【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、準位相整合パラメトリック・チャープパルス増幅装置の技術分野に属する。 より詳しくは、ダイオード、ファイバーまたは固体レーザーなどの小型で低密度長パルス励起源からの光パルスを、パラメトリック光増幅媒体の使用により、高エネルギー超短光パルスに変換する変換技術の技術分野に属する。 【0002】 【従来の技術】本明細書では、「高エネルギーパルス」 との用語は、超短光パルス発振器から直接得られるものよりも高いエネルギーレベルをもつ光パルスを指すものとする。 通常、小型のモード同期発振器は、10nJレベルの最大エネルギーをもつパルスを生成する。 それゆえ、ここでは10nJを超えるエネルギーをもつパルスをもって高エネルギーパルスと定義する。 【0003】超短パルスのレーザーおよび増幅器は、結局のところ、フェムト秒[10 -15 s]からピコ秒[1 0 -12 s]の領域での持続時間をもつ(光学的な波長範囲での)短光パルスを生成するレーザーデバイスの特定のクラスに属する。 このようなパルス(ないしパルス列)の潜在的な利用範囲は、同パルスのもつ特性によって定まる。 同特性には、短い持続時間、高いピークパワー、および高い空間的時間的コヒーレンスが含まれる。 【0004】ダイオードレーザーは、次の二つの独特な技術的長所を有する小型のレーザー発振源である。 第1 に、ダイオードレーザーは、電気エネルギーを光学的エネルギーに直接かつ高効率で変換することができる。 第2に、ダイオードレーザーは、小さな寸法(普通は1m m未満)のモノシリックな(=固形一体物である)デバイスである。 したがって、サイズ、ロバストネス(不感性)、信頼性、寿命、生産性およびコストなどの特性では、ダイオードレーザーの方が他のレーザー源(ガスレーザー、色素レーザーまたは固体レーザーなど)よりも優れている。 これらの決定的に重要な特性が優れていることにより、ダイオードレーザーは、商業的に成立するレーザー源を開発するためには、理想的なレーザー源である。 しかしながら、高エネルギーの超短パルスを生成する上で、ダイオードレーザーの直接的な使用は限定されている。 この限定は特に、シングルモードのレーザーダイオードの断面積が小さいことによって定まる。 ダイオードへの破壊的なダメージと、超短パルスの大きな非線形歪みとが起こるので、得られるエネルギーのピーク密度は制限される。 そのうえ、断面積が小さいので、保存されるエネルギーや飽和フルーエンシーもまた、制限される。 レーザーダイオードから直接得られる最大エネルギーは、約100pJまでである。 100pJというのは、特定の意味のある超短パルスのエネルギーとしての最低限度である。 マルチプル・トランスバーサル・モード構造やマルチプル・ストライプ構造に頼れば、レーザーダイオードの有効断面積を増大させることが可能であるとは言っても、このようなデバイスによっては、空間的および時間的なコヒーレンスの要求に応えられないので、超短パルスを直接発生させることができない。 【0005】それゆえ、レーザーダイオードを、他のクラスの超短パルスレーザーの発生装置および増幅装置のための励起源として使用せざるを得ない。 希土類ドープ・ファイバーレーザーは、このようなクラスのデバイスの一つであり、小型であるという点で半導体利得媒体に最も近いものである。 これは主に、上記ファイバーの断面寸法が小さいからである。 ファイバー構造の直径は、 通常、1mm未満である。 半導体レーザーとは異なり、 ファイバーレーザーは数メートルの長さをもちうるのであるが、ファイバーレーザーは断面寸法が小さいので巻くことにより小さな空間に収まる。 効果の面では、ファイバーレーザーは一次元構造であり、ファイバーレーザーの横断方向の光学的フィールド(電場および磁場) は、長さ方向のどの位置でも同じである。 希土類ドープファイバーは、ダイオードレーザーによって励起(ポンピング)されうる。 たとえば、既知のErドープ・ファイバーレーザー装置は、1480nmまたは980nm で発光する既存の高出力レーザーダイオードによって励起されている。 【0006】本明細書中で参照する「広域ダイオード励起1Wフェムト秒ファイバー装置」( "Broad-area Dio de-pumped 1 W Femtosecond Fiber System", A.Galvana uskas, ME Ferman, D. Harter, JD Minelly, G. G. Vienne, JE Caplan, Conference on Lasers and Electro-Optics, vol. 9 1996 OSA Technical DigestSe ries / Optical Society of America, Washngton, DC, 1996, pp.495 )に報告されているように、ファイバー・クラッディング−ポンピング技術とチャープパルス増幅とにより、高出力のマルチモード・ダイオード励起光は、ハイパワー超短パルス出力に効率的に変換される。 一般的に言って、超短パルスの非線形歪みや光学コンポーネントまたは利得媒体への光学的損傷を起こすことなしに、得られうる最大のエネルギーを引き出すためには、チャープパルス増幅が必要である。 通常は、飽和エネルギーと等価なエネルギーをもつ超短パルスのピーク密度は、媒体の飽和フルーエンシーよりも高い。 【0007】しかしながら、時間的空間的コヒーレンスを保ち、超短光パルスを保つためには、ファイバー出力はシングルモードでなければならない。 それゆえ、ファイバーのコアサイズが制限を受け、その結果、えられうる最大パルスエネルギーおよびピーク密度も制限を受ける。 その理由は、シングルモード半導体レーザーの場合と同様である。 それでも、シングルモードファイバーによって得られうる最大のエネルギーは、半導体のよって得られるそれよりも本質的に大きい。 飽和周波数限定された最大エネルギーは、ある種のダイオード励起されたエルビウムファイバー・チャープパルス増幅装置によって、すでに実験的に得られている。 同装置によれば、増幅および再圧縮後に、10μJを超えるパルスエネルギーが得られている。 【0008】しかし、マイクロマシーニングやオプティカル・サージャリー(レーザー手術)、その他などの実際上の多様な応用のためには、(通常は1〜10mJの範囲の)もっとずっと高い超短パルスエネルギーが要求される。 このようなパルスエネルギーを得るためには、 従来からバルク量子増幅器が使用されている。 バルク媒体の中では、光ファイバーや半導体構造の中のシングルモードの誘導されたビームに比べて、ビームサイズが十分に大きいので、高いピーク密度の問題は緩和される。 さらに、ある種のソリッドステートの利得媒体は、小型のデバイスの構成を可能にする特性を有している。 しかしながら、量子増幅器に共通する特性によって定まる数々の制約があるので、ハイパワーの超短パルスの直接増幅に使用するコンパクトなソリッドステート設計を実行するのは実際上困難である。 このことは、量子増幅器に共通する一般的な特性について考察すれば明らかである。 【0009】量子増幅器は、光学遷移状態の高位のレベルに励起エネルギーを蓄積しておき、光学飽和発光の動作を通して信号を送ることによって蓄積された励起エネルギーを放出する。 シングルパスまたはマルチパスの増幅器および再生増幅器を含む既知のソリッドステートの超短パルス増幅装置は、1μJ〜1Jの範囲内でパルスエネルギーを発生させることができる。 これらの装置には、チャープパルス増幅が必要である。 【0010】しかしながら、バルクなレーザー装置および増幅装置には、次のような気を付けるべき制限がある。 第1に、ソリッドステートのレーザー装置および増幅装置は、半導体によるものやファイバーによるものよりもずっと大きくかつずっと高価である。 このサイズおよびコストの問題は、重くてかさばり扱いにくい励起源、すなわちハイパワーのアルゴンレーザーまたはアルゴンランプが必要とされることから起こる。 このような装置には、ダイオードによる励起はまず無理である。 特定の利得媒体の固定された吸収帯の中で量子増幅器を励起することが必要である。 多くの媒体にとっては、このことによって、ダイオードレーザー励起は除外されるか、その使用を制限されることになる。 なぜならば、信頼性があるハイパワーな励起ダイオードは、今のところほんの2〜3種類程度の波長でしか利用可能でないからである。 たとえば、超短パルスを生成するための最も普及したソリッドステート媒体はチタン:サファイアであるが、これをダイオードレーザーで直接励起することはできない。 【0011】第2に、量子増幅器の利得帯域幅は、特定の利得媒体の中での光学遷移の幅によって定まる制限を受ける。 すなわち、利得帯域幅が狭い幅しかないので、 超短パルスの増幅に使用される物質はかなり制限を受ける。 第3に、励起された光学遷移の寿命と誘導放射断面積などのような、この種の利得媒体に固有の特性により、所定の量子増幅器から引き出しうる最大の平均パワーおよびパルスエネルギーは制限されてしまう。 【0012】第4に、ハイパワーレベルでは、バルク増幅器は温度変化の影響を受けやすく、利得媒体の光学特性が変わってしまう。 それゆえ、このようなデバイスの作用は、環境変化に対して敏感になってしまう。 光学的増幅を達成するための代替アプローチとしては、非線形材料への光学的パラメトリック増幅(OPA:optical parametric amplification)を採用することである。 O PAアプローチによれば、励起エネルギーは、非線形材料内に蓄積されることなく、励起源(ポンプ)から直接的に信号へと変換される。 この際、非線形材料はこの過程を取り持つだけに過ぎない。 (自己位相変調または相互位相変調に応じた)三次の非線形性よりも、二次の非線形性の方がずっと強いので、位相歪みを通じたパルスの歪みは、一般に避けることができる。 得られ得る最大エネルギーは、所定の材料の損傷閾値(ダメージ・スレショルド)によってのみ制限される。 要求される励起波長と利用可能な増幅帯域幅とは、既存の複屈折位相整合における干渉波長での屈折率楕円体の方向および大きさなど、所定の結晶の基礎的な光学特性によって決定される。 これらの基礎的な光学特性は、利用可能な結晶の向きをも定めるとともに、その結果、利用可能な非線形性の大きさをも決定する。 実際上は、このことにより、使用可能な非線形材料に到達可能な励起波長および励起帯域幅が制限され、それゆえ通常は、このような増幅器を励起するには高いエネルギーが必要とされる。 このようないくつもの制限の結果として、現時点でのパラメトリックな干渉は、通常、光信号の波長を変換する手段として使用されており、エネルギー増幅の手段としては使用されていない。 【0013】本明細書で参照する「BBO結晶中でのチャープされ伸張されたパルスのパラメトリック増幅による大出力フェムト秒パルスの生成」("Powerful Femtos econd Pulse generation Chirped and Stretched Pulse Parametric Amplificationin BBO Cristals", A. Dubi etis, G. Jonusauskas, and A. Piskarskas, Opt. Com m. 88, 473(1992))には、在来の量子増幅器の代わりにパラメトリック光学増幅を使用して、高エネルギーの超短光パルスが得られるかもしれない旨が示唆されている。 この記事によれば、励起源から信号に至るまでの効率的なエネルギー変換を行うためには、超短光パルスは、励起パルス(ポンプパルス)の持続時間に相当するように引き伸ばされなければならない。 この業績では、 (約5psの)短い引き伸ばされた励起パルスを使用して、波長0.53μmでの3mJの励起パルスから波長1.06μmでの100μJの信号へと、1:30の変換をして見せている。 【0014】しかしながら、上記文献での業績では、低い輝度から高い輝度へのエネルギー変換については分からず、また、ダイオード、ファイバーまたはマイクロチップのレーザーのような小型の励起源を使用して、高エネルギーの超短パルスを生成する小型発生源をどうやって作るべきかについても分からない。 (当面するであろう問題の一つは、ナノ秒程度のもっと長い励起パルスをもって同程度の変換効率が得られるかどうかということであり、ジュール程度のエネルギーが得られるように、 約100倍の倍率でパルスエネルギーを増大させなければならなくなるかもしれないということである。 現況では、小型パルス源からこんなに高いエネルギーを得ることは困難である。 )同様に、この業績では、超短パルス増幅器の励起帯域幅および利得帯域幅に関する限界を取り去ることはできない。 そのうえこの業績では、励起パルスと増幅されたパルスとの両方が、同一のレーザー源からのものである。 すなわち、長パルス励起源と短パルス源との同期方法については、示唆されていない。 モード同期源からの超短光パルスに対して、在来型のQスイッチ励起用レーザーからのパルスを同期させることは、 なかなかの難問である。 【0015】 【発明が解決しようとする課題】本発明の主たる課題は、高エネルギーの超短光パルスの小型増幅器を提供することである。 本発明のさらなる課題は、励起波長と増幅帯域幅との制限を受けることなしに超短パルス増幅器を提供することである。 【0016】本発明の他の課題は、超短パルス増幅のためのパラメトリック光学増幅装置を効率的に励起するために、ダイオードレーザー、ファイバーレーザーまたは固体レーザーなどの連続波またはパルスの小型レーザー源を実用化することである。 本発明のさらなる課題は、 回折限界のシングルモードビームをパラメトリックに増幅するために、広域ダイオードまたはダイオード・アレイ、マルチモードのファイバーレーザーおよび増幅器、 マイクロチップ・レーザーアレイまたはその他のマルチモード固体レーザーなど、空間的にマルチモードの小型レーザー源を実用化することである。 【0017】本発明のもう一つの課題は、励起光パルスと引き伸ばされた超短パルスとを、パラメトリック利得媒体の中で時間的に重ね合わせるために、両パルスのタイミングを適正に取るための方法および手段を提供することである。 【0018】 【課題を解決するための手段】本発明の一面によれば、 超短パルスのパラメトリック・チャープパルス増幅(P CPA)のためのパラメトリックな利得媒体として、準位相整合(QPM:quasi-phase-matched )非線形材料が使用される。 QPM材料の位相整合特性は、製造過程で仕立て上げることができる。 その結果、励起波長と達成可能な利得帯域幅とに関する制限を取り払うことが本質的に可能になる。 そればかりではなく、位相整合特性を仕立て上げることができるということは、有利な結晶形状を選択することを可能にする。 それゆえ、所定の光学材料の中で得られる最高の非線形係数の利用と、空間的なビームのウォークオフの除去とにより、干渉長を増大させることが可能になる。 その結果、QPMパラメトリック増幅器の中で高い変換効率と高い利得とを達成するために必要とされる励起エネルギーを、在来型のパラメトリック増幅器と比較して十分に低減することができる。 通常は、このことにより、比較的長いマルチモードの励起パルスを効率的に利用することが可能になる。 ここで、比較的長いマルチモードの励起パルスは、各種の比較的単純で小型のダイオード励起されたレーザー源を使用して得られる。 Dubietisらによる上記文献に記載されている在来型の非線形結晶を使用しては、このようなことは不可能である。 【0019】本発明のより広い面によれば、シングルモードまたはマルチモードのレーザーダイオードの連続波またはパルスの出力を、増幅された超短光パルスのエネルギーに変換する一般的な方法が開示される。 一般的に、この変換は、次の二つのステップによって実行される。 第1に、ダイオードレーザーの出力が、直接的にまたは他のレーザー媒体を使用して、伸張された信号パルスの持続時間と整合する適正な持続時間の高エネルギー励起パルスへと変換される。 伸張された信号パルスは、 超短パルスからパルス伸張器を用いて生成される。 第2 に、伸張された信号は、励起信号パルスによって励起される非線形結晶の中で、パラメトリックに増幅される。 所定の条件下においては、パラメトリック増幅器は、たとえ空間的にマルチモードである励起ビームに対してであっても、回折限界のシングルモードビームの歪みのない増幅を可能にする。 増幅された信号は、最後にパルス圧縮器を使用して再圧縮され、持続時間が極めて短い超短パルスに変換される。 【0020】本発明はさらに、パラメトリック増幅器を励起するための小型装置の設計をも含んでいる。 同装置には、マルチモードコア・ファイバーやマイクロチップ固体レーザーおよび同レーザーアレイが含まれている。 【0021】 【発明の実施の形態】図1は、本発明の光パルス増幅装置の実施の形態における一般的な構成を例示するブロック図である。 図1に示すように、この増幅装置は、高エネルギーパルス源120を励起(ポンピング)するための励起ダイオード110をもつ励起源100を含んでいる。 信号源130は、超短パルスを生成する発振器14 0と、パルス伸張器150とを含んでいる。 ビームスプリッター160は、高エネルギー励起パルスと伸張された超短パルスとを結合させるために使用されている。 結合された信号はパラメトリック増幅器170に導入され、ここで増幅された信号はパルス圧縮器180に導入される。 本装置を構成する他の構成要素としては、効率的な非線形干渉に必要な偏光状態を設定する複数の波長板105と、適正な合焦点光学装置106とがある。 また、トリガー電子回路190が、励起パルスと超短パルスとを同期させるために装置されている。 励起信号パルスと伸張された信号パルスとは、パラメトリック増幅器170の非線形結晶の中で、時間的空間的に重ね合わされる。 【0022】パラメトリック増幅を利用したことにより、次のようないくつかの重要な利点が得られる。 第1 に、マルチモードの長いパルスの励起源の開発が可能になる。 通常、このような励起源は、あまり複雑ではないにもかかわらず、直接的な超短パルスの生成および増幅のために、小型の励起源よりも十分に高いエネルギーを生成することができる。 【0023】第2に、準位相整合非線形材料の使用により、量子増幅器には固有の問題である利得帯域幅および励起波長に関する制限が、完全に取り除かれる。 すなわち、チャープ周期準位相整合バルク材料の使用により、 いかなる要求にも応じて適正な利得帯域幅を設定することができる。 また、励起波長は、パラメトリック増幅器の適正な準位相整合周期の設定により、選定される。 それが適当な場合には、二次高調波の生成により、励起波長を増幅された信号の波長よりも短く変換することも可能である。 【0024】第3に、パラメトリック増幅装置は、本来、簡素でありかつさらに小型である。 単段(シングルステージ)でのパラメトリック増幅によれば、約90d Bまでの高利得が得られる(利得の限界は、光学的パラメトリック生成(OPD:optical parametric generat ion )の閾値によってのみ制限される)。 したがって、 どんなファイバー、レーザーダイオードまたはソリッドステート発振器からでも得られる最小エネルギーである約10pJからスタートしても、単段ないし二段の増幅段を使用するだけで、1mJ〜1Jの範囲の高パルスエネルギーが達成される。 その結果、再生増幅やマルチパス増幅は必要でなくなる。 【0025】このような増幅装置を実用化するためには、パラメトリックゲインと、励起源からパラメトリック増幅器内での信号への最大エネルギー変換率とは、十分に高く(後者についてはおおよそ10〜50%で)なければならない。 この変換率は、励起源のピーク密度と非線形結晶の特性とによって定まる。 複屈折位相整合結晶を使用する場合、このように高い変換率を達成するためには、非常に高いピーク密度が要求される。 このような高いピーク密度は、小型のダイオード励起源からのマルチモードまたはシングルモードの持続時間がナノ秒台の励起パルス(100mJを超える程度)によって実用上実現可能なピーク密度よりも、ずっと高い。 本発明によれば、周期性ポーリング・ニオブ酸リチウム=LiN bO 3 (PPLN)などの新規な準位相整合(QPM) 材料を使用して、小型のダイオード励起源からの低密度かつ低輝度のナノ秒出力を、伸張された超短パルスの効率的なパラメトリック増幅のために、有効に使用することができる。 【0026】PPLNおよび関連材料とそれらの特性とについてさらに考察するためには、次の参考文献を参照されたい。 (1)米国特許出願の第08/763,381号および第08/789,995号(いずれも本願出願人による先願であり、位相増幅装置でのPPLN結晶の使用について開示) (2)メイヤーズ、他「バルクPPLN中での準位相整合パラメトリック光学発振器」(Myers et al., "Quasi -phase-matched optical parametric oscillators in b ulk periodically poled lithium niobate", J. Opt. S oc. Am. B, 22, 2102 (1995)) 非線形効果を除去するために超短パルスが引き伸ばされる伝統的なチャープパルス増幅機構とは対照的に、本発明のアプローチは、長い励起パルスから最大引き出し効率を得ることだけを目的として、超短パルスの引き伸ばしを必要としている。 通常、使用される励起パルスおよび伸張パルスが長ければ長いほど、与えられた励起パルスのピーク密度に対して増幅されたパルスのエネルギーは、より高くなる。 使用可能な励起パルスの最大持続時間は、非線形結晶の損傷閾値(ダメージ・スレショルド)と、増幅された種パルス(シードパルス)を再圧縮しうる最大パルス幅とによって定まる。 たとえば、励起パルスのピーク密度をPPLNの損傷閾値より低く保つためには、持続時間が500ピコ秒未満の励起パルスを使用することが望ましい。 また、現存するパルス圧縮器およびパルス伸張器の設計では、伸張パルスの持続時間はナノ秒のスケールに制約される。 それゆえ、利用可能な励起パルスの持続時間は、100ピコ秒から2〜3ナノ秒までの範囲に限定される。 このようなパルスは、レーザーダイオードに励起されるNd:YAG装置またはアレキサンドライト装置、小型のレーザーダイオードに励起されるマイクロレーザー装置、またはファイバー増幅装置などのような、受動Qスイッチまたは能動Qスイッチまたはマスター発振器パワー増幅器(MOPA:Ma ster-Oscillator-Power-Amplifier )の多種多様の装置から得ることができる。 提供されうる励起エネルギーは、1μJから1J超までの範囲にあり、同範囲で増幅された信号パルスに使用できる。 【0027】発振器140には、モード同期レーザー、 ゲインスイッチド・レーザーまたは高速周波数変調半導体レーザーを使用することができる。 後者の場合には、 上記発振器は直接的に伸張パルスを生成することができるので、パルス伸張器を省略することが可能になる。 パルス伸張器150およびパルス圧縮器180には、既存技術で知られている多種多様なデバイスを適用することができる。 たとえば、回折格子に基づくデバイスや、ハイブリッド・コンビネーション(たとえば、パルス伸張器としてのファイバーまたはファイバー格子と、パルス圧縮器としての回折格子対となど)を使用することができる。 しかしながら通常、現存する実用化されたパルス伸張器からの伸張パルスの最大持続時間は、おおよそナノ秒の範囲に限定されている。 パラメトリック増幅の効率を最大化し、結晶の損傷などのような有害な影響を最小限に抑制するためには、励起パルスの持続時間を信号パルスの持続時間と整合させるべきである。 したがって、本発明においては、励起パルスの持続時間の最も適正な値は、ナノ秒およびサブナノ秒の範囲にある。 【0028】本発明の重要な点の一つは、この増幅機構の実際的な利点は、使用される励起源の有利な特性によって専ら定まるという点である。 なぜならば、準位相整合パラメトリック媒体によれば、必要な励起エネルギーを低減することができ、パルスの長さを増すことができ、マルチモードの励起ビームを使用することができ、 多種多様な実用的な励起源の適用が可能になるからである。 それゆえ本発明は、以下のように異なったタイプの励起源を使用する所定の複数の実施例を含むものである。 【0029】 【実施例】 [実施例1]本発明の代表的な実施例としての実施例1 は、図2に示すように、マルチファイバーに基づくパラメトリック・チャープパルス増幅装置(PCPA:para metric chirped pulse amplification system)である。 【0030】パラメトリック・チャープパルス増幅装置中にファイバー利得媒体を使用することは、次のようなことを考慮してのことである。 前述の考察のように、ファイバー利得媒体の小さな断面寸法は、パルスエネルギーの最大値に限界を生じる。 信号がシングルモードである(ファイバーの出力側で空間的に正規分布している) ためには、ファイバーコアの断面の直径の最大値は約1 5μmである。 シングルモードのコアの直径をもっと大きくすると、コアとクラッディングとの間の屈折率の差を非現実的なほど小さくしなくてはならなくなるであろうし、受け入れられないほど大きな曲げ損失を生じるようになるであろう。 エルビウムドープ・ファイバー利得媒体においては、この制約によって得られるパルスエネルギーの最大値は、おおよそ100μJのレベルに限定される。 【0031】マルチモードのファイバー増幅器を採用すると、十分に大きな直径のコアを使用することが可能である。 30μm〜100μmの直径のコアをもつマルチモード増幅器では、100μJから10mJまでの範囲のパルスエネルギーを達成することが可能である。 しかしながら、モード間の分散が(1〜10ps/m程度に)大きくなるので、フェムト秒パルスの在来通りのチャープパルス増幅へのマルチモード・ファイバー増幅器の使用は、実際上成り立たない。 モード間の分散が大きいと、再圧縮されたパルスの時間的な歪みがひどくなるからである。 マルチモード・ファイバーを使用した超短パルスの直接的な生成には、その他にも致命的な短所がある。 それは、マルチモード・ビームの非正規プロフィールであって、本質的にビームの輝度および空間的なコヒーレンスが低減される。 【0032】直接的なチャープパルス増幅を励起するのではなく、むしろ伸張された超短パルスのパラメトリック増幅器を励起するために、マルチモード・ファイバーを使用すれば、前述のようなマルチモード・ファイバー増幅器の制約を乗り越えることができる。 本実施例のマルチモード・ファイバーに基づくパラメトリック・チャープパルス増幅(PCPA)装置は、図2に示すように、伸張された超短パルスを提供する信号源200と、 長い高エネルギーの励起パルスを提供する励起源210 と、パラメトリック増幅器220と、パルス圧縮器23 0と、励起信号と増幅された信号とを同期させるトリガー電子回路240とを含んでいる。 【0033】信号源200は、モード同期発振器202 (たとえばモード同期ファイバー発振器)と、パルス伸張器204とを有する。 あるいはこの信号源は、広帯域の伸張パルスを直接的に生成するファーストチューンド・レーザーダイオード(図略)から構成されていても良い。 前述のように、多種多様な伸張器と圧縮器との組み合わせが可能である。 【0034】励起源210は、レーザーダイオード21 6により種(シード)パルスを供給されポンプダイオード218によって励起される多段式またはマルチパスのファイバー増幅器212,214を有する。 たとえば標準的な電子パルス発生器であるトリガー電子回路240 を使用して種ダイオード216が励起され、種光パルスの持続時間は、100psから始まっていくらでも長く仕立て上げることができる。 マスター発振器パワーアンプ機構(MOPA)によれば、要求に応じていかなる反復率のいかなる長さの励起パルスでも生成することができる。 重要なことには、この機構によれば、ジッターが無視できるほど小さい伸張された超短パルスに、励起パルスを同期させることができる。 たとえば、ナノ秒台の電子パルス発生器は、高速光ダイオードを通じて超短パルス列によって誘発(トリガー)されることができる。 生成された励起パルスのタイミング・ジッターは、伸張されたパルスを考慮すると30ps未満に過ぎなくすることができ、この値は励起パルスの持続時間に比べるとごくわずかにしか過ぎない。 【0035】マルチパスまたは多段のファイバー増幅器は、通常約10pJのレーザーダイオード216の出力から始めて、mJオーダーのパルスに達するための90 dBにも及ぶ利得(ゲイン)を得るために必要である。 エルビウムドープ・ファイバーにおいて、通常のシングルパスの利得は20〜30dBである。 したがって、所望のエネルギーレベルに達するには、4〜5段の増幅段が必要である。 直列に接続された複数の線形増幅器を使用した多段増幅器の概念的を、図3に例示する。 増幅された自然放出(ASE:amplified spontaneous emissi on)による各増幅段間での相互飽和を防ぐためには、音響光学変調器(AOM:acousto-opticmodurator )3 00が必要である。 全体のチェーンは、マルチモード・ ファイバーで構成可能である。 あるいは、シングルモード・ファイバー増幅器をパルスエネルギーがまだ低い初段に使用し、マルチモード・ファイバー増幅器を最後の方の増幅段にだけ使用しても良い。 最終段には、ファイバーコア内の非線形効果とファイバーの長さとを最小限に抑えるために、濃くドーピングされたファイバーを使用すると有利である。 非線形効果は、増幅器の効率を低下させ、励起パルスのスペクトルを拡げてしまう。 このスペクトルの拡がりは、非線形結晶を励起する上で好ましくない。 【0036】図3に示すようなファイバー増幅器を直列に連結する「線形」なやり方は、経済的ではなく、励起源の価格およびサイズは、増幅段の数に比例して増大する。 もっと有利な代替案は、図4に示すように、マルチパス配置を使用することである。 この場合には、単段か多くとも二段の増幅段で十分である。 音響光学変調器3 01は、種パルスをファイバー増幅器212cへ注入し、同ファイバー内での数回のパスのあとで十分なエネルギーに達してからだけ、出力へと増幅されたパルスを振り向けるスイッチとして作用する。 通常、変調器のスピード(ゲート幅)は、通常のファイバー増幅器212 cを一周してくる時間(おおよそ20〜50ns)に整合するように、100〜200nsであることが要求される。 音響光学変調器は通常、偏光には不感であり、シングルモード・ファイバーでもマルチモード・ファイバーでも、このようなマルチパス設計に採用することができる。 種信号の平均パワーが低いので、二段増幅段のうち一方は線形増幅器とし他方はマルチパス増幅器とした二段機構が有利である。 【0037】ファイバー増幅器は、レーザーダイオードMOPAのようなシングルモード・ダイオードにより励起されうる。 しかし、シングルモード励起源は、かなり高価であるうえに、比較的低いパワーしか供給しない。 それゆえ、マルチモード励起源かマルチプル・ダイオード励起源を使用することが望ましい。 この励起源は、シングルモード・ファイバー増幅器およびマルチモード・ ファイバー増幅器の両方のダブルクラッド・ジオメトリーを通して装置される。 重要なことには、マルチモードコア・ファイバーのコア断面積が大きいので、ダブルクラッド・シングルモードコア・ファイバーに比べて、クラッディング励起における励起吸収が促進される。 また、十分に大きなコアの直径(通常は100μm超)をもつマルチモード・ファイバーでは、ブロードストライプ・ダイオードレーザーまたはマルチモード・ダイオードレーザーを直接インコア励起に使用することができる。 通常、マルチモード・レーザーダイオードを使用すると、励起源を小型かつロバストに設計することが容易になり、その結果、装置全体を小型かつロバストに設計することが容易になるので有利である。 【0038】パラメトリック増幅器の励起波長は、信号の波長より短くなければならない。 もし、励起源を構成するファイバー増幅器が、超短パルス源よりも短い波長で作動するならば、唯一必要なことは、適正な非線形材料を選ぶことによって(たとえば、周期性ポーリングL iNbO 3 (PPLN)結晶内での準位相整合周期を適正に選ぶことによって)、パラメトリック結晶の位相整合を適正に行えるようにすることである。 その一例としては、フェムト秒発振器に基づくエルビウムドープ・ファイバー(波長1550nmで作動)とネオジムドープ・グラスファイバー(波長1060nmで作動)を使用した励起源との組み合わせがある。 仮に励起源と信号源とが同じタイプのドープファイバー(たとえば両方ともエルビウムドープ・ファイバー)を使用するとしたならば、QPM(準位相整合)または他の既知の倍調波器2 60(図2参照)を使用して励起ビームの周波数を二倍にする必要がある。 縮退準位において位相の影響を受けやすいパラメトリック増幅を避けるためには、信号の波長(たとえば1530nmおよび約1560nm)よりもやや短い基本波長で励起源を作動させると有利である。 【0039】パラメトリック増幅器220(図2参照) は、一段または多段の増幅段からなる。 すなわち、再び図2に示すように、二段増幅器を使用することが望ましい。 単段ではなく二段の増幅器を使用すると、伸張されたパルスの90dBを超える(約10pJから約10m Jまでの)増幅を達成することが容易になる。 パラメトリック増幅器の最大利得は、パラメトリック生成の徴候によって制限される。 パラメトリック生成は、単段増幅では約90dBの利得から起こり始める。 約90dBの利得は、巨視的なレベルで自発的な真空変動を増幅するのに十分な値である。 通常、マルチモード・ファイバーの出力は偏光していない。 この場合、二段パラメトリック増幅を実施するために好ましい構成は、二つの励起チャンネルを生成するために、励起源210の出力側に偏光ビームスプリッター250を配設することである。 ここで、二つの励起チャンネルとは、すなわち各パラメトリック増幅段220A,220Bのことである。 この構成によれば、励起パワーが最大限に使用されることが確実になる。 【0040】本実施例のその他の構成要素としては、励起ビームと信号ビームとを結合させる二枚のダイクロイックミラー221と、効率的な非線形干渉に必要な偏光状態を設定する二枚の波長板222と、複数の適正な合焦点光学系223とがある。 フェムト秒の信号は、増幅に先立って励起パルスとおおよそ同程度の持続時間にまで伸張されるべきである。 励起パルスと信号パルスとは、パラメトリック結晶増幅器224の中で、時間的にも空間的にも重なっていなくてはならない。 結晶の損傷を避けるために、スポットサイズは十分に大きくなければならない。 【0041】パラメトリック結晶224は、損傷閾値未満のピーク密度に対して効率的な増幅を達成するために、たとえばPPLN、PPLTまたは他の準位相整合材料などのように、高い非線形性を持っていることが望ましい。 スポットサイズが大きいということも、空間的にマルチモードな励起ビームを使用して高い効率でパラメトリック増幅を達成するために望ましいことである。 PPLNのような高効率の非線形結晶を使用することは、ファイバーに基づく増幅装置を実現するうえで不可欠である。 通常使用されている既存の複屈折整合結晶を使用しては、コアが大きなマルチモード・ファイバーをもってしても、要求された高いピークパワーを受け入れることはできない。 【0042】以上の記述から明らかなように、伸張されたフェムト秒パルスを直接増幅する代わりに、ファイバー増幅器を励起源として使用すれば、モード間の分散の影響を取り除くことができる。 そればかりではなく、高エネルギー・ファイバー増幅器からのマルチモード出力のビームの質の低下をも防止することができる。 さらに、高いパルスエネルギーにおいて、シングルモードであり変換制限された(transform-limited )出力を供給することも可能になる。 【0043】以上詳述したように、得られる最大エネルギーは、マルチモード・ファイバーのコアのサイズによって異なる。 直径約100μmのコアのファイバーによれば、10mJを超える出力が得られる。 倍調波化(fr equency-doubling)とパラメトリック増幅効率とを考慮すれば、10mJのパルスから1mJを超える増幅されたパルスが十分に得られる。 そのうえ、さらに大きなファイバーを使用すれば、エネルギーの調整も可能である。 あるいは、出力パルスのエネルギーを、マルチプル励起源の出力と結合させることも可能である。 【0044】[実施例2]本発明の実施例2およびその変形態様1として、受動型または能動型のQスイッチ固体レーザー装置を使用したパラメトリック・パルス増幅装置を、それぞれ図5および図6に示す。 レーザーダイオードに励起される固体材料(solid state materials )としてはいくつかがあり、このような固体材料を使用することにより、伸張されたパルスのパラメトリック増幅器を励起するための小型でロバストな固体材料に基づく励起源を設計することが可能になる。 【0045】Qスイッチングは、高いピークパワーをもつパルスを発生させる技術として、すでに十分に確立された技術である。 光学キャビティーのQパラメーターは、一回の周回ごとに失われるエネルギーに対する光学キャビティーに保存されるエネルギーの比率として定義される。 光学キャビティー内での損失を変化させることにより、Qパラメーターを変化させることができる。 損失を制御するには、二通りの方法がある。 すなわち、能動Qスイッチングと受動Qスイッチングとである。 能動Qスイッチングは、キャビティー内である種の能動的な変調器(たとえばポッケルスセル)を必要とする。 受動Qスイッチングは、飽和吸収器のような受動的なデバイスを使用して実施される。 受動Qスイッチング・レーザーには不可避な短所がある。 それは、その誘発を外部から調整できないということと、パルスからパルスへのジッター(pulse-to-pulse jitter )が非常に大きいということである。 後者のジッターの大きさは、パルス自体の持続時間を超えてしまうことがあるほどである。 それゆえ、モード同期レーザーと受動Qスイッチング・レーザーとの同期は、非常に難しい問題である。 しかしながら、本発明者らは、この問題を回避することが可能であり、パラメトリック増幅機構のために受動Qスイッチング・レーザーのエネルギーを使用することが可能であることを発見した。 すなわち、上記パラメトリック増幅機構は、たとえばファーストチューンド・レーザーダイオードのような外部から同期可能なレーザーを、伸張された広帯域パルスのパルス源として使用することができる。 このようなレーザーダイオードは、受動Qスイッチ・レーザーによっても能動Qスイッチ・レーザーによっても容易に誘発することが可能であり、無視できるほどの小さなタイミング・ジッターしか生じない。 普通、ファーストチューンド・レーザーダイオードの代わりに、 どのようなレーザーであっても外部から同期可能であれば(たとえば利得スイッチ・レーザーダイオードでも)、使用することができる。 【0046】Qスイッチングされた固体レーザーを使用した実施例(実施例2)を、図5に示す。 励起源710 は、レーザーダイオード716と、レーザーダイオード716によって励起される受動Qスイッチ・パルス源7 15とからなる。 可変波長(tunable )レーザーダイオード740を制御する可変波長ダイオード電子回路70 0は、Qスイッチ・パルス源715からの光学出力の小さな変動が高速光ダイオード720によって検知されて、誘発される。 なお、上記変動は、高エネルギーパルスでは1%で十分である。 【0047】レーザーダイオード740を駆動する電子回路700の時間遅れが許容できないほど大きく、時間遅れの補正が必要である場合には、励起パルスは遅延線に注入されてもよい。 この遅延線は、本実施例ではマルチモード・ファイバー730として装置されている。 マルチモード・ファイバー730のコアのサイズは、非線形歪みを避けることができ、良好なファイバー内のカップリング効率が得られるように、十分に大きくなければならない。 このようなファイバーを使用すれば本実施例の実施が容易になるが、このようなファイバーの使用は不可欠というほどのことでもない。 【0048】本実施例の変形態様1として、能動Qスイッチング励起源を採用した実施例を図6に示す。 このような励起源715'は、外部から誘発することができ、 無視できるほどのジッターしか生じないので、モード同期信号源705の使用が可能になる。 図5および図6のいずれにおいても、励起パルスエネルギーを増大させるために、Qスイッチング励起パルスをさらに固体増幅器によってさらに増幅させても良い(図略)。 【0049】小型のQスイッチング固体レーザーを製造することの特に魅力的なコンセプトは、半導体パッケージング技術を駆使したマイクロチップ・レーザーである。 固体レーザーの材料ウエハーの一枚から、何千個ものマイクロチップ・レーザーを製造することが可能である。 その際、上記ウエハーの両面が互いに平行な平面になるように磨き上げ、そのうえで両面を誘電体ミラーでコーティングして、標準的な半導体ダイシング技術をもってこのウエハーをダイシングすることにより、多数のマイクロチップ・レーザーが製造される。 このような「チップレーザー」は、おおよそ1〜3mm 3程度の大きさであり、単モードまたはマルチモードのレーザーダイオードによっても、あるいはダイオードアレイによっても励起されうる。 このようなマイクロチップ・レーザーの典型的な材料としては、YAGのような材料にNd ドーピングが施されているものがあり、波長1064n mおよび1319nmで作動し、約809nmでレーザーダイオードにより励起されて作動する。 Qスイッチングは、電気光学素子(能動デバイス)または飽和吸収媒体(受動デバイス)のいずれかをNd:YAGまたはN d:VO 4のマイクロチップに接合して、複合キャビティーを形成することにより成し遂げられる。 単一のマイクロチップ・レーザーのQスイッチング出力では、数十μJに及ぶエネルギーと、たとえば200ps〜3ns などの数百ピコ秒から数ナノ秒までの持続時間とが得られる。 マイクロチップ・レーザーの使用により、極めて安価で小型のマイクロジュール・フェムト秒パルス源が得られる。 そればかりではなく、マイクロチップ・レーザーアレイを使用すれば、パワーもエネルギーも倍増され、約100mJの出力エネルギーの達成も可能になる。 【0050】本実施例にしたがって準位相整合(QP M)パラメトリック結晶を使用すれば、マイクロチップ・レーザーのようにパラメトリック・チャープパルス増幅(PCPA)装置を励起する比較的低い出力エネルギーを生成するデバイスを、小型励起源として使用することが可能になる。 これとは対照的に、在来型の非線形材料(たとえばBBOなど)を使用した場合には、励起ビームの焦点をタイトに絞っても、効率的な出力変換に十分なパラメトリック利得を得ることはできない。 【0051】[実施例3]本発明の実施例3としてのパラメトリック・チャープパルス増幅(PCPA)装置は、図7および図8に示すように、固体レーザーを基本にしたパルス増幅装置である。 前述のような在来の複屈折位相整合BBO結晶を非線形形態で使用した旧来の技術によっては、3mJのエネルギーで5psの持続時間の励起パルスによって1:30のエネルギー変換効率が得られている。 しかしながら、同程度のピークパワーが要求されながらナノ秒台の励起パルスをしようするものとすると、励起エネルギーを百倍から千倍に増大させなくてはならないであろう。 ということは、ジュール台の出力エネルギーを出しうるパルス源を採用することが必要になるということである。 現時点では、当業者には周知であるように、このような装置は、重くてかさばるうえに扱いにくく高価である。 また、このようなパルス源のパルスエネルギーの密度は、普通、非線形媒体の破損閾値を越えている。 ところが、本発明にしたがって準位相整合(QPM)材料を使用すれば、励起エネルギーに対する要求をマイクロジュール台ないしミリジュール台へと低減することができ、それに伴って非線形結晶の損傷閾値未満の水準にパワー密度を低減することができる。 このエネルギー水準では、パラメトリック・チャープパルス増幅(PCPA)装置に供給するのに必要とされる励起パルスを、各種の実用的な固体レーザー装置から得ることができる。 【0052】マスター発振器パワー増幅(MOPA)機構では、特に前述のファイバー増幅器を使用するものでは、バルクな固体材料を使用することもまた可能である。 しかしながら、固体媒体ではシングルパス利得が低いので、マルチパス機構または再生機構を採用することが望ましい。 本実施例としてのマスター発振器パワー増幅(MOPA)型のアレキサンドライトに基づくパルス増幅装置の一般的な構成を図7に示す。 【0053】励起源401は、アレキサンドライト再生増幅器410と、励起ダイオード420と、種ダイオード430とを有する。 ランプによって励起されるマルチモード・アレキサンドライト・レーザーは、励起用レーザー420として使用されている。 励起用レーザー42 0は、図8に示すように、波長780nm〜800nm で作動しているアレキサンドライト再生増幅器410を励起するために使用されている。 アレキサンドライト再生増幅器410は、標準的な半導体レーザー種ダイオード430の波長786nmで持続時間が可変のパルスにより、シーディングされている。 このダイオード・パルスの持続時間は、標準的なナノ秒パルス生成器であるトリガー電子回路400(図7参照)からの電気パルスの持続時間によって定まる。 アレキサンドライト装置の反復率は、10Hzである。 増幅された出力は、(種パルスの持続時間によって定まる)持続時間が350ps〜 1nsのパルスであり、そのエネルギーは、8mJにも達することが明らかになった。 レーザーキャビティーは、所定の回数の周回の後、スイッチアウトされる。 このことは、種ダイオードが外部から誘発される事実からして、信号パルスに対して励起パルスのタイミングを取ることを、大いに容易にしてくれる。 【0054】再び図7に示すように、信号源440は、 約1550nmの波長で作動するエルビウムドープ・ファイバー増幅装置である。 受動的にモード同期されたエルビウムドープ・ファイバーレーザー源445から得られるフェムト秒パルスは、正の分散をもった回折格子伸張器450のより伸張され、ダイオードに励起されるエルビウムドープ・ファイバー増幅器の連鎖(図略)により増幅される。 増幅後、(利得を狭めることによって決定される)帯域幅約7nmで持続時間300〜350p sのパルスが得られる。 この装置440は、10μJまでのエネルギーの種パルスを生成することができる。 このような高エネルギーは、単段のパラメトリック増幅器と協調して作動するために使用するのに極めて都合がよい。 発振器およびパルス伸張器からの出力の直接的な増幅によってミリジュールのエネルギーに達するためには、普通、二段のパラメトリック増幅段が必要であろう。 量子増幅器と比較すると、パラメトリック増幅器のシーディングに必要なエネルギーは、かなり低い。 なぜならば、パラメトリック結晶に注入された低エネルギーのパルスは、量子増幅器の自己発光とは対照的に、真空度の変動に対して競合することになるからである。 【0055】励起パルスおよび信号パルスは、IR(赤外線)ビームスプリッタ460によって結合され、共通の線上を伝搬するようになる。 両ビームは、PPLN (周期性ポーリングニオブ酸リチウム)QPM(準位相整合)結晶470に焦点を当てて注入される。 同結晶の厚さは0.5mmであり、3〜5mmの範囲での長さが採用されている。 なお、必要とされる励起エネルギーがさらに低くなり、結晶の損傷問題が緩和されるので、もっと長い結晶を使用しても良い。 本実施例でのPPLN 結晶の準位相整合周期は、19.75μmであった。 一般的にいって、QPN(準位相整合)周期Λは、与えられた干渉により次の数1に従って算出される。 【0056】 【数1】 1/Λ=n p /λ p −n s /λ s −n i / λ iここで、n kおよびλ k (k=p,s,i)は、それぞれ励起波(p)、信号波(s)およびアイドラー波(i)の屈折率(n)および波長(λ)である。 上記数1から明らかなように、パラメトリック増幅器のための適正な準位相整合周期を選ぶことにより、励起波長を選定することが可能である。 同様に、光学的ビーム経路に沿ってQPM(準位相整合)周期をチャープさせるならば、与えられた非線形干渉のための位相整合帯域幅を拡げる効果がある。 上記結晶の選定された形状により、非臨界的な位相整合が得られ、その結果、光線の空間的なウォークオフが除去される。 励起パルスから信号パルスへの最適な変換効率は、上記結晶中での励起ビームと種ビームとの空間的な重なりの度合いと同軸性の度合いとに決定的に依存している。 励起ビームおよび信号ビームのスポットサイズの直径は、たとえば、300〜400 μmの範囲にある。 上記結晶で大きな直径のスポットを形成することは、結晶の損傷を防ぐためにも、励起ビームおよび信号ビームの単モードとマルチモードとの空間的な整合を取るためにも、不可欠なことである。 上記結晶中では、励起ビームと信号ビームとの波頭の曲率を整合させるために特別な手当を必要とはしない。 増幅されたパルスは、標準的な負の分散をもつ回折格子圧縮器4 80によって再圧縮される。 【0057】本実施例では、5mJの励起パルスと10 0nJの信号パルスとの入力によって、実験的に1mJ の増幅信号出力の最大値が得られた。 また、5nJ以下のエネルギーの入力パルスに対し、小信号に対する利得としては10 4もの利得が計測された。 励起パルスから信号パルスへの変換効率は、35%にも達することが明らかになった。 本実施例の装置では励起ビームは単モードであるが、両ビームの波頭の曲率の差違において、また、パラメトリック結晶の中での両ビームの大きなサイズにおいて、マルチモード・ビームで励起しているのと同様である。 すなわち、大きなスポットサイズと高いモード数とによって、単モードのビーム・プロフィールとマルチモードのビーム・プロフィールとの間に、空間的な差違はない。 【0058】ニオブ酸リチウムの材料特性により、上記結晶の損傷閾値未満の励起密度で効率的なパラメトリック変換が可能になる。 300〜500psの持続時間の励起パルスで増幅した場合には、最大の励起エネルギーが8mJに達しても何の損傷も見つけられなかった。 しかしながら、励起パルスのパルス幅が1nsよりも長くなると、パルス当たりのエネルギーが2mJで、前述のパラメトリック結晶の入力側の小面に光学的損傷が発見された。 この際のエネルギー密度は、3.8GW/cm 2に相当する。 たとえば5nsなどのより長いパルス幅では、パラメトリック利得がほとんど無視できる程度にしか生じない0.8GW/cm 2のかなり低いピークのエネルギー密度であっても、結晶表面に損傷を生じる。 このように観測された励起パルスの持続時間に関する損傷閾値の従属性は、熱効果によるバルクLiNbO 3 (ニオブ酸リチウム)の表面損傷と一致している。 このことから、1nsよりも短い励起パルスで励起することが、最も高いパラメトリック利得および変換効率を得るうえで、LiNbO 3結晶には有利であることが分かる。 【0059】通常、与えられたパルスの持続時間に対して、使用可能な励起エネルギー(およびその結果として得られうる信号エネルギー)は、スポット面積を増減することにより同面積に比例して増減させることができる。 これは、励起パルスのエネルギー密度を一定にするためである。 実際上の得られうる最大エネルギーを制限するものは、パラメトリック結晶の最大断面寸法のみである。 現在のところ、電場ポーリングの制限から定まる大きさとして、厚さ0.5mmのPPLN(周期性ポーリングニオブ酸リチウム)が標準的である。 この制限を越えるスポットサイズのスケーリングは、制限されない結晶の幅を実現するために、非対称なビームの拡散を必要とする。 しかしながら、QPM(準位相整合)結晶の厚さは、たとえばPPLNプレートを拡散接合して垂直に積み上げるなどの技法により、要求に応じ必要に応じて増大させることができる。 【0060】励起パルスと信号パルスとの間で起こるパラメトリック干渉により、増幅された伸張パルスの位相歪みが誘発していないことを確認することは重要である。 増幅された出力のチャーピング特性を調べるために、再視準された同出力が格子モノクロメーター内でスペクトル分光され、ストリークカメラで計測された。 ストリークカメラにより撮像されたイメージによれば、未増幅の信号ビームは、図9に示すように線形チャープを示しており、このチャープは、図10に示すように増幅された信号にも完全に移行しており、7nmの帯域幅を形成している。 一方、励起パルスの非線形チャープは、 図12に示すように、増幅された信号中に新たにチャープを生じることは全くなく、むしろ、図11に示すように、そのままアイドラー波のチャープに移行している。 【0061】ここで、励起パルスからアイドラー波まで移行する間に位相の符号が逆転しており、インパルス保存則に合致していることに注意されたい。 励起パルスおよび信号パルスで約100psの一時的なジッターが観測されたが、同ジッターは増幅作用には影響しなかった。 再圧縮された信号パルスは、シングルショット自己相関器により計測された。 図13には、増幅済みのパルスのシングルショット自己相関と未増幅のパルスのシングルショット自己相関とが示されている。 未増幅のパルスおよび増幅済みのパルスはともに約680fsに圧縮され、同一の線図を描いている。 すなわち、40dBものパラメトリック増幅にもかかわらず、位相の歪みはほとんど起こっていないことが分かる。 【0062】前述のアレキサンドライト増幅器は、たとえば倍調波モード同期ファイバー発振器などからの伸張された超短パルスの直接的な増幅に使用することもできる。 しかし、パラメトリック増幅機構を使用することによって得られる本質的な利点は、大きなパラメトリック増幅帯域幅によって起こる利得減少効果を取り除くことにある。 【0063】[付記]本明細書の「発明の詳細な説明」 の欄で複数の実施例によって開示された本発明は、「特許請求の範囲」の欄に定義された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲で、当業者により形状や細部を変更されうるものと解されたい。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の実施の形態を一般的に示すブロック図 【図2】実施例1としてのパラメトリック・チャープパルス増幅装置の構成を示すブロック図 【図3】直列線形増幅を使用した励起源の一例の構成を示すブロック図 【図4】マルチパス増幅器を使用した励起源の一例の構成を示すブロック図 【図5】実施例2としての受動的Qスイッチ固体レーザーに基づく光パルス増幅装置の構成を示すブロック図 【図6】実施例2の変形態様1としての能動的Qスイッチ固体レーザーに基づく光パルス増幅装置の構成を示すブロック図 【図7】実施例3としてのMOPA型アレキサンドライトに基づく光パルス増幅装置の構成を示すブロック図 【図8】実施例3のアレキサンドライト再生増幅器の構成を示すブロック図 【図9】実施例3の装置によって生成された伸張されていない信号ビームのストリークイメージを示すグラフ 【図10】実施例3の装置によって生成された増幅された信号ビームのストリークイメージを示すグラフ 【図11】実施例3の装置のアイドラーフェーズのストリークイメージを示すグラフ 【図12】実施例3の装置の励起信号のストリークイメージを示すグラフ 【図13】実施例3の装置の増幅されたパルスと未増幅のパルスとのシングルショット自己相関を示すグラフ 【符号の説明】 100:励起源(ポンプソース) 110:励起ダイオード 120:高エネルギーパルス源 130:信号源(シグナルソース) 140:発振器 150:パルス伸張器 160:ビームスプリッター 105:波長板 106:合焦点光学装置(光学レンズ) 170:パラメトリック増幅器(非線形結晶である準位相整合結晶を含む) 180:パルス圧縮器 190:トリガー電子回路(誘発電子回路、誘発手段として) 200:信号源 202:モード同期発振器 204:パルス伸張器 210:励起源 212,214,212c:多段式またはマルチパスのファイバー増幅器 216:レーザーダイオード(種ダイオード) 218:ポンプダイオード(励起ダイオード) 300,301:音響光学変調器(AOM) 220:多段式のパラメトリック増幅器 20A,20B:パラメトリック増幅段 221:ダイクロイック・ミラー(二色鏡) 222:波長板 223:合焦点光学系(光学レンズ系) 224:パラメトリック増幅器/結晶(準位相整合結晶) 230:パルス圧縮器 240:トリガー電子回路(誘発手段として) 250:偏光ビームスプリッター 260:準位相整合倍調波器(QPMダブラー) 400:トリガー電子回路(誘発手段として) 401:励起源 410:アレキサンドライト再生増幅器 420:励起用レーザー(ポンプ) 430:半導体レーザー種ダイオード 440:信号源 445:受動モード同期エルビウムドープ・ファイバーレーザー源 450:回折格子伸張器 460:赤外線ビームスプリッター 470:PPLN準位相整合結晶 480:回折格子圧縮器 700:電子回路 720:光ダイオード(700, 720:誘発手段) 705,710:励起源 715:受動的にQスイッチングされるパルス源 715':能動的にQスイッチングされるパルス源 716:レーザーダイオード(励起ダイオード) 720:高速光ダイオード 730:マルチモード・ファイバー(遅延線) 740:可変波長(チューナブル)レーザーダイオード ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ドナルド ジェー ハーター アメリカ合衆国 ミシガン州 アンアーバ ー サルグレイブ プレイス3535番地 |