積層造形装置

申请号 JP2007528375 申请日 2006-06-21 公开(公告)号 JPWO2007013240A1 公开(公告)日 2009-02-05
申请人 株式会社松風; 发明人 井上 智之; 智之 井上;
摘要 積層造形装置(1)は、ベース(12)を保持する保持機構(10)と、ベースの上方から所定 位置 に液剤を付与する液剤付与装置(20)と、ベースの上方から粉体を落下させる粉体付与装置(30)と、ベース上の未固結な粉体を除去する粉体除去装置とを備える。そして、液剤付与装置により液剤を付与し、次いで、粉体付与装置により粉体を付与し、液剤と、液剤上に付与された粉体とを固結させ、次いで、液剤と固結されなかった粉体を粉体除去装置により除去する工程を繰り返し行うことにより、ベース上に立体構造物を形成する。これにより、平滑な表面を少なくとも一部に有し、その結果、表面平滑化処理を省略又は簡素化することができる立体構造物を製作することができる。
权利要求
  • ベースを保持する保持機構と、前記ベースの上方から所定位置に液剤を付与する液剤付与装置と、前記ベースの上方から粉体を落下させる粉体付与装置と、前記ベース上の未固結な粉体を除去する粉体除去装置とを備え、
    前記液剤付与装置により液剤を付与し、次いで、前記粉体付与装置により粉体を付与し、前記液剤と、前記液剤上に付与された前記粉体とを固結させ、次いで、前記液剤と固結されなかった前記粉体を前記粉体除去装置により除去する工程を繰り返し行うことにより、前記ベース上に立体構造物を形成することを特徴とする積層造形装置。
  • 前記保持機構が前記ベースが載置されるテーブルである請求項1に記載の積層造形装置。
  • 前記保持機構が前記ベースに挿入される棒状部材である請求項1に記載の積層造形装置。
  • 前記粉体除去装置が前記ベースを回転させる回転機構を備え、前記未固結な粉体を重力により落下させて除去する請求項1に記載の積層造形装置。
  • 前記粉体除去装置がエアを吹き出すエアノズルを備え、前記未固結な粉体を前記エアにより吹き飛ばして除去する請求項1に記載の積層造形装置。
  • 前記粉体除去装置がエアを吸引する吸引ノズルを備え、前記未固結な粉体を前記吸引ノズルに吸引して除去する請求項1に記載の積層造形装置。
  • 前記保持機構を振動させる振動発生装置を更に備える請求項1に記載の積層造形装置。
  • 前記テーブルの水平方向の周囲を囲む升と、前記升内に盛られた前記粉体の高さをならす均し部材と、前記升と前記テーブルとの高さ方向の相対位置を変化させる昇降機構とを更に備える請求項2に記載の積層造形装置。
  • 前記保持機構が前記ベースが載置されるテーブルであり、
    前記積層造形装置が、前記テーブルの水平方向の周囲を囲む升と、前記升内に盛られた前記粉体の高さをならす均し部材と、前記升と前記テーブルとの高さ方向の相対位置を変化させる昇降機構とを更に備え、
    前記粉体付与装置により前記升内に粉体を付与し、次いで、前記均し部材により前記粉体の高さをならし、次いで、前記液剤付与装置により液剤を付与し、次いで、前記昇降機構により前記升に対して前記テーブルを相対的に下降させる工程を繰り返し行うことにより、前記立体構造物上に更に立体構造物を形成する請求項1に記載の積層造形装置。
  • 前記ベース又は前記ベース上に形成された前記立体構造物を計測する3次元計測装置を更に備える請求項1に記載の積層造形装置。
  • 前記粉体付与装置の下面に、前記下面に形成された開口を塞ぐように、互いに重ね合わされた複数のスクリーンが設けられており、前記複数のスクリーンのそれぞれには前記粉体が通過することができる複数の孔が形成されており、前記複数のスクリーンのうちの少なくとも1つの他のスクリーンに対する相対的な移動を制御することで前記粉体の落下が制御される請求項1に記載の積層造形装置。
  • 前記複数のスクリーンのうちの1つは、帯状のスクリーンの両端が環状に接続されたエンドレススクリーンである請求項11に記載の積層造形装置。
  • 前記粉体付与装置が、傾斜した基板と、前記基板上に配置された複数の分割板とを備え、前記複数の分割板は上下方向に複数の段に分けて配置されており、Nを自然数としたとき、上から第N+1段に含まれる分割板の数は第N段に含まれる分割板の数より多く、各分割板は上方からの粉体流を2つの粉体流に分割する請求項1に記載の積層造形装置。
  • 前記ベースの向きを第1方向及び前記第1方向と異なる第2方向を含む少なくとも2方向に変化させる傾斜機構を更に備え、前記ベースが前記第1方向に向けられた状態及び前記ベースが前記第2方向に向けられた状態のそれぞれにおいて、前記液剤の付与及び前記粉体の落下を行う請求項1に記載の積層造形装置。
  • 前記第1方向に向けられた前記ベースに対して前記液剤の付与と前記粉体の落下とを繰り返し行って前記ベース上に前記液剤と前記粉体とが固結してなる第1固結部層を形成した後、前記第2方向に向けられた前記ベースに対して前記液剤の付与と前記粉体の落下とを繰り返し行って前記ベース上に前記液剤と前記粉体とが固結してなる第2固結部層を形成する請求項14に記載の積層造形装置。
  • 前記第1方向に向けられた前記ベースに対して前記液剤の付与と前記粉体の落下とを行って前記ベース上に前記液剤と前記粉体とが固結してなる第1固結部層を形成する工程と、前記第2方向に向けられた前記ベースに対して前記液剤の付与と前記粉体の落下とを行って前記ベース上に前記液剤と前記粉体とが固結してなる第2固結部層を形成する工程とを交互に繰り返し行う請求項14に記載の積層造形装置。
  • 说明书全文

    本発明は、液剤と粉体とが固結してなる固結部を積層して所望の立体構造物を製作する積層造形装置に関する。

    歯科臨床および歯科研究において、矯正用ブラケット、矯正用装置、インレイ、オンレイ、ブリッジ、コア材、インプラント上部構造、局部床義歯、全部床義歯、各種模型、実験用治具、実験用構造材などの歯科用構造材の製造には、主に手作業による型取り、複製模型の作製、ワックスアップ、埋没、脱鑞、鋳型、築盛、研磨などを組み合わせた煩雑かつ多段階の工程からなる方法が用いられている。 この方法の実施には多岐に渡る材料及び器材の調達、使い分け、適用のための正しい知識が必須であり、更には操作を実施するための十分な習熟と技能が求められる。 従って、歯科用構造材を製造するには多大な労と時間が必要であり、製造効率、生産性の向上には限界がある。 また、数度に渡る型取り作業や鋳造作業による誤差の発生が避けられないため、最終製造品の適合性や色調に不満の残る結果になることが多く、この問題の解消のために更に熟練と手間と時間を要する調整、修正作業を強いられている。

    そのため、近年著しく発達したコンピュータによる加工技術を元にして、品質改善、製造効率の向上を目的とした多くの方法が開発されてきた。

    特開2004−344623号公報及び特開2005−59477号公報には、造形テーブル上にて粉体を層状に積層して所望の立体構造物を製作する積層造形装置が記載されている。 以下にこれを簡単に説明する。

    図26は、従来の積層造形装置100の概略構成を示した斜視図である。 図示したように、互いに直交する平方向軸をX軸及びY軸、上下方向軸をZ軸とする。 図26において、110はZ軸方向に昇降可能な造形テーブル、120は造形テーブル110の水平方向の周囲を取り囲む壁を備えた升、130は粉体を造形テーブル110上に散布する粉体フィーダ、140は液剤を造形テーブル110上に吐出する液剤フィーダ、150は造形テーブル110上に散布された粉体の上面を平面にならす均し部材、160は吐出された液剤を光重合させるための光線を放出する光源である。 図26では、構造を理解しやすくするために、升120を二点鎖線で示して、その中の造形テーブル110を透視している。

    粉体フィーダ130は、Y軸方向において、造形テーブル110の寸法と略同一の粉体散布幅を有する。 粉体フィーダ130は、粉体を散布しながらX軸方向に移動することにより、造形テーブル110の全面に粉体を散布する。

    均し部材150は、その下端にY軸方向に延びた均し端縁151を有する。 均し端縁151を升120の上面122に摺動させながら、均し部材150はX軸方向に移動する。

    液剤フィーダ140は、一軸案内機構148によりY軸方向に移動する。 そして、この一軸案内機構148は図示しない駆動機構によりX軸方向に駆動される。 即ち、液剤フィーダ140は、造形テーブル110上をX軸方向及びY軸方向に走査しながら、所望する位置にて造形テーブル110に向かって液剤を吐出する。

    造形テーブル110は、図示しない駆動機構により一定ピッチで下降される。 この1ピッチに相当する厚さずつ、造形テーブル110上に粉体が積層されて行く。

    立体構造物の製作方法の詳細を図27A〜図27Eを用いて説明する。

    図27Aは、造形テーブル110上に既に粉体が複数層(図では2層)積層された状態を示している。 171は、造形テーブル110上に堆積された複数の粉体層のうちの最上層、172は、最上層171のうち液剤の重合により形成された固結部、173は最上層171の1つ前に堆積された粉体層、174は粉体層173のうち液剤の重合により形成された固結部である。

    この状態において、図27Aに示すように、粉体フィーダ130をX軸方向に移動させながら、そのスリット132から造形テーブル110上に粉体134を散布する。

    次いで、図27Bに示すように、均し部材150をX軸方向に移動させて、粉体134の上面を升120の上面122と同一高さに規制する。 これにより、最上層171上に均一厚さの粉体層175が形成される。

    次いで、図27Cに示すように、液剤フィーダ140を移動させながら、所定の位置にて粉体層175に向かって液剤を吐出する。 176は、粉体層175のうち液剤が付与された部分である。

    次いで、図27Dに示すように、光源160により光を照射して、粉体層175に付与された液剤を重合させ固化させる。 液剤が固化する際、液剤が付与された領域内の粉体が一体化される。 かくして、粉体層175中に固結部177が形成される。

    次いで、造形テーブル110を所定のピッチだけ下降させて、上記の図27A〜図27Dを行う。 以上の工程を必要な回数だけ繰り返し行う。

    最後に、造形テーブル110上の未固結の粉体を除去することにより、図27Eに示すように、固結部174,172,177等が一体となった立体構造物170を得ることができる。

    この方法を利用すれば、例えば歯科用構造材などの複雑な形状を有する立体構造物を製作することも可能である。

    一般に、歯科用構造材では、その表面が滑らかであることが要求される。 特に、局部床義歯や全部床義歯では、患者の口腔内の粘膜面に接する表面の平滑性は、義歯の装着感に大きな影響を及ぼすので極めて重要である。

    ところが、上記の従来の積層造形装置では、完成直後の立体構造物の表面には、積層による段差や粉体による微細な凹凸が残存してしまう。 従って、特に口腔内の粘膜面に接する表面に対しては、表面滑沢剤の付与や研磨処理などの後処理が必要であった。

    本発明は、平滑な表面を少なくとも一部に有し、その結果、表面平滑化処理を省略又は簡素化することができる立体構造物を製作可能な積層造形装置を提供することを目的とする。

    本発明の積層造形装置は、ベースを保持する保持機構と、前記ベースの上方から所定位置に液剤を付与する液剤付与装置と、前記ベースの上方から粉体を落下させる粉体付与装置と、前記ベース上の未固結な粉体を除去する粉体除去装置とを備える。 そして、前記液剤付与装置により液剤を付与し、次いで、前記粉体付与装置により粉体を付与し、前記液剤と、前記液剤上に付与された前記粉体とを固結させ、次いで、前記液剤と固結されなかった前記粉体を前記粉体除去装置により除去する工程を繰り返し行うことにより、前記ベース上に立体構造物を形成する。

    本発明によれば、ベースに、最初に液剤が付与されるので、立体構造物のベースに接していた面にはベースの表面性状が忠実に反映され、積層による段差や粉体による微細な凹凸を低減できる。 従って、平滑な表面を有する立体構造物を得ることができる。 その結果、表面平滑化処理を省略又は簡素化することができる。

    例えば、局部床義歯や全部床義歯を作成した場合には、口腔内の粘膜面に対する適合性が著しく向上するので、患者の口腔内への義歯装着時の調整作業が大幅に軽減され、患者への負担と歯科医の労力及び作業時間とを軽減することができる。

    また、歯科技工士が有床義歯を作製するために従来行っていた多くの工程を大幅に簡略化することができる。

    更に、有床義歯の粘膜面に対する適合性が向上するので、適合性が悪いために再作製するというケースを少なくすることが可能になる。

    また、有床義歯の粘膜面に対する適合性が向上し、また作業者による適合性のバラツキが少なくなるので、患者は義歯安定剤を使用する必要が減少する。 その結果、咬合高径が義歯設計時のとおりとなり、義歯安定剤の使用による咬合高径の変化によって引き起こされる咬合性障害や顎関節異常の発生確率を減少させることができる。

    また、義歯が必要になってから実際に装着するまでの期間を短縮できるので、義歯が完成するまでの患者が不自由な思いをする時間を短くすることができる。

    また、義歯が破損した場合も、高精度の義歯を容易に再作成することができるので、再作製のための診断や完成までの待ち時間を極めて短くすることができる。

    図1は、本発明の実施の形態1に係る積層造形装置の概略構成を示した斜視図である。

    図2Aは、本発明の実施の形態1に係る積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図2Bは、本発明の実施の形態1に係る積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図3Aは、本発明の実施の形態1に係る積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図3Bは、本発明の実施の形態1に係る積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図3Cは、本発明の実施の形態1に係る積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図3Dは、本発明の実施の形態1に係る積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図4は、本発明の実施の形態2に係る積層造形装置の概略構成を示した斜視図である。

    図5は、本発明の実施の形態3に係る積層造形装置の概略構成を示した斜視図である。

    図6は、本発明の実施の形態4に係る積層造形装置の概略構成を示した斜視図である。

    図7Aは、本発明の実施の形態4に係る積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図7Bは、本発明の実施の形態4に係る積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図7Cは、本発明の実施の形態4に係る積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図8Aは、本発明の実施の形態4に係る積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図8Bは、本発明の実施の形態4に係る積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図8Cは、本発明の実施の形態4に係る積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図9は、本発明の実施の形態5に係る積層造形装置の概略構成を示した斜視図である。

    図10Aは、本発明の実施の形態5に係る積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した図である。

    図10Bは、本発明の実施の形態5に係る積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した図である。

    図10Cは、本発明の実施の形態5に係る積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した図である。

    図11は、本発明の実施の形態6に係る積層造形装置の概略構成を示した斜視図である。

    図12は、本発明の実施の形態6に係る積層造形装置における複層スクリーン型粉体フィーダの分解斜視図である。

    図13Aは、本発明の実施の形態6に係る積層造形装置における複層スクリーン型粉体フィーダのスクリーンに形成された微細孔の一例を示した平面図である。

    図13Bは、本発明の実施の形態6に係る積層造形装置における複層スクリーン型粉体フィーダのスクリーンに形成された微細孔の別の例を示した平面図である。

    図13Cは、本発明の実施の形態6に係る積層造形装置における複層スクリーン型粉体フィーダのスクリーンに形成された微細孔の更に別の例を示した平面図である。

    図13Dは、本発明の実施の形態6に係る積層造形装置における複層スクリーン型粉体フィーダのスクリーンに形成された微細孔の更に別の例を示した平面図である。

    図14は、本発明の実施の形態7に係る積層造形装置の概略構成を示した斜視図である。

    図15は、本発明の実施の形態8に係る複層スクリーン型粉体フィーダの概略構成を示した斜視図である。

    図16は、本発明の実施の形態8に係る複層スクリーン型粉体フィーダの一例の下面図である。

    図17は、本発明の実施の形態8に係る複層スクリーン型粉体フィーダの別の例の下面図である。

    図18は、本発明の実施の形態8に係る別の複層スクリーン型粉体フィーダの概略構成を示した側面図である。

    図19は、本発明の実施の形態8に係る更に別の複層スクリーン型粉体フィーダの概略構成を示した斜視図である。

    図20は、本発明の実施の形態9に係る分割板型粉体フィーダの概略構成を示した正面図である。

    図21は、本発明の実施の形態9に係る分割板型粉体フィーダの概略構成を示した側面図である。

    図22は、本発明の実施の形態10に係る立体構造物の一例の断面図である。

    図23Aは、本発明の実施の形態10に係る立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図23Bは、本発明の実施の形態10に係る立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図23Cは、本発明の実施の形態10に係る立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図23Dは、本発明の実施の形態10に係る立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図24は、本発明の実施の形態11に係る立体構造物の一例の端面図である。

    図25Aは、本発明の実施の形態11に係る立体構造物の製作方法の一工程を示した端面図である。

    図25Bは、本発明の実施の形態11に係る立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図25Cは、本発明の実施の形態11に係る立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図25Dは、本発明の実施の形態11に係る立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    従来の積層造形装置の一例の概略構成を示した斜視図である。

    図27Aは、従来の積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図27Bは、従来の積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図27Cは、従来の積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図27Dは、従来の積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図27Eは、従来の積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    前記保持機構が前記ベースが載置されるテーブルであることが好ましい。 これにより、比較的大きな立体構造物を作成することができる。

    あるいは、前記保持機構が前記ベースに挿入される棒状部材であっても良い。 これにより、比較的小さな立体構造物を作成することができる。

    前記粉体除去装置が前記ベースを回転させる回転機構を備え、前記未固結な粉体を重力により落下させて除去することが好ましい。 あるいは、前記粉体除去装置がエアを吹き出すエアノズルを備え、前記未固結な粉体を前記エアにより吹き飛ばして除去することが好ましい。 あるいは、前記粉体除去装置がエアを吸引する吸引ノズルを備え、前記未固結な粉体を前記吸引ノズルに吸引して除去することが好ましい。 いずれの場合も、簡易な方法で未固結な粉体を除去することができる。

    本発明の積層造形装置は、前記保持機構を振動させる振動発生装置を更に備えることが好ましい。 これにより、未固結な粉体の除去を容易且つ短時間で行うことができる。

    本発明の積層造形装置が、前記テーブルの水平方向の周囲を囲む升と、前記升内に盛られた前記粉体の高さをならす均し部材と、前記升と前記テーブルとの高さ方向の相対位置を変化させる昇降機構とを更に備えることが好ましい。 これにより、一定厚さに粉体を散布した後、液剤を粉体上に付与して形成された固結部層を積層して立体構造物を作成することができる。

    前記保持機構が前記ベースが載置されるテーブルであり、前記積層造形装置が、前記テーブルの水平方向の周囲を囲む升と、前記升内に盛られた前記粉体の高さをならす均し部材と、前記升と前記テーブルとの高さ方向の相対位置を変化させる昇降機構とを更に備えることが好ましい。 そして、前記粉体付与装置により前記升内に粉体を付与し、次いで、前記均し部材により前記粉体の高さをならし、次いで、前記液剤付与装置により液剤を付与し、次いで、前記昇降機構により前記升に対して前記テーブルを相対的に下降させる工程を繰り返し行うことにより、前記立体構造物上に更に立体構造物を形成することが好ましい。 これにより、アンダーカット形状など複雑な形状を有する立体構造物の作成が容易になる。

    本発明の積層造形装置が、前記ベース又は前記ベース上に形成された前記立体構造物を計測する3次元計測装置を更に備えることが好ましい。 これにより、ベースの形状の測定、保持機構に対するベースの位置決め、ベース上に形成された立体構造物の形状の測定などを容易に行うことができる。

    前記粉体付与装置の下面に、前記下面に形成された開口を塞ぐように、互いに重ね合わされた複数のスクリーンが設けられていても良い。 この場合、前記複数のスクリーンのそれぞれには前記粉体が通過することができる複数の孔が形成されていることが好ましい。 また、前記複数のスクリーンのうちの少なくとも1つの他のスクリーンに対する相対的な移動を制御することで前記粉体の落下が制御されることが好ましい。 これにより、開口の形状や大きさにかかわらず、粉体の落下の開始及び停止を容易に制御することができる。 換言すれば、粉体付与装置からの粉体の落下領域に関する設計の自由度が向上する。

    前記複数のスクリーンのうちの1つは、帯状のスクリーンの両端が環状に接続されたエンドレススクリーンであることが好ましい。 エンドレススクリーンを一方向に連続的に移動させることにより、粉体を安定的に連続して落下させることができる。

    前記粉体付与装置が、傾斜した基板と、前記基板上に配置された複数の分割板とを備えていても良い。 この場合、前記複数の分割板は上下方向に複数の段に分けて配置されていることが好ましい。 また、Nを自然数としたとき、上から第N+1段に含まれる分割板の数は第N段に含まれる分割板の数より多いことが好ましい。 更に、各分割板は上方からの粉体流を2つの粉体流に分割することが好ましい。 これにより、広い領域に大量の粉体を散布することが可能になるので、立体構造物の形成時間を短縮することができる。

    本発明の積層造形装置が、前記ベースの向きを第1方向及び前記第1方向と異なる第2方向を含む少なくとも2方向に変化させる傾斜機構を更に備えることが好ましい。 この場合、前記ベースが前記第1方向に向けられた状態及び前記ベースが前記第2方向に向けられた状態のそれぞれにおいて、前記液剤の付与及び前記粉体の落下を行うことが好ましい。 これにより、ベースの表面に例えば窪みが形成されていても、窪み内に固結部層を形成することができる。 従って、ベースの形状を問わず、容易に所望する形状の立体構造物を形成することができる。

    上記において、前記第1方向に向けられた前記ベースに対して前記液剤の付与と前記粉体の落下とを繰り返し行って前記ベース上に前記液剤と前記粉体とが固結してなる第1固結部層を形成した後、前記第2方向に向けられた前記ベースに対して前記液剤の付与と前記粉体の落下とを繰り返し行って前記ベース上に前記液剤と前記粉体とが固結してなる第2固結部層を形成しても良い。

    あるいは、前記第1方向に向けられた前記ベースに対して前記液剤の付与と前記粉体の落下とを行って前記ベース上に前記液剤と前記粉体とが固結してなる第1固結部層を形成する工程と、前記第2方向に向けられた前記ベースに対して前記液剤の付与と前記粉体の落下とを行って前記ベース上に前記液剤と前記粉体とが固結してなる第2固結部層を形成する工程とを交互に繰り返し行っても良い。

    いずれの場合も、所望する形状の立体構造物を効率よく形成することができる。

    以下、本発明を実施の形態を示しながら詳細に説明する。

    (実施の形態1)
    図1は、本発明の実施の形態1に係る積層造形装置1の概略構成を示した斜視図である。 図示したように、互いに直交する水平方向軸をX軸及びY軸、上下方向軸をZ軸とする。

    造形テーブル(保持機構)10上にベース12が保持される。 立体構造物はベース12上に積層形成される。 造形テーブル10には、Y軸方向を長手方向とするアーム40の一端が結合され、アーム40の他端は図示しない回転駆動機構に接続されている。 回転駆動機構はアーム40を矢印42の方向に回転させ、造形テーブル10を反転させることができる。

    液剤フィーダ(液剤付与装置)20はベース12の上方から液剤を吐出し落下させる。 液剤フィーダ20は、一軸案内機構28によりY軸方向に移動する。 そして、この一軸案内機構28は図示しない駆動機構によりX軸方向に駆動される。 即ち、液剤フィーダ20は、ベース12上をX軸方向及びY軸方向に走査しながら、所望する位置にて液剤を吐出する。

    粉体フィーダ(粉体付与装置)30は、粉体を落下させるスリット32をその下面に有する。 粉体フィーダ30は、Y軸方向において、少なくともベース12の寸法以上の粉体散布幅を有する。 粉体フィーダ30は、粉体を散布しながらX軸方向に移動することにより、ベース12の上方から粉体を落下させる。

    造形テーブル10の上方には、3次元計測ユニット50が設けられている。

    このような積層造形装置1を用いた立体構造物の製作方法を説明する。

    まず、図2Aに示すように、造形テーブル10上にベース12を固定する。 例えば、有床義歯を製作する場合、ベース12は患者の顎堤を複製したものであり、その上面は患者の口腔内の粘膜面形状と同じ形状を呈する。

    但し、セメントスペースの確保や装着感向上のために、最終的に得られる立体構造物と患者の口腔内の被装着面との間に所望の隙間を確保したい場合には、ベース12の表面の一部又は全部に、隙間付与材として金属、樹脂などからなる箔や薄層が貼付又は塗布されていても良い。

    この際、図2Bに示すように、3次元計測ユニット50を用いて、造形テーブル10上にベース12を正確に位置決めしても良い。 また、3次元計測ユニット50を用いて、ベース12の上面形状を計測しても良い。

    次に、図3Aに示すように、液剤フィーダ20を移動させながら、所定の位置にてノズル21より液剤22を吐出する。 かくして、ベース12上の所定位置に液剤22が付着する。

    1層の固結部層を形成するための液剤の吐出は、液剤フィーダ20の1回の走査で完了させても良いが、複数回の走査に分けて行っても良い。 複数回の走査に分けることにより、例えば液剤として粉体を膨潤させる材料を用いる場合に粉体の膨潤の進行を抑制したり、液剤のにじみを抑えて所望する領域の外に液剤が広がるのを防止したりすることができる。

    次に、図3Bに示すように、粉体フィーダ30をX軸方向に移動させながら、ベース12が粉体34で覆われるようにスリット32から粉体34を落下させる。 そして、液剤22が付着した部分では、液剤22により粉体を膨潤させ、液剤22を重合させて、液剤と粉体とを固結させる。

    次に、図3Cに示すように、アーム40を介して造形テーブル10を反転させる。 これにより、ベース12上の、液剤22により固結された粉体を除く余剰の粉体34が重力により落下して除去される。 その結果、ベース12上に、液剤と粉体とが固結して形成された固結部61が形成される。

    造形テーブル10に造形テーブル10を振動させる振動発生装置が設けられていても良い。 造形テーブル10を反転させたときに造形テーブル10を振動させることにより、余剰の粉体34の除去を容易且つ短時間に行うことができる。 振動発生装置としては、特に制限はないが、例えば電動モータの回転軸に偏心した重りを取り付けた装置を用いることができる。

    図3Aから図3Cと同様の工程を必要回数だけ繰り返して行い、ベース12上に液剤と粉体とが固結して形成された固結部層を順に積層していく。 液剤フィーダ20による液剤の付与位置を変えれば、各固結部層の積層位置を変えることができる。 その結果、図3Dに示すように、ベース12上に、液剤と粉体とが固結した多数の固結部層からなる立体構造物60を形成することができる。

    造形テーブル10上の立体構造物60の完成形状を、3次元計測ユニット50を用いて計測しても良い。

    その後、立体構造物60をベース12から分離して、所望する形状を有する立体構造物60を得る。 必要により表面仕上げ処理を行い、表面滑沢性を向上させても良い。

    本発明では、ベース12上に、最初に液剤を付与し、次いで粉体を散布し、その後、液剤と粉体とを固結させる。 即ち、ベース12の表面には、最初に、粉体ではなく液剤が付与される。 従って、最終的に得られる立体構造物60のうち、ベース12と接触していた面(下面)は、ベース12の表面がほぼ忠実に転写される。 よって、ベース12の表面を滑らかな面にしておけば、これと同様の滑らかな面を得ることができる。

    例えば、歯科用構造材を製作する場合、患者の口腔内の粘膜面形状を再現した滑らかな上面を有するベース12を用いれば、粘膜面に接する面を平滑にすることができる。 従って、この面に対する表面平滑化処理を省略又は簡素化することができる。 また、表面平滑化処理による寸法精度の悪化を低減できるので、適合性が悪化しない。 以上により、高度に熟練した作業者によらずに、歯科用構造材を短時間で高精度に製作できる。

    本発明において、積層厚み(1層の固結部の厚み)は立体構造物の用途に応じて変更することができる。 積層厚みを小さくすれば、解像度が増加し、寸法精度や表面平滑性が向上する。

    [粉体]
    粉体の材料は、有機物、無機物、金属酸化物など任意の種類の粒体を一種類または複数種類を組み合わせて使用することが可能である。 粉体の材料に特に制限はないが、材料の選択に際しては立体構造物の用途を考慮することが好ましい。 例えば、歯科用構造材を製作する場合には、安全性や加工性を考慮して、歯科において広く用いられている実績のある材料を用いることが好ましい。 具体的には、ガラス系材料、各種金属酸化物、各種セラミックス材料、各種ポリマー、または以上の材料を組み合わせた組成物などを用いることができる。 また、粉体の表層がこれらの材料で覆われていても良い。

    樹脂材料を用いる場合、例えば、メチルメタアクリレート重合体、エチルメタアクリレート重合体、メチルメタアクリレートとエチルメタアクリレートとの共重合体のうちのいずれか1種類、あるいはこれらのうちの2種類以上の混合物を用いることができる。 この場合、粉体中に上記樹脂材料からなる粉体を30重量%以上(更には50重量%以上、特に70重量%以上)含有することが好ましく、更に有機粉体、無機粉体、金属酸化物粉体のうちいずれか1種類または2種類以上を含んでいても良い。

    粉体には必要に応じて各種の表面処理を施すことも可能である。 例えばシラン処理や加熱処理を実施できる。

    粉体の形状には特に制限はなく、不定形、球形、ドーナツ型、ポーラス状、凝集塊、ウィスカ、棒状、針状、多孔質、ディンプル状などの形状を目的に応じて適宜選択して用いることができる。 不定形、球形、ドーナツ型、ポーラス状などは造形しやすいという利点を持つ。 ウィスカ、棒状、針状は、硬化後の強度向上に大変効果がある。 凝集塊、多孔質、ディンプル状などは、粉体と液剤との接着性の向上に効果があり、硬化後は大きな機械的強度を発現し且つ維持できるという利点を持つ。

    粒径についても特に制限はないが、一回の積層厚さより小さい粒径である必要がある。 具体的には平均粒子径が0.001μm以上、0.5mm以下であることが好ましい。 更には0.1μm以上、0.3mm以下、特に10μm以上、0.15mm以下であることが好ましい。

    粉体の供給方法としては、粉体を貯留タンク内に準備しておき、チューブを通して粉体フィーダ30に供給する方法や、粉体フィーダ30自身が貯留タンクを備え重力によりスリット32から落下させる方法などをとることができる。 貯留タンクを複数設置して、夫々の貯留タンクに組成や色調などが異なる複数種類の粉体を準備しておき、立体構造物の製作時に目的に合わせて複数種類の粉体を適宜使い分け、組み合わせて使用することもできる。 複数種類の粉体を切り替えて使用する場合には、貯留タンクからスリット32への粉体供給や、スリット32の開閉をコンピュータによって制御することが好ましい。

    スリット32のX軸方向の開口幅は使用する粉体の最大の粒子径の2倍以上、更には6倍以上であることが好ましい。

    上記の図3Cの工程において除去され落下した粉体34を効率よく回収するために、トレイ、吸引装置、及び運搬機構を造形テーブル10の下部に設けてもよい。 回収した粉体はふるいにかけてゴミを取り除いた後に再び貯留タンクに戻して繰り返して使用することもできる。

    [液剤]
    液剤は硬化して粉体と一体化して、固結部のバインダーとなる。

    液剤としては、重合性単量体を基本として目的に応じて各種の添加剤を配合したものを使用することが可能である。 また、液剤は、本発明の実施上求められる粘度や各種物性を損なわない限りにおいて任意の粒体、フィラー、繊維状物質などを含むことも可能である。 液剤の材料に特に制限はないが、材料の選択に際しては立体構造物の用途を考慮することが好ましい。 例えば、歯科用構造材を製作する場合には、安全性や加工性を考慮して、歯科において広く用いられている実績のある材料を用いることが好ましい。 具体的には、水、アクリル系、ウレタン系または他の系統を主成分とするモノマー又はオリゴマー、これらのモノマー又はオリゴマーと可塑剤とからなる組成物、有機溶媒のうち少なくとも1種類以上から成る組成物、これらを混合した液状体が好ましい。

    液剤の主成分となる重合性単量体としてはメチルメタアクリレート、またはエチルメタアクリレートが好ましい。

    例えば、ポリアルキルアクリレートポリマーが0.1〜35重量%溶解された液剤を用いることができる。

    液剤の粘度が低くて射出に適さない場合は、増粘作用を有する成分を含有させることが望ましい。 例えばウレタン系樹脂等の高分子量の重合性単量体や比較的小さな分子量で重合時に架橋材として用いられることの多いエチレングリコールジメタアクリレート、トリエチレングリコールジメタアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタアクリレート、1,6ヘキサンジオールジメタアクリレートなどの重合性単量体を好適に用いることができる。

    また、色調が異なる複数の液剤を用意しておき、これらの液剤を配合量を変化させて混合(混色)して任意の色調の液剤を得ることもできる。 基本的に減算混色理論により所望の色調を得ることができる。 透明度の制御は透明液剤と不透明液剤との混合で行う。 すなわち、透明液剤の配合量を多くすれば透明性が向上し、不透明液剤の配合量を多くすれば透明性が低下する。 白色の不透明材を用いて不透明液剤を調製すれば、不透明化と同時に明度を向上させることができる。 明度を低下させるためには黒色液剤を使用するのが望ましい。

    色調が互いに異なる2以上の液剤からなる色調セットを予め準備する場合、選択する色調に特に制限はなく、色相、明度、彩度の範囲には一切の制限はない。 例えば歯科用構造材を製作する場合には、その使用目的に合致する限りにおいて任意の色調を選択できる。 色調セットを構成する色調数は、歯科用構造材の使用目的に応じて1又は2以上の任意の数でよい。 色調数の上限は特に設けないが、通常は液剤の保守や設置スペースの確保などの観点からは可能な限り少ない色調数で可能な限り多数の色調を再現できることが好ましい。 そのため、1〜24色、更には2〜12色、特に3〜8色からなる色調セットが好ましい。 3〜8色のセットとした場合、赤、黄、黒を必ず加える事が好ましい。 これに粉体自体の色である白色を組み合わせることでほとんどの歯牙、歯肉の色調が再現できる。 他には明度や彩度を調整するための色やキャラクタライズに用いる色を加えて色調セットを構成することができる。

    あるいは、エナメル質、象牙質、歯肉の各色調に調整した液剤を各部に応じて用いることもできる。 この方法は、色調が異なる複数の液剤を混合する方法に比べて、色調のバリエーションや細かな色調調整の観点からは劣るが、日常の補綴物の作製のように再現する色調がほぼ限られている場合には用意する液剤の種類や在庫を最小限に抑えることができるので合理的である。

    重合後の物理的及び/又は化学的特性が互いに異なる複数の液剤からなる液剤セットを用いることもできる。 例えば、歯牙の内部は強靭性に優れた樹脂を主成分とする液剤を用いて形成し、エナメル質部は硬度が高く耐磨耗性に優れた樹脂を主成分とする液剤を用いて形成することで、磨耗しにくく且つ割れにくい、長期間の使用に耐える義歯を作製することができる。

    異なる色調と異なる物性を持った各種液剤を任意に組み合わせて液剤セットを構成することも勿論可能である。 これにより、従来の手作業又は機械による自動製作による歯科用構造材の作成方法と比較して、審美性及び機能性をともに向上させることが可能になり、歯科臨床および研究用として幅広い用途に適用することができる。

    [液剤フィーダ]
    ベース12の上方から一定量の液剤を吐出する液剤フィーダ20は、液剤貯留タンクと直接あるいはチューブを介して間接的に接続されている。 液剤貯留タンクは液剤フィーダ20と一緒に設置されていても良いし、別に設置されていても良い。 液剤貯留タンクが交換可能なカートリッジであっても良い。 これにより液剤の種類を変更したり、液剤を補充する際の作業が簡便となる。

    液剤フィーダ20の液剤が吐出されるノズル21の口径は、吐出量、分解能、製作しようとする立体構造物の形状や大きさ等を考慮して適宜選択することができるが、1μmから500μmの範囲にあることが好ましい。 歯科用構造材を製作する場合には、3μmから200μmの範囲、更には6μmから50μmの範囲にあることが好ましい。

    液剤フィーダ20の動作原理としては、種々のものを用いることができる。 例えば、空気や窒素ガスなどの気体を用いてその圧力によって液剤を吐出する方式、ピエゾ素子を用いて微小量の液剤を飛ばす方式、バブルジェット(登録商標)方式、液剤を帯電させて電気的な引力を利用して吐出する方式、超音波などのエネルギーを利用して液剤を飛ばす方式などを使用でき、液剤の種類、吐出量、製作しようとする立体構造物などに応じて適宜選択することができる。 中でも、空気などの気体圧力によって液剤を吐出する方式、ピエゾ素子を用いる方式、バブルジェット(登録商標)方式などが好ましい。

    一個の液剤フィーダ20に2種以上の液剤を供給しても良い。 この場合、各々の液剤供給パイプを液剤フィーダ20に直結してもよいし、あるいは、各々の液剤供給パイプを合流させた一つの供給パイプを液剤フィーダ20に接続してもよい。

    液剤フィーダ20の数は1つに限らず、複数でも良い。 この場合、各液剤フィーダ20に異なる液剤をそれぞれ供給しても良いし、全ての液剤フィーダ20に同じ液剤を供給しても良い。

    1つの液剤フィーダ20が備える液剤吐出ノズルの数は、1つに限らず、複数であっても良い。 液剤フィーダ20が1つのみのノズルを備える場合であっても、図1に示したように、液剤フィーダ20をX軸及びY軸に駆動するすることにより、ベース12上の所望する位置に液剤を付与することができる。

    液剤フィーダ20が複数のノズルを有する場合、全てのノズルが同じ液剤を吐出しても良いし、ノズルごとに異なる液剤を吐出しても良い。 1つの液剤を吐出するノズルの数が多いほど、処理速度が向上する。

    複数のノズルの配置に特に制約はないが、直線又は曲線に沿った一列配置や格子点状配置が好ましい。 ノズルの配置は液剤フィーダ20の移動方向を考慮して決定するのが好ましい。

    Y軸方向において、ベース12の寸法より広い範囲にわたって複数のノズルを配置すれば、液剤フィーダ20のY軸方向の移動を省略できる可能性がある。 例えば、複数のノズルを、Y軸方向に、造形テーブル10の幅と同じ範囲にわたって配置すれば、液剤フィーダ20をX軸に方向に1度移動するだけで任意のサイズのベース12上の任意の位置に液剤を付与することができる。

    あるいは、複数のノズルを造形テーブル10の全領域に対応する範囲内に格子点状に配置すれば、液剤の付与時に液剤フィーダの移動を省略できる可能性がある。 但し、この場合、粉体を付与する際に液剤フィーダを退避させる必要がある。

    更に、液剤フィーダ20のZ軸方向の位置を変化させる機構や、液剤フィーダ20をX軸及び/又はY軸方向に移動させる機構全体を水平面内で回転駆動する機構を設けても良い。

    異なる液剤を異なるノズルにそれぞれ供給し、個々のノズルの吐出量を独立して制御しても良い。 例えば、色調が異なる複数の液剤を使用する場合には、個々のノズルの吐出量を変化させることで部位により色調が変化した立体構造物を製作することができる。 また、固結後の物性が互いに異なるように調整した複数の液剤を使用する場合には、個々のノズルの吐出量を変化させることで部位により物性が変化した立体構造物を製作することができる。

    [液剤固結方法]
    液剤は重合することにより粉体とともに固結する。 液剤を重合させる方法としては、特に制限はないが、化学重合、光重合、熱重合、紫外線重合、近赤外線重合、遠赤外線重合、超音波重合など工業界において広く普及している任意の方法をひとつ、あるいは複数用いることができる。

    液剤を化学重合させるためには、例えば、粉体に過酸化ベンゾイルを配合し、液剤に3級アミン、バルビツール酸などを配合しておくことが好ましい。 これにより、付着した液剤上に粉体が散布され、液剤と粉体とが接触すると、液剤が粉体に含浸され、粉体が膨潤し、液剤と粉体とに夫々配合した化学重合触媒が接触することで化学重合が起こって硬化する。 この場合、液剤が付与された部分でのみ重合硬化し、液剤が付与されなかった部分では重合硬化しない。 したがって、液剤が付与されず、その結果、固結されなかった不要な粉体を回収して再度ベース12上に散布することができる。

    粉体及び/又は液剤を予め加熱しておき、液剤が粉体に含浸したときに熱エネルギーで化学重合を促進させることもできる。

    液剤を加熱する方法は特に制限はなく、目的に応じて自由に選択することが可能である。 例えば、液剤フィーダ20の液剤吐出ノズル21にヒーターを設置しても良い。

    ノズルにヒーターを設置することは、副次的に液剤の粘度を低下させるという効果をもたらす。 これにより、常温では射出には適さないような高い粘度の液剤を射出することが可能になる。 常温では射出に適さないような高い粘度の液剤としては、例えばフィラーやポリアルキルメタアクリレートを含有あるいは溶解させた液剤や、液剤を構成する一部の液状成分が高粘度液体であるため、全体の粘度が高くなった液剤などが挙げられる。

    化学重合法では一層の積層ごとに光を照射するなどの重合操作を行う必要がない。 従って、立体構造物の製作中に重合操作のための時間が不要になり、省力化と製作時間の短縮を図ることができる。

    従来から樹脂材料の重合硬化に用いられている1又は複数の重合方法を併用することももちろん可能である。 例えば造形時は化学重合法によって重合硬化を進行させ、造形終了後に全体を加熱して最終重合させることで未反応モノマーの減少や物性の更なる向上等を図ることができる。

    液剤を化学重合させる場合には、液剤を重合させるための特別な装置が不要である。 液剤と粉体とが化学重合反応によって硬化すると、空気に触れている表層より深さ500μm(更には300μm、特に200μm)の範囲内に未重合層が残存する。 その後、この上に次層を積層すると、下層の表層に存在する上記未重合層と上層とが、上層の化学重合反応によって一体的に重合し硬化する。

    液剤を光重合させる場合には、ベース12に光を照射できるように光照射器を位置と向きを調整して設置する。 必要であればコンピュータを含む光照射方向制御装置を設けることも可能である。 ベース12の上方より液剤を吐出し、次いで、粉体を散布して、粉体に液剤を含浸させた後、光を照射して重合、硬化させる。 この場合には液剤にのみ光重合触媒を配合しておけば、液剤が付与された部分だけが重合硬化し、液剤が付与されなかった部分は重合硬化しない。 したがって、液剤が付与されず、その結果、固結されなかった不要な粉体を回収して再度ベース12上に散布することができる。

    液剤を熱重合させる場合には、例えば過酸化ベンゾイルなど熱を加えることでラジカルを発生する重合開始材を液剤にのみ配合しておく。 そして、加熱された粉体を散布する。 液剤は粉体による熱により重合し、硬化する。 液剤が付与されなかった部分は重合硬化しない。

    液剤を紫外線、近赤外線、又は遠赤外線を用いて重合させる場合には、ベース12の任意の場所に所定波長のビームを照射できるように光線照射装置を位置と向きを調整して設置する。 必要であればコンピュータを含む光照射方向制御装置を設けることも可能である。 ベース12の上方より液剤を吐出し、次いで、粉体を散布して、粉体に液剤を含浸させた後、細い光ビームを所望位置に照射して重合エネルギーを印加して、ビームが照射された部分のみを重合、硬化させる。

    近赤外線を用いる場合には、例えば過酸化ベンゾイルなど熱を加えることでラジカルを発生する重合開始材を液剤及び/又は粉体に配合しておく。

    紫外線を用いる場合には、液剤に周知の紫外線重合開始材(例えばベンゾインメチルエーテルなど)を適量添加しておく。 この場合、使用される液剤としては、歯科用構造材を製作する場合には、歯科用として紫外線重合の使用実績があるものであれば何ら制限を設けずに用いることが出来る。

    ビームを部分的に照射するのではなく、全体に同時に照射することも可能である。 この場合は、液剤のみに重合開始剤を配合し、上記の光重合を行うのと同様の操作を行う。

    樹脂材料の重合硬化法として従来より用いられている、複数の重合方法を併用して重合硬化させることももちろん可能である。 例えば光重合と化学重合とを組み合わせて、光が到達しない部分では化学重合にて硬化させ、一般的に化学重合では重合性が低下する表面近傍では光重合で十分に硬化させるというように、夫々の欠点を夫々の利点で補うような重合方法を用いることができる。

    [コンピュータ]
    積層造形装置は、各種情報を記憶し、演算し、積層造形装置を構成する各要素の動作を制御するために、コンピュータを備える。 ハードウェアに関しては、広く普及している一般的なパーソナルコンピュータが使用できる。 ソフトウェアに関しては、得ようとする立体構造物の形状を記憶、編集、保持、保存する機能と、異なる材料を使い分けるための演算機能と、形状のデータに基づいて積層造形装置の各要素の制御データを生成する機能と、生成した制御データにしたがって各要素を制御して立体構造物を自動的に製作する機能とを備えることが好ましい。

    コンピュータを用いて、得ようとする立体構造物の3次元形状データを作成しても良い。 例えば、予め作製した模型などの形状を計測することにより、またはCADの使用などにより形状データを作成できる。 また、形状計測データをCADや他のソフトを用いて編集して形状データを作成することも勿論可能である。

    形状計測のために3次元計測ユニット50を利用しても良い。 例えば、造形テーブル10上にベース12を載置して、立体構造物が形成される面の形状を3次元計測ユニット50を用いて測定しても良い。 この測定データを、得ようとする立体構造物の3次元形状データの作成に利用することができる。

    3次元形状データに、内部構造データを加えても良い。 また、色調や物性に関するデータを加えても良い。 このとき、色調や物性は、立体構造物全体で均一である必要はなく、各部で異ならせても良い。 更に、グラデーション様に色調や物性を順次変化させても良い。 各部の色調を決定する際に、機械測色装置のデータを用いることもできる。 設定された色調を再現できるように、液剤の選択と吐出量とが演算され、液剤吐出制御データに付加される。

    このようにして作成した3次元形状データを一定ピッチの複数の水平面で切断して、液剤吐出制御データが作成される。 このときのピッチは一回の積層高さと同じに設定される。 使用する液剤と粉体の組み合わせによっては、膨潤や化学反応等による膨張あるいは収縮が生じる。 これらを考慮して1層の固結部層を形成するための液剤及び粉体の付与量が決定される。

    コンピューターは、各層の液剤吐出制御データに基づいて、液剤フィーダ20の位置と、液剤の吐出とを制御する。

    必要な精度と速度で粉体を積層するために、コンピューターは、粉体フィーダ30の移動、粉体落下の開始と停止、粉体貯留タンクから粉体フィーダ30への粉体の供給をも制御することが好ましい。

    コンピュータは、更に、ネットワークを介して必要なデータのやり取りをする機能、3次元計測ユニット50からのデータを処理する機能、各部の状態をモニタする機能、必要に応じて警告を発したり各要素の動作を緊急停止したりする安全機能などを有していても良い。

    [後処理]
    得られた立体構造物60のベース12に接していた面にはベース12の表面性状が忠実に反映される。 ベース12の表面が滑らかであれば、これと接していた面には積層による段差や粉体による微細な凹凸は極めて少ない。 但し、必要に応じて更に表面仕上げ処理を行っても良い。 また、立体構造物60のベース12に接していた面以外の面に形成された積層による段差や微細な凹凸を解消するために各種表面仕上げ処理を行っても良い。

    積層段差や凹凸を解消するためには、段差解消材を塗布して段差や凹凸を埋め、研削、研磨して仕上げる方法、段差解消材を含有する液に立体構造物を浸漬して引き上げ、研削、研磨して仕上げる方法、超音波振動子を段差や凹凸のある部分に当てて部分的に溶解させることで表面を滑らかにし研磨して仕上げる方法などを好適に用いることができる。

    段差解消材としては、造形に用いたのと同種の粉体と液剤を混合したものを基本的な組成とし、流動性やチクソトロピー性を目的に応じて最適な値に調整したものを用いることが望ましい。

    更に、必要であれば表面滑沢剤への浸漬処理や研磨を行い、段差や凹凸の解消と表面滑沢性を付与してもよい。

    (実施の形態2)
    図4は、本発明の実施の形態2に係る積層造形装置2の概略構成を示した斜視図である。 図1と同一の構成要素には同一の符号を付してあり、これらについての詳細な説明を省略する。

    以下、本実施の形態2を、実施の形態1との相違点を中心に説明する。

    本実施の形態2に係る積層造形装置2は、実施の形態1に係る積層造形装置1が有していた、造形テーブル10を反転させるアーム40に代えて、造形テーブル10上のベース12に向かってエア72を吹き付けるエアノズル70を有している。

    液剤により固結されなかった余剰の粉体を除去するために、実施の形態1では図3Cに示すように造形テーブル10を反転させて落下させた。 これに対して、本実施の形態2では、エアノズル70からエア72をベース12に向かって吹き付けて、空気圧により余剰の粉体を吹き飛ばして除去する。

    ベース12の全面にエア72が吹き付けられるように、エアノズル70の位置やエア72の吹き出し方向が可変であっても良い。

    造形テーブル10に造形テーブル10を振動させる振動発生装置が設けられていても良い。 造形テーブル10を振動させながらエア72を吹き付けることにより、余剰の粉体の除去を容易且つ短時間に行うことができる。

    本実施の形態2は、余剰の粉体の除去方法が実施の形態1と異なる点を除いて、実施の形態1と同様であり、実施の形態1と同様の効果を奏する。

    なお、実施の形態1において、図3Cに示すように造形テーブル10を反転させた状態で、本実施の形態2に示すエアノズル70を用いて余剰の粉体34を吹き飛ばして除去しても良い。 これにより、余剰の粉体のより完全な除去が可能になる。

    (実施の形態3)
    図5は、本発明の実施の形態3に係る積層造形装置3の概略構成を示した斜視図である。 図1と同一の構成要素には同一の符号を付してあり、これらについての詳細な説明を省略する。

    以下、本実施の形態3を、実施の形態1との相違点を中心に説明する。

    本実施の形態3に係る積層造形装置3は、実施の形態1に係る積層造形装置1が有していた、造形テーブル10を反転させるアーム40に代えて、造形テーブル10上のベース12の周囲のエア82を吸引する吸引ノズル80を有している。

    液剤により固結されなかった余剰の粉体を除去するために、実施の形態1では図3Cに示すように造形テーブル10を反転させて落下させた。 これに対して、本実施の形態3では、エア82とともに余剰の粉体を吸引ノズル80に吸引して除去する。

    ベース12の全面からエア82を吸引できるように、吸引ノズル80の位置やエア82の吸引方向が可変であっても良い。

    造形テーブル10に造形テーブル10を振動させる振動発生装置が設けられていても良い。 造形テーブル10を振動させながら余剰の粉体を吸引することにより、余剰の粉体の除去を容易且つ短時間に行うことができる。

    本実施の形態3は、余剰の粉体の除去方法が実施の形態1と異なる点を除いて、実施の形態1と同様であり、実施の形態1と同様の効果を奏する。

    なお、実施の形態1において、図3Cに示すように造形テーブル10を反転させた状態で、本実施の形態3に示す吸引ノズル80を用いて余剰の粉体34を吸引して除去しても良い。 これにより、余剰の粉体のより完全な除去が可能になる。

    また、実施の形態2に示したエアノズル70を用いて余剰の粉体を吹き飛ばし、同時に、飛散した粉体を本実施の形態3に示した吸引ノズル80で吸引しても良い。

    更に、実施の形態1において、図3Cに示すように造形テーブル10を反転させた状態で、実施の形態2に示したエアノズル70を用いて余剰の粉体を吹き飛ばし、同時に、飛散した粉体を本実施の形態3に示した吸引ノズル80で吸引しても良い。

    (実施の形態4)
    図6は、本発明の実施の形態4に係る積層造形装置4の概略構成を示した斜視図である。 図1と同一の構成要素には同一の符号を付してあり、これらについての詳細な説明を省略する。

    以下、本実施の形態4を、実施の形態1との相違点を中心に説明する。

    本実施の形態4に係る積層造形装置4は、造形テーブル10の水平方向の周囲を取り囲む壁を備えた升90と、水平面と平行な升90の上面92上をX軸方向に摺動する均し部材95とを備える。 また、造形テーブル10は、図示しない駆動機構により升90の内壁面上を摺動しながら一定ピッチで下降される。 粉体フィーダ30は、Y軸方向において、造形テーブル10の寸法と略同一の粉体散布幅を有する。 粉体フィーダ30は、粉体を散布しながらX軸方向に移動することにより、造形テーブル10の全面に粉体を散布する。 図6では、構造を理解しやすくするために、升90を二点鎖線で示して、その中の造形テーブル10を透視している。

    このような積層造形装置4を用いた立体構造物の製作方法を図7A〜図7C及び図8A〜図8Cを用いて説明する。

    まず、実施の形態1で説明した方法により、図7Aに示すように、ベース12上に液剤と粉体とが固結して形成された複数の固結部層が積層された下部構造物62を作成する。 ここで、ベース12の頂部12aは下部構造物62により完全に覆われており、下部構造物62の上面62aは、升90の上面92と同一高さである。

    次いで、造形テーブル10を升90に対してZ軸方向に相対的に単位ピッチだけ下降させる。 そして、図7Bに示すように、粉体フィーダ30から升90内に、下部構造物62が完全に埋まるほどに粉体34を散布する。

    次いで、図7Cに示すように、均し部材95を、その下端を升90の上面92に接触させながらX軸方向に移動させる。 その結果、粉体34の上面を升90の上面92と同一高さに規制する。 これにより、下部構造物62上に均一厚さの粉体層が形成される。 均し部材95で除去された粉体は、図示しない回収トレイ上に落下して回収される。

    次いで、図8Aに示すように、液剤フィーダ20を移動させながら、所定の位置にて粉体34に向かって液剤を吐出する。 液剤が付与された部分では、液剤により粉体34を膨潤させ、液剤を重合させて、液剤と粉体とを固結させて固結部63が形成される。 固結部63は、下部構造物62とも一体化される。

    次いで、造形テーブル10を升90に対してZ軸方向に相対的に単位ピッチだけ下降させる。 そして、上記図7Aから図8Aと同様の工程を必要回数だけ繰り返して行い、下部構造物62上に液剤と粉体とが固結して形成された固結部層を順に積層していく。 液剤フィーダ20による液剤の付与位置を変えれば、各固結部層の形状を変えることができる。

    図8Bに示すように、得ようとする立体構造物60の頂部まで固結部層の積層が完了した後、アーム40を介して造形テーブル10を反転させる。 これにより、造形テーブル10上の固結されていない余剰の粉体34が重力により落下して除去される。 その結果、図8Cに示すように、ベース12上に、液剤と粉体とが固結した多数の固結部層からなる立体構造物60を形成することができる。

    実施の形態1と同様に、造形テーブル10上の立体構造物60の完成形状を、3次元計測ユニット50を用いて計測しても良い。

    その後、立体構造物60をベース12から分離して、所望する形状を有する立体構造物60を得る。 必要により表面仕上げ処理を行い、表面滑沢性を向上させても良い。

    本実施の形態では、ベース12の頂部が隠れるまでは、実施の形態1で説明した図3A〜図3Cの工程を繰り返して下部構造物62を形成し、その後、本実施の形態で説明した図7A〜図8Aの工程を繰り返して行い、立体構造物60を完成させる。 図7A〜図8Aの工程のように、升90内に粉体34を充填した後、所望する位置に液剤を付与して液剤と粉体とを固結するので、図8Cに示すアンダーカット(上部より窪んだ側壁の部分)64を有する形状等、複雑な形状の立体構造物60を容易に作成することができる。

    上記の例では、図8Bの後の余剰の粉体34の除去を造形テーブル10を反転させることにより行ったが、実施の形態2で説明したようにエアを吹き付けて空気圧により余剰の粉体34を吹き飛ばして除去しても良いし、実施の形態3で説明したようにエアとともに余剰の粉体34を吸引して除去しても良い。 或いは、これらを組み合わせて余剰の粉体34を除去しても良い。 更に、余剰の粉体34を除去する際に、振動発生装置により造形テーブル10を振動させても良い。

    上記の例では、升90に対して造形テーブル10を所定ピッチずつ下降させたが、造形テーブル10の高さを一定として、升90を所定ピッチずつ上昇させても良い。 あるいは、テーブル10と升90とをZ軸に沿って逆方向に移動させても良い。

    下部構造物62上に積層される固結部層の1層あたりの積層厚みは、升90と造形テーブル10とのZ軸方向の相対的移動ピッチに依存する。 積層厚み(即ち、移動ピッチ)は立体構造物の用途に応じて変更することができる。 積層厚みを小さくすれば、解像度が増加し、寸法精度や表面平滑性が向上する。

    使用する液剤と粉体の組み合わせによっては、膨潤や化学反応等による膨張あるいは収縮が生じる。 これらを考慮して造形テーブル10のZ軸方向の相対的移動ピッチが設定される。

    上記の例では、粉体フィーダ30をX軸に沿って移動させた後、均し部材95をX軸に沿って移動させたが、粉体フィーダ30の移動方向の下流側に均し部材95を一体に取り付けて、図7Bの動作と図7Cの動作とを同時に行っても良い。 あるいは、粉体フィーダ30の移動方向の両側に均し部材95を取り付けても良い。 この場合には、粉体フィーダ30をX軸に沿っていずれの向きに移動させても、一度の移動で図7Bの動作と図7Cの動作とを同時に行うことができる。

    (実施の形態5)
    図9は、本発明の実施の形態5に係る積層造形装置5の概略構成を示した斜視図である。 図示したように、互いに直交する水平方向軸をX軸及びY軸、上下方向軸をZ軸とする。

    ベース17に、Y軸方向を長手方向とする棒状部材(保持機構)15の一端が挿入されて、ベース17が保持される。 立体構造物はベース17上に積層形成される。 棒状部材15の他端には、図示しない回転駆動機構が連結されており、棒状部材15及びベース17は矢印16の方向に回転させられる。

    液剤フィーダ(液剤付与装置)25はベース17の上方から液剤を吐出し落下させる。 液剤フィーダ25の下面には、少なくともベース17のY軸方向寸法以上にわたって複数の吐出ノズル26がY軸方向に並んで配置されている。 複数の吐出ノズル26のそれぞれは、互いに独立して制御されて液剤を下方に落下させる。 液剤フィーダ25は図示しない駆動機構によりX軸方向に駆動される。 即ち、液剤フィーダ25は、ベース17上に移動して、ベース17の上方からY軸方向の所望する位置に液剤を落下させることができる。

    粉体フィーダ(粉体付与装置)35は、少なくともベース17のY軸方向寸法以上の粉体散布幅を有する。 粉体フィーダ35は図示しない駆動機構によりX軸方向に駆動される。 即ち、粉体フィーダ35は、ベース17上に移動して、ベース17の上方から粉体を落下させることができる。

    ベース17の上方には、3次元計測ユニット50が設けられている。

    このような積層造形装置5を用いた立体構造物の製作方法を説明する。

    まず、図9に示すように、棒状部材15にベース17を固定する。 例えば、クラウン、ブリッジ、フレームなどの歯冠補綴物を製作する場合、ベース17は患者の支台歯形状を複製したものである。

    この際、3次元計測ユニット50を用いて、棒状部材15上にベース17を正確に位置決めしても良い。 また、棒状部材15及びベース17を矢印16の方向に回転させながら、3次元計測ユニット50を用いて、ベース17の外形状を計測しても良い。

    次に、図10Aに示すように、液剤フィーダ25をベース17の上方に移動して、棒状部材15及びベース17を矢印16の方向に回転させながら、複数の吐出ノズル26から液剤27を下方に落下させる。 このとき、ベース17の回転に同期して液剤フィーダ25の複数の吐出ノズル26をそれぞれ独立して制御する。 その結果、ベース17の外表面の所望の位置にのみ液剤27を付着させる。

    ベース17を1回転させて液剤27の付着が完了すると、液剤フィーダ25を退避させて、粉体フィーダ35をベース17上に移動させる。 そして、図10Bに示すように、棒状部材15及びベース17を矢印16の方向に回転させながら、粉体フィーダ35のスリット36から粉体37を下方に落下させる。 このとき、図10Aの工程において液剤27が付着された部分では、液剤27により粉体37が膨潤され、液剤27が重合されて、液剤と粉体とが固結して固結部66が形成される。 液剤が付着していない部分に落下した粉体37は、ベース17が回転することにより重力により落下して除去される。 ベース17が1回転すると、スリット36を閉じ、粉体37の散布を停止し、粉体フィーダ35を退避させる。

    図10Aから図10Bと同様の工程を必要回数だけ繰り返して行い、ベース17上に液剤と粉体とが固結して形成された固結部層を順に積層していく。 液剤フィーダ25による液剤の付与位置を変えれば、各固結部層の積層位置を変えることができる。 その結果、図10Cに示すように、ベース17上に、液剤と粉体とが固結した多数の固結部層からなる立体構造物65を形成することができる。

    棒状部材15上の立体構造物65の完成形状を、3次元計測ユニット50を用いて計測しても良い。

    その後、立体構造物65をベース17から分離して、所望する形状を有する立体構造物65を得る。 必要により表面仕上げ処理を行い、表面滑沢性を向上させても良い。

    実施の形態1と同様に、本実施の形態においても、ベース17上に、最初に液剤を付与し、次いで粉体を散布し、その後、液剤と粉体とを固結させる。 即ち、ベース17の表面には、最初に、粉体ではなく液剤が付与される。 従って、最終的に得られる立体構造物65のうち、ベース17と接触していた面は、ベース17の表面がほぼ忠実に転写される。 よって、ベース17の表面を滑らかな面にしておけば、これと同様な滑らかな面を得ることができる。

    例えば、クラウン、ブリッジ、フレームなどの歯冠補綴物を製作する場合、患者の支台歯形状を再現したベース17を用いれば、支台歯に接する面を平滑にすることができる。 従って、この面に対する表面平滑化処理を省略又は簡素化することができる。 また、表面平滑化処理による寸法精度の悪化を低減できるので、適合性が悪化しない。 以上により、高度に熟練した作業者によらずに、歯科用構造材を短時間で高精度に製作できる。

    本発明において、積層厚み(1層の固結部の厚み)は立体構造物の用途に応じて変更することができる。 積層厚みを小さくすれば、解像度が増加し、寸法精度や表面平滑性が向上する。

    実施の形態1に示した積層造形装置1のアーム40を、本実施の形態5の棒状部材15として用いても良い。 即ち、実施の形態1に示した積層造形装置1において、アーム40の先端に取り付けられた造形テーブル10を脱着可能とする。 作成しようとする立体構造物に応じて、造形テーブル10を取り外し、代わりにベース17を取り付ける。 この際、アーム40とベース17との間に、適当な接続部材を介在させても良い。 これにより、総義歯のような大型構造物は造形テーブル10を用いて製作し、歯冠補綴物のような小型構造物はベース17を用いて製作することができる。 従って、各種サイズの立体構造物を共通する積層造形装置で製作することができる。

    本発明において、ベース12,17の材料は、特に限定はないが、例えば石膏を用いることができる。 ベース12,17の表面には、液剤22,27が浸透するのを防止し、且つ、立体構造物60,65を分離しやすくするために、ワセリンなどの離型材を塗布することが好ましい。 また、歯冠補綴物等を製作する場合には、患者の支台歯との間のセメント層(接着剤層)を確保するために、ベース12,17の表面に歯科用のスペイサを塗布することが好ましい。

    (実施の形態6)
    図11は、本発明の実施の形態6に係る積層造形装置6の概略構成を示した斜視図である。 図1と同一の構成要素には同一の符号を付してあり、これらについての詳細な説明を省略する。

    以下、本実施の形態6を、実施の形態1との相違点を中心に説明する。

    本実施の形態6に係る積層造形装置6は、実施の形態1に係る積層造形装置1が有していた粉体フィーダ30に代えて、複層スクリーン型粉体フィーダ(以下、単に「粉体フィーダ」という)200を有している。

    3次元計測ユニット50及び粉体フィーダ200のうちの一方又は両方は、X軸及びY軸を含む面(XY面)と平行な方向に移動可能であり、必要に応じて造形テーブル10の上方に配置したり、造形テーブル10の上方から退避させたりすることができる。 3次元計測ユニット50及び粉体フィーダ200のうちの一方又は両方は、液剤フィーダ20をY軸方向に駆動する一軸案内機構28とともに図示しない駆動機構によりX軸方向に駆動されても良い。

    図12は、粉体フィーダ200の分解斜視図である。 粉体フィーダ200は、粉体貯留槽201と、円形状の3枚のスクリーン202,203,204とを備える。 粉体貯留槽201は、ベース12上に散布される粉体を貯留するための略カップ状の容器であり、その下面には円形の開口が形成されている。 スクリーン202,203,204は、この順にZ軸方向に重ね合わされて粉体貯留槽201の下面の開口を塞ぐように粉体貯留槽201に装着されている。 スクリーン202,203,204のそれぞれには粉体が通過することができる多数の微細な貫通孔(以下、「微細孔」という)が形成されている。

    スクリーン202,203,204のうち、上下のスクリーン202,204は粉体貯留槽201に固定された静止スクリーンであり、中間のスクリーン203は矢印203aの方向にXY面内にて回転駆動される被駆動スクリーンである。 スクリーン203を回転させるための駆動源は特に制限はなく、例えばモータ、ぜんまい、振り子などを用いることができる。 スクリーン203はその駆動源に直接接続されていても良く、あるいは減速歯車などの動力伝達機構を介して接続されていても良い。 更に、スクリーン203とその駆動源とは近接して配置されていても、離れて配置されていても良い。 離れて配置されている場合には、リンク機構、チェーンベルトなどを介して駆動源の駆動力をスクリーン203に伝達することができる。

    中間のスクリーン203が静止している状態では、粉体貯留槽201内の粉体は、スクリーン202,203,204を通過してこれより下に落下することはない。 一方、スクリーン203を回転させると、粉体は、スクリーン202,203,204のそれぞれの微細孔を通過してこれより下に落下する。 その後、スクリーン203の回転を停止すれば、粉体の落下は停止しする。 即ち、スクリーン202,203,204は、粉体貯留槽201内の粉体の造形テーブル10上への落下を制御することができる。

    実施の形態1と同様に、液剤フィーダ20にてベース12上に液剤を付与した後、液剤フィーダ20を造形テーブル10の上方から退避させ、次いで、粉体フィーダ200を造形テーブル10の上方に移動して、ベース12上に粉体を散布する。

    スクリーン202,203,204のそれぞれにおいて、多数の微細孔が形成された領域は造形テーブル10の上面よりも大きい。 従って、造形テーブル10の上方に粉体フィーダ200を移動した後は、スクリーン203を回転させるだけで、造形テーブル10の全面にわたって粉体を散布することができる。 即ち、造形テーブル10の全面に粉体を散布するためには、実施の形態1では粉体フィーダ30をX軸方向に移動させる必要があったが、本実施の形態では粉体フィーダ200を移動させる必要はない。 また、粉体の散布の制御は、実施の形態1ではスリット32の開閉を制御する必要があったが、本実施の形態ではスクリーン203の回転を制御すれば良い。 このように、本実施の形態では、大きな領域に一度に粉体を散布することができ、しかも、粉体の散布を簡単な機構により制御することができる。

    必要な量の粉体を散布した後、スクリーン203の回転運動を停止して、粉体の散布を止める。

    スクリーン203の回転運動は、一方向のみの連続回転であっても良く、回転方向が変化する反転運動であっても良い。 あるいは、回転運動ではなく、XY面と平行な一方向に沿った往復運動であっても良い。

    スクリーン202,203,204のそれぞれに形成される微細孔の開口径は、使用される粉体に含まれる粒子の最大径の2倍以上、特に6倍以上であることが好ましい。

    スクリーン202,203,204のそれぞれに形成される微細孔の開口形状は、上述した粉体の落下を制御することができれば特に制限はない。 例えば図13Aに示すような円形のほか、楕円形、矩形、各種多形、又はスリット等であっても良い。 あるいは、図13Bに示すような円弧状、図13Cに示すような形状が異なる複数種類の開口の組み合わせ、又は図13Dに示すような縦横方向に延びた多数の線材により形成されたメッシュなど、いずれであっても良い。 また、開口率(スクリーンの単位面積に対する微細孔の合計面積の比率)や微細孔の数も、上述した粉体の落下を制御することができれば特に制限はない。

    スクリーン202,203,204が、上記のような多数の微細孔を有する部材ではなく、複数の板材が互いに離間して配置された羽根車状部材であっても良い。 この場合、板材の数、形状、寸法などは、上述した粉体の落下を制御することができれば特に制限はない。

    スクリーン202,203,204は、互いに同一であっても異なっていても良い。

    図12では粉体フィーダ200が3枚のスクリーン201,202,203を備える例を示したが、スクリーンの数は3に限定されない。 スクリーンの数が少ないほど、構造を簡略化でき、目詰まりがしにくいので清掃が容易であり、また、スクリーンの交換作業も容易である。 スクリーンの数が多いほど、これらの利点は得にくくなるが、被駆動スクリーンの停止時での粉体の漏れが少なくなり、粉体散布の開始及び停止の制御性が向上する。 本発明では、スクリーンの数は2以上であることが必要である。 その上限は、特に制限はないが、6以下であることが実用上好ましい。 複数のスクリーンのうち、駆動されるスクリーンと駆動されないスクリーンとは交互に配置されることが好ましい。

    隣り合うスクリーンは、互いに接触していても離間していても良い。 接触させる場合には、その接触圧は実用できる範囲で自由に設定することができる。 隣り合うスクリーン間の距離や接触圧を調整することにより、粉体の散布量、散布の開始及び停止の制御性、被駆動スクリーンの停止時での粉体の漏れなどを調整することができる。

    スクリーンの材料は特に制限はなく、例えば金属、紙、ガラス、布、プラスチックなどの中から適宜選択することができる。 また、粉体の付着防止、腐食防止、強度向上、耐摩耗性向上などの目的に応じて、スクリーンにメッキ、塗装、研磨、熱処理、薬剤処理などの処理を施すことができる。

    (実施の形態7)
    図14は、本発明の実施の形態7に係る積層造形装置7の概略構成を示した斜視図である。 図1と同一の構成要素には同一の符号を付してあり、これらについての詳細な説明を省略する。

    以下、本実施の形態7を、実施の形態6との相違点を中心に説明する。

    本実施の形態7に係る積層造形装置7は、実施の形態6に係る積層造形装置6と同様に、複層スクリーン型粉体フィーダ(以下、単に「粉体フィーダ」という)210を有している。 但し、実施の形態6の粉体フィーダ200と異なり、本実施の形態7の粉体フィーダ210では、粉体貯留槽の下面に設けられた開口が長方形であり、この開口に取り付けられる複数のスクリーンの形状も長方形である。 粉体貯留槽の開口及び複数のスクリーンの形状が異なる以外は、構成及び機能に関して、本実施の形態の粉体フィーダ210は実施の形態6の粉体フィーダ200と同じである。 複数のスクリーンの多数の微細孔が形成された領域及び粉体貯留槽の開口のそれぞれの長軸方向はY軸方向と平行であり、それぞれの長軸方向寸法は造形テーブル10の上面よりも大きい。

    粉体フィーダ210は、実施の形態1に示した粉体フィーダ30と同様に設置されて使用される。 即ち、造形テーブル10の上方からの粉体の落下は、粉体フィーダ210をX軸方向に移動させながら行う。 但し、粉体の落下の開始及び停止は実施の形態6と同様に被駆動スクリーンの駆動を制御することにより行う。 スクリーンの形状が長方形であるので、被駆動スクリーンは、実施の形態6の回転運動ではなく、一方向(例えばY軸方向)に往復運動する。

    このようなX軸方向に移動する粉体フィーダ210は、造形テーブル10の上方から光や熱を与えて粉体及び液剤を固結させる必要がある場合に、粉体フィーダ210を光や熱の照射範囲外に移動させることが容易に行えるという利点を有する。

    液剤フィーダ20をX軸方向に移動する駆動機構(図示せず)に粉体フィーダ210を取り付けてもよい。 これにより、粉体フィーダ210と液剤フィーダ20とでX軸方向の駆動機構を共通化することができるので、駆動系及び制御系を簡単化でき、また部品の削減も可能になる。

    粉体フィーダ210をX軸方向に移動する駆動機構と、液剤フィーダ20をX軸方向に移動する駆動機構とを別個に設けると、粉体フィーダ210と液剤フィーダ20との干渉を避けるために、両者のZ軸方向における位置を異ならせる必要が生じるかも知れない。 このような場合、気流の影響などにより、造形テーブル10から遠くに配置されたフィーダから落下された粉体又は液剤を造形テーブル10上の所望の位置に着地させることが困難となる可能性がある。 粉体フィーダ210と液剤フィーダ20とでX軸方向の駆動機構を共通化すれば、粉体フィーダ210と液剤フィーダ20とが干渉することがないので、両者を造形テーブル10に接近して配置することができるので、粉体及び液剤の着地位置精度が向上する。

    更に、実施の形態4で説明したように、造形テーブル10上の粉体の上面を平面状に均す必要がある場合には、粉体フィーダ210の下端を図6の均し部材95と同様に機能させてもよく、あるいは粉体フィーダ210に均し部材95(図6参照)を取り付けてもよい。 このような部材の複合化により、駆動系及び制御系を簡単化でき、また部品の削減が可能になる。

    (実施の形態8)
    図15は、複層スクリーン型粉体フィーダの別の実施形態の概略構成を示した斜視図である。 この複層スクリーン型粉体フィーダ(以下、単に「粉体フィーダ」という)220は、粉体貯留槽221と、粉体貯留槽221の下面の開口(図示せず)を塞ぐように設けられた複数(例えば、2〜6枚)のスクリーンとを備える。 複数のスクリーンのうちの1つは、帯状のスクリーンの両端が環状に接続されたエンドレススクリーン222であり、他のスクリーンは粉体貯留槽221の下面の開口を塞ぐように粉体貯留槽221に装着固定された静止スクリーンである。 これらの複数のスクリーンのそれぞれには、実施の形態6で説明したような、粉体が通過することができる多数の微細な貫通孔(微細孔)が形成されている。

    エンドレススクリーン222は、4本のローラ223a,223b,224a,224bにより、所定の位置に、所定の張力が印加された状態で保持されている。 ローラ223aは駆動機構225が接続された駆動ローラであり、ローラ223b,224a,224bは自由に回転可能な従動ローラである。 内側のローラ224a,224bは、粉体貯留槽221の下面にてエンドレススクリーン222の上側部分222aと下側部分222bとを接近又は接触させている。

    エンドレススクリーン222は、駆動機構225により一方向に連続的に運動し又は往復運動する。 これにより、エンドレススクリーン222の上側部分222aと下側部分222bとが互いに逆方向に移動する。

    エンドレススクリーン222が静止している状態では、粉体貯留槽221内の粉体は、エンドレススクリーン222を通過してこれより下に落下することはない。 一方、エンドレススクリーン222を駆動すると、粉体は、エンドレススクリーン222の微細孔を通過してこれより下に落下する。 その後、エンドレススクリーン222の駆動を停止すれば、粉体の落下は停止する。 このように、本実施の形態では、実施の形態6と同様に、粉体貯留槽221内の粉体の造形テーブル10上への落下を制御することができ、しかもこれを、実施の形態6よりも簡単且つコンパクトな構成で行うことができる。

    また、エンドレススクリーン222を一方向に一定速度で連続的に運動させると、粉体は連続的に落下し、この粉体の単位時間当たりの落下量は一定である。 一方、エンドレススクリーン222を往復運動させると、粉体の落下は、エンドレススクリーン222の運動方向が変化するときに一時的に停止するので、断続的となる。 即ち、本実施の形態の粉体フィーダ220は、実施の形態7の粉体フィーダ210と異なり、連続的且つ安定的にに粉体を落下させることができる。

    図16は粉体フィーダ220の一例の下面図である。 221aは粉体貯留槽221の下面に設けられた開口である。 この開口221aは円形であり、この開口221aに取り付けられる静止スクリーン(図示せず)の微細孔の形成領域の形状も円形である。 微細孔の形成領域の大きさは造形テーブル10の上面と同じかこれよりも大きい。 円形の開口221aを有する粉体フィーダ220は、例えば実施の形態6と同様に、粉体フィーダ220を円形の造形テーブル10の上方に静止させた状態で、造形テーブル10上に粉体を散布することができる。 造形テーブル10が円形である場合、粉体貯留槽221に円形の開口221aを設けることにより、粉体を無駄なく造形テーブル10上に散布することができる。

    図17は粉体フィーダ220の別の例の下面図である。 221bは粉体貯留槽221の下面に設けられた開口である。 この開口221bは長方形であり、この開口221bに取り付けられる静止スクリーン(図示せず)の微細孔の形成領域の形状も長方形である。 微細孔の形成領域の長軸方向はY軸方向と平行であり、その長軸方向寸法は造形テーブル10の上面のY軸方向寸法よりも大きい。 長方形の開口221bを有する粉体フィーダ220は、例えば実施の形態7と同様に、粉体フィーダ220をX軸方向に移動させながら、造形テーブル10上に粉体を散布することができる。 あるいは、造形テーブル10が長方形である場合には、これと同じかこれより大きな長方形の開口221bを粉体貯留槽221に設けることにより、粉体フィーダ220を静止させた状態で、粉体を無駄なく造形テーブル10上に落下させることができる。

    図18は、別の複層スクリーン型粉体フィーダ(以下、単に「粉体フィーダ」という)230の概略構成を示した側面図である。 この粉体フィーダ230では、エンドレススクリーン232は、4本のローラ233a,233b,233c,233dにより粉体貯留槽231の周囲を取り囲むように、所定の張力が印加された状態で保持されている。 4本のローラ233a,233b,233c,233dのうちの1本は駆動機構(図示せず)が接続された駆動ローラであり、残りは自由に回転可能な従動ローラである。 粉体貯留槽231の下面の開口には、エンドレススクリーン232を挟むように、静止スクリーン234,235が粉体貯留槽231に固定されている。 粉体が落下するためには、図15に示した粉体フィーダ220では、粉体はエンドレススクリーン222を、その上側部分222aと下側部分222bとで2回通過しなければならないが、図18の粉体フィーダ230では、粉体はエンドレススクリーン232を1回通過すればよい。

    図19は、更に別の複層スクリーン型粉体フィーダ(以下、単に「粉体フィーダ」という)240の概略構成を示した斜視図である。 この粉体フィーダ240では、粉体貯留槽241がY軸と平行な方向から見たとき略「J」字形状を有している。 粉体貯留槽241は、上側の粉体貯留部241aと、下側の水平面と平行な粉体付与部241cと、これらの間の粉体供給路241bとを備える。 粉体貯留部241aの上方に向いた開口から投入された粉体は、粉体供給路241bを通って粉体付与部241cに達し、その下面の開口に設置された複数のスクリーンを通過して落下する。 エンドレススクリーン242は、2本のローラ243a,243bにより粉体付与部241cの周囲を取り囲むように、所定の張力が印加された状態で保持されている。 ローラ243aは駆動機構245が接続された駆動ローラであり、ローラ243bは自由に回転可能な従動ローラである。 粉体付与部241cの下面の開口には、図18の粉体フィーダ230と同様に、エンドレススクリーン242を挟むように複数の静止スクリーンが粉体付与部241cに固定されている。 粉体が落下するためには、図18の粉体フィーダ230と同様に、粉体はエンドレススクリーン242を1回通過すればよい。 図18の粉体フィーダ230では、エンドレススクリーン222は粉体貯留槽231全体を取り囲んでいたのに対して、図19の粉体フィーダ240では、エンドレススクリーン242は粉体貯留槽241の一部である粉体付与部241cのみを取り囲む。 従って、図19の粉体フィーダ240では、エンドレススクリーン242及びその周囲の寸法を小さくすることができる。 図19の粉体フィーダ240では、粉体貯留部241aと、粉体供給路241bと、粉体付与部241cとが一体化されているが、粉体貯留部241aと粉体付与部241cとをそれぞれ別個に製作し、その後、両者を硬質又は軟質のダクト又はチューブ等からなる粉体供給路241bで接続しても良い。

    図11〜図19は例示に過ぎず、本発明において複層スクリーン型粉体フィーダはこれらに限定されない。 複層スクリーン型粉体フィーダの形状や各部の寸法は、積層造形装置に搭載したときに要求される各種制約、使用される粉体の特性、立体構造物の製造プロセス条件などを考慮して適宜変更することができる。

    (実施の形態9)
    本実施の形態9の積層造形装置は、実施の形態1の積層造形装置1において、粉体フィーダ30に代えて、図20に示す分割板型粉体フィーダ(以下、単に「粉体フィーダ」という)300を備える。

    粉体フィーダ300は、粉体が投入され貯留される粉体貯留槽301と、分割部310と、粉体貯留槽301と分割部310とを接続し、粉体を粉体貯留槽301から分割部310に案内する案内管302と、案内管302の下端に設けられた開閉バルブ303とを備える。

    分割部310は、X軸に対して角度θ(後述する図21参照)で傾斜した略二等辺三角形状の基板311と、基板311上に固定された略「Λ」字状(楔状)の複数の分割板312とを備える。 複数の分割板312は、ボーリングのピン配置の如くに、末広がり状に配置されている。 具体的には、複数の分割板312は、水平方向と平行な複数の直線に沿って配置されている。 水平方向と平行な1本の直線に沿った分割板312の並びを「段」と呼ぶ。 複数の分割板312は上下方向に複数段に分けられて、上から第N段(Nは自然数)には2 N-1個の分割板312が配置されている。 開閉バルブ303の下方に第1段に含まれる略「Λ」字状の分割板312の頂部が位置し、第N段に含まれる略「Λ」字状の分割板312の両下端の下方に、第N+1段に含まれる分割板312の頂部が位置している。

    粉体貯留槽301から案内管302及び開閉バルブ303を順に通過して分割部310に流入した粉体流は、第1段の1個の分割板312で2つに分割され、次いで、第2段の2つの分割板312で4つに分割される。 以下、同様にして、粉体流はY軸方向に分割されながら下方に向かって進む。 このように、開閉バルブ303から分割部310に流入した粉体流は、第N段の分割板312を経ることで2 N個の粉体流に分割され、各粉体流の流量は開閉バルブ303を通過時の粉体流の流量の1/2 N倍となる。

    例えば、複数の分割板312が10段にわたって配置されている場合、粉体流は1024本に分割される。 開閉バルブ303を通過時の粉体流の断面積が50mm 2である場合、分割された1024本の粉体流のそれぞれの断面積は約0.049mm 2となり、これは造形テーブル10上に粉体を散布するのに十分な微細流である。

    粉体フィーダ300は、実施の形態1の粉体フィーダ30と同様に、粉体を落下させながら造形テーブル10上をX軸方向に移動する。

    開閉バルブ303を開いて(又は閉じて)から、粉体フィーダ300からの粉体の落下が開始(又は停止)するまでには、時差が生じる。 したがって、この時差を考慮して、開閉バルブ303を制御する必要がある。

    複数の分割板312を配置した本実施の形態の粉体フィーダ300は、単位時間当たりに落下させることができる粉体の量を多くすることができるので、粉体フィーダ300のX軸方向の移動速度を早くすることができるという利点を有する。 従って、粉体散布に要する時間を短縮することができる。 各固結部層の厚みを薄くして固結部層の数を多くする必要がある場合には、立体構造物の形成に要する時間を大幅に短縮することができるので特に顕著な効果が得られる。

    図20では、略「Λ」字状の分割板312を示したが、本発明において分割板の形状は、1つの粉体流を2つの粉体流にほぼ等分割することができれば、これに限定されない。 例えば、板状、棒状、三角柱状、又はこれらを変形させた形状など、いずれであってもよい。

    分割板312の幅(図20においてY軸方向寸法)は、その分割板312が上から何段目に配置されるか、により異なる。 一般に、図20に示したように、上段から下段にいくにしたがって、分割板312の幅は小さくなる。 最下段の分割板312の幅が大きすぎると、隣り合う粉体流間の間隔が大きくなるので、造形テーブル10上に均一に粉体を散布することが困難となる。 逆に、最下段の分割板312の幅が小さすぎると、広範囲にわたって粉体を分散するためには、最下段に含まれる分割板312の数を多くする必要があり、段数を多くする必要があり、基板311上に多くの分割板312を配置する必要がある。 従って、最下段の分割板312間を通過した各粉体流の流量(断面積)と隣り合う粉体流間の間隔を考慮して、各段の分割板312の幅が決定される。

    分割板312の高さ(図20においてZ軸方向寸法)が大きすぎると、基板311のZ軸方向寸法が大きくなるので、粉体フィーダ300の実用性が低下したり、分割部310のZ軸方向寸法や重量が増大することにより分割部310のX軸方向の移動性が低下したり、液剤フィーダ20などの他の装置との干渉が生じたりする。 逆に、分割板312の高さが小さすぎると、粉体流が沿って流れる分割板312の2辺の傾斜が緩やかになることにより粉体流の流動性や分割性能が低下したり、分割板312の強度が低下したりする。 これらを考慮して、分割板312の高さを決定するのがよい。

    基板311上に配置される複数の分割板312の段数は、開閉バルブ303を通過時の粉体流の断面積と、最下段の分割板312間を通過して得られる粉体流の数及びそれぞれの断面積とを考慮して決定される。 一般に、3段以上であることが好ましい。

    図20では、上から第N段(Nは自然数)には2 N-1個の分割板312が配置される例を示したが、本発明はこれに限定されない。 例えば、開閉バルブ303を通過後の粉体流の幅(図20においてY軸方向寸法)が大きい場合には、第1段に複数の分割板312を配置しても良い。 また、第N+1段に含まれる分割板312の数は、第N段に含まれる分割板312の数より多ければよい。 例えば、第N段の隣り合う分割板312の間を通過する粉体流が、第N+1段の1つの分割板312で2分割されるように、複数の分割板312を配置しても良い。

    図21は、粉体フィーダ300の側面図である。 粉体フィーダ300の分割部310は、粉体散布時には、粉体をベース12の上方から落下させながら図示しない駆動機構によりX軸方向に移動する。 本例では、粉体貯留槽301は造形テーブル10よりも高い位置に固定されており、粉体貯留槽301と分割部310とを接続する案内管302は柔軟性と弾性とを備えた材料からなる。 これにより、分割部310の位置にかかわらず、固定された粉体貯留槽301から移動する分割部310に粉体を安定して供給することができる。

    分割部310の基板311とX軸とがなす角度θは3〜90度の範囲で任意に設定することができる。 使用する粉体の特性や、分割板312の形状及び配置に応じて角度θを変更することにより、粉体流の流量を調整することができる。

    (実施の形態10)
    図22は、ベース420上に形成された立体構造物400の一例の断面図である。 このような立体構造物400を形成するためには、ベース420の周囲壁に形成された窪み(アンダーカット)421内にも固結部を形成する必要があり、実施の形態1で説明したようにベース12の上方から液剤及び粉体を単に落下させるだけでは形成することができない。 このような立体構造物400は、実施の形態1の積層造形装置に、液剤及び粉体の散布時の造形テーブル10の上面の水平面に対する傾斜角度を任意に設定できる傾斜機構を付加することで製作することができる。 例えば、造形テーブル10を反転させるアーム40に接続された回転駆動機構に、傾斜機構としての機能を付加しても良い。

    以下に、図23A〜図23Dを用いて、立体構造物400の製作方法を説明する。 図23A〜図23Dでは、図面を簡単化するために、造形テーブル10、ベース420、及びベース420上に形成される固結部のみを図示し、これら以外の積層造形装置の構成部材の図示を省略している。

    まず、図23Aに示すように、その上面が水平面と平行に設定された造形テーブル10上にベース420を固定する。 このベース420の周囲壁には、ベース420をZ軸と平行に上方から見たときに見ることができない窪み(アンダーカット)421が形成されている。

    次に、実施の形態1〜3で説明したのと同様に、液剤付与、粉体落下、及び未固結の粉体の除去を所定回数繰り返すことにより、造形テーブル10の上面を水平面と平行にしたときに上方から見えるベース420上の所定の領域上に、必要な厚さの固結部層401を形成する(図23B参照)。 ここで、液剤付与及び粉体落下は、造形テーブル10の上面を水平面と平行にした状態で行う。 このとき、ベース420の窪み421内には固結部層401は形成されない。

    次に、ベース420の表面のうち、図23Bで固結部層401が形成されていない領域、特に窪み421が上方に向くように、傾斜機構を用いて、ベース420を傾斜させる(図23C参照)。 実施の形態1〜3で説明したのと同様に、液剤付与、粉体落下、及び未固結の粉体の除去を所定回数繰り返すことにより、ベース420の表面のうち、窪み421を含む領域に必要な厚さの固結部層402を形成する(図23D参照)。 ここで、液剤付与及び粉体落下は、造形テーブル10を図23Cに示したように傾斜させた状態で行う。 かくして、ベース420上に、図22に示した立体構造物400を形成することができる。

    以上のように、本実施の形態10によれば、どのような方向からベースを見ても、ベース上の固結部層を形成する必要がある全領域を同時に見ることができない場合であっても、ベースの向き(姿勢)を複数通りに変えて固結部層を形成するので、ベース上に所望の立体構造物を形成することができる。

    本実施の形態により立体構造物を形成するためには、形成しようとする立体構造物の3次元形状データをベースの向きの変化数に応じて複数に分解して、それぞれの向きごとに、液剤吐出制御データなどを演算して求めればよい。

    上記の説明では、ベース420が窪み421を有している場合を説明したが、本実施の形態は、窪み421を有していないようなベース上に立体構造物を形成する場合に適用することも可能である。

    上記の説明では、図23Bのように第1方向に向けられたベース420に対して液剤の付与と粉体の落下とを繰り返し行ってベース420上に液剤と粉体とが固結してなる所望する厚さの固結部層401を形成した後、図23Cのように第2方向に向けられたベース420に対して液剤の付与と粉体の落下とを繰り返し行ってベース420上に液剤と粉体とが固結してなる所望する厚さの固結部層402を形成した。 即ち、立体構造物400を形成しようとするベース420の表面を第1領域及び第2領域に分割し、立体構造物400のうち第1領域内の部分401を完成させ、次いで、立体構造物400のうち第2領域内の部分402を完成させた。

    しかしながら、本発明はこれに限定されない。 例えば、図23Bのように第1方向に向けられたベース420に対して液剤の付与と粉体の落下とを行ってベース420上に液剤と粉体とが固結してなる単層の固結部層を形成する工程と、図23Cのように第2方向に向けられたベース420に対して液剤の付与と粉体の落下とを行ってベース420上に液剤と粉体とが固結してなる単層の固結部層を形成する工程とを交互に繰り返し行うことにより、ベース420上に立体構造物400を形成しても良い。 即ち、単層の固結部層を第1領域及び第2領域に交互に形成しても良い。

    上記の実施の形態では、ベースの向きを2通りに変化させて立体構造物を形成したが、本発明においてベースの向きの変化数は2通りに限定されず、ベースの表面形状(例えば窪みの数や程度)に応じて適宜変更することができる。 但し、ベースの向きの変化数が多くなると、それぞれの向きで形成された固結部層の境界部分に凹凸が形成されて立体構造物の形状精度が劣化したり、立体構造物の形成時間が著しく増加したりすることがある。 従って、ベースの向きを必要以上に変化させることは好ましくなく、実用上はベースの向きは2〜10通り、更には2〜6通りに変化させるのが好ましい。

    (実施の形態11)
    図24は、本発明の実施の形態11に係る立体構造物500の一例の側方から見た端面図である。 この立体構造物500は、金属部分501と樹脂部分502とからなる部分床義歯などの補綴物である。

    本発明の積層造形装置を用いた立体構造物500の製造方法を説明する。

    まず、図25Aのように、金属部分501を作成する。 金属部分501の作成方法としては、特に制限はなく従来より公知の方法を用いることができる。 例えば、手作業による方法、CAD/CAM法を用いて金属部分501の3次元形状データに基づいて金属材料を切削する方法、金属粉を積層し、CAD/CAM法を用いて金属部分501の3次元形状データに基づいてレーザー光線を照射する等により金属粉を溶融し焼結する方法などを挙げることができる。 患者の口腔内の粘膜面に接する面を光沢が得られるまで研磨したり、樹脂部分502との境界部分をサンドブラスト処理などにより滑らかにしたりするなどの表面処理を、必要に応じて金属部分501に施してもよい。

    上記とは別に、図25Bに示すように、積層造形装置の造形テーブル10上に、ベース510を固定する。 ベース510は患者の顎堤を複製したものであり、その上面は患者の口腔内の粘膜面形状と同じ形状を呈する。

    次に、図25Cに示すように、ベース510上に図25Aで得た金属部分501を設置する。

    その後、本発明の造形装置を用いて、液剤付与、粉体落下、及び未固結の粉体の除去を所定回数繰り返して樹脂部分502となる固結部層を形成して、立体構造物500を得る(図25D参照)。

    その後、立体構造物500をベース510から取り外し、必要に応じて細部の修正や表面研磨などの後処理を行い、歯科用補綴物が完成する。

    実施の形態1で説明した積層造形装置1を用いて上顎の総義歯用の全部床を作製した。

    [粉体の調整]
    粉体として、メチルメタアクリレートとエチルメタアクリレートが重量比1:1である共重合体の球状粒子体(平均粒子径70μm)100重量部と、過酸化ベンゾイル1重量部との混合物を用いた。

    [液剤の調整]
    液剤として、食用インクにて着色したメチルメタアクリレート単量体90重量部に、エチレングリコールジメタアクリレート単量体10重量部、及びジエタノールパラトルイジン3重量部を配合した組成物を用いた。 これをもとに歯肉色に調整した液剤1と、透明色に調整した液剤2とを準備した。

    [液剤吐出制御データの作成]
    人工歯が嵌入される孔を有する全部床の3次元形状データに、目的とする色調となるように色調データを付け加えて、液剤吐出制御データを作成した。 具体的には、外面から深さ約1mmまでの表層が液剤2で作成され、これより内側部分が液剤1で作成されるように、液剤1,2の付与位置データを作成した。

    [積層造形装置の仕様]
    1辺が100mmの正方形の造形テーブル10上に患者の顎堤を複製したベース12を固定した。

    粉体フィーダ30は、Y軸方向幅が100mm、X軸方向(移動方向)の幅が3mmのスリット32を備える。

    液剤フィーダ20は、ピエゾ素子駆動により液剤1,2をそれぞれ射出する2つのノズル21を備える。 具体的には、ノズル21として、ピエゾ素子駆動のインクジェットヘッドである、コニカミノルタテクノロジーセンター株式会社製318SLXを用いた。 このインクジェットヘッドの制御装置として、コニカミノルタテクノロジーセンター株式会社製インクジェットヘッド評価キットKIE2を用いた。 制御プログラムとして、この制御装置に付属のソフトウエアを用いた。 2つのノズル21のそれぞれに容量300ccの液剤貯留タンクをチューブを介して接続した。

    コンピュータを用いて、粉体フィーダ30及び液剤フィーダ20の移動、粉体フィーダ30のスリット32の開閉、液剤フィーダ20の2つのノズル21からの液剤の射出を制御した。

    [立体構造物の造形]
    図1に示した積層造形装置1を用い、上記の液剤吐出制御データを用いて液剤1,2の付与位置を制御して、図2A〜図3Dに示す工程を行って、患者の口腔内の粘膜面形状を忠実に再現したベース12上に全部床を作成した。 液剤の重合には化学重合法を用いた。

    [後工程]
    得られた全部床をベース12から取り外した。 ベース12と接触していた面(粘着面)は、ベース12の面に沿って滑らかに造形されていて積層段差は認められなかった。 一方、ベース12に接触していた面以外の面には、僅かな積層段差が認められた。 この積層段差を、大栄歯科産業株式会社製の超音波ミニカッターMC−20を用いて解消した。 その後、全部床の全面にバフ研磨を施して仕上げた。

    得られた全部床の上部の孔に、株式会社松風製の硬質レジン歯ベラシアの前歯および臼歯各1セット分の人工歯を、株式会社松風製アドファの粉材と液剤を混合したものを接着剤として用いて接着固定した。

    かくして得られた総義歯の粘着面は、患者の口腔内の粘膜面に対して極めて高い適合性を有していた。

    全部床の作成に要した時間は、設計に30分、造形に2時間30分、表面の段差解消及び研磨作業に30分の合計3時間30分であり、従来の型取り、複製模型の作製、ワックスアップ、埋没、脱鑞、鋳型、築盛、研磨などを行う一般的方法の約13時間と比較して大幅に短縮することができた。

    以上に説明した実施の形態及び実施例は、いずれもあくまでも本発明の技術的内容を明らかにする意図のものであって、本発明はこのような具体例にのみ限定して解釈されるものではなく、その発明の精神と請求の範囲に記載する範囲内でいろいろと変更して実施することができ、本発明を広義に解釈すべきである。

    本発明の利用分野は特に制限はなく、各種立体構造物の作成に利用することができる。 中でも、歯科用構造材の製造に好ましく利用することができる。 例えば、歯科補綴分野において用いられる有床義歯、自分で義歯を清掃できない要介護者等が装着し、汚れたら新たな同一形状の義歯と交換使用することで口腔内を清潔に保つために使用される使い捨て義歯、運動時に歯牙を衝撃から保護するために口腔内に装着されるマウスピース、歯軋りによる歯牙の磨耗や折損を防止するために用いられる保護具、顎関節の異常による障害発生の防止、軽減や顎間接異常を治療する目的で使用されるスプリント、嚥下障害の軽減や解消のために用いられる装具、歯学研究において顎運動や口腔開閉時における歯牙の接触・離開の径始を計測する目的で用いられるセンサー保持具・センサー埋包体・シーネ等の製作に利用することができる。

    本発明は、液剤と粉体とが固結してなる固結部を積層して所望の立体構造物を製作する積層造形装置に関する。

    歯科臨床および歯科研究において、矯正用ブラケット、矯正用装置、インレイ、オンレイ、ブリッジ、コア材、インプラント上部構造、局部床義歯、全部床義歯、各種模型、実験用治具、実験用構造材などの歯科用構造材の製造には、主に手作業による型取り、複製模型の作製、ワックスアップ、埋没、脱鑞、鋳型、築盛、研磨などを組み合わせた煩雑かつ多段階の工程からなる方法が用いられている。 この方法の実施には多岐に渡る材料及び器材の調達、使い分け、適用のための正しい知識が必須であり、更には操作を実施するための十分な習熟と技能が求められる。 従って、歯科用構造材を製造するには多大な労力と時間が必要であり、製造効率、生産性の向上には限界がある。 また、数度に渡る型取り作業や鋳造作業による誤差の発生が避けられないため、最終製造品の適合性や色調に不満の残る結果になることが多く、この問題の解消のために更に熟練と手間と時間を要する調整、修正作業を強いられている。

    そのため、近年著しく発達したコンピュータによる加工技術を元にして、品質改善、製造効率の向上を目的とした多くの方法が開発されてきた。

    特開2004−344623号公報及び特開2005−59477号公報には、造形テーブル上にて粉体を層状に積層して所望の立体構造物を製作する積層造形装置が記載されている。 以下にこれを簡単に説明する。

    図26は、従来の積層造形装置100の概略構成を示した斜視図である。 図示したように、互いに直交する水平方向軸をX軸及びY軸、上下方向軸をZ軸とする。 図26において、110はZ軸方向に昇降可能な造形テーブル、120は造形テーブル110の水平方向の周囲を取り囲む壁を備えた升、130は粉体を造形テーブル110上に散布する粉体フィーダ、140は液剤を造形テーブル110上に吐出する液剤フィーダ、150は造形テーブル110上に散布された粉体の上面を平面にならす均し部材、160は吐出された液剤を光重合させるための光線を放出する光源である。 図26では、構造を理解しやすくするために、升120を二点鎖線で示して、その中の造形テーブル110を透視している。

    粉体フィーダ130は、Y軸方向において、造形テーブル110の寸法と略同一の粉体散布幅を有する。 粉体フィーダ130は、粉体を散布しながらX軸方向に移動することにより、造形テーブル110の全面に粉体を散布する。

    均し部材150は、その下端にY軸方向に延びた均し端縁151を有する。 均し端縁151を升120の上面122に摺動させながら、均し部材150はX軸方向に移動する。

    液剤フィーダ140は、一軸案内機構148によりY軸方向に移動する。 そして、この一軸案内機構148は図示しない駆動機構によりX軸方向に駆動される。 即ち、液剤フィーダ140は、造形テーブル110上をX軸方向及びY軸方向に走査しながら、所望する位置にて造形テーブル110に向かって液剤を吐出する。

    造形テーブル110は、図示しない駆動機構により一定ピッチで下降される。 この1ピッチに相当する厚さずつ、造形テーブル110上に粉体が積層されて行く。

    立体構造物の製作方法の詳細を図27A〜図27Eを用いて説明する。

    図27Aは、造形テーブル110上に既に粉体が複数層(図では2層)積層された状態を示している。 171は、造形テーブル110上に堆積された複数の粉体層のうちの最上層、172は、最上層171のうち液剤の重合により形成された固結部、173は最上層171の1つ前に堆積された粉体層、174は粉体層173のうち液剤の重合により形成された固結部である。

    この状態において、図27Aに示すように、粉体フィーダ130をX軸方向に移動させながら、そのスリット132から造形テーブル110上に粉体134を散布する。

    次いで、図27Bに示すように、均し部材150をX軸方向に移動させて、粉体134の上面を升120の上面122と同一高さに規制する。 これにより、最上層171上に均一厚さの粉体層175が形成される。

    次いで、図27Cに示すように、液剤フィーダ140を移動させながら、所定の位置にて粉体層175に向かって液剤を吐出する。 176は、粉体層175のうち液剤が付与された部分である。

    次いで、図27Dに示すように、光源160により光を照射して、粉体層175に付与された液剤を重合させ固化させる。 液剤が固化する際、液剤が付与された領域内の粉体が一体化される。 かくして、粉体層175中に固結部177が形成される。

    次いで、造形テーブル110を所定のピッチだけ下降させて、上記の図27A〜図27Dを行う。 以上の工程を必要な回数だけ繰り返し行う。

    最後に、造形テーブル110上の未固結の粉体を除去することにより、図27Eに示すように、固結部174,172,177等が一体となった立体構造物170を得ることができる。

    この方法を利用すれば、例えば歯科用構造材などの複雑な形状を有する立体構造物を製作することも可能である。

    特開2004−344623号公報

    特開2005−59477号公報

    一般に、歯科用構造材では、その表面が滑らかであることが要求される。 特に、局部床義歯や全部床義歯では、患者の口腔内の粘膜面に接する表面の平滑性は、義歯の装着感に大きな影響を及ぼすので極めて重要である。

    ところが、上記の従来の積層造形装置では、完成直後の立体構造物の表面には、積層による段差や粉体による微細な凹凸が残存してしまう。 従って、特に口腔内の粘膜面に接する表面に対しては、表面滑沢剤の付与や研磨処理などの後処理が必要であった。

    本発明は、平滑な表面を少なくとも一部に有し、その結果、表面平滑化処理を省略又は簡素化することができる立体構造物を製作可能な積層造形装置を提供することを目的とする。

    本発明の積層造形装置は、ベースを保持する保持機構と、前記ベースの上方から所定位置に液剤を付与する液剤付与装置と、前記ベースの上方から粉体を落下させる粉体付与装置と、前記ベース上の未固結な粉体を除去する粉体除去装置とを備える。 そして、前記液剤付与装置により液剤を付与し、次いで、前記粉体付与装置により粉体を付与し、前記液剤と、前記液剤上に付与された前記粉体とを固結させ、次いで、前記液剤と固結されなかった前記粉体を前記粉体除去装置により除去する工程を繰り返し行うことにより、前記ベース上に立体構造物を形成する。

    本発明によれば、ベースに、最初に液剤が付与されるので、立体構造物のベースに接していた面にはベースの表面性状が忠実に反映され、積層による段差や粉体による微細な凹凸を低減できる。 従って、平滑な表面を有する立体構造物を得ることができる。 その結果、表面平滑化処理を省略又は簡素化することができる。

    例えば、局部床義歯や全部床義歯を作成した場合には、口腔内の粘膜面に対する適合性が著しく向上するので、患者の口腔内への義歯装着時の調整作業が大幅に軽減され、患者への負担と歯科医の労力及び作業時間とを軽減することができる。

    また、歯科技工士が有床義歯を作製するために従来行っていた多くの工程を大幅に簡略化することができる。

    更に、有床義歯の粘膜面に対する適合性が向上するので、適合性が悪いために再作製するというケースを少なくすることが可能になる。

    また、有床義歯の粘膜面に対する適合性が向上し、また作業者による適合性のバラツキが少なくなるので、患者は義歯安定剤を使用する必要が減少する。 その結果、咬合高径が義歯設計時のとおりとなり、義歯安定剤の使用による咬合高径の変化によって引き起こされる咬合性障害や顎関節異常の発生確率を減少させることができる。

    また、義歯が必要になってから実際に装着するまでの期間を短縮できるので、義歯が完成するまでの患者が不自由な思いをする時間を短くすることができる。

    また、義歯が破損した場合も、高精度の義歯を容易に再作成することができるので、再作製のための診断や完成までの待ち時間を極めて短くすることができる。

    前記保持機構が前記ベースが載置されるテーブルであることが好ましい。 これにより、比較的大きな立体構造物を作成することができる。

    あるいは、前記保持機構が前記ベースに挿入される棒状部材であっても良い。 これにより、比較的小さな立体構造物を作成することができる。

    前記粉体除去装置が前記ベースを回転させる回転機構を備え、前記未固結な粉体を重力により落下させて除去することが好ましい。 あるいは、前記粉体除去装置がエアを吹き出すエアノズルを備え、前記未固結な粉体を前記エアにより吹き飛ばして除去することが好ましい。 あるいは、前記粉体除去装置がエアを吸引する吸引ノズルを備え、前記未固結な粉体を前記吸引ノズルに吸引して除去することが好ましい。 いずれの場合も、簡易な方法で未固結な粉体を除去することができる。

    本発明の積層造形装置は、前記保持機構を振動させる振動発生装置を更に備えることが好ましい。 これにより、未固結な粉体の除去を容易且つ短時間で行うことができる。

    本発明の積層造形装置が、前記テーブルの水平方向の周囲を囲む升と、前記升内に盛られた前記粉体の高さをならす均し部材と、前記升と前記テーブルとの高さ方向の相対位置を変化させる昇降機構とを更に備えることが好ましい。 これにより、一定厚さに粉体を散布した後、液剤を粉体上に付与して形成された固結部層を積層して立体構造物を作成することができる。

    前記保持機構が前記ベースが載置されるテーブルであり、前記積層造形装置が、前記テーブルの水平方向の周囲を囲む升と、前記升内に盛られた前記粉体の高さをならす均し部材と、前記升と前記テーブルとの高さ方向の相対位置を変化させる昇降機構とを更に備えることが好ましい。 そして、前記粉体付与装置により前記升内に粉体を付与し、次いで、前記均し部材により前記粉体の高さをならし、次いで、前記液剤付与装置により液剤を付与し、次いで、前記昇降機構により前記升に対して前記テーブルを相対的に下降させる工程を繰り返し行うことにより、前記立体構造物上に更に立体構造物を形成することが好ましい。 これにより、アンダーカット形状など複雑な形状を有する立体構造物の作成が容易になる。

    本発明の積層造形装置が、前記ベース又は前記ベース上に形成された前記立体構造物を計測する3次元計測装置を更に備えることが好ましい。 これにより、ベースの形状の測定、保持機構に対するベースの位置決め、ベース上に形成された立体構造物の形状の測定などを容易に行うことができる。

    前記粉体付与装置の下面に、前記下面に形成された開口を塞ぐように、互いに重ね合わされた複数のスクリーンが設けられていても良い。 この場合、前記複数のスクリーンのそれぞれには前記粉体が通過することができる複数の孔が形成されていることが好ましい。 また、前記複数のスクリーンのうちの少なくとも1つの他のスクリーンに対する相対的な移動を制御することで前記粉体の落下が制御されることが好ましい。 これにより、開口の形状や大きさにかかわらず、粉体の落下の開始及び停止を容易に制御することができる。 換言すれば、粉体付与装置からの粉体の落下領域に関する設計の自由度が向上する。

    前記複数のスクリーンのうちの1つは、帯状のスクリーンの両端が環状に接続されたエンドレススクリーンであることが好ましい。 エンドレススクリーンを一方向に連続的に移動させることにより、粉体を安定的に連続して落下させることができる。

    前記粉体付与装置が、傾斜した基板と、前記基板上に配置された複数の分割板とを備えていても良い。 この場合、前記複数の分割板は上下方向に複数の段に分けて配置されていることが好ましい。 また、Nを自然数としたとき、上から第N+1段に含まれる分割板の数は第N段に含まれる分割板の数より多いことが好ましい。 更に、各分割板は上方からの粉体流を2つの粉体流に分割することが好ましい。 これにより、広い領域に大量の粉体を散布することが可能になるので、立体構造物の形成時間を短縮することができる。

    本発明の積層造形装置が、前記ベースの向きを第1方向及び前記第1方向と異なる第2方向を含む少なくとも2方向に変化させる傾斜機構を更に備えることが好ましい。 この場合、前記ベースが前記第1方向に向けられた状態及び前記ベースが前記第2方向に向けられた状態のそれぞれにおいて、前記液剤の付与及び前記粉体の落下を行うことが好ましい。 これにより、ベースの表面に例えば窪みが形成されていても、窪み内に固結部層を形成することができる。 従って、ベースの形状を問わず、容易に所望する形状の立体構造物を形成することができる。

    上記において、前記第1方向に向けられた前記ベースに対して前記液剤の付与と前記粉体の落下とを繰り返し行って前記ベース上に前記液剤と前記粉体とが固結してなる第1固結部層を形成した後、前記第2方向に向けられた前記ベースに対して前記液剤の付与と前記粉体の落下とを繰り返し行って前記ベース上に前記液剤と前記粉体とが固結してなる第2固結部層を形成しても良い。

    あるいは、前記第1方向に向けられた前記ベースに対して前記液剤の付与と前記粉体の落下とを行って前記ベース上に前記液剤と前記粉体とが固結してなる第1固結部層を形成する工程と、前記第2方向に向けられた前記ベースに対して前記液剤の付与と前記粉体の落下とを行って前記ベース上に前記液剤と前記粉体とが固結してなる第2固結部層を形成する工程とを交互に繰り返し行っても良い。

    いずれの場合も、所望する形状の立体構造物を効率よく形成することができる。

    以下、本発明を実施の形態を示しながら詳細に説明する。

    (実施の形態1)
    図1は、本発明の実施の形態1に係る積層造形装置1の概略構成を示した斜視図である。 図示したように、互いに直交する水平方向軸をX軸及びY軸、上下方向軸をZ軸とする。

    造形テーブル(保持機構)10上にベース12が保持される。 立体構造物はベース12上に積層形成される。 造形テーブル10には、Y軸方向を長手方向とするアーム40の一端が結合され、アーム40の他端は図示しない回転駆動機構に接続されている。 回転駆動機構はアーム40を矢印42の方向に回転させ、造形テーブル10を反転させることができる。

    液剤フィーダ(液剤付与装置)20はベース12の上方から液剤を吐出し落下させる。 液剤フィーダ20は、一軸案内機構28によりY軸方向に移動する。 そして、この一軸案内機構28は図示しない駆動機構によりX軸方向に駆動される。 即ち、液剤フィーダ20は、ベース12上をX軸方向及びY軸方向に走査しながら、所望する位置にて液剤を吐出する。

    粉体フィーダ(粉体付与装置)30は、粉体を落下させるスリット32をその下面に有する。 粉体フィーダ30は、Y軸方向において、少なくともベース12の寸法以上の粉体散布幅を有する。 粉体フィーダ30は、粉体を散布しながらX軸方向に移動することにより、ベース12の上方から粉体を落下させる。

    造形テーブル10の上方には、3次元計測ユニット50が設けられている。

    このような積層造形装置1を用いた立体構造物の製作方法を説明する。

    まず、図2Aに示すように、造形テーブル10上にベース12を固定する。 例えば、有床義歯を製作する場合、ベース12は患者の顎堤を複製したものであり、その上面は患者の口腔内の粘膜面形状と同じ形状を呈する。

    但し、セメントスペースの確保や装着感向上のために、最終的に得られる立体構造物と患者の口腔内の被装着面との間に所望の隙間を確保したい場合には、ベース12の表面の一部又は全部に、隙間付与材として金属、樹脂などからなる箔や薄層が貼付又は塗布されていても良い。

    この際、図2Bに示すように、3次元計測ユニット50を用いて、造形テーブル10上にベース12を正確に位置決めしても良い。 また、3次元計測ユニット50を用いて、ベース12の上面形状を計測しても良い。

    次に、図3Aに示すように、液剤フィーダ20を移動させながら、所定の位置にてノズル21より液剤22を吐出する。 かくして、ベース12上の所定位置に液剤22が付着する。

    1層の固結部層を形成するための液剤の吐出は、液剤フィーダ20の1回の走査で完了させても良いが、複数回の走査に分けて行っても良い。 複数回の走査に分けることにより、例えば液剤として粉体を膨潤させる材料を用いる場合に粉体の膨潤の進行を抑制したり、液剤のにじみを抑えて所望する領域の外に液剤が広がるのを防止したりすることができる。

    次に、図3Bに示すように、粉体フィーダ30をX軸方向に移動させながら、ベース12が粉体34で覆われるようにスリット32から粉体34を落下させる。 そして、液剤22が付着した部分では、液剤22により粉体を膨潤させ、液剤22を重合させて、液剤と粉体とを固結させる。

    次に、図3Cに示すように、アーム40を介して造形テーブル10を反転させる。 これにより、ベース12上の、液剤22により固結された粉体を除く余剰の粉体34が重力により落下して除去される。 その結果、ベース12上に、液剤と粉体とが固結して形成された固結部61が形成される。

    造形テーブル10に造形テーブル10を振動させる振動発生装置が設けられていても良い。 造形テーブル10を反転させたときに造形テーブル10を振動させることにより、余剰の粉体34の除去を容易且つ短時間に行うことができる。 振動発生装置としては、特に制限はないが、例えば電動モータの回転軸に偏心した重りを取り付けた装置を用いることができる。

    図3Aから図3Cと同様の工程を必要回数だけ繰り返して行い、ベース12上に液剤と粉体とが固結して形成された固結部層を順に積層していく。 液剤フィーダ20による液剤の付与位置を変えれば、各固結部層の積層位置を変えることができる。 その結果、図3Dに示すように、ベース12上に、液剤と粉体とが固結した多数の固結部層からなる立体構造物60を形成することができる。

    造形テーブル10上の立体構造物60の完成形状を、3次元計測ユニット50を用いて計測しても良い。

    その後、立体構造物60をベース12から分離して、所望する形状を有する立体構造物60を得る。 必要により表面仕上げ処理を行い、表面滑沢性を向上させても良い。

    本発明では、ベース12上に、最初に液剤を付与し、次いで粉体を散布し、その後、液剤と粉体とを固結させる。 即ち、ベース12の表面には、最初に、粉体ではなく液剤が付与される。 従って、最終的に得られる立体構造物60のうち、ベース12と接触していた面(下面)は、ベース12の表面がほぼ忠実に転写される。 よって、ベース12の表面を滑らかな面にしておけば、これと同様の滑らかな面を得ることができる。

    例えば、歯科用構造材を製作する場合、患者の口腔内の粘膜面形状を再現した滑らかな上面を有するベース12を用いれば、粘膜面に接する面を平滑にすることができる。 従って、この面に対する表面平滑化処理を省略又は簡素化することができる。 また、表面平滑化処理による寸法精度の悪化を低減できるので、適合性が悪化しない。 以上により、高度に熟練した作業者によらずに、歯科用構造材を短時間で高精度に製作できる。

    本発明において、積層厚み(1層の固結部の厚み)は立体構造物の用途に応じて変更することができる。 積層厚みを小さくすれば、解像度が増加し、寸法精度や表面平滑性が向上する。

    [粉体]
    粉体の材料は、有機物、無機物、金属酸化物など任意の種類の粒体を一種類または複数種類を組み合わせて使用することが可能である。 粉体の材料に特に制限はないが、材料の選択に際しては立体構造物の用途を考慮することが好ましい。 例えば、歯科用構造材を製作する場合には、安全性や加工性を考慮して、歯科において広く用いられている実績のある材料を用いることが好ましい。 具体的には、ガラス系材料、各種金属酸化物、各種セラミックス材料、各種ポリマー、または以上の材料を組み合わせた組成物などを用いることができる。 また、粉体の表層がこれらの材料で覆われていても良い。

    樹脂材料を用いる場合、例えば、メチルメタアクリレート重合体、エチルメタアクリレート重合体、メチルメタアクリレートとエチルメタアクリレートとの共重合体のうちのいずれか1種類、あるいはこれらのうちの2種類以上の混合物を用いることができる。 この場合、粉体中に上記樹脂材料からなる粉体を30重量%以上(更には50重量%以上、特に70重量%以上)含有することが好ましく、更に有機粉体、無機粉体、金属酸化物粉体のうちいずれか1種類または2種類以上を含んでいても良い。

    粉体には必要に応じて各種の表面処理を施すことも可能である。 例えばシラン処理や加熱処理を実施できる。

    粉体の形状には特に制限はなく、不定形、球形、ドーナツ型、ポーラス状、凝集塊、ウィスカ、棒状、針状、多孔質、ディンプル状などの形状を目的に応じて適宜選択して用いることができる。 不定形、球形、ドーナツ型、ポーラス状などは造形しやすいという利点を持つ。 ウィスカ、棒状、針状は、硬化後の強度向上に大変効果がある。 凝集塊、多孔質、ディンプル状などは、粉体と液剤との接着性の向上に効果があり、硬化後は大きな機械的強度を発現し且つ維持できるという利点を持つ。

    粒径についても特に制限はないが、一回の積層厚さより小さい粒径である必要がある。 具体的には平均粒子径が0.001μm以上、0.5mm以下であることが好ましい。 更には0.1μm以上、0.3mm以下、特に10μm以上、0.15mm以下であることが好ましい。

    粉体の供給方法としては、粉体を貯留タンク内に準備しておき、チューブを通して粉体フィーダ30に供給する方法や、粉体フィーダ30自身が貯留タンクを備え重力によりスリット32から落下させる方法などをとることができる。 貯留タンクを複数設置して、夫々の貯留タンクに組成や色調などが異なる複数種類の粉体を準備しておき、立体構造物の製作時に目的に合わせて複数種類の粉体を適宜使い分け、組み合わせて使用することもできる。 複数種類の粉体を切り替えて使用する場合には、貯留タンクからスリット32への粉体供給や、スリット32の開閉をコンピュータによって制御することが好ましい。

    スリット32のX軸方向の開口幅は使用する粉体の最大の粒子径の2倍以上、更には6倍以上であることが好ましい。

    上記の図3Cの工程において除去され落下した粉体34を効率よく回収するために、トレイ、吸引装置、及び運搬機構を造形テーブル10の下部に設けてもよい。 回収した粉体はふるいにかけてゴミを取り除いた後に再び貯留タンクに戻して繰り返して使用することもできる。

    [液剤]
    液剤は硬化して粉体と一体化して、固結部のバインダーとなる。

    液剤としては、重合性単量体を基本として目的に応じて各種の添加剤を配合したものを使用することが可能である。 また、液剤は、本発明の実施上求められる粘度や各種物性を損なわない限りにおいて任意の粒体、フィラー、繊維状物質などを含むことも可能である。 液剤の材料に特に制限はないが、材料の選択に際しては立体構造物の用途を考慮することが好ましい。 例えば、歯科用構造材を製作する場合には、安全性や加工性を考慮して、歯科において広く用いられている実績のある材料を用いることが好ましい。 具体的には、水、アクリル系、ウレタン系または他の系統を主成分とするモノマー又はオリゴマー、これらのモノマー又はオリゴマーと可塑剤とからなる組成物、有機溶媒のうち少なくとも1種類以上から成る組成物、これらを混合した液状体が好ましい。

    液剤の主成分となる重合性単量体としてはメチルメタアクリレート、またはエチルメタアクリレートが好ましい。

    例えば、ポリアルキルアクリレートポリマーが0.1〜35重量%溶解された液剤を用いることができる。

    液剤の粘度が低くて射出に適さない場合は、増粘作用を有する成分を含有させることが望ましい。 例えばウレタン系樹脂等の高分子量の重合性単量体や比較的小さな分子量で重合時に架橋材として用いられることの多いエチレングリコールジメタアクリレート、トリエチレングリコールジメタアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタアクリレート、1,6ヘキサンジオールジメタアクリレートなどの重合性単量体を好適に用いることができる。

    また、色調が異なる複数の液剤を用意しておき、これらの液剤を配合量を変化させて混合(混色)して任意の色調の液剤を得ることもできる。 基本的に減算混色理論により所望の色調を得ることができる。 透明度の制御は透明液剤と不透明液剤との混合で行う。 すなわち、透明液剤の配合量を多くすれば透明性が向上し、不透明液剤の配合量を多くすれば透明性が低下する。 白色の不透明材を用いて不透明液剤を調製すれば、不透明化と同時に明度を向上させることができる。 明度を低下させるためには黒色液剤を使用するのが望ましい。

    色調が互いに異なる2以上の液剤からなる色調セットを予め準備する場合、選択する色調に特に制限はなく、色相、明度、彩度の範囲には一切の制限はない。 例えば歯科用構造材を製作する場合には、その使用目的に合致する限りにおいて任意の色調を選択できる。 色調セットを構成する色調数は、歯科用構造材の使用目的に応じて1又は2以上の任意の数でよい。 色調数の上限は特に設けないが、通常は液剤の保守や設置スペースの確保などの観点からは可能な限り少ない色調数で可能な限り多数の色調を再現できることが好ましい。 そのため、1〜24色、更には2〜12色、特に3〜8色からなる色調セットが好ましい。 3〜8色のセットとした場合、赤、黄、黒を必ず加える事が好ましい。 これに粉体自体の色である白色を組み合わせることでほとんどの歯牙、歯肉の色調が再現できる。 他には明度や彩度を調整するための色やキャラクタライズに用いる色を加えて色調セットを構成することができる。

    あるいは、エナメル質、象牙質、歯肉の各色調に調整した液剤を各部に応じて用いることもできる。 この方法は、色調が異なる複数の液剤を混合する方法に比べて、色調のバリエーションや細かな色調調整の観点からは劣るが、日常の補綴物の作製のように再現する色調がほぼ限られている場合には用意する液剤の種類や在庫を最小限に抑えることができるので合理的である。

    重合後の物理的及び/又は化学的特性が互いに異なる複数の液剤からなる液剤セットを用いることもできる。 例えば、歯牙の内部は強靭性に優れた樹脂を主成分とする液剤を用いて形成し、エナメル質部は硬度が高く耐磨耗性に優れた樹脂を主成分とする液剤を用いて形成することで、磨耗しにくく且つ割れにくい、長期間の使用に耐える義歯を作製することができる。

    異なる色調と異なる物性を持った各種液剤を任意に組み合わせて液剤セットを構成することも勿論可能である。 これにより、従来の手作業又は機械による自動製作による歯科用構造材の作成方法と比較して、審美性及び機能性をともに向上させることが可能になり、歯科臨床および研究用として幅広い用途に適用することができる。

    [液剤フィーダ]
    ベース12の上方から一定量の液剤を吐出する液剤フィーダ20は、液剤貯留タンクと直接あるいはチューブを介して間接的に接続されている。 液剤貯留タンクは液剤フィーダ20と一緒に設置されていても良いし、別に設置されていても良い。 液剤貯留タンクが交換可能なカートリッジであっても良い。 これにより液剤の種類を変更したり、液剤を補充する際の作業が簡便となる。

    液剤フィーダ20の液剤が吐出されるノズル21の口径は、吐出量、分解能、製作しようとする立体構造物の形状や大きさ等を考慮して適宜選択することができるが、1μmから500μmの範囲にあることが好ましい。 歯科用構造材を製作する場合には、3μmから200μmの範囲、更には6μmから50μmの範囲にあることが好ましい。

    液剤フィーダ20の動作原理としては、種々のものを用いることができる。 例えば、空気や窒素ガスなどの気体を用いてその圧力によって液剤を吐出する方式、ピエゾ素子を用いて微小量の液剤を飛ばす方式、バブルジェット(登録商標)方式、液剤を帯電させて電気的な引力を利用して吐出する方式、超音波などのエネルギーを利用して液剤を飛ばす方式などを使用でき、液剤の種類、吐出量、製作しようとする立体構造物などに応じて適宜選択することができる。 中でも、空気などの気体圧力によって液剤を吐出する方式、ピエゾ素子を用いる方式、バブルジェット(登録商標)方式などが好ましい。

    一個の液剤フィーダ20に2種以上の液剤を供給しても良い。 この場合、各々の液剤供給パイプを液剤フィーダ20に直結してもよいし、あるいは、各々の液剤供給パイプを合流させた一つの供給パイプを液剤フィーダ20に接続してもよい。

    液剤フィーダ20の数は1つに限らず、複数でも良い。 この場合、各液剤フィーダ20に異なる液剤をそれぞれ供給しても良いし、全ての液剤フィーダ20に同じ液剤を供給しても良い。

    1つの液剤フィーダ20が備える液剤吐出ノズルの数は、1つに限らず、複数であっても良い。 液剤フィーダ20が1つのみのノズルを備える場合であっても、図1に示したように、液剤フィーダ20をX軸及びY軸に駆動するすることにより、ベース12上の所望する位置に液剤を付与することができる。

    液剤フィーダ20が複数のノズルを有する場合、全てのノズルが同じ液剤を吐出しても良いし、ノズルごとに異なる液剤を吐出しても良い。 1つの液剤を吐出するノズルの数が多いほど、処理速度が向上する。

    複数のノズルの配置に特に制約はないが、直線又は曲線に沿った一列配置や格子点状配置が好ましい。 ノズルの配置は液剤フィーダ20の移動方向を考慮して決定するのが好ましい。

    Y軸方向において、ベース12の寸法より広い範囲にわたって複数のノズルを配置すれば、液剤フィーダ20のY軸方向の移動を省略できる可能性がある。 例えば、複数のノズルを、Y軸方向に、造形テーブル10の幅と同じ範囲にわたって配置すれば、液剤フィーダ20をX軸に方向に1度移動するだけで任意のサイズのベース12上の任意の位置に液剤を付与することができる。

    あるいは、複数のノズルを造形テーブル10の全領域に対応する範囲内に格子点状に配置すれば、液剤の付与時に液剤フィーダの移動を省略できる可能性がある。 但し、この場合、粉体を付与する際に液剤フィーダを退避させる必要がある。

    更に、液剤フィーダ20のZ軸方向の位置を変化させる機構や、液剤フィーダ20をX軸及び/又はY軸方向に移動させる機構全体を水平面内で回転駆動する機構を設けても良い。

    異なる液剤を異なるノズルにそれぞれ供給し、個々のノズルの吐出量を独立して制御しても良い。 例えば、色調が異なる複数の液剤を使用する場合には、個々のノズルの吐出量を変化させることで部位により色調が変化した立体構造物を製作することができる。 また、固結後の物性が互いに異なるように調整した複数の液剤を使用する場合には、個々のノズルの吐出量を変化させることで部位により物性が変化した立体構造物を製作することができる。

    [液剤固結方法]
    液剤は重合することにより粉体とともに固結する。 液剤を重合させる方法としては、特に制限はないが、化学重合、光重合、熱重合、紫外線重合、近赤外線重合、遠赤外線重合、超音波重合など工業界において広く普及している任意の方法をひとつ、あるいは複数用いることができる。

    液剤を化学重合させるためには、例えば、粉体に過酸化ベンゾイルを配合し、液剤に3級アミン、バルビツール酸などを配合しておくことが好ましい。 これにより、付着した液剤上に粉体が散布され、液剤と粉体とが接触すると、液剤が粉体に含浸され、粉体が膨潤し、液剤と粉体とに夫々配合した化学重合触媒が接触することで化学重合が起こって硬化する。 この場合、液剤が付与された部分でのみ重合硬化し、液剤が付与されなかった部分では重合硬化しない。 したがって、液剤が付与されず、その結果、固結されなかった不要な粉体を回収して再度ベース12上に散布することができる。

    粉体及び/又は液剤を予め加熱しておき、液剤が粉体に含浸したときに熱エネルギーで化学重合を促進させることもできる。

    液剤を加熱する方法は特に制限はなく、目的に応じて自由に選択することが可能である。 例えば、液剤フィーダ20の液剤吐出ノズル21にヒーターを設置しても良い。

    ノズルにヒーターを設置することは、副次的に液剤の粘度を低下させるという効果をもたらす。 これにより、常温では射出には適さないような高い粘度の液剤を射出することが可能になる。 常温では射出に適さないような高い粘度の液剤としては、例えばフィラーやポリアルキルメタアクリレートを含有あるいは溶解させた液剤や、液剤を構成する一部の液状成分が高粘度液体であるため、全体の粘度が高くなった液剤などが挙げられる。

    化学重合法では一層の積層ごとに光を照射するなどの重合操作を行う必要がない。 従って、立体構造物の製作中に重合操作のための時間が不要になり、省力化と製作時間の短縮を図ることができる。

    従来から樹脂材料の重合硬化に用いられている1又は複数の重合方法を併用することももちろん可能である。 例えば造形時は化学重合法によって重合硬化を進行させ、造形終了後に全体を加熱して最終重合させることで未反応モノマーの減少や物性の更なる向上等を図ることができる。

    液剤を化学重合させる場合には、液剤を重合させるための特別な装置が不要である。 液剤と粉体とが化学重合反応によって硬化すると、空気に触れている表層より深さ500μm(更には300μm、特に200μm)の範囲内に未重合層が残存する。 その後、この上に次層を積層すると、下層の表層に存在する上記未重合層と上層とが、上層の化学重合反応によって一体的に重合し硬化する。

    液剤を光重合させる場合には、ベース12に光を照射できるように光照射器を位置と向きを調整して設置する。 必要であればコンピュータを含む光照射方向制御装置を設けることも可能である。 ベース12の上方より液剤を吐出し、次いで、粉体を散布して、粉体に液剤を含浸させた後、光を照射して重合、硬化させる。 この場合には液剤にのみ光重合触媒を配合しておけば、液剤が付与された部分だけが重合硬化し、液剤が付与されなかった部分は重合硬化しない。 したがって、液剤が付与されず、その結果、固結されなかった不要な粉体を回収して再度ベース12上に散布することができる。

    液剤を熱重合させる場合には、例えば過酸化ベンゾイルなど熱を加えることでラジカルを発生する重合開始材を液剤にのみ配合しておく。 そして、加熱された粉体を散布する。 液剤は粉体による熱により重合し、硬化する。 液剤が付与されなかった部分は重合硬化しない。

    液剤を紫外線、近赤外線、又は遠赤外線を用いて重合させる場合には、ベース12の任意の場所に所定波長のビームを照射できるように光線照射装置を位置と向きを調整して設置する。 必要であればコンピュータを含む光照射方向制御装置を設けることも可能である。 ベース12の上方より液剤を吐出し、次いで、粉体を散布して、粉体に液剤を含浸させた後、細い光ビームを所望位置に照射して重合エネルギーを印加して、ビームが照射された部分のみを重合、硬化させる。

    近赤外線を用いる場合には、例えば過酸化ベンゾイルなど熱を加えることでラジカルを発生する重合開始材を液剤及び/又は粉体に配合しておく。

    紫外線を用いる場合には、液剤に周知の紫外線重合開始材(例えばベンゾインメチルエーテルなど)を適量添加しておく。 この場合、使用される液剤としては、歯科用構造材を製作する場合には、歯科用として紫外線重合の使用実績があるものであれば何ら制限を設けずに用いることが出来る。

    ビームを部分的に照射するのではなく、全体に同時に照射することも可能である。 この場合は、液剤のみに重合開始剤を配合し、上記の光重合を行うのと同様の操作を行う。

    樹脂材料の重合硬化法として従来より用いられている、複数の重合方法を併用して重合硬化させることももちろん可能である。 例えば光重合と化学重合とを組み合わせて、光が到達しない部分では化学重合にて硬化させ、一般的に化学重合では重合性が低下する表面近傍では光重合で十分に硬化させるというように、夫々の欠点を夫々の利点で補うような重合方法を用いることができる。

    [コンピュータ]
    積層造形装置は、各種情報を記憶し、演算し、積層造形装置を構成する各要素の動作を制御するために、コンピュータを備える。 ハードウェアに関しては、広く普及している一般的なパーソナルコンピュータが使用できる。 ソフトウェアに関しては、得ようとする立体構造物の形状を記憶、編集、保持、保存する機能と、異なる材料を使い分けるための演算機能と、形状のデータに基づいて積層造形装置の各要素の制御データを生成する機能と、生成した制御データにしたがって各要素を制御して立体構造物を自動的に製作する機能とを備えることが好ましい。

    コンピュータを用いて、得ようとする立体構造物の3次元形状データを作成しても良い。 例えば、予め作製した模型などの形状を計測することにより、またはCADの使用などにより形状データを作成できる。 また、形状計測データをCADや他のソフトを用いて編集して形状データを作成することも勿論可能である。

    形状計測のために3次元計測ユニット50を利用しても良い。 例えば、造形テーブル10上にベース12を載置して、立体構造物が形成される面の形状を3次元計測ユニット50を用いて測定しても良い。 この測定データを、得ようとする立体構造物の3次元形状データの作成に利用することができる。

    3次元形状データに、内部構造データを加えても良い。 また、色調や物性に関するデータを加えても良い。 このとき、色調や物性は、立体構造物全体で均一である必要はなく、各部で異ならせても良い。 更に、グラデーション様に色調や物性を順次変化させても良い。 各部の色調を決定する際に、機械測色装置のデータを用いることもできる。 設定された色調を再現できるように、液剤の選択と吐出量とが演算され、液剤吐出制御データに付加される。

    このようにして作成した3次元形状データを一定ピッチの複数の水平面で切断して、液剤吐出制御データが作成される。 このときのピッチは一回の積層高さと同じに設定される。 使用する液剤と粉体の組み合わせによっては、膨潤や化学反応等による膨張あるいは収縮が生じる。 これらを考慮して1層の固結部層を形成するための液剤及び粉体の付与量が決定される。

    コンピューターは、各層の液剤吐出制御データに基づいて、液剤フィーダ20の位置と、液剤の吐出とを制御する。

    必要な精度と速度で粉体を積層するために、コンピューターは、粉体フィーダ30の移動、粉体落下の開始と停止、粉体貯留タンクから粉体フィーダ30への粉体の供給をも制御することが好ましい。

    コンピュータは、更に、ネットワークを介して必要なデータのやり取りをする機能、3次元計測ユニット50からのデータを処理する機能、各部の状態をモニタする機能、必要に応じて警告を発したり各要素の動作を緊急停止したりする安全機能などを有していても良い。

    [後処理]
    得られた立体構造物60のベース12に接していた面にはベース12の表面性状が忠実に反映される。 ベース12の表面が滑らかであれば、これと接していた面には積層による段差や粉体による微細な凹凸は極めて少ない。 但し、必要に応じて更に表面仕上げ処理を行っても良い。 また、立体構造物60のベース12に接していた面以外の面に形成された積層による段差や微細な凹凸を解消するために各種表面仕上げ処理を行っても良い。

    積層段差や凹凸を解消するためには、段差解消材を塗布して段差や凹凸を埋め、研削、研磨して仕上げる方法、段差解消材を含有する液に立体構造物を浸漬して引き上げ、研削、研磨して仕上げる方法、超音波振動子を段差や凹凸のある部分に当てて部分的に溶解させることで表面を滑らかにし研磨して仕上げる方法などを好適に用いることができる。

    段差解消材としては、造形に用いたのと同種の粉体と液剤を混合したものを基本的な組成とし、流動性やチクソトロピー性を目的に応じて最適な値に調整したものを用いることが望ましい。

    更に、必要であれば表面滑沢剤への浸漬処理や研磨を行い、段差や凹凸の解消と表面滑沢性を付与してもよい。

    (実施の形態2)
    図4は、本発明の実施の形態2に係る積層造形装置2の概略構成を示した斜視図である。 図1と同一の構成要素には同一の符号を付してあり、これらについての詳細な説明を省略する。

    以下、本実施の形態2を、実施の形態1との相違点を中心に説明する。

    本実施の形態2に係る積層造形装置2は、実施の形態1に係る積層造形装置1が有していた、造形テーブル10を反転させるアーム40に代えて、造形テーブル10上のベース12に向かってエア72を吹き付けるエアノズル70を有している。

    液剤により固結されなかった余剰の粉体を除去するために、実施の形態1では図3Cに示すように造形テーブル10を反転させて落下させた。 これに対して、本実施の形態2では、エアノズル70からエア72をベース12に向かって吹き付けて、空気圧により余剰の粉体を吹き飛ばして除去する。

    ベース12の全面にエア72が吹き付けられるように、エアノズル70の位置やエア72の吹き出し方向が可変であっても良い。

    造形テーブル10に造形テーブル10を振動させる振動発生装置が設けられていても良い。 造形テーブル10を振動させながらエア72を吹き付けることにより、余剰の粉体の除去を容易且つ短時間に行うことができる。

    本実施の形態2は、余剰の粉体の除去方法が実施の形態1と異なる点を除いて、実施の形態1と同様であり、実施の形態1と同様の効果を奏する。

    なお、実施の形態1において、図3Cに示すように造形テーブル10を反転させた状態で、本実施の形態2に示すエアノズル70を用いて余剰の粉体34を吹き飛ばして除去しても良い。 これにより、余剰の粉体のより完全な除去が可能になる。

    (実施の形態3)
    図5は、本発明の実施の形態3に係る積層造形装置3の概略構成を示した斜視図である。 図1と同一の構成要素には同一の符号を付してあり、これらについての詳細な説明を省略する。

    以下、本実施の形態3を、実施の形態1との相違点を中心に説明する。

    本実施の形態3に係る積層造形装置3は、実施の形態1に係る積層造形装置1が有していた、造形テーブル10を反転させるアーム40に代えて、造形テーブル10上のベース12の周囲のエア82を吸引する吸引ノズル80を有している。

    液剤により固結されなかった余剰の粉体を除去するために、実施の形態1では図3Cに示すように造形テーブル10を反転させて落下させた。 これに対して、本実施の形態3では、エア82とともに余剰の粉体を吸引ノズル80に吸引して除去する。

    ベース12の全面からエア82を吸引できるように、吸引ノズル80の位置やエア82の吸引方向が可変であっても良い。

    造形テーブル10に造形テーブル10を振動させる振動発生装置が設けられていても良い。 造形テーブル10を振動させながら余剰の粉体を吸引することにより、余剰の粉体の除去を容易且つ短時間に行うことができる。

    本実施の形態3は、余剰の粉体の除去方法が実施の形態1と異なる点を除いて、実施の形態1と同様であり、実施の形態1と同様の効果を奏する。

    なお、実施の形態1において、図3Cに示すように造形テーブル10を反転させた状態で、本実施の形態3に示す吸引ノズル80を用いて余剰の粉体34を吸引して除去しても良い。 これにより、余剰の粉体のより完全な除去が可能になる。

    また、実施の形態2に示したエアノズル70を用いて余剰の粉体を吹き飛ばし、同時に、飛散した粉体を本実施の形態3に示した吸引ノズル80で吸引しても良い。

    更に、実施の形態1において、図3Cに示すように造形テーブル10を反転させた状態で、実施の形態2に示したエアノズル70を用いて余剰の粉体を吹き飛ばし、同時に、飛散した粉体を本実施の形態3に示した吸引ノズル80で吸引しても良い。

    (実施の形態4)
    図6は、本発明の実施の形態4に係る積層造形装置4の概略構成を示した斜視図である。 図1と同一の構成要素には同一の符号を付してあり、これらについての詳細な説明を省略する。

    以下、本実施の形態4を、実施の形態1との相違点を中心に説明する。

    本実施の形態4に係る積層造形装置4は、造形テーブル10の水平方向の周囲を取り囲む壁を備えた升90と、水平面と平行な升90の上面92上をX軸方向に摺動する均し部材95とを備える。 また、造形テーブル10は、図示しない駆動機構により升90の内壁面上を摺動しながら一定ピッチで下降される。 粉体フィーダ30は、Y軸方向において、造形テーブル10の寸法と略同一の粉体散布幅を有する。 粉体フィーダ30は、粉体を散布しながらX軸方向に移動することにより、造形テーブル10の全面に粉体を散布する。 図6では、構造を理解しやすくするために、升90を二点鎖線で示して、その中の造形テーブル10を透視している。

    このような積層造形装置4を用いた立体構造物の製作方法を図7A〜図7C及び図8A〜図8Cを用いて説明する。

    まず、実施の形態1で説明した方法により、図7Aに示すように、ベース12上に液剤と粉体とが固結して形成された複数の固結部層が積層された下部構造物62を作成する。 ここで、ベース12の頂部12aは下部構造物62により完全に覆われており、下部構造物62の上面62aは、升90の上面92と同一高さである。

    次いで、造形テーブル10を升90に対してZ軸方向に相対的に単位ピッチだけ下降させる。 そして、図7Bに示すように、粉体フィーダ30から升90内に、下部構造物62が完全に埋まるほどに粉体34を散布する。

    次いで、図7Cに示すように、均し部材95を、その下端を升90の上面92に接触させながらX軸方向に移動させる。 その結果、粉体34の上面を升90の上面92と同一高さに規制する。 これにより、下部構造物62上に均一厚さの粉体層が形成される。 均し部材95で除去された粉体は、図示しない回収トレイ上に落下して回収される。

    次いで、図8Aに示すように、液剤フィーダ20を移動させながら、所定の位置にて粉体34に向かって液剤を吐出する。 液剤が付与された部分では、液剤により粉体34を膨潤させ、液剤を重合させて、液剤と粉体とを固結させて固結部63が形成される。 固結部63は、下部構造物62とも一体化される。

    次いで、造形テーブル10を升90に対してZ軸方向に相対的に単位ピッチだけ下降させる。 そして、上記図7Aから図8Aと同様の工程を必要回数だけ繰り返して行い、下部構造物62上に液剤と粉体とが固結して形成された固結部層を順に積層していく。 液剤フィーダ20による液剤の付与位置を変えれば、各固結部層の形状を変えることができる。

    図8Bに示すように、得ようとする立体構造物60の頂部まで固結部層の積層が完了した後、アーム40を介して造形テーブル10を反転させる。 これにより、造形テーブル10上の固結されていない余剰の粉体34が重力により落下して除去される。 その結果、図8Cに示すように、ベース12上に、液剤と粉体とが固結した多数の固結部層からなる立体構造物60を形成することができる。

    実施の形態1と同様に、造形テーブル10上の立体構造物60の完成形状を、3次元計測ユニット50を用いて計測しても良い。

    その後、立体構造物60をベース12から分離して、所望する形状を有する立体構造物60を得る。 必要により表面仕上げ処理を行い、表面滑沢性を向上させても良い。

    本実施の形態では、ベース12の頂部が隠れるまでは、実施の形態1で説明した図3A〜図3Cの工程を繰り返して下部構造物62を形成し、その後、本実施の形態で説明した図7A〜図8Aの工程を繰り返して行い、立体構造物60を完成させる。 図7A〜図8Aの工程のように、升90内に粉体34を充填した後、所望する位置に液剤を付与して液剤と粉体とを固結するので、図8Cに示すアンダーカット(上部より窪んだ側壁の部分)64を有する形状等、複雑な形状の立体構造物60を容易に作成することができる。

    上記の例では、図8Bの後の余剰の粉体34の除去を造形テーブル10を反転させることにより行ったが、実施の形態2で説明したようにエアを吹き付けて空気圧により余剰の粉体34を吹き飛ばして除去しても良いし、実施の形態3で説明したようにエアとともに余剰の粉体34を吸引して除去しても良い。 或いは、これらを組み合わせて余剰の粉体34を除去しても良い。 更に、余剰の粉体34を除去する際に、振動発生装置により造形テーブル10を振動させても良い。

    上記の例では、升90に対して造形テーブル10を所定ピッチずつ下降させたが、造形テーブル10の高さを一定として、升90を所定ピッチずつ上昇させても良い。 あるいは、テーブル10と升90とをZ軸に沿って逆方向に移動させても良い。

    下部構造物62上に積層される固結部層の1層あたりの積層厚みは、升90と造形テーブル10とのZ軸方向の相対的移動ピッチに依存する。 積層厚み(即ち、移動ピッチ)は立体構造物の用途に応じて変更することができる。 積層厚みを小さくすれば、解像度が増加し、寸法精度や表面平滑性が向上する。

    使用する液剤と粉体の組み合わせによっては、膨潤や化学反応等による膨張あるいは収縮が生じる。 これらを考慮して造形テーブル10のZ軸方向の相対的移動ピッチが設定される。

    上記の例では、粉体フィーダ30をX軸に沿って移動させた後、均し部材95をX軸に沿って移動させたが、粉体フィーダ30の移動方向の下流側に均し部材95を一体に取り付けて、図7Bの動作と図7Cの動作とを同時に行っても良い。 あるいは、粉体フィーダ30の移動方向の両側に均し部材95を取り付けても良い。 この場合には、粉体フィーダ30をX軸に沿っていずれの向きに移動させても、一度の移動で図7Bの動作と図7Cの動作とを同時に行うことができる。

    (実施の形態5)
    図9は、本発明の実施の形態5に係る積層造形装置5の概略構成を示した斜視図である。 図示したように、互いに直交する水平方向軸をX軸及びY軸、上下方向軸をZ軸とする。

    ベース17に、Y軸方向を長手方向とする棒状部材(保持機構)15の一端が挿入されて、ベース17が保持される。 立体構造物はベース17上に積層形成される。 棒状部材15の他端には、図示しない回転駆動機構が連結されており、棒状部材15及びベース17は矢印16の方向に回転させられる。

    液剤フィーダ(液剤付与装置)25はベース17の上方から液剤を吐出し落下させる。 液剤フィーダ25の下面には、少なくともベース17のY軸方向寸法以上にわたって複数の吐出ノズル26がY軸方向に並んで配置されている。 複数の吐出ノズル26のそれぞれは、互いに独立して制御されて液剤を下方に落下させる。 液剤フィーダ25は図示しない駆動機構によりX軸方向に駆動される。 即ち、液剤フィーダ25は、ベース17上に移動して、ベース17の上方からY軸方向の所望する位置に液剤を落下させることができる。

    粉体フィーダ(粉体付与装置)35は、少なくともベース17のY軸方向寸法以上の粉体散布幅を有する。 粉体フィーダ35は図示しない駆動機構によりX軸方向に駆動される。 即ち、粉体フィーダ35は、ベース17上に移動して、ベース17の上方から粉体を落下させることができる。

    ベース17の上方には、3次元計測ユニット50が設けられている。

    このような積層造形装置5を用いた立体構造物の製作方法を説明する。

    まず、図9に示すように、棒状部材15にベース17を固定する。 例えば、クラウン、ブリッジ、フレームなどの歯冠補綴物を製作する場合、ベース17は患者の支台歯形状を複製したものである。

    この際、3次元計測ユニット50を用いて、棒状部材15上にベース17を正確に位置決めしても良い。 また、棒状部材15及びベース17を矢印16の方向に回転させながら、3次元計測ユニット50を用いて、ベース17の外形状を計測しても良い。

    次に、図10Aに示すように、液剤フィーダ25をベース17の上方に移動して、棒状部材15及びベース17を矢印16の方向に回転させながら、複数の吐出ノズル26から液剤27を下方に落下させる。 このとき、ベース17の回転に同期して液剤フィーダ25の複数の吐出ノズル26をそれぞれ独立して制御する。 その結果、ベース17の外表面の所望の位置にのみ液剤27を付着させる。

    ベース17を1回転させて液剤27の付着が完了すると、液剤フィーダ25を退避させて、粉体フィーダ35をベース17上に移動させる。 そして、図10Bに示すように、棒状部材15及びベース17を矢印16の方向に回転させながら、粉体フィーダ35のスリット36から粉体37を下方に落下させる。 このとき、図10Aの工程において液剤27が付着された部分では、液剤27により粉体37が膨潤され、液剤27が重合されて、液剤と粉体とが固結して固結部66が形成される。 液剤が付着していない部分に落下した粉体37は、ベース17が回転することにより重力により落下して除去される。 ベース17が1回転すると、スリット36を閉じ、粉体37の散布を停止し、粉体フィーダ35を退避させる。

    図10Aから図10Bと同様の工程を必要回数だけ繰り返して行い、ベース17上に液剤と粉体とが固結して形成された固結部層を順に積層していく。 液剤フィーダ25による液剤の付与位置を変えれば、各固結部層の積層位置を変えることができる。 その結果、図10Cに示すように、ベース17上に、液剤と粉体とが固結した多数の固結部層からなる立体構造物65を形成することができる。

    棒状部材15上の立体構造物65の完成形状を、3次元計測ユニット50を用いて計測しても良い。

    その後、立体構造物65をベース17から分離して、所望する形状を有する立体構造物65を得る。 必要により表面仕上げ処理を行い、表面滑沢性を向上させても良い。

    実施の形態1と同様に、本実施の形態においても、ベース17上に、最初に液剤を付与し、次いで粉体を散布し、その後、液剤と粉体とを固結させる。 即ち、ベース17の表面には、最初に、粉体ではなく液剤が付与される。 従って、最終的に得られる立体構造物65のうち、ベース17と接触していた面は、ベース17の表面がほぼ忠実に転写される。 よって、ベース17の表面を滑らかな面にしておけば、これと同様な滑らかな面を得ることができる。

    例えば、クラウン、ブリッジ、フレームなどの歯冠補綴物を製作する場合、患者の支台歯形状を再現したベース17を用いれば、支台歯に接する面を平滑にすることができる。 従って、この面に対する表面平滑化処理を省略又は簡素化することができる。 また、表面平滑化処理による寸法精度の悪化を低減できるので、適合性が悪化しない。 以上により、高度に熟練した作業者によらずに、歯科用構造材を短時間で高精度に製作できる。

    本発明において、積層厚み(1層の固結部の厚み)は立体構造物の用途に応じて変更することができる。 積層厚みを小さくすれば、解像度が増加し、寸法精度や表面平滑性が向上する。

    実施の形態1に示した積層造形装置1のアーム40を、本実施の形態5の棒状部材15として用いても良い。 即ち、実施の形態1に示した積層造形装置1において、アーム40の先端に取り付けられた造形テーブル10を脱着可能とする。 作成しようとする立体構造物に応じて、造形テーブル10を取り外し、代わりにベース17を取り付ける。 この際、アーム40とベース17との間に、適当な接続部材を介在させても良い。 これにより、総義歯のような大型構造物は造形テーブル10を用いて製作し、歯冠補綴物のような小型構造物はベース17を用いて製作することができる。 従って、各種サイズの立体構造物を共通する積層造形装置で製作することができる。

    本発明において、ベース12,17の材料は、特に限定はないが、例えば石膏を用いることができる。 ベース12,17の表面には、液剤22,27が浸透するのを防止し、且つ、立体構造物60,65を分離しやすくするために、ワセリンなどの離型材を塗布することが好ましい。 また、歯冠補綴物等を製作する場合には、患者の支台歯との間のセメント層(接着剤層)を確保するために、ベース12,17の表面に歯科用のスペイサを塗布することが好ましい。

    (実施の形態6)
    図11は、本発明の実施の形態6に係る積層造形装置6の概略構成を示した斜視図である。 図1と同一の構成要素には同一の符号を付してあり、これらについての詳細な説明を省略する。

    以下、本実施の形態6を、実施の形態1との相違点を中心に説明する。

    本実施の形態6に係る積層造形装置6は、実施の形態1に係る積層造形装置1が有していた粉体フィーダ30に代えて、複層スクリーン型粉体フィーダ(以下、単に「粉体フィーダ」という)200を有している。

    3次元計測ユニット50及び粉体フィーダ200のうちの一方又は両方は、X軸及びY軸を含む面(XY面)と平行な方向に移動可能であり、必要に応じて造形テーブル10の上方に配置したり、造形テーブル10の上方から退避させたりすることができる。 3次元計測ユニット50及び粉体フィーダ200のうちの一方又は両方は、液剤フィーダ20をY軸方向に駆動する一軸案内機構28とともに図示しない駆動機構によりX軸方向に駆動されても良い。

    図12は、粉体フィーダ200の分解斜視図である。 粉体フィーダ200は、粉体貯留槽201と、円形状の3枚のスクリーン202,203,204とを備える。 粉体貯留槽201は、ベース12上に散布される粉体を貯留するための略カップ状の容器であり、その下面には円形の開口が形成されている。 スクリーン202,203,204は、この順にZ軸方向に重ね合わされて粉体貯留槽201の下面の開口を塞ぐように粉体貯留槽201に装着されている。 スクリーン202,203,204のそれぞれには粉体が通過することができる多数の微細な貫通孔(以下、「微細孔」という)が形成されている。

    スクリーン202,203,204のうち、上下のスクリーン202,204は粉体貯留槽201に固定された静止スクリーンであり、中間のスクリーン203は矢印203aの方向にXY面内にて回転駆動される被駆動スクリーンである。 スクリーン203を回転させるための駆動源は特に制限はなく、例えばモータ、ぜんまい、振り子などを用いることができる。 スクリーン203はその駆動源に直接接続されていても良く、あるいは減速歯車などの動力伝達機構を介して接続されていても良い。 更に、スクリーン203とその駆動源とは近接して配置されていても、離れて配置されていても良い。 離れて配置されている場合には、リンク機構、チェーンベルトなどを介して駆動源の駆動力をスクリーン203に伝達することができる。

    中間のスクリーン203が静止している状態では、粉体貯留槽201内の粉体は、スクリーン202,203,204を通過してこれより下に落下することはない。 一方、スクリーン203を回転させると、粉体は、スクリーン202,203,204のそれぞれの微細孔を通過してこれより下に落下する。 その後、スクリーン203の回転を停止すれば、粉体の落下は停止しする。 即ち、スクリーン202,203,204は、粉体貯留槽201内の粉体の造形テーブル10上への落下を制御することができる。

    実施の形態1と同様に、液剤フィーダ20にてベース12上に液剤を付与した後、液剤フィーダ20を造形テーブル10の上方から退避させ、次いで、粉体フィーダ200を造形テーブル10の上方に移動して、ベース12上に粉体を散布する。

    スクリーン202,203,204のそれぞれにおいて、多数の微細孔が形成された領域は造形テーブル10の上面よりも大きい。 従って、造形テーブル10の上方に粉体フィーダ200を移動した後は、スクリーン203を回転させるだけで、造形テーブル10の全面にわたって粉体を散布することができる。 即ち、造形テーブル10の全面に粉体を散布するためには、実施の形態1では粉体フィーダ30をX軸方向に移動させる必要があったが、本実施の形態では粉体フィーダ200を移動させる必要はない。 また、粉体の散布の制御は、実施の形態1ではスリット32の開閉を制御する必要があったが、本実施の形態ではスクリーン203の回転を制御すれば良い。 このように、本実施の形態では、大きな領域に一度に粉体を散布することができ、しかも、粉体の散布を簡単な機構により制御することができる。

    必要な量の粉体を散布した後、スクリーン203の回転運動を停止して、粉体の散布を止める。

    スクリーン203の回転運動は、一方向のみの連続回転であっても良く、回転方向が変化する反転運動であっても良い。 あるいは、回転運動ではなく、XY面と平行な一方向に沿った往復運動であっても良い。

    スクリーン202,203,204のそれぞれに形成される微細孔の開口径は、使用される粉体に含まれる粒子の最大径の2倍以上、特に6倍以上であることが好ましい。

    スクリーン202,203,204のそれぞれに形成される微細孔の開口形状は、上述した粉体の落下を制御することができれば特に制限はない。 例えば図13Aに示すような円形のほか、楕円形、矩形、各種多角形、又はスリット等であっても良い。 あるいは、図13Bに示すような円弧状、図13Cに示すような形状が異なる複数種類の開口の組み合わせ、又は図13Dに示すような縦横方向に延びた多数の線材により形成されたメッシュなど、いずれであっても良い。 また、開口率(スクリーンの単位面積に対する微細孔の合計面積の比率)や微細孔の数も、上述した粉体の落下を制御することができれば特に制限はない。

    スクリーン202,203,204が、上記のような多数の微細孔を有する部材ではなく、複数の板材が互いに離間して配置された羽根車状部材であっても良い。 この場合、板材の数、形状、寸法などは、上述した粉体の落下を制御することができれば特に制限はない。

    スクリーン202,203,204は、互いに同一であっても異なっていても良い。

    図12では粉体フィーダ200が3枚のスクリーン202,203,204を備える例を示したが、スクリーンの数は3に限定されない。 スクリーンの数が少ないほど、構造を簡略化でき、目詰まりがしにくいので清掃が容易であり、また、スクリーンの交換作業も容易である。 スクリーンの数が多いほど、これらの利点は得にくくなるが、被駆動スクリーンの停止時での粉体の漏れが少なくなり、粉体散布の開始及び停止の制御性が向上する。 本発明では、スクリーンの数は2以上であることが必要である。 その上限は、特に制限はないが、6以下であることが実用上好ましい。 複数のスクリーンのうち、駆動されるスクリーンと駆動されないスクリーンとは交互に配置されることが好ましい。

    隣り合うスクリーンは、互いに接触していても離間していても良い。 接触させる場合には、その接触圧は実用できる範囲で自由に設定することができる。 隣り合うスクリーン間の距離や接触圧を調整することにより、粉体の散布量、散布の開始及び停止の制御性、被駆動スクリーンの停止時での粉体の漏れなどを調整することができる。

    スクリーンの材料は特に制限はなく、例えば金属、紙、ガラス、布、プラスチックなどの中から適宜選択することができる。 また、粉体の付着防止、腐食防止、強度向上、耐摩耗性向上などの目的に応じて、スクリーンにメッキ、塗装、研磨、熱処理、薬剤処理などの処理を施すことができる。

    (実施の形態7)
    図14は、本発明の実施の形態7に係る積層造形装置7の概略構成を示した斜視図である。 図1と同一の構成要素には同一の符号を付してあり、これらについての詳細な説明を省略する。

    以下、本実施の形態7を、実施の形態6との相違点を中心に説明する。

    本実施の形態7に係る積層造形装置7は、実施の形態6に係る積層造形装置6と同様に、複層スクリーン型粉体フィーダ(以下、単に「粉体フィーダ」という)210を有している。 但し、実施の形態6の粉体フィーダ200と異なり、本実施の形態7の粉体フィーダ210では、粉体貯留槽の下面に設けられた開口が長方形であり、この開口に取り付けられる複数のスクリーンの形状も長方形である。 粉体貯留槽の開口及び複数のスクリーンの形状が異なる以外は、構成及び機能に関して、本実施の形態の粉体フィーダ210は実施の形態6の粉体フィーダ200と同じである。 複数のスクリーンの多数の微細孔が形成された領域及び粉体貯留槽の開口のそれぞれの長軸方向はY軸方向と平行であり、それぞれの長軸方向寸法は造形テーブル10の上面よりも大きい。

    粉体フィーダ210は、実施の形態1に示した粉体フィーダ30と同様に設置されて使用される。 即ち、造形テーブル10の上方からの粉体の落下は、粉体フィーダ210をX軸方向に移動させながら行う。 但し、粉体の落下の開始及び停止は実施の形態6と同様に被駆動スクリーンの駆動を制御することにより行う。 スクリーンの形状が長方形であるので、被駆動スクリーンは、実施の形態6の回転運動ではなく、一方向(例えばY軸方向)に往復運動する。

    このようなX軸方向に移動する粉体フィーダ210は、造形テーブル10の上方から光や熱を与えて粉体及び液剤を固結させる必要がある場合に、粉体フィーダ210を光や熱の照射範囲外に移動させることが容易に行えるという利点を有する。

    液剤フィーダ20をX軸方向に移動する駆動機構(図示せず)に粉体フィーダ210を取り付けてもよい。 これにより、粉体フィーダ210と液剤フィーダ20とでX軸方向の駆動機構を共通化することができるので、駆動系及び制御系を簡単化でき、また部品の削減も可能になる。

    粉体フィーダ210をX軸方向に移動する駆動機構と、液剤フィーダ20をX軸方向に移動する駆動機構とを別個に設けると、粉体フィーダ210と液剤フィーダ20との干渉を避けるために、両者のZ軸方向における位置を異ならせる必要が生じるかも知れない。 このような場合、気流の影響などにより、造形テーブル10から遠くに配置されたフィーダから落下された粉体又は液剤を造形テーブル10上の所望の位置に着地させることが困難となる可能性がある。 粉体フィーダ210と液剤フィーダ20とでX軸方向の駆動機構を共通化すれば、粉体フィーダ210と液剤フィーダ20とが干渉することがないので、両者を造形テーブル10に接近して配置することができるので、粉体及び液剤の着地位置精度が向上する。

    更に、実施の形態4で説明したように、造形テーブル10上の粉体の上面を平面状に均す必要がある場合には、粉体フィーダ210の下端を図6の均し部材95と同様に機能させてもよく、あるいは粉体フィーダ210に均し部材95(図6参照)を取り付けてもよい。 このような部材の複合化により、駆動系及び制御系を簡単化でき、また部品の削減が可能になる。

    (実施の形態8)
    図15は、複層スクリーン型粉体フィーダの別の実施形態の概略構成を示した斜視図である。 この複層スクリーン型粉体フィーダ(以下、単に「粉体フィーダ」という)220は、粉体貯留槽221と、粉体貯留槽221の下面の開口(図示せず)を塞ぐように設けられた複数(例えば、2〜6枚)のスクリーンとを備える。 複数のスクリーンのうちの1つは、帯状のスクリーンの両端が環状に接続されたエンドレススクリーン222であり、他のスクリーンは粉体貯留槽221の下面の開口を塞ぐように粉体貯留槽221に装着固定された静止スクリーンである。 これらの複数のスクリーンのそれぞれには、実施の形態6で説明したような、粉体が通過することができる多数の微細な貫通孔(微細孔)が形成されている。

    エンドレススクリーン222は、4本のローラ223a,223b,224a,224bにより、所定の位置に、所定の張力が印加された状態で保持されている。 ローラ223aは駆動機構225が接続された駆動ローラであり、ローラ223b,224a,224bは自由に回転可能な従動ローラである。 内側のローラ224a,224bは、粉体貯留槽221の下面にてエンドレススクリーン222の上側部分222aと下側部分222bとを接近又は接触させている。

    エンドレススクリーン222は、駆動機構225により一方向に連続的に運動し又は往復運動する。 これにより、エンドレススクリーン222の上側部分222aと下側部分222bとが互いに逆方向に移動する。

    エンドレススクリーン222が静止している状態では、粉体貯留槽221内の粉体は、エンドレススクリーン222を通過してこれより下に落下することはない。 一方、エンドレススクリーン222を駆動すると、粉体は、エンドレススクリーン222の微細孔を通過してこれより下に落下する。 その後、エンドレススクリーン222の駆動を停止すれば、粉体の落下は停止する。 このように、本実施の形態では、実施の形態6と同様に、粉体貯留槽221内の粉体の造形テーブル10上への落下を制御することができ、しかもこれを、実施の形態6よりも簡単且つコンパクトな構成で行うことができる。

    また、エンドレススクリーン222を一方向に一定速度で連続的に運動させると、粉体は連続的に落下し、この粉体の単位時間当たりの落下量は一定である。 一方、エンドレススクリーン222を往復運動させると、粉体の落下は、エンドレススクリーン222の運動方向が変化するときに一時的に停止するので、断続的となる。 即ち、本実施の形態の粉体フィーダ220は、実施の形態7の粉体フィーダ210と異なり、連続的且つ安定的にに粉体を落下させることができる。

    図16は粉体フィーダ220の一例の下面図である。 221aは粉体貯留槽221の下面に設けられた開口である。 この開口221aは円形であり、この開口221aに取り付けられる静止スクリーン(図示せず)の微細孔の形成領域の形状も円形である。 微細孔の形成領域の大きさは造形テーブル10の上面と同じかこれよりも大きい。 円形の開口221aを有する粉体フィーダ220は、例えば実施の形態6と同様に、粉体フィーダ220を円形の造形テーブル10の上方に静止させた状態で、造形テーブル10上に粉体を散布することができる。 造形テーブル10が円形である場合、粉体貯留槽221に円形の開口221aを設けることにより、粉体を無駄なく造形テーブル10上に散布することができる。

    図17は粉体フィーダ220の別の例の下面図である。 221bは粉体貯留槽221の下面に設けられた開口である。 この開口221bは長方形であり、この開口221bに取り付けられる静止スクリーン(図示せず)の微細孔の形成領域の形状も長方形である。 微細孔の形成領域の長軸方向はY軸方向と平行であり、その長軸方向寸法は造形テーブル10の上面のY軸方向寸法よりも大きい。 長方形の開口221bを有する粉体フィーダ220は、例えば実施の形態7と同様に、粉体フィーダ220をX軸方向に移動させながら、造形テーブル10上に粉体を散布することができる。 あるいは、造形テーブル10が長方形である場合には、これと同じかこれより大きな長方形の開口221bを粉体貯留槽221に設けることにより、粉体フィーダ220を静止させた状態で、粉体を無駄なく造形テーブル10上に落下させることができる。

    図18は、別の複層スクリーン型粉体フィーダ(以下、単に「粉体フィーダ」という)230の概略構成を示した側面図である。 この粉体フィーダ230では、エンドレススクリーン232は、4本のローラ233a,233b,233c,233dにより粉体貯留槽231の周囲を取り囲むように、所定の張力が印加された状態で保持されている。 4本のローラ233a,233b,233c,233dのうちの1本は駆動機構(図示せず)が接続された駆動ローラであり、残りは自由に回転可能な従動ローラである。 粉体貯留槽231の下面の開口には、エンドレススクリーン232を挟むように、静止スクリーン234,235が粉体貯留槽231に固定されている。 粉体が落下するためには、図15に示した粉体フィーダ220では、粉体はエンドレススクリーン222を、その上側部分222aと下側部分222bとで2回通過しなければならないが、図18の粉体フィーダ230では、粉体はエンドレススクリーン232を1回通過すればよい。

    図19は、更に別の複層スクリーン型粉体フィーダ(以下、単に「粉体フィーダ」という)240の概略構成を示した斜視図である。 この粉体フィーダ240では、粉体貯留槽241がY軸と平行な方向から見たとき略「J」字形状を有している。 粉体貯留槽241は、上側の粉体貯留部241aと、下側の水平面と平行な粉体付与部241cと、これらの間の粉体供給路241bとを備える。 粉体貯留部241aの上方に向いた開口から投入された粉体は、粉体供給路241bを通って粉体付与部241cに達し、その下面の開口に設置された複数のスクリーンを通過して落下する。 エンドレススクリーン242は、2本のローラ243a,243bにより粉体付与部241cの周囲を取り囲むように、所定の張力が印加された状態で保持されている。 ローラ243aは駆動機構245が接続された駆動ローラであり、ローラ243bは自由に回転可能な従動ローラである。 粉体付与部241cの下面の開口には、図18の粉体フィーダ230と同様に、エンドレススクリーン242を挟むように複数の静止スクリーンが粉体付与部241cに固定されている。 粉体が落下するためには、図18の粉体フィーダ230と同様に、粉体はエンドレススクリーン242を1回通過すればよい。 図18の粉体フィーダ230では、エンドレススクリーン232は粉体貯留槽231全体を取り囲んでいたのに対して、図19の粉体フィーダ240では、エンドレススクリーン242は粉体貯留槽241の一部である粉体付与部241cのみを取り囲む。 従って、図19の粉体フィーダ240では、エンドレススクリーン242及びその周囲の寸法を小さくすることができる。 図19の粉体フィーダ240では、粉体貯留部241aと、粉体供給路241bと、粉体付与部241cとが一体化されているが、粉体貯留部241aと粉体付与部241cとをそれぞれ別個に製作し、その後、両者を硬質又は軟質のダクト又はチューブ等からなる粉体供給路241bで接続しても良い。

    図11〜図19は例示に過ぎず、本発明において複層スクリーン型粉体フィーダはこれらに限定されない。 複層スクリーン型粉体フィーダの形状や各部の寸法は、積層造形装置に搭載したときに要求される各種制約、使用される粉体の特性、立体構造物の製造プロセス条件などを考慮して適宜変更することができる。

    (実施の形態9)
    本実施の形態9の積層造形装置は、実施の形態1の積層造形装置1において、粉体フィーダ30に代えて、図20に示す分割板型粉体フィーダ(以下、単に「粉体フィーダ」という)300を備える。

    粉体フィーダ300は、粉体が投入され貯留される粉体貯留槽301と、分割部310と、粉体貯留槽301と分割部310とを接続し、粉体を粉体貯留槽301から分割部310に案内する案内管302と、案内管302の下端に設けられた開閉バルブ303とを備える。

    分割部310は、X軸に対して角度θ(後述する図21参照)で傾斜した略二等辺三角形状の基板311と、基板311上に固定された略「Λ」字状(楔状)の複数の分割板312とを備える。 複数の分割板312は、ボーリングのピン配置の如くに、末広がり状に配置されている。 具体的には、複数の分割板312は、水平方向と平行な複数の直線に沿って配置されている。 水平方向と平行な1本の直線に沿った分割板312の並びを「段」と呼ぶ。 複数の分割板312は上下方向に複数段に分けられて、上から第N段(Nは自然数)には2 N-1個の分割板312が配置されている。 開閉バルブ303の下方に第1段に含まれる略「Λ」字状の分割板312の頂部が位置し、第N段に含まれる略「Λ」字状の分割板312の両下端の下方に、第N+1段に含まれる分割板312の頂部が位置している。

    粉体貯留槽301から案内管302及び開閉バルブ303を順に通過して分割部310に流入した粉体流は、第1段の1個の分割板312で2つに分割され、次いで、第2段の2つの分割板312で4つに分割される。 以下、同様にして、粉体流はY軸方向に分割されながら下方に向かって進む。 このように、開閉バルブ303から分割部310に流入した粉体流は、第N段の分割板312を経ることで2 N個の粉体流に分割され、各粉体流の流量は開閉バルブ303を通過時の粉体流の流量の1/2 N倍となる。

    例えば、複数の分割板312が10段にわたって配置されている場合、粉体流は1024本に分割される。 開閉バルブ303を通過時の粉体流の断面積が50mm 2である場合、分割された1024本の粉体流のそれぞれの断面積は約0.049mm 2となり、これは造形テーブル10上に粉体を散布するのに十分な微細流である。

    粉体フィーダ300は、実施の形態1の粉体フィーダ30と同様に、粉体を落下させながら造形テーブル10上をX軸方向に移動する。

    開閉バルブ303を開いて(又は閉じて)から、粉体フィーダ300からの粉体の落下が開始(又は停止)するまでには、時差が生じる。 したがって、この時差を考慮して、開閉バルブ303を制御する必要がある。

    複数の分割板312を配置した本実施の形態の粉体フィーダ300は、単位時間当たりに落下させることができる粉体の量を多くすることができるので、粉体フィーダ300のX軸方向の移動速度を早くすることができるという利点を有する。 従って、粉体散布に要する時間を短縮することができる。 各固結部層の厚みを薄くして固結部層の数を多くする必要がある場合には、立体構造物の形成に要する時間を大幅に短縮することができるので特に顕著な効果が得られる。

    図20では、略「Λ」字状の分割板312を示したが、本発明において分割板の形状は、1つの粉体流を2つの粉体流にほぼ等分割することができれば、これに限定されない。 例えば、板状、棒状、三角柱状、又はこれらを変形させた形状など、いずれであってもよい。

    分割板312の幅(図20においてY軸方向寸法)は、その分割板312が上から何段目に配置されるか、により異なる。 一般に、図20に示したように、上段から下段にいくにしたがって、分割板312の幅は小さくなる。 最下段の分割板312の幅が大きすぎると、隣り合う粉体流間の間隔が大きくなるので、造形テーブル10上に均一に粉体を散布することが困難となる。 逆に、最下段の分割板312の幅が小さすぎると、広範囲にわたって粉体を分散するためには、最下段に含まれる分割板312の数を多くする必要があり、段数を多くする必要があり、基板311上に多くの分割板312を配置する必要がある。 従って、最下段の分割板312間を通過した各粉体流の流量(断面積)と隣り合う粉体流間の間隔を考慮して、各段の分割板312の幅が決定される。

    分割板312の高さ(図20においてZ軸方向寸法)が大きすぎると、基板311のZ軸方向寸法が大きくなるので、粉体フィーダ300の実用性が低下したり、分割部310のZ軸方向寸法や重量が増大することにより分割部310のX軸方向の移動性が低下したり、液剤フィーダ20などの他の装置との干渉が生じたりする。 逆に、分割板312の高さが小さすぎると、粉体流が沿って流れる分割板312の2辺の傾斜が緩やかになることにより粉体流の流動性や分割性能が低下したり、分割板312の強度が低下したりする。 これらを考慮して、分割板312の高さを決定するのがよい。

    基板311上に配置される複数の分割板312の段数は、開閉バルブ303を通過時の粉体流の断面積と、最下段の分割板312間を通過して得られる粉体流の数及びそれぞれの断面積とを考慮して決定される。 一般に、3段以上であることが好ましい。

    図20では、上から第N段(Nは自然数)には2 N-1個の分割板312が配置される例を示したが、本発明はこれに限定されない。 例えば、開閉バルブ303を通過後の粉体流の幅(図20においてY軸方向寸法)が大きい場合には、第1段に複数の分割板312を配置しても良い。 また、第N+1段に含まれる分割板312の数は、第N段に含まれる分割板312の数より多ければよい。 例えば、第N段の隣り合う分割板312の間を通過する粉体流が、第N+1段の1つの分割板312で2分割されるように、複数の分割板312を配置しても良い。

    図21は、粉体フィーダ300の側面図である。 粉体フィーダ300の分割部310は、粉体散布時には、粉体をベース12の上方から落下させながら図示しない駆動機構によりX軸方向に移動する。 本例では、粉体貯留槽301は造形テーブル10よりも高い位置に固定されており、粉体貯留槽301と分割部310とを接続する案内管302は柔軟性と弾性とを備えた材料からなる。 これにより、分割部310の位置にかかわらず、固定された粉体貯留槽301から移動する分割部310に粉体を安定して供給することができる。

    分割部310の基板311とX軸とがなす角度θは3〜90度の範囲で任意に設定することができる。 使用する粉体の特性や、分割板312の形状及び配置に応じて角度θを変更することにより、粉体流の流量を調整することができる。

    (実施の形態10)
    図22は、ベース420上に形成された立体構造物400の一例の断面図である。 このような立体構造物400を形成するためには、ベース420の周囲壁に形成された窪み(アンダーカット)421内にも固結部を形成する必要があり、実施の形態1で説明したようにベース12の上方から液剤及び粉体を単に落下させるだけでは形成することができない。 このような立体構造物400は、実施の形態1の積層造形装置に、液剤及び粉体の散布時の造形テーブル10の上面の水平面に対する傾斜角度を任意に設定できる傾斜機構を付加することで製作することができる。 例えば、造形テーブル10を反転させるアーム40に接続された回転駆動機構に、傾斜機構としての機能を付加しても良い。

    以下に、図23A〜図23Dを用いて、立体構造物400の製作方法を説明する。 図23A〜図23Dでは、図面を簡単化するために、造形テーブル10、ベース420、及びベース420上に形成される固結部のみを図示し、これら以外の積層造形装置の構成部材の図示を省略している。

    まず、図23Aに示すように、その上面が水平面と平行に設定された造形テーブル10上にベース420を固定する。 このベース420の周囲壁には、ベース420をZ軸と平行に上方から見たときに見ることができない窪み(アンダーカット)421が形成されている。

    次に、実施の形態1〜3で説明したのと同様に、液剤付与、粉体落下、及び未固結の粉体の除去を所定回数繰り返すことにより、造形テーブル10の上面を水平面と平行にしたときに上方から見えるベース420上の所定の領域上に、必要な厚さの固結部層401を形成する(図23B参照)。 ここで、液剤付与及び粉体落下は、造形テーブル10の上面を水平面と平行にした状態で行う。 このとき、ベース420の窪み421内には固結部層401は形成されない。

    次に、ベース420の表面のうち、図23Bで固結部層401が形成されていない領域、特に窪み421が上方に向くように、傾斜機構を用いて、ベース420を傾斜させる(図23C参照)。 実施の形態1〜3で説明したのと同様に、液剤付与、粉体落下、及び未固結の粉体の除去を所定回数繰り返すことにより、ベース420の表面のうち、窪み421を含む領域に必要な厚さの固結部層402を形成する(図23D参照)。 ここで、液剤付与及び粉体落下は、造形テーブル10を図23Cに示したように傾斜させた状態で行う。 かくして、ベース420上に、図22に示した立体構造物400を形成することができる。

    以上のように、本実施の形態10によれば、どのような方向からベースを見ても、ベース上の固結部層を形成する必要がある全領域を同時に見ることができない場合であっても、ベースの向き(姿勢)を複数通りに変えて固結部層を形成するので、ベース上に所望の立体構造物を形成することができる。

    本実施の形態により立体構造物を形成するためには、形成しようとする立体構造物の3次元形状データをベースの向きの変化数に応じて複数に分解して、それぞれの向きごとに、液剤吐出制御データなどを演算して求めればよい。

    上記の説明では、ベース420が窪み421を有している場合を説明したが、本実施の形態は、窪み421を有していないようなベース上に立体構造物を形成する場合に適用することも可能である。

    上記の説明では、図23Bのように第1方向に向けられたベース420に対して液剤の付与と粉体の落下とを繰り返し行ってベース420上に液剤と粉体とが固結してなる所望する厚さの固結部層401を形成した後、図23Cのように第2方向に向けられたベース420に対して液剤の付与と粉体の落下とを繰り返し行ってベース420上に液剤と粉体とが固結してなる所望する厚さの固結部層402を形成した。 即ち、立体構造物400を形成しようとするベース420の表面を第1領域及び第2領域に分割し、立体構造物400のうち第1領域内の部分401を完成させ、次いで、立体構造物400のうち第2領域内の部分402を完成させた。

    しかしながら、本発明はこれに限定されない。 例えば、図23Bのように第1方向に向けられたベース420に対して液剤の付与と粉体の落下とを行ってベース420上に液剤と粉体とが固結してなる単層の固結部層を形成する工程と、図23Cのように第2方向に向けられたベース420に対して液剤の付与と粉体の落下とを行ってベース420上に液剤と粉体とが固結してなる単層の固結部層を形成する工程とを交互に繰り返し行うことにより、ベース420上に立体構造物400を形成しても良い。 即ち、単層の固結部層を第1領域及び第2領域に交互に形成しても良い。

    上記の実施の形態では、ベースの向きを2通りに変化させて立体構造物を形成したが、本発明においてベースの向きの変化数は2通りに限定されず、ベースの表面形状(例えば窪みの数や程度)に応じて適宜変更することができる。 但し、ベースの向きの変化数が多くなると、それぞれの向きで形成された固結部層の境界部分に凹凸が形成されて立体構造物の形状精度が劣化したり、立体構造物の形成時間が著しく増加したりすることがある。 従って、ベースの向きを必要以上に変化させることは好ましくなく、実用上はベースの向きは2〜10通り、更には2〜6通りに変化させるのが好ましい。

    (実施の形態11)
    図24は、本発明の実施の形態11に係る立体構造物500の一例の側方から見た端面図である。 この立体構造物500は、金属部分501と樹脂部分502とからなる部分床義歯などの補綴物である。

    本発明の積層造形装置を用いた立体構造物500の製造方法を説明する。

    まず、図25Aのように、金属部分501を作成する。 金属部分501の作成方法としては、特に制限はなく従来より公知の方法を用いることができる。 例えば、手作業による方法、CAD/CAM法を用いて金属部分501の3次元形状データに基づいて金属材料を切削する方法、金属粉を積層し、CAD/CAM法を用いて金属部分501の3次元形状データに基づいてレーザー光線を照射する等により金属粉を溶融し焼結する方法などを挙げることができる。 患者の口腔内の粘膜面に接する面を光沢が得られるまで研磨したり、樹脂部分502との境界部分をサンドブラスト処理などにより滑らかにしたりするなどの表面処理を、必要に応じて金属部分501に施してもよい。

    上記とは別に、図25Bに示すように、積層造形装置の造形テーブル10上に、ベース510を固定する。 ベース510は患者の顎堤を複製したものであり、その上面は患者の口腔内の粘膜面形状と同じ形状を呈する。

    次に、図25Cに示すように、ベース510上に図25Aで得た金属部分501を設置する。

    その後、本発明の造形装置を用いて、液剤付与、粉体落下、及び未固結の粉体の除去を所定回数繰り返して樹脂部分502となる固結部層を形成して、立体構造物500を得る(図25D参照)。

    その後、立体構造物500をベース510から取り外し、必要に応じて細部の修正や表面研磨などの後処理を行い、歯科用補綴物が完成する。

    実施の形態1で説明した積層造形装置1を用いて上顎の総義歯用の全部床を作製した。

    [粉体の調整]
    粉体として、メチルメタアクリレートとエチルメタアクリレートが重量比1:1である共重合体の球状粒子体(平均粒子径70μm)100重量部と、過酸化ベンゾイル1重量部との混合物を用いた。

    [液剤の調整]
    液剤として、食用インクにて着色したメチルメタアクリレート単量体90重量部に、エチレングリコールジメタアクリレート単量体10重量部、及びジエタノールパラトルイジン3重量部を配合した組成物を用いた。 これをもとに歯肉色に調整した液剤1と、透明色に調整した液剤2とを準備した。

    [液剤吐出制御データの作成]
    人工歯が嵌入される孔を有する全部床の3次元形状データに、目的とする色調となるように色調データを付け加えて、液剤吐出制御データを作成した。 具体的には、外面から深さ約1mmまでの表層が液剤2で作成され、これより内側部分が液剤1で作成されるように、液剤1,2の付与位置データを作成した。

    [積層造形装置の仕様]
    1辺が100mmの正方形の造形テーブル10上に患者の顎堤を複製したベース12を固定した。

    粉体フィーダ30は、Y軸方向幅が100mm、X軸方向(移動方向)の幅が3mmのスリット32を備える。

    液剤フィーダ20は、ピエゾ素子駆動により液剤1,2をそれぞれ射出する2つのノズル21を備える。 具体的には、ノズル21として、ピエゾ素子駆動のインクジェットヘッドである、コニカミノルタテクノロジーセンター株式会社製318SLXを用いた。 このインクジェットヘッドの制御装置として、コニカミノルタテクノロジーセンター株式会社製インクジェットヘッド評価キットKIE2を用いた。 制御プログラムとして、この制御装置に付属のソフトウエアを用いた。 2つのノズル21のそれぞれに容量300ccの液剤貯留タンクをチューブを介して接続した。

    コンピュータを用いて、粉体フィーダ30及び液剤フィーダ20の移動、粉体フィーダ30のスリット32の開閉、液剤フィーダ20の2つのノズル21からの液剤の射出を制御した。

    [立体構造物の造形]
    図1に示した積層造形装置1を用い、上記の液剤吐出制御データを用いて液剤1,2の付与位置を制御して、図2A〜図3Dに示す工程を行って、患者の口腔内の粘膜面形状を忠実に再現したベース12上に全部床を作成した。 液剤の重合には化学重合法を用いた。

    [後工程]
    得られた全部床をベース12から取り外した。 ベース12と接触していた面(粘着面)は、ベース12の面に沿って滑らかに造形されていて積層段差は認められなかった。 一方、ベース12に接触していた面以外の面には、僅かな積層段差が認められた。 この積層段差を、大栄歯科産業株式会社製の超音波ミニカッターMC−20を用いて解消した。 その後、全部床の全面にバフ研磨を施して仕上げた。

    得られた全部床の上部の孔に、株式会社松風製の硬質レジン歯ベラシアの前歯および臼歯各1セット分の人工歯を、株式会社松風製アドファの粉材と液剤を混合したものを接着剤として用いて接着固定した。

    かくして得られた総義歯の粘着面は、患者の口腔内の粘膜面に対して極めて高い適合性を有していた。

    全部床の作成に要した時間は、設計に30分、造形に2時間30分、表面の段差解消及び研磨作業に30分の合計3時間30分であり、従来の型取り、複製模型の作製、ワックスアップ、埋没、脱鑞、鋳型、築盛、研磨などを行う一般的方法の約13時間と比較して大幅に短縮することができた。

    以上に説明した実施の形態及び実施例は、いずれもあくまでも本発明の技術的内容を明らかにする意図のものであって、本発明はこのような具体例にのみ限定して解釈されるものではなく、その発明の精神と請求の範囲に記載する範囲内でいろいろと変更して実施することができ、本発明を広義に解釈すべきである。

    本発明の利用分野は特に制限はなく、各種立体構造物の作成に利用することができる。 中でも、歯科用構造材の製造に好ましく利用することができる。 例えば、歯科補綴分野において用いられる有床義歯、自分で義歯を清掃できない要介護者等が装着し、汚れたら新たな同一形状の義歯と交換使用することで口腔内を清潔に保つために使用される使い捨て義歯、運動時に歯牙を衝撃から保護するために口腔内に装着されるマウスピース、歯軋りによる歯牙の磨耗や折損を防止するために用いられる保護具、顎関節の異常による障害発生の防止、軽減や顎間接異常を治療する目的で使用されるスプリント、嚥下障害の軽減や解消のために用いられる装具、歯学研究において顎運動や口腔開閉時における歯牙の接触・離開の径始を計測する目的で用いられるセンサー保持具・センサー埋包体・シーネ等の製作に利用することができる。

    図1は、本発明の実施の形態1に係る積層造形装置の概略構成を示した斜視図である。

    図2Aは、本発明の実施の形態1に係る積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図2Bは、本発明の実施の形態1に係る積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図3Aは、本発明の実施の形態1に係る積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図3Bは、本発明の実施の形態1に係る積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図3Cは、本発明の実施の形態1に係る積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図3Dは、本発明の実施の形態1に係る積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図4は、本発明の実施の形態2に係る積層造形装置の概略構成を示した斜視図である。

    図5は、本発明の実施の形態3に係る積層造形装置の概略構成を示した斜視図である。

    図6は、本発明の実施の形態4に係る積層造形装置の概略構成を示した斜視図である。

    図7Aは、本発明の実施の形態4に係る積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図7Bは、本発明の実施の形態4に係る積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図7Cは、本発明の実施の形態4に係る積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図8Aは、本発明の実施の形態4に係る積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図8Bは、本発明の実施の形態4に係る積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図8Cは、本発明の実施の形態4に係る積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図9は、本発明の実施の形態5に係る積層造形装置の概略構成を示した斜視図である。

    図10Aは、本発明の実施の形態5に係る積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した図である。

    図10Bは、本発明の実施の形態5に係る積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した図である。

    図10Cは、本発明の実施の形態5に係る積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した図である。

    図11は、本発明の実施の形態6に係る積層造形装置の概略構成を示した斜視図である。

    図12は、本発明の実施の形態6に係る積層造形装置における複層スクリーン型粉体フィーダの分解斜視図である。

    図13Aは、本発明の実施の形態6に係る積層造形装置における複層スクリーン型粉体フィーダのスクリーンに形成された微細孔の一例を示した平面図である。

    図13Bは、本発明の実施の形態6に係る積層造形装置における複層スクリーン型粉体フィーダのスクリーンに形成された微細孔の別の例を示した平面図である。

    図13Cは、本発明の実施の形態6に係る積層造形装置における複層スクリーン型粉体フィーダのスクリーンに形成された微細孔の更に別の例を示した平面図である。

    図13Dは、本発明の実施の形態6に係る積層造形装置における複層スクリーン型粉体フィーダのスクリーンに形成された微細孔の更に別の例を示した平面図である。

    図14は、本発明の実施の形態7に係る積層造形装置の概略構成を示した斜視図である。

    図15は、本発明の実施の形態8に係る複層スクリーン型粉体フィーダの概略構成を示した斜視図である。

    図16は、本発明の実施の形態8に係る複層スクリーン型粉体フィーダの一例の下面図である。

    図17は、本発明の実施の形態8に係る複層スクリーン型粉体フィーダの別の例の下面図である。

    図18は、本発明の実施の形態8に係る別の複層スクリーン型粉体フィーダの概略構成を示した側面図である。

    図19は、本発明の実施の形態8に係る更に別の複層スクリーン型粉体フィーダの概略構成を示した斜視図である。

    図20は、本発明の実施の形態9に係る分割板型粉体フィーダの概略構成を示した正面図である。

    図21は、本発明の実施の形態9に係る分割板型粉体フィーダの概略構成を示した側面図である。

    図22は、本発明の実施の形態10に係る立体構造物の一例の断面図である。

    図23Aは、本発明の実施の形態10に係る立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図23Bは、本発明の実施の形態10に係る立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図23Cは、本発明の実施の形態10に係る立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図23Dは、本発明の実施の形態10に係る立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図24は、本発明の実施の形態11に係る立体構造物の一例の端面図である。

    図25Aは、本発明の実施の形態11に係る立体構造物の製作方法の一工程を示した端面図である。

    図25Bは、本発明の実施の形態11に係る立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図25Cは、本発明の実施の形態11に係る立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図25Dは、本発明の実施の形態11に係る立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図26は、従来の積層造形装置の一例の概略構成を示した斜視図である。

    図27Aは、従来の積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図27Bは、従来の積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図27Cは、従来の積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図27Dは、従来の積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

    図27Eは、従来の積層造形装置を用いた立体構造物の製作方法の一工程を示した断面図である。

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