歯用装置及び医療用装置

申请号 JP2013048767 申请日 2013-03-12 公开(公告)号 JP6015501B2 公开(公告)日 2016-10-26
申请人 ソニー株式会社; 发明人 大森 志穗; 玉村 好司;
摘要
权利要求

口腔の歯牙、歯肉、歯垢及び歯石のうち少なくとも1つに照射するための光を発する光源部と、 前記光源部から照射された光に対して発せられる前記口腔からの蛍光を検出するための光検出部と、 前記光検出部により検出された蛍光に基づき、前記蛍光の強度の経時変化を可視化するための第1のデータを出する制御部と を有する本体と、 前記光源部から発せられた前記光を照射する照射部と、 前記口腔からの前記蛍光を受光する受光部と、 所定波長を有する参照光を照射し、かつ前記歯肉の血管中で前記参照光が散乱した散乱光を受光し、前記散乱光と前記参照光のドップラーシフトに基づいて前記歯肉の血流量を検出するドップラー計測部と、 異なる2波長の光の前記歯肉の血液中の酸素運搬体の吸光度の差異に基づいて、前記歯肉の酸素飽和度を検出する酸素飽和度計測部と を有し、前記本体に接続され、把持部を有する棒状に構成された治療診断用プローブと を具備し、 前記照射部は、前記光源から発せられた前記光を導光する第1のファイバを有し、 前記ドップラー計測部は、前記参照光を導光し、かつ前記散乱光を受光する第2のファイバを有し、 前記酸素飽和度計測部は、前記2波長の光を導光及び受光する第3のファイバを有し、 前記第1のファイバ、前記第2のファイバ及び前記第3のファイバは、前記治療診断プローブの延在方向に沿って前記治療診断プローブの内部に並走する 歯用装置。請求項1に記載の歯用装置であって、 前記歯肉には、前記光の照射により励起する光感受性薬剤が、前記歯肉の深さ方向に、歯周病菌と結合、又は、歯周病菌に取り込まれる形で分布し、 前記制御部は、前記光の照射に対して発せられる前記光感受性薬剤からの蛍光の前記歯肉の深さ方向における強度の分布に基づき、前記第1のデータを出力する 歯用装置。請求項2に記載の歯用装置であって、 前記制御部は、計算により求められた基底状態の前記光感受性薬剤の前記深さ方向における分布の経時変化、計算により求められた前記光の前記深さ方向における強度分布の経時変化、及び、前記光検出部により検出された前記歯肉表面の蛍光強度に基づき、前記深さ方向における前記蛍光強度の経時変化を計算する 歯用装置。請求項3に記載の歯用装置であって、 前記蛍光強度の経時変化は前記歯周病菌の殺菌経過を示す 歯用装置。請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の歯用装置であって、 前記歯牙又は前記歯肉に付着する歯垢又は歯石には、前記光の照射により励起する光感受性薬剤が、前記歯垢又は歯石の深さ方向に、歯周病菌と結合、又は、歯周病菌に取り込まれる形で分布し、 前記制御部は、前記光の照射に対して発せられる前記光感受性薬剤からの蛍光の前記歯肉に付着する歯垢又は歯石の深さ方向における強度の分布に基づき、前記第1のデータを出力する 歯用装置。請求項1から5のうちのいずれか1項に記載の歯用装置であって、 前記本体は、 前記歯牙及び歯肉を有する口腔の画像を受信する画像受信部と、 前記口腔の位置情報を、任意の位置に基準位置を設定し、該基準位置からの絶対位置情報として受信する位置情報受信部と、 前記画像受信部から受信した画像データと前記位置情報受信部から受信した位置情報とを紐付けする画像処理部と を更に有し、 前記制御部は、前記口腔の前記光の照射部と前記位置情報とを対応させ、前記口腔の画像に前記光の照射部が示されるための第2のデータを出力する 歯用装置。請求項1から6のうちのいずれか1項に記載の歯用装置であって、 前記歯牙及び歯肉を有する口腔には、前記光の照射により励起し、かつ、歯周病菌と結合する、又は、歯周病菌に取りこまれる光感受性薬剤が投与され、 前記制御部は、前記光照射に対して発せられる前記歯牙又は歯肉の表面付近の前記光感受性薬剤からの蛍光の、前記歯牙又は歯肉の表面における強度の分布に基づき、前記第1のデータを出力する 歯用装置。請求項1から7のうちのいずれか1項に記載の歯用装置であって、 前記光は、レーザ光又は発光ダイオード光である 歯用装置。請求項2,5又は7に記載の歯用装置であって、 前記光は前記光感受性薬剤の吸収帯に属する波長の光である 歯用装置。請求項9に記載の歯用装置であって、 前記光検出部は、前記波長の光に対して発せられる前記口腔からの蛍光、反射光及び拡散光のうち少なくとも1つを検出する 歯用装置。請求項1から10のうちのいずれか1項に記載の歯用装置であって、 前記歯牙や前記歯肉に空気を吹きかける空気吹きかけ部 を更に具備する歯用装置。請求項6に記載の歯用装置であって、 前記本体に接続され、前記口腔の前記画像を撮影する三次元モデル取得用プローブと、 前記口腔内に設置され、前記画像の撮影箇所の位置情報を取得する際の前記基準位置となる空間度検出部と をさらに具備し、 前記三次元モデル取得用プローブは、 前記口腔の画像データを電気信号に変換する撮像部と、 前記撮像部で得られた画像データを前記本体の前記画像受信部に転送する画像転送部と、 前記撮像箇所の位置情報であるロケータ信号を前記空間角度検出部に送信するロケータ信号発生部と、 を有し、 前記空間角度検出部は、前記ロケータ信号に基づいて、前記基準位置からの前記撮影箇所の位置情報を前記絶対位置情報として求めて前記位置情報受信部に送信する 歯用装置。感染症に対する治療及び予防のうち少なくとも一方が行われる施術部位に照射するための光を発する光源部と、 前記光源部から照射された光に対して発せられる前記施術部位からの蛍光を検出するための光検出部と、 前記光検出部により検出された蛍光に基づき、前記蛍光の強度の経時変化を可視化するためのデータを出力する制御部と を有する本体と、 前記光源部から発せられた前記光を照射する照射部と、 前記施術部位からの前記蛍光を受光する受光部と、 所定波長を有する参照光を照射し、かつ前記施術部位の血管中で前記参照光が散乱した散乱光を受光し、前記散乱光と前記参照光のドップラーシフトに基づいて前記施術部位の血流量を検出するドップラー計測部と、 異なる2波長の光の前記施術部位の血液中の酸素運搬体の吸光度の差異に基づいて、前記施術部位の酸素飽和度を検出する酸素飽和度計測部と を有し、前記本体に接続され、把持部を有する棒状に構成された施術用プローブと を具備し、 前記照射部は、前記光源から発せられた前記光を導光する第1のファイバを有し、 前記ドップラー計測部は、前記参照光を導光し、かつ前記散乱光を受光する第2のファイバを有し、 前記酸素飽和度計測部は、前記2波長の光を導光及び受光する第3のファイバを有し、 前記第1のファイバ、前記第2のファイバ及び前記第3のファイバは、前記施術用プローブの延在方向に沿って前記施術用プローブの内部に並走する 医療用装置。請求項13に記載の医療用装置であって、 前記施術部位は、関節の滑膜、腹腔、総胆管、歯根及び唾液腺のうちの少なくともいずれか1つである 医療用装置。請求項13または14に記載の医療用装置であって、 前記蛍光強度の経時変化は前記施術部位における感染性生物の殺菌経過を示す 医療用装置。請求項13から15のうちのいずれか1項に記載の医療用装置であって、 前記施術部位には、前記光の照射により励起する光感受性薬剤が分布し、 前記制御部は、前記光の照射に対して発せられる前記光感受性薬剤からの蛍光の前記施術部位における強度の分布に基づき、前記データを出力する 医療用装置。請求項13から16のうちのいずれか1項に記載の医療用装置であって、 前記受光部は、前記施術部位の蛍光画像を取得し、かつ、前記施術部位の実画像を取得することが可能であり、 前記施術用プローブは、 前記受光部が、前記施術部位からの蛍光画像を取得する第1のモードと、前記施術部位の実画像を取得する第2のモードとを切り替える切替部をさらに有する 医療用装置。請求項17に記載の医療用装置であって、 前記受光部は、前記施術用プローブ内を走行する受光路を有し、 前記切替部は、 前記受光路に配置されることが可能であり、前記施術部位に分布し前記光の照射により励起する光感受性薬剤の吸収帯に属する波長の光を透過させる光学フィルタと、前記第1のモードにおいて前記光学フィルタを前記受光部に配置させ、前記第2のモードにおいて前記光学フィルタを前記受光部から退避させる機構部とを有する 医療用装置。

说明书全文

本技術は、歯周病の治療や診断等に用いられる歯用装置、感染症に対する治療又は予防に用いられる医療用装置及び算出方法に関する。

歯科医による歯周病治療では、スケーリング、外科治療、光や超音波を利用した治療法などがある。いずれも歯周病菌や歯石を除去することで炎症を抑え、歯周ポケットの深さが浅くなるという効果を得るものである。この他に、aPDT(antimicrobial Photodynamic Therapy)を用いた歯周病治療がある。

aPDTという治療法では、単独では毒性を持たないカチオン性の光感受性物質と、その物質を励起させる波長の光を用いる。光感受性物質は、その物質を励起させる波長の光を吸収して励起状態となり、周囲の酸素に自身の持っているエネルギーを受け渡して一重項酸素を発生させる。その一重項酸素は酸化が強く、周囲の細胞や組織に傷害を及ぼす。菌などの表面は負電荷に帯電しているため、カチオン性の光感受性物質薬剤を患部に投与すると、静電相互作用により薬剤と菌が結合する。この状態に、薬剤を励起させる波長の光を照射すると、薬剤が結合している菌が死滅する。例えば、特許文献1には、PDTを用いた歯周病治療等による効果を画像化することが記載されている。

さらにaPDTは、細菌の他にも、ウィルス、原虫、真菌等の感染性生物の殺菌に広く有効であるということが示されており、また、免疫賦活化作用についても指摘されている(非特許文献1参照)。したがってaPDTは、上記歯周病治療に加えて、他の感染症の治療及び予防に対しても広く用いることができると期待される。

特開2011−521237号公報

Masamitsu Tanaka, Pawel Mroz, Tianhong Dai1, Manabu Kinoshita, Yuji Morimoto and Michael R. Hamblin, "Photodynamic therapy can induce non-specific protective immunity against a bacterial infection" Proceedings of SPIE Vol. 8224 822403-1

特許文献1に記載されるモニタリング用装置においては、aPDTを用いた歯周病等の治療による殺菌の経過をリアルタイムにモニター上で観察することが難しい。

以上のような事情に鑑み、本技術の目的は、歯周病治療による殺菌の経過をリアルタイムに観察することができる歯用装置及び感染症の治療又は予防に用いられる医療用装置、並びに算出方法を提供することにある。

上述の課題を解決するため、本技術の一形態に係る歯用装置は、光源部と、光検出部と、制御部とを具備する。 上記光源部は、口腔の歯牙、歯肉、歯垢及び歯石のうち少なくとも1つに照射するための光を発する。 上記光検出部は、光源部から照射された光に対して発せられる上記口腔からの蛍光を検出する。 上記制御部は、上記光検出部により検出された蛍光に基づき、上記蛍光の強度の経時変化を可視化するための第1のデータを出力する。

本技術では、蛍光強度の経時変化を可視化することにより、歯周病菌の殺菌状況や歯垢や歯石の除去状況をほぼリアルタイムに観察することができる。

上記歯肉には、上記光の照射により励起する光感受性薬剤が、上記歯肉の深さ方向に、歯周病菌と結合、又は、歯周病菌に取り込まれる形で分布し、上記制御部は、上記光の照射に対して発せられる上記光感受性薬剤からの蛍光の上記歯肉の深さ方向における強度の分布を基づき、上記第1のデータを出力してもよい。 このように深さ方向における歯周病菌の分布の様子を画像から把握することができ、治療による深さ方向に分布する歯周病菌の殺菌の経過をリアルタイムに観察することができる。

上記制御部は、計算により求められた基底状態の上記光感受性薬剤の上記深さ方向における分布の経時変化、計算により求められた上記光の上記深さ方向における強度分布の経時変化、及び、上記光検出部により検出された上記歯肉表面の蛍光強度を基に、上記深さ方向における上記蛍光強度の経時変化を計算してもよい。

上記蛍光強度の経時変化は上記歯周病菌の殺菌経過を示してもよい。

上記歯牙又は上記歯肉に付着する歯垢又は歯石には、上記光の照射により励起する光感受性薬剤が、上記歯垢又は上記歯石、歯肉の深さ方向に、歯周病菌と結合、又は、歯周病菌に取り込まれる形で分布し、上記制御部は、上記光の照射に対して発せられる上記光感受性薬剤からの蛍光の上記歯牙に付着する歯垢又は歯石の深さ方向における強度の分布を基づき、上記第1のデータを出力してもよい。 これにより、歯牙又は歯肉に付着する歯垢や歯石の深さ方向における歯周病菌の分布の様子を画像から把握することができ、治療による歯周病菌の殺菌の経過をリアルタイムに観察することができる。

上記歯牙及び歯肉を有する口腔の画像を受信する画像受信部と、上記口腔の位置情報を、任意の位置に基準位置を設定し、該基準位置からの絶対位置情報として受信する位置度情報受信部と、上記画像受信部から受信した画像データと上記位置角度情報受信部から受信した位置情報とを紐付けする画像処理部とを更に具備し、上記制御部は、上記口腔の上記光の照射部と上記位置情報とを対応させ、上記口腔の画像に上記光の照射部が示されるための第2のデータを出力してもよい。 これにより、患者や施術者は、歯周病菌の殺菌状況や、歯垢又は歯石の除去状況をほぼリアルタイムに観察することができることに加え、口腔内のどの箇所の治療であるかを把握することができる。

上記歯牙及び歯肉を有する口腔には、上記光の照射により励起し、かつ、歯周病菌と結合する、又は、歯周病菌に取りこまれる光感受性薬剤が投与され、上記制御部は、上記光照射に対して発せられる上記歯牙又は歯肉の表面付近の上記光感受性薬剤からの蛍光の、上記歯牙又は歯肉の表面における強度の分布に基づき、上記第1のデータを出力してもよい。 このように、歯牙又は歯肉表面付近、又は歯垢内の、歯周病菌の殺菌状況をほぼリアルタイムに観察することができる。

上記光として、レーザ光又は発光ダイオード光を用いることができる。

上記光は、例えば上記光感受性薬剤の吸収帯に属する波長の光である。 上記光検出部は、上記波長の光に対して発せられる上記口腔からの蛍光、反射光及び拡散光のうち少なくとも1つを検出してもよい。 歯周病菌と結合、又は歯周病菌を取り囲む光感受性薬剤は、赤色光等の固有の吸収帯に属する波長の光が照射されることで蛍光を発する。従って、歯垢や歯石から発する蛍光強度の経時変化から歯垢や歯石の除去状態をリアルタイムに把握することができる。 また上記波長の光は、血流量、又は、血流速を計測するための照射光源としても使える。さらに酸素飽和度を計測するための照射光源にもなり得る。酸素飽和度計測時には、場合によっては近赤外光と組み合わせて評価してもよい。近赤外光は、血流を促進する効果もあるため、診断をしながら、治癒を促進することもできる。

上記歯肉の血流量を検出する血流量受信部を更に具備してもよい。 血流量を検出することにより、患者の疼痛状態を把握することができる。

上記歯肉の酸素飽和度を検出する酸素飽和度計測部を更に具備してもよい。 酸素飽和度を検出することにより、炎症の度合いを定量的に評価ができる。またPDT(光線力学的治療)の効果を予測することもできる。さらに生体の基礎的な状態を把握できるため、臨床研究段階でPDT効果が得られた原因、得られなかった原因を考察するのに大変役立つ情報源となる。

上記歯牙や上記歯肉に空気を吹きかける空気吹きかけ部を更に具備してもよい。 歯周病に関与する主な菌は嫌気性細菌(偏性嫌気性細菌もしくは通性嫌気性細菌)であるため、患部に空気を吹きかけながら光を照射することにより、より殺菌効力が向上する。

本技術の他の形態に係る算出方法は、励起光を照射し、蛍光強度を検出し、深さ方向における蛍光強度の経時変化を計算する。 上記励起光の照射では、光感受性薬剤が投与された口腔の歯肉に上記光感受性薬剤に対する励起光を照射する。 上記蛍光強度の検出では、上記歯肉表面における蛍光強度を検出する。 上記深さ方向における蛍光強度の経時変化は、計算により求められた基底状態の上記光感受性薬剤の上記歯肉の深さ方向における分布の経時変化、計算により求められた上記励起光の上記深さ方向における強度分布の経時変化、及び、上記検出された上記歯肉表面の蛍光強度に基づいて、計算する。

本技術の他の形態に係る医療用装置は、光源部と、光検出部と、制御部とを具備する。 上記光源部は、感染症に対する治療及び予防のうち少なくとも一方が行われる施術部位に照射するための光を発する。 上記光検出部は、上記光源部から照射された光に対して発せられる上記施術部位からの蛍光を検出する。 上記制御部は、上記光検出部により検出された蛍光に基づき、上記蛍光の強度の経時変化を可視化するためのデータを出力する。

本技術では、蛍光強度の経時変化を可視化することにより、細菌等の感染性微生物の殺菌状況や免疫系の活性化の状況をほぼリアルタイムに観察することができる。

具体的には、上記施術部位は、関節の滑膜、腹腔、総胆管、歯根及び唾液腺のうちの少なくともいずれか1つである。 これにより、例えば関節鏡下手術時や腹腔鏡下手術時その他の治療の際における感染症の治療又は予防に、上記医療用装置を用いることができる。

また、上記蛍光強度の経時変化は上記施術部位における感染性微生物の殺菌経過を示してもよい。

上記施術部位には、上記光の照射により励起する光感受性薬剤が分布し、 上記制御部は、上記光の照射に対して発せられる上記光感受性薬剤からの蛍光の上記施術部位における強度の分布に基づき、上記データを出力してもよい。 このように施術経過の状況を画像から把握し、リアルタイムに観察することができる。

上記医療用装置は、上記施術部位の血流量を検出する血流量検出部を更に具備していてもよい。

本技術の他の形態に係る算出方法は、感染症に対する治療及び予防のうちの少なくとも一方が行われる施術部位に光感受性薬剤を投与する工程を含む。 上記施術部位に上記光感受性薬剤に対する励起光が照射される。 上記施術部位における蛍光強度が検出される。 上記光の照射に対して発せられる上記光感受性薬剤からの蛍光の上記施術部位における強度に基づいて、上記施術部位における上記蛍光強度の経時変化が計算される。

以上のように、本技術によれば、歯周病菌の殺菌状況や歯垢や歯石の除去状況をほぼリアルタイムに観察することができる。

本技術の第1の実施形態に係る歯用装置の概略構成図である。

図1の歯用装置の機能ブロック図である。

図1の歯用装置の一部を構成する三次元モデル取得用プローブを用いて、口腔内を撮影している様子を示す図である。

図1の歯用装置の三次元モデル取得用プローブ先端の正面図である。

図1の歯用装置の三次元モデル取得用プローブ先端の背面図である。

ライトーフィールドカメラの概略構成図である。

図4の三次元モデル取得用プローブを用いて作成された口腔内の三次元モデルの画像例である。

図1の歯用装置の一部を構成する治療診断用プローブを用いた歯周病治療の様子を示す図である。

図1の歯用装置の治療診断用プローブの先端面の図である。

図9の治療診断用プローブの線B−B´に沿って切断した概略断面図であり、該治療プローブを用いて歯肉内の歯周病菌を殺菌している様子を示す。

図1の歯用装置を用いた歯周病診断、治療の流れを示すフロー図である。

図1の歯用装置による三次元モデル取得処理のフロー図である。

図1の歯用装置による治療時の歯肉の深さ方向における殺菌効果を示す画像の取得処理のフロー図である。

図13に示す歯肉や歯垢の深さ方向における殺菌効果を示す画像の取得処理時における、蛍光強度の減衰量から殺菌効果を見積もる方法を説明する図であり、図14(d)は殺菌効果を可視化したものである。

図14(b)に示すグラフの求め方を説明する図である。

PDT反応を説明する図である。

図1の歯用装置における血流量の算出する、参照光型のドップラー計測器を示す構成図である。

図1の歯用装置における他の血流量を算出する、差動型のドップラー計測器を示す構成図である。

図1の歯用装置のモニターに表示される表示画面例を示す。

治療診断用プローブの他の例を示す図である。

治療診断用プローブの更に他の例を示す図である。

治療診断用プローブの更に他の例を示す図である。

治療診断用プローブの更に他の例を示す図である。

治療診断用プローブの更に他の例を示す図である。

治療診断用プローブの更に他の例を示す図である。

治療診断用プローブの更に他の例を示す図である。

第2の実施形態に係る図1の歯用装置を用いた治療時の歯肉、又は、歯垢、歯石表面における殺菌効果を示す画像の取得処理のフロー図である。

図27に示す歯肉表面における殺菌効果を示す画像の取得処理時における、殺菌効果を求める方法を説明する図であり、図28(d)は殺菌効果を可視化した画像である。

第3の実施形態に係る歯用装置の機能ブロック図である。

図29の歯用装置の一部を構成する治療診断用プローブの全体図である。

図30の治療診断用プローブの先端面を示す図である。

図30に示す治療診断用プローブを用いて治療、又は、診断をしている様子を示す図である。

図29に示す歯用装置を用いた治療診断フロー図である。

図29の歯用装置のモニターに表示される表示画面例を示す。

第4の実施形態に係る治療診断用プローブの全体図である。

図35の治療診断用プローブの先端面を示す図である。

図35に示す治療診断用プローブを用いて治療をしている様子を示す図である。

光感受性薬剤の吸収係数と多色光の光侵達長特性を示す図である。

関節鏡下手術の様子を示す模式的な図である。

第6の実施形態に係る医療用装置の概略構成図である。

図40の医療用装置の機能ブロック図である。

図40の医療用装置のモニターに表示される表示画面例を示す。

図40の医療用装置を用いた診断及び治療の流れを示すフロー図である。

図40の医療用装置を用いてaPDTを実施している様子を示す図である。

手術前aPDTの実施工程の流れを示すフロー図である。

第6の実施形態の変形例に係る医療用装置の構成を示す概略断面図である。

第6の実施形態の他の変形例に係る施術用プローブの先端部の概略断面図である。

腹腔鏡下手術の様子を示す模式的な図である。

第7の実施形態に係る医療用装置を用いた診断及び治療の流れを示すフロー図である。

図49の医療用装置を用いてaPDTを実施している様子を示す図である。

第7の実施形態の変形例に係る施術用プローブを用いてaPDTを実施している様子を示す図である。

図51に示す反射部の変形例に係る反射装置を用いてaPDTを実施している様子を示す図である。

第7の実施形態の変形例に係る施術用プローブの先端面を示す平面図である。

総胆管結石治療の様子を示す模式図である。

第8の実施形態に係る医療用装置の内視鏡の先端部の構成を示す平面図である。

以下、本技術に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。 [歯用装置の概要] 本実施形態は、歯周病の治療・診断や歯垢、歯石の除去時等に用いられる歯用装置に関する。

歯科医による歯周病治療、歯垢、歯石除去では、その効果を患者が実感することが、積極的な治療及びケアの動機付けになる。

本実施形態の歯用装置は、口腔に光を照射し、照射された光に対して発せられる口腔からの蛍光や反射光の強度の経時変化を可視化するものであり、これにより、歯周病菌の殺菌状況や歯垢、歯石の除去状況をリアルタイムに観察することができ、患者は治療及びケアの効果を実感することができる。

歯周病菌の殺菌治療及び殺菌状況の観察においては、光感受性薬剤と該薬剤を励起する励起光を用いた光線力学的治療(Photodynamic Therapy、以下「PDT」と記述する。)を用いることができる。 図16は、PDTの光化学反応を示す。 図16に示すように、光感受性薬剤(Photosensitizer)90は、励起光を吸収してエネルギーを得て基底状態93から一重項励起状態94となる。多くのエネルギーは、項間交差により一重項励起状態94から三重項励起状態95に移行するが、残りの一部は一重項状態94から基底状態93に戻り、このときに蛍光を発する。また、三重項励起状態95の光感受性薬剤90が三重項状態の酸素97と衝突すると、エネルギーを酸素に移譲し、酸化力の強い一重項酸素98を生成する。この酸化力により周囲の細胞や組織に傷害を与えるとともに、光感受性薬剤90を破壊(ブリーチング)する。ブリーチングが生じると、実効的な薬剤量が減るため、蛍光量も減る。従って、蛍光量の減少は、ブリーチング及び組織傷害量の指標となる。 ここで、歯周病菌の表面は負電荷に帯電しているため、カチオンの光感受性薬剤の投与により、静電相互作用により光感受性薬剤と歯周病菌が結合する。この状態に光感受性薬剤を励起する励起光を照射すると、光感受性薬剤と結合している歯周病菌のみが死滅する。歯周病菌を取り込まれるタイプの光感受性薬剤においても、この薬剤の投与によって光感受性薬剤を取り込んだ歯周病菌は励起光の照射により死滅する。 従って、口腔内に光感受性薬剤を投与し励起光を照射することにより、歯周病菌を殺菌するとともに、口腔内から発する蛍光強度の経時変化から歯周病菌の殺菌状況を把握することができる。 光感受性薬剤を励起する光としては、レーザ光、発光ダイオード光、又は白色光源を用いることができる。

更に、本実施形態においては、深さ方向に分布する歯肉内に入り込んだ歯周病菌や歯垢又は歯石内の歯周病菌の、深さ方向での殺菌状況の経時変化を観察することができる。 深さ方向での殺菌状況の経時変化は、計算により求められた基底状態の光感受性薬剤の深さ方向における分布の経時変化、計算により求められた光の深さ方向における強度分布の経時変化、及び、光検出部により検出された歯肉表面の蛍光強度を基に、計算する。

また、歯牙や歯肉表面に存在する、すなわち二次元的に存在する歯周病菌の殺菌状況の経時変化を観察することもできる。

また、光感受性薬剤を用いず、青色光などを口腔に照射し、歯牙や歯肉に付着している歯垢や歯石から発せられる蛍光強度から、歯牙や歯肉表面の歯垢や歯石の除去状況を把握することができる。 歯垢や歯石は青色光が照射されることにより蛍光を発する。これを利用し、歯垢や歯石除去時に、この蛍光の強度の経時変化を観察することにより、歯垢や歯石の除去状況をリアルタイムに観察することができる。

また、治療前に、口腔内の画像を撮影してもよい。この際、任意の位置に基準位置を設定し、該基準位置からの絶対位置情報として口腔内の歯牙や歯肉等の位置情報を得、この位置情報と画像データとを紐付けする。更に、治療時における口腔内の励起光照射部位と位置情報とを対応させることによって、口腔内のどの箇所に励起光が照射されたかを示すデータを得ることもできる。これにより、治療時に、口腔のどの箇所が治療されているかを示す画像を表示部に表示させることができ、それを観察することにより治療箇所を把握することができる。

以下、本技術に係る第1の実施形態を、図面を参照しながら説明する。 (第1の実施形態) 本実施形態においては、光感受性薬剤とこの薬剤の吸収波長にあった励起光を用いて歯周病治療、又は、診断する場合を例にあげて説明する。 本実施形態では、まず歯牙及び歯肉を有する口腔の三次元モデルを取得する。次に、光感受性薬剤を口腔に投与し、励起光を照射して、治療、又は診断を行う。治療時、取得した三次元モデル上で口腔内のどの箇所に励起光を照射、すなわち治療しているかを示す画像を表示するのに加え、歯肉、歯垢、又は、歯石の深さ方向に分布する歯周病菌の殺菌状況を示す画像もモニターの表示部に表示する。 まず、本実施形態における歯用装置の構成について説明する。 [1.歯用装置の構成]

図1は、一実施形態に係る歯用装置1の概略構成図43示す。図2は、図1の歯用装置1の機能ブロック図である。

図1及び図2に示すように、歯用装置1は、モニター2と、本体5と、三次元モデル取得用プローブ4と、治療診断用プローブ3と、レシーバ8とを具備する。尚、図1においては、レシーバ8の図示を省略している。

[1.1.モニターの構成] モニター2は、画像を表示する表示部21を有する表示装置である。モニター2は、本体5と有線又は無線で接続される。また、モニター2を設けず、本体5に表示部を設けてもよい。 図19は、治療時にモニター2の表示部21に表示される画像の一例である。 表示部21の左上領域には、三次元モデル取得用プローブ4を用いて取得した口腔内の三次元モデル211が表示される。三次元モデル211にはどの箇所が現在治療診断光が照射されて治療している箇所かを指し示す指の矢印マーク91が表示される。また、既に治療済みの箇所は、円92で囲まれて示され、治療履歴を把握することができる。さらに治療効果の大小を視覚的にマッピングすることもできる。 表示部21の左下領域には、治療診断用プローブ3にて現在治療している箇所の実画像(カメラ画像)212が表示される。この実画像212は、例えば治療診断用プローブ3に設けられた撮像部により撮影される。 表示部21の右上領域には、治療診断光が照射される領域における、治療診断用プローブ3のドップラー計測部31で求められた血流量の経時変化を示すグラフの画像213が表示される。 表示部21の右下領域には、歯肉の深さ方向に対する歯周病菌の殺菌状況、又は、基底状態の光感受性薬剤量の経時変化を示すグラフの画像214が表示される。画像214において、S1は基底状態の光感受性薬剤94を示す。 また、画像214の縦軸は、図13に示すフロー図に則って算出した殺菌効果という指標でもよい。

[1.2.レシーバの構成] 図3は三次元モデル取得用プローブ4を用いて口腔内を撮影している様子である。 図2及び図3に示すように、空間角度検出部となるレシーバ8は、メッシュ状に多数磁気センサ8aが配列された磁気センサ群である。 レシーバ8は、撮影時及び歯周病治療時に、任意に選択された1つの歯牙、例えば左上の中切り歯に設置される。治療時及び撮影時では、口腔内の同じ箇所にレシーバ80が設置される。 レシーバ8は、撮影時の撮影箇所の位置情報を取得する際の基準位置となるものである。レシーバ8は、後述するロケータ信号発生部48からロケータ信号を受信し、撮影箇所の位置情報を基準位置であるレシーバ8からの絶対位置情報として求め、後述する本体5の位置角度情報受信部58に送信する。

[1.3.三次元モデル取得用プローブの構成] 図3に示すように、三次元モデル取得用プローブ4は、口腔内を撮影するものである。三次元モデル取得用プローブ4は把持部を有する棒状であり、施術者がこれを把持し、三次元モデル取得用プローブ4の先端を口腔に入れて歯牙や歯肉を撮影する。撮影時、任意に選択した1つの歯牙、例えば左上の中切り歯にレシーバ8が設置される。 撮影では、口腔内を部分的に撮影する。三次元モデル取得用プローブ4を口腔内で走査し、走査しながら撮影して複数の部分画像データを取得し、後述する本体5でこれら複数の部分画像データを構築して1つの口腔内の三次元モデルを形成する。 三次元モデル取得用プローブ4は、本体5と有線又は無線で接続される。

図2に示すように、三次元モデル取得用プローブ4は、照明部41と、撮像部42と、画像転送部43と、ロケータ信号発生部48と、角度検出部44と、角度情報送信部45を有する。

照明部41は、撮影時に口腔内の撮影箇所を照らす光を出射する。 撮像部42は、レンズに入ってきた口腔内の光の画像データを電気信号に変換する。 画像転送部43は、撮像部42で得られた画像データを本体5の画像受信部57に転送する。 ロケータ信号発生部48は、撮影箇所の位置情報であるロケータ信号をレシーバ8に送信する。 角度検出部44は、加速度センサやMEMSジャイロセンサなどを用いて、撮影時における三次元モデル取得用プローブ4の撮影角度を検知する。 角度情報送信部45は、角度検出部44から受信した三次元モデル取得用プローブ4の撮影角度情報を、本体5の位置角度情報受信部58に送信し、画像データと、レシーバ8を介して受信した位置情報を本体5の画像処理部53で紐付けする。

図4は三次元モデル取得用プローブ4の先端の表側の概略図である。 図4に示すように、三次元モデル取得用プローブ4の先端の表側4aには、口腔に光を照射する照明部41と、撮像部であるアレイレンズつきCMOSイメージセンサ(Complementary Metal Oxide Semiconductor Image Sensor)42が設けられている。 アレイレンズつきCMOSイメージセンサ42は、照明部41から出射された光が撮影箇所である歯牙や歯肉に照射され、該歯牙や歯肉で反射した戻り光を、イメージセンサの受光面に結像させ、その像の光による明暗を電荷の量に光電変換し、それを読みだして電気信号に変換する撮像素子である。 また、アレイレンズつきCMOSイメージセンサ42は、異なる焦点を持つアレイレンズを備えている。CMOSイメージセンサはCCDイメージセンサなどでもよい。

図6は、アレイレンズつきCMOSイメージセンサ42の概略図である。図7(a)は三次元モデル取得用プローブ4により撮影され、本体5で処理されモニター2の表示部21に表示された口腔内の三次元モデルの画像の一例を示す。 アレイレンズつきCMOSイメージセンサ42は、メインレンズ424と、再構築画像プレーン423と、アレイレンズ422と、イメージプレーン421を具備する。 アレイレンズ422は、異なる焦点を持っており、焦点イメージを再構築処理することで、メインレンズ424のフォーカスを可変することなく、様々な焦点画像を得ることができる。このようなアレイレンズつきのイメージセンサを用いることにより、一回の撮影で異なる焦点位置における画像を得ることができ、また、焦点距離ごとに取得した画像を処理することにより、全焦点画像を構築でき、奥行き情報も得ることができる。これにより、図7(a)に示すような、口腔内の画像としての三次元モデル211を得ることができる。 本実施形態では、アレイレンズつきCMOSイメージセンサ42により口腔画像を得ているので、レントゲン撮影のような被爆がなく、歯肉部分を含めた口腔内の立体的な配置を三次元モデルとして再現することができる。また、歯型のように成形品が完成するまで待つことなく、すぐに立体像を入手できる上、X線には写らない歯肉まで立体的に可視化できる。

尚、撮影時にアレイレンズつきCMOSイメージセンサ42がくもらないように、センサ42を口腔内の温度と同程度になるように温める機構を設けてもよい。

図5は三次元モデル取得用プローブ4の先端の裏側の概略図である。 図5に示すように、三次元モデル取得用プローブ4の先端の裏側4bには、ロケータ信号発生部であるロケータ信号発生器48と、加速度センサ又はMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ジャイロセンサ44が設けられている。 ロケータ信号発生器48には、磁気発生器などが用いられる。ロケータ信号発生器48はロケータ信号を発する。 加速度センサ又はMEMSジャイロセンサ44は、撮影時の三次元モデル取得用プローブ4の撮影角度情報を検知する角度検出部である。

[1.4.治療診断用プローブの構成] 図1に戻って、治療診断用プローブ3は把持部を有する棒状である。

図8(a)は、治療診断用プローブ3を、その先端を患部に接触させて治療診断している様子を示し、図8(b)は、治療診断用プローブ3を、その先端を患部に非接触の状態で治療している様子を示す。 図8に示すように、治療診断用プローブ3は、治療診断時に口腔内に挿入され、その先端を患部に接触又は非接触の状態で用いられる。治療診断用プローブ3からは、歯周病菌を死滅させる、光感受性薬剤を励起するレーザ光やLED光などが出射される。

図9は、治療診断用プローブ3の先端面の図である。 図10は、治療診断用プローブ3の先端部の概略断面図である。 図2、図9及び図10に示すように、治療診断用プローブ3は、受光部である受光プローブ33と、照射部である治療診断光照射プローブ34と、ドップラー計測部31と、酸素飽和度計測部32を備える。

治療診断光照射プローブ34は、後述する本体5の光源部55から発せられた光感受性薬剤を励起する波長を有する治療用レーザ光やLED光などを導光するファイバを有し、このファイバにより導光された光源部55から発せられたレーザ光やLED光などを、治療診断光照射プローブ34外に出射する。図10に示すように、治療診断光照射プローブ34から発する照射光35は、歯肉70内に分布する光感受性薬剤と結合した歯周病菌81を殺菌する。上記照射光35は歯垢又は歯石に照射して、光感受性薬剤と結合した歯周病菌81を殺菌してもよい。

受光プローブ33は、治療診断光照射プローブ34から患部に対して出射される照射光に対して発せられる口腔からの蛍光及び拡散反射光を導光するファイバを有する。 受光プローブ33で受けた蛍光及び拡散反射光は光ファイバによって本体5まで導かれ、後述する本体5の光検出部56にて分光され、蛍光強度及び拡散反射光強度が検出される。 受光プローブ33は複数、本実施形態においては2つ設けられる。また、受光プローブを複数設ける場合、各受光プローブから治療診断光照射プローブまでの距離を異ならせて、受光プローブを配置する。もしくはイメージングファイバを受光プローブ33として採用し、1本で検出してもよい。

ドップラー計測部31は、治療診断用照射光が照射される患部の血管の血流量を、例えば633nmの波長を有する光を用いて計測する。血流量の算出については、ドップラーシフトを用いて算出する他に、反射光のスペックルパターンをフーリエ変換して血流量を求めてもよい。 ドップラー計測部31は、計測された血流量情報を本体5の血流量受信部59に送信する。

図17は参照光型のドップラーシフトを利用した場合の計測系を示し、図18は差動型のドップラーシフトを利用した場合の計測系を示す。 図17に示すように、参照光型のドップラー計測部31は、光源311と、周波数シフタ312と、検出器313と、解析部314とを有する。 ドップラー計測部31においては、赤血球の移動速度を血流速として検出する。ドップラー計測部31において、光源311から出力される周波数f0のレーザ光は、歯肉70の表面に照射され、速度vで動いている血管中の赤血球71で散乱する。この散乱光の周波数はドップラー効果により赤血球の移動速度分だけわずかに偏移し(ドップラーシフト)、f0+Δfとなる。検出器313では、この散乱光の周波数を検出する。解析部314では、散乱光に、歯肉70に入射する前の光を参照光として、ドップラーシフトを検出し、このドップラーシフトを基にして速度vが求められる。また、周波数シフタ312は、測定対象である赤血球71の変位方向を区別するために設けられており、解析部314にて測定対象の変位方向が区別される。

図18に示すように、差動型のドップラー計測部1031は、光源1311と、検出器1313と、解析部1314とを有する。 差動型では、光源1311からの1本のレーザビームを2本のビームに分化し、この2本のビームを集光して交差させ、その交差位置でレーザ光照射方向により散乱光の干渉が生じる。この干渉縞の間隔は、測定対象である歯肉70の赤血球による散乱光のドップラーシフト量により差が生じるので、これを検出器1313で検出し、解析部1314で血流速を求める。

上述のように、血流速成分は、照射光の周波数からの変化分より求めることができる。そして、その変調成分の光量を算出することで、血流量に相当する赤血球成分を求めることができる。

酸素飽和度計測部32は、治療診断光が照射される患部の酸素飽和度を測定するものである。酸素飽和度計測部32では、例えば665nm付近の赤色光と880nm付近の赤外光の2波長の光を用いて、2つの光の血管内のオキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンによる吸光度の違いを利用して血液中の酸素飽和度を測定する。酸素飽和度より、炎症の度合いを定量的に評価できる。また、PDT効果の効き目を予測することもできる。さらに酸素飽和度より生体の基礎的な状態を把握できるため、臨床研究段階でPDT効果が得られた原因、得られなかった原因を考察するのに大変役立つ情報源となる。 酸素飽和度計測部32は、計測された酸素飽和度を本体5の酸素飽和度受信部50に受信する。

ドップラー計測部31及び酸素飽和度計測部32を設けることにより、歯周病患者は治療中に患部の血流量が少ないため傷みを感じることもあるので、その傷みが緩和する過程を、血流量及び酸素飽和度を確認し、定量的にモニタリングすることができる。 また、歯周病患部は一般に腫れなどの症状があるため、治療診断光を照射する前に、血流量及び酸素飽和度を計測することにより、患部を特定することもできる。

[1.5.本体の構成] 図2に示すように、本体5は、光源部55と、光検出部56と、画像受信部57と、位置角度情報受信部58と、画像処理部53と、制御・解析部54と、を有する。 本体5は、スイッチ51と、安全装置部52と、血流量受信部59と、酸素飽和度受信部50とを有する。

光源部55は、口腔に投与する光感受性薬剤の吸収波長にあった光(励起光)を発するところであり、本実施形態においてはレーザ光を発する。光源部55からのレーザ光は、治療診断用プローブ3の治療診断光照射プローブ34から出射する。尚、本実施形態においては、患部に照射する光をレーザ光としたが、発光ダイオード光や白色光源としてもよい。 治療診断光として、赤色光を用いることができる。赤色光は、PDD/PDT用光源、血流計測用光源、酸素飽和度計測用光源として用いることができる。 また、治療診断光は赤色光に限定されず、光感受性薬剤の吸収帯に属する波長の光であればよい。

光検出部56は、治療診断用プローブ3の受光プローブ33で受光した光を分光し、蛍光及び拡散反射光それぞれの強度を検出する。 画像受信部57は、三次元モデル取得用プローブ4の画像転送部43より転送されてきた歯牙及び歯肉を有する口腔内の画像データを受信、記録する。または治療診断プローブ3のイメージャーからの画像を受信、記録することもできる。 位置角度情報受信部58は、三次元モデル取得用プローブ4の角度情報送信部45から位置情報(空間位置情報及び撮影角度情報)を受信、記録する。位置角度情報受信部58は、口腔内の撮影位置情報を、任意の位置に、ここでは左上の中切り歯に、基準位置を設定し、該基準位置からの絶対位置情報として受信する。

画像処理部53は、画像受信部57で記録された画像データを、焦点深度ごとに解析し、全焦点画像を構築する。 画像処理部53は、画像受信部57で受信した画像データと、位置角度情報受信部58で受信した位置情報とを紐付けする。

制御・解析部54は、スイッチ51がオンされることにより作動する。 制御・解析部54は、安全装置部52で例えば本体5の作動状況が危険であると判断されると、本体5の作動を停止する。 制御・解析部54は、口腔内の複数の部分画像データそれぞれの、紐付けされた全焦点画像、位置情報及び撮影角度情報をマージして、口腔の三次元モデルを構築し、この三次元モデルを可視化するためのデータを出力し、表示部21に三次元モデルを表示させる。 制御・解析部54は、画像処理部53から受信した、位置情報が紐付けされた画像データと、治療診断用プローブ3の光照射位置とを対応させる。そして、口腔の三次元モデルのどの箇所がレーザ光照射されているかを可視化するための第2のデータを出力し、表示部21に治療箇所が示された口腔の三次元モデルの画像を表示させる。 口腔内の光照射位置を示す方法としては、例えば、図7(a)に示すように、医師が三次元モデル上に照射位置を指の矢印マーク91でクリックして指定したり、それを自動で行えるように治療診断用プローブ3に、三次元モデル取得用プローブと同様の位置角度情報を取得する機構を兼ね備えたりしてもよい。そして治療中は、本体5の光検出部56と制御・解析部54によって解析された照射部の治療効果結果を、図7(b)に示すようにマッピングする。

制御・解析部54は、光源部55からのレーザ光の出射の有無を制御する。 また制御・解析部54は、計算により求められた基底状態の光感受性薬剤又は光学係数の深さ方向における分布の経時変化、計算により求められた励起光の深さ方向における強度分布の経時変化、及び、光検出部56により検出された歯肉表面の蛍光強度を基に、深さ方向における蛍光強度の経時変化を計算する。そして、蛍光強度の経時変化を可視化した第1のデータを表示部21に対して出力し、図19に示すように表示部21の右下領域に表示させる。

制御・解析部54は、血流量受信部59から血流量情報を受信し、血流量とレーザ光照射時間との関係をグラフ化して可視化するための第3のデータを出力し、図19に示すように表示部21の右上領域に表示させる。ここでは、血流量の変化をグラフ化して表示したが、血流量を数値で表示してもよい。 制御・解析部54は、酸素飽和度受信部50から酸素飽和度情報を受信し、酸素飽和度を数値によって可視化するための第4のデータを出力し、表示部21に表示させる。尚、図19に示す表示部21に表示される画像上には酸素飽和度に関する情報が表示されていないが、表示切り替え操作により表示可能とすることができる。

スイッチ51は、操作者による操作により光照射のオン、オフを制御するものである。 安全装置部52は、光源部55からのレーザ光の出力の異常等を検出し、異常等を検出した際に、制御・解析部54に対してレーザ光の出力を強制的に停止する信号を送信する。 血流量受信部59は、治療診断用プローブ3のドップラー計測部31で計測された血流量速情報を受信する。 酸素飽和度受信部50は、治療診断用プローブ3の酸素飽和度計測部32で計測された酸素飽和度情報を受信する。 [2.光感受性薬剤]

口腔に投与する光感受性薬剤としては、歯周病菌と静電相互作用によって結合できるカチオン製剤や歯周病菌に取り込まれる薬剤の溶液もしくはジェルを用いることができる。薬剤溶液の場合は、患者がこれを口腔に含んだ後、吐き出して、用いられる。ジェルの場合は、医師が患部にこれを注射やマイクロニードルアレイなどのDDSデバイスを用いて、局所投与する。 カチオン製剤の例としては、メチレンブルー、トルイジンブルー、PPA(Phenothiazie)、フタロシアニン、C60、ポルフィリンなどがあげられる。 歯周病菌に取り込まれる薬剤としては、インドシアニングリーン(ICG)などがあげられる。 また、これらに限定されず、ポルフィマーナトリウム(Photofrin(登録商標))、Talaporfin、5-ALA、Foscan等の他の光感受性薬剤を用いることが可能である。 口腔内に光感受性薬剤が投与されることにより、光感受性薬剤は歯肉の深さ方向、及び、歯牙、歯肉、歯垢又は歯石表面に、分布する。 [3.診断及び治療の流れ]

上述の歯用装置1を用いた診断及び治療の流れについて図11を用いて説明する。 図11に示すように、まず口腔内の三次元モデルの取得が行われる(S100)。その後、医師により歯周病診断及び患者への説明が行われ(S200)、治療が行われる(S300)。 以下、診断及び治療の流れについて詳細に説明する。

[3.1.三次元モデル取得処理] 図12は、三次元モデル取得処理のフロー図43示す。以下、図12のフローに従って説明する。

(画像取得準備及び撮影画像の確認処理 S110番台) まず、図3に示すように、施術者により、患者の基準位置となる左上の中切り歯上にレシーバ8が設置される(S110)。 次に、施術者により、ロケータ信号を発する三次元モデル取得用プローブ4が患者の口腔内に挿入され(S111)、照明用光源がオンされて照明部41から光が出射する(S112)。 アレイレンズつきCMOSイメージセンサ(撮像部)42は、照明部41からの光で照射される撮影箇所の画像データを電気信号に変換し、画像転送部43はこの実画像データを本体5の画像受信部57に転送する(S113)。 制御・解析部54は、画像転送部43から送信された実画像データを、表示部21に実画像として表示させる(S114)。 制御・解析部54は、施術者による撮影シャッターボタンが押されたか否かを判断する(S115)。 制御・解析部54は、S115で、撮影シャッターボタンが押されたと判断すると(YES)、次のステップに進む。 制御・解析部54は、S115で、ある所定時間、撮影シャッターボタンが押されず、押されていないと判断すると(NO)、S113に戻り、再び同様の処理が繰り返される。

(三次元モデルの構築処理 S120番台) 本体5の画像受信部57は、三次元モデル取得用プローブ4の画像転送部43から送信された画像データを受信し、記録する(S120)。本体5の画像処理部53は、画像受信部57で記録された画像データを、焦点深度ごとに解析し、全焦点画像を構築する(S121)。

(空間位置情報取得処理 S130番台) 三次元モデル取得用プローブ4のロケータ信号発生部48はロケータ信号を発信する(S130)。 レシーバ8は、このロケータ信号を受信し、空間位置情報として本体5の位置角度情報受信部58に送信し、位置角度情報受信部58はこの空間位置情報を記録する(S131)。空間位置情報は、レシーバ8が設置される場所を基準位置とし、この基準位置からの絶対位置情報として記録される。

(三次元モデル取得用プローブの撮影角度情報取得処理 S140) 三次元モデル取得用プローブ4の加速度センサ又はMEMSジャイロセンサ(角度検出部)44は、三次元モデル取得用プローブ4の向き(撮影角度)を検出する。この撮影角度情報は、角度情報送信部45により位置角度情報受信部58に送信される(S140)。

(画像データと位置情報との紐付け処理 S150番台) 画像処理部53は、S121で取得した、一撮影箇所における全焦点画像データと、S131で取得した空間位置情報、及び、S140で取得した撮影角度情報とを紐付けする(S151)。 その後、S113に戻り、口腔内の全画像データを取得するまで、同様の処理が繰り返される。 画像処理部53は、紐付けされた全焦点画像データ、位置情報及び撮影角度情報を、制御・解析部54に送信する。この紐付けされた全焦点画像データ、位置情報及び撮影角度情報は、三次元モデル取得用プローブ4のアレイレンズつきCMOSイメージセンサ(撮像部)42の1回の撮影で取得した口腔内の部分画像データに係る情報である。 制御・解析部54は、口腔内の複数の部分画像データそれぞれの、紐付けされた全焦点画像、位置情報及び撮影角度情報をマージして、口腔の三次元モデルを構築する(S151)。 制御・解析部54は、三次元モデルの画像データから歯周ポケットの深さや臨床的アタッチメントレベル(CAL)を算出する(S152)。 制御・解析部54は、構築した三次元モデルを表示部21に表示させる(S153)。また、制御・解析部54は、制御・解析部54で算出された歯周ポケットの深さやCALも表示部21に表示させる。

尚、レシーバ8が設置される左上の中切り歯に係る画像データの取得は、例えば、レシーバ8を右上の中切り歯に置き換え、ここを基準位置として画像データを取得することもできる。

[3.2.歯周病診断] 施術者は、表示部21に表示された、口腔内の三次元モデル、歯周ポケットの深さやCALを基に、口腔内の状態及び歯周病重症度を診断する。 従来、歯周ポケットの深さやCALは、プロービング法を用いて求めていた。しかしながら、プロービング法では、プローブと呼ばれる先端にメモリがついた器具を歯牙と歯肉の間に挿入して行うため、プローブにより歯肉に傷をつけ出血が生じることが多い。この出血時に菌が血液中に入り込む恐れがある。 これに対し、本実施形態では、プローブを用いずに、画像データから歯周ポケットの深さやCALを求めるので、出血を伴わない。 施術者は、表示部21に表示された口腔内の三次元モデルを患者に見せ、口腔内の状態及び治療方針を説明する。

[3.3.歯周病治療] 次に、歯周病治療について説明する。歯周病治療は、三次元モデル取得時に用いたレシーバ8を左上の中切り歯に設置したまま、治療診断用プローブ3を用いて行われる。 歯周病治療時においても、三次元モデル取得時と同様にレシーバを基準位置としており、後述では説明を省略しているが、治療診断用プローブ3にも三次元モデル取得用プローブ4と同様にロケータ信号発生器及び加速度センサ又はMEMSジャイロセンサが設けられ、これらにより治療箇所の位置情報を得ている。

以下、歯肉の深さ方向における歯周病菌の殺菌状況の経時変化を可視化した画像の取得方法について説明する。 図13は、治療時の歯肉の深さ方向における殺菌効果を示す画像の取得処理のフロー図である。図14は、殺菌効果を見積もる方法を説明するための図である。以下、図13のフローに従い、必要に応じて図14を用いて説明する。

(画像取得準備及び蛍光取得処理 S310番台) まず、光感受性薬剤が患部に局所注入される(S310)。 治療診断用プローブ3は、歯肉表面に接触した状態で固定される(S311)。 その後、施術者の治療診断光照射プローブ34からの光の出射の有無を制御するスイッチのオン操作により(S312)、治療診断光照射プローブ34から励起光である治療診断光が出射する。治療診断光は、患部を照射し、歯肉や歯垢、又は歯石表面で拡散反射する。

治療診断用プローブ3の2つの受光プローブ33、33は、治療診断光照射による歯肉や歯垢、又は歯石表面での拡散反射光と、歯肉や歯垢、又は歯石表面から発する蛍光を受光し(S320)、本体5の光検出部56に、励起光の拡散反射光及び蛍光を導く。 光検出部56は、励起光の拡散反射光と蛍光とを分光し、励起光の拡散反射光から歯肉や歯垢表面の拡散反射光強度を検出し、更に、蛍光から歯肉や歯垢、又は歯石表面の蛍光強度を検出する(S321)。 光検出部56は、励起光の拡散反射光強度及び蛍光強度を記録する(S322)。光検出部56は、励起光の拡散反射光強度情報及び蛍光強度情報を制御・解析部54に送信する。

(時刻t1=0の歯肉深さ方向の蛍光分布の算出処理 S330番台) 制御・解析部54は、時刻t1=0であるかどうかを判断する(S330)。 S330で、時刻t1=0と判断されると(YES)、制御・解析部54は、歯肉表面で拡散反射する前の励起光の強度と、励起光の拡散反射光の強度とから、光感受性薬剤による吸収の影響も含んだ歯肉組織や歯垢の光学係数を算出する(S331)。

次に、制御・解析部54は、S331で算出した光学係数から、励起光の歯肉深さ方向における励起光強度を推定、算出する(S332)。この計算により、図14(b)のグラフに示すように、t=0のときの歯肉深さ方向と励起光強度との関係を得る。図14(b)において、深さが深くなるほど、励起光が届きにくくなるため、深さが深いほど励起光強度が小さくなる。t=0のときの光学定数もしくは薬剤量の分布は、均一な組織モデルでは一定とみなすことができ、その値は別実験であらかじめ計測しておくことができる。

次に、制御・解析部54は、S332で取得した深さ方向における励起光強度分布と、予め算出している深さ方向における基底状態の光感受性薬剤量又は光学係数の分布とから、各深さにおける蛍光強度を推定、記録する(S333)。この計算により、図14(c)のグラフに示すように、t=0のときの歯肉深さ方向と蛍光強度との関係を得る。

(t1=0でないときの歯肉深さ方向の蛍光分布の算出処理 S340番台) S330で、時刻t1=0でないと判断されると(No)、制御・解析部54は、受光プローブ33で検出した時刻t1における歯肉表面の蛍光強度と時刻(t1−Δt)の歯肉表面の蛍光強度との差分ΔF(歯肉表面のブリーチング量)を算出する(S340)。 次に、制御・解析部54は、S340で算出した歯肉表面の蛍光強度の差分ΔFを基に、Δtの間にブリーチングした薬剤量の深さ方向に対する分布を、時刻(t1−Δt)の励起光強度分布に基づき、推定する(S341)。 次に、時刻t1における蛍光強度の深さ方向における分布を推定、算出する(S342)。この計算により、図14(c)のグラフに示すように、t=t1のときの歯肉深さ方向と蛍光強度との関係を得る。 次に、制御・解析部54は、時刻t1での薬剤吸収分を考慮した光学係数の深さ方向における光学係数の分布を推定、算出する(S343)。この計算により、図14(a)のグラフに示すように、t=t1のときの歯肉深さ方向と光学係数との関係を得る。 次に、制御・解析部54は、時刻t1における深さ方向の励起光強度分布を推定、算出し、記録する(S344)。この計算により、図14(b)のグラフに示すように、t=t1のときの歯肉深さ方向とレーザ光強度との関係を得る。

(治療開始からt1経過時の歯肉深さ方向における殺菌状況を示す信号の生成処理 S350番台) S342の後、S343〜S344の処理と平行して、制御・解析部54は、各深さ位置における時刻0と時刻t1の蛍光強度の差分を算出する(S350)。 次に、制御・解析部54は、S350の算出結果を深さ方向にプロットし、図14(d)に示す時刻t1経過時点での歯周病菌の殺菌効果を可視化するための第1のデータを出力する(S351)。第1のデータは、光検出部で検出した蛍光に基づいて、蛍光強度の経時変化を可視化するためのものである。 表示部21は、第1のデータによる画像を表示部21に表示する。図19に示すモニター2の表示部21の右下領域に表示される画像214は、第1のデータによるものである。

次にS360で、制御・解析部54は、t1=t1+Δtと設定する。

次に、施術者による光照射がオフされたかどうかを、制御・解析部54は判断する(S361)。 S361で、オフされたと判断すると(YES)、治療が終了する(S362)。 S361で、オフされていないと判断すると(No)、S320に戻り、処理が繰り返される。

以上の処理により、図19に示すように、モニター2の表示部21の右下領域には、歯肉の深さ方向における歯周病菌の殺菌状況の経時変化を可視化した画像214が表示され、施術者及び患者は、画像214により歯周病菌の殺菌状況をリアルタイムに確認することができる。 施術者は、画像を確認しながら施術することにより、歯周病菌を確実に殺菌するので、レーザ光の照射時間の不足によって殺菌が不十分となるということがない。従って、レーザ光の照射時間不足により、歯周病が完治するまでに時間がかかるということがなく、治療期間を短縮することができる。 患者は、歯周病菌の殺菌状況をリアルタイムに確認することができるので、殺菌効果を実感でき、治療への取り組みが積極的となる。

また、本実施形態においては、治療時にロケータ信号を発するレシーバを用いて治療箇所の位置情報を取得し、この位置情報と、三次元モデル取得時に得た位置情報とを対応させている。これにより、照射中の治療効果の大小を図7(b)に示すようにグラデーションでマッピングし、治療効果をリアルタイムで確認しながら施術が可能となる。また治療部位と治療結果を記録管理することができる。

(変形例) 上述の治療診断用プローブ3では、治療診断光としてレーザ光を用いていたが、発光ダイオード光を用いてもよいし、ランプ光源からの光を光学フィルタで切り出した光を用いてもよい。 また、上述の治療診断用プローブ3では、光を導光するのにファイバを用いている。石英やPOF(Plastic Optical Fiber)等の透過性が高く屈曲性の良い物を用いる。

また、上述の実施形態においては、治療時にレシーバを用いて治療箇所の位置情報を得、これに基づき三次元モデルに治療箇所を明示していたが、施術者が、表示部に表示された口腔の三次元モデルに治療部位を図7(a)に示すようにプロットし記録してもよい。

また、上述の治療診断用プローブ3の他に、図22から図26に示す治療診断用プローブを用いることもできる。図22から図25は、変形例における治療プ診断用プローブの概略断面図である。図26は、変形例における治療診断用プローブの先端面を示す。 尚、上述の実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、その説明を省略する。

図22に示すように、変形例としての治療診断用プローブ303は、非接触タイプであり、治療診断光照射プローブ334と、CMOSイメージセンサ、CCDイメージセンサ又はイメージングファイバ338と、光学フィルタ337を有する。 治療診断用プローブ303は、第1の実施形態の治療診断用プローブ3の受光プローブ33の代わりにイメージセンサ338と光学フィルタ337が備えられている点が、第1の実施形態の治療診断用プローブ3と大きく異なる。治療診断光照射プローブ334は第1の実施形態の治療診断光照射プローブ34と同様に治療診断光を出射するものである。 光学フィルタ337は蛍光のみを透過する光学フィルタである。励起光に対して発せられる歯肉70や歯垢又は歯石からの蛍光を含む光は、光学フィルタ337によって蛍光のみが透過され、イメージセンサ338に入射する。イメージセンサ338では、グラデーションで蛍光の強度がマッピングされる。符号338にイメージングファイバを用いる場合は、光学フィルタ337はイメージングファイバの後段に入れることができる。 また、治療診断光照射プローブ334の光出射端面は、歯肉70から一定距離離間して配置される。これにより、治療診断光照射プローブ334のコア径よりも大きい範囲で光を照射することができる。これに対し、第1の実施形態における治療診断用プローブ3は、治療診断光照射プローブ34の光出射端面と歯肉70とが接触しているので、治療診断光照射プローブ34のコア径と同程度の径の光が照射される。

図23に示すように、他の変形例としての治療診断用プローブ403は、接触タイプであり、治療診断光照射プローブ434と、受光プローブ433と、イメージセンサ438と、拡散板439を有する。 治療診断用プローブ403では、励起光に対して発せられる歯肉70や歯垢又は歯石からの蛍光を、受光プローブ433に加え、イメージセンサ又はイメージングファイバ438及び拡散板439ででも受光する。治療診断光照射プローブ434は第1の実施形態の治療診断光照射プローブ34と同様に治療診断光を出射するものであり、受光プローブ433も第1の実施形態の受光プローブ33と同様である。 拡散板439は、歯肉70側から発する光を拡散させ、イメージセンサ438に入射する光をより広範囲にするものである。イメージセンサ438では、グラデーションで蛍光の強度がマッピングされる。

図24に示すように、更に他の変形例としての治療診断用プローブ503は、接触タイプであり、治療診断光照射プローブ534と、イメージセンサ又はイメージングファイバ538と、光学フィルタ539を有する。光学フィルタ539は上述の変形例の光学フィルタ337と、イメージセンサ538は上述の変形例のイメージセンサ338と同様である。 治療診断用プローブ503においては、治療診断光照射プローブ534が側方もしくは全方照射プローブであり、先端が曲がっている。これにより、歯肉70の広い範囲に治療診断光を照射することができる。

図25に示すように、更に他の変形例としての治療診断用プローブ603は、接触タイプであり、発光ダイオード641と、受光プローブ640と、イメージセンサ又はイメージングファイバ638と、光学フィルタ639を有する。受光プローブ640は、第1の実施形態の受光プローブ33と同様である。光学フィルタ639は上述の変形例の光学フィルタ337と、イメージセンサ638は上述の変形例のイメージセンサ338と同様である。 治療診断用プローブ603においては、レーザ光の代わりに発光ダイオード光が用いられ、光源として発光ダイオード641が設けられる。

図26に示すように、更に他の変形例としての治療診断用プローブ703は、2つの受光プローブ733と、治療診断光照射プローブ734と、空気吹き出し口750と、アレイレンズつきCMOSイメージセンサ又はイメージングファイバ752と、照明部740を有する。受光プローブ733は第1の実施形態の受光プローブ33と同様である。 治療診断光照射プローブ734は、治療診断光、ドップラー計測用光及び酸素飽和度計測用光が集光してなる多色光を導光し、出射する。 空気吹きかけ部である空気吹き出し口750は、患部に対して吹きかける空気が出る部分である。歯周病に関与する主な菌は嫌気性細菌(偏性嫌気性細菌もしくは通性嫌気性細菌)であるため、治療時に空気を患部に吹きかけながら治療診断光を照射することで、より殺菌効果が向上する。 アレイレンズつきCMOSイメージセンサ752は、第1の実施形態の三次元モデル取得用プローブ4のアレイレンズつきCMOSイメージセンサ42と同様に、全焦点画像を取得できるものである。このように、三次元モデル取得機能と治療機能の双方を併せ持ったプローブとしてもよい。 照明部740は、撮影時に口腔内の撮影箇所を照らす光を出射する。

また、上述の実施形態においては、治療診断用プローブ3から出射される光は、治療診断用レーザ光のみの単色光であったが、治療診断用レーザ光及びそれ以外の光からなる多色光であってもよい。 治療診断光照射プローブ34から発する光を多色光とすることにより、歯周病感染部位の深さに応じて波長を変えたり、異なる波長を同時に照射したりすることができる。例えばメチレンブルーは670nm励起が薬剤の吸収効率としても組織への侵達長としてもバランスがとれているが、ある深さ、例えば2mm以上のところに存在する感染部位に対しては治療が十分に施せない可能性がある。そこで、治療診断光照射プローブから出射される光を、670nmの波長の光と830nmの波長の光とからなる多色光とすることによって、830nmの波長の光により、薬剤の光吸収効率は低下するものの、患部深くまで光が到達できるため、深部の治療も可能となる。 図38は、光感受性薬剤の吸収係数と多色光の光侵達長特性を示す図であり、横軸は波長、縦軸は吸収係数又は光侵達長を表す。図中、実線は光感受性薬剤の吸収係数であり、破線は多色光の光侵達長を表す。 図38に示すように、多色光を用いることにより、光吸収効率は悪いが、深部、例えば3mmまで到達できる光を用いることにより、短波長では届かない深い領域までPDTを施すことができる。

上述の実施形態においては、治療診断用プローブ3では、治療診断用レーザ光の他に、ドップラー計測部31で用いられる光と、酸素飽和度計測部32で用いられる光が、導光される。上述の実施形態においては、治療診断光照射プローブ34からは治療診断光のみの単色光を用いたが、これに限られない。例えば、治療診断光照射プローブを、治療診断光のファイバ、ドップラー計測用光のファイバ、酸素飽和度計測用光のファイバの3芯を束ねたバンドルファイバとし、各ファイバでそれぞれの光を集光して、治療診断光照射プローブから多色光を患部に照射してもよい。 また、治療診断光、ドップラー計測用光、酸素飽和度計測用光を、1本のファイバに集光してもよい。 また、図20に示すように、治療診断光のレーザダイオード光源134から発する治療診断光を導光するファイバ134a、ドップラー計測用光のレーザダイオード光源135から発するドップラー計測用光を導光するファイバ135a、酸素飽和度計測用光のレーザダイオード光源136から発する酸素飽和度計測用光を導光するファイバ136aの3芯バンドルから出射した光を、所望のNAとコア径になるような倍率の光学系138を介して単芯ファイバ137に集光してもよい。この場合、全く同一の患部に3色の光が照射されることになる。 また、図21に示すように、治療診断光の光源234から発する治療診断光、ドップラー計測用光の光源235から発するドップラー計測用光を、所望のNAとコア径になるような倍率の光学系238を介して単芯ファイバ237に集光してもよい。

また、上述の実施形態においては、三次元モデル取得用プローブを用いて口腔内の三次元モデルを取得したが、これに限られるものではなく、例えばレントゲンで撮影して口腔内の画像を取得してもよい。

また、上述の実施形態においては、歯肉の深さ方向の歯周病菌の殺菌状況の経時変化を可視化した画像を表示したが、歯牙や歯肉に付着した歯垢又は歯石の深さ方向に分布する歯周病菌の殺菌状況の経時変化を可視化した画像を表示してもよい。 次に第2の実施形態について説明する。

(第2の実施形態) 第1の実施形態においては、歯肉の深さ方向の歯周病菌の殺菌状況の経時変化を可視化した画像を表示したが、歯肉や歯牙の表面に存在する歯周病菌の殺菌状況の経時変化を可視化した画像を表示してもよく、以下、第2の実施形態として説明する。 第2の実施形態の歯用装置の構成は、第1の実施形態の歯用装置の構成と同じである。以下、歯肉や歯牙の表面に存在する歯周病菌の経時変化を可視化した画像の取得方法について説明する。

図27は、治療時の歯肉や歯牙の表面に存在する歯周病菌の殺菌効果を示す画像の取得処理のフロー図である。図28(a)〜(c)は殺菌効果マッピング構築までのイメージ図であり、図28(d)は殺菌効果のマッピング図である。以下、図27のフローに従い、必要に応じて図28を用いて説明する。

(画像取得準備 S360番台) まず、光感受性薬剤が患部に局所注入される(S360)。 治療診断用プローブ3は、歯肉表面に接触した状態で固定される(S361)。尚、ここでは、歯肉表面に治療診断用プローブ3を接触させる場合を例に挙げて説明するが、歯牙表面においても同様である。 その後、施術者が、治療診断光照射プローブ34からの光の出射の有無を制御するスイッチをオンすることにより(S362)、治療診断光照射プローブ34からレーザ光が出射する。レーザ光は、患部を照射する。

(蛍光取得処理 S370番台) 治療診断用プローブ3の2つの受光プローブ33、33は、励起光に対して発せられる歯肉表面からの蛍光を受け、本体5の光検出部56に、蛍光を導く。本体5の光検出部56は、導かれた蛍光を検出し、制御・解析部54は、光検出部56により検出された蛍光に基づき、図28(a)に示す、照射直後(t=0)の歯肉表面の光照射部における薬剤蛍光画像(蛍光強度分布)を取得する(S370)。 制御・解析部54は、照射直後(t=0)の歯肉表面における蛍光強度分布を記録する(S371)。 本体5の光検出部56は、図28(b)に示す、時刻t=t1における薬剤蛍光画像(蛍光強度分布)を取得する(S372)。光検出部56は、時刻t=t1における蛍光強度情報を制御・解析部54に送信する。

(蛍光強度の算出処理 S380番台) 制御・解析部54は、時刻t=0における蛍光強度情報と、時刻t=t1における蛍光強度情報から、薬剤蛍光強度の減少量(ブリーチング量)を算出する(S380)。 制御・解析部54は、算出したブリーチング量を基に、図28(c)、(d)に示すように、時間t1間でブリーチングされた量を可視化するための第1のデータを表示部21に出力し、表示部21に表示させる(S381)。 ここで、図28(c)は、歯肉表面におけるブリーチング量を立体的に可視化した画像である。図28(d)は、歯肉表面におけるブリーチング量を平面的に可視化した画像であり、濃淡が薄い(白っぽい)ほどブリーチング量が多く、濃いほどブリーチング量が少ない。

(終了処理 S390番台) 次に、施術者による光照射がオフされたかどうかが判断される(S390)。 S390で、オフされたと判断されると(YES)、治療が終了する。 S390で、オフされていないと判断されると(No)、S370に戻り、処理が繰り返される。

以上のように、本実施形態においては、歯肉や歯牙の表面、すなわち2次元的に分布する歯周病菌の殺菌状況の経時変化を可視化した画像が得られ、施術者及び患者は、歯周病菌の殺菌状況をリアルタイムに確認することができる。

また、第1の実施形態に示す歯肉の深さ方向における殺菌状況と第2の実施形態に示す歯肉表面における殺菌状況の双方を表示部21に表示してもよい。 (第3の実施形態)

上述の実施形態においては、口腔内の三次元モデルを取得した後、治療を行っていたが、口腔内の三次元モデルを取得せずに、治療を行ってもよい。例えば、治療時に、モニターに口腔内の三次元モデルの表示はせず、治療箇所の実画像と、治療診断光を照射した箇所の殺菌状況が表示できるようにしてもよい。 以下、歯肉表面の殺菌状況を表示する場合を例に挙げるが、第1の実施形態で示す算出処理を用いて深さ方向の殺菌状況を示す画像を表示してもよい。

[歯用装置の構成] 図29は、第3の実施形態に係る歯用装置の機能ブロック図である。上述の実施形態と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略し、主に異なる点についてのみ説明する。

図29に示すように、歯用装置1001は、モニター2と、本体1005と、治療診断用プローブ1003とを具備する。

図34は、治療時にモニター2の表示部21に表示される画像の一例である。 表示部21の左領域には、治療診断用プローブ1003にて現在治療している箇所の実画像(カメラ画像)212が表示される。 表示部21の右領域には、歯肉の深さ方向に対する歯周病菌の殺菌状況の経時変化を示すグラフの画像214が表示される。画像214において、S1は基底状態の光感受性薬剤94を示す。また、画像214の縦軸は、図13に示すフロー図に則って算出した殺菌効果という指標でもよい。

治療診断用プローブ1003は、照射部34と、撮像部1032とを有する。 撮像部1032は、口腔内から発する蛍光の画像データを電気信号に変換し、得られた画像データを本体1005の画像受信部1056に送信する。

本体1005は、光源部55と、画像受信部1056と、制御・解析部1054と、スイッチ51と、安全装置部52とを有する。 画像受信部1056は、治療診断用プローブ1003の撮像部1032より送信されてきた現時点での口腔内の治療箇所の実画像データを受信する。 制御・解析部1054は、撮像部1032で取得した実画像データから、蛍光の強度をグラデーションでマッピングし、図28(d)に示す蛍光強度の経時変化を可視化するための第1のデータを表示部21に出力し、表示部21に蛍光強度の経時変化を可視化した画像を表示させる。

図30は治療診断用プローブ1003の全体図である。図32は治療診断用プローブ1003を用いて治療している様子を示す。 図30に示すように治療診断用プローブ1003は把持部を有する棒状を有する。治療診断用プローブ1003は、その先端にニードル状の治療診断光照射部1035を有する。治療診断用プローブ1003は、ニードル状の治療診断光照射部1035の側方から治療診断光が出射される、側方照射型である。 図32に示すように、歯肉70と歯牙60の間に形成された歯周ポケットに治療診断光照射部1035が挿入されて治療又は診断が行われる。

図31は、ニードル状の治療診断光照射部1035の付け根にある面の図である。 図31に示すように、治療診断光照射部1035の付け根にある面には、治療診断光照射プローブ34と、撮像部としてのBPF(Band−Pass Filter)つきCMOS又はCCDイメージセンサ又はイメージファイバ1032と、空気吹き出し口1031とが設けられる。 BPFは、必要な範囲の周波数のみを通し、他の周波数を通さないものであり、ここでは、光感受性薬剤に励起光を照射したときに口腔内側から発する蛍光のみを通す。 空気吹き出し口1031は、患部に対して吹きかける空気が出る部分である。歯周病に関与する主な菌は嫌気性細菌(偏性嫌気性細菌もしくは通性嫌気性細菌)であるため、治療時に空気を患部に吹きかけながら治療診断光を照射することで、より殺菌効果が向上する。 BPFつきCMOS又はCCDイメージセンサ1032は、入射してくる光をBPFで蛍光のみを通し、この蛍光を撮像する。

[画像取得処理] 次に第3の実施形態の歯用装置1001を用いた、歯肉や歯牙の表面に分布する歯周病菌の経時変化を可視化した画像の取得方法について説明する。 図33は、本実施形態における治療時の歯肉や歯牙の表面に分布する歯周病菌の殺菌効果を示す画像の取得処理のフロー図である。図28(a)〜(c)は殺菌効果マッピング構築までのイメージ図であり、図28(d)は殺菌効果のマッピング図である。以下、図33のフローに従い、必要に応じて図28を用いて説明する。

本実施形態では、スケーリング(SRP、歯石取り)や、歯肉を切開し、歯周病菌に感染した部位を露出させ、スケーリングなどで歯石を除去するフラップ術を施した後、レーザ光による歯周病菌の殺菌を行う。 (画像取得準備 S500番台) スケーリング又はフラップ術が患部に施される(S500)。 次に、光感受性薬剤溶液又はジェルが口腔内に投与された後(S501)、余分な光感受性薬剤溶液又はジェルが洗い流される(S502)。 治療診断用プローブ1003が患部付近に配置され、施術者が、治療診断光照射プローブ34からの光の出射の有無を制御するスイッチをオンすることにより(S503)、治療診断光照射プローブ34からレーザ光が出射する。レーザ光は、患部に照射される。

(蛍光取得処理 S510番台) 治療診断用プローブ1003のBPFつきCMOS又はCCDイメージセンサ1032は、励起光に対して発せられる歯肉表面からの蛍光のデータを取得し、本体5の画像受信部1056に、蛍光データを送信する。 画像受信部1056は、図28(a)に示す、照射直後(t=0)の薬剤蛍光画像(蛍光強度分布)を取得する(S510)。画像受信部1056は、時刻t=0における蛍光強度情報を制御・解析部1054に送信する。 制御・解析部1054は、照射直後(t=0)の蛍光強度の歯肉表面分布を記録する(S511)。 画像受信部1056は、図28(b)に示す、時刻t=t1における薬剤蛍光画像(蛍光強度分布)を取得する(S512)。画像受信部1056は、時刻t=t1における蛍光強度情報を制御・解析部1054に送信する。

(蛍光強度の算出処理 S520番台) 制御・解析部1054は、時刻t=0における蛍光強度情報と、時刻t=t1における蛍光強度情報から、薬剤蛍光強度の減少量(ブリーチング量)を算出する(S520)。 制御・解析部54は、算出したブリーチング量に基づいて、時間t1間でブリーチングされた量を可視化するための第1のデータを出力し、表示部21に図28(c)、(d)に示す画像を表示部21に表示させる(S521)。 ここで、図28(c)は、歯肉表面におけるブリーチング量を立体的に可視化した画像である。図28(d)は、歯肉表面におけるブリーチング量を平面的に可視化した画像であり、濃淡が薄い(白っぽい)ほどブリーチング量が多く、濃いほどブリーチング量が少ない。

(終了処理 S530番台) 次に、施術者による光照射がオフされたかどうかが判断される(S530)。 S530で、オフされたと判断されると(YES)、治療が終了する。 S530で、オフされていないと判断されると(No)、S510に戻り、処理が繰り返される。

以上のように、治療診断用プローブ1003にイメージセンサ1032を設け、イメージセンサ1032が取得した、照射された励起光に対して発せられる口腔側からの蛍光を、制御・解析部1054にて蛍光の強度をグラデーションでマッピングすることにより、治療診断光照射箇所の殺菌状況をリアルタイムに把握することができる。 次に第4の実施形態について説明する。

(第4の実施形態) 第3の実施形態における治療診断用プローブ1003は側方照射型であったが、前方照射型であってもよい。以下、第4の実施形態として、図35〜図37を用いて説明する。尚、第3の実施形態と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略する。 上述の第1の実施形態及び変形例で示した各種治療診断用プローブは、前方照射型である。

図35は治療診断用プローブ1103の全体図である。 図36は、治療診断用プローブ1103の先端面の図である。 図37は治療診断用プローブ1103を用いて治療している様子を示す。

治療診断用プローブ1203の先端面1103aは、治療診断光照射プローブ34と、受光プローブ1133と、空気吹き出し口1031とが設けられる。 受光プローブ1133は、BPFとフォトダイオードを有する。受光プローブ1133に入射される歯肉70側からの蛍光を含む光は、BPFにより蛍光のみが透過し、透過した蛍光はフォトダイオードで受光される。 図37に示すように、歯肉70と歯牙60の間に形成された歯周ポケット内に向かって治療診断光照射プローブ34から出射する光が照射される。 次に、第5の実施形態について説明する。

(第5の実施形態) 上述の実施形態においては、光感受性薬剤と励起光を用いて、歯周病菌の殺菌及びその殺菌状況の観察を行った。これに対し、光感受性薬剤を用いずに、歯肉や歯牙に付着した歯垢及び歯石の自家発光を用いて歯垢及び歯石除去の状況を観察することもできる。

本実施形態においては、例えば、手用スケーラ、超音波スケーラ、エアースケーラといったスケーラを用いたスケーリングの際に、青色光を照射し、この青色光の照射による歯垢や歯石からの発光の強度の経時変化を、上述の実施形態での蛍光強度の経時変化の取得と同様の方法で取得する。また、スケーラの代わりに歯ブラシに蛍光受光手段を設け、青色光の照射による歯垢や歯石からの発光の強度の経時変化を取得することもできる。 例えば、スケーラに、治療箇所に対して青色光を出射する照射部と、歯垢や歯石からの発光を受光する受光部を設け、受光部で受けた光の強度の経時変化を可視化するための第1のデータを出力する制御部を設ければよい。 これにより、歯垢や歯石の除去状況をリアルタイムに観察することができる。

上述の第3〜第5の実施形態においては、血流量を測定するドップラー計測器及び酸素飽和度計測器を設けていないが、第1及び第2の実施形態と同様にこれらを設けてもよい。

[医療用装置の概要] 上記歯用装置は、歯周病治療、歯垢、歯石除去に用いられるものであったが、以下の実施形態に係る医療用装置は、関節炎、腹腔鏡下手術時、総胆管結石症、唾石症又は歯の根管抜去後等における感染症の治療又は予防に用いることができる。以下、医療用装置について説明する。なお、上記実施形態の構成および作用と同様な部分については、その説明を省略または簡略化する。

aPDTにおいては、上述の通り、光化学反応により、歯周病菌等の病原性細菌を殺菌することが知られている。さらにaPDTは、細菌の他にも、ウィルス、原虫、真菌等の感染性微生物の殺菌に広く有効であるということが示されている。なお、「殺菌」とは、細菌を死滅させることに限定されず、上記感染性微生物を死滅させることを示すものとする。

aPDTの利点としては、抗生物質と異なり、繰り返しの使用についても病原体が耐性を示さないと考えられている点、患者側の患部を温存することができる点、また、光感受性薬剤と患者の施術部位や細菌等の細胞表面との静電相互作用によりこれらが迅速に結合し、薬剤の投与から施術終了までの時間を短縮できる、という点が挙げられている。これらの利点により、aPDTは、抗生物質等に替わる感染症の治療法として期待される。

さらに、aPDTについては、免疫賦活化作用についても指摘されている(非特許文献1参照)。すなわち、光感受性薬剤が結合した部位に励起光を照射することで血流が改善し、当該部位に免疫系細胞である好中球が遊走ことが示されている。したがって、感染症の治療のみならず、感染症の予防に対してもaPDTが注目されている。

また、以下の実施形態においては、上述の実施形態と同様に、照射部位から発せられる蛍光強度の経時変化に基づいて、感染性微生物の殺菌経過等の施術経過をモニターすることができる。これにより、aPDTを効果的に行うことができ、施術時間の短縮や、感染症の再発防止に貢献することができる。

以下、医療用装置の各実施形態について説明する。

(第6の実施形態) 第6の実施形態として、関節炎の予防及び治療に用いられる医療用装置について説明する。

関節炎の手術においては、近年、関節鏡下手術が一般的に行われている。 図39は、関節鏡下手術の様子を示す模式的な図である。 関節Jは、先端部に軟骨を含む骨Os1,Os2の軟骨を含む先端部分を被覆する関節包J1と、関節包J1の内面を構成する滑膜J2と、滑膜J2に被覆され滑液等が収容される関節腔J3とを有する。 また、関節鏡装置4Aは、挿入部411Aを有する関節鏡41Aと、関節鏡41Aに接続される本体42A及び光源43Aと、モニター44Aとを有する。 関節鏡41Aは、硬性鏡として構成される。 関節鏡下手術においては、関節包J1及び滑膜J2に数箇所の挿入孔J4が形成され、挿入孔J4から関節鏡41Aの挿入部411A及び鉗子等の手術器具Sがそれぞれ挿入される。モニター44Aには、関節鏡41Aにより撮像された画像が表示される。施術者は、当該画像を視認しつつ、手術器具Sにより手術を行う。

関節炎のうち、例えば血流を介した細菌感染による化膿性関節炎や、結核菌による結核性関節炎等の細菌感染が原因の関節炎については、当該細菌感染に対する治療としてaPDTを用いることができる。一方で、関節は血流が少なく、免疫系が活性化しにくい。すなわち、感染が原因でない関節リウマチや通風性関節炎等の関節鏡下手術においても、細菌等の感染は大きなリスクとなる。したがって、関節鏡下手術前後において、感染症の予防としてもaPDTが有効である。

そこで本実施形態においては、関節鏡下手術前に予防的にaPDTを行い、さらに手術中又は手術後に予防的又は治療的にaPDTを行う。また本実施形態に係るaPDTでは、血管が比較的豊富で免疫系が活性化されやすく、かつ感染を生じやすい滑膜J2を、感染症に対する治療及び予防のうち少なくとも一方が行われる施術部位とする。

以下、医療用装置の構成について説明する。

[1.医療用装置の構成] 図40は、本実施形態に係る医療用装置1Aの概略構成図を示す。図41は、図40の医療用装置1Aの機能ブロック図である。

図40及び図41に示すように、医療用装置1Aは、モニター2Aと、本体5Aと、施術用プローブ3Aとを具備する。本実施形態においては、施術部位における光感受性薬剤の減少量(ブリーチング量)に基づいて、当該部位の殺菌状況等の経時変化をグラフ化した画像を表示する。なお、施術用プローブ3Aは、上述の実施形態の「治療診断用プローブ」に相当する。

[1.1.モニターの構成] モニター2Aは、画像を表示する表示部21Aを有する表示装置である。モニター2Aは、上述の実施形態と同様に、本体5Aと有線又は無線で接続される。また、モニター2Aを設けず、本体5Aに表示部を設けてもよいし、関節鏡装置4Aのモニター44Aを用いてもよい。 図42は、施術時にモニター2Aの表示部21Aに表示される画像の一例である。 表示部21Aの上領域には、施術部位における蛍光強度の経時変化を可視化した画像211Aが表示される。 表示部21Aの下領域には、施術部位における、施術用プローブ3Aのドップラー計測部31Aで求められた血流量の経時変化を示すグラフの画像212Aが表示される。 なお表示部21Aには、施術用プローブ3Aにて撮像された施術部位の実画像(カメラ画像)や、後述する酸素飽和度を数値によって可視化したグラフ等が表示されてもよい。

[1.2.施術用プローブの構成] 施術用プローブ3Aは、把持部を有する棒状である。施術用プローブ3Aは、第4の実施形態の治療診断用プローブ1103と概略構成が同様である。図41及び図35、図36等を参照し、施術用プローブ3Aは、照射部34Aと、受光プローブ33Aと、ドップラー計測部31Aと、酸素飽和度計測部32Aとを備える。本実施形態に係る施術用プローブ3Aは、前方照射型であり、例えば施術部位である滑膜と離間した位置から、滑膜に向かって励起光を照射する(図44参照)。

施術用プローブ3Aは、関節鏡下手術において形成される挿入孔J4を貫通可能な大きさで構成され、例えば直径1〜2mm程度である。

照射部34Aは、後述する本体5Aの光源部55Aから発せられた光感受性薬剤の吸収帯に属する波長を有する施術用レーザ光やLED光などを導光するファイバを有し、このファイバにより導光された光源部55Aから発せられたレーザ光やLED光などを、照射部34A前方に出射する。照射部34Aから発する照射光は、感染症の治療として、滑膜に分布する光感受性薬剤と結合した細菌を殺菌してもよく、あるいは感染症の予防として、光感受性薬剤と結合した滑膜自体の免疫系を活性化してもよい。

受光プローブ33Aは、滑膜から発する蛍光の画像データを電気信号に変換し、得られた画像データを本体5Aの画像受信部56Aに送信する。また本実施形態に係る受光プローブ33Aは、第4の実施形態で説明したように、BPFとフォトダイオードとを有していてもよい。

なお、受光プローブ33Aの導光路上でBPFの配置又は遮断を切り替え可能な構成とすることで、蛍光の画像データのみならず、照射を行っていない場合における施術部位の実画像を取得し、表示部21Aに表示させることができる。

ドップラー計測部31Aは、照射光が照射される施術部位の血管の血流量を、例えば633nmの波長を有する光を用いて計測する。血流量の算出については、上述の、ドップラーシフトを用いて算出する方法や、反射光のスペックルパターンをフーリエ変換して血流量を求める方法等を適宜採用することができる。 ドップラー計測部31Aは、計測された血流量情報を本体5Aの血流量受信部59Aに送信する。

酸素飽和度計測部32Aは、照射光が照射される施術部位の酸素飽和度を測定するものであり、第1の実施形態に係る酸素飽和度計測部32と同様の構成を有する。すなわち、酸素飽和度により、関節炎における炎症の度合いを定量的に評価できる。 酸素飽和度計測部32Aは、計測された酸素飽和度を本体5Aの酸素飽和度受信部50Aに受信する。

[1.3.本体の構成] 図41に示すように、本体5Aは、光源部55Aと、画像受信部56Aと、制御・解析部54Aとを有する。また本体5Aは、スイッチ51Aと、安全装置部52Aと、血流量受信部59Aと、酸素飽和度受信部50Aとを有する。

光源部55Aは、施術部位に投与する光感受性薬剤の吸収帯に属する波長の光(励起光)を発する。 画像受信部56Aは、光源部55Aから照射部34Aを介して照射された光に対して発せられる施術部位からの蛍光を検出するための光検出部として構成される。すなわち画像受信部56Aは、施術用プローブ3Aの受光プローブ33Aより送信されてきた滑膜の蛍光画像データ等を受信する。

血流量受信部59Aは、施術用プローブ3Aのドップラー計測部31Aで計測された血流量速情報を受信する。 酸素飽和度受信部50Aは、施術用プローブ3Aの酸素飽和度計測部32Aで計測された酸素飽和度情報を受信する。

制御・解析部54Aは、画像受信部56Aにより検出された蛍光に基づき、蛍光の強度の経時変化を可視化するためのデータを出力する制御部として構成される。すなわち制御・解析部54Aは、撮像部33Aで取得した蛍光画像データから、蛍光の強度をグラデーションでマッピングし、図28(d)に示す蛍光強度の経時変化を可視化するためのデータを表示部21Aに出力し、表示部21Aの上領域に蛍光強度の経時変化を可視化した画像を表示させる。

また制御・解析部54Aは、血流量受信部59Aから血流量情報を受信し、血流量とレーザ光照射時間との関係をグラフ化して可視化するためのデータを出力し、図42に示すように表示部21Aの下領域に表示させる。 制御・解析部54Aは、酸素飽和度受信部50Aから酸素飽和度情報を受信し、酸素飽和度を数値によって可視化するためのデータを出力し、表示部21Aに表示させてもよい。

[2.光感受性薬材] 光感受性薬剤は、関節腔内に投与され、施術部位である滑膜に分布する。 光感受性薬剤としては、第1の実施形態と同様に、細菌と静電相互作用によって結合できるメチレンブルー等のカチオン製剤や、細菌に取り込まれる薬剤の溶液もしくはジェルを用いることができるが、これらに限定されず、ポルフィマーナトリウム(Photofrin(登録商標))、Talaporfin、5-ALA、Foscan等の他の光感受性薬剤を用いることが可能である。本実施形態においては、例えば、施術者が挿入孔J4(図39参照)を介して施術部位に注射やマイクロニードルアレイなどのDDSデバイスを用いて光感受性薬剤を局所投与する。

[3.診断及び治療の流れ] 図43は、上述の医療用装置1Aを用いた診断及び治療の流れを示すフロー図であり、図44は、医療用装置1Aを用いてaPDTを実施している様子を示す。図43及び図44を用いて診断及び治療の流れについて説明する。

(関節炎の診断 S601) まず、術前に、医師等が関節炎の診断を行う(S601)。関節炎の診断として、具体的には、患者に対するMRIの実施又は医師等による患者への臨床症状の問診等が行われる。本工程において関節炎と診断された場合には、医師等による患者への説明が行われ、関節鏡下手術が実施される。

(関節鏡下手術の準備 S602〜S605) まず、手術室内に搬送された患者に対し、麻酔投与等の所定の処置が行われた後、施術者により、関節における皮膚が切開される(S602)。これにより、皮膚に2、3箇所程度の小切開(図示略)が形成される。小切開は、例えば直径6mm程度である。

次に、上記小切開を介して、注射器等により、関節腔J3内に生理食塩を注入する(S603)。あるいは、生理食塩水に替えて、炭酸ガス等を注入してもよい。これにより、関節腔J3内の容積が広がり、手術が容易になる。また、カニューラ等により手術中生理食塩水を灌流してもよい。これにより、感染等のリスクをより抑制できる。

そして、トラカール(内針)を組み合わせた外套管J41を小切開に挿入する。これによってトラカールが関節包J1及び滑膜J2を穿孔し、関節包J1及び滑膜J2を貫く挿入孔J4が形成されるとともに、挿入孔J4に外套管J41が設置される(S604)。その後、トラカールは抜去される。外套管J41は、挿入孔J4から関節鏡41Aや手術器具Sを挿入させるための通路となるものであり、また注入した生理食塩水等を外部に漏出させないよう挿入孔J4を気密に保持する機能を有する。なおトラカールの図示は省略する。

続いて、挿入孔J41を介して、関節鏡41A及び医療用装置1Aの施術用プローブ3Aを関節腔J3内へ挿入する(S605)。これにより、関節鏡41A及び施術用プローブ3Aの先端部が関節腔J3内に配置される。

そして本実施形態においては、実際の手術に先立ち、予防的に手術前aPDTが実施される。これにより、施術部位である滑膜J2における免疫系が活性化され、手術中における感染症のリスクを低減することができる。なお本実施形態のaPDTにおける画像取得処理は、第3の実施形態と同様に行うことができ、施術効果(殺菌効果)のマッピング図に係る図28(a)〜(d)も参照しつつ説明する。

(手術前aPDTの実施 S606〜S607) 次に、手術前aPDTが実施される(S606)。 図45は、手術前aPDTの実施工程の流れを示すフロー図であり、手術前aPDTの実施工程(S606)に含まれるS6061〜S6067までの各工程を示す。 まず、滑膜J2に光感受性薬剤を投与するために、当該薬剤が関節腔J3内に注入される(S6061)。これにより、当該薬剤が滑膜J2に分布する。 そして、施術者の照射部34Aからの光の出射の有無を制御するスイッチのオン操作により(S6062)、照射部34Aから励起光が出射する。励起光は、滑膜J2に照射され、滑膜J2表面で拡散反射する。

次に、蛍光取得処理が行われる(S6063〜S6065)。 施術用プローブ3AのBPFつきCMOS又はCCDイメージセンサは、励起光に対して発せられる滑膜J2表面からの蛍光のデータを取得し、本体5Aの画像受信部56Aに、蛍光データを送信する。 画像受信部56Aは、照射直後(t=0)の薬剤蛍光画像(蛍光強度分布)を取得する(S6063、図28(a)参照)。画像受信部56Aは、時刻t=0における蛍光強度情報を制御・解析部54Aに送信する。 制御・解析部54Aは、照射直後(t=0)の蛍光強度の滑膜J2表面分布を記録する(S6064)。 画像受信部56Aは、時刻t=t1における薬剤蛍光画像(蛍光強度分布)を取得する(S6065、図28(b)参照)。画像受信部56Aは、時刻t=t1における蛍光強度情報を制御・解析部54Aに送信する。

続いて、蛍光強度を算出する(S6066〜S6067)。 制御・解析部54Aは、時刻t=0における蛍光強度情報と、時刻t=t1における蛍光強度情報から、薬剤蛍光強度の減少量(ブリーチング量)を算出する(S6066)。 制御・解析部54Aは、算出したブリーチング量に基づいて、時間t1間でブリーチングされた量を可視化するためのデータを出力し、表示部21Aに、図28(c)又は(d)に示すような画像を表示部21Aに表示させる(S6067)。

以上のように、表示部21Aに表示されたブリーチング量の経時的な変化を参照しながら、施術者はaPDTを実施する。

施術者は、表示部21Aに表示された画像に基づいてブリーチング量の減衰が十分か否か判断する(S607)。十分であると判断された場合には(YES)、光照射がオフされる。 十分でないと判断された場合には(NO)、S606に戻り、aPDTを継続する。

次に、関節鏡下手術が行われる。

(関節鏡下手術の実施 S608〜S610) 施術者は、関節鏡41Aにより患部である関節腔J3内部を観察する(S608)。観察した関節腔J3内の状態によっては、さらに挿入孔J4を追加で形成してもよい(S609)。そして、手術器具Sを用いて手術を行う(S610)。これにより、関節軟骨の遊離体の摘出や、病変部位の切除等が適宜実施される。

(手術後aPDTの実施 S611〜S612) そして、感染性関節炎の場合には殺菌のための治療として、あるいは非感染性関節炎の場合には感染症の予防として、手術後にaPDTが実施される(S611)。本工程は、手術前aPDT(S6061〜S6067)と同様であるため、詳細な説明を省略する。 なお、治療としてaPDTを実施する場合には、光感受性薬剤がブリーチングされた量を可視化するためのデータは、殺菌経過を可視化するためのデータとして参照される。 また、治療としてaPDTを実施する場合には、手術中にaPDTを実施してもよいし、手術中及び手術後にaPDTを複数回実施してもよい。

施術者は、S607と同様に、表示部21Aに表示された画像に基づいてブリーチング量の減衰が十分か否か判断する(S612)。十分であると判断された場合には(YES)、光照射がオフされる。 十分でないと判断された場合には(NO)、S611に戻り、処理が繰り返される。

(手術の終了 S613〜S615) そして、施術者は、関節腔J3内を生理食塩水等で洗浄する(S613)。なお本工程は、S611の前に行ってもよく、また上述のように生理食塩水を灌流していた場合には実施しなくてもよい。 そして挿入孔J4から関節鏡41A及び手術器具Sを抜去し(S614)、さらに外套管J41を抜去して、挿入孔J4を縫合する(S615)。

以上のように本実施形態においては、医療用装置1Aを用いて、関節炎の感染症予防及び治療を効果的かつ迅速に行うことが可能となる。これにより、手術中の細菌感染による感染性関節炎の再発や発生を抑制し、かつ多剤耐性菌発生のリスクを抑制することができる。また、患者に対する抗生物質服用の負担を軽減させることができる。

(変形例) 本実施形態においては、関節鏡41Aとは別個の光源部55A及び施術用プローブ3Aを用いて励起光を照射したが、関節鏡が施術用プローブ(照射部及び撮像部)を兼ねる構成としてもよい。

図46は、本変形例の医療用装置1Aaの構成を示す概略断面図である。医療用装置1Aaは、関節鏡装置として構成される。すなわち医療用装置1Aaは、光源部34Aaと、撮像部33Aaと、関節鏡3Aaと、表示部21Aaと、本体5Aaとを有する。 光源部34Aaは、例えば関節鏡3Aaの先端部に配置されたLED(light-emitting diode; 発光ダイオード)であり、光感受性薬剤の吸収帯に属する波長の光を発する。 なお、医療用装置1Aaは、光源部34Aaとは別個に、関節鏡3Aaと接続され、実画像を取得するための照射光を供給するための光源43Aaを有してもよい。 撮像部33Aaは、図示しない光学系が配置された受光路331Aaと、CCDイメージセンサ等のフォトダイオード332Aaとを含み、施術部位の蛍光画像を取得するとともに、施術部位の実画像を取得する。 表示部21Aaは、撮像部33Aaによって取得された実画像や、蛍光強度の経時変化を可視化した画像(図42の211A参照)等を表示することが可能である。 本体5Aaは、制御・解析部54Aaと、画像受信部56Aaとを有する。画像受信部56Aaは、光源部34Aaから照射された光に対して発せられる施術部位からの蛍光を検出するための光検出部として構成され、撮像部33Aaより送信されてきた滑膜の蛍光画像データ又は実画像データを受信する。制御・解析部54Aaは、画像受信部56Aaにより検出された蛍光に基づく蛍光の強度の経時変化を可視化するためのデータ及び取得した実画像データのうちの少なくとも一方を出力する。

上記構成により、たとえ関節鏡41Aaの径が小さく、実画像取得のための照射光を導光するファイバ等の他に光感受性薬剤の励起光を導光するためのファイバ(照射プローブ)等を配置することができない場合であっても、関節鏡41Aaから上記励起光を照射することが可能となる。

さらに医療用装置1Aaは、撮像部33Aaが施術部位からの蛍光画像を取得するモードと、撮像部33Aaが実画像を取得するモードとを切り替える切替部38Aaを有していてもよい。 切替部38Aaは、受光路331Aaに配置されることが可能な光学フィルタ381Aaと、光学フィルタ381Aaを受光路331Aa内に配置又は退避させる機構部382Aaとを有する。 光学フィルタ381Aaは、透過させる光の波長を光感受性薬剤の吸収帯に属する波長に限定することができるものであり、例えば、BPFで構成される。 機構部382Aaは、制御・解析部54Aaと接続され、制御・解析部54Aaにより駆動を制御されてもよい。これにより機構部382Aaは、自動で駆動されることが可能となる。あるいは機構部382Aaは、手動で光学フィルタ381Aaの位置の切り替えが可能に構成されてもよい。この場合には、例えば機構部382Aaが関節鏡装置3Aaに形成された挿入口と、当該挿入口から光学フィルタ381Aaの受光路331Aa上への挿入をガイドするガイド部とを有し、光学フィルタ381Aaの脱着を行うことが可能に構成されてもよい。

機構部382Aaは、撮像部33Aaが実画像を取得するモードにおいては、光学フィルタ381Aaを受光路331Aa内から退避させる。これにより医療用装置1Aaを、患部の実画像を取得し表示させる関節鏡装置として用いることができる。一方撮像部33Aaが施術部位からの蛍光画像を取得するモードにおいては、光学フィルタ381Aaを受光路331Aa上に配置させる。これにより、医療用装置1Aaを、光感受性薬剤のブリーチング量の経時的な変化を参照しながら感染症の治療又は予防を行う装置として用いることができる。

このような医療用装置1Aaにより、関節鏡下手術に用いる器具の点数を少なくすることができる。このため、施術用プローブのための挿入孔を増やす必要がなくなり、より低侵襲の手術を行うことができる。また、例えば1つの挿入孔を鉗子等と施術用プローブとを交換する操作等も不要となり、挿入孔からの感染リスクをより低減することが可能となる。

また、照射部は、出射光を拡散させる拡散部を有していてもよい。 図47は、第6の実施形態の変形例に係る施術用プローブ3Abの先端部の概略断面図である。拡散部としての光拡散板341Abは、照射部34Abのファイバから光が出射される出射口342Aに配置される。これにより、出射光が拡散し、滑膜のより広い範囲に光を照射することが可能となる。したがって、滑膜における殺菌効果及び免疫賦活化の効果を高めることが可能となる。

さらに、上述の施術用プローブ3Aでは、照射部として導光可能なファイバ等である照射部34Aを採用したが、例えば第3の実施形態のような、側方照射型でニードル状の照射部を有していてもよい。

また、上述の表示部21Aに表示される蛍光強度の経時変化を可視化する画像は、図42に示すような蛍光強度のマッピング図に限定されず、例えば横軸に時間、縦軸に蛍光強度又はブリーチング量を示したグラフでもよい。これによっても、施術者が蛍光強度の経時変化を確認することが可能となる。 あるいは、医療用装置は、第1の実施形態に係る歯用装置と同様に、関節内の三次元モデルを取得可能な構成としてもよい。

さらに、上述の医療用装置1Aは、ドップラー計測部31A及び酸素飽和度計測部32Aを有する構成としたが、これらの双方又は一方を有さない構成とすることも可能である。 また、医療用装置が、上述の空気吹きかけ部(図26参照)をさらに具備する構成としてもよい。

(第7の実施形態) 第7の実施形態として、腹腔鏡下手術の予防及び治療に用いられる医療用装置について説明する。

近年、婦人科領域や泌尿器科領域等において、腹腔鏡を用いた腹腔鏡下手術が広く行われている。 図48は、腹腔鏡下手術の様子を示す模式的な図である。 腹腔C2は、腹膜C1及び図示しない横隔膜等に囲まれた体腔である。また、腹腔C2内には、消化器、泌尿器、生殖器等の複数の器官C3が配置されている。 また、腹腔鏡装置4Bは、挿入部411Bを有する腹腔鏡41Bと、腹腔鏡41Bに接続される本体42B及び光源43Bと、モニター44Bとを有する。 腹腔鏡41Bは、関節鏡と同様に、硬性鏡として構成される。 腹腔鏡下手術においては、腹膜C1に数箇所の挿入孔C4が形成され、挿入孔C4から腹腔鏡41Bの挿入部411B及び鉗子等の手術器具Sが挿入される。モニター44Bには、腹腔鏡41Bにより撮像された画像が表示される。施術者は、当該画像を視認しつつ、手術器具Sにより手術を行う。

腹腔鏡下手術においても、細菌等の感染症が大きなリスクとなる。現状では、手術終了前に生理食塩水の注入及び抜去を2,3回繰り返すことで、腹腔内を洗浄し、感染リスクを抑制している。しかしながら、この作業を行っても感染の可能性を否定することが難しい。

そこで、腹腔鏡下手術においても、予防的にaPDTを行うことで、感染リスクをより低減させることが可能となる。また、腹腔鏡下手術の適応となる疾患の中には感染症を伴うものもある。このような場合には治療としてaPDTを行うことで殺菌が可能となり、さらに再感染のリスクも低減することが可能となる。

これにより本実施形態においては、第6の実施形態と同様に、腹腔鏡下手術前に予防的にaPDTを行い、さらに手術後に予防として又は治療としてaPDTを行う。また本実施形態に係るaPDTにおける施術部位は、腹腔C2とすることができる。ここで施術部位としての「腹腔」とは、生理食塩水等に満たされた腹腔C2内、挿入孔C4付近の腹膜、又は感染症に罹患している器官C3等を示すものとし、腹腔鏡下手術が適応となる疾患の状況等に応じて適宜設定することができる。

本実施形態に係る医療用装置1Bの概略構成は、第6の実施形態に係る医療用装置1Aと同様であるため、その構成の説明を省略し、対応する部分については同一の符号を付すものとする。 なお本実施形態に係る施術用プローブ3Aは、腹膜鏡下手術において使用される挿入孔C4を貫通可能な大きさで構成され、例えば直径3〜10mm程度である。

図49は、上述の医療用装置1Bを用いた診断及び治療の流れを示すフロー図であり、図50は、医療用装置1Bを用いてaPDTを実施している様子を示す。図49及び図50を用いて診断及び治療の流れについて説明する。

(診断 S701) まず、術前に、腹腔鏡下手術が適応となる疾患の診断を行う(S701)。具体的には、患者に対するX線画像検査や超音波検査、血液検査等による精密検査が実施される。本工程において腹腔鏡下手術が必要な疾患であると診断された場合には、医師等による患者への説明が行われ、腹腔鏡下手術が実施される。

(腹腔鏡下手術の準備 S702〜S705) まず、手術室内に搬送された患者に対し、麻酔投与等の所定の処置が行われた後、施術者により、腹部における皮膚が切開される(S702)。これにより、皮膚に複数箇所の小切開(図示略)が形成される。小切開は、例えば直径5〜12mm程度である。

次に、上記小切開を介して、腹腔C2内に炭酸ガスを注入する(S703)。これにより、腹腔C2内の容積が広がり、手術が容易になる。また、炭酸ガスに替えて生理食塩水等を注入してもよく、あるいは手術中生理食塩水を灌流してもよい。

そして、外套管(トロッカー)C41を小切開に挿入し、腹部の筋肉や腹膜等を貫く挿入孔C4が形成されるとともに、挿入孔C4にトロッカーC41が設置される(S704)。トロッカーC41は、挿入孔C4から腹腔鏡41Bや手術器具Sを挿入させるための通路となるものであり、また注入した炭酸ガス等を外部に漏出させないよう挿入孔C4を気密に保持する機能を有する。

続いて、腹腔鏡41B及び医療用装置1Bの施術用プローブ3Aを挿入孔C41に挿入する(S705)。これにより、腹腔鏡41B及び施術用プローブ3Aの先端部が腹腔C2内に配置される。

(手術前aPDTの実施 S706〜S707) そして、実際の手術に先立ち、予防的に手術前aPDTが実施される(S706)。これにより、施術部位周囲における免疫系が活性化され、手術中における感染症のリスクを低減することができる。本工程は、第6の実施形態に係る手術前aPDT(S606)と同様であるため、詳細な説明を省略する。

施術者は、表示部21Aに表示された画像に基づいてブリーチング量の減衰が十分か否か判断する(S707)。十分であると判断された場合には(YES)、光照射がオフされる。 十分でないと判断された場合には(NO)、S706に戻り、aPDTを継続する。

次に、腹腔鏡下手術が行われる。

(腹腔鏡下手術の実施 S708〜S710) 施術者は、腹腔鏡41Bにより腹腔C2内の患部を観察する(S708)。そして観察結果に基づき、手術器具Sを用いて手術を行う(S709)。これにより、患部の摘出等が適宜実施される。 そして、施術者は、腹腔C2内を生理食塩水等で洗浄する(S710)。なお本工程は、S711の後に行ってもよく、また上述のように生理食塩水を灌流していた場合には実施しなくてもよい。

(手術後aPDTの実施 S711〜S712) そして、感染症を発症している場合には殺菌のための治療として、非感染性疾患の場合には感染症の予防として、手術後にaPDTが実施される(S711)。本工程は、第6の実施形態に係る手術前aPDT(S6061〜S6067)と同様であるため、詳細な説明を省略する。 なお、治療としてaPDTを実施する場合には、光感受性薬剤がブリーチングされた量を可視化するためのデータは、殺菌経過を可視化するためのデータとして参照される。 また、治療としてaPDTを実施する場合には、手術中にaPDTを実施してもよいし、手術中及び手術後にaPDTを複数回実施してもよい。

施術者は、S707と同様に、表示部21Aに表示された画像に基づいてブリーチング量の減衰が十分か否か判断する(S712)。十分であると判断された場合には(YES)、光照射がオフされる。 十分でないと判断された場合には(NO)、S711に戻り、処理が繰り返される。

(手術の終了 S713〜S714) そして、施術者は、挿入孔C4から腹腔鏡41B、施術用プローブ3A及び手術器具Sを抜去し(S713)、さらにトロッカーC41を抜去して、挿入孔C4を縫合する(S714)。

以上のように本実施形態においては、医療用装置1Bを用いて、腹腔鏡下手術時における感染症予防及び治療を効果的かつ容易に行うことが可能となる。これにより、手術時の細菌感染による感染性の再発や発生を抑制し、かつ多剤耐性菌発生のリスクを抑制することができる。また、患者に対する抗生物質服用の負担を軽減させることができる。

(変形例) 上述の実施形態においては、施術用プローブ3Aを挿入孔C4から挿入して励起光を照射すると説明したが、例えば挿入孔C4の縫合前に、挿入孔C4の外部から挿入孔C4付近を照射してもよい。これにより、最も感染リスクの高い挿入孔C4を効果的に殺菌及び感染予防し、かつ施術用プローブ3Aを腹腔C2内に挿入することによる感染リスクも抑制することができる。

図51(A)(B)は、本実施形態の変形例に係る施術用プローブ3Acを用いてaPDTの照射を行っている様子を示す図である。本変形例に係る医療用装置1Bは、照射された励起光を反射する反射部37Aをさらに有する。

反射部37Aは、全体として傘状の構成を有する。すなわち反射部37Aは、開閉自在に構成され励起光を反射することが可能なカバー部材371Aと、カバー部材371Aを支持し施術用プローブ3Aの先端部に接続された棒状の支持部372Aとを有し、全体として施術用プローブ3Acの先端に突出して設けられる。またカバー部材371Aの内面は、反射面373Aを構成する。反射面373Aは、例えば照射部34Acから照射される波長帯の光を反射可能に構成される。

図51(A)は、カバー部材371Aが閉じている様子を示す。この場合には、反射部37Aは閉じた傘と同様に全体として棒状であり、施術用プローブ3Acは、照射部34Acから正面方向に向かって励起光を照射することが可能である。 一方図51(B)は、カバー部材371Aが開かれた様子を示す。反射面373Aは、挿入孔C4付近の腹膜C1と対向するように配置される。これにより、照射部34Acから正面方向に向かって発せられた光が反射面373Aで反射し、腹膜C1に照射されることが可能となる。

本変形例により、挿入孔C4付近の腹膜C1に対しても効率よく励起光を照射することが可能となる。したがって、感染リスクの高い挿入孔C4付近の腹膜C1を効果的に殺菌し、又は腹膜C1における免疫系を活性化することができる。

なお、反射部37Aは、施術用プローブ3Acに配置される構成に限定されない。例えば、腹腔鏡41Bが施術用プローブ3Aからの照射光を反射する反射部37Aを有していてもよい。これにより、施術用プローブ3Aと反射部37Aとの配置を調整することが可能となり、より効率的に励起光を反射することができる。

さらに、反射部37Aは、図52に示すように、別個の反射装置370Aとして構成することもできる。この場合は、反射装置370Aを使い捨ての構成とすることで、より衛生的に用いることができる。

また、第6の実施形態の変形例で示したように、腹腔鏡が施術用プローブを兼ねるように構成してもよい(図46参照)。 ここで一般的に、腹腔鏡は関節鏡よりも大きな径を有するため、先端部にLED等の光源部を配置する構成に限定されない。例えば第6の実施形態と同様に、光源部を本体に配置し、光源部と接続されるファイバ等の照射プローブを有する構成とすることができる。

また医療用装置1Bが、灌流部として、腹腔内に灌流される生理食塩水の流路6Bをさらに有していてもよい。 図53は、本変形例に係る施術用プローブ3Bの先端面を示す平面図である。施術用プローブ3Bは、照射プローブ34Bと、撮像部としてのBPFつきCMOS又はCCDイメージセンサ又はイメージファイバ33Bと、流路6Bとを有する。 流路6Bにより、生理食塩水等を腹腔内に灌流することが可能となり、感染のリスクをより低減させることが可能となる。また、灌流のためのカニューレ等を留置するための別個の挿入孔を設けることなく、より低侵襲に手術を行うことができる。

(第8の実施形態) 第8の実施形態において、総胆管結石症治療及び再発予防に用いられる医療用装置について説明する。

図54は、総胆管結石治療の様子を示す模式図である。総胆管B1は、肝臓L内外にわたって走行する複数の肝内胆管B2が集合した管状構造であり、十二指腸Dへ開口する。また総胆管B1は、胆嚢Gと接続する。 総胆管結石症とは、総胆管B1に結石Stがつまる病気で、原因の一つは、胆嚢結石が総胆管B1に落下すること(落下結石)である。その他の原因として、総胆管B1内における細菌感染が挙げられる。すなわち、大腸菌等の細菌が粘液を生成することでバイオフィルムが形成され、それにビリルビンやカルシウム等が結合することで、原発結石が形成される。

総胆管結石症の治療として、内視鏡による治療が行われている。すなわち、図54に示すように、軟性鏡として構成される内視鏡3Cを十二指腸Dから挿入し、総胆管B1の開口部付近に先端部3Caを配置する。さらに図示しないバスケットカニューラ等を総胆管B1へ挿入し、総胆管B1内の結石Stを取り除く。 なお、原発結石に細菌感染が関与していない場合あっても、内視鏡治療による二次感染による再発のリスクも否めない。

そこで本実施形態においては、第6の実施形態に係る変形例の医療用装置1Aaと同様に、内視鏡3Cの先端部3CaにLED等を含む光源部34Cを配置し、結石除去後に光感受性薬剤を投与した総胆管B1を施術部位として励起光を照射する。これにより、総胆管結石症の再発予防として、aPDTを実施することが可能となる。

図54を参照し、医療用装置1Cは、内視鏡3Cと、モニター21Cと、本体5Cと、内視鏡3Cに配置された撮像部33C及び光源部34Cとを有する。内視鏡3Cは、上述のように軟性鏡として構成され、図示しない操作部や本体5C等との接続部を有していてもよい。モニター21C及び本体5Cの構成は第6の実施形態に係る変形例の医療用装置1Aaと同様であるため詳細な説明を省略し、ここでは内視鏡3Cの構成について説明する。

図55は、内視鏡3Cの先端部3Caの構成を示す平面図である。 先端部3Caには、光源部34Cと、対物レンズ333Cと、内視鏡用照射プローブ38Cと、鉗子口6Cとが配置される。 光源部34Cは、図46に示す光源部34Aaと同様に、LEDであり、光感受性薬剤の吸収帯に属する波長の光を発する。また光源部34Cは、照射部を兼ねている。 対物レンズ333Cは、撮像部33Cに含まれ、撮像部33Cの図示しない受光路の先端に配置される。 また撮像部33Cは、対物レンズ333Cと、図示しないフォトダイオード(図46参照)と、当該フォトダイオードへ光を導光する受光路とを有する。撮像部33Cのフォトダイオードで取得された画像データは、本体5Cの画像受信部(図41、図45参照)に送信される。 内視鏡用照射プローブ39Cは、内視鏡3Cによる実画像の撮像時の照明として用いられる。 鉗子口6Cは、鉗子等の手術器具を挿入することが可能な中空の構造を有する。また鉗子口6Cは、生理食塩水等の液体やガスの流路として構成されてもよい。

実際のaPDTの様子について、図54を用いて説明する。 結石の除去後、総胆管B1に対し、鉗子口6Cからカニューラ等を介して光感受性薬剤が投与される。そして、光源部34Cから励起光が発せられ、総胆管B1に対して照射が行われる。 また表示部21Cには、蛍光強度の経時変化を可視化した画像が表示される。 施術者は、表示部21Cに表示された当該画像を参照し、蛍光強度の減衰(ブリーチング量)が十分であるか判断する。十分である場合には、照射を終了し、内視鏡下手術を終了する。

このように、本実施形態においても、総胆管結石の治療及び再発予防を効果的に行うことができる。

さらに、以上の実施形態の変形例として、他の疾患についても医療用装置を適用し得る。

(他の疾患についての変形例) まず、唾石症が挙げられる。 唾石症は、唾液管又は唾液腺の中に結石ができる病気である。原因の詳細は明らかでないが、唾液管に入り込んだ異物や細菌などの周りに、唾液に含まれるカルシウムが沈着してできるといわれている。 唾石症の治療法として、硬性鏡によって患部を撮像しつつ物理的に結石を除去する方法が挙げられる。そこで結石の除去の前後に、唾液管又は唾液腺を施術部位としてaPDTを行うことで、感染した細菌の殺菌及び再発予防が可能となる。この場合には、上述の医療用装置1Aaと同様の構成の内視鏡装置を用いることができる。 また、他の治療法として、口腔底を切開し、唾液管の排出口から結石を除去する方法も挙げられる。そこで、結石除去後の口腔底の切開口を施術部位としてaPDTを実施することも可能である。この場合には、上述の医療用装置1Aと同様の構成の医療用装置を用いることができる。

また、口腔内の根管内治療においても適用できる。 根管とは、歯肉内に形成された、歯の神経が収納される管である。虫歯等により歯の神経まで細菌に感染した場合には、この神経を根管から除去する治療を要する。この根管治療後に、根管壁等に付着したスミヤー層と呼ばれる層を除去することが求められる。スミヤー層とは、治療器具により根管内を機械的に清掃する際に、切削された象牙質表面や組織片が付着したものである。当該スミヤー層には、細菌が残存する可能性が高く、現状では、EDTA等の洗浄液や水蒸気泡によってスミヤー層を除去している。 上記スミヤー層の除去処置に加えて、スミヤー層の除去前後の根管を施術部位としてaPDTを行うことで、より確実に根管内の殺菌を行うことが可能となり、再発予防に貢献できる。 本変形例においては、例えば上述の第6の実施形態に係る医療用装置1Aと同様の構成の医療用装置を適用することが可能である。

また以上の疾患に限定されず、他の感染症に罹患した患部又は感染の危険性がある部位を施術部位として、上記医療用装置を用いたaPDTを実施することができる。 また人の感染症に限定されず、動物の感染症に対する治療及び予防におけるaPDTにも、上記医療用装置を用いることができる。具体的には、尿路結石症等の治療及び再発予防等に適用可能である。

なお、本技術は以下のような構成も採ることができる。 (1)口腔の歯牙、歯肉、歯垢及び歯石のうち少なくとも1つに照射するための光を発する光源部と、 前記光源部から照射された光に対して発せられる前記口腔からの蛍光を検出するための光検出部と、 前記光検出部により検出された蛍光に基づき、前記蛍光の強度の経時変化を可視化するための第1のデータを出力するための制御部と を具備する歯用装置。 (2)前記(1)に記載の歯用装置であって、 前記歯肉には、前記光の照射により励起する光感受性薬剤が、前記歯肉の深さ方向に、歯周病菌と結合、又は、歯周病菌に取り込まれる形で分布し、 前記制御部は、前記光の照射に対して発せられる前記光感受性薬剤からの蛍光の前記歯肉の深さ方向における強度の分布を基づき、前記第1のデータを出力する 歯用装置。 (3)前記(2)に記載の歯用装置であって、 前記制御部は、計算により求められた基底状態の前記光感受性薬剤の前記深さ方向における分布の経時変化、計算により求められた前記光の前記深さ方向における強度分布の経時変化、及び、前記光検出部により検出された前記歯肉表面の蛍光強度に基づき、前記深さ方向における前記蛍光強度の経時変化を計算する 歯用装置。 (4)前記(1)又は(2)記載の歯用装置であって、 前記蛍光強度の経時変化は前記歯周病菌の殺菌経過を示す 歯用装置。 (5)前記(1)から(4)いずれか一項に記載の歯用装置であって、 前記歯牙又は前記歯肉に付着する歯垢又は歯石には、前記光の照射により励起する光感受性薬剤が、前記歯垢又は歯石の深さ方向に、歯周病菌と結合、又は、歯周病菌に取り込まれる形で分布し、 前記制御部は、前記光の照射に対して発せられる前記光感受性薬剤からの蛍光の前記歯肉に付着する歯垢又は歯石の深さ方向における強度の分布に基づき、前記第1のデータを出力する 歯用装置。 (6)前記(1)から(5)いずれか一項に記載の歯用装置であって、 前記歯牙及び歯肉を有する口腔の画像を受信する画像受信部と、 前記口腔の位置情報を、任意の位置に基準位置を設定し、該基準位置からの絶対位置情報として受信する位置情報受信部と、 前記画像受信部から受信した画像データと前記位置情報受信部から受信した位置情報とを紐付けする画像処理部と を更に具備し、 前記制御部は、前記口腔の前記光の照射部と前記位置情報とを対応させ、前記口腔の画像に前記光の照射部が示されるための第2のデータを出力する 歯用装置。 (7)前記(1)から(6)いずれか一項に記載の歯用装置であって、 前記歯牙及び歯肉を有する口腔には、前記光の照射により励起し、かつ、歯周病菌と結合する、又は、歯周病菌に取りこまれる光感受性薬剤が投与され、 前記制御部は、前記光照射に対して発せられる前記歯牙又は歯肉の表面付近の前記光感受性薬剤からの蛍光の、前記歯牙又は歯肉の表面における強度の分布に基づき、前記第1のデータを出力する 歯用装置。 (8)前記(1)から(7)いずれか一項に記載の歯用装置であって、 前記光は、レーザ光又は発光ダイオード光である 歯用装置。 (9)前記(1)に記載の歯用装置であって、 前記光は赤色光である 歯用装置。 (10)前記(9)に記載の歯用装置であって、 前記光検出部は、前記赤色光に対して発せられる前記口腔からの蛍光、反射光及び拡散光のうち少なくとも1つを検出する 歯用装置。 (11)前記(1)から(10)いずれか一項に記載の歯用装置であって、 前記歯肉の血流量を検出する血流量検出部 を更に具備する歯用装置。 (12)前記(1)から(11)いずれか一項に記載の歯用装置であって、 前記歯肉の酸素飽和度を検出する酸素飽和度計測部 を更に具備する歯用装置。 (13)前記(1)から(11)いずれか一項に記載の歯用装置であって、 前記歯牙や前記歯肉に空気を吹きかける空気吹きかけ部 を更に具備する歯用装置。 (14) 光感受性薬剤が投与された口腔の歯肉に前記光感受性薬剤に対する励起光を照射し、 前記歯肉表面における蛍光強度を検出し、 計算により求められた基底状態の前記光感受性薬剤の前記歯肉の深さ方向における分布の経時変化、計算により求められた前記励起光の前記深さ方向における強度分布の経時変化、及び、前記検出された前記歯肉表面の蛍光強度に基づいて、前記深さ方向における前記蛍光強度の経時変化を計算する 算出方法。 (15) 感染症に対する治療及び予防のうち少なくとも一方が行われる施術部位に照射するための光を発する光源部と、 前記光源部から照射された光に対して発せられる前記施術部位からの蛍光を検出するための光検出部と、 前記光検出部により検出された蛍光に基づき、前記蛍光の強度の経時変化を可視化するためのデータを出力する制御部と を具備する医療用装置。 (16)前記(15)に記載の医療用装置であって、 前記施術部位は、関節の滑膜、腹腔、総胆管、歯根及び唾液腺のうちの少なくともいずれか1つである 医療用装置。 (17)前記(15)又は前記(16)に記載の医療用装置であって、 前記蛍光強度の経時変化は前記施術部位における感染性微生物の殺菌経過を示す 医療用装置。 (18)前記(15)から前記(17)いずれか一項に記載の医療用装置であって、 前記施術部位には、前記光の照射により励起する光感受性薬剤が分布し、 前記制御部は、前記光の照射に対して発せられる前記光感受性薬剤からの蛍光の前記施術部位における強度の分布に基づき、前記データを出力する 医療用装置。 (19)前記(15)から前記(18)いずれか一項に記載の医療用装置であって、 前記施術部位の血流量を検出する血流量検出部 を更に具備する医療用装置。 (20) 感染症に対する治療及び予防のうちの少なくとも一方が行われる施術部位に光感受性薬剤を投与し、 前記施術部位に前記光感受性薬剤に対する励起光を照射し、 前記施術部位における蛍光強度を検出し、 前記光の照射に対して発せられる前記光感受性薬剤からの蛍光の前記施術部位における強度に基づいて、前記施術部位における前記蛍光強度の経時変化を計算する 算出方法。

本技術はこの実施形態にのみ限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において変更され得る。

1、1001…歯用装置 1A,1Aa、1B、1C…医療用装置 31、31A…ドップラー計測部 32、32A…酸素飽和度計測部 34…治療振動光照射プローブ(照射部) 34A…照射部 54、1054、54A,54Aa…制御・解析部 53…画像処理部 55、55A、34Aa、34C…光源部 56…光検出部 57…画像受信部 56A,56Aa…画像受信部(光検出部) 58…位置角度情報受信部 60…歯牙 70…歯肉 90…光感受性薬剤 91…光照射部 750、1031…空気吹き出し口

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