歯列矯正ブラケット

申请号 JP2012265129 申请日 2012-12-04 公开(公告)号 JP6151012B2 公开(公告)日 2017-06-21
申请人 トミー株式会社; 发明人 折笠 正明; 片寄 真吾; 遠藤 浩正;
摘要
权利要求

底面が歯に直接または間接的に固着される板状のベース部と、 前記ベース部の上面に固定されたブラケット本体と、 移動可能に前記ブラケット本体に取り付けられ、前記ブラケット本体の上面に沿って延びる上側延出部と、前記ブラケット本体の下面に沿って延びる下側延出部と、これらを接続する湾曲部を備えた断面略U字状のクリップとを備え、 前記ブラケット本体の前記上面には、前記クリップの移動方向と交差する方向に沿って延びてアーチワイヤを収容可能な溝状のアーチワイヤスロットが設けられ、 前記アーチワイヤスロットの反湾曲部側側面には、前記クリップの前記上側延出部の端部が挿入可能な係合部が設けられ、 前記ブラケット本体の前記下面には、前記下側延出部を前記クリップの前記移動方向に案内する案内溝が設けられ、 前記クリップの前記下側延出部は、前記アーチワイヤスロットの開閉に伴い前記案内溝内を移動可能に構成されており、 前記クリップが前記アーチワイヤスロットを閉鎖した状態において、前記アーチワイヤスロットのアーチワイヤ収容方向と略直交する方向に関して、前記クリップの前記下側延出部の端部は前記アーチワイヤスロットの溝幅内に位置していることを特徴とする歯列矯正ブラケット。前記クリップが前記アーチワイヤスロットを閉鎖しているときの前記クリップの曲率は、前記クリップが前記アーチワイヤスロットを閉鎖していないときの前記クリップの曲率よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の歯列矯正ブラケット。前記案内溝は、前記クリップの移動方向に対して傾斜した傾斜面を有し、 前記傾斜面は、前記クリップを前記アーチワイヤスロットを閉鎖する方向に移動させたときに、前記クリップの前記下側延出部の端部を前記ベース側に近づけるように移動させる請求項1または2に記載の歯列矯正ブラケット。前記案内溝は、前記アーチワイヤスロットの下方に前記アーチワイヤスロットの底面と略平行な平面部を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の歯列矯正ブラケット。前記係合部の上側には前記湾曲部側に張り出すワイヤ抜け止め庇部が設けられ、 前記ワイヤ抜け止め庇部の張り出し端部は、前記アーチワイヤスロットの反湾曲部側側面よりも反湾曲部側に位置することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の歯列矯正ブラケット。前記クリップの前記下側延出部の前記端部に拡幅部が設けられ、 前記案内溝の前記湾曲部側に、前記クリップの前記拡幅部よりも幅が狭いクリップ抜け止め部が設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の歯列矯正ブラケット。底面が歯に直接または間接的に固着される板状のベース部と、 前記ベース部の上面に固定されたブラケット本体と、 移動可能に前記ブラケット本体に取り付けられ、前記ブラケット本体の上面に沿って延びる上側延出部と、前記ブラケット本体の下面に沿って延びる下側延出部と、これらを接続する湾曲部を備えた断面略U字状のクリップとを備え、 前記ブラケット本体の前記上面には、前記クリップの移動方向と交差する方向に沿って延びてアーチワイヤを収容可能な溝状のアーチワイヤスロットが設けられ、 前記アーチワイヤスロットの反湾曲部側側面には、前記クリップの前記上側延出部の端部が挿入可能な係合部が設けられ、 前記ブラケット本体の前記下面には、前記下側延出部を前記クリップの前記移動方向に案内する案内溝が設けられ、 前記クリップの前記下側延出部は、前記アーチワイヤスロットの開閉に伴い前記案内溝内を移動可能に構成されており、 前記案内溝は、前記クリップの移動方向に対して傾斜した傾斜面を有し、 前記傾斜面は、前記クリップを前記アーチワイヤスロットを閉鎖する方向に移動させたときに、前記クリップの前記下側延出部の端部を前記ベース側に近づけるように移動させることを特徴とする歯列矯正ブラケット。前記クリップが前記アーチワイヤスロットを閉鎖しているときの前記クリップの曲率は、前記クリップが前記アーチワイヤスロットを閉鎖していないときの前記クリップの曲率よりも大きいことを特徴とする請求項7に記載の歯列矯正ブラケット。前記クリップが前記アーチワイヤスロットを閉鎖した状態において、前記アーチワイヤスロットのアーチワイヤ収容方向と略直交する方向に関して、前記クリップの前記下側延出部の端部は前記アーチワイヤスロットの溝幅内に位置していることを特徴とする請求項8に記載の歯列矯正ブラケット。前記案内溝は、前記アーチワイヤスロットの下方に前記アーチワイヤスロットの底面と略平行な平面部を有することを特徴とする請求項7から9のいずれか一項に記載の歯列矯正ブラケット。前記係合部の上側には前記湾曲部側に張り出すワイヤ抜け止め庇部が設けられ、 前記ワイヤ抜け止め庇部の張り出し端部は、前記アーチワイヤスロットの反湾曲部側側面よりも反湾曲部側に位置することを特徴とする請求項7から10のいずれか一項に記載の歯列矯正ブラケット。前記クリップの前記下側延出部の前記端部に拡幅部が設けられ、 前記案内溝の前記湾曲部側に、前記クリップの前記拡幅部よりも幅が狭いクリップ抜け止め部が設けられていることを特徴とする請求項7から11のいずれか一項に記載の歯列矯正ブラケット。

说明书全文

本発明は、不整列歯や捻転歯の矯正に用いられる歯列矯正ブラケットに関する。

従来、歯列矯正治療を行う際には、患者の歯に取り付けた歯列矯正ブラケットのアーチワイヤスロットにアーチワイヤを挿入し、アーチワイヤが外れないように歯列矯正ブラケットのタイウイングに樹脂製のリガチャーリングやステンレス製のリガチャーワイヤ等の結紮具を引っかけて結紮を行う方法が用いられてきた。これに対して、セルフライゲーティングブラケットと呼ばれる結紮作業が不要なタイプの歯列矯正ブラケットが、特許文献1や特許文献2として知られている。これらのセルフライゲーティングブラケットを治療に用いることにより、結紮具を取り付ける手間がないため、ドクターは患者に施術を行う時間(チェアタイム)の短縮ができる。また、従来の歯列矯正ブラケットでは結紮具を取り付けることにより歯列矯正ブラケットや結紮具への食物残渣がこびり付くので、口腔内を衛生的に保つことが難しかったという問題を解決することができる。

このようなセルフライゲーティングブラケットは、スライド式や回転式のクリップを備えており、該クリップが移動することによって、アーチワイヤスロット内にアーチワイヤを保持したり、或いはアーチワイヤスロットからアーチワイヤを外したりすることが容易にできる。

特許第4444410号公報

特表2001−503305号公報

特許第4411573号公報

上述の特許文献1に記載の歯列矯正ブラケット1Aは図10に示すように、スライド式のクリップ4Aを採用している。このスライド式クリップ4Aは下側延出部の長さが大きいので、取り付ける歯の表面の曲率や歯列矯正ブラケットのベースに設けた度(トルク)によって、クリップをスロット閉鎖位置まで挿入する際にクリップ4Aがベース部2Aや歯と干渉しないように、本来クリップ4Aの下側延出部を挿入するために必要な厚み以上にブラケット本体3Aのスロット5Aの下部を厚くする必要があった。

より詳細には、歯列を整列させるために歯に直接又は間接的に取り付けた複数の歯列矯正ブラケット1A、特にトルクインベースタイプの歯列矯正ブラケットにおいて、上顎と下顎あるいは前歯と臼歯で歯面の曲率や歯列矯正ブラケット1Aを取り付ける位置が違うためにベース部2Aとスロット5Aの底面とのなす角度が異なる。このため、例えばクリップ4Aとスロット5Aとの干渉を回避するためにクリップ4Aのスライド方向をスロット5Aの底面と平行にした場合は、図10に示すように、歯面(ベース部2A)とスライド方向とが交差する。そこでスライド時にクリップ4Aと歯面とが干渉することを回避するために、スロット5Aの下側が厚くなるようにブラケット本体3Aを形成する必要がある。

特にスライド式クリップ4Aは、その端部がブラケット本体3Aを貫通するように設けられているので、下側延出部が長く、干渉を回避するためにブラケット本体3Aのスロット5Aの下部が厚くなりやすかった。しかし、スロット5Aの下部が厚くなりブラケット全体の高さが大きくなると、患者の唇の裏側が歯列矯正ブラケット1Aに接触しやすくなり、患者が違和感を覚えるという問題があった。

一方、特許文献2や特許文献3に記載の歯列矯正ブラケットは回動式のクリップを採用している。特許文献2に記載の歯列矯正ブラケット1Bは、図11に示すように、回動式のクリップ4Bを採用している。この歯列矯正ブラケット1Bでは、クリップ4Bの下端部41Bを中心にしてクリップ4Bを回動させてスロット5Bを開放する。この回動式クリップ4Bは前述のスライド式クリップ4Aと比べて下側延出部の長さが短いので、ブラケット本体3Bに厚みを持たせる必要がなく、歯列矯正ブラケットの高さを低くできる。

ところが、この回動式クリップ4Bを備えた歯列矯正ブラケット1Bではアーチワイヤが外れやすいという問題がある。例えば、歯列矯正時に患者が硬い物を噛んだり、ワイヤが何かに引っかかるなどして、予期せぬ強いがアーチワイヤに加わることがある。この時、アーチワイヤにスロット5Bから抜け出る方向の力が作用してアーチワイヤがクリップ4Bの上側延出部を持ち上げると、クリップ4Bが回動して開いてアーチワイヤが外れたり、クリップ4Bが変形して歯列矯正ブラケット1Bを取り替えなければならない虞があった。

図12に示す特許文献3に記載の歯列矯正ブラケット1Cも回動式のクリップ4Cを採用している。この歯列矯正ブラケット1Cにおいてスロット5Cを開放させるには、クリップ4Cを一度側方へスライド移動させてクリップ4Cの下側端部41Cを回動部9Cに移動させてから、下側端部41Cを中心にクリップ4Cを回転させる。

この構造のクリップ4Cにおいても、アーチワイヤにスロット5Cから抜け出る方向の力が作用してクリップ4Cの上側延出部に持ち上げようとする力が作用すると、クリップ4Cの弾性復元力によりクリップ4Cが側方に移動してしまう結果クリップ4Cが回動して、スロット5Cが開いてアーチワイヤが外れたり、クリップ4Cが変形して歯列矯正ブラケット1Cを取り替えなければならない虞があった。

そこで本発明は、上記問題に鑑み、高さが低くかつクリップが外れにくい歯列矯正ブラケットを提供することを目的とする。

上記目的を達成するために、本発明によれば以下が提供される。 (1) 底面が歯に直接または間接的に固着される板状のベース部と、 前記ベース部の上面に設けられたブラケット本体と、 前記ブラケット本体に移動可能に取り付けられ、前記ブラケット本体の上面に沿って延びる上側延出部と、前記ブラケット本体の下面に沿って延びる下側延出部と、これらを接続する湾曲部を備えた断面略U字状のクリップとを備え、 前記ブラケット本体の前記上面には、前記クリップの移動方向と交差する方向に沿って延びてアーチワイヤを収容可能な溝状のアーチワイヤスロットが設けられ、 前記アーチワイヤスロットの反湾曲部側側面には、前記クリップの前記上側延出部の端部が挿入可能な係合部が設けられ、 前記ブラケット本体の前記下面には、前記クリップの前記下側延出部を前記クリップの前記移動方向に案内する案内溝が設けられ、 前記案内溝は前記アーチワイヤスロットの下方に設けられ、 前記クリップの前記上側延出部の前記端部が前記係合部に挿入された状態で、前記クリップの前記下側延出部の端部は前記ブラケット本体の反湾曲部側端面に貫通しないことを特徴とする歯列矯正ブラケット。 (2) 前記案内溝は、前記アーチワイヤスロットの下方に前記アーチワイヤスロットの底面と略平行な平面部を有することを特徴とする(1)の歯列矯正ブラケット。 (3) 前記係合部の上端には前記湾曲部側に張り出すワイヤ抜け止め庇部が設けられ、 前記ワイヤ抜け止め庇部の張り出し端部は、前記アーチワイヤスロットの反湾曲部側側面よりも反湾曲部側に位置することを特徴とする(1)または(2)の歯列矯正ブラケット。 (4) 前記クリップの前記下側延出部の前記端部に拡幅部が設けられ、 前記案内溝の前記湾曲部側端部に、前記クリップの前記拡幅部よりも幅が狭いクリップ抜け止め部が設けられていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかの歯列矯正ブラケット。 (5) 前記クリップの前記上側延出部の端部に過開放防止部が設けられ、 前記ブラケット本体の上面で前記アーチワイヤスロットよりも前記クリップの湾曲部側に、前記過開放防止部と嵌合する過開放防止突起が設けられていることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかの歯列矯正ブラケット。 (6) 前記クリップの前記上側延出部の前記端部は幅方向両端が突出した二股形状とされており、 前記係合部は二股形状の前記クリップの前記上側延出部の前記端部に対応するように前記アーチワイヤスロットの長手方向の両端に設けられ、 前記係合部の間には、前記アーチワイヤスロットの前記反湾曲部側側面と面一なツール案内面が設けられ、 前記ツール案内面の上部はテーパー形状とされていることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかの歯列矯正ブラケット。 (7) 前記クリップの前記上側延出部の前記端部は幅方向両端が突出した二股形状とされており、 二股形状の前記クリップの前記上側延出部の前記端部の前記アーチワイヤスロットの長手方向中央には、上方に突出するツール係止突起が設けられていることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかの歯列矯正ブラケット。 (8) 前記案内溝の反湾曲部側に設けられ前記クリップの前記下側延出部の前記端部が当接する当接壁には、前記ブラケット本体の前記反湾曲部側端面に貫通する異物除去用の貫通溝が設けられていることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかの歯列矯正ブラケット。

本発明に係る歯列矯正ブラケットによれば、前記クリップの前記上側延出部の前記端部が前記係合部に挿入された状態で、前記クリップの前記下側延出部の端部は前記ブラケット本体の反湾曲部側端面に貫通していない。したがって、クリップの上側延出部の端部を係合部に挿入したスロット閉鎖状態において、クリップの下側延出部の長さが短いので歯面と干渉せず、ブラケット本体の厚みを抑えてブラケットの高さを小さくすることができる。

また、前記案内溝が前記アーチワイヤスロットの下方に設けられるので、アーチワイヤにアーチワイヤスロットから抜け出す力が作用しても、クリップの下側延出部がブラケット本体の案内溝に当接してクリップの下側延出部に反対方向の力が作用し、クリップに回転モーメントが作用することがない。したがって、クリップが回転せずクリップが開放されてしまう虞がない。以上より、高さが低く、かつ意図しないスロット開放の虞が少ない歯列矯正ブラケットを提供することができる。

本発明の第1実施形態に係る歯列矯正ブラケットを示す斜視図である。

図1に示す歯列矯正ブラケットのスロット閉鎖状態を示す断面図である。

図1に示す歯列矯正ブラケットのスロット開放状態を示す断面図である。

図1に示す歯列矯正ブラケットのブラケット本体の底面図である。

本発明の第2実施形態に係る歯列矯正ブラケットを示す斜視図である。

本発明の第3実施形態に係る歯列矯正ブラケットのスロット閉鎖状態を示す上面図である。

本発明の第3実施形態に係る歯列矯正ブラケットのスロット開放状態を示す上面図である。

本発明の変形例に係る歯列矯正ブラケットを示す上面図である。

本発明の変形例に係る歯列矯正ブラケットを示す上面図である。

従来例に係るスライド式クリップを備えた歯列矯正ブラケットを示す図である。

従来例に係る回動式クリップを備えた歯列矯正ブラケットを示す図である。

従来例に係る回動式クリップを備えた歯列矯正ブラケットを示す図である。

以下、本発明の実施形態に係る歯列矯正ブラケットを、図面を参照して説明する。

<第1実施形態> 図1は第1実施形態に係る歯列矯正ブラケット1のスロット開放状態を示す斜視図である。図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る歯列矯正ブラケット1は、その底面が歯の表面に直接または間接的に固着可能な板状のベース部2と、ベース部2の上面に設けられたブラケット本体3と、ブラケット本体3に移動可能に取り付けられたクリップ4とを有する。なお、本明細書ではベース部2の歯面に固着される底面側を下側、ベース部2のブラケット本体3が設けられる側を上側とする。なお、本実施形態のブラケット本体3は、平行に配置された二組のウィングを備えたツインタイプのブラケットである。

ブラケット本体3には、クリップ4を移動可能に保持するために、その上面(ベース部2とは反対側)にはクリップ4の上側延出部41と摺接して支持する上側支持部31が設けられ、その下面(ベース部側の面)にはクリップ4の下側延出部42を案内する案内溝9とが設けられている。また、ブラケット本体3の側方(クリップ4側)には、スロット閉鎖時の湾曲部43の位置を規制できるように左右一対の張り出し部32が形成されている。また、ブラケット本体3の上面には、アーチワイヤを収容できる溝状のアーチワイヤスロット5がクリップ4の移動方向と略直交する方向に沿って形成されている。このアーチワイヤスロット5は上方に開口した溝である。

また、ブラケット本体3の上面支持部31のアーチワイヤスロット5側には、乗り越え段部31a(図2参照)が形成されている。スロット開放状態では、この乗り越え段部31aがクリップ4の上側端部44に当接し、クリップ4が不用意にアーチワイヤスロット5側に移動してアーチワイヤスロット5を閉鎖することを防止している。

クリップ4は、ブラケット本体3の上面に延びる平面状の上側延出部41と、ブラケット本体3の下面に延びる平面状の下側延出部42と、これらを接続する湾曲部43を備えた断面略U字状の弾性変形可能な部材である。クリップ4は上側端部44と下側端部45の間隔が最も狭くなるように湾曲された部材である(図2参照)。本実施形態では、クリップ4の上側延出部41の端部である上側端部44は、幅方向(アーチワイヤスロット5の長手方向)の両端が突出する二股形状とされている。このクリップ4は、ブラケット本体3に対して移動可能に取り付けられている。

クリップ4の湾曲部43は、上側延出部41と接続される上側は曲率半径が小さく、下側延出部42と接続される下側は曲率半径が大きく形成されている(図2参照)。このように、上側の曲率半径を下側の曲率半径よりも小さくしたことにより、クリップ4が上側に大きく延出することが無く、クリップ4の高さ寸法を小さくすることができる。

歯列の矯正時には、この歯列矯正ブラケット1を複数の歯のそれぞれに取り付け、アーチワイヤをそれぞれの歯列矯正ブラケット1のアーチワイヤスロット5に挿入し、クリップ4でアーチワイヤスロット5を閉鎖してアーチワイヤの抜けを防止した状態で、歯列矯正ブラケット1を介して正常な歯列となる方向へ歯に矯正力を与えて歯列の矯正が行われる。

以下、図2〜4を用いて歯列矯正ブラケット1を更に詳細に説明する。図2は第1実施形態に係る歯列矯正ブラケット1のスロット閉鎖状態での係合部6を含む面の断面図であり、図3はスロット開放状態での図2と同じ面の断面図であり、図4は歯列矯正ブラケット1の底面図である。図2,3に示すように、ブラケット本体3の上面に設けられるアーチワイヤスロット5は、クリップ4の湾曲部43に近い側の湾曲部側側面51と、湾曲部側側面51と対向する反湾曲部側側面52と、湾曲部側側面51と反湾曲部側側面52とを接続する底面53とを備えた断面略U字状の溝であり、上方に向かって開放されている。

図1も参照して、アーチワイヤスロット5の反湾曲部側側面52には、クリップ4の上側延出部41の先端である二股に分かれた上側端部44が挿入可能な左右一対の係合部6が、クリップ4から遠ざかるように凹んで形成されている。この係合部6は、ツール案内面8を挟んでアーチワイヤスロット5の長手方向の両側に形成されている。また、係合部6の上部には係合部6の上端から湾曲部側に張り出す庇部(ワイヤ抜け止め庇部)7が設けられている。なお、ツール案内面8はアーチワイヤスロット5の反湾曲部側側面52と面一な面である。

クリップ4がアーチワイヤスロット5の開口を閉鎖するスロット閉鎖時には、クリップ4の上側端部44がこの係合部6内に挿入される。歯列の矯正時には、アーチワイヤに上方への力が作用してスロット閉鎖時のクリップ4の上側延出部41が持ち上げられる力が作用するが、庇部7がクリップ4の上側延出部41に当接することにより、クリップ4が係合部6から抜け出すことを防止している。

また、図1,2を参照してクリップ4の上側延出部41の二股に分かれた左右の上側端部44の幅方向の中間には、上方に突出したツール係止突起46が形成されている。図2に示すクリップ4の上側端部44が係合部6内に挿入されたスロット閉鎖状態から、図3に示すアーチワイヤスロット5の上方が開放するスロット開放状態にするには、板状の開放ツール10の先端をツール係止突起46とツール案内面8の間に挿入し、開放ツール10の先端でツール係止突起46を引っかけながら図2の矢印A方向に開放ツール10を移動させる。

このため、ツール係止突起46とツール案内面8との間隔が開放ツール10の先端の厚みよりも大きくなるようにクリップ4の上側端部44とツール係止突起46との距離が設計されている。また、左右一対の係合部6の間に位置するツール案内面8の上部はテーパー面とされており、開放ツール10の先端をツール係止突起46とツール案内面8との間に挿入しやすくされている。

更に、庇部7の張り出し端部7aは、アーチワイヤスロット5の反湾曲部側側面52よりも反湾曲部側に位置させることが好ましい。張り出し端部7aを反湾曲部側側面52付近まで延ばしてしまうと、クリップ4の抜け止めを防止するために必要な庇部7の強度を確保するために庇部7の肉厚が大きくなり、歯列矯正ブラケット1全体の高さが大きくなってしまうためである。

ブラケット本体3の下側に設けられた案内溝9は断面略U字状の溝であり、クリップ4の湾曲部43側からアーチワイヤスロット5の下方付近に設けられた当接壁91までクリップ4の移動方向に沿って延びるように形成されている。また、案内溝9の幅はクリップ4の下側延出部42の端部である下側端部45の幅よりも僅かに大きく設定されている(図4参照)。クリップ4の下側延出部42は、この案内溝9とベース部2の上面との間に画成された空間内に挿入されて案内されながら移動可能である。

案内溝9の当接壁91は、クリップ4の下側端部45に当接してクリップ4の挿入位置を規制する部位である。この当接壁91は、アーチワイヤスロット5の反湾曲部側側面52の下方付近に位置されている。したがって、クリップ4の上側端部44が係合部6に挿入されるスロット閉鎖時には、クリップ4の下側端部45はアーチワイヤスロット5の下方に位置することになる。

このように、本実施形態に係る歯列矯正ブラケット1では、図2に示すようにスロット閉鎖時でもクリップ4の下側延出部42はブラケット本体3の反湾曲部側端面34を貫通することなく、クリップ4の下側端部45がアーチワイヤスロット5の下方に位置するので、特許文献1等のスライド式クリップを備える歯列矯正ブラケットと比べてクリップ4の下側延出部42の長さを短くすることができる。

したがって、特に特許文献1に記載の歯面とクリップの下側延出部とが干渉しないようにアーチワイヤスロットの下方が厚く形成されたスライド式クリップを備えた歯列矯正ブラケットと比べて、本実施形態に係る歯列矯正ブラケット1では、下側延出部42の長さが短く歯面と干渉しないので、アーチワイヤスロット5の下方の厚みを薄くすることができる。よって、歯列矯正ブラケット1全体の高さを低くすることができるので、歯列矯正ブラケット1を装着した患者が違和感を覚えることが少ない。

なお、上述の実施形態では、案内溝9の当接壁91がアーチワイヤスロット5の底面53の下方に位置する例を挙げて説明したが、アーチワイヤスロット5の底面53とクリップ4の移動方向が大きな角度をなしてもクリップ4の下側端部45が歯面と干渉しないように、例えば案内溝9の当接壁91を、アーチワイヤスロット5の湾曲部側側面51の下方と係合部6の反湾曲部側側面6aの下方との間に位置するように設定してもよい。

このように設定した場合であっても、クリップ4の上側端部44が係合部6に挿入されたスロット閉鎖状態では、クリップ4の下側端部45は案内溝9の当接壁91に規制されて、クリップ4の下側端部45がアーチワイヤスロット5の湾曲部側側面の下方と係合部の反湾曲部側側面の下方との間に位置することになる。したがって、上述の如くクリップ4の下側端部45が歯面と干渉することを抑制できるので、歯列矯正ブラケット1の高さを小さくすることができる。

また、クリップ4の下側端部45が、アーチワイヤスロット5よりも湾曲部側ではなく、アーチワイヤスロット5の底面53の下方まで延びているので、アーチワイヤにアーチワイヤスロット5から抜け出す力が作用しても、クリップ4の下側延出部42がブラケット本体3の案内溝9に当接してクリップ4に反対方向の力が作用し、クリップ4に回転モーメントが作用することがない。したがって、クリップ4が回転しないので、クリップ4が開放されてしまう虞がない。なお、クリップの下側端部がアーチワイヤスロットよりも湾曲部側の下方までしか延ばされていない従来の特許文献2,3に記載の回動式のクリップの場合には、アーチワイヤにアーチワイヤスロットから抜け出す力が作用した時に、クリップの上側延出部と下側延出部に作用する力が打ち消し合うようには働かず、アーチワイヤがブラケット本体から脱落してしまう虞がある。

このクリップ4が庇部7から外れてアーチワイヤスロット5が開放してしまうことを確実に阻止するために、案内溝部の当接壁91からクリップ4の湾曲部43側に延びる平面部92は、アーチワイヤスロット5の底面53と略平行に形成されている。アーチワイヤに上方への力が作用する場合、アーチワイヤはアーチワイヤスロット5の両側面51,52に案内されて底面53と相反する方向に移動するので、クリップ4の上側延出部41には底面53と相反する方向の力が作用する。

そこで、案内溝9の平面部92をアーチワイヤスロット5の底面53と略平行に形成すれば、クリップ4の上側延出部41がアーチワイヤから上方に向かう力と、クリップ4の下側延出部42が案内溝9から下方に向かう力とが略一直線上に並ぶことになる。したがって、クリップ4の上側延出部41に作用する力を打ち消す力を下側延出部42に作用させやすくなり、互いの力が打ち消し合ってクリップ4に回転モーメントが発生せず、クリップ4が開放されてしまう虞がない。

また、スロット開放時にクリップ4が開きすぎてクリップ4に過大な力が作用しないように、図1,3に示すように、クリップ4の二股状に分かれた上側端部44に設けられた左右の内方突起(過開放防止部)44aがブラケット本体3の上面支持部31に設けられた抜け止め突起(過開放防止突起)33と嵌合可能とされている。クリップ4の上側端部44は幅方向中央に嵌合空間を形成するように二股に分かれており、その先端には嵌合空間のクリップ先端側を幅狭とする内方突起44aが設けられている。また、ブラケット本体3の上面支持部31にはこの嵌合空間に収容される大きさで、かつクリップ4の上側端部44の内方突起44aと当接する抜け止め突起33が形成されている。

したがって、クリップ4を移動させてアーチワイヤスロット5が開放された後、更にクリップ4を移動させようとしてもクリップ4の内方突起44aがブラケット本体3の抜け止め突起33に引っかかり、これ以上クリップ4が移動や変形することが防止されるので、クリップ4の破損を防止することができる。

また、図4のブラケット本体3の底面図に示すように、スロット開放時にクリップ4がブラケット本体3から脱落することがないように、案内溝9の湾曲部側端部に一対の抜け止め部(クリップ抜け止め部)93が設けられている。クリップ4の下側端部45は下側延出部42よりも幅広に形成されており、一対の抜け止め部93の幅はクリップ4の下側延出部42より幅広に、かつ、下側端部45の幅より幅狭に形成されている。

したがって、クリップ4の上側端部44が庇部7から抜け出る時(換言すればクリップ4を引き出す時)には、まずクリップ4の下側端部45が案内溝9の平面部92中で移動方向が規制されながらクリップ4が横方向(図2の左側)に引き出される。抜け止め部93によってこの横移動が止められると、クリップ4の下側端部45は抜け止め部93を回動中心としてクリップ4が回転し、アーチワイヤスロット5が開放される。したがって、抜け止め部93がクリップ4の下側端部45の抜けを防止するので、クリップ4がブラケット本体3から脱落することが防止される。よって、歯列矯正ブラケット1を歯に取り付けた後アーチワイヤを付け替える時等、アーチワイヤスロット5を開放した時でも、クリップ4がブラケット本体3から脱落することがないので歯列矯正ブラケット1の取り扱いが容易である。

また、スロット閉鎖時には上記とは逆に、クリップ4はまず抜け止め部93に当接した下側端部45が回転中心となって回転し、この後に平面部92に沿って横方向にスライド移動し、上側端部44が係合部6内に挿入される。ここで、クリップ4が回転することにより上側端部44が下側に回動し、この状態でクリップ4を庇部7側へ横移動させるので、上側端部44が挿入される庇部7を低い位置に設定することができる。したがって庇部7の位置を下げることにより歯列矯正ブラケット1全体の高さを低くすることができる。また、スロット閉鎖状態でアーチワイヤに上方へ向かう力が作用しても、クリップ4が平面部92に規制されて回動しないので、従来の回動型クリップのようにクリップ4が容易に開放してしまう虞がない。

さらに、図2〜4のように案内溝9の反湾曲部側に、ブラケット本体3の反湾曲部側端面34に貫通する異物除去用の貫通溝94を設けてもよい。歯列矯正ブラケット1を歯に取り付けた治療中であっても、案内溝9内に付着した異物を貫通溝94を介して歯列矯正ブラケット1の外部からウォーターピックなどで洗浄して取り除くことができる。したがって、口腔内を衛生的に保つことができるとともに、クリップ4と案内溝9との間に異物が入り込んでクリップ4が開かなくなってしまうことを防止することができる。なお、この貫通溝9の幅はクリップ4の下側端部45の幅よりも小さく設定されており、クリップ4の下側端部45が貫通溝9に侵入不可能とされているので、スロット閉鎖時にもクリップ4の下側端部45がブラケット本体3の反湾曲部側端面34を貫通することがない。

<第2実施形態> なお、上述の第1実施形態では、板状の開放ツール10によりクリップ4が移動させられる例を説明したが、本発明はこの形態に限られない。図5は上記第1実施形態の変形例である第2実施形態に係る歯列矯正ブラケット101を示す斜視図である。第2実施形態では、ツールとの係合構造及びクリップを抜け止めする嵌合構造のみが異なるので、以下では第1実施形態と異なる点についてのみ説明し、同じ部材には同じ参照符号を付してその説明は省略する。

第2実施形態は棒状の開放ツール110が適用可能な歯列矯正ブラケット101である。第2実施形態に係るツール案内面108は、棒状の開放ツール110よりも僅かに大きな形状の凹部として形成されている。また、クリップ4の左右一対の上側端部44の間は棒状の開放ツール110の先端形状に合わせてV字状に形成されており、ツール係止突起146もV字状に切り起こされて形成されている。したがって、開放ツール110を凹部形状のツール案内面108とV字状のツール係止突起146との間に挿入し、開放ツール110をツール係止突起146に引っかけてクリップ4を移動させてスロット開放状態とすることができる。

なお、ブラケット本体3の上面支持部31には抜け止め突起133が、クリップ4の上側延出部41には左右一対の矩形状の嵌合孔147が形成されている。スロット開放状態とするべくクリップ4を所定量移動させた後に、ブラケット本体3の抜け止め突起133がクリップ4の嵌合孔147に嵌合し、クリップ4が開き過ぎないようにしている。

<第3実施形態> なお、上述の第1実施形態及び第2実施形態では、二股形状とされたクリップ4の上側端部44が係合部6内に挿入されてアーチワイヤスロット5が閉鎖される例を示したが、本発明はこの構成に限定されることはない。第3実施形態に係る歯列矯正ブラケット201を図6,7を参照して説明する。

第3実施形態に係る歯列矯正ブラケット201は、上述の第1実施形態に係る歯列矯正ブラケットと、クリップ及びブラケット本体の係合部周辺の形状のみが異なるので、同一の部材には同一の符号を付してその詳細な説明を省略し、異なる部分のみを説明する。

図6は歯列矯正ブラケット201のスロット閉鎖状態を示す上面図であり、図7は歯列矯正ブラケット201のスロット開放状態を示す上面図である。本実施形態において、クリップ4の上側延出部41は幅方向中央位置から突出する上側端部244を備えている。アーチワイヤスロット5の反湾曲部側側面52には、クリップ4の上側端部244を挿入可能な挿入孔206が設けられている。この挿入孔206は、アーチワイヤスロット5の反湾曲部側側面52からブラケット本体3の反湾曲部側端面34に貫通するように形成されている。

図6の如く、スロット閉鎖状態では、クリップ4の上側端部244は挿入孔206の内部に挿入され、アーチワイヤに上方への力が作用してクリップ4の上側延出部41が上方に持ち上げられようとしても、挿入孔206の上面がクリップ4の上側端部244に当接し、クリップ4の抜け出しを防止する。

図7の如く、スロット開放状態では、クリップ4の上側端部244と上側延出部41との接続部の両側に設けられた凹部に、ブラケット本体3の上面支持部31に設けられた過開放防止突起233が入り込み、クリップ4が過剰に移動することを防止している。また、ブラケット本体3の上面支持部31のアーチワイヤスロット5側端部に設けられた乗り越え段部231aがクリップ4の上側端部244に当接することによりこのスロット開放状態が維持される。

なお、本実施形態においても、スロット閉鎖状態において、クリップ4の下側端部45がブラケット本体3の反湾曲部側端面34に貫通せず、かつ、案内溝9がアーチワイヤスロット5の下方に配置されていることは上述の第1及び第2実施形態と同様である。したがって、本実施形態でも、高さが低く、かつクリップが抜けにくい歯列矯正ブラケット201を提供できる。

なお、上述の第1〜3実施形態においては、ブラケット本体3に平行に配置された二組のウィングが設けられたツインブラケットタイプの歯列矯正ブラケット1,101,201を例に挙げて説明したが、本発明はツインブラケットタイプの歯列矯正ブラケットに限られることはない。図8は本発明の変形例に係る歯列矯正ブラケットの上面図である。図8に示すように単一のウィングを有するシングルブラケットに本発明を適用することも可能である。

また、図9も本発明の図8に示す変形例とは別の変形例に係る歯列矯正ブラケットの上面図である。図9に示すようにブラケット本体3に牽引用のエラスティックをかけるためのフック11を設けてもよい。このような形態を取ることにより、エラスティックを引っかけて歯列を矯正する施術に対応できる歯列矯正ブラケットに本発明を適用することができる。なお、図9ではシングルブラケットタイプの歯列矯正ブラケットにフック11を設けた例を示したが、第1〜3実施形態のツインブラケットタイプの歯列矯正ブラケット1,101,201にフック11を設けても良い。

なお、図8や図9に示す変形例においても、スロット閉鎖状態において、クリップ4の下側端部45がブラケット本体3の反湾曲部側端面34に貫通せず、かつ、案内溝9がアーチワイヤスロット5の下方に配置されていることは上述の第1及び第2実施形態と同様である。したがって、本実施形態でも、高さが低く、かつクリップ4が抜けにくい歯列矯正ブラケットを提供できる。

1,101,201: 歯列矯正ブラケット 2: ベース部 3: ブラケット本体 31: 上面支持部 32: 張り出し部 33,133: 抜け止め突起(過開放防止突起) 34: 反湾曲部側端面 4: クリップ 41: 上側延出部 42: 下側延出部 43: 湾曲部 44,244: 上側端部 45: 下側端部 46,146: ツール係止突起 147: 嵌合孔 5: アーチワイヤスロット 51: 湾曲部側側面 52: 反湾曲部側側面 53: 底面 6: 係合部 206: 挿入孔(係合部) 7: 庇部(ワイヤ抜け止め庇部) 8,108: ツール案内面 9: 案内溝 91: 当接壁 92: 平面部 93: 抜け止め部 10,110: 開放ツール

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