グロープラグおよびグロープラグの製造方法

申请号 JP2013088267 申请日 2013-04-19 公开(公告)号 JP2014211278A 公开(公告)日 2014-11-13
申请人 日本特殊陶業株式会社; Ngk Spark Plug Co Ltd; 发明人 ITO KATSUTERU;
摘要 【課題】圧入代を過剰に小さくすることなく、また、圧入長を過剰に短くすることなく、リングに中軸を圧入する際の圧入荷重を低減する。【解決手段】グロープラグは、絶縁部と該絶縁部内に形成された導電部とを備えて前記導電部に通電することにより発熱し、軸線方向に延出する形状を有するヒータ素子と、導電性材料により形成された中軸と、前記ヒータ素子の後端部と前記中軸の先端部とが内部に圧入されて、前記ヒータ素子の後端部の側面を介して前記ヒータ素子の前記導電部と前記中軸とを電気的に接続させるリングと、を備える。このようなグロープラグにおいて、前記リング内で前記ヒータ素子の後端部に対向する前記中軸の先端部に、凹部形状が形成されている。【選択図】図1
权利要求
  • 絶縁部と該絶縁部内に形成された導電部とを備えて前記導電部に通電することにより発熱し、軸線方向に延出する形状を有するヒータ素子と、導電性材料により形成された中軸と、前記ヒータ素子の後端部と前記中軸の先端部とが内部に圧入されて、前記ヒータ素子の後端部の側面を介して前記ヒータ素子の前記導電部と前記中軸とを電気的に接続させるリングと、を備えるグロープラグにおいて、
    前記リング内で前記ヒータ素子の後端部に対向する前記中軸の先端部に、凹部形状が形成されていることを特徴とする グロープラグ。
  • 請求項1に記載のグロープラグであって、
    前記凹部形状は、該凹部形状の横断面の外周が、前記中軸の先端部の横断面の外周と同心円になるように形成され、
    前記中軸における前記凹部形状が形成される部位の横断面において、前記中軸の外壁を含む部分がリング状に形成されていることを特徴とする グロープラグ。
  • 請求項1または2に記載のグロープラグであって、
    前記リング内に圧入される前記中軸の先端部は、前記凹部形状が形成される部位の後端側が中実に形成されていることを特徴とする グロープラグ。
  • 請求項1から3までのいずれか1項に記載のグロープラグであって、
    前記リングは、鉄を主成分とする合金によって形成され、
    前記リングの内壁と前記中軸の先端部の側面とが直接接触し、
    前記リングの内壁と前記中軸の側面とが重なる部分の軸線方向の長さである圧入長が0.5mm以上であることを特徴とする グロープラグ。
  • 請求項4に記載のグロープラグであって、
    前記リングの方が、前記中軸よりもビッカース硬度が高いことを特徴とする グロープラグ。
  • 請求項1から5までのいずれか1項に記載のグロープラグであって、
    前記リングの内壁と前記中軸の側面とが重なる部分の軸線方向の長さである圧入長が0.5mm以上2.0mm以下であり、
    前記中軸の最先端における前記凹部形状の横断面の内径が0.90mm以上であり、
    前記凹部形状は、前記中軸の最先端から後端側に向かって1.47mm以上にわたって、横断面の内径が一定であることを特徴とする グロープラグ。
  • 請求項1から5までのいずれか1項に記載のグロープラグであって、
    前記リングの内壁と前記中軸の側面とが重なる部分の軸線方向の長さである圧入長が0.5mm以上2.0mm以下であり、
    前記中軸の最先端における前記凹部形状の横断面の内径が1.17mm以上であり、
    前記凹部形状は、前記中軸の最先端から後端側に向かって1.30mm以上にわたって、横断面の内径が一定であることを特徴とする グロープラグ。
  • 請求項1から5までのいずれか1項に記載のグロープラグであって、
    前記リングの内壁と前記中軸の側面とが重なる部分の軸線方向の長さである圧入長が0.5mm以上2.0mm以下であり、
    前記中軸の最先端における前記凹部形状の横断面の内径が1.43mm以上であり、
    前記凹部形状は、前記中軸の最先端から後端側に向かって1.92mm以上にわたって、横断面の内径が一定であることを特徴とする グロープラグ。
  • 請求項1か5までのいずれか1項に記載のグロープラグであって、
    前記リングの内壁と前記中軸の側面とが重なる部分の軸線方向の長さである圧入長が0.5mm以上2.0mm以下であり、
    前記中軸の最先端における前記凹部形状の横断面の内径が1.70mm以上であり、
    前記凹部形状は、前記中軸の最先端から後端側に向かって1.01mm以上にわたって、横断面の内径が一定であることを特徴とする グロープラグ。
  • 絶縁部と該絶縁部内に形成された導電部とを備えて前記導電部に通電することにより発熱し、軸線方向に延出する形状を有するヒータ素子を用意する第1の工程と、導電性材料により形成された中軸を用意する第2の工程と、導電性材料により形成されるリングを用意する第3の工程と、前記ヒータ素子の先端部が前記リングの先端から突出するように前記リング内に前記ヒータ素子を圧入し、前記ヒータ素子の後端部の側面を介して前記ヒータ素子の前記導電部と前記リングとを電気的に接続させる第4の工程と、前記リングの後端部に前記中軸の先端部を圧入する第5の工程と、を備えるグロープラグの製造方法であって、
    前記第2の工程は、前記中軸の先端部に凹部形状を形成する工程を含むことを特徴とする グロープラグの製造方法。
  • 請求項10に記載のグロープラグの製造方法であって、
    前記第3の工程は、鉄を主成分とする合金よって形成される前記リングを用意する工程であり、
    前記第5の工程は、前記リングの内壁と前記中軸の先端部の側面とが直接接触し、前記リングと前記中軸とが重なる部分の軸線方向の長さである圧入長が0.5mm以上となるように、前記リングに前記中軸を圧入する工程であることを特徴とする グロープラグの製造方法。
  • 说明书全文

    本発明は、グロープラグおよびグロープラグの製造方法に関するものである。

    ディーゼルエンジン等の圧縮着火方式の内燃機関では、始動時の補助熱源としてグロープラグが使用される。 従来、グロープラグの構造としては種々のものが知られている。 例えば、通電することにより発熱するヒータ素子と、導電性材料により形成されて後端部に外部端子が取り付けられる中軸と、ヒータ素子の後端部と中軸の先端部とが内部に嵌め込まれるリングとを備える構成が知られている。 上記ヒータ素子としては、ヒータ素子内に設けられて通電される導電部が、第1の電位側(マイナス側)の接続端子と第2の電位側(プラス側)の接続端子を備え、各々の接続端子がヒータ素子の側面に露出する構成のものが知られている。 そして、このようなヒータ素子の後端部がリング内に圧入されることによって、第2の電位側の接続端子と中軸とが、上記リングを介して電気的に接続される。 このようなグロープラグの組み立て時には、中軸の先端部のリングへの嵌め込みも圧入により行なう場合がある(例えば、特許文献1参照)。

    特開2012−63078号公報

    中軸の先端部をリング内に圧入する際には、圧入時の圧入荷重が過大とならないことが望ましい。 圧入荷重が過大であると、圧入の動作が不十分となって中軸とリングとの接続が不十分になる可能性があるためである。

    中軸の先端部をリング内に圧入するためには、中軸の先端部の外径をリングの内径よりも大きくする必要がある。 そこで、上記圧入荷重を抑える方策の一つとして、中軸の先端部の外径とリングの内径の差(圧入代)を小さくする方策が考えられる。 しかしながら、中軸先端部の外径の寸法のバラツキ(公差)、リングの内径の公差、ヒータ素子の外径の公差、リングの硬度あるいは圧入条件など、様々な要因で圧入荷重にはバラツキが生じ得る。 そのため、圧入荷重が過小であることに起因する圧入不良を抑制するためには、圧入代をある程度大きく設定する必要があり、圧入代を小さくすることによる圧入荷重の低減には限界がある。

    圧入荷重を抑える他の方策として、リング内に圧入された中軸の先端部におけるリングと重なる部分の軸線方向の長さ(以下、圧入長とも呼ぶ)をより短くする方策も考えられる。 ただし、圧入長を短く設定すると、中軸先端部の外径の公差やリングの内径の公差等によっては、中軸の先端部とリングとの結合の強度が不十分になる場合が生じ得る。 上記結合の強度が不十分であると、中軸がリングから抜け易くなるために、グロープラグの製造工程の途中において中軸とリングをと含む部品の取り扱いが困難化する可能性がある。 また、上記結合の強度が不十分であると、その後の製造工程において中軸が傾き、不具合が生じる可能性がある。

    本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。

    (1)本発明の一形態によれば、絶縁部と該絶縁部内に形成された導電部とを備えて前記導電部に通電することにより発熱し、軸線方向に延出する形状を有するヒータ素子と、導電性材料により形成された中軸と、前記ヒータ素子の後端部と前記中軸の先端部とが内部に圧入されて、前記ヒータ素子の後端部の側面を介して前記ヒータ素子の前記導電部と前記中軸とを電気的に接続させるリングと、を備えるグロープラグが提供される。 このグロープラグは、前記リング内で前記ヒータ素子の後端に対向する前記中軸の先端部に、凹部形状が形成されている。
    この形態のグロープラグによれば、中軸の先端部に凹部形状を設けることにより、中軸をリング内に圧入する際に、中軸の先端部分が径方向内側へと変形し易くなる。 そのため、中軸の圧入時の圧入荷重を低減することができる。 圧入荷重を低減できることにより、リング内への中軸の圧入が不十分となることを抑え、中軸とリングとの結合を安定化することができる。 さらに、圧入代をより大きくして、中軸とリングとの結合を強めることが可能になる。 また、リング内に圧入された中軸の先端部におけるリングと重なる部分の軸線方向の長さ(圧入長)をより長く確保して、リングと中軸の結合力を強めることができる。 中軸とリングとの結合力を強めることにより、中軸とリングとを含む部品の取り扱い性を向上させることができ、あるいはグロープラグの製造工程の途中において中軸がリングに対して傾くことを抑制可能になる。

    (2)上記形態のグロープラグにおいて、前記凹部形状は、該凹部形状の横断面の外周が、前記中軸の先端部の横断面の外周と同心円になるように形成され、前記中軸における前記凹部形状が形成される部位の横断面において、前記中軸の外壁を含む部分がリング状に形成されていることとしてもよい。
    この形態のグロープラグによれば、中軸をリング内に圧入する際に、中軸の先端部を径方向内側へと特に変形し易くすることができ、圧入荷重を低減する効果を高めることができる。

    (3)上記形態のグロープラグにおいて、前記リング内に圧入される前記中軸の先端部は、前記凹部形状が形成される部位の後端側が中実に形成されていることとしてもよい。
    この形態のグロープラグによれば、圧入後のリングと中軸との結合の強度を高めることができる。

    (4)上記形態のグロープラグにおいて、前記リングは、鉄を主成分とする合金によって形成され、前記リングの内壁と前記中軸の先端部の側面とが直接接触し、前記リングの内壁と前記中軸の側面とが重なる部分の軸線方向の長さである圧入長が0.5mm以上であることとしてもよい。
    この形態のグロープラグによれば、リングの内表面に対して特別な処理を行なう必要がないため、圧入長を長くしても製造工程の複雑化を抑制できる。

    (5)上記形態のグロープラグにおいて、前記リングの方が、前記中軸よりもビッカース硬度が高いこととしてもよい。
    この形態のグロープラグによれば、圧入の際に中軸の先端部をより変形し易くして、圧入荷重を低減する効果を高めることができる。

    (6)上記形態のグロープラグにおいて、前記リングの内壁と前記中軸の側面とが重なる部分の軸線方向の長さである圧入長が0.5mm以上2.0mm以下であり、前記中軸の最先端における前記凹部形状の横断面の内径が0.90mm以上であり、前記凹部形状は、前記中軸の最先端から後端側に向かって1.47mm以上にわたって、横断面の内径が一定であることとしてもよい。
    この形態のグロープラグによれば、凹部形状を設けることにより圧入荷重を低減する効果を高めることができる。

    (7)上記形態のグロープラグにおいて、前記リングの内壁と前記中軸の側面とが重なる部分の軸線方向の長さである圧入長が0.5mm以上2.0mm以下であり、前記中軸の最先端における前記凹部形状の横断面の内径が1.17mm以上であり、前記凹部形状は、前記中軸の最先端から後端側に向かって1.30mm以上にわたって、横断面の内径が一定であることとしてもよい。
    この形態のグロープラグによれば、凹部形状を設けることにより圧入荷重を低減する効果を高めることができる。

    (8)上記形態のグロープラグにおいて、前記リングの内壁と前記中軸の側面とが重なる部分の軸線方向の長さである圧入長が0.5mm以上2.0mm以下であり、前記中軸の最先端における前記凹部形状の横断面の内径が1.43mm以上であり、前記凹部形状は、前記中軸の最先端から後端側に向かって1.92mm以上にわたって、横断面の内径が一定であることとしてもよい。
    この形態のグロープラグによれば、凹部形状を設けることにより圧入荷重を低減する効果を高めることができる。

    (9)上記形態のグロープラグにおいて、前記リングの内壁と前記中軸の側面とが重なる部分の軸線方向の長さである圧入長が0.5mm以上2.0mm以下であり、前記中軸の最先端における前記凹部形状の横断面の内径が1.70mm以上であり、前記凹部形状は、前記中軸の最先端から後端側に向かって1.01mm以上にわたって、横断面の内径が一定であることとしてもよい。
    この形態のグロープラグによれば、凹部形状を設けることにより圧入荷重を低減する効果を高めることができる。

    (10)本発明の他の形態によれば、絶縁部と該絶縁部内に形成された導電部とを備えて前記導電部に通電することにより発熱し、軸線方向に延出する形状を有するヒータ素子を用意する第1の工程と、導電性材料により形成された中軸を用意する第2の工程と、導電性材料により形成されるリングを用意する第3の工程と、前記ヒータ素子の先端部が前記リングの先端から突出するように前記リング内に前記ヒータ素子を圧入し、前記ヒータ素子の後端部の側面を介して前記ヒータ素子の前記導電部と前記リングとを電気的に接続させる第4の工程と、前記リングの後端部に前記中軸の先端部を圧入する第5の工程と、を備えるグロープラグの製造方法が提供される。 このグロープラグの製造方法は、前記第2の工程において、前記中軸の先端部に凹部形状を形成する工程を含む。
    この形態のグロープラグの製造方法によれば、中軸の先端部に凹部形状を設けることにより、中軸をリング内に圧入する際に、中軸の先端部分が径方向内側へと変形し易くなる。 そのため、中軸の圧入時の圧入荷重を低減することができる。 その結果、リング内への中軸の圧入が不十分となることを抑え、中軸とリングとの結合を安定化することができる。 さらに、圧入荷重を低減することにより、圧入代をより大きくすることが可能になり、また、リング内に圧入された中軸の先端部におけるリングと重なる部分の軸線方向の長さ(圧入長)をより長く確保できる。 その結果、リングと中軸の結合の強度を高めることができるため、中軸とリングとを含む部品の取り扱い性を向上させることができ、あるいはグロープラグの製造工程の途中において中軸がリングに対して傾くことを抑制可能になる。

    本発明は、上記以外の種々の形態で実現可能であり、例えば、グロープラグ用の中軸、あるいはグロープラグ用の中軸のリングへの圧入方法などの形態で実現することが可能である。

    グロープラグの概略構成を表わす断面模式図である。

    ヒータ素子の後端部と中軸の先端部とが接する部位を含む領域の様子を表わす説明図である。

    中軸とヒータ素子を構成する各部の位置関係および大きさを示す説明図である。

    中軸の先端部の変形例を示す説明図である。

    実施形態のグロープラグの製造方法を表わす工程図である。

    第2の実施形態のグロープラグの概略構成を表わす断面模式図である。

    凹部形状の条件を種々変更したときの圧入荷重をシミュレーションにより求めた結果を示す説明図である。

    変形例としてのグロープラグの概略構成を表わす断面模式図である。

    A. 第1の実施形態:
    図1は、本発明の第1の実施形態としてのグロープラグ10の概略構成を表わす断面模式図である。 本実施形態のグロープラグ10は、ディーゼルエンジン等の内燃機関に取り付けられて、内燃機関の始動時における点火を補助する熱源として機能する。 グロープラグ10は、ディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF)の再活性バーナーシステムの熱源として用いることもできる。 図1に示すように、グロープラグ10は、主な構成要素として、主体金具20と、外筒30と、ヒータ素子40と、中軸50と、リング60と、を備えている。 なお、本明細書では、図1におけるグロープラグ10の軸線O方向の下方側をグロープラグ10の「先端側」と呼び、上方側を「後端側」と呼んで説明する。

    主体金具20は、軸線Oに沿って延びる略円筒状の部材であり、本実施形態では、炭素鋼によって形成されている。 主体金具20の内部には、軸線Oに沿って主体金具20を貫通する軸孔21が形成されている。 また、主体金具20の後端側の外周面には、雄ネジ部22が形成されている。 この雄ネジ部22が、内燃機関のシリンダヘッド(図示せず)のプラグ取り付け孔に形成された雌ネジに螺合することによって、グロープラグ10が内燃機関に固定される。

    外筒30は、軸線Oに沿って延びる略円筒状の金属製部材である。 外筒30の内部には、軸線Oに沿って外筒30を貫通する軸孔31が形成されている。 軸孔31の内径は、ヒータ素子40の外径と同等、あるいはヒータ素子40の外径に比べて若干小さく形成されており、軸孔31内にヒータ素子40が嵌め込まれる。 外筒30の後端部は、主体金具20の軸孔21の先端部に嵌め込まれ、主体金具20の先端側の端部において、主体金具20と外筒30とが溶接される。

    ヒータ素子40は、軸線Oに沿って延びる略円柱状の部材であり、絶縁部41と、導電部42とを備えている。 ヒータ素子40は、その中ほどの部位において外筒30内の軸孔31内に嵌め込まれている。 ヒータ素子40において、上記中ほどの部位よりも先端側の部分は、外筒30の先端から突出している。 上記中ほどの部位よりも後端側の部分は、主体金具20の軸孔21内に収容されている。 ヒータ素子40は、電力が供給されることによって発熱する。 ヒータ素子40の径(後述するリング60内に嵌め込まれる後端部の径)は、例えば2.5mm以上とすることができ、好ましくは2.9mm以上とすることができる。 また、上記ヒータ素子40の径は、3.5mm以下とすることができ、好ましくは3.3mm以下とすることができる。

    絶縁部41は、絶縁性のセラミックによって形成されている。 本実施形態では、絶縁部41は窒化珪素によって形成されている。 ただし、絶縁部41は、窒化珪素に限らず、例えば、アルミナやサイアロン等の他の絶縁性のセラミックによって形成されていてもよい。 この絶縁部41は、ヒータ素子40の基体を成す部位である。

    導電部42は、絶縁部41の内部に埋設されており、軸線O方向に伸長すると共に先端側を頂点にして折り曲げられたU字状の構造であり、通電によって抵抗発熱する導電性のセラミックによって形成されている。 本実施形態では、導電部42は、タングステンカーバイドによって形成されている。 ただし、導電部42は、タングステンカーバイドに限らず、例えば、二珪化モリブデンや二珪化タングステン等の他の導電性のセラミックによって形成されていてもよい。

    U字状に形成された導電部42の両端部は、ヒータ素子40の後端部の外表面において露出する。 一方の端部が第1の電位側の端部(マイナス側端部)43であり、他方の端部が、一方の端部よりも高電位になる第2の電位側の端部(プラス側端部)44である。 また、導電部42には、上記第2の電位側の端部(プラス側端部)44の近傍において、ヒータ素子40の側面で露出する第2の電位側の接続端子(プラス側接続端子)46が形成されている。 さらに導電部42には、上記第1の電位側の端部(マイナス側端部)43の近傍であって、上記第2の電位側の接続端子46よりも先端側の位置に、ヒータ素子40の側面で露出する第1の電位側の接続端子(マイナス側接続端子)45が形成されている。 導電部42の第1の電位側の接続端子(マイナス側接続端子)45は、ヒータ素子40が外筒30内の軸孔31内に嵌め込まれることにより、軸孔31の内壁に接触し、外筒30と電気的に接続される。 導電部42の第2の電位側の接続端子(プラス側接続端子)46は、後述するようにリング60に接する。 なお、本実施形態では、第1の電位側の接続端子45および第2の電位側の接続端子46は、導電部42の他の部位と同じ材料で形成されており、導電部42の一部として形成されている。 ただし、第1の電位側の接続端子45および第2の電位側の接続端子46は、導電部42の他の部位と別体で形成されていてもよい。

    中軸50は、軸線Oに沿って延びる形状を有し、導電性材料によって形成される棒状の部材であり、主体金具20の軸孔21内において、ヒータ素子40の後端側に配置されている。 中軸50を構成する導電性材料の硬度(ビッカース硬度)は、HV150〜250であることが好ましく、HV200〜250であることが更に好ましい。 中軸50は、このような硬度の条件を満たす導電性材料、例えばSUS430等のフェライト系ステンレス、A6061、A7075等のアルミニウム合金、およびS45C等の炭素鋼から選択される金属材料によって形成することができる。 中軸50の外径は、主体金具20の軸孔21の内径よりも小さく形成されており、中軸50と軸孔21の内壁との間には、両者を電気的に絶縁する空隙が形成される。 本実施形態では、中軸50の先端部がヒータ素子40の後端部に接しており、中軸50の先端部の構造に特徴があるが、中軸50の先端部の構造の詳細については後に詳述する。 グロープラグ10では、さらに、中軸50の後端部において、金属製の端子金具70が加締め固定されている。

    リング60は、導電性材料で形成された円筒状部材であり、主体金具20の軸孔21の内部で、中軸50とヒータ素子40との間に組み付けられる。 具体的には、ヒータ素子40の後端部と、中軸50の先端部とが、リング60の内部に圧入される。 ヒータ素子40の後端部がリング60に圧入されることにより、ヒータ素子40の側面に露出する第2の電位側の接続端子(プラス側接続端子)46がリング60の内壁に接する。 これにより、ヒータ素子40の導電部42の第2の電位側の接続端子(プラス側接続端子)46が、リング60を介して中軸50に電気的に接続される。

    リング60を構成する導電性材料の硬度(ビッカース硬度)は、中軸50を構成する導電性材料のビッカース硬度よりも高いことが好ましく、両者のビッカース硬度の値の差が20以上であることがさらに好ましい。 このようなリング60を構成する導電性材料の硬度(ビッカース硬度)は、HV270〜400であることが好ましく、HV270〜330であることが更に好ましい。 リング60は、このようなビッカース硬度を満たす導電性材料である鉄を主成分とする合金(鉄系材料)によって形成することが好ましい。 具体的には、リング60は、例えばSUS410等のマルテンサイト系ステンレスを熱処理により硬度調整した材料、SUS630等の析出硬化系ステンレス、および強圧延仕上を行なった炭素鋼から選択される金属材料によって形成することができる。

    また、主体金具20の後端部には、主体金具20の軸孔21の内壁と中軸50の間、および、主体金具20の後端と端子金具70の間に介在するように、円筒状の絶縁部材72が配置されている。 絶縁部材72は、中軸50を主体金具20内で位置決めすることによって、中軸50と主体金具20との間を電気的に絶縁する空隙を形成すると共に、端子金具70と主体金具20との間を電気的に絶縁する。 絶縁部材72は、絶縁性および使用環境に応じた耐熱性を有する材料、例えば、ナイロン(登録商標)やPPS樹脂(ポリフェニレンサルファイド樹脂)等の絶縁性樹脂によって形成することができる。

    主体金具20の軸孔21の内壁と中軸50の間において、絶縁部材72よりも先端側には、円筒状の封止部材74が配置されている。 封止部材74は、中軸50、絶縁部材72および主体金具20の各々に密着することによって、主体金具20の内部を密閉する。 封止部材74は、絶縁性、弾性、および使用環境に応じた耐熱性を有する材料、例えば、フッ素ゴムやシリコーンゴム等の弾性体によって形成することができる。

    以上のように構成されたグロープラグ10では、端子金具70から電力が供給されると、中軸50、リング60および第2の電位側の接続端子46を通じて導電部42に電力が供給され、ヒータ素子40が発熱する。 このとき、導電部42の第1の電位側の接続端子45は、外筒30、主体金具20、および内燃機関のシリンダヘッドを通じて接地される。

    図2は、ヒータ素子40の後端部と中軸50の先端部とが接する部位を含む領域の様子を表わす説明図である。 具体的には、図2(A)は、図1において領域Xとして破線で囲んだ領域の構成を拡大して示す断面模式図である。 また、図2(B)は、図2(A)における2−2断面の様子を表わす断面図である。 なお、図2では、図1の領域X内における主体金具20については記載を省略している。

    中軸50の先端部には、中軸50の側面を含む側面近傍の部分を残して軸線O方向の後端側に凹んだ凹部形状52が形成されている。 具体的には、凹部形状52は、軸線Oに垂直方向の面(以下、横断面と呼ぶ)の外周が円形に形成されると共に、横断面の外周が中軸50の先端部の横断面の外周と同心円となるように形成されている。 このような凹部形状52が形成されることにより、中軸50の先端部の横断面では、中軸50の外壁を含む部分がリング状に形成される。 リング60内において、中軸50の先端部の最先端は、ヒータ素子40の後端部と接触している。 なお、本明細書において説明する各部の形状、具体的には、円形、同心円、径が一定等の形状は、各部を備える部材の製造時の誤差等に起因する公差による歪みや変形を有する形状を含んでいる。

    図3は、中軸50の先端部とヒータ素子40の後端部とを離間して示すことにより、両者を構成する各部の位置関係および大きさを示す説明図である。 凹部形状52は、中軸50の最先端から後端側に向かう所定の範囲にわたって、横断面の径が一定の長さとなるように形成されている。 凹部形状52における横断面の径が一定である部分を、軸線Oに垂直な面に投影したときの範囲を、図3において範囲Yとして示す。 また、ヒータ素子40の後端部において露出する第1の電位側の端部43を、軸線Oに垂直な面に投影したときの範囲を、図3において範囲Zとして示す。 図3に示すように、範囲Zは、範囲Yの外周から離間した状態で範囲Yと重なっている。 すなわち、導電部42の第1の電位側の端部43は、中軸50の先端部に凹部形状52が形成された領域と、軸線O方向に重なる位置に形成されている。

    図3では、凹部形状52の横断面の径が一定である部分の中軸50の肉厚(中軸50の先端部における横断面がリング状に形成された部分の厚み)を厚みaとして示している。 この厚みaは、中軸50をリング60内に圧入する動作を行なうために十分な強度を中軸50が有することになる値であればよく、例えば50μm以上とすることが望ましい。 さらに、図3では、中軸50の先端部の内壁と、ヒータ素子40の後端部で露出する導電部42の第1の電位側の端部(マイナス側端部)43との距離をbとして示している。 この距離bは、第1の電位側の端部43と、中軸50の先端部の内壁と、の間の短絡を抑えるためには、0.12mm以上とすることが好ましく、0.2mm以上とすることがさらに好ましい。 また、上記した距離bは、グロープラグ10の横断面の径の大型化を抑えるためには、1mm以下とすることが好ましく、0.8mm以下とすることがさらに好ましい。

    また、図3では、中軸50の先端部に設けた凹部形状52において、中軸50の最先端から後端側に向かって横断面の内径が一定となるように形成されている部分の軸線Oに平行な方向の長さを、凹部深さcとして示している。 この凹部深さcは、第1の電位側の端部43と中軸50との短絡を抑えるためには、0.2mm以上とすることが好ましく、0.5mm以上とすることがさらに好ましい。 なお、凹部形状52は、中軸50において、より深く形成することも可能であり、例えば、中軸50に端子金具70が嵌め込まれる位置の手前まで、凹部形状52を形成することとしてもよい。 すなわち、中軸50において、主体金具20内に収納される部位は、凹部形状52が軸線O方向に延出して形成された中空の構造を有することとしてもよい。 なお、図3では、凹部形状52の横断面の内径(中軸50の最先端における凹部形状52の横断面の内径)を凹部径dとして示し、リング60内に圧入された中軸50の先端部においてリング60と重なって接する部分の軸線O方向の長さを圧入長eとして示す。 本実施形態では、圧入長eは0.5mm以上としている。

    さらに、本実施形態では、中軸50には、先端部近傍の外壁に、後端側に向かって急激に外径が拡大する鍔状の段差部54が形成されている(図2および図3参照)。 中軸50は、この段差部54において、リング60の後端と接している。 既述したように、本実施形態では圧入長eが0.5mm以上に設定されており、段差部54は、設定された圧入長eが実現されたときにリング60の後端と接することになる位置に設けられている。

    図4は、中軸50の先端部の変形例を示す説明図である。 この例のように、中軸50の最先端を含む外壁において、中軸50の先端側に向かって次第に縮径するテーパ56を形成してもよい。 これにより、中軸50の先端部をリング60内に嵌め込む動作を容易化することができる。 図4では、テーパ56における傾斜の度(テーパ56の傾斜面が中軸50の外側面に対して成す角度)をテーパ角θとして示している。 このテーパ角θは、例えば5〜20°とすることができる。 図4では、凹部深さcおよび圧入長eも併せて示している。 圧入長eは、既述したように、中軸50の先端部においてリング60と重なって接する部分の軸線O方向の長さとして規定される。 テーパ56は、圧入時にリング60の内壁に押されることがなく、圧入荷重にほとんど寄与しないため、テーパ56を設ける場合の圧入長eは、図4に示すようにテーパ56の後端から段差部54までの軸線O方向の長さとなる。

    図5は、本発明の第1の実施形態のグロープラグ10の製造方法を表わす工程図である。 グロープラグ10を製造する際には、まず、凹部形状52を形成した中軸50を用意する(ステップS100)。 凹部形状52は、例えば、中軸50となる金属製の棒状部材の先端部を切削加工することにより形成すればよい。 あるいは、鍛造によって、凹部形状52を有する中軸50を作製することとしてもよい。

    また、リング60の後端側から先端側へとヒータ素子40の先端を挿入し、リング60内にヒータ素子40を圧入する(ステップS110)。 これにより、導電部42のプラス側接続端子46がリング60の内壁に接触して、導電部42とリング60とが電気的に接続される。 このとき、ヒータ素子40がリング60内に圧入されることで、プラス側接続端子46とリング60の内壁との密着状態が高められ、導電部42とリング60とが電気的に接続される際の抵抗が十分に抑えられる。

    その後、外筒30内に、軸孔31の後端側からヒータ素子40を圧入し、外筒30の先端からヒータ素子40の先端部を突出させる(ステップS120)。 これにより、導電部42のマイナス側接続端子45が軸孔31の内壁面に密着され、導電部42と外筒30とが電気的に接続される。

    次に、リング60の後端側に中軸50の先端部を圧入し、溶接により両者を固定する(ステップS130)。 具体的には、圧入長eが0.5mm以上である予め設定された値となるように圧入が行なわれる。 圧入の際には、中軸50の先端部における凹部形状52が形成された部位の強度に応じて、中軸50の先端部が径方向内側へと変形し得る。 上記圧入を行なうことにより、既述したように、中軸50は段差部54においてリング60の後端と接すると共に、中軸50の先端(最先端)が、ヒータ素子40の後端部(後端面)に接触する。 リング60と中軸50との溶接は、リング60の後端と段差部54とが接する位置(図2において矢印W1で示す)において行なえばよい。 ただし、中軸50とリング60との結合の強度が十分であれば、中軸50とリング60との溶接を行なわないことも可能である。 なお、本実施形態では、ヒータ素子40が嵌め込まれたリング60の後端側に中軸50を圧入する前に、外筒30内にヒータ素子40を圧入したが、このステップS120とステップS130の順序は逆であってもよい。 また、凹部形状52を形成した中軸50を用意する工程(ステップS100)は、ステップS110あるいはステップS120の後であってもよい。

    次に、主体金具20の軸孔21内に中軸50を挿入して、外筒30の後端部に主体金具20の先端部を組み付ける(ステップS140)。 このとき、外筒30と主体金具20の間は、溶接により固定する。

    その後、主体金具20および中軸50の後端部に、封止部材74、絶縁部材72、および端子金具70を取り付けて(ステップS150)、グロープラグ10を完成する。

    以上のように構成された本実施形態のグロープラグ10によれば、中軸50の先端部に凹部形状52を設けることにより、中軸50をリング60内に圧入する際に、中軸50の先端部分が径方向内側へと変形し易くなる。 特に、本実施形態では、凹部形状52の横断面の外周が、中軸50の先端部の横断面の外周と同心円であり、中軸50の先端部の横断面において、中軸50の外壁を含む部分がリング状となっている。 したがって、中軸50の圧入時には、中軸50の先端部は径方向内側へと特に変形し易くなっている。 そのため、中軸50をリング60内へと圧入して所望の圧入長eを実現するための圧入荷重を低減することができる。 その結果、リング60内への中軸50の圧入が不十分となること、例えば中軸50の段差部54とリング60の後端との間に隙間が形成されることを抑えることができる。 これにより、中軸50とリング60との結合を安定化することができる。

    本実施形態では、上記のようにリング60内への中軸50の圧入が不十分になることが抑えられ、また、中軸50の最先端がヒータ素子の後端部に接するまで中軸50を圧入するため、十分に長い圧入長eを確保することができる。 したがって、中軸50がリング60から抜けることを抑制し、その後のグロープラグ10の製造工程の途中(例えば、中軸50のリング60内への圧入から中軸50とリング60との溶接までの間)において、中軸50とリング60とを含む部品の取り扱い性を向上させることができる。 また、十分に長い圧入長eを確保して中軸50とリング60との結合を強固にできるため、その後のグロープラグ10の製造工程の途中において中軸50がリング60に対して傾くことを抑制できる。 なお、本実施形態によれば、中軸50の先端部を変形し易くすることによって圧入荷重を抑えることにより、従来よりも長い圧入長e、例えば0.5mm以上の圧入長eを実現することが可能になる。

    また、本実施形態によれば、圧入荷重を低減できることにより、圧入を行なう際に、圧入荷重が過大であることに起因してヒータ素子40に対してリング60が相対的に先端側に移動する不都合を抑えることができる。 そのため、上記したリング60の相対的な移動に起因してヒータ素子40の導電部42とリング60との電気的な接続が損なわれるという不都合を抑えることができる。 さらに、本実施形態では、中軸50の先端部を変形し易くすることによって圧入荷重を抑えているため、中軸50の先端部の外径とリング60の内径の差(圧入代Δφ)をより大きく確保して、中軸50とリング60との結合の強度を高めることができる。

    また、本実施形態によれば、リング60の方が中軸50よりも構成材料のビッカース硬度が高いため、圧入の際に中軸の先端部をより変形し易くすることができ、圧入荷重を低減する効果を高めることができる。 なお、リング60と中軸50とで構成材料のビッカース硬度が同等、あるいは、中軸50の方がリング60よりも構成材料のビッカース硬度が高い場合であっても、中軸50の先端部に凹部形状52を設けることにより圧入荷重を低減する効果を得ることは可能である。

    さらに、本実施形態によれば、中軸50の先端部に凹部形状52を設けて変形し易くしているため、リングの内表面をめっきするなどの特別な処理を行なわず、リング60の内壁面と中軸50の側面とを直接に接触させても、圧入荷重を十分に低減可能になる。 リングの内壁面に、例えば金などの貴金属を用いためっき処理を施す場合には、内表面が滑面化されることで中軸50の圧入時の抵抗が低減されて圧入荷重を抑えることができる。 本実施形態では、圧入荷重を抑えるためにめっき処理などの滑面化のための特別な表面処理を行なう必要がないため、製造工程の複雑化を抑制できる。 一般に、本実施形態のグロープラグ10のようにヒータ素子の横断面の径が2.5〜3.5mm程度である場合には、めっき処理などの滑面化処理を行なわないと、圧入長eとして0.5mm以上を確保することは極めて困難であった。 本実施形態によれば、めっき処理を行なわなくても、圧入長eとして0.5mm以上を確保することが容易になる。 なお、リング60と中軸50とが直接に接するとは、リング60と中軸50との間にめっき層等が介在しないことを指すが、リング60の全体が均一組成である必要はなく、例えばリング60がステンレス鋼によって形成される場合に、リング60の表面に不動態層が形成されている場合を含んでいる。

    ただし、リング60の内表面に金めっき等のめっき処理を施す構成において本願発明を適用し、中軸50の先端部に凹部形状52を設けることとしてもよい。 この場合には、圧入長eを、より長く確保することが可能になる。 また、第2の電位側の接続端子(プラス側接続端子)46とリング60の表面との接触部の耐久性を高めて、導電部42とリング60との導通状態を安定化することができる。

    B. 第2の実施形態:
    図6は、第2の実施形態のグロープラグ110の概略構成を表わす断面模式図である。 第2の実施形態において、第1の実施形態と共通する部分には同じ参照番号を付して詳しい説明は省略する。 第2の実施形態のグロープラグ110は、中軸50に代えて中軸150を備えること以外は、第1の実施形態のグロープラグ10と同様の構成を有している。 図6では、グロープラグ110の構成要素のうち、ヒータ素子40が嵌め込まれたリング60の後端部と中軸150の先端部のみを拡大して示すと共に、中軸150の先端部とリング60の後端部とを離間して示している。 図6では、図3および図4と同様に、凹部深さc、凹部径d、圧入長e、およびテーパ角θを示している。 さらに図6では、リング60の内径であるリング径f、テーパ56の軸線O方向の長さであるテーパ長g、およびリング60内に圧入される中軸150の先端部であって、凹部形状52よりも後端側の部分における径である中軸径hについても示している。

    図6に示すように、第2の実施形態では、リング60内に圧入される中軸150の先端部において、軸線O方向全体にわたって凹部形状52が形成されているのではなく、凹部形状52が形成される部位の後端側に、さらに中実の部位が形成されている。 図6では、上記中実の部位が形成されている領域を領域Vとして破線で囲んで示している。 また、図6では、リング60内に圧入される中軸150の先端部において、凹部形状52における横断面の内径が一定となるように形成されている部分(凹部深さcに対応する部分)よりも後端側の部分の、軸線O方向の長さを、後端部側長さiとして示している。

    このような構成とすれば、第1の実施形態と同様の効果に加えて、さらに圧入後のリング60と中軸150との結合の強度を高める効果を得ることができる。 すなわち、リング60内に圧入される中軸150の後端部において、凹部形状52が設けられた部位の後端側に、圧入によって変形し難い(より剛性が高い)中実部を設けることにより、中軸150がリング60からより抜け難くなり、両者の結合の強度を高めることができる。

    C. 圧力荷重に対する影響:
    図7は、図6における凹部形状の形状パラメータを種々変更したときの圧入荷重をシミュレーションにより求めた結果を示す説明図である。 ここでは、凹部深さc、凹部径d、および圧入長e(図6参照)のそれぞれを変更して、圧入時の反力のピーク圧を圧入荷重として求めた。 なお、テーパ角θは15°、リング径fは3.08mm、テーパ長gは0.70mm、中軸径hは3.10mmとした(図6参照)。 すなわち、圧入代Δφ(=中軸径h−リング径f)は0.02mmとした。 また、リングのビッカース硬度は、HV300としており、中軸のビッカース硬度は、HV183とした。 なお、上記シミュレーションは、アンシス・ジャパン株式会社のFEM(有限要素法)解析ソフトであるANSYSを用いて行なった。

    図7(A)は圧入長eを0.5mmに設定したときの結果を示し、図7(B)は圧入長eを1.0mmに設定したときの結果を示し、図7(C)は圧入長eを1.5mmに設定したときの結果を示し、図7(D)は圧入長eを2.0mmに設定したときの結果を示す。 シミュレーションにより求められた圧入荷重は、凹部形状を有しない中軸を用いて同様の条件で圧入を行なった場合の圧入荷重の値(以下、基準値と呼ぶ)を100としたときの相対的な値として示している。 図7では、上記した基準値に対して5%以上10%未満の割合で圧入荷重が低減された結果には薄いハッチを付しており、上記した基準値に対して10%以上の割合で圧入荷重が低減された結果には濃いハッチを付している。

    図7に示す結果に基づけば、圧入長eが0.5mm以上2.0mm以下の範囲では、凹部径dが0.90mm以上であり、凹部深さcが1.47mm以上であれば、上記した基準値に対して5%以上の割合で圧入荷重を低減できることが分かる。 また、図7に示す結果に基づけば、圧入長eが0.5mm以上2.0mm以下の範囲では、凹部径dが1.17mm以上であり、凹部深さcが1.30mm以上であれば、上記した基準値に対して5%以上の割合で圧入荷重を低減できることが分かる。 また、図7に示す結果に基づけば、圧入長eが0.5mm以上2.0mm以下の範囲では、凹部径dが1.43mm以上であり、凹部深さcが1.92mm以上であれば、上記した基準値に対して10%以上の割合で圧入荷重を低減できることが分かる。 また、図7に示す結果に基づけば、圧入長eが0.5mm以上2.0mm以下の範囲では、凹部径dが1.70mm以上であり、凹部深さcが1.01mm以上であれば、上記した基準値に対して10%以上の割合で圧入荷重を低減できることが分かる。

    凹部径dは、凹部形状52が形成された中軸の先端部の肉厚に関わるパラメータであり、中軸の先端部の剛性および変形し易さの指標の一つとなる。 また、凹部形状を構成する壁面の軸線O方向の長さが長いほど、中軸の先端部は圧入時に中軸の先端部が径方向内側に変形し易くなるため、凹部深さcもまた、中軸の先端部の剛性および変形し易さの指標の一つとなる。 圧入代Δφが大きくなると圧入荷重は大きくなるが、例えば圧入代Δφが0.01〜0.05mmの範囲であれば、圧入代Δφに応じて圧入荷重の値が変動しても、凹部形状を設けることによって中軸の先端部の変形し易さが変化する程度は大きく変動しないと考えられる。 そのため、ヒータ素子の断面の径が、一般的なグロープラグのヒータ素子の径である2.5〜3.5mmの範囲であって、凹部形状が形成された部位における中軸の肉厚である厚みa(図3参照)が50μm以上であり、圧入代Δφが0.01〜0.05mmの範囲であれば、凹部径dおよび凹部深さcに応じてシミュレーション結果と同程度の割合で圧入荷重低減の効果が得られると考えられる。

    なお、中軸の先端部において、圧入長eおよびテーパ長gが一定の場合には、凹部深さcの値が大きいほど、後端部側長さi(=圧入長e+テーパ長g−凹部深さc)が短くなる(図6参照)。 この後端部側長さiは、既述した中実の部位(領域V)が設けられている場合には中実の部位の軸線O方向の長さを反映し、段差部52の先端よりも後端側にまで凹部形状52が形成される場合には、凹部形状52が段差部52の先端を超えて後端側に延出する程度を反映する。 図7に示す結果から、中軸の先端部に中実の部位が設けられるか否かに関わらず、凹部深さcの値が大きいほど圧入荷重が小さくなる傾向があることが分かる。

    D. 変形例:
    ・変形例1(マイナス側端部の絶縁の態様の変形):
    上記各実施形態では、導電部42の第1の電位側の端部(マイナス側端部)43を軸線Oに垂直な面に投影したときの範囲Zが、凹部形状52を軸線Oに垂直な面に投影したときの範囲Yと重なることとして(図3参照)、第1の電位側の端部43と中軸との間を絶縁させている。 これに対して、上記範囲Zの少なくとも一部が、上記範囲Yと重ならず、中軸におけるリング状の最先端を軸線Oに垂直な面に投影したときの範囲と重なることとしてもよい。 この場合には、例えば、中軸の先端部とヒータ素子の後端部とを離間させることによって、第1の電位側の端部43と中軸との間の絶縁を確保すればよい。 あるいは、中軸の先端部とヒータ素子の後端部との間であって、少なくとも第1の電位側の端部43の露出部分と中軸との間に絶縁体を配置して、第1の電位側の端部43と中軸の間の絶縁を確保してもよい。 いずれの場合であっても、中軸の先端に凹部形状52を形成することにより、リング60の後端部に中軸の先端部を圧入する際の圧入荷重を低減するという各実施形態と同様の効果を得ることができる。

    ・変形例2(導電部42の端部の態様の変形):
    上記各実施形態のヒータ素子40では、その後端部において、導電部42の第1の電位側の端部43および第2の電位側の端部44が露出して、双方が中軸から離間しているが、異なる構成としてもよい。 例えば、第2の電位側の端部44は、中軸と接していても差し支えない。 あるいは、導電部において、第1の電位側の端部43と第2の電位側の端部44の少なくとも一方が設けられず、導電部の後端部に露出しない構成としてもよい。 ヒータ素子における導電部の引き回しの態様にかかわらず、中軸の先端に凹部形状52を形成することにより、各実施形態と同様の効果を得ることができる。

    ・変形例3(凹部形状52の変形):
    上記各実施形態では、凹部形状52は、中軸の最先端から後端側に向かう所定の範囲にわたって、横断面の径が一定の長さとなるように形成したが、異なる構成としてもよい。 例えば、凹部形状は、深くなるに従って(後端側ほど)次第に縮径する形状、すなわち円錐形状としてもよい。 また、上記各実施形態では、中軸の先端部に設けた凹部形状や凸部形状は、横断面が円形となるように形成したが、異なる構成としてもよい。 この場合にも、中軸の先端部に凹部形状を形成することで中軸の先端部が変形し易くなり、各実施形態と同様の効果が得られる。

    ・変形例4(中軸の先端部近傍の形状の変形):
    上記各実施形態では、中軸の先端部近傍の外壁に、後端側に向かって急激に外径が拡大し、リングの後端と接する段差部54を設けたが、このような段差部を設けないこととしてもよい。 以下に、一例として、中軸に段差部54を設けない構成を第1の実施形態に適用した例を変形例として示す。

    図8は、本発明の変形例としてのグロープラグ210の概略構成を表わす断面模式図である。 本変形例において、第1の実施形態と共通する部分には同じ参照番号を付して詳しい説明は省略する。 本変形例のグロープラグ210は、中軸50に代えて中軸250を備えること以外は、第1の実施形態のグロープラグ10と同様の構成を有している。 図8では、図2と同様にして、ヒータ素子40の後端部と中軸250の先端部とが接する部位を含む領域のみを拡大して示している。 中軸250の先端部には、第1の実施形態と同様の凹部形状52が形成されている。 ただし、中軸250の先端部近傍の外壁には、段差部54が設けられておらず、中軸250の外径は、リング60の後端と接する位置から後端側に向かって、次第に縮径している。 なお、グロープラグ210において中軸250とリング60との溶接を行なう場合には、リング60の後端と中軸250の外表面とが接する位置(図8において矢印W2で示す)において溶接すればよい。

    このようなグロープラグ210では、リング60内にヒータ素子40の後端部を先に嵌め込んだ場合には、中軸250の先端部がヒータ素子40の後端部に当接するまでリング60内へと中軸250を圧入すればよい。 そのため、段差部54を設けなくても、さらに、中軸250の嵌め込み位置の特別な制御を行なわなくても、中軸250をリング60内に圧入する動作を容易に行なうことができる。 また、中軸の圧入長eに対応して十分な精度が要求される段差部54を形成する必要が無いため、中軸の製造工程を簡素化することができる。 さらに、中軸の圧入時に段差部54がリング60の後端を過剰に押圧することがないため、ヒータ素子40に対してリング60が相対的に先端側に移動する不都合を抑えることができる。

    本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。 例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。 また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。

    10,110,210…グロープラグ20…主体金具21…軸孔22…雄ネジ部30…外筒31…軸孔40…ヒータ素子41…絶縁部42…導電部43…第1の電位側の端部(マイナス側端部)
    44…第2の電位側の端部(プラス側端部)
    45…第1の電位側の接続端子(マイナス側接続端子)
    46…第2の電位側の接続端子(プラス側接続端子)
    50,150,250…中軸52…凹部形状54…段差部56…テーパ60…リング70…端子金具72…絶縁部材74…封止部材

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