インプラントと、インプラントに用いられるキーパ及びインプラント本体部

申请号 JP2012171443 申请日 2012-08-01 公开(公告)号 JP5689855B2 公开(公告)日 2015-03-25
申请人 愛知製鋼株式会社; 发明人 荒井 一生; 一生 荒井; 本蔵 義信; 義信 本蔵; 竹内 靖博; 靖博 竹内; ウィギアント ルディ; ウィギアント ルディ;
摘要
权利要求
  • インプラントオーバーデンチャーを顎堤に固定するためのインプラントであって、
    顎堤に埋設される非磁性体からなるインプラント本体部と、顎堤から露出すると共に上記インプラントオーバーデンチャーに配された磁石構造体と共に磁気回路を構成する磁性体からなるキーパとを有しており、
    該キーパの被吸着面の外形における外接円の直径d1は、φ1.8mm以上に設定してあり、上記インプラント本体部における顎骨に埋設される埋設部分の最大直径d2は、φ1.2mm以上でかつφ3.0mm以下に設定してあり、上記直径d1と上記最大直径d2とは、d1/d2≦1.5の関係を有していることを特徴とするインプラント。
  • 請求項1に記載のインプラントにおいて、上記インプラント本体部は、上記インプラント本体部における顎骨に埋設される埋設部分から突出形成された中実の挿入部を有し、上記キーパは、上記挿入部を配置可能な挿入凹部を有しており、上記挿入部を上記挿入凹部に挿入して上記インプラント本体部と上記キーパとを固定していることを特徴とするインプラント。
  • 請求項2に記載のインプラントであって、上記挿入部を上記挿入凹部に圧入することにより、上記インプラント本体部と上記キーパとを固定することを特徴とするインプラント。
  • 請求項3に記載のインプラントであって、上記キーパの外周側面には、上記インプラントを顎堤に埋設するための工具を係合可能に形成されていることを特徴とするインプラント。
  • 請求項2に記載のインプラントであって、上記挿入部は、その外周側面にネジ山を形成した雄ネジ部を構成しており、上記挿入凹部は、その内周側面にネジ山を形成した雌ネジ部を構成しており、上記雄ネジ部と上記雌ネジ部とを螺合することにより、上記インプラント本体部と上記キーパとを固定することを特徴とするインプラント。
  • 請求項5に記載のインプラントであって、上記インプラント本体部の上記インプラント本体部における上記挿入部には、上記インプラント本体部を顎堤に埋設するための工具を係合する締結係合部が形成されていることを特徴とするインプラント。
  • 請求項1〜6のいずれか一項に記載のインプラントに用いられ、顎堤から露出して配設されるキーパであって、
    上記インプラントオーバーデンチャーに配設された磁石構造体と共に磁気回路を構成する磁性体からなり、
    上記磁石構造体との被吸着面の外形における外接円の直径d1は、φ1.8mm以上に設定してあり、
    上記インプラントに用いられ顎堤に埋設される非磁性体からなるインプラント本体部における顎骨に埋設される埋設部分の最大直径d2と、上記直径d1とは、d1/d2≦1.5の関係を有していることを特徴とするキーパ。
  • 請求項1〜6のいずれか一項に記載のインプラントに用いられ、顎堤に埋設される非磁性体からなるインプラント本体部であって、
    顎骨に埋設される埋設部分の最大直径d2は、φ1.2mm以上でかつφ3.0mm以下に設定してあり、
    インプラントオーバーデンチャーに配設された磁石構造体と共に磁気回路を構成する磁性体からなるキーパの磁石構造体との被吸着面の外形における外接円の直径d1と、上記最大直径d2とは、d1/d2≦1.5の関係を有していることを特徴とするインプラント本体部。
  • 说明书全文

    本発明は、インプラントオーバーデンチャーを顎堤に固定するためのインプラントと、インプラントに用いられるキーパ及びインプラント本体部に関する。

    歯科の分野において、口腔内に安定してインプラントオーバーデンチャーを固定するための構造として、インプラントオーバーデンチャーシステムが知られている。 インプラントオーバーデンチャーシステムは、顎堤に埋設されたインプラントを介して、顎堤にインプラントオーバーデンチャーを固定する構造である。
    インプラントは、顎堤に埋設されるインプラント本体部とインプラント本体部の一端に配され口腔内に露出するインプラント側接続部とを有している。

    インプラントオーバーデンチャーは、複数の人工歯とこれを固定すると共に顎堤を覆う義歯床を有しており、義歯床内にインプラント側接続部と連結する義歯側接続部を有している。
    インプラント側接続部と義歯側接続部との連結構造としては、後述のごとく、磁を利用するものと、機械的な係合を利用するものとが提案されている。

    従来のインプラントオーバーデンチャーシステムに用いられるインプラントには、薬事法の基準により、インプラント本体部における直径が3.0mm以上でかつ7mm以下と比較的大型の一般的にインプラントと呼ばれるものと、インプラント本体部における直径が3.0mm未満の上記インプラントよりも小型のミニインプラントと呼ばれるものがある。

    特許文献1には、上記の比較的大型のインプラントを用いて、インプラントとインプラントオーバーデンチャーとを磁力によって固定する構造が示されている。 インプラント側接続部は、磁性体によって形成されたキーパからなり、義歯側接続部は、義歯床に埋設された磁石構造体からなる。 インプラントオーバーデンチャーとインプラントとは、磁石構造体の磁力によってキーパを吸着することにより固定されている。

    また、上記のミニインプラントとインプラントオーバーデンチャーとを用いたインプラントオーバーデンチャーシステムとしては、両者を機械的に固定する構造が知られている。 インプラント側接続部は、略円柱状をなしており、その先端部側に形成されたヘッド部と、ヘッド部とインプラント本体部との境界に形成された凹溝部とを有している。 また、義歯側接続部は、ヘッド部を収容可能な収容部を備えたキャビティと、凹溝部と収容部との間に配されるOリングとを有している。 インプラントオーバーデンチャーとミニインプラントとは、収容部の内側にヘッド部を配置し、Oリングによって生じる締め付け力によって固定される。

    特開平7−136190号公報

    ところで、特許文献1に示されたインプラントオーバーデンチャーシステムには以下の課題がある。
    特許文献1に示されたインプラントオーバーデンチャーシステムは、磁力を用いてインプラントオーバーデンチャーとインプラントとを固定しているため、インプラントオーバーデンチャーの着脱が容易であるが、その一方で、インプラントオーバーデンチャーを固定するのに必要な磁気吸引力を得るために、キーパ及び磁石構造体の吸着面積を確保する必要がある。 そのため、従来から用いられている比較的大型のインプラントを用いる必要がある。

    従来のインプラントは、インプラントを顎堤に埋設し、インプラントオーバーデンチャーシステムとして使用可能となるまでに3回程の手術が必要となる場合がある。 具体的には、1回目の手術で顎骨への穴あけとインプラントの植立を行い、2回目の手術で歯肉パンチング(穴あけ)と歯肉の穴の形成を行う。 そして、3回目の手術で補綴物であるインプラントオーバーデンチャーをインプラントに配設する。 これらの手術にかかる期間は、約6カ月と長期に及ぶため、手術にかかる費用が高額となりやすい。 (以下、本明細書において、上記した従来のインプラントにかかる手術方法を、適宜、従来法という。)

    また、上記のミニインプラントとインプラントオーバーデンチャーとを機械的に固定するインプラントオーバーデンチャーシステムは、ミニインプラントを用いることで従来のインプラントに比べ、手術の回数、期間、費用を大幅に低減できる。 具体的には、顎骨及び歯肉の穴あけ、インプラントの植立、及びインプラントオーバーデンチャーの配設が1回の手術で行われる。 (以下、本明細書において、上記したミニインプラントにかかる手術方法を、適宜、ミニインプラント法という。)

    しかし、ミニインプラントにおいては、その直径が従来のインプラントに比べて小さいため、特許文献1の磁力を用いた構造とすることが困難であり、機械式の固定構造が選択されている。 機械式の固定構造は、磁力を用いた構造に比べて着脱がし難く、メンテナンス性に課題がある。

    また、ミニインプラントは、上記のごとく、直径が小さいため、強度的には従来のインプラントに劣る。 ミニインプラントにおいて、軸方向と交差する側方から力が加わった場合、ミニインプラントに回転モーメントが生じることとなる。 ここで、ミニインプラントが埋設される顎骨の構造と、この顎骨に埋設されたミニインプラントに回転モーメントが加わる原理について説明する。

    ミニインプラントが埋設される顎堤の顎骨は、その表面に形成された緻密骨と、この緻密骨の内側に形成された海綿骨とによって構成されている。
    緻密骨は、顎骨の表面から約1mm程度の厚さで形成されており、緻密で硬い骨組織を有している。 また、海綿骨は、緻密骨に比べて軟らかいポーラスな骨組織を有している。

    上記の顎骨に固定されたミニインプラントに側方から力が加わると、緻密骨によって保持された部位の近傍が支点となり、ミニインプラントに回転モーメントが生じる。 このとき、海綿骨は、緻密骨に比べて軟らかいながらもミニインプラントの回転を止めるように反力を発生する。 このように、ミニインプラントに回転モーメントと反力とがかかることで、ミニインプラントには応力が生じる。 この応力により、ミニインプラントに変形等が生じ、修正や再調整が必要となる場合がある。

    本発明は、上記の背景に鑑みてなされたものであり、手術にかかる負担を低減すると共に、強度の低下防止が可能なインプラントと、インプラントに用いられるキーパ及びインプラント本体部を提供しようとするものである。

    本発明の第一の態様は、 インプラントオーバーデンチャーを顎堤に固定するためのインプラントであって、
    顎堤に埋設される非磁性体からなるインプラント本体部と、顎堤から露出すると共に上記インプラントオーバーデンチャーに配された磁石構造体と共に磁気回路を構成する磁性体からなるキーパとを有しており、
    該キーパの被吸着面の外形における外接円の直径d1は、φ1.8mm以上に設定してあり、上記インプラント本体部における顎骨に埋設される埋設部分の最大直径d2は、φ1.2mm以上でかつφ3.0mm以下に設定してあり、上記直径d1と上記最大直径d2とは、d1/d2≦1.5の関係を有していることを特徴とするインプラントにある。

    本発明の第2の態様は、 上記インプラントに用いられ、顎堤から露出して配設されるキーパであって、
    上記インプラントオーバーデンチャーに配設された磁石構造体と共に磁気回路を構成する磁性体からなり、
    上記磁石構造体との被吸着面の外形における外接円の直径d1は、φ1.8mm以上に設定してあり
    上記インプラントに用いられ顎骨に埋設される非磁性体からなるインプラント本体部における顎骨に埋設される埋設部分の最大直径d2と、上記直径d1とは、d1/d2≦1.5の関係を有していることを特徴とするキーパにある。
    また、本発明の第3の態様は、上記インプラントに用いられ、顎堤に埋設される非磁性体からなるインプラント本体部であって、
    顎骨に埋設される埋設部分の最大直径d2は、φ1.2mm以上でかつφ3.0mm以下に設定してあり、
    インプラントオーバーデンチャーに配設された磁石構造体と共に磁気回路を構成する磁性体からなるキーパの磁石構造体との被吸着面の外形における外接円の直径d1と、上記最大直径d2とは、d1/d2≦1.5の関係を有していることを特徴とするインプラント本体部にある。

    従来のミニインプラントは、インプラント本体部の最大直径が小さいため、施工が容易である反面、磁力を用いてインプラントオーバーデンチャーと上記インプラントとを固定する構造とした場合、インプラントオーバーデンチャーを固定するために必要な磁気吸引力を得にくいという課題があった。 磁気吸引力を増大させるために、キーパにおける被吸着面の外形を大きくするといった構造も考えられる。

    しかし、磁石構造体とキーパとの間における磁気吸引力を大きくするために、キーパの外径を大きくすると、インプラント本体部の外周縁よりも外側の位置に、キーパの外周部がオフセットすることとなる。 このオフセットした部位に、被吸着面と交差する方向の力が加わった場合、緻密骨によって保持された部位の近傍を支点として回転モーメントが生じる。

    また、上記の回転モーメントは、被吸着面のオフセット量が大きくなるほど増大するため、単純にキーパを大きくすることは、インプラントとして必要な強度を確保できない場合があり、ミニインプラントによる磁力を用いたインプラントオーバーデンチャーシステムの実現は難しいと考えられていた。

    上記第一の態様では、上記キーパの被吸着面の外形における外接円の直径d1を、φ1.8mm以上に設定し、上記インプラント本体部の最大直径d2を、φ1.2mm以上でかつφ3. mm以下に設定してあり、上記直径d1と上記最大直径d2とは、d1/d2≦1.5の関係を有している。 このように、上記インプラント本体部に対して、上記キーパを適切な寸法で拡径させることにより、上記キーパの外周縁における上記インプラント本体部からのオフセット量を低減しつつ、磁力を増大させることができる。 それゆえ、上記インプラントの強度を確保しながら、上記キーパと上記インプラント本体部との間における磁気吸引力を増大させることができる。

    また、上記インプラントオーバーデンチャーと上記インプラントとを磁力によって固定することにより、上記インプラントオーバーデンチャーに側方の力がかかったとしても、磁石構造体とキーパとの間ですべりが生じるため、上記インプラントへと大きな側方の力が伝わることを防止できる。 これにより、上記インプラントにおける変形や損傷を防止することができる。

    また、上記インプラント本体部の最大直径d2を、上記のごとく、φ1.2mm以上でかつφ3. mm以下に設定してある。 そのため、上記インプラントを1回の手術で施工することができる。

    また、上記最大直径d2がφ1.2mm以上でかつφ3.0未満の範囲内にある場合、上記インプラントは、一般的にミニインプラントに区分され、1回の手術で施工することができる。 このように、上記最大直径d2をφ1.2mm以上でかつφ3. mm以下の範囲とすることで、上記インプラントにかかる手術を、ミニインプラント法と同様に1回とすることができ、従来のインプラントに比べて、手術の回数、期間、費用の低減が可能となる。

    また、上記インプラントオーバーデンチャーシステムにおいては、上記インプラントの数を、上記インプラントオーバーデンチャーの固定に最適なものとすることにより、上記インプラントにおいて、上記インプラントオーバーデンチャーを安定して固定することを可能とした。

    すなわち、複数の上記インプラントを配することで、1つの上記インプラントでは不足する磁力を補い、上記インプラントオーバーデンチャーを固定するのに必要十分な磁気吸引力を得ることができる。

    このように、上記インプラントによれば、従来のミニインプラントにおいては難しいと考えられていた、磁力を用いたインプラントとインプラントオーバーデンチャーとの固定を、インプラントの寸法、数及び配置を上記のごとく最適化することによって実用化が可能となる。

    これにより、従来のミニインプラントにおける利点であった施工にかかる手術の回数、期間、費用の低減と、磁力によってインプラントにインプラントオーバーデンチャーを固定する構造における利点であった着脱の容易化とこれに伴うメンテナンス性の向上との両立が可能となる。

    また、上記インプラントにおいて、 上記インプラント本体部は、上記インプラント本体部における顎骨に埋設される埋設部分から突出形成された中実の挿入部を有し、上記キーパは、上記挿入部を配置可能な挿入凹部を有しており、上記挿入部を上記挿入凹部に挿入して上記インプラント本体部と上記キーパとを固定していることが好ましい 。 これにより、上記インプラント本体部の外形が同じであって、上記インプラント本体部側に上記挿入凹部を設けた場合よりも、強度の低下を防止することができる。

    すなわち、上記のごとく、上記インプラント本体部の直径を小さくした場合、上記インプラント本体部側に挿入凹部を設けると、その肉厚が小さくなりやすく、強度の低下につながりやすい。
    これに対し、上記キーパは、顎堤から露出して配される部分であるため、上記インプラントを埋設する手術へ影響を与えにくい。 また、上記磁石構造体との間における磁気吸引力の観点から見ても、上記キーパは、軸方向から見た外径が大きい方が有利である。 そのため、軸方向から見たとき、上記キーパの外形は、上記インプラント本体部との間の強度的なバランスが取れる範囲で、上記インプラント本体部の外形に比べて大きく設定することができる。 したがって、上記キーパに上記挿入凹部を設けても、その肉厚を確保することができる。

    このように、上記キーパに上記挿入凹部を設けることで、上記キーパに必要とされる強度を確保しながら、上記インプラント本体部の強度低下を防止することが可能となり、上記インプラント全体における強度低下を防止することができる。

    また、上記インプラント本体部の最大直径d2を、上記のごとく、φ1.2mm以上でかつφ3. mm以下に設定してある。 そのため、インプラントを 1回の手術で施工することができる。

    また、上記最大直径d2がφ1.2mm以上でかつφ3.0未満の範囲内にある場合、上記インプラントは、一般的にミニインプラントに区分され、1回の手術で施工することができる。 このように、上記最大直径d2をφ1.2mm以上でかつφ3. mm以下の範囲とすることで、上記の上記インプラントにかかる手術を、ミニインプラント法と同様に1回とすることができ、従来のインプラントに比べて、手術の回数、期間、費用の低減が可能となる。

    これにより、従来のミニインプラントにおける利点であった手術の回数、期間、費用の低減及び、従来のミニインプラントにおける課題であった強度の確保の両方を実現することが可能となる。

    以上のごとく、手術にかかる負担を低減しながら強度の低下を防止することが可能なインプラントと、インプラントに用いられるキーパ及びインプラント本体部を提供することができる。

    実施例1における、インプラントオーバーデンチャーシステムを示す説明図。

    実施例1における、インプラントの断面図。

    実施例1における、インプラント本体部の外観図。

    実施例1における、(a)キーパの構造を示す断面図、(b)キーパの上面視を示す説明図。

    実施例1における、(a)磁石構造体の構造を示す断面図、(b)磁石構造体の下面視を示す説明図。

    実施例1における、インプラントオーバーデンチャーシステムを示す上面視図。

    実施例2における、(a)インプラント本体部を示す外観図、(b)キーパの断面を示す説明図。

    実施例3における、インプラントオーバーデンチャーシステムを示す断面図。

    実施例3における、(a)磁石構造体の構造を示す平面方向の断面図、(b)磁石構造体の構造を示す垂直面方向の断面図。

    実施例4における、キャップ部材を有するインプラントオーバーデンチャーシステムを示す断面図。

    実施例5における、スリーブを有するインプラントオーバーデンチャーシステムを示す断面図。

    実施例6における、当接面が球面形状を有するインプラントオーバーデンチャーシステムを示す断面図。

    実施例6における、(a)磁石構造体を示す断面図、(b)キーパを示す部分断面図。

    インプラント及び磁石構造体の配置例を示す説明図。

    インプラント及び磁石構造体の他の配置例を示す説明図。

    実施例7における、インプラントオーバーデンチャーシステムを示す説明図。

    実施例8における、インプラントオーバーデンチャーシステムを示す説明図。

    上記インプラントオーバーデンチャーシステムにおいて、上記キーパの被吸着面の外形における外接円の上記直径d1は、φ2.5mm以上であることがより好ましい。 また、上記直径d1は、φ3.0mm以上であることが更に好ましい。 この場合には、上記インプラントオーバーデンチャーが有する上記磁石構造体との間に、充分な磁気吸引力をより確実に発生させることができる。

    また、上記直径d1を、φ1.8mm未満とすると、上記磁石構造体との間に生じる磁気吸引力が不足する場合がある。
    また、上記直径d1の最大値は、上記インプラント本体部の上記最大直径d2に起因し、d1/d2≦1.5の関係を満足するよう決定する。 d1/d2が1.5を超えると、上記インプラント本体部に対し、上記キーパの外周におけるオフセット量が増大する。 そのため、このオフセットした部位に上記キーパの被吸着面と交差する力が加わった際に、インプラント本体部に過大な回転モーメントを生じる場合がある。

    また、上記直径d1と上記最大直径d2とは、d1/d2≦1.3の関係を有していることがより好ましい。 また、上記直径d1と上記最大直径d2とは、d1/d2≦1.2の関係を有していることが更に好ましい。 この場合には、上記直径d1と上記最大直径d2とのバランスをより最適とすることができる。

    上記インプラントオーバーデンチャーシステム及び上記インプラントにおいて、上記最大直径d2は、φ2.5mm以上でかつφ3.0mm以下であることがより好ましい。 この場合には、上記インプラントの強度向上効果及び、手術の回数、期間、費用の低減効果をより確実に得ることができる。

    上記最大直径d2をφ1.2mm未満とすると、上記インプラント本体部の強度が不足する場合がある。
    また、上記最大直径d2がφ 3.0 mmを超えると、上記インプラントオーバーデンチャーシステムの施工を一回の手術で行えなくなる場合がある。

    また、上記磁石構造体は、上記インプラントオーバーデンチャーにおける左右対称の位置に配されていてもよい。 この場合には、上記インプラントバーデンチャーにかかる咬合圧を、上記インプラントを介して、顎堤へ均等に分散することができる。 これにより、上記インプラントオーバーデンチャーを顎堤に安定して固定することができる。

    また、上記インプラントオーバーデンチャーシステムにおいて、上記磁石構造体及び上記インプラントの配設数は、2〜4個であってもよい。 この場合には、上記インプラントオーバーデンチャーを固定するために必要な磁気吸引力を得ながら、上記インプラントをバランスよく配置することができる。 これにより、上記インプラントオーバーデンチャーを安定して固定することができる。
    上記磁石構造体及び上記インプラントの配設数が2個未満の場合、上記インプラントオーバーデンチャーを固定する磁力が不足し十分な磁気吸引力をえられない場合がある。
    上記磁石構造体及び上記インプラントの配設数が4個を超える場合、手術にかかる時間や費用が増大する場合がある。

    また、上記インプラントオーバーデンチャーは、下顎の顎堤と対応して形成されており、下顎の顎堤に配された上記インプラントに上記インプラントオーバーデンチャーを固定するよう構成されていてもよい。 この場合には、下顎が上記インプラントオーバーデンチャーを下方から支えるため、上顎に比べて、上記インプラントオーバーデンチャーを保持しやすい。 このように、上記インプラントオーバーデンチャーを下顎用に特化することで、より安定して固定することができる。

    また、上記磁石構造体によって吸着される上記キーパの被吸着面の外形における外接円の直径d1は、φ1.8mm以上であり、 該直径d1と上記最大直径d2とは、d1/d2≦1.5の関係を有していることが好ましい。 この場合には、上記直径d1と上記最大直径d2とをバランスよく設定することができる。 これにより、上記磁石構造体と上記キーパとの間に充分な磁気吸引力を確保しつつ、上記キーパの上記被吸着面上に、該被吸着面と交差する方向の力が加わった場合に、上記インプラントに過大な回転モーメントが生じることを防止できる。

    また、上記直径d1と上記最大直径d2とは、d1/d2≦1.3の関係を有していることがより好ましい。 また、上記直径d1と上記最大直径d2とは、d1/d2≦1.2の関係を有していることが更に好ましい。 この場合には、上記直径d1と上記最大直径d2とのバランスをより最適とすることができる。

    また、上記インプラントは、上記挿入部を上記挿入凹部に圧入することにより、上記インプラント本体部と上記キーパとを固定して構成されていてもよい。 この場合には、上記インプラント本体部と上記キーパとを、容易かつ効率よく固定し、生産性を向上することができる。

    また、上記挿入部は、その外周側面にネジ山を形成した雄ネジ部を構成しており、上記挿入凹部は、その内周側面にネジ山を形成した雌ネジ部を構成しており、上記雄ネジ部と上記雌ネジ部とを螺合することにより、上記インプラント本体部と上記キーパとを固定して構成されていてもよい。 この場合には、上記インプラント本体部から上記キーパを容易に取り外すことができる。 これにより、上記インプラントのメンテナンス性をより向上することができる。 また、上記キーパは、磁性体であるため、MRI等を使用した際に影として映り込むが、上記のごとく取り外しを可能とすることにより、映り込みを防止することができる。

    また、上記キーパの少なくとも外周側面には、窒化チタン皮膜が形成されていてもよい。 この場合には、患者が上記キーパの素材の金属アレルギーを有していたとしても、上記キーパが歯肉と接触し、アレルギー症状が出ることを防止することができる。

    (実施例1)
    インプラントオーバーデンチャーシステム及びこれに用いられるインプラントにかかる実施例について、図1〜図6を参照して説明する。
    図1に示すごとく、インプラントオーバーデンチャーシステム1は、インプラント10によってインプラントオーバーデンチャー3を顎堤8に固定するためのものである。
    インプラントオーバーデンチャー3は、複数の人工歯31と、該複数の人工歯31を固定すると共に顎堤8の歯肉81を覆う義歯床32と、該義歯床32に配された複数の磁石構造体4とを有している。

    図2に示すごとく、インプラント10は、顎堤8に埋設される非磁性体からなるインプラント本体部11と、該インプラント本体部11の一端に顎堤8から露出するように配され磁石構造体4と共に磁気回路を構成する磁性体からなるキーパ2とを有している。

    図3及び図4に示すごとく、磁石構造体4によって吸着されるキーパ2の被吸着面225の外形における外接円の直径d1は、φ3.0mmに設定してあり、インプラント本体部11の埋設部分における最大直径d2は、φ2.5mmに設定してあり、 直径d1と最大直径d2とは、d1/d2≦1.5の関係を有している。

    以下、さらに詳細に説明する。
    図1及び図6に示すごとく、本例のインプラントオーバーデンチャーシステム1は、上述した顎堤8に埋設される2本のインプラント10と、インプラント10に固定されるインプラントオーバーデンチャー3とを備えている。

    図1に示すごとく、下顎の無歯顎における顎堤8は、その表面に形成された歯肉81と、顎骨82とからなる。 顎堤8は、上方から見て略U字状に形成されており、その断面形状は略山型をなしている。

    インプラントオーバーデンチャー3は、顎堤8を覆うように配されており、複数の人工歯31と、人工歯31を固定する義歯床32と、インプラント10のキーパ2と共に磁性回路を構成する磁石構造体4とを備えている。

    図1及び図6に示すごとく、義歯床32は、上方から見て略U字状に形成されており、その段面形状は、上方に配された頂部321と、頂部321の側方両端部から斜め下方に延設された側壁部322とからなる。 つまり、義歯床32の断面形状は、下方に開口した略山型をなしている。 尚、義歯床32の内側面の形状は、顎堤8を型取って形成されており、顎堤8と対応した形状を有している。

    図6に示すごとく義歯床32に配された複数の人工歯31は、中切歯311、側切歯312、犬歯313、第一小臼歯314、第二小臼歯315、第一大臼歯316、第二大臼歯317とそれぞれ対応した形状をなしている。 各人工歯31は、義歯床32の頂部321上面において、略左右対称の位置にそれぞれ2本ずつ配されており、1つの義歯床32には、計14本の人工歯31が配されている。

    図1及び図5に示すごとく、義歯床32に配された略円板状の磁石構造体4は、永久磁石41と、これを覆うヨーク42とを有している。
    磁石構造体4の永久磁石41は、略円板状をなしており、その周囲全周がヨーク42によって覆われている。 ヨーク42は、軟磁性ステンレス鋼からなり、下方に向かって開口した配置凹部422を有するヨーク本体部421と、配置凹部422の開口部を覆う蓋体424とを有している。 ヨーク本体部421は、その上端部から外周側に向かって延設された鍔部423を備えている。 鍔部423は、上下方向から見たとき楕円形状をなしており、義歯床32に磁石構造体4を埋設した際に、抜け止め及び回転防止の役割を果たすものである。 ヨーク42は、ヨーク本体部421の配置凹部422内に永久磁石41を配すると共に、その開口部を蓋体424によって封止することで、永久磁石41を内包している。

    図1及び図5に示すごとく、磁石構造体4の下面は、円形でかつ平滑な平面からなる吸着面43をなしており、吸着面43における最大外接円d3は、φ3.0mmに設定してある。 磁石構造体4は、義歯床32の頂部321の裏面において、顎堤8に配された2本のインプラント10と対応した位置に、それぞれ吸着面43のみを露出して埋設されている。

    図1及び図2に示すごとく、義歯床32を顎堤8に固定するためのインプラント10は、顎堤8に埋設される非磁性体からなるインプラント本体部11と、インプラント本体部11の上端に配されたキーパ2とを有している。
    図2及び図3に示すごとく、インプラント本体部11は、チタン合金からなり、外周側面にネジ山を有するネジ部111と、ネジ部111の基端から外周側に向かって延設された鍔部112と、鍔部112の上面に突出形成された挿入部12とを有している。

    図3に示すごとく、ネジ部111は、その外周側面において軸方向に沿って螺旋状に形成されたネジ山を有すると共に、先端に向かうにつれて、徐々に外径が小さくなるテーパ状をなしている。

    鍔部112の上面から上方に立設した挿入部12は、その軸方向から見たとき、六形をなす多角柱形状をなしており、鍔部112との境界部には、直径を縮小した凹溝部121が形成されている。 尚、本例において、インプラント本体部の最大直径d2は、φ2.5mmに設定した。

    図4に示すごとく、挿入部12に配されるキーパ2は、軟磁性ステンレス鋼からなり、上方から見たとき、4つの辺と各辺を繋ぐ4つの円弧によって形成された略四角形状をなしており、略板状のキーパ上面部21と、キーパ上面部21の外周縁部から下方に向かって垂下した略円筒状のキーパ側壁部22とを備えている。

    キーパ上面部21は、その上面に、上方から見たとき円形をなすと共に、平滑な平面からなる被吸着面225を有しており、被吸着面225よりも外周側は、外側に向かうにつれ下方に傾斜したテーパ面が形成されている。
    ここで、上記の磁石構造体4における吸着面43とキーパ2の被吸着面22とは、共に平面によって形成されている。 そのため、磁石構造体4とキーパ2とを互いに密着させることができる。 これにより、磁気回路におけるエアギャップが最小化され、十分な磁気吸引力が得られる。

    被吸着面225における外接円の直径d1は、磁石構造体4における吸着面43と同様にφ3.0mmとした。 したがって、被吸着面225における外接円の直径d1とインプラント本体部の最大直径d2とは、d1/d2=1.2の関係を有している。
    尚、本例においては、被吸着面225と吸着面43とを同一の形状としたが、これに限るものではなく、形状及び大きさが異なっていてもよい。

    図2及び図4に示すごとく、キーパ側壁部22の内周は、挿入部12と対応した挿入凹部221をなしている。 挿入凹部221は、その軸方向から見て略六角形状の内周面を有しており、その開口端部には内側に向かって延設された内周鍔部222が形成されている。 この内周鍔部222は、挿入部12の凹溝部121に係合可能に構成されている。 また、キーパ側壁部22の外周側面226には、窒化チタン皮膜が形成されている。

    図2に示すごとく、上述したインプラント本体部11とキーパ2とは、インプラント本体部11の挿入部12をキーパ2の挿入凹部221の内側に圧入嵌合することによって互いに固定され、インプラント10を形成している。
    図6に示すごとく、インプラント10は、顎堤8において、インプラントオーバーデンチャー3における一対の犬歯313に相当する人工歯31が配される位置と対応して、略左右対称の位置にそれぞれ一本ずつ配される。 そして、インプラント10のキーパ2における被吸着面225に、インプラントオーバーデンチャー3に配された磁石構造体4の吸着面43が吸着することで、インプラントオーバーデンチャー3を顎堤8に固定している。

    次に本例における作用効果について説明する。
    本例のインプラントオーバーデンチャーシステム1においては、キーパ2の被吸着面225の外形における外接円の直径d1を、φ3.0mmに設定し、インプラント本体部11の最大直径d2を、φ2.5mmに設定してあり、 直径d1と最大直径d2とは、d1/d2=1.2の関係を有している。 このように、キーパ2を適切な寸法で拡径させることにより、キーパ2の外周縁におけるインプラント本体部11からのオフセット量を低減しつつ、磁力を増大させることができる。 それゆえ、インプラント10の強度を確保しながら、キーパ2とインプラント本体部11との間における磁気吸引力を増大させることができる。

    また、インプラントオーバーデンチャー3とインプラント10とを磁力によって固定することにより、インプラントオーバーデンチャー3に側方の力がかかったとしても、磁石構造体4とキーパ2との間ですべりが生じる。 そのため、インプラント10へ大きな側方の力が伝わることを防止することができる。 これにより、インプラント10における変形や損傷を防止することができる。

    また、インプラント本体部11の最大直径d2を、上記のごとく設定することで、インプラントを埋設するのにかかる手術を、ミニインプラント法と同様に1回とすることができる。 そのため、従来のインプラント10に比べて、手術の回数、期間、費用の低減が可能となる。

    また、上記のごとく、インプラント10の数を、インプラントオーバーデンチャー3の固定に最適なものとすることにより、インプラント10において、インプラントオーバーデンチャー3を安定して固定することを可能とした。

    すなわち、2つのインプラント10を配することで、インプラントオーバーデンチャー3を固定するために必要な磁気吸引力を得ながら、インプラント10をバランスよく配置することができる。 これにより、インプラントオーバーデンチャー3を安定して固定することができる。

    このように、インプラントオーバーデンチャーシステム1によれば、従来のミニインプラントにおいては難しいと考えられていた、磁力を用いたインプラント10とインプラントオーバーデンチャー3との固定を、インプラント10の寸法、数及び配置を上記のごとく最適化することによって実用化が可能となる。

    これにより、従来のミニインプラントにおける利点であった施工にかかる手術の回数、期間、費用の低減と、磁力によってインプラント10にインプラントオーバーデンチャー3を固定する構造における利点であった着脱の容易化とこれに伴うメンテナンス性の向上との両立が可能となる。

    また、磁石構造体4は、インプラントオーバーデンチャー3における左右対称位置に配されている。 そのため、インプラントバーデンチャー3にかかる咬合圧を、インプラント10を介して、顎堤8へ均等に分散することができる。 これにより、インプラントオーバーデンチャー3を顎堤8に安定して固定することができる。

    また、インプラントオーバーデンチャー3は、下顎の顎堤8と対応して形成されており、下顎の顎堤8に配されたインプラント10にインプラントオーバーデンチャー3を固定するよう構成されている。 そのため、下顎がインプラントオーバーデンチャー3を下方から支えるため、上顎に比べて、インプラントオーバーデンチャー3を保持しやすい。 このように、インプラントオーバーデンチャー3を下顎用に特化することで、より安定して固定することができる。

    また、インプラント10は、インプラント本体部11の挿入部12をキーパ2の挿入凹部221内に配置することで、インプラント本体部11とキーパ2とを互いに固定している。 これにより、インプラント本体部11の外形が同じであって、インプラント本体部11側に挿入凹部221を設けた場合よりも、強度の低下を防止することができる。

    すなわち、上記のごとく、インプラント本体部11の直径を小さくした場合、インプラント本体部11側に挿入凹部221を設けると、その肉厚が小さくなりやすく、強度の低下につながりやすい。
    これに対し、キーパ2は、顎堤8から露出して配される部分であるため、インプラント10を埋設する手術へ影響を与えにくい。 また、磁石構造体4との間における磁気吸引力の観点から見ても、キーパ2は、軸方向から見た外径が大きい方が有利である。 そのため、軸方向から見たとき、キーパ2の外形は、インプラント本体部11との間の強度的なバランスが取れる範囲で、インプラント本体部11の外形に比べて大きく設定することができる。 したがって、キーパ2に挿入凹部221を設けても、その肉厚を確保することができる。

    このように、キーパ2に挿入凹部221を設けることで、キーパ2に必要とされる強度を確保しながら、インプラント本体部11の強度低下を防止することが可能となり、インプラント10全体における強度低下を防止することができる。

    また、インプラント10は、挿入部12を挿入凹部221に圧入することにより、インプラント本体部11とキーパ2とを固定して構成されている。 そのため、インプラント本体部11とキーパ2とを、容易かつ効率よく固定し、生産性を向上することができる。

    また、キーパ2の少なくとも外周側面には、窒化チタン皮膜が形成されている。 そのため、患者がキーパ2の素材の金属アレルギーを有していたとしても、キーパ2が歯肉と接触し、アレルギー症状が出ることを防止することができる。

    また、本例に示したインプラント10は、インプラント本体部11とキーパ2とを互いに圧入固定した後、顎堤8に形成された下穴に螺合する。 このとき、上記のごとく、インプラント本体部11の挿入部12を、その軸方向から見たとき、六角形をなす多角柱形状とすることにより、螺合時にインプラント本体部11とキーパ2とが相対的に回転することを防止し、両者を一体に回転させることができる。

    以上のごとく、手術にかかる負担を低減すると共に、着脱が容易でメンテナンス性を向上することが可能なインプラントオーバーデンチャーシステム1と、強度の低下を防止することが可能なインプラント10とを提供することができる。

    (実施例2)
    本例は、実施例1におけるインプラント10の挿入部12及び挿入凹部221の形状を変更した例である。
    図7(a)に示すごとく、インプラント本体部11の挿入部12は、上方から見たとき、正六角形をなす締結係合部123と、締結係合部123の上面に形成された雄ネジ部122とを有している。 雄ネジ部122は、円筒状をなすと共に、その外周側面にはネジ山が形成されている。

    図7(b)に示すごとく、キーパ2の挿入凹部221の内周面には、雄ネジ部122と対応した雌ネジ部223が形成されている。 また、挿入凹部221の開口端部には、挿入部12の締結係合部123を内包可能な拡大開口部224が形成されている。

    本例において、インプラント10を顎堤8に配する際には、締結係合部123に工具を係合させてインプラント本体部11を予め顎堤8に埋設した後、顎堤8から露出した雄ネジ部122にキーパ2を螺合することによって、インプラント10が形成される。
    その他の構成は実施例1と同様である。

    本例のインプラントオーバーデンチャーシステム1において、挿入部12は、その外周側面にネジ山を形成した雄ネジ部122を構成しており、挿入凹部221は、その内周側面にネジ山を形成した雌ネジ部223を構成しており、雄ネジ部122と雌ネジ部223とを螺合することにより、インプラント本体部11とキーパ2とを固定して構成されている。 そのため、インプラント本体部11からキーパ2を容易に取り外すことができる。 これにより、インプラント10のメンテナンス性をより向上することができる。 また、キーパ2は、磁性体であるため、MRI等を使用した際に影として映り込むが、上記のごとく取り外しを可能とすることにより、映り込みを防止することができる。

    (実施例3)
    本例は、実施例1のインプラントオーバーデンチャーシステム1における磁石構造体40の構成を変更した例を示すものである。
    図8及び図9に示すごとく、磁石構造体40は、永久磁石401と、永久磁石401の側方両側に配された一対のヨーク402と、一対のヨーク402が配された部位以外の永久磁石401の表面を覆うシールドケース404とを有している。

    図9に示すごとく、永久磁石401は、磁極(N極及びS極)の方向(図中の矢印方向)が、一対のヨーク402と永久磁石401の並び方向となるように着磁されている。 永久磁石401は、並び方向から見て六角形状をなすブロック状に形成されている。
    シールドケース404は、非磁性の材料からなり、並び方向と直交した方向に配された永久磁石401の表面を覆っている。 これにより、永久磁石401の磁気が、並び方向以外の方向に漏れないようになっている。

    一対のヨーク402は、軟磁性ステンレス鋼によって形成されている。 各ヨーク402は並び方向から見て永久磁石401にシールドケース404を配した際の外形と対応した六角形状をなしている。 また、ヨーク402を上方から見たとき、永久磁石401と反対側に配された外側面は円弧形状をなしている。 また、外側面には、外側に向かって延設された鍔部405を有しており、磁石構造体40を義歯床32に配した際に抜け止めの役割を果たしている。
    その他の構成は実施例1と同様である。

    磁石構造体40がキーパ2を吸着する際には、磁石構造体40とキーパ2とにより、これらを循環する磁気のループLが形成される。 この磁気のループLは、永久磁石401のN極から、一対のヨーク402及びキーパ2を通じて、永久磁石401のS極へと循環させる。 このように形成された磁気のループLによれば、強い磁力を発生させ大きな磁気吸引力を得ることができる。 これにより、限られた吸着面積で磁気吸引力を向上することが可能となり、インプラントオーバーデンチャー3をより安定して固定することができる。 尚、磁石構造体40は、従来の磁石構造体に比べて高さ方向の寸法が大きくなりやすいため、高さ方向のスペースに余裕がある前歯部分に配することがより好ましい。
    また、実施例1と同様の作用効果を得ることができる。

    (実施例4)
    本例は、インプラントオーバーデンチャーシステム1における構成の一例を示すものである。
    図10に示すごとく、インプラントオーバーデンチャーシステム1は、キャップ部材51を介して、インプラントオーバーデンチャー3の義歯床32に磁石構造体4を配してある。
    キャップ部材51は、合成樹脂からなり、円板状のキャップ本体部511と、キャップ本体部511の外周縁から下方に形成された円筒状のキャップ側保持部512を有している。 キャップ側保持部512の開口端部には、内側に向かって延設された保持鍔部513を有しており、磁石構造体4が有する鍔部423と係合可能に構成されている。

    また、キャップ側保持部512の軸方向における長さ寸法は、鍔部423の厚みに比べて大きく設定してあり、磁石構造体4は、キャップ側保持部512の内側におけるキャップ本体部511の下面と保持鍔部513の間を、その軸方向に移動可能に構成されている。
    その他の構成は実施例1と同様である。

    本例のインプラントオーバーデンチャーシステム1は、上記のごとく、キャップ部材51を介して義歯床32に配された磁石構造体4が、その軸方向に移動可能に配置されている。 そのため、キャップ部材51埋設したインプラントオーバーデンチャー3においては、これを固定するインプラント10に対してキャップ部材51を含むインプラントオーバーデンチャー3全体が移動可能となる。

    これにより、キーパ2と磁石構造体4との当接位置が一定であっても、キャップ部材51を把持したインプラントオーバーデンチャー3全体をキーパ2に対してキャップ本体部511の下面と保持鍔部513とが配された範囲内において相対的に位置変更させることができる。 それゆえ、歯茎の形状変化などの経時的変化が生じた場合にも、その経時的変化に追従して装着位置を変化させることができる。 これにより、インプラントオーバーデンチャー3の再調整や修正の必要性を低減させることができる。
    また、実施例1と同様の作用効果を得ることができる。

    (実施例5)
    本例は、インプラントオーバーデンチャーシステム1におけるバリエーションの他の例を示すものである。
    図11に示すごとく、本例のインプラントオーバーデンチャーシステム1は、インプラントオーバーデンチャー3の義歯床32に、非磁性のステンレス鋼等の金属によって形成されたスリーブ52を配してある。
    スリーブ52は、全体形状が略円筒状をなしており、一方の開口端部は磁石構造体4の外周側面を覆うように配されている。 スリーブ52における他方の開口端部は、磁石構造体4における吸着面43よりも突出して形成されており、インプラントオーバーデンチャー3を顎堤8に配した際に、その内側にキーパ2を配置可能なキーパ配置凹部521を形成している。
    その他の構成は実施例1と同様である。

    本例のインプラントオーバーデンチャーシステム1は、磁石構造体4にスリーブ52を装着した状態でインプラントオーバーデンチャー3の義歯床32内に埋設されている。 そして、スリーブ52と吸着面43とによって囲まれるキーパ配置凹部521に、キーパ2が配され、磁石構造体4における先端の吸着面43とキーパ2の被吸着面225とが当接して固定される。 この状態においては、スリーブ52がキーパ2の外周側面を取り囲んだ状態となる。

    ここで、スリーブ52は、上記のごとく金属よりなる。 そのため、キーパ2と磁石構造体4との当接面(吸着面43と被吸着面225)の間を斜めに引き剥がす方向に相対的な回転力が生じても、キーパ2の外周側面を取り囲むスリーブ52がこの動きを阻止する。 そのため、インプラントオーバーデンチャー3の外れを従来よりも抑制することができる。

    また、スリーブ52は、可撓性を有する素材によって形成することもできる。 この場合、インプラントオーバーデンチャー3に対して側方からの力が付与された場合には、スリーブ52とキーパ2との間のクリアランス分及びスリーブ52が弾性変形する範囲内で磁石装置とキーパ2との横滑りが許容され、側方からの力を緩和することができる。
    また、実施例1と同様の作用効果を得ることができる。

    (実施例6)
    本例は、実施例1のインプラントオーバーデンチャーシステム1における、キーパ2の被吸着面225及び磁石構造体4の吸着面43の形状を変更した例を示すものである。
    図12及び図13(b)に示すごとく、キーパ2の被吸着面225は、凸球面形状をなしている。
    また、磁石構造体4の吸着面43は、キーパ2の被吸着面225と対応した凹球面形状をなしている。
    その他の構成は実施例1と同様である。

    本例のインプラントオーバーデンチャーシステム1においては、磁石構造体4の吸着面43がキーパ2の球面状の被吸着面225と対応した凹球面状である。 そのため、磁石構造体4とキーパ2とを互いに密着させることができる。 これにより、磁気回路におけるエアギャップが最小化され、十分な磁気吸引力が得られる。
    また、磁石構造体4とキーパ2との間に回動機能を付与することができる。 そのため、インプラントオーバーデンチャー3がキーパ2に対して揺動、回動し、磁石構造体4とキーパ2との間に隙間を生ずることなく、噛み合わせに伴うインプラントオーバーデンチャー3の揺動、回動が可能となる。
    また、実施例1と同様の作用効果が得られる。

    上述した実施例1〜実施例6においては、インプラント10及び磁石構造体4の数を2つとしたが、2つ以上とすることもできる。 図14及び図15に、インプラント10及び磁石構造体4の数を3つ又は4つ配置した配置例を示す。

    図14に示すごとく、インプラント10及び磁石構造体4の数がそれぞれ3つの場合には、2本の中切歯311の間に相当する位置に1つを配し、残りの2つは、それぞれ左右の第一小臼歯314に相当する位置に配することができる。 このように、インプラント10及び磁石構造体4の数が奇数の場合には、略中央位置となる2本の中切歯の間に1つ配し、それ以外のものは左右対称に配置することが好ましい。

    図15に示すごとく、インプラント10及び磁石構造体4の数がそれぞれ4つの場合には、それぞれ左右の側切歯312に相当する位置及び第一小臼歯314に相当する位置に配することができる。
    尚、第二小臼歯〜第二大臼歯と対応した位置の顎堤には、神経が多く通っているため、インプラントは、中切歯〜第一小臼歯と対応した位置の顎堤に埋設することが好ましい。 また、中切歯〜犬歯と対応した位置の顎堤に埋設することがより好ましい。

    また、上述の各実施例に示したインプラント10及び磁石構造体4の配置は一例であり、上記以外にも種々の配置とすることができる。 また、左右対称とは、正中線に対しておおよそ線対称の位置に配されていればよい。

    (実施例7)
    本例は、顎堤8に残存歯がある場合のインプラントオーバーデンチャーシステムの例である。
    図16に示すごとく、顎堤8には、左側の側切歯802、犬歯803の2本の残存歯がある。

    図16に示すごとく、インプラントオーバーデンチャー3の義歯床32は、残存歯と対応した位置を切欠いて形成された退避凹部323を有している。 したがって、義歯床32には、左側の側切歯312及び犬歯313の人工歯31が配されていない。 退避凹部323は、外側に向かって開口しており、その内側に残存歯(802、803)を配置可能に形成されている。

    図16に示すごとく、義歯床32の人工歯31における右側の中切歯311、犬歯313と対応した位置には、それぞれ磁石構造体4を埋設してある。 本例においては、残存歯である左側の側切歯802及び犬歯803に対して、略左右対称の位置に磁石構造体4を配してある。

    図16に示すごとく、顎堤8には、インプラントオーバーデンチャー3に埋設された磁石構造体4と対応した位置に、それぞれインプラント10が配されている。
    その他の構成は実施例1と同様である。
    本例においても実施例1と同様の作用効果を得ることができる。

    (実施例8)
    本例は、インプラントオーバーデンチャーシステムを部分的に適用した例である。
    図17に示すごとく、顎堤8には、右側の中切歯801、側切歯802、犬歯803、第一小臼歯804、第二小臼歯805、第一大臼歯806、第二大臼歯807及び左側の中切歯801、側切歯802、犬歯803の10本の残存歯がある。

    図17に示すごとく、インプラントオーバーデンチャー3の義歯床32は、顎堤8における残存歯が配されていない部分を覆うように形成されており、第一小臼歯314、第二小臼歯315、第一大臼歯316、第二大臼歯317の4本の人工歯31を有している。 また、義歯床32には、人工歯31における右側の第二小臼歯315及び第一大臼歯316と対応した位置に、それぞれ磁石構造体4を埋設してある。

    図17に示すごとく、顎堤8には、インプラントオーバーデンチャー3に埋設された磁石構造体4と対応した位置に、それぞれインプラント10が配されている。
    本例において、磁石構造体4及びインプラント10は、インプラントオーバーデンチャー3の長手方向における略中央位置を通り長手方向と直交する直線を基準線とし、基準線に対して線対称の位置に配されている。
    その他の構成は実施例1と同様である。
    本例においても実施例1と同様の作用効果を得ることができる。

    1 インプラントオーバーデンチャーシステム 10 インプラント 11 インプラント本体部 111 ネジ部 2 キーパ 225 被吸着面 3 インプラントオーバーデンチャー 31 人工歯 32 義歯床 4 磁石構造体 43 吸着面 8 顎堤 81 歯肉 82 顎骨

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