免疫原性が増強されたワクチン抗原

申请号 JP2016085606 申请日 2016-11-30 公开(公告)号 JPWO2017094793A1 公开(公告)日 2018-09-13
申请人 出光興産株式会社; 发明人 澤田 和敏; 松井 健史;
摘要 抗原 ペプチドとアジュバントタンパク質を含む融合タンパク質であって、前記アジュバントタンパク質は志賀毒素2eのBサブユニット(Stx2eB)、大腸菌易熱性毒素のBサブユニット(LTB)及びコレラ毒素のBサブユニット(CTB)から選択される2以上のタンパク質を含む、融合タンパク質、またはそれをコードする遺伝子で形質転換された形質転換体を動物に投与することで抗原ペプチドの免疫原性を高める。
权利要求

抗原ペプチド(豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)ウイルスのGlycoprotein 5 由来ペプチドを除く)と、志賀毒素2eのBサブユニット(Stx2eB)、大腸菌易熱性毒素のBサブユニット(LTB)及びコレラ毒素のBサブユニット(CTB)から選択される2以上のタンパク質と、を含む、融合タンパク質。抗原ペプチド(豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)ウイルスのGlycoprotein 5 由来ペプチドを除く)とアジュバントタンパク質を含む融合タンパク質であって、前記アジュバントタンパク質は志賀毒素2eのBサブユニット(Stx2eB)、大腸菌易熱性毒素のBサブユニット(LTB)及びコレラ毒素のBサブユニット(CTB)から選択される2以上のタンパク質を含む、融合タンパク質。前記抗原ペプチドは、細菌毒素由来ペプチドである、請求項1または2に記載の融合タンパク質。前記抗原ペプチドは、大腸菌耐熱性毒素(ST)由来ペプチドである、請求項1または2に記載の融合タンパク質。前記ST由来ペプチドは、配列番号16で示されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列を有する、請求項4に記載の融合タンパク質。前記抗原ペプチドは、哺乳類感染性ウイルス由来ペプチドである、請求項1または2に記載の融合タンパク質。前記哺乳類感染性ウイルス由来ペプチドは、パルボウイルスのカプシドタンパク質VP2、ネコ免疫不全ウイルスのエンベロープタンパク質gp120、ブタ流行性下痢ウイルスのスパイクタンパク質、またはロタウイルスのカプシドタンパク質VP7の部分配列である、請求項6に記載の融合タンパク質。前記パルボウイルスのカプシドタンパク質VP2の部分配列が配列番号33もしくは39で示されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列を有し、ネコ免疫不全ウイルスのエンベロープタンパク質gp120の部分配列が配列番号43で示されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列を有し、ブタ流行性下痢ウイルスのスパイクタンパク質の部分配列が配列番号50で示されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列を有し、またはロタウイルスのカプシドタンパク質VP7の部分配列は配列番号56もしくは63で示されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列を有する、請求項7に記載の融合タンパク質。前記2以上のタンパク質がStx2eBとLTBを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の融合タンパク質。Stx2eBの73位のAsn残基がSer残基に置換されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の防除剤。前記抗原ペプチド及び前記2以上のタンパク質を構成する毒素Bサブユニットのそれぞれがペプチドリンカーを介して連結されている、請求項1〜10のいずれか1項に記載の融合タンパク質。前記ペプチドリンカーがPG12(配列番号2)、PG12v2(配列番号4)、PG17(配列番号25)、もしくはPG22(配列番号26)、またはこれらの配列と80%以上同一性を有するアミノ酸配列を有するペプチドである、請求項11に記載の融合タンパク質。配列番号20もしくは22のアミノ酸配列または配列番号20もしくは22との同一性が80%以上のアミノ酸配列で示される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の融合タンパク質。請求項1〜13のいずれか1項に記載の融合タンパク質をコードするDNA。請求項14に記載のDNAを含むDNA構築物。請求項15に記載のDNA構築物を含む組み換えベクター。請求項16に記載のベクターで形質転換された形質転換体。前記形質転換体が植物または酵母である、請求項17に記載の形質転換体。請求項1〜13のいずれか1項に記載の融合タンパク質または請求項17もしくは18に記載の形質転換体を含むワクチン。請求項1〜13のいずれか1項に記載の融合タンパク質または請求項17もしくは18に記載の形質転換体を含む動物用飼料。請求項1〜13のいずれか1項に記載の融合タンパク質または請求項17もしくは18に記載の形質転換体を非ヒト哺乳動物に投与することを特徴とする、非ヒト哺乳動物における免疫増強方法。

说明书全文

本発明は、ワクチンとして有用な融合タンパク質、これをコードするDNAを含むDNA構築物、それを含むベクター及び形質転換体に関する。

病害防除の有効な方法としてワクチンの利用があるが、時として得られる予防効果に不十分な場合がある。これはワクチンとしてデザインした抗原の免疫原性が元々弱い場合や、新生児や高齢者のようにワクチンを接種する個体側の免疫に起因する場合など様々な理由が考えられる。大腸菌性下痢症の原因毒素であるSTは、18アミノ酸(STp(豚型))または19アミノ酸(STh(ヒト型))からなる分子量約2,000の小分子で、古くより免疫原性がきわめて低いことが知られている。STを低免疫原性分子モデルとして、免疫原性を向上させるための研究が行われてきた。 Klipstein et al.(1985)(非特許文献1)はSThを化学的にLTBに融合した抗原を作製し、ゼラチンカプセルに封入し経口投与することで、血清IgGと小腸IgAの抗体価上昇を確認したが、実用化のためにはより一層の免疫原性の向上が必要であった。 Clements(1990) (非特許文献2)は、LTB-ST融合タンパク質を大腸菌で発現させ、これを精製しマウスに腹腔内注射することで、血清中に抗ST抗体の誘導を確認したが、より一層の免疫原性の上昇が必要であった。 Zhang et al.(2010) (非特許文献3)は、LTホロ毒素にSTを融合したタンパク質を大腸菌で発現させ、これを精製し、フロイントの不完全アジュバントとともにウサギに筋肉注射することで、抗体誘導とST毒素に対する中和活性の誘導を確認したが、アジュバントを含む注射投与であることから、抗原のより一層の免疫向上が重要であった。 Rosales-Mendoza et al.(2011) (非特許文献4)は、LTBとSThの融合タンパク質をタバコで発現し、マウスに経口投与することで抗LT抗体価の上昇を確認しているが、抗ST抗体価については言及していない。

一方、本発明者らは、特許5360727(特許文献1)で、特定のアミノ酸配列を持つリンカー(PG12)を利用して、大腸菌易熱性毒素Bサブユニット(LTB)や志賀毒素2eのBサブユニット(Stx2eB)を植物で高生産させたことを報告しているが、当該融合タンパク質のワクチンとしての性能や第三の抗原を融合した場合の当該抗原の性能に関しては不明であった。

特許5360727号明細書

Klipstein et al., Infection and Immunity (1985) 50:328-32

Clements, Infection and Immunity (1990) 58:1159-66

Zhang et al., Clinical and Vaccine Immunology (2010) 17:1223-31

Rosales-Mendoza et al., Plant Cel Rep (2011) 30:1145-52

本発明は、免疫原性が増強されたワクチン抗原を提供することを課題とする。

本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、抗原ペプチドと、志賀毒素2eのBサブユニット(Stx2eB)、大腸菌易熱性毒素のBサブユニット(LTB)及びコレラ毒素のBサブユニット(CTB)から選択される2以上の毒素タンパク質とを結合した融合タンパク質を作製して動物に投与することにより、2以上の毒素タンパク質部分がアジュバントとして作用し、動物体内において抗原ペプチドに対する免疫原性が増強することを見出し、この融合タンパク質が優れたワクチン抗原として使用できることを見出し、本発明を完成するに至った。

すなわち、本発明は以下のとおりである。 (1)抗原ペプチド(豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)ウイルスのGlycoprotein 5 由来ペプチドを除く)と、志賀毒素2eのBサブユニット(Stx2eB)、大腸菌易熱性毒素のBサブユニット(LTB)及びコレラ毒素のBサブユニット(CTB)から選択される2以上のタンパク質と、を含む、融合タンパク質。 (2)抗原ペプチド(豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)ウイルスのGlycoprotein 5 由来ペプチドを除く)とアジュバントタンパク質を含む融合タンパク質であって、前記アジュバントタンパク質は志賀毒素2eのBサブユニット(Stx2eB)、大腸菌易熱性毒素のBサブユニット(LTB)及びコレラ毒素のBサブユニット(CTB)から選択される2以上のタンパク質を含む、融合タンパク質。 (3)前記抗原ペプチドは、細菌毒素由来ペプチドである、(1)または(2)に記載の融合タンパク質。 (4)前記抗原ペプチドは、大腸菌耐熱性毒素(ST)由来ペプチドである、(1)または(2)に記載の融合タンパク質。 (5)前記STペプチドは、配列番号16で示されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列を有する、(3)に記載の融合タンパク質。 (6)前記抗原ペプチドは、哺乳類感染性ウイルス由来ペプチドである、(1)または(2)に記載の融合タンパク質。 (7)前記哺乳類感染性ウイルス由来ペプチドは、パルボウイルスのカプシドタンパク質VP2、ネコ免疫不全ウイルスのエンベロープタンパク質gp120、ブタ流行性下痢ウイルスのスパイクタンパク質、またはロタウイルスのカプシドタンパク質VP7の部分配列である、(6)に記載の融合タンパク質。 (8)前記パルボウイルスのカプシドタンパク質VP2の部分配列が配列番号33もしくは39で示されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列を有し、ネコ免疫不全ウイルスのエンベロープタンパク質gp120の部分配列が配列番号43で示されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列を有し、ブタ流行性下痢ウイルスのスパイクタンパク質の部分配列が配列番号50で示されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列を有し、またはロタウイルスのカプシドタンパク質VP7の部分配列は配列番号56もしくは63で示されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列を有する、(7)に記載の融合タンパク質。 (9)前記2以上のタンパク質がStx2eBとLTBを含む、(1)〜(8)のいずれかに記載の融合タンパク質。 (10)Stx2eBの73位のAsn残基がSer残基に置換されている、(1)〜(9)のいずれかに記載の防除剤。 (11)前記抗原ペプチド及び前記2以上のタンパク質を構成する毒素Bサブユニットのそれぞれがペプチドリンカーを介して連結されている、(1)〜(10)のいずれかに記載の融合タンパク質。 (12)前記ペプチドリンカーがPG12(配列番号2)、PG12v2(配列番号4)、PG17(配列番号25)、もしくはPG22(配列番号26)、またはこれらの配列と80%以上同一性を有するアミノ酸配列を有するペプチドである、(11)に記載の融合タンパク質。 (13)配列番号20もしくは22のアミノ酸配列または配列番号20もしくは22との同一性が80%以上のアミノ酸配列で示される、(1)〜(12)のいずれかに記載の融合タンパク質。 (14)(1)〜(13)のいずれかに記載の融合タンパク質をコードするDNA。 (15)(14)に記載のDNAを含むDNA構築物。 (16)(15)に記載のDNA構築物を含む組み換えベクター。 (17)(16)に記載のベクターで形質転換された形質転換体。 (18)前記形質転換体が植物または酵母である、(17)に記載の形質転換体。 (19)(1)〜(13)のいずれかに記載の融合タンパク質または(17)もしくは(18)に記載の形質転換体を含むワクチン。 (20)(1)〜(13)のいずれかに記載の融合タンパク質または(17)もしくは(18)に記載の形質転換体を含む動物用飼料。 (21)(1)〜(13)のいずれかに記載の融合タンパク質または(17)もしくは(18)に記載の形質転換体を非ヒト哺乳動物に投与することを特徴とする、非ヒト哺乳動物における免疫増強方法。

本発明により、飛躍的に免疫誘導効率を上げることができ、免疫原性の低い抗原に対するワクチンの提供が可能となった。本発明では、例えば、レタスなどの可食植物にワクチン抗原を蓄積させ動物に経口投与することができるため、省コスト化、省力化、家畜のストレス軽減による生産性の向上が期待できる。

レタスに導入した融合タンパク質の発現カセットを示す図。

ワクチンレタスのマウス経口投与プログラムを示す図。

レタスにおけるワクチンタンパク質の発現を示す図(一部、写真)。(A)LTB-mSTpのウェスタン解析(B) LTB-Stx2eB-mSTpおよびStx2eB-LTB-mSTpのウェスタン解析 (C) レタス中での蓄積量。

ワクチンレタス投与マウスにおける抗STp IgA抗体価を示す図。

酵母に導入した融合タンパク質の発現カセットを示す図。

ウエスタンブロットによる酵母におけるワクチンタンパク質の発現解析の結果を示す図(写真)。

ウエスタンブロットによる、大腸菌で発現させたワクチンタンパク質(LBVP2)の精製の結果を示す図(写真)。

LBVP2 またはVP2を固相化したELISAによる、ワクチンタンパク質(LBVP2)で免疫されたウサギにおける抗体価の評価結果(希釈率との関係)を示す図。

LBVP2またはVP2を固相化したELISAによる、ワクチンタンパク質(LBVP2)で免疫されたウサギにおける抗体価の評価結果(経時変化)を示す図。5000倍希釈した血液を用いた。

レタスにおけるLBVP2ワクチンタンパク質の発現を示す図(写真)。三はLBVP2タンパク質を示す。星印は非特異的シグナルを示す。レーン上の数字は独立したレタス組換え体の系統番号を示す。WTは非組換え体由来のサンプルを示す。

以下、本発明について説明する。

本発明の融合タンパク質は、抗原ペプチドとアジュバントタンパク質を含む融合タンパク質であって、前記アジュバントタンパク質は志賀毒素2eのBサブユニット(Stx2eB)、大腸菌易熱性毒素のBサブユニット(LTB)及びコレラ毒素のBサブユニット(CTB)から選択される2以上のタンパク質を含む。

<抗原ペプチド> 抗原ペプチドは、PRRSウイルスのGlycoprotein 5 由来ペプチド以外のペプチドで、投与された非ヒト哺乳動物において抗原抗体反応を惹起できるペプチドであれば特に制限されず、その配列や長さも特に制限されない。好ましくは、その長さは、10〜100アミノ酸である。なお、抗原ペプチドには、Stx2eB、LTB、CTBも含まれない。 抗原ペプチドとしては、病原体由来のペプチドが例示され、大腸菌、マイコプラズマ、サルモネラなどの病原性細菌が産生するペプチド、例えば、毒素(Stx2eB、LTB、CTB以外)や細胞壁構成タンパク質、哺乳類感染性ウイルス由来のペプチド、例えば、外被由来ペプチド、ヌクレオカプシド由来ペプチドなどが挙げられる。

抗原ペプチドの一例として、大腸菌性下痢症の原因毒素である耐熱性毒素STが挙げられる。STは、18アミノ酸のSTp(豚型)と19アミノ酸STh(ヒト型)などがあるが、融合タンパク質の投与対象が豚である場合、STpを用いる。 抗原として使用されるSTpとしては、例えば、配列番号16のアミノ酸配列を有する無毒化変異体(mSTp)(Sato et al., 1994)を使用することができる。ただし、STpに対する抗原抗体反応を惹起できるペプチドである限り、配列番号16で表されるアミノ酸配列における1個又は数個のアミノ酸が、置換、欠失、挿入又は付加されていてもよい。前記「数個」としては、例えば、2〜10個、好ましくは2〜5個、より好ましくは2〜3個である。また、STpは、配列番号16で表されるアミノ酸配列と、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の同一性を有するものであってもよい。

抗原ペプチドの他の例として、パルボウイルスのカプシドタンパク質VP2の中和エピトープ、ネコ免疫不全ウイルスのエンベロープタンパク質gp120の中和エピトープ、ブタ流行性下痢ウイルスのスパイクタンパク質の中和エピトープ、ロタウイルスのカプシドタンパク質VP7の中和エピトープが挙げられる。ただし、ウイルス由来の抗原ペプチドはこれらに限定されず、種々のウイルスに由来する種々のペプチドが適用でき、その配列も公知の配列のアラインメントなどから適宜設定できる。一種類のエピトープのみを利用することも可能であり、また複数のエピトープを多重連結して利用することもできる。 以下に、上記ウイルスタンパク質の中和エピトープ由来の抗原ペプチドのアミノ酸配列を例示する。 イヌパルボウイルスのカプシドタンパク質VP2の中和エピトープ・・・配列番号33 ブタパルボウイルスのカプシドタンパク質VP2の中和エピトープ・・・配列番号39 ネコ免疫不全ウイルスのエンベロープタンパク質gp120の中和エピトープ・・・配列番号43 ブタ流行性下痢ウイルスのスパイクタンパク質の中和エピトープ・・・配列番号50 ロタウイルスA型のカプシドタンパク質VP7の中和エピトープ・・・配列番号56 ロタウイルスC型のカプシドタンパク質VP7の中和エピトープ・・・配列番号63 ただし、各ウイルスタンパク質に対する抗原抗体反応を惹起できるペプチドである限り、配列番号33、39、43、50、56、または63で表されるアミノ酸配列における1個又は数個のアミノ酸が、置換、欠失、挿入又は付加されていてもよい。前記「数個」としては、例えば、2〜10個、好ましくは2〜5個、より好ましくは2〜3個である。また、抗原ペプチドは、配列番号33、39、43、50、56、または63で表されるアミノ酸配列と、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の同一性を有するものであってもよい。

<アジュバントタンパク質> アジュバントタンパク質はStx2eB、LTB及びCTBから選択される2以上のタンパク質を含む。2以上としては、好ましくは、2〜5であり、より好ましくは2〜3であり、さらに好ましくは2である。なお、2以上のタンパク質とは、Stx2eB、LTB及びCTBから選択されるいずれか1種類の毒素Bサブユニットが2つ以上含まれる態様でもよいし、Stx2eB、LTB及びCTBから選択される2種類の毒素が合計で2つ以上含まれる態様でもよいし、Stx2eB、LTB及びCTBが合計で3つ以上含まれる態様でもよい。

志賀毒素(Stx)は、浮腫病の原因となる腸管出血性大腸菌(EHEC, STEC)が産生するタンパク質性毒素で、1型(Stx1)及び2型(Stx2)に分けられる。Stx1は、a〜dのサブクラスに、Stx2はa〜gのサブクラスにそれぞれ分類される。毒性本体であるAサブユニット1分子と腸管粘膜への結合に働くBサブユニット5分子からなるホロ毒素で、真核細胞のリボソームに作用して、タンパク質合成を阻害する働きを持つ。

本発明で使用されるStx2eのBサブユニット(Stx2eB)は、例えば、配列番号8のアミノ酸配列で表される。配列番号8は、Stx2e Bサブユニットタンパク質(GenBank Accession No. AAQ63639)の成熟領域(ペリプラズムへの分泌シグナルペプチドを除く、Ala19〜Asn87)のアミノ酸配列を示す。 また、Stx2eBは、例えば、Asn73(配列番号8のアミノ酸配列の55位のAsn残基)がSer残基に置換されている変異型でもよい。配列番号8のアミノ酸配列の55位のAsn残基がSerに置換されているアミノ酸配列(Asn73Ser)を配列番号10で示す。

また、Stx2eBは、融合タンパク質として豚等の動物に投与してアジュバント効果を発揮することができる限り、配列番号8もしくは10で表されるアミノ酸配列における1個又は数個のアミノ酸が、置換、欠失、挿入又は付加されていてもよい。前記「数個」としては、例えば、2〜10個、好ましくは2〜5個、より好ましくは2〜3個である。 また、Stx2eBは、配列番号8もしくは10で表されるアミノ酸配列と、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の同一性を有し、かつ融合タンパク質として豚等の動物に投与してアジュバント効果を発揮することができるものであってもよい。

大腸菌性下痢症は、毒素原性大腸菌(ETEC)が生産するタンパク質性毒素LTが原因であり、LTは大腸菌易熱性毒素とも呼ばれる。大腸菌易熱性毒素(LT)は、毒性本体であるAサブユニット1分子とBサブユニット5分子からなるホロ毒素である。LTのAサブユニット(LTA)は細胞質内に侵入し、細胞内cAMP濃度を上昇させ、細胞膜クロライドチャネルを活性化することで腸管内へのの漏出すなわち下痢の病態を引き起こす。LTのBサブユニット(LTB)は無毒であり、LT毒素と腸管細胞との接着に関与する。

本発明で使用されるLTBは、例えば、配列番号12のアミノ酸配列で表される。LTBは、融合タンパク質として豚等の動物に投与してアジュバント効果を発揮することができる限り、配列番号12で表されるアミノ酸配列における1個又は数個のアミノ酸が、置換、欠失、挿入又は付加されていてもよい。前記「数個」としては、例えば、2〜10個、好ましくは2〜5個、より好ましくは2〜3個である。配列番号12で表されるアミノ酸配列は、GenBank Accession No. AAL55672として登録されている。 また、LTBは、配列番号12で表されるアミノ酸配列と、85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の同一性を有し、かつ融合タンパク質として豚等の動物に投与してアジュバント効果を発揮することができるものであってもよい。

本発明の他の実施形態では、LTBに糖鎖が付加されていてもよい。例えば、LTBの90位(すなわち、配列番号12の90位)のAsn残基にN−結合型の糖鎖が付加される。配列番号12の90位がSer残基に置換されたLTBのアミノ酸配列を配列番号14で表す。

コレラ毒素(CT)タンパク質は、毒性本体である1つのAサブユニット(CTA)と、腸管粘膜への侵入へ関与する5つのBサブユニット(CTB)からなる。 本発明で使用されるCTBは、例えば、配列番号6のアミノ酸配列で表される。CTBは、融合タンパク質として豚等の動物に投与してアジュバント効果を発揮することができる限り、配列番号6で表されるアミノ酸配列における1個又は数個のアミノ酸が、置換、欠失、挿入又は付加されていてもよい。前記「数個」としては、例えば、2〜10個、好ましくは2〜5個、より好ましくは2〜3個である。 また、CTBは、配列番号6で表されるアミノ酸配列と、85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の同一性を有し、かつ豚等の動物に投与してアジュバント効果を発揮することができるものであってもよい。

本発明の融合タンパク質のアジュバント部分を構成する2以上の毒素ペプチドは、Stx2eB、LTB、CTBから任意に選ばれる2以上の毒素Bサブユニットであればよいが、好ましくは、Stx2eBとLTB の組み合わせである。本発明において、Stx2eBとLTBとが融合される順序は、いずれが先であってもよい。

本発明の好ましい実施形態では、Stなどの抗原ペプチドと、Stx2eB、LTB、CTBから任意に選ばれる2以上の毒素Bサブユニットのそれぞれはペプチドリンカーを介してタンデムに連結される。

本発明で用いるペプチドリンカーのアミノ酸の個数は、例えば5〜25個、好ましくは10〜25個、さらに好ましくは10〜22個、より好ましくは12〜22個である。また、本発明で用いるペプチドリンカーにおいて、好ましくは、プロリンの含有率が20〜27%、より好ましくは、20〜25%である。 ペプチドリンカーにおいて、プロリンは、好ましくは2つ置き、又は3つ置きに配置される。プロリンの間に配置されるアミノ酸は、好ましくは、グリシン、セリン、アルギニンから選択される。但し、ペプチドの一方または両方の末端においては、プロリン以外のアミノ酸が、5つ以内、好ましくは4つ以内の範囲で付加されていてもよい。このような好ましいペプチドリンカーは、例えば、国際公開WO2009/133882号パンフレットに記載さ れている。

本発明において、ペプチドリンカーは、好ましくは、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(PG12)や配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(PG12v2)である。また、配列番号25で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(PG17)や配列番号26で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(PG22)も好適に使用できる。 本発明において、ペプチドリンカーは、好ましくは、配列番号2,4、25または26で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと80%以上、より好ましくは90%以上の同一性を有するペプチドであってもよい。

上記のようなペプチドリンカーを用いることにより、融合タンパク質の安定性を向上させ、宿主細胞において高蓄積させることができる。 また、本発明で用いる融合タンパク質は、さらにそのC末端に前記ペプチドリンカーが付加されていてもよい。

本発明で用いる融合タンパク質は、例えば、配列番号20または22で表されるアミノ酸配列を有する。配列番号20または22で表されるアミノ酸配列を有する融合タンパク質は、Stx2eBと、LTBと、mSTpが、PG12を介してタンデムに連結されている。

本発明で用いる融合タンパク質は、植物で発現させる場合などは、そのアミノ末端に、植物由来の分泌シグナルペプチド又は葉緑体移行シグナルペプチドが付加されていてもよい。ここで、「付加」とは、前記分泌シグナルペプチドが、前記ペプチドを介して連結した融合タンパク質のアミノ末端に、直接結合している場合も、他のペプチドを介して結合している場合も含む概念である。 分泌シグナルペプチドは、好ましくはナス科(Solanaceae)、アブラナ科(Brassicaceae)、キク科(Asteraceae)に属する植物、さらに好ましくはタバコ属(Nicotiana)、シロイヌナズナ属(Arabidopsis)、アキノノゲシ属(Lactuca)等に属する植物、より好ましくはタバコ(Nicotiana tabacum)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、レタス(Lactuca sativa)等に由来する。 また、分泌シグナルペプチドは、好ましくはタバコのβ-Dグルカンエキソヒドロラーゼ(β-D-glucan exohydrolase)、タバコの38kDa ペルオキシダーゼ(GenBank Accession D42064)に由来する。前記分泌シグナルペプチドとしては、例えば、タバコのβ-Dグルカンエキソヒドロラーゼに由来する、配列番号28で表されるアミノ酸配列を有しているペプチドが挙げられる。タバコのβ-DグルカンエキソヒドロラーゼをコードするDNAの塩基配列は、例えば配列番号27で表される。 好ましい葉緑体移行シグナルペプチドは、例えば、国際公開WO2009/004842号パンフレット及び国際公開WO2009/133882号パンフレットに記載されている。

さらに、本発明で用いる融合タンパク質は、植物で発現させる場合などは、そのカルボキシル末端に、小胞体残留シグナルペプチド、液胞移行シグナルペプチド等のシグナルペプチドが付加されていてもよい。ここで、「付加」とは、シグナルペプチドが、前記融合タンパク質のカルボキシル末端に、直接結合している場合も、他のペプチドを介して結合している場合も含む概念である。本明細書において、アミノ末端に分泌シグナルペプチドが付加され、かつカルボキシル末端に小胞体残留シグナルペプチドが付加されたハイブリッドタンパク質を、小胞体型(ER)のハイブリッドタンパク質ともいい、該小胞体型の融合タンパク質をコードするDNA構築物を、小胞体型のDNA構築物ともいう。小胞体型の融合タンパク質は、真核生物で効率良く蓄積する報告例が多数ある。 本発明で用いる融合タンパク質は、そのカルボキシル末端に、好ましくは、小胞体残留シグナルペプチドが付加されている。好ましい小胞体残留シグナルペプチドは、例えば、国際公開WO2009/004842号パンフレット及び国際公開WO2009/133882号パンフレットに記載されているが、HDEL配列(配列番号29)を利用することができる。 他の好ましい液胞移行シグナルペプチドは、例えば、国際公開WO2009/004842号パンフレット及び国際公開WO2009/133882号パンフレットに記載されている。

本発明で用いる融合タンパク質は、化学的に合成することもできるし、遺伝子工学的に生産することもできる。

遺伝子工学的に生産する場合、融合タンパク質をコードするDNAを含むDNA構築物を用いる。本発明で用いるDNA構築物は、STなどの抗原ペプチドをコードするDNAと、Stx2eBをコードするDNAとLTBをコードするDNA、Stx2eBをコードするDNAとCTBをコードするDNAまたはLTBをコードするDNAとCTBをコードするDNAとが、前記リンカーペプチドをコードするDNAを介してタンデムに連結されているDNAを含む。前記リンカーペプチドをコードするDNAは、例えば配列番号1(PG12)や配列番号3(PG12v2)等で表される。Stx2eBをコードするDNAとして、例えば、Stx2eB(Asn73)をコードするDNA(配列番号7)、Stx2eB(Asn73Ser)をコードするDNA(配列番号9)が挙げられる。LTBをコードするDNAとして、例えば、LTB(Asn90)をコードするDNA(配列番号11)、LTB(Asn90Ser)をコードするDNA(配列番号13)が挙げられる。CTBをコードするDNAとして、例えば、配列番号5の塩基配列を有するDNAが挙げられる。 抗原ペプチドをコードするDNAは、公知の情報に基づいてPCR等の手法により入手できるが、例えば、mSTpをコードするDNAとしては、配列番号15の塩基配列を有するDNAが挙げられる。

前記抗原ペプチドをコードするDNA、リンカーペプチドをコードするDNA、毒素BサブユニットDNAは、それぞれ終止コドンを除いて読み枠を合わせて連結される。

Stx2eB、LTB、CTBをコードするDNAは、例えば、配列番号7、9、11、13、5の塩基配列に基づいて、一般的な遺伝子工学的な手法により得ることができる。具体的には、各毒素を生産する細菌より、常法に従ってcDNAライブラリーを調製し、該ライブラリーから上記塩基配列に基づいて作製したプローブを用いて所望のクローンを選択する。また、上記塩基配列を基にした化学合成、上記塩基配列の5’及び3’末端の塩基配列をプライマーとし、ゲノムDNAを鋳型としたPCRなどにより合成することもできる。これらを公知の手法でリンカーをコードするDNAと連結させることにより融合タンパク質をコードするDNAが得られる。

本発明で用いる融合タンパク質をコードするDNAは、例えば、配列番号19または21で表される。 また、融合タンパク質をコードするDNAは、配列番号19または21の塩基配列を有す るDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであってもよい。「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。例えば、同一性が高い二つのDNAどうし、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の同一性を有する2つのDNAがハイブリダイズするが、それより同一性の低い2つのDNAがハイブリダイズしない条件が挙げられる。例えば2×SSC(330mM NaCl、30mM クエン酸)、42℃が挙げられ、好ましくは0.1×SSC(330mM NaCl、30mM クエン酸)、60℃が挙げられる。

融合タンパク質をコードするDNAは、該タンパク質を生産させる宿主細胞に応じて、ハイブリッドタンパク質の翻訳量が増大するように、融合タンパク質を構成するアミノ酸を示すコドンが適宜改変されていることも好ましい。 コドン改変の方法としては、例えばKang et al. (2004)の方法を参考にすることができる。また、宿主細胞において使用頻度の高いコドンを選択したり、GC含量が高いコドンを選択したり、宿主細胞のハウスキーピング遺伝子において使用頻度の高いコドンを選択したりする方法が挙げられる。

本発明で用いるDNA構築物において、好ましくは、前記融合タンパク質をコードするDNAが、エンハンサーに発現可能に連結されている。ここで、「発現可能」とは、本発明で用いるDNA構築物が適切なプロモーターを含むベクターに挿入され、該ベクターが適切な宿主細胞に導入された場合に、宿主細胞内で前記融合タンパク質が生産されることをいう。また、「連結」とは、2つのDNAが直接結合している場合も、他の塩基配列を介して結合している場合も含む概念である。 エンハンサーとしては、Kozak配列や植物由来のアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子の5’-非翻訳領域が挙げられる。植物で発現させる場合などは、好ましくは、前記ハイブリッドタンパク質をコードするDNAが、植物由来のアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子の5’-非翻訳領域に発現可能に連結されている。

アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子の5’-非翻訳領域とは、アルコールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の転写開始点から、翻訳開始点(ATG、メチオニン)の前までの塩基配列を含む領域をいう。前記領域は、植物に由来すればよいが、好ましくはナス科(Solanaceae)、アブラナ科(Brassicaceae)、キク科(Asteraceae)に属する植物、さらに好ましくはタバコ属(Nicotiana)、シロイヌナズナ属(Arabidopsis)、アキノノゲシ属(Lactuca)等に属する植物、より好ましくはタバコ(Nicotiana tabacum)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、レタス(Lactuca sativa)等に由来する。 前記アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子の5’-非翻訳領域としては、例えばタバコ(Nicotiana tabacum)由来のアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子の5’-非翻訳領域(NtADH5'UTR)(配列番号30)を用いることができ、翻訳開始点上流3塩基を改変したNtADH5'UTR領域(NtADHmod 5'UTR)(配列番号31)を用いることでさらに高翻訳が期待できる。 植物由来のアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子の5’-非翻訳領域を得る方法は、例えば、特開2012-19719号公報および国際公開WO2009/133882号パンフレットに記載されている。

本発明で用いるDNA構築物は、一般的な遺伝子工学的手法により作製することができ、植物由来のアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子の5’-非翻訳領域、植物由来の分泌シグナルペプチドをコードするDNA、及び融合タンパク質をコードするDNA、小胞体残留シグナルペプチドをコードするDNAなどの各DNAを、それぞれ、適当な制限酵素により切断し、適当なリガーゼで連結することで構築することができる。

本発明で用いる組換えベクターは、前記DNA構築物を含むことを特徴とする。本発明で用いる組換えベクターは、前記融合タンパク質をコードするDNAが、ベクターが導入される宿主細胞において発現可能なように、ベクター内に挿入されていればよい。ベクターは、宿主細胞において複製可能なものであれば特に制限されず、例えば、プラスミドDNA、ウイルスDNA等が挙げられる。また、ベクターは薬剤耐性遺伝子等の選択マーカーを含むことが好ましい。プラスミドDNAは、大腸菌やアグロバクテリウムからアルカリ抽出法(Birnboim, H. C. & Doly, J. (1979) Nucleic acid Res 7: 1513)又はその変法等により調製することができる。また、市販のプラスミドとして、例えばpBI221、pBI121、pBI101、pIG121Hm等を用いることもできる。ウイルスDNAとしては、例えばpTB2(Donson et al.,1991)等を用いることができる(Donson J., Kerney CM., Hilf ME., Dawson WO. Systemic expression of a bacterial gene by a tobacco mosaic virus-based vector. Proc. Natl. Acad. Sci.(1991) 88: 7204-7208を参照。)

ベクター内で用いられるプロモーターは、ベクターが導入される宿主細胞に応じて適宜選択することができる。例えば、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター(Odell et al.1985 Nature 313:810)、イネのアクチンプロモーター(Zhang et al.1991 Plant Cell 3:1155)、トウモロコシのユビキチンプロモーター(Cornejo et al.1993 Plant Mol.Biol.23:567)等が好ましく用いられる。また、ベクター内で用いられるターミネーターも、同様にベクターが導入される宿主細胞に応じて適宜選択することができる。例えば、ノパリン合成酵素遺伝子転写ターミネーター、カリフラワーモザイクウイルス35Sターミネーター、シロイヌナズナheat shock protein 18.2 遺伝子のターミネーター(HSP-T)等が好ましく用いられる。本発明で使用される好ましいターミネーターは、例えば、配列番号32で表されるHSP-Tである。

本発明で用いる組換えベクターは、例えば以下のようにして作製することができる。 まず、前記DNA構築物を適当な制限酵素で切断又はPCRによって制限酵素部位を付加し、ベクターの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入する。

本発明で用いる形質転換体は、前記組換えベクターで形質転換されていることを特徴とする。形質転換に用いられる宿主細胞は真核細胞及び原核細胞の何れでもよい。 真核細胞としては、哺乳動物細胞、酵母細胞、昆虫細胞などでもよいが、植物細胞が好ましく用いられ、中でもアキノノゲシ属(Lactuca)などのキク科(Asteraceae)、ナス科、アブラナ科、アカザ科に属する植物の細胞が好ましく用いられる。さらに、アキノノゲシ属(Lactuca)に属する植物の細胞、中でもレタス(Lactuca sativa)細胞が好ましく用いられる。宿主細胞としてレタス細胞を用いる場合は、ベクターは、カリフラワーモザイクウイルス35S RNAプロモーター等を用いることができる。 原核細胞としては、大腸菌(Escherichia coli)、アグロバクテリウム(Agrobacterium tumefaciens)等が用いられる。

本発明で用いる形質転換体は、一般的な遺伝子工学的手法を用いて、本発明で用いるベクターを宿主細胞に導入することにより作製することができる。例えば、アクロバクテリウムを利用した導入方法(Hood, et al., 1993, Transgenic, Res. 2:218,Hiei, et al.,1994 Plant J. 6:271)、エレクトロポレーション法(Tada, et al., 1990, Theor.Appl.Genet, 80:475)、ポリエチレングリコール法(Lazzeri, et al., 1991, Theor. Appl. Genet. 81:437)、パーティクルガン法(Sanford, et al., 1987, J. Part. Sci.tech. 5:27)、ポリカチオン法(Ohtsuki, et al., FEBS Lett. 1998 May 29;428(3):235-40.)などの方法を用いることが可能である。

本発明で用いるベクターを宿主細胞に導入した後、選択マーカーの表現型によって前記形質転換体を選抜することができる。また、選抜した形質転換体を培養することにより、前記融合タンパク質を生産することができる。培養に用いる培地及び条件は、形質転換体の種に応じて適宜選択することができる。 また、宿主細胞が植物細胞の場合には、選抜した植物細胞を常法に従って培養することにより、植物体を再生することができ、植物細胞内又は植物細胞の細胞膜外に前記融合タンパク質を蓄積させることができる。例えば、植物細胞の種類により異なるが、ジャガイモであればVisserら(Theor.Appl.Genet 78:594(1989))の方法が挙げられ、タバコであればNagataとTakebe(Planta 99:12(1971))の方法が挙げられる。

レタスの場合は、例えば0.1 mg /lのNAA(ナフタレン酢酸)、0.05 mg/lのBA(ベンジルアデニン)および0.5 g/lのpolyvinylpyrrolidoneを含むMS培地でシュートの再生が可能であり、再生したシュートを0.5 g/lのpolyvinylpyrrolidoneを含む1/2 MS培地で培養することで発根が可能である。 また、上記のようにして再生した植物体から種子を採取し、それを適当な方法で播種し栽培することにより、前記融合タンパク質を生産する植物体とすることができ、このような植物体も、前記形質転換体に含まれる。

アグロバクテリウム(Agrobacterium tumefaciens)は植物の傷口で感染させるもので、腫瘍誘発性のTi(tumor-inducing)プラスミドと呼ばれる大きな染色体外因子を運搬する。多くの研究所において、数年に亘る鋭意研究の後、アグロバクテリウム系の開発により、様々な植物組織を型通りに形質転換することが可能となった。この技術により転換された代表的な植物として、タバコ、トマト、ヒマワリ、綿、ナタネ、ジャガイモ、ポプラ、及びダイズ、イチゴ、イネなどがある。 様々な種の植物について、アグロバクテリウム(Agrobacterium tumefaciens)で形質転換された組織から植物を再生することが実証されている。この植物として、ヒマワリ、トマト、シロツメクサ、アブラナ、コットン、タバコ、ジャガイモ、トウモロコシ、イチゴ、イネ、その他多数の野菜作物を挙げることができる。 本発明においては、アグロバクテリウムTiベクターにより上記レタスをはじめとした可食植物を形質転換することもできる。

本発明のワクチンは、前記融合タンパク質を含むものであればよく、前記融合タンパク質をコードするDNAで形質転換された形質転換体を含んでいてもよい。本発明のワクチンは、前記融合タンパク質を含む形質転換体の全部を含んでいても、一部を含んでいてもよい。また、形質転換体をそのまま用いることもでき、乾燥、粉砕するなどして用いることもできる。また、本発明のワクチンには、融合タンパク質の免疫原性をさらに高めるアジュバントを配合することもできる。一般的には、安全性を考慮して水酸化アルミニウム、大腸菌の付着因子、例えば大腸菌の繊毛などがアジュバントとして用いられる。 本発明のワクチンを投与することにより、抗原ペプチドに対する免疫を高めることができ、抗原ペプチドが由来する病原体が引き起こす疾病の防除効果が期待できる。例えば、STを抗原ペプチドに使用する場合、大腸菌性下痢症に対する防除効果が期待できる。

本発明の免疫増強方法は、前記DNA構築物で形質転換された植物体などの形質転換体またはその乾燥物もしくは粉砕物を動物に投与することを特徴とする。投与対象としては、豚、、ニワトリ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコなどの非ヒト哺乳動物や魚類が挙げられる。また対象疾病としては、豚であれば、ブルセラ病、炭疽、破傷風、豚丹毒、豚赤痢、サルモネラ症、大腸菌症、萎縮性鼻炎、アクチノバシラス症、マイコプラズマ感染症、豚伝染性胃腸炎、豚流行性下痢発症、豚インフルエンザ、日本脳炎、オーエスキー病、疫、豚水泡病、豚コレラ、豚白血病、豚生殖器・呼吸器症侯群、ロタウイルス、回虫症、虫症、トキソプラズマ症、コクシジウム病などが挙げられる。ウシの対象疾病としては、牛肺疫、炭疽病、出血性敗血症、ブルセラ病、結核病、サルモネラ症、破傷風、牛疫、口蹄疫、流行性脳炎、狂犬病、水泡性口炎、リフトバレー病、ヨーネ病、ブルータング、アカバネ病、チュウザン病、ランピースキン病、牛ウイルス性下痢、牛白血病、ピロプラズマ病、アナプラズマ病などが挙げられる。ニワトリの対象疾病としてはサルモネラ感染症、マイコプラズマ病、鶏大腸菌症、ヘモフィルス、ニューカッスル病、高病原性鳥インフルエンザ、毒鶏伝染性気管支炎、鶏痘、鶏脳脊髄炎、コクシジウム病などが挙げられる。ヤギの対象疾病として、炭疽病、ブルセラ病、結核病、チュウザン病、口蹄疫、アカバネ病などが挙げられる。イヌの対象疾病として、レプトスピラ、細菌性腸炎、狂犬病、パルボウイルス感染症、ジステンバーウイルス感染症、犬伝染性気管支炎(ケンネルコフ)、コロナウイルス感染症、ヘルペスウイルス感染症、バベシア症などが挙げられる。ネコの対象疾病として、猫ヘモプラズマ感染症、リケッチア感染症、狂犬病、猫白血病ウイルス感染症、猫ヘルペスウイルス感染症、猫免疫不全ウイルス (FIV) 感染症、猫カリシウイルス感染症、猫ウイルス性鼻気管炎(FVR)、猫フィラリアなどが挙げられる。サカナの対象疾病として、連鎖球菌、ビブリオ病、イリドウイルス感染症などが挙げられる。 本発明のワクチンを豚に投与する場合、例えば、哺乳期〜120日齢のブタに投与することができ、哺乳期〜90日齢の豚に対して投与を行うことが好ましく、また繁殖期前後の母豚に対して投与を行うことが好ましい。免疫の方法としては、前記DNA構築物で形質転換された植物体を母豚に投与して、母豚が産生した抗体を、乳汁により子豚に与える方法、前記DNA構築物で形質転換された植物体を哺乳期〜90日齢の子豚に投与し、子豚を直接免疫する方法等が挙げられる。 本発明のワクチンを豚などの動物に投与する方法としては、豚の飼料に、前記DNA構築物で形質転換された植物体またはその乾燥物もしくは粉砕物を混合して与える方法、点鼻する方法などが挙げられる。本発明のワクチンは、一定の間隔をおいて、複数回投与することが好ましい。例えば、4〜7日おきに、合計2〜3回投与する方法が挙げられる。

以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。

実施例1 <大腸菌発現用ワクチン遺伝子の構築> ワクチン抗原候補として、1) 毒素原生大腸菌が生産する易熱性毒素の無毒Bサブユニット(LTB:配列番号12)、2) 毒素原生大腸菌が生産するSTp毒素の無毒化変異体(NTFYCCELCCNPLCAGCY(配列番号16)、以下mSTp)(Sato et al., 1994)、3)腸管出血性大腸菌が生産する志賀毒素2eの無毒Bサブユニット(Stx2eB)、を用いた。この際、Stx2eBは糖鎖無Stx2eB(N末端から73番目のアスパラギンをセリンに置換)(配列番号10)を使用した。mSTpをコードするDNAはSTpA13L-F (5’-gatcc aac acc ttc tac tgc tgc gag ttg tgc tgc-3’:配列番号23)とSTpA13L-R(5’-gatct gta gca gcc ggc gca caa ggg gtt gca gca caa ctc:配列番号24)を用いて増幅した。

LTBとmSTpをPG12リンカー(Matsui et al, Transgenic Res, 2011, 20:735-48:配列番号2)を介して融合したLTB-mSTp(配列番号18)、LTBとStx2eBをこの順または逆の順で融合し、さらにそれらのC末端にmSTpを融合したLTB-Stx2eB-mSTp(配列番号20)、Stx2eB-LTB-mSTp(配列番号22)をそれぞれ構築した。近傍配列改変型NtADH 5’-UTR(配列番号31)と長鎖型AtHSPターミネーター(Matsui et al., Plant Biotech., 2014, 31:191-194:配列番号32)を使用した。さらにタバコ由来β-D-glucan exohydrolase分泌シグナルペプチドコード配列(配列番号27)を用いることでコンビネーション化ワクチン抗原候補タンパク質の高蓄積化を図った。構築した遺伝子カセットはバイナリーベクターpRI909(TAKARA)に導入し、レタスの形質転換に用いた(図1)。

<アグロバクテリウムによるレタスへの遺伝子導入> レタス(Lactuca sativa L.)品種グリーンウェーブ(タキイ種苗)をMS培地 [1/2×ムラシゲ・スクーグ培地用混合塩類(MS塩、和光純薬工業)、1×Murashige and Skoog vitamin solution(MSビタミン、Sigma-Aldrich)、3% ショ糖、0.8% 寒天、pH5.8] に無菌播種後、10〜16日目の本葉を5 mm角程度に切断し、その切片をベクターコンストラクトを有するバイナリープラスミド(pRI909)を保持するアグロバクテリウム(Agrobacterium tumefacience EHA105)懸濁液に10分間浸漬後、共存培地 [1× MS塩、1× MSビタミン、0.05 mg/l 6-ベンジルアミノプリン(BA)、0.1 mg/l 1-ナフチル酢酸(NAA)、0.1 M アセトシリンゴン、3% ショ糖、0.8% 寒天、pH5.8] に置床し、25℃、暗所で2日間培養した。切片を滅菌水で洗浄後、選抜培地 [1× MS塩、1× MSビタミン、0.05 mg/l BA、0.1 mg/l NAA、0.5 g/l ポリビニルピロリドン(PVP)、50 mg/lカナマイシン(Km)、250 mg セフォタキシム(Cef)、3% ショ糖、0.8% 寒天、pH5.8] に置床し、25℃、蛍光灯下(2000-3000 lux)で培養を行った。以降、不定芽が得られるまで3〜4日間に1回(2回/週)の間隔で新しい選抜培地への移植を行った。不定芽から形成された再分化個体は発根培地 [1/2× MS塩、1× MSビタミン、0.5 g/l PVP、250 mg Cef、3% ショ糖、0.8% 寒天、pH5.8] に移植し、同条件で培養を行った。以降、3〜4日間に1回(2回/週)の間隔で新しい発根培地への移植を行った。発根した再分化個体は鉢植えにし、同条件で栽培を行った。

<レタスからのタンパク質抽出> タンパク質抽出はTCA-acetone法(Shultz et al. Plant Mol Biol Rep, 2005, 23:405)に従い、液体窒素凍結後、-80℃で保存した遺伝子導入レタス本葉を用いて行った。100〜200 mgのサンプルをTissueLyzer II(QIAGEN)を用い破砕後、サンプルの5倍量の TCA-acetone(10% トリクロロ酢酸、90% アセトン、0.07% 2-メルカプトエタノール)を添加、混合し、-20℃で1時間静置後、16,000×g、4℃、30分間遠心操作を行い、上清を除去し、タンパク質を含む沈殿を得た。さらに夾雑物を除去するために、サンプルの5倍量の acetone/BME(100% アセトン、0.07% 2-メルカプトエタノール)を添加、混合し、16,000×g、4℃、10分間遠心操作を行い、上清を除去した。本夾雑物除去操作はさらに2回行った。沈殿は減圧乾燥後、サンプルの2倍量の 抽出Iバッファー [0.5 M 塩化ナトリウム、5 mM イミダゾール、6 M 尿素、20 mM トリスヒドロキシメチルアミノメタン(Tris)-HCl、pH 7.9] に懸濁し、16,000×g、4℃、10分間遠心を行い、上清を回収、タンパク質溶液を得た。タンパク質濃度の測定は、Protein Assay Kit II(Bio-Rad)を用いて行った。

<ウエスタン解析> 得られたタンパク質溶液をマイクロチューブに適量入れ、同量のサンプルバッファー(EZ Apply、ATTO製)を加え混合し、沸騰水中で5分間加温し、サンプルのSDS化を行った。タンパク質定量時の標準物質には精製LTB+を用いた。これを抽出Iバッファーで2倍希釈を繰り返すことにより希釈系列を作成し、これら希釈系列をスタンダードとして用いた。 タンパク質の電気泳動(SDS-PAGE)は、電気泳動槽(ミニプロティアンTetraセル)およびミニプロティアンTGX-ゲル(BIO RAD)を用いた。電気泳動バッファー(EZ Run、ATTO製)を入れ、ウェルにSDS化したサンプルを5 μLアプライし、200 V定電圧で40分間行った。 電気泳動後のゲルは、トランスブロット転写パック(BIO RAD)を用い、トランスブロットTurbo(BIO RAD)でブロッティングを行った。 ブロッティング後のメンブレンはブロッキング溶液(TBS系, pH7.2、ナカライテスク)に浸し、室温で1時間振とうまたは4℃で16時間静置後、TBS-T(137 mM 塩化ナトリウム、2.68 mM 塩化カリウム、1% ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート、25 mM Tris-HCl、pH 7.4)中で室温、5分間の振とうを3回行い洗浄した。LTBタンパク質の検出には、抗血清Rabbit-Antiserum Anti-LTp 991109(inactive)(0.1% NaN3)AO をTBS-Tで10,000倍希釈して使用した。本希釈液中にメンブレンを浸し、室温で2時間振とうすることにより抗原抗体反応を行い、TBS-T中で室温、5分間の振とうを3回行い洗浄した。二次抗体にはTBS-Tで10,000倍希釈したAnti-Rabbit IgG, AP-linked Antibody(Cell Signaling TECHNOLOGY)を使用した。本希釈液中にメンブレンを浸し、室温で1時間振とうすることにより抗原抗体反応を行い、TBS-T中で室温、5分間の振とうを3回行い洗浄した。アルカリホスファターゼによる発色反応は、発色液(0.1 M 塩化ナトリウム、5 mM 塩化マグネシウム、0.33 mg/mLニトロブルーテトラゾリウム、0.33 mg/mL 5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-リン酸、0.1 M Tris-HCl、pH9.5、)中にメンブレンを浸し、室温で7分間振とうすることにより行い、メンブレンを蒸留水で洗浄した後、常温で乾燥した。 発色したメンブレンはスキャナー(PM-A900、エプソン)により解像度600 dpiで画像化し、画像解析ソフト(CS Analyzer ver. 3.0、アトー)を用い、LTBタンパク質の定量を行った。

<組換えレタスのマウス経口免疫> 6週齢のBalb/c雌マウスを導入し、馴化、免疫前採血を行い、8週齢から免疫を開始した。730 μg相当のLTBが含まれる組換えレタス末を生理食塩水で懸濁後、胃ゾンデを用いて経口投与した。経口投与は7日毎に4回行った(図2)。腸管洗浄液の採取は、小腸回盲部から5 cmを切り取り5 mLのPBSで洗浄した。使用時まで-80℃で保存し、抗体価測定時にはプロテアーゼ阻害剤を添加した。

<抗体価の測定> 抗体価の測定は、2.5 μg/mLの抗原を100 μL/wellで固相化したELISAプレート(Maxisorp:Nunc)を用いて行った。抗原は、抗Stx2eB抗体に関しては精製した無毒化Stx2eBを、抗LTp抗体に関しては精製したLTpを、抗mSTp抗体に関しては合成STpペプチドをそれぞれ用いた。被験血清は牛血清アルブミン(0.1% w/v)を含む希釈液で2倍希釈列を作製し、ELISAプレートにアプライした。2次抗体には西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識抗体を用い、基質に過酸化水素、ABTS(2,2'-azino-bis(3-ethylbenzthiazoline-6-sulphonic acid))を用いた発色法にて検出した。陰性コントロールである希釈液に対する吸光度の平均の2倍の値以上の吸光度を抗体価陽性とし、陽性となる最大希釈率をその血清の抗体価とした。免疫前血清について抗体価が検出された場合は免疫前血清の抗体価値を除した値を当該血清の抗体価とした。

<結果> (1) 遺伝子組換え植物の作出 図1に示すコンストラクトを用いて遺伝子組換えレタスを作出した。LTB-mSTp導入レタスでは推定分子量(約15 kDa)の位置にバンドが検出された(図3A)。LTB-Stx2eB-mSTpとStx2eB-LTB-mSTp導入レタスでは推定分子量(約24 kDa)の位置にバンドが検出された(図3B)。またLTBへの糖鎖付加に由来すると推定されるシグナルも検出された。図3Cに各コンビネーションワクチン抗原の蓄積量を示す。

(2) 遺伝子組換えワクチン植物のマウス経口免疫 (1)で作出した遺伝子組換えレタスを凍結乾燥および粉砕し、マウスに経口投与した。投与粉末量はLTB等量で揃えた。剖検時に小腸洗浄液を回収し、抗STp IgA抗体価を測定した結果、LTB-mSTp投与群では抗体価上昇が見られた個体割合は10匹中3匹であったのに対し、LTB-Stx2eB-mSTpおよびStx2eB-LTB-mSTp投与群ではそれぞれ7匹、4匹で明瞭な抗体誘導が確認された(図4)。また抗体価タイターも、LTB-mSTpよりもLTB-Stx2eB-mSTpとStx2eB-LTB-mSTp群で高値を示した。

実施例2 <遺伝子構築> 以下の各疾病に対するワクチン抗原をLTB-Stx2eBに融合した。まずLTB-Stx2eB融合遺伝子をpYES2(invitrogen)に導入した。

イヌパルボウイルス中和エピトープとしてカプシドタンパク質VP2の中和エピトープに由来する配列(SDGAVQPDGGQPAVRNE:配列番号33)を用いた(Casal et al., Journal of Virology, 1995 69, 7274-7277)。本エピトープは株間での保存性が高い配列である。例えばDNA配列は5’-tcggacggcgcggtgcagccggacggcggccagccggcggtgcggaacgag-3’(配列番号34)で表される。 本中和エピトープ領域DNAを、CP-F primer (5’-TGGTTCTCCTAGATCC TCG GAC GGC GCG GTG CAG CCG GAC GGC GGC CAG CCG GCG GTG-3’ :配列番号35)とCP-R primer (5’-CCTTAGAGCTCCCGGGTACTATCAGTCCTT CTC GTT CCG CAC CGC CGG CTG GCC GCC-3’ :配列番号36)をアニーリングし、DNA polymeraseで伸長反応を行って作製した。またStx2eBの下流領域に相当する断片を2eB-Sal-F primer (5’-GGTCACGATCATCTCGTCGACGTGCTCGTC-3’ :配列番号37)とPG-R primer (5’-GGATCTAGGAGAACCAGGACCAGAACCAGGTCC-3’ :配列番号38)および鋳型としてpYES2 LTB-Stx2eBを用いてPCRを行って増幅した。得られた、中和エピトープ断片とSts2eB断片を、相同組換えによりGeneArt Seamless PLUS Cloning and Assembly Kits(Invitrogen)を用いてpYES2 LTB-Stx2eBに導入しC末端に抗原領域を付加した(図5)。

ブタパルボウイルス中和エピトープとしてカプシドタンパク質VP2の中和エピトープに由来する配列(VEQHNPINAGTELSAT:配列番号39)を用いた(Kamstrup et al., Virus Research, 1998, 53, 163-173)。本エピトープは株間での保存性が高い配列である。例えばDNA配列は5’-gtggagcagcacaaccccatcaacgccggcaccgagctgtccgccacc-3’ (配列番号40)で表される。 本中和エピトープ領域DNAを、PP-F primer (5’-TGGTTCTCCTAGATCC gtg gag cag cac aac ccc atc aac gcc ggc acc gag ctg-3’ :配列番号41)とPP-R primer (5’-CCTTAGAGCTCCCGGGTACTATCAGTCCTT ggt ggc gga cag ctc ggt gcc ggc gtt gat-3’ :配列番号42)をアニーリングし、DNA polymeraseで伸長反応を行って作製した。得られた、中和エピトープ断片と前述のSts2eB断片を、相同組換えによりGeneArt Seamless PLUS Cloning and Assembly Kits(Invitrogen)を用いてpYES2 LTB-Stx2eBに導入しC末端に抗原領域を付加した。

ネコ免疫不全ウイルス中和エピトープとしてエンベロープタンパク質gp120の中和エピトープに由来する配列(GSWMRAISSWRHRNRWEWRPDF:配列番号43)を用いた(Lombardi et al., Journal of Virology, 1993, 67, 4742-4749)。本エピトープは株間での保存性が高い配列である。例えばDNA配列は5’- ggctcctggatgagggccatctcctcctggaggcacaggaacaggtgggagtggaggcccgacttc -3’ (配列番号44)で表される。 本中和エピトープ領域DNAを、FIV-F primer (5’-TGGTTCTCCTAGATCC ggc tcc tgg atg agg gcc atc tcc tcc tgg agg-3’ :配列番号45)、FIV-M primer (5’-ctc cca cct gtt cct gtg cct cca gga gga gat ggc-3’ :配列番号46)とFIV-R primer (5’-CCTTAGAGCTCCCGGGTACTATCAGTCCTT gaa gtc ggg cct cca ctc cca cct gtt cct gtg-3’ :配列番号47)をアニーリングし、DNA polymeraseで伸長反応を行って作製した。得られた、中和エピトープ断片と前述のSts2eB断片を、相同組換えによりGeneArt Seamless PLUS Cloning and Assembly Kits(Invitrogen)を用いてpYES2 LTB-Stx2eBに導入しC末端に抗原領域を付加した。

ブタ流行性下痢ウイルス中和エピトープとしてスパイクタンパク質の中和エピトープに由来する2種類の配列(YSNIGVCK:配列番号48)(Chen et al.,Viruses, 2013, 5, 2601-2613)と(RGPRLQPYE:配列番号49)(Deu et al., Virus Research 2008, 132, 192-196)を融合した配列(YSNIGVCKSSRGPRLQPYE:配列番号50)を用いた。本エピトープは株間での保存性が高い配列である。例えばDNA配列は5’- tactccaacatcggcgtctgcaagtcctcccggggcccccggttgcagccctacgag -3’ (配列番号51)で表される。 本中和エピトープ領域DNAを、PED-F primer (5’-TGGTTCTCCTAGATCC tac tcc aac atc ggc gtc tgc aag tcc tcc cgg ggc ccc cgg-3’ :配列番号52)とPED-R primer (5’-CCTTAGAGCTCCCGGGTACTATCAGTCCTT CTC GTA GGG CTG CAA CCG GGG GCC CCG GGA GGA CTT-3’ :配列番号53)をアニーリングし、DNA polymeraseで伸長反応を行って作製した。得られた、中和エピトープ断片と前述のSts2eB断片を、相同組換えによりGeneArt Seamless PLUS Cloning and Assembly Kits(Invitrogen)を用いてpYES2 LTB-Stx2eBに導入しC末端に抗原領域を付加した。

ブタロタウイルスA型ワクチン抗原候補としてVP7タンパク質のエピトープに由来する2種類の配列(TEASTQIGDTEWKN:配列番号54)と(TTNPATFEEVAKNEKL:配列番号55)(Nishikawa et al., Virology, 1989, 171, 503-515)を融合した配列(TEASTQIGDTEWKNSTTNPATFEEVAKNEKL:配列番号56)を用いた。例えばDNA配列は5’- accgaggcctccacccagatcggcgacaccgagtggaagaactccaccaccaaccccgccaccttcgaggaggtggccaagaacgagaagttg -3’ (配列番号57)で表される。 本領域DNAを、RoA7-F primer (5’-TGGTTCTCCTAGATCC acc gag gcc tcc acc cag atc ggc gac acc gag tgg aag aac tcc acc acc aac ccc gcc-3’ :配列番号58)、RoA7-M primer (5’- ggc cac ctc ctc gaa ggt ggc ggg gtt ggt ggt gga-3’ :配列番号59)とRoA7-R primer (5’- CCTTAGAGCTCCCGGGTACTATCAGTCCTT CAA CTT CTC GTT CTT GGC CAC CTC CTC GAA GGT GGC -3’ :配列番号60)をアニーリングし、DNA polymeraseで伸長反応を行って作製した。得られた、中和エピトープ断片と前述のSts2eB断片を、相同組換えによりGeneArt Seamless PLUS Cloning and Assembly Kits(Invitrogen)を用いてpYES2 LTB-Stx2eBに導入しC末端に抗原領域を付加した。

ブタロタウイルスC型ワクチン抗原候補としてVP7タンパク質のエピトープに由来する2種類の配列(NAAIGSPGPGKADGLLNDNNYAQ:配列番号61)と(SPASTETYEVVSNDTQL:配列番号62)を融合した配列(NAAIGSPGPGKADGLLNDNNYAQSSPASTETYEVVSNDTQL:配列番号63)を用いた。例えばDNA配列は5’- aacgccgccatcggctcccccggccccggcaaggccgacggcctgctgaacgacaacaactacgcccagtcctcccccgcctccaccgagacctacgaggtggtgtccaacgacacccagctg -3’ (配列番号64)で表される。 本領域DNAを、RoC7-F primer (5’- TGGTTCTCCTAGATCC aac gcc gcc atc ggc tcc ccc ggc ccc ggc aag gcc gac ggc ctg ctg aac gac aac -3’ :配列番号65)、RoC7-M primer (5’- cac cac ctc gta ggt ctc ggt gga ggc ggg gga gga ctg ggc gta gtt gtt gtc gtt cag cag gcc gtc -3’ :配列番号66)とRoC7-R primer (5’- CCTTAGAGCTCCCGGGTACTATCAGTCCTT cag ctg ggt gtc gtt gga cac cac ctc gta ggt ctc ggt -3’ :配列番号67)をアニーリングし、DNA polymeraseで伸長反応を行って作製した。得られた、中和エピトープ断片と前述のSts2eB断片を、相同組換えによりGeneArt Seamless PLUS Cloning and Assembly Kits(Invitrogen)を用いてpYES2 LTB-Stx2eBに導入しC末端に抗原領域を付加した。

<酵母の形質転換とタンパク質発現> 酵母(Saccharomyces cerevisiae INVSc1, Invitrogen)は以下のように形質転換した。酵母をYPD培地(1% yeast extract, 2% peptone, 2% dextrose(D-glucose))で30℃、200rpmで一晩振盪培養した。10 mL のYPD 中にOD600が0.2-0.4になるように希釈した後、OD600が0.6-1.0になるまで30℃、200rpmで振盪培養した。500 x g、 室温で5 分間遠心し、細胞をペレットにし、上清を捨てた。10 mL のSolution I(S.c. EasyComp Transformation Kit, Invitrogen)に懸濁した。500 x g、 室温で5 分間遠心し、細胞をペレットにし、上清を捨てた。1 mLのSolutionII(S.c. EasyComp Transformation Kit, Invitrogen)に懸濁し、50 μL づつ分注し、コンピテントセルとした。使用するまで-80 ℃の冷凍庫に保管した(細胞壁にダメージを与えるため液体窒素での急速冷凍は行わない)。 得られたコンピテントセルを融解して室温に戻し、1μgのpYESプラスミドを添加した後、500 μL のSolutionIII(室温)を添加しボルテックスした。30℃にて1時間振盪した(15分ごとにボルテックスを行った)。1 mLのYPD培地を添加し、30℃にて1時間振盪培養した。3,000 x g、 室温で5 分間遠心し、細胞をペレットにして上清を除いた。100 μLのSolutionIIIに懸濁し、2% glucose を含むSC-Ura培地 (6.7g/L yeast nitrogen base, 0.1g/L adenine, 0.1g/L arginine, 0.1g/L cysteine, 0.1g/L leucine, 0.1g/L lysine, 0.1g/L threonine, 0.1g/L tryptophan, 0.05g/L aspartic acid, 0.05g/L histidine, 0.05g/L isoleucine, 0.05g/L methionine, 0.05g/L phenylalanine, 0.05g/L proline, 0.05g/L serine, 0.05g/L tyrosine, 0.05g/L valine)にプレーティングした。30℃で2-4日静置培養した。 酵母におけるタンパク質発現は以下のように行った。形質転換酵母のシングルコロニーを2% ラフィノースを含むSC-Ura培地を用いて30℃、200rpmで一晩振盪培養した。培地10 mLのOD600を0.4にするのに必要な酵母細胞を遠心(1,500 x g、 室温で5 分間)で集め、2%ガラクトースを含むSC-Ura 10 mLに懸濁し、発現誘導した。30℃、200rpmで振盪培養し、経時的にサンプリングを行った。

<ウエスタン解析> 得られた酵母培養液200 μLと、同量のサンプルバッファー(EZ Apply、ATTO製)を加え混合し、沸騰水中で5分間加温し、サンプルのSDS化を行った。タンパク質の電気泳動(SDS-PAGE)は、電気泳動槽(ミニプロティアンTetraセル)およびミニプロティアンTGX-ゲル(BIO RAD)を用いた。電気泳動バッファー(EZ Run、ATTO製)を入れ、ウェルにSDS化したサンプルを5 μLアプライし、200 V定電圧で40分間行った。 電気泳動後のゲルは、トランスブロット転写パック(BIO RAD)を用い、トランスブロットTurbo(BIO RAD)でブロッティングを行った。 ブロッティング後のメンブレンはブロッキング溶液(TBS系, pH7.2、ナカライテスク)に浸し、室温で1時間振とうまたは4℃で16時間静置後、TBS-T(137 mM 塩化ナトリウム、2.68 mM 塩化カリウム、1% ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート、25 mM Tris-HCl、pH 7.4)中で室温、5分間の振とうを3回行い洗浄した。ワクチンタンパク質の検出には、抗Stx2eBモノクロ抗体をTBS-Tで2,000倍希釈して使用した。本希釈液中にメンブレンを浸し、室温で2時間振とうすることにより抗原抗体反応を行い、TBS-T中で室温、5分間の振とうを3回行い洗浄した。二次抗体にはTBS-Tで2,000倍希釈したAnti-Rat IgG, AP-linked Antibody(Promega)を使用した。本希釈液中にメンブレンを浸し、室温で1時間振とうすることにより抗原抗体反応を行い、TBS-T中で室温、5分間の振とうを3回行い洗浄した。アルカリホスファターゼによる発色反応は、発色液(0.1 M 塩化ナトリウム、5 mM 塩化マグネシウム、0.33 mg/mLニトロブルーテトラゾリウム、0.33 mg/mL 5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-リン酸、0.1 M Tris-HCl(pH9.5))中にメンブレンを浸し、室温で7分間振とうすることにより行い、メンブレンを蒸留水で洗浄した後、常温で乾燥した。

<結果> 遺伝子組換え酵母における各融合抗原の発現を図6に示す。いずれのワクチンもタンパク質の蓄積が確認された。

実施例3 <遺伝子構築> 実施例2に記載の方法と同様にしてLTB-Stx2eBのC末端にイヌパルボウイルス中和エピトープとしてカプシドタンパク質VP2の中和エピトープに由来する配列(SDGAVQPDGGQPAVRNE:配列番号33)(以下VP2と表記)を連結し、さらに精製用のタグとして6×Hisを融合し、分泌シグナルペプチドを付加した融合タンパク質(LBVP2)を発現させるための遺伝子構築物を作製した。この遺伝子構築物を大腸菌用発現ベクターpET15bに挿入した。得られた発現ベクターを大腸菌BL21 pLys株に形質転換した。

<大腸菌を用いた組換えタンパク質の発現> 組換えプラスミドを持つ大腸菌のコロニーを100mg/Lのアンピシリンを含む2×YT培地5mlを入れた試験管4本に植菌し、180 rpm, 37℃で一晩培養した。この前培養液20mlを100mg/Lのアンピシリンを含む2×YT培地1Lに植菌し、180 rpm, 37℃でO.D.600が0.4程度になるまで培養した。終濃度1 mMのIPTGを添加し、22℃、120 rpmで4時間培養した。培養液を8,000 rpm、5分間遠心し、得られた菌体を使用時まで-80℃で保管した。

<大腸菌からの可溶性タンパク質の調製> 培養液 1L相当の菌体に対して100 mlの溶解液(10 ml Bug buster, 90 ml Equi. Buffer, 500 ml DNaseI)を添加し、室温で30分間溶菌を行った後、8,000 rpm, 4℃で15分間遠心分離を行った。上清を新しい遠沈管に移して、さらに同様の遠心分離を2回行った。得られた上清を精製に使用した。

<アフィニティーカラムによる精製> TALON (Cobalt) (Clontech)を用いた精製を行った。レジン5mlをエコノパックカラム(BIO-RAD)に充填し、Equi. Buffer 50mlを通し、平衡化した。上述のタンパク質溶液とレジンを混合し、室温で30分間混合した。この懸濁液をエコノパックカラムに戻し、タンパク質溶液を通過させた。5 mlのEqui. Buffer を10回通し、非結合タンパク質を洗浄した。O.D. 280を計測して、タンパク質の溶出がないことを確認した。Elution Buffer 2ml を添加し、溶出液を2mlチューブに回収した。この溶出操作をあと9回繰り返し、10個の溶出画分を得た。レジンをEqui. Bufferで洗浄した。図7に示すように、LBVP2の精製が確認できた。

<ウサギへの免疫> 精製された200 mgの抗原をコンプリートアジュバントと共にウサギ2羽のフットパットに注射した。4週間後に100 mgの抗原をコンプリートアジュバントと共にウサギ2羽のフットパットに注射した。免疫前に前採血を、初回免疫の4,5週間後に途中採血を、6週間後に全採血を行った。

<抗体価測定> 各採血について1000, 5000, 25000, 125000倍希釈した後に、免疫抗原(LBVP2)もしくはVP2合成ペプチド(MSDGAVQPDGGQPAVRNERATG:配列番号68)を固層しELISAを行った。その結果、LBVP2および合成VP2ペプチドに対する抗体価の上昇を確認した(図8,9)。

実施例4 <遺伝子組換えレタスの作出> 実施例2に記載のLTB-Stx2eBのC末端にイヌパルボウイルス中和エピトープ(以下VP2と表記)を連結したDNA断片を、実施例1に記載の植物発現用ベクターであるpRI909に挿入した。得られたプラスミドを用い、実施例1に記載の方法で遺伝子組換えレタスを作出した。抗Stx2eB抗体を用いたウェスタン解析を行い、目的のLBVP2組換えタンパク質の蓄積を確認した(図10)。また、LTBへの糖鎖付加に由来すると思われるシグナルも検出された。

本発明の融合タンパク質は、畜産等の分野で有用である。

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