NPU遺伝子変異により、感光感温性不稔系統を創製する方法及びその使用

申请号 JP2018513548 申请日 2016-02-03 公开(公告)号 JP2018532393A 公开(公告)日 2018-11-08
申请人 上海師範大学; SHANGHAI NORMAL UNIVERSITY; 发明人 楊仲南; 張丞; 朱駿;
摘要 NPU(NO PRIMEXINE AND PLASMA MEMBRANE UNDULATION)遺伝子変異により、感光感温性不稔系統を創製する方法及びその使用を提供する。該感光感温性不稔系統は、前記 植物 花粉の発育に関連するNPUタンパクの発現を抑制することにより、作り上げたものである。植物におけるNPUタンパクの発現または活性を抑制することにより、植物株の不稔を維持することと、それから、植物株の生長環境の 温度 低減及び/又は植物株の光照射時間の減少により、植物株を不稔から可稔へ転換させることと、最後に、植物株を可稔に維持して育種することと、を含む植物育成の方法をさらに提供する。
权利要求

植物の不稔系統の育成方法であって、前記植物株における花粉の発育に関連するNPUタンパクの発現または活性を抑制することを含むことを特徴とする方法。前記「植物株における花粉の発育に関連するNPUタンパクの発現または活性を抑制する」が、次のいずれか1つの方式により、実現することを特徴とする請求項1に記載の植物の不稔系統の育成方法。 1)前記NPUタンパクのポリヌクレオチドの一部又は完全な欠失をコードする 2)発現制御配列を修飾する 3)染色体上の配列を修飾する 又は 4)上記1)〜3)における任意の組合せ前記「植物株における花粉の発育に関連するNPUタンパクの発現または活性を抑制する」が、次のいずれか1つの方式により実現することを特徴とする請求項1に記載の植物の不稔系統の育成方法。 1)前記植物株におけるNPU遺伝子の発現レベルを抑制する 2)前記植物株におけるNPU遺伝子を欠失させる 3)前記植物株におけるNPU遺伝子を変異させる 又は 4)上記1)〜3)における任意の組合せ前記NPUタンパクの野生型アミノ酸配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の植物の不稔系統の育成方法。前記NPUタンパクが、植物株の花序又は葯における細胞、組織または器官で特異的に発現するものであることを特徴とする請求項1に記載の植物の不稔系統の育成方法。請求項1に記載のNPUタンパクをコードする遺伝子が、植物の不稔系統の育成、または植物の不稔系統の育成の試薬またはキットの製造における使用。植物を不稔から可稔へ転換させる方法であって、 花粉の一次外膜の堆積を抑制するステップ1と、 植物株の代謝レベルを低減し、一次外膜の堆積を回復させるステップ2と、を含み、 前記植物は、請求項1の前記方法で育成された植物の不稔系統であり、 ステップ1で、前記「花粉の一次外膜の堆積を抑制する」は、前記植物株における花粉の発育に関連するNPUタンパクの発現または活性を抑制することにより、実現したものである方法。ステップ2で、前記植物株の代謝レベルを低減するのは、植物株の生長環境の温度低減と、植物株の光照射時間の減少とのうち、1つまたは2つの方法を組み合わせることにより、実現したものであることを特徴とする請求項7に記載の植物を不稔から可稔へ転換させる方法。植物の育種方法であって、 植物株の不稔を維持するステップ1と、 植物株を不稔から可稔へ転換させるステップ2と、 植物株の可稔を維持して育種するステップ3と、を含み、 ステップ1で、前記の植物株は、請求項1に記載の方法で育成された植物の不稔系統の植物株であり、ステップ2で、前記の植物株を不稔から可稔へ転換させる方法は、請求項7に記載の植物を不稔から可稔へ転換させる方法であることを特徴とする方法。植物細胞であって、前記植物細胞が発育してなった植物株における、花粉の発育に関連するNPUタンパクの発現または活性が抑制されたことを特徴とする植物細胞。

说明书全文

本発明は、農業および生物技術の分野に属し、特に、NPU遺伝子変異により、感光感温性不稔系統を創製する方法及びその使用に関するものである。

農業生産において、雄性不稔系統は、ハイブリッド種子生産、農業生産量の向上において巨大な優位を占める。雄性不稔は、しばしば、細胞質雄性不稔(CMS)と細胞核雄性不稔(GMS)に分けられる。三系交雑系の確立は、細胞質雄性不稔に依存しているが、しかし、細胞質雄性不稔には、それ自体の欠陥がある。まず、細胞質雄性不稔株の品質は一般的に劣る。次に、三系交雑のイネを組み合わせて増産する潜在がますます小さくなっている。また、WA型の雄性不稔の細胞質が単一であるため、細胞質雄性不稔の喪失またはある壊滅的な病虫害が発生すると、莫大な損失になる。

細胞核雄性不稔における感光感温性条件による雄性不稔の発見に伴い、二系法による交雑イネが機運に応じて生まれた。三系法に対し、感光感温性不稔系統は、不稔系統と維持系統の二つの状態を兼ね持つ。三系法と比較すると、二系法は、回復-維持の関係に制限されず、即ち、細胞核不稔で多くの通常の品種と交雑することができ、組み合わせが自由であるため、優れた形質の雑種強勢をより容易に得ることができ、根本的に三系における雄性不稔の細胞質の単一化という問題を解決する。近年、二系交雑イネの中国の農業生産における応用がますます幅広くなってきた。

1973年に石明松は、すでに中国の湖北省で晩生ジャポニカ品種(Oryza sativa ssp.Japonnica)の農墾58から感光感温性不稔系統を選別して一系両用のイネ雑種強勢の利用の新たな手段を提出した。その後、農墾58S(NK58S)を花粉親とし、インディカ米と交雑して得られた培矮64S(PA64S)も二系交雑において幅広く応用されたが、しかし、培矮64Sの稔性は、温度に対してさらに敏感である。イネにおいて、感光感温性不稔系統は、単一劣性遺伝子座に制御される。研究により、農墾58Sと培矮64Sの不稔形質がともに同一の遺伝子座によって制御され、且つ温度と光照射のいずれもこの部位に影響を与えることがはっきり示されている。

今まで、イネにおいて、pms1、pms2、pms3、rpms1、rpms2、tms1、tms2、tms3、tms4、tms5、tms6、rtms1およびMs−hと、計13個の感光感温性不稔系統が発見され、それぞれ7、3、12、8、9、8、7、6、2、2、5、10および9番目の染色体に位置付けられる。研究により、突然変異のスモールRNA(small RNA)であるosa−smR5864mは、pms2およびp/tms2−1(農墾58Sおよび培矮64S)変異体の不稔フェノタイプをもたらしたことが発見された。

シロイヌナズナは、小さいゲノム、速い生長周期および大量の変異体ライブラリーなどの比類のない利点により、植物学や生物学の分野においてモデル植物になっている。 また、シロイヌナズナは、温度、光照射などの条件が厳格に制御された狭い空間で培養することができる。研究により、いくつかのシロイヌナズナの条件的不稔変異体、例えばPEAMME遺伝子変異体t365やGA/IAA生物合成が阻害されるms33変異体などは、いずれも感温性不稔のフェノタイプが示されたことを発見した。

現在、植物雄性不稔の新しい種質を発掘する通常の手段は、主に天然雄性不稔のオリジナル株の発見、人工による突然変異誘起及び連続戻し交雑核置換を含み、例えば、我が国で早期のWA型やMA型イネ雄性不稔細胞質は、天然雄性不稔のオリジナル株を利用したものであり、新疆農業科学院が育成した新海不稔系統綿は、海島綿の雑種により60COγ放射線で突然変異が誘起されたものである。しかし、従来の育種方法で理想的な稔性転換可能な雄性不稔系統を選別し育成するには、いろいろな困難が存在する。例えば、雄性不稔系統種質の資源が限られており、稔性転換の周期が長過ぎて、交雑が親和でなく、組合せ選び育ての限界が大きいなど。現在、本分野において、まだ植物育種プロセスに用いる制御方式が簡単で便利な植物の不稔系統が不足している。したがって、制御方式が簡単で便利な植物の不稔系統の育成技術を必要とする。

本分野に存在する技術課題に対し、本発明は、NPU遺伝子変異により、感光感温性不稔系統を創製する方法及びその使用を提供する。

本発明の第1の側面によれば、植物の不稔系統の育成方法であって、前記植物株における花粉の発育に関連するNPUタンパクの発現または活性を抑制することを含む方法を提供することにある。

前記NPUタンパクは、主に一次外膜の堆積を受け持つ。

本発明の一つの好ましい実施例として、前記NPUタンパクを広義に理解することができ、NPUタンパクでもよく、その相同のタンパクでもよい。

本発明の一つの好ましい実施例として、前記植物は、農作物、林業植物や花卉などでもよい。好ましくは、イネ科、豆科及びアブラナ科でもよく、より好ましくは、シロイヌナズナ、イネ、コウリャン、コムギ、大豆及びトウモロコシでもよい。

本発明の一つの好ましい実施例として、前記NPUタンパクは、植物株の花序又は葯における細胞、組織または器官で特異的に発現するものである。

本発明の一つの好ましい実施例として、前記細胞または組織は、タペート層、小胞子母細胞又はその組合せである。

本発明の一つの好ましい実施例として、前記NPUタンパクは、葯の発育期で特異的に発現するものである。

本発明の一つの好ましい実施例として、前記NPUタンパクは、葯の発育の6、7期目で特異的に発現するものである。

本発明の一つの好ましい実施例として、前記葯の発育期は、葯の形成前の段階(−3日〜0日)、葯の形成段階及び葯の形成後の段階(1日〜5日)である。 ここで、0日とは、葯の形成の1日目を指し、−3日とは、葯の形成の当日を開始点として、前へ推算した3日目を指し、1日、5日は、それぞれ葯の形成の当日を開始点として、後へ推算した1日目及び5日目を指す。

本発明の一つの好ましい実施例として、前記NPUタンパクの発現は、花粉が減数分裂期及び四分子期でピークに達する。

本発明の一つの好ましい実施例として、前記NPUタンパクは、植物株において特に存在する1種のタンパク質であり、本発明に適用する前記の「花粉の発育に関連するNPUタンパク」が特に制限されず、如何なる植物品種由来のものでもよい。代表的な植物は、次のものを含むが、但し、これに限らず、イネ(遺伝子番号:Os05G0168400、シロイヌナズナのオルソログNPUタンパクとの相同性が85%)、コウリャン (遺伝子番号:Sb09G005000、シロイヌナズナのオルソログNPUタンパクとの相同性が84%)、コムギ(遺伝子番号:TRIUR312622、シロイヌナズナのオルソログNPUタンパクとの相同性が82%)、大豆(遺伝子番号:Glyma.18G215000、シロイヌナズナのオルソログNPUタンパクとの相同性が82%)、トウモロコシ(遺伝子番号:GRMZM2G063754、シロイヌナズナのオルソログNPUタンパクとの相同性が86%)。

本発明の一つの好ましい実施例として、前記NPUタンパクの野生型アミノ酸配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5又は配列番号6から選ばれる。

本発明の一つの好ましい実施例として、以下のいずれか1つの方式により、前記植物株における花粉の発育に関連するNPUタンパクの発現または活性を抑制することができる。 1)前記NPUタンパクのポリヌクレオチドの一部又は完全な欠失をコードする 2)前記NPUタンパクのポリヌクレオチドをコードした発現を低減又は抑制するように、発現制御配列を修飾する 3)タンパクの活性を低減するように、染色体上のポリヌクレオチド配列を修飾する 又は 4)上記1)〜3)における任意の組合せ ここで、前記の「NPUタンパクのポリヌクレオチドの一部又は完全な欠失をコードする」は、染色体遺伝子が挿入されたベクターによりコード内のソースターゲットタンパクのポリヌクレオチドをマーカー遺伝子又は一部ヌクレオチド配列欠失のポリヌクレオチドに取り替える。 「一部」欠失の長さは、ポリヌクレオチドの種類によって異なる。1〜300bpでもよく、好ましくは、1〜100bpであり、より好ましくは1〜5bpであり、ここで、bpは、塩基対である。

本発明の一つの好ましい実施例として、前記の「該ポリヌクレオチドの発現又は活性を低減又は抑制するように、発現制御配列を修飾する」は、以下のいずれか1つの方式により、実現することができる。 1)ヌクレオチドの欠失、挿入、保存、非保存的置換及びそれらの組合せにより、発現制御配列に突然変異を誘導することによって、発現制御配列の活性をさらに低減する。又は、 2)発現制御配列を活性のより低い配列に取り替える。 本発明の一つの好ましい実施例として、前記の発現制御配列は、プロモーターをコードする配列、オペロン配列、リボソーム結合部位および転写・翻訳の終止を制御する配列のうち、1種又は数種を含む。

本発明の一つの好ましい実施例として、前記の「タンパクの活性を低減するように、染色体上のポリヌクレオチド配列を修飾する」は、以下のいずれか1つの方式により、実現することができる。 1) ヌクレオチドの欠失、挿入、保存・非保存的置換又はそれらの組合せにより、配列に突然変異を誘導することによって、該配列の活性をさらに低減する。又は、 2) より弱いタンパクの活性を獲得するように、ポリヌクレオチド配列を修飾されたポリヌクレオチド配列に取り替える。

本発明の一つの好ましい実施例として、前記「前記植物株における花粉の発育に関連するNPUタンパクの発現または活性を抑制する」は、以下のいずれか1つの方式により、実現することができる。 1)前記植物株におけるNPU遺伝子の発現レベルを抑制する 2)前記植物株におけるNPU遺伝子を欠失させる 3)前記植物株におけるNPU遺伝子を変異させる 又は 4)上記1)〜3)における任意の組合せ

本発明の一つの好ましい実施例として、前記「前記植物株における花粉の発育に関連するNPUタンパクの発現または活性を抑制する」という方法は、前記NPUタンパクの遺伝子をコードする発現を抑制することを含む。

本発明の一つの好ましい実施例として、前記「前記植物株における花粉の発育に関連するNPUタンパクの発現または活性を抑制する」は、遺伝子突然変異、遺伝子ノックアウト、遺伝子破壊、RNA干渉のうち、1種又は数種の組合せにより、実現したものである。

本発明の一つの好ましい実施例として、前記NPUタンパクをコードする遺伝子は、NPU遺伝子又はその相同遺伝子である。

本発明の一つの好ましい実施例として、前記NPU遺伝子は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6で示されるアミノ酸配列をコードすることができる。

ここで、前記NPUタンパクをコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12から選ばれる。 ここで、配列番号1をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号7である。 ここで、配列番号2をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号8である。 ここで、配列番号3をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号9である。 ここで、配列番号4をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号10である。 ここで、配列番号5をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号11である。 ここで、配列番号6をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号12である。

本発明の2つ目の側面によれば、花粉の発育に関連するNPUタンパクをコードする遺伝子の使用であって、植物の不稔系統の育成、または植物の不稔系統を育成する試薬またはキットの製造に用いられることを提供することにある。

本発明の一つの好ましい実施例として、前記のNPUタンパクをコードする遺伝子は、NPU遺伝子又はその相同遺伝子である。

本発明の一つの好ましい実施例として、前記植物の不稔系統は、花粉の発育に関連するNPUタンパクの発現または活性が抑制された植物の不稔系統である。

本発明の一つの好ましい実施例として、前記NPU遺伝子は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6で示されるアミノ酸配列をコードすることができる。

ここで、前記NPUタンパクをコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12から選ばれる。 ここで、配列番号1をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号7である。 ここで、配列番号2をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号8である。 ここで、配列番号3をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号9である。 ここで、配列番号4をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号10である。 ここで、配列番号5をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号11である。 ここで、配列番号6をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号12である。

本発明の3つ目の側面によれば、植物を不稔から可稔へ転換させる方法であって、 花粉の一次外膜の堆積を抑制するステップ1と、 植物株の代謝レベルを低減することによって、一次外膜の堆積を回復させるステップ2と、を含み、 ここで、前記植物は、花粉の発育に関連するNPUタンパクの発現または活性が抑制された植物であり、 ステップ1で、前記「花粉の一次外膜の堆積を抑制する」は、前記植物株における花粉の発育に関連するNPUタンパクの発現または活性を抑制することにより、実現したものを提供することにある。

本発明の一つの好ましい実施例として、前記植物は、本発明の第1の側面の前記方法に基づいた植物の不稔系統である。

本発明の一つの好ましい実施例として、前記植物株の代謝レベルを低減するのは、植物株の生長環境の温度低減と、植物株の光照射時間の減少とのうち、1つまたは2つの方法を組み合わせることにより、実現したものである。

本発明の一つの好ましい実施例として、前記植物株の生長環境の温度低減は、環境温度を18〜22℃、好ましくは18〜20℃、例えば19℃などに制御することを含む。

本発明の一つの好ましい実施例として、前記植物株の生長環境の温度低減は、薬の形成段階、花粉の成熟段階及び花が咲いて花粉の交配段階又はその前後2週間に行われる。

本発明の一つの好ましい実施例として、前記植物株の生長温度の低減は、植物株の抽薹または出穂の時から、低温で3〜10日育成した後、正常の温度に戻して育成する。

本発明の4つ目の側面によれば、植物の育種方法であって、 植物株の不稔を維持するステップ1と、 植物株を不稔から可稔へ転換させるステップ2と、 植物株の可稔を維持して育種するステップ3と、を含むことを提供することにある。 本発明の一つの好ましい実施例として、ステップ1で、前記の植物株は、本発明の第1の側面の前記方法に基づいて育成された植物の不稔系統の植物株である。

本発明の一つの好ましい実施例として、ステップ2で、前記の植物株を不稔から可稔へ転換させる方法は、本発明の第3の側面の前記植物を不稔から可稔へ転換させる方法である。

本発明の5つ目の側面によれば、植物細胞であって、前記植物細胞が発育してなった植物株における、花粉の発育に関連するNPUタンパクの発現または活性が抑制されたものを提供することにある。

本発明の一つの好ましい実施例として、前記NPUタンパクを広義に理解することができ、NPUタンパクでもよく、その相同のタンパクでもよい。

本発明の一つの好ましい実施例として、前記植物は、農作物、林業植物や花卉などでもよい。好ましくは、イネ科、豆科及びアブラナ科植物でもよく、より好ましくは、シロイヌナズナ、イネ、コウリャン、コムギ、大豆及びトウモロコシでもよい。

ここで、本発明に係る概念を次のとおり解釈する。 用語「NPUタンパク」、「NPUポリペプチド」とは、NPUタンパクアミノ酸配列(例えば、配列番号1〜6)のタンパク又はポリペプチドを指し、特に指していない場合には、用語「NPUタンパク」は、野生型NPUタンパクと変異型タンパクを含む。

本発明の前記NPUタンパクは、配列番号1〜6で示されるアミノ酸配列を含むが、但し、これに限らない。植物の種類又は品種によって、該タンパクのアミノ酸配列は、異なる可能性がある。換言すれば、前記NPUタンパクは、変異型タンパク及びその人工変異体でもよく、NPUタンパクの活性を低減することにより、植物の不稔系統を育成する助けにさえなればよい。前記変異型タンパク及びその人工変異体のアミノ酸配列は、配列番号1〜6で示されるアミノ酸配列の1つ又は複数の位置に1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加又は逆位を含む。

本発明の前記「複数の」は、タンパク質におけるアミノ酸残基の立体構造の位置またはタイプによって異なり、好ましくは2〜20個、より好ましくは2〜10個、さらに好ましくは2〜5個である。また、植物の個体または種類によって、アミノ酸の置換、欠失、挿入、付加または逆位は、人工変異体または天然の突然変異によるアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加または逆位を含む。

本発明の前記「単離された」とは、物質がその最初の環境から単離されたことを指し、天然の物質の場合、最初の環境は自然環境である。例えば、生体細胞内の天然状態におけるポリヌクレオチドとポリペプチドは、単離・精製されていない。天然状態から、同様のポリヌクレオチドまたはポリペプチドをその他の物質と分けると、単離・精製されたものになる。

本発明の前記「単離されたNPUタンパクまたはポリペプチド」とは、NPUタンパクには基本的にそれに関連するその他のタンパク、脂類、糖類またはその他の物質が含まれないことを指す。当業者は、標準のタンパク質精製技術を用いて、イネなどの植物におけるNPUタンパクを精製することができる。基本的に、純粋なポリペプチドは、非還元ポリアクリルアミドゲルにおいて、単一のメインバンドが生じることができる。

本発明の前記「ポリペプチド」は、組換えポリペプチド、天然ポリペプチド、又は合成ポリペプチドでもよい。好ましくは、組換えポリペプチドである。

本発明の前記ポリペプチドは、天然精製の産物でもよく、化学合成の産物でもよく、または組換え技術を用いて原核または真核宿主(例えば、細菌、酵母、高等植物、昆虫や哺乳動物細胞)から生じてもよい。組換え技術に用いられる宿主により、前記ポリペプチドは、グリコシル化されたものでもよく、又はグリコシル化されていないものでもよい。本発明の前記ポリペプチドは、開始のメチオニン残基をさらに含有してもよい。

本発明の前記NPUタンパクは、NPUタンパクの断片、誘導体及びその類似物をさらに含む。

本発明では、用語の「断片」、「誘導体」及び「類似物」とは、本発明のNPUタンパクと同じ生物学的機能または活性を維持可能なポリペプチドを指す。

本発明の前記ポリペプチド断片、誘導体又は類似物は、 (1)一つまたは複数の保存的または非保存的なアミノ酸残基が置換されたポリペプチドを有し、好ましくは、保存的なアミノ酸残基が置換されたポリペプチドであり、ここで、置換されたアミノ酸残基が遺伝暗号でコードされてもよく、 (2)一つまたは複数のアミノ酸残基には置換基があるポリペプチドでもよく、 (3)成熟のポリペプチドと別の化合物、例えば、ポリエチレングリコールのようなポリペプチドの半減期を延ばす化合物と融合してなるポリペプチドでもよく、 (4)付加のアミノ酸配列がこのポリペプチド配列に融合してなるポリペプチド、例えば、リーダー配列又は分泌配列或いはこのポリペプチドを精製するための配列若しくはタンパク質前駆体配列や融合タンパクでもよい。

本発明の前記断片、誘導体および類似物は、当業者の公知の範囲に属する。

本発明の好ましい実施形態において、「NPUタンパク」または「NPUポリペプチド」の配列は、配列番号1〜6で示されるようなものである。

本発明の好ましい実施形態において、「NPUタンパク」または「NPUポリペプチド」は、NPUタンパクと同じ機能を有する、配列番号1〜6の配列の変異形態をさらに含む。これらの変異形態は、一つまたは複数(通常は1〜50個、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜10個)のアミノ酸の欠失、挿入および/または置換、ならびに炭素末端および/または窒素末端への一つまたは複数(通常は20個以内、好ましくは10個以内、より好ましくは5個以内)のアミノ酸の付加、を含むが、但し、これに限らない。例えば、本分野において、機能が近いまたは類似のアミノ酸で置換する場合、通常、タンパク質の機能を変えることがない。炭素末端および/または窒素末端への一つまたは複数のアミノ酸の付加も、通常、タンパク質の機能を変えることはない。

本発明の好ましい実施形態において、「NPUタンパク」又は「NPUポリペプチド」は、NPUタンパク又はポリペプチドの活性断片と活性誘導体をさらに含む。

ここで、前記NPUポリペプチドの変異形態は、相同配列、保存的変異体、対立遺伝子変異体、天然突然変異体、誘導突然変異体、高いまたは低い厳格さの条件下でNPUタンパクとDNA交雑可能なDNAにコードされるタンパクを含む。

本発明は、その他のポリペプチド、例えばNPUタンパクまたはその断片を含む融合タンパクをさらに提供する。ほとんど全長のポリペプチドのほか、本発明は、NPUタンパクの可溶性断片をさらに含む。通常、前記断片は、NPUタンパク配列の少なくとも約10個の連続アミノ酸を有し、通常、少なくとも約30個の連続アミノ酸を有し、好ましくは、少なくとも約50個の連続アミノ酸を有し、より好ましくは、少なくとも約80個の連続アミノ酸を有し、最も好ましくは、少なくとも約100個の連続アミノ酸を有する。

本発明の前記修飾(通常は一次構造が変わらない)形態は、主に体内または体外のポリペプチドの化学的に誘導された形態、例えば、アセチル化またはカルボキシル化を含み、グリコシル化をさらに含む。修飾形態は、リン酸化アミノ酸残基、例えば、リン酸チロシン、リン酸セリン、リン酸スレオニンを有する配列をさらに含む。修飾されることによって、その抗タンパク質加分解性を高めた又は溶解性を最適化したポリペプチドをさらに含む。

本発明において、「NPU保存的変異ポリペプチド」とは、配列番号1〜6で示されるアミノ酸配列に比べると、多くとも10個、好ましくは多くとも8個、より好ましくは多くとも5個、最も好ましくは多くとも3個のアミノ酸が類似または近い性質を持つアミノ酸で置換されてなるポリペプチドを指す。これらの保存的変異ポリペプチドは、表1に基づいてアミノ酸の置換を行って生じるのが好ましい。

ここで、前記代表的な置換とは、本発明の最初の残基を置換可能なアルカリ基を指し、前記好ましい置換とは、本発明の最も好ましい最初の残基を置換可能なアルカリ基を指す。

本発明の前記ポリヌクレオチドは、DNA形態又はRNA形態でもよい。ここで、DNA形態は、cDNA、ゲノムDNAまたは人工合成のDNAを含む。DNAは、一本鎖又は二本鎖でもよい。DNAは、コード鎖でもよく、非コード鎖でもよい。成熟ポリペプチドをコードするコード領域の配列は、配列番号7〜12で示されるコード領域の配列と同一又は縮重変異体でもよい。

本発明において、「縮重変異体」とは、本発明で配列番号1〜6を有するタンパク質をコードするが、配列番号7〜12で示されるコード領域の配列と違う核酸配列を指す。

配列番号1〜6の成熟ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、以下のいずれか1つ又はその如何なる組合せである。

(1)成熟ポリペプチドのみをコードするコード配列 (2)成熟ポリペプチドのコード配列および様々な付加コード配列 (3)成熟ポリペプチドのコード配列および任意に選ばれる付加コード配列並びに非コード配列

本発明の1つの好ましい実施例として、前記のNPUポリペプチドのコード配列は、以下のいずれか1つ又はその如何なる組合せから選ばれる。

(1) 配列番号1〜6に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列 (2) 配列番号7〜12で示されるポリヌクレオチド配列 (3) (1)または(2)に記載のポリヌクレオチド配列と相補的なポリヌクレオチド

本発明において、「ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」は、該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでもよく、付加のコードおよび/または非コード配列をさらに含むポリヌクレオチドでもよい。

本発明は、本発明と同じアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはポリペプチドの断片、類似物および誘導体をコードする前記ポリヌクレオチドの変異体にさらに関する。前記ポリヌクレオチドの変異体は、天然に発生した対立遺伝子変異体又は非天然に発生した変異体でもよい。これらのヌクレオチド変異体は、置換変異体、欠失変異体および挿入変異体を含む。本分野で知られているように、対立遺伝子変異体は、ポリヌクレオチドの代替形態で、1つまたは複数のヌクレオチドの置換、欠失または挿入でもよいが、本質的にそのコードするポリペプチドの機能を変えることはない。

本発明の1つの好ましい実施例として、本発明は、上記の配列と交雑し、かつ2つの配列の間に少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%の相同性を有するポリヌクレオチドにさらに関する。

本発明は、厳格な条件下で本発明の前記ポリヌクレオチドと交雑可能なポリヌクレオチドにさらに関する。

本発明において、「厳格な条件」とは、(1)低いイオン強度および高い温度、例えば0.2×SSC、0.1%SDS、60℃での交雑および溶離する、又は(2)交雑時変性剤を、例えば、50%(v/v)ホルムアミド、0.1%子血清/0.1% Ficoll400、42℃などで加える、あるいは(3)2つの配列の間の相同性が少なくとも90%以上、好ましくは95%以上の時のみに、交雑が発生することを指す。そして、交雑可能なポリヌクレオチドのコードするポリペプチドは、配列番号1〜6で示される成熟ポリペプチドと同じ生物学的機能および活性を有する。

本発明は、上記の配列と交雑する核酸断片にさらに関する。前記「核酸断片」の長さは、少なくとも15個のヌクレオチドを含み、好ましくは、少なくとも30個のヌクレオチドを含み、より好ましくは、少なくとも50個のヌクレオチドを含み、最も好ましくは、少なくとも100個のヌクレオチドを含む。前記核酸断片は、核酸の増幅技術、例えばPCRに用い、NPUタンパク質をコードするポリヌクレオチドを同定および/または単離することができる。

本発明の前記NPUタンパク質ヌクレオチドの全長配列又はその断片は、通常、PCR増幅法、組換え法又は人工合成法で得られる。PCR増幅法について、本発明に開示された関連するヌクレオチド配列、特に読み枠に基づいてプライマーを設計し、市販のcDNAライブラリーまたは当業者に知られている通常の方法によって調製されるcDNAライブラリーをひな型とし、増幅して関連配列を得ることができる。配列が長い場合、通常、2回または複数回のPCR増幅を行った後、各回の増幅で得られた断片を正確な順で一緒につなぎ合わせる必要がある。組換え法は、配列をベクターにクローンしてから、細胞に転入した後、通常の方法で増殖した後の宿主細胞から単離されて関連配列を得るものである。人工合成法は、特に断片の長さが短い場合、通常、まず複数の小断片を合成し、それから接続して配列のとても長い断片を得ることができる。

本発明は、前記ポリヌクレオチドを含むベクター、および前記ベクターまたはNPUタンパク質コード配列で遺伝子工学によって生成する宿主細胞、ならびに組換え技術によって本発明の前記ポリペプチドを生成する方法にも関する。通常の組換えDNA技術(Science,1984;224:1431)により、本発明のポリヌクレオチド配列で、組換えのイネNPUタンパクを発現または生産することができる。一般に、次のステップを含む。

(1)本発明のNPUタンパクをコードするポリヌクレオチドまたは変異体を用い、又は前記NPUをコードするポリヌクレオチドを含む組換え発現ベクターを用い、適切な宿主細胞を形質転換または形質導入する。 (2)適切な培地において宿主細胞を培養する。 (3)培地または細胞からタンパク質を単離・精製する。

本発明において、前記NPUタンパクをコードするポリヌクレオチド配列は、組換え発現ベクターに挿入してもよい。

用語「組換え発現ベクター」とは、本分野でよく知られている細菌プラスミド、ファージ、酵母プラスミド、植物細胞ウイルス、哺乳動物細胞ウイルスまたはその他のベクターを指す。とにかく、前記組換え発現ベクターは、宿主体内で安定して複製できる如何なるプラスミドおよびベクターである。前記発現ベクターの重要な特徴の一つは、通常、複製起点、プロモーター、マーカー遺伝子および翻訳制御エレメントを含むことである。

当業者によく知られている方法は、NPUタンパク質をコードするDNA配列および適切な転写/翻訳制御シグナルを含む発現ベクターの構築に用いられることができる。前記の当業者によく知られている方法は、体外組換えDNA技術、DNA合成技術、及び体内組換え技術などを含む。前記のDNA配列は、有効に発現ベクターにおける適切なプロモーターに連結し、mRNA合成を指導することができる。

本発明の1つの好ましい実施例として、前記発現ベクターは、翻訳開始用リボゾーム結合部位および転写ターミネーターをさらに含む。好ましくは、1つまたは複数の選択的なマーカー遺伝子を含み、形質転換された宿主細胞を選択するための形質、例えば、真核細胞培養用のジヒドロ葉酸レダクターゼ、ネオマイシン耐性および緑色蛍光タンパク質(GFP)、あるいは大腸菌用のテトラサイクリンまたはアンピシリン耐性を提供する。

本発明の1つの好ましい実施例として、上記の適切なDNA配列及び適切なプロモーターまたは制御配列を含むベクターは、適切な宿主細胞を形質転換し、タンパク質を発現するようにすることができる。前記宿主細胞は、原核細胞、例えば、細菌細胞、又は低等真核細胞、例えば酵母細胞、或いは高等真核細胞、例えば植物細胞でもよい。代表例として、大腸菌、ストレプトマイセス属、アグロバクテリウム菌などがある。

本発明のポリヌクレオチドが高等真核細胞において発現される場合、ベクターにエンハンサー配列を挿入すると、転写が増強されることになる。エンハンサーは、DNAのシスエレメントで、通常、約10〜300bpで、プロモーターに作用して遺伝子の転写を増強する。

当業者は、如何に適切なベクター、プロモーター、エンハンサーおよび宿主細胞を選択するかをよく知っている。DNA組換えによる宿主細胞の形質転換は、当業者によく知られている通常の技術で行っても良い。宿主が原核生物、例えば大腸菌である場合、DNAを吸収できるコンピテントセルは、指数生長期後収穫することができ、CaCl2法で処理し、本分野で熟知している方法を用いる。もう一つの方法は、MgCl2を使用し、形質転換がエレクトロポレーションの方法を用いてもよい。宿主細胞が真核生物である場合には、リン酸カルシウム共沈法、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションのような通常の機械方法、リポフェクションなどのDNAトランスフェクションの方法を用いることができる。

本発明の1つの好ましい実施例として、前記植物の形質転換は、アグロバクテリウム菌による形質転換またはパーティクル・ガンによる形質転換などの方法、例えば、リーフディスク法を使用してもよい。形質転換された植物細胞、組織または器官は、通常の方法を用いて植物株に再生させることによって、耐性が変わった植物を得ることができる。

得られる形質転換体は、通常の方法で培養し、本発明の遺伝子がコードされるポリペプチドを発現することができる。用いられる宿主細胞によって、培養に用いられる培地は、各種通常の培地から選んでも良い。宿主細胞の生長に適する条件下で培養する。宿主細胞が適当の細胞密度に生長された後、適切な方法、例えば、温度転換又は化学誘導の方法で選んだプロモーターを誘導し、細胞をある期間でさらに培養する。

本発明のポリヌクレオチドの一部または全部をプローブとしてマイクロアレイ(microarray)またはDNAチップ(「遺伝子チップ」とも呼ばれる)に固定化し、組織における遺伝子の差次的発現解析に使用することができる。NPUタンパクに特異的なプライマーでRNA−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)の体外増幅を行うことで、NPUタンパクの転写産物を検出することもできる。

本発明の主な優れた点は、初めてある特定の植物の不稔系統に対し、植物株における花粉の発育に関連するNPUタンパクの発現または活性を制御することによって、前記植物の稔性を制御し、不稔と可稔との間の制御可能な転換を実現することを発見したことにある。また、植物の不稔系統の農業育種などの面における使用をさらに開発したので、植物の不稔系統の育種方法を大いに簡素化した。

図1−1は、雄性不稔NPU変異体の低温可稔性である。aは、Col植物株の正常な可稔フェノタイプであり、b、c、dは、それぞれNPU植物株を18℃、21℃及び24℃で放置して培養する時のフェノタイプである。図1−2は、植物株のアレキサンダー染色及びその走査型電子顕微鏡による写真図である。aは、野生型植物株及びその走査型電子顕微鏡による写真図であり、b、cはそれぞれ18℃及び24℃でのNPU植物株のアレキサンダー染色及びその走査型電子顕微鏡による写真図である。図1−3は、異なる温度でNPU変異体の鞘の長さである。図1−4は、異なる温度でNPU変異体の鞘の数である。

図2は、NPU変異体が異なる温度での透過型電子顕微鏡による写真図である。aは、野生型が常温での透過型電子顕微鏡による写真図であり、bは、変異体が常温での透過型電子顕微鏡による写真図であり、cは、変異体が18℃時の透過型電子顕微鏡による写真図である。

図3は、光照射のNPU変異体の稔性回復への影響を示す図である。aは、正常な光照射での培養であり、bは、短い光照射での培養である。

図4は、NPUタンパク質の相同性及び機能保存性の分析図である。図4−1は、NPUタンパクの数種の作物におけるオルソログのタンパク配列の相同性分析図である。図4−2は、イネNPU相補シロイヌナズナNPU変異体植物株の構築図である。 図4−3は、イネNPU相補シロイヌナズナNPU変異体の相補結果植物株図である。

以下、具体的な実施例を合わせて、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いられるものだけで、本発明の範囲の制限にはならないと理解されるべきである。以下の実施例で具体的な条件が示されていない実験方法は、通常、例えば、Sambrookら、「分子クローン:実験室マニュアル」(New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989) または植物分子生物学、実験マニュアル(Plant Molecular Biology−A Laboratory Mannual,Melody S.Clark,Springer−verlag Berlin heidelberg,1997)に記載の条件などの通常の条件に、或いは、メーカーに提案された条件に従う。特に説明がない限り、百分率および部数は質量%および質量部数である。

材料および方法 植物材料と栽培 本発明において、シロイヌナズナの材料はLandsberg erecta生態型のものである。4℃で、0.1%アガロース培地に種子を72時間予備発芽させた。植物材料をひる石に培養し、培養条件は室温24℃で、光培養16時間/暗培養8時間(正常条件)で、抽薹までとした。その後、抽薹株を異なる培養条件下に移して培養する。低温培養は、18℃又は21℃で、光照射の培養箱である。正常の光照射は、24℃で、光培養16時間/暗培養8時間である。短い光照射は、光培養8時間/暗培養16時間である。その後、後続処理を行う。

細胞学的解析 ニコンのデジタルカメラ(D-7000)で植物材料を撮影した。アレキサンダー染色とDAPI染色は、Alex&Er,1969;Ross et al., 1996を参照することができる。半薄片に対し、花芽の異なる発育段階を選び取って固定し、Spurrエポキシ樹脂に包埋された。Powertome XL (RMC Products,Tucson,Arizona,USA)ミクロトームで1μm毎に薄切りにしてトルイジンブルーを用いて染色した。Olympus DX51デジカルカメラ(Olympus,Japan)を使用して葯の切片を撮影した。8nmの金顆粒で新鮮な雄しべと花粉粒の材料を包んで走査型電子顕微鏡による実験を行い、JSM−840顕微鏡 (JEOL,Japan)を利用して観察した。透過型電子顕微鏡による実験において、シロイヌナズナの花序を氷の上で固定液に固定した。固定液の調合は、2.5%のグルタルアルデヒドを含有する0.1Mのリン酸緩衝液で、pH値=7.2である。花芽材料は、さらに順に樹脂に包埋された(Hard Plus’ Embedding Resin,Unite Kingdom)。超薄切片(50〜70nm)は、JEM−1230透過型電子顕微鏡(JEOL,Japan)により観察した。

相同性分析 全てのNPU相同配列がNCBIにおいてBLASTPにより得られ、CLUSTALXを利用して配列を対比し、GENEDOCを用いて配列を割り付ける。

ベクターの構築 PCRを利用して得られるシロイヌナズナNPUプロモーター及びイネNPUコード枠配列を増幅する。PCRポリメラーゼは、TOYOBOのKODPlusを用いて増幅し、Takaraの制限酵素を利用して二重酵素を消化し、TakaraのDNAリガーゼを利用して接続する。

NPU変異体の不稔フェノタイプが低温条件下で回復された T−DNA挿入及びEMS化学誘導の方式により、シロイヌナズナColとLer生態型からNPU−1、NPU−2(Col生態型)及びNPU−3(Ler生態型)の変異体が単離された。図1−1に示すように、常温下(24℃)で、ホモ接合のNPU変異体植物株の生長が正常であるが、稔性を喪失し、小さい種子無しの鞘しかない。遺伝分析により、NPU変異体が胞子体雄性不稔に属し、単一劣性遺伝子座に制御されることを表明している。本発明は、NPU変異体を24℃で抽薹まで培養してから、それを18℃の連続培養に移し、その後の鞘は全部稔性を回復した。同様の低温条件下で、野生型の植物株は影響を受けなかった。

アレキサンダー染色において、常温下で、野生型植物株の花粉は紫紅色に染色された(図1−2、a)が、NPU変異体植物株の薬には花粉粒がなく(図1−2、b)、低温条件下で、NPU変異体植物株には花粉粒が現れ、紫紅色に染色されることができ、野生型に類似する(図1−2、c)ことを示している。走査型電子顕微鏡で、低温下でNPU変異体植物株の花粉粒表面の花粉壁の構造が野生型と同じようなグリッド状の構造に回復されたと発見した。

本発明は、異なる温度下で鞘の長さ及び可稔鞘の数をさらに統計した。結果として、温度が上昇すると、鞘の長さが短くなり(図1−3)、可稔鞘の数が減り(図1−3)、NPUタンパクが破壊される程度が増強され、NPU変異体植物株の稔性の回復程度が悪くなる(図1−4)ことを表明している。

上記のように、NPU変異体は、低温において稔性の雄性不稔を回復可能な変異体であり、低温下で、NPU変異体植物株の花粉発育が正常に回復されることができる。

低温はNPU変異体から放出された小胞子の発育欠陥を補う NPU変異体の花粉の発育における欠陥を確定するために、本発明は、透過型電子顕微鏡による観察を行った。結果として、図2に示されるように、ここで、aは、野生型植物株を常温で育成した透過型電子顕微鏡による写真図であり、bは、変異体植物株を常温で育成した透過型電子顕微鏡による写真図であり、cは、変異体植物株を18℃で育成した透過型電子顕微鏡による写真図である。

常温条件 (24℃) 下で、野生型植物株が四分子の時期に、小胞子の表面には一次外膜が形成され、この時期、花粉外膜の原料物質のスポロポレニンが波状の頂端に積み重ねられ、最後に、これらのスポロポレニン物質が規則的に小胞子の表面に堆積され、T字状の花粉外膜構造を形成する。

NPU変異体植物株は、四分子の時期に一次外膜の堆積がなく、スポロポレニンが随意に小胞子の表面に積み重ねられる。最後に、NPU変異体植物株の花粉壁に規則的なT字状構造を観察することができず、球状のスポロポレニンが随意に小胞子の外部に積み重ねられて、小胞子は保護が足りないことを引き起こして破裂されてしまう。

低温でのNPU変異体植物株が四分子時期の小胞子の表面には、明らかな波状構造がないが、一次外膜物質が小胞子の表面に堆積され、スポロポレニン物質も次第に規則的に小胞子の表面に堆積され、最後にT字状に類似する花粉外膜を形成し、花粉が正常に発育可能であることを観察することができる。

結果として、低温はNPU変異体の一次外膜の堆積欠陥を回復させ、花粉の発育を正常に回復させることを表明している。

短い光照射は一部のNPU変異体の稔性を回復する 本発明は、NPU変異体に対して短い光照射(8h光照射/16h暗黒)を行い、それを正常の光照射(16h光照射/8h暗黒)の培養時間のNPU変異体と比べた。結果として、短い光照射におけるNPU植物株の稔性が正常の光照射条件における変異体よりも少し良いことを発見した(図3に示すように)。結果はNPUの稔性を回復可能であることを証明している。

NPUタンパクは保存の配列及び機能を有する NPUタンパクは、植物が特有の、機能が未知のタンパク質であり、シロイヌナズナにおいて、それと相同のタンパク質がない。研究により、NPUタンパクは、細胞膜に位置付けられて、薬が発育の6期目及び7期目の小胞子母細胞、四分子及びタペート層には最高の発現がある。NPUタンパクが2つの膜に跨る構造領域を有すると予測したが、明らかな既知の構造領域を有することを発見しなかった。配列の対比を経て、異なる種のNPU相同タンパクが高度保存の配列相同性を有することを発見した。これは、NPUタンパクが植物界において機能を非常に保存していることを表明している。ある常用の作物において、NPUタンパクの保存性も明らかである(図4−1)。イネNPUは、シロイヌナズナと85%のアミノ酸配列が相同であり、トウモロコシNPUとの相同性が84%であり、コムギNPUとの相同性が84%であり、コウリャン又は大豆NPUとの相同性が82%である。

NPUタンパクが植物における保存性を確認するために、本発明は、イネNPUのコード枠配列を用いてシロイヌナズナのプロモーターに接続してシロイヌナズナNPU変異体と相補し、結果として、シロイヌナズナNPU変異体の不稔フェノタイプが可稔フェノタイプに回復され、稔性が野生型と明らかな差がないことを示している(図4−2)。結果はイネNPUタンパクの機能がシロイヌナズナと同一であり、イネNPUタンパクが花粉の一次外膜の堆積も受け持っている可能性がとてもあることを表明している。この結果は、イネNPU変異体も低温回復の変異体である可能性がとてもあり、農業上の感光感温系統になる潜在能力を有することを同時に表明している。

上記のように、低温及び短い光照射は、ともにNPU変異体植物株の不稔フェノタイプを可稔に回復させることができるが、しかし、低温条件下では、NPU変異体植物株の稔性を完全に回復させることができ、短い光照射では、その稔性を一部しか回復させない。且つNPUタンパクの機能は、植物界において高度な保存性を有し、例えば、イネNPUタンパクは、シロイヌナズナと85%のアミノ酸配列が相同であり、トウモロコシNPUタンパクとの相同性が84%であり、コムギNPUタンパクとの相同性が84%であり、コウリャン又は大豆NPUタンパクとの相同性が82%である。

上記の具体的な実施例は、本発明の目的、技術手段及び有益な効果に対してさらに詳細な説明を行ったが、上記がただ本発明の具体的な実施例だけであり、本発明を制限するのに用いられず、本発明の主旨や原則内になされた如何なる修正、等価的取替や改善などのいずれも本発明の保護範囲内に含まれるはずだと理解すべきである。

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