電気モータおよび歯科装置

申请号 JP2016538158 申请日 2015-07-30 公开(公告)号 JP6244466B2 公开(公告)日 2017-12-06
申请人 株式会社ナカニシ; 发明人 中村 暁斗;
摘要
权利要求

ブラシレス・スロットレスの電気モータであって、 ステータコアおよび前記ステータコアよりも内周に配置された複数のコイルを有するステータと、 シャフトを有し、前記ステータに対して前記シャフトを中心に回転されるロータと、 前記電気モータの適用先の機能を実現するために用いられる媒体を通す媒体経路と、を備え、 前記複数のコイルは、相互に重ならないで前記ロータの回転方向に隣り合い、 前記媒体経路は、隣り合う前記コイルの間に配置されている、 ことを特徴とする電気モータ。前記媒体経路は、 前記媒体としての流体を通すパイプが占有する空間であり、 前記パイプは、 前記コイルの厚み以下の太さに設定されている、 請求項1に記載の電気モータ。前記媒体経路は、 前記媒体としての電線が占有する空間であり、 前記電線は、 前記コイルの厚み以下の太さに設定されている、 請求項1に記載の電気モータ。前記複数のコイルを保持するホルダ部材を備え、 前記ホルダ部材は、 前記複数のコイルが外周に配置される筒部と、 前記筒部から径方向外側に立ち上がるフランジと、を有し、 前記媒体経路は、前記フランジを貫通する、 請求項1に記載の電気モータ。前記ステータは、3つの前記コイルを有し、 前記ロータは、4つの極を有する、 請求項1に記載の電気モータ。前記電気モータは、 前記適用先である歯科用ハンドピースを駆動し、 前記媒体経路として、 前記歯科用ハンドピース内へと供給されるが通る経路と、 前記歯科用ハンドピース内へと供給されるエアが通る経路と、を備える、 ことを特徴とする請求項1に記載の電気モータ。前記電気モータは、 前記適用先である歯科用ハンドピースを駆動し、 前記パイプとして、 前記歯科用ハンドピース内へと供給される水が通る第1のパイプと、 前記歯科用ハンドピース内へと供給されるエアが通る第2のパイプと、を備える、 ことを特徴とする請求項2に記載の電気モータ。請求項1に記載の電気モータと、 前記電気モータにより駆動される歯科用ハンドピースと、 前記電気モータを駆動制御するコントローラと、を備える、 ことを特徴とする歯科装置。請求項2に記載の電気モータと、 前記電気モータにより駆動される歯科用ハンドピースと、 前記電気モータを駆動制御するコントローラと、を備える、 ことを特徴とする歯科装置。前記電気モータは、前記コントローラにホースにより接続され、 前記媒体経路は、前記ホース内に形成された経路の延長線上または略延長線上に位置する、 請求項8に記載の歯科装置。前記電気モータは、前記コントローラにホースにより接続され、 前記媒体経路は、前記ホース内に形成された経路の延長線上または略延長線上に位置する、 請求項9に記載の歯科装置。前記フランジは、前記ホルダ部材の一端または両端に形成される、 ことを特徴とする請求項4に記載の電気モータ。

说明书全文

本発明は、小型のブラシレス・スロットレスモータに関し、例えば、歯科用ハンドピースに適用されるモータ、および歯科装置に関する。

工具を有する歯科用ハンドピースを駆動する電気モータとして、回転ムラや振動を抑制する目的でブラシレス・スロットレスモータが用いられる(例えば、特許文献1および特許文献2)。 このモータの円筒形のステータコアの内周には、ボビンに設けられた複数のコイルが配置される。

歯科用ハンドピースに適用されるモータには、、エアが通る経路が設けられる。それらの経路を通じてハンドピース内に導入された水、エアは、ハンドピースの工具の位置から口腔内へと供給される。ハンドピースが照明機能を有する場合、モータには、照明用の電線が通る経路も設けられる。

歯科用のモータには、工具による切削・研磨を安定して行うための十分なトルク出(性能)に加えて、術者が手に持って操作し易いように小型化が要求される。小型で高性能のモータを実現しようとすると、ケースの内部空間において、性能に寄与しない領域を極力抑えて、磁気回路上、有効に使える領域を大きく確保することが望まれる。

ここで、スロットレスモータのコイル(巻き線)の種類としては、コイル同士を重ねて配置する重ね巻と、コイル同士を重ねずに配置する非重ね巻とがある。 重ね巻の例としては特許文献1を挙げることができる。重ね巻では、図11(a)に示すように、各コイル101〜103の各々の開口100の内側に、他のコイルのコイルサイド10s(コイルストレート)が配置される。そして、コイル101〜103同士がコイルエンド10eで重ねられる。 コイル101とコイル102とがコイルエンド10eで重なる部分の断面を図11(b)に模式的に示す。コイル102の断面に斜線を付している。コイル102のコイルサイド10sがコイル101の開口100の内側に配置される一方、コイル102のコイルエンド10eはコイル101のコイルエンド10eの上に重ねられる。このようにコイルエンド10eで重ねられるコイル101〜103の全体として、コイルエンド10eはコイルサイド10sよりも厚く形成され、コイルサイド10sに対して径方向に突出する。

重ね巻の場合、水、エアの経路となるパイプ、および照明用の電線をコイルエンド10eの内部に織り込み、コイルを成形することで、パイプ、電線とコイルとを一体化することができる。こういった複雑な巻き線構造は、コイルエンド10eでパイプおよび電線にコイルが密接するので、コイルに過度なストレスが加わり易く、製造コストも高い。また、複雑な構造ゆえ、コイルの断面積に占める導体の割合である占積率を高くするなどの設計変更が容易でない。 さらに、重ね巻では、図11(b)に示すように、コイルエンド10eがコイルサイド10sに対して径方向に突出していて、コイルサイド10sの外径と同等に径が設定されるステータコア105をコイルエンド10eにまで設けることができない。そのため、小型化の要請からモータの長さが制限される中で、コイルエンド10eの分、モータの有効に利用できる長さが短くなってしまう。コイルエンド10eは、全周に亘り、モータの性能に寄与しない無効な領域となる。上記はコイルエンド10eが径方向外側に突出する場合であるが、コイルエンド10eが径方向内側に突出する場合も、コイルサイド10sの内径と同等に径が設定されるロータ106をコイルエンド10eにまで設けることができないので、同様に、モータの有効長が短くなってしまう。

一方、非重ね巻の例としては特許文献2を挙げることができる。 非重ね巻の場合、コイル同士を重ねないので、コイルを単純な形状に成形することができる。そのため、製造コストを抑えられる。また、軸方向におけるコイルの長さの全体に亘り、ステータコアを設けることができる。 この非重ね巻を採用する特許文献2では、水、エア、照明電線用の経路をステータコアよりも外側に配置している。

欧州特許出願公開0788779号明細書

特許第3750790号

特許文献2の構成においては、水、エア、照明電線用の各経路が配置されるステータコアよりも外側が、全周、モータの長さ全体に亘り、磁気回路上、無効な領域となってしまう。つまり、小型化の要請からモータの径が制限される中で、それらの経路の分、モータの有効に利用できる外径が小さくなってしまう。 上記の経路は、それぞれ、水、エアの供給、光源への電力供給の機能を担うためにモータケース内のどこかに設けなくてはならないが、経路と経路との間は、モータケース内で場所をとるだけで役立っていない無駄な領域といえる。

上述の通り、重ね巻の場合も、非重ね巻の場合も、磁気回路上、無効な領域が生じてしまう。無効な領域とは、そこに構造物が存在するか否かを問わず、モータの出力に寄与しない領域をいう。

本発明は、以上で説明した技術的課題に基づいてなされたもので、より一層の小型化および性能向上を促進することができる電気モータ、および電気モータを備えた歯科装置を提供することを目的とする。

本発明に係るブラシレス・スロットレスの電気モータは、ステータコアおよびステータコアよりも内側に配置された複数のコイルを有するステータと、シャフトを有し、ステータに対してシャフトを中心に回転されるロータと、電気モータの適用先の機能を実現するために用いられる媒体を通す媒体経路と、を備える。 そして、本発明は、複数のコイルが、相互に重ならないでロータの回転方向に隣り合い、媒体経路が、隣り合うコイルの間に配置されていることを特徴とする。 ここで、本発明における「媒体」としては、例えば、適用先の洗浄、冷却等の機能を実現するために用いられる水、エア等の流体、あるいは、照明やセンシング等の機能を実現するために用いられる電線や光が挙げられる。「媒体経路」は、そういった媒体を通すために必要となる経路(空間)である。例えば、「媒体経路」は、媒体が流体であれば、流体を流す配管(パイプ等)が占有する空間に該当し、媒体が電線や光であれば、電線や光伝送部材が占有する空間に該当する。

本明細書においては、ロータの回転方向のことを「周方向」と定義する。 また、本明細書において或る物の「軸方向」は、特に断らない限り、ロータが有するシャフトの軸方向に一致するか、あるいはシャフトの軸方向に平行な方向である。 本明細書において或る物の「径方向」は、「軸方向」に対して直交する任意の方向をいうものとする。 さらに、本明細書において或る物の「外周」は、特に断らない限り、その物においてロータの回転方向に沿った外側の部位、およびその部位の周囲をいうものとする。ここでいう外側の部位のことを「外周部」という。「外周部」よりも径方向外側のことを、「その物よりも外側」という。 そして、本明細書において或る物の「内周」は、特に断らない限り、その物においてロータの回転方向に沿った内側の部位、およびその部位よりも内側をいうものとする。ここでいう内側の部位のことを「内周部」という。「内周部」よりも径方向内側のことを、「その物よりも内側」という。 換言すると、上記課題を解決するための本願発明の電気モータは、以下のような構成である。なお、その電気モータは、駆動対象(例えば、歯科用ハンドピース)に備えられた部材(例えば、切削用バー)に駆動力を供給するものとする。その電気モータは、ステータと、ステータに対して回転するロータと、ステータに設けられた少なくとも一つの経路(水やエアを通すパイプ、また、電力を供給するための電線が占める空間)とを備えている。その経路は、駆動対象に対して、上述の部材の運動(回転や切削等)以外の機能(冷却、洗浄、照明等)を実現するため能力を提供する。ステータは、筒状のステータコアとステータコアの内側に配置された複数のコイルを備えるものとする。その複数のコイルの各々は、ロータの回転方向に沿ってステータコアの内側に配置されるものとする。ここで、その複数のコイルの一つを特定コイルとして特定したときに、その特定コイルは隣りのコイルと重なることなく配置され、上述の経路は、隣り合う2つのコイルの境の隙間に形成されるものとする。

本発明によれば、コイルが相互に重ならない非重ね巻を採用するので、重ね巻の場合とは違ってコイルエンドに磁気的な無効領域を生じさせない。 さらに、本発明によれば、隣り合うコイルの間の隙間に、コイルに過度なストレスを加えることなく媒体経路を収めることができる。そうすると、モータの駆動を担う主要要素(ロータおよびステータ)の内部に媒体経路が組み込まれるので、主要要素よりも外側に媒体経路を配置するためのスペースを必要としない。 そのため、詳しくは実施形態の欄で述べるように、モータの主要要素よりも外側において媒体経路のために使われていた無効領域を、モータ出力を引き出すために使うことができる。 そうすると、要求される出力に見合うモータの主要要素の外径を確保しながら、モータケースの径を小さくして小型化を図ることができるし、モータケースの径を小径に維持しながら、主要要素の外径をより大きく確保して性能向上を図ることもできる。 換言すると、モータケースのサイズ当たりの性能を向上させることができる。

本発明の電気モータにおいて、媒体経路は、媒体としての流体を通すパイプが占有する空間、または媒体としての電線が占有する空間であり、パイプまたは電線は、コイルの厚み以下の太さに設定されていることが好ましい。 そうすると、パイプや電線がコイルよりも外側に突出しないので、ステータコアにパイプや電線の逃げとして溝を加工する手間がない。また、そういった溝が磁気特性に影響を及ぼすことを避けることができる。

本発明の電気モータは、複数のコイルを保持するホルダ部材を備え、ホルダ部材は、複数のコイルが外周に配置される筒部と、筒部から径方向外側に立ち上がるフランジと、を有し、媒体経路は、フランジを貫通することが好ましい。 ホルダ部材のフランジには、媒体経路が貫通する孔や切欠が形成されることとなる。 媒体経路が隣り合うコイルの間に配置される本発明では、媒体経路を構成するパイプや電線を支持するために、コイルを保持するホルダ部材に、媒体経路が貫通するフランジを形成すれば足りる。 フランジは、ホルダ部材の一端あるいは両端に形成することができる。

本発明の電気モータは、ステータが3つのコイルを有し、ロータが4つの極を有するように構成することができる。 そうすると、効率よく出力トルクを得ることができる。

本発明の電気モータは、適用先である歯科用ハンドピースを駆動するものとして好適である。その場合、媒体経路として、ハンドピース内へと供給される水が通る経路と、ハンドピース内へと供給されるエアが通る経路と、を備えることができる。ハンドピースが照明機能を備える場合、本発明の電気モータは、媒体経路として、さらに、照明用の電線が通る経路を備えるとよい。

本発明の歯科装置は、上述の電気モータと、電気モータにより駆動される歯科用ハンドピースと、電気モータを駆動制御するコントローラと、を備えることを特徴とする。

本発明の歯科装置において、電気モータは、コントローラにホースにより接続され、媒体経路は、ホース内に形成された経路の延長線上または略延長線上に位置することが好ましい。 その場合、ホース内の経路からモータ内の媒体経路にかけて、直線状の経路を構成することができるので、経路中に曲がった箇所が形成される場合と違って経路内に異物が溜まるのを抑制できる。そのため、水、エアなどの媒体を安定して供給することができる。

本発明によれば、より一層の小型化および性能向上を促進することができる電気モータ、および電気モータを備えた歯科装置を提供することができる。

本発明の実施形態に係る歯科用装置を示す図である。

本発明の実施形態に係る歯科用モータを示し、(a)は前方から見た図、(b)は側面図、(c)は後方から見た図である。

図2に示すモータの分解斜視図である。

図2に示すモータが備えるコイルユニットの分解斜視図である。

図2(b)のV−V線矢視図である(横断面図)。

図2(b)のVI−VI線矢視図である(縦断面図)。

図2(a)のVII−VII線矢視図である(縦断面図)。

インサート筒の縦断面図である。

(a)は、コイル、ステータコア、および媒体経路を模式的に示す横断面図である。(b)は、従来例を示す図であり、コイル、ステータコア、および媒体経路を模式的に示す横断面図である。

(a)〜(c)は、本発明におけるコイルの改良例について説明するための図である。

重ね巻の従来例を示し、(a)はコイルの展開図、(b)はロータ、コイル、およびステータコアの図11(a)におけるXIb−XIb線断面模式図である。

以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。 〔歯科用装置の概略構成〕 本実施形態に係る歯科用装置(歯科装置)は、図1に示すように、歯科用ハンドピース9Aと、ハンドピース9Aを駆動するモータ10と、モータ10の駆動制御などを行うコントローラ9Bとを備える。この歯科用装置は、モータ10により得られるトルクをハンドピース9Aの前端に位置する工具91に伝達し、回転駆動される工具91により歯牙を切削する。 また、本実施形態の歯科用装置は、ハンドピース9Aの前端から照射される光により口腔内の切削部位を照明し、同じく前端から吐出される水、エアにより切削部位を洗浄する。コントローラ9Bにより、水、エアの吐出圧、照明強度が制御されることが好ましい。

〔歯科用モータの概略構成〕 本実施形態のモータ10の外観が、図1および図2(a)〜(c)に示されている。 モータ10の一端側には、ハンドピース9Aが装着される。モータ10の他端側には、コネクタ92によりホース9Cが設けられる。モータ10およびハンドピース9Aは、ホース9Cを介してコントローラ9Bに接続される。 本明細書では、モータ10において、ハンドピース9Aが装着される側を「前(フロント)」、その反対側(コネクタ92側)を「後(リア)」と定義する。

〔モータの構成要素〕 ブラシレス・スロットレスモータであるモータ10は、図3に示すように、駆動を担う主要要素1Aであるロータ2およびステータ3と、それらを収容、保持するためのホルダケース4、リアホルダ5、モータケース6、およびリングねじ7と、ハンドピース9Aが着脱可能に装着されるインサート筒8とを備える。 以下、これらの構成を順に説明する。

〔ロータ〕 ロータ2は、図3、図5、および図6に示すように、シャフト21と、シャフト21に固定される永久磁石であるマグネット22と、マグネット22の外周部を覆うカバーホルダ23とを備える。

マグネット22は、4つの極を有しており、図5に示すように、分割された4つのセグメント22Aからなる。 これらのセグメント・マグネットに代えて、4極に着磁された一体のマグネットを用いることもでき、磁場配向は、ラジアル異方性、極異方性のいずれをも採用することができる。

シャフト21は、図6に示すように、マグネット22が設けられる中央部27と、中央部27よりも前方に位置する前端部28と、中央部27よりも後方に位置する後端部29とを有する。 図3、6に示すように、シャフト21の前端部28側にはフロントベアリング25が設けられ、シャフト21の後端部29側にはリアベアリング26が設けられる。これらのベアリング25,26は、各々、内輪と外輪との間に球状の転動体(ボール)を備えるボールベアリングである。

図6に示すように、カバーホルダ23は、マグネット22の外周部を覆うカバー部231と、マグネット22の前端が突き当てられる前端部232とを有する。

〔ステータ〕 次に、ステータ3は、図3に示すように、コイルユニット30と、コイルユニット30の外周に配置される円筒形のステータコア301とを備える。 ステータコア301は、磁性体金属から形成された円環状の板を積層して形成されている。

(コイルユニット) コイルユニット30は、図4に示すように、3つのコイル(巻き線)31,32,33と、コイル31〜33を保持するボビン34(ホルダ部材)と、注水パイプ(第1のパイプ)41、チップエアパイプ(第2のパイプ)42、および照明電線43とを備える。 コイルユニット30には、照明電線43を通じて電力が供給される光源L(図3)が組み付けられる(図3および図7)。 光源Lは、白色LED(Light Emitting Diode)等の発光デバイスLdと、発光デバイスLdを保持するハウジングLhとを有する。発光デバイスLdは、単一または複数のLEDにより構成することができる。

(コイル〕 図4に示すように、コイル31は、銅などの良導体を樹脂で覆った被覆導線を用いて平面視矩形状に巻かれ、ボビン34の外周部に沿って湾曲した形状に成形される。コイル31は、コイルサイドCsおよびコイルエンドCeを有する。コイルサイドCsは、ステータコア301の軸方向に沿って配置される直線状の区間である。コイルエンドCeは、軸方向の両端に位置する区間である。 他のコイル32,33も、コイル31と同様に形成されている。これらのコイル31〜33を結線することで電機子コイルが形成される。 コイル31〜33をロータ2の周囲に配置した際に、ロータ2の径方向における各コイル31〜33の寸法を各コイル31〜33の厚みと定義する。コイル32を例にとり、図5にコイル32の厚みTcを示す。コイル31〜33の各々は同じ厚みTcに形成されている。 コイル31〜33の各々は、ロータ2の回転方向における一端から他端までに亘り、均一な厚みに形成されている。但し、公差等による厚みの若干の不均一は許容される。 コイル31〜33には、断面円形状である丸線、断面矩形状である平線などを用いることができる。 コイル31〜33は、平面視矩形状に限らず、トラック形状、長円、楕円等、任意の形状であってよい。

本実施形態では、コイル31〜33の配置に非重ね巻を採用している。コイル31〜33は、各々、シャフト21の軸心に対して120°に足りない独立した領域に亘り延在しており、互いに重なることなくロータ2の回転方向に隣り合って配置される。非重ね巻は、180°の領域に亘り延在する重ね巻きと比べてコイルの1巻分の長さを短くすることができるので、同じ巻き数においてコイル抵抗を小さくすることができる。抵抗が小さいことにより、モータの出力の向上に寄与できる。 非重ね巻においてモータを効率良く動作させるために、本実施形態のように3つのコイル31〜33に対して4極のロータ2を好適に採用することができる。同様の理由から、3n個のコイルおよび4n極のロータを好適に採用することができる(nは自然数)。 その他、3nm個のコイルおよび2n極のロータの組み合わせをも採用することができる(n,mは自然数)。例えば、3個のコイルおよび2極のロータの組み合わせ、6個のコイルおよび2極のロータの組み合わせなどが該当する。 なお、コイルが延在する領域の中心角は、上記角度に限らず、コイルの数に応じて適宜な角度に定めることができる。

コイル31〜33の隣り合うもの同士の間には、所定の寸法の隙間Sp(図5)を設定している。本実施形態では3箇所の隙間Spが存在しており、これらの隙間Spには、各々、注水パイプ41、チップエアパイプ42、および照明電線43が配置される。

(ボビン) 絶縁性樹脂から形成されるボビン34は、図4に示すように、シャフト21と同軸に配置される円筒状の筒部36と、筒部36の外周部に突設された3つの凸部37と、筒部36の後端に位置するリアフランジ38と、筒部36の前端に位置するフロントフランジ39とを一体に備える。 凸部37は、コイル31〜33の厚みTcとほぼ同じ高さHp(図5)に形成されるとともに、コイル31〜33の内側の開口35に対応する形状、ここではシャフト21の軸方向に長い平面視長円状に形成されている。各凸部37は、ボビン34の周方向において等間隔に配置されており(図5)、各凸部37の周りにコイル31〜33が嵌め込まれる。 凸部37の高さHpは、ボビン34の径方向に沿って測った凸部37の寸法をいう。より具体的には、高さHpは、図5に示すように筒部36の外周面を凸部37の基端に延長した仮想面Vs(一点鎖線で示す)から径方向に沿って凸部37の頂面37Aまで測った寸法である。 コイル31〜33の各々の開口35内に位置する凸部37は、コイル31〜33の周方向および軸方向における位置決め、保持の機能を有する。その機能を果たすことができる限りにおいて凸部37の形状は任意である。

リアフランジ38およびフロントフランジ39は、筒部36から径方向外側に突出している。これらのフランジ38,39には、厚み方向に貫通する複数の孔が形成されている。リアフランジ38は、凸部37の高さと同等の寸法だけ筒部36から立ち上がるとともに、後述するリアホルダ5の嵌合部52の内側に収められる。フロントフランジ39は、リアフランジ38よりも筒部36からの突出寸法が大きく、ホルダケース4の内側に収められる。 フロントフランジ39には、前方に突出する突起391(図7)が形成されている。その突起391が光源LのハウジングLhに係合されることにより、光源Lがボビン34に設けられている。

(水、エア用パイプ・照明電線) 図4に示すように、注水パイプ41、チップエアパイプ42、および照明電線43は、リアフランジ38からフロントフランジ39にかけて、ボビン34の軸方向に沿って配置されている。 注水パイプ41は、軸方向に沿って直線的に延びる金属パイプ401と、金属パイプ401の外周部に装着される樹脂カバー402とを有する。金属パイプ401の両端部は、樹脂カバー402から露出する。 注水パイプ41は、リアフランジ38およびフロントフランジ39にそれぞれ形成された孔41Hを貫通している。樹脂カバー402に形成された係合部403がリアフランジ38の孔41Hの周縁部に係合することにより、注水パイプ41がボビン34に固定される。 注水パイプ41の後端側は、ポンプ(水の供給源)により水が圧送されるホース9C(図1)内のチューブ951へとコネクタ92を介して接続される。注水パイプ41の前端側は、インサート筒8に形成された経路を介してハンドピース9A内に設けられた経路の末端に接続される。その経路の先端に設けられた吐出口から口腔内へと水が供給される。 なお、図1ではパイプ41,42が同じ位置に図示され、チューブ951,952も同じ位置に図示されている。

注水パイプ41と同様に構成されたチップエアパイプ42も、リアフランジ38およびフロントフランジ39にそれぞれ形成された孔42Hを貫通し、ボビン34に固定される。 チップエアパイプ42の後端側は、エアコンプレッサ(エアの供給源)によりエアが導入されるホース9C(図1)内のチューブ952へとコネクタ92を介して接続される。チップエアパイプ42の前端側は、インサート筒8に形成された経路を介してハンドピース9A内に設けられたチップエア経路の末端に接続される。その経路の先端に設けられた噴射口から口腔内へとエアが供給される。

図1に示すように、注水パイプ41は、ホース9C内のチューブ951の延長線上に位置することが好ましい。同様に、チップエアパイプ42は、ホース9C内のチューブ952の延長線上に位置することが好ましい。 なお、厳密に延長線上である必要はなく、パイプ41,42の位置と、対応するチューブ951,952の位置とが少しずれていてもよい(略延長線上も可)。

照明電線43は、樹脂シース内に複数の導線が収められた配線部430と、配線部430の両端に位置する照明端子431,432とを有する。 配線部430の後端に位置する照明端子431をリアフランジ38の各孔43Hに差し込み、配線部430の前端に位置する照明端子432をフロントフランジ39の各孔43Hに差し込むことにより、照明電線43がボビン34に固定される。照明端子431はホース9C内の電線にコネクタ92を介して接続される。照明端子432は、光源L(図7)に接続される。光源Lにより照射される光は、光の伝送経路としての光ファイバ(図示しない)を通じてハンドピース9Aの前端まで導かれる。

注水パイプ41、チップエアパイプ42、および照明電線43は、コイル31〜33の相互の間に形成される隙間Spに収められている(図5)。単純な形状に成形されたコイル31〜33は、寸法を精度よく管理できるので、コイル31〜33をボビン34に配置したときのボビン34の外周部の残余の部分である隙間Spの寸法・位置精度も高い。したがって、パイプ41等がコイルに干渉してコイル31〜33にストレスを掛けることがなく、隣り合うコイル31〜33の間に注水パイプ41、チップエアパイプ42、および照明電線43が無理なく収められる。 ボビン34への注水パイプ41、チップエアパイプ42、および照明電線43の組付けは、ボビン34にコイル31〜33を組み付けた後でも、ボビン34にコイル31〜33を組み付ける前でも行うこともできる。 注水パイプ41、チップエアパイプ42、および照明電線43の各々の太さ(外径)と、コイル31〜33間の隙間Spの周方向の寸法とが一致又はほぼ一致する場合は、それら注水パイプ41、チップエアパイプ42、および照明電線43をコイル31〜33の位置決め、保持に利用することができる。その場合、ボビン34の凸部37の形成を省略することが許容される。

注水パイプ41、チップエアパイプ42、および照明電線43の各々の太さ(外径)は、コイル31〜33の厚みTc以下に設定されていることが好ましい。その場合、注水パイプ41、チップエアパイプ42、および照明電線43がコイル31〜33よりも外側に突出しないので、コイルユニット30の外周部に対向するステータコア301(図3)の内周部にパイプ41等の逃げとして溝を形成する必要がない。

リアフランジ38には、上記の孔41H,42H,43Hの他にも、複数の孔が形成されており、それぞれの孔の周縁部には、図3に示すように、モータ端子44U,44V,44Wと、冷却用エアパイプ45が係合している。 モータ端子44U,44V,44Wは、それぞれ、コイル31〜33に接続されるとともに、モータ10内の電線、コネクタ92およびホース9Cを介してコントローラ9Bに接続される。コントローラ9Bにより生成される三相交流電流がモータ端子44U,44V,44Wを介してコイル31〜33に印加されると、ステータ3に回転磁界が発生する。この回転磁界とマグネット22の作る磁界の相互作用により、ロータ2がシャフト21を中心に回転される。 冷却用エアパイプ45は、リアフランジ38の孔を介してコイル31〜33にエアを供給することで、コイル31〜33およびその周囲を冷却する。冷却用エアパイプ45は、コネクタ92およびホース9Cを介してエアコンプレッサに接続される。

〔モータの保持要素〕 次に、ロータ2およびステータ3を収容、保持するための要素として、ホルダケース4、リアホルダ5、モータケース6、およびリングねじ7のそれぞれについて順に述べる。

(ホルダケース) ホルダケース4は、図3および図6に示すように、フロントベアリング25を保持する保持部46と、後端側に位置する開口47とを備える略円筒状の部材である。 ホルダケース4の前端周縁部には、光源LのハウジングLhの一部が挿入される切欠48(図3)が形成されている。

(リアホルダ) リアホルダ5は、リアベアリング26を保持する保持部51と、ホルダケース4の内側に嵌合する嵌合部52と、保持部51から後方に突出する筒部53とを備える。筒部53の内側に位置するシャフト21の後端部にコネクタ92が係合する。 保持部51には、ボビン34のリアフランジ38の各孔に対応する複数の孔が、軸方向に貫通して形成されている(図2(c)および図3)。

(モータケース〕 モータケース6は、ホルダケース4の外周部を包囲する円筒状の部材である。モータケース6は、前端から後端に向けて僅かに拡径されている。

(リングねじ) リングねじ7(図3および図6)は、ホルダケース4、リアホルダ5、およびモータケース6の各々を所定の位置に固定する。リングねじ7の内周部には、リアホルダ5の外周部とホルダケース4の外周部に形成されたねじに係合する雌ねじが形成されている。リングねじ7の外周部には、モータケース6の内周部のねじに係合する雄ねじが形成されている。ホルダケース4およびリアホルダ5とモータケース6との間にリングねじ7をねじ込むと、モータ10の構成部品の相対位置が定まる。

〔インサート筒〕 インサート筒8は、図3および図6に示すように、モータケース6の前端の内側に保持される基部81と、基部81から前方へと突出する接続部82とを備える。インサート筒8の内側には、シャフト21の前端側が挿通される挿通孔83が形成されている。

接続部82は、ハンドピース9A(図1)の接続部94の内側に挿入され、シャフト21と、ハンドピース9Aの回転伝達機構93の軸93Aとの軸心を合わせる。シャフト21は接続部82の軸方向長さの半分程度にまで延びている。 接続部82の内側には、回転伝達機構93の軸93Aとシャフト21とを接続するための爪クラッチ86が配置されている。爪クラッチ86はホルダケース4の前端部に設けられている。

基部81は、接続部82をシャフト21と同軸に支持するために、モータケース6の内側に確実に保持されるのに足りる厚みに形成されている。 基部81には、光源Lが収容される光源収容孔84(図3)が厚み方向に貫通して形成されている。

光源収容孔84は、軸方向に沿ってほぼ円形の開口を呈しており、基部81の外側面にはスリットとして表れる。光源収容孔84の内側に光源LのハウジングLhを嵌合することにより、光源Lの位置が規定される。光源LのハウジングLhの外側面の一部は、光源収容孔84と、ホルダケース4の切欠48(図3)とを介してモータケース6の内周部に対向する(図5)。

基部81の挿通孔83の周りには、注水パイプ41の前端に接続される経路41Zの入口と、チップエアパイプ42の前端に接続される経路42Zの入口と、光源Lに接続される光ファイバが貫通する孔43Hと、3つの係合孔87(図2(a))とが形成されている。 図8は、経路41Zおよび経路42Zの縦断面を示している。経路41Zは、その入口41INから基部81の内部を経て接続部82の肉厚の範囲内を挿通孔83に沿って延び、接続部82の外側面に位置する出口41OUTへと通じている。経路42Zもその入口42INから同様の経路を辿り、接続部82の外側面に位置する出口42OUTへと通じている。 出口41OUTは、ハンドピース9A内に形成された図示しない注水経路に接続される。出口42OUTは、ハンドピース9A内に形成された図示しないチップエア経路に接続される。 なお、経路41Zにおいて基部81の径方向外側から内側に向けて延びる区間41Mを穿孔するための加工用孔41Xは後に塞がれる。経路42Zにおける同様の区間42Mを穿孔するための加工用孔42Xも後に塞がれる。

接続部82にハンドピース9Aが装着されると、各係合孔87(図2(a))にハンドピース9A側の突起が係合されることで、ハンドピース9Aとモータ10とが周方向において位置決めされる。それにより、パイプ41,42および光源Lと、ハンドピース9Aが内蔵する経路および光ファイバとを確実に接続することができる。

〔本実施形態による作用効果〕 本実施形態は、コイル31〜33が非重ね巻に形成される構造にあって、ステータコア301よりも内側で、注水パイプ41、チップエアパイプ42および照明電線43の各々が占有する空間である3つの媒体経路40が、隣り合うコイル31〜33の間に配置されることを主要な特徴とする。 ここで、媒体経路40は、注水パイプ41、チップエアパイプ42、および照明電線43の各々が占有する空間を総称したものである。 パイプ41,42や電線43が「占有する空間」とは、パイプ41,42や電線43を配置するため、コイル31〜33の隣り合うもの同士の間においてパイプ41,42や電線43の周囲に必要なクリアランスが含まれるものとする。

(重ね巻に対する作用効果) コイルの形態としては、コイルエンドが重なるようにコイルを立体的で複雑な形状に形成する重ね巻も存在するが、重ね巻の場合、重ねられたコイルエンドがコイルサイドに対して厚いことに起因して、コイルエンドが磁気的な無効領域となる。 それに対して、非重ね巻を採用する本実施形態では、コイルサイドCsからコイルエンドCeまでステータコア301やロータ2を十分な長さで設けることができるので、モータの性能を向上させることができる。 さらに、本実施形態のコイル31〜33は、非重ね巻であり、各々が独立した単純な形状なので、それぞれを巻き線機により容易に、品質良く製作できる。

仮に、重ね巻コイルに媒体経路40を組み込むと、媒体経路40に係るパイプや電線がコイルエンドに埋設されるためにコイルに過度なストレスが加わり易い。一方、本実施形態では、パイプ41,42や電線43とは別途、精度よく成形可能なコイル31〜33の間に設定した隙間にパイプ41,42や電線43を配置することによって、コイルユニット30に媒体経路40を組み込んでいる。そうすると、コイル31〜33に過度なストレスを加えることなくコイルユニット30に媒体経路40を組み込むことが可能となるから、コイル31〜33の品質、信頼性を確保することができる。

(非重ね巻の従来例に対する作用効果) 非重ね巻のコイル31〜33を採用していても、非重ね巻の従来例(図9(b))においては、媒体経路40の設置に伴う磁気的な無効領域が生じていた。 以下、本実施形態の主要な特徴(図9(a))を非重ね巻の従来例(図9(b))と比較しながら、本実施形態による作用効果について説明する。

モータ10が媒体経路40を内蔵する以上、モータケース6内の領域の一部を媒体経路40に割り当てなければならない。 図9(b)に示す従来例のように、媒体経路40を配置するためのスペースをステータコア301とモータケース6との間に求める場合、ステータコア301の外周部とモータケース6の内周部との間に、媒体経路40に係るパイプ41,42や電線43の太さ(外径)に応じた寸法の間隔をあける必要がある。そのステータコア301の外周部とモータケース6の内周部との間に挟まれた領域Aは、媒体経路40を配置するためだけに必要なスペースである。当該領域Aは、モータ10の駆動を担う主要要素1A(ロータ2およびステータ3)よりも外側に位置しており、磁気回路上、何の寄与をもなさない無効な領域である。媒体経路40の相互の間には、媒体経路40を位置決めするための部材が配置される。

図9(b)では、モータケース6内の領域Aの全体を媒体経路40のために必要とする。この領域Aは、モータケース6の内部空間において最も径方向外側に位置し、全周に亘るので、モータケース6内の開口面積に対する比率が、無視できない値、例えば、5〜20%にも達する。この領域Aが図9(b)の紙面の直交方向にモータの軸長だけ連続した体積分、モータケース6内の磁気的に有効に利用できるスペースが少なくなる。 そのため、小型化のためにモータケース6の径を小さくすると、所定のモータ出力を引き出すために必要な、モータの主要要素1Aの外径を確保することができなくなり、性能が著しく低下する。モータ出力を引き出すためには、コイル31〜33の巻き数を増やしたり、ロータ2やステータコア301の断面積を増やす必要があるので、モータの主要要素1Aの外径確保が重要である。 図9(b)において、性能向上を図るために主要要素1Aの外径を大きく確保すると、主要要素1Aよりも外周に(ステータコア301よりも外側に)媒体経路40が設けられるのだから、モータが顕著に大径化してしまう。

さて、図9(a)に示す本実施形態では、隣り合うコイル31〜33の間に各媒体経路40が配置されている。そのため、ステータコア301よりも外側に媒体経路40を配置するためのスペースを必要としない。本実施形態では、媒体経路40に係るパイプ41,42や電線43がコイルユニット30に一体化されており、主要要素1Aの内部に媒体経路40が組み込まれる。具体的に、コイル31〜33の位置で、周方向に、注水パイプ41、コイル31、チップエアパイプ42、コイル32、照明電線43、およびコイル33の順に配置されている。

媒体経路40をモータ10に内蔵するにあたり、媒体経路40の領域以外に出現する無効領域について考える。 当該無効領域は、従来例では、媒体経路40の相互の間で周方向に延在する領域(図9(b)で黒く塗りつぶされた領域)である。この無効領域は、ステータコア301とモータケース6との間の領域Aにおいて広範囲に及ぶ。 ここで、ステータコア301の外径の半径をR2、モータケース6の内径の半径をR1、各媒体経路40の直径をいずれもd1、媒体経路40の数をn(本実施形態では3)とすると、この無効領域の面積は、π(R12−R22−n(d1/2)2)である。

一方、本実施形態(図9(a))においては、モータケース6の内周面に対してごく近接するようにステータコア301を配置することができるので、無効領域が実質的に生じない。 なお、図9(b)、図9(a)のいずれにおいても、モータケース6の内周面と、それに対向する部材(図9(b)では媒体経路40に係るパイプ41,42や電線43、図9(a)ではステータコア301)との間に同等のクリアランスがあくため、両者のスペース効率を比較検討するにあたり、当該クリアランスを考慮に入れる必要はない。

本実施形態によれば、かかる無効領域が生じない分、主要要素1Aの外径を増やす上で従来例に対して有利である。主要要素1Aの外径増、つまり、コイル31〜33の巻き数を増やしたり、ロータ2やステータコア301の断面積を増やすことで、モータ10の性能を向上させることができる。 このことに関し、ステータコア301の断面積を増やすことを例に取り説明する。 図9(b)におけるステータコア301の外径の半径をR2と置く。また、図9(b)および(a)に共通で、モータケース6の内径の半径をR1、媒体経路40の直径をd1、ステータコア301の肉厚をt1と置く。R1=R2+d1であるものとする。 まず、図9(b)に示す従来例において、ステータコア301の断面積A2は、次式(1)の通りである。 A2=π(R22−(R2−t1)2) ・・・(1) 次に、図9(a)に示す本実施形態において、ステータコア301の断面積A1は、次式(2)の通りである。 A1=π(R12−(R1−t1)2) ・・・(2)

本実施形態と従来例とにおけるステータコア301の断面積の差ΔA、すなわち(A1−A2)を計算すると、次式(3)が得られる。 ΔA=2πt1d1 ・・・(3) 式(3)を用いて数値の具体例を挙げる。 t1=2mm、d1=2mmであるとすると、式(3)にあてはめてΔAは8πmm2となる。 そして、R2=10mmであるとすると、A2=36πmm2であり、これにΔAを加えてA1は44πmm2となる。 したがって、A1/A2より、ステータコア301の断面積を約1.22倍に増やすことができる。その分、モータ10の性能を向上させることができる。

以上より、本実施形態によれば、モータケース6内の全スペースを、極力、性能に寄与する要素のみによって使い切ることができる。 そのため、小型化のためにモータケース6の径を小さくしたとしても、要求される高い出力に見合うモータ10の主要要素1Aの外径を確保することができる。あるいは、性能向上を図るために主要要素1Aの外径をより大きく確保しながら、モータケース6を小径に維持することができる。つまり、本実施形態によれば、高性能で小型のモータ10を実現することができる。

また、隣り合うコイル31〜33の間に媒体経路40が配置される本実施形態によると、媒体経路40をコイルユニット30に組み付けるために、媒体経路40が貫通するフランジ38,39をボビン34に形成すれば足りる。つまり、コイル31〜33を支持するボビン34の他に、新たな部材を追加することなく、モータの特性に影響を与えないボビン34の少しの形状変更により、媒体経路40をコイルユニット30に容易に組み付けることができる。

以上に加えて、本実施形態によれば、非重ね巻きの従来例に対して、注水パイプ41およびチップエアパイプ42内に異物が溜まり難いので、水、エアを安定して供給することができる。 従来例(図9(b))では、モータケース6の内部空間において最も径方向外側に各媒体経路40が位置している。しかし、媒体経路40の後端に接続されるホース9C側のチューブ951,952(図1)は軸心からそれほど離れた位置を通っていない。このように、媒体経路40と、ホース9C側のチューブ951,952との位置の相違が大きいと、媒体経路40からそれらのチューブへと、周囲の構造物との干渉を避けながら取り回す結果、経路に屈曲部が生じてしまい、屈曲部に異物が溜まり易い。 本実施形態では、媒体経路40をステータコア301よりも外側には配置せずにステータコア301よりも内側に配置している。そのため、媒体経路40と、ホース9C側のチューブ951,952とが軸心から同等の距離にある。 そのため、ホース9Cに用意されたチューブ951,952に対して、媒体経路40を単純な経路で接続することが可能となる。したがって、媒体経路40からチューブへと、曲率半径の小さい屈曲部が生じることなく滑らかに接続することができるので、異物の堆積を避けることができる。 特に、ホース9C内に用意されたチューブ951,952の各々の延長線上に、対応する媒体経路40が配置されていると、異物の堆積をより確実に避けることができる。

(光源の設置について) 次に、照明電線43に接続された光源Lを設置するための構造について説明する。 まず、ボビン34のフロントフランジ39から前方に突出する突起391(図7)に光源LのハウジングLhを係合させることにより、フロントフランジ39の前側に光源Lを組み付けている。そうすると、例えばホルダケース4よりも外側に光源Lの設置スペースを用意する場合と比べて、モータ10の細径化を図ることができる。

また、インサート筒8の基部81の光源収容孔84内に光源Lを収容している。これにより、モータ10を軸方向に小型化することができる。

そして、光源Lの設置に必要なスペースがモータケース6の半径に対して余裕がないため、基部81の外側面にも光源収容孔84を開口させ(図3)、基部81に突き当てられるホルダケース4の前端外周部に切欠48(図3)を形成している。そうすると、光源収容孔84および切欠48を介して露出する光源LのハウジングLhの外側面のごく近くにモータケース6の内周部を配置し(図5)、モータケース6をより一層細径化することができる。

〔コイルの改良〕 非重ね巻きを採用する本実施形態では、重ね巻とは異なり個別に成形されるコイル31〜33を用いることができるので、コイル31〜33の各々に対して、所定の巻き方を実施することにより、コイル31〜33の占積率を確実に高めることができる。占積率は、コイルの断面積に占める導体の断面積の割合である。 占積率を高めることのできる巻き方としては、例えば、銅線が規則的に整列される整列巻や、巻き線の始端および終端がいずれもコイルの外側に位置するα巻や、細径の素線を束ねた束線を用いる束線巻などを挙げることができる。また、丸線よりも、断面矩形状である角線を用いる方が高密度に巻くことができるので占積率が向上する。占積率向上の観点からは、平角線によるα巻が最適である。

また、コイル31〜33に生じる渦電流損を低減するために、細径の素線を束ねた束線によりコイル31〜33を構成することが好ましい。特に、コイル抵抗を低減するため、導線の断面積を大きくする必要がある場合に有効である。 これについて図10(a)〜(c)を参照して説明する。 図10(a)は、細径の複数の素線15A,15Bが束ねられている様子を模式的に示す。なお、図示しない他の素線も含んで束線を構成することができる。 素線15A,15Bに磁束φが鎖交すると、磁束φの変化を妨げるように、素線15A,15Bのそれぞれに渦電流Iが流れる。この渦電流Iにより生じる渦電流損Peは、次式で表される。

Pe=Ke(tfBm)2/ρ t:板厚 f:周波数 Bm:最大磁束密度 ρ:磁性体の抵抗率 Ke:比例定数

渦電流損Peは、板厚t以外の変数を固定値とすると、Pe∝t2となる。このとき、N枚のコアがあり、総厚をDとしたとき、t=D/Nとなる。 それゆえ、Pe∝N×t2=N×(D/N)2=D2/N つまり、Nを増やすことで渦電流損Peを小さくすることができる。 これをコイルでは、tを素線径、Nを素線数と見立てて考えることができる。 コイルでは、できるだけ素線径を小さくし、素線数を大きくすることでPeを低減することができる。 例えば、便宜上、図10(b)の楕円長径d1を2分割して図10(c)の直径d2とする。このとき、総厚Dをd1と考え、Nを2と考えることができるため、図10(b)の太線に対して図10(c)の細線束線では、Peを1/2に低減することができる。これにより、渦電流損による発熱を十分に抑え、モータ性能の向上にも寄与できる。

本発明の電気モータは、ブラシレス・スロットレスタイプであって、電気モータの適用先の機能を実現するために供給される媒体を通す媒体経路を備える限りにおいて、駆動の形式や種類、構成部品の材質等を問わず、適宜に構成することができる。 上記実施形態において、コイル31〜33はボビン34に保持されるが、ステータコア301の内周部に保持されていてもよい。 また、本発明の電気モータは、少なくとも1つの媒体経路を備えていれば足りる。つまり、複数のコイルのうちの隣り合うコイルの間にそれぞれ存在する隙間のすべてに媒体経路が配置されている必要はなく、少なくとも1つの隙間にのみ媒体経路40が配置されていればよい。

本発明の電気モータは、歯科の施術、技工に用いられるハンドピースに好適に適用することができる。 また、本発明の電気モータは、歯科に限らず、医療分野全般で用いられる医療用ハンドピースに適用することができる。 さらに、本発明の電気モータは、工作機械に組み込んで用いることもできる。例えば、工作機械のスピンドルを駆動するものであって、ワークに種々の目的で供給される水、エア等の媒体を通す媒体経路を備えるものとして、本発明の電気モータを構成することができる。 その他、本発明の電気モータは、種々の用途に用いることができる。

上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。

1A 主要要素 2 ロータ 3 ステータ 4 ホルダケース 5 リアホルダ 6 モータケース 7 リングねじ 8 インサート筒 9A ハンドピース 9B コントローラ 9C ホース 10 モータ 15A,15B 素線 21 シャフト 22 マグネット 22A セグメント 23 カバーホルダ 25 フロントベアリング 26 リアベアリング 27 中央部 28 前端部 29 後端部 30 コイルユニット 31〜33 コイル 34 ボビン(ホルダ部材) 35 開口 36 筒部 37 凸部 38 リアフランジ 39 フロントフランジ 40 媒体経路 41 注水パイプ(媒体経路,第1のパイプ) 41H 孔 42 チップエアパイプ(媒体経路,第2のパイプ) 42H 孔 43 照明電線(媒体経路) 43H 孔 44U,44V,44W モータ端子 45 冷却用エアパイプ 46 保持部 47 開口 48 切欠 51 保持部 52 嵌合部 53 筒部 81 基部 82 接続部 83 挿通孔 84 光源収容孔 86 爪クラッチ 87 係合孔 91 工具 92 コネクタ 93 回転伝達機構93 94 接続部 231 カバー部 232 前端部 301 ステータコア 391 突起 401 金属パイプ 402 樹脂カバー 403 係合部 430 配線部 431,432 照明端子 951,952 チューブ A 領域 d1,d2 直径 I 渦電流 L 光源 Ld 発光デバイス Lh ハウジング Sp 隙間

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