【技術分野】 【0001】 (優先権主張) 本願は、2001年1月22日出願の同時係属の米国仮出願第60/263,220号の優先権を主張する。 【0002】 本発明は、改良されたデンタルテープに関する。 詳細には、本発明の改良されたデンタルテープは、(a)フロス繊維の重量の20〜120%を構成する、(b)唾液溶解性である、かつ(c)剥がれが最小限である、実質上結晶を含まないコーティングを含有する。 さらにこうしたコーティングは、フロッシング中に、口腔にすべて放出され、歯間および歯肉縁下表面からのバイオフィルムの物理的な除去を助けるためのテープと共に働く研磨剤などの成分、ならびに口腔健康、ならびに口腔健康の不良によって引き起こされるあるいは悪化するその後の全身疾患に影響を与える化学療法成分を含有することができる。 こうしたコーティングは、特に、単繊維デンタルテープに適している。 【背景技術】 【0003】 歴史的に見ると、デンタルフロスの目的は、(1)歯間および歯肉縁下表面に蓄積し、ブラッシングまたは洗浄では除去できない分解した食物物質を排除および除去すること、ならびに(2)以前のフロッシングおよび/またはクリーニング以後に蓄積した細菌、歯垢、および/または歯石を排除および除去することであった。 【0004】 歯間腔を清掃するためにデンタルフロスを使用するという概念は、1819年にParmlyによって導入されたと思われる。 Parmlyは、歯肉炎になりやすい人の歯を清掃するために蝋引きした絹を使用することを提案した。 【0005】 現在歯肉縁下のバイオフィルムとして記載されている、歯周病における歯垢の役割は、十分に文献に記載されている。 歯肉縁下のバイオフィルムを日常的に物理的に除去する必要性は、歯周病の治療法として認められるようになっている。 歯肉縁下のバイオフィルムの機械的除去は、スケーリング、プレーニング、予防措置(prophylaxis)、および研磨を通して専門的に、また、歯磨き、代用ブラッシング(proxy brushing)、およびフロッシングによって個人的に実現することができる。 【0006】 歯の表面から歯肉縁下のバイオフィルムを物理的に除去するこれらの方法は、効果があり、十分に認められているが、歯周病は、成人に蔓延しているので、個人が歯肉縁下のバイオフィルムを日常的に物理的に除去するための改良された手段が必要である。 【0007】 さらに、歯間の間隔は、均一ではなく、別の場所にある同じ歯対間だけでなく、別の歯対間でも、かなり変動する。 この間隔は、同じ個人で、別の個人間で、また、特に捻転歯および充填物、クラウンなどを有する歯の場合に異なる。 【0008】 多繊維デンタルフロスでは、歯間に使用すると必ずほつれたり切れたりしてしまうような狭い間隔および隣接歯間への接触に対処するために、数多くの「TEFLON」デンタルフロスが商品化されている。 こうした切れにくい単繊維テープは、以下の米国特許に詳細に記載されており、これらを参照により本明細書に組み込む;第3,664,915号;第3,953,566号;第3,962,153号;第4,096,227号;第4,187,390号;第4,256,806号;第4,385,093号;第4,478,665号;第4,776,358号;第5,033,488号;第5,209,251号;第5,220,932号;第5,518,012号;第5,718,251号;第5,765,576号;および第5,911,228号。 【0009】 今日市販品として入手できるTEFLONタイプのテープには、Gore's Glide(登録商標)、Oral−B's Satin Floss(登録商標)、Johnson&Johnson's Easy Slide(登録商標)、およびColgate's Totals)がある。 これらのテープはすべて、最小限のほつれや切れで、狭い空間に使用することができる。 ただし、これらのテープは、Johnson&Johnson'sの織られたフロス(woven floss)、REACH(登録商標)Gentle Gum Careなどの多繊維のものとは異なり、フロッシング中に、十分な量の清浄剤、研磨剤、歯石抑制成分、漂白剤、およびフッ化物、抗菌剤、抗生物質などの有効成分を放出しない。 フロッシングされる部位に十分な量の成分を送達できないという欠点の本質は、これらのテープは一般に、歯間に適合させるのに最も好都合であると感じられているが、残念ながら、一般に、いったん歯間に置かれると、「清掃しない」、「作用しない」、「それほどの働きはない」などと感じられていることである。 【0010】 十分な量の清浄、調整、および治療物質が、テープにコートされる場合、生じたテープは、加工したり、分配したり(dispensing)、指にテープを巻き付けたりする間に、これらのコーティングが過度に剥がれたり崩壊したりする特徴がある。 そのため、バイオフィルムに作用する、また、歯間および歯肉縁下の空間からバイオフィルムを物理的に除去するのに適した放出可能成分の強固なコーティングを利用する市販のテープは存在しない。 【0011】 バイオフィルムは、自然界で除去が困難であることで有名である。 十分な量の清浄剤、研磨剤など無しでバイオフィルムに単繊維テープを使用することは、十分な量のバイオフィルムの物理的な除去および/または破壊に有効ではない。 つまり、歯間および歯肉縁下に蓄積した厄介な(critical)バイオフィルムは、現在の市販のデンタルテープ、すなわちPTFEテープや複合繊維(bicomponent)テープを用いた日常のフロッシングでは効果的に物理的除去できない。 【0012】 単繊維の歯間用具は、米国特許第Re35,439号;第3,800,812号;第4,974,615号;第5,760,117号;第5,433,226号;第5,479,952号;第5,503,842号;第5,755,243号;第5,845,652号;第5,884,639号;第5,918,609号;第5,962,572号;第5,998,431号;第6,003,525号;第6,083,208号;第6,148,830号;第6,161,555号;および第6,027,592号に記載され特許請求されており、これらの開示を参照により本明細書に組み込む。 一般に、こうしたデンタルテープには、やわらかさ、フロッシング中のコーティングの送達、フロッシング中の扱い易さと取扱いの便宜の上で重大な欠点がある。 【0013】 ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ベースの歯間用具が、米国特許第5,209,251号;第5,033,488号;第5,518,012号;第5,911,228号;第5,220,932号;第4,776,358号;第5,718,251号;第5,848,600号;第5,787,758号;および第5,765,576号に記載されている。 今日まで、市販のこうしたテープには、効果的にコートされているものはなく、フロッシング中に歯間および歯肉縁下に有効成分を送達するために使用することはできない。 フロッシング中の扱いは、困難である。 ほとんどのものは、消費者に受け入れられる縁(edge)を付ける必要がある。 多くのものは、寸法の不整合という重大な問題がある。 【0014】 いくつかの特許出願は、単繊維テープの重量の約20%〜120%を構成するコーティングを伴う単繊維デンタルテープを出願している。 これらは、2000年8月23日に出願された同時係属中の米国仮出願第60/227,433号および第60/227,255号、ならびに2001年1月22日に出願された第60/263,220号に記載されており、これらをすべて参照により本明細書に組み込む。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0015】 定期的に使用する場合に、歯間および歯肉縁下の重要な(critical)部位からのバイオフィルムの破壊および/または物理的除去を助け、必要に応じて部位特異的に化学療法薬を送達する放出可能成分でコートされた、市販の切れにくいテープが確実に必要である。 【課題を解決するための手段】 【0016】 本発明は、デンタルテープを含めた可撓性のある表面上に対するコーティングの強固さが増強でき、その結果、こうした増強されたコーティングが、表面が屈曲する間も、前記表面に対して強固なままであり、割れたり砕けたり剥がれ落ちたりしにくいという観察結果に焦点を当てている。 特に、ほとんどのコートされた可撓性のある表面、特に、唾液溶解性であり有効量の研磨剤、清浄剤、界面活性剤、および化学療法剤を含むように調合されたコーティングは、屈曲する間、結晶面に沿って砕け、その後、割れる、削れる、剥がれるおよび/または脱落することなどによって、可撓性のある表面からこれらの成分が放出することが観察されている。 こうした観察結果に応えて、様々なコーティングに、ある種の物質を比較的低濃度で添加すると、結晶形成が減少し、同時に、屈曲を受けている可撓性のある表面に対するコーティングの強固さが増強され、その特性により前記のテープに優れた剥離耐性と放出値(release value)が与えられることが思いがけず発見された。 【0017】 コーティングに比較的低濃度で加えられた場合、結晶形成を減少、抑制および/または無くし、可撓性のある表面に対するコーティングの強固さを増強するこうしたコーティング添加剤には、約10〜30個の炭素原子を有するある種の脂肪族の長鎖高級アルコールおよび/またはポリエチレングリコールソルビタン二脂肪酸エステルなどの様々な液状界面活性剤が含まれる。 【0018】 本発明の結晶を含まないコーティングに適した脂肪族の長鎖高級アルコールは、構造式ROH(Rは20〜30個の炭素原子を有する長鎖アルキル基を表す)で表すことができる。 具体例には、次のものがある: 1−デカノール 1−ヘプタデカノール 1−ペンタコサノール1−ウンデカノール 1−オクタデカノール 1−ヘキサコサノール1−ドデカノール 1−ノナデカノール 1−ヘプタコサノール1−テトラデカノール 1−エイコサノール 1−オクタコサノール1−ペンタデカノール 1−ヘンエイコサノール 1−ノナコサノール1−ヘキサデカノール 1−トリコサノール 1−トリアコンタソール(triacontasol) 1−テトラコサノール天然原料から化学的に誘導されたものを含めて、十分な量のこれらの高級アルコール類またはそれらの異性体を含有する天然に存在する混合物も、本発明のための脂肪族長鎖高級アルコールの好適な原料となる。 【0019】 長鎖高級アルコールは、構造式ROH(Rは、10〜30個の炭素原子を有する長鎖アルキル基を表す)で表すことができる。 これは、Stepan、Proctor&GambleおよびAldrich Chemical Co. 、ならびに植物および動物から誘導された高級アルコールを加工している様々な会社から購入できる。 【0020】 本発明の結晶を含まないコーティングに適した液状界面活性剤には、一般式【0021】 【化1】
(式中、R 1 、R 2 、R 3 、R 4は、Hまたは脂肪族アシル基(10〜30)であり、w、x、y、およびzの合計は、20〜80である) で表されるポリオキシエチレングリコールソルビタン一脂肪酸エステルおよび二脂肪酸エステルが含まれる。 こうした液状界面活性剤は、Cognis N. A. およびICIから商品名Emsorb(登録商標)、Span(登録商標)、Tween(登録商標)で入手できる。 これらの具体例には、
モノオレイン酸PEG 20ソルビタン(Tween(登録商標)80、ICI)、
モノステアリン酸PEG 40ソルビタン(Span 60(登録商標)、ICI)、およびジステアリン酸PEG 40ソルビタン(Emsorb(登録商標)2726、Cognis,N.A.)
が挙げられる。
【0022】
当分野の技術者に知られている同様のエステル化されたPEGベースの界面活性剤もまた、好適な液状界面活性剤である。
【0023】
したがって、本発明の好ましい一実施形態は、屈曲を受けても割れたり剥がれたり崩壊したりしにくい、可撓性のある表面のための強固なコーティングを含む。
【0024】
本発明の他の好ましい実施形態は、歯間および歯肉縁下部位からバイオフィルムを物理的に除去する切れにくいデンタルテープを含む。
【0025】
本発明の他の好ましい実施形態は、フロッシング中にバイオフィルム破壊物質を放出し、バイオフィルムに作用する強固なコーティングを、切れにくいテープに適用する方法を含む。
【0026】
本発明の他の好ましい実施形態は、剥がれが最小限であるが、フロッシング中に完全な放出が実現される強固なコーティングを伴う切れにくいテープを含む。
【0027】
本発明の他の好ましい実施形態は、強固であり、唾液溶解性であり、剥がれが最小限である実質上結晶を含まないコーティングを伴う単繊維テープを含む。
【0028】
本発明の他の好ましい実施形態は、フロッシング中にテープから放出された場合にバイオフィルムの物理的な除去を助ける強固なコーティングを伴う切れにくいデンタルテープを含む。
【0029】
本発明の他の好ましい実施形態は、生理活性のある成分または化学療法成分と共に、バイオフィルムを破壊および物理的に除去する成分(これらはすべてフロッシング中に大部分または完全に放出される)を含有する、デンタルテープ用の強固なコーティングを含む。
【0030】
本発明の他の好ましい実施形態は、歯間および歯肉縁下部位を処置して歯肉縁下および歯間のバイオフィルムを除去すると同時に、有効成分を用いて前記の部位を処置するための方法を含む。
【0031】
本発明の他の好ましい実施形態は、剥がれ落ちることはないが、フロッシング中に完全に放出可能である十分な濃度のバイオフィルム破壊/除去成分を含有する、切れにくいデンタルテープを製造するための方法を含む。
【0032】
本発明の他の好ましい実施形態は、剥離値(flaking value)が約20未満であるコートされたデンタルテープを含む。
【0033】
本発明の他の好ましい実施形態は、コーティングの放出値が約100に近い、一群のコートされたデンタルテープを含む。
【0034】
本発明のこれらの実施形態および他の実施形態を、以下に詳細に記述する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明においては、「結晶を含まない」は、30倍の実体顕微鏡で観察した場合に結晶性コーティングに典型的な粗い表面とは区別される滑らかな表面と定義される。
【0036】
本発明においては、剥離耐性は、本発明のコーティングが、屈曲する間にエラストマー、TEFLON(登録商標)、複合繊維、または他のポリマーの、可撓性のあるデンタルテープから剥がれ落ちる傾向を示す。 剥離耐性は、適切に制御された再現可能な条件下で、コートされたテープの18インチ断片を30秒間曲げた後の結晶を含まないコーティングの重量の減少に基づく。
【0037】
本発明においては、放出値は、テープの18インチ断片を60秒間十分にフロッシングした後に測定される。 フロッシング中にテープから除去された結晶を含まないコーティングのパーセントが、放出値を表す。
【0038】
本発明においては、デンタルテープは、Perident's Fibaclean(商標)などのエラストマーテープ、Gore's Glide(登録商標)、J&J's Easy Slide(登録商標)、およびColgate's Total(登録商標)などのPTFEテープ、ならびにOral−B's Satin Tape(登録商標)などの複合繊維テープを含めて単繊維テープと定義される。
【0039】
ある種の石油ワックスが、本発明の結晶を含まないコーティングにとって好適かつ好ましい追加の添加剤である。 これには、室温で固体であり、高沸点の石油留分から誘導される比較的高分子量のどんな範囲の炭化水素(約C
16 〜C 50 )も含まれる。 石油ワックスの基本カテゴリーは、パラフィン(結晶)、マイクロクリスタリン、および石油の3つである。 パラフィンワックスは、より軽い潤滑油留分から、一般にこのオイルを冷却し、融点が48℃(118°F)と71℃(160°F)の間である結晶化したワックスを濾過することによって生成される。 十分に精製されたパラフィンワックスは、乾いていて硬く、良い光沢を与えることができる。 マイクロクリスタリンワックスは、より重い潤滑油留分と残渣(残油(one bottoms))から、通常、溶媒希釈と冷却の組み合わせによって生成される。 これは、結晶構造がはっきりせず、暗色であり、粘性が高く、融点が63℃(148°F)〜93℃(200°F)と高い点で、パラフィンワックスと異なる。 マイクロクリスタリングレードはまた、その物理的特性において、パラフィンよりもかなり広範囲に変化し、延性のあるものもあれば、もろく、あるいは容易に砕けるものもある。 【0040】
ペトロラタムは、残りの重い潤滑油ストックから、プロパン希釈および濾過または遠心分離によって得られる。 これは、微晶質の特性を有し、室温で半固体である。 腐食防止剤、カーボン紙、および肉用包み紙(butcher's wrap)など、工業使用のためのより重いグレードもある。 従来、スラックワックス、スケールワックス、および精製(refined)ワックスという用語は、オイル含有量の限度を示すために使用されてきた。 今日、こうした分類は、特にスラックワックスとスケールワックスとの区別において、この意味では厳密性が薄れている。 ビーズワックスやカルナウバワックスなどの天然のワックスも適しており、特に所望される性質を提供できる。
【0041】
本発明の結晶を含まないコーティングに適した追加の成分には、米国特許第4,911,927号;第4,950,479号;第5,032,387号;第5,098,711号;第5,165,913号;第5,538,667号;第5.561,959号;第5,66,374号、および第5,733,529号を含めてHill他の様々な米国特許に記載される通りのMICRODENT(登録商標)やULTRAMULSION(商標)などの抗歯垢成分が含まれる。 前述の特許を、参照により本明細書に組み込む。
【0042】
本発明の様々なデンタルテープに適用される強固な唾液溶解性のコーティング中には、抗菌成分、抗歯石成分、漂白成分、清浄成分、減感成分、抗生物質、抗炎症成分、抗歯肉炎成分、ならびにプロスタグランジン(PGE
2 )およびC−反応性タンパク質抑制物質を含めた様々な他の有効成分を含めることができる。 【0043】
本発明のコートされたデンタルテープに使用するのに適した具体的な有効成分には、フッ化物、硝酸カリウム、トリクロサン、クロルヘキシジン、セチルピリジニウムクロルヘキシジン、臭化ドマフェン、メトロニダゾール、ドキシサイクリン、アスピリン、Listerine(登録商標)中の精油、およびそれらの混合物がある。
【0044】
本発明のデンタルテープ用の強固なコーティングは、さらに(a)結晶抑制物質を含有する、(b)唾液溶解性である、(c)実質上結晶を含まない、(d)テープの重量の約20%〜120%を構成し、剥離値が約20未満、かつ放出値が約100であると特徴付けることができる。
【0045】
本発明の結晶を含まないコーティングでコートされた、引用された同時係属中の出願に記載された類のエラストマーデンタルテープを、以下の表Iに記載する。
【0046】
【表1】
【0047】
本発明を、その好ましい実施形態を含めて、詳細に説明してきた。 しかし、当分野の技術者であれば、この開示を考慮した上で、以下の特許請求の範囲に記載される通りの本発明の範囲および趣旨内で、本発明を改変および/または改良することが可能であることが理解できるであろう。
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