ジルコニア組成物、ジルコニア仮焼体及びジルコニア焼結体、並びに歯科用製品

申请号 JP2016566525 申请日 2015-12-25 公开(公告)号 JPWO2016104724A1 公开(公告)日 2017-11-02
申请人 クラレノリタケデンタル株式会社; 发明人 承央 伊藤; 承央 伊藤; 恭敬 工藤; 恭敬 工藤;
摘要 欠陥の発生が抑制され、透明性が変化するジルコニア組成物、ジルコニア仮焼体及びジルコニア焼結体、並びに歯科用製品を提供する。ジルコニア焼結体は、安定化剤として4mol%〜7mol%のイットリアを含有する。ジルコニア焼結体は遮光材を含有する。ジルコニア焼結体は、第1の領域と、第1の領域よりも遮光材の含有率が高い第2の領域と、を有する。第1の領域におけるイットリアの含有率と第2の領域におけるイットリアの含有率の差は1mol%以下である。
权利要求

安定化剤として4mol%〜7mol%のイットリアを含有する部分安定化ジルコニアの焼結体であって、 遮光材を含有し、 第1の領域と、 前記第1の領域よりも前記遮光材の含有率が高い第2の領域と、を有し、 前記第1の領域におけるイットリアの含有率と前記第2の領域におけるイットリアの含有率の差は1mol%以下である、ジルコニア焼結体。白色を背景にして測定したL*a*b*表色系による色度におけるL*値を第1のL*値とし、 黒色を背景にして測定したL*a*b*表色系による色度におけるL*値を第2のL*値とし、 前記第1のL*値から前記第2のL*値を控除した値をΔLとするとき、 前記第1の領域におけるΔLは、前記第2の領域におけるΔLよりも大きい、請求項1に記載のジルコニア焼結体。前記第1の領域におけるΔLは、前記第2の領域におけるΔLよりも0.8以上大きい、請求項2に記載のジルコニア焼結体。前記第1の領域におけるΔLは8〜12であり、 前記第2の領域におけるΔLは4〜11である、請求項2又は3に記載のジルコニア焼結体。前記第2の領域におけるΔLは7.5以下である、請求項2〜4のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。前記第1の領域と前記第2の領域とは積層されている、請求項2〜5のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。前記第1の領域と前記第2の領域との間に第3の領域をさらに有し、 前記第3の領域のΔLは、前記第2の領域のΔLよりも大きく、前記第1の領域のΔLよりも小さい、請求項2〜6のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。前記第3の領域における前記遮光材の含有率は、前記第1の領域における前記遮光材の含有率よりも高く、前記第2の領域における前記遮光材の含有率よりも低い、請求項7に記載のジルコニア焼結体。前記第3の領域と前記第2の領域との間に第4の領域をさらに有し、 前記第4の領域のΔLは、前記第2の領域のΔLよりも大きく、前記第3の領域のΔLよりも小さい、請求項7又は8に記載のジルコニア焼結体。前記第4の領域における前記遮光材の含有率は、前記第3の領域における前記遮光材の含有率よりも高く、前記第2の領域における前記遮光材の含有率よりも低い、請求項9に記載のジルコニア焼結体。各領域の積層方向に厚さにおいて、 前記第1の領域の厚さは全体の30%〜40%であり、 前記第2の領域の厚さは全体の30%〜40%であり、 前記第3の領域の厚さは全体の10%〜20%であり、 前記第4の領域の厚さは全体の10%〜20%である、請求項9又は10に記載のジルコニア焼結体。前記遮光材は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニウム及びケイ素の複合酸化物、着色剤、及び蛍光剤を含む群から選択される少なくとも1つである、請求項1〜11のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。前記部分安定化ジルコニアは前記安定化剤として5.3mol%〜6.2mol%のイットリアを含有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。安定化剤として4mol%〜7mol%のイットリアを含有する部分安定化ジルコニアと、 遮光材と、を含有し、 第1の領域と、 前記遮光材の含有率が前記第1の領域よりも高い第2の領域と、を有し、 前記遮光材は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニウム及びケイ素の複合酸化物を含む群から選択される少なくとも1つである、組成物。前記第1の領域と前記第2の領域との間に第3の領域をさらに有し、 前記第3の領域における前記遮光材の含有率は、前記第1の領域における前記遮光材の含有率よりも高く、前記第2の領域における前記遮光材の含有率よりも低い、請求項14に記載の組成物。前記第3の領域と前記第2の領域との間に第4の領域をさらに有し、 前記第4の領域における前記遮光材の含有率は、前記第3の領域における前記遮光材の含有率よりも高く、前記第2の領域における前記遮光材の含有率よりも低い、請求項15に記載の組成物。各領域におけるイットリアの含有率のばらつきは1mol%以下である、請求項14〜16のいずれか一項に記載の組成物。第1面、及び前記第1面とは反対側の第2面を有する板状形状を有し、 前記第1の領域は前記第1面側にあり、 前記第2の領域は前記第2面側にある、請求項14〜17のいずれか一項に記載の組成物。安定化剤として4mol%〜7mol%のイットリアを含有する部分安定化ジルコニアと、 遮光材と、を含有し、 第1の領域と、 前記遮光材の含有率が前記第1の領域よりも高い第2の領域と、を有し、 前記遮光材は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニウム及びケイ素の複合酸化物を含む群から選択される少なくとも1つである、仮焼体。前記第1の領域と前記第2の領域との間に第3の領域をさらに有し、 前記第3の領域における前記遮光材の含有率は、前記第1の領域における前記遮光材の含有率よりも高く、前記第2の領域における前記遮光材の含有率よりも低い、請求項19に記載の仮焼体。前記第3の領域と前記第2の領域との間に第4の領域をさらに有し、 前記第4の領域における前記遮光材の含有率は、前記第3の領域における前記遮光材の含有率よりも高く、前記第2の領域における前記遮光材の含有率よりも低い、請求項20に記載の仮焼体。各領域におけるイットリアの含有率のばらつきは1mol%以下である、請求項19〜21のいずれか一項に記載の仮焼体。第1面、及び前記第1面とは反対側の第2面を有する板状形状を有し、 前記第1の領域は前記第1面側にあり、 前記第2の領域は前記第2面側にある、請求項19〜22のいずれか一項に記載の仮焼体。請求項14〜18のいずれか一項に記載の組成物を800℃〜1200℃で焼成して得られる、仮焼体。請求項14〜18のいずれか一項に記載の組成物を1400℃以上で焼成して得られる、ジルコニア焼結体。請求項19〜23のいずれか一項に記載の仮焼体を1400℃以上で焼成して得られる、ジルコニア焼結体。請求項1〜13のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体を有する、歯科用製品。歯冠形状を有する、請求項27に記載の歯科用製品。前記第1の領域は歯冠形状の切端側に配され、 前記第2の領域は歯冠形状の歯頚部側に配される、請求項28に記載の歯科用製品。前記第2の領域は、少なくとも支台歯の側面の一部を覆う、請求項29に記載の歯科用製品。歯科用補綴物、歯列矯正用製品、又は歯科インプラント用製品である、請求項27〜30のいずれか一項に記載の歯科用製品。

说明书全文

[関連出願についての記載] 本発明は、日本国特許出願:特願2014−265066号(2014年12月26日出願)に基づき優先権を主張するものであり、同出願の全記載内容は引用をもって本書に組み込み記載されているものとする。 本発明は、ジルコニア焼結体に関する。また、本発明は、当該ジルコニア焼結体を製造するためのジルコニア組成物及びジルコニア仮焼体に関する。さらに、本発明は、ジルコニア焼結体を含む歯科用製品に関する。

近年、歯科用の補綴物(被覆冠、歯冠、クラウン、差し歯等)として、審美性及び安全性の観点から金属に代わりジルコニア等のセラミックスが用いられている。

特許文献1には、透光性の高いジルコニア焼結体が開示されている。特許文献1に記載の透光性イットリア含有ジルコニア焼結体は、4モル%を超え7モル%以下のイットリアを含有するジルコニアからなり、焼結体粒径が2.0μm以下、相対密度99.5%以上、1mm厚みにおける波長600nmの可視光に対する全光線透過率が40%以上である。

特開2008−222450号公報

以下の分析は、本発明の観点から与えられる。

図4に、歯科用補綴物の使用例を示す模式図を示す。図4に示す例においては、ジルコニア焼結体は歯科用補綴物(歯冠)201として作製されている。歯科用補綴物201は、歯茎203から突出した患者の支台歯202に被せられている。

通常、天然歯は、歯頚部(根元側)から切端部(先端側)に向けて透明性が高くなっている。歯科用補綴物201全体の透明性が同じであると、隣接する天然歯と対比して歯科用補綴物201は不自然に見えてしまう。したがって、天然歯と同様の透明性変化を有する歯科用補綴物201を作成するためには、歯頚部側の透明性よりも切端部側の透明性を高くすることが望まれる。

部分安定化ジルコニアの焼結体においては、安定化剤(特にイットリア)の含有率が高くなると、ジルコニア焼結体の透明性が高くなる傾向にある。しかしながら、安定化剤の含有率が異なると、部分安定化ジルコニアの焼結時の収縮率が異なってしまう。したがって、安定化剤の含有率を部分的に変化させて透明性が変化するジルコニア焼結体を作製しても、収縮率が部分的に異なってしまうために、ジルコニア焼結体には欠陥が生じてしまう。このため、安定化剤の含有率を変化させることによって歯科用補綴物201に用いるジルコニア焼結体を作製することはできない。

また、支台歯の色(特に色の濃さ)には個人差がある。支台歯202が黒ずんでいる場合に、歯科用補綴物201の歯頚部側が特許文献1に記載のような高い透明性を有すると、歯科用補綴物201の外側から支台歯202が透けて見えてしまう。この場合には、治療した歯(すなわち、歯科用補綴物201の一部)が黒ずんで見えてしまう。したがって、患者の支台歯の色に応じて、歯科用補綴物201の透明性の調節が可能であることが望まれる。

本発明の第1視点によれば、安定化剤として4mol%〜7mol%のイットリアを含有する部分安定化ジルコニアの焼結体が提供される。ジルコニア焼結体は遮光材を含有する。ジルコニア焼結体は、第1の領域と、第1の領域よりも遮光材の含有率が高い第2の領域と、を有する。第1の領域におけるイットリアの含有率と第2の領域におけるイットリアの含有率の差は1mol%以下である。

本発明の第2視点によれば、安定化剤として4mol%〜7mol%のイットリアを含有する部分安定化ジルコニアと、遮光材と、を含有する組成物が提供される。組成物は、第1の領域と、遮光材の含有率が第1の領域よりも高い第2の領域と、を有する。遮光材は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニウム及びケイ素の複合酸化物を含む群から選択される少なくとも1つである。

本発明の第3視点によれば、安定化剤として4mol%〜7mol%のイットリアを含有する部分安定化ジルコニアと、遮光材と、を含有する仮焼体が提供される。仮焼体は、第1の領域と、遮光材の含有率が第1の領域よりも高い第2の領域と、を有する。遮光材は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニウム及びケイ素の複合酸化物を含む群から選択される少なくとも1つである。

本発明の第4視点によれば、第1視点に係るジルコニア焼結体を有する歯科用製品が提供される。

天然歯の透明性変化に似せた透明性変化を有するジルコニア焼結体を作製することができる。透明性を変化させても欠陥の発生を抑制したジルコニア焼結体を得ることができる。また、天然歯と同様の外観を有しながらも、患者の支台歯の色に応じて支台歯が透けにくい歯科用製品を作製することができる。

本開示の第1実施形態に係るジルコニア焼結体、仮焼体及び組成物の一例を示す模式図。

本開示の第2実施形態に係るジルコニア焼結体、仮焼体及び組成物の一例を示す模式図。

本開示の第3実施形態に係るジルコニア焼結体、仮焼体及び組成物の一例を示す模式図。

歯科用補綴物の使用例を示す概略断面図。

以下の説明において、図面参照符号は発明の理解のために付記しているものであり、図示の態様に限定することを意図するものではない。各実施形態において、同じ要素には同じ符号を付してある。

上記各視点の好ましい形態を以下に記載する。

上記第1視点の好ましい形態によれば、白色を背景にして測定したL*a*b*表色系による色度におけるL*値を第1のL*値とし、黒色を背景にして測定したL*a*b*表色系による色度におけるL*値を第2のL*値とし、第1のL*値から第2のL*値を控除した値をΔLとするとき、第1の領域におけるΔLは、第2の領域におけるΔLよりも大きい。

上記第1視点の好ましい形態によれば、第1の領域におけるΔLは、第2の領域におけるΔLよりも0.8以上大きい。

上記第1視点の好ましい形態によれば、第1の領域におけるΔLは8〜12である。第2の領域におけるΔLは4〜11である。

上記第1視点の好ましい形態によれば、第2の領域におけるΔLは7.5以下である。

上記第1視点の好ましい形態によれば、第1の領域と第2の領域とは積層されている。

上記第1視点の好ましい形態によれば、ジルコニア焼結体は、第1の領域と第2の領域との間に第3の領域をさらに有する。第3の領域のΔLは、第2の領域のΔLよりも大きく、第1の領域のΔLよりも小さい。

上記第1視点の好ましい形態によれば、第3の領域における遮光材の含有率は、第1の領域における遮光材の含有率よりも高く、第2の領域における遮光材の含有率よりも低い。

上記第1視点の好ましい形態によれば、ジルコニア焼結体は、第3の領域と第2の領域との間に第4の領域をさらに有する。第4の領域のΔLは、第2の領域のΔLよりも大きく、第3の領域のΔLよりも小さい。

上記第1視点の好ましい形態によれば、第4の領域における遮光材の含有率は、第3の領域における遮光材の含有率よりも高く、第2の領域における遮光材の含有率よりも低い。

上記第1視点の好ましい形態によれば、各領域の積層方向に厚さにおいて、第1の領域の厚さは全体の30%〜40%である。第2の領域の厚さは全体の30%〜40%である。第3の領域の厚さは全体の10%〜20%である。第4の領域の厚さは全体の10%〜20%である。

上記第1視点の好ましい形態によれば、遮光材は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニウム及びケイ素の複合酸化物、着色剤、及び蛍光剤を含む群から選択される少なくとも1つである。

上記第1視点の好ましい形態によれば、部分安定化ジルコニアは安定化剤として5.3mol%〜6.2mol%のイットリアを含有する。

上記第2視点の好ましい形態によれば、組成物は、第1の領域と第2の領域との間に第3の領域をさらに有する。第3の領域における遮光材の含有率は、第1の領域における遮光材の含有率よりも高く、第2の領域における遮光材の含有率よりも低い。

上記第2視点の好ましい形態によれば、組成物は、第3の領域と第2の領域との間に第4の領域をさらに有する。第4の領域における遮光材の含有率は、第3の領域における遮光材の含有率よりも高く、第2の領域における遮光材の含有率よりも低い。

上記第2視点の好ましい形態によれば、各領域におけるイットリアの含有率のばらつきは1mol%以下である。

上記第2視点の好ましい形態によれば、組成物は、第1面、及び第1面とは反対側の第2面を有する板状形状を有する。第1の領域は第1面側にある。第2の領域は第2面側にある。

上記第3視点の好ましい形態によれば、仮焼体は、第1の領域と第2の領域との間に第3の領域をさらに有する。第3の領域における遮光材の含有率は、第1の領域における遮光材の含有率よりも高く、第2の領域における遮光材の含有率よりも低い。

上記第3視点の好ましい形態によれば、仮焼体は、第3の領域と第2の領域との間に第4の領域をさらに有する。第4の領域における遮光材の含有率は、第3の領域における遮光材の含有率よりも高く、第2の領域における遮光材の含有率よりも低い。

上記第3視点の好ましい形態によれば、各領域におけるイットリアの含有率のばらつきは1mol%以下である。

上記第3視点の好ましい形態によれば、仮焼体は、第1面、及び第1面とは反対側の第2面を有する板状形状を有する。第1の領域は第1面側にある。第2の領域は第2面側にある。

上記第3視点の好ましい形態によれば、第2視点に係る組成物を800℃〜1200℃で焼成して得られる仮焼体が提供される。

上記第1視点の好ましい形態によれば、第2視点に係る組成物を1400℃以上で焼成して得られるジルコニア焼結体が提供される。

上記第1視点の好ましい形態によれば、第3視点に係る仮焼体を1400℃以上で焼成して得られるジルコニア焼結体が提供される。

上記第4視点の好ましい形態によれば、歯科用製品は、歯冠形状を有する。

上記第4視点の好ましい形態によれば、第1の領域は歯冠形状の切端側に配される。第2の領域は歯冠形状の歯頚部側に配される。

上記第4視点の好ましい形態によれば、第2の領域は、少なくとも支台歯の側面の一部を覆う。

上記第4視点の好ましい形態によれば、歯科用製品は、歯科用補綴物、歯列矯正用製品、又は歯科インプラント用製品である。

本開示の第1実施形態に係るジルコニア焼結体について説明する。本開示のジルコニア焼結体は、酸化ジルコニウム(ZrO2;ジルコニア)及びその安定化剤を含有する部分安定化ジルコニア結晶粒子が主として焼結された焼結体であり、部分安定化ジルコニアをマトリックス相として有する。本開示のジルコニア焼結体において、ジルコニアの主たる結晶相は正方晶系及び立方晶系の少なくとも一方である。ジルコニアは、正方晶系及び立方晶系の両方を含有してもよい。熱処理試験未処理の段階においてジルコニア焼結体は単斜晶系を実質的に含有しないと好ましい。

本開示のジルコニア焼結体には、成形したジルコニア粒子を常圧下ないし非加圧下において焼結させた焼結体のみならず、HIP(Hot Isostatic Pressing;熱間静水等方圧プレス)処理等の高温加圧処理によって緻密化させた焼結体も含まれる。

部分安定化ジルコニアにおける安定化剤としては、例えば、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化イットリウム(Y2O3)(以下、「イットリア」という。)、酸化セリウム(CeO2)等の酸化物が挙げられる。ジルコニア焼結体の透明性を高めるためには、イットリアを使用するとより好ましい。安定化剤としてイットリアを使用する場合、イットリアの含有率は、例えば、部分安定化ジルコニアに対して、4mol%〜7mol%であると好ましく、5.3mol%〜6.2mol%であるとより好ましい。この含有率によれば、単斜晶への相転移を抑制すると共に、ジルコニア焼結体の透明性を高めることができる。ジルコニア焼結体中の安定化剤の含有率は、例えば、誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)発光分光分析、蛍光X線分析等によって測定することができる。なお、安定化剤を添加して部分的に安定化させたジルコニアは、部分安定化ジルコニア(PSZ;Partially Stabilized Zirconia)と呼ばれている。

ジルコニア焼結体において、安定化剤は均一に分布していると好ましい。すなわち、ジルコニア焼結体において、安定化剤の含有率は一定であると好ましい。例えば、ジルコニア焼結体において、安定化剤の含有率を段階的に又は部分的に変化させないと好ましい。安定化剤の含有率が部分的に異なると、焼結時の収縮率が異なってしまい、ジルコニア焼結体に欠陥が生じるからである。安定化剤のばらつきは、1mol%以下であると好ましく、0.5mol%以下であるとより好ましい。

ジルコニア焼結体の透明性(透光性)は、L*a*b*表色系(JISZ8729)における色度(色空間)のL*値を用いて表すことができる。本開示において、後述の実施例のように作製した試料について、試料の背景(下敷き)を白色にして(試料に対して測定装置と反対側を白色にして)測定したL*a*b*表色系のL*値を第1のL*値とする。第1のL*値を測定した同一の試料について、試料の背景(下敷き)を黒色にして(試料に対して測定装置と反対側を黒色にして)測定したL*a*b*表色系のL*値を第2のL*値とする。第1のL*値と第2のL*値との差(第1のL*値から第2のL*値を控除した値)をΔLと表記する。本開示においてはΔLによってジルコニア焼結体の透明性を表記する。ΔLが大きければジルコニア焼結体の透明性が高いことを示し、ΔLが小さければジルコニア焼結体の透明性が低いことを示す。背景(下敷き)となる黒色及び白色は、塗料に関する測定に使用する隠ぺい率測定用紙を使用することができる。

図1に、本開示の第1実施形態に係るジルコニア焼結体の一例を示す模式図を示す。ジルコニア焼結体100は、透明性が異なる第1の領域101及び第2の領域102を有する。第1の領域101の透明性は第2の領域102の透明性よりも高い。第1の領域101のΔLは、例えば、8以上であると好ましく、9以上であるとより好ましい。第1の領域101のΔLは、例えば、12以下であると好ましく、11以下であるとより好ましい。また、第2の領域102のΔLは、例えば、4以上であると好ましく、6以上であるとより好ましい。第2の領域102のΔLは、例えば、11以下であると好ましく、10以下であるとより好ましい。第2の領域102が、支台歯が透けにくくなるような透明性を有すると好ましい場合には、第2の領域102のΔLは7.5以下であると好ましく、7以下であるとより好ましく、6.5以下であるとさらに好ましい。

第1の領域101のΔLと第2の領域102のΔLとの差は、0.8以上であると好ましく、1以上であるとより好ましく、1.5以上であるとより好ましく、2以上であるとさらに好ましい。第1の領域101のΔLと第2の領域102のΔLとの差は、4以下であると好ましく、3以下であるとより好ましい。

第1の領域101と第2の領域102において安定化剤(例えばイットリア)の含有率差は小さいほうが好ましい。第1の領域101と第2の領域102における安定化剤の含有率の差は、1mol%以下であると好ましく、0.5mol%であるとより好ましく、実質的には有意な差を検知できないとより好ましい。

第1の領域101及び第2の領域102は、層状であると好ましい。第1の領域101と第2の領域102とは積層されていると好ましい。ジルコニア焼結体において、透明性は、第1の領域101から第2の領域102に向かって段階的に低くなると好ましい。

ジルコニア焼結体の厚さ(T1+T2)は、例えば、10mm〜20mmとすることができる。第1の領域101の厚さT1は、ジルコニア焼結体の厚さ(T1+T2)の30%〜70%又は40%〜60%とすることができる。第2の領域102の厚さT2は、ジルコニア焼結体の厚さ(T1+T2)の30%〜70%又は40%〜60%とすることができる。これにより、ジルコニア焼結体を歯科用補綴物に適用する場合に、歯科技師が支台歯の大きさに合わせて、支台歯を隠す第2の領域102の範囲を調節しやすくなる。

ジルコニア焼結体100は、ジルコニア焼結体の透明性を低下させる遮光材を含有することができる。遮光材の含有率は、部分的に又は段階的に異なると好ましい。第2の領域102は、ジルコニア焼結体の透明性を低下させる遮光材を含有することができる。第1の領域101は、遮光材を含有してもよい。遮光材の含有率は、第2の領域102から第1の領域101側に向かって段階的に減少傾向にあると好ましい。第2の領域102の遮光材の含有率は、第1の領域101の遮光材の含有率よりも高いと好ましい。

遮光材は、ジルコニア焼結体の強度、破壊靭性等の物性を大きく低下させないものであると好ましい。遮光材としては、例えば、酸化ケイ素(SiO2;シリカ)、酸化アルミニウム(Al2O3;アルミナ)、酸化チタン(TiO2;チタニア)、ジルコニウム及びケイ素の複合酸化物(例えばジルコン(ZrSiO4))、着色剤(顔料)、及び蛍光剤を含む群から選択される少なくとも1つを使用することができる。着色剤としては、例えば、P、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Y、Zr、Sn、Sb、Bi、Ce、Pr、Sm、Eu、Gd、Tb及びErの群から選択される少なくとも1つの元素の酸化物が挙げられる。蛍光剤としては、例えば、Y2SiO5:Ce、Y2SiO5:Tb、(Y,Gd,Eu)BO3、Y2O3:Eu、YAG:Ce、ZnGa2O4:Zn、BaMgAl10O17:Eu等が挙げられる。遮光材は、複数の化合物を組み合わせて使用することができる。遮光材の含有率は、遮光材の種類に応じて調整することができる。

第2の領域102に含有される遮光材と第1の領域101に含有される遮光材とは同じであってもよいし、異なってもよい。

ジルコニア焼結体のL*a*b*表色系(JISZ8729)おける色度(色空間)において、L*値は64〜76の範囲内にあると好ましい。a*値は−6〜3の範囲内にあると好ましい。b*値は3〜27の範囲内にあると好ましい。これにより、ジルコニア焼結体は、天然歯と同様の色を有することができる。

第1実施形態によれば、患者の支台歯の色が濃い(黒い)場合に、透明性の低い領域で支台歯を覆う歯科用補綴物を作製することができる。また、歯科用補綴物の透明性変化の傾向を天然歯における透明性変化の傾向に似せることができる。

次に、本開示の第2実施形態に係るジルコニア焼結体について説明する。第1実施形態においては、2つの領域を有するジルコニア焼結体について説明したが、第2実施形態においては、3つ以上の領域を有するジルコニア焼結体について説明する。

図2に、本開示の第2実施形態に係るジルコニア焼結体の一例を示す模式図を示す。ジルコニア焼結体200は、第1の領域101及び第2の領域102に加えて、第1の領域101と第2の領域102の間に第3の領域103及び第4の領域104をさらに有する。図2に示すジルコニア焼結体200においては、4つの領域は、層状形状を有し、第2の領域102、第4の領域104、第3の領域103、第1の領域101の順に積層されている。

第1の領域101及び第2の領域102の透明性は、第1実施形態と同様とすることができる。第3の領域103及び第4の領域104の透明性は、第1の領域101の透明性よりも低く、第2の領域102の透明性よりも高いと好ましい。各領域のΔLは、第1の領域101から第2の領域102に向かって順に小さくなると好ましい。これにより、天然歯と同様の透明性変化を再現することができる。第4の領域104は、支台歯が透けにくくなるような透明性を有すると好ましい。

第3の領域103の透明性は、第1の領域101の透明性よりも低いと好ましい。第4の領域104の透明性は、第3の領域103の透明性よりも低いと好ましい。第2の領域102の透明性は、第4の領域104の透明性よりも低いと好ましい。例えば、第1の領域101のΔLは、8以上であると好ましく、9以上であるとより好ましい。第1の領域101のΔLは、12以下であると好ましく、11以下であるとより好ましい。第3の領域103のΔLは、5以上であると好ましく、6以上であるとより好ましい。第3の領域103のΔLは、11以下であると好ましく、10以下であるとより好ましい。第4の領域104のΔLは、6以上であると好ましく、7以上であるとより好ましい。第4の領域104のΔLは10以下であると好ましく、9以下であるとより好ましい。第2の領域102のΔLは、7以上であると好ましく、8以上であるとより好ましい。第2の領域102のΔLは、12以下であると好ましく、11以下であるとより好ましい。これにより、ジルコニア焼結体は、天然歯に似せた透明性を有することができる。

第3の領域103のΔLは、第1の領域101のΔLよりも0.3以上小さいと好ましく、0.5以上小さいとより好ましい。第4の領域104のΔLは、第3の領域103のΔLよりも0.3以上小さいと好ましく、0.5以上小さいとより好ましい。第2の領域102のΔLは、第4の領域104のΔLよりも0.2以上小さいと好ましく、0.3以上小さいとより好ましい。これにより、ジルコニア焼結体は、天然歯に似せた透明性変化を有することができる。

ジルコニア焼結体の厚さ(各領域の積層方向の厚さ;T1+T3+T4+T2)は、例えば、10mm〜20mmとすることができる。第1の領域101の厚さT1は、ジルコニア焼結体の厚さ(T1+T3+T4+T2)の30%〜40%とすることができる。第3の領域103の厚さT3は、ジルコニア焼結体の厚さ(T1+T3+T4+T2)の10%〜20%とすることができる。第4の領域104の厚さT4は、ジルコニア焼結体の厚さ(T1+T3+T4+T2)の10%〜20%とすることができる。第2の領域102の厚さT2は、ジルコニア焼結体の厚さ(T1+T3+T4+T2)の30%〜40%とすることができる。これにより、ジルコニア焼結体を歯科用補綴物に適用する場合に、歯科技師が支台歯の大きさに合わせて、支台歯を隠す第2領域102の範囲を調節しやすくなる。

第1実施形態と同様にして、各領域は、遮光材を含有することができる。各領域における遮光材の含有率は、第2の領域102から第1の領域101に向かって段階的に減少傾向にあると好ましい。第2の領域102の遮光材の含有率は、第4の領域104の遮光材の含有率よりも高いと好ましい。第4の領域104の遮光材の含有率は、第3の領域103の遮光材の含有率よりも高いと好ましい。第3の領域103の遮光材の含有率は、第1の領域101の遮光材の含有率よりも高いと好ましい。

図2においては、ジルコニア焼結体200が4つの領域(層)を有する形態を示したが、領域の数は4つに限定されることはない。ジルコニア焼結体は、3つの領域を有してもよいし、5つ以上の領域を有してもよい。

第2実施形態の上記以外の形態は、第1実施形態と同様とすることができる。

第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。第2実施形態によれば、より自然な透明性変化を有する歯科用補綴物を作製することができる。

次に、本開示の第3実施形態に係るジルコニア焼結体について説明する。第1及び第2実施形態においては、各領域が平板形状の積層構造を有するジルコニア焼結体について説明したが、第4実施形態においては、各領域が平板形状を有さないジルコニア焼結体について説明する。

図3に、本開示の第3実施形態に係るジルコニア焼結体の一例を示す模式図を示す。ジルコニア焼結体300は、第1の領域101及び第2の領域102を有する。第1の領域101及び第2の領域102の透明性は、第1実施形態と同様とすることができる。

例えば、第2の領域102は、支台歯の側面を覆うような形状を有することができる。例えば、図3に示す形態においては、第2の領域102は、半円形状又は半楕円形状を有する。これにより、ジルコニア焼結体300を歯科用補綴物として作製したときに、透明性の低い第2の領域102で覆うことによって支台歯を透けにくくすることができる。

第3実施形態の上記以外の形態は、第1実施形態と同様とすることができる。

第3実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。第3実施形態によれば、透明性の低い領域で支台歯を隠すことができる歯科用補綴物を作製することができる。

上記実施形態において、隣接する領域間における透明性及び遮光材の含有率の変化は、必ずしも明確な境界を形成している必要はなく、連続的なものであってもよい。

次に、本開示のジルコニア焼結体を製造するための組成物及び仮焼体について説明する。組成物及び仮焼体は、上述の本発明のジルコニア焼結体の前駆体(中間製品)となるものである。仮焼体は、組成物を焼結に至らない温度で焼成(即ち仮焼)したものである。また、仮焼体には、成形加工したものも含まれる。たとえば、仮焼したジルコニアディスクをCAD/CAM(Computer-Aided Design/Computer-Aided Manufacturing)システムで加工した歯科用製品(例えば歯冠形状の補綴物)も仮焼体に含まれる。

本発明の組成物には、粉体、粉体を溶媒に添加した流体、及び粉体を所定の形状に成形した成形体も含まれる。すなわち、組成物は、粉末状であってもよいし、ペースト状ないしウェット組成物でもよい(すなわち、溶媒中にあってもよいし、溶媒を含んでいてもよい)。また、組成物は、バインダ、顔料等の添加物を含有するものであってもよい。なお、上記含有率の算出において、溶媒やバインダ等の添加物の質量は考慮しない。本発明の組成物は、成形体である場合、いずれの成形方法によって成形されたものでもよく、例えばプレス成形、射出成形、光造形法によって成形されたものとすることができ、多段階的な成形を施したものでもよい。例えば、本発明の組成物をプレス成形した後に、さらにCIP(Cold Isostatic Pressing;冷間静水等方圧プレス)処理を施したものでもよい。

組成物及び仮焼体は、部分安定化ジルコニアと、遮光材と、を含有する。組成物及び仮焼体中の安定化剤の種類及び含有率は、上述と同様とすることができる。遮光材の種類は上述と同様とすることができる。

組成物及び仮焼体において、安定化剤(例えばイットリア)の含有率のばらつきは小さいほうが好ましい。例えば、安定化剤の含有率のばらつきは、1mol%以下であると好ましく、0.5mol%であるとより好ましく、実質的には有意な差を検知できないとより好ましい。

本開示の成形した組成物(成形組成物)及び仮焼体は、作製するジルコニア焼結体と同様の構成を有する。例えば、図1〜図3に示すようなジルコニア焼結体を作製する場合には、成形組成物及び仮焼体は、図1〜図3に示すような構成及び形状を有する。本開示においては、成形組成物及び仮焼体の各領域には、ジルコニア焼結体の各領域に対応する名称を付している。例えば、成形組成物及び仮焼体の第1の領域は、ジルコニア焼結体の第1の領域に対応する領域である。

以下においては、図3に示すような第2実施形態に係るジルコニア焼結体を作製するための成形組成物及び仮焼体を例にして、組成物及び仮焼体について説明する。

成形組成物及び仮焼体は、第1の領域101と、遮光材の含有率が第1の領域101とは異なる第2の領域102と、を有する。第1の領域101及び第2の領域102は、層状であると好ましい。第1の領域101と第2の領域102とは積層されていると好ましい。成形組成物及び仮焼体は、第1面、及び第1面とは反対側の第2面を有する板状形状を有することができる。この場合、第1の領域は第1面側に配することができる。第2の領域は第2面側に配することができる。

遮光材の含有率は、第2の領域102から第1の領域101に向かって段階的に減少傾向にあると好ましい。第2の領域102における遮光材の含有率は、第1の領域101における遮光材の含有率よりも高いと好ましい。

成形組成物及び仮焼体は、第1の領域101及び第2の領域102に加えて、第1の領域101と第2の領域102の間に第3の領域103及び第4の領域104をさらに有することができる。第3の領域103及び第4の領域104における遮光材の含有率は、第1の領域101の遮光材の含有率よりも高く、第2の領域102の遮光材の含有率よりも低いと好ましい。第2の領域102の遮光材の含有率は、第4の領域104の遮光材の含有率よりも高いと好ましい。第4の領域104の遮光材の含有率は、第3の領域103の遮光材の含有率よりも高いと好ましい。第3の領域103の遮光材の含有率は、第1の領域101の遮光材の含有率よりも高いと好ましい。

成形組成物及び仮焼体における各領域の厚さは、作製するジルコニア焼結体における各領域の厚さに対応するように設定すると好ましい。

本開示の組成物は、本発明の組成物を例えば常圧下で800℃〜1200℃で焼成することにより、本開示の仮焼体となるものである。

本開示の組成物及び仮焼体は、例えば常圧下で1400℃〜1650℃で焼成することにより、本開示のジルコニア焼結体となるものである。

本開示の組成物及び仮焼体によれば、本開示のジルコニア焼結体を作製することができる。

次に、本開示の歯科用製品について説明する。

歯科用製品は、上記実施形態に係るジルコニア焼結体又は仮焼体を含む。

歯科用製品には、例えば、セラミックフレーム、フルカントゥアークラウン等の補綴物が含まれる。歯科用補綴物は、歯冠形状を有すると好ましい。歯科用補綴物は、ジルコニア焼結体又は仮焼体上に積層された陶材(例えばガラス材料)をさらに含むことができる。

歯科用補綴物は、歯頚部側に第2の領域を有すると好ましい。歯科用補綴物は、切端部側に第1の領域を有すると好ましい。歯科用補綴物は、歯頚部側から切端部側に向けて透明性が高くなると好ましい。第2の領域は、支台歯の側面を覆うように形成すると好ましい。第2実施形態に係るジルコニア焼結体の場合、歯科用補綴物は、透明性の低い第2の領域及び第4の領域で支台歯の側面を覆うように形成することができる。

また、歯科用製品には、例えば、歯列矯正用製品(例えば、歯列矯正用ブラケット)、歯科インプラント用製品(例えば、歯科インプラント用アバットメント)も含むことができる。

次に、ジルコニア焼結体、ジルコニア仮焼体及びジルコニア組成物の製造方法、並びに歯科用製品の製造方法について説明する。ここでは、ジルコニア焼結体、仮焼体及び組成物は、図に示すような第1〜第2の領域を有する形態を例にして説明する。

まず、水中でジルコニアと安定化剤を湿式混合してスラリーを形成する。次に、スラリーを乾燥させて造粒する。次に、造粒物を仮焼して、1次粉末を作製する。

次に、1次粉末を層の数に分ける。各1次粉末に、各層の位置に応じた所定量の遮光材を添加して混合する。そして、各粉末について、水中で所望の粒径になるまでジルコニアを粉砕混合して、ジルコニアスラリーを形成する。次に、スラリーを乾燥させて造粒し、2次粉末を作製する。

次に、遮光材の含有率が異なる複数の粉末を順に積層させていく。積層する順に、遮光材の添加率が段階的に高く又は低くなるように積層すると好ましい。まず、型に、1層目の粉末を充填した後、1層目の粉末の上面を平坦にならす。平坦に均す方法としては、例えば、型を振動させたり、1層目の粉末の上面をすりきったりする方法を採用することができる。ただし、全層を積層するまではプレス処理を施さないと好ましい。次に、1層目の粉末の上に、2層目の粉末を充填する。次に、型に振動を与える。型内の粉末に振動が伝達するようにする。振動を与える方法としては、例えば、型に機械的振動を与えたり、手動で型を揺らしたり、金づち等で型を叩いたり、適宜所望の方法を採ることができる。これにより、第1層目の粉末と第2層目の粉末の境界において、第1層目の粉末と第2層目の粉末が部分的に混合するものと考えられる。すなわち、振動を与える回数や強さ、機械的振動の場合には周波数や振幅等は、層間の境界において上下層の粉末の混合が起こるように、粉末の粒径、粒径分布、粒子形状等に応じて適宜設定することができる。次に、第1層目の粉末と同様にして、第2層目の粉末の上面をならす。全層積層するまでこの作業を繰り返す。

例えば、上述の計4層の組成物及び仮焼体を作製する場合、型に、第1層目の粉末を所定の厚さ(例えば全体の厚さの25%〜45%)まで充填する。このとき、第1層目の粉末の上面を平坦に均すが、プレス処理は施さない。次に、第1層目の粉末の上に、第2層目の粉末を所定の厚さ(例えば全体の厚さの5%〜25%)まで充填する。次に、型に振動を与える。この振動により、第1層目の粉末の上面と第2層目の粉末の下面との境界において、第1層目の粉末と第2層目の粉末とが混合した第1境界層が形成されると推測される。次に、第2層目の粉末の上面を平坦に均す。第3層目の粉末充填前に、第2層目の粉末に対してはプレス処理を施さない。次に、第2層目の粉末の上に、第3層目の粉末を所定の厚さ(例えば全体の厚さの5%〜25%)まで充填する。次に、型に振動を与える。この振動により、第2層目の粉末の上面と第3層目の粉末の下面との境界において、第2層目の粉末と第3層目の粉末とが混合した第2境界層が形成されると推測される。次に、第3層目の粉末の上面を平坦に均す。第4層目の粉末充填前に、第3層目の粉末に対してはプレス処理を施さない。次に、第3層目の粉末の上に、第4層目の粉末を所定の厚さ(例えば全体の厚さの25%〜45%)まで充填する。次に、型に振動を与える。この振動により、第3層目の粉末の上面と第4層目の粉末の下面との境界において、第3層目の粉末と第4層目の粉末とが混合した第3境界層が形成されると推測される。

全層を積層したら、プレス成形して、本発明の組成物としての成形物を作製する。成形物にさらにCIP処理を施してもよい。

次層の粉末を充填する前にプレス処理を施さないこと、及び各層を充填する度に振動を与えることにより、隣接する層間において、上下層の粉末が混合した境界層を形成することができると考えられる。これにより、焼結体において、隣接する層間の密着性を高めることができる。加熱処理時の収縮量又は収縮速度を各層で同等にすることができ、加熱処理時に層間に剥離を生じさせたり、焼結体が目標とする形状に対していびつに変形したりすることを防止することができる。さらに、隣接する層間の透明性及び色の差異を緩和することができる。これにより、焼結体において、積層方向に透明性及び色を自然に変化させることができる。

また、各層毎にプレス処理を必要としない。これにより、手間及び時間を大きく削減することができ、製造コストを低下させることができる。

仮焼体を作製しない場合には、組成物を例えば1400℃〜1600℃、好ましくは1450℃〜1550℃で焼成することにより、ジルコニア粉末を焼結させて、本発明のジルコニア焼結体を製造する。成形物の段階で所望の形状に成形してもよい。

仮焼体を作製する場合には、組成物を例えば800℃〜1200℃で焼成して、仮焼体を作製する。次に、仮焼体を例えば1400℃〜1650℃、好ましくは1450℃〜1600℃で焼成することにより、ジルコニア粉末を焼結させて、本発明のジルコニア焼結体を製造する。成形は、仮焼体の段階で切削加工等により実施してもよいし、焼結後に実施してもよい。成形は、CAD/CAMシステムで実施することができる。

歯科用製品の製造方法は、仮焼体又は焼結体を歯冠形状等、歯科用製品の形状に成形する以外は、焼結体の上記製造方法と同様である。

なお、上記実施形態においては、4層の積層体に基づく組成物、仮焼体及び焼結体を例示したが、4層に限定されるものではない。また、図は、各点の位置関係や方向の説明を容易にするためのものであり、形状や寸法は図に示す形態に限定されるものではない。

[実施例1〜25] ジルコニア焼結体を作製し、各試料について色度を測定した。実施例1〜25においては、図2に示す第2実施形態のような4層構成のジルコニア焼結体における各領域に対応するジルコニア焼結体の試料を作製し、各試料について色度を測定した。試料の組成に関するデータ及び測定結果を表1〜25に示す。「白背景」とは、塗料に関する測定に使用する白色の隠ぺい率測定用紙を背景(下敷き)にして測定した色度であることを示す。「黒背景」とは、塗料に関する測定に使用する白色の隠ぺい率測定用紙を背景(下敷き)にして測定した色度であることを示す。「ΔL」とは、白背景で測定したL*値と黒背景で測定したL*値の差である。「ΔL層間差」とは、隣接する層間のΔLの差である。n層のΔLと(n+1)層のΔLとの差を(n+1)層の欄に記載してある。「ΔL全体差」とは、第1の領域のΔLと第2の領域のΔLとの差である。表1〜25において、同一の試料には同一の試料番号を付してある。

まず、安定化剤としてイットリアを5.5mol%又は6mol%含有する部分安定化ジルコニアを準備した。部分安定化ジルコニアに、表に示す遮光材を添加して混合した。表に示す遮光材の添加量は、部分安定化ジルコニアの質量に対する遮光材の質量である。例えば、TiO2が0.3%とは、部分安定化ジルコニア100gに対してTiO2を0.3g添加することを示す。表に示す遮光材において、Z300とは、ジルコニウム及びバナジウムの複合酸化物((Zr,V)O2);日陶顔料工業株式会社製「Z−300黄」)である。次に、直径約18mmの円柱状の金型に混合物1.3g入れ、圧30kNで成形した後、170MPaのCIP処理を1分間施して成形組成物を作製した。次に、成形組成物を表に示す焼成温度で2時間焼成して、円板状のジルコニア焼結体を作製した。次に、焼結体表面を研磨加工し、表面を鏡面状(#2000以上)に仕上げ、厚さ1.2mmの試料を作製した。そして、色度測定機(KONIKA MINOLTA社製SPECTROPHOTOMETER CM−3610A)及び解析ソフト(Spectra Magic NX)を用いて各試料の色度を測定した。

各領域の試料に用いた部分安定化ジルコニアは、イットリアが均一に混合された同一の製品を使用しており、各領域の試料間においてイットリアの含有率の有意なばらつきは検出されないと考えられる。

実施例1〜25においては、基本的に、第1の領域に対応する試料から第2の領域に対応する試料へと遮光材の添加量を増加させた。その結果、第1の領域に対応する試料から第2の領域に対応する試料へとΔLが順に減少することが確認された。これにより、各層の組成物を積層してジルコニア焼結体を作製すれば、透明性が段階的に変化するジルコニア焼結体を作製できることが確認された。すなわち、より自然な透明性変化を有する歯科用補綴物が作製可能であることが確認された。各層の安定化剤の含有率は均等であるので、各層における焼結時の収縮率を同等にすることができる。これにより、焼結による不具合の発生を抑制することができる。

第2の領域のΔLが7.5以下である歯科用補綴物を作製すると、支台歯の色が濃い(黒ずんでいる)場合であっても、第2の領域において支台歯が透けて見えないことが確認された。したがって、支台歯を透かしたくない場合には、支台歯を覆う領域のΔLを7.5以下にすれば、支台歯が透けにくい透明性が得られることが分かった。

層間のΔLの差は0.01〜2の範囲となった。また、全体におけるΔLの範囲は、0.9〜4となった。このような条件において、第1の領域から第2の領域に向けて天然歯のような透明性変化を確認することができた。

NiO及びZ300は、顔料としても使用される化合物であるが、透明性を低下させる遮光材としても利用可能であることが分かった。

[実施例26〜31] 遮光材の種類及び含有率を変化させた試料を作製し、各試料について色度を測定した。各試料の作製方法及び色度の測定方法は実施例1〜25と同様である。実施例26〜31においては、遮光材としてジルコン(ZrSiO4)、酸化チタン(TiO2)、アルミナ(Al2O3)、及び二酸化ケイ素(SiO2)を用いた。実施例30〜31においては、遮光材として酸化チタン(TiO2)及び表に示す着色剤を用いた。

表26〜31に、試料の作製条件及び測定結果を示す。いずれの遮光材についても、含有率を高めることにより、ΔLが減少傾向にあった。すなわち、透明性が低下傾向にあった。これにより、これらの化合物を遮光材として用いることができることが確認された。また、遮光材の含有率の調整によって透明性を調整可能であることが確認された。

上記の特許文献の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明のジルコニア組成物、ジルコニア仮焼体及びジルコニア焼結体、並びに歯科用製品は、上記実施形態に基づいて説明されているが、上記実施形態に限定されることなく、本発明の全開示に枠内において、かつ本発明の基本的技術思想に基づいて、種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)に対し種々の変形、変更及び改良を含むことができることはいうまでもない。また、本発明の全開示の枠内において、種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ・置換ないし選択が可能である。

本発明のさらなる課題、目的及び展開形態は、請求の範囲を含む本発明の全開示事項からも明らかにされる。

本書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が、別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。

ジルコニア組成物、ジルコニア仮焼体及びジルコニア焼結体、並びに歯科用製品の特定に関して、上述の構造又は特性以外の構造又は特性による特定が必要となる場合には、これらの製造方法による特定も加味することが可能である。

上記実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下の記載には限定されない。

[付記1] 安定化剤として4mol%〜7mol%のイットリアを含有する部分安定化ジルコニアの焼結体であって、 白色を背景にして測定したL*a*b*表色系による色度におけるL*値を第1のL*値とし、 黒色を背景にして測定したL*a*b*表色系による色度におけるL*値を第2のL*値とし、 前記第1のL*値から前記第2のL*値を控除した値をΔLとするとき、 前記第1の領域におけるΔLは、前記第2の領域におけるΔLよりも大きい、ジルコニア焼結体。 [付記2] 前記第1の領域におけるΔLは、前記第2の領域におけるΔLよりも0.8以上大きい、付記に記載のジルコニア焼結体。 [付記3] 前記第2の領域におけるΔLは7.5以下である、付記に記載のジルコニア焼結体。 [付記4] 遮光材を含有し、 前記第2の領域における前記遮光材の含有率は、前記第1の領域における前記遮光材の含有率よりも高い、付記に記載のジルコニア焼結体。 [付記5] 前記第1の領域におけるΔLは8〜12であり、 前記第2の領域におけるΔLは4〜11である、付記に記載のジルコニア焼結体。 [付記6] 前記第1の領域におけるイットリアの含有率と前記第2の領域におけるイットリアの含有率の差は1mol%以下である、付記に記載のジルコニア焼結体。

100,200,300 ジルコニア焼結体、ジルコニア成形組成物、ジルコニア仮焼体 101 第1の領域 102 第2の領域 103 第3の領域 104 第4の領域 201 歯科用補綴物 202 支台歯 203 歯茎

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