インプラント設計方法及びインプラント設計装置、並びにインプラント設計プログラム

申请号 JP2012523511 申请日 2011-06-13 公开(公告)号 JPWO2012004937A1 公开(公告)日 2013-09-02
申请人 有限会社シエスタ; 发明人 森本 哲司; 哲司 森本;
摘要 歯科用インプラントを、患者の顎骨の構造や状態に合わせて患者毎に最適な形状に設計することができるインプラント設計装置を提供する。歯科用インプラントをコンピュータによる画像処理を用いて設計するインプラント設計装置100において、患者の顎骨の構造を示す顎骨データから顎骨モデルを作成する顎骨モデル作成部111と、歯科用インプラントの外形形状を示すインプラントデータからインプラントモデルを作成するインプラントモデル作成部112と、該顎骨モデルの 指定 された部位に該インプラントモデルに組み込んで、患者の顎骨に歯科用インプラントを埋め込む手術をシミュレーションするシミュレーション部110と、該シミュレーションの結果に応じて該インプラントデータを修正して変形させたインプラントモデルから該歯科用インプラントを設計する設計部120とを備えた。
权利要求
  • 歯科用インプラントをコンピュータにより設計するインプラント設計方法であって、
    患者の顎骨の構造を示す顎骨データから顎骨モデルを作成するステップと、
    歯科用インプラントの外形形状を示すインプラントデータからインプラントモデルを作成するステップと、
    該顎骨モデルの指定された部位に該インプラントモデルを組み込むことにより、患者の顎骨に歯科用インプラントを埋め込む手術をシミュレーションするステップと、
    該シミュレーションの結果に応じて該インプラントデータを修正して変形させたインプラントモデルから該歯科用インプラントを設計するステップと を含む、インプラント設計方法。
  • 請求項1に記載のインプラント設計方法において、
    前記シミュレーションを行うステップは、
    前記顎骨モデルと、該顎骨モデルに埋め込まれた前記インプラントモデルとの位置関係に基づいて、前記インプラントモデルのサイズの上限値及び下限値を決定するステップと、
    前記変形させたインプラントモデルのサイズが、該上限値及び下限値で示される範囲外のサイズであるとき、警告を発するステップとを含む、インプラント設計方法。
  • 請求項2に記載のインプラント設計方法において、
    前記患者の顎骨の構造を示す顎骨データは、該患者の顎骨のコンピューター断層撮影により得られた画像データである、インプラント設計方法。
  • 請求項3に記載のインプラント設計方法において、
    前記コンピューター断層撮影は、X線CT撮影あるいはMRI撮影である、インプラント設計方法。
  • 請求項4に記載のインプラント設計方法において、
    前記患者の顎骨の構造を示す顎骨データは、該患者の顎骨のX線CT撮影により得られた画像データであり、
    前記シミュレーションを行うステップは、
    前記顎骨モデルに前記フィクスチャーモデルを埋め込んでいない状態における、該顎骨モデルの海綿骨部分の血流量の目安となる術前血流パラメータを、該X線CT撮影により得られた画像データに含まれるCT値に基づいて導出するステップと、
    該顎骨モデルに該フィクスチャーモデルを埋め込んだ状態における、該顎骨モデルの海綿骨部分の血流量の目安となる術後血流パラメータを、該CT値、及び前記顎骨モデルと前記インプラントモデルとの位置関係に基づいて導出するステップとを含み、
    前記警告を発するステップは、前記変形させたインプラントモデルのサイズが、前記上限値及び下限値が示す範囲内のサイズであっても、該術前血流パラメータ及び該術後血流パラメータから、術後の血流量が術前の血流量より低下すると判定されるとき、警告を発するステップである、インプラント設計方法。
  • 請求項2または5に記載のインプラント設計方法において、
    前記シミュレーションの最初に用いるインプラントデータは、構造、サイズ、及び材料が異なる既成の複数の歯科用インプラントの中から選択した特定の歯科用インプラントの外形形状を表すインプラント標準データである、インプラント設計方法。
  • 請求項3または5に記載のインプラント設計方法において、
    前記顎骨モデルを作成するステップは、
    前記患者の顎骨のコンピューター断層撮影により得られた画像データの変換処理により該患者の顎骨の構造を示す顎骨データとして3次元画像データを作成するステップと、
    該顎骨データとしての3次元画像データから3次元顎骨モデルを作成するステップとを含み、
    前記インプラントモデルを作成するステップは、
    前記インプラントデータとしての3次元画像データから3次元インプラントモデルを作成するステップを含み、
    前記手術のシミュレーションを行うステップは、
    該3次元顎骨モデルと該3次元インプラントモデルとを合成するステップを含む、インプラント設計方法。
  • 請求項2または7に記載のインプラント設計方法において、
    前記歯科用インプラントは、
    前記患者の顎骨に埋め込まれるインプラント本体と、
    該インプラント本体に固定される支柱と、
    該支持に装着される人工歯とを有している、インプラント設計方法。
  • 請求項8に記載のインプラント設計方法において、
    前記インプラントデータは、前記歯科用インプラントを構成する前記インプラント本体、前記支柱、及び前記人工歯の外形形状をそれぞれ決める3次元画像データとして、インプラント本体データ、支柱データ、人工歯データを含み、
    前記インプラントモデルを作成するステップは、前記インプラント本体データ、支柱データ、及び人工歯データから3次元インプラントモデルを作成するステップである、インプラント設計方法。
  • 請求項2または5に記載のインプラント設計方法において、
    前記手術のシミュレーションを行うステップは、
    前記顎骨モデルにおける皮質骨部と海綿骨部との境界と、前記インプラントモデルのインプラント本体との位置関係をシミュレートするステップを含む、インプラント設計方法。
  • 請求項2または5に記載のインプラント設計方法において、
    前記手術のシミュレーションを行うステップは、
    前記顎骨モデルにおける血管及び神経と、前記インプラントモデルのインプラント本体との位置関係をシミュレートするステップを含む、インプラント設計方法。
  • 請求項9に記載のインプラント設計方法において、
    前記手術のシミュレーションを行うステップは、
    前記顎骨モデルに基づいて上顎と下顎の動きをシミュレートするステップと、
    該上顎と該下顎の動きのシミュレーション結果に基づいて、前記患者の顎骨の歯欠損部に人工歯を配置したときに該人工歯を支えるインプラント本体にかかる荷重及び該荷重のかかる方向をシミュレートするステップとを含む、インプラント設計方法。
  • 請求項12に記載のインプラント設計方法において、
    前記手術のシミュレーションを行うステップは、前記荷重のシミュレーションにより得られたインプラント本体にかかる荷重に基づいて、該インプラント本体を患者の顎骨が支えられるか否かをシミュレートするステップを含む、インプラント設計方法。
  • 歯科用インプラントをコンピュータによる画像処理を用いて設計するインプラント設計装置であって、
    患者の顎骨の構造を示す顎骨データから顎骨モデルを作成する顎骨モデル作成部と、
    歯科用インプラントの外形形状を示すインプラントデータからインプラントモデルを作成するインプラントモデル作成部と、
    該顎骨モデルの指定された部位に該インプラントモデルに組み込んで、患者の顎骨に歯科用インプラントを埋め込む手術をシミュレーションするシミュレーション部と、
    該シミュレーションの結果に応じて該インプラントデータを修正して変形させたインプラントモデルから該歯科用インプラントを設計する設計部と を備えた、インプラント設計装置。
  • 歯科用インプラントを設計するインプラント設計方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、
    該コンピュータが、
    患者の顎骨の構造を示す顎骨データから顎骨モデルを作成するステップと、
    歯科用インプラントの外形形状を示すインプラントデータからインプラントモデルを作成するステップと、
    該顎骨モデルの指定された部位に該インプラントモデルに組み込んで、患者の顎骨に歯科用インプラントを埋め込む手術をシミュレーションするステップと、
    該シミュレーションの結果に応じて該インプラントデータを修正して変形させたインプラントモデルから該歯科用インプラントを設計するステップと を実行する、インプラント設計プログラム。
  • 说明书全文

    本発明は、インプラント設計方法及びインプラント設計装置、並びにインプラント設計プログラムに関し、特に、コンピューター断層撮影により得られた患者の顎骨の画像を用いて、顎骨に埋め込む人工歯根の設計を行う方法及び装置、並びに該人工歯根の設計のためのシュミレーションプログラムに関するものである。

    従来から、歯科治療として、歯の欠損個所に歯の機能を代用させる目的で人工歯根(以下、歯科用インプラントという。)を埋め込むインプラント治療がある。

    図16は、このようなインプラント治療に用いられる歯科用インプラントの構造の一例を説明する模式図である。

    歯科用インプラント10は、顎骨に埋め込まれる例えば円柱状のインプラント本体(以下、フィクスチャーという。)11と、フィクスチャー11に形成されているネジ穴11aにネジ止めなどにより固定される支柱(以下、アバットメントという。)12と、このアバットメント12に接着剤あるいはスクリュー(螺子)により装着される上部構造(以下、補綴冠という。)13とを有している。

    ところで、インプラント治療をより安全、適切に行うためには、顎の骨の状態を詳しく調べる必要があり、担当医は、レントゲン、口腔内写真撮影などによる充分な検査、診断を行って顎の骨の状態などを検査し、歯科用インプラントを埋め込む部位やその部位の骨量に問題はないかなどのインプラント治療の可否を検討する。

    また、担当医は、必要に応じてCTスキャンなどの精密検査を行う。

    ここで、CTとは、コンピューター断層撮影(computer tomography)の略であり、広義のCTは、X線を用いたX線CTだけでなく、核磁気共鳴画像法(MRI)などによりコンピュータを用いて断面像を得る各種検査法の総称であるが、一般にCTは、人体などへのX線の照射と、X線照射により得られるデータのコンピューター解析とにより、体の構造の輪切りの状態を把握できる断面画像を得る装置(以下、CT装置という。)であり、この断面画像からは、例えば、体の各臓器の形態、大きさ、位置などを確認することができる。

    このようにコンピューター断層撮影は、本来は物体の(輪切りなどの)断面画像を得る技術であるが、これらの検査技術は単に断面画像として用いられるのみでなく、画像処理技術向上によって3次元グラフィックスとして表示されることも多く、必ずしも「断面」に限定して用いる検査方法ではなくなってきている。

    CT装置の基本原理について簡単に説明する。

    CT装置は、検査対象の周囲をX線源とX線検出器とが回転するよう構成されており、CT装置内の検査対象はX線を全方位から受ける。 照射されたX線は、検査対象を通過する際に検査対象に一部吸収されて減衰した後、X線源の反対側に位置するX線検出器に到達し、X線検出器ではX線の強度が記録される。 つまり、CT装置で基本となるデータは、物体にその周囲360度の全方向から照射したX線が、それぞれの方向ではどの程度吸収されたかを示す度合い(吸収率)である。

    この吸収率の単位としては、伝統的に空気を−1000HU、を0HUと定義したHU(Hounsfield unit)という単位が利用され、これによる透過率の表現を、特に「CT値(CT number)」と呼ぶ。

    CT装置は、この吸収率を示すデータ(CT値)に対してコンピュータによりフーリエ変換演算処理を施して、検査対象の3次元画像を再構成するものである。

    次に、インプラント治療について簡単に説明する。

    図17は、インプラント治療の手順を説明する図である。

    まず、担当医は、患者の顎骨など口腔の構造を、レントゲン撮影やコンピュータ断層撮影(CT)により得られた画像などを用いて検査する。 このとき、担当医は、患者の歯の欠損個所の状態だけでなく、噛み合わせや顎の関節の状態などを調べる。 そして、その患者に合った歯科用インプラント10を、サイズや形状の異なる複数の既製品の中から選択する。

    歯科用インプラント10が選択されると、歯60を支える顎骨(歯槽骨)50に、インプラント10を埋め込むための埋込み穴50aをドリルで形成する(図17(a))。 次に、顎骨50に形成した埋込み穴50aにインプラント本体であるフィクスチャー11を埋め込む。 このフィクスチャー11の外表面にはネジ山(スレッド)が形成されており、フィクスチャー11は、顎骨に形成した埋込み穴50にねじ込まれる(図17(b))。 このようにインプラントのフィクスチャー11を顎骨に埋め込んだ後は、フィクスチャー11のネジ穴11aをキャップ14で覆い、フィクスチャー11と顎骨50とが癒着するのを待つ(図17(c))。 このフィクスチャーと顎骨との癒着はオッセオ・インテグレーションと呼ばれ、このオッセオ・インテグレーションには、2〜3ヶ月、場合によっては6ヶ月程度を要する。

    その後、フィクスチャー11と顎骨50との癒着の状態を確認した後、キャップ14を外して、アバットメント12の下部のネジ部をフィクスチャー11のネジ穴11aに螺合させて、アバットメント12をフィクスチャー11に装着する(図17(d))。 この状態で、被せ物(補綴冠)13の型をとって、アバットメント12に、型どおりに仕上げた補綴冠13を取り付けて、インプラント治療を完了する(図17(e))。

    ところで、このようなインプラント治療では、担当医が、レントゲン撮影やX線CT撮影などにより得られた顎骨画像を利用して目視によってインプラント本体(フィクスチャー)の埋込位置を決定していたが、その埋込位置が少しずれただけでも、顎骨内の血管や神経を傷つけるという致命的な事故が発生する恐れがある。

    そこで、より安全性の高い埋込位置の設定を容易に行えるように、インプラント治療をシミュレーションすることが行われるようになってきている。 例えば、患者の顎骨をCTスキャンして得られた画像を用いて、治療方法を支援するためのシミュレーションが普及している(特許文献1)。

    しかしながら、従来は、形状や大きさの決められた数種類の規格品の歯科用インプラントの中から患者の顎骨の構造に適したものを選択していたため、歯科用インプラントの埋込位置を精度よく設定できても、インプラントを患者毎にその顎骨の構造にマッチした最適な形状にするという要求を満たすことは困難であった。

    なお、特許文献2には、CT(コンピュータ断層撮影)により得られた患者の顎骨の構造を示す画像を、長さや直径の異なる様々な歯科用インプラントの画像に図解的に重ね合わせて、これらの様々な歯科用インプラントの中から適切な歯科用インプラントを選択する手法も開示されている。

    特許第4408430号公報(特開2007−130325号公報)

    特表2009−537190号公報

    以上説明したように、従来の歯科用インプラントの埋込位置をシミュレーションにより精度よく設定する方法や、CT(コンピュータ断層撮影)により得られる患者の顎骨の構造を示す画像を、長さや直径の異なる様々な歯科用インプラントの画像に図解的に重ね合わせて、これらの様々なインプラントの中から適切な歯科用インプラントを選択する手法では、長さや直径の異なる歯科用インプラントは予め用意されたものであるため、患者の顎骨に、その様々な状態や構造に合った最適な歯科用インプラントを埋め込むことは不可能であるという課題は未解決のままである。

    本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、歯科用インプラントを、患者の顎骨の構造や状態に合わせて患者毎に最適な形状に設計することができるインプラント設計方法及びインプラント設計装置、並びにインプラント設計プログラムを得ることを目的とする。

    本発明に係るインプラント設計方法は、歯科用インプラントをコンピュータにより設計するインプラント設計方法であって、患者の顎骨の構造を示す顎骨データから顎骨モデルを作成するステップと、歯科用インプラントの外形形状を示すインプラントデータからインプラントモデルを作成するステップと、該顎骨モデルの指定された部位に該インプラントモデルを組み込むことにより、患者の顎骨に歯科用インプラントを埋め込む手術をシミュレーションするステップと、該シミュレーションの結果に応じて該インプラントデータを修正して変形させたインプラントモデルから該歯科用インプラントを設計するステップとを含むものであり、そのことにより上記目的が達成される。

    本発明は、上記インプラント設計方法において、前記シミュレーションを行うステップは、前記顎骨モデルと、該顎骨モデルに埋め込まれた前記インプラントモデルとの位置関係に基づいて、前記インプラントモデルのサイズの上限値及び下限値を決定するステップと、前記変形させたインプラントモデルのサイズが、該上限値及び下限値で示される範囲外のサイズであるとき、警告を発するステップとを含むことが好ましい。

    本発明は、上記インプラント設計方法において、前記患者の顎骨の構造を示す顎骨データは、該患者の顎骨のコンピューター断層撮影により得られた画像データであることが好ましい。

    本発明は、上記インプラント設計方法において、前記コンピューター断層撮影は、X線CT撮影あるいはMRI撮影であることが好ましい。

    本発明は、上記インプラント設計方法において、前記患者の顎骨の構造を示す顎骨データは、該患者の顎骨のX線CT撮影により得られた画像データであり、前記シミュレーションを行うステップは、前記顎骨モデルに前記フィクスチャーモデルを埋め込んでいない状態における、該顎骨モデルの海綿骨部分の血流量の目安となる術前血流パラメータを、該X線CT撮影により得られた画像データに含まれるCT値に基づいて導出するステップと、該顎骨モデルに該フィクスチャーモデルを埋め込んだ状態における、該顎骨モデルの海綿骨部分の血流量の目安となる術後血流パラメータを、該CT値、及び前記顎骨モデルと前記インプラントモデルとの位置関係に基づいて導出するステップとを含み、前記警告を発するステップは、前記変形� ��せたインプラントモデルのサイズが、前記上限値及び下限値が示す範囲内のサイズであっても、該術前血流パラメータ及び該術後血流パラメータから、術後の血流量が術前の血流量より低下すると判定されるとき、警告を発するステップであることが好ましい。

    本発明は、上記インプラント設計方法において、前記シミュレーションの最初に用いるインプラントデータは、構造、サイズ、及び材料が異なる既成の複数の歯科用インプラントの中から選択した特定の歯科用インプラントの外形形状を表すインプラント標準データであることが好ましい。

    本発明は、上記インプラント設計方法において、前記顎骨モデルを作成するステップは、前記患者の顎骨のコンピューター断層撮影により得られた画像データの変換処理により該患者の顎骨の構造を示す顎骨データとして3次元画像データを作成するステップと、該顎骨データとしての3次元画像データから3次元顎骨モデルを作成するステップとを含み、前記インプラントモデルを作成するステップは、前記インプラントデータとしての3次元画像データから3次元インプラントモデルを作成するステップを含み、前記手術のシミュレーションを行うステップは、該3次元顎骨モデルと該3次元インプラントモデルとを合成するステップを含むことが好ましい。

    本発明は、上記インプラント設計方法において、前記歯科用インプラントは、前記患者の顎骨に埋め込まれるインプラント本体と、該インプラント本体に固定される支柱と、該支柱に装着される人工歯とを有していることが好ましい。

    本発明は、上記インプラント設計方法において、前記インプラントデータは、前記歯科用インプラントを構成する前記インプラント本体、前記支柱、及び前記の外形形状をそれぞれ決める3次元画像データとして、インプラント本体データ、支柱データ、人工歯データを含み、前記インプラントモデルを作成するステップは、前記インプラント本体データ、支柱データ、及び人工歯データから3次元インプラントモデルを作成するステップであることが好ましい。

    本発明は、上記インプラント設計方法において、前記手術のシミュレーションを行うステップは、前記顎骨モデルにおける皮質骨部と海綿骨部との境界と、前記インプラントモデルのインプラント本体との位置関係をシミュレートするステップを含むことが好ましい。

    本発明は、上記インプラント設計方法において、前記手術のシミュレーションを行うステップは、前記顎骨モデルにおける血管及び神経と、前記インプラントモデルのインプラント本体との位置関係をシミュレートするステップを含むことが好ましい。

    本発明は、上記インプラント設計方法において、前記手術のシミュレーションを行うステップは、前記顎骨モデルに基づいて上顎と下顎の動きをシミュレートするステップと、該上顎と該下顎の動きのシミュレーション結果に基づいて、前記患者の顎骨の歯欠損部に人工歯を配置したときに該人工歯を支えるインプラント本体にかかる荷重及び該荷重のかかる方向をシミュレートするステップとを含むことが好ましい。

    本発明は、上記インプラント設計方法において、前記手術のシミュレーションを行うステップは、前記荷重のシミュレーションにより得られたインプラント本体にかかる荷重に基づいて、該インプラント本体を患者の顎骨が支えられるか否かをシミュレートするステップを含むことが好ましい。

    本発明に係るインプラント設計装置は、歯科用インプラントをコンピュータによる画像処理を用いて設計するインプラント設計装置であって、患者の顎骨の構造を示す顎骨データから顎骨モデルを作成する顎骨モデル作成部と、歯科用インプラントの外形形状を示すインプラントデータからインプラントモデルを作成するインプラントモデル作成部と、該顎骨モデルの指定された部位に該インプラントモデルを組み込んで、患者の顎骨に歯科用インプラントを埋め込む手術をシミュレーションするシミュレーション部と、該シミュレーションの結果に応じて該インプラントデータを修正して変形させたインプラントモデルから該歯科用インプラントを設計する設計部とを備えたものであり、そのことにより上記目的が達成される。

    本発明に係るインプラント設計プログラムは、歯科用インプラントを設計するインプラント設計方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、該コンピュータが、患者の顎骨の構造を示す顎骨データから顎骨モデルを作成するステップと、歯科用インプラントの外形形状を示すインプラントデータからインプラントモデルを作成するステップと、該顎骨モデルの指定された部位に該インプラントモデルに組み込んで、患者の顎骨に歯科用インプラントを埋め込む手術をシミュレーションするステップと、該シミュレーションの結果に応じて該インプラントデータを修正して変形させたインプラントモデルから該歯科用インプラントを設計するステップとを実行するものであり、そのことにより上記目的が達成される。

    本発明によれば、患者の顎骨の構造を示す顎骨データから顎骨モデルを作成し、歯科用インプラントの外形形状を示すインプラントデータからインプラントモデルを作成し、該顎骨モデルの指定された部位に該インプラントモデルを組み込むことにより、患者の顎骨に歯科用インプラントを埋め込む手術をシミュレーションし、該シミュレーションの結果に応じたインプラントデータの修正により変形させたインプラントモデルから該歯科用インプラントを設計するので、歯科用インプラントを、患者の顎骨の構造や状態に合わせて患者毎に最適な形状に設計することができるという効果がある。

    図1は、本発明の実施形態1によるインプラント設計装置を説明する図であり、図1(a)は、患者の顎骨を撮影するCTスキャン装置、及びCTスキャン装置で得られた患者の顎骨の画像データを用いるインプラント設計装置を示し、図1(b)は、インプラント設計装置の基本構成を示し、図1(c)は、インプラント設計装置の具体的な構成を示している。

    図2は、本実施形態1のインプラント設計装置の対象となる歯科用インプラントを説明する図であり、実際の患者の顎骨に歯科用インプラントを装着した状態を示している。

    図3は、本実施形態1のインプラント設計装置の対象となる歯科用インプラントとして、種々の構造のもの(図(a)〜図(d))を示している。

    図4は、本実施形態1のインプラント設計装置を用いたインプラント治療の流れを説明する図であり、図(a)は、治療全体の流れを示し、図(b)はインプラントの設計工程、図(c)はインプラントの製造工程を示している。

    図5は、本実施形態1のインプラント設計装置を構成するシミュレーション部110に供給されるデータを示す図である。

    図6は、患者の顎骨モデルの説明図であり、図6(a)は、顎骨モデルを正面から見た図、図6(b)は、顎骨モデルの拡大斜視図である。

    図7は、患者の顎骨モデルに歯科用インプラントのモデルを取り付けた状態を示す図であり、図7(a)は、顎骨モデルを正面から見た図、図7(b)は、顎骨モデルの拡大斜視図である。

    図8は、患者の顎骨モデルにドリルモデルによりフィクスチャー取り付けのための穴を開けるシミュレーションを説明する図である。

    図9は、患者の顎骨モデルにフィクスチャーモデルを埋め込んだ状態を示す図である。

    図10は、患者の顎骨モデルに人工歯モデル(補綴冠のモデル)を取り付けた状態(図(a))、この状態でフィクスチャーの形状(長さ)を変化させた状態(図(b)及び(c))を示す図である。

    図11は、患者の顎骨モデルにフィクスチャーモデルを埋め込んだ状態で、フィクスチャの長さを変化させて、フィクスチャーと神経との距離を検査するところを説明する断面図であり、フィクスチャを埋め込んでいない状態(図(a)及び図(d))、長いフィクスチャを埋め込んだ状態(図(b)及び(e))、短いフィクスチャーを埋め込んだ状態(図(c)及び図(f))を示している。

    図12は、フィクスチャーの埋込みシミュレーションの結果得られたデータを表示画面上に表示した状態を示す図であり、図12(a)は、長いフィクスチャを埋め込んだ状態、図12(b)は、短いフィクスチャを埋め込んだ状態を示している。

    図13は、患者の顎骨モデルに人工歯モデル(補綴冠のモデル)を取り付けた状態(図(a))、この状態でフィクスチャーの度を変化させた状態(図(b)及び(c))を示す図である。

    図14は、患者の顎骨モデルにフィクスチャーモデルを埋め込んだ状態で、フィクスチャーモデルの角度を変化させて、フィクスチャーと神経との距離を検査するところを説明する断面図であり、フィクスチャーを埋め込んでいない状態(図(a)及び図(d))、フィクスチャをやや傾けた状態(図(b)及び(e))、フィクスチャーをさらに傾けた態(図(c)及び図(f))を示している。

    図15は、本発明の実施形態2によるインプラント設計装置を説明する図であり、図15(a)は、患者の顎骨を撮影するMRI撮影装置、及びMRI撮影装置で得られた患者の顎骨の画像データを用いるインプラント設計装置を示し、図15(b)は、インプラント設計装置の基本構成を示し、図15(c)は、インプラント設計装置の具体的な構成を示している。

    図16は、従来のインプラント治療に用いられる歯科用インプラントの構造の一例を説明する模式図である。

    図17は、一般的なインプラント治療の手順を説明する図であり、埋込み穴50aの形成工程(図(a))、フィクスチャー11の埋め込み工程(図(b))、キャップ14の取り付け工程(図(c))、アバットメント12の装着工程(図(d))、補綴冠13の取り付け工程(図(e))を示している。

    以下、本発明の実施形態について説明する。

    (実施形態1)
    〔A. インプラント設計装置の構成の説明〕
    図1は、本発明の実施形態1によるインプラント設計装置を説明する図であり、図1(a)は、患者の顎骨を撮影するCTスキャン装置、及びCTスキャン装置で得られた患者の顎骨の画像データを用いるインプラント設計装置を示し、図1(b)は、このインプラント設計装置の基本構成を示し、図1(c)は、このインプラント設計装置の具体的な構成を示している。

    この実施形態1のインプラント設計装置100は、図1(a)に示すように、CTスキャン装置80により患者の顎骨を撮影して得られた画像データDahを用いて、歯科用インプラントを設計する装置である。 なお、ここで、CTスキャン装置80は、従来技術で説明したCT装置、つまり、人体などへのX線の照射と、X線照射により得られるデータのコンピューター解析とにより、体の構造の輪切りの状態を把握できる断面画像を得る装置と同一のものである。

    このインプラント設計装置100は、患者の顎骨に歯科用インプラントを埋め込む手術をシミュレーションして歯科用インプラントを設計するプロセッサ100aと、種々のデータを記憶する記憶装置100bと、本インプラント設計装置100をユーザが操作するためのユーザインターフェース100cと、プロセッサ100aでのデータ処理の内容を出する出力部100dとを有しており、これらはデータバスDbを介して相互に接続されている。 ここで、ユーザインターフェース100cはキーボード、マウス等の操作部114を含んでいる。 また、出力部100dは、プロセッサ100aの内部でのデータ処理の内容を表示する表示部116やプリンタ(図示せず)、あるいは音声出力部(図示せず)などを含んでいる。

    具体的には、このインプラント設計装置100の記憶装置100bは、CTスキャン装置80により患者の顎骨を撮影して得られた顎骨の構造を示す画像データDahを格納する顎骨データ格納部101と、予め用意された構造の異なる複数の歯科用インプラントの外形形状を示すインプラント標準データSDipを格納するインプラント標準データ格納部102とを有している。

    このインプラント設計装置100のプロセッサ100aは、歯科用インプラントの手術をシミュレーションして歯科用インプラントを設計するようプログラムされており、顎骨データ格納部101からの患者の顎骨の構造を示す顎骨データDahに基づいて顎骨モデルMah(図5参照)を作成する顎骨モデル作成部111と、インプラント標準データ格納部102からの歯科用インプラントの外形形状を示すインプラント標準データSDipに基づいてインプラントモデルMip(図5参照)を作成するインプラントモデル作成部112とを有している。 また、このインプラント設計装置100のプロセッサ100aは、顎骨モデルMahの指定された部位にインプラントモデルMipを組み込んで、患者の顎骨に歯科用インプラントを埋め込む手術をシミュレーションするシミュレーション部110と、該シミュレーションの結果に応じてインプラント標準データSDipが示すインプラントモデルMipを修正して変形させたインプラントモデルMMipから歯科用インプラントを設計する設計部120と、シミュレーション結果や入力情報を表示する表示部116に、顎骨モデルMahの指定された部位にインプラントモデルMipを組み込んだ状態などが表示されるよう、表示部116を制御する表示制御部115とを備えている。

    ここで、インプラントモデル作成部112は、シミュレーション部110からのシミュレーションの結果を示す指示信号Osgに応じて、インプラント標準データSDipが示すインプラントモデルMipを修正変形させてインプラントモデルMMipを生成するよう構成されている。 また、顎骨データ格納部101に格納される顎骨データDahは、X線CT撮影により得られたものとしているが、顎骨データ格納部101に格納される顎骨データは、MRI撮影により得られたものでもよく、患者の顎骨のコンピューター断層撮影により得られた画像データであることが好ましい。 例えば、顎骨データは、歯の配列方向に沿った顎骨の縦断面の画像、あるいは歯の配列方向と垂直な縦断面の画像を示す2次元画像データであり、より好ましくは、顎骨の構造を立体的に示す3次元画像データである。

    なお、顎骨データ格納部101に格納される顎骨データDahが、患者の顎骨のコンピューター断層撮影により得られた2次元画像である場合は、顎骨モデル作成部111を、この2次元画像データの変換処理により該患者の顎骨の構造を示す3次元画像データを作成する画像処理部を有し、該顎骨データとしての3次元画像データから3次元顎骨モデルを作成する構成とすることで、シミュレーション部110には、患者の顎骨の構造を示す画像データとして3次元画像データを供給することができる。

    また、インプラント標準データ格納部102には、構造、サイズ、及び材料が異なる複数の歯科用インプラントの外形形状を示すインプラント標準データSDipが格納されており、インプラントモデル作成部112には、複数の歯科用インプラントの中から担当医が選択した特定の歯科用インプラントの外形形状を示すインプラント標準データSDipが初期インプラントデータとして供給される。

    また、インプラントモデル作成部112は、この初期インプラントデータとしての3次元画像データから3次元インプラントモデルMipを作成するよう構成されている。 従って、この実施形態では、上記シミュレーション部110は、該3次元顎骨モデルMahに3次元インプラントモデルMipが組み込まれるようこれらのモデルの画像を合成する合成処理部(図示せず)を有し、3次元顎骨モデルMahに3次元インプラントモデルMipを組み込むことにより、インプラント手術のシミュレーションを行うものとしている。

    図2及び図3は、この実施形態1のインプラント設計装置で設計される歯科用インプラントの例を説明する図であり、図2は、患者の顎骨に所定の歯科用インプラントを装着した状態を示している。 図3は、歯科用インプラントの構造の他の例(図3(a)〜図3(d))を示している。

    歯科用インプラント20は、患者の顎骨30に埋め込まれるインプラント本体(以下、フィクスチャーともいう。)21と、フィクスチャー21にネジ止めなどにより固定される支柱(以下、アバットメントともいう。)22と、アバットメント22に接着剤などにより固着される上部構造(以下、補綴冠ともいう。)23とを有している。

    ここで、患者の顎骨30は、内側の海綿骨31が外側の皮質骨32により覆われ、さらに皮質骨32が歯肉33により覆われた構造となっている。 なお、海綿骨31の内側には、神経Spや血管Bvが配置されている。 また、図中、Bpは海綿骨31と皮質骨32との界面である。

    また、歯科用インプラントには図3(a)〜図3(d)に示すように種々の構造のものがある。

    例えば、図3(a)は、インプラントのフィクスチャーの例として、前歯などの顎骨の幅が狭い部分に埋め込むフィクスチャーIPaを示している。 また、図3(b)は、スレッド(ネジ山)Srを上端部と下端部以外の部分に形成したフィクスチャーIPbを示している。 さらに、図3(c)は、略円柱状のフィクスチャーIPcを示し、図3(d)は、フィクスチャー部とアバットメント部とを一体に形成したインプラント体IPdを示している。

    この実施形態1では、図2に示すように、アバットメント22が細く、アバットメントと歯肉との間から細菌が入りにくいタイプの歯科用インプラント20を、患者に合わせてカスタマイズして設計する場合について説明する。

    この場合、インプラント標準データ格納部102からインプラントモデル作成部112に初期インプラントデータとして供給されるインプラント標準データSDipは、歯科用インプラント20を構成するインプラント本体(フィクスチャー)21、支柱(アバットメント)22、及び上部構造(補綴冠)23の外形形状をそれぞれ表す3次元画像データとして、インプラント本体データ、支柱データ、上部構造データを含む。 また、前記インプラントモデル作成部112は、前記インプラント本体データ、支柱データ、及び上部構造データから、フィクスチャーモデル21a、アバットメントモデル22a、及び上部構造モデル(補綴冠モデル)23aを含む3次元インプラントモデルMipを作成する。

    また、この実施形態1では、シミュレーション部110は、図9に示すように、顎骨モデル30aにおける皮質骨部32aと海綿骨部31aとの境界Bpと、インプラントモデルのインプラント本体(フィクスチャーモデル)21aとの位置関係をシミュレート結果として出力するとともに、顎骨モデルMahにおける血管Bvあるいは神経Spと、インプラントモデルMipのインプラント本体(フィクスチャーモデル)21aとの位置関係をシミュレート結果(指示信号Osg)として出力する。

    また、この実施形態1では、シミュレーション部110は、顎骨モデルMah(図5参照)に基づいて、患者の顎骨の歯牙欠損部での補綴冠(インプラント上部構造)の理想的な位置を決定する位置シミュレーションと、顎骨モデルMahに基づいて上顎と下顎の動きをシミュレートする動きシミュレーションと、該上顎と下顎の動きシミュレーション結果に基づいて、患者の顎骨の歯牙欠損部に補綴冠を配置したときに該補綴冠を支えるインプラント本体(フィクスチャー)にかかる荷重の大きさ及び該荷重のかかる方向をシミュレートする荷重シミュレーションと、前記荷重シミュレートにより得られたインプラント本体にかかる荷重に基づいて、該インプラント本体を患者の顎骨が支えられるか否かをシミュレートする耐荷重シミュレ� ��ションとを行うものである。 ここで、上記位置シミュレーションでは、補綴冠の理想的な位置として、上記歯牙欠損部での歯の配列方向における位置と、歯牙欠損部での歯の配列方向と直交する水平方向における位置と、歯牙欠損部での歯の高さ方向における位置とが決定される。

    さらには、この実施形態1のシミュレーション部110は、以下のとおり、シミュレーションによるインプラントの設計をアシストする機能(設計支援機能)を有している。

    つまり、シミュレーション部110は、前記顎骨モデルと、該顎骨モデルに埋め込まれた前記インプラントモデルとの位置関係に基づいて、前記インプラントモデルのサイズの上限値及び下限値を決定する処理と、前記変形させたインプラントモデルのサイズが、該上限値及び下限値で示される範囲外のサイズであるとき、警告を発する処理とを行う。

    具体的には、ユーザ(例えば担当医)が、インプラント設計装置(コンピュータ)100の表示部116に表示された患者の顎骨モデルMahの歯牙欠損部A(図6(a)及び(b)参照)の大きさに応じて、インプラント標準データ格納部102に格納されているインプラント標準データSDipを選択すると、選択されたインプラント標準データSDipが示す上部構造モデル(補綴冠モデル)23aが顎骨モデルMahの歯牙欠損部Aに配置される(図7(a)及び(b)参照)。 その後、ユーザ操作により、顎骨モデルMahの歯牙欠損部Aでの隣接する歯の離間間隔、及びそれらの歯の大きさに合わせて、補綴冠モデル23aの最適位置及び最適サイズが決定される。 このとき、ユーザは、シミュレーション部110からの警告がでない範囲で、補綴冠モデル23aの理想的な位置及びサイズを決定する。

    その後、ユーザは、表示部116に表示された患者の顎骨モデルMahにおいて、このモデルMahに対して決定された補綴冠モデル23aの理想的な位置に基づいて、フィクスチャーモデル21aの挿入位置、及びアバットメントモデル22aの方向(水平面内及び垂直面内での角度)を決定する。

    さらに、ユーザは、このフィクスチャーモデル21aの挿入位置、及びアバットメントモデル22aの方向に基づいて、顎骨モデル30a内での皮質骨部32aと海綿骨部31aとの境界位置に応じて、フィクスチャーの太さとして可能な最大の設計値が決定され、フィクスチャーに係る荷重に基づいて、フィクスチャーの太さとして可能な最小の設計値が決定される。

    また、顎骨モデル30aでの神経Spあるいは血管Bv(図9参照)の位置とフィクスチャーモデル21aとの位置関係に基づいて、フィクスチャーの長さとして可能な最大の設計値が決定され、海綿骨の骨密度の指標となるCT値に基づいて海綿骨部分でのフィクスチャーの必要な長さが決定される。 つまり、フィクスチャーと海綿骨とは、フィクスチャーの埋め込み後に癒着し、これにより、フィクスチャーが顎骨と強固に結合することとなるが、海綿骨の骨密度によって海綿骨部での支持強度が異なることとなり、海綿骨の骨密度によって、フィクスチャーの長さとして最低限必要な長さが決まる。

    また、シミュレーション部110は、前記顎骨モデルに前記フィクスチャーモデルを埋め込んでいない状態における、該顎骨モデルの海綿骨部分の血流量の目安となる術前血流パラメータを、該X線CT撮影により得られた画像データに含まれるCT値に基づいて導出する処理と、該顎骨モデルに該フィクスチャーモデルを埋め込んだ状態における、該顎骨モデルの海綿骨部分の血流量の目安となる術後血流パラメータを、該CT値、及び前記顎骨モデルと前記インプラントモデルとの位置関係に基づいて導出する処理とを行うものであってもよい。 この場合、前記警告を発する処理は、前記変形させたインプラントモデルのサイズが、前記上限値及び下限値が示す範囲内のサイズであっても、該術前血流パラメータ及び該術後血流パラメータから、術後の血流量が術前の血流量より低下すると判定されるとき、警告を発するよう構成することが好ましい。

    ここで、術前血流パラメータ、つまり、フィクスチャーを埋め込まない状態での海綿骨部分での血流量の目安となる術前血流パラメータは、顎骨内で海綿骨の占める領域の歯の配列方向と垂直な断面での面積(海綿骨領域の断面積)と、CT値と、血管の分布とに基づいて計算されたものである。 ただし、海綿骨領域の断面積は、該海綿骨領域の上端から、フィクスチャーが到達する深さまでの範囲で求められるものとする。

    また、術後血流パラメータ、フィクスチャーを埋め込んだ状態での海綿骨部分での血流の目安となる術後血流パラメータは、顎骨内で海綿骨の占める領域の歯の配列方向と垂直な断面での面積(海綿骨領域の断面積)と、CT値と、血管の分布とに基づいて計算されたものである。 ただし、海綿骨領域の断面積は、該海綿骨領域の上端から、フィクスチャーの埋め込み深さまでの範囲で求められるものとする。

    ここで、CT値は、X線CT撮影された組織内での水分の含有量の目安となるものであり、骨部分のX線CT撮影で得られたCT値は、骨密度を示す目安となり、同時に血流量の指標となる血流パラメータとして用いることができるものである。

    さらにシミュレーション部の設計支援機能は、表示制御部115に、該表示部116に以下のように、設計の目安となる上限値及び下限値、さらに、警報が表示されるように指令する機能を含んでいる。

    具体的には、図12は、シミュレーション結果が表示部に表示された状態を示している。

    図12(a)及び(b)中、Fはシミュレーション結果を表示する画面であり、Dg及びDnは、該画面Fのグラフ表示部、及び数値表示領域である。

    この数値表示部Dnには、第1〜第6の数値表示領域Dn1〜Dn6が含まれている。

    例えば、第1の数値表示領域Dn1には、顎骨30内での皮質骨と海綿骨との境界位置Bp(図2参照)に基づいて、フィクスチャーの太さとして可能な最大の設計値が表示され、第2の数値表示領域Dn2には、フィクスチャーに係る荷重に基づいて、フィクスチャーの太さとして可能な最小の設計値が表示される。

    また、第3の数値表示領域Dn3には、顎骨30内での神経Spあるいは血管Bv(図2、図9参照)の位置に基づいて、フィクスチャーの長さとして可能な最大の設計値が表示され、第4の数値表示領域Dn4には、海綿骨の骨密度の指標となるCT値に基づいて海綿骨部分でのフィクスチャーの必要な長さが表示される。

    また、第5及び第6の数値表示領域Dn5及びDn6には、顎骨内での血流量の多さの目安となる血流パラメータが表示される。 つまり、第5の数値表示領域Dn5には、フィクスチャーを埋め込まない状態での海綿骨部分での血流量の目安となる術前血流パラメータが表示される。 また、第6の数値表示領域Dn6には、フィクスチャーを埋め込んだ状態での海綿骨部分での血流の目安となる術後血流パラメータが表示される。
    〔B. インプラント設計装置の動作の説明〕
    次に、インプラント治療の流れとともに、本実施形態1のインプラント設計装置の動作について説明する。

    図4は、本実施形態1のインプラント設計装置を用いたインプラント治療の流れを説明する図であり、図4(a)は、インプラント治療全体の流れを示し、図4(b)は、歯科用インプラントの設計工程を示し、図4(c)は、歯科用インプラントの製造工程を示している。

    まず、インプラント治療を行う際には、前もって、歯の状態を診断する(手順P1)。

    歯周病(歯槽膿漏)は歯槽骨(歯肉の内部にある骨・歯根を支える部分)が破壊される病気であり、歯周病の治療をしないままインプラント治療を行うと、歯科用インプラントを埋め込んだ周囲組織に細菌感染がおこる可能性があり、歯科用インプラントの周辺組織が歯周病にかかると、天然の歯が抜けるのと同様に、歯科用インプラントも脱落することとなる。

    さらに、インプラント治療を行う際には、患者の噛み合わせをチェックする必要がある。

    現在、歯科用インプラントのトラブルは、感染よりも、よくない噛み合わせによって異常な力がかかることで起こる場合が多いためである。

    特に、パラファンクションと言われる、歯ぎしりや食いしばりによって、インプラントに問題を起こす場合があり、インプラント治療を行う前に噛み合わせのチェックを行うことが非常に重要である。

    次に、診断に基づいた治療計画の説明を患者に行う(手順P2)。

    例えば、他の歯に虫歯があったり歯周病にかかっている場合、すぐにはインプラント治療はできないため、インプラント治療の前に周囲の歯の虫歯治療や歯周病(歯槽膿漏)の治療を行う必要があり、また、骨量が不足している患者には骨の再生治療を行う必要があることを説明する。

    続いて、本実施形態1のインプラント設計装置100を用いて歯科用インプラント20の設計を行う(手順P3)。 なお、インプラントの設計プロセス(手順P3)は、フィクスチャーの設計プロセス(手順P3a)、アバットメントの設計プロセス(手順P3b)、上部構造の設計プロセス(手順P3c)を含んでいる。 また、設計した歯科用インプラントに合わせて、インプラント手術に用いる手術治具の設計も行う(手順P5)。

    例えば、インプラント手術に用いる手術治具としては、図8に示すように、顎骨にインプラント装着孔を形成するためのドリルDTの刃先、及び手術時にドリルの刃先をガイドするサージカルガイドSGなどが挙げられる。

    続いて、設計した歯科用インプラント20の製造(手順P4)、及び手術治具の製造(手順P6)を行う。 このインプラントの製造プロセス(手順P4)は、フィクスチャーの製造プロセス(手順P4a)、アバットメントの製造プロセス(手順P4b)、上部構造の製造プロセス(手順P4c)を含んでいる。

    その後、製造された歯科用インプラント20を、これに合わせて製造した手術治具を用いて患者の顎骨に埋め込むインプラント手術を行う。

    以下、本実施形態1のインプラント設計装置を用いてインプラントを設計する方法について説明する。

    本実施形態1のインプラント設計装置100では、予め患者の顎骨をX線CTスキャンにより撮影して得られた、患者の顎骨の構造を示す顎骨データDahが顎骨データ格納部101に格納されている。 また、このインプラント設計装置100のインプラント標準データ格納部102には、構造、サイズ、材料などの異なる種々の歯科用インプラントの外形形状を示すインプラント標準データSDipが格納されている。

    担当医(ユーザ)が、操作部114から、患者の希望する歯科用インプラントの種類を入力すると、インプラント設計装置100のインプラント標準データ格納部102に格納されている種々のインプラント標準データから、患者の希望する材質、色(人工歯の色)などに応じた歯科用インプラントのインプラント標準データSDipが選択される。 このとき、インプラント標準データSDipに基づいて、色や材質は同じであるが、直径、長さなどのサイズの異なる規格品の歯科用インプラントが表示部116に複数表示される。

    次に、担当医は、操作部114の操作により、予め、検査結果など、例えば患者の顎骨の構造から適切と予測される歯科用インプラントを、表示されているサイズの異なる複数の規格品の歯科用インプラントのうちから選択すると、インプラント標準データ格納部102から、1つの規格品の歯科用インプラントの外形形状を示すインプラント標準データSDipが初期インプラントデータとしてインプラントモデル作成部112に供給される。 なお、このインプラント標準データSDipは、フィクスチャーの形状データ、アバットメントの形状データ、及び補綴冠の形状データを含んでいる。

    インプラントモデル作成部112は、インプラント標準データSDipに基づいて、図5に示す、フィクスチャーのモデル21a、アバットメントのモデル22a、及び補綴冠のモデル23aを含むインプラントモデルMipを作成する。

    また、このとき、顎骨モデル作成部111は、顎骨データ格納部101から顎骨データDahを受けて、図5に示す顎骨モデルMahを生成する。 ここでは、これらのモデルとして、それぞれ3次元モデルを用いるが、必ずしも3次元モデルに限らず、歯の配列方向に沿った縦断面の構造を示すモデルと、歯の配列方向と垂直な縦断面の構造を示すモデルとを用いてもよい。

    これらのモデルは、シミュレーション部110にて合成されて、患者の顎骨に歯科用インプラントを埋め込む手術のシミュレーションが行われる。

    具体的には、シミュレーション部110では、図6(a)及び(b)に示すように、顎骨データDahを受けて顎骨モデルMahが生成される。

    このとき、選択されたインプラント標準データSDipが示す上部構造モデル(補綴冠モデル)23aが顎骨モデルMahの歯牙欠損部Aに配置される(図7(a)及び(b)参照)。 その後、ユーザ操作により、顎骨モデルMahの歯牙欠損部Aでの隣接する歯の離間間隔、及びそれらの歯の大きさに合わせて、補綴冠モデル23aの最適位置及び最適サイズが決定される。 このとき、ユーザ操作により、補綴冠モデル23aの位置及びサイズが、表示部116の画面上で顎骨モデルMahと補綴冠モデル23aとが重ね合わせられた状態で変更される。 ユーザは、シミュレーション部110からの警告がでない範囲で、補綴冠モデル23aの理想的な位置及びサイズを決定する。

    その後、ユーザの操作により、この顎骨モデルMahに対して決定された補綴冠モデル23aの理想的な位置に基づいて、フィクスチャーモデル21aの挿入位置、及びアバットメントモデル22aの方向(水平面内及び垂直面内での角度)などが決定される。

    例えば、顎の支点Pと歯牙欠損箇所Aとの距離によって、図7(a)及び(b)に示すように、選択した歯科用インプラントのインプラントモデルの補綴冠モデル23aを該欠損箇所Aに配置したときにこの補綴冠モデル23aにかかる荷重の大きさと方向がシミュレーションされる。

    この荷重シュミレーションの結果に基づいて、補綴冠モデル23aの理想的な位置及びサイズに応じてフィクスチャー21からアバットメント22を立ち上げる方向を決定し、アバットメント22を固定するフィクスチャー21の角度を決定する。

    具体的には、図10(a)に示すように、患者の顎骨モデルMahの歯の欠損箇所Aに補綴冠モデル23aを埋め込んだ状態で、さらに、フィクスチャーモデル21aを、アバットメントを立ち上げる方向に沿って顎骨モデルMahに組み込む(図10(b))。 この状態では、図11(b)及び(e)に示すように神経Spとフィクスチャモデル21aとが接近しているため、図11(c)及び(f)に示すように、ユーザ操作による操作部114の操作により、入力制御部113を介してインプラントモデル作成部112に指令信号を送り、インプラントモデル作成部112に、フィクスチャーモデル21aの長さが短くなるよう、初期インプラントデータとしてのインプラント標準データSDipを変更させる。 これにより、患者の顎骨に最適なフィクスチャーモデル21aの長さを決定する。

    なお、図11(a)及び(d)は、顎骨モデルにフィクスチャモデルを埋め込んでいない状態(図10(a)に対応)を示している。 また、図11(a)〜(c)は、顎骨の構造モデルとして、歯の配列方向と垂直な縦断面の構造を示し、図11(d)〜(f)は、顎骨の構造モデルとして、歯の配列方向に沿った縦断面の構造を示している。

    また、上記荷重シミュレーションの結果に基づいて、フィクスチャーモデル21aの太さを決定し、決定した太さのフィクスチャーモデル21aを、顎骨モデルMahに埋め込んだときの応力分布を求める。 この応力分布は、上下の歯のかみ合わせにより最大の荷重がフィクスチャーにかかった場合に生ずる分布である。

    図12(a)には、顎骨モデルMahに埋め込んだフィクスチャモデル21aの直径が細い場合に、顎骨モデルMahのフィクスチャーモデル21aの周辺で生ずる応力分布をグラフG1で示している。 図12(b)は、顎骨モデルMahに埋め込んだフィクスチャモデル21aの直径が太い場合に、顎骨モデルMahのフィクスチャモデル21aの周辺で生ずる応力分布をグラフG2で示している。

    このシミュレーション結果に基づいて、上記と同様、ユーザ操作により、初期インプラントデータとしてのインプラント標準データSDipを変更して、患者の顎骨に最適なフィクスチャーモデル21aの太さを決定する。

    また、図13及び図14には、フィクスチャモデル21aの埋め込み角度を顎骨モデル内での神経Spの配置によって変化させる様子を示している。

    例えば、図13(a)に示すように、患者の顎骨モデルMahに補綴冠モデル23aを埋め込んだ状態で、さらに、フィクスチャーモデル21aを、アバットメントを立ち上げる方向に沿って顎骨モデルMahに組み込む(図13(b))。 この状態では、図14(b)及び(e)に示すように神経Spとフィクスチャモデル21aとが接近しているため、図14(c)及び(f)に示すように、ユーザ操作によりフィクスチャモデル21aをその姿勢がより斜めに傾くよう変形させる。

    なお、図14(a)及び(d)は、フィクスチャモデルを埋め込んでいない状態を示している。

    また、フィクスチャー21の外周面には、図2に示すように、スレッド(ネジ山)が、その上部211と下部222とでピッチを変えて形成されており、図2に示すものでは、上部では下部に比べてスレッドのピッチをより狭くしており、またネジの深さは上部と下部とで同じにしている。

    従って、荷重シミュレーションの結果と、皮質骨32及び海綿骨31の厚みとに応じて、フィクスチャモデルの上部スレッド及び下部スレッドのピッチや深さにより、内部での応力や荷重に対する強度を適正に設定することもできる。

    さらに、上記シミュレーション部110は、ユーザによるインプラント設計を支援する機能(設計支援機能)を搭載しており、この設計支援機能について図12を用いて説明する。

    表示部116の表示画面Fの数値表示部Dnには、第1〜第6の数値表示領域Dn1〜Dn6が含まれており、それぞれ以下の数値が表示される。

    例えば、第1の数値表示領域Dn1には、顎骨30内での皮質骨と海綿骨との境界位置Bp(図2参照)に基づいて、フィクスチャーの太さとして可能な最大の設計値が表示され、第2の数値表示領域Dn2には、フィクスチャーにかかる荷重に基づいて、フィクスチャーの太さとして可能な最小の設計値が表示される。

    また、第3の数値表示領域Dn3には、顎骨30内での神経Spや血管Bvなど(図2、図9参照)の位置に基づいて、フィクスチャーの長さとして可能な最大の設計値が表示され、第4の数値表示領域Dn4には、海綿骨の骨密度の指標となるCT値に基づいて海綿骨部分でのフィクスチャーの必要な長さが表示される。

    また、第5及び第6の数値表示領域Dn5及びDn6には、顎骨内での血流量の多さの目安となる血流パラメータが表示される。 第5の数値表示領域Dn5には、フィクスチャーを埋め込まない状態での海綿骨部分での血流量の目安となる術前血流パラメータが表示され、第6の数値表示領域Dn6には、フィクスチャーを埋め込んだ状態での海綿骨部分での血流の目安となる術後血流パラメータが表示される。

    そして、インプラント設計装置のプロセッサ100aは、ユーザ操作により、上記フィクスチャーの長さと太さとが上記最大値と最小値との間の範囲外に設定されたとき、あるいは上記フィクスチャーの長さと太さとが上記最大値と最小値との間に設定された場合でも、シミュレーション部110が、術後血流パラメータが術前血流パラメータより小さいと判定したときには、表示画面上での警告表示、あるいは音声による警報を発するための警報信号を出力する。

    そして設計部120は、上記のようにしてインプラントのシミュレーションにより求められた患者の最適なインプラントモデルに基づいて歯科用インプラントの設計を行う。

    この場合、歯科用インプラントは、インプラント本体、アバットメント、上部構造として設計されることとなる。

    また、上記設計部120は、上記のようにしてインプラントのシミュレーションにより求められた患者の最適なインプラントモデルから、インプラント手術で用いる手術治具の設計を行う。

    このように本実施形態では、歯科用インプラントをコンピュータによる画像処理を用いて設計するインプラント設計装置100において、患者の顎骨の構造を示す顎骨データから顎骨モデルを作成する顎骨モデル作成部111と、歯科用インプラントの外形形状を示すインプラントデータからインプラントモデルを作成するインプラントモデル作成部112と、該顎骨モデルの指定された部位に該インプラントモデルに組み込んで、患者の顎骨に歯科用インプラントを埋め込む手術をシミュレーションするシミュレーション部110と、該シミュレーションの結果に応じて該インプラントデータを修正して変形させたインプラントモデルから該歯科用インプラントを設計する設計部120とを備えたので、歯科用インプラントを、患者の顎骨� ��構造や状態に合わせて患者毎に最適な形状に設計することができる。

    また、上記シミュレーション部110は、ユーザによるインプラント設計を支援する機能(設計支援機能)を搭載しているので、ユーザ操作により、上記フィクスチャーの長さと太さとが上記最大値と最小値との間の範囲外に設定されたとき、あるいは上記フィクスチャーの長さと太さとが上記最大値と最小値との間に設定された場合でも、シュミレーション部110が、術後血流パラメータが術前血流パラメータより小さいと判定したときには、表示画面上での警告表示、あるいは音声による警報が発せられることとなり、より信頼性の高いインプラントの設計を少ない労力で行うことができる。

    また、本実施形態1では、インプラントの設計と同時に、設計されたインプラントの形状データに基づいて、手術治具を設計するので、インプラント手術の準備を短期間に行うことができる。

    なお、上記実施形態1では、顎骨データ格納部101に格納される顎骨データDahは、X線CT撮影により得られたものとし、骨部分のX線CT撮影で得られたCT値を血流量の指標となる血流パラメータとして用いているが、顎骨データ格納部101に格納される顎骨データをMRI撮影により得られたものとし、このMRI撮影で得られる灌流強調画像を用いて血流量を診断するようにしてもよい。

    以下、本発明の実施形態2として、MRI撮影で得られた画像データである灌流強調画像を用いて血流量を診断するインプラント設計装置について説明する。
    (実施形態2)
    図15は、本発明の実施形態2によるインプラント設計装置を説明する図であり、図15(a)は、患者の顎骨を撮影するMRI撮影装置、及びMRI撮影装置で得られた患者の顎骨の画像データを用いるインプラント設計装置を示し、図15(b)は、インプラント設計装置の基本構成を示し、図15(c)は、インプラント設計装置の具体的な構成を示している。

    この実施形態2のインプラント設計装置200は、患者の顎骨の構造を示すデータとして、患者の顎骨をMRI撮影装置90により撮影して得られた画像データDahmを用い、患者の顎骨に歯科用インプラントを埋め込む手術のシミュレーションでは、このMRI撮影による画像データDahmから得られる灌流強調画像を用いて血流量を診断する点で、上記実施形態1のインプラント設計装置とは異なっている。

    つまり、この実施形態2のインプラント設計装置200は、実施形態1のインプラント設計装置100における、X線CT撮影で得られた画像データDahを受けるシミュレーション部110及び顎骨モデル作成部111に代えて、MRI撮影により得られた画像データDahmを受けるシミュレーション部210及び顎骨モデル作成部211を備えたものであり、その他の構成は、実施形態1のインプラント設計装置200と同一である。 また、この実施形態2のシミュレーション部210では、上記実施形態1における術後血流パラメータ及び術前血流パラメータに代えて、灌流強調画像の情報から得られる術後血流量及び術前血流量を用いている。

    以下、MRI(核磁気共鳴画像法:magnetic resonance imaging)について簡単に説明する。 また、シミュレーション部210及び顎骨モデル作成部211は、実施形態1のシミュレーション部110及び顎骨モデル作成部111の構成に加えて、灌流強調画像に基づいたインプラントモデルのシミュレーションを可能とする構成を有するものである。

    ところで、MRIは、核磁気共鳴(NMR:nuclear magnetic resonance)現象を利用して生体内の内部の情報を画像にする方法である。 この方法では、断層画像としてはX線CT撮影と一見よく似た画像が得られるが、X線CT撮影とは全く異なる物質の物理的性質に着目した撮影法であるため、X線CT撮影で得られない情報が多く得られ、MRIの原理は以下のとおりである。

    そもそも、電子とともに原子を構成する原子核のうちの、原子番号と質量数がともに偶数でない原子核は、その原子核スピンにより磁石の性質を持つが、それぞれの原子核スピンの磁化方向はばらばらであり全体としては磁化を発生しない。 この状態で、外部から(強い)静磁場を作用させると、原子核スピンの持つ磁化の方向は磁場をかけた向きにわずかに揃う。 これにより、全体として磁場をかけた向きに磁化が行われる。

    また、この原子核磁化の方向は、特定周波数の高周波パルス電圧の印加により、静磁場方向を軸として歳差運動(コマの首振り運動と同様な運動)を行うこととなるが、そのパルス電圧の印加を停止すれば徐々に元の状態に戻る。

    ここで、このパルス電圧の印加をやめて定常状態に戻るまでの過程(緩和現象)で、人体のそれぞれの組織によって戻る速さが異なる。 核磁気共鳴画像法では、各組織における戻り方の違いを信号処理により画像化して人体の3次元画像を作成する。

    なお、原子核スピンにより磁石の性質を持つ原子核であれば、その挙動を全て画像データに反映することが可能であるが、人体に含まれる原子のうちで原子核が磁石の性質を持つものは、水素の除いてはその含有量が極微量であるため、医療用MRIでは、水素原子の原子核の挙動から画像データを取得している。

    従って、海綿骨などの組織内で水の偏在している箇所は血管があることから、MRI撮影により得られた画像データから血流量を示す情報を抽出することができ、この実施形態2では、特に血流量を診断する画像として灌流強調画像を用いている。

    次に動作について説明する。

    具体的には、本実施形態2のインプラント設計装置を用いてインプラントを設計する方法について説明する。

    本実施形態2のインプラント設計装置200では、予め患者の顎骨をMRI撮影装置90により撮影して得られた、患者の顎骨の構造を示す顎骨データDahmが顎骨データ格納部101に格納されている。 また、このインプラント設計装置200のインプラント標準データ格納部102には、実施形態1と同様に、構造、サイズ、材料などの異なる種々の歯科用インプラントの外形形状を示すインプラント標準データSDipが格納されている。

    担当医(ユーザ)が、操作部114から、患者の希望する歯科用インプラントの種類を入力すると、インプラント設計装置200のインプラント標準データ格納部102に格納されている種々のインプラント標準データから、患者の希望に応じた歯科用インプラントのインプラント標準データSDipが選択される。 このとき、インプラント標準データSDipに基づいて、色や材質は同じであるが、直径、長さなどのサイズの異なる規格品の歯科用インプラントが表示部116に複数表示される。

    次に、担当医が、操作部114の操作により、検査結果など(例えば患者の顎骨の構造)から適切と予測される歯科用インプラントを、表示されているサイズの異なる複数の規格品の歯科用インプラントのうちから選択すると、インプラント標準データ格納部102から、1つの規格品の歯科用インプラントの外形形状を示すインプラント標準データSDipが初期インプラントデータとしてインプラントモデル作成部112に供給される。 なお、このインプラント標準データSDipは、フィクスチャーの形状データ、アバットメントの形状データ、及び補綴冠の形状データを含んでいる。

    インプラントモデル作成部112は、インプラント標準データSDipに基づいて、フィクスチャーのモデル21a、アバットメントのモデル22a、及び補綴冠のモデル23aを含むインプラントモデルMip(図5参照)を作成する。

    また、このとき、顎骨モデル作成部211は、顎骨データ格納部101から顎骨データDahmを受けて顎骨モデルMahを生成する。 ここでは、これらのモデルとして、それぞれ3次元モデルを用いるが、必ずしも3次元モデルに限らない。

    これらのモデルは、シミュレーション部210にて合成されて、患者の顎骨に歯科用インプラントを埋め込む手術のシミュレーションが実施形態1と同様に行われる。

    ただし、この実施形態2では、顎骨データDahmはMRI撮影により得られたものであるため、表示部116の画面上には、顎骨モデルの歯牙欠損部Aの周辺での血流量を例えば赤色などの濃淡により示す灌流強調画像が表示されている。

    従って、この実施形態2のインプラント設計装置200では、患者の最適なインプラントモデルを求めるシミュレーションを行う際、担当医は、フィクスチャーモデルの形状及び位置を灌流強調画像に基づいて決定することができる。

    なお、この実施形態2においても、実施形態1と同様に、顎骨モデルMahの歯牙欠損部Aでの隣接する歯の離間間隔、及びそれらの歯の大きさに合わせて、補綴冠モデル23aの最適位置及び最適サイズを決定する処理、補綴冠モデル23aの理想的な位置に基づいて、フィクスチャーモデル21aの挿入位置、及びアバットメントモデル22aの方向などを決定する処理、さらに、フィクスチャーモデル21aの太さをを決定する処理が行われる。

    この実施形態2では、特に顎骨モデルの歯牙欠損部Aの周辺での血流量をインプラントの設計を行う上で重要な要素としているが、それは、血流量により幹細胞がインプラントの周辺に運ばれてくる量が決まり、幹細胞が多ければ多いほど骨の成長が促進され、インプラントと海綿骨及び皮質骨との癒着(オッセオ・インテグレーション)が良好に行われるからである。

    このように本実施形態2では、歯科用インプラントをコンピュータによる画像処理を用いて設計するインプラント設計装置200において、患者の顎骨の構造を示す、MRI撮影により得られた顎骨データから顎骨モデルを作成する顎骨モデル作成部211と、歯科用インプラントの外形形状を示すインプラントデータからインプラントモデルを作成するインプラントモデル作成部112と、該顎骨モデルの指定された部位に該インプラントモデルに組み込んで、患者の顎骨に歯科用インプラントを埋め込む手術をシミュレーションするシミュレーション部210と、該シミュレーションの結果に応じて該インプラントデータを修正して変形させたインプラントモデルから該歯科用インプラントを設計する設計部120とを備えたので、歯科� ��インプラントを、患者の顎骨の構造や状態に合わせて患者毎に最適な形状に設計することができる。

    また、上記シミュレーション部210は、ユーザによるインプラント設計を支援する機能(設計支援機能)を搭載しているので、ユーザ操作により、上記フィクスチャーの長さと太さとが上記最大値と最小値との間の範囲外に設定されたとき、あるいは上記フィクスチャーの長さと太さとが上記最大値と最小値との間に設定された場合でも、シュミレーション部210が、術後血流量が術前血流量より小さいと判定したときには、表示画面上での警告表示、あるいは音声による警報が発せられることとなり、より信頼性の高いインプラントの設計を少ない労力で行うことができる。

    また、本実施形態2では、インプラントの設計と同時に、設計されたインプラントの形状データに基づいて、手術治具を設計するので、インプラント手術の準備を短期間に行うことができる。

    さらに、本実施形態2では、患者の顎骨の構造を示すデータとして、患者の顎骨をMRI撮影により得られた画像データDahmを用い、患者の顎骨に歯科用インプラントを埋め込む手術のシミュレーションでは、このMRI撮影による画像データDahmから得られる灌流強調画像に基づいて血流量を診断するので、顎骨のインプラント周辺での血流量を確保して、インプラント周辺での骨の成長を促進し、良好なオッセオ・インテグレーションを早期に実現することが可能となる効果がある。

    なお、本実施形態1あるいは2のインプラント設計装置100あるいは200は、プロセッサ、記憶装置、ユーザインターフェース(入力操作部)、出力部を有する通常のパーソナルコンピュータにより実現可能なものであり、パーソナルコンピュータに以下のインプラント設計用プログラムをインストールすることで、パーソナルコンピュータ上に上記インプラント設計装置100あるいは200を実現することができる。

    このようなインプラント設計用プログラムは、基本的には、コンピュータが、患者の顎骨の構造を示す顎骨データから顎骨モデルを作成するステップと、歯科用インプラントの外形形状を示すインプラントデータからインプラントモデルを作成するステップと、該顎骨モデルの指定された部位に該インプラントモデルに組み込むことにより、患者の顎骨に歯科用インプラントを埋め込む手術をシミュレーションするステップと、該シミュレーションの結果に応じて該インプラントデータを修正して変形させたインプラントモデルから該歯科用インプラントを設計するステップとを実行する、プログラムである。

    また、このようなプログラムは、コンピュータ読取可能な記録媒体に格納しておき、必要に応じてコンピュータに読み込むことで、上記インプラント設計装置を構築することができる。 ここで、コンピュータ読取可能な記録媒体は、光ディスク、ハードディスクなどである。 また、上記プログラムは、記録媒体に格納したものに限らず、インターネット上の所定のサーバーに格納したものであってもよく、この場合、プログラムはインターネット上の所定のサーバーから通信回線を介してダウンロードすることができる。

    なお、上記実施形態1及び2では、シミュレーション部110及び210は、シミュレーションによるインプラントの設計をアシストする機能(設計支援機能)を有しているものを示したが、シミュレーション部110及び210は、上記シミュレーションによるインプラントの設計をアシストする機能を有していないものでもよい。

    本発明は、患者の顎骨のコンピューター断層撮影により得られた3次元画像を用いて、顎骨に埋め込む歯科用インプラントを設計する方法及び装置の分野において、歯科用インプラントを、患者の顎骨の構造や状態に合わせて患者毎に最適な形状に設計することができる方法及び装置を提供することができるものである。

    20 歯科用インプラント 21 インプラント本体(フィクスチャー)
    21a フィクスチャーモデル 22 支柱(アバットメント)
    22a アバットメントモデル 23 上部構造(人工歯あるいは補綴冠)
    23a 補綴冠モデル 30 患者の顎骨 31 海綿骨 32 皮質骨 33 歯肉 80 CTスキャン装置 90 MRI撮影装置 100、200 インプラント設計装置 100a プロセッサ 100b 記憶装置 100c ユーザインターフェース 100d 出力部 101 顎骨データ格納部 102 インプラント標準データ格納部 110、210 シミュレーション部 111 顎骨モデル作成部 112 インプラントモデル作成部 113 入力制御部 114 操作部 115 表示制御部 116 表示部 120 設計部 Dah 顎骨データ Db データバス Mah 顎骨モデル Mip インプラントモデル MDip インプラント変形データ SDip インプラント標準データ

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