【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明が属する技術分野】本発明は、上下顎の歯形模型を取り付けて上下歯牙の咬合関係を再現して、その矯正や補綴を行なうための歯科咬合器に取り付けられるマウンティングディスク、特に下顎歯形模型用のマウンティングディスク関する。 【0002】 【従来の技術】従来の咬合器、例えば、特開2000− 42004号に記載の咬合器は、図13に示されているように、基台1の上に垂直に植設された1対の支柱2、 2の上端に、1対の矢状顆路調整機構50、50を介して、回動板3の1端を回動自在に枢着し、回動板3の下面には、上顎歯形模型9を取り付けるための上顎歯形用マウンティングディスク5が設けられ、基台1の上面には下顎歯形模型を取り付けるための下顎歯形用マウンティングディスク6が設けられている。 【0003】上顎歯形用マウンティングディスク5と下顎歯形用マウンティングディスク6との上下の間隔は左右の支柱2に設けられたスライド機構20によって調整することができる。 下顎歯形用マウンティングディスク6は、基台1に、前後方向の移動および回転方向の移動を可能にするように取り付けられている。 【0004】すなわち、図14、図15に示すように、 下顎歯形用マウンティングディスク6は、その中心に削設された螺子孔13に基台1の反対側からスライダ18 に削設された貫通孔19を経て挿通された垂直回転軸1 5が螺合されているので、基台1に対して回転自在に取り付けられている。 下顎歯形用マウンティングディスク6の基台1に対する回転角度は、座板42に設けられた指針36とマウンティングディスク6の円周上に刻設されたメモリ37によって読み取ることができる。 【0005】また、回転角度が設定されれば、その位置をスライダ18に設けられた螺子孔26に螺合された誘導ネジ16をマウンティングディスク6の裏面に刻設された円弧状誘導溝12に深くねじ込むことにより固定することができる。 なお、11は基準点溝である。 【0006】また、スライダ18は基台1に削設された細長い案内透孔14の中に摺動自在に緩装されていて、 スライダ18に取り付けられた操作杆23のつまみ24 を手で持って前後方向に移動させることができる。 このスライダ18の移動によって、下顎歯形用マウンティングディスク6の位置を前後方向に移動調整することができ、その移動距離は基台1の側面に刻設されたメモリ3 9とマウンティングディスク6の円周上に刻設された指針38によって読み取ることができる。 また、移動距離が設定されれば、その位置に固定ネジ25によって固定することができる。 【0007】歯科咬合器上の上下歯形模型のずれは、上下歯形模型の左右の中切歯の間、すなわち正中の位置ずれをみれば容易に判断することができる。 上下の中切歯の位置が左右にずれているときは、上下の中切歯の正中が合致する位置まで、下顎歯形用マウンティングディスク6を回転移動させればよい。 【0008】すなわち図11(a)に示すように、上下の正中の位置Q1,Q2が左右にずれているときは、図11(b)に示すように下顎歯形用マウンティングディスク6の中心p1を軸にしてR1方向に上下の正中が合致する位置までマウンティングディスク6を回転させればよい。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】ところが、患者によっては図12(a)に示すように正中の位置Q1,Q2が合致していても、上下の奥歯の位置がずれている場合がある。 このような場合マウンティングディスクの中心p 1を軸にしてR1方向に回転して奥歯の位置を合致させようとすれば、図12(b)に示すように上下の正中の位置Q1,Q2がずれてしまう。 【0010】そこで、本発明は、上記の従来の咬合器の欠点を改良し、いかなる場合でも、咬合器上に再現された患者の顎関節の位置を正常な位置に修正するための調整機能を備えた歯科咬合器用のマウンティングディスクを提供することを目的とする。 【0011】 【課題を解決するための手段】本発明では、下顎歯形用マウンティングディスクを上下2つに分割し、咬合器の基台に対して下顎歯形用マウンティングディスクをその中心軸を中心として回動させる機能と、下顎歯形用マウンティングディスクの先端部すなわち、正中の位置を中心にして回動させる機能とを兼備えることによって、上記目的を達成することができた。 【0012】すなわち、本発明のマウンティングディスクは、咬合器の基台に取り付けるための垂直回転軸用取付部をほぼ中心部に有する下部回動プレートと、該下部回動プレート上に重接して設けられると共にその上表面に下顎模型を取り付けるための下顎模型固定部を有する上部回動プレートとよりなり、上記下部回動プレートと上記上部回動プレートとはそれぞれその先端部において軸支部材によって互いに回動自在に結合されたことを特徴とする。 【0013】さらに、本発明のマウンティングディスクは、上記下部回動プレートと上記上部回動プレートとの相対位置を表示するための表示手段と両者の相対位置を固定するための固定手段を設けたことを特徴とする。 【0014】上記表示手段は、上記下部回動プレートおよび上記上部回動プレートの軸支部材のある側の反対側の側面をそれぞれ該軸支部材を中心軸とする円弧面として構成し、上記下部回動プレートおよび上記上部回動プレートのいずれか一方の円弧面上に上記下部回動プレートと上記上部回動プレートとの相対位置を表示するための表示メモリと、他方の円弧面上に指針とをそれぞれ設けたものである。 【0015】また、上記固定手段は、上記下部回動プレートおよび上記上部回動プレートのいずれか一方の円弧面に設けた表示メモリを覆うように他方の円弧面を延伸して設けた円弧状のスカ−ト部、該スカート部に水平に設けられたスリット部、および該スリット部を貫通して上記表示メモリを有する円弧面に設けられた螺子孔にその先端が螺合すると共に途中に設けられた拡径部によって上記スカート部を締付け固定する緊定杆とより構成されている。 【0016】 【実施例】図1〜図6は、本発明の歯科咬合器用のマウンティングディスクの実施例を示すもので、下顎歯形用マウンティングディスク60は、上部回動プレート61 と下部回動プレート62とより構成されている。 そして両者はその先端部において、軸支部材64によって互いに回動自在に取り付けられている。 【0017】軸支部材64は図7に示すように、ボルト84と止めビス85より構成されている。 ボルト84の下半分は螺子部87、上半分はネジ溝が刻まれていない回動軸部88として構成されている。 ボルト84を上部回動プレート61の軸受孔71に挿入し、螺子部87を下部回動プレート62の軸受孔72にねじ込んで螺合し、止めビス85で固定すると、上部回動プレート61 はボルト84を回転軸として、下部回動プレート62に対して回動することができる。 なお、89はボルト84 の頭に設けたネジ回し用の六角凹孔、91は止めビス8 5用のネジ回し用の六角凹孔である。 【0018】上部回動プレート61の上表面は、下顎歯形模型を取り付けるための下顎模型固定部63が形成されている。 この下顎模型固定部63には鉄製の皿盤70 と位置決め用の3つの突起66が設けられている。 皿盤70は下顎歯形模型の下面に設けられた鉄製の基板を磁力で吸着して固定するための永久磁石65を受け入れ、 永久磁石65自体の磁力で吸着固定するためのものである。 【0019】皿盤70の中央下部には円形の孔92(図6)が開けられ、さらにその下に位置する上回動プレート61の中央にも貫通孔が開けられている。 この貫通孔は下部回動プレート62の螺子孔74と連通しているので、下部回動プレート62の下から螺子孔74に適当な棒を挿入し突き上げれば、皿盤70に吸着している磁石65を取り外すことができる。 【0020】上部回動プレート61において、軸支部材64を受け入れるための軸受孔71の反対側の側面は軸支部材64を中心軸とする円弧面67が形成されている。 この円弧面67は下方に延伸されて円弧状のスカート部68を構成している。 この円弧状スカート部68の中央にはスリット部69が水平に設けられている。 【0021】下部回動プレート62において、軸支部材64を受け入れるための軸受孔72の反対側の側面は軸支部材64を中心軸とする円弧面73が形成されている。 【0022】図5に示すように、下部回動プレート62 のほぼ中心には、咬合器1の垂直回転軸15(図9参照)を螺合するための螺子孔74が貫通して設けられている。 また、下部回動プレート62の下面には咬合器1 の誘導ネジ16(図9参照)の先端を受け入れるための円弧状誘導溝75が設けられている。 なお、79は基準点孔であって、誘導ネジ16の先端をこの孔に挿入することによってマウンティングディスク60を基台1に対して、正しい位置に固定することができる。 【0023】円弧面73の表面には上部回動プレート6 1と下部回動プレート62との相対位置を表示するためのメモリ76が刻設されている。 このメモリ76に対する指針77は上部回動プレート61のスカート部68に設けられている。 【0024】81は緊定杆であって、その先端にはネジ部83(図8)を有し、このネジ部83は下部回動プレート62の円弧面73に設けられた螺子孔78に螺合される。 また、緊定杆81の途中には径が拡大する拡径部82が設けられていて、緊定杆81を螺子孔78に螺入して行くとこの拡径部82が上部回動プレート61のスカート部68を圧迫して、上部回動プレート61を下部回動プレート62に固定することができる。 【0025】次の、この装置の使用方法について説明する。 先ず、「従来の技術」の項において説明したように、上下の歯形模型を上下のマウンティングディスクにセットし、患者の現在の顎関節の位置を咬合器上に正しく再現する。 【0026】次に、顎関節の部分をX線写真によって撮影し、顎関節の状態を観察する。 次に、図9に示すように、下顎歯形用マウンティングディスク60の垂直回転軸15および固定ネジ25を緩めて、歯形模型における上下の切歯の前後方向の位置を合わせる。 その時の移動距離をメモリ39で読取り、記録する。 また、下顎の歯形模型位置の上下の調整は、支柱2のスライド機構20 によって行なう。 そして、その移動距離をペーパー状のリーフゲージによって測定し記録する。 【0027】次に、図11(a)に示すような切歯の左右方向のずれに対しては、図11(b)に示すように、 上下の正中が一致するように、垂直回転軸15を回転軸P1として下顎歯形用マウンティングディスク60全体をR1方向に回転させる。 そして、誘導ネジ16を誘導孔75に深くねじ込んで固定し、その時の回転角度を回転メモリ86で読み取る。 【0028】図10(a)に示すように、上下の正中が一致しているが、奥歯がずれている場合は、緊定杆81 を緩めて、軸支部材64を回転軸P2として上部回動プレート61を奥歯の位置が一致する位置までR2方向に回転し、図10(b)に示すように、奥歯の位置が一致すれば緊定杆81で固定する。 この時の回転角度を指針77とメモリ76とによって読み取る。 【0029】このようにして得られた3次元的な補正値を用い、先程のレントゲンで撮影した顎関節の状況を参考にしながら、顎関節位置整位用の補助具を作製する。 【0030】この補助具は、上下の歯の間に装着して、 顎関節位置を矯整するもので、通常は就寝時に着用し、 下顎の位置を正しい位置に誘導し、下顎頭と関節円板との位置関係を正常な位置に戻すとともに、下顎頭や関節円板に摩耗、損傷があるときはその回復を促し、顎関節の不正常な状態を根本から治癒するためのものである。 【0031】 【発明の効果】(1)本発明では、歯科咬合器用の下顎歯形用マウンティングディスクを上下2つに分割し、咬合器の基台に対して下顎歯形用マウンティングディスクをその中心軸を中心として回動させる機能と、下顎歯形用マウンティングディスクの先端部すなわち、正中の位置を中心にして回動させる機能とを兼備えることによって、歯科用咬合器の基台に対して前後方向の移動および回転方向の移動の他に、正中の位置が一致しているが奥歯の位置がずれている場合でも、そのずれ角度を測定できるようにしたので、より正確な顎関節位置整位用の基礎データを得ることができる。 【0032】(2)本発明の下顎歯形用マウンティングディスクの使用により得られた基礎データに基づいて作製された顎関節位置整位用の補助具の使用により、側頭骨の回転、移動を行なって、三半規管の位置を正しい位置に修正すれば、耳鳴り、めまい等の不定愁訴を治癒することができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明のマウンティングディスクの正面図。 【図2】図1の側面図。 【図3】図1の側面図。 【図4】マウンティングディスクの平面図。 【図5】マウンティングディスクの裏面図。 【図6】図1の縦断面図。 【図7】軸支部材の分解図。 【図8】緊定杆の正面図。 【図9】本発明のマウンティングディスクの使用方法を説明する断面図。 【図10】本発明のマウンティングディスクの使用方法を示す説明図。 【図11】本発明のマウンティングディスクの使用方法を示す説明図。 【図12】従来のマウンティングディスクの使用方法を示す説明図。 【図13】従来の咬合器の斜視図。 【図14】従来のマウンティングディスクの裏面図。 【図15】従来のマウンティングディスクの縦断面図。 【符号の説明】 1 基台 2 支柱 3 回動板 15 垂直回転軸 16 誘導ネジ 20 スライド機構 60 下顎歯形用マウンティングディスク 61 上部回動プレート 62 下部回動プレート 63 下顎歯形固定部 64 軸支部材 65 永久磁石 66 突起 67 円弧面 68 スカート部 69 スリット部 70 鉄製皿 |