【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は歯からセラミック製歯科矯正用ブラケットを取外すための方法及び装置に関する。 【0002】 【従来の技術】歯科矯正処置は歯の、正しい咬合位への移動を包括する。 処置の際、ブラケットとして知られる小型の歯科矯正器具を歯に接続し、そして各ブラケットのスロットにアーチワイヤーをかける。 このアーチワイヤーは、その歯を歯科矯正学的に正しい位置まで移動するのを誘導するトラックを形成する。 【0003】歯科矯正用ブラケットは典型的には金属、 セラミック又はプラスチック製である。 金属製ブラケットが幅広く利用されており、そして数多くの歯科矯正医により、歯を所望の位置まで移動せしめるのに満足たる機械的特性を有するものと考えられている。 残念ながら、金属製ブラケットは口の中での見栄えが悪く、そしてしばしば患者が当惑しうる「金属的な口の外観」の不満を招いてしまう。 【0004】プラスチック材料製の歯科矯正用ブラケットは一般に金属製ブラケットよりも美的であると考えられている。 しかしながら、一部のプラスチック製ブラケットは一定の食品及び飲料品によって染まり、そして一定期間を経て見苦しい色へと変色する。 更に、プラスチック製材料は使用中にゆっくりとクリープし、そのためアーチワイヤースロットが広がってしまい、そして歯の移動の正確な制御が損われてしまう。 【0005】透明又は半透明セラミック製材料より成る歯科矯正用ブラケットはプラスチック製ブラケットに関与する数多くの問題を解消し、なぜならセラミック製材料は染色に耐え、且つプラスチックブラケットのようにクリープによって変形しないからである。 本発明の譲受人に譲受された米国特許第4,954,080号は半透明性を有する多結晶材料より成る無色のセラミック製ブラケットを述べており、これはブラケットを通じて拡散的に歯の天然の色が示されることを可能にする。 アーチワイヤー上でのブラケットの滑り運動性を高めるための金属製アーチワイヤースロットライナーを有する改善半透明多結晶セラミック製ブラケットが、共に1993年5月13日に出願された米国出願第08/061,21 5及び08/061,164号に記載されている。 【0006】過去において、歯科矯正用ブラケットは一般に、歯のまわりに設置するバンドに固定されていた。 今日では、歯科矯正用ブラケットは通常歯の表面に直接接着されている。 処置が完了したら、アーチワイヤーをブラケットのスロットから取外し、そして各ブラケットを関連の歯から取外す。 【0007】金属製ブラケットは典型的には剥離又はてこ運動によって取外す。 米国特許第3,986,265 及び4,248,587号は、歯科矯正用ブラケットを取外すのにてこ作用を伴って利用するペンチ式ハンド器具を述べている。 本発明の譲受人に譲受された米国特許第4,553,932号は、一組の間隔の置かれた台が歯をブラケットの対立側上でつかみながら、ブラケットのウィングにひっかけ、そしてブラケットの一方の側部上に位置するタイウィングに引張り力を適用するためのループを有する引張ワイヤーを有している剥離式取外し用器具を述べている。 【0008】剥離式取外し法は通常、金属の如きの延性材料より成るブラケットを脱離するのに満足たるものであることが考えられている。 かかるブラケットの取外しはしばしばブラケットベースの一側面伝いの接着結合部の破砕により開始され、引き続いてその破砕がその接着結合部の残りの領域にまで及ぶようにブラケットのベースを剥離又は折り曲げる。 この方法においては、取外し力は常時比較的小さな、一般に線状の領域にしかかからない。 【0009】ところで、セラミック製歯科矯正用ブラケットは比較的硬質でもろく、そして取外しの際に金属製ブラケットのように折り曲がったり又は屈曲しない。 その結果、取外しは、金属製ブラケットを剥離式運動によって取外す際に起こる広がり式の破砕ではなく、本質的に一度に全領域における接着結合部を破砕することにより行う。 セラミック製ブラケットのタイウィングを引張ることは通常推奨されず、その理由はセラミック製材料はもろく、そしてタイウィングがブラケットの残りの部分から破断してしまうことがあるからである。 【0010】取外し操作の際に歯の構造への損傷が、歯からブラケットをもち上げる又はてこでもち上げる試みの際に歯に過剰な応力をかけたときに起こりうる。 歯の損傷はその歯の構造が虚弱化しているとき、又は既に損傷しているときによく起こる。 しかしながら、かかる虚弱化、又は既に損傷している歯の構造は目視観察によっては通常認識できない。 その結果、歯への損傷の危険を最少限にするように可能な限り小さい力で歯からブラケットを取外すことが所望される。 【0011】過去において、ブラケットの取外しを助長するために、セラミック製ブラケットと歯との間の結合強度を弱めることが提案された。 しかしながら、かかる案は全体としては不満足たるものであり、その理由はブラケットが処置中に不意に早期脱離する傾向が高まることにある。 例えば、比較的虚弱な接着剤は、患者が比較的硬い食品を咬んだ場合のように、そのブラケットに比較的強い力にかけられたときに、そのブラケットが外れてしまわないのに耐える十分な強度を有さないことがある。 他に、ブラケットは、それに複合せしめるアーチワイヤー又は歯科矯正用補助具もしくは取付具により及ぼされる力によって外れることがある。 歯科矯正用ブラケットの早期脱離は歯科矯正医及び患者の両者にとって最も回避されるべく不快感を供し、なぜなら脱離したブラケットは処置を仕上げるために通常再度接着、又は新たなブラケットを交換せねばならないからである。 【0012】 【発明が解決しようとする課題】当業界において、セラミック材料の美的長所、及び滑り機構を考慮する限り金属製ブラケットに類似する機能を供し、しかも歯の表面から比較的容易に取外せるセラミック製ブラケットが要望されている。 また、当業界においては、セラミック製歯科矯正用ブラケットの取外しの新たな方法、及びかかるブラケットの取外しを助長するハンド器具も要望されている。 【0013】 【課題を解決するための手段】本発明は、歯からセラミック製歯科矯正用ブラケットを取外す方法を考慮し、この方法は、ブラケットの中央及び末端側部を、このブラケットのベースの頬唇側に位置した領域において引き付ける工程を含んで成る。 この方法はまた、引き付けた中央及び末端側部を互いに向けて圧迫して、このブラケットの中央区画及び末端区画の少なくとも一方を、下にある歯の領域から、且つこのブラケットの中央及び末端区画の間での概して咬合−歯肉方向に広がるチャンネルの縦軸に対して概して平行な軸を中心に枢軸運動させる工程を含む。 【0014】 好ましい態様の説明まず図1−3に関して、本発明の一態様に係るセラミック製歯科矯正用ブラケット20を例示し、そしてこれは中央(即ち、歯科アーチの中心に向いている)区画22 及び末端(即ち、歯科アーチの中心の反対を向いている)区画24を含んでいる。 この中央及び末端区画2 2,24はそれぞれ、ブラケット20の結紮糸受容アンダーカット又は溝の上に広がる咬合側(即ち、歯の外端を面する)タイウィング26及び歯肉側(即ち、歯肉に隣接する)タイウィング28を含む。 【0015】アーチワイヤースロット30は中央区画2 2及び末端区画24における概して中央−末端方向で広がり、そして好ましくは鉛直底壁によって相互接続し、 且つエッジワイズ(edgewise)技法として知られる歯科矯正技法に従う処置のための長方形の断面を有するアーチワイヤーを嵌合的に受容するように配置された、間隔の置かれた平行な咬合側壁及び歯肉側壁を有する。 【0016】ブラケット20は中央区画22と末端区画24との間で概して咬合−歯肉方向で広がるチャンネル32を含む。 図3を図2と比較することによりわかる通り、チャンネル32はアーチワイヤースロット30の舌側方向の深さより大きい舌側方向の深さ(即ち、舌に向う方向)を有する。 この態様におけるチャンネル32は横断面において長方形の形態を有し、そしてブラケット20の咬合側から歯肉側へと広がる。 【0017】この中央区画22はブラケット20を歯に結合させるための外部舌側表面34を有するベースを含む。 同様に、末端区画24はブラケット20を歯に接合させるための外部舌側表面36を有するベースを有する。 【0018】中央区画22のベースと末端区画24のベースとは、取外し用チャンネル32の全長の直下に、且つそれ伝いに広がる薄くてもろいウェブ38により相互連結されている。 任意的に、チャンネル32は、そのチャンネル32の中心縦軸伝いでのウェブ38の破砕性を高めるために丸底を有している。 図3を参照することによってわかる通り、ウェブ38の外部舌側表面は中央及び末端区画22,24の結合面34,36を滑らかに相互連結し、そしてこの3つの面は、一緒になってブラケット20が接着結合した歯40の表面の凸型に湾曲した形状と整合する凹面の複合湾曲形状を示している。 【0019】ブラケット20を歯40から取外すのを歯科矯正医が所望するとき(図3及び4)、ペンチ(プライヤー)式器具、そして好ましくは下記に説明する取外し用器具を、ブラケット20と歯40との間の接着結合を破砕するために用いる。 この場合、ペンチ様取外し器具の一方のジョーは、咬合側タイウィング26及び歯肉側タイウィング28と並ぶ中央区画22の中央側部42 をつかむように配置され、一方、他方のジョーは咬合側タイウィング26と歯肉側タイウィング28に隣接する領域における末端区画24の末端側部44をつかむように配置する。 これらのジョーは区画22,24の頬唇側(即ち、頬又は唇を面する)領域において側部42,4 4をつかみ、そして好ましくは取外し用チャンネル32 の底部の舌側に位置する区画22,24の部分はつかまない。 【0020】次に、つかんだ中央及び末端側部42,4 4を互いに向けて圧迫して、これらの区画22,24の一方又は両者が弧を描いて互いに向って、且つ取外し用チャンネル32の縦方向の咬合側−歯肉側軸に概して平行な対照軸を中心に枢軸運動させる。 区画22,24の一方又は両者が図3に示す位置から図4に示す位置へと枢軸運動するに従い、ウェブ38は図4に示すような状況で破砕し、これにより結合面34,36は下にある歯40の領域から脱離することが可能となる。 【0021】チャンネル32は歯40からのブラケット20の取外しを大いに助長し、なぜなら枢軸又はゆらし運動は、ブラケットベースの外部、中央及び末端縁伝いに効果的な状況で取外し応力を集中せしめるものと信じられているからである。 かかる応力は、例えば歯の表面から垂直方向において引張力を利用する類似のサイズのセラミック製ブラケットを取外すのに必要な応力よりも有意に低いものと信じられている。 従って、この枢軸上の取外し運動は、下にある歯40のエナメル面が傷付いてしまう傾向を低めるはずである。 【0022】ブラケット20は好ましくは、ブラケット20が下にある歯の色調を帯びるよう十分な透光率を示す半透明多結晶セラミック製材料より成る。 適切なセラミック製材料は米国特許第4,954,080号に記載されている。 その他のセラミック、例えば単結晶アルファーアルミナ、陶器、ガラス、ガラス−セラミック等も利用できうる。 【0023】ウェブ38の頬面唇面側の厚みは好ましくは約0.7mm未満、そして好ましくは約0.4mmである。 チャンネル32の中央へ末端幅は比較的小さな寸法、例えば0.02mmであってよく、この寸法は中央及び末端区画22,24が、歯から取外れるのに十分な弧を描いてゆれることが可能となるのに十分である。 他方、取外し用チャンネル32の中央〜末端幅は大きな寸法、例えば1.8mmであってよく、この寸法は、このチャンネル32が、慣用の結紮糸を歯の回転のために区画22,24の一方のみを中心に結紮したときに受容できるのに十分であり、これによりこのブラケット20はツインブラケットとして機能することができる。 【0024】好ましくは、チャンネル32の中央〜末端幅は約0.5mmであり、これはブラケット20を歯に結合させながらチャンネル32が補助器具を受容するのに十分である。 かかる構造はまた、ブラケット20がツインブラケットとして機能しながら、満足たるタイウィング強度のために十分なタイウィング幅を維持することを可能とする。 【0025】任意的に、この取外し用チャンネル32 に、アーチワイヤーが取外しチャンネル32を通過する箇所を除く全領域においてコンプライアント材料、例えば柔軟性プラスチックを充填する。 かかる構築体は、歯科矯正医がブラケット20をツインブラケットとして使用することを所望しておらず、そしてこれがなければ食物又は細菌を捕捉しまいうるブラケット中の不安なくぼみ又は孔を避けることを要望している場合に有利である。 コンプライアント材料は、中央及び末端区画22, 24が、取外し中に余計な障害を伴うことなく互いに向ってゆれ動くことが可能となるように十分に圧縮性である。 【0026】図5に示すブラケット20aは、図1〜4 に示す態様に若干類似する本発明の別の態様である。 何らかのことわりのない限り、図1〜4における番号と類似の番号を有する図5における部品は図1〜4における部品と同一であり、従ってかかる部品の詳細は繰り返さない。 しかしながら、図5を見ることによって理解できる通り、ブラケット20aは図1〜4に関して説明した取外し用チャンネル32とは異なる形状の取外し用チャンネル32aを有する。 【0027】より詳しくは、図5における取外し用チャンネル32aは、ブラケット20aの唇側部に近づくにつれ互いに向って傾いている対立壁を有する。 チャンネル32aの壁は互いに対して向き合うブラケット20a の唇側付近にストップ部分33aを含む。 見たとおり、 図5におけるストップ部分33a間の距離はチャンネル32aの底部の中央−末端幅より狭い。 【0028】中央側部22aと末端側部24aを、歯の表面からブラケット20aを取外すために互いに向けて枢軸運動させると、ウェブ38aは若干屈曲し、そしてストップ部分33aは互いと接触するようになる。 ストップ部分33a間の比較的小さな距離は、ブラケット2 0を取外すためにウェブ38が柔軟することができるのに十分に大きく、しかしながらウェブ38が破砕してしまう程度にウェブ38が屈曲するのを妨げるのに十分に小さい。 かかる構造はブラケット20aが取外し操作の際にワンピース集成具であり続ける傾向を高め、それ故区画22a,24aのいづれかが口の中で不意に外れ、 そして吸い込む又は飲み込んでしまう傾向が低まる。 【0029】図6に示す本発明の態様は、図1〜4に示すブラケット20と若干類似のブラケット20bを考慮している。 何らかのことわりのない限り、図1〜4の番号の付いた部品に相当する番号を有するブラケット20 bの部品は類似であり、従って再び詳細はしない。 【0030】しかしながら、図6において、ウェブ38 bはブラケット20bの咬合側から歯肉側へと広がる、 取外し用チャンネル32bの底部の真下にあるくぼみ3 9bを含む。 このくぼみ39bはV−形底面を有し、それは中央区画22及び末端区画24bの結合表面34 b,36bの隣接領域とは反対の頬面唇面方向に広がる。 従って、くぼみ39bは隣接結合表面34b,36 bの滑らかに湾曲した凸型形状の連続性に割り込み、そして図1〜5に示す態様とは異なりウェブ38bの唇− 舌方向の深さをその最も狭い区画において小さくする。 ブラケット20bを取外すとき、くぼみ39bはウェブ38bの縦方向中心軸伝いの応力の集中を助長し、従って十中八九、ブラケット20bはウェブ38bの最も狭い区画伝いで破砕し、その際にブラケット20bのその他の領域は破砕せず、そしてその代わりに完全であり続ける。 【0031】図7〜9に示す態様において、ブラケット20cはここでも図1〜4に関して説明したブラケット20に若干類似し、そして図7〜9における番号は、次の段落で説明することを除き、図1〜4における対応の番号を有する部品と実質的に同一である。 【0032】ブラケット20cは長いワンピース金属製アーチワイヤースロットライナー48cを有し、これは中央区画22c及び末端区画24cを横断して広がっている。 図9に示す通り、このライナー48cは整合関係で長方形のアーチワイヤーを受容するように横断面において長方形の形状を有する。 その中央区画22c及び末端区画24cはそれぞれアーチワイヤースロットライナー48cを受容するのに十分な寸法の中央〜末端に広がるスロットを有する。 【0033】好ましくは、このアーチワイヤースロットライナー48cは0.05mmの厚みを有する303型ステンレススチールより成る。 好ましくは、このアーチワイヤースロットライナー48cは中央及び末端区画22 c,24cに対してはんだ付けされており、そしてそれらの熱膨張率の違いは、ブラケット20cがはんだ付け工程の後に冷えたときにライナー48cが区画22c, 24cに圧縮力を及ぼすことを可能とする。 【0034】ブラケット20cを歯から、その中央及び末端区画22c,24cを互いに対して圧迫することによって取外したとき、アーチワイヤースロットライナーは取外し用チャンネル32cの領域において若干破壊された形状へとねじれる。 好都合には、アーチワイヤースロットライナー48cは中央及び末端区画22c,24 cに対してしっかり固定されており、従ってブラケット20cがワンピースとして口から除去できることを助長するように、取外し操作の最中及び後において区画22 c,24cは一緒となり続けている。 このアーチワイヤースロットライナー48cはアーチワイヤー伝いでのブラケット20cの滑り運動性も高める。 【0035】図10に示すブラケット20dは図7〜9 に示すブラケット20cと若干類似しているが、ただし中央区画22d及び末端区画24dは別々の単位として作られており、そして互いに一体となって結合していない。 ブラケット20dは区画22d,24dを、ウェブ38cと同じようにして一体的に相互連結させる単一のウェブを有さないが、しかしその代わりに、末端区画2 4dのベースに一体的に連結した長いタブ52dと、中央区画22dのベースに一体的に連結した溝54dとを含むツーパートウェブ38dを有する。 タブ52d及び溝54dは、歯科矯正処置の前及び最中で中央及び末端区画22d,24dを適正な接触位置に保持せしめるのを助長する見当合わせ構造を担っている。 【0036】タブ52d及び溝54dはそれぞれ整合する凸及び凹形状を有し、そして取外し用チャンネル32 dの下のブラケット20dの全咬合側−歯肉側距離に広がる。 任意的に、薄層の接着剤をタブ52d及び溝54 dの相互かみ合い面に塗布して、ブラケット20dの初期取扱い中及びブラケット20dを治療に用いている時に中央及び末端区画22d,24dが一緒に保たれていることを補助する。 ところで、この接着結合は、ブラケット20dを取外すときにウェブ38dに関する破砕経路がチャンネル32dの縦軸に平行となることを供するよう十分に虚弱となっている。 適当な接着結合は、ガラスフリットを集成前にタブ52d及び溝54dに塗布し、次いで集成区画22d,24dを燃焼せしめてガラスを溶融し、区画22d,24dを互いに結合させ合うことにより作られる。 【0037】図11及び12は、図10に示すブラケット20dに若干類似する本発明の別の態様に係るブラケット20eを示す。 ところで、図11及び12に示すブラケット20eは、互いから間隔を置かれ、且つアーチワイヤースロットライナー48eによってのみ互いに相互連結した中央及び末端区画22e,24eを有する。 この場合、取外し用チャンネル32eはブラケット20 eの唇側から結合面34e,36eに広がる。 【0038】図10及び図11〜12に示す態様は、特にブラケット20d,20eを作るのにドライプレス技術を採用するときに製造利点を供する。 中央区画22 d,22eと末端区画24d,24eとは、慣用のワンピースセラミック製ブラケットをドライプレスするときに一般に利用する唇側−舌側軸伝いでなく、中央−末端軸伝いの方向で別々にプレスしてよい。 これらの区画を別々にプレスすることにより、比較的複雑なデザイン特徴、例えばアーチワイヤースロットライナーを受容するためのスロット、及びタイウィングの下の溝付きアンダーカット領域は、二次工程において仕上げるのでなく、 未加工パーツにプレスを施すのでよい。 任意的に、グリット又はガラスをベース面34d−e,26d−eに加えてブラケット20d−eの歯に対する直接結合性を高めてよい。 【0039】更に、ある状況において、図10及び11 〜12に示す態様における中央区画及び末端区画は、両区画を作るのに単一のモルド又はダイを使用できるように同一のものであってよい。 かかる状況においては、中央及び末端区画の複合湾曲結合面を、下にある歯の表面の配向に近い配向の一般曲面に置き換えること、及び外部歯表面とブラケットベースの複合湾曲との正確な整合形態の欠落を解消する十分な強度を有する歯科矯正用接着剤を使用することが好ましい。 任意的に、このスロットライナーは歯の表面とブラケットベースとの整合性を高めるために唇−舌/中央−末端面における全長伝いに湾曲していてよい。 【0040】図13〜14は本発明の別の態様に係るブラケット20fを示す。 ブラケット20fは中央区画2 2f及び末端区画24fを有し、それらは好適には同一であり、従って製造費は下がる。 各自己整合性区画22 f,24fは他方の区画22f,24fの整合穴27の中に受容された中央〜末端に広がるペグ25fを含む。 任意的に、穴27fの中にペグ25fを保持するために接着剤を使用する。 他に、ブラケット20fは滑り機構を高めるための、及び区画22f,24fを一緒に保つのに役立ちにもする金属製アーチワイヤースロットライナーを含みうる。 取外しの際、区画22f,24fを、 咬合側−歯肉側取外し用チャンネル32fを中心に互いに向けてゆらすとペグ25fは破断する。 【0041】図15〜16は本発明の別の態様に係るブラケット20gを示す。 ブラケット20gは図1〜4に示すブラケット20に実質的に類似するが、しかし中央及び末端区画22g,24gを一体的に相互連結する一組の間隔の置かれたブリッジ29gを含む。 これらのブリッジ29gは破砕性ウェブ38gから頬面唇面側に間隔を置いて配置され、そしてブラケット20gの強度を高める。 しかしながら、ブリッジ29gは取外しの前にダイヤモンドバー(burr)により簡単に取外すことができる;その後、区画22g,24gを取外し用チャンネル32gを中心に互いに向けて枢軸運動させる。 これに関連して、ブリッジ29gに類似のブリッジは上記以外のブラケットと共に利用できうる。 【0042】上記のブラケットの取外しのための歯科矯正取外し用器具を図17及び18に示し、そして番号6 0で示す。 この器具60は図18において例示目的のためにブラケット20と一緒に利用している状況で示すが、しかしブラケット20a〜20eの如きの本発明に係る別のブラケットを取外すためにも有用である。 この取外し用器具60はペンチ様形状を有し、そして一組の対立ジョー62及び一組のハンドル64を含む。 【0043】各ハンドル64は対応のジョー62につながっており、そしてハンドル64及びジョー62は本質的に同一のものである。 これらのハンドル64はピボット66によって互いに結合しており、このピボット66 は、ハンドル64を互いに近づける又は離すように動かすに従いジョー62が互いに近づく又は離れることを可能にする。 【0044】ジョー62それぞれは、ブラケット20の中央側部42又は末端側部44のいづれかをつかむための壁68を有する外端部分を含む。 各ジョー62は、ブラケット20の唇側面、又は他方、ブラケット20のアーチワイヤースロット30の中に受容されるアーチワイヤー72の唇側をつかむための、壁68に対して垂直方向に配向した壁70をも含む。 溝74は図18に示すような状況でアーチワイヤー72をまたがるため、壁68 を通じて広がる。 【0045】壁70は、壁68とブラケット20の対応の中央及び末端側部42,44との舌側のつかみの深さを規定するストップとして機能する。 従って、ハンドル64を共に握ってジョー62を閉じたとき、壁68は中央及び末端区画22,24の唇側部分のみに圧縮力をかけ、そして取外し用チャンネル32の底部の舌側領域にあるブラケット20のベース部分にはかけない。 かかる構造はウェブ38を中心とする中央及び末端区画22, 24のゆれ運動を助長し、そしてウェブ38がチャンネル32の縦軸伝いの方向で破砕するであろうことが確実となるように役立つ。 従って、ブラケット20がたった2片だけに(即ち、中央及び末端区画22,24)、又は最大でも3片(即ち、区画22,24及びウェブ3 8)へと破砕される可能性が高まる。 くぼんだ壁68, 70は好都合にはアーチワイヤー72を除去する際の取外し中の一定の状況においてトラップとして寄与し、従って破片が口腔の中に落下しないようになる。 【0046】本発明の別の利点は、一セットのブラケット20を口の一弧線における対応の歯から取外しながら、かかるブラケット20の全てを歯科矯正処置の際に慣用的に利用する結紮糸(図18に示さず)により共通のアーチワイヤー72に接続されたままにすることをできるようにすることにある。 溝74はジョー62がアーチワイヤー72及びブラケット20全体の上に載ることを可能としながら、ブラケット20をアーチワイヤーに複合させるように結紮糸がそのままであり続けることを可能とする。 歯科矯正医は順に各ブラケットを取外し、 次いで口から全ての連結したブラケット20と共にアーチワイヤー72をもち上げることができる。 かかる利点は重要であり、なぜなら取外しのためにかかる時間が短く、そしてこの取外し工程の際に1又は複数個のブラケットが口腔の中に落ちてしまい、そして飲み込まれる又は吸引されてしまう傾向が下がるからである。 【0047】図18に示すブラケット20においては、 アーチワイヤー72はアーチワイヤースロット30の中に、アーチワイヤー72の唇側がブラケット20の唇側の舌側に位置するような舌側方向の深さまで受容されている。 この場合、壁70は、壁68と中央及び末端側部42,44との舌側でのつかみを規定するように、中央及び末端区画22,24の唇側をつかむ。 他に、壁70 はアーチワイヤー72の唇側をつかむための突出部分を含んでよく、又は他に、ブラケット20のアーチワイヤースロット30はブラケット20の唇側付近に位置してよく、これにより壁70とアーチワイヤー72とのつかみは中央及び末端側部42,44上での壁68の舌側でのつかみの深さを規定するのに働く。 【0048】取外し用器具60は好ましくは耐腐蝕性4 00シリーズステンレススチール、例えばタイプ420 であって繰り返し滅菌にとって適当なものより成る。 図17及び18に示す器具60の直線形状の他に、ジョーは臼歯に結合したブラケットへの接迫性を助長するためにハンドルの主面に対して約25〜40度の範囲の角度の方向に伸びていてよい。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の一態様に係る歯科矯正用ブラケットの唇側に対して向って見た拡大図。 【図2】図1に示すブラケットの、このブラケットの中央側に対して向って見た拡大図。 【図3】図1〜2に示すブラケットの底面図及び例示目的のためのそのブラケットが装置されている歯の表面を示す図。 【図4】図3に若干類似するが、ブラケットの中央及び末端区画が、ブラケットを歯から取外すために互いに対して枢軸上に置かれている図。 【図5】本発明の別の態様に係るセラミック製歯科矯正用ブラケットの歯肉側に対して向って見た底面図。 【図6】図5に若干類似するが、本発明の別の態様に係る図。 【図7】ブラケットの唇側に対して向って見た、本発明の別の態様に係る歯科矯正用ブラケットの拡大図。 【図8】図7に示すブラケットの歯肉側に対して向って見た底面図。 【図9】図7に示すブラケットの、その中央側に対して向って見た拡大図。 【図10】図8に若干類似するが、本発明の別の態様に係る図。 【図11】図7に若干類似するが、本発明のもう一の別の態様に係る図。 【図12】図11に示すブラケットの歯肉側に対して向って見た底面図。 【図13】本発明の別の態様に係るブラケットの唇側に対して向って見た分解図。 【図14】図13に示すブラケットの歯肉側に対して向って見た底面分解図。 【図15】本発明の別の態様に係るブラケットの唇側に対して向って見た拡大図。 【図16】図15のブラケットが結合している歯の共に、そのブラケットの歯肉側に対して向って見た底面図。 【図17】本発明に係る歯科矯正用ブラケット取外し用器具の透視図。 【図18】図17に示す器具の一端と、歯科矯正用ブラケット及びそのブラケットのスロットに受容されたアーチワイヤーとの逆さま拡大透視図であり、歯からブラケットを取外すためにこのブラケットをつかんだ位置に向ってこの器具のジョーを動かすことを示している図。 【符号の説明】 20,20a,20b,20c,20d,20e,20 f,20g…ブラケット 22,22a,22b,22c,22d,22e,22 f,22g…中央区画 24,24a,24b,24c,24d,24e,24 f,24g…末端区画 25f…ペグ 26,26a,26b,26c,26d,26e…咬合側タイウィング 27f…整合穴 28,28a,28b,28c,28d,28e…歯肉側タイウィング 29g…ブリッジ 30…アーチワイヤースロット 32,32a,32b,32c,32d,32e,32 f,32g…取外し用チャンネル 34,34a,34b,34c,34d,34e…中央区画の結合表面 36,36a,36b,36c,36d,36e…末端区画の結合表面 38,38a,38b,38c,38d…ウェブ 39b…くぼみ 40…歯 42,42a,42b,42c,42d,42e…中央区画の側部 44,44a,44b,44c,44d,44e…末端区画の側部 48c,48d,48e…アーチワイヤースロットライナー 52d…タブ 54d…溝 60…取外し用器具 62…ジョー 64…ハンドル 66…ピボット 68…壁 70…壁 72…アーチワイヤー ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 エバンジェロス ジョージ ジョーガキス アメリカ合衆国,ミネソタ 55144−1000, セント ポール,スリーエム センター (番地なし) |