【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、諸歯をストレート化するための歯科矯正装置に関する。 特に、本発明は、患者の個々の歯の表面に対する、最低輪郭を示す、または該装置、特に装置のアーチワイヤの最適の近接を与えるための、また最適の滑らかな弓形を保持するための弓形歯科矯正装置の設計に関する。 【0002】 【従来の技術】歯科矯正処置の主要目的の1つは、遠心歯列弓形態に平行なアーチによって、患者の歯の近心および遠心接触を与えることであった。 滑らかに曲げられたアーチワイヤによってこれを達成するために、歯科矯正処置は、患者の歯列弓形態と数学的に相似な、または平行な弓形に形成されたアーチワイヤを用いて構成されてきた。 しかし、患者の異なる歯は、異なる太さを有するので、この目的は、アーチワイヤと歯列弓形態との間に一定の間隔を与えるために、患者の小さい歯上には大きいブラケットの、患者の太い歯上には小さいブラケットの使用を必要とした。 【0003】小さい歯上に高輪郭ブラケットを設けることは、患者の最小の歯である下の前歯上において特に面倒である。 これらの下の前歯上に最も厚いブラケットを用いる結果として、装置は、高輪郭を示し、すなわち唇−舌方向において歯からより遠くへ延長する。 そのような高輪郭装置においては、アーチワイヤは、歯の表面から離れたポジションに支持され、本装置の性能を多様に劣化させる。 【0004】例えば、アーチワイヤの歯からの間隔が増大すると、該歯の抵抗の中心の回りのモーメントが不利に増大する。 さらに、高輪郭ブラケットは、しばしば回転した、またはそうでなく整列不良である、諸歯上におけるブラケットの配置を妥協させる必要を生じる。 さらに、高輪郭ブラケットは、ブラケット対歯の接着剤上に大きい負荷を与え、ボンドの失敗の可能性を増大させる一因となる。 さらに、大きいブラケットは、口内の衛生状態に障害を与え、エナメル質の脱灰を増進し、歯茎の健康状態を悪化させる。 【0005】従って、できるだけ低い輪郭を与えるブラケットを有する歯科矯正装置を用いることが望ましい。 しかし、従来技術においては、太い歯からの最小のアーチワイヤ間隔を用いる必要性が、科矯正装置の設計についての、他の以前容認された要求をそのまま残すと同時に、細い歯上における低輪郭ブラケットの使用を妨げてきた。 【0006】歯列弓形態に平行なアーチワイヤを有する装置の配設においては、使用されるブラケットは、該アーチワイヤを収容するためのスロットを有し、該スロットは歯列弓形態に平行なスロット底部を有する。 そのようなスロット底部は、ブラケットが患者の歯上に取付けられた時、ブラケットベースにほぼ平行であるので、ブラケットが患者の歯上に取付けられた時、それらはアーチワイヤを支持し、かつアーチワイヤと歯列弓形態とを平行な位置関係に保持する。 伝統的なブラケット配置における1つの例外は、ロス(Roth)の処置ラインとして公知のものにあり、それはアーチワイヤに関する歯の回転を与えることにより、歯の過補正を要求する。 これは、前記スロットが、ブラケットベースおよび歯の取付け表面に対して正方向へ、すなわちスロットの近心端を遠心端よりも歯から遠くへ離す方向へ回転せしめられるように、ブラケットのあるものを構成することを伴う。 それにもかかわらず、この回転は、スロット底部およびアーチワイヤを歯列弓形態に平行に保持する。 過補正のためにブラケットスロットを正に傾斜させるこの技術は、切歯および切歯にとっての遠心の歯に対するブラケットにおいて用いられてきた。 【0007】それにもかかわらず、従来技術の歯科矯正の実際は、患者の歯上に設置された時、最適に低くない輪郭を有する装置を生じ、もっと低い輪郭を得るために、もっと小さいブラケットで置換して修正すれば、歯を適切な歯列弓形態上に配置すよう効果的に機能しない。 従来技術の配置においては、下の犬歯に対するもののような、処置中の望まれない歯の回転を生じ、犬歯の回転を阻止するためには、例えば犬歯ブラケットにとって近心のアーチワイヤ内に、1次の曲がりが要求される。 これらの、およびその他の理由により、低輪郭を有し、同時に他の歯科矯正装置の設計目的をも達成する歯科矯正装置への要求が存在することは明らかである。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の主たる目的は、患者の個々の歯のそれぞれに対し最低の最適輪郭を有する歯科矯正装置を提供することである。 本発明の特別の目的は、それぞれの歯上に滑らかに湾曲したアーチワイヤを支持するための、最小輪郭ブラケットを有する低輪郭装置を提供することである。 【0009】本発明のさらにもう1つの目的は、特注の、および標準化された歯科矯正装置において実現されうる低輪郭歯科矯正装置を提供することである。 本発明のその他の目的は、最適に低輪郭である装置を設計する、また、最適に低輪郭である装置により患者を処置する方法を提供することである。 【0010】 【課題を解決するための手段】本発明の原理により、歯列弓形態に必ずしも数学的に相似または平行でない弓形を有する歯科矯正装置が提供されるが、それにもかかわらず、それは近心および遠心の接触または諸歯の理想的完成ポジションの弓形特性における諸歯の他の特徴を保持することによるなどして、諸歯を歯列弓形態に対し所望の位置関係に保持するように機能する。 【0011】本発明の実施例においては、弓形装置は、 ことごとくの点において歯列弓形態に平行ではなく、むしろある歯の付近において歯列弓形態の方へ近寄るアーチワイヤから形成されて配設される。 好ましくは、そのようなアーチワイヤは、切歯、特に下の切歯の付近において歯列弓形態の方へ近寄る。 そのようなアーチワイヤは、好ましくは、曲率および焦点を有する諸セグメントによって数学的に定義可能なように設計され、それらの曲率および焦点は、患者における歯列弓形態を定める対応する諸セグメントの曲率および焦点とは異なる。 【0012】さらに、本発明の実施例によれば、本装置は、ブラケットが小さい歯の上に取付けられるべきものであるにもかかわらず、最適に低い輪郭を有する該ブラケットを備えている。 その結果として低輪郭ブラケットは、前歯、特に下の前歯のために設けられ、それによって本装置のアーチワイヤ部分を、それが患者の口の前部において患者の歯列弓形態に近寄るように支持する。 【0013】本発明の実施例においては、アーチワイヤの患者の歯列弓形態への近寄りは、アーチワイヤがブラケットに取付けられる場所において、患者の歯列弓形態に対し垂直かつ水平に延長するが、アーチワイヤに対しては必ずしも垂直に延長しないように歯上に配置されかつ方向を与えられるブラケットの配設を伴う。 従って、 アーチワイヤの長さに沿ってのさまざまな点において、 特に口の前部に向かい、患者の歯列弓形態の方へ近寄る形に作られた、該アーチワイヤから形成された歯科矯正装置が配設される。 該アーチワイヤと組合わされて低輪郭ブラケットが配設され、該ブラケットはスロット底部を有し、該スロット底部のあるものは、歯との境界面をなすブラケットの取付け表面に対し、アーチワイヤ平面内において、ある角だけ傾斜せしめられる。 該角は、ここでは、歯科矯正の慣例におけるように、ブラケットのアーチワイヤスロットの「回転」角と呼ばれる。 特に、 本発明の実施例においては、特に犬歯の一方の歯の奥側にある3つの歯上のブラケット内の1つまたはそれ以上のスロットは、一般に近心回転を有する少なくとも1つのスロット、すなわち、スロットの前部が、該スロットの後部よりも、歯およびブラケットベースに近いように傾斜せしめられた該スロットを含む。 【0014】特注の歯科矯正装置における本発明の使用においては、最適に低い輪郭のアーチワイヤおよび装置を保持するために、いずれかのまたは全てのブラケットにおいて、スロット回転を用いることが好ましい。 一般に、そのような回転は、アーチワイヤ、特に低いアーチワイヤが、前歯付近において低輪郭を維持するように近心方向において顕著となる。 【0015】標準化された装置における本発明の使用においては、上および下のアーチのそれぞれにおける、側切歯、犬歯および第1小臼歯に対するブラケットにおいて、少なくとも3°または4°の正味の負の回転が選択される。 一般に、上のアーチにおいては、そのような回転は、全部上の側切歯ブラケットに与えられ、あるいは、特にアジア人の患者に対しては、上の犬歯ブラケットおよび好ましくは上の第1小臼歯ブラケットに与えられる。 下のアーチにおいては、そのような回転は、犬歯ブラケットに限られうる。 そのような回転によれば、歯の表面から、アーチワイヤ中心までの間隔は、全ての歯において一般に1.27mm(0.050インチ)以下であるが、上の側切歯においては、該間隔は0.25m m(0.010インチ)未満だけ大きくなる。 そのような間隔および回転によれば、標準化されたセットの他のブラケットのスロットは、特に中切歯および第2小臼歯に対してはスロット回転がないように作られうる。 【0016】さらに、本発明の実施例によれば、特に本装置が特注装置設計のものである場合は、ブラケットのスロット底部は、回転角をなして形成されるのみでなく、さらにアーチワイヤ平面内において、個々のブラケットのそれぞれとのアーチワイヤの接触の長さに沿ってアーチワイヤの曲率に適合するように湾曲せしめられる。 【0017】本発明の方法によれば、本装置は、特注の歯科矯正装置の製造におけるように、個々の患者の諸歯から得られるディジタル化された解剖学的データを用い、個々の患者に基づいて、または標準化された歯科矯正装置の製造におけるように、統計学的平均データに基づいて諸歯の完成ポジションを決定することにより設計される。 次に、口内の異なる歯の形状を考慮し、本装置は、歯面とアーチワイヤとの間隔を最適の範囲、すなわち相互の「ウィンド」内に設定する適切に配置されるブラケットにより設計される。 次に、アーチワイヤをそれぞれの歯に隣接する前記ウィンド内に置く、滑らかな外形の該アーチワイヤの形が計算または選択される。 次に、アーチワイヤをウィンド内に支持するように配置されたスロット底部を有するブラケットの組が設計される。 次に、患者の異なる歯に対する、特に患者の隣接する諸歯に対するブラケットのスロット底部の相対ポジションを考慮してスロットの回転角が計算され、該計算された回転角を取り入れたスロットが、上述のようにブラケット内に形成される。 さらに、特に特注の装置においては、回転せしめられたスロットは、ブラケットとの接触点においてアーチワイヤの最適曲率に適合する湾曲したスロット底部を、好ましくは、計算されたスロットの回転および曲率のためにプログラムされたコンピュータ制御工作機械によりスロットを切ることによって形成されるのが好ましい。 【0018】本発明によれば、低輪郭装置は、患者の不正咬合歯の処置のために組立てられ、患者に取付けられるのであるが、それは、回転角を取り入れ、さらに好ましくは、湾曲せしめられた、スロット底部を有するブラケットを配置することによって行われ、該ブラケットは、滑らかに湾曲せしめられたアーチワイヤがその長さに沿って患者の歯列弓形態との可変間隔を維持することを可能ならしめ、諸歯上に配置された該ブラケットは、 諸歯の選択された特徴を、歯列弓形態の特性であるアーチであって、該歯列弓形態に平行でありうる該アーチ内に配置するよう該アーチワイヤと協働する。 【0019】本発明の低輪郭装置は、本発明により患者の処置に用いられる時、歯の抵抗の中心の回りの増大したモーメントが歯に対して印加されることによる、好ましくない作用を防止する。 この低輪郭装置は、回転せしめられているか、そうでなければ整列不良である、諸歯上のブラケットの配置を妥協させる必要を回避する。 さらに、この低輪郭装置は、従来技術の装置のブラケットより小さい負荷をブレース対歯のボンドに与え、接着剤に対する応力を減少させ、それによってボンドの失敗の可能性を低下させる。 精密に適合するアーチワイヤを支持するためのブラケットの回転は、処置中における不利な犬歯の回転を減少させ、犬歯ブラケットに対する近心アーチワイヤにおける1次の曲がりの必要を回避する。 さらに、小さいブラケットは口内衛生を改善する。 【0020】本発明のこれらのおよびその他の諸目的および諸利点は、図および実施例に関する以下の詳細な説明から容易に明らかになるはずである。 【0021】 【実施例】図1を参照すると、患者の下の歯列アーチ1 0が示されており、そこでは患者の個々の歯12は、理想的な完成ポジションに配列されている。 そのようなポジションにおいては、歯12は、一連の接触点14において隣接歯と接触し、それらの点においてそれぞれの歯の近心接触点14 Mは、中切歯を除外して、隣接歯の遠心接触点14 Dと接触する。 中切歯の近心接触点は、歯列アーチ10の中心15において相互接触する。 現在の歯科矯正の実地においては、諸歯12は、それらの完成ポジションにおいて、諸歯12が歯列アーチ10内においてそれらそれぞれの接触点14において接触する該歯列アーチ10を形成することが望ましいと考えられてきた。 そのような歯列アーチは、滑らかな曲線16のような弓形として定められうる。 そのような歯列弓形態は、 一般に、諸歯が、隣接する顔面組織により、または歯科矯正装置により作用せしめられる力によって相互接触状態へ強制されて入る安定した歯列弓形態であるものと考えられる。 そのようにして定められた、完成した歯列弓形態を表すといえる曲線16は、水平面内の2次元座標における滑らかな数学的連続方程式によって表されうる。 【0022】歯列弓形態16として定められうる歯の配置を実現するための実際は、歯列弓形態16にほぼ平行なアーチワイヤ曲線18上に存在するアーチワイヤを用いることであった。 曲線18は、曲線18の長さに沿ったさまざまな点において、歯列弓形態16から等しい距離、例えばD 1およびD 2だけ片寄せられている。 曲線18上に存在するそのようなアーチワイヤは、それぞれの歯12の上にブラケット20によって支持される。 ブラケット20は、アーチワイヤに面する側の歯12の表面上に取付けられ、その場合、諸歯の表面は、それらが完成ポジションにある時、歯の太さが異なるために歯列弓形態16およびアーチワイヤ18から異なった差の間隔を有する。 図1に誇張された割合で示されているように、諸歯の太さは異なるので、曲線18のアーチワイヤを支持するために、それぞれの歯に対し異なる大きさのブラケット20が使用される。 通常は、小さい前歯、特に下の歯列アーチ上の前歯は、仮定された歯列弓形態1 6に平行な曲線18上にアーチワイヤを支持するために、スロット底部を歯の表面から大きい距離に置く寸法を有するブラケットを必要とする。 これらのブラケット20は、高輪郭ブラケットと呼ばれる。 【0023】さらに図1を参照すると、歯列弓形態16 は、好ましくは、下の諸歯の完成ポジションのための下顎骨歯列弓形態であるもっと特殊な歯列弓形態であり、 それは滑らかな連続曲線で、その上には下顎骨の諸歯が、前部のまたは単一の先の尖った、諸歯(切歯および犬歯)の鋭い先端24、小臼歯の頬側先端25および臼歯の近心頬側先端が配列されるように置かれる。 上の歯においては、対応する上顎骨の歯列弓形態(図示されていない)が、周縁隆線と下の諸歯の点24、25および26と咬合する上の前歯の舌側表面上の諸点の位置とを定める。 下顎骨歯列弓形態16のほかに、上の諸歯は、 対応する上の諸歯の完成した歯ポジション(図示されていない)を表す上顎骨歯列弓形態(図示されていない) 上に配列される。 歯列弓形態16は、上下の諸歯の咬合点を含むので、曲線16は、咬合する諸歯の力が該諸歯をして取らしめる傾向のある安定した歯列弓形態を考慮に入れている。 【0024】本発明の実施例に従って、さらに図1に示されているのは、低輪郭ブラケット30の組の使用によって諸歯12上に取付けられる、アーチワイヤの形状を定める低輪郭アーチワイヤ曲線28である。 アーチワイヤのための曲線28は、滑らかに湾曲し、かつそれぞれの個々の歯12の表面に対して最適に接近した間隔を有するアーチワイヤの使用を可能ならしめるように決定される。 そのようなアーチワイヤは、最適に低い輪郭を有するブラケット30の組によって、諸歯12上に支持される。 諸歯に対して最適に接近して存在するアーチワイヤ曲線28の決定と、そのようなアーチワイヤを支持するために必要なブラケット30およびブラケットの幾何学的構成は、好ましくは、本出願者による、1993年11月9日出願の、特注歯科矯正装置の設計および形成用およびこれによる諸歯のストレート化用の方法および装置と題する米国特許出願第07/973,973号の方法の使用によって実現され、該出願は参照されることによって、その内容は本願に取り込まれる。 該出願は、 個々の患者の解剖構造に基づいて特注の歯科矯正装置を設計する方法を詳細に説明している。 しかし、本発明の目的上、最適のアーチワイヤの形状を決定するための該出願に説明されている概念は、平均的な患者の歯科医学的解剖構造に基づく標準化された歯科矯正装置の設計にも適用可能である。 最適に低い輪郭の歯科矯正装置の設計のための、アーチワイヤ曲線28の形状を決定する方法は、図2のフローチャートに提示されている。 【0025】図2のフローチャートには、低輪郭装置におけるワイヤおよびブラケットの幾何学的構成を確立するためにプログラムされた汎用ディジタルコンピュータにおいて行われうるプロシージャ100が示されている。 該プロシージャ100によれば、低輪郭装置のアーチワイヤのための曲線28の形状を定める数学的方程式が導かれ、また、最適の間隔、すなわちブラケット30 が取付けられるべきそれぞれの歯の表面からのアーチワイヤ曲線28の間隔を定める、歯からアーチワイヤまでの距離DTW(図5)が計算される。 次に、それぞれのブラケットに対してスロット底部の回転角RAが計算される。 さらに、追加の精度が利用されうる特注の装置においては特に、アーチワイヤスロットは、図6に半径R 4で表されている底部曲率を形成される。 該曲率は、ブラケットスロットを、アーチワイヤとブラケットとの間の接触諸点においてアーチワイヤの曲率に適合させるように計算される。 【0026】特に図2を参照すると、本発明のアーチワイヤ形状設計方法は、それぞれのブラケットスロットにおける歯からワイヤまでの寸法DTWの計算により、アーチワイヤ、例えば図1に示されている下顎骨アーチワイヤに対する曲線28を決定するためのプロシージャ1 00を実行するようプログラムされた、ディジタルコンピュータの動作を含む。 この計算は、まず、患者の個々の歯のある寸法または形状を定める、また曲線16のような歯列弓形態に対する方程式を定めるディジタルデータをコンピュータ内に確立するステップ102を含む。 ディジタル歯形状データの確立は、ここで参照されて特にその内容が本願に取り込まれる米国特許第5,13 9,491号に説明されている技術によって、またはここで参照されてその内容が本願に取り込まれる前述の米国特許出願第07/973,973号に説明されている他の方法の1つによって実現されうる。 そのようにして確立された歯形状データはディジタル情報を含み、該情報からは、歯列弓形態と、ブラケット30が取付けられる歯の表面上の点32との間の水平距離XDが計算されうる。 この距離は、例えば図1の下の右犬歯において、 点32と、例えば、犬歯の先端24によるなど、歯のある突起または他の特徴に関連して定められる曲線16との間の距離として図示されている。 【0027】次のステップ104においては、好ましくは、それぞれが歯列弓形態曲線16のセグメントを定める円セグメントC iの系列として定められる、好ましくは統計的最適適合方程式の形式で、歯列弓形態16に対する方程式が発生せしめられる。 図3には、曲線16に対するそのような方程式の部分が示され、そこでは、2 つのセグメントC 1およびC 2が、歯12の接触点14 Mおよび14 Dの間のアーチを張る曲線16の部分を定める。 2つのセグメントC 1およびC 2がそれぞれ歯1 2の接触点14 D 、14 Mの一方との間の曲線16を定める図3において、中間点IPは、2つのセグメントC 1およびC 2が交わる歯列弓形態曲線16上の点を表す。 それぞれのセグメントC 1およびC 2は、それぞれの円の中心点CCP 1 、CCP 2からの曲率半径R 1またはR 2と、該セグメントのそれぞれの弧長とによってそれぞれ定められる。 隣接する円セグメントは、点IP において互いに接し、また該セグメントは、隣接する歯を張る隣接セグメントに近心および遠心端点EPMおよびEPDにおいて接し、点14 M 、14 Dを通る半径R 1 、R 2は、これらの点において曲線16と交わる。 【0028】次のステップ105は、中切歯から始めて、その側の最遠心の歯に向かって進むことにより、それぞれの歯に対して行われる。 ステップ106においては、ブラケットが取付けられるべき歯の近心−遠心中心、すなわち中点MDCを含む曲線16の円セグメントが確認される。 犬歯においては、これは図3に示されているようにセグメントC 2である。 次に、ステップ11 0においては、中心点平面CPPが、アーチワイヤ平面に垂直に、かつ円セグメントC 2の中心、この場合はC PP 2と、近心−遠心中心MDCとを通って作られる。 このCPPは、図3の平面図においては直線になる。 歯列弓形態16が、以上において定められたBFBCE曲線によって表される場合、かつ歯が、例えば、前歯である場合は、点MDCは、曲線16を表す歯列弓形態方程式上にある該歯の鋭い先端24である。 【0029】次のステップ130においては、歯形状データから点MDCと、直線CPPとブラケットが取付けられるべき歯表面との交点である点32との間の距離である唇距離XDが決定される。 【0030】円セグメント中心点CCP 2から直線CC Pに沿ったさらに遠くには、2点LLおよびULが定められる。 ステップ135において、点LLは、歯表面の点と、曲線28上に存在するアーチワイヤ中心線との間の許容されうる最小距離を表す下限点として定められる。 ステップ140において、点ULは、ブラケットが最適に低輪郭である装置の要求を満たすために許容されうる最大距離を表す上限点として定められる。 次に、ステップ150において、これらの限界点LLおよびUL の位置がそれぞれの歯に対して計算され、ステップ16 0においては、アーチワイヤの対称性を強制するために、アーチの反対側上の両対応点の位置の座標が計算され且つ平均される。 【0031】好ましくは、限界点LLおよびULは、本装置の低輪郭を確立するために選択される。 例えば、L Lは0.91mm(0.036インチ)に整定され、U Lは1.32mm(0.052インチ)に整定される。 この1.32mm(0.052インチ)は、判定基準に適合する充分に滑らかな曲線が構成されうるという条件での、許容されるブラケットスロットの出入り寸法DT Wの最大限度を定める。 0.91mm(0.036インチ)は、ワイヤが諸歯を越えるために、またブラケットが十分な構造的完全性を与えるために、必要とされる最小のスロット出入り寸法DTWを定める。 垂直に測定されると0.43mm(0.017インチ)、0.46m m(0.018インチ)および0.56mm(0.02 2インチ)の厚さの代表的アーチワイヤの寸法は、水平に測定されると通常0.64mm(0.025インチ) の厚さを有し、0.91mm(0.036インチ)のD TWは、アーチワイヤ平面内において測定したとき、歯からスロット底部まで約0.66mm(0.026インチ)を残す。 その大抵のブラケットにおいては、該ブラケットを歯に固定するための約0.33mm(0.01 3インチ)の厚さの取付けパッドを有し、これは、スロットとブラケットベースとの間に構造支持のための、別の0.33mm(0.013インチ)を残す。 パッドをなくせば、DTWをさらに0.66mm(0.026インチ)まで減少させることができ、これは、ワイヤと歯表面との間に0.33mm(0.013インチ)の間隙を残す。 ブラケットの構造上の要求が満たされうる、このようなパッドの消去は好ましい。 【0032】次に、ステップ161においては、点LL およびULの全ての対の間の諸点XPを通過する最も滑らかな曲線28に対する方程式の導出が開始される。 好ましくは、ステップ162におけるように、最も滑らかな曲線28は、それぞれの歯上のこれらの点の間を通る3次スプライン方程式の形式で得られる。 最も滑らかな曲線を実現するためには、変曲点の存在が決定され、該方程式は、変曲点の数が最小化されるまで最適化される。 好ましくは、変曲点は許容されない。 ステップ16 7においては、変曲点に対するテストが行われる。 変曲点を解消するためには、上限ULを増大させることが必要でありうる。 最も滑らかな曲線の決定は、ステップ1 63において、好ましくは、アーチワイヤの弓形方程式の、アーチワイヤによるブラケット連結点のそれぞれにおける2次導関数を計算し、それらの点において最小の最大2次導関数を有する曲線を選択することによって行われる。 前記テストはまた、これらの連結点のそれぞれにおいて最大の最小曲率半径を有する曲線を選択することによっても行われうる。 【0033】最も滑らかな曲線を決定する1つの好ましい方法によれば、LLからULまでの範囲は、増分、例えば、0.91mm(0.036インチ)、1.02m m(0.040インチ)、1.12mm(0.044インチ)、1.22mm(0.048インチ)および1. 32mm(0.052インチ)に分割される。 最低値0.91mm(0.036インチ)は、それぞれのブラケットDTWに割当てられ、それぞれのブラケットにおけるそれぞれの点を通過する曲線の滑らかさが決定される。 次に、ステップ163において、中切歯から第1臼歯までのそれぞれのブラケットの値のことごとくの組合せが評価され、それによって最小の最大2次導関数のワイヤによって満足されうる組合せが決定される。 決定されると、最低輪郭を有する最も滑らかなアーチワイヤが選択される。 この判定基準は、最も滑らかである曲線を、曲線に沿っての半径変化において最小変化を有する曲線であると考えるように改変されうる。 さらに、DT W値が限度LLおよびULの間にあるという条件下で、 滑らかさの等しい曲線間の選択を単に決定するために最低輪郭の判定基準を用いる代わりに、低輪郭および滑らかさの判定基準に重み因子を割当てることができる。 【0034】最も滑らかなワイヤが選択されると、それが変曲点をもたないことを保証するためのテストが行われる。 ステップ167におけるように、もし1つまたはそれ以上の変曲点が存在すれば、プロセスはステップ1 58へ移り、そこでは点ULが、変曲の存在する場所に基づいて、1つまたはそれ以上の歯に対して変化せしめられうる。 【0035】次に、アーチワイヤ形状に対する最終方程式は、アーチワイヤの製造のため、および低輪郭装置用のブラケットの切削のために数値制御機械コードに変換される。 ステップ190においては、それぞれの歯に対し追加の諸ステップが行われる。 出入り寸法DTWは、 CPPに沿っての、点32から曲線28との交点XPまでの距離として決定され、それぞれの個々の歯に対して計算され、全ての点XPは、3次スプライン方程式を、 曲線16に対する歯列弓形態方程式を定めるために用いられる円セグメント形式の方程式に、変換するルーチン内へ送られる。 【0036】アーチワイヤ曲線28に対するアーチワイヤ方程式は、歯列弓形態16に対する方程式の円セグメントに対応する円セグメントの系列として定められ、歯列弓形態16に形式において同様であるが、拡大されかつ変化する半径を有する。 曲線28に対する方程式の半径は、曲線の長さに沿って比例して拡大されるわけではない。 すなわち、曲線16および28は、どこでも平行というわけではなく、従って、曲線28の円セグメントの多くは、図3に鎖線で示されているように、曲線16 のそれらとは異なる中心を有する。 曲線28は、実際には少なくとも下のアーチにおいて、ほぼ第1小臼歯の近心にあたる患者の口の前部に向かって、歯列弓形態方程式の方へ通常近寄って行く。 この近寄りは、例えば、角CAとして見出され、この角は、図1に示されている例においては、第1小臼歯の付近において約6°でありうる。 曲線16および28は、それらが中切歯の間の正中線MLに近づくのに伴い互いに近寄り続け、曲線16および28は、好ましくは該正中線に関して対称であるべきである。 【0037】さらに本発明によれば、小さい歯の付近において該歯に対し望まれない回転力が働くことを避けかつ滑らかに構成されたアーチワイヤを保持しつつ、アーチワイヤ曲線28が歯列弓形態曲線16に近寄ることを容易ならしめるために、ステップ190において、ブラケット30内のアーチワイヤスロットの底部は、図3に示されているように、ブラケット30のベースに対し回転角RAをなして形成される。 それぞれのブラケット3 0に対する角RAは、直線CPPに垂直な直線LPと、 アーチワイヤ曲線28と直線CPPとの交点XPにおけるアーチワイヤ曲線28に対する接線LWとの間の角として計算されうる。 この角はまた、直線CPPと、点X Pにおけるアーチワイヤ曲線28の曲率半径との間の角でもある。 あるいは、角RAは、歯形状データおよびスロットが形成されるべきブラケットブランクの幾何学的情報と組合された、アーチワイヤ曲線28の形状に対する方程式から正確に計算されうる。 該角RAは、ブラケット内にブラケットベースまたは歯のブラケット取付け表面と、ブラケットスロットの底部との間の角として形成され、それによってアーチワイヤ曲線28と歯列弓形態との間の近寄りの角に適応する。 これは滑らかに湾曲した低輪郭アーチワイヤを与え、それは低輪郭ブラケットの配設により容易化される。 【0038】図4および図5を参照すると、歯12のブラケット取付け表面に取付けられるブラケットベース表面36から、スロット33内に取付けられるべきアーチワイヤの径の1/2より小さい距離DTWの間隔をおいたスロット底部34を有するアーチワイヤスロット33 を内部に有する、下の犬歯に対する低輪郭ブラケット3 0が示されている。 スロット回転角RAは、図2のフローチャートに与えられているプロシージャにより、直線CPPとアーチワイヤ曲線28との交点における、直線CPPに垂直な直線に対する、直線LWによって表されたアーチワイヤ曲線28の傾斜を計算することにより得られる。 それぞれのブラケットに対して計算された、このスロット回転角RAは、低輪郭装置の製造時にブラケット30に形成される。 【0039】本発明によれば、低輪郭装置は、表1に示された白人およびアジア人用のブラケットを備えており、表1において角RAの符号は、歯の顔面側における回転が遠心方向をもつ場合は正と定められ、また該回転が近心方向をもつ時は負と定められる。 【0040】 【表1】 白人患者 アジア人患者 DTW(mm) RA(°) DTW(mm) RA(°) 上の中切歯 1.12 0 1.27 0 上の側切歯 1.45 −4.5 1.37 −3 上の犬歯 0.94 0 0.94 −4 上の第1小臼歯 1.12 0 1.07 −2 上の第2小臼歯 1.27 0 1.32 0 上の第1臼歯 1.04 15 1.04 15 上の第2臼歯 1.04 15 1.04 15 下の中切歯 1.14 0 1.27 0 下の側切歯 1.14 0 1.27 1 下の犬歯 1.14 −4.5 0.97 −6 下の第1小臼歯 1.17 0 1.14 −1 下の第2小臼歯 1.24 0 1.27 0 下の第1臼歯 1.04 0 1.04 0 下の第2臼歯 1.04 4 1.04 0 【0041】特注の歯科矯正装置が設計されかつ製造される時に特に可能な、ステップ195におけるさらなる精巧化は、それぞれのブラケット30のスロット33の底部34が、回転角RAだけ傾斜せしめられるのみでなく、ブラケット30のアーチワイヤスロット33の全体に沿って、アーチワイヤの曲率に適合するよう湾曲せしめられることである。 そのようなスロット底部の曲率は、アーチワイヤ曲線28に接し、従って、それの直線CPPとの交点において回転角RAだけ傾斜せしめられており、アーチワイヤ曲線28の2つの円セグメントC 3およびC 4によって表される曲率に、これらのセグメントがスロット33内に存在する限り、別の方法で適合する。 そのような回転角およびアーチワイヤ曲線に適合する形状を有する、そのようなスロット底部34aは、 誇張された曲線によって図6に示されている。 【0042】図5のブラケットには、ブラケットに対して傾斜せしめられたスロットを有する支持部材、すなわちウィング35が形成され、それらはブラケットベース表面36に対して垂直に延長しているように図示されている。 図7の実施例においては、ウィング、すなわち支持部材35aは、スロット33aと同じ角だけベース3 6aに対して傾斜せしめられている。 製造上の観点からは、前記回転は、図5のスロット33ではなく、ベース36aを支持部材35aに対し角をなして形成することにより実現される。 【0043】低輪郭装置によって患者を処置するためには、上述のように、一般に0.457mm(0.018 インチ)および0.559mm(0.022インチ)の標準的径の範囲内にあるアーチワイヤに対し、ブラケットベースの中心から唇方向へアーチワイヤの中心線まで測定して、アーチワイヤを歯の取付け表面から1.52 mm(0.06インチ)以下の、好ましくは、いずれの歯の取付け表面からも約1.27mm(0.05インチ)以下の間隔にアーチワイヤを支持するために、患者の諸歯上へ取付けられるブラケットが選択される。 上の側切歯ブラケットにおける間隔は、一般に他のブラケットにおける間隔よりも大きい。 好ましくは、歯からアーチワイヤまでの距離は、いくつかの歯に対しては0.7 6mm(0.03インチ)から1.02mm(0.04 インチ)までの範囲内にあり、平均は約1.02mm (0.040インチ)より著しく大きくはない。 【0044】特注装置においては、スロット回転角は、 それぞれのブラケット内へ特注で切削され、通常は、1 °またはそれ以上であるように計算され、大抵負方向、 すなわち近心方向を有する。 標準化された装置の場合は、標準化されたブラケットの妥協的性質のために、それぞれのブラケット内に設けられる必要はなく、側切歯、犬歯または第1小臼歯の付近の1ブラケット内にのみに設けられる必要がある。 そのわけは、上の側切歯上における、また下の犬歯上における約4°ないし8°の負のスロット回転が、改善された低輪郭装置を製造するための、切歯付近のアーチワイヤの適切以上の近寄りを起こさせるのに十分であることがわかったからである。 特にアジア人の患者においては、側切歯、犬歯および第1小臼歯の間に分配された回転である負の分配回転が好ましい。 【0045】低輪郭装置による処置を行うためには、ブラケットは、好ましくはアーチワイヤが、中切歯付近において歯列弓形態の方へ近寄るように選択される。 そのようなものとして、スロット底部回転角は、中切歯付近において、また1つまたはそれ以上の第2小臼歯または臼歯付近においては約0°でありうるが、側切歯、犬歯および第1小臼歯の付近のどこかにおいては一般に負であり(すなわち、近心的に歯の唇側に傾斜せしめられ)、歯列アーチのそれぞれの側のこれら3つの歯の付近においては、(代数的)合計で4°ないし8°傾斜せしめられる。 一般に、特に下のアーチにおいては回転角が犬歯付近で最も負、例えば−4.5°または6°であり、追加の回転が犬歯に隣接する一方または双方の歯に分配された場合に最低輪郭が得られる。 【0046】本発明の実施例の以上の詳細な説明から、 本技術分野に習熟した者は、以上の説明内容に対する改変および追加が本発明の原理から逸脱することなく行われうることを認識するはずである。 従って、特許請求の範囲が本明細書の最初の部分に記載されている。 【0047】(関連出願に対するクロスリファレンス) 本願は、歯科矯正ブレースの形成方法と題する放棄された米国特許出願第07/775,589号の一部継続出願であり、また米国特許出願第07/467,162号の継続出願である1992年4月29日出願の、歯科矯正ブレースの形成方法と題する係属中の米国特許出願第07/875,663号の一部継続出願でもある、19 92年11月9日出願の、特注歯科矯正装置の設計および形成用およびこれによる諸歯のストレート化用の方法および装置と題する係属中の米国特許出願第07/97 3,973号の一部継続出願であり、これらの全ては、 本願の権利者により共通に所有され、全てここで参照されることによって、それらの内容は本願に特に取り込まれている。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の原理を具体化した低輪郭歯科矯正装置を示す、患者の歯列アーチの平面図である。 【図2】図1の低輪郭装置の設計のための、コンピュータ化された方法の諸ステップのフローチャートである。 【図3】図2の設計方法において用いられるパラメータを示す幾何学的ダイヤグラムである。 【図4】例えば犬歯ブラケットを近心側から見た、図1 の低輪郭装置のブラケットの側面図である。 【図5】図4の低輪郭装置のブラケットの1実施例の平面図である。 【図6】図5のブラケットの別の実施例の平面図である。 【図7】図5のブラケットのさらにもう1つの実施例の平面図である。 【符号の説明】 12 歯 16 歯列弓形態 28 アーチワイヤ曲線 30 低輪郭ブラケット 33 アーチワイヤスロット 33a アーチワイヤスロット 34 スロット底部 34a スロット底部 36 ブラケットベース表面 36a ブラケットベース RA スロット底部回転角 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 米国特許5139419(US,A) 米国特許5011405(US,A) (58)調査した分野(Int.Cl. 7 ,DB名) A61C 7/00 - 7/28 |