【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は歯列矯正治療に有用な取付け具とピンに関する。 本発明は特に口内強制モジュールとその他の器具を患者の上側又は下側の歯列弓に連結するのに有用である。 【0002】 【従来の技術】歯列矯正治療は位置が異常の歯を歯列矯正による正しい位置に動かすことを必要とする。 治療の間、ブラケットとして知られている非常に小さい歯列矯正用具が門歯、犬歯及び小臼歯に連結されそして弓形ワイヤが各ブラケットの溝の中に置かれる。 この弓形ワイヤはブラケットと関連の歯が正しい咬合のために所望位置へと運動するのを案内するための通路を形成する。 典型的には、弓形ワイヤの端部は臼歯に固定される頬面チューブとして知られている器具により保持される。 【0003】ある患者の歯列矯正治療は上側の歯列弓と下側の歯列弓との整列(噛み合わせ)の矯正を含んでいる。 例えば、一定の患者は顎が閉じられた時に下側の歯列弓が上側歯列弓から後方に過度に離れて位置する等級 IIの不正咬合と称される条件を有している。 他の患者は顎が閉じられた時に下側の歯列弓が上側の歯列弓の前方に位置する等級III の不正咬合と称される逆の条件を有している。 【0004】等級IIと等級III の不正咬合の歯列矯正治療は通常、単一ユニットとしての下側歯列弓の運動に対する単一ユニットとしての上側歯列弓の運動によって行われる。 この目的で、ブラケット、弓形ワイヤ又はブラケットもしくは弓形ワイヤに連結された取付け具に圧力を加えることにより、ユニットとしての各歯列弓に圧力が加えられることが多い。 このようにして、等級II又は等級III の不正咬合は弓形ワイヤとブラケットとが個々の歯を所望の位置に動かすのに用いられて同時に矯正することができる。 【0005】今までは、等級IIの不正咬合は時には一対の引張り装置を口腔の両側の各歯列弓に連結することによって処置されていた。 このような装置の実例は多数の一体に連結されたOリングで作られたOリング、鎖型強制モジュール又はコイル状に巻かれたワイヤスプリング部材を含んでいる。 このような装置は緊張状態で用いられ両顎を一緒にこの装置の取付け個所の間に延びる基準線に沿う方向に引張るようにしている。 【0006】しかし、等級IIの不正咬合の治療に用いられる多くの引張り装置は必要な時と歯の清掃のため、取替えるため患者によって取外すことができる。 あいにくと、患者がこの装置を再度取付けるのを怠ると、治療の進行を遅らせることになる。 患者の協力が乏しいと他の良く計画された治療計画の目標の時機にかなった達成が挫折し、患者と歯列矯正医の両者にとって時間の消費を生じることとなる。 患者の協同作業は青春期の患者にとってしばしば共通の問題として考えられている。 【0007】歯列矯正治療の間口腔内の所定位置に固定される多数の器具が過去において取外し自在の引張り装置に関連する患者の協同作用の問題を解決するために提案されてきた。 例えば米国特許第3,798,773 号、第4,462,800号及び第4,551,095 号は顎を改良された咬み合わせの位置に向って押しつける入れ子式チューブ組立体を開示している。 これらの組立体は歯列矯正歯によってブラケットのような他の歯列矯正用具に固定され、そのため患者が追従しないという問題は回避される。 【0008】等級IIの不正咬合を矯正するため口腔内の所定位置に固定される他の歯列矯正用具は米国特許第4,708,646号、第5,352,116号及び第5,435,721号に記載されている。 これら特許は患者の上顎と下顎に連結するための端部取付け具を備えた可撓部材を記載している。 この可撓部材の長さは患者が顎を閉じた時の歯列弓にこの部材が曲げられるように選択される。 これら部材を正常の眞直ぐの位置に向って付勢することは一方の顎を他方の顎に対して前方に又は後方に押す力を与える。 【0009】米国特許第4,708,646号、第5, 352,116号及び第5,435,721号に記載された器具は各端部の近くに開口を有する一般に細長い形状を有している。 上端の近くの開口はしばしば拡大された頭部と患者の上側の臼歯の1つに固定された器具の通路に受け入れられる軸部とを有するピンに連結される。 この器具の下端部の近くの開口がしばしば、患者の下側の歯列弓上のブラケットに取付けられた弓形ワイヤの一部で受けられる。 ある例においては、曲げ加工可能なチューブのようなストッパが各器具の下端部の中央側で下側の弓形ワイヤに固定され中央方向の弓形ワイヤに沿った器具の下端の運動を制限するようにしている。 過去において用いられた他の型のストッパは弓形ワイヤを受け入れる通路を有するボール形状のストッパを含み、このボールの運動が隣接するブラケット又は弓形ワイヤの曲がり部によって制限されるようになっている。 【0010】好ましくは、米国特許第4,708,64 6号、第5,352,116号及び第5,435,72 1号に示される器具の下端部が患者の顎が開かれた時に下側弓形ワイヤの隣接部分に沿って末端方向に自由に摺動する。 例えばこの摺動運動が妨げられたならば、患者の顎の反復される開口は器具、関連のピン又は下側の弓形ワイヤを破壊が起きるような程度に疲労させるようになる。 多くの例においては、歯列矯正医は患者の小臼歯に取付けられたブラケットを取外し器具の下端部が下側弓形ワイヤの隣接部分に沿って摺動できる距離を増すようにする。 【0011】しかし、等級IIの矯正器具の摺動運動の範囲を増大させるための小臼歯のブラケットの取外しはある例においては治療を遅らせることがある。 例えば、歯列矯正による正しい咬合のためこの小臼歯の最終の所望位置に向う運動はブラケットが所定位置にない時間中に妨げられる。 この小臼歯ブラケットは歯に再度接着され等級IIの矯正器具が取外されると関連する小臼歯の運動を案内することができるが、このような操作は若干時間を要しまた治療時間の全体の長さを延ばすことになる。 【0012】時には、歯列矯正医は上記の問題を等級II の矯正器具の下端部分を下側弓形ワイヤに並んで延びる補助ワイヤに連結することにより回避することを意図してきた。 ある例においては、この補助ワイヤは歯列矯正医により両端が下側弓形ワイヤに半田づけされ、そしてボールストッパが設けられ器具の下端部分の中央側に係合するようにしている。 しかし、このようなやり方はしばしば不満足なものと考えられているが、その理由は補助ワイヤが弓形ワイヤのブラケットへの配置の前に所定位置に半田づけされなければならず、歯列矯正医にとって余分の作業を生じるからである。 さらに、半田による接合は使用時引き離され治療の進行を中断することがあり、さらに患者が歯列矯正医を再度訪れる必要が生じる。 他の例においては、補助ワイヤが歯列矯正医により、弓形ワイヤに連結するため他端部にフックを設けるか又は頬面チューブに挿入するため眞直ぐの部分を形成するかして加工される。 しかし、歯列矯正医がこの補助ワイヤを作り出すのに若干の時間を必要としまたその結果は完全には満足しないものとなる。 【0013】 【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の問題を歯列矯正器具を弓形ワイヤに連結するための歯列矯正取付け具を提供することにより解決する。 【0014】 【課題を解決するための手段】本発明の歯列矯正取付け具はその長さの大部分が弓形ワイヤに沿って並んで延びる細長いワイヤを含んでいる。 本発明の取付け具はまたワイヤに固定された曲げ加工可能な連結具を含んでいる。 この曲げ加工可能な連結具は弓形ワイヤを受け入れる通路とこの通路を少なくとも部分的に取巻く壁部分とを有している。 この壁部分は通路に向う方向に変形可能であり弓形ワイヤに回転しない連結ができるようにする。 【0015】本発明のもう1つの形態は歯列矯正ワイヤと開口を有する歯列矯正器具とこの歯列矯正器具を弓形ワイヤに連結する取付け具とを具備する歯列矯正組立体に関するものである。 前記取付け具は細長いワイヤとワイヤに連結された曲げ加工可能な連結具とを含んでいる。 ワイヤは開口を通って延び矯正器具を取付け具に摺動自在に連結する。 ワイヤは弓形ワイヤに沿いこれと並んで延びている。 曲げ加工可能の連結具は弓形ワイヤを受け入れる通路と少なくとも部分的に通路を取巻く変形可能な壁部分とを有している。 壁部分は弓形ワイヤに回転しないよう連結される方向に曲げ加工される。 【0016】有利には、取付け具は、等級IIの矯正器具の下端部がこの器具、下側弓形ワイヤ又は隣接ブラケットに不必要な応力を生じることなく患者の顎が開かれる時は何時も大きな距離で自由に走行できるようにする。 さらにまた、取付け具又は矯正器具を取付け又は用いるのに通常はブラケットを必要としない。 曲げ加工可能な連結具は取付け具を弓形ワイヤに半田づけを要しないで容易に確実に固定しまたさもなければ口腔内の他の器具にひっかかり又は拘束されるような取付け具の下側弓形ワイヤの長手方向軸線周りの回転を阻止する。 【0017】本発明の他の形態と利点は以下のまた添付図面による詳細な記載に示されている。 【0018】 【発明の実施の形態】本発明の1つの実施態様による歯列矯正取付け具20が図1〜3に示されている。 この取付け具は中央寄りの(すなわち、患者の歯列弓の中央に向う方向の)端部部分と末端の(すなわち、患者の末端の歯列弓の中央から離れる方向の)端部部分とを有する細長い断面のワイヤ22を含んでいる。 ワイヤ22の中央寄り端部部分はほぼ“J”字形の形状を有しこれに対しワイヤ22の末端部分は偏倚した又はほぼ“Z”字形の形状を有している。 【0019】ワイヤ22の中央寄り端部部分は曲げ加工可能な連結具24に堅く固定される。 例えば図1〜2に示されるように、連結具24は弓形ワイヤを受け入れるための通路26を含んでいる。 連結具24はまた通路2 6の周りに延びまた通路26を一部区画形成する一対の対向するほぼ“C”字形の壁部分28を含んでいる。 【0020】壁部分28は弓形ワイヤに回転しない連結をするため通路26に向う方向に変形可能である。 壁部分28が相互に向って動かされた時、通路26はその側面に沿ってほぼ閉じられそして好ましくは係合される弓形ワイヤの横断面積にほぼ等しい横断面積を有している。 例えば壁部分28が一対のやっとこ又は他の同様な工具により相互に近づくよう変形されると、壁部分は弓形ワイヤを緊密に堅く掴み取付け具20が弓形ワイヤの長手方向の軸線を横切る基準平面上で弓形ワイヤに対し回転できないようにする。 【0021】ワイヤ22の末端寄りの部分は末端部分3 0と偏倚部分32とを含んでいる。 末端部分30はワイヤ22の中央部分34の長手方向軸線にほぼ平行であるが長手方向軸線から偏倚している基準軸線に沿って延びている。 末端部分30はその長手方向軸線に直角な基準平面上で円形、正方形又は矩形の形状を有することができる。 偏倚部分32と“J”字形の中央寄り端部部分の底(又は最も中央寄りの)部分とは共に図1に示されるように中央部分34の長手方向軸線に対し約90度の角度で延びておりまた図2に示されるように相互に対し鋭角で延びている。 【0022】ワイヤ22と連結具24は歯列矯正治療に用いるのに適した多数の非腐食性金属合金のうちのいずれか1つで作ることができる。 適当な材料の一例は型式302のステンレス鋼である。 ワイヤ22は引抜きワイヤとすることができ、又はこれに代え鋳造、機械加工又は金属射出成形方法により作ることができる。 連結具2 4は、他の方法がもちろん可能であるが、ろう付け方法によりワイヤ22に固定することができる。 【0023】図3は典型的な目的の歯列矯正治療における取付け具20の使用を示す。 この例では、取付け具2 0は等級IIの不正咬合を矯正するため金属の単一の弾性の薄い帯(上記した米国特許第5,435,721号に記載されているような)で作られた器具36と組合わせて用いるよう示される。 【0024】図3において、一組の溝つき歯列矯正ブラケット38が略図式に示されている。 ブラケット38は患者の上顎40と下顎42の歯に連結される。 上側の歯列弓44が患者の上顎40に連結されたブラケット38 の溝を通って延び、一方下側の歯列弓46は患者の下顎42に連結されたブラケット38の溝を通って延びている。 図示しないが、ワイヤ又は弾性結紮系がブラケット38の各々の結束翼の周りに延び弓形ワイヤ44,46 をブラケット38の各溝に固定するようにしている。 【0025】図3において、頬面チューブ48が患者の上側の右の第1の臼歯を取巻く帯50に固定される。 頬面チューブ48は上側歯列弓44の一端を受け入れる第1の通路を含んでいる。 頬面チューブ48はまたピン5 2を受け入れる第2の通路を有している。 【0026】ピン52は末端が拡大頭部に連結される軸部を有している。 軸部は器具36の上端部分の開口を通って案内される。 軸部の最も外側の中央寄り端部部分が図3に示されるように歯列矯正医により曲げられピン5 2を頬面チューブ48の第2の通路の中に保持するようにしている。 【0027】取付け具20のワイヤ22は器具36の下側部分の開口を縫って通るように通される。 図示のように、連結具24は例えば患者の下側の右の犬歯と下側の右の第1の小臼歯との間で下側歯列弓46の部分へと曲げ加工される。 もちろん、他の取付け位置もまた可能である。 有利には、連結具24は歯列矯正医が必要に応じまた弓形ワイヤ46がブラケット38に取付けられた後に所望の取付け位置を選択できるようにする。 【0028】ワイヤ22の末端部分は臼歯帯56に固定された頬面チューブ54の通路の中に受け入れられる。 帯56はこの例では患者の下側右の第1の臼歯を取巻く。 頬面チューブ54はまた下側の弓形ワイヤ46の右側末端部を受け入れる第2の通路を有している。 図3において(後述の図8と11におけるのと同様に)、器具36の中央部分が破断され頬面チューブ54と隣接要素をより良く示すようにしている。 【0029】好ましくは、ワイヤ22の横断面積は下側弓形ワイヤ46の横断面積より大きく患者の顎42,4 4の運動中器具36によって生じる力によく耐えるようにする。 例えばワイヤ22は0.032インチ(0.8 mm)の直径の円形断面の形状を有し、一方下側弓形ワイヤ46は約0.022インチ(0.5mm)の直径の円形断面の形状を有する。 他の大きさも、もちろん可能である。 【0030】ワイヤ22、又はワイヤ22の少なくとも末端部分はまた円形に代えて正方形又は矩形の横断面形状を有することができる。 例えば、頬面チューブ54が円形の代わりに正方形又は矩形の補助通路を有していたならば、ワイヤ22の横断面の形状はそれにしたがって変えられこの補助通路にぴったり嵌まるようにする。 【0031】理解できるように、取付け具20は使用が容易でまたブラケットを患者の歯から取外し又は補助ワイヤを弓形ワイヤに半田づけする必要なしに取付けるのが容易な安価でしかも効果的な品物を表わしている。 この取付け具20の全体の長さは必要に応じワイヤ22の末端部分を切断することにより適当な長さに容易に変更しワイヤ22の末端部が下側頬面チューブ54から後方に突出しないようにすることができる。 取付け具20はまた患者の下顎42上のブラケット38と弓形ワイヤ4 6の隣接する組立体を堅くし強くする作用をする。 【0032】使用時、ワイヤ22は患者の下顎42に連結されたブラケット38と干渉することなく器具36と下側弓形ワイヤ46との間の摺動連結をもたらす。 連結具24が下側弓形ワイヤ46に回転しないよう固定されているため、取付け具20は所定位置に固定されたままでありそれにより取付け具20又は器具36が患者の口腔内の他のブラケット、用具又は器具を拘束する可能性が実質的に減少されるようにする。 (図面には示されていないが、患者の口腔の左側もまた図3に示される器具36と取付け具20と同様の器具と取付け具を含んでいることが理解されるべきである。) 【0033】ワイヤ22の中央寄り端部部分の“C”字形の形状は器具36の下端部が他の可能な構造とは異なり中央寄りの方向に走行できる距離を増大させる。 図3 に示されるように、顎40,42が実質的に閉じられた時器具36の下端部は等級IIの不正咬合の矯正にとって望まれるように“C”字形の中央寄り端部部分の底に当接する。 一方において、顎40,42が開かれた時、器具36の下側端部は患者の下側の小臼歯上のブラケットに接触することなく末端方向にワイヤ22に沿って自由に摺動でき、それにより患者の口腔内の器具36、取付け具20、ブラケット38及びその他の器具への応力が減少されるようにする。 【0034】図4と5に示されている歯列矯正取付け具20aは連結具24と同一の連結具24aを含んでいる。 取付け具20aはまたワイヤ22aの末端部分が眞直ぐの形状を有している点を除き、ワイヤ22と同一のワイヤ22aを含んでいる。 【0035】しかし、取付け具20aはまた第1の通路62aと第2の通路64aとを有する結合具60aを含んでいる。 結合具60aはまたこの実施態様では比較的剛性のワイヤのほぼ“C”字形部分である本体66aを含んでいる。 適当なワイヤの一例は円形横断面の形状を有する0.034インチ(0.76mm)の直径のステンレス鋼のワイヤである。 【0036】第1の通路62aは本体66aの末端部分にろう付けられた管状部材68aに位置している。 第2 の通路64aは本体66aの中央寄り端部部分にろう付けされた部材70aの内部に位置している。 部材70a は弓形ワイヤをしっかりと掴むためやっとこ又は他の工具の作用のもとに相互に近づくよう内方に動かされる壁部分28と同様の変形可能な壁部分を有している。 【0037】図8は歯列矯正治療を行っている患者のために結合具60aと関連して用いられた時の取付け具2 0aの典型的な目的を示す図である。 図8において、 “a”の表示を欠く番号で示される要素は図3に関して上記した同一番号の要素と同じであり、したがってこれらの要素の詳細な記載は繰返し述べる必要はない。 【0038】図8に示されるように、結合具60aの部材70aは下側頬面チューブ54aの中央側の近くの位置で下側弓形ワイヤ46上に曲げ加工される。 ワイヤ2 2aの末端部分は、必要に応じ適当な長さに切断された後に結合具60aの第1の通路62aの中に挿入される。 さらに、連結具24aが患者の右の犬歯と第1の小臼歯との間の位置で下側弓形ワイヤ46の上に曲げ加工される。 【0039】第1の通路62aとワイヤ22aの末端部分の横断面の形状とは円形でありしたがってそのままならば相互に対し旋回可能となるが、曲げられた連結具2 4aと曲げられた部材70aは本質的に、結合具60a を含む取付け具20aが下側弓形ワイヤ46の長手方向軸線周りに旋回運動するのを不可能にする。 この結果、 取付け具20aは器具36の下端部を患者の下顎42に摺動可能に結合する固定された確実な連結部として作用する。 【0040】任意に、頬面チューブ54aは頬面チューブ54とは、頬面チューブ54aが下側弓形ワイヤ46 を受け入れる単一の通路だけを有し唇緩衝具その他として用いられるような補助通路を有しない点で、相違している。 この結果、結合具60aを用いることによって、 歯列矯正医は器具36のような正しい器具の使用が必要となった時下側頬面チューブ54aを補助通路を有する他の頬面チューブに取替える必要がなくなる。 【0041】本発明の他の実施態様が図9〜11に示されている。 図9と10において、結合具60bが第1の通路62bを有する部材68bと第2の通路64bを有する部材70bとを含んでいる。 部材68b,70bは部材68a,70aとそれぞれ同じであり、したがってこれらの詳細な記載は繰返し述べる必要はない。 【0042】結合具60bはまた、この実施態様では本体66aと同一の材料で作られ本体66aを部材68 a,70aに連結するやり方と同様なやり方で部材68 b,70bに連結されている本体66bを含んでいる。 しかし、この実施態様では、本体66bは図9を参照することにより最も良く理解できるような偏倚した又はほぼ“Z”字形の形状を有している。 【0043】図11は図4と5に示される取付け具20 aの他の要素と関連して結合具60aの所定位置に用いられた時の結合具60bの典型的の目的を示す図である。 図11において、図4〜5と8の番号と同じ番号は同一の要素を示し、したがってこれら要素の詳細な記載は繰返す必要はない。 【0044】結合具60bは図8の結合部60aに関して記載されたのと同様のやり方で下側弓形ワイヤ46に連結される。 同様に、取付け具20aの末端部分は結合具60aへの同じ末端部分の取付けと同一のやり方で図11の結合具60bに連結される。 図11を参照することにより理解されるように、本体66bのほぼ“Z”字形の形状はある環境のもとでは顎40,42が開かれた時図8に示される実施態様の器具36の下端部の走行の可能な範囲に比較して器具36の下端部がさらに末端方向に動くという利点をもたらす。 【0045】本発明の他の実施態様が図12と13に示され第1の通路62cを有する部材68cと第2の通路64cを有する部材70cとを有する結合具60cを示している。 部材68c,70cは部材68a,70aと同一である。 【0046】しかし、結合具60cは本体66a又は本体66bとは若干異なる本体66cを含んでいる。 本体66cは型式304のステンレス鋼のような金属の材料のほぼ“S”字形の棒部分である。 部材68c,70c は本体66cにろう付けされる。 本体66cは最初扁平な材料から打抜き作用により切断され形成される。 【0047】図14と15に示される本発明の実施態様は金属材料の単一の部分で作られた結合具60dに関する。 例えば結合具60dは鋳造、機械加工又は金属射出成形方法により作ることができる。 結合具60dは通路62aと同様な第1の通路62dを有する部材部分68 dと第2の通路64aと同様な第2の通路64dを有する部材部分70dとを含んでいる。 【0048】第2の通路64dを取巻く結合具60dの壁部分は相互に近づくよう内側に向う方向に変形可能である。 この結果壁部分は下側弓形ワイヤ46のような歯列弓に確実の回転不可能な連結をする向きに曲げることができる。 【0049】取付け具20,20aと器具36との組合せに特に有用な本発明の他の形態は図16〜18に示される歯列矯正ピン76である。 ピン76は図16にこれのみが示され、患者の歯に固定された頬面チューブの通路の内部に回転自在に受け入れられる第1の部分80を有する細長い柄78を含んでいる。 柄78はまた第1の部分80から離れた第2の部分82を含んでいる。 【0050】ピン76は第2の部分82の末端部に固定された拡大したほぼ球形の頭部84を有している。 好ましくは頭部84は柄78に一体に連結され、ピン76は300シリーズステンレス鋼のような非腐食性無毒性の材料で作られている。 ピン76は鋳造、機械加工、冷間頭部形成又は金属射出成形方法により作ることができる。 【0051】ピン76の第2の部分82は第1の部分8 0から偏倚している。 図示の実施態様において、第2の部分82は第1の部分80の長手方向軸線と平行であるがこの軸線から偏倚している軸線に沿って延びている。 第2の部分82は第1の部分80と第2の部分82のそれぞれの長手方向軸線に対し好ましくは90°又はそれより小さい角度の軸線に沿って延びる中間部分86によって第1の部分80に連結されている。 【0052】好ましくは、柄78は約0.04インチ(1mm)の直径を有するワイヤ部分で作られる。 任意に、第1の部分80の最も外側の端部部分は柄78の残りの横断面積よりも小さい縮小された横断面積を有しそれによりこの端部部分が必要に応じ歯列矯正医により第1の部分80を器具に挿入した後に容易に曲げることができるようにする。 【0053】図17と18を参照すると、ピン76は歯列矯正治療を行っている患者のために用いられるような典型的な目的で示されている。 図17と18において、 図11に示される番号と同じ番号は同一の要素を示し、 したがってこれら要素の詳細な記載は繰返す必要がない。 ここに用いられるように、“頬面チューブ”は患者の臼歯に固定される任意の器具を意味する。 【0054】まず図17を参照すると、ピン76の取付けは柄78を器具36の上側開口を通しついで柄78の第1の部分80を上側頬面チューブ48の補助通路に挿入することにより行われる。 次に、また図面に示されるように、第1の部分80の最も外側の端部部分が、やっとこ又は他の工具によって、この外側端部部分が第1の部分80の残り部分の長手方向軸線に対し約90°の角度で延びるようになるまで円弧に曲げられる。 この曲げられた外側端部部分はピン76を頬面チューブ48の中に保持する作用をしまた中間部分86はピン76の頬面チューブ48に対する長手方向の摺動運動を制限するためのストッパとして作用する。 【0055】患者の顎40,42が図17に示されるようにほぼ閉じられた時、柄78は図17に示される位置に向って動くようになり第2の部分82が第1の部分8 0の上方に位置し本質的に下側の歯列弓42からできるだけ離れるようになる。 このような位置で、器具36の上端部は頭部84に当接し一方器具36の下端部は患者の下側歯列弓42の中心に最も近いワイヤ22の中央寄り端部部分の底に当接する。 【0056】しかし、顎40,42が図18に示されるように開かれた時、柄78は器具36が眞直ぐの位置に向って接近するよう動くにつれて上側頬面チューブ48 の補助通路の中で旋回する。 上側頬面チューブ48に対する柄78の回動運動は第2の部分82が下顎42に幾分か接近するよう動くことができるようにし、それにより器具36がピン76とワイヤ22に引張り応力が生じる前に通常の眞直ぐの形状に戻るとき器具36の自由の運動のため余分の空間がもたらされるようにする。 顎4 0,42が開かれるにつれて、器具36の下端部はまたワイヤ22に沿って末端方向に摺動し不必要な障害なしに顎40,42の開口を容易にする。 【0057】例えば、第1の部分80が第2の部分82 から2.5mmの距離だけ偏倚していたならば、この偏倚した距離はピン76が180°の円弧にわたって回転するにしたがって器具36が自由に運動するための全部で5mmの余分の空間をもたらす。 このような寸法は一見したところでは比較的小さいが、この余分の空間はピン7 6、上側頬面チューブ48、取付け具20a、下側歯列弓46及び取付け具20aの近くのブラケット38への引張り応力を大きく減少し、それによりこれら要素の破壊とこれらブラケット38の関連する歯からの離脱との可能性が著しく減少されるようにする。 【0058】図19に示されるピン90は上記のピン7 6の他の実施態様である。 ピン90は第1の部分91と第2の部分93とを有する細長い柄92を含んでいる。 拡大された球状頭部94が好ましくは柄92に一体に連結されている。 頭部94と柄92とは好ましくはピン7 6についてすでに述べたような材料で構成される。 【0059】ピン90はまた第1の部分91と第2の部分93との間の位置で曲げ加工により柄92に固く固定されたボールストッパ96を含んでいる。 このボールストッパ96が所定位置に固定される前に、柄92が上記した器具36のような器具の上方部分の開口を通される。 好ましくはボールストッパ92は約2mmから約5mm の範囲の距離で頭部94から間隔があけられ、器具36 の上端部が柄92の第2の部分93上を自由に摺動できるようにする。 【0060】第1の部分91は最初は眞直ぐであり、そして歯列矯正医により頬面チューブ48に挿入後に曲げられる。 使用中、ボールストッパ96が頬面チューブ4 8の中の柄92の摺動運動の範囲を制限し、また器具3 6が例えば患者の顎が開かれまた閉じられた時に起こるような障害なしに第2の部分93に沿って摺動できるようにする。 図面に示されるストッパ96はほぼ球形の形状を有しているが、ストッパがピンの摺動運動を制限するのに効果的でありまた器具(器具36のような)がピンの柄の部分に沿って摺動できる限り、他の型のストッパもまた可能であることが理解されるべきである。 さらに、ストッパは柄と一体とし又は最初は柄とは別体とすることができる。 【0061】図20は、柄92が曲げられそれにより第2の部分93の長手方向の軸線が頬面チューブ48の内部にある第1の部分91の部分の長手方向軸線に対し鋭角で延びるようにしている位置にあるところを示す。 この構造はピン90が頬面チューブ48の内部で第1の部分90の長手方向軸線の周りに上記したような柄78の旋回運動と同様に旋回することができる点で、有利である。 このような旋回運動は器具36の運動のための余分の空間をもたらしそれによりピン90、頬面チューブ4 8及びその他の構成要素に不必要な引張り応力を生じる可能性が著しく減少されるようにする。 もちろん、他の柄の形状、例えば図16〜18に示される偏倚構造もまた可能である。 【0062】当業者はこれらの好適な実施態様の様々な変更と付加が本発明の精神から逸脱することなく可能であることを認めることができる。 さらにまた、取付け具20,20aとピン76は、他の用途に又は器具36とは異なる器具(ハーブスト、等級III の矯正具、内部歯列弓装置、及びその他の器具のような)と共に用いることができる。 このように、本発明は上記詳細な説明の実施態様によって限定されるものではなく、その均等物に及ぶ特許請求の範囲の公正な読解によるべきものである。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の一実施態様によって構成された歯列矯正取付け具の破截側面図である。 【図2】図1に示される取付け具の端面図である。 【図3】歯列矯正治療を行っている患者の上側と下側の歯列弓に典型的な目的で連結された組立体の縮小正面図で、この組立体が図1と2に示される取付け具を含んでいる図である。 【図4】本発明の他の実施態様により構成された取付け具の破截側面図である。 【図5】図4に示される取付け具の端面図である。 【図6】図4〜5の取付け具と共に用いるようになっている結合具の側面図である。 【図7】図6に示される結合具の端面図である。 【図8】本発明の他の実施態様によるまた歯列矯正治療を行っている患者の口腔の中で典型的の目的で示される歯列矯正組立体の縮小側面図で、この組立体が図4〜5 に示される取付け具と図6〜7に示される結合具とを含んでいる図である。 【図9】本発明の他の実施態様により構成された結合具の側面図である。 【図10】図9に示される結合具の端面図である。 【図11】図9と10に示されている結合具が図6〜7 に示される結合具の所定位置にあるところを示す点を除き図8とほぼ同様な図である。 【図12】本発明のさらに他の実施態様により構成された結合具の側面図である。 【図13】図12に示される結合具の端面図である。 【図14】本発明のさらに他の実施態様により構成された結合具の側面図である。 【図15】図14に示される結合具の端面図である。 【図16】本発明の歯列矯正ピンの正面図である。 【図17】歯列矯正治療を行っている患者の口腔の中の典型的な目的で示される歯列矯正組立体の縮小側面図で、この組立体が図16に示されるピンを含んでいる図である。 【図18】患者の顎が開かれている点を除き図17とほぼ同様な図である。 【図19】本発明のピンの他の実施態様を示す図17とほぼ同様の拡大破截側面図である。 【図20】本発明のさらに他の実施態様による図19とほぼ同様な図である。 【符号の説明】 20…歯列矯正取付け具 22…ワイヤ 24…連結具 26…通路 28…壁部分 30…末端部分 32…偏倚部分 34…中央部分 36…器具 38…ブラケット 40…上顎 42…下顎 44,46…歯列弓(弓形ワイヤ) 48…頬面チューブ 50…帯 52…ピン 54…頬面チューブ 56…帯 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ジームズ ダニエル クレアリー アメリカ合衆国,ミネソタ 55144−1000, セント ポール,スリーエム センター (番地なし) |