歯科用超音波薬剤導入システム

申请号 JP2010280905 申请日 2010-12-16 公开(公告)号 JP5704637B2 公开(公告)日 2015-04-22
申请人 公益財団法人ヒューマンサイエンス振興財団; 学校法人福岡大学; 发明人 中島 美砂子; 立花 克郎;
摘要
权利要求

超音波を照射する歯科治療用プロープを用いて標的部に薬剤を導入する歯科用超音波薬剤導入システムであって、 前記薬剤は、ナノパブルと薬剤との混合状態で標的部に導入され、 前記歯科治療用プロープは、プロープ本体と、前記プロープ本体に取り付けられて、前記標的部に前記薬剤を導入するための導入プロープと、を有し、 前記導入プロープにつき、 (1)根管の根尖部側に超音波を照射する根尖部照射部と、根管の側枝側に超音波を照射する側枝照射部とを備え、根管内に挿入されて前記根管内に超音波を伝搬させる根管内挿入型プロープ、 (2)前記プロープ本体には超音波を発生させる超音波振動子が備えられ、その超音波振動子からの超音波をう蝕部に伝搬させるう蝕治療用プローブ、 (3)筒状体と、その筒状体の先端部に設けられて歯周ポケットヘ超音波を伝搬させる歯周ポケツト照射部と、前記筒状体の内部に設けられ、ナノバブルとの混合状態の薬剤を前記歯周ポケットに導入させる薬剤導入管と、を備え、歯周ポケツト内に挿入されて歯周疾患部に超音波を照射する歯周疾患治療用プロープ、又は (4)歯のエナメル質の楔形欠損部を型取りした楔形欠損部当てと、超音波振動を生じさせる振動子構成部と、前記振動子構成部と前記楔形欠損部当てとの間に設けられた流体が流れる流体路と、を備え、知覚過敏部に超音波を照射する知覚過敏治療用プロープ、の何れかを選択的に使用する、ことを特徴とする歯科用超音波薬剤導入システム。前記標的部は、根尖部の根尖病巣、副根管、象牙質細管、歯周ポケット、及びエナメル質の楔形欠損部のうち少なくとも何れか一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の歯科用超音波薬剤導入システム。前記ナノバブルの直径は、10nm以上500nm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の歯科用超音波薬剤導入システム。前記薬剤が導入される超音波の周波数は、800KHz以上2MHz以下であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の歯科用超音波薬剤導入システム。

说明书全文

本発明は、超音波を照射する歯科治療用プローブを用いて、根尖病巣やう蝕部等の標的部に薬剤を導入する歯科用超音波薬剤導入システム関する。

う蝕は、歯周病と並び、歯科の二大疾患の一つであり、歯を失う原因の半分はう蝕である。う蝕は、風邪と並び、どの世代でも抱える一般的な病気であるが、特に歯の萌出後の数年は石灰化度が低いためう蝕になりやすく、未成年に多く見られる。いわゆる歯の神経といわれる歯髄は、歯(象牙質)形成能による外来刺激の遮断、知覚によるう蝕の進行予防及び歯破折予防の役割を有する。また、代謝及び免疫機能により歯の生存に重要な機能を有する。

現在の抜髄法では完璧な抜髄・根管充填は不可能に近く、後に根尖部に異常をきたし(根尖性歯周炎)、感染根管治療が必要となる場合も多い。この際、う蝕の治療と比べて一回のchair timeが長くなり、しばしば長期にわたる治療が必要となる。根尖孔からの排膿又は痛み等の症状が改善せず、抜歯することになり、歯を喪失する可能性もある。歯の痛みは日常生活に多大な支障をきたし社会的生産性も低下させる。う蝕が歯髄、更に根尖部の骨に到達し、ついには抜歯となるにつれ、患者の精神的、経済的負担も増し、口腔の機能、咬合機能が衰えることにより運動機能障害、自律神経失調、発音・審美性の問題も生じてくる。

従来のう蝕治療法では、象牙質細管内に深く侵入した細菌を完全に死滅させるためにう蝕(軟化象牙質)を物理的に完全に取り除く必要がある。このことは象牙質を過剰に喪失し、歯髄を露出させる危険性を増加させる。

また、従来から、う蝕の部分を除去し、根管内の洗浄・消毒等を行う治療として、根管治療がある。根管治療は、まずう蝕の部分を削り取り、根管治療を行いやすいように必要に応じてエナメル質や象牙質を削り取っておく。次に手指感覚、X線写真、電気的根管長測定等を用いて根管の深さを正確に測定し、リーマーやファイル等の器具を用いて歯髄や細菌感染した象牙質を取り除く。次に歯髄が取り除かれた根管に所定の薬剤を入れ、ブローチ等の器具を用いて根管の洗浄・清掃・消毒を行う。最後に根管にガッタパーチャを詰めて根管治療が完了する。

根管治療は、抜髄処置と感染根管治療とに分けられる。う蝕が深くて歯髄にまで達している場合、一般に抜髄処置が行われる。抜髄処置は歯牙の内部に存在する歯髄を除去する行為である。抜髄処置により感染又は感染の恐れのある歯髄を全部除去するので、歯周組織への炎症の波及を防ぐことができ、患歯を歯周組織に対し無害なものとし、再び咀嚼機能を回復させることが可能となる。

う蝕が歯髄まで進行して、歯髄が感染壊死した場合とか、根管充填が不十分で根管内が感染している状態を感染根管といい、かかる場合の処置を感染根管治療という。感染根管では、ひどい場合は歯根嚢胞ができたり、婁孔(fistula:歯の周囲に溜まった膿が出て行く穴)ができたりする。感染根管の場合は根管内を清掃消毒して根管充填をする必要があり、また過去に不十分な根管充填がされている場合は、一旦根管充填材を除去して再度根管内を清掃消毒してから、根尖まで根管充填をする。

しかし、根管内の構造は直接的に見ることが困難で、根管の形状も複雑で、根管が湾曲・閉塞していたり、副根管や側枝等が多々存在するため、完全に根管内の細菌を取り除くことは非常に困難である。更に根管内に細菌を取り残した状態で詰め物を詰めたり、クラウンを被せると、後に根管内で細菌が増殖して再度の根管治療が必要となる場合がある。後に根管治療を必要とする場合には、先に治療した詰め物やクラウンを作り直さなければならず、更には抜歯の可能性もあり得る。また、根管内の細菌の取り残しを意識しすぎると、過剰な象牙質切削を招くことになり、患者のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)に反する。このように、根管の形状は複雑であるため、根管治療(歯の神経・根の治療)は相当に難しいものとなっている。

特許文献1には、超音波エネルギーを使用する歯牙根管洗浄用装置が記載されており、この歯牙根管洗浄装置は、根管に差し込める可撓性の先端部分を有する噴射チューブを有している。この噴射チューブを根管内に挿入して、超音波エネルギーが載せられた流体を根管内へ押し出すことにより洗浄を行う。

しかしながら特許文献1記載の歯牙根管洗浄用装置では、超音波エネルギーが載せられた流体が根管の根尖部側に放出されるだけであり、複雑形状の根管内の細部まで洗浄することは困難である。

次に特許文献2には、根管切削工具を回転駆動するモータを有し、根管切削工具を根管切削の為の回転方向とは逆方向に回転させながら根管に挿入する際、該根管切削工具の先端が予め設定された基準位置に到達したことを電気的根管長測定手段が検出するまでは、根管切削工具の上記逆回転を維持し、該根管切削工具の先端が上記基準位置に到達したことを上記電気的根管長測定手段が検出したときには、該根管切削工具の逆回転を停止するよう上記モータの駆動を制御する歯科用根管治療装置が記載されている。

特許文献2記載の歯科用根管治療装置では、根管切削工具を根管切削の為の回転方向とは逆方向に回転させることができる。根管切削工具を正回転させて根管切削・拡大した後、根管内に薬液を注入した上で、根管切削工具を逆回転させて根管内に挿入し、根管切削工具の正回転によって切削屑を根管切削工具の基部側(上流側)に排出するよう機能するものであるから、この逆回転を維持した挿入によって、薬液は根管切削工具の先端側に押込まれる。

しかしながら、特許文献2記載の歯科用根管治療装置では、根管切削工具により根管を必要以上に切削拡大する虞があり、更に、根管切削工具の先端側に薬液は充分に注入されるとしても根管の側枝側についての配慮は不十分であるため、複雑形状の根管内の細部まで洗浄することは困難である。

次に、特許文献3には、薬液(処置腋)等の給液ノズル及び吸引ノズルを根管内に挿入し、その尖端部の位置を異なるように配置し、薬液を流すことによって、根管内に薬液を十分に浸透させるようにした歯科用治療装置が開示されている。給液ノズル部及び吸引ノズル部のうち、一方が他方より腔所内の奥部に位置するような位置関係に設定されていると、処置液は少なくとも腔所内の奥部にまで至るから、被治療部の洗浄が効率的になされる。

しかしながら、特許文献3の歯科用治療装置では、薬液の給液ノズル及び吸引ノズルの先端開口部は根管の根尖部側に向いているため、根尖部側への洗浄は可能であったとしてもそれ以外の部分への洗浄は不十分である。

次に、歯周疾患(歯周病)は歯を支えている歯周組織の炎症であり、歯周組織とはセメント質、歯肉、歯槽骨及び歯根膜の総称である。歯周疾患は歯と歯肉の間、いわゆる歯肉溝(歯周ポケットという)からの歯周病菌の感染によって引き起こされる病気である。歯周病は、歯槽骨の吸収を伴わない歯肉炎と歯槽骨の吸収を伴う歯周炎とに大別されるが、いずれにしても炎症が惹起されると歯周ポケットが増大する傾向にある。

従来、歯周疾患の治療薬として、口腔リンス剤、歯磨剤、及び抗生物質等が知られており、治療方法としては歯ブラシを用いたブラッシングと歯科医院での除石及び洗浄であった。しかし、歯磨剤はブラッシングのやり方が不十分であると歯周ポケットの清掃が不十分となる。また、口腔リンス剤は口の中全体には広がるが、歯周ポケット等の局所的な部分には薬液の効果が発揮できない。抗生物質は薬を服用し、薬効成分が歯肉等の炎症患部に到達するまでに時間がかかり過ぎる上、どの歯周病菌にも効き目があるわけではない。特許文献4には、歯牙被覆用組成物にシェラックを基材にした歯周病用の塗布液等があるが、歯周ポケットの中に入れて使用することはできない問題点がある。

次に、知覚過敏症は、歯周病が悪化することにより、露出した象牙質の表面に冷気や冷又は擦過性の刺激等が作用したときに一過性の疼痛が発生するという疾患である。象牙質の露出はエナメル質の消失や歯肉の退縮等により起こり、その露出した象牙質が、機械的な摩耗や酸等の作用による石灰分の溶出によって象牙質細管を開口し、その象牙質細管を通して物理化学的刺激が歯髄に伝達されて知覚神経を刺激し痛みを感じさせる。

知覚過敏症の治療として、開口した象牙質細管を閉塞する手法があり、例えば特許文献5には、水溶性アルミニウム化合物及びフッ化物で歯を処理する方法が記載されており、また特許文献6には、水溶性アルミニウム化合物、フッ化物及び水溶性カルシウムで歯を処理する方法が記載されている。しかし、上記の技術では薬剤が象牙質細管内に浸透しにくく、象牙質細管の封鎖性が不充分であるという問題点がある。

特開2009−045455号公報(第2頁、図1)

特開2007−229110号公報(第2頁)

特開2004−313659号公報(第2頁、図1)

特開平11−240816号公報

特開平5−155745号公報

特開平5−155746号公報

このように、根管内の形状は複雑であり、そのため根管治療は非常に難しいものであるが、適切な根管治療がなされていないと後に根尖性歯周炎になり、根の先端が化膿する。また、歯周ポケット及び象牙質細管への薬剤の浸透は困難であり、歯周病及び知覚過敏症の的確な治療が求められる。本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、複雑形状の根管内部を的確に清掃することができると共に、象牙質細管内に薬剤を浸透させて開口した象牙質細管を封鎖させたり、象牙質細管内に侵入した細菌を死滅させることができる歯科用超音波薬剤導入システム提供することを目的とする。

本発明係る歯科用超音波薬剤導入システムは、超音波を照射する歯科治療用プロープを用いて標的部に薬剤を導入する歯科用超音波薬剤導入システムであって、前記薬剤は、ナノパブルと薬剤との混合状態で標的部に導入され、前記歯科治療用プロープは、プロープ本体と、前記プロープ本体に取り付けられて、前記標的部に前記薬剤を導入するための導入プロープと、を有し、前記導入プロープにつき、(1)根管の根尖部側に超音波を照射する根尖部照射部と、根管の側枝側に超音波を照射する側枝照射部とを備え、根管内に挿入され前記根管内に超音波を伝搬させる根管内挿入型プロープ、(2)前記プロープ本体には超音波を発生させる超音波振動子が備えられ、その超音波振動子からの超音波をう蝕部伝搬させるう蝕治療用プローブ、(3)筒状体と、その筒状体の先端部に設けられて歯周ポケットヘ超音波を伝搬させる歯周ポケツト照射部と、前記筒状体の内部に設けられ、ナノバブルとの混合状態の薬剤を前記歯周ポケットに導入させる薬剤導入管と、を備え、歯周ポケツト内に挿入されて歯周疾患部に超音波を照射する歯周疾患治療用プロープ、又は(4)歯のエナメル質の楔形欠損部を型取りした楔形欠損部当てと、超音波振動を生じさせる振動子構成部と、前記振動子構成部と前記楔形欠損部当てとの間に設けられた流体が流れる流体路と、を備え、知覚過敏部に超音波を照射する知覚過敏治療用プロープ、の何れかを選択的に使用する、ことを特徴とする。

前記標的部は、例えば、根尖部の根尖病巣、副根管、象牙質細管、歯周ポケット、及びエナメル質の楔形欠損部のうち少なくとも何れか一つを含むものである。

前記ナノバブルの直径は、10nm以上500nm以下であることが好ましい。

前記薬剤が導入される超音波の周波数は、800KHz以上2MHz以下であることが好ましい。

本発明によれば、ナノバブルが根管の複雑構造内に入り込み、超音波照射によりキャビテーション効果が生じ、根管の複雑構造部分に薬剤を浸透させるので、根管内部を的確に清掃することができ、また歯周ポケット内に薬剤を浸透させてポケット内部及びセメント質・象牙質を的確に清掃できる。また、ナノバブルが象牙質細管内に入り込み、超音波照射によりキャビテーション効果が生じ、象牙質細管に薬剤を浸透させるので、象牙質細管内部を的確に清掃することができ、更には象牙質細管内に薬剤を浸透させて知覚過敏を的確に治療できる。本発明によれば、根管及び象牙質細管内の細菌を短時間で的確に殺菌できることから、過剰な歯の切削を防止でき、来院回数やchair timeが短縮でき、質の高い効率的な歯科医療が実現できる。

図1は、根管内挿入型プローブを取り付けている超音波導入装置の概略を説明する概略図である。

図2Aは、根管内挿入型プローブの根尖部照射部及び側枝照射部の概略図である。

図2Bは、根管内挿入型プローブの根尖部照射部及び側枝照射部の断面図である。

図3は、根尖部照射部及び側枝照射部に印加される信号又は電圧を説明するための回路構成図である。

図4Aは、副根管の解剖学的形態において側枝を説明する図である。

図4Bは、副根管の解剖学的形態において髄管を説明する図である。

図5は、根管内挿入型プローブを治療対象となる根管に挿入して、根管内部に超音波薬剤導入する状態を説明する概略図である。

図6Aは、根管に混合薬剤を注入した状態を説明する図である。

図6Bは、側枝方向に超音波を照射する状態を説明する図である。

図6Cは、根管内及び側枝内のナノバブルが破壊され、側枝方向に薬剤が導入され、細菌が死滅された状態を説明する図である。

図7Aは、根管において、象牙質細管内にある細菌の滅菌を概念的に説明する説明図であり、根管に混合薬剤を注入した状態である。

図7Bは、根管において、象牙質細管内にある細菌の滅菌を概念的に説明する説明図であり、象牙質細管の方向に超音波を照射し、ナノバブルが破壊された状態である。

図7Cは、根管において、象牙質細管内にある細菌の滅菌を概念的に説明する説明図であり、象牙質細管内に薬剤が浸透し、細菌が死滅された状態である。

図8Aは、ランジュバン振動子がプローブ本体内部に設けられている超音波導入装置の説明図である。

図8Bは、ランジュバン振動子を説明する図である。

図9は、う蝕治療用プローブが取り付けられているプローブ本体の説明図である。

図10は、う蝕治療用プローブを、治療対象であるう蝕部に押し当て、う蝕部に薬剤導入する状態を説明する概略図である。

図11Aは、う蝕部に混合薬剤を注入した状態を説明する図である。

図11Bは、象牙質細管の方向に超音波を照射する状態を説明する図である。

図11Cは、象牙質細管内のナノバブルが破壊され、細菌が死滅された状態を説明する図である。

図12は、歯周疾患治療用プローブを取り付けている超音波導入装置の概略を説明する概略図である。

図13Aは、歯周疾患治療用プローブの先端部の概略図である。

図13Bは、歯周疾患治療用プローブの先端部の断面図である。

図14は、歯周疾患治療用プローブを歯周ポケットに挿入して、歯周ポケット内部を無菌化する状態を説明する概略図である。

図15は、プローブ本体にランジュバンが設けられている場合の歯周疾患治療用プローブを説明する概略図である。

図16は、知覚過敏治療用プローブが取り付けられているプローブ本体の説明図である。

図17Aは、楔形欠損部を説明する図である。

図17Bは、楔形欠損部当ての型取りによる作成を説明する図である。

図17Cは、楔形欠損部に混合薬剤及び超音波伝導ゲルを塗布した状態を説明する図である。

図17Dは、楔形欠損部の治療を説明する図である。

図18は、ランダム周波数の発生構成図である。

図19Aは、複数の側枝照射部が根管内挿入型プローブの周状に設けられている構成を説明する概略図である。

図19Bは、複数の側枝照射部が根管内挿入型プローブの周状に設けられている構成についての先端方向からの正面図である。

図20は、複数の側枝照射部が根管内挿入型プローブの軸方向に設けられている構成を説明する図である。

図21Aは、超音波照射の電圧30V・ナノバブル使用の場合における、バブル濃度5%の薬剤の象牙質細管への導入度合いを示す顕微鏡写真図である。

図21Bは、超音波照射の電圧31V・ナノバブル使用の場合における、バブル濃度5%の薬剤の象牙質細管への導入度合いを示す顕微鏡写真図である。

図21Cは、超音波照射無し・ナノバブル使用の場合における、バブル濃度5%の薬剤の象牙質細管への導入度合いを示す顕微鏡写真図である。

図21Dは、超音波照射の電圧30V・マイクロバブル使用の場合における、バブル濃度5%の薬剤の象牙質細管への導入度合いを示す顕微鏡写真図である。

図21Eは、超音波照射無し・マイクロバブル使用の場合における、バブル濃度5%の薬剤の象牙質細管への導入度合いを示す顕微鏡写真図である。

図22Aは、超音波照射の電圧30V・ナノバブル使用の場合における、バブル濃度10%の薬剤の象牙質細管への導入度合いを示す顕微鏡写真図である。

図22Bは、超音波照射の電圧31V・ナノバブル使用の場合における、バブル濃度10%の薬剤の象牙質細管への導入度合いを示す顕微鏡写真図である。

図22Cは、超音波照射無し・ナノバブル使用の場合における、バブル濃度10%の薬剤の象牙質細管への導入度合いを示す顕微鏡写真図である。

図22Dは、超音波照射の電圧30V・マイクロバブル使用の場合における、バブル濃度10%の薬剤の象牙質細管への導入度合いを示す顕微鏡写真図である。

図22Eは、超音波照射無し・マイクロバブル使用の場合における、バブル濃度10%の薬剤の象牙質細管への導入度合いを示す顕微鏡写真図である。

図23Aは、電圧0V・120秒照射による根管内挿入型プローブによるマイクロバブルの破壊の程度をDark-lightIlluminatorで観察した図である。

図23Bは、電圧30V・120秒照射による根管内挿入型プローブによるマイクロバブルの破壊の程度をDark-lightIlluminatorで観察した図である。

図23Cは、電圧60V・120秒照射による根管内挿入型プローブによるマイクロバブルの破壊の程度をDark-lightIlluminatorで観察した図である。

図23Dは、電圧90V・120秒照射による根管内挿入型プローブによるマイクロバブルの破壊の程度をDark-lightIlluminatorで観察した図である。

図23Eは、電圧0V・120秒照射による根管内挿入型プローブによるナノバブルの破壊の程度をDark-light Illuminatorで観察した図である。

図23Fは、電圧30V・120秒照射による根管内挿入型プローブによるナノバブルの破壊の程度をDark-light Illuminatorで観察した図である。

図24Aは、EnterococcusFaecalis(乳酸球菌)に感染していないイヌ抜去歯の根管を示す写真図である。

図24Bは、EnterococcusFaecalis(乳酸球菌)を試験管内で人工的に7日間感染させたイヌ抜去歯の根管を示す写真図である。

図24Cは、EnterococcusFaecalis(乳酸球菌)を試験管内で人工的に7日間感染させたイヌ抜去歯の根管に対して、電圧30Vの超音波と10%ナノバブルを使用した薬剤導入による無菌化を示す写真図であり、アンピシリン使用後2日目である。

図24Dは、EnterococcusFaecalis(乳酸球菌)を試験管内で人工的に7日間感染させたイヌ抜去歯の根管に対して、アンピシリン使用後2日目の写真図である。

図24Eは、EnterococcusFaecalis(乳酸球菌)を試験管内で人工的に7日間感染させたイヌ抜去歯の根管に対して、電圧30Vの超音波と10%ナノバブルを使用した2日目の写真図である。

図24Fは、EnterococcusFaecalis(乳酸球菌)を試験管内で人工的に7日間感染させたイヌ抜去歯の根管に対して、電圧60Vの超音波と10%マイクロバブルを使用した薬剤導入による写真図であり、アンピシリン使用後2日目である。

図25Aは、EnterococcusFaecalis(乳酸球菌)を生体内でイヌ歯の根管内に人工的に7日間感染させた後に、電圧30Vの超音波と10%ナノバブル使用のアンピシリン薬剤導入を示す写真図である。

図25Bは、EnterococcusFaecalis(乳酸球菌)を生体内でイヌ歯の根管内に人工的に7日間感染させた後に、アンピシリン使用後4日目を示す写真図である。

図25Cは、EnterococcusFaecalis(乳酸球菌)を生体内でイヌ歯の根管内に人工的に7日間感染させた後の写真図である。

図26は、ナノバブル及びマイクロバブルの粒径分布を示す図である。

(第1実施形態) 以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明する。本発明の実施形態に係る歯科用超音波薬剤導入システム900は、薬剤をナノバブルとの混合状態にて標的部に導入し、超音波導入装置800を使用してその標的部に対して超音波を照射する。

図1に示すように、超音波導入装置800は、プローブ本体150と、プローブ本体150に設けられる根管内挿入型プローブ100と、操作部160とを有して構成される。接続部140は操作部160とプローブ本体150とを電気的に接続する。操作部160は、超音波の周波数を調整する周波数調整部161と、超音波の強度を調整する強度調整部162とを有する。操作部160には、超音波導入装置800の電源をON・OFFする電源163が設けられている。

プローブ本体150を把持して根管内挿入型プローブ100の先端部を根管内に挿入しやすいように、根管内挿入型プローブ100は、先端部プローブ100aと基部プローブ100bとからなり、それらが略「く」字形状に屈折して構成されている。根管内挿入型プローブ100の「く」字形状の度θは、根管内に挿入し易いものであれば特に限定されるものでないが、例えば角度θは30〜80°とすることができ、好適には60°である。根管内挿入型プローブ100の大きさは、根管内に挿入される大きさであれば特に限定されるものではないが、例えば断面が円とし、その直径が0.3mm〜1.2mmであり、好適には0.4mm〜0.8mmであり、更に好適には0.5mmである。また、根管内挿入型プローブ100の長さは、特に限定されるものではないが、例えば基部プローブ100bの長さが1.0cm〜1.6cmであり、先端部プローブ100aの長さが1.5cm〜3.0cmである。根管内挿入型プローブ100の材質は、腐食しにくくかつ軽量のものを使用することが好ましく、例えばステンレス鋼(SUS:Stainless Used Steel)を使用できる。

プローブ本体150には固定ネジ151が設けられ、根管内挿入型プローブ100は固定ネジ151を介してプローブ本体150に着脱自在に固定される。即ち、根管内挿入型プローブ100の基端部には雄ネジ部が形成されており、その雄ネジ部が固定ネジ151に形成された雌ねじ部にねじ込まれるようになっている。また、根管内挿入型プローブ100を取り外して、後述するう蝕治療用プローブ130に付け替えることも可能である。これによりプローブ本体150は共通して使用して、プローブのみを治療の目的に応じて選択的に取り替えることが可能となる。なお、根管内挿入型プローブ100はプローブ本体150に対して一体型として構成することも可能である。

図2Aは、根管内挿入型プローブの根尖部照射部及び側枝照射部の概略図である。図2Bは、根管内挿入型プローブの根尖部照射部及び側枝照射部の断面図である。

図2Aに示すように、根管内挿入型プローブ100は、根管の根尖部側に超音波を照射する根尖部照射部110と、根管の側枝側に超音波を照射する側枝照射部120とを有する。根尖部照射部110は、根管内挿入型プローブ100の先端部に設けられており、プローブの長手方向に超音波を照射する。側枝照射部120は、根管内挿入型プローブ100の先端部より若干後部側よりの位置に設けられており、プローブの短手方向に超音波を照射する。

図2A及び図2Bに示すように、根尖部照射部110は、円筒状の圧電素子112と、圧電素子112の内周面の表面に形成された筒状の内側電極111と、圧電素子112の外周面の表面に形成された円筒状の外側電極113とから構成される超音波振動子を有して構成される。

内側電極111は、その表面が絶縁物で被覆されることにより外部に対して電気的に絶縁した状態で設けられる。外側電極113は外部に対して電気的に露出した状態で設けられる。図2Bに示すように、内側電極111と外側電極113には、夫々、リード線114及び115が接続されており、リード線114及び115は根管内挿入型プローブ100の外部へ導かれる。

また、図2Bに示すように、側枝照射部120は、円筒状の圧電素子122と、圧電素子122の内周面の表面に形成された筒状の内側電極121と、圧電素子122の外周面の表面に形成された円筒状の外側電極123とから構成される超音波振動子を有して構成される。

内側電極121は、その表面が絶縁物で被覆されることにより外部に対して電気的に絶縁した状態で設けられる。外側電極123は外部に対して電気的に露出した状態で設けられる。内側電極121と外側電極123には、夫々、リード線124及び125が接続されており、リード線124及び125は根管内挿入型プローブ100の外部へ導かれる。

超音波の周波数は、後述するように、キャビテーションを発生させて根管の複雑構造に薬剤を浸透させることができる周波数であれば特に限定されるものではないが、例えば100KHz〜10MHzとすることができ、好適には800kHz〜2MHzであり、特に好適には約1MHzである。また、超音波の照射時間は、特に限定されるものではないが、例えば10秒〜10分間であり、好適には20秒〜3分間であり、特に好適には2分間である。

超音波の強度は、根管等の歯科組織に損傷を与えずに好適にキャビテーションを発生させる強度であれば特に限定されるものではないが、例えば1〜30W/cm2とすることができ、好適には10〜25W/cm2であり、特に好適には約20W/cm2である。

図3は、根尖部照射部110及び側枝照射部120に印加される信号又は電圧を説明するための回路構成図である。

根尖部照射部110及び側枝照射部120を制御する超音波制御ブロックは、CPU170、出調整回路171、発振回路172、第1駆動回路173、第2駆動回路174、第1絶縁トランス175、及び第2絶縁トランス176を備えて構成されている。

なお、図3では図示が省略されるが、図2Bで示される内側電極111と外側電極113とから導出されたリード線114と115は、第1絶縁トランス175の二次側巻線の一方の端子と他方の端子とに夫々接続される。また、図2Bで示される内側電極121と外側電極123とから導出されたリード線124と125は、第2絶縁トランス176の二次側巻線の一方の端子と他方の端子とに夫々接続される。

出力調整回路171は、根尖部照射部110の超音波振動子及び側枝照射部120の超音波振動子に対応して各超音波振動子に与えられる駆動信号の振幅を第1駆動回路173及び第2駆動回路174に指示し、負荷に付与される超音波振動の強さを設定可能な範囲内でそれぞれの超音波振動子に対して個別かつ任意に設定する。出力調整回路171は、例えば外部から与えられる指示に基づいて振幅を指示する。

発振回路172は、各超音波振動子の夫々に対応した駆動周波数の交流信号を生成し、生成した交流信号をそれぞれ対応した第1駆動回路173、第2駆動回路174に与える。

第1駆動回路173は、根尖部照射部110の超音波振動子に対して予め設定された駆動周波数で発振回路172から与えられる交流信号を、出力調整回路171から指示された振幅に増幅し、増幅された駆動信号を根尖部照射部110の超音波振動子に供給して超音波振動子を駆動する。

第2駆動回路174は、側枝照射部120の超音波振動子に対して予め設定された駆動周波数で発振回路172から与えられる交流信号を、出力調整回路171から指示された振幅に増幅し、増幅された駆動信号を側枝照射部120の超音波振動子に供給して超音波振動子を駆動する。

根尖部照射部110に含まれる超音波振動子と、側壁照射部120に含まれる超音波振動子は、径等の形状が同一又は異なっていてもよく、また駆動周波数も同一又は異なっていてもよい。

CPU170は、超音波制御ブロックの動作を制御する制御中枢として機能し、プログラムに基づいて各種動作処理を制御するコンピュータに必要な、演算処理装置、記憶装置、入出力装置等の資源を備えた例えばマイクロコンピュータ等の機能を備えている。

CPU170は、予め内部に保有する制御ロジック(プログラム)に基づいて、発振回路172、出力調整回路171を含む超音波制御ブロックの制御を要する構成要素に指令を送り、超音波振動子の駆動制御に必要な全ての動作を統括管理して制御する。

外部から与えられる駆動指示に基づき、根尖部照射部110の超音波振動子と側枝照射部120の超音波振動子とが、同時に又は選択的に駆動される。

例えば根尖部照射部110の超音波振動子の駆動が指令されると、根尖部照射部110の超音波振動子に対応して予め設定された駆動周波数の交流信号が発振回路172で生成され、生成された交流信号は第1駆動回路173に与えられる。また、外部から与えられる根尖部照射部110の超音波振動子の振動の強さ、すなわち超音波振動子に供給される駆動信号の電圧振幅(発振回路172から出力される交流信号の増幅率)が出力調整回路171から第1駆動回路173に与えられる。

これにより、発振回路172から与えられた駆動周波数の交流信号は、第1駆動回路173で出力調整回路171から与えられた増幅率で増幅されて駆動信号が生成され、生成された駆動信号が根尖部照射部110の超音波振動子に供給されて、根尖部照射部110の超音波振動子が駆動される。

標的部を無菌化する薬剤はナノバブルとの混合状態で導入される。標的部は、特に限定されるものではなく歯又は歯周組織であり、特に根尖部の根尖病巣、象牙質細管、副根管、歯周ポケット、及びエナメル質の楔形欠損部である。

図4Aは、副根管の解剖学的形態において側枝を説明する図である。図4Bは、副根管の解剖学的形態において髄管285を説明する図である。歯髄は、冠部歯髄287と、その下に位置する根部歯髄288とを有する。副根管とは、主根管より分枝した種々の細管に対する総称であり、副根管には側枝に加えて、主根管が根尖部で分枝することにより形成される根尖分岐283と、臼歯の根分岐部に認められる髄管285とがある。図4Aに示すように、側枝は、歯根の中央から根尖にかけて認められる主根管より分枝した細管であり、側枝には管外側枝282と管内側枝281とがある。管外側枝282は主根管からほぼ直角或いは斜走し、根尖孔284以外の歯根の側面に開口し歯根膜組織と交通している。一方、上顎小臼歯のような頬舌側の分岐根管において、根管と根管の間を連結する側枝等を管内側枝281という。根尖分岐283の発現は、上顎では第二小臼歯と第一及び第二大臼歯の近心頬側根に多く、下顎では第一及び第二大臼歯の近心根に多く認められる。図4Bに示すように、髄管285は、臼歯の髄床底と歯根膜とを結ぶ細管であり、根分岐部には1〜数本の髄管285が認められる。髄管285には、冠部歯髄腔と歯根膜組織とが直接交通しているいわゆる完全髄管と、直接交通せずに一部が盲端となって終わっている盲管286がある。

薬剤とナノバブルとの混合の割合は、特に限定されるものではない。ナノバブルの含有液量は、後述するキャビテーション効果の発生度等を考慮して適宜選択することができ、例えば、ナノバブルの含有液量は0.1〜20体積%とすることができ、好適には5〜10体積%、即ち6×108個/ml〜1.2×109個/mlである。

薬剤としては、標的部消毒・無菌化可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えば次亜塩素酸ナトリウム溶液、過酸化水素水溶液、ホルマリン(ホルマリンクレゾール、ホルマリングアヤコール)、フェノール製剤(フェノール、フェノールカンフル、パラクロロフェノールカンフル、クレサチン、グアヤコール、クレゾール)、ヨウ素製剤(ヨードチンキ)、EDTA製剤、及び水酸化カルシウム溶液等である。

また、薬剤として抗菌剤或いは抗生物質を選択することも可能であり、例えばテトラサイクリン塩酸塩溶液、アンピシリン、イミペネム、パニペネム、バンコマイシン、クロラムフェニコールPBSS、PBSC(グラム陽性菌を標的とするペニシリン、ペニシリン耐性株用のバシトラシン、グラム陰性菌用のストレプトマイシン、酵母を標的とするカプリル酸ナトリウム)、オフロキサシン、レボフロキサシン、メトロニダゾール、セファクロル、シプロフロキサン、イミダゾール、カテプシンK阻害薬、BMPs及びbFGF等である。

ナノバブルは、脂質で形成される小胞と、この小胞内を充填するガス又はガス前駆体とを有する。

ナノバブルの直径は、根管の複雑構造及び深部組織への到達性及び安定性等を考慮して、例えば10〜500nmであり、好適には100〜400nmである。ナノバブルの直径を上記の範囲に設定することにより、根尖部、側枝及び象牙質細管等へ到達させることが可能である。なお、ナノバブルの直径は、例えばナノ粒子分布測定装置(SALD−7100、島津製作所)により測定される。

ナノバブルの脂質組成、帯電状態、密度、重量、粒子径等は、対象となる病巣部の性質等に応じて適宜設計することができる。

小胞を調製するために使用される脂質は、特に限定されるものではないが、脂質類を含有する膜構成成分からなる。脂質類は、例えばリン脂質、グリセロ糖脂質及びスフィンゴ糖脂質の他、これらの脂質に、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基又は第4級アンモニウム基が導入されたカチオン性脂質である。

リン脂質としては、例えばホスファチジルコリン(大豆ホスファチジルコリン、卵黄ホスファチジルコリン、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジペンタデカノイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン若しくはジステアロイルホスファチジルコリン等)、ホスファチジルエタノールアミン(ジラウロイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン若しくはジステアロイルホスファチジルエタノールアミン等)、ホスファチジルセリン(ジラウロイルホスファチジルセリン、ジミリストイルホスファチジルセリン、ジパルミトイルホスファチジルセリン若しくはジステアロイルホスファチジルセリン等)、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール(ジラウロイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール若しくはジステアロイルホスファチジルグリセロール等)、ホスファチジルイノシトール(ジラウロイルホスファチジルイノシトール、ジミリストイルホスファチジルイノシトール、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール若しくはジステアロイルホスファチジルイノシトール等)、リゾホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、卵黄レシチン、大豆レシチン又は水素添加リン脂質等の天然又は合成のリン脂質等が挙げられる。

グリセロ糖脂質は、特に限定されるものではないが、例えば、スルホキシリボシルグリセリド、ジグリコシルジグリセリド、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリド、グリコシルジグリセリド等が挙げられる。

スフィンゴ糖脂質は、特に限定されるものではないが、例えば、ガラクトシルセレブロシド、ラクトシルセレブロシド、ガングリオシド等が挙げられる。

カチオン性脂質は、特に限定されるものではないが、例えば、上記リン脂質、グリセロ糖脂質又はスフィンゴ糖脂質に、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、トリアルキルアンモニウム基、モノアシルオキシアルキル−ジアルキルアンモニウム基、ジアシルオキシアルキル−モノアルキルアンモニウム基等の第4級アンモニウム基が導入された脂質が挙げられる。また、ポリアルキレングリコール修飾脂質としては、上記リン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質に、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が修飾した脂質、例えばジ−C12-24アシル−グリセロール−ホスファチジルエタノールアミン−N−PEG等が挙げられる。

また、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪アルコール、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ポリオキシエチレン化ソルビタン脂肪酸エステル、グリセロールポリエチレングリコールオキシステアレート、グリセロールポリエチレングリコールリシノール酸、エトキシ化ダイズステロール、エトキシ化ヒマシ油、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンポリマー、及びポリオキシエチレン脂肪酸ステアリン酸等のニオソームを使用できる。

また、コレステロールサルフェート、コレステロールブチレート、コレステロールイソブチレート、コレステロールパルミテート、コレステロールステアレート、ラノステロールアセテート、エルゴステロールパルミテート、及びフィトステロールn-ブチレートを含むステロール脂肪族系酸エステルを使用できる。

また、コレステロールグルクロニド、ラノステロールグルクロニド、7-デヒドロコレステロールグルクロニド、エルゴステロールグルクロニド、コレステロールグルコネート、ラノステロールグルコネート、及びエルゴステロールグルコネートを含む糖酸のステロールエステルを使用できる。

また、ラウリルグルクロニド、ステアロイルグルクロニド、ミリストイルグルクロニド、ラウリルグルコネート、ミリストイルグルコネート、及びステアロイルグルコネートを含む糖酸及びアルコールのエステルを使用できる。

また、スクロースラウレート、フルクトースラウレート、スクロースパルミテート、スクロースステアレート、グルクロン酸、アカリック(accharic)酸、及びポリウロン酸を含む糖及び脂肪酸のエステルを使用できる。

また、サルササポゲニン、スミラゲニン、ヘデラゲニン、オレアノール酸、及びジギトキシゲニンを含むサポニンを使用できる。

また、グリセロールジラウレート、グリセロールトリラウレート、グリセロールジパルミテート、グリセロールトリパルミテート、グリセロールジステアレート、グリセロールトリステアレート、グリセロールジミリステート、グリセロールトリミリステートを含むグリセロール及びグリセロールエステルを使用できる。

また、n-デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、及びn-オクタデシルアルコールを含む長鎖アルコールを使用できる。

また、6-(5-コレステン-3β-イルオキシ)-1-チオ-β-D-ガラクトピラノシド;ジガラクトシルジグリセリド;6-(5-コレステン-3β-イルオキシ)ヘキシル-6-アミノ-6-デオキシ-1-チオ-β-D-ガラクトピラノシド;6-(5-コレステン-3β-イルオキシ)ヘキシル-6-アミノ-6-デオキシ-1-チオ-α-D-マンノピラノシド;12-(((7'-ジエチルアミノクマリン-3-イル)カルボニル)メチルアミノ)-オクタデカン酸;N-[12-(((7'-ジエチルアミノクマリン-3-イル)カルボニル)メチル-アミノ)オクタデカノイル]-2-アミノパルミチン酸;コレステリル)4'-トリメチル-アンモニオ)ブタノエート;N-スクシニルジオレオイルホスファチジルエタノール-アミン;1,2-ジオレオイル-sn-グリセロール;1,2-ジパルミトイル-sn-3-スクシニルグリセロール;1,3-ジパルミトイル-2-スクリニルグリセロール;1-ヘキサデシル-2-パルミトイルグリセロホスホエタノールアミン、及びパルミトイルホモシステインを使用できる。

ナノバブルには、膜構成物質として必要に応じ他の物質を加えることもでき、例えば膜安定化剤としてシトステロール、コレステロール、ジヒドロコレステロール、コレステロールエステル、フィトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、コレスタノール、ラノステロール、1−O−ステロールグルコシド、1−O−ステロールマルトシド、及びこれらの混合物を含有させることができる。

ナノバブルの重量は特に限定されるものでなく、リポソーム内部に塩化セシウム等の高密度な溶液を充填させることにより上昇させることができる。ナノバブルの密度は、リポソーム内部にデキストラン・サルフェート等の多糖類を含有させることにより上昇させることができる。

ナノバブルに内包させることができるガス又はガス前駆体は、下記のものが使用される。

パーフルオロメタン、パーフルオロエタン、パーフルオロプロパン、パーフロオロイソブタン、パーフロオロノルマルブタン、パーフルオロ-1-ブテン、パーフルオロ-2-ブテン、パーフルオロ-2-ブチン、パーフルオロシクロブテン、パーフロオロイソペンタン、パーフロオロノルマルペンタン、パーフルオロイソヘキサン、パーフルオロノルマルヘキサン、パーフルオロイソヘプタン、パーフルオロノルマルヘプタン、パーフルオロイソオクタン、パーフルオロノルマルオクタン、パーフルオロデカリン、パーフルオロドデカリン、パーフルオロジメチルアミン、パーフルオロエチレンアミン、パーフルオロペント-1-エン、ペンタフルオロオクタデシルヨージド、パーフルオロオクチルブロマイド(PFOB)、パーフルオロオクチルヨージド、パーフルオロトリプロピルアミン及びパーフルオロトリブチルアミン等の如きパーフルオロカーボン類を使用できる。パーフルオロカーボン類は、リポソームの中に捕捉させるか或はエマルジョン中に安定化させることができる。

また、ラウリルトリメチルアンモニウムブロマイド(ドデシル−)、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド(ヘキサデシル−)、ミリスチルトリメチルアンモニウムブロマイド(テトラデシル−)、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(アルキル=C12、C14、C16)、ベンジルジメチルドデシルアンモニウムブロマイド/クロライド、ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウムブロマイド/クロライド、ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムブロマイド/クロライド、セチルジメチルエチルアンモニウムブロマイド/クロライド又はセチルピリジニウムブロマイド/クロライドを使用できる。

また、ヘキサフルオロアセトン、イソプロピルアセチレン、アレン、テトラフルオロ-アレン、ボロントリフルオリド、イソブタン、1,2-ブタジエン、2,3-ブタジエン、1,3-ブタジエン、1,2,3-トリクロロ-2-フルオロ-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3--ブタジエン、ヘキサフルオロ-1,3-ブタジエン、ブタジイン、1-フルオロブタン、2-メチルブタン、デカフルオロブタン、1-ブテン、2-ブテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、4-フェニル-3-ブテン-2-オン、2-メチル-1-ブテン-3-イン、ブチルニトレート、1-ブチン、2-ブチン、2-クロロ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブチン、3-メチル-1-ブチン、2-ブロモ-ブチルアルデヒド(butyraldehyde)、カルボニルスルフィド、クロトノニトリル、シクロブタン、メチル-シクロブタン、オクタフルオロ-シクロブタン、3-クロロシクロペンテン、オクタフルオロシクロペンテン、シクロプロパン、1,2-ジメチルシクロプロパン、1,1-ジメチルシクロプロパン、1,2-ジメチルシクロプロパン、エチルシクロプロパン、メチルシクロプロパン、ジアセチレン、3-エチル-3-メチルジアジリジン、1,1,1-トリフルオロジアゾエタン、ジメチルアミン、ヘキサフルオロジメチルアミン、ジメチルエチルアミン、ビス(ジメチルホスフィン)アミン、2,3-ジメチル-2-ノルボルナン、ジメチルオキソニウムクロライド、1,3-ジオキソラン-2-オン、4-メチル-1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,1-トリフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン、1,1-ジクロロエタン、1,1-ジクロロ-1,2,2,2-テトラフルオロエタン、1,2-ジフルオロエタン、1-クロロ-1,1,2,2,2-ペンタフルオロエタン、2-クロロ-1,1-ジフルオロエタン、1,1-ジクロロ-2-フルオロエタン、1-クロロ-1,1,2,2-テトラフルオロエタン、2-クロロ-1,1-ジフルオロエタン、クロロエタン、クロロペンタフルオロエタン、ジクロロトリフルオロエタン、フルオロエタン、ヘキサフルオロエタン、ニトロペンタフルオロエタン、ニトロソペンタフルオロエタン、エチルビニルエーテル、1,1-ジクロロエタン、1,1-ジクロロ-1,2-ジフルオロエタン、1,2-ジフルオロエタン、メタン、トリフルオロメタンスルホニルクロライド、トリフルオロメタンスルホニルフルオリド、ブロモジフルオロニトロソメタン、ブロモフルオロメタン、ブロモクロロフルオロメタン、ブロモトリフルオロメタン、クロロジフルオロニトロメタン、クロロジニトロメタン、クロロフルオロメタン、クロロトリフルオロメタン、クロロジフルオロメタン、ジブロモジフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロフルオロメタン、ジフルオロメタン、ジフルオロヨードメタン、ジシラノメタン、フルオロメタン、ヨードメタン、ヨードトリフルオロメタン、ニトロトリフルオロメタン、ニトロソトリフルオロメタン、テトラフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、トリフルオロメタン、2-メチルブタン、メチルエーテル、メチルイソプロピルエーテル、メチルアセテート、メチルニトライト、メチルスルフィド、メチルビニルエーテル、ネオン、ネオペンタン、窒素(N2)、亜酸化窒素、1,2,3-ノナデカン-トリカルボン酸-2-ヒドロキシトリメチルエステル、1-ノネン-3-イン、酸素(O2)、1,4-ペンタジエン、n-ペンタン、4-アミノ-4-メチルペンタン-2-オン、1-ペンテン、2-ペンテン(シス)、2-ペンテン(トランス)、3-ブロモペント-1-エン、テトラクロロフタル酸、2,3,6-トリメチルピペリジン、プロパン、1,1,1,2,2,3-ヘキサフルオロプロパン、1,2-エポキシプロパン、2,2-ジフルオロプロパン、2-アミノプロパン、2-クロロプロパン、ヘプタフルオロ-1-ニトロプロパン、ヘプタフルオロ-1-ニトロソプロパン、プロペン、ヘキサフルオロプロパン、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロ-2,3-ジクロロプロパン、1-クロロプロパン、クロロプロパン-(トランス)、2-クロロプロパン、3-フルオロプロパン、プロピン、3,3,3-トリフルオロプロピン、3-フルオロスチレン、六フッ化硫黄、十フッ化(二)硫黄(S2F10)、2,4-ジアミノトルエン、トリフルオロアセトニトリル、トリフルオロメチルペルオキシド、トリフルオロメチルスルフィド、六フッ化タングステン、ビニルアセチレン、ビニルエーテル、及びキセノンを使用できる。

ナノバブルは製造後時間とともに次第に粒径が高くなり5μm以上に変化する傾向があるが、開封しなければビーズ式ホモジナイザー(PRECELLYS24,ネッパジーン)を用いて、6500回転、30秒間遠心することにより、100〜2000nmに変化する。

次に、本実施形態の歯科用超音波薬剤導入システム900の使用態様について説明する。図5は、本実施形態に係る歯科用超音波薬剤導入システム900の根管内挿入型プローブ100を、治療対象となる根管200に挿入して、根管200内部を無菌化する状態を説明する概略図である。

根管200は、中空形状の主根管210と、主根管210から細かく枝分かれしている部位である側枝220とを有する。象牙質243の上部はエナメル質242にて覆われており、下部はセメント質240、歯根膜249及び歯槽骨241にて固定される。根管200の根尖部230の下には、根尖病巣260がある。根尖病巣とは、根尖病変又は根尖性歯周炎ともいい、歯の歯根の先端付近にできる病気(例えば、歯根肉芽腫、歯根嚢胞等)の病巣総称である。

ナノバブルと薬剤との混合物である混合薬剤は、注射器やスポイト等の注入具を使用して、根管内挿入型プローブ100が根管200に挿入される前に根管200内に注入される。

そして、根管内挿入型プローブ100を根管200内に挿入し、操作部160を操作して根尖部照射部110及び側枝照射部120を作動させる。側枝照射部120の圧電素子122は、根管内挿入型プローブ100の軸に対して垂直方向に振動するので、超音波エネルギーも矢印Sで示すように側方に照射される。側枝照射部120から、根管200の側枝220の方向に対して超音波が照射され、側枝220の細かい分岐構造内部にてキャビテーションが発生する。キャビテーションとは、ある音響学的振動下で、水溶液に溶けているガスが気泡となるか、又は、既に存在していた極微少な泡が、振動、又は拡大、縮小を繰り返して気泡となることである。混合薬剤中にナノバブルが含有されているから、キャビテーションのためのエネルギー閾値が低下する。そして、キャビテーションにおいて、超音波エネルギーはミクロ領域に濃縮され、キャビテーションは小さな衝撃波を引き起こし、細胞透過性を増加させる。また、キャビテーションはナノバブルを破壊し、破壊の衝撃により薬剤を根管の複雑構造部分及び象牙質細管内に到達させる。これにより、側枝220内の細菌を、薬剤により効率よく死滅させる。従来の単に薬剤を塗布或いは貼薬する方法に比べて、薬剤が根管の複雑構造部分及び象牙質細管内により深く浸透し、即座に確実に無菌化をはかることができ、非常に有利である。

図6A、図6B、図6Cは、側枝の無菌化を概念的に説明する説明図であり、図6A、図6B、図6Cを使用して更に側枝220内の無菌化について説明する。図6Aは、根管に混合薬剤を注入した状態を説明する図である。図6Bは、側枝方向に超音波を照射する状態を説明する図である。図6Cは、根管内及び側枝内のナノバブルが破壊され、側枝方向に薬剤が導入され、細菌が死滅された状態を説明する図である。図6Aに示すように、根管200内に混合薬剤を注入した状態では、ナノバブル310は側枝220内に浸透するものの、薬剤320は側枝220まで浸透しにくい。そのため、側枝220まで入り込んだ細菌311は滅菌されていない。次に図6Bに示すように、図示しない根管内挿入型プローブから側枝方向に超音波が照射されると、その近傍のナノバブル310が破壊され、それに伴ってキャビテーションが発生し、このキャビテーション効果により薬剤320が側枝220内に浸透する。更に図6Cに示すように、より側枝220内に超音波が到達するにつれ、側枝220内のナノバブル310が破壊され、それに伴ってキャビテーションが発生し、更に薬剤320が側枝220の奥まで浸透する。これにより、側枝220内の細菌311を的確に死滅させる。

また、本実施形態に係る発明では、薬剤320と混合されるバブルがナノバブル310であるから、比較的低いエネルギーにてキャビテーション効果を発生させることができる。

図7Aは、根管200に混合薬剤を注入した状態を説明する図である。図7Bは、象牙質細管248の方向に超音波を照射し、ナノバブルが破壊された状態を説明する図である。図7Cは、根管200において、象牙質細管248内にある細菌311の滅菌を概念的に説明する図であり、象牙質細管248内に薬剤が浸透し、細菌が死滅された状態である。

図7Aに示すように、象牙質細管248はチューブ状であり、象牙質は象牙質細管248が集まってできている。根管200内に混合薬剤を注入した状態では、ナノバブル310は象牙質細管248内に浸透するものの、薬剤320は象牙質細管248まで浸透しにくい。そのため、象牙質細管248まで入り込んだ細菌311は滅菌されていない。

次に図7Bに示すように、図示しない根管内挿入型プローブから象牙質細管248方向に超音波が照射されると、その近傍のナノバブル310が破壊され、それに伴ってキャビテーションが発生し、このキャビテーション効果により薬剤320が象牙質細管248内に浸透する。

更に図7Cに示すように、象牙質細管248内に超音波が到達するにつれ、象牙質細管248内のナノバブル310が破壊され、それに伴ってキャビテーションが発生し、更に薬剤320が象牙質細管248の奥まで浸透する。そのため、象牙質細管248に奥深く潜む細菌311に確実に薬剤を到達させ、即効で完全殺菌を行うことができる。

図5に戻り、根尖部照射部110の圧電素子112は、根管内挿入型プローブ100の軸方向に振動するので、超音波エネルギーは矢印Fで示すように前方にも照射される。このように、根管200の根尖部230の方向に対して超音波エネルギーが照射され、根尖病巣260にてキャビテーションが発生し、上記した側枝220での無菌化と同様にして、根尖病巣260における細菌を、薬剤により的確に効率よく死滅する。

根管200は、細かく枝分かれしている副根管や側枝220を有するため、現状の根管治療では、抜髄でも感染根管治療でも、十分な治療ができるのは主根管210のみであり、副根管や側枝220を十分に拡大清掃することは困難である。そのため、現状の感染根管治療は、病原因子を相当残存させる処置と考えられ、確実な予後を期待するのは困難である。更に加齢変化が加わると、根管200は石灰化により更に閉塞・複雑化するため、感染根管治療後の予後を期待することは益々困難である。しかし、本発明によれば、側枝照射部120から側枝220の方向に対して超音波が照射され、副根管や側枝220の細部まで清掃及び無菌化することができるため、加齢変化が無い場合は勿論のこと加齢変化が加わった場合においても確実な予後を期待することができる。

また、根尖部230側が著しく湾曲している根管200の場合、根管処置は困難であるが、本実施形態に係る発明によれば、根尖部照射部110及び側枝照射部120から超音波が照射され、著しく湾曲している根管200であっても細部まで清掃及び無菌化することができるので、本発明による利益は計り知れない。

(第2実施形態) 本実施形態では、上述の第1実施形態と異なり、超音波振動子は根管内挿入型プローブ100の先端に設けられているのではなく、プローブ本体150内に設けられる。

図8Aは、ランジュバン振動子180がプローブ本体150内部に設けられている超音波導入装置800の説明図である。図8Bは、ランジュバン振動子180を説明する図である。

図8Aに示すように、プローブ本体150内部にはランジュバン振動子180が設けられる。操作部160の構成は、上述の実施形態1と共通する。プローブ本体150には固定ネジ151が設けられ、根管内挿入型プローブ100は固定ネジ151を介してプローブ本体150に着脱自在に固定される。ランジュバン振動子180の前端には振動振幅増幅用ホーン181が一体的に連結固定され、この振動振幅増幅用ホーン181に根管内挿入型プローブ100が連結される。また、根管内挿入型プローブ100を取り外して、後述するう蝕治療用プローブ130を付け替えることも可能である。なお、根管内挿入型プローブ100はプローブ本体150に対して一体型として構成することも可能である。

図8Bに示すように、ランジュバン振動子180は、ボルト心棒184と、そのボルト心棒184よりも大きな孔を備えるドーナツ状平板の圧電素子182と、圧電素子182と略同一の外径、内径寸法を有し、その厚さが圧電素子182よりも薄い電極板183と、超音波がう蝕治療用プローブ130に伝搬する金属ブロック181と、を含んでいる心棒一体型ランジュバン型振動子である。複数の圧電素子182と電極板183とはその中心の孔がボルト心棒184に入ってボルト心棒184と同軸となるように交互に積層されている。心棒一体型ランジュバン型振動子とすることにより、比較的低い周波数で共振することができ、ボルトで締めることにより大振動振幅に耐え、頑丈な高出力振動子として動作させることが可能である。

ランジュバン振動子180から発生される超音波は、根管内挿入型プローブ100を伝搬してその先端部から放出される。これにより、実施形態1と同様に根管200の複雑構造の細部まで清掃及び無菌化することが可能となる。

(第3実施形態) 上述の第1及び第2実施形態では、プローブ本体150に取り付けられるプローブは根管内に挿入される根管内挿入型プローブであったが、本実施形態では、上述の実施形態と異なり、う蝕部分に押し当てて使用するう蝕治療用プローブである。

図9は、う蝕治療用プローブ130が取り付けられているプローブ本体150の説明図である。プローブ本体150内部には、上述の実施形態2と同様にランジュバン振動子180が設けられ、図8Bに示したように金属ブロック181を介して超音波が伝搬する。操作部160の構成は、上述の実施形態1と共通する。

う蝕治療用プローブ130は、根管内挿入型プローブ100と異なり直線形状である。う蝕治療用プローブ130の大きさは、う蝕部に押し当てて使用することができれば特に限定されるものではないが、例えば直径が2mm〜8mmであり、好適には直径が3mm〜6mmである。また、う蝕治療用プローブ130の長さは、特に限定されるものではないが、例えば1cm〜5cmであり、好適には2cm〜4cmであり、更に好適には3cmである。う蝕治療用プローブ130の材質は、腐食しにくくかつ軽量のものを使用することが好ましく、例えばステンレス鋼を(SUS:Stainless Used Steel)使用できる。

超音波の周波数は、後述するように、キャビテーションを発生させてう蝕部及び象牙質細管まで薬剤を浸透させることができる周波数であれば特に限定されるものではないが、例えば100KHz〜10MHzとすることができ、好適には800KHz〜2MHzであり、特に好適には約1MHzである。

超音波の強度は、象牙質や歯髄等の歯科組織に損傷を与えずに好適にキャビテーションを発生させる強度であれば特に限定されるものではないが、例えば1〜30W/cm2とすることができ、好適には10〜25W/cm2であり、特に好適には約20W/cm2である。

う蝕部を無菌化する薬剤は、上述の第1実施形態と同様に、ナノバブルとの混合状態で導入される。薬剤及びナノバブルについては上述の第1実施形態と同様のものを使用できる。

次に、本実施形態の歯科用超音波薬剤導入システム900の使用態様について説明する。図10は、本実施形態に係る歯科用超音波薬剤導入システム900のう蝕治療用プローブ130を、治療対象であるう蝕部270に押し当て、う蝕部270を無菌化する状態を説明する概略図である。

歯髄244は象牙質243にて覆われており、象牙質243はエナメル質242にて覆われている。歯根部は、歯根膜249及びその上に形成される歯頸部粘膜上皮245にて保護され、歯槽骨241にて固定される。歯冠部にはう蝕部270がある。う蝕部とは、口腔内の細菌が糖質から作った酸によって、歯質が脱灰されて起こる、歯の実質欠損部のことである。

ナノバブルと薬剤との混合物である混合薬剤は、注射器やスポイト等の注入具を使用して、う蝕部270に注入又は充填され、超音波浸透用ゲル271にてう蝕部270が塞がれる。超音波浸透用ゲル271は、う蝕部270に注入又は充填した混合薬剤がう蝕部270から流出することを防止すると共に、う蝕治療用プローブ130をう蝕部270に押し当てた場合に、隙間となる空気層が形成されることを防止するために使用される。なお、図10ではう蝕治療用プローブ130を超音波浸透用ゲル271に押し当てて超音波を伝搬させているが、う蝕治療用プローブ130は超音波浸透用ゲル271を押し破り、その先端がう蝕部270の底部近傍まで到達させた状態にて超音波を伝搬させることも可能である。

そして、上述の第1実施形態と同様に、操作部160を操作してう蝕治療用プローブ130の先端から超音波を伝搬させる。これにより、キャビテーションが発生し、発生したキャビテーションがナノバブルを破壊し、破壊の衝撃により薬剤をう蝕部の細部まで到達させる。そのため、う蝕部270内に存在する細菌が、薬剤により効率よく無菌化される。

図11A〜11Cは、象牙質細管248内にある細菌311の滅菌を概念的に説明する説明図であり、図11A〜11Cを使用して象牙質細管248内の洗浄について説明する。図11Aはう蝕部270に混合薬剤を注入した状態であり、図11Bは象牙質細管248の方向に超音波を照射し、ナノバブルが破壊された状態であり、図11Cは象牙質細管248内に薬剤が浸透し、細菌が死滅された状態である。

図11Aに示すように、象牙質細管248はチューブ状であり、象牙質は象牙質細管248が集まってできている。象牙質細管248の中には、象牙芽細胞247から突起が入り込んでいる。そのため、エナメル質242が破壊されて象牙質が露出すると歯髄が露出していることと同じであり、冷たいものがしみる等の痛覚が発生する。う蝕部270内に混合薬剤を注入した状態では、ナノバブル310は象牙質細管248内に浸透するものの、薬剤320は象牙質細管248まで浸透しにくい。そのためう蝕部270の大半は薬剤320により細菌311は滅菌されるものの、象牙質細管248まで入り込んだ細菌311は滅菌されていない。

次に図11Bに示すように、図示しないう蝕治療用プローブ130から象牙質細管248方向に超音波が照射されると、その近傍のナノバブル310が破壊され、それに伴ってキャビテーションが発生し、このキャビテーション効果により薬剤320が象牙質細管248内に浸透する。

更に図11Cに示すように、象牙質細管248内に超音波が到達するにつれ、象牙質細管248内のナノバブル310が破壊され、それに伴ってキャビテーションが発生し、更に薬剤320が象牙質細管248の奥まで浸透する。従来のう蝕治療では象牙質細管の奥深くまで殺菌することが困難であった。しかしながら、本発明によれば、象牙質細管248に奥深く潜む細菌311に確実に薬剤320を到達させ、即効で完全殺菌を行うことにより、その後の細胞移植治療或いはMMP3蛋白質治療による象牙質・歯髄再生を加速させ確実な治療法にすることができる。仮にナノバブルではなくマイクロバブル(直径が1μm〜50μm)を使用した場合は、象牙質細管248の直径は500nm程度であるため、マイクロバブルは象牙質細管248内に入り込むことができず、本発明のようにキャビテーション効果により象牙質細管248内部の無菌化をすることが極めて困難である。

なお、上述の第3実施形態では、ランジュバン振動子180がプローブ本体150内に設けられたが、そのような実施形態に限定されるものではなく、上述の第1実施形態で示したようにう蝕治療用プローブ130の先端に、内側電極と圧電素子と外側電極とからなる超音波振動子を設ける構成とすることも可能である。

(第4実施形態) 本実施形態では、上述の実施形態と異なり、プローブは主として歯周ポケット内に挿入して使用される歯周疾患治療用プローブである。

図12に示すように、第4実施形態に係る超音波導入装置800は、プローブ本体150に設けられる歯周疾患治療用プローブ131を有する。歯周疾患治療用プローブ131は、先端に開口部101を有し、その内側に中空部102を有する筒状体である。また、薬剤供給系として、ナノバブルと薬剤との混合薬剤を貯留する薬剤貯留部411と、混合薬剤を押し出すトリガー410と、混合薬剤がトリガー410から中空部102へ導入されるように、トリガー410と中空部102の端部とを接続する薬剤チューブ132とを有する。その他の構成は上述の第1実施形態と共通である。なお、図の理解促進のため、歯周疾患治療用プローブ131の径は誇張して記載されているが、歯周疾患治療用プローブ131は歯周ポケットに挿入できる大きさである。

図13A、13Bは、歯周疾患治療用プローブ131の先端部の説明図であり、そのうち図13Aは概略図であり、図13Bは断面図である。図13Aに示すように、歯周疾患治療用プローブ131は、歯周ポケットの底部側に超音波を照射する底部照射部133と、歯周ポケットの側面側に超音波を照射する側面照射部134とを有し、底部照射部133及び側面照射部134が歯周ポケットへ超音波を伝搬させる。底部照射部133は、歯周疾患治療用プローブ131の先端部に設けられており、プローブの長手方向に超音波を照射する。側面照射部134は、歯周疾患治療用プローブ131の先端部より若干後部側よりの位置に設けられており、プローブの短手方向に超音波を照射する。

図13A及び13Bに示すように、歯周疾患治療用プローブ131の内側の中空部102には薬剤導入管450が設けられており、トリガー410から押し出された混合薬剤は、薬剤チューブ132を経由して薬剤導入管450を通過し、薬剤導入管450の開口部451から、歯周ポケット内に注ぎ込まれる。なお、底部照射部133及び側面照射部134の構成は、第1実施形態と共通であり、底部照射部133は、円筒状の圧電素子112と、圧電素子112の内周面の表面に形成された筒状の内側電極111と、圧電素子112の外周面の表面に形成された円筒状の外側電極113とから構成される超音波振動子を有して構成される。また、側面照射部134は、円筒状の圧電素子122と、圧電素子122の内周面の表面に形成された筒状の内側電極121と、圧電素子122の外周面の表面に形成された円筒状の外側電極123とから構成される超音波振動子を有して構成される。

歯周疾患治療用プローブ131は直線形状である。歯周疾患治療用プローブ131の大きさは、歯周ポケットに挿入することができれば特に限定されるものではないが、例えば直径が0.5mm〜4mmであり、好適には直径が0.5mm〜2mmである。また、歯周疾患治療用プローブ131の長さは、特に限定されるものではないが、例えば1cm〜5cmであり、好適には2cm〜4cmであり、更に好適には3cmである。う蝕治療用プローブ130の材質は、腐食しにくくかつ軽量のものを使用することが好ましく、例えばステンレス鋼を(SUS:Stainless Used Steel)使用できる。

超音波の周波数は、キャビテーションを発生させて歯周ポケット内部に薬剤を浸透させることができる周波数であれば特に限定されるものではないが、例えば100KHz〜10MHzとすることができ、好適には800KHz〜2MHzであり、特に好適には約1MHzである。

超音波の強度は、歯科組織に損傷を与えずに好適にキャビテーションを発生させる強度であれば特に限定されるものではないが、例えば1〜30W/cm2とすることができ、好適には10〜25W/cm2であり、特に好適には約20W/cm2である。

歯周疾患治療に使用される薬剤は、ナノバブルとの混合状態で導入され、薬剤としては、特に限定されるものではないが、例えばイソプロピルメチルフェノール、チモール、チョウジ油、グリチルリチン酸二カリウム、アラントイン、ヒノキシオール、塩化セチルピリジニウム、パンテノール、酢酸トコフェロール、ラウロイルサルコシンNa、トラネキサム酸、ε−アミノカプロン酸、ビスホスホネート、テトラサイクリン、プレステロン、ミノサイクリン、ドキシサイクリン、レボフロキサシン、オフロキサシン、メトロニダゾール、アモキシシリン、カテプシンK阻害薬、クロールヘキシジン、次亜塩素酸、BMPs、bFGF、又はこれらの混合物を使用することができる。

次に、本実施形態の歯科用超音波薬剤導入システム900の使用態様について説明する。図14は、本実施形態に係る歯科用超音波薬剤導入システム900の歯周疾患治療用プローブ131を、治療対象となる歯周ポケット480に挿入して、歯周ポケット480内部を無菌化する状態を説明する概略図である。

歯の周囲には歯肉溝があり、この深さは健康な歯茎では1〜2ミリ、中程度の歯周炎では3〜5ミリ、歯周病が進行した場合は6ミリ以上になることがある。歯周ポケット480内に溜まったプラークの中では細菌が繁殖しやすく、歯肉の炎症を進めた結果、歯を支えているはずの歯槽骨を溶解させることになる。

トリガー410を操作して薬剤導入管450の開口部451から、歯周ポケット480内に混合薬剤を注入させると共に、上述の第1実施形態と同様に、操作部160を操作して歯周疾患治療用プローブ131の先端から超音波を伝搬させる。これにより、キャビテーションが発生し、発生したキャビテーションがナノバブルを破壊し、破壊の衝撃により薬剤を歯周ポケット480の細部まで到達させる。そのため、歯周ポケット480内、セメント質及び象牙質に存在する細菌が、薬剤により効率よく無菌化される。

上述の実施形態1と同様に、歯周疾患治療用プローブ131は固定ネジ151を介してプローブ本体150に着脱自在に固定されている。例えば上述の実施形態1で示した根管内挿入型プローブ100を本実施形態の歯周疾患治療用プローブ131に付け替える場合は、根管内挿入型プローブ100を取り外して歯周疾患治療用プローブ131に付け替え、更に、トリガー410が取り付けられている薬剤チューブ132を、歯周疾患治療用プローブ131内側の中空部102内に設けられている薬剤導入管450に接続する。なお、歯周疾患治療用プローブ131はプローブ本体150に対して一体型として構成することも可能である。

図15は、プローブ本体150にランジュバン振動子180が設けられている場合の歯周疾患治療用プローブ131を説明する概略図である。上述した実施形態である歯周疾患治療用プローブ131の先端に振動子が設けられる場合のみならず、図15に示すように、プローブ本体150にランジュバン振動子180を設けて、超音波を伝搬させる構成を採用することも可能である。

また、上述の実施形態では、混合薬剤は中空部102内部に設けられた薬剤導入管450を通過して注入されたが、薬剤導入管450を設けないで中空部102内部を混合薬剤が直接通過するように構成することも可能である。

(第5実施形態) 本実施形態では、上述の実施形態と異なり、プローブは知覚過敏治療用プローブである。

図16は、知覚過敏治療用プローブ430が取り付けられているプローブ本体150の説明図である。図16に示すように、知覚過敏用プローブ430は、振動子構成部430aと楔形欠損部当て430bとを有して構成される。振動子構成部430aは、平板振動子434を折り返し電極にて複数個数並列に結線して構成される。平板振動子434は、圧電素子432と、圧電素子432の一方側に形成された板電極431と、圧電素子432の他方側に形成された板電極433とから構成される超音波振動子を有して構成される。振動子構成部430aの超音波が伝搬する方向前方には、金属薄膜435が形成されている。金属薄膜435は例えばステンレス鋼(SUS:Stainless Used Steel)にて形成されており、超音波の周波数が例えば1MHzの場合その厚さは例えば0.3mm程度である。操作部160の構成は、上述の実施形態1と共通する。

楔形欠損部当て430bは、エナメル質が剥げた楔形欠損部を型取りして構成される。楔形欠損部当て430bは、例えばシリコーン等の弾性材料や高分子樹脂で構成されており、知覚過敏患者の知覚過敏が発生している楔形欠損部にシリコーンゴム等を押し付けて型取りを行うことにより作成される。楔形欠損部当て430bには、液体流動入口孔436と液体流動出口孔437とが設けられている。

超音波の周波数は、キャビテーションを発生させて楔形欠損部に薬剤を浸透させることができる周波数であれば特に限定されるものではないが、例えば100KHz〜10MHzとすることができ、好適には800KHz〜2MHzであり、特に好適には約1MHzである。

超音波の強度は、歯科組織に損傷を与えずに好適にキャビテーションを発生させる強度であれば特に限定されるものではないが、例えば1〜30W/cm2とすることができ、好適には10〜25W/cm2であり、特に好適には約20W/cm2である。

知覚過敏治療に使用される薬剤は、ナノバブルとの混合状態で導入され、薬剤としては、特に限定されるものではないが、例えばシュウ酸、フッ化ジアミン銀製剤、コーパル樹脂、フッ化ナトリウム、塩化亜鉛、水溶性アルミニウム化合物、水溶性カルシウム、BMPs、bFGF又はこれらの混合物である。

次に、本実施形態の歯科用超音波薬剤導入システム900の使用態様について説明する。図17A〜17Dは、本実施形態に係る歯科用超音波薬剤導入システム900の知覚過敏治療用プローブ430を、知覚過敏患者の治療対象となる楔形欠損部490に押し当てて、楔形欠損部490の治療をする工程図である。図17Aは楔形欠損部490の説明図であり、図17Bは楔形欠損部当て430bの作成を説明する図であり、図17Cは楔形欠損部490に混合薬剤及び超音波伝導ゲルを塗布した状態の説明図であり、図17Dは楔形欠損部490の治療の説明図である。

歯の表面はエナメル質に覆われており、このエナメル質が外側からの刺激を遮断する役割を果たしているが、図17Aに示すように、歯周病で歯茎が下がってエナメル質が無い部分が露出すると楔形欠損部490となり、象牙質細管を通じて歯髄が直接刺激されて知覚過敏となる。

次に、図17Bに示すように、シリコーン等の弾性材料を楔形欠損部490に押し当てて型取りを行うことにより、楔形欠損部当て430bを形成する。

次に、図17Cに示すように、楔形欠損部490に、上述の薬剤とナノバブルとの混合である混合薬剤、及び超音波伝導ゲル491を塗布する。超音波伝導ゲル491は幅広い周波数帯域において高い超音波伝導性を有する水溶性ゲルである。なお、超音波伝導ゲル491は必ずしも塗布する必要は無い。

次に、図17Dに示すように、振動子構成部430aを楔形欠損部当て430bに嵌め込んだ状態にて、知覚過敏治療用プローブ430を楔形欠損部490に押し当て、上述の第1実施形態と同様に、操作部160を操作して楔形欠損部当て430bを経由して超音波を伝搬させる。この時、図中にて矢印で示すように、水等の液体を液体流動入口孔436から流入させて液体流動出口孔437から排出させておく。これにより、振動子構成部430aと楔形欠損部当て430bとの間に仮に隙間があったとしても流体が流れることによりその隙間がなくなり、超音波が途切れることなく伝搬する。そして、楔形欠損部490に超音波が到達することによりキャビテーションが発生し、発生したキャビテーションがナノバブルを破壊し、破壊の衝撃により薬剤を象牙質細管の奥深くまで到達させる。知覚過敏が発生している場合、いずれの歯に発生しているのか明確にわかりにくい場合があるが、本実施形態では、複数の歯に対して広域に超音波を伝搬させる楔形欠損部当て430bを使用するため、簡易かつ確実に知覚過敏を治療することができる。

上述の実施形態1と同様に、知覚過敏治療用プローブ430は固定ネジ151を介してプローブ本体150に着脱自在に固定されている。そのため、上述の実施形態1で示した根管内挿入型プローブ100を本実施形態の歯周疾患治療用プローブ131に付け替えることも可能である。なお、知覚過敏治療用プローブ430はプローブ本体150に対して一体型として構成することも可能である。

(第6実施形態) 本実施形態では、上述の第1〜第5実施形態と異なり、根尖部照射部110及び側枝照射部120の各超音波振動子に供給される超音波の周波数がランダムに変化する。

超音波の周波数によって根管200の無菌化効率が異なる。これは、細胞及び細菌等生体構造上の微少な個人差、薬物による因子(種類、濃度、量等)、並びに発振素子側の因子(形状、位置等)等が複雑に関連するからである。

本実施形態では、各超音波振動子に供給される超音波の周波数が夫々ランダムに変化するため、各超音波振動は非常に広い帯域の周波数成分を有している。そのため、薬物を投与する際の条件が各個人により種々異なっていたとしても、超音波振動の成分の中に、最大の無菌化効果を与えることができる周波数成分が含まれている。これにより、薬物を投与する際の条件の差異に拘わらず、高い効率での無菌化が可能となる。

図18は、本実施形態に係るランダム周波数発生構成図である。図18に示されるように、異なった超音波周波数帯域の周波数f1〜f6で発振する複数の発振回路172a〜172fが設けられており、各発振回路172a〜172fの出力は切替回路177に供給される。

切替回路177には、乱数発生回路178が接続されており、乱数発生回路178が発生する乱数に応じて発振回路172a〜172fの出力が択一的に選択され、例えば実施形態1で示した第1駆動回路173及び第2駆動回路174に供給される。

乱数発生回路177は「1」から「6」までの乱数を発生し、例えば、「4」が発生したときは、発振回路172dからの周波数f4の出力が供給され、「6」が発生したときは、発振回路172fからの周波数f6の出力が供給される。このようにして各超音波振動子に供給される超音波の周波数がランダムに変化する。

なお、本実施形態では、超音波周波数帯域の周波数はf1〜f6のように6個設けられているが、このような形態に限定されることはなく、3個、4個、5個、7個等のように所定個数の周波数を適宜設定することができる。

(第7実施形態) 本実施形態では、上述の第1実施形態と異なり、側枝照射部120が根管内挿入型プローブ100の円周上に均等に複数設けられる。図19A、19Bは、複数の側枝照射部120a〜120eが根管内挿入型プローブ100に設けられている構成を説明する図であり、そのうち図19Aは概略図であり、図19Bは先端方向からの正面図である。

図19A及び19Bに示すように、側枝照射部120a〜120eは、夫々が根管内挿入型プローブ100の周面に均等間隔で設けられている。このように複数の側枝照射部120a〜120eを形成することにより、第1実施形態と異なり、夫々の側枝照射部120a〜120eの各超音波振動子に対して、別々に制御することにより別々の周波数を供給することができる。

(第8実施形態) 本実施形態では、上述の第1実施形態と異なり、側枝照射部120が根管内挿入型プローブ100の軸方向に複数設けられる。図20は、複数の側枝照射部120a〜120cが根管内挿入型プローブ100の軸方向に設けられている構成を説明する図である。

図20に示すように、側枝照射部120a〜120cは、夫々、根管内挿入型プローブ100の軸方向に均等間隔で設けられている。このように複数の側枝照射部120a〜120cを根管内挿入型プローブ100の軸方向に形成することにより、根管200の広い領域に超音波を照射することができ、根管200内で発生するキャビテーションの発生領域を増大させることができる。

上述の実施形態に係る歯科用超音波薬剤導入システムを使用して、ヒトは勿論のこと、その他の動物に対しても適用することが可能であり、適用される動物としては、特に限定されないが、例えばイヌ科の動物、ネコ科の動物、ウマ科の動物、ウシ科の動物、イノシシ科の動物、及びウサギ科の動物等である。米国獣医歯科学会(the American Veterinary Dental Society)によると、70%の猫及び80%の犬が、3才までにある形態の歯肉疾患を有するとされ、本発明によれば動物における口腔の健康問題が大きく改善される。

次に、本発明の具体的な実施例を以下に示すが、これは本発明の実施態様を例示したものであり、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。

(実施例1:超音波及びナノバブルを用いたin vitro根管内薬剤浸透試験) 抜去したイヌ歯牙を通法通りに髄腔開拡、根管拡大形成(#60まで)を行ったのち、スメアクリーン(日本歯科薬品)にて処理しスメア層の除去を行い、実験使用時まで生理食塩水下にて冷蔵保存した。綿詮にて根管内を十分に乾燥させた後、薬液が根管から漏洩するのを防止するため、あらかじめ根尖部分をユニファストIII(GC社)にて封鎖した。ついで、ナノバブルを濃度が5%又は10%(以下、バブル濃度は体積%である)となるように生理食塩水で希釈し、4.5mg/mlテトラサイクリン(SIGMA088K0680)を含有する薬液を作製した。ここで5%濃度のナノバブルとは、ナノバブルの濃度が6×108個/mlを意味する。10%濃度のナノバブルとは、ナノバブルの濃度が1.2×109個/mlを意味する。テトラサイクリンは、微量の沈着でも、紫外線の照射によって蛍光を発するため、蛍光顕微鏡下で容易に沈着部位を検出することができる。コントロールとしては、マイクロバブル(Optison(Molecular Biosystems Inc.,San Diego))を使用し、濃度5%又は10%の薬液を用いた。ここで5%濃度のマイクロバブルとは、マイクロバブルの濃度が6×108個/mlを意味する。10%濃度のマイクロバブルとは、マイクロバブルの濃度が1.2×109個/mlを意味する。根管内へ20μlの薬液を適応し、超音波発生装置(ソノポール KTAC-4000)を用いて、脱着式照射筒伝搬型プローブ(ランジュバン振動子がプローブ本体内部に設けられるアプリケータタイプ)の超音波素子直径1mmを根管内へ挿入し、機器を動作させた。動作条件としては、電圧30V(メーター表記0.13〜0.20W)或いは31V、周波数1.186MHz、Burst Rate18.8Hz、Duty比50%、適応時間120秒で行った。適応時間経過後、綿詮にて十分に希釈液を除去後、ゲーゼミクロトーム(ライカSP1600)にて150μmの厚さにて切片を作製し、紫外線照射下の実体顕微鏡を用いて検鏡を行った。薬剤の象牙質細管への導入度合いは蛍光反応にて確認した。

図21A〜21Eはバブル濃度5%の薬剤の象牙質細管への導入度合いを示す写真であり、そのうち図21Aは電圧30V・ナノバブル使用の顕微鏡写真であり、図21Bは電圧31V・ナノバブル使用の顕微鏡写真であり、図21Cは超音波照射無し・ナノバブル使用であり、図21Dは電圧30V・マイクロバブル使用であり、図21Eは超音波照射無し・マイクロバブル使用である。

図21Aに示されるように、ナノバブルを使用して超音波照射を行った場合は、薬剤の象牙質細管への導入度合いが優れていた。しかし、図21Cに示されるように、ナノバブルを使用しても超音波照射が無い場合は、薬剤の象牙質細管への導入度合いが不十分であった。図21Bに示されるように、超音波照射の電圧が31Vの場合は、超音波エネルギーが高すぎて、薬剤の象牙質細管への導入度合いが不十分となった。また、図21Dに示されるように、超音波照射をしてもマイクロバブルを使用した場合は、薬剤の象牙質細管への導入度合いが不十分であった。図21Eに示されるように、マイクロバブルを使用して超音波照射が無い場合は、薬剤の象牙質細管への導入度合いが不十分であった。

次に、図22A〜22Eはバブル濃度10%の薬剤の象牙質細管への導入度合いを示す写真であり、そのうち図22Aは電圧30V・ナノバブル使用の顕微鏡写真であり、図22Bは電圧31V・ナノバブル使用の顕微鏡写真であり、図22Cは超音波照射無し・ナノバブル使用であり、図22Dは電圧30V・マイクロバブル使用であり、図22Eは超音波照射無し・マイクロバブル使用である。

図22Aに示されるように、ナノバブルを使用して超音波照射を行った場合は、薬剤の象牙質細管への導入度合いが優れていた。図22Cに示されるように、ナノバブルを使用しても超音波照射が無い場合は、薬剤の象牙質細管への導入度合いが不十分であった。図22Bに示されるように、超音波照射の電圧が31Vの場合は、超音波エネルギーが高すぎて、薬剤の象牙質細管への導入度合いが不十分となった。また、図22Dに示されるように、超音波照射をしてもマイクロバブルを使用した場合は、薬剤の象牙質細管への導入度合いが不十分であった。図22Eに示されるように、マイクロバブルを使用して超音波照射が無い場合は、薬剤の象牙質細管への導入度合いが不十分であった。

また、図21A及び図22Aに示されるように、濃度5%のナノバブルの場合よりも濃度10%のナノバブルの場合のほうが、薬剤の象牙質細管への導入度合いが優れていた。

以上より、ナノバブル使用の場合はマイクロバブル使用の場合に比べて、濃度5%及び10%ともに有意に薬剤が浸透することが判明した。10%ナノバブルでは5%よりも浸透が優れ、5%及び10%ナノバブルともに30Vにおいて最大の薬剤導入を認めた。

(実施例2:ナノバブル及びマイクロバブルの崩壊試験) アクリル製の人工根管模型を#60まで根管拡大し、10%マイクロバブル及び10%ナノバブルを根管内にそれぞれ注入し、電圧を0、30、60、90Vに変化させて、120秒超音波照射を行った後、直ちに、Dark-light Illuminator(ネッパジーン)を用いて顕微鏡観察し、バブルの破壊の程度を測定した。

図23A〜23Fは、Dark-lightIlluminatorを用いた根管内挿入型プローブの電圧の変化による120秒照射によるマイクロバブル又はナノバブルの破壊の程度を示す図であり、そのうち図23Aはマイクロバブルにおける電圧0Vの場合、図23Bはマイクロバブルにおける電圧30V(メーター表記0.13〜0.20W)の場合、図23Cはマイクロバブルにおける電圧60V(メーター表記1.09W)の場合、図23Dはマイクロバブルにおける電圧90V(メーター表記1.26〜1.33W)の場合、図23Eはナノバブルにおける電圧0Vの場合、図23Fはナノバブルにおける電圧30Vの場合、を示す図である。

図23A〜23Dに示されるように、10%マイクロバブルに120秒間超音波照射した場合、60Vから急速にマイクロバブルの破壊がみられた。また、図23E、23Fで示されるように、10%ナノバブルに120秒間超音波照射した場合、30Vから急速に出力が生じ、ナノバブルの緩徐な破壊がみられ、120秒間で95%以上が消失した。一方40Vではより早く80秒間ぐらいで消失することがわかった。以上より、ナノバブルのキャビテーションが発生する電圧は、マイクロバブルのキャビテーションが発生する電圧よりも低いことが判明した。そのため、ナノバブル使用による薬剤導入は、電気的にも省エネルギーであるのみならず安全面においても優れている。

(実施例3:超音波及びナノバブルを用いたin vitro細管内無菌化試験) 上記と同様に根管拡大形成、スメア層の除去を行った後、綿詮にて根管内を十分に乾燥させ、根尖部分をユニファストIII(GC社)にて封鎖した。ついでpEGFP-C1(clontech)を遺伝子導入したカナマイシン耐性のEnterococcusfaecalis(乳酸球菌)を培養した菌液(ブレインハートインヒュージョン(BHI)培地 ニッスイ カナマイシン含有)を5μlずつ各根管へ注入後、ハイシール(松風)にて仮封し、恒温器(ヤマト科学IC602)を用いて、36.8℃、好気条件・湿潤下にて6日間培養し、疑似感染根管を作製した。仮封除去後、生理食塩水3mlにて根管内を洗浄、滅菌ペーパーポイント#55(モリタ)にて乾燥させ、下記表1に示す条件にて薬液調製を行い、根管へ7μl注入した。

上記と同様に、脱着式照射筒伝搬型プローブ(ランジュバン振動子がプローブ本体内部に設けられるアプリケータタイプ)の超音波素子直径1mmを根管内へ挿入し、機器を動作させた。ナノバブルの動作条件としては、電圧30V(メーター表記0.13〜0.20W)、周波数:1.186MHz、Burst Rate18.8Hz、Pulse Duty比50%、適応時間120秒を用いた。マイクロバブルは、濃度10%マイクロバブルを2μl使用した。マイクロバブルの動作条件としては、電圧60V(メーター表記1.09W)、周波数:1.186MHz、Burst Rate18.8Hz、Pulse Duty比50%、適応時間120秒を用いた。根管内をペーパーポイントにて乾燥、キャビトンにて仮封し、好気条件・湿潤下にて48時間培養した。48時間後にゲーゼミクロトーム(ライカSP1600)にて150μmの厚さにて切片を作製し、共焦点レーザー顕微鏡を用いて細菌の死滅状態を形態学的に観察した。

図24A〜24Fは、EnterococcusFaecalis(乳酸球菌)を試験管内で根管に人工的に7日間感染させた後に、超音波とバブル使用の薬剤導入による無菌化を示す写真であり、そのうち図24Aは全く感染なし(表1のa)、図24Bは未処置コントロール(表1のb)、図24Cは10%ナノバブル、超音波電圧30V、アンピシリン使用後2日(表1のc)、図24Dはアンピシリンのみ使用後2日(表1のd)、図24Eは10%ナノバブル及び超音波電圧30V使用後2日(表1のe)、図24Fは10%マイクロバブル、超音波電圧60V、アンピシリン使用後2日の場合(表1のf)を示す図である。

bの超音波、ナノバブル、アンピシリン全て導入しないコントロールでは、根管側壁の象牙質細管内に100μmぐらいの深さで細菌侵入がみられたが、10%ナノバブルと超音波を用いてアンピシリン導入したcでは、根管側壁の細菌はみられなかった。dのアンピシリンのみ、eのナノバブルと超音波のみでは、完全には細菌は死滅しなかった。また、10%マイクロバブルと超音波を用いてアンピシリン導入したfでは、cよりも細菌の残存がみられた。

また、同様に超音波実験を行い、超音波導入48時間後に再度仮封を除去し、8μlカナマイシン含有培養液を根管内に加えて更に好気条件・湿潤下にて24時間培養した。仮封除去後、根管内に10μl培養液を適応し、3分間放置した。その後、その培養液を抜き取り100倍希釈法にて100分の1、1000分の1、10000分の1、100000分の1、1000000分の1に希釈し、それぞれカナマイシン含有のBHI平面培地に播種し、更に24時間培養した。細菌カウントは菌数(コロニー数)が50〜500程度存在する希釈のものを選び、菌数をカウントした。その結果、dのアンピシリンのみ、eのナノバブルと超音波のみ及びfの10%マイクロバブルと超音波を用いてアンピシリン導入した場合に比べて、10%ナノバブルと超音波を用いてアンピシリン導入したcでは、有意に細菌の増殖抑制を認めた。

(実施例4:超音波及びナノバブルを用いたin vivo細管内無菌化試験) イヌ歯牙をinvivoにおいて通法通りに髄腔開拡、根管拡大形成(#60まで)を行ったのち、スメアクリーン(日本歯科薬品)にて処理しスメア層の除去を行い、綿詮にて根管内を十分に乾燥させた後、ついでpEGFP-C1(clontech)を遺伝子導入したカナマイシン耐性のEnterococcusFaecalis(乳酸球菌)を培養した菌液(ブレインハートインヒュージョン(BHI)培地 ニッスイ カナマイシン含有)を10μlずつ根管内へ注入し、リン酸亜鉛セメントで仮封した。ついで、7日後、根管内を生理食塩水3mlで洗浄した。10%濃度ナノバブル、50μg/mlアンピシリンを含有する薬液20μlを根管内へ適応し、超音波発生装置(ソノポールKTAC-4000)を用いて、脱着式照射筒伝搬型プローブ(ランジュバン振動子がプローブ本体内部に設けられるアプリケータタイプ)の超音波素子直径1mmを根管内へ挿入し、電圧30V、周波数1.186MHz、Burst Rate18.8Hz、Duty比50%、適応時間120秒で超音波導入した。適応時間経過後、ゲーゼミクロトーム(ライカSP1600)にて150μmの厚さにて切片を作製し、共焦点レーザー顕微鏡観察を行った。

図25A〜25Cは、EnterococcusFaecalis(乳酸球菌)をイヌ歯の根管内に人工的に7日間感染させた後に、超音波とバブル使用のアンピシリン薬剤導入による無菌化を示す写真であり、そのうち図25Aは10%ナノバブル、超音波(30V(メーター表記0.13〜0.20W))、アンピシリン使用後4日、図25Bはアンピシリンのみ使用後4日、図25Cは未処置コントロールである。図25Cに示すように、超音波、ナノバブル、アンピシリン全て導入しない未処置のコントロールでは、根管側壁の象牙質細管内に100μmぐらいの深さで細菌侵入がみられたが、図25Aに示すように、10%ナノバブルと超音波を用いてアンピシリン導入した歯では、根管側壁の細菌はみられなかった。また、図25Bに示すように、アンピシリンのみでは、完全には細菌は死滅しなかった。

(実施例5:ナノバブル及びマイクロバブルの粒度分布測定) 島津ナノ粒子分布測定装置(SALD−7100、島津製作所)により、実施例1〜4で使用したナノバブル及び実施例1〜3で使用したマイクロバブルの粒径分布を測定した。図26は、ナノバブル及びマイクロバブルの粒径分布を示す図である。図26に示すように、実施例1〜4で使用したナノバブルは、主として100nm〜500nmに粒度分布を有していた。一方、実施例1〜3で使用したナノバブルは、主として1μm〜50μmに粒度分布を有していた。

(実施例6:歯科用根管洗浄剤、次亜塩素酸ナトリウムとナノバブル併用によるin vitro細管内無菌化試験) ウシ抜去歯(前歯部)10本を用いて、根尖部を光重合型アイオノマーセメントにて封鎖した。6%次亜塩素酸ナトリウムにて根管内を処理、洗浄し、オートクレーブにて滅菌した。その後、根管内を滅菌生理食塩水にて十分に洗浄後、根管内をペーパーポイントで乾燥後、E.Coli飽和溶液を充たし、湿箱中にて37℃で一晩培養した。根管内のE.Coli溶液をペーパーポイントにて吸引し、洗浄液、次亜塩素酸ナトリウム1%あるいは0.1%を根管内に充たし、5%ナノバブルを入れ、電圧30V、周波数:1.186MHz、Burst Rate18.8Hz、Pulse Duty比50%、120秒間、超音波をかけた。その後、生理食塩水で十分に洗浄し、根管内にペーパーポイントを入れ1分放置し、ペーパーポイントを培養し、12時間後に細菌量を吸光度OD600にて測定した。結果を表2に示す。

1%次亜塩素酸ナトリウムでは、5%ナノバブルを入れようが入れまいが殺菌効果が得られた。しかしながら、0.1%次亜塩素酸ナトリウムでは、5%ナノバブルを入れた場合のみ根管内無菌化に有効であった。

根管内洗浄に使用される次亜塩素酸ナトリウムは、細胞毒性を有しており、口腔粘膜に漏洩したり、根尖部から外に漏洩すると口腔粘膜歯肉或いは根尖歯周組織を傷害する可能性がある。しかしながら、ナノバブルを併用すると、次亜塩素酸ナトリウムがより組織傷害性の低い低濃度でも有効となると考えられるため、低濃度の次亜塩素酸ナトリウムを根管洗浄に用いることにより安全に根管内を殺菌でき、仮に次亜塩素酸ナトリウムが根尖部から外に漏洩したとしても根尖歯周組織の傷害を防止することが可能である。

また仮に根尖孔外の根尖病巣にバイオフィルム(細菌が作る菌体外多糖の膜であり、その膜の中に多くの異なる細菌が強固に集合している)が形成されている場合、このバイオフィルムの中に入り込める薬剤でなければ、十分な殺菌効果を発揮することができないので、例えば470〜600ppmの比較的高濃度の次亜塩素酸ナトリウムを使用するが、次亜塩素酸ナトリウムが根尖部から外に漏洩すると根尖歯周組織を傷害する可能性がある。しかしながら、ナノバブルを併用することにより、次亜塩素酸ナトリウムがより組織傷害性の低い低濃度でも有効となると考えられるため、低濃度の次亜塩素酸ナトリウムを使用して安全にバイオフィルムを分解して細菌を殺菌することができる。

100:根管内挿入型プローブ 101:開口部 102:中空部 110:根尖部照射部 111:内側電極 112:圧電素子 113:外側電極 120:側枝照射部 121:内側電極 122:圧電素子 123:外側電極 130:う蝕治療用プローブ 131:歯周疾患治療用プローブ 132:薬剤チューブ 140:接続部 150:プローブ本体 160:操作部 177:切替回路 178:乱数発生回路 180:ランジュバン振動子 200:根管 210:主根管 220:側枝 230:根尖部 240:セメント質 241:歯槽骨 242:エナメル質 243:象牙質 244:歯髄 245:歯頸部粘膜上皮 247:象牙芽細胞 248:象牙質細管 249:歯根膜 260:根尖病巣 270:う蝕部 310:ナノバブル 311:細菌 320:薬剤 410:トリガー 411:薬剤貯留部 430:知覚過敏治療用プローブ 450:薬剤導入管 480:歯周ポケット 490:楔形欠損部 800:超音波導入装置 900:歯科用超音波薬剤導入システム

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