【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、レーザ光伝送管の破損を検出する装置及びその方法に関する。 【0002】 【従来の技術】現在、産業機器に限らず、多くの一般医療機器や歯科治療機器にレーザ光が利用されている。 これらの機器は、一般に、レーザ光の発生装置と、目的の部位にレーザ光を照射するための照射器具(例えば、ハンドピース)と、これら発生装置と照射器具とを接続し、発生装置から照射器具にレーザ光を導くための伝送路とを備えている。 この伝送路は一般にフレキシブルな中実ファイバが使用され、その周りが同様にフレキシブルな保護チューブで覆われており、任意の目的部位に又目的の角度からレーザ光を照射できるようにしてある。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかし、レーザ光伝送路をフレキシブルな中実ファイバで構成することは、伝送路に無理な力がかかる状態まで折り曲げられる可能性を含み、その場合には伝送管が破損することもあり得る。 そして、伝送路が破損すると、この破損部分からレーザ光が漏れて外側の保護チューブを焼損したり、レーザ光が正常に照射されなくなることもあり得る。 【0004】そこで、今日までにレーザ光伝送路の破損を検出する方法が数々検討されてきた。 例えば、レーザ光伝送路に導線を巻き付けておき、レーザ光伝送路が破損したときに漏れ出るレーザ光で導線を溶断して伝送管の破損を検出するもの(実公昭60−21046号)、 レーザ光伝送路に隣接してプラスチックファイバを設け、レーザ光伝送路から漏れ出たレーザ光がプラスチックファイバを溶かしたことを検出器で検出して伝送路の破損を検出するもの(特開昭60−60531号)、レーザ光伝送路の出力端近傍にホトダイオードを設け、伝送路が破損した場合のレーザ光の出力強度変化をホトダイオードで検出することで伝送路の破損を検出するもの(実公昭58−7365号)、レーザ光の出射端面に反射増加コーティングを施し、伝送路が破損した場合の出射端面からの戻り光の変化を検出することで伝送路の破損を検出するもの(特開昭56−40737号)がある。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明は、このような従来の技術と異なる方法でレーザ光伝送路の破損を検出する装置及び方法を提供するものである。 特に本発明においては、中空導波路の中空部を流れる流体を用いてレーザ光を導光するレーザ光伝送路の破損を検出するものである。 具体的に、本発明のレーザ光伝送管破損検出装置は、レーザ光が通過するための第1の空間を内包した伝送管と、上記伝送管を囲む第2の空間を内包した外装管と、上記第1の空間と第2の空間が流体的に連通していない非連通状態と上記第1の空間と第2の空間が流体的に連通した連通状態とを認識する検出装置とを備えている。 【0006】上記第1の空間と第2の空間との連通(非連通)状態は、上記第1の空間又は上記第2の空間における状態の変化から検出するのが好ましい。 【0007】上記検出装置により検出される状態の変化は、上記第1の空間又は上記第2の空間の圧力、上記第1の空間又は上記第2の空間を流れる流体の流量、上記第1の空間又は上記第2の空間に含まれる流体の成分、 上記第1の空間又は上記第2の空間の温度、の少なくともいずれか一つに関するものである。 【0008】上記検出装置は、上記第1の空間と上記第2の空間が連通状態にあることが検出されると、上記レーザ光発生装置によるレーザ光の発生を禁止する遮断装置を有するのが好ましい。 【0009】本発明の検出方法は、レーザ光伝送管の上記内部空間又は外部空間の状態(例えば、上記内部空間又は外部空間の圧力、内部空間又は外部空間を流れる流体の流量、内部空間又は外部空間に含まれる流体の成分、内部空間又は外部空間の温度、の少なくともいずれか一つに関する。)に変化があったことが検出されると上記伝送管が破損状態にあると認識する工程を含む。 【0010】 【発明の作用】このように構成したレーザ光伝送管破損検出装置及びその方法では、レーザ光を伝送するための伝送管が破損した場合、この伝送管に内包された第1の空間(内部空間)と、伝送管を囲む第2の空間(外部空間)とが流体的に連通する。 検出装置は、例えば、第1 の空間又は第2の空間の状態の変化(具体的には、第1 の空間又は第2の空間における圧力、流体流量、流体成分又は温度)から、第1の空間と第2の空間が連通状態になったことを認識する。 遮断装置を備えた態様では、 第1と第2の空間が連通状態になると、この遮断装置がレーザ光発生装置によるレーザ光の発生を禁止する。 【0011】 【発明の効果】本発明によれば、上述した従来のレーザ光伝送管破損検出装置と同様に、レーザ光伝送管の破損が検出できる。 【0012】 【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態を説明する。 図1は、レーザ光を利用した医療装置(歯科治療装置を含む。)10の外観を示す。 医療装置10は、概略、レーザユニット12と、 術者が手に持ってレーザ光を目的の位置に照射するためのハンドピース14と、レーザユニット12とハンドピース14とを繋ぐフレキシブルチューブ16を備えている。 レーザユニット12は、レーザ光を発生するためのレーザ発生装置18、フレキシブルチューブ16を介してハンドピース14に乾燥用空気と噴射用空気を供給するための空気ポンプ20及び噴射用水を供給するためのポンプ22を備えている。 【0013】図2は、レーザユニット12とフレキシブルチューブ16との接合部30の断面を示す。 接合部3 0は、4つの円筒状連結部材−第1の連結部材32、第2の連結部材34、第3の連結部材36及び第4の連結部材38−をこの順序で連結して構成されている。 これら連結部材32、34、36及び38の接続部分にはそれぞれO−リングが配置されており、気密性が確保されている。 【0014】第1の連結部材32の基端(レーザユニット12側)はレーザユニット12に接続されている。 また、第1の連結部材32の内面と、この第1の連結部材32の末端(ハンドピース14側)から挿入して接続された第2の連結部材34の外面にはそれぞれ複数の段部が形成され、これにより両者の接合面に、基端側から末端側に向かって、3つの環状通路−乾燥冷却用空気通路40、噴射用空気通路42及び破損検出用空気通路44 −が形成されている。 【0015】乾燥冷却用空気通路40に対応して、第1 の連結部材32には半径方向に伸びる通路46が形成され、その内側端部が乾燥冷却用空気通路40に接続し、 外側端部に接続金具48が接続されている。 【0016】加えて、乾燥冷却用空気通路40に対応して、第2の連結部材34には半径方向に伸びる複数の通路50が形成され、この通路50を介して第2連結部材34の基端側内側通路52が乾燥冷却用空気通路40と連通している。 この内側通路52の基端は、レーザ光の通過できる透光板54で閉鎖してある。 この透光板54 は、図示するように、押え部材56によって好適に固定されている。 【0017】噴射用空気通路42に対応して、第1の連結部材32にはまた半径方向に伸びる通路56が形成され、その内側端部が噴射用空気通路42に接続し、外側端部に接続金具58が接続されている。 また、第2の連結部材34にはその中心軸と平行に空気通路60が形成され、この空気通路60の基端が噴射用空気通路42に接続し、末端が第3及び第4の連結通路36,38の内側に形成された別の空気通路62に接続されている。 【0018】破損検出用空気通路44に対応して、第1 の連結部材32にはさらに半径方向に伸びる通路64が形成され、その内側端部が乾燥冷却用空気通路44に接続し、外側端部に接続金具66が接続されている。 【0019】第2の連結部材34の基端側内側通路52 の末端側端部を形成している小径部68には円筒状のフェルール70が挿入されている。 このフェルール70と小径部68との接合面はO−リングにより密封してある。 小径部68を挟んで基端側内側通路52の反対側には末端側内側通路72が形成されている。 この末端側内側通路72は、第2の連結部材34に形成した通路74 を介して、その半径方向外側に位置する第3の環状通路44と連通している。 【0020】第2の連結部材34の末端側には接続管7 6が接続されており、この接続管76の末端側に保護チューブ78が接続されている。 保護チューブ78の内側には、例えば中空導波路からなるレーザ光伝送管80が配置され、この伝送管80の基端がフェルール70の末端に接続されている。 これら保護チューブ78と伝送管80はフレキシブルチューブ16を介してハンドピース14の内部に伸びている。 保護チューブ78の末端は、 図2(b)に示すように、伝送管80に外装したリング状パッキン82で閉鎖されている。 また、パッキン82 と伝送管80との接触面はO−リングで密封されている。 なお、このような封止構造は、フレキシブルチューブ16を曲げたときでも、伝送管80に対する保護チューブ78の軸方向の相対的移動を許容するので、これら伝送管80や保護チューブ78に無理な力がかからないという利点がある。 【0021】第3の連結部材36には、その内側と外側を連通する噴射用水通路84が形成され、この噴射用水通路84の外側端部と内側端部にそれぞれ接続金具8 6、88が接続されている。 内側の接続金具88には噴射用水供給管90が接続され、この噴射用水供給管90 は、伝送管80等と同様に、フレキシブルチューブ16 を介してハンドピース14の内部に伸びている。 【0022】第4の連結部材38の内側には、その内径とほぼ同一の外径を有する接続リング92が内装されており、この接続リング92の外面と第4の連結部材38 の外面との間が、O−リングによって密封されている。 接続リング92はまた、末端側に小径のチューブ接続部94を備えており、このチューブ接続部94にフレキシブルチューブ16の基端が接続され、これにより接合部30の空気通路62とフレキシブルチューブ16の内部通路96が連通している。 【0023】図3は乾燥冷却用空気、噴射用空気及び噴射用水の配管系統図で、接続金具48は配管100を介して空気ポンプ20に接続されており、この配管100 にはポンプ20から送り出された空気を除湿して乾燥するためのメンブレンドライヤ102と流量調整弁104 が設けてある。 接続金具58は配管106を介して空気ポンプ20に接続されており、この配管106にはオン・オフ制御弁108と流量調整弁110が設けてある。 接続金具66には配管112が接続され、この配管11 2には流量検出器114が設けてある。 流量検出器11 4はまた、レーザ発生装置18を遮断するためのインターロック116が接続されている。 接続金具86には配管118を介して水ポンプ22に接続されており、この配管118には逆止弁120が設けてある。 なお、この逆止弁120は、ハンドピース14の先端にある水の噴射口と噴射用空気噴射口が管路途中で空気圧に押されてブロックされた場合でも、噴射用空気圧により水が逆流するのを防止するものである。 【0024】このように構成された医療装置10では、 図1、2に示すように、レーザ発生装置18から送り出されたレーザ光は、透光板54、通路52を介して伝送管80に入り、この伝送管80を通じてハンドピース1 4に伝送され、必要に応じてハンドピース14の先端から出射されて目的の部位に照射される。 【0025】図3に示すように、乾燥冷却用空気は空気ポンプ20から配管100に送り出され、メンブレンドライヤ102で除湿乾燥され、流量調整弁104で所定流量に調整された後、接続金具48に供給される。 図2 に示すように、接続金具48を通過した乾燥冷却用空気は、通路46、40、50及び52を介して伝送管80 に入り、この伝送管を通じてハンドピース14の所定部位に供給され、これによりレーザ光の透過による損失で温度上昇した部位を冷却し乾燥する。 【0026】再び図3に戻り、噴射用空気は、オン・オフ制御弁108の開放時、空気ポンプ20から配管10 0に送り出され、流量調整弁110で所定流量に調整されて、接続金具58に供給される。 図2に示すように、 接続金具58を通過した噴射用空気は、通路57、4 2、60、62、またフレキシブルチューブ16の内部通路96を通り、さらにハンドピース14内に形成されている通路(図示せず)を介してその先端から噴射される。 【0027】再び図3に戻り、噴射用水は、水ポンプ2 2から配管118に送り出され、逆止弁120を介して接続金具86に供給される。 図2に示すように、接続金具86を通過した噴射用水は、通路84、接続金具8 8、さらに噴射用水供給管90を通り、ハンドピース1 4内に形成されている通路(図示せず)を介してその先端から噴射用空気と共にミストとなって噴射される。 【0028】フレキシブルチューブ16が局部的に急角度で曲げられたり、ハンドピース14に無理に引っ張ったりすることにより、図2(c)に示すように、伝送管80が損傷してそこに亀裂を生じた場合、伝送管80の内側の空間(第1の空間)122と、伝送管80の外側で保護チューブ78の内側の空間(第2の空間)124 とが連通する。 これにより、図2(a)に示すように、 伝送管80内の空間122を流れている乾燥冷却用空気が外側の空間124に流出する。 流出した乾燥冷却用空気はさらに通路72、74、44、接続金具66を介して、図3に示す配管112と流量センサ114を通り、 大気に放出される。 そして、流量センサ114により空気の流れが検出されると、インターロック116はレーザ発生装置18に禁止信号を送り、以後のレーザ光の出射を禁止する。 【0029】このように、本発明の医療装置10は、伝送管80が破損した場合にレーザ光の出射を禁止するので、伝送管80の破損後も継続してレーザ光が出射され、そのために保護チューブ78、フレキシブルチューブ16等を焼損するということが無いし、焼損した個所からレーザ光が漏れて人体に危険が及ぶこともない。 【0030】なお、上記実施形態では、第2の連結部材34の内部にフェルール70と接続管76とを通路72 を介して分離して配置したが、これらフェルール70と接続管76を一つの部材で一体的に構成し、この部材の中に空間124と通路74とを連結する通路を形成してもよい。 【0031】また、上記実施形態では、伝送管80の周りを保護チューブ78と接続管76で囲うことにより、 保護チューブ78内の空間を第3及び第4の連結部材3 6,38の内側に形成されている空間62を分離したが、この空間62を本発明における第2の空間として利用してもよい。 【0032】この場合、図4に示すように、噴射用空気の通路60の末端側に接続管130を接続すると共に、 この接続管130の末端側に噴射用空気供給管132を接続する。 また、空間62の末端側を閉鎖するために、 例えば、ハンドピース14には、空間62に連通した空間140の末端側を封止するために、伝送管80、噴射用水供給管90及び噴射用空気供給管132がそれぞれ挿入できる通路142、144及び146を備えた封止部148を設け、これら通路142、144及び146 に伝送管80、噴射用水供給管90及び噴射用空気供給管132をそれぞれ挿入すると共に、それらの隙間を接着剤やOリング等で封止する。 【0033】これにより、伝送管80が破損して亀裂を生じた場合、この伝送管80から流出した乾燥冷却用空気は通路62、72、74、44、接続金具66を介して、図3に示す配管112と流量センサ114を通り、 大気に放出される。 そして、流量センサ114により空気の流れが検出されると、インターロック116がレーザ発生装置18によるレーザ光の出射を禁止する。 【0034】なお、本実施形態と第1の実施形態を比較した場合に、第1の実施形態ではフレキシブルチューブ16の内部に噴射用空気の供給管を配置する必要がないので、その分構成が簡単になるという利点がある。 【0035】これまでに説明した実施形態では、伝送管80の内部に空気を流し、この伝送管80が破損した場合に外部空間に流出する空気の流れを検出することで破損を検出したが、本発明はこれに限るものでなく、伝送管80が破損した場合にその内部空間又は外部空間における状態の変化を検知するものはすべて本発明の範囲に含まれる。 【0036】例えば、伝送管の内部空間又は外部空間のいずれか一方を加圧又は減圧しておき、伝送管が破損したときに内部空間又は外部空間に生じる圧力変化を検出することで伝送管の破損を検出してもよい。 また、伝送管の内部空間に噴射用空気を流すことにより伝送管内部や出光端、入光端の冷却が行える他、噴射用空気を暖める効果も合わせもたせることができる。 【0037】また、伝送管の内部空間又は外部空間に特定の化学成分(人体に悪影響を及ぼさない成分であることが必要である。)を含む気体を流すか又は封じ込めておき、伝送管が破損した場合に他方の空間に流れ込む当該化学成分を適当な検出器で検出することで伝送管の破損を検出してもよい。 【0038】さらに、伝送管の内部空間と外部空間に異なる温度の雰囲気を流すか又は封じ込めておき、伝送管が破損した場合に生じる内部空間又は外部空間の温度変化を温度検出器で検出することで伝送管の破損を検出してもよい。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明に係るレーザ光伝送管の破損検出装置を備えた医療装置の全体斜視図。 【図2】 (a)本発明に係るレーザ光伝送管破損検出装置の構成を示す拡大断面図、(b)保護チューブの末端封止構造を示す拡大断面図及び(c)伝送管が破損した状態を示す拡大断面図。 【図3】 乾燥冷却用空気、噴射用空気、噴射用水などを供給する配管の系統図。 【図4】 第2の実施形態に係るレーザ光伝送管破損検出装置の構成を示す拡大断面図。 【図5】 図4に示す第2の実施形態において、伝送管を囲む空間の末端側の封止構造を示すハンドピースの部分拡大断面図。 【符号の説明】 10…医療装置、14…ハンドピース、16…フレキシブルチューブ、18…レーザ発生装置、20…空気ポンプ、22…水ポンプ、78…保護チューブ、80…レーザ光伝送管、122…第1の空間、114…流量センサ、124…第2の空間。 |