力されている。 一方、前半用燃料流量、後半用燃料流量、カーボンブラックに加えられる水の流量もオンラインで10分周期で制御装置13に入力されるが、本実施例では、過去に行った操作によって出口温度および恒率乾燥から減率乾燥への変化時点が将来どのような挙動をするかを現在値をベースとして予測するため、前半用燃料流量、後半用燃料流量、カーボンブラックに加えられる水の流量は制御装置13の記憶装置(図示せず)に保存される。 【0040】ここで、乾燥機5にかかる熱負荷はカーボンブラックの処理量とそれに加えられる水の量であるが、カーボンブラックの熱容量は水の熱容量に比べて1 0分の1以下と非常に小さく無視できるため、カーボンブラックの処理量については考えていない。 【0041】制御装置13ではまず4点の温度から、カーボンブラックが減率乾燥へ変化する点を推定する。 次に、記憶装置で保存した過去1500分間の前半用燃料流量、後半用燃料流量、水の流量によって将来出口温度および恒率乾燥から減率乾燥への変化時点がどのような挙動を示すかをそれぞれの現在値をベースにしてステップ応答モデルを用いて予測し、その予測値の軌道と目標の軌道との誤差面積が最小となるような操作量、すなわち、前半用燃料流量および後半用燃料流量を最小二乗法によって決定し、それぞれの調節弁(図示せず)へ制御信号を出力する。 これらの手順は10分周期で繰り返されるため、本実施例における制御周期は10分である。 【0042】本実施例においては、ファーネス法によって製造したカーボンブラックに、造粒機においておおむね同等量の水を加えて2.5mm以下に造粒し、円筒回転型乾燥機5に供給する。 具体的な処理量としては、カーボンブラック、水ともに2000〜3000kg/h r程度である。 一方燃料としては、コーク・オーブン・ ガス(COG)を用い、前半用COGは200〜400 Nm 3 /h、後半用COGは100〜300Nm 3 /h程度である。 【0043】本実施例で対象とした、カーボンブラックの製品品質は、IA(よう素吸着量)60±4mg/1 00g、DBP(ジブチルフタレート)105±3ml /100g、pH6〜9、VM(揮発分)1.1±0. 4%、水分0.7%以下である。 【0044】上記本実施例と比較例とによって温度制御を行った場合のデータを図4〜図6に示す。 なお、比較例とは乾燥機5に供給される水添造粒カーボンブラックの熱容量を予め算出して、前半用燃料流量は前記熱容量と同等の熱量を与えるように調節し、後半用燃料流量は乾燥機出口22のカーボンブラック温度に応じて操作した場合の例である。 【0045】図4(a)は乾燥機出口22のカーボンブラック温度、図4(b)はカーボンブラックの恒率乾燥から減率乾燥への変化時点の乾燥機入口21からの距離、図5(a)は前半用燃料流量、図5(b)は後半用燃料流量、図6はカーボンブラックに加えた水の量のそれぞれの時間変化を示す。 そして図4〜図6の前半分は比較例を後半分は本実施例を示す。 【0046】カーボンブラックに加える水の量が図6のように変更されるが、これによってカーボンブラックの温度が変動しないように前半用燃料流量および後半用燃料流量を操作してカーボンブラックに加える熱量を操作する必要がある。 本実施例と比較例とを比較すると明らかなように、比較例では乾燥機出口22でのカーボンブラック温度(図4(a))、恒率乾燥から減率乾燥への変化時点(図4(b))は大きく変動しているのに対して本実施例は安定している。 【0047】実施例2 実施例1および実施例1に記載した比較例と同様にカーボンブラックの乾燥を10日間連続して行い、得られた製品カーボンブラックのVM(揮発分)およびpHについて平均値と標準偏差を求めたところ、表1に示す結果が得られた。 【0048】 【表1】 表1に示す通り、本実施例によると比較例に比べてバラツキが小さく、安定な品質のカーボンブラックが得られたことが分かる。 【0049】 【発明の効果】本発明によれば、乾燥機内の温度分布を制御することで、乾燥機内の温度分布を長時間にわたり安定に運転でき、カーボンブラックなどの粉粒体製品の品質のバラツキを小さく安定にすることができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明の一実施例の水添造粒カーボンブラックの乾燥装置を示す概念図である。 【図2】 本発明の水添造粒カーボンブラックの乾燥機内での温度分布の典型例を示す図である。 【図3】 本発明の一実施例の水添造粒カーボンブラックの円筒回転型乾燥機を示す図である。 【図4】 本発明の一実施例と比較例の乾燥機出口のカーボンブラック温度(a)、恒率乾燥から減率乾燥への変化時点の乾燥機入口からの距離(b)を示す図である。 【図5】 本発明の一実施例と比較例の乾燥機の前半用燃料流量(a)、後半用燃料流量(b)を示す図である。 【図6】 本発明の一実施例と比較例の乾燥機のカーボンブラックに加えた水の量を示す図である。 【符号の説明】 1…カーボンブラック入口、2…水入口、3…造粒機、 4…造粒カーボンブラックライン、5…円筒回転型乾燥機、6…製品カーボンブラックライン、7…乾燥機前半用燃料ライン、8…乾燥機後半用燃料ライン、9…バーナ、10…温度計、11…温度計の支柱、12…温度信号、13…制御装置、14…乾燥機前半用燃料流量の制御信号、15…乾燥機後半用燃料流量の制御信号、17 …乾燥機外被炉、18…回転ドラム、19…燃焼室、2 1…カーボンブラック入口、22…カーボンブラック出口 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鎌田 富行 福岡県北九州市八幡西区黒崎城石1番1号 三菱化成株式会社黒崎工場内 |