Orthodontic mouthpiece and orthodontic appliance using it

申请号 JP2000303814 申请日 2000-10-03 公开(公告)号 JP2002102255A 公开(公告)日 2002-04-09
申请人 Gakushi Ito; 学而 伊藤; 发明人 ITO GAKUSHI;
摘要 PROBLEM TO BE SOLVED: To provide an orthodontic appliance removing weak points in a conventional fixed orthodontic appliance and having excellent therapeutic effect, and to provide a new orthodontic technology using the appliance. SOLUTION: In this orthodontic mouthpiece efficiently executing orthodontic therapy, plural segments comprising an upper front tooth part segment 10, a lower front tooth part segment 20, a right side tooth part segment 30 and a left side tooth part segment 40 are connected by orthodontic wire-like members 51a, 51b, 52a, 52b, 53 such that separation distances of the respective segments 10, 20, 30, 40 can be adjusted.
权利要求 【特許請求の範囲】
  • 【請求項1】 歯科矯正用に上下の歯で噛ませるマウスピースであって、 複数の領域に区分された歯列部の各々に対応し、前記歯列部が当接する側に、前記歯列部の矯正対象歯をガイドする矯正用ガイド部を設けた複数の歯科矯正用のセグメントと、 セグメント間の離間距離調節手段とを有することを特徴とする歯科矯正用マウスピース。
  • 【請求項2】 請求項1記載の歯科矯正用マウスピースにおいて、 前記歯科矯正用マウスピースは、歯科矯正治療の開始から歯列のレベリング終了段階までに使用する前半歯科矯正用マウスピースと、 前記歯列のレベリング終了後から治療終了段階までに使用する後半歯科矯正用マウスピースとから構成されていることを特徴とする歯科矯正用マウスピース。
  • 【請求項3】 請求項2記載の歯科矯正用マウスピースにおいて、 前記前半歯科矯正用マウスピースでは、前記矯正用ガイド部は、レベリング終了段階での矯正された歯列が収まる溝の形に形成されていることを特徴とする歯科矯正用マウスピース。
  • 【請求項4】 請求項2記載の歯科矯正用マウスピースにおいて、 前記後半歯科矯正用マウスピースでは、前記矯正用ガイド部は、治療終了段階での矯正された歯列を構成する歯の歯冠に接する形状に形成されていることを特徴とする歯科矯正用マウスピース。
  • 【請求項5】 請求項項1ないし4のいずれか1項に記載の歯科矯正用マウスピースにおいて、 前記セグメントは、上顎前歯列に対応する上前歯部セグメントと、下顎前歯列に対応する下前歯部セグメントと、左右の上下顎側方歯列に対応する左側方歯部セグメントならびに右側方歯部セグメントとを有することを特徴とする歯科矯正用マウスピース。
  • 【請求項6】 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の歯科矯正用マウスピースにおいて、 前記セグメントは、上顎前歯列に対応する上前歯部セグメントと、上顎左側方歯列に対応する上左側方歯部セグメントと、上顎右側方歯列に対応する上右側方歯部セグメントとを有することを特徴とする歯科矯正用マウスピース。
  • 【請求項7】 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の歯科矯正用マウスピースにおいて、 前記セグメントは、下顎前歯列に対応する下前歯部セグメントと、下顎左側方歯列に対応する下左側方歯部セグメントと、下顎右側方歯列に対応する下右側方歯部セグメントとを有することを特徴とする歯科矯正用マウスピース。
  • 【請求項8】 請求項1ないし7のいずれか1項に記載の歯科矯正用マウスピースにおいて、 前記離間距離調節手段は、途中に拡縮可能なループ部を設け、端部が離間距離の調節対象とされるセグメントにそれぞれ連結されている矯正用線状部材であることを特徴とする歯科矯正用マウスピース。
  • 【請求項9】 歯科矯正に際して矯正対象歯の移動を促す歯科矯正用装置であって、 請求項1ないし8のいずれか1項に記載の歯科矯正用マウスピースと、 前記歯科矯正用マウスピースの装着部位の周囲組織に、
    前記矯正対象歯の移動に寄与する波動エネルギーを与える波動刺激供給手段とを有することを特徴とする歯科矯正用装置。
  • 【請求項10】 請求項9記載の歯科矯正用装置において、 前記波動刺激供給手段は、超音波発生手段であることを特徴とする歯科矯正用装置。
  • 说明书全文

    【発明の詳細な説明】

    【0001】

    【発明の属する技術分野】本発明は、歯科矯正技術に関し、特に長期間の装着を回避することができる歯科矯正用マウスピース、およびそのマウスピースを使用して歯科矯正治療期間を短縮することができる歯科矯正用装置に関するものである。

    【0002】

    【従来の技術】現在、世界で最も多く使用されている歯科矯正装置は、永久歯列期の咬合異常を対象とするマルチブラケット装置(MB装置)である。 この装置は、2
    0世紀初頭に米国で発明され、その後多くの改良がなされて現在に至っている。

    【0003】かかるMB装置では、口内の全ての歯の表面にブラケットと呼ばれる器具を接着する。 接着したブラケットに、金属製のアーチワイヤーを調節して取り付ける。 取り付けたアーチワイヤーに生じたたわみが、歯を支えている歯槽骨に持続的な荷重として加わる。 荷重によって歯槽骨が圧迫を受ける部分では骨吸収が起こり、歯槽骨が牽引される部分では骨添加が起きて、歯槽骨は改造され、その結果、歯が移動する。

    【0004】そこで、アーチワイヤーを定期的に調節することにより、前歯部あるいは側方歯部に属する歯を望む方向に移動させ、それによって歯列と歯のかみ合わせ(咬合)を整え、治療当初に設定した矯正治療終了時の歯列デザインに適った歯科矯正を行う。 アーチワイヤーの調節は、通常3〜4週の間隔で行い、2年前後の期間をかけて矯正治療が終了する。

    【0005】

    【発明が解決しようとする課題】上記の如く、MB装置を用いた歯科矯正治療では、一般的に治療終了まで、2
    年前後の長期間にわたって歯の表面にブラケットを接着しアーチワイヤーを取り付け続けなければならない。 そのため、患者にとっては、日常生活に様々な不都合が生ずる。

    【0006】例えば、MB装置は、多くのブラケットとアーチワイヤーとからなる複雑な形状をしており、矯正治療に際してかかる形状のMB装置が口内に入れられていると、その一部が口内に接触して唇や頬に違和感が生ずる。 短期間の装着であればある程度の我慢もできるが、2年前後の長期にわたっての違和感は患者にとって大きな苦痛を与える。

    【0007】MB装置の使用は、乳歯から永久歯への交換が終わった中学生から、50歳代あるいは60歳代の成人まで、広い年齢層に及んでいる。 MB装置を長期に口内に装着することによる負担は、どの年齢層の患者にとっても大きく、かかる点の解消を早くに図ることが大切である。

    【0008】また、口内の粘膜にはMB装置の一部が常に接触するため、時には傷つく場合も発生し、さらにはその傷口が悪化して潰瘍に至る場合もある。 矯正治療の途中にかかる問題が発生すると、最悪の場合には治療そのものを中断しなければならない事態も起きる。

    【0009】MB装置の取り付けは、前述の如く、歯の表面にブラケットを接着し、このブラケットにアーチワイヤーを取り付けて行うため、矯正治療中の患者が口を開けると、装着状態が人目につきやすい。 MB装置を装着した状態では、歯の表面にブラケットやアーチワイヤーが取り付けられているため、食事に際して繊維性の食物がからみやすく、歯磨きもしにくく歯肉炎になる場合もある。

    【0010】また、治療期間中は、MB装置のアーチワイヤーを定期的に調節するため、調節する度に新たな荷重が歯に加わり、歯が痛んだり、歯根吸収を起こす場合もある。

    【0011】なお、矯正治療を始めるに当たっては、2
    年前後の長期にわたって上記のような不自由を覚悟して、最後まで通院しきる見通しを立てることが患者側には求められる。 このことは、忙しい現代人にとってかなり難しいことが多い。 そこで、矯正治療を望んでいても、治療に踏み切れずに見合わせている潜在的な患者が多数いるものと推察される。

    【0012】歯科矯正は、ややもすると単に歯並びを良くするなどの審美的観点、所謂美容的観点からの捉え方がなされる場合も見られるが、咬合異常は、生理的にも、病理的にも多くの障害の原因となっている。 生理的障害としては、例えば、咬合異常に基づく咀嚼機能の低下、発音障害、顎機能の異常、顎成長発育の障害などがある。 病理的障害としては、例えば、歯垢沈着とそれに基づく歯肉炎、咬合性外傷、歯・粘膜の損傷、顎関節症の誘因などが挙げられる。

    【0013】勿論、咬合異常に伴う顔や、口もとのゆがみなどの審美的問題も決して無視することはできない。
    かかる審美的問題が要因となり、日常的な生活様式、あるいは社会環境に適応困難を示す社会心理的障害に至る場合もある。 すなわち、潜在的な患者は、かかる生理的、病理的、社会心理的な障害に至る可能性の高い咬合異常をそのまま放置した状態で日常生活を送っていることとなる。

    【0014】かりに、治療期間が短縮され、矯正装置の装着に纏わる前記種々の問題点が解消されるならば、気軽に矯正治療が始められ、咬合異常に基づく種々の障害発生も未然に防止できるものと考えられる。

    【0015】本発明の目的は、歯科矯正装置の長期間の常時装着の必要がない歯科矯正技術を提供することにある。

    【0016】本発明の目的は、歯科矯正治療期間の短縮が図れる歯科矯正技術を提供することにある。

    【0017】本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。

    【0018】

    【課題を解決するための手段】本発明は、歯科矯正用に上下の歯で噛ませるマウスピースであって、複数の領域に区分された歯列部の各々に対応し、前記歯列部が当接する側に、前記歯列部の矯正対象歯をガイドする矯正用ガイド部を設けた複数の歯科矯正用のセグメントと、セグメント間の離間距離調節手段とを有することを特徴とする。

    【0019】前記歯科矯正用マウスピースは、歯科矯正治療の開始から歯列のレベリング終了段階までに使用する前半歯科矯正用マウスピースと、前記歯列のレベリング終了後から治療終了段階までに使用する後半歯科矯正用マウスピースとから構成されている。

    【0020】前記前半歯科矯正用マウスピースでは、前記矯正用ガイド部は、レベリング終了段階での矯正された歯列が収まる溝の形に形成されていることを特徴とする。 前記後半歯科矯正用マウスピースでは、前記矯正用ガイド部は、治療終了段階での矯正された歯列を構成する歯の歯冠に接する形状に形成されていることを特徴とする。

    【0021】前記セグメントは、上顎前歯列に対応する上前歯部セグメントと、下顎前歯列に対応する下前歯部セグメントと、左右の上下顎側方歯列に対応する左側方歯部セグメントならびに右側方歯部セグメントとを有することを特徴とする。

    【0022】前記セグメントは、上顎前歯列に対応する上前歯部セグメントと、上顎左側方歯列に対応する上左側方歯部セグメントと、上顎右側方歯列に対応する上右側方歯部セグメントとを有することを特徴とする。 前記セグメントは、下顎前歯列に対応する下前歯部セグメントと、下顎左側方歯列に対応する下左側方歯部セグメントと、下顎右側方歯列に対応する下右側方歯部セグメントとを有することを特徴とする。

    【0023】前記離間距離調節手段は、途中に拡縮可能なループ部を設け、端部が離間距離の調節対象とされるセグメントにそれぞれ連結されている矯正用線状部材であることを特徴とする。

    【0024】本発明は、上記いずれかの構成の歯科矯正用マウスピースと、前記歯科矯正用マウスピースの装着部位の周囲組織に、前記矯正対象歯の移動に寄与する波動エネルギーを与える波動刺激供給手段とを有することを特徴とする。 前記波動刺激供給手段は、超音波発生手段であることを特徴とする。

    【0025】上記構成の本発明は、歯にブラケットなどを接着しない快適な矯正装置を提供し、しかも超音波などの波動刺激を付加することによって歯槽骨の改造を促進して、治療期間を現在のMB装置を使用した場合に比べて約40%も短縮しようとするものである。 これによって、現在のMB装置の欠点を大幅に解消することができる。

    【0026】矯正治療では、上下の歯列を、それぞれ前歯列(両側の中切歯と側切歯を含む歯列)と、側方歯列(片側ごとの犬歯から第二大臼歯までを含む歯列)に分けて扱う。 それぞれの歯列ごとに歯を整列しながら、各歯列相互の前後的位置を修正し、上下的位置を揃え、また側方歯列の側方的位置を調節して、顎骨と均整のとれた歯列弓になるように歯列弓幅の修正を行う。

    【0027】本発明では、かかる矯正治療の実施に必要な上記機能を効果的に果たすために、歯に接着しない快適な矯正装置として、初めてセグメント型マウスピース(SMP)の構成を採用した。 すなわち、上下顎前歯列と左右側方歯列に対応した4つのセグメント、およびそれらの離間距離を調節する離間距離調節手段で連結する構成を採用した。

    【0028】セグメントは、上記4個に分けるのが好ましいが、治療状況によっては、5個以上、あるいは3個未満のセグメントに分ける場合があっても構わない。 例えば、上唇に口唇裂を有する患者の場合には、上顎前歯列を一つのセグメントで対応させることなく、左右に分割したセグメントで対応させた方が矯正治療し易い場合もある。

    【0029】セグメントが5個の場合とは、例えば、上下顎前歯列と、左右側方歯列に対応する4個のセグメントにおいて、上前歯に対応するセグメントを上記の如く左右に分けた場合が想定される。 セグメントが3個の場合とは、例えば、上顎前歯列と、左右側方歯列とに対応させたセグメント構成の場合が想定される。

    【0030】また、セグメントを連結する離間距離調節手段としての矯正用線状部材は、治療の経過に応じて調節する。 例えば、1)左右の側方歯列の側方への広がりを修正し、2)前歯列と側方歯列の高さを揃え、あるいは3)上顎前歯列と下顎前歯列の前後的、上下的、側方的ズレを修正するように調節する。 調節に際しては、簡単な構成としては、例えば、矯正用線状部材にループ部を設けておき、かかるループ部を適宜拡大したり、縮小したりすることが考えられる。 矯正用線状部材の調節手段としては、勿論、かかるループ部以外の構成でも構わない。

    【0031】本発明の歯科矯正用マウスピースは、MB
    装置とは勿論異なっているが、従来より知られている矯正装置のトゥースポジショナー(Tooth Positioner: TP)
    とも異なっている。 TPは、MB装置による矯正治療がほぼ終了した時点の歯列模型から、歯の位置を微調整して緊密な咬合の歯列模型をつくり、それに適合させて製作したマウスピースである。 さらに、TPは矯正治療した歯列と咬合を安定させる装置であって、約1年間も毎晩口内に装着させておく必要がある。

    【0032】一方、本発明の歯科矯正用マウスピースは、MB装置に代わる矯正装置として発明されたものである。 基本的な相違点は、本発明の歯科矯正用マウスピースは、歯列を前歯列と側方歯列に分け、それぞれのセグメントによって歯列ごとに歯を整列するとともに、セグメントを連結した矯正用線状部材を調節して各歯列の相互位置を修正し、上下の歯列を均整のとれたアーチ状でしかも緊密に咬合させることにある。

    【0033】矯正治療の前半では、歯を歯列に沿って大まかに整列させるために、セグメントの内面に滑らかな溝状の矯正用ガイド部をもつ前半歯科矯正用マウスピースを使用する。 矯正治療の後半では、歯の位置と傾斜、
    捻転を精密に修正するために、セグメントの内面を歯冠に接する形状に形成した矯正用ガイド部をもつ後半歯科矯正用マウスピースを使用することにある。

    【0034】なお、前半歯科矯正用マウスピースの使用のみで十分な矯正治療効果が得られる場合には、それだけで治療を終了しても構わない。 さらには、極めて軽度の症状の場合には、当初から後半矯正用マウスピースのみを使用しても構わない。

    【0035】以上の構成を有する本発明の矯正用マウスピースは、マウスピースを装着するだけでも矯正治療効果を有するものである。 例えば、治療開始から治療終了までを、治療の進行段階に応じて複数の治療段階に分け、各治療段階に対応した構成の矯正用マウスピースを適宜使用することにより治療することもできる。

    【0036】治療段階をどのように設定するかは、個々の患者に合わせて判断し、都度セグメントの調節を行えばよい。 あるいは、典型的な症例に対しては予め幾つかの治療段階を設定しておき、それに応じた既製の矯正用マウスピースを形成しておき、適宜選択して使用できるようにしてもよい。

    【0037】また、歯列矯正では、矯正装置を装着するばかりでなく、嚥下時に舌を上下の歯の間に無意識に挟む舌突出癖とか、下唇を噛む咬唇癖とか、日常的な舌や唇の癖を治すことにより、矯正を図る場合もある。 中学生以下の年齢で、矯正装置を装着する程には至らない場合に採用される治療方法である。 顎関節症では、咀嚼運動を正しく行うように指導することで臼歯部の歯列矯正を行う場合もある。 このように、嚥下機能、咀嚼機能、
    舌や唇の習癖などに対する所謂筋機能療法(MFT)と呼ばれる療法を、本発明の矯正用マウスピースと併用するようにしてもよい。

    【0038】特に、舌や唇の習癖を直す筋機能療法は、
    極めて患者自身の意志に基づく面が大きく、かなりの忍耐が必要となり、継続しにくいという問題点が指摘されている。 しかし、本発明の矯正用マウスピースを併用することにより、歯列矯正の目的意識が器具などを使用しない場合に比べて具現化され、且つ、実際に歯列矯正効果も本発明の矯正用マウスピースの装着により確実に現れてくるので、筋機能療法の実施に際しても相乗効果があり飽きることなく継続することができる。

    【0039】また、上記構成の歯科矯正用マウスピースの装着時に、例えば、超音波発生装置などの波動刺激供給手段を併用すれば、従来のMB装置に比べてより小さい荷重とより短い装着時間で十分に矯正治療効果を得ることができる。 これは、高重量の物体を動かす場合でも、一定の周期で繰り返し力を加えた方が、一定の力で押し続けるよりも遥かに小さな力で物体を動かすことが可能であるが、かかることが歯科矯正における矯正対象歯の移動に対しても通用するのである。

    【0040】そこで、歯科矯正用マウスピースを装着した状態で、歯の周囲組織に超音波刺激を加えることにより歯槽骨に周期的な刺激を与えて、その特性である生体組織の活性化との相乗効果も加えて歯の移動を効率的に行わせ、矯正治療期間の大幅な短縮が可能となる。 超音波の照射は、歯科矯正用マウスピースを装着した状態で各歯列に対して1日20分、口外から行えばよい。

    【0041】かかる超音波刺激を使用した治療法では、
    従来の矯正治療に比べて遥かに小さい荷重を用いることが可能となるため、歯を効率的に移動するだけでなく、
    治療に伴う歯列周辺部の痛みや歯根吸収などの副作用を軽減することが期待される。

    【0042】波動刺激としては、超音波を使用すればよいが、その他にも超音波以外の音波、電磁場振動刺激、
    機械的な振動刺激などを使用してもよい。 機械的な振動刺激の供給手段としては、簡単にはバイブレーターを使用すればよいが、揺すったり、あるいは揉んだりなどの手段でも振動刺激を供給することができる。 波動刺激のさらに簡単な供給方法としては、声を出したり、例えば、朗読したり、あるいは歌ったりなどしてもよく、さらには、ガムなどを噛んだりしてもよい。

    【0043】従来のMB装置では、アーチワイヤーを調節してブラケットに取り付けることにより、歯槽骨に持続的な負荷を加え、歯槽骨の改造を起こさせて歯を移動させるが、治療装置は常時口内に固定されているので、
    日常生活における患者の精神的・肉体的負担は大きい。
    また、治療に約2年の長期間を要する。

    【0044】これに対して本発明者が創出した新治療法では、矯正治療の前半で、前半歯科矯正用マウスピースのセグメントの内面に設けた滑らかな溝が歯列からはみ出た不正位の歯を歯列内へ誘導する。 また、矯正治療の後半では、治療目標となる理想的な歯列をデザインした予測歯列模型に適合させて製作した後半歯科矯正用マウスピースを用いて、歯の位置や傾斜、捻転を精密に修正し、上下の歯を緊密に噛ませることができる。

    【0045】しかも、歯科矯正用マウスピースを口内に装着した状態で、歯列の周囲組織に波動刺激として例えば超音波刺激を加えることにより、歯槽骨に断続的な波動刺激を与えて歯を効率的に移動するとともに、周囲組織の活性を高めて歯槽骨の改造を高めるという効果も見出されている。

    【0046】これらの相乗効果として、歯は小さな荷重で効率的に移動し、しかも矯正治療に伴う周囲組織の痛みや歯根吸収などの副作用も少ない。 治療期間も15カ月前後と約40%前後の短縮が可能である。 また、歯科矯正用マウスピースは着脱自在な可撤式の矯正装置であるため、ブラケットやアーチワイヤーを口内に常時取り付けている必要がなく、患者にとっては外出時も周囲の視線を気にしなくてすむ。

    【0047】本発明者は、上記構成を有する歯科矯正用マウスピース、およびそれを用いた歯科矯正用装置を使用することにより、新たな歯科矯正治療法を創出した。
    かかる歯科矯正治療法は、歯列に持続的な負荷を加えて物理的に移動させる従来の矯正装置、例えばMB装置とは異なり、歯列周囲に波動刺戟を断続的に与えることにより、歯の移動を促す治療方式である。

    【0048】

    【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を以下、図面に基づき詳細に説明する。

    【0049】(実施の形態1)本実施の形態1では、本発明の歯科矯正用マウスピースについて説明する。

    【0050】図1(A)は、前半歯科矯正用マウスピースを示す斜視図であり、(B)は、(A)に示す切断線A−Aで切断した様子を示す断面図である。 図2(A)
    は、前半歯科矯正用マウスピースの上前歯部セグメントおよび左右の側方歯部セグメントの状況を上方から見下ろした様子を示す説明図であり、(B)は左右の側方歯部セグメントおよび矯正用線状部材を、図1(A)に示す矢印方向から見た様子を示す説明図である。

    【0051】図3(A)は、後半歯科矯正用マウスピースを示す斜視図であり、(B)は(A)に示す切断線A
    −Aで切断した様子を示す断面図であり、(C)は上下前歯が上下前歯部セグメントに収まっている状況を示す断面図である。 図4(A)は図3(A)に示す後半歯科矯正用マウスピースの上前歯部セグメントおよび左右の側方歯部セグメントの状況を上方から見下ろした様子を示す説明図であり、(B)は左右の側方歯部セグメントおよび矯正用線状部材を、図3(A)に示す矢印方向から見た様子を示す説明図である。

    【0052】本実施の形態で説明する歯科矯正用マウスピースは、図1に示す前半歯科矯正用マウスピースA1
    と、図3に示す後半歯科矯正用マウスピースA2とから構成されている。

    【0053】前半歯科矯正用マウスピースA1は、図1
    に示すように、上前歯部セグメント10と、下前歯部セグメント20と、右側方歯部セグメント30と、左側方歯部セグメント40とから構成されている。 ここでセグメントの左右は、患者に装着した状態で患者の右側に位置する側を右側とし、患者の左側に位置する方を左側とする。

    【0054】各セグメントは、高弾性シリコンラバーで製作され、前歯部セグメントは前歯列を、側方歯部セグメントは側方歯列を被い、それぞれの歯列の歯が溝状に形成された矯正用ガイド部の内面に誘導されて整列するように形成しておけばよい。 シリコンラバーで製作することにより、表面が滑らかで口内粘膜への接触も柔らかく行うことができる。 シリコンラバーには、市販品を使用すればよい。

    【0055】上前歯部セグメント10は、図1(A)に示すように、ほぼ前歯部の弓状歯列に合わせた略アーチ形に形成され、その下面部11は、(B)に示すように、平らに形成されている。 その前縁部に前提部12
    が、後縁部に後堤部13がそれぞれ設けられ、前提部1
    2と後堤部13との間が溝の形の矯正用ガイド部14になっている。 上顎前歯列は、この矯正用ガイド部14内に入ることとなる。

    【0056】前提部12は、前歯の表面高さに合わせて後堤部13より僅かに高く、噛み合わせた状態で上顎前歯の表面が前提部内面12aに当接できるように形成されている。 前提部内面12a、後堤部内面13a、矯正用ガイド部内面14aは、当接する歯が滑り易いように滑らかな内面に形成されている。

    【0057】下前歯部セグメント20は、図1(A)に示すように、ほぼ下前歯部の弓状歯列に合わせた略アーチ形に形成され、その上面部21は、(B)に示すように、平らに形成されている。 その前縁部に前提部22
    が、後縁部に後堤部23がそれぞれ設けられ、前提部2
    2と後堤部23との間が溝の形の矯正用ガイド部24になっている。 下顎前歯列は、この矯正用ガイド部24内に入ることとなる。

    【0058】前提部22は、下前歯の表面高さに合わせて後堤部23より僅かに高く、噛み合わせた状態で下顎前歯の表面が前提部内面22aに当接できるように形成されている。 前提部内面22a、後堤部内面23a、矯正用ガイド部内面24aは、当接する歯が滑り易いように滑らかな内面に形成されている。

    【0059】一方、左右の側方歯部セグメント30、4
    0には、図2に示すように、噛み合わせた上下の側方歯間に介在される噛合部31、41がそれぞれ設けられている。 噛合部31、41には、前提部32、42、後堤部33、43がそれぞれ設けられ、前提部32、42と後堤部33、43との間が溝状の矯正用ガイド部34、
    44に形成されている。 上下の歯を噛み合わせた状態で、この矯正用ガイド部34、44内に上下の両側方歯列が入ることとなる。

    【0060】上記構成の左右の側方歯部セグメント3
    0、40の前歯側端部は、上下の前歯部セグメント1
    0、20の側と、各セグメント間の離間距離調節手段としての弾性のある矯正用線状部材51a、51b、52
    a、52bで、図1(A)に示すように連結されている。 さらに、左右の側方歯部セグメント30、40のほぼ中央部が、弾性のある矯正用線状部材53で連結されている。 矯正用線状部材53は、例えば口蓋の内面に沿うように略円弧に形成しておけば、口内に装着した状態でも矯正用線状部材53が舌の動きを邪魔することはない。

    【0061】矯正用線状部材51a、51b、52a、
    52b、53のそれぞれには、途中に矯正用線状部材を曲げて、口内装着時に口蓋内面に沿うように平らに形成されたループ部60が形成され、その線状部材両端側が、個々のセグメントに連結されている。 かかるループ部60を矯正用プライヤーで広げたり、縮めたりして調節することにより、矯正用線状部材51a、51b、5
    2a、52b、53の張り長さの調節を行う。 結果として左右側方歯部セグメント30、40間、あるいは左右側方歯部セグメント30、40と、上下前歯部セグメント10、20間の3次元方向の離間距離を自由に調節することができる。

    【0062】上記構成の前半歯科矯正用マウスピースA
    1は、正常咬合者から選択した大きさの違う数種類の歯列模型を基準として製作する。 基準とする歯列模型から複製の石膏模型を作成する. その上下一組の石膏模型を、義歯を製作するときの要領で咬合器に付着して、口内での上下歯列の対向関係を再現する. この上で、前歯部と側方歯部のセグメントとそれらを連結する矯正用線状部材の形状を設計する。 設計に従って最初に矯正用線状部材を屈曲製作し、その端を埋没させて各セグメントを製作する. セグメントは、使用する材料によって石膏模型に盛り上げたり、軟化圧接したりして製作すればよい。

    【0063】上記のように構成された前半歯科矯正用マウスピースA1は、矯正治療開始から歯列のレベリング段階終了までの治療の前半に用いるもので、かかる前半歯科矯正用マウスピースA1を上下の歯で噛んで、各セグメントの溝状の矯正用ガイド部14、24、34、4
    4に歯列が入って被されると、歯列からはみ出て不正位にある歯は、各セグメントの滑らかな内面に圧迫される。 これを毎日繰り返すことによって矯正対象歯は徐々に溝の方向に沿って移動し、3カ月から6カ月かけて歯列が大まかに整列されることとなる。

    【0064】前半歯科矯正用マウスピースA1は、前歯列の大きさに合わせて数種類を準備しておけばよい。 一般に、治療開始前の歯列状況は、顎の形と歯の大きさなどに基づき幾つかの類型に分けられるので、予めかかる類型に対応した前半歯科矯正用マウスピースA1を作成しておけばよい。 また、側方歯列の大きさは、矯正治療に際して小臼歯を抜歯する場合と、しない場合とで異なるので、それぞれの症例に合わせて左右の側方歯部セグメント30、40の長さを適宜カットするなどして調整すればよい。

    【0065】かかる前半歯科矯正用マウスピースA1の装着は、予め離間距離調節手段で矯正治療の段階に応じて各セグメント間が調節されたものを、歯に噛ませるだけで簡単に装着ができる。 緊結部などはないため、取り外しも簡単である。

    【0066】図3(A)には、後半歯科矯正用マウスピースA2の外観状況を斜視図で示した。 外観上は、前半歯科矯正用マウスピースA1とほぼ同様の構成である。
    すなわち、上前歯部セグメント100、下前歯部セグメント200、右側方歯部セグメント300、左側方歯部セグメント400とから構成されている。

    【0067】各セグメントは、高弾性シリコンラバーで製作され、前歯部セグメントは前歯列を、側方歯部セグメントは側方歯列を被い、それぞれの歯列の歯が溝状に形成された矯正用ガイド部の内面に誘導されて整列するように形成しておけばよい。 シリコンラバーで製作することにより、表面が滑らかで口内粘膜への接触も柔らかく行うことができる。 シリコンラバーには、市販品を使用すればよい。

    【0068】上前歯部セグメント100、下前歯部セグメント200と、左右の側方歯部セグメント300、4
    00との間は、各セグメントの離間距離調節手段としての矯正用線状部材510a、510b、520a、52
    0b、530で、矯正用線状部材途中に矯正用プライヤーで拡縮可能なループ部600を介在させて連結されている。

    【0069】上前歯部セグメント100は、図3
    (A)、図4(A)にそれぞれ示すように、ほぼ前歯の弓状歯列に合わせた略アーチ状に形成されている。 その前縁部、後縁部にはそれぞれ前提部120、後堤部13
    0が設けられ、前提部120と後堤部130との間が、
    図3(B)に示すように、治療終了段階での矯正された歯列を構成する歯の歯冠に接する形状の溝状に形成された矯正用ガイド部140になっている。 前提部内面12
    0a、後堤部内面130aは、当接する歯が滑り易いように滑らかな内面に形成されている。 上顎前歯列は、この矯正用ガイド部140に入り、その内面に上顎前歯の歯冠が当接することとなる。 上顎前歯の歯冠が矯正用ガイド部140に収まっている様子を図3(C)に示した。 図中Bは上顎前歯を示し、bはその歯茎を示している。

    【0070】下前歯部セグメント200も、図3
    (A)、図4(A)にそれぞれ示すように、ほぼ前歯の弓状歯列に合わせた略アーチ状に形成されている。 その前縁部、後縁部にはそれぞれ前提部220、後堤部23
    0が設けられ、前提部220と後堤部230との間が、
    図3(B)に示すように、治療終了段階での矯正された歯列を構成する歯の歯冠に接する形状の溝状に形成された矯正用ガイド部240になっている。 前提部内面22
    0a、後堤部内面230aは、当接する歯が滑り易いように滑らかな内面に形成されている。

    【0071】下顎前歯列は、この矯正用ガイド部240
    に入り、その内面に下顎前歯の歯冠が当接することとなる。 下顎前歯の歯冠が矯正用ガイド部240に収まっている様子を図3(C)に示した。 図中、Cは下顎前歯を示し、cはその歯茎を示している。

    【0072】一方、左右の側方歯部セグメント300、
    400も、図4(B)に示すように、噛合部310、4
    10がそれぞれ設けられ、上下の歯を噛み合わせた状態で、それぞれ右側方歯部、左側方歯部の上下の歯間に介在させられるようになっている。 噛合部310、410
    には、前提部320、420、後堤部330、430がそれぞれ設けられ、前提部320、420と後堤部33
    0、430との間が側方歯の歯冠の形に形成された矯正用ガイド部340、440に形成されている。 上下の歯を噛み合わせた状態で、この矯正用ガイド部340、4
    40内に上下の左右側方歯列が入ることとなる。

    【0073】後半歯科矯正用マウスピースA2は、歯科矯正治療の後半で使用するが、この段階では、歯列状況は前半歯科矯正用マウスピースA1によりかなりの程度矯正されている。 かかる段階では、矯正治療終了後のデザインに、より近づいた形での精密な歯の移動が要求されることとなる。

    【0074】そのため、後半歯科矯正用マウスピースA
    2の矯正用ガイド部140、240、340、440
    は、精密な矯正治療を行うため、前半歯科矯正用マウスピースA1で大まかに整列させられた歯列、すなわちレベリング治療終了後の歯列模型から、矯正治療終了時の歯列をデザインして作成した予測歯列模型に合わせて、
    矯正治療終了時の最終形態における歯列の形状を移して成形されている。

    【0075】予測歯列模型は、矯正治療開始時の歯列模型から歯列基底部の顎骨の形や歯の大きさを分析し、それに基づいて矯正治療終了時の望ましい歯列と咬合を検討して、歯列模型上で歯の配列を修正して製作する。 最近では、コンピュータを使ったシミュレーションプログラムが開発されている。

    【0076】かかるシミュレーションプログラムは、例えば株式会社ユニスンから市販されているCasperなどの、既製のソフトを使用すればよい。 そして、矯正治療前の歯列模型の3次元情報をレーザービームを使ってコンピュータに入力し、この入力データに基づいてコンピュータの画面上で矯正治療後の予測歯列模型を作成し、
    陽型として出力する。 この陽型を用いれば、目的とする精密な後半歯科矯正用マウスピースを製作することができる。

    【0077】すなわち、後半歯科矯正用マウスピースA
    2は、上記の如く、患者の予測歯列模型を基準として作成する。 基準とする歯列模型から複製の石膏模型を作成する。 その上下一組の石膏模型を、義歯を製作するときの要領で咬合器に付着して、口内での上下歯列の対向関係を再現する。 この上で、前歯部と側方歯部のセグメントとそれらを連結する線状部材の形状を設計する。 設計に従って最初に線状部材を屈曲製作し、その端を埋没させて各セグメントを製作する。 セグメントは、使用する材料によって石膏模型に盛り上げたり、軟化圧接したりして製作すればよい。

    【0078】このようにして製作された後半歯科矯正用マウスピースA2の各セグメントの内面は、矯正治療終了時の歯列を構成する歯の歯冠の形に対応しているので、全ての歯の歯冠をしっかりと把持することができる。 このため、歯の位置や傾斜、捻転を精密に修正し、
    上下の歯を正確に緊密に噛ませることができる。 かかる構成の後半歯科矯正用マウスピースの使用期間は、6カ月から12カ月とみなされる。

    【0079】かかる後半歯科矯正用マウスピースA2
    は、矯正治療の進行状況に応じて各セグメント間を予め離間距離調節段で調節しておき、それを例えば自宅などで、歯に噛ませるだけで簡単に装着できる。 緊結部などはないため、取り外しも簡単である。

    【0080】(実施の形態2)本実施の形態の歯科矯正用マウスピースは、図5(A)に示すように、上前歯部セグメント70と、上右側方歯部セグメント71と、上左側方歯部セグメント72とが、矯正用線状部材73
    a、73bで離間距離の調節可能に連結されている。 さらに、左右の側方歯部セグメント71、72も、途中にループ部74を設けた矯正用線状部材75で連結されている。

    【0081】上前歯部セグメント70は、前記実施の形態1で説明した上前歯部セグメント10、100と同様に構成しておけばよい。 すなわち、矯正用ガイド部を溝の形に構成した前半歯科矯正用マウスピースA1の上前歯部セグメント10、あるいは矯正用ガイド部を矯正治療終了時の歯列を構成する歯の歯冠形状に合わせた後半歯科矯正用マウスピースA2の上前歯部セグメント10
    0と同様に構成しておけばよい。 また、左右の側方歯部セグメント71、72は、下顎側方歯列の噛み合わせ部分が形成されておらず、セグメント底面76が平らに形成されている。

    【0082】図5(B)に示す場合は、下前歯部セグメント80と、下右側方歯部セグメント81と、下左側方歯部セグメント82とが、矯正用線状部材83a、83
    bで離間距離の調節が可能に連結されている。 下前歯部セグメント80は、前記実施の形態1で説明した下前歯部セグメント20、200と同様に構成しておけばよい。 すなわち、矯正用ガイド部を溝の形に構成した前半歯科矯正用マウスピースA1の下前歯部セグメント2
    0、あるいは矯正用ガイド部を矯正治療終了時の歯列を構成する歯の歯冠形状に合わせた後半歯科矯正用マウスピースA2の下前歯部セグメント200と同様に構成しておけばよい。 また、左右の側方歯部セグメント81、
    82は、左右の上顎側方歯列の噛み合わせ部分が形成されておらず、セグメント上面84が平らに形成されている。

    【0083】図5(A)、(B)に示した構成の歯科矯正用マウスピースは、各々3個のセグメントから構成され、例えば、上下いずれか一方の歯列が義歯などの理由で現状が固定されており、相対する一方の歯列のみを矯正対象歯とする必要があるときに使用する。 本来的には、前記実施の形態1で示すように、上下、左右、側方のセグメントを調節する矯正治療の方が好ましい。

    【0084】(実施の形態3)本実施の形態では、前記実施の形態1で説明した歯科矯正用マウスピースを用いた歯科矯正用装置、および本発明の歯科矯正用装置を使用した矯正治療法について詳細に説明する。

    【0085】本発明の歯科矯正用装置は、前記実施の形態1で説明した歯科矯正用マウスピースと、この歯科矯正用マウスピースを装着した矯正部位、およびその周辺組織に、歯の移動を促進する波動エネルギーを与える波動刺激供給手段とから構成されている。

    【0086】かかる波動刺激供給手段としては、人間の拍動などに匹敵する程度の極めて微小な波動エネルギーを供給することができる手段であればよく、超音波などの波動刺激を供給する手段が好ましい。 例えば、米国E
    xogen社が開発した超音波骨折治療器が、超音波刺激装置として有効に使用することができる。 日本国内では、帝人株式会社を通じて、セーフス(登録商標)として販売されている超音波骨折治療器を利用することができる。

    【0087】本装置は、マイクロコンピュータ制御により、周波数1.5MHzの超音波を、バースト幅200
    μ秒で、繰り返し周期1.0kHzで照射できるように構成されている。 セーフスは、図6の治療状況に示すように、発生させる超音波の制御を行う本体90に着脱自在に接続された超音波供給ヘッド91とから構成され、
    超音波供給ヘッド91を、予め超音波用ゼリーを塗った照射部に当てることにより、超音波照射が簡単に行える。 セーフスは、携帯可能な小型に構成されているため、貸し出して自宅での使用も可能である。

    【0088】現在のMB装置は、アーチワイヤーを調節してそのたわみを歯槽骨に持続的な負荷として伝え、骨組織に改造を起こさせて歯を移動する。 本発明の歯科矯正用マウスピースも、高弾性シリコンラバーのセグメントによって歯槽骨に持続的な負荷を加える点では同様であるが、超音波刺激装置を用いて歯槽骨に波動刺激を断続的に与えることによって、一日の装着時間が僅かであっても、歯槽骨の改造を促進することができる新しい治療法を創出している。

    【0089】かかる構成の超音波刺激装置と、前記実施の形態1で説明した歯科矯正用マウスピースとを併用した本発明の歯科矯正用装置による新規な歯科矯正治療法について、以下詳細に述べる。

    【0090】矯正治療の開始に当たって、幾種類かの前半歯科矯正用マウスピースから、患者に合わせた前半歯科矯正用マウスピースを選択する。 選択に際しては、患者の顎の形、上下の歯の噛み合わせ状況などに応じて、
    それに見合った矯正治療方針に適う前半歯科矯正用マウスピースを選択する。

    【0091】選択した前半歯科矯正用マウスピースの矯正用線状部材を患者の口腔に適うように調節して、上前歯部セグメント10、下前歯部セグメント20、左右の側方歯部セグメント30、40の各々の離間距離を調整する。 調整後、患者に装着させ、前歯部および左右側方歯部に分けて、それぞれの歯肉相当部に相対する口外部分に超音波用ゼリーを塗布し、この部分に超音波刺激装置本体90に接続されている超音波刺激供給ヘッド91
    の先端を当てて、超音波をそれぞれ例えば20分間照射する。

    【0092】こうして一回の診療を終了する。 次回の診療日までは、自宅で、上記要領で前半歯科矯正用マウスピースの装着と、装着時の超音波照射を行わせる。 歯科矯正用マウスピースの装着は、いつでも都合の良い時間帯を選んで、少なくとも一日に1時間程度は行ってもらうことが好ましい。 就寝時間に装着させるようにしても構わない。

    【0093】本発明の歯科矯正用マウスピースは、簡単に取り外しが行え、装着時間も従来のMB装置に比べて極めて短い時間で済むため、例えば、自宅でテレビを見ながら装着することも可能となり、患者に時間的負担をかけることなく自宅治療を続けさせることができる。 前半歯科矯正用マウスピースA1を一日に複数回装着しても構わないが、超音波刺激装置の併用はその都度行う必要がない。

    【0094】かかる要領で、自宅で歯科矯正用マウスピースの装着と、超音波照射とを続けると、歯列は前半歯科矯正用マウスピースA1の溝に誘導されて矯正対象歯が次第に移動する。 次回の通院時に、矯正治療の進行状況を確認して、離間調節手段の矯正用線状部材を調節して、再び歯科矯正用マウスピースの装着と、超音波照射との自宅継続を行わせる。 かかる状況を約6カ月位行うと、歯列のレベリング段階が終了することなる。

    【0095】歯列のレベリング段階が終了すると、その時点の歯列模型から矯正治療終了時の予測歯列模型を製作し、それに合わせて矯正治療終了時の最終的な歯列弓形態を移した後半歯科矯正用マウスピースを製作する。
    後半歯科矯正用マウスピースA2の矯正用線状部材を調節して、患者の口内に装着し、併せて前歯部および左右側方歯部の歯肉相当部に口外から超音波を照射する。 前半歯科矯正用マウスピースA1装着と同様の要領で、次回通院時まで自宅で矯正治療を継続する。 後半歯科矯正用マウスピースA2の装着時間も、前半歯科矯正用マウスピースA1と同様でよく、超音波照射も同様に行えばよい。

    【0096】通院の都度、矯正治療の進行状況を確認し、それに合わせて後半歯科矯正用マウスピースA2の矯正用線状部材を調節して、矯正治療を続ける。 後半歯科矯正用マウスピースA2のセグメントの内面は、治療終了時点の歯列に対応した状態で個々の歯の歯冠形状に形成されているため、かかる後半歯科矯正用マウスピースA2を装着することにより、治療終了後の歯列デザインに確実に合致する方向で矯正治療が進行して行く。

    【0097】本発明者が創出した上記構成の歯科矯正治療法は、従来の技術からは予測すらできなかった極めて短時間で、患者に対する負担が極めて少ない、優れた歯科矯正治療法である。

    【0098】なお、上記説明では、超音波刺激装置と前記実施の形態1で述べた歯科矯正用マウスピースとを併用した矯正治療法について説明したが、かかる超音波刺激装置などの波動刺激供給手段を併用することなく単独で本発明の歯科矯正用マウスピースを使用しても矯正治療効果は得られる。

    【0099】例えば、治療開始から治療終了までを、治療の進行段階に応じて複数の治療段階に分け、各治療段階に対応した構成の矯正用マウスピースを適宜使用することにより、矯正治療が行える。 治療段階をどのように設定するかは、個々の患者に合わせて判断すればよい。

    【0100】かかる治療方法で使用する矯正用マウスピースでは、その矯正用ガイド部は、前記実施の形態1で説明した前半歯科矯正用マウスピースA1の矯正用ガイド部の溝形状から、後半用歯科矯正用マウスピースA2
    の矯正用ガイド部の治療終了時に想定される矯正された歯列を構成する歯の歯冠に合わせた形状までを、段階的に追った形状に設定されることとなる。 かかる矯正用ガイド部の形状は、各段階での矯正状況を歯列模型などで的確に把握した上で、予測歯列模型を形成し、この予測歯列模型に合わせて設定すればよい。

    【0101】あるいは、治療段階に合わせて都度矯正用マウスピースを製造するのではなく、幾つかの治療段階を予め設定しておき、それに応じた既製の矯正用マウスピースを形成し、適宜選択して使用するような、所謂イージーオーダー性を加味した矯正用マウスピースを使用する簡易な治療方法も考えられる。

    【0102】また、嚥下時に舌を上下の歯の間に無意識に挟む舌突出癖とか、下唇を噛む咬唇癖とか、日常的な舌や唇の習癖を治す所謂筋機能療法(MFT)と呼ばれる療法を、本発明の歯科矯正用マウスピースと併用するようにしてもよい。

    【0103】本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々変更しても構わない。

    【0104】例えば、上記説明では、歯科矯正治療の段階を大きく二分して、それに合わせた2種の歯科矯正用マウスピースを用意する場合について説明したが、歯科矯正治療の内容に合わせて、1種または3種以上のマウスピースで対応するようにしても構わない。

    【0105】前記説明では、口外から波動刺激を与える方法を示したが、例えば、口内用のプローペにより歯肉に直接照射してもよい。

    【0106】前記説明では、各歯部セグメント間の調節手段として途中にループ部を設けた矯正用線状部材を使用したが、かかる構成以外の調節手段を採用しても構わない。 要は、口内に入れても安全な材質で形成されており、各セグメント間の離間調節が思い通りに行える手段であれば、線状部材以外の調節手段でも構わない。 例えば、矯正用拡大ネジなどの適用も考えることができる。

    【0107】上記説明では、歯科矯正用マウスピースのセグメントを、前歯部と側方歯部の歯列に一対一に対応させた場合を示したが、状況によっては、前歯列に対して2個の矯正用セグメントを対応させるなどの場合があっても構わない。

    【0108】前記説明では、前半歯科矯正用マウスピースA1と、後半歯科矯正用マウスピースA2との2種の歯科矯正用マウスピースを使用する場合について説明したが、治療状況に応じて、3個以上の歯科矯正用マウスピースを順次使い分けて治療を行うようにしても構わない。

    【0109】前記説明では、セグメントに高弾性のシリコンラバーを使用したが、口内粘膜への接触刺激が柔らかで、且つ表面が滑らかな材質であれば、シリコンラバー以外の材質、たとえば、スポーツで使用されている各種のマウスガード用弾性材料でセグメントを形成しても構わない。 何らセグメントの材質を特定するものではない。

    【0110】前記説明では、矯正対象歯の移動に寄与する波動エネルギーを与える波動刺激供給装置として、超音波刺激装置を使用した場合について述べたが、超音波以外の波動エネルギーを与えるものであっても一向に構わない。

    【0111】また、本発明の歯科矯正用マウスピースは、歯科矯正治療以外にも、例えば顎外科手術や顎骨骨折の固定装置としても適用できる。 かかる歯科矯正用マウスピースを用いた本発明の歯科矯正用装置を使用すれば、超音波刺激によって顎外科手術や顎骨骨折の治療促進を図る治療にも適用することができる。

    【0112】

    【発明の効果】本願によって開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、
    以下の通りである。

    【0113】本発明によれば、MB装置などの従来の歯科矯正装置を使用した場合と比べて、矯正装置を常時装着する必要がなく、しかも歯科矯正治療における歯の移動効果が高い。 そのため、歯科矯正治療における患者の生活上の精神的、肉体的負担を大幅に軽減することができる。

    【0114】本発明によれば、予測歯列模型に適合させて成形したマウスピースを使用することにより、従来技術に比べて、理想的な歯列の形成が比較的容易に行える。

    【0115】本発明によれば、従来の持続的な荷重ではなく、波動エネルギーを断続的に利用して歯列矯正部位およびその近隣生体組織の血流増加などに基づく活性化との相乗効果を期待することができるため、従来の矯正装置に比べて、遥かに小さな負荷で歯の移動を行うことができる。

    【0116】本発明によれば、歯列に与える荷重が従来の矯正装置に比べて遥かに小さいため、治療に伴う歯列周辺部の痛みや口内の傷害などの肉体的な負担を軽減し、歯根吸収などの副作用も減少させることができる。

    【図面の簡単な説明】

    【図1】(A)は、本発明の実施の一形態である前半歯科矯正用マウスピースの斜視図であり、(B)は(A)
    のA−A線に沿って切断した場合の状況を示す断面図である。

    【図2】(A)は前半歯科矯正用マウスピースの矯正用ガイド部の状況を示す説明図であり、(B)は、図1
    (A)に示す矢視の方向からみた説明図である。

    【図3】(A)は後半歯科矯正用マウスピースの斜視図であり、(B)は(A)のA−A線に沿って切断した場合の状況を示す断面図であり、(C)は(B)の内部に上下顎の前歯が収まっている状況を示す断面説明図である。

    【図4】(A)は、後半歯科矯正用マウスピースの矯正用ガイド部の状況を示す説明図であり、(B)は、
    (A)に示す矢視の方向から見た説明図である。

    【図5】(A)は上顎歯列にのみ対応した歯科矯正用マウスピースの斜視図であり、(B)は下顎歯列にのみ対応した歯科矯正用マウスピースの斜視図である。

    【図6】(A)は、本発明の歯科矯正用マウスピースを用いた矯正治療法の実施状況を示す説明図であり、
    (B)は(A)の超音波照射部位を部分拡大した断面説明図である。

    【符号の説明】

    10、100 上前歯部セグメント 11 下面部 12、120 前提部 12a、120a 前提部内面 13、130 後堤部 13a、130a 後堤部内面 14、140 矯正用ガイド部 14a 矯正用ガイド部内面 20、200 下前歯部セグメント 21 上面部 22、220 前提部 22a、220a 前提部内面 23、230 後堤部 23a、230a 後堤部内面 24、240 矯正用ガイド部 24a 矯正用ガイド部内面 30、300 右側方歯部セグメント 31、310 噛合部 32、320 前提部 33、330 後堤部 34、340 矯正用ガイド部 40、400 左側方歯部セグメント 41、410 噛合部 42、420 前提部 43、430 後堤部 44、440 矯正用ガイド部 51a、510a 矯正用線状部材 51b、510b 矯正用線状部材 52a、520a 矯正用線状部材 52b、520b 矯正用線状部材 53、530 矯正用線状部材 60、600 ループ部 70 上前歯部セグメント 71 上右側方歯部セグメント 72 上左側方歯部セグメント 73a 矯正用線状部材 73b 矯正用線状部材 74 ループ部 75 矯正用線状部材 76 セグメント底面 80 下前歯部セグメント 81 下右側方歯部セグメント 82 下左側方歯部セグメント 83a 矯正用線状部材 83b 矯正用線状部材 84 セグメント上面 90 超音波刺激装置本体 91 超音波刺激供給ヘッド A1 前半歯科矯正用マウスピース A2 後半歯科矯正用マウスピース B 上顎前歯 b 歯茎 C 下顎前歯 c 歯茎

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