ナノ粒子を含む表面を有する医療機器

申请号 JP2015510728 申请日 2013-04-29 公开(公告)号 JP2015518738A 公开(公告)日 2015-07-06
申请人 デントスプリー・アイエイチ・エービーDentsply Ih Ab; デントスプリー・アイエイチ・エービーDentsply Ih Ab; 发明人 アルビドッソン、アンナ; マティッソン、インゲラ; アールベルク、エリザベート; レーベルク、ヨハンナ;
摘要 生体組織と 接触 させることが意図された表面を含む医療機器であって、表面が、無毒性ポスト遷移金属、例えば、ガリウムおよび/またはビスマスなどを含むナノ粒子を含み、前記ナノ粒子が500nm以下の平均粒度を有する医療機器。ナノ粒子により抗 微 生物 作用がもたらされ得、したがって、感染のリスクが低下し得る。
权利要求

生体組織と接触させることが意図された表面を有する医療機器であって、前記表面が、無毒性ポスト遷移金属を含むナノ粒子を含み、前記ナノ粒子が500nm以下の平均粒度を有する医療機器。前記ナノ粒子がビスマスを含む、請求項1に記載の医療機器。前記ナノ粒子がガリウムを含む、請求項1に記載の医療機器。前記ナノ粒子がガリウム化合物を含む、請求項3に記載の医療機器。前記ガリウム化合物が、酸化ガリウム、窒化ガリウム、ガリウムを含む金属酸化物およびガリウムを含む金属窒化物からなる群から選択される、請求項4に記載の医療機器。前記ナノ粒子がビスマス元素またはビスマス化合物を含む、請求項1から5までのいずれか一項に記載の医療機器。前記ビスマス化合物が、酸化ビスマス、窒化ビスマス、ビスマスを含む金属酸化物およびビスマスを含む金属窒化物からなる群から選択される請求項6に記載の医療機器。前記ナノ粒子が100nm以下、好ましくは50nm以下、より好ましくは30nm以下の平均粒度を有する、請求項1から7までのいずれか一項に記載の医療機器。前記表面が、100nm以下、好ましくは50nm以下、より好ましくは30nm以下の平均粒度を有する二酸化チタンのナノ粒子をさらに含む、請求項1から8までのいずれか一項に記載の医療機器。前記ナノ粒子が層を形成する、請求項1から9までのいずれか一項に記載の医療機器。前記層が、8nm〜約1μm、一般には50nm〜500nm、例えば100nm〜400nmの範囲の厚さを有する、請求項10に記載の医療機器。前記層が前記ナノ粒子の単層である、請求項8または9に記載の医療機器。前記医療機器が前記表面を有する基材を含み、前記基材が非生体吸収性である、請求項1から12までのいずれか一項に記載の医療機器。前記医療機器が前記表面を有する基材を含み、基材が金属または合金を含む、請求項1から13までのいずれか一項に記載の医療機器。前記基材が、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、コバルトもしくはイリジウム、またはその合金、好ましくはチタンまたはチタン合金を含む、請求項14に記載の医療機器。前記医療機器が前記表面を有する基材を含み、基材がセラミック材料を含む、請求項1から15までのいずれか一項に記載の医療機器。前記セラミック材料が、酸化チタン、窒化チタン、酸化ジルコニウム、およびそれらの組合せから選択される、請求項16に記載の医療機器。前記医療機器が、少なくとも部分的に生体組織内に埋め込むことが意図されたものである、請求項1から12までのいずれか一項に記載の医療機器。歯科用インプラントである、請求項18に記載の医療機器。前記歯科用インプラントが、少なくとも部分的に生体骨組織に挿入することが意図された歯科用フィクスチャーである、請求項19に記載の医療機器。前記歯科用インプラントが、生体軟組織と接触させることが意図された歯科用アバットメントである、請求項19に記載の医療機器。整形外科用インプラントである、請求項18に記載の医療機器。骨固定型補聴器である、請求項18に記載の医療機器。ステントである、請求項1から18までのいずれか一項に記載の医療機器。シャントである、請求項1から18までのいずれか一項に記載の医療機器。医療機器を作製する方法であって、 a)表面を有する基材を用意することと、 b)無毒性ポスト遷移金属、好ましくはガリウムおよび/またはビスマスを含むナノ粒子の分散系であって、前記ナノ粒子が溶媒中に分散しており、前記ナノ粒子が500nm未満、好ましくは100nm未満の平均粒度を有する分散系を用意することと、 c)前記ナノ粒子の分散系を前記基材の表面に適用することと を含む方法。前記ナノ粒子が前記溶媒中に完全に分散している、請求項26に記載の方法。前記分散系をスピンコーティングによって前記表面に適用する、請求項26または27に記載の方法。医療機器をヒトまたは動物の生体に埋め込む方法であって、 a)請求項1から25までのいずれか一項に記載の医療機器を用意することと、 b)前記医療機器を前記ヒトまたは動物の生体に埋め込むことであって、前記医療機器を、無毒性ポスト遷移金属を含むナノ粒子を含む表面の少なくとも一部が生体組織と接触するような位置に置くことと を含む方法。

说明书全文

発明の分野

本発明は、生細胞または生体組織と接触させることが意図された医療機器、特に、生体組織に埋め込むことが意図されたインプラントの分野、および、そのような医療機器を作製する方法に関する。

発明の背景

生体組織と接触させることが意図されたいかなる種類の医療機器に関しても、生体適合性が極めて重要な問題である。他の多くのものの中でも、異物反応、血餅形成および感染に関するリスクに対処し、それを最小限にして、そうでなければ患者の健康を損ない、および/または機器の機能不全が生じ得る局所的ならびに全身性の有害作用を回避しなければならない。これは、特に、永続的インプラントの場合にそうである。

インプラントの周囲の組織の治癒または再生が多くの場合、特に長期インプラントに関して、インプラントおよびその機能性を確実にするために極めて重要である。これは、とりわけ、耐荷重性インプラント、例えば、歯科用または整形外科用インプラントなどに関して重要である。

歯科用インプラントシステムは、損傷を受けたまたは失われた天然歯と交換するために広範に使用される。そのようなインプラントシステムでは、通常はチタンまたはチタン合金製の歯科用フィクスチャー(スクリュー)を天然歯根と交換するために患者の顎骨に設置する。次いで、患者の骨組織から歯肉軟組織を通って口まで突出する人工歯の一部のためのコアを構築するために、アバットメント構造をフィクスチャーに接着させる。前記アバットメント上に、義歯またはクラウンが最終的に取り付けられてよい。

歯科用フィクスチャーについては、骨組織とインプラントの間の強な接着が必要である。軟組織と接触させることが意図されたインプラント、例えば、部分的に歯肉軟組織に配置されるアバットメントなどについては、軟組織との適合性も同様に、全体的なインプラントの機能性のために極めて重要である。一般には、歯科用インプラントシステムの埋め込み後、アバットメントは部分的に、または完全に、歯肉組織で囲まれる。医学的理由と美的理由の両方で、インプラントの周囲の歯肉組織が直ちに、およびしっかりと治癒することが望ましい。口腔粘膜と歯科用インプラントの密着性が口腔内生物環境に対する関門としての機能を果たし、インプラント成功のために極めて重要である。これは、とりわけ、口腔内衛生が不十分であり、および/または骨または粘膜の質が不適切な患者に対して重要である。治癒が不十分であることまたは軟組織とインプラントの接着が不十分であることにより、感染のリスクおよびインプラント周囲炎が増加し、最終的にインプラントの骨吸収および機能不全に至り得る。

医療機器の上首尾の埋め込みの機会を増加させるためのいくつかの戦略、例えば、新しい組織形成の速度を増強させること、および/または、組織−インプラント結合が望まれる場合ではインプラント表面への組織接着の速度を増強させること、または感染のリスクを低下させることによるものが存在する。新しい組織形成の増強は、例えば、種々の表面修飾および/または表面上に生理活性剤を沈着させることによって実現されてよい。

歯科用インプラントに関連した感染のリスクは、現在では、主に、予防的措置、例えば、良好な口腔内衛生を維持することなどによって対処される。いったん歯科用インプラントの表面上にバイオフィルムが形成されると、抗菌剤を適用することによってそれを除去することは難しい。歯科用インプラントの周囲の骨または軟組織における感染(インプラント周囲炎)の場合では、機械的デブリードマンが基本的要素であり、時には抗生物質、消毒薬、および/または超音波またはレーザー処置と組み合わせられる。

したがって、当技術分野において、歯科用インプラントに関連するものだけではなく、いかなる種類のインプラントまたは生体組織と接触させることが意図された他の医療機器に関連する感染を治療または予防するための改善された戦略が必要とされている。

先行技術の問題を少なくとも部分的に克服することが本発明の目的である。特に、微生物による有害な感染のリスクを低下させる医療機器を提供することが本発明の目的である。

一側面では、これらおよび他の目的は、生体組織と接触させることが意図された表面を有する医療機器であって、表面が無毒性ポスト遷移金属、例えば、ガリウムおよび/またはビスマスなどを含むナノ粒子を含み、ナノ粒子が500nm以下の平均粒度を有する医療機器によって実現される。無毒性ポスト遷移金属が存在することにより、抗細菌性がもたらされる。したがって、埋め込み部位における感染のリスクが低下し得る。さらに、ナノ粒子コーティングにより、電気化学的性質および表面の粗さに関して望ましい表面特性がもたらされ得、また、ナノ粒子は小さいので、ナノ粒子コーティングの多孔度は限定され、それにより、微生物が表面に浸透するリスクが低下する。さらに、無毒性ポスト遷移金属を含むナノ粒子のコーティングを例えば層の厚さに関して適合させて、特定の色のついた外観をもたらし得、これは、特定の適用、例えば、歯科用インプラントなどに対して非常に望ましい場合があると考えられている。

「ポスト遷移金属」という用語は、一般に、周期表の第13〜16族第3〜6周期に見いだされる金属元素を指す。第13〜15族第3〜6周期のポスト遷移金属が好ましい。

本発明の複数の態様では、使用されるポスト遷移金属は無毒性である。ここで使用される場合、「無毒性」とは、問題の物質(例えば、化合物または元素)が、細菌細胞に対して致死的な影響を有する濃度で哺乳動物の細胞に損傷を与えないことを意味する。

さらに、本発明において使用されるポスト遷移金属は、一般には、抗微生物または抗細菌作用を有する。いくらかの抗微生物または抗細菌作用(いかなる微量作用も含む)を有すると考えられるポスト遷移金属は、少なくともガリウム、スズ、鉛、およびビスマスを含む。

上記を考慮して、本発明では、好ましくはガリウムおよびビスマスから選択される少なくとも1種の無毒性の抗微生物ポスト遷移金属を使用してよい。

本発明の複数の態様では、ナノ粒子は、無毒性ポスト遷移金属の化合物を含んでよい。ここで使用される場合、「ポスト遷移金属の化合物」という用語は、少なくとも1種のポスト遷移金属および少なくとも1種の追加的な要素を含む化学的実体を指す。そのような化合物の非限定的な例としては、ポスト遷移金属を含む酸化物、ポスト遷移金属を含む窒化物、少なくとも1種のポスト遷移金属の合金、およびポスト遷移金属を含む塩が挙げられる。化合物は、2種以上のポスト遷移金属を含んでよい。「ポスト遷移金属の化合物(複数可)」という用語は、1種以上のポスト遷移金属(複数可)に加えて、1種以上の他の金属、特に、生体適合性金属、例えばチタンなどが組み入れられた化合物も指すものとする。無毒性ポスト遷移金属および少なくとも1種の追加的な要素は、共有結合またはイオン結合によってつながっていてよい。

本発明の複数の態様では、無毒性ポスト遷移金属は、ビスマスおよびガリウムから選択される。したがって、無毒性ポスト遷移金属の化合物(複数可)は、ビスマス化合物(複数可)およびガリウム化合物(複数可)から選択されてよい。

本発明の複数の態様では、ナノ粒子は、ガリウム化合物を含んでよい。ガリウム化合物は、酸化ガリウム、窒化ガリウム、ガリウムを含む金属酸化物およびガリウムを含む金属窒化物からなる群から選択されてよい。本発明の複数の態様では、ナノ粒子は、ビスマス元素またはビスマス化合物を含んでよい。特に、ビスマス化合物は、酸化ビスマス、窒化ビスマス、ビスマスを含む金属酸化物およびビスマスを含む金属窒化物からなる群から選択される。

「ガリウム化合物」という用語は、ガリウムに加えて、1種以上の他の金属、特に、チタンおよび/またはビスマスを含む化合物も包含する。したがって、ガリウム−酸化チタン、ガリウム−窒化チタンなどが「ガリウム化合物」の定義の範囲内に含まれる。「ガリウムを含む金属酸化物」とは、ガリウムおよび酸素以外の1種以上の追加的な要素(複数可)、例えば金属、例えばチタンなどを任意に含む酸化物を意味する。「ガリウムを含む酸化物」の例としては、酸化ガリウム、ガリウム−酸化チタン、ガリウム−酸化ビスマスなどが挙げられる。

類似性により、「ビスマス化合物」という用語は、ビスマスおよび少なくとも1種の追加的な要素を含む化学的実体を指す。ビスマス化合物の非限定的な例としては、酸化ビスマス、窒化ビスマス、ビスマスを含む金属酸化物およびビスマスを含む金属窒化物が挙げられる。「ビスマス化合物」という用語は、ビスマスに加えて、他の金属、特に、チタンおよび/またはガリウムが組み入れられた化合物も包含する。したがって、ビスマス−酸化チタン、ビスマス−窒化チタンなどが「ビスマス化合物」の定義の範囲内に含まれる。さらに、「ビスマスを含む金属酸化物」とは、ビスマスおよび酸素以外の1種以上の追加的な要素(複数可)、例えば金属、例えばチタンまたはガリウムなどを任意に含む酸化物を意味する。したがって、「ビスマスを含む酸化物」の例としては、酸化ビスマスならびにビスマス−酸化チタン、ガリウム−酸化ビスマスなどが挙げられる。

本発明の複数の態様では、ナノ粒子は、300nm以下、250nm以下、200nm以下、例えば100nm以下、例えば、50nm以下、30nm以下、または25nm以下などの平均粒度を有してよい。

本発明の複数の態様では、表面は、100nm以下、例えば、50nm以下、例えば、30nm以下などの平均粒度を有する二酸化チタンのナノ粒子をさらに含んでよい。酸化チタンは不活性な生体適合性材料であり、二酸化チタンナノ粒子を含む表層により、電気化学的性質および表面の粗さに関して望ましい表面特性がもたらされ得る。

本発明の複数の態様では、ナノ粒子は層を形成していてよい。層は、8nm〜約1μm、一般には50nm〜500nm、例えば100nm〜400nmの範囲の厚さを有してよい。層は、ナノ粒子の単層であってよい。さらに、層は、ナノ粒子の連続的な層であってよい。一般には、層は、基礎をなす基材の表面を完全に覆っていてよい。ナノ粒子は、層中に一様に拡散していてよい。

一般には、医療機器は、ナノ粒子が適用される表面を有する基材を含む。本発明の複数の態様では、基材は、金属または合金、例えば、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、コバルトもしくはイリジウム、またはその合金、特に、チタンまたはチタン合金を含んでよい。本発明の複数の態様では、基材は、酸化チタン、窒化チタン、酸化ジルコニウム、およびそれらの組合せから選択されてよいセラミック材料を含んでよい。

本発明の複数の態様では、ナノ粒子と接触する基材の一部は、酸化チタン、特に、ネイティブな酸化チタンを含んでよい。

本発明の複数の態様では、基材は非生体吸収性であってよい。

一般には、医療機器は、少なくとも部分的に生体組織内に埋め込むことが意図されたものである。例えば、医療機器は、歯科用インプラント、例えば、少なくとも部分的に生体骨組織に挿入することが意図された歯科用フィクスチャー、または生体軟組織と接触させることが意図された歯科用アバットメントなどであってよい。あるいは、医療機器は、整形外科用インプラントであってよい。他の態様では、医療機器は、骨固定型補聴器またはその一部であってよい。

本発明の複数の態様では、医療機器はステントであってよい。他の態様では、医療機器はシャントであってよい。

別の側面では、本発明は、医療機器を作製する方法であって、 a)表面を有する基材を用意する工程と、 b)無毒性ポスト遷移金属、例えば、ガリウムおよび/またはビスマスなどを含むナノ粒子の分散系であって、ナノ粒子が溶媒中に分散しており、ナノ粒子が500nm未満、例えば100nm未満または50nm未満の平均粒度を有する分散系を用意する工程と、 c)ナノ粒子の分散系を基材の表面上に適用する工程と を含む方法を提供する。

ナノ粒子は、溶媒中に完全に分散していてよい。そのような単分散系により、コーティング手順の制御の改善がもたらされ、また、ナノ粒子の連続的な均一層、さらには単層を表面に適用することが可能になる。

例えば、分散系は、表面上にスピンコーティングによって適用されてよい。

本発明の複数の態様では、工程c)の前の基材本体の表面は、表面粗化処理、例えば、吹付け加工および/または化学エッチングなどに供されていてよい。

本発明の複数の態様では、方法は、溶媒を蒸発させ、および/またはナノ粒子を焼結させる1つ以上の工程をさらに含んでよい。ナノ粒子の層を焼結させることにより、ナノ粒子の基材への接着が改善され得る。ナノ粒子を焼結させることにより、セラミックまたはセラミック様層が生じ得る。

別の側面では、本発明は、医療機器をヒトまたは動物の生体に埋め込む方法であって、 a)上記の通り医療機器を用意することと、 b)医療機器をヒトまたは動物の生体に埋め込むことであって、医療機器を、無毒性ポスト遷移金属を含むナノ粒子を含む表面の少なくとも一部が生体組織と接触するような位置に置くことと を含む方法を提供する。

本発明の医療機器を生体組織に、ナノ粒子を含む表面を組織と接触させて埋め込むことにより、組織の微生物感染、特に、細菌感染のリスクが低下し得る。感染を回避することにより、とりわけ、持続性または長期の埋め込み期間について上首尾の埋め込みの機会が増加する。

本発明は、特許請求の範囲において列挙されている特徴の可能性のある組合せ全てに関することに留意する。

図1aは、ナノ粒子を伴わない基材表面を示す、拡大率が異なる走査電子顕微鏡(SEM)画像である。

図1bは、ナノ粒子を伴わない基材表面を示す、拡大率が異なる走査電子顕微鏡(SEM)画像である。

図2aは、本発明の態様による酸化ビスマスナノ粒子でコーティングされた基材表面を示す、拡大率が異なる走査電子顕微鏡(SEM)画像である。

図2bは、本発明の態様による酸化ビスマスナノ粒子でコーティングされた基材表面を示す、拡大率が異なる走査電子顕微鏡(SEM)画像である。

図3は、本発明の複数の態様において使用される酸化ビスマスナノ粒子の粒度分布を示すグラフである。

発明の詳細な説明

本発明に従って、無毒性ポスト遷移金属を含むナノ粒子、例えば、ガリウムおよび/またはビスマスなどを、例えば、酸化物(複数可)または窒化物(複数可)の形態で医療機器の表面上に適用して、抗微生物性を有する表面をもたらし得る。ナノ粒子が存在する医療機器の表面は、一般には、生体組織と接触させることが意図された表面である。

「ポスト遷移金属」という用語は、一般に、周期表の第13〜16族第3〜6周期に見いだされる金属元素を指す。通常、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、スズ、鉛、ビスマスおよびポロニウムがポスト遷移金属とみなされる。対照的に、遷移金属は、第3〜12族元素で形成される。ゲルマニウムおよびアンチモンは、ポスト遷移金属ではないが、半金属元素であるとみなされる。

周期表の第16族は、1つのポスト遷移金属:ポロニウムのみを含有し、これは毒性である。したがって、本発明では、第13〜15族第3〜6周期のポスト遷移金属が好ましい。

本発明の複数の態様では、使用されるポスト遷移金属は無毒性である。

ここで使用される場合、「無毒性」とは、問題の物質(例えば、化合物または元素)が、細菌細胞に対して致死的な影響を有する濃度で哺乳動物の細胞に損傷を与えないことを意味する。

毒性であるポスト遷移金属の例としては、タリウム(Tl)、鉛(Pb)およびポロニウム(Po)が挙げられる。他のポスト遷移金属(例えばインジウム(In)およびスズ(Sn))は、純粋な金属形態では無毒性とみなし得るが、他の形態または他の元素と化合物を形成している場合には毒性とみなされる場合がある。

本発明において使用される無毒性ポスト遷移金属は、一般には、元素形態で、および/または金属イオンとして、および/または本明細書において示されている例示的な化合物のうちの1つとして存在する場合に無毒性である。

さらに、本発明において使用されるポスト遷移金属は、一般には、抗微生物または抗細菌作用を有する。抗微生物性に関連することが公知の元素としては、例えば、Ga、Bi、Ag、Zn、Au、Pt、Pd、Ir、Cu、Sn、およびSbが挙げられる。いくらかの抗微生物または抗細菌作用(いかなる微量作用も含む)を有すると考えられるポスト遷移金属は、少なくともガリウム(Ga)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、およびビスマス(Bi)を含む。

上記を考慮して、本発明の態様による医療機器では、ガリウムおよびビスマスから選択されてよい少なくとも1種の無毒性の抗微生物ポスト遷移金属を使用してよい。

ガリウムは、少なくとも1940年代から、医学において、主に医用画像用の放射性薬剤として使用されてきた。ガリウムの抗細菌性は、いくつかの試験において調査されている。ガリウムは、鉄代謝を撹乱することによって働く。ガリウムは、他の微生物、例えば真菌、例えば酵母またはカビなどにも有効であると仮定してよい。

ビスマスは抗細菌活性を有することが公知である。ビスマス化合物は、以前は梅毒を治療するために使用されており、次サリチル酸ビスマスおよび次クエン酸ビスマスが現在、Helicobacter pyloriによって引き起こされる消化性潰瘍を治療するために使用されている。この物質の作用機構は未だによく理解されていない。ビブロカトールは、眼感染症を治療するために使用される、有機ビスマスを含有する化合物であり、次サリチル酸ビスマスおよび次炭酸ビスマスは、止瀉用医薬品中の成分として使用される。

Directive 2007/47/ecでは、医療機器は、「単独で使用されるか組み合わせて使用されるかにかかわらず、その製造者により診断および/または治療目的専用に使用されることが意図され、製造者によりヒトに対して使用されることが意図されたその適切な適用に必要であるソフトウェアを含めた、任意の計器、装置、器具、ソフトウェア、材料または他の物品」と定義されている。本発明に関しては、生体組織と接触させることが意図された医療機器、すなわち、体、体部位または臓器に適用されること、それに挿入されること、埋め込まれること、または他のやり方でそれと接触させることが意図された物理的特性の任意の計器、装置、器具、材料または他の物品のみが考慮に入れられる。さらに、本発明に関しては、体、体部位または臓器は、ヒトまたは動物、一般には、哺乳動物の対象のものであってよい。しかし、一般には、医療機器は、ヒト対象用である。上記の定義に含まれる医療機器は、例えば、インプラント、カテーテル、シャント、チューブ、ステント、子宮内避妊具、および人工器官である。

具体的には、医療機器は、生体組織に埋め込むこと、または、体腔への挿入を含めた、対象の体内または体部位に挿入することが意図された医療機器であってよい。

本発明の医療機器は、短期間、持続的にまたは長期間にわたって生体組織と接触させることが意図されたものであってよい。「短期間」とは、医療機器の生物学的評価に関するISO10993−1において見いだされる定義に従い、24時間未満の持続時間を意味する。さらに、「持続的」とは、同じ標準基準に従って、24時間から30日までの持続時間を指す。したがって、同じ基準により、「長期間」とは、30日を超える持続時間を意味する。本発明の一部の態様では、本発明の医療機器は、数ヶ月、数年、さらには生涯にわたって対象の体内に留まることが意図された永続的インプラントであってよい。

ここで使用される場合、「インプラント」という用語は、その範囲内に、少なくとも一部が脊椎動物、特に哺乳動物、例えば、ヒトなどの体内に埋め込まれることが意図された任意のデバイスを包含する。インプラントは、解剖学的構造を交換するためおよび/または体の任意の機能を修復するために使用されてよい。一般に、インプラントは1つまたはいくつかのインプラントの部分で構成される。例えば、歯科用インプラントは、通常は、副次的なインプラントの部分、例えば、アバットメントおよび/または修復歯などとカップリングした歯科用フィクスチャーを含む。しかし、埋め込むことが意図された任意のデバイス、例えば、歯科用フィクスチャーなどは、たとえ他の部分が接続されていても、単独でインプラントと称されてよい。

「生体適合性」とは、生体組織と接触した際に、それ自体によって組織の有害な生物学的応答(例えば、炎症または他の免疫学的反応)が引き出されない材料または物体を意味する。

「非生体吸収性」とは、生体に挿入された後に、数年に至る期間でさえ完全には化学的および/または生物学的に分解されない材料または物体を意味する。非生体吸収性医療機器は、埋め込み後に患者の体内に放出される物質を含有してよいが、そのような場合では、医療機器の全般的な構造は完全な状態のままである。例えば、金属またはセラミック基材を含む医療機器はいずれも非生体吸収性である。

「軟組織」とは、骨または軟骨ではない任意の組織型、特に、哺乳動物の組織型を意味する。本発明の医療機器が適する軟組織の例としては、これだけに限定されないが、結合組織、線維組織、上皮組織、血管組織、筋肉組織、粘膜、歯肉、および皮膚が挙げられる。

ここでは、「ナノ粒子」とは、一般には、透過型電子顕微鏡(TEM)または動的光散乱(DLS)を用いて測定したところ500nm以下の平均粒度を有する粒子を意味する。

本発明による医療機器は、一般には、生体組織と接触させることが意図された表面を有する基材を含み、表面の少なくとも一部は、本明細書に記載のナノ粒子を含む。

本発明の複数の態様では、基材は金属材料を含んでよい。一般には、基材は、少なくとも部分的に金属材料で形成された本体を含む。金属材料は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、コバルトおよびイリジウム、ならびにその合金から選択されてよい。ナノ粒子と接触する基材の表面は、特に、基材がチタンを含む、またはそれで形成されている態様では、例えば、酸化チタンを含んでよい。そのような態様では、酸化チタンは、例えば空気中の酸素と接触するとチタン表面上で自然に即時的に形成されるネイティブな酸化チタンであってよい。基材が上記の別の金属材料を含む、またはそれで形成される態様では、ナノ粒子と接触するその表面は、一般には、上記のそれぞれの金属のネイティブな酸化物を含む。

他の態様では、基材は、非金属材料、例えば、生体適合性セラミック材料、例えば、ジルコニア、または生体適合性ポリマー材料などを含んでよい。適切な材料は当業者に公知である。そのような態様では、基材は、セラミックの本体、またはポリマー材料の本体で形成されていてよい。ポリマー材料の場合では、非生分解性であることが一般的であるが、必要ではない。

ナノ粒子は、元素としてまたは化合物の形態のビスマス、またはガリウム化合物を含んでよい。一般には、ナノ粒子は、酸化ガリウム、窒化ガリウム、酸化ビスマス、窒化ビスマス、ビスマス元素、およびこれらの材料と他の元素、一般には金属の組合せの少なくとも1つを含む。

例えば、ナノ粒子は、金属ナノ粒子、例えば、ビスマスナノ粒子、または1種以上の他の金属と混合されたガリウムおよび/またはビスマスであってよい。あるいは、ナノ粒子は、金属酸化物ナノ粒子、例えば、酸化ガリウムナノ粒子または酸化ビスマスナノ粒子、または金属酸化物ナノ粒子の混合物(ビスマスおよびガリウムの少なくとも1つが組み入れられたもの)、例えば、ビスマスまたはガリウムドープ酸化チタンナノ粒子であってよい。あるいはナノ粒子は、金属窒化物ナノ粒子、例えば、窒化ガリウムナノ粒子であってよい。

単一のナノ粒子は、ポスト遷移金属元素、特に、ビスマス元素、または無毒性ポスト遷移金属の化合物、例えば、ガリウムまたはビスマス化合物、例えば、酸化ガリウム、窒化ガリウム、酸化ビスマスまたは窒化ビスマスなどから本質的になる。「本質的になる」とは、ここでは、ナノ粒子がその元素または化合物からなるが、例えば、銅、ケイ素などによる少量の不純物が許容され、これは、ナノ粒子の化学組成に基づいて、最大で、例えば、10at%、例えば、最大5at%、または最大2at%など、一般には、1at%未満の総含有量で存在してよいことを意味する。したがって、ナノ粒子が無毒性ポスト遷移金属または無毒性ポスト遷移金属の化合物、例えば、ビスマスまたはビスマス化合物またはガリウム化合物などから本質的になる態様では、無毒性ポスト遷移金属または無毒性ポスト遷移金属の化合物の含有量は、少なくとも90at%(化合物の場合は無毒性ポスト遷移金属以外の元素(複数可)を含めて)、一般には、少なくとも95at%、より好ましくは少なくとも98at%、さらには99at%である。「不純物」とは、ここでは、ナノ粒子に含有される望ましくない元素および化合物を指す。そのような不純物は、単純な清浄化では除去可能でない場合がある。対照的に、例えば炭素による表面コンタミネーションは、ナノ粒子を清浄化し、制御雰囲気下で、例えば、中で保持することによって除去し得、上の定義の範囲に入る不純物とはみなされない。ナノ粒子表面の炭素によるコンタミネーションにより、炭素の原子濃度が高く(例えば、30at%に至るまで)なり得るが、それでもナノ粒子は、前記無毒性ポスト遷移金属または無毒性ポスト遷移金属の化合物から本質的になり得る。

一部の態様では、単一のナノ粒子は、2種以上の無毒性ポスト遷移金属、例えば、ビスマスとガリウムの両方を、および/または窒化物ならびに酸化物の形態で含んでよい。他の態様では、酸化ガリウム、窒化ガリウム、ビスマス元素、酸化ビスマスまたは窒化ビスマスのいずれかから本質的になるナノ粒子は、酸化ガリウム、窒化ガリウム、ビスマス元素、酸化ビスマスまたは窒化ビスマスのうちの別の1つからなる少なくとも1つの他の種類のナノ粒子と組み合わせて使用されてよい。ビスマスまたはガリウム化合物のうちの1つから本質的になるナノ粒子は、ビスマスとガリウムの両方を単一のナノ粒子として含むナノ粒子と混合されてもよい。

一般に、少なくとも1種の無毒性ポスト遷移金属、特に、ガリウムおよび/またはビスマスが、ナノ粒子中に、一般には、5at%〜50at%、例えば、10at%〜50at%または10at%〜40%または15at%〜40at%の範囲の含有量で存在してよい。ビスマス元素を使用する場合には、ナノ粒子のビスマス含有量は、5at%〜100at%の範囲であってよい。

本発明のさらなる態様では、単一のナノ粒子は、ガリウムおよび/またはビスマスに加えて、チタンまたはチタン化合物(例えば、酸化物または窒化物)を含んでよい。そのような態様では、ナノ粒子のガリウムまたはビスマス含有量は低く、例えば、5〜15at%であってよい。

1種以上の追加的な種類のナノ粒子が、1つ以上の種類のガリウム含有またはビスマスを含有ナノ粒子と組み合わせて使用されてよいことも考えられており、一態様では、例えば金属または金属化合物を含む、またはそれから本質的になる追加的なナノ粒子が使用されてよい。好ましい例としては、チタン化合物、例えば、酸化チタンおよび窒化チタンなどが挙げられる。

適用されたナノ粒子の表層は、ナノ粒子自体に関して上に示されているものと同じ範囲内のビスマスおよび/またはガリウムの原子含有量を有してよい。したがって、医療機器は、5at%〜50at%(ビスマス元素からなるナノ粒子の場合では100%に至るまで)、例えば、10at%〜50at%または10at%〜40%または15at%〜40at%の範囲のガリウムおよび/またはビスマスの含有量を有する表層を伴う基材を含んでよい。

本発明の態様によるナノ粒子は、一般には、500nm以下の平均粒度を有する。本発明の複数の態様では、ナノ粒子は、300nm以下、200nm以下、100nm以下、50nm以下、例えば、30nm以下などの平均粒度を有してよい。例えば、平均粒度は、10〜500nm、例えば、など 20〜300nm、50〜250nmまたは50〜200nmの範囲であってよい。

本発明の複数の態様では、ナノ粒子は、粒子の少なくとも50%が50nm〜250nmの範囲の平均粒度を有するようなサイズ分布を有してよい。

本発明による一態様では、医療機器は、少なくとも部分的に歯肉組織に挿入されることが意図された歯科用アバットメントである。アバットメントは、外面を有する基材本体を含む。外面の少なくとも一部は、歯肉組織(軟組織接触表面)と接触させることが意図されており、本明細書に記載のナノ粒子を含む。表面上に存在するナノ粒子により、特に、歯科用適用のために望ましい場合がある、表面に色のついた外観が与えられ得る。沈着したナノ粒子の層の色は、層の厚さに左右され得る。

薄い、比較的均一なナノ粒子の層を医療機器の表面に適用することにより、バルク材料性がより優位を占めるものと化学組成および結晶化度が同じであるナノ粒子状層またはコーティングを適用する場合と比較して異なる表面性質を得られ得る。例えば、小さなナノ粒子はより大きな類似体と比較して大きな表面電荷を有することが示されている(Zareen Abbas、Christophe Labbez、Sture Nordholm、およびElisabet Ahlberg.、J.Phys.Chem.C 2008、112、5715−5723)。これは、アパタイト形成ならびにタンパク質および細胞のそのようなナノ粒子でコーティングされた表面への吸着に影響を及ぼし得ると考えられる。

一般にはナノ粒子は実質的に球状であるが、いくらか不規則な形態の可能性がある。

ガリウムおよび/またはビスマスが酸化物として存在する本発明の態様では、酸化物は少なくとも部分的に結晶性であってよい。

ナノ粒子により、医療機器の表面上にナノ多孔質層をもたらし得る。ナノ粒子は表面上にぎっしりと詰められていてよく、それにより、固有の多孔度の層がもたらされ、その多孔度は、それぞれ、単層については0.225*R、多層については0.732*Rにわたり、Rはナノ粒子の半径である。多層、すなわち、ナノ粒子が存在する表面に対して垂直方向に2つ以上のナノ粒子を含む層は、ナノ粒子の詰め込みが不釣合いであることに起因して、より大きな多孔度を有し得る。層の多孔質性により、ナノ粒子を伴わない表面と比較して界面面積がより大きく展開される。さらに、電解質は多孔質の構造に浸透することができるので、ナノ粒子により、より大きな電気化学的に活性な表面積ももたらされる。したがって、医療機器の外面を形成するナノ粒子構造は、より反応性であり得、ナノ粒子を伴わない表面または本発明において使用されるナノ粒子よりも大きなサイズの粒子のコーティングを有する表面と比較して異なる電子的性質を有し得る。

さらに、骨インプラント表面を覆う酸化物フィルムの電子的性質は、細胞の接着およびアパタイト核生成に対してトポグラフィーの小さな変化よりも大きな影響を有すること、および、例えば、チタン歯科用インプラントに対しては絶縁性がより低い酸化物フィルムが好ましい場合があることも見いだされている。さらに、本発明の態様で使用されるナノ粒子の層は、層内に細菌が浸透し、および/または沈着することが可能にならないような小さな多孔度を有してよい。

上記の通り、一部の態様では、表面は、ガリウムおよび/またはビスマスを含むナノ粒子に加えて、別の金属または金属化合物を含むナノ粒子をさらに含んでよい。前記別の金属または金属化合物は二酸化チタンであってよい。酸化チタンは、主にアナターゼ(少なくとも50%のアナターゼ)からなってよい。しかし、他の金属酸化物も、任意に二酸化チタンと組み合わせて使用されてよい。本発明の複数の態様では、追加的なナノ粒子は、i)二酸化チタンから本質的になるナノ粒子を含んでよく、任意に、ii)ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、コバルトおよびイリジウムのうちの1つ以上の酸化物から本質的になるナノ粒子も含んでよく、ジルコニウムおよび/またはイリジウムの酸化物が特に有利である。チタンナノ粒子と上記の酸化物のうちの1つ以上のナノ粒子を混合することにより、例えば、色、強度および/または電子的性質に関して種々の性質の生じる層が得られ得る。例えば、層の電子的性質を増強するために、二酸化チタンのナノ粒子と組み合わせて、イリジウム酸化物のナノ粒子が使用されてよい。酸化チタンナノ粒子の調製、ならびにその特性決定および沈着は、これによって参照により組み込まれる、2011年5月11日に出願された公開されていない欧州特許出願第11165686.4号に記載されている。

本発明の複数の態様では、ナノ粒子が医療機器の表面の少なくとも一部に層を形成する。したがって、医療機器の表面は生体組織と接触させることが意図されているので、ナノ粒子は、生体組織、特に、骨または軟組織と接触することが意図されている。

本発明の複数の態様では、ナノ粒子によって形成される層は、8nm〜約1μm、一般には、50nm〜500nm、例えば、100nm〜400nmの範囲の厚さを有してよい。薄い層は、基材表面に対するアドヒアランスがよりよいので有利である。また、ナノ粒子を焼結させた層の場合では(以下を参照されたい)、そのような薄い層は、厚い層よりもより高い強度を有し得る。層は、ナノ粒子の単層であってよい。したがって、層の厚さの下限は、ナノ粒子のサイズとほぼ同じである。ナノ粒子の薄い層により、マイクロメートル未満のレベルでの表面の粗さは減少するが、より大きな尺度(ブラスティングレベル)での表面の粗さは保存される。そのような表面トポグラフィーは、骨インプラントの長期にわたる骨結合に関して有益であり得る。

本発明の複数の態様では、ナノ粒子の層は、5nm〜150nm、例えば、5〜50nmの範囲の平均の表面の高さ(Sa)を有してよい。

層は、ナノ粒子の連続的な層であってよく、その層が表面の少なくとも一部を覆っていてよい。「連続的な層」とは、単一の領域を形成する密着した層を意味する。連続的な層とは反対に、不連続な層は、多数の分離した層領域で形成される。本発明の複数の態様では、ナノ粒子は医療機器の表面を完全に覆う層を形成していてよい。

本発明の複数の態様では、ナノ粒子は層全体を通して均一に分布している。

本発明の複数の態様では、ナノ粒子は焼結されていてよい。ナノ粒子の層を慎重に焼結させることにより、ナノ粒子の基材への接着が改善され得る。ナノ粒子を焼結させることにより、セラミックまたはセラミック様層が生じ得る。しかし、ナノ粒子は焼結されていなくてもよい。

ビスマスおよび/またはガリウムを含むナノ粒子は、公知の方法によって作製されてよい。単分散ビスマスナノ粒子の調製は、Yuら、J Am Chem Soc(2001)123:9198−9199に記載されている。酸化ガリウムナノ粒子の調製はKrajczykら、J Microscopy(2006)223:231−233に記載されており、単分散酸化ビスマスナノ粒子の調製は、Liら、Mater Chem Phys(2006)99:174−180に記載されている。ビスマスドープ酸化チタンナノ粒子の調製は、Lvら、J Hazardous Mater(2009)161:396−40に記載されている。窒化ガリウムナノ粒子の調製は、Nykら、Mater Sci SEMicon Proces(2005)8:511−514に記載されている。上記の参考文献において使用されているガリウムおよび/またはビスマス前駆体として、Ga2O3、Bi(NO3)3、BiCl3、およびBi−[N(SiMe3)2]3が挙げられる。

本発明の態様による医療機器は、 a)表面を有する生体適合性基材を用意することと、 b)無毒性ポスト遷移金属を含むナノ粒子の分散系であって、ナノ粒子が500nm未満の平均粒度を有し、ナノ粒子が溶媒中に分散されている分散系を用意することと、 c)ナノ粒子の分散系を基材の表面上に適用することと によって得られてよい。

特に、ナノ粒子は、上記の無毒性ポスト遷移金属の化合物、特に、無毒性ポスト遷移金属の酸化物または窒化物、例えば、上記のガリウムおよび/またはビスマスの酸化物または窒化物などを含んでよい。

一般には、ナノ粒子は、100nm以下、例えば、50nm以下、または30nm以下の平均粒度を有する。

工程b)で用意される分散系では、ナノ粒子は完全に分散していてよく、「単分散(monodisperse)」または「単分散した(monodispersed)」とも称される。そのような態様では、工程c)において、分散系中に存在する各ナノ粒子を表面上に個別に適用する。しかし、基質表面に適用されたら、ナノ粒子はぎっしりと詰まって、ぎっしりと詰まった構造を形成する。

溶媒は、水性溶媒、例えば、脱イオン水であってよい。

本発明の複数の態様では、金属酸化物のナノ粒子の分散系は、 b−i)ガリウムおよび/またはビスマス前駆体の制御加水分解を実施してコロイド分散系を得ることと、 b−ii)コロイド分散系の透析を実施することと によって作製されてよい。

工程b−i)は、一般には、前駆体をゆっくりと、例えば、滴下により脱イオン水に添加することによって実施される。前駆体の加水分解は、望ましい結果を得るために公知の化学的原理に応じて調整されたプロセスパラメータ(例えば、温度、濃度、pH、時間)を用いて実施されてよい。

分散系は、スピンコーティング、スプレーコーティング、液浸、浸漬、ソルーゲルコーティング、泳動電着などを含めた任意の適切な方法によって基材上に適用されてよい。

本発明の複数の態様では、方法は、分散系を適用した後に溶媒を蒸発させることをさらに含む。

任意に、方法は、ナノ粒子を焼結させる工程をさらに含んでよい。本発明の複数の態様では、まずナノ粒子の層を適用し、焼結させ、次いで本明細書に記載の別の金属酸化物のナノ粒子を適用し、それは焼結させない、二段階の手順も使用されてよい。したがって、焼結させたナノ粒子と焼結させていないナノ粒子の両方の利益を得ることができる。

本発明の複数の態様では、基材の表面は、工程c)の前に表面粗化処理に供されてよい。粗化処理の例としては、吹付け加工および化学エッチングが挙げられる。あるいは、基材は、非粗化処理、例えば、研磨などに回されてよいまたは供されてよい。

[実施例] 例1.作製 工業用純(cp)チタン(グレード4)のコインを製造し、清浄化した後に、酸化ビスマス(Bi2O3)のナノ粒子を用いてスピンコーティングした。ビスマスナノ粒子(製品名BI−OX−03−NP.200N、American Elements、USA)を酢酸緩衝液、pH5.0中に分散させた。清浄化したコインを回転電極に載せた。電極回転のスピードを増大させ、コインを、酸化ビスマスナノ粒子を含有する酢酸緩衝液中に5秒間浸漬した。回転のスピードを0rpmまで減少させ、コインを、脱イオン水を伴うビーカー中に5秒間浸漬して、表面上に残っている結合していないビスマスナノ粒子を除去した。コインを乾燥させ、その後、プラスチック容器中に詰め、電子ビーム放射線照射を用いて滅菌した。

例2.表面特性決定 全ての表面特性決定実験について、例1に記載の通り作製した工業用純(cp)チタンの試験品およびビスマスナノ粒子を用いてスピンコーティングした試験品を使用した。

2a)表面形態および表面化学的性質 表面形態および表面化学的性質分析を、環境制御型走査電子顕微鏡(XL30 ESEM、Philips、Netherlands)/エネルギー分散分光法(Genesis System、EDAX Inc.、USA)を用い、表面形態および表面化学的性質について、それぞれ加速電圧30kVおよび10kVで実施した。

図1aおよび1bは、それぞれ100x(図1a)および500x(図1b)拡大率のコーティングしていない試験品を示す。機械加工の跡を見ることができるが、粒子はない。対照的に、図2aおよびbは、コーティングした試験品を同じ拡大率で示す。図2a〜bにおいて見ることができるように、コーティングした試験品は、完全にではないが部分的に、分散したナノ粒子によって覆われていた。

試験品表面上に存在するBi2O3粒子の直径を測定し、結果が表1に要約されている。粒度分布も図3に示されている。使用した技法の分解能が限られることに起因して、115nmよりも小さなナノ粒子は検出および測定することが難しいまたは不可能である。したがって、本例で測定された最小のナノ粒度は115nmであったが、より小さなナノ粒子の存在を排除することはできない。

Bi2O3をスピンコーティングした試験品におけるビスマス(Bi)の濃度は、最大5.1原子%(at%)であると分析された。ビスマスナノ粒子中のBi濃度は最大43.9at%であると分析された(表2参照)。検出された他の元素はチタン(Ti)および酸素(O)であった。この技法を用いた分析の深さはおよそ1μmである、すなわち、ナノ粒子層の厚さよりも深いと推定される。

例3.抗微生物作用 a)フィルム接触法を使用した細菌成長の阻害 抗微生物作用を評価するために、M.Yasuyuki、K.Kunihiro、S.Kurissery、N.Kanavillil、Y.Sato、Y.Kikuchi.Biofouling 26(2010)851−858に記載されているフィルム接触法を使用した。Pseudomonas aeruginosa(PA01)の画線プレートを作出し、1つのコロニーを培養試験管中のtryptic soy broth(TSB)5mlに接種し、振とう条件下で18時間成長させた。細胞密度を分光光度計においてOD600nmで測定し、細胞計数チャンバーを使用して計数した。細胞培養物を、滅菌TSBを用いて1ml当たり細胞1〜5×106個に調整した。上記の例1による工業用純(cp)チタンコイン(直径6.25mm)およびBi2O3ナノ粒子を用いてスピンコーティングしたcpチタンコインの試験品を無菌的に調製し、それぞれを、12ウェルプレートのそれぞれのウェルに入れた。薄い透明なプラスチックフィルムに穴をあけ、各側面に70%エタノールおよびUV照射を使用して滅菌した。TSB中細菌の液滴15μlを各試験品に適用した。試験品当たり1つの薄いプラスチックフィルムを、試験品上の細菌の上に置き、したがって、細菌溶液を試験品表面上に一様に拡散させ、良好な接触を確実にした。35±2℃で24時間インキュベートした後、各試験品のフィルムを無菌的に取り出し、PBS 1mlを表面にわたってピペットで流し試験品ごとに別々の2mlのエッペンドルフチューブに入れることによって洗浄した。試験品を、フィルムを洗浄した際に使用したものと同じエッペンドルフチューブに移した。まず、各試験品表面を、前にフィルムを洗浄したものと全く同じPBSをピペットで流すことによって洗浄した。次に、試験品を前にフィルムを洗浄した際に使用したものと全く同じチューブ中で1分間にわたって超音波処理し、1分間にわたって勢いよくボルテックスした。段階希釈およびプレート計数を実施した。プレートを24時間インキュベートし、コロニー数を計数し、記録した。Bi2O3をスピンコーティングしたチタンコインは、PA01に対して、コーティングしていないチタンと比較して弱い抗細菌作用を示した。表3を参照されたい。

当業者は、本発明が決して上記の好ましい態様に限られるものではないことを理解する。それどころか、添付された特許請求の範囲の範囲内で多くの改変および変形が可能である。

さらに、特許請求された発明の実施において、開示されている態様の変形は、図、本開示、および添付された特許請求の範囲の検討によって当業者に理解され、実施され得る。特許請求の範囲において、「含む」という語により他の要素または工程は排除されず、不定冠詞「1つの」により複数は排除されない。ある特定の尺度が相互に異なる従属請求項において列挙されているという単なる事実は、これらの尺度の組合せを有利に使用することができないことを示すものではない。

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