半結晶性樹脂とナノクラスター充填剤とを含む歯科用組成物

申请号 JP2013536622 申请日 2011-08-31 公开(公告)号 JP5824061B2 公开(公告)日 2015-11-25
申请人 スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー; 发明人 ジエ ヤン; ナイムル カリム; トッド ディー.ジョーンズ; ドワイト ダブリュ.ジェイコブス;
摘要
权利要求

未硬化の歯科修復組成物を含む、予備形成された半完成歯科用物品であって、 3000g/モル以下の分子量を有するフリーラジカル重合可能な半結晶性樹脂を含む樹脂系と、 一次粒子の平均粒子径が100nm未満であるナノクラスター充填剤を少なくとも50重量%と、 を含み、 前記未硬化の歯科修復組成物は第2の形状に形成されるのに十分展性である第1の形状を有する、半完成歯科用物品。歯科用物品を作製する方法であって、 第1の形状を有する予備形成された未硬化の半完成歯科用物品を提供することであって、前記未硬化の半完成歯科用物品が、 3000g/モル以下の分子量を有するフリーラジカル重合可能な半結晶性樹脂を含む樹脂系、 一次粒子の平均粒子径が100nm未満であるナノクラスター充填剤を少なくとも50重量%、及び 15重量%〜30重量%の範囲の量で存在する1つ以上の更なるナノスケール微粒子充填剤を含む、前記未硬化の半完成歯科用物品を提供することと、 前記未硬化の半完成歯科用物品を第2の形状に形成することと、 前記未硬化の半完成歯科用物品を硬化によって硬くすることと、 を含む、方法。3000g/モル以下の分子量を有するフリーラジカル重合可能な半結晶性樹脂を含む樹脂系と、 一次粒子の平均粒子径が100nm未満であるナノクラスター充填剤を少なくとも50重量%と、 15重量%〜30重量%の範囲の量で存在する1つ以上の更なるナノスケール微粒子充填剤と、 を含む、硬化性歯科修復組成物。前記半結晶性樹脂が、ポリカプロラクトン単位を含む、請求項1に記載の物品。前記半結晶性樹脂が、ポリカプロラクトンジオールとヒドロキシル反応性(メタ)アクリレートとの反応生成物である、請求項1に記載の物品。前記半結晶性樹脂が、ポリカプロラクトン単位を含む、請求項2に記載の方法。前記半結晶性樹脂が、ポリカプロラクトンジオールとヒドロキシル反応性(メタ)アクリレートとの反応生成物である、請求項2に記載の方法。前記半結晶性樹脂が、ポリカプロラクトン単位を含む、請求項3に記載の組成物。前記半結晶性樹脂が、ポリカプロラクトンジオールとヒドロキシル反応性(メタ)アクリレートとの反応生成物である、請求項3に記載の組成物。

说明书全文

米国特許第7,674,850号及び同第7,816,423号は、後に第2形状にカスタマイズされてから硬化されるのに十分な展性を有する硬化性の自己支持構造を有する、特に歯科用製品を形成するための組成物、及び方法を記載する。

米国特許出願第2009/0305196号は、重合性成分と有機ゲル化剤とを含む歯科用組成物について記載している。ある実施形態では、硬化性組成物は、第1形状を有する硬化性自己支持(即ち、支えなしで立つ)構造の形態であってよい。自己支持構造は、第2形状に再形成されるのに十分な展性を有し、それにより、装置の簡易カスタマイズ、例えば、歯科用人工補装具の簡易カスタマイズされた取り付けを提供する。第2形状に再形成されると、例えば、改善された機械的特性を有する硬化組成物を形成するために、標準的な光重合条件下でフリーラジカル硬化機構を使用して、組成物を硬化することができる。

様々な硬化性歯科修復組成物及び予備形成された歯科物品が記載されてきたが、産業界は、改善された特性を有する硬化性歯科用組成物、歯科用物品、及びそのような組成物又は物品の作製又は使用方法に利点を見出すであろう。

一実施形態では、硬化性歯科修復組成物は、2000g/モル以下の分子量と、少なくとも50重量%のナノクラスター充填剤と、を有するフリーラジカル重合可能な半結晶性樹脂を含む樹脂系を含むと説明されている。

別の実施形態では、予備形成された半完成歯科用物品は、記載される未硬化の歯科修復組成物を含むと説明されている。未硬化の歯科修復組成物は、第2の形状に形成されるのに十分展性である第1の形状(ほとんど網形状の歯冠)を有する。

更に別の実施形態では、(例えば完成した)歯科用物品の作製方法は、第1の形状を有する未硬化の半完成歯科用物品であって、前述の未硬化の歯科修復組成物を含む未硬化の半完成歯科用物品を提供することと、未硬化の半完成歯科用物品を第2の形状に形成することと、硬化により硬くすることと、を含む。

これらの実施形態のそれぞれにおいて、半結晶性樹脂はポリカプロラクトン単位を含むことが好ましい。樹脂系は、通常、少なくとも1つのマルチ(メタ)アクリレート芳香族モノマーを含む。好ましいマルチ(メタ)アクリレート芳香族モノマーには、ビスフェノールAから誘導される低収縮樹脂が挙げられる。本組成物は、通常、1つ以上の更なるナノスケール微粒子充填剤を含む。歯科修復組成物の成分の好ましい濃度の範囲は、本明細書に記載される。

本発明は、樹脂系と、充填剤系と、反応開始剤系と、を含む、第1の形状、好ましくは歯冠の形状を有する硬化性の自己支持(即ち独立型)構造の形態の組成物を提供する。樹脂系(1つ以上の樹脂)、充填剤系(1つ以上の充填剤)、及び反応開始剤(1つ以上の反応開始剤)は、初期の自己支持構造を形成するように組成物を比較的容易に成型することができる;自己支持構造が、(反応開始剤系を活性化する条件の非存在下で、かつ、重以外の外部の力の非存在下で)少なくとも約2週間、室温でその第1の形状を維持する;及び自己支持構造が、(好ましくは約15℃〜38℃の温度で、より好ましくは約20℃〜38℃の温度で、最も好ましくは室温で)第2の形状に再形成されるのに十分な展性を有するように選択される。

本明細書では、「樹脂系」は1つ以上の樹脂を含んでよく、そのそれぞれが1つ以上のモノマー、オリゴマー及び/又は重合性ポリマーを含んでよい。

用語「自己支持」とは、組成物が寸法安定性を有し、独立しているときに(即ち、包装又は容器の支持なしに)室温(即ち、約20℃〜約25℃)にて少なくとも約2週間にわたって有意な変形を伴わずにその形状(例えば、予備形成された歯冠の形状)を維持することを意味する。好ましくは、本発明の組成物は、少なくとも約1ヵ月間、より好ましくは少なくとも約6ヵ月間、室温で寸法安定性である。好ましくは、本発明の組成物は、室温を超える、より好ましくは最高約40℃、更により好ましくは最高約50℃、更により好ましくは最高約60℃の温度にて寸法安定性である。この定義は、反応開始剤系を活性化する条件がないときに、及び重力以外の外力がないときに当てはまる。

用語「十分な展性(malleability)」とは、自己支持構造を、中程度の力(即ち、軽い指圧から、歯科用コンポジット用具のような小型ハンドツールの手動操作により適用される力までの範囲の力)の下でカスタム成形し、例えば、患者の口部に適合できることを意味する。

硬くする(例えば硬化)前の高展性特性(好ましくは室温又は体温を超える加熱なしに)及び硬くした後の高強度(好ましくは少なくとも約25MPaの曲げ強度)との組み合わせにより、多くの用途の可能性を有する組成物が提供される。これらの用途としては、一時的、中間及び永続的歯冠及びブリッジ、インレー、オンレー、ベニヤ、インプラント用物品、義歯及び人工歯が挙げられるがこれらに限定されない歯科修復材及び歯科補綴物、歯列矯正器具(例えば、リテーナ、ナイトガード)、歯の複製又はスプリント、顎顔面補綴物、並びに他のカスタマイズ構造が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の組成物はまた、例えば充填材(具体的には、充填性材料)として使用することもできる。

本発明の組成物は、様々な歯科用製品の形態であることができ、これはロープ状(充填材に関して)、球形、シート状、又は予備形成された物品の形態(予備形成された歯冠のもののように複雑な又は半完成状態の形状)であることができる。通常、本明細書で言及される歯科用製品は硬化性形態であるが、この用語は、硬化された状態の最終的な歯科用製品にも使用することができる。

好ましい歯科用製品には、予備形成された歯冠、予備形成されたインレー、予備形成されたオンレー、予備形成されたブリッジ、予備形成されたベニヤ、予備形成された歯列矯正器具、予備形成された顎顔面補綴物、予備形成された歯の複製、又は予備形成された歯のスプリントが挙げられる。あるいは、歯科用製品は、充填材(充填性材料など)であってもよい。特に好ましい歯科用製品には、予備形成された歯冠及び予備形成されたブリッジ、より好ましくは予備形成された歯冠が挙げられる。

歯科用インプラントのための好ましい予備形成された物品には、国際特許公開第WO2010/093534号に記載されるように、ヒーリングキャップ、並びに歯の形をした歯肉縁上面(supragingival surfaces)を有する物品が挙げられる。更に、そのような物品は、米国仮特許出願第61/255638号(2009年10月28日出願)及び米国仮特許出願第61/372706号(2010年8月11日出願)に記載されているような埋め込まれたインプラント支台を含んでもよい。

1つの好ましい実施形態では、本発明は、樹脂系と、充填剤系と、反応開始剤系と、を含む組成物を含む予備形成された歯冠を提供し、この組成物は、第1の形状と、第2の形状に形成されるのに十分な展性と、を有する硬化性自己支持構造の形態である。

本発明はまた、歯科用製品を調製する方法を提供する。この方法は、樹脂系と、充填剤系と、反応開始剤系と、を含む組成物を提供することであって、組成物が、第1の半完成形状(例えば、予備形成された歯冠又は予備形成されたブリッジの形状)を有する硬化性で自己支持の展性構造の形態である組成物を提供することと、自己支持の展性構造を第2の形状に形成することと、第2の形状を有する自己支持構造を硬くして、歯科用製品を形成することと、を含む。好ましくは、自己支持の展性構造を第2の形状に形成することは、約15℃〜38℃の温度で起こる。本明細書において、自己支持の展性構造を第2の形状に形成することは、軽い指圧から、歯科用複合器具(dental composite instrument)などの小型の手工具を手で操作して適用する力の範囲の力の下で起こる。

本発明は、樹脂系と、充填剤系と、反応開始剤系と、を含み、第1の形状、好ましくは歯冠の形状を有する硬化性の自己支持(即ち独立型)構造の形態の組成物を提供する。樹脂系(1つ以上の樹脂)、充填剤系(1つ以上の充填剤)、及び反応開始剤系(1つ以上の反応開始剤)は、初期の自己支持構造を形成するために組成物を比較的容易に成型することができる;自己支持構造が、(反応開始剤系を活性化する条件がないときに、及び重力以外の外力がないときに)少なくとも約2週間、室温で第1形状を維持する;並びに自己支持構造が、(好ましくは約15℃〜38℃の温度で、より好ましくは約20℃〜38℃の温度で、最も好ましくは室温で)第2形状に再形成されるのに十分な展性を有するように選択される。

本発明の組成物は、予備形成された歯科用製品に特に適している。本明細書で使用するとき、予備形成された歯科用製品は、所望の半完成形状(第1形状)で歯科医に提供され、次いで患者に適合するように修正する(例えば、成型する、適応させる、削る)(第2形状)ことができるものである。本明細書では、予備形成物品の半完成形状は、最終形状の物品があるべき形状の複製であり、ロープ、小球又はシートの形状ではない。これについては、以降で更に詳細に説明される。典型的には、これは、本発明の組成物が、好ましくはポジティブ及びネガティブ印象材を備える型を用いて、ある形状に形成されており、得られた成形材料が、著しく変形することなく、成形装置、好ましくは型から取り出されることを意味する。

本発明の組成物は、予備形成された歯冠及び複雑な形状を有する他の予備形成された歯科用製品に特に有用であるが、それらは、充填材等を調製するための材料として用いることができる。成型、型からの取り出し、梱包、輸送等に関して言うと、典型的には、充填材はロープ形態で歯科医に提供されるため、後者の要件は、予備形成された歯冠又は複雑な形状の他の予備形成された歯科用物品に必要な要件より厳しくない。

一般に、本発明の硬化性自己支持組成物は、比較的容易に変形することができ(即ち、展性である)、低弾性回復を示すという点で、ワックスの融点を下回る温度で、ワックスに類似するレオロジー特性を有する。しかしながら、本発明の組成物は、軟化点より上で自由流動流体(即ち、液体)ではない。つまり、本発明の組成物は、中程度(例えば、手による)圧力下で感知できるほどの質量流を示すが、軟化点を超えると液体流ではない。

通常、本発明の硬化性組成物の動弾性及び動粘性係数は、広い範囲にわたって異なる。その上、硬化性組成物は、通常、概して粘着性がない。好ましくは、動弾性係数(即ち弾性係数)G’は、約0.005Hzの周波数にて少なくとも約100キロパスカル(kPa)、より好ましくは少なくとも約200kPa、最も好ましくは少なくとも約1000kPaである。好ましくは、弾性係数G’は、約0.005Hzの周波数にて約50,000kPa以下、より好ましくは10,000kPa以下、最も好ましくは約5000kPa以下である。好ましくは、動粘性係数(即ち粘性係数)G”は、約0.005Hzの周波数にて少なくとも約50kPa、より好ましくは少なくとも約200kPa、最も好ましくは少なくとも約1000kPaである。好ましくは、粘性係数G”は、約0.005Hzの周波数にて約50,000kPa以下、より好ましくは10,000kPa以下、最も好ましくは約5000kPa以下である。

本発明の硬化性組成物の所望の自己支持(即ち、独立型)構造は、三次元網状(連続又は非連続)構造であってよい非共有構造を含む形態を作製することにより維持することができる。これは、半結晶性樹脂成分及びナノクラスターを含む1つ以上の充填剤の両方を使用することにより得られる。

適切な反応開始剤系、例えばフリーラジカル光開始剤により、本発明の硬化性組成物を硬く(例えば硬化)して、望ましい製品を形成することができる。好ましくは、結果として得られる硬化された組成物(即ち、硬化された構造)は、少なくとも約25メガパスカル(MPa)、より好ましくは少なくとも約40MPa、更により好ましくは少なくとも約50MPa、最も好ましくは少なくとも約60MPaの曲げ強度を有する。

特定の用途(例えば歯冠)に関しては、結果として得られる硬化された組成物は、好ましくは少なくとも約100MPaの圧縮強度を有するエナメル様固形物である。

特定の用途(例えば歯冠)に関しては、結果として得られる硬化された組成物は、好ましくは少なくとも約1000MPaの曲げ弾性率を有するエナメル様固形物である。更に、曲げ強度は好ましくは少なくとも80MPaである。曲げ強度は通常は、15,000MPa以下である。更に、曲げ強度は通常は、200MPa以下である。

本発明の硬化性組成物は、(例えば、フリーラジカル)重合性樹脂系を含む。この樹脂系は、十分な強度及び加分解安定性を有する硬化された材料を形成することができる1つ以上の硬化性有機樹脂を含んで、口腔内での使用に好適にする。

本明細書で使用するとき、樹脂は、1つ以上のモノマー、オリゴマー、及び/又はそれらの組み合わせを含む重合性ポリマーを含む。この状況において、オリゴマー及びポリマーは両方とも使用されるが、用語「ポリマー」及び「ポリマーの」は、本明細書において2つ以上の反復単位を有する任意の材料を指すために使用され、したがってオリゴマーを包含する。このように、別段の指示がない限り、ポリマーはオリゴマーを含む。更に、用語ポリマーは、本明細書では、ホモポリマーとコポリマーの両方を包含するように使用され、用語コポリマーは、本明細書では、2つ以上の異なる反復単位を有する材料(例えば、コポリマー、ターポリマー、テトラポリマー)を包含するように使用される。

好ましい有機樹脂は、好ましくはフリーラジカル機構により硬化可能(例えば、重合可能及び/又は架橋可能)であり、モノマー、オリゴマー、及び/又はポリマーが含まれる。樹脂系は、反応性成分(即ち、重合及び/又は架橋することができる成分)を含み、これは結晶性であっても結晶性でなくてもよい。非結晶性の反応性成分を含む樹脂系は、結晶性成分を任意に含んでもよく、これは反応性であっても反応性でなくてもよい。

好ましくは、樹脂成分の少なくともいくつかは、エチレン性不飽和を含み、(フリーラジカル)付加重合を受けることが可能である。好適な樹脂は、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーを含む(即ち、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む)のが好ましい。

本明細書に記載される歯科用組成物の重合性樹脂は、少なくとも1つのマルチ(メタ)アクリレート芳香族モノマーを含む。重合性樹脂の成分及びその濃度の選択は、一般に、重合収縮を最少化するように選択される。本明細書に記載の歯科用組成物は、通常、少なくとも1つのジ(メタ)アクリレート芳香族モノマーを含む。

重合収縮は、硬化後の体積の変化を測定するWatts Shrinkageなどの様々な方法により測定できる。本明細書に記載される好ましい低体積収縮の(例えば充填された)歯科用組成物(詰め物及び歯冠などの修復に有用)は、通常、2.5%未満のWatts Shrinkageを示す。好ましい実施形態では、充填された歯科用組成物のWatts Shrinkageは、2.0%未満、又は1.9%未満、又は1.8%未満、又は1.7%未満、又は1.6%未満である。

いくつかの実施形態では、マルチ(メタ)アクリレートモノマーは、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン(BisGMA)などのビスフェノールAモノマーから得られる。BisGMAの代表的な構造は、約512g/モルの(即ち、計算された)分子量を有して、以下のように表される:

ビスフェノールAから得られる別の部類のモノマーは、参照により本明細書に組み込まれる国際特許公開第WO2008/08288号に記載されるものなどの(例えば、ペンダント(メタ)アクリレート部分を有する)分枝状マルチ(メタ)アクリレートモノマーである。これらの分枝状マルチ(メタ)アクリレートモノマーは、以下の一般式を有し得、

式中、各Xは、独立して酸素原子(O)又は窒素原子(N)を表し、Y及びAはそれぞれ、独立して有機基を表し、R1は、−C(O)C(CH3)=CH2を表し、及び/又は(ii)q=0であり、R2は、−C(O)C(CH3)=CH2を表し、m=1〜5であり、n=0〜5であり、p及びqは、独立して0又は1であり、R1及びR2はそれぞれ、独立してH、−C(O)CH=CH2、又は−C(O)C(CH3)=CH2を表す。国際特許公開第WO2008/08288号に記載されているもののようないくつかの実施形態では、もし(i)p=0である場合は、Yは−NHCH2CH2−を表さない。

しかしながら、ウレタン結合を有する分枝状マルチ(メタ)アクリレートモノマー(例えば、ペンダント(メタ)アクリレート部分を有する)は、欧州特許第2008636に記載されている。

好ましい実施形態では、少なくとも1つのR1又はR2は、−C(O)CH=CH2、又は−C(O)C(CH3)=CH2である。

歯科用組成物が、ビスフェノールAから得られる低収縮のマルチ(メタ)アクリレートモノマーを含む場合は、歯科修復組成物は、ビフェニルジ(メタ)アクリレートモノマーなどのその他のマルチ(メタ)アクリレート芳香族モノマーを含まなくてもよい。

他の実施形態では、重合性樹脂系は、ビスフェノールAから得られるフリーモノマーであり得る。例えば、低体積収縮のモノマーは、2010年3月31日に出願され、参照により本明細書に組み込まれる、米国仮特許出願第61/319534号に記載されるように、ジ−又はトリ−(メタ)アクリレートイソシアヌレートモノマーであり得る。

重合性樹脂系は、必要に応じて、他の重合性成分を含んでもよい。好適な重合性樹脂成分には、モノ−、ジ−、又はポリ−(メタ)アクリレート(アクリレート及びメタクリレートを含む)、例えばメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、アリルアクリレート、グリセロールモノ−及びジ−アクリレート、グリセロールトリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、ビス(1−(2−アクリルオキシ))−p−エトキシフェニルジメチルメタン、ビス(1−(3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシ))−p−プロポキシフェニルジメチルメタン、トリス(ヒドロキシエチルイソシアヌレート)トリメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート(例えば、Bis−EMA6)、ポリエチレングリコールジメタクリレート、分子量200〜500のポリエチレングリコールのビスアクリレート及びビスメタクリレート、米国特許第4,652,274号(Boettcherら)に記載のものなどのアクリレート化モノマーと米国特許第4,642,126号(Zadorら)に記載のものなどのアクリレート化オリゴマーとの共重合性混合物、不飽和アミド、例えば(メタ)アクリルアミド(即ちアクリルアミド及びメタクリルアミド)、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、ジエチレントリアミントリス−アクリルアミド、及びβ−メタクリルアミドエチルメタクリレート、ジアセトンアクリルアミド、及びジアセトンメタクリルアミド、ウレタン(メタ)アクリレート、並びにビニル化合物、例えばスチレン、ジアリルフタレート、ジビニルスクシネート、ジビニルアジペート、及びジビニルフタレートが挙げられる。樹脂系に望ましいなら、2つ以上のそのような物質の混合物を使用してもよい。

いくつかの実施形態では、歯科修復組成物は、BisGMAなどの低収縮の芳香族ジ(メタ)アクリレートモノマーを1つ以上のその他のフリーラジカル重合可能な(例えばメタクリレート)モノマーと組み合わせて含む。特定の実施形態では、その他の硬化性成分には、ジウレタンジメタクリレート(UDMA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、及び本明細書において「Bis−EMA6」とも呼ばれる米国特許第6,030,606号(Holmes)に記載されるエトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート、並びに2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン(プロクリレート)を挙げることができる。いくつかの実施形態では、歯科修復組成物は、BisGMAをエトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート及びジウレタンジメタクリレートと組み合わせて含む。

その他のモノマー(後に記載されるように半結晶性樹脂を含む)の濃度は、組成物の総重量を基準として、一般に20重量%以下又は15重量%以下である。いくつかの実施形態では、その濃度は、15重量%未満、又は14重量%未満、又は13重量%未満である。いくつかの好ましい実施形態では、その濃度は、通常、12重量%未満、又は11重量%未満、又は10重量%未満である。他の好ましい実施形態では、その濃度は、通常、9重量%未満、又は8重量%未満、又は7重量%未満、又は6重量%未満、又は5重量%未満である。BisGMAよりも分子量が低いその他のモノマーを1重量%、又は2重量%、又は3重量%含めると、硬化中の歯科用物品又は組成物の重合速度を速めることができる。

好ましくは、(有機)重合性樹脂系の総量は、組成物の総重量を基準として、少なくとも約10重量%、より好ましくは少なくとも約12重量%、最も好ましくはす少なくとも約14重量%である。好ましくは、樹脂系の総量は、約30重量%以下、より好ましくは約25重量%以下である。好ましい実施形態では、重合性樹脂の総量は、25重量%未満、又は24重量%未満、又は23重量%未満、又は22重量%未満、又は21重量%未満、又は20重量%未満である。

上に列記した成分は、通常、非結晶性(即ち非晶質)である。重合性樹脂系はまた、結晶性成分を含んで、最初の予備形成された形状を維持するための非共有三次元構造体を付与する。この結晶性成分は、重合(架橋も含む)することができる反応性基を有してもよく、有さなくてもよい。好ましくは、結晶性成分は重合性である。好ましくは、結晶性成分は、ポリマー(オリゴマーを含む)である。より好ましくは、結晶性成分は、重合性ポリマー物質である。

「結晶性」とは、物質が、示差走査熱量計(DSC)により組成物中で測定するとき、20℃以上の結晶融点を示すことを意味する。観察された吸熱のピーク温度は、結晶融点と考えられる。結晶性相は、物質が構築される隣接する化学部分に極めて規則的なレジストリが存在する立体配座をとる複数の格子を含む。格子内のパッキング配置(packing arrangement)(迅速配向)は、その化学面及び幾何学面の両方において極めて規則的である。

より具体的に言うと、重合性樹脂系は、半結晶性成分を含む。半結晶性成分は、通常、20℃以上で非晶質及び結晶性の両方の状態又は相に現れる長いセグメントのポリマー鎖を含む。非晶質相は、ランダムにもつれた塊であると考えられる。非晶質ポリマーのX線回折パターンは、ポリマー構造が秩序化されていないことを示す拡散ハロである。非晶質ポリマーは、ガラス転移温度で軟化挙動を示すが、真の融解又は一次転移は示さない。半結晶性状態の物質は特徴的融点を示し、その点を超えると、結晶性格子は不規則になり、急速にその固有性を失う。かかる「半結晶」物質のX線回折パターンは、一般に、結晶秩序の性質を示す同心円又はスポットの対照配列のいずれかにより区別される。

半結晶性物質は、好ましくは、ポリカプロラクトン反復単位を含むポリエステルポリマーから得られる。ポリカプロラクトン(PCL)ホモポリマーは、約60℃の低融点及び約−60℃のガラス転移温度の生分解性ポリエステルである。PCLは、オクタン酸第一スズなどの触媒を使用するε−カプロラクトンの開環重合により調製することができ、以下の一般式を有するポリカプロラクトンの反復単位を形成する:

本明細書で使用されるポリカプロラクトンポリマーは、通常、カプロラクトンから得られる線状ポリエステルジオールから得られる。カプロラクトンから得られる1つの好適な線状ポリエステルジオールは、Capa(商標)2125であり、90mg KOH/gのヒドロキシル値を有すると報告されている。

好ましい実施形態では、本明細書で使用されるフリーラジカル重合可能な半結晶性樹脂は、35℃〜45℃の融点を有するポリカプロラクトンジオールから得られる。

次いで、一級ヒドロキシル基を、イソシアナトアルキル(メタ)アクリレート(例えば、2−イソシアナトエチルメタクリレート)、メタクリロイルクロリド、又はジメタクリル酸無水物などのヒドロキシル反応性(メタ)アクリレート化合物と反応させて、ヒドロキシル基をフリーラジカル重合可能な(例えば、(メタ)アクリレート)基に変換させる。

フリーラジカル重合可能な半結晶性成分(例えば、ポリカプロラクトンジオールとイソシアナトアルキル(メタ)アクリレートとの反応生成物)は、(実施例で説明される試験方法に従って測定したときに)3,000g/モル以下の数平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、フリーラジカル重合可能な半結晶性成分の数平均分子量は、2700g/モル以下、又は2600g/モル以下、又は2500g/モル以下である。分子量は、典型的には、少なくとも約400g/モル又は500g/モルである。いくつかの好ましい実施形態では、半結晶性成分は、少なくとも1000g/モルの数平均分子量を有する。

総歯科用組成物の半結晶性成分(例えばポリカプロラクトン(メタ)アクリレート樹脂)の濃度は、組成物の総重量を基準として、少なくとも約0.5重量%又は1.0重量%である。好ましくは、半結晶性成分の総量は、約15重量%以下である。いくつかの実施形態では、半結晶性成分の総量は、10重量%又は8重量%以下である。いくつかの実施形態では、半結晶性成分の濃度は、約0.8重量%〜約2.5重量%の範囲である。他の実施形態では、半結晶性成分の濃度は、少なくとも3.0又は3.5重量%であり、通常は、6.0重量%、又は5.5重量%、又は5.0重量%以下である。

いくつかの好ましい実施形態では、半結晶性成分は、その歯科用組成物のただ1つの結晶性成分である。この実施形態では、歯科用組成物は、半結晶性ではない結晶性成分を含まない。その他の実施形態では、半結晶性成分は、他の結晶性成分と組み合わせて使用してもよい。この後者の実施形態では、半結晶性成分は、主要な結晶性成分であり、つまり結晶性成分の総濃度の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、又はそれ以上である。結晶性成分が半結晶性成分と組み合わせて使用されるとき、結晶性成分は、2,000g/モル以下の数平均分子量を有し得る。あるいは、結晶性成分は、最高5,000g/モル又は10,000g/モルの範囲の、より大きい数平均分子量を有してもよい。結晶性及び半結晶性の成分の総量は、通常、歯科用組成物中の半結晶性成分の濃度に関して前述した範囲内である。

樹脂系で用いるのに好適な結晶性モノマーとしては、ウレタン、エーテル、エステル、アミド、イミド基を含有するモノマー、又はこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい結晶性モノマーは、重合及び/又は架橋することができる反応性基を含有する。特に好ましいのは、1を超える反応性官能基を有するモノマーである。

樹脂系で用いるのに好適な結晶性ポリマー(オリゴマーを含む)は、結晶性主鎖(即ち、直鎖)又はペンダント(即ち側鎖)セグメントを有することができる。好ましい物質は、重合及び/又は架橋することができる反応性基も含有する。特に好ましいのは、少なくとも2つの反応性官能基を有する結晶性オリゴマー又はプレポリマーである。

結晶性主鎖又は骨格鎖セグメントを有する好適な結晶性物質の例としては、ポリエステル(ポリカプロラクトンを含む)、ポリエーテル、ポリチオエーテル、ポリアリールアルキレン、ポリシラン、ポリアミド、ポリオレフィン(好ましくは、低級、例えばC2〜C3のオレフィンから形成される)、及びポリウレタンが挙げられるが、これらに限定されない。様々な結晶性材料が、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,674,850号及び同第7,816,423号に記載されている。

半結晶性成分を含む結晶性成分は、室温(即ち、20℃〜25℃)超で少なくとも部分的に結晶化する。(例えば、成分が、成分の骨格鎖(即ち、主鎖)又はペンダント置換基(即ち、側鎖)中のポリマーであるとき)成分中に存在する結晶性部分の凝集により提供され得るかかる結晶化度は、周知の結晶学的、熱量分析的、又は動力学的/機械的方法により測定することができる。本発明の目的のために、この成分は、実験的に(例えば、DSCにより)測定するとき、20℃を超える少なくとも1つの融解温度(Tm)を樹脂系に付与する。好ましくは、この成分は、約30℃〜100℃のTmを樹脂系に付与する。1つを超える結晶性物質を結晶性組成物で用いる場合、1つを超える区別できる融点が見られる。

重合性樹脂系は、米国特許出願第2009/0305196号に記載されるように、有機ゲル化剤を所望により含んでもよい。しかしながら、望ましい特性は、歯科用組成物が有機ゲル化剤を含まないときに得ることができる。

本明細書に記載の歯科用組成物は、主要量の充填剤を含む。充填剤は一般に(非毒性であり)口内での使用に適している。充填剤は、放射線不透過性、放射線透過性又は非放射線不透過性であり得る。

無機充填剤は、歯科用途で使用されるとき、通常は本質的にセラミックである。

好適な無機充填剤の例は、天然素材であるか、又は合成物質、例えば石英、窒化物(例えば窒化ケイ素)、例えばCe、Sb、Sn、Zr、Sr、Ba、又はAlに由来するガラス、コロイダルシリカ、長石、ボロシリケートガラス、カオリン、タルク、チタニア、及び亜鉛ガラス、ジルコニアシリカ充填剤、並びに米国特許第4,695,251号(Randklev)に記載されるものなどの低モース硬度の充填剤である。ナノスケールの充填剤粒子は、通常、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、又はこれらの物質同士の混合物からなる。

充填剤系は、ナノスケールの充填剤を含む。それらのサイズの小ささ、高い表面積及び関連する水素結合のために、これらの物質は、凝集したネットワーク構造を構築することが知られている。この種類の物質(「ナノスケールの」物質)は、200ナノメートル(nm)の平均一次粒径(即ち、凝集されていない物質の最大寸法、例えば直径)を有する。好ましくは、ナノスケールの粒子状物質は、少なくとも約2ナノメートル(nm)、並びに好ましくは少なくとも約7nmの平均一次粒径を有する。好ましくは、ナノスケールの粒子状物質は、約50nm以下、より好ましくは約20nm以下のサイズの平均一次粒径を有する。このような充填剤の平均表面積は、好ましくは約20平方メートル毎グラム(m2/g)、より好ましくは少なくとも約50m2/g、並びに最も好ましくは少なくとも約100m2/gである。

充填剤系は、ナノクラスターの形態のナノ粒子を含み、即ち、硬化性樹脂中に分散させた場合でも粒子を凝集させる比較的弱い分子間力により会合した2つ以上の粒子の集団である。好ましいナノクラスターは、非重(例えば、シリカ)粒子とジルコニアなどの非晶質重金属酸化物(即ち、原子番号が28よりも大きい)粒子の実質的に非晶質のクラスターを含むことができる。ナノクラスターの粒子は、好ましくは、約100nm未満の平均直径を有する。好適なナノクラスター充填剤は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,730,156号(Mitraら)に記載されている。

本明細書に記載の歯科用組成物は、一般に、少なくとも40重量%、又は45重量%、又は50重量%の(例えばシリカ/ジルコニアの)ナノクラスターを含む。(例えばシリカ/ジルコニアの)ナノクラスターの濃度は、通常、約65重量%以下である。

好ましい実施形態では、歯科用組成物は、(即ち、結合していない)ナノスケールの無機充填剤を(例えばシリカ/ジルコニアの)ナノクラスターと組み合わせて含む。そのようなナノスケールの無機充填剤は、通常、シリカナノ粒子を含む。

本明細書に記載の歯科用組成物は、一般に、少なくとも10重量%又は15重量%の(例えばシリカの)ナノスケールの充填剤を含む。(例えばシリカの)ナノスケールの充填剤の濃度は、通常、約40重量%以下である。

好適なナノサイズシリカは、Nalco Chemical Co.)(Naperville,Ill)から商品名NALCO COLLOIDAL SILICASとして市販されている。例えば、好ましいシリカ粒子は、ナルコ(NALCO)製品1040、1034A、1060、2327、及び2329を使用することで得られる。

シリカ粒子は、好ましくは、シリカの水性コロイド分散系(即ち、ゾル又はアクアゾル)から製造される。コロイダルシリカは、典型的には、シリカゾル中に約1〜50重量パーセントの濃度で存在する。本発明の充填剤の調製に使用することができるコロイダルシリカゾルは、様々なコロイドサイズで市販されている。Surface & Colloid Science,Vol.6,ed.Matijevic,E.,Wiley Interscience,1973を参照されたい。本発明の充填剤の作製に使用される好適なシリカゾルは、水性媒体中の非晶質シリカの分散物として供給されるもの(Nalco Chemical Companyにより作製されるNalcoコロイダルシリカなど)、及びナトリウム濃度が低く、好適な酸との混合により酸性化できるもの(例えば、E.I.Dupont de Nemours & Co.により作製されるLudoxコロイダルシリカ、又はNalco Chemical Co.からのNalco 2326)である。

好ましくは、ゾル中のシリカ粒子は、約5〜100nm、より好ましくは10〜50nm、並びに最も好ましくは12〜40nmの平均粒径を有する。特に好ましいシリカゾルは、NALCO 2327である。

ナノサイズの充填剤は、ヒュームドシリカを含んでもよい。いくつかの実施形態では、ヒュームドシリカは、1重量%又は2重量%〜最高5重量%の範囲の量で存在する。

好ましくは、ナノスケールの充填剤(ナノクラスターを含む)の総量は、組成物の総重量を基準として、50重量%超、より好ましくは60重量%超、最も好ましくは70重量%超である。好ましくは、充填剤系の総量は、組成物の総重量を基準として、約95重量%以下、より好ましくは約80重量%以下である。

充填剤系は、所望によりその他の充填剤を含むことができる。そのようなその他の任意の充填剤は、本質的に微粒子又は繊維状のいずれかであってよい。粒子状充填剤は、一般に、20:1以下、より一般的には10:1以下である長さ対幅の比率、即ち縦横比を有するものとして定義され得る。繊維は、20:1より大きい、より一般的には100:1より大きい縦横比を有するものとして定義され得る。球形から楕円形、又はフレーク若しくはディスクのようなより平面的なものの範囲で、粒子の形状は多様であり得る。巨視的特性は、充填剤粒子の形状、具体的には形状の均一性に大きく依存し得る。

微粒子充填剤は微粉化しており、約10マイクロメートル(即ちミクロン)未満の平均粒径(好ましくは直径)を有する。充填剤は、単峰性又は複峰性(例えば、二峰性)の粒径分布を有することができる。

任意の充填剤は、前述したように、無機材料であってよい。また、充填剤は、重合性樹脂に不溶性である架橋済み有機材料であることもでき、それは場合により無機充填剤と一緒に充填される。好適な有機充填剤粒子の例としては、充填又は未充填粉砕ポリカーボネート、ポリエポキシドなどが挙げられる。好ましい充填剤粒子は、石英、サブミクロンシリカ、及び米国特許第4,503,169号(Randklev)に記載されている種類の非ガラス質微小粒子である。また、これらの充填剤、並びに有機及び無機材料から作製された組み合わせ充填剤を使用してもよい。

充填剤と樹脂系との間の結合を強めるために、無機充填剤粒子の表面は、通常、シラン結合剤などの表面処理方法で処理されている。結合剤は、アクリレート、メタクリレート及びこれらに類するものなどの反応性硬化基で官能化され得る。

シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、又はそれらの物質の混合物からなる充填剤粒子は、表面ヒドロキシル基の存在により、通常、親水性である。しかしながら、充填剤材料は、通常、適切な剤による処理によって変性されて、表面を徐々に疎水性にする。

ナノスケールの充填剤(ナノクラスターを含む)は、通常、表面が有機金属結合剤で処理されて、充填剤と樹脂との間の結合が強められている。有機金属カップリング剤は、アクリレート、メタクリレート、ビニル基及びこれらに類するものなどの反応性硬化基で官能化され得る。

好適な共重合性有機金属化合物は、一般式: CH2=C(CH3)mSi(OR)n又は CH2=C(CH3)mC=OOASi(OR)n を有することができ、式中、mは0又は1であり、 Rは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり、 Aは、二価の有機連結基であり、 nは1〜3である。

好ましいカップリング剤としては、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びこれらに類するものが挙げられる。

表面変性は、モノマーとの混合に続いて又は混合後のいずれかで行うことができる。樹脂へ組み込む前に、オルガノシラン表面処理化合物をナノ粒子と組み合わせることが一般的に好ましい。表面改質剤の必要量は、粒径、粒子タイプ、改質剤の分子量及び改質剤タイプといった、いくつかの要因に左右される。一般的には、ほぼ単層の変性剤を粒子の表面に付着させることが好ましい。

いくつかの実施形態では、ヒュームドシリカは、表面改質を含まない。

更に、本発明の組成物は、米国特許第7,674,850号及び同第7,816,423号に記載されているように、樹脂系の硬化(例えば、重合及び/又は架橋)に好適な反応開始剤系、即ち、1つの反応開始剤又は2つ以上の反応開始剤の混合物を含有する。反応開始剤は、好ましくはフリーラジカル反応開始剤であり、これは、例えば熱及び/又は放射線など、様々な方法で活性化され得る。したがって、例えば反応開始剤系は、熱反応開始剤系(例えば、アゾ化合物及び過酸化物)又は光開始剤系であってよい。好ましくは、反応開始剤系は、1つ以上の光開始剤を含む。より好ましくは、反応開始剤系は、約300ナノメートル(nm)〜約1200nmのスペクトル領域において活性であり、かつ好適な波長及び強度の光に曝された際にエチレン性不飽和部分のフリーラジカル重合及び/又は架橋を促進することができる、少なくとも1つの光開始剤活性物質を含む。多種多様のそのような光開始剤を使用することができる。光開始剤は、樹脂系において可溶性であるのが好ましい。好ましくは、それらは、典型的な歯の治療室及び実験室条件下でのそれらの保管及び使用を可能にするために、好ましくは十分に貯蔵安定性があり、望ましくない着色がない。可視光線光開始剤が好ましい。

好ましい反応開始剤(即ち、反応開始剤系)の1つの種類は、米国特許第5,545,676号(Palazzottoら)に記載されており、これは3つの成分、つまり三元光開始剤系を含む。このような系として、ヨードニウム塩、例えば、単純塩(例えば、Cl、Br、I、又はC2H5SO3等のアニオンを含有するもの)又は金属錯体塩(例えば、SbF5OH、又はAsF6を含有するもの)であり得るジアリールヨードニウム塩が挙げられる。所望により、ヨードニウム塩の混合物を使用することができる。この三元光開始剤系の第2の成分は増感剤であり、これは、約400nm〜約1200nmの波長範囲内の光吸収が可能である。この三元光開始剤系の第3の成分は電子供与体であり、アミン(第1の反応開始剤系に関して記載された、アミノアルデヒド及びアミノシラン又はその他のアミンを含む)、アミド(ホスホアミドを含む)、エーテル(チオエーテルを含む)、尿素(チオ尿素を含む)、フェロセン、スルフィン酸及びその塩、フェロシアン化物の塩、アスコルビン酸及びその塩、ジチオカルバミド酸及びその塩、キサンテートの塩、エチレンジアミン四酢酸の塩、並びにテトラフェニルボロン酸の塩が挙げられる。

三元光開始剤系での使用に好適な増感剤の例には、ケトン、クマリン染料(例えば、ケトクマリン)、キサンテン染料、アクリジン染料、チアゾール染料、チアジン染料、オキサジン染料、アジン染料、アミノケトン染料、ポルフィリン、芳香族多環式炭化水素、p−置換アミノスチリルケトン化合物、アミノトリアリルメタン、メロシアニン、スクアリリウム染料、及びピリジニウム染料を挙げることができる。ケトン(例えば、モノケトン又はα−ジケトン)、ケトクマリン、アミノアリールケトン、及びp−置換アミノスチリルケトン化合物が、好ましい増感剤である。特に好ましい可視光増感剤の例としては、カンファーキノン、グリオキサール、ビアセチル、3,3,6,6−テトラメチルシクロヘキサンジオン、3,3,7,7−テトラメチル−1.2−シクロヘプタンジオン、3,3,8,8−テトラメチル−1,2−シクロオクタンジオン、3,3,18,18−テトラメチル−1,2−シクロオクタデカンジオン、ジピバロイル、ベンジル、フリル、ヒドロキシベンジル、2,3−ブタンジオン、2,3−ペンタンジオン、2,3−ヘキサンジオン、3,4−ヘキサンジオン、2,3−ヘプタンジオン、3,4−ヘプタンジオン、2,3−オクタンジオン、4,5−オクタンジオン、及び1,2−シクロヘキサンジオンが挙げられる。その中でも、カンファーキノンが最も好ましい増感剤である。

好ましい可視光誘起開始剤としては、適切な水素供与体(例えば、第1の反応開始剤系に関して上述されたものなど)、及び任意にジアリールヨードニウム単純塩又は金属錯体塩、発色団置換ハロメチル−s−トリアジン、又はハロメチルオキサジアゾールに組み合わせたカンファーキノンが挙げられる。特に好ましい可視光誘起光開始剤としては、α−ジケトン、例えば、追加的な水素供与体を有するカンファーキノンと、必要に応じてジアリールヨードニウム塩、例えば、ジフェニルヨードニウムクロリド、ブロミド、ヨージド、又はヘキサフルオロホスフェートとの組み合わせが挙げられる。

好ましい紫外線誘起重合開始剤としては、ベンジル及びベンゾイン等のケトン、アシロイン、並びにアシロインエーテルが挙げられる。好ましい紫外線誘起重合開始剤には、IRGACURE 651の商品名で入手可能な2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン及びベンゾインメチルエーテル(2−メトキシ−2−フェニルアセトフェノン)(両方ともCiba Speciality Chemicals Corp.,Tarrytown,NYから)が挙げられる。

米国特許第7,674,850号及び同第7,816,423号に記載のように、その他の様々な反応開始剤が当該技術分野において既知である。

反応開始剤系は、所望の硬化(例えば、重合及び/又は架橋)速度を提供するために十分な量で存在する。光開始剤に関しては、この量は、光源、放射エネルギーに暴露される層の厚さ、及び光開始剤の吸光係数にある程度依存することになる。好ましくは、反応開始剤系は、組成物の重量を基準として、少なくとも約0.01重量%、より好ましくは少なくとも約0.03重量%、最も好ましくは少なくとも約0.05重量%の総量で存在する。好ましくは、反応開始剤系は、組成物の重量を基準として、約10重量%以下、より好ましくは約5重量%以下、最も好ましくは約2.5重量%以下の総量で存在する。

本発明の組成物は、所望により、界面活性剤系、即ち1つの界面活性剤、又は2つ以上の界面活性剤の混合物を含有してもよい。これらの界面活性剤は、少量で使用されると、無機充填剤材料などの、組成物のその他の成分と相互作用して、非共有の三次元構造体の形成を増進させ得る。そのような界面活性剤は、非イオン性、アニオン性、又はカチオン性であることができる。界面活性剤は、樹脂系と共重合性であってもよいし、又は非共重合性であってもよい。使用できる界面活性剤の選択における留意事項は、その系の成分が水素結合に関与することができる度合いである。歯科用組成物が界面活性剤を含まないときに、望ましい特性を達成できる。

本組成物は、着色剤(例えば、色調の調整に従来から使用されている顔料)、香味料、薬剤、安定剤(BHTなど)、及び粘度調整剤などの任意の剤を更に含んでもよい。このような剤は、樹脂と共重合されるように反応性官能基を任意に含んでもよい。

半結晶性樹脂とナノクラスター充填剤との組み合わせは、本明細書に記載されるように、歯科用組成物、歯科用物品、及び方法の特性を改善する。

本明細書に記載の歯科修復組成物及び物品は、改善された特性を示すことがわかった。

いくつかの実施形態では、硬化された組成物及び硬化された物品は、改善された耐汚染性を示した。いくつかの実施形態では、15%のコーヒー溶液中で37℃にて3日間試験したときに、色の変化(即ち、Delta E*)は、対照(例えば、CE−1)と比べて、1又は2単位低い場合がある。他の実施形態では、色の変化は、対照(例えばCE−2)と比べて、3、4、5、6、又は7単位低い場合がある。

いくつかの実施形態では、予備形成された未硬化の物品は、後述の実施例に記載される試験方法により測定されたときに、改善されたハンドリング、即ち「良好なハンドリング」を示した。

いくつかの実施形態では、硬化された組成物及び硬化された物品は、後述の実施例に記載される試験方法により測定されたときに、改善された3体摩耗を示した。好ましい実施形態では、磨耗率は0.5以下であった。磨耗率は、通常少なくとも0.1又は0,2である。

本発明の組成物は、三次元形状、予備形成シート、アーチ形トレイ、ロープ、ボタン、織布ウェブ又は不織布ウェブ等の様々な形態に成形(例えば、成型)することができる。組成物を、例えば押出、射出成型、圧縮成型、熱成形、真空成形、プレス、カレンダリング及びローラーを使用するウェブ加工を含む様々な方法で(第1形状を形成するために)成形することができる。典型的には、半完成形状は、ポジティブ印象材とネガティブ印象材とを有する型を使用して形成される。

成形物品を、個々に、又は複数の単位で販売することができ、好ましくはそれらを、組成物に含有される反応開始剤系を活性化し得る熱及び/又は光から保護する方法で梱包する。

一般に、適切な大きさ及び形状(第1形状)の予備形成物品を選択し、約15℃〜38℃の温度(好ましくは、典型的な室温及び体温を含む約20℃〜38℃、より好ましくは室温)でカスタム成形する。この成形は、指又は選択された器具(例えば、歯科用複合器具の手動操作)による圧力の適用、切り取り、切断、彫刻、研磨等を含む様々な方法により行われる。所望のカスタム形状が得られると、反応開始剤系の活性化を引き起こすためにそれを熱/放射線に曝露することによって物品は硬く(例えば、硬化)される。単一ステップ、又は中間で行われるカスタム成形の連続ステップを含む複数のステップのいずれかで、これを実行することができる。これらのステップのうち1つ以上は、酸素を含まない不活性雰囲気又は真空において実行され得る。仕上げ成形及び硬化ステップの後、必要に応じて、硬化物品は研磨、切り取り等により形状を更に修正されることができる。物品の最終的なカスタム形状が得られたら、意図された用途のために必要である場合、それにつや出し、塗装又は他の表面処理を行うことができる。好ましくは、本発明の組成物から調製される最終的なカスタム成形物品は、追加のベニヤ材料(例えば、所望の外観又は特性を提供する第2材料)を必要としない。意図された用途は、接着的に、機械的に、又は両方の組み合わせにより、第2物品へのカスタム成形硬化物品の実装、接着、又は別の方法での付着を必要とする場合がある。

(仮の又は永久的な)歯冠の調製のために、適切な形状及び大きさの予備形成歯冠を選択し、予備形成歯冠を、必要な切り取り及び成形の程度を決定するために、所望により歯冠上に印を付けて、調製された歯の上に位置付けられる。予備形成歯冠を口部から取り出し、切断、切り取り、成形等によって必要な形状及び大きさの調整を行い、次いで歯の調製物上に再び位置付け、そこで追加の形状調整を行って、歯肉、側面及び咬合の適合を含む最適なカスタム調整を提供する。次いで、必要に応じて口腔内にある間、通常は、数秒間歯科用硬化光にそれを曝露し、次いで、それを注意深く口から取り出し、最終硬化のために硬化チャンバ内で所望により熱と組み合わせて硬化光に曝露することにより、予備形成及び再形成歯冠を硬化することができる。あるいは、歯冠はまた、歯科用硬化光で照射することにより、口腔内で完全に硬化することができる。必要に応じて、研磨、切り取り等により仕上げ調整を行い、完成歯冠を研磨及び洗浄する。次いで、口腔内に配置される前に、完成歯冠はそのままセメント結合、又は好適な樹脂材料で裏打ちされることができる。

本発明の硬化性自己支持構造(例えば、歯科用製品)は、個々に、又は集合体として予め梱包され得る。かかる梱包材料は、これらの製品を、反応開始剤系を活性化し、それにより、例えば、光開始剤の場合、光への曝露から生じ得るような早期硬化を引き起こす条件から保護すべきである。更に、梱包材料は所望により製品の表面に適合され、それにより、輸送の間損傷に耐えるために、更なる機械強度を提供する。例えば、予備形成歯冠又はトレイは、全ての面をポリエチレン層にパッケージ化されることができる。ポリエチレンは機械的構造を提供し、水との接触を回避するために密封することができる。ポリエチレンが適切な染料、例えばカーボンブラックとともに充填される場合、それが密閉製品に達し得る前に、入射光は吸収されるであろう。かかる梱包層がいくぶん硬質であり、かつ本発明の予備形成物品と同様の梱包材料が成形される場合、梱包は出荷及び保管の間、予備形成製品の寸法安定性を強化することができる。場合によっては、梱包は製品系の必要不可欠な部分を形成し得る。

本発明はまた、国際特許公開第03/015720(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、予備形成された多くの歯列矯正用途にも有用である。本発明の組成物は、インビボで所望の形状に成形され、次いで口腔内の所定の位置で硬化することができる。あるいは、本組成物は、必要に応じて患者の歯の構造の模型を使用して、口腔の外側で所望の形状に成形されることができる。組成物が口腔の外側で成形されるとき、組成物は好ましくは口腔に配置する前に硬化される。

以下の実施例は例示のために与えられるが、本発明の範囲を限定するものではない。特に断らないかぎり、部及び百分率は全て重量基準である。

ポリカプロラクトンジ(メタ)アクリレートの調製 32オンス(0.95L)のガラス瓶に約50グラムのポリカプロラクトンジオール及び約0.04gのBHTを加え、これを油浴中で60℃に加熱する。全ての固形ポリカプロラクトンを溶融した後、磁気攪拌の下で、2モル等価のIEM(約7.8g)を15分間かけて加えた。1滴(約0.02g)のジブチルスズジラウレート(Aldrich)をその混合物に加えた。この反応を60℃で12時間続けた。得られた白色の固形物をIR及びNMRで明らかにし、それぞれポリカプロラクトンIEMであることが確認された。

ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)試験 およそ25.0mgの各サンプルを10mlのテトラヒドロフランに加えた。サンプル溶液を一晩揺動させ、0.25マイクロメートルのTeflonシリンジフィルターで濾過した。

GPC分析を以下のように行った。

分子量の計算は、分子量が5.95E+04から下は266の範囲の狭い分散度のポリスチレンによる較正を基に行われた。実際の計算は、シーラスGPCソフトウェア(Polymer Labsから)にて完了させた。

ポリカプロラクトンジオール「CAPA 2125」から調製されたポリカプロラクトンジ(メタ)アクリレートの数平均分子量(Mn)は、今説明した試験方法に従って2270g/モルであることがわかった。

比較実施例のポリカプロラクトンジ(メタ)アクリレートの数平均分子量(Mn)も、同じ試験方法に従って測定された。ポリカプロラクトンジオール「CAPA 2205」から調製されたポリカプロラクトンジ(メタ)アクリレートの数平均分子量(Mn)は、3590g/モルであることがわかった。ポリカプロラクトンジオール「Tone 230」から調製されたポリカプロラクトンジ(メタ)アクリレートの数平均分子量(Mn)は、2200g/モルであることがわかった。ポリカプロラクトンジオール「CAPA 2200A」から調製されたポリカプロラクトンジ(メタ)アクリレートの数平均分子量(Mn)は、2790g/モルであることがわかった。

硬化性歯科修復組成物の調製 表1に列挙される成分は、以下のように混合された:均一になるまでまず顔料を樹脂成分と混合し、次いで充填剤を加え、均一になるまで最終組成物を混合した。

曲げ強度試験 試験方法: International Standard ISO 4049−2009の表題「Dentistry−Polymer−based filling,restorative and luting materials」に記載される手順に従って、曲げ強度を試験した。

ワッツ収縮試験 ワッツ収縮(ワッツ)試験方法は、硬化後の体積変化により、試験試料の収縮を測定する。試料調製(90mgの未硬化複合材の試験試料)及び試験手順は、次の参考文献に記載されたように行なわれた:Determination of Polymerization Shrinkage Kinetics in Visible−Light−Cured Materials:Methods Development,Dental Materials,October 1991,pages 281〜286。縮合パーセントに関する結果は、各試料について3つの反復の平均として以下のように報告された。

染色試験 染色用ディスクの準備 液圧プレス(Carver Inc.,Wabash,INから入手可能)を約60℃で使用して、歯科用組成物のサンプル(約10グラム)を(2片のシリコーン剥離紙の間で)約1.1ミリメートル厚さに押圧した。次いで、押圧された各サンプルは、室温で7日間保管され、その後直径14mmのディスクを切り取り、厚さ1mm×直径15mmのスプリットモールドに、「Mylar」の商品名でDuPontから入手可能な2片の1ミル(0.025mm)のポリエステルフィルムの間に挟まれて置かれた。次いで、これを2つの鋼板の間に置き、上記の液圧プレスで、37℃で2分間、1000psi(6.9×106Pa)下にて押圧した。次いで、ポリエステルフィルムに挟まれたサンプルを液圧プレスから取り出し、ポリエステルフィルムを厚さ1mmの50mm×75mmのガラス顕微鏡スライド(VWR Catalog # 374〜1407)で覆い、VISILUX Model 2500歯科用硬化光(3M ESPE)を使用して50秒間光硬化した。その後、もう一方の側も、ガラス顕微鏡スライドを通して50秒間硬化した。ポリエステルフィルムが依然として存在する状態で、歯科用複合材料ディスクを37℃の炉内で15分間調整した。次いで、このサンプルディスクを染色試験前に37℃の脱イオン水中に保管した。

コーヒー溶液 15gのFolgers Classic Roast Instant Coffee Crystalsを85gの80℃の脱イオン水に加え、十分に混合し、次いで37°以下に冷ますことにより、15%のコーヒー溶液を準備した(コーヒー結晶は、Folger Coffee Company,Cincinnati,OH 45202から市販)。

染色試験には、各製剤から2つのディスクが使用された。各ディスクのCIELAB色が、染色試験の前に以下のように測定された。HunterLab,Reston,VAから「UltraScan XE」として得られたRSIN(reflectance specular included)の視野面積「小」モードの分光光度計を使用して、L*、a*、及びb*値を測定した。初期の色測定の後、歯科用複合材料のディスクは、37℃の15%のコーヒー溶液中に3日間入れられた。次いで、染色されたディスクは脱イオン水ですすがれ、染色されたディスクの色が再び測定された。耐汚染性は、以下に定義されるDelta E*として報告される: Delta E*=[(L0*−L1*)2+[(a0*−a1*)2+[(b0*−b1*)2]1/2 式中、各0は、初期値を表し、各1は、指示された試験溶液中で硬化した歯科用組成物を調整した後の値を表す。

試験結果は以下のとおりである:

歯冠形成及びハンドリングの評価 米国特許出願第2005/100868号に記載のものと類似した2段階のプロセスによって、歯冠を調製した。試験される各ベーストのサンプルを、約19%の酢酸ビニルを含有するエチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーフィルムで裏打ちされた空洞に注入した。このペーストのサンプルを、第2の複数割り鋳型に移し、第2のポリエチレンフィルムで覆い、圧縮モールト成形して、中空の歯冠形状を形成した。この成形型は、対称模型の下の第1大臼歯の形状であった。結果として形成された歯冠は、約10.6mmの近心遠位寸法を有していた。

上記の招請された歯冠を、異なる温度/湿度環境で調整/エージングして、23℃/15%RHの乾燥した環境などの、季節により変化する保管条件を模倣した。

材料は、その材料から形成された歯冠をColumbia Dentoform R862 Typodont内の#31の位置に調製された人工歯の上にカスタマイズする、経験のある歯科医により評価された。Typodontの歯は、ショルダー調製物(preparation)を有するように修正された。歯冠を水で濡らし、手で操作して、ハンドリングの初期評価を得、Typodont内の調製物に適合させた。ハンドリングの全体的な受容性は、硬化前の歯冠をトリミングし、調整し、滑らかにする能力を基に評価された。

23℃/15%RHの乾燥した環境で2週間エージングした後の、歯冠のハンドリングの結果は、後の表に示されている。

3体摩耗 P.Pallav,C.L.Davidson,及びA.J.DeGeeによりJ Pros Dent 59(1988)(4),pp.426〜429に記載されるACTA法に概ね従って、サンプルを3体摩耗試験において比較実施例2(CE2)と比較した。手順は、アジ化ナトリウムを磨耗媒体から除き、最初にACTA磨耗機械上で研削ではなく機械加工によって摩耗車輪を準備することにより、修正された。磨耗深さを6つの間隔で測定し、最小二乗法によって線を適合させ、CE2の傾斜に対する各材料の傾斜の比を出すことにより、磨耗比を測定した。本実験の結果は、以下の表にまとめられている:

本発明の実施態様の一部を以下の項目[1]−[17]に記載する。 [1] 未硬化の歯科修復組成物を含む、予備形成された半完成歯科用物品であって、 3000g/モル以下の分子量を有するフリーラジカル重合可能な半結晶性樹脂を含む樹脂系と、 少なくとも50重量%のナノクラスター充填剤と、 を含み、 前記未硬化の歯科修復組成物は第2の形状に形成されるのに十分展性(malleable)な第1の形状を有する、半完成歯科用物品。 [2] 歯科用物品を作製する方法であって、 第1の形状を有する予備形成された未硬化の半完成歯科用物品を提供することであって、前記未硬化の歯科用物品が、 3000g/モル以下の分子量を有するフリーラジカル重合可能な半結晶性樹脂を含む樹脂系、及び 少なくとも50重量%のナノクラスター充填剤を含む、前記未硬化の歯科用物品を提供することと、 前記未硬化の半完成歯科用物品を第2の形状に形成することと、 前記未硬化の半完成歯科用物品を硬化によって硬くすることと、 を含む、方法。 [3] 3000g/モル以下の分子量を有するフリーラジカル重合可能な半結晶性樹脂を含む樹脂系と、 少なくとも50重量%のナノクラスター充填剤と、 を含む、硬化性歯科修復組成物。 [4] 前記半結晶性樹脂が、ポリカプロラクトン単位を含む、項目1〜3のいずれか1項に記載の物品、方法、又は組成物。 [5] 前記半結晶性樹脂が、ポリカプロラクトンジオールとヒドロキシル反応性(メタ)アクリレートとの反応生成物である、項目1〜4のいずれか一項に記載の物品、方法、又は組成物。 [6] 前記半結晶性樹脂が、1重量%〜15重量%の範囲の量で存在する、項目1〜5のいずれか一項に記載の物品、方法、又は組成物。 [7] 前記樹脂系が、少なくとも1つのマルチ(メタ)アクリレート芳香族樹脂を含む、項目1〜6のいずれか一項に記載の物品、方法、又は組成物。 [8] 前記マルチ(メタ)アクリレート芳香族モノマーが、ビスフェノールAから誘導される低収縮樹脂である、項目1〜7のいずれか一項に記載の物品、方法、又は組成物。 [9] 前記低収縮樹脂が、前記歯科用組成物の3重量%〜15重量%の範囲の量で存在する、項目8に記載の物品、方法、又は組成物。 [10] 前記低収縮樹脂が、少なくとも5重量%又は10重量%の量で存在する、項目8に記載の物品、方法、又は組成物。 [11] 前記低収縮樹脂が、BisGMAである、項目7又は8に記載の物品、方法、又は組成物。

[12] 前記樹脂系が、前記低収縮樹脂に加えてその他の重合性樹脂を歯科修復組成物全体の20重量%未満の量で更に含む、項目8〜11のいずれか一項に記載の物品、方法、又は組成物。 [13] 前記その他の重合性樹脂が、前記歯科用組成物の5重量%以下、又は4重量%以下、又は3重量%以下の量で存在する、項目12に記載の物品、方法、又は組成物。 [14] 前記組成物が、1つ以上の更なるナノスケール微粒子充填剤を更に含む、項目1〜13のいずれか一項に記載の物品、方法、又は組成物。 [15] 前記1つ以上の更なるナノスケール微粒子充填剤が、15重量%〜30重量%の範囲の量で存在する、項目14に記載の物品、方法、又は組成物。 [16] 前記1つ以上の更なるナノスケール微粒子充填剤が、シリカを含む、項目14〜15のいずれか1項に記載の物品、方法、又は組成物。 [17] 前記1つ以上の更なるナノスケール微粒子充填剤が、ヒュームドシリカを含む、項目14〜16のいずれか1項に記載の物品、方法、又は組成物。

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