吸収式ヒートポンプ装置

申请号 JP2015147593 申请日 2015-07-27 公开(公告)号 JP6432462B2 公开(公告)日 2018-12-05
申请人 アイシン精機株式会社; 发明人 坪内 修;
摘要
权利要求

吸収液により冷媒蒸気を吸収する吸収式ヒートポンプ装置であって、 冷媒を蒸発させる蒸発器と、 前記蒸発器で蒸発した冷媒蒸気を吸収液に吸収させる吸収器と、を備え、 前記吸収器は、前記冷媒蒸気の前記吸収液への吸収熱を除去する熱交換部を含み、 前記吸収器に供給される前記吸収液を前記熱交換部の外表面に沿って塗布する回転塗布部を備え、 前記吸収器は、前記回転塗布部と、前記吸収液が接触する前記熱交換部とを取り囲むように覆った状態で配置されるとともに、前記吸収液を透過させずに前記冷媒蒸気を透過可能に形成された膜部材を含む、吸収式ヒートポンプ装置。前記吸収液は、前記膜部材の内底部に貯留されるように構成されている、請求項1に記載の吸収式ヒートポンプ装置。前記回転塗布部により前記熱交換部の外表面に沿って塗布された前記吸収液に、前記膜部材を透過した前記冷媒蒸気が吸収されるように構成されている、請求項1または2に記載の吸収式ヒートポンプ装置。前記熱交換部は、内部を熱交換流体が流通する平板状の熱交換器が横方向に沿って積層された構造を有しており、 前記吸収液は、前記膜部材の内側において前記熱交換器が積層された方向に沿って延びる吸収液供給路を介して前記膜部材の内側の領域に供給されるとともに、前記冷媒蒸気が吸収されて前記膜部材の内底部に貯留される前記吸収液は、前記熱交換器が積層された方向に沿って延びる吸収液排出路を介して外部に排出されるように構成されている、請求項2または3に記載の吸収式ヒートポンプ装置。前記熱交換部は、内部を熱交換流体が流通する平板状の熱交換器が横方向に沿って積層された構造を有しており、 前記熱交換部は、前記熱交換部を取り囲むように覆う前記膜部材を支持するための支持部材を兼ねている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収式ヒートポンプ装置。前記蒸発器は、蒸発前の冷媒を貯留する冷媒貯留部を含み、 前記吸収器は、前記蒸発器の内部において、前記膜部材の最下部近傍が前記冷媒貯留部の上面よりも上方に配置されるように構成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収式ヒートポンプ装置。吸収液により冷媒蒸気を吸収する吸収式ヒートポンプ装置であって、 冷媒を蒸発させる蒸発器と、 前記蒸発器で蒸発した冷媒蒸気を吸収液に吸収させる吸収器と、を備え、 前記吸収器または前記蒸発器は、前記冷媒蒸気の前記吸収液への吸収熱を除去するかまたは冷媒を蒸発させる熱交換部を含み、 前記吸収器に供給される前記吸収液を前記熱交換部の外表面に沿って塗布するかまたは前記蒸発器に供給される前記冷媒を前記熱交換部の外表面に沿って塗布する回転塗布部を備え、 前記吸収器または前記蒸発器は、前記回転塗布部と、前記吸収液または前記冷媒が接触する前記熱交換部とを取り囲むように覆った状態で配置されるとともに、前記吸収液または前記冷媒を透過させずに前記冷媒蒸気を透過可能に形成された膜部材を含む、吸収式ヒートポンプ装置。

说明书全文

本発明は、吸収式ヒートポンプ装置に関する。

従来、冷媒蒸発時の蒸気を吸収可能な吸収液を用いた吸収式ヒートポンプ装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。

上記特許文献1には、濃縮器(発生器)、凝縮器、蒸発器および吸収器を備えた吸収式冷温熱発生機(吸収式ヒートポンプ装置)が開示されている。この特許文献1に記載の吸収式冷温熱発生機では、吸収器は、蒸発器と蒸気通路を介して連通されており、吸収器内に疎性多孔質膜と伝熱体(熱交換用の伝熱面)とからなるモジュールが配置されている。ここで、疎水性多孔質膜は、ガスのみが透過可能で液状物質は透過できない材料からなり、溶液(吸収液)の通路を形成可能に構成されている。これにより、吸収器では、疎水性多孔質膜の一方端部の入口部からモジュール内に供給された吸収液に対して、蒸発器からの蒸気通路を経て疎水性多孔質膜を透過した冷媒蒸気が吸収されるとともに、吸収熱が伝熱体を介して冷却水側に受け渡される。そして、希釈された吸収液は疎水性多孔質膜の他方端部の出口部からモジュールを出て吸収器の底部に貯留された後、濃縮器(発生器)へと排出されるように構成されている。

特開平1−98866号公報

しかしながら、上記特許文献1に記載された吸収式冷温熱発生機では、冷媒蒸気を吸収して冷却された吸収液がモジュールを出て吸収器の底部に貯留されるため、たとえば、吸収式冷温熱発生機(吸収式ヒートポンプ装置)を車両等に搭載して車内空調に適用する場合に、車両搭載時の車体の傾斜や揺れなどに起因して、吸収器の底部に貯留された吸収液が蒸気通路を介して蒸発器に逆流し蒸発器内の冷媒に混入する虞がある。このため、吸収冷凍サイクルの要となる吸収液の濃度制御が適切に行えなくなり、吸収式ヒートポンプ装置としての性能が低下するという問題点がある。

この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、車両に搭載した場合にも、吸収冷凍サイクルの性能が低下するのを抑制することが可能な吸収式ヒートポンプ装置を提供することである。

上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における吸収式ヒートポンプ装置は、吸収液により冷媒蒸気を吸収する吸収式ヒートポンプ装置であって、冷媒を蒸発させる蒸発器と、蒸発器で蒸発した冷媒蒸気を吸収液に吸収させる吸収器と、を備え、吸収器は、冷媒蒸気の吸収液への吸収熱を除去する熱交換部を含み吸収器に供給される吸収液を熱交換部の外表面に沿って塗布する回転塗布部を備え、吸収器は、回転塗布部と、吸収液が接触する熱交換部を取り囲むように覆った状態で配置されるとともに、吸収液を透過させずに冷媒蒸気を透過可能に形成された膜部材を含む。

この発明の第1の局面による吸収式ヒートポンプ装置では、上記のように、吸収液が接触する熱交換部を取り囲むように覆った状態で配置されるとともに、吸収液を透過させずに冷媒蒸気を透過可能に形成された膜部材を吸収器に設ける。これにより、膜部材により熱交換部を取り囲むように覆って吸収器全体を構成することができるので、冷媒蒸気が膜部材を透過して吸収液(濃液)に吸収された吸収液(希液)を、膜部材の内側に貯留した状態で膜部材以外の部分から吸収器の外部に排出することができる。すなわち、吸収液が膜部材を透過して蒸発器に直接的に逆流するのを抑制することができる。したがって、本発明の吸収式ヒートポンプ装置を車両等に搭載した場合であっても車体の傾斜や揺れなどに起因して吸収液(希液)が蒸発器に逆流するのが抑制されるので、車両に搭載した場合にも、吸収冷凍サイクルの性能が低下するのを抑制することができる。

上記第1の局面による吸収式ヒートポンプ装置において、好ましくは、吸収液は、膜部材の内底部に貯留されるように構成されている。

このように構成すれば、冷媒蒸気が吸収器内で吸収液(濃液)に吸収された吸収液(希液)を、熱交換部を取り囲むように覆う膜部材の内底部に貯留することができるので、貯留された吸収液(希液)を蒸発器側に混入させることなく膜部材以外の部分から吸収器の外部に直接的に排出することができる。

上記第1の局面による吸収式ヒートポンプ装置において、好ましくは、回転塗布部により熱交換部の外表面に沿って塗布された吸収液に、膜部材を透過した冷媒蒸気が吸収されるように構成されている。

このように構成すれば、回転塗布部により吸収液を熱交換部の外表面に塗布した状態で膜部材を透過した冷媒蒸気を吸収液に効率よく吸収させることができる。また、熱交換部の外表面で冷媒蒸気が吸収されて希釈された吸収液を回転塗布部により膜部材の内底部に掻き下ろして貯留することができる。これにより、冷却された吸収液(希液)を熱交換部の外表面から除去しつつ、この外表面に新たに供給される吸収液(濃液)に対して冷媒蒸気を連続的に吸収させることができるので吸収器の性能を継続的に維持することができる。

上記吸収液が膜部材の内底部に貯留される構成において、好ましくは、熱交換部は、内部を熱交換流体が流通する平板状の熱交換器が横方向に沿って積層された構造を有しており、吸収液は、膜部材の内側において熱交換器が積層された方向に沿って延びる吸収液供給路を介して膜部材の内側の領域に供給されるとともに、冷媒蒸気が吸収されて膜部材の内底部に貯留される吸収液は、熱交換器が積層された方向に沿って延びる吸収液排出路を介して外部に排出されるように構成されている。

このように構成すれば、平板状の熱交換器を横方向に沿って積層することによって、膜部材を介して取り込まれた冷媒蒸気を各々の熱交換器の伝熱面に効率よく導いて吸収液への吸収を促進させることができる。そして、熱交換器の積層方向(横方向)に沿って延びる吸収液供給路および吸収液排出路を介して吸収液(濃液)の供給および吸収液(希液)の排出を容易に行うことができる。また。横方向に沿って積層された熱交換器に対して膜部材をこの積層方向に被せて熱交換部全体を容易に覆うことができる。

上記第1の局面による吸収式ヒートポンプ装置において、好ましくは、熱交換部は、内部を熱交換流体が流通する平板状の熱交換器が横方向に沿って積層された構造を有しており、熱交換部は、熱交換部を取り囲むように覆う膜部材を支持するための支持部材を兼ねている。

このように構成すれば、自己の形状を維持しにくい材質(材料)からなる膜部材を用いる場合にも、平板状の熱交換器が積層された熱交換部の剛性を利用して熱交換部まわりに膜部材を容易に保持することができる。これにより、吸収器が車体側から振動を受けた場合であっても、膜部材が熱交換部から脱落するのを容易に防止することができる。

上記第1の局面による吸収式ヒートポンプ装置において、好ましくは、蒸発器は、蒸発前の冷媒を貯留する冷媒貯留部を含み、吸収器は、蒸発器の内部において、膜部材の最下部近傍が冷媒貯留部の上面よりも上方に配置されるように構成されている。

このように構成すれば、膜部材は冷媒貯留部(液状の冷媒)に接触しないので、冷媒貯留部から蒸発した冷媒蒸気を膜部材の表面積を最大限に利用して熱交換部側(内向き)に透過させる(取り込む)ことができる。これにより、吸収器の性能を高く維持することができる。また、蒸発器の内部に吸収器が設けられる分、吸収式ヒートポンプ装置の小型化を図ることができる。

この発明の第2の局面における吸収式ヒートポンプ装置は、吸収液により冷媒蒸気を吸収する吸収式ヒートポンプ装置であって、冷媒を蒸発させる蒸発器と、蒸発器で蒸発した冷媒蒸気を吸収液に吸収させる吸収器と、を備え、吸収器または蒸発器は、冷媒蒸気の吸収液への吸収熱を除去するかまたは冷媒を蒸発させる熱交換部を含み吸収器に供給される吸収液を熱交換部の外表面に沿って塗布するかまたは蒸発器に供給される冷媒を熱交換部の外表面に沿って塗布する回転塗布部を備え、吸収器または蒸発器は、回転塗布部と、吸収液または冷媒が接触する熱交換部を取り囲むように覆った状態で配置されるとともに、吸収液または冷媒を透過させずに冷媒蒸気を透過可能に形成された膜部材を含む。

この発明の第2の局面による吸収式ヒートポンプ装置では、上記構成を備えることによって、膜部材により熱交換部を取り囲むように覆って吸収器全体を構成することができるので、吸収液が膜部材を透過して蒸発器に直接的に逆流するのを抑制することができる。また、膜部材により熱交換部を取り囲むように覆って蒸発器全体を構成することができるとともに、冷媒(液冷媒)を膜部材の内側に貯留した状態で、蒸発後の冷媒蒸気(低温水蒸気)を膜部材を透過させて吸収器へと供給することができる。これにより、蒸発器の冷媒(液冷媒)が吸収器に混入されるのを抑制することができる。この結果、本発明の吸収式ヒートポンプ装置を車両等に搭載した場合であっても車体の傾斜や揺れなどに起因して吸収器内の吸収液(希液)が蒸発器に逆流したり、蒸発器内の冷媒(液冷媒)が吸収器に混入したりするのが抑制されるので、車両に搭載した場合にも、吸収冷凍サイクルの性能が低下するのを抑制することができる。

なお、上記第1の局面による吸収式ヒートポンプ装置において以下の構成も考えられる。

(付記項1) すなわち、上記吸収液が膜部材の内底部に貯留される吸収式ヒートポンプ装置において、蒸発器で蒸発した冷媒蒸気は、吸収液の貯留される膜部材の内底部以外の外表面を透過して吸収器の内部に供給されるように構成されている。

(付記項2) また、上記第1の局面による吸収式ヒートポンプ装置において、膜部材を含む吸収器は、熱交換部が蒸発器の内壁面から突出するように設けられており、膜部材は、熱交換部の周囲を密閉した状態で、熱交換部が突出する蒸発器の内壁面に対して固定されている。

本発明の第1実施形態における吸収式ヒートポンプ装置の全体構成を示した図である。

本発明の第1実施形態における蒸発器内部に設置された吸収器を示した斜視図である。

本発明の第1実施形態における吸収器の詳細な構造を示した斜視図である。

本発明の第1実施形態における吸収器の全体的な構造を示した斜視図である。

本発明の第2実施形態における蒸発器の全体的な構造を示した斜視図である。

本発明の第2実施形態における蒸発器の詳細な構造を示した斜視図である。

以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。

[第1実施形態] まず、図1〜図4を参照して、本発明の第1実施形態による吸収式ヒートポンプ装置100の構成について説明する。

(吸収式ヒートポンプ装置の構成) 本発明の第1実施形態による吸収式ヒートポンプ装置100では、冷媒としての水と、吸収液としての臭化リチウム(LiBr)水溶液とが用いられる。また、吸収式ヒートポンプ装置100は、エンジン90を備えた乗用車およびバスなどの車両(図示せず)に搭載されるとともに車内の空調システムに適用されるように構成されている。

吸収式ヒートポンプ装置100は、図1に示すように、再生器10(二点鎖線枠内)と、凝縮器20と、蒸発器30と、吸収器40とを備える。再生器10は、吸収液から冷媒蒸気(高温水蒸気)を分離する役割を有する。凝縮器20は、冷房運転時に、冷媒蒸気を凝縮(液化)させる役割を有する。蒸発器30は、冷房運転時に、凝縮水となった冷媒を低温低圧の条件下で蒸発(気化)させる役割を有する。吸収器40は、濃液状態で供給された吸収液に蒸発器30で気化した冷媒蒸気(低温水蒸気)を吸収させる役割を有する。

再生器10は、吸収液を加熱する加熱部11と、加熱部11により加熱された吸収液から冷媒蒸気を分離する気液分離部12とを含む。加熱部11では、エンジン90から引き回された排気管91を流通する高温の排気ガスと吸収液とが熱交換される。なお、排気管91は、加熱部11を経由する排熱供給路91aと、加熱部11を経由しない迂回路91bとを含み、排熱供給路91aには弁92が設けられている。そして、冷房運転時および暖房運転時に弁92が開かれることによって、エンジン90から排出された排気ガスの一部が排熱供給路91aを経由して加熱部11に流通されるように構成されている。

また、吸収式ヒートポンプ装置100は、吸収液循環路51aおよび51bからなる循環通路51と、冷媒蒸気通路52および53と、冷媒通路54と、吸収液通路55および56と、冷媒供給路57および58とを備える。なお、循環通路51は、吸収液を加熱部11と気液分離部12との間で循環させる役割を有しており、吸収液循環路51aにポンプ71が設けられている。また、冷媒蒸気通路52は、冷房運転時に気液分離部12からの冷媒蒸気を凝縮器20に供給する役割を有する。冷媒蒸気通路53は、暖房運転時に気液分離部12で分離された冷媒蒸気を蒸発器30に流入させる役割を有する。ここで、冷媒蒸気通路52と冷媒蒸気通路53との接続部分には、冷房運転時に冷媒蒸気通路52を開にするか、暖房運転時に冷媒蒸気通路53を開にするかを切替可能な三方弁64が設けられている。また、冷媒通路54には、弁65が設けられている。

また、吸収液通路55は、弁61の開閉動作に応じて吸収器40に吸収液(濃液)を供給する役割を有する。吸収液通路56は、ポンプ72と弁62との連動時に吸収器40において冷媒蒸気が吸収された状態で貯留される吸収液(希液)を循環通路51に供給する役割を有する。冷媒供給路57は、暖房運転時にポンプ73と弁63とが連動することによって、蒸発器30に貯留された冷媒(水)を循環通路51に供給する役割を有する。冷媒供給路58は、結晶化防止を目的として弁67の開閉動作に応じて凝縮器20に貯留された凝縮水を直接的に吸収器40に供給する役割を有する。また、熱交換器59においては、吸収液通路55および吸収液通路56を流通する吸収液同士の熱交換が行われる。

また、吸収式ヒートポンプ装置100は、冷房運転時に駆動される冷却水回路80を備える。冷却水回路80は、凝縮器20における冷媒蒸気の冷却と、吸収器40における冷媒の吸収液への吸収時に発生する吸収熱の除去とに用いられる。詳細には、冷却水回路80は、冷却水(熱交換流体の一例)が流通する冷却水循環路81と、ポンプ82と、凝縮器20に配置された熱交換部83と、吸収器40に配置された熱交換部42(図3参照)と、放熱部84とを含む。放熱部84では、熱交換部84aを流通する冷却水が送風機84bにより送風された空気(外気)によって冷却(放熱)される。

蒸発器30は、図1に示すように、内部を絶対圧で1kPa以下の真空状態に保持する容器31と、容器31内部に設置された熱交換部32および噴射器33とを含む。また、蒸発器30の外部には、冷媒貯留部31aと噴射器33とを接続する通路34にポンプ35が設けられている。これにより、冷媒貯留部31aの冷媒(水)がポンプ35により汲み上げられて噴射器33から熱交換部32に向けて噴霧される。したがって、冷房運転時には、噴霧された冷媒(水)が冷媒蒸気(低温水蒸気)になる際に得る蒸発潜熱によって、送風機36により循環される車内の吸込空気は熱交換部32を通過する際に冷却される。

ここで、第1実施形態では、図1および図2に示すように、蒸発器30における容器31の内部に吸収器40が設置されている。以下、真空状態(絶対圧力で1kPa以下)に保たれた蒸発器30内に設置された吸収器40の構造について詳細に説明する。

(吸収器の構造) 図3に示すように、吸収器40は、縦断面が扁平形状を有する中空円盤状の複数(5個)の熱交換器41を一体的に含む熱交換部42と、隣接する熱交換器41間の領域に配置された回転塗布部43とを備える。熱交換部42は、熱交換器41同士が横方向(X軸方向)に沿って等ピッチ間隔を有して積層されている。また、熱交換部42は、全体として蒸発器30の容器31の側壁部31bの内壁面31cから横方向(水平方向における矢印X2方向)に突出して容器31(図2参照)の内部に露出するように設置されている。また、熱交換部42は、Z1側の点頂部とZ2側の下底部とにおいて、冷却水供給管42aおよび冷却水排出管42bによって各熱交換器41が互いに接続されている。なお、図3では、吸収器40の内部構造を示すために熱交換器41および回転塗布部43の図示を一部省略している。すなわち吸収器40の全体的な構造は、図2および図4に示される通りである。

また、図3に示すように、個々の熱交換器41は、回転塗布部43を回転させる回転軸47が中央部(中心部)を貫通する貫通部41aを有する。貫通部41aは、熱交換器41の伝熱壁を内外に貫通せずに貫通部41aの部分でも内部流路は伝熱壁により密閉されている。また、冷却水供給管42aおよび冷却水排出管42bは、内壁面31cを貫通して外部の冷却水循環路81(図1参照)に接続されている。これにより、冷却水供給管42aから流入された冷却水は、熱交換部42の各熱交換器41に分配され、熱交換器41内をZ1側からZ2側に流れて冷却水排出管42bに集まり冷却水循環路81に戻される。

また、熱交換部42には、冷却水供給管42aおよび冷却水排出管42bとは別に、吸収液(濃液)を供給する濃液供給管44a(吸収液供給路の一例)と、吸収液(希液)を排出する希液排出管44b(吸収液排出路の一例)とが設けられている。濃液供給管44aは、内壁面31cから横方向(矢印X2方向)に突出している。また、濃液供給管44aから矢印Y2方向に分岐した濃液供給ポート44cの部分が、各々の熱交換器41の対応するU字状の切欠部分41cに差し込まれている。ここで、熱交換器41と濃液供給ポート44cとは濃液供給管44a側の壁部により隔絶されている。また、濃液供給ポート44cの外表面44dには複数の孔部44eが形成されている。また、外表面44dは熱交換器41の外表面41bと滑らかに接続されている。これにより、熱交換器41において、濃液は、濃液供給ポート44cの孔部44eから外表面41bを伝って流下される。また、濃液供給管44aおよび希液排出管44bは、内壁面31cを貫通して外部の吸収液通路55および56(図1参照)にそれぞれ接続されている。したがって、熱交換部42は、内壁面31cに対して内部に向けて片持ち構造を有して取り付けられている。

ここで、第1実施形態では、図2および図4に示すように、熱交換部42、回転塗布部43、冷却水供給管42a、冷却水排出管42b、濃液供給管44aおよび希液排出管44bが一体化された構造を取り囲むように覆う膜部材45が設けられて吸収器40が構成されている。膜部材45は、容器31内において吸収液を透過させずに蒸発器30からの冷媒蒸気を透過可能な材料からなる。また、膜部材45として、樹脂製の疎水性多孔質膜などが挙げられる。また、熱交換部42が片持ち構造であるので、膜部材45は熱交換部42のX2側の端部から矢印X1方向に被せられるとともに、膜部材45のX1側の周状(円環状)の端部45cが蒸発器30の内壁面31cに対して周状に固定(接合)されている。なお、膜部材45のX1側の端部45cは、樹脂材料がバルク状に形成されてガスケット構造を構成しており、この端部45cが内壁面31cに周状に溶着されている。

また、熱交換部42全体が膜部材45を支持するための支持部材(骨組み)の役割を兼ねている。これにより、自己の形状を維持しにくい材質からなる膜部材45を用いても、5個の熱交換器41が積層され冷却水供給管42aおよび冷却水排出管42bで繋がれた熱交換部42の剛性を利用して、熱交換部42まわりに膜部材45が容易に保持されている。したがって、図示の都合上、円筒形状に似せて膜部材45の外形を図示しているが、実際には、膜部材45は、熱交換部42、回転塗布部43、冷却水供給管42a、冷却水排出管42b、濃液供給管44aおよび希液排出管44bが一体化された構造の外表面に密着するような状態で被せられて、端部45cが内壁面31cに周状に溶着されている。

また、図4に示すように、吸収液(濃液と希液との混合液)は、膜部材45の内底部45aに貯留されるように構成されている。この場合、蒸発器30で蒸発した冷媒蒸気は、吸収液の貯留される膜部材45の内底部45a以外の外表面45bを内向きに透過して吸収器40に供給される。これにより、膜部材45が熱交換部42を取り囲むように覆って吸収器40全体が構成されるので、冷媒蒸気が外表面45bを透過して熱交換器41の外表面41bにおいて濃液に吸収された後の希液は、膜部材45の内側の内底部45aに貯留される。そして、内底部45aに貯留された希液は、希液排出管44bを介して直接的に吸収器40の外部(吸収液通路56(図1参照))に排出されるように構成されている。

なお、濃液供給管44aおよび希液排出管44bが熱交換器41の積層方向(横方向)に沿って配置されるので、膜部材45により覆われた熱交換部42への吸収液の供給口(吸収液通路55と接続部分)および排出口(吸収液通路56と接続部分)は、横方向における一方側(側壁部31bのX1側)に集約される。これによっても熱交換部42には吸収液の供給口および排出口以外と容器31の外部との接続箇所が存在しないので、容器31内のX2側から膜部材45を被せて熱交換部42を容易に覆うことが可能に構成されている。また、膜部材45の内壁面31cに対するシール箇所(端部45c)が1つの領域に限られるので、吸収器40の内部と外部とのシール性が向上されて、吸収液が吸収器40の内側(膜部材45の内底部45a)に確実に貯留されるように構成されている。

回転塗布部43は、吸収器40に供給される吸収液(濃液)を熱交換部42の外表面41bに沿って塗布する役割を有する。詳細には、吸収器40は、図3に示すように、回転塗布部43を回転軸線150まわりに矢印R方向に回転させるモータ46(破線で示す)を備える。モータ46には、回転軸47(破線で示す)が接続されており、回転軸47が各熱交換器41の貫通部41aを介してX1側からX2側に延びている。回転塗布部43は、回転軸47まわりに一対のブラシ部材43aを有しており、各々が互いに180°間隔で回転軸47に取り付けられている。ブラシ部材43aは、回転軸47から半径外側方向に延びる腕部43bと、腕部43bに対して熱交換器41の外表面41bに向かってX1方向およびX2方向に延びるように植え付けられた複数本のブラシ43cとを有する。

したがって、冷房運転時においては、気液分離部12(図1参照)から供給された吸収液(濃液)が熱交換器41の外表面41bに供給された状態で、モータ46の駆動とともに各々のブラシ部材43aが外表面41bに沿って矢印R方向に回転移動されるように構成されている。これにより、回転塗布部43により外表面41bに沿って塗布された濃液に膜部材45を透過した冷媒蒸気が吸収されやすくなるように構成されている。より詳細には、ブラシ部材43aは、外表面41bに沿って矢印R方向に回転移動される際に、外表面41bに残留する冷却水との熱交換済みの吸収液(冷媒が吸収されて希釈された希液)を外表面41bから除去しながら、熱交換済みの希液が除去された外表面41bに、ブラシ部材43aに供給された濃液(冷媒の吸収量が少ない吸収液)が新たに塗布される。なお、塗布された吸収液に冷媒蒸気が吸収される際に発生する吸収熱は、熱交換器41を介して冷却水に奪われる。したがって、塗布された吸収液の温度が低温に保たれるので、塗布された吸収液への更なる冷媒蒸気の吸収が促進される。吸収液は希液となってブラシ部材43aにより外表面41bから除去されて膜部材45の内底部45aに落下する。

また、第1実施形態では、図2に示すように、吸収器40は、容器31(蒸発器30)の内部において、膜部材45の最下部近傍(Z2側)が冷媒貯留部31aの上面(水面)よりも上方に配置されるように構成されている。これにより、膜部材45は冷媒貯留部31aの冷媒に接触しないので、冷媒貯留部31aから蒸発した冷媒蒸気を膜部材45の表面積を最大限に利用して吸収器40内に透過させることが可能に構成されている。

また、図3に示すように、容器31のX1側の側壁部31bの外表面には、ハウジング36が取り付けられている。モータ46は、固定部材37(破線で示す)を介してハウジング36内に固定されている。また、モータ46に接続された回転軸47が容器31の側壁部31bを貫通して矢印X2方向(水平方向)に延びるとともに熱交換器41の貫通部41aを介して回転可能に挿入されている。なお、回転軸47の端部47aは、最もX2側の熱交換器41の貫通部41aに回転可能に支持されている。また、回転軸47が側壁部31bを貫通する部分には、封止材38が回転軸47に対して摺動可能に嵌め込まれている。なお、ハウジング36内も真空状態に保たれており、外部に対して気密性が保たれている。以上の構成によって、吸収式ヒートポンプ装置100は以下のように動作される。

(冷房運転時の動作) 冷房運転時には、図1に示すように、弁61および62を閉じた状態でポンプ71が始動されて吸収液を循環通路部51に矢印P方向に循環させる。加熱部11により昇温されて気液分離部12で分離された冷媒蒸気が所定温度に達した時点で弁61および62が開かれてポンプ72が始動される。これにより、気液分離部12に貯留されたLiBr濃液が吸収液通路55および56にも矢印Q方向に流通されて冷房サイクルが形成される。また、三方弁64が気液分離部12と凝縮器20とを連通する(冷媒蒸気が冷媒蒸気通路52を流通する)側に切り替えられ、凝縮器20で凝縮された冷媒蒸気が蒸発器30に流入されて、熱交換部32を介して車内の空気が冷却される。そして、容器31内の熱交換部32で蒸発した冷媒蒸気は、膜部材45を介して吸収器40に吸引される。吸収器40では、熱交換器41の外表面41bに供給された吸収液(濃液)に対して冷媒蒸気が吸収されて希液となり膜部材45の内底部45aに貯留される。また、内底部45aに貯留された希液は、希液排出管44bおよび吸収液通路55を流通して循環通路部51に戻される。

(暖房運転時の動作) 暖房運転時には、運転期間中、弁61および62は常に閉じられており吸収器40は使用されない。三方弁64が気液分離部12と蒸発器30とを連通する(高温水蒸気が冷媒蒸気通路53を流通する)側に切り替えられ、かつ、弁65が閉じられて凝縮器20がサイクルから切り離される。そして、運転開始直後に循環通路部51を循環させて吸収液の昇温が行われ、気液分離部12で分離された高温水蒸気が蒸発器30(凝縮器の役割を果たす)に直接的に流入される。これにより、熱交換部32を介して車内の空気が暖められる。また、蒸発器30で熱交換(冷却)された凝縮水は、ポンプ73と弁63との連動により冷媒供給路57を介して循環通路51に還流されて暖房サイクルが形成される。

(第1実施形態の効果) 第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。

第1実施形態では、吸収液が接触する熱交換部42を取り囲むように覆った状態で配置されるとともに、吸収液を透過させずに冷媒蒸気を透過可能に形成された膜部材45を吸収器40に設ける。これにより、膜部材45により熱交換部42を取り囲むように覆って吸収器40全体を構成することができるので、冷媒蒸気が膜部材45を透過して吸収液(濃液)に吸収された吸収液(希液)を、膜部材45の内側に貯留した状態で膜部材45以外の部分から吸収器40の外部に排出することができる。すなわち、吸収液が膜部材を透過して蒸発器30に直接的に逆流するのを抑制することができる。したがって、吸収式ヒートポンプ装置100を車両等に搭載した場合であっても、車両搭載時の車体の傾斜や揺れなどに起因して吸収液(希液)が蒸発器30に逆流するのが抑制されるので、車両に搭載した場合にも、吸収冷凍サイクルの性能が低下するのを抑制することができる。

また、第1実施形態では、膜部材45の内底部45aに吸収液が貯留されるように構成する。これにより、冷媒蒸気が吸収器40内で吸収液(濃液)に吸収された吸収液(希液)を、熱交換部42を取り囲むように覆う膜部材45の内底部45aに貯留することができるので、貯留された吸収液(希液)を蒸発器30に混入させることなく膜部材45以外の部分から吸収器40の外部の吸収液通路56に直接的に排出することができる。

また、第1実施形態では、吸収器40に供給される吸収液を熱交換器41の外表面41bに沿って塗布する回転塗布部43によって、外表面41bに沿って塗布された吸収液に膜部材45を透過した冷媒蒸気を吸収させるように構成する。これにより、回転塗布部43により吸収液(濃液)を熱交換器41の外表面41bに塗布した状態で膜部材45を透過した冷媒蒸気を吸収液に効率よく吸収させることができる。また、熱交換器41の外表面41bで冷媒蒸気が吸収されて希釈された吸収液を回転塗布部43により膜部材45の内底部45aに掻き下ろして貯留することができる。これにより、冷却された吸収液(希液)を熱交換器41の外表面41bから除去しつつ、この外表面41bに新たに供給される吸収液(濃液)に対して冷媒蒸気を連続的に吸収させることができるので、吸収器40の性能を継続的に維持することができる。

また、第1実施形態では、熱交換部42は、内部を冷却水が流通する平板状の5個の熱交換器41が横方向(X軸方向)に沿って積層された構造を有しており、膜部材45の内側において熱交換器41が積層された方向に沿って延びる濃液供給管44aを介して膜部材45の内側の領域に吸収液(濃液)を供給する。そして、冷媒蒸気が吸収されて膜部材45の内底部45aに貯留された吸収液を熱交換器41が積層された方向に沿って延びる希液排出管44bを介して外部に排出するように構成する。これにより、5個の熱交換器41を横方向(X軸方向)に沿って積層することによって、膜部材45を介して取り込まれた冷媒蒸気を各々の熱交換器41の外表面41b(伝熱面)に効率よく導いて吸収液への吸収を促進させることができる。そして、熱交換器41の積層方向に沿って延びる濃液供給管44aおよび希液排出管44bを介して吸収液(濃液)の供給および吸収液(希液)の排出を容易に行うことができる。また。横方向に沿って積層された熱交換器41に対して膜部材45をこの積層方向に被せて熱交換部42全体を容易に覆うことができる。

また、第1実施形態では、熱交換器41がX軸方向に沿って積層された熱交換部42は、熱交換部42を覆う膜部材45を支持する支持部材の役割を兼ねる。これにより、自己の形状を維持しにくい材質(材料)からなる膜部材45を用いる場合にも、平板状の熱交換器41が積層された熱交換部42の剛性を利用して熱交換部42まわりに膜部材45を容易に保持することができる。これにより、吸収器40が車体側から振動を受けた場合であっても、膜部材45が熱交換部42から脱落するのを容易に防止することができる。

また、第1実施形態では、蒸発器30の内部において、膜部材45の最下部近傍が冷媒貯留部31aの上面よりも上方に配置されるように吸収器40を構成する。これにより、膜部材45は冷媒貯留部31a(液状の冷媒)に接触しないので、冷媒貯留部31aから蒸発した冷媒蒸気を膜部材45の表面積を最大限に利用して熱交換部42側(内向き)に透過させる(取り込む)ことができる。これにより、吸収器40の性能を高く維持することができる。また、蒸発器30の内部に吸収器40が設けられる分、吸収式ヒートポンプ装置100の小型化を図ることができる。

また、第1実施形態では、蒸発器30で蒸発した冷媒蒸気が吸収液の貯留される膜部材45の内底部45a以外の外表面45bを透過して吸収器40の内部に供給される。これにより、冷媒蒸気の満たされた雰囲気に露出する膜部材45の外表面45bを最大限に利用して蒸発器30からの冷媒蒸気を吸収器40内に取り込むことができる。

また、第1実施形態では、蒸発器30の内壁面31cから突出するように熱交換部42を設け、膜部材45が熱交換部42の周囲を密閉した状態で熱交換部42が突出する蒸発器30の内壁面31cに対して固定されるように吸収器40を構成する。これにより、蒸発器30の内壁面31cに対して熱交換部42を片持ち構造で構成することができるので、熱交換部42に対して膜部材45を容易に被せて全体を覆うことができる。また、熱交換部42が固定される根元部分の内壁面31cの部分に冷却水供給管42a、冷却水排出管42b、濃液供給管44aおよび希液排出管44bを集中的に配置することができるので、これらの配管類の影響を受けることなく熱交換部42に被せられた膜部材45の端部を蒸発器30の内壁面31cに周状に接合することができる。

[第2実施形態] 図1および図4〜図6を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、上記第1実施形態と異なり、吸収器40に加えて蒸発器230に対しても吸収器40と同様の構成を適用して吸収式ヒートポンプ装置200を構成した例について説明する。

本発明の第2実施形態による吸収式ヒートポンプ装置200では、図5に示すように、容器31の内部に、蒸発器230および吸収器40が設置されている。なお、吸収器40については上記第1実施形態と同様であるので説明を省略する。一方、上記第1実施形態の蒸発器30(図1参照)の代わりに吸収器40と同様の構造を有する蒸発器230が設けられている。以下に、蒸発器230の構造を吸収器40とは符号を違えて説明する。

(蒸発器の構造) 図5に示すように、蒸発器230は、5個の熱交換器231を含む熱交換部232と、熱交換器231間の領域に配置された回転塗布部233とを備える。熱交換部232は、容器31の内壁面31cから矢印X2方向に突出している。また、熱交換部232は、上部と下部とにおいて、各々の熱交換器231に接続された空調用の水配管232aおよび232bによって互いに接続されている。空調用の水配管232aおよび232bは、図示しない熱交換器に接続されている。この熱交換器では、送風機により送風された空気(外気)が熱交換器(空気熱交)を流通する空調用の循環水によって冷却される。そして、冷却された空気(冷風)が車内に吹き出されるように構成されている。また、熱交換部232には、水配管232aおよび232bとは別に、冷媒(凝縮水)を供給するための冷媒供給管234aと、冷媒を排出する(暖房運転時に循環通路51に戻す)ための冷媒排出管234bとが設けられている。冷媒供給管234aおよび冷媒排出管234bは、内壁面31cを貫通して外部の冷媒通路54および57(図1参照)に接続されている。

ここで、第2実施形態では、図5および図6に示すように、熱交換部232、回転塗布部233、水配管232aおよび232b、冷媒供給管234aおよび冷媒排出管234bが一体化された構造を取り囲むように覆う膜部材235が設けられて蒸発器230が構成されている。また、膜部材235は、樹脂製の疎水性多孔質膜などからなり、X1側の端部235cは、樹脂材料がバルク状に形成されてガスケット構造を構成している。そして、この端部235cが内壁面31cに対して周状に溶着されている。

これにより、冷房運転時には、凝縮器20で凝縮された冷媒(凝縮水)が冷媒通路54および冷媒供給管234aを流通して熱交換器231の外表面231bに供給される。そして、冷媒は、回転塗布部233(ブラシ部材43a)の回転とともに外表面231bに薄く塗布される。この際、容器31内は真空状態なので冷媒が熱交換器231内の空調用の循環水から熱(蒸発潜熱)を奪いながら蒸発する。そして蒸発した冷媒蒸気(低温水蒸気)は、膜部材235の内底部235a以外の外表面235bを外向きに透過して容器31内における蒸発器230の外部空間に放出される。つまり、蒸発器230では、冷媒の噴射器や冷媒貯留部と噴射器とを接続する冷媒通路およびポンプなどは設けられていない。

その後、膜部材235の外部空間に放出された冷媒蒸気(低温水蒸気)は、直ちに、蒸発器230に隣接する吸収器40における膜部材45を内向きに透過して吸収器40に供給される。また、冷媒蒸気は、熱交換部42において冷却されるとともに希釈されて内底部45aに貯留される。このようにして冷房サイクルが形成される。なお、第2実施形態による吸収式ヒートポンプ装置200のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。

(第2実施形態の効果) 第2実施形態では、吸収器40に加えて、冷媒(水)が接触する熱交換部232を取り囲むように覆った状態で配置されるとともに、冷媒(水)を透過させずに冷媒蒸気を透過可能に形成された膜部材235を蒸発器230に設ける。これにより、膜部材235により熱交換部232を取り囲むように覆って蒸発器230全体を構成することができるとともに、冷媒(水)を膜部材235の内側に貯留した状態で、蒸発後の冷媒蒸気(低温水蒸気)を、膜部材235を外向きに透過させて吸収器40へと供給することができる。これにより、蒸発器230の冷媒(水)が吸収器40内部に混入されるのを抑制することができる。したがって、吸収式ヒートポンプ装置200を車両等に搭載した場合であっても、車両搭載時の車体の傾斜や揺れなどに起因して冷媒(水)が吸収器40に混入するのが抑制されるので、車両に搭載した場合にも、吸収冷凍サイクルの性能が低下するのを抑制することができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。

[変形例] 今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。

たとえば、上記第1および第2実施形態では、中空円盤状の熱交換器41(231)を用いて熱交換部42(232)を構成したが、本発明はこれに限られない。伝熱管を複数配列して熱交換部を構成してもよい。また、熱交換器41の個数も5個以外でもよい。

また、上記第2実施形態では、蒸発器230の熱交換器231に空調用の循環水を流通させたが、本発明はこれに限られない。たとえば、上記第1実施形態の蒸発器30の使用方式と同様に、熱交換部232内部に空調用の空気を直接流通させることにより、蒸発器230において冷媒(水)と空調用の空気とを熱交換させてもよい。

また、上記第1および第2実施形態では、本発明の吸収式ヒートポンプ装置を、乗用車、バスおよびトラックなどの車両の空調システムに適用したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ディーゼルエンジンを備えた列車や船舶などの空調システムに適用してもよい。また車両(移動体)のみならず、ビル、工場、商業施設などの空調を行うための据置型の吸収式ヒートポンプ装置に対しても本発明を広く適用することができる。

また、上記第1および第2実施形態では、エンジン90の排気ガスの熱を利用して吸収液を加熱したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ハイブリッド自動車や電動モータ駆動により走行する電気自動車の空調用に本発明の吸収式ヒートポンプ装置を適用してもよい。また、吸収液を加熱する熱源に電気自動車のバッテリやモータ排熱や燃料電池における発電時の排熱などを利用するなどして、燃料電池システムを備えた乗用車の空調に本発明の吸収式ヒートポンプ装置を適用してもよい。

また、上記第1および第2実施形態では、冷媒および吸収液として、水および臭化リチウム水溶液を用いたが、本発明はこれに限られない。たとえば、冷媒および吸収液として、それぞれ、アンモニアおよび水を用いて吸収式ヒートポンプ装置を構成してもよい。

30、230 蒸発器 31 容器 40 吸収器 41、231 熱交換器 42、232 熱交換部(支持部材) 43、233 回転塗布部 44a 濃液供給管(吸収液供給路) 44b 希液排出管(吸収液排出路) 45、235 膜部材 45a、235a 内底部 100、200 吸収式ヒートポンプ装置

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