植物ゲノムの部位特異的改変の実施に非遺伝物質を適用する方法

申请号 JP2017548901 申请日 2016-03-14 公开(公告)号 JP2018508221A 公开(公告)日 2018-03-29
申请人 中国科学院遺▲伝▼与▲発▼育生物学研究所; Institute of Genetics and Developmental Biology, Chinese Academy of Sciences; 发明人 ツァイシア ガオ; ジェン リアン; ヤンペン ワン; チーウェイ シャン; チアンナ ソン;
摘要 本発明は、 植物 ゲノムの部位特異的改変の実施に非遺伝物質を適用する方法を開示する。本方法は以下:対象植物の細胞または組織または植物部分に非遺伝物質を導入するステップを含み、その際、前記非遺伝物質は標的部分に特異的なヌクレアーゼであるか、または前記ヌクレアーゼを発現するmRNAであり、前記ヌクレアーゼは、TALENヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖反復回文(Clustered regularly interspaced short palindromic repeats、CRISPR/Cas9)ヌクレアーゼ、またはゲノム編集を実現しうるあらゆるヌクレアーゼである。前記ヌクレアーゼは前記標的部分を切断する役割を果たし、次いで前記植物のDNA修復により該標的部分の部位特異的改変が完了される。
权利要求

植物において標的遺伝子の標的断片に対して部位特異的改変を行うための方法であって、特に以下: 対象植物の細胞または組織または部分に非遺伝物質を導入するステップ を含む方法において、 前記非遺伝物質は、前記標的断片に特異的なヌクレアーゼであるか、または前記ヌクレアーゼを発現するmRNAであり、それにより前記標的断片が前記ヌクレアーゼにより切断され、かつ前記植物におけるDNA修復により前記標的断片に対する部位特異的改変が達成される方法。前記ヌクレアーゼが、TALENヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、CRISPR/Cas9ヌクレアーゼ、またはゲノム編集を達成しうる他の任意のヌクレアーゼである、請求項1記載の方法。前記非遺伝物質が、TALENヌクレアーゼであるか、または対を成すTALENタンパク質を発現しうるmRNAであり、その際、前記TALENタンパク質は、前記標的断片を認識してこれに結合しうるDNA結合ドメインと、Fok Iドメインと、から構成される、請求項2記載の方法。前記非遺伝物質が、ジンクフィンガーヌクレアーゼであるか、または対を成すZFNタンパク質を発現しうるmRNAであり、その際、前記ZFNタンパク質は、前記標的断片を認識してこれに結合しうるDNA結合ドメインと、Fok Iドメインと、から構成される、請求項2記載の方法。前記非遺伝物質が、Cas9タンパク質かまたはCas9タンパク質を発現しうるmRNAと、ガイドRNAと、から構成され、その際、前記ガイドRNAは、crRNAとtracrRNAとの間の部分的な塩基対形成により形成される回文構造を有するRNAであり、前記crRNAは、前記標的断片に相補的に結合しうるRNA断片を含む、請求項2記載の方法。前記細胞が、前記非遺伝物質を導入できかつ組織培養によりインタクト植物へと再生しうる任意の細胞であり、前記組織が、前記非遺伝物質を導入できかつ組織培養によりインタクト植物へと再生しうる任意の組織であるか、または前記植物の前記部分が、前記非遺伝物質を導入しうるインタクト植物の任意の部分である、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。前記細胞が、プロトプラスト細胞もしくは懸濁細胞であり、前記組織が、カルス、未熟胚もしくは成熟胚であり、または前記植物の前記部分が、葉、茎頂、花序もしくは花粉管である、請求項6記載の方法。パーティクルボンバードメント、PEG媒介型プロトプラスト形質転換、花粉管による手法、または非遺伝物質の導入に使用しうる他の任意の手法により、前記非遺伝物質を前記対象植物の細胞または組織または部分に導入する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。前記部位特異的改変が、前記標的断片におけるヌクレオチドの挿入、欠失および/または置換である、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。導入遺伝子を含まない変異体植物の製造方法であって、特に以下: 請求項1から9までのいずれか1項記載の方法により対象植物において標的遺伝子の標的断片に対して部位特異的改変を行うことにより、植物であって、前記標的遺伝子の機能が喪失または変更されており、かつ該植物のゲノムは組み込まれた外来遺伝子を含まない植物を得るステップ を含む方法。

说明书全文

本発明は、植物遺伝子工学の分野に属し、非遺伝物質を用いることにより植物ゲノムを部位特異的に改変する方法に関し、詳細には、タンパク質またはmRNAを用いることにより遺伝子導入を行わずに植物ゲノムを部位特異的に改変するための方法に関する。

技術的背景 ゲノム編集技術は、遺伝子機能を探索しかつ作物を遺伝的に改良するための最も有望な手段である。現在利用可能なゲノム編集技術としては、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(Zinc finger nucleases、ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(Transcription activator−like effector nucleases、TALEN)、および規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖反復回文(Clustered regularly interspaced short palindromic repeats/CRISPR)に関与する系(CRISPR/Cas9)が挙げられ、これらは配列特異的ヌクレアーゼ(SSN)と称される。それらの共通の特徴は、それらがエンドヌクレアーゼとして作用して特定のDNA配列を切断して、DNA2本鎖切断(DSB)をもたらしうる点にある。DSBにより、細胞の固有の修復機構である非相同末端結合(NHEJ)および相同組換え(HR)を活性化することができ、それによりDNA損傷が修復される。それにより、部位特異的な置換または挿入の変異体を生成することができる。現在、一部の植物(例えばイネ、シロイヌナズナ、トウモロコシ、コムギ)において植物ゲノムを改変するためのゲノム編集技術が効率的に用いられており、こうしたゲノム編集技術は、重要な作物の農業形質の改良における大きな将来性を示している。

しかし、ゲノム編集によって作物改良の有望な可能性が生じてはいるものの、依然として大きな課題がある。ゲノムの編集を行うには、配列特異的ヌクレアーゼを細胞内で発現させるべきである。目下、植物細胞内で配列特異的ヌクレアーゼを発現させる方法は、ヌクレアーゼを発現する発現ベクターまたはDNA断片を従来の形質転換手法(アグロバクテリウム媒介型形質転換、パーティクルボンバードメント、注入など)により細胞に送達するという方法である。これらの遺伝物質が植物の染色体に無秩序に組み込まれて転写されて、編集が行われる。こうした従来の形質転換手法は、植物ゲノムへの外来遺伝子の組込みを伴うとともに、形質転換の際に選択マーカー(選択圧)を必要とし、これによって望ましくない表現型が生じる場合がある。得られた植物の適用は、GMO規則で規制されるものと考えられる。したがって、遺伝物質DNAを導入する必要なく植物においてゲノム編集を行うための方法を確立する必要がある。

発明の概要 本発明の目的は、植物において標的遺伝子の標的断片に対して部位特異的改変を行うための方法を提供することである。

本発明で提供される、植物において標的遺伝子の標的断片に対して部位特異的改変を行うための方法は、特に以下: 対象植物の細胞または組織または部分に非遺伝物質を導入するステップ を含み、その際、前記非遺伝物質は、前記標的断片に特異的なヌクレアーゼであるか、または前記ヌクレアーゼを発現するmRNAであり、それにより前記標的断片が前記ヌクレアーゼにより切断され、かつ前記植物におけるDNA修復により前記標的断片に対する部位特異的改変が達成される。

本方法において、対象植物の細胞または組織または部分に非遺伝物質を導入する。非遺伝物質は、標的断片に対して部位特異的改変を行うためのヌクレアーゼを発現しうるか、または非遺伝物質は、標的断片に直接作用して部位特異的改変を達成しうる。部位特異的改変に伴って、またはその後に、前記非遺伝物質は細胞内の代謝機構により分解されうる。改変された細胞または組織は、従来の組織培養によりインタクト植物へと再生されうる。その結果、導入遺伝子を含まない変異体植物であって、標的断片のみが改変されただけで外来遺伝物質は導入されていない変異体植物が得られる。

本方法において、前記ヌクレアーゼは、TALENヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、CRISPR/Cas9ヌクレアーゼ、またはゲノム編集を達成しうる他の任意のヌクレアーゼである。

相応して、非遺伝物質を以下の(a)〜(c)のいずれかから選択することができる: (a)非遺伝物質は、TALENヌクレアーゼであるか、または対を成すTALENタンパク質を発現しうるmRNAであり、その際、前記TALENタンパク質は、標的断片を認識してこれに結合しうるDNA結合ドメインと、Fok Iドメインと、から構成される。

本発明の一実施形態(実施例1)において、前記非遺伝物質は、配列番号3および配列番号4のmRNAから構成される。本発明の他の実施形態(実施例3)において、前記非遺伝物質は、配列番号7および配列番号8のタンパク質から構成される。

(b)非遺伝物質は、ジンクフィンガーヌクレアーゼであるか、または対を成すZFNタンパク質を発現しうるmRNAであり、その際、前記ZFNタンパク質は、標的断片を認識してこれに結合しうるDNA結合ドメインと、Fok Iドメインと、から構成される。

(c)非遺伝物質は、Cas9タンパク質かまたはCas9タンパク質を発現しうるmRNAと、ガイドRNAと、から構成され、その際、前記ガイドRNAは、crRNAとtracrRNAとの間の部分的な塩基対形成により形成される回文構造を有するRNAであり、前記crRNAは、標的断片に相補的に結合しうるRNA断片を含む。

本発明の一実施形態(実施例4)において、前記非遺伝物質は、配列番号10に示されるタンパク質と、配列番号11に示されるsgRNAと、から構成される。本発明の他の実施形態(実施例5)において、前記非遺伝物質は、配列番号10に示されるタンパク質と、配列番号12に示されるsgRNAと、から構成される。

本方法において、前記細胞は、非遺伝物質を導入できかつ組織培養によりインタクト植物へと再生しうるいずれの細胞であってもよい。前記組織は、非遺伝物質を導入できかつ組織培養によりインタクト植物へと再生しうるいずれの組織であってもよい。前記植物の前記部分は、非遺伝物質を導入しうるインタクト植物の部分(エクスビボ部分ではない)である。

具体的には、前記細胞は、プロトプラスト細胞または懸濁細胞であってよい。前記組織は、カルス、未熟胚または成熟胚であってよい。前記植物の部分は、葉、茎頂、胚軸、若い花穂または花粉管であってよい。

前記方法において、対象植物の細胞または組織または部分に非遺伝物質を導入するための手法は、パーティクルボンバードメント、PEG媒介型プロトプラスト形質転換、花粉管による手法(pollen tube approch)、または非遺伝物質の導入に使用しうる他の任意の手法であってよい。

前記方法において、部位特異的改変とは、標的断片におけるヌクレオチドの挿入、欠失および/または置換である。

本発明の他の目的は、導入遺伝子を含まない変異体植物の製造方法を提供することである。

本発明の導入遺伝子を含まない変異体植物の製造方法は特に、以下: 対象植物において標的遺伝子の標的断片に対して部位特異的改変を行うことにより、植物であって、前記標的遺伝子の機能が喪失または変更されており、かつ該植物のゲノムは組み込まれた外来遺伝子を含まない植物を得るステップ を含みうる。

本発明において、植物は単子葉植物であっても双子葉植物であってもよい。いくつかの実施形態において、植物は、イネ、トウモロコシ、コムギまたはタバコである。

遺伝物質DNAと比較して、タンパク質およびmRNAは、防御機構により細胞内で容易に分解されうる2種類の非遺伝物質である。配列特異的ヌクレアーゼのmRNAまたはタンパク質を一過的に導入することにより、部位特異的にノックアウトされた遺伝子を有する変異体であって、配列特異的ヌクレアーゼの遺伝子またはベクターの断片が植物ゲノムに組み込まれていない、すなわち導入遺伝子を含まない変異体を得ることができる。本発明の方法によってより高い生物学的安全性が達成され、また本方法により生産された作物変種がGMOとして規制されることはないものと考えられる。本発明は、基礎研究および作物育種において極めて重要な価値を有する。

図1は、Cas9 mRNAとsgRNAとを用いたコムギ未熟胚の形質転換により、TaGW2遺伝子の変異が生成されたことを示す。図1A:mRNA転写キット(AM1344、Ambion)を用いたインビトロでの転写により合成されたCas9−mRNAのゲル電気泳動図。図1B:Cas9 mRNAとsgRNA−GW2−C14とにより生成された、T0植物におけるTaGW2の標的部位での変異を示すPCR/RE結果。図1C:これらのシーケンシング結果から、インビトロでの転写により合成されたCas9 mRNAとsgRNA−GW2−C14とにより標的部位での変異が誘導されたことが判明した。WTは野生型遺伝子配列を表し、「−」は欠失を伴う配列を表し、「+」は挿入を伴う配列を表し、「−/+」の後の数字は、欠失または挿入されたヌクレオチドの数を表す。

図2は、mRNA−TALENを用いたイネプロトプラストの一過的な形質転換により、OsBADH2遺伝子の変異が生成されたことを示す。図2A:mRNA転写キット(AM1344、Ambion)を用いたインビトロでの転写によるT−BADH2b−LおよびT−BADH2b−Rの合成を示すゲル電気泳動図であり、このmRNAの3’末端にPolyA尾部を付加した。図2B:インビトロでの転写により合成されたmRNAによって生成された、プロトプラストにおける標的部位での変異を示すPCR/RE結果。図2C:これらのシーケンシング結果から、インビトロでの転写により合成されたmRNAによって標的部位での変異が誘導されたことが判明した。WTは野生型遺伝子配列を表し、「−」は欠失を伴う配列を表し、「+」は挿入を伴う配列を表し、「−/+」の後の数字は、欠失または挿入されたヌクレオチドの数を表す。

図3は、MLO−TALENタンパク質を用いたコムギプロトプラストの形質転換によるコムギMLO遺伝子の変異誘発を示す。図3A:MLO標的部位に対するT−MLO−LおよびT−MLO−Rの原核での発現および精製を示すSDS−PAGE結果。図3B:TALENタンパク質により生成された、プロトプラストにおける標的部位での変異を示すPCR/RE結果。図3C:これらのシーケンシング結果から、インビトロで生成されたTALENタンパク質により標的部位での変異が誘導されたことが判明した。WTは野生型遺伝子配列を表し、「−」は欠失を伴う配列を表し、「+」は挿入を伴う配列を表し、「−/+」の後の数字は、欠失または挿入されたヌクレオチドの数を表す。

図4は、Cas9タンパク質とインビトロでの転写により合成されたsgRNAとを用いたコムギプロトプラストの形質転換による、コムギTaGASR7遺伝子の変異誘発を示す。図4A:Cas9タンパク質の原核での発現および精製を示すSDS−PAGE結果。図4B:Cas9タンパク質とインビトロでの転写により合成されたsgRNAとにより生成された標的部位での変異を示すPCR/RE結果。図4C:これらのシーケンシング結果から、インビトロで生成されたCas9タンパク質とインビトロでの転写により合成されたsgRNAとにより標的部位での変異が誘導されたことが判明した。WTは野生型遺伝子配列を表し、「−」は欠失を伴う配列を表し、「+」は挿入を伴う配列を表し、「−/+」の後の数字は、欠失または挿入されたヌクレオチドの数を表す。

図5は、Cas9タンパク質とインビトロでの転写により合成されたsgRNAとをタバコプロトプラストに導入して同時形質転換を行うことによりNtPVY遺伝子の変異が生成され、かつ再生により変異体植物が得られたことを示す。図5A:Cas9タンパク質とインビトロでの転写により合成されたsgRNAとにより生成された標的部位での変異を示すプロトプラストのPCR/RE結果。図5B:これらのシーケンシング結果から、インビトロで生成されたCas9タンパク質とインビトロでの転写により合成されたsgRNAとをタバコプロトプラストに導入して同時形質転換を行うことにより、標的部位での変異が誘導されたことが判明した。図5C:プロトプラストから再生された変異体植物の検出、および標的部位のシーケンシング結果。WTは野生型遺伝子配列を表し、「−」は欠失を伴う配列を表し、「+」は挿入を伴う配列を表し、「−/+」の後の数字は、欠失または挿入されたヌクレオチドの数を表す。

詳細な実施形態 以下の実施例において用いた実験方法は、別段の記載がない限りいずれも従来の方法である。

以下の実施例において使用した材料、試薬は、別段の記載がない限りいずれも市販されている。

コムギ変種Bobwhiteは、”Weeks, J.T. et al. Rapid production of multiple independent lines of fertile transgenic wheat. Plant Physiol. 102:1077−1084,(1993)”に開示されており、中国科学院遺伝学発生生物学研究所(Institute of Genetics and Developmental Biology of the Chinese Academy of Sciences)より入手可能である。

コムギTaMLO遺伝子を標的とするTALENベクターT−MLOは、”Wang, Y., Cheng, X., Shan, Q., Zhang, Y., Liu, J., Gao, C., and Qiu, J.L.(2014).Simultaneous editing of three homoeoalleles in hexaploid bread wheat confers heritable resistance to powdery mildew. Nature Biotechnology. 32, 947−951”に開示されており、中国科学院遺伝学発生生物学研究所(Institute of Genetics and Developmental Biology of the Chinese Academy of Sciences)より入手可能である。

原核の発現ベクターpGEX−4Tを、Shanghai BeiNuo Biotechnology Co., Ltd., Cat. No.l110024より入手した。

Cas9−mRNAインビトロ転写ベクターpXT7−Cas9は、”Chang N, Sun C, Gao L, Zhu D, Xu X, et al. 2013. Genome editing with RNA−guided Cas9 nuclease in zebrafish embryos. Cell research 23:465−72”に開示されており、著者らより入手可能である。

pT7−gRNAベクターは、”A programmable dual−RNA−guided DNA endonuclease in adaptive bacterial immunity. Science 337(6096):816−821”に開示されており、中国科学院遺伝学発生生物学研究所(Institute of Genetics and Developmental Biology of the Chinese Academy of Sciences)より入手可能である。

トウモロコシ変種HiIIは、”Armstrong, C.L., Green, C.E.& Phillips, R.L. Development and availability of germplasm with high type II culture formation response. Maize Genet. Coop. News Lett. 65,92−93 (1991)”に開示されており、中国科学院遺伝学発生生物学研究所(Institute of Genetics and Developmental Biology of the Chinese Academy of Sciences)より入手可能である。

イネプロトプラストの調製および形質転換に用いた溶液を、表1から表5までに示す。

表1:酵素分解溶液50ml

表2:W5 500ml

表3:MMG溶液10ml

表4:PEG溶液4ml

表5 WI溶液 250ml

上記表1から表5までにおける%は、質量/体積百分率(g/100ml)を示す。

コムギ組織の培養に使用した培地は、以下のものを含む: 高張培地:MS最少培地、90g/Lマンニトール、5mg/L 2,4−D、30g/Lスクロースおよび3g/Lフィトゲル(phytogel)、pH5.8。

誘導培地:MS最少培地、2mg/L 2,4−D、0.6mg/L硫酸銅、0.5mg/Lカゼイン加分解物、30g/Lスクロースおよび3g/Lフィトゲル(phytogel)、pH5.8。

分化培地:MS最少培地、0.2mg/Lカイネチン、30g/Lスクロースおよび3g/Lフィトゲル(phytogel)、pH5.8。

発根培地:1/2MS最少培地、0.5mg/Lエタンスルホン酸、0.5mg/L α−ナフチル酢酸、30g/Lスクロースおよび3g/Lフィトゲル(phytogel)、pH5.8。

実施例1 インビトロでの転写により合成されたCas9 mRNAとsgRNAとを用いたコムギ未熟胚の形質転換による、TaGW2の部位特異的編集 I.標的断片:標的C14の設計 標的C14:(コムギTaGW2のA群、B群およびD群のエクソン8の保存された領域における)5’−CCAGGATGGGGTATTTCTAGAGG−3’。

II.Cas9−mRNAの、インビトロでの転写による合成および精製 1.pXT7−Cas9ベクターをXbaIで消化した。精製キット(Axygen)を用いてこの消化産物を100ng/μlより高い濃度に精製し、これをpXT7−Cas9−XbaIと命名した。

2.精製産物pXT7−Cas9−XbaIを、インビトロ転写キット(AM1344、Ambion)で転写した。mRNA精製キット(AM1908、Ambion)を用いてこの産物を500ng/μlより高い濃度に精製した。インビトロでの転写により合成されたCas9−mRNAのアガロースゲル電気泳動図を、図1Aに示した。

III.標的部位を狙うsgRNAの、インビトロでの転写による合成 1.TaGW2の標的部位から、pTaU6−gRNAベクターを構築した。

以下の、粘着末端(下線)を有する1本鎖オリゴヌクレオチドを合成した: C14F:5’−CTTGCAGGATGGGGTATTTCTAG−3’; C14R:5’−AAACCTAGAAATACCCCATCCTG−3’。

C14F/C14R間のアニーリングにより粘着末端を有する2本鎖DNAを形成させ、これをpTaU6−gRNAプラスミド中の2つのBbsI制限部位の間に挿入して、C14部位を含むpTaU6−gRNAプラスミドを得た。陽性プラスミドをシーケンシングによって確認した。5’−CTTGCAGGATGGGGTATTTCTAG−3’で示されるDNA断片をpTaU6−gRNAプラスミドのBbsI制限部位で順方向に挿入することにより得られた組換えプラスミドは陽性であり、これをpTaU6−gRNA−C14と命名した。

2.T7−TaGW2−gRNAのDNA断片の、インビトロでの増幅および精製 プライマー設計 T7−TaGW2−F:TAATACGACTCACTATAGGCAGGATGGGGTATTTCTAG; gRNA−PCR−R:AGCACCGACTCGGTGCCACTT。

pTaU6−gRNA−C14をテンプレートとして用いてPCR増幅を行った。PCR精製キット(AP−GX−250G、Axygen)を用いて、PCR産物を100ng/μlより高い濃度に精製した。得られたPCR産物は、T7プロモーターとTaGW2標的部位とを含むsgRNAであり、これをT7−TaGW2−gRNAと命名する。

3.TaGW2標的部位を含むsgRNAの、インビトロでの転写による合成 T7インビトロ転写キット(E2040S、NEB)を用いたインビトロでの転写により、(配列番号17に示す)sgRNA−GW2−C14を合成した。

IV.インビトロでの転写により合成されたCas9−mRNAとインビトロでの転写により合成されたsgRNAとをパーティクルボンバードメントにより導入して形質転換を行うことによる、コムギTaGW2遺伝子の部位特異的編集 1.インビトロでの転写により合成されたCas9−mRNAとインビトロでの転写により合成されたsgRNAとへの、0.6nmの金粉末の負荷 0.6nmの金粉末5μl、Cas9−mRNA 3μl、sgRNA−GW2−C14 1μl、5M酢酸アンモニウム1μl、イソプロパノール20μlを混合し、−20℃で1時間沈殿させることにより、Cas9−mRNAとsgRNA−GW2−C14とをこの金粉末に付着させる。この混合物を1000rpmで5秒間遠心分離し、上清を廃棄した後に無水アルコール100μlで洗浄し、その後再び1000rpmで5秒間遠心分離し、上清を廃棄した後に無水アルコール20μl中に再懸濁させた。

2.パーティクルボンバードメントを用いたコムギレシピエント材料の形質転換 1)コムギ変種KN199の未熟胚を採取し、高張培地を用いて4時間処理した。

2)ステップ1)において高張培養したコムギ未熟胚に、パーティクルボンバードメント装置を用いて撃込みを行った。sgRNA−Cas9−mRNA混合物20μlを膜上に負荷して撃ち込んだ。各撃込みの撃込み間隔は6cmであり、撃込み圧は1100psiであり、撃込み直径は2cmであった。

3)ステップ2)で撃込みを行ったコムギ未熟胚を、16時間高張培養した。

4)次いで、ステップ3)で高張培養したコムギ未熟胚を順次、14日間のカルス組織誘導培養、28日間の分化培養および14〜28日間の発根培養に供して、コムギ植物を得た。

5)ステップ4)で生成させたコムギ実生からDNAを抽出し、遺伝子ノックアウト(部位特異的)を伴う変異体をPCR/RE試験により検出した(詳細な試験方法については、ステップIVを参照)。野生型コムギ変種Kn199を対照として用いた。

コムギ内在性遺伝子TaGW2の標的断片中には制限エンドヌクレアーゼXbaIにより認識される配列が存在するため、XbaIを使用してPCR/RE試験を行った。PCR増幅において使用されるプライマーは、A群、B群およびD群に特異的なプライマーであり、以下の配列を有する: TaGW2−AF:5’−CTGCCATTACTTTGTATTTTGGTAATA−3’; TaGW2−BF:5’−GTTCAGATGGCAATCTAAAAGTT−3’; TaGW2−DF:5’−GCATGTACTTTGATTGTTTGCGTGA−3’; TaGW2−R:5’−TCCTTCCTCTCTTACCACTTCCC−3’。

いくつかの検出試験の結果から、コムギTaGW2遺伝子の標的部位で変異が生じたことが判明した。シーケンシングのためにバンドを回収した。これらのシーケンシング結果から、コムギTaGW2遺伝子の標的部位で挿入/欠失(インデル)が生じたことが判明した(図1Bおよび図1C)。

実施例2 インビトロでの転写により合成されたTALEN mRNAを用いたイネプロトプラストの形質転換による、OsBADH2遺伝子の部位特異的編集 I.TALEN標的断片 イネBADH2遺伝子の配列を、配列番号1に示す。

TALEN標的断片はイネBADH2遺伝子の第4エクソンに位置し、以下の配列を有する: 5’−GCTGGATGCTTTGAGTActttgcagatcttgcagaATCCTTGGACAAAAGGC−3’(配列番号1の1589〜1640の位置)。

中央の小文字はスペーサー配列を表し、隣接する大文字は、TALENモジュールにより認識される配列(これをL−bおよびR−bと命名する)を表す。下線が付されているのは、BglIIにより認識される配列である。

II.TALENコード遺伝子の設計および合成 この標的配列中のL−bを認識するTALENタンパク質をT−BADH2b−Lと命名し、コード配列は配列番号2の7〜2952の位置に示される。配列番号2の7〜27の位置は核局在化シグナル(NLS)をコードし、463〜2154の位置はL−b配列認識モジュールタンパク質をコードし、2350〜2953の位置(603bp)はエンドヌクレアーゼFok Iをコードする。

この標的配列中のR−bを認識するTALENタンパク質をT−BADH2b−Rと命名し、コード配列は配列番号2の3085〜6018の位置に示される。配列番号2の3085〜3105の位置は核局在化シグナル(NLS)をコードし、3541〜5232の位置はR−b配列認識モジュールタンパク質をコードし、5428〜6018の位置(591bp)はエンドヌクレアーゼFok Iをコードする。

配列番号2の2953〜3006の位置はT2Aをコードする。このT2Aは18のアミノ酸から構成され、このT2Aによって、同一発現カセットにおいて発現されたT−BADH2b−LとT−BADH2b−Rとが2つの個々のタンパク質へと分かれうる。

III.TALEN遺伝子のmRNAの、インビトロでの合成 T7プロモーターを用いて転写を開始することにより、イネBADH2遺伝子に関するTALENの2つの成分であるT−BADH2b−LとT−BADH2b−Rとを、mRNA転写キット(Ambion)を用いてインビトロで転写した。mRNA−L−T−OsBADH2bおよびmRNA−R−T−OsBADH2bが得られ、そしてこのmRNAの安定性を高めるためにそれらの3’末端にPolyA尾部を付加した。

mRNA−L−T−OsBADH2bの配列を配列番号3に示し、mRNA−R−T−OsBADH2bの配列を配列番号4に示す。

IV.インビトロでの転写による合成によって得られたTALENの2つのmRNAの混合物の、イネプロトプラストへの導入 1.材料の調製 使用したイネ変種は、日本晴である。種子を75%エタノール中ですすぎ、次いで2.5%次亜塩素酸ナトリウムで20分間処理し、滅菌水で5回超洗浄し、1/2MS培地内で26℃で12時間明所下で7〜10日間培養した(150μmol・m−2・s−1)。1つの大きなガラス製培養瓶内で、15個の種子を培養することができる。1回の実験で40〜60個の実生が必要であり、単離されたプロトプラストの量は6個のプラスミドの形質転換に十分である。

2.プロトプラストの単離 1)プロトプラストの単離に、苗条および葉鞘を用いた。これらを切断して0.5mmの糸状物とした。

2)これらの糸状物をすぐに0.6Mのマンニトール溶液に移し、暗所に10分間置いた。

3)このマンニトール溶液をろ過により除去し、糸状物を酵素分解溶液に移し、暗所で真空ポンプ中で−15〜−20(mmHg)で30分間処理した。

4)これらのサンプルを(振盪機で10rpmの速度で)穏やかに振盪しながらさらに4〜5時間消化した。

5)消化後に等体積のW5溶液を加えた。プロトプラストを放出させるには、この溶液を10秒間振盪することが望ましい。

6)40μmのナイロンろ過膜を用いてこれらのプロトプラストをろ過して50ml丸底遠沈管に入れ、W5溶液を加えて洗浄した。

7)250×gの遠心分離を3分間行ってこれらのプロトプラストを沈殿させ、上清を廃棄した。

8)これらのプロトプラストをW5 10ml中に再懸濁させ、250×gで5分間遠心分離し、上清を廃棄した。

9)適量のMMG溶液を加えることにより、これらのプロトプラストを再懸濁させた。血球計算器を用いた計数により測定した場合に、これらのプロトプラストの濃度は2×106/mlである。

注釈:上記ステップをいずれも室温で行った。

3.プロトプラストの形質転換 1)mRNA−L−T−OsBADH2b 10μgとmRNA−R−T−OsBADH2b 10μgとを、2ml遠沈管に加えた。プロトプラスト200μl(約4×105個の細胞)を加えた。次いで、新鮮なPEG溶液220μlを加えて混合した。形質転換を、室温で暗所で10〜20分間行った。

2)形質転換後、W5 880μlをゆっくりと加え、反転により混合し、250×gの遠心分離を3分間行い、上清を廃棄した。

3)WI 1mlを加えることによりこれらのプロトプラストを再懸濁させ、これらを(予めWI 1mlを加えておいた)6ウェルプレートに移し、次いで室温または28℃で暗所で6〜16時間(これらのプロトプラストをゲノムDNA抽出に使用する場合には48時間)培養させた。

4.インビトロでの転写により合成されたTALENにより生じたイネ内在性遺伝子BADH2の変異誘発の、PCR/RE実験を用いた解析 プロトプラストの形質転換の48時間後にゲノムDNAを抽出し、これをPCR/RE(ポリメラーゼ連鎖反応/制限消化)実験解析用テンプレートとして使用した。同時に、野生型イネ変種日本晴のプロトプラストを対照として用いた。PCR/RE解析方法は、Shan, Q. et al. Rapid and efficient gene modification in rice and Brachypodium using TALENs. Molecular Plant (2013)に基づく。イネ内在性遺伝子BADH2の標的部位は制限エンドヌクレアーゼBglII認識配列を含むため、PCR/RE試験を行うために実験において制限エンドヌクレアーゼBglIIを使用した。PCR増幅に使用したプライマーは、以下の通りである: OsBADH−F:5’−GATCCCGCAGCGGCAGCTCTTCGTCG−3’; OsBADH2−R:5’−GAGGAATAAAATCTCAAATGTCTTCAACTT−3’。

PCR/RE実験の結果を図2Bに示す。その結果から、BADH2遺伝子の標的部位で変異が生じ、変異誘発効率は約5%であることが判明した。図中のバンドを回収してシーケンシングしたところ、これらのシーケンシング結果から、BADH2遺伝子の標的部位で挿入/欠失(インデル)が生じたことが判明した(図2C)。

実施例3 原核の発現系におけるTALENタンパク質の発現および精製、ならびに該TALENタンパク質をコムギプロトプラストまたは未熟胚に導入して形質転換させることによるMLO遺伝子の部位特異的改変 I.標的配列の選択およびTALENの設計 コムギMLO遺伝子のエクソン2における保存された領域を標的配列として使用して、一対のTALEN(これは、TAL−MLO−Lタンパク質とTAL−MLO−Rタンパク質とからなり、TAL−MLO−Lタンパク質は、2つの機能的断片、すなわち、標的配列の上流のヌクレオチドに特異的に結合する断片と、EL変異を伴うFok Iエンドヌクレアーゼと、から構成され、TAL−MLO−Rタンパク質は、2つの機能的断片、すなわち、標的配列の下流のヌクレオチドに特異的に結合する断片と、KK変異を伴うFok Iエンドヌクレアーゼと、から構成される)を設計した。TaMLO−A遺伝子、TaMLO−B遺伝子およびTaMLO−D遺伝子における前記TALENの標的配列を、以下に列挙する: TaMLO−A遺伝子: 5’−TCGCTGCTGCTCGCCGTcacgcaggacccaatctcCGGGATATGCATCTCCCA−3’; TaMLO−B遺伝子: 5’−TCGCTGCTGCTCGCCGTgacgcaggaccccatctcCGGGATATGCATCTCCGA−3’; TaMLO−D遺伝子: 5’−TCGCTGCTGCTCGCCGTgacgcaggacccaatctcCGGGATATGCATCTCCGA−3’。

コムギ細胞において、TAL−L断片およびTAL−R断片がそれぞれの結合領域に結合すると、2つの異なる単量体Fok Iエンドヌクレアーゼ(EL変異を伴うFok IエンドヌクレアーゼおよびKK変異を伴うFok Iエンドヌクレアーゼ)により活性Fok I 2量体エンドヌクレアーゼが形成され、この2量体エンドヌクレアーゼにより標的配列領域(標的配列および隣接配列を含む)が切断されることで2本鎖切断が生じるものと考えられる。前記切断が細胞により修復される間に、多数の変異が導入されるものと考えられる。本明細書において「変異」とは、挿入、欠失、置換などを含む広い意味を有するが、その大半は遺伝子機能の喪失をもたらす。

上記標的配列において、下線部は、制限ヌクレアーゼAvaIIが切断しうるAvaII認識配列である。切断が生じた後、変異が生じてAvaII認識配列が中断された場合にはAvaIIは標的配列を切断できず、変異が生じない場合にはAvaIIは標的配列を切断できる。

II.原核の発現系におけるMLO遺伝子標的のためのTALENタンパク質の発現および精製 1.TALENタンパク質を発現するための、原核の発現ベクターの構築 1)TALEN遺伝子のTAL−L(配列番号5)およびTAL−R(配列番号6)のコード領域から原核の発現ベクターpGEX−4Tを構築し、pGEX−4TのBamHI部位とXbaI部位との間に順方向に挿入されたTAL−Lコード領域(配列番号5)と、pGEX−4TのXbaI部位とBamHI部位との間に順方向に挿入されたTAL−Rコード領域(配列番号6)と、を有する組換えベクターを得た。この組換えベクターを大腸菌BL21に導入して形質転換させた。アンピシリンとクロラムフェニコールとを補充したLB培地に陽性コロニーを接種し、37℃で一晩培養した。次いで、この培養物を新鮮なLB培地5mlに1:100の割合で接種し、225rpmで37℃でOD600≒0.5となるように培養した。この培養物1mlを陰性対照(誘導なし)とした。誘導ありまたは誘導なしの空のpGEX−4Tベクターの対照も準備した。残りの培養のためにIPTGを加えて(最終濃度1mM)、発現を37℃で225rpmで8時間誘導した。

2)対照または誘導された培養物各1mlを採取し、12000rpmで10分間遠心分離して細菌細胞を収集し、上清を廃棄した。50μLタンパク質ローディングバッファーを加えることによりこれらの細胞を再懸濁させ、7分間沸騰させた。上清を、10%SDS−PAGEにより解析した。各TALENタンパク質の分子量は、約100Kdaである。TAL−MLO−Lタンパク質のアミノ酸配列を、配列番号7に示す。TAL−MLO−Rタンパク質のアミノ酸配列を、配列番号8に示す。

2.TALENタンパク質の精製 この細菌培養物を4℃で10分間遠心分離して、細菌細胞を収集した。このペレットに溶解バッファー(50mM Tris−HCl、2mM EDTA、100mM NaCl、1mg/mlリゾチーム、pH8.5)10mlを加え、氷上で45分間混合した。超音波処理後、遠心分離によりペレットを収集し、4Mイミダゾールで洗浄した。さらなる遠心分離後に得られたペレットを、pH7.4の50mMリン酸バッファー(8M尿素含有)に溶解させた(図3A)。

III.精製されたTALENタンパク質をコムギプロトプラストに導入することによる、MLO遺伝子の部位特異的編集 MLOの標的部位を狙う精製されたTALENタンパク質を、PEG媒介型の手法によりコムギ変種Bobwhiteのプロトプラストに次のように導入した: 1.コムギ実生の生長 コムギ種子を、培養室内で、25±2℃、照度1000Lx、明所14〜16h/日で約1〜2週間生長させた。

2.プロトプラストの単離 1)コムギの柔らかい葉を採取し、カッター刃を使用してこの葉の中央部分を切断して0.5〜1mmの糸状物とし、これらを暗所で(溶媒として水を使用した)0.6Mマンニトール溶液中に10分間置いた。次いで、フィルターを用いてこの混合物をろ過し、次いで酵素分解溶液50ml中に入れて5時間消化した(酵素分解を真空中で0.5時間行い、次いで10rmpでゆっくりと4.5時間振盪した)。

注釈:酵素分解時の温度を20〜25℃に保持することが望ましく、この反応を暗所で行うことが望ましく、また反応後に溶液を穏やかに振盪してプロトプラストを放出させることが望ましい。

2)W5 10mlを加えることによりこの酵素分解物を希釈し、75μmのナイロンろ過膜を用いてこれをろ過して、50ml丸底遠沈管に入れた。

注釈:ナイロンろ過膜を75%(体積%)エタノール中に沈め、水で洗浄し、次いで使用前にW5中に2分間浸漬させることが望ましい。

3)23℃で100×gの遠心分離を3分間行い、上清を廃棄した。

4)このペレットをW5 10mlで懸濁させ、これを氷上に30分間置いた。これらのプロトプラストは、最終的に沈降物を形成した。そして上清を廃棄した。

5)適量のMMG溶液を加えることによりこれらのプロトプラストを懸濁させ、形質転換を行うまでこれらを氷上に置いた。

注釈:これらのプロトプラストの濃度を顕微鏡検査(×100)により測定する必要がある。プロトプラストの量は、2×105/ml〜1×106/mlであった。

3.コムギプロトプラストの形質転換 1)TALENタンパク質(TAL−MLO−Lタンパク質とTAL−MLO−Rタンパク質とを等量混合したもの)15μgまたはT−MLOベクター(対照)20μgを、2ml遠沈管に加えた。ピペットを用いて、単離したプロトプラスト200μlを加え、次いでこれらを穏やかに叩くことにより混合し、3〜5分間静置した。次いでPEG4000 250μlを加え、穏やかに叩くことにより混合した。形質転換を、暗所で30分間行った。

2)W5(室温)900μlを加え、反転により混合し、100×gの遠心分離を3分間行い、かつ上清を廃棄した。

3)W5 1mlを加え、反転により混合し、内容物を(予めW5 1mlを加えておいた)6ウェルプレートに穏やかに移し、次いで23℃で一晩培養した。

4.精製されたTALENタンパク質により生じたコムギ内在性遺伝子MLOの変異誘発の、PCR/RE実験を用いた解析 コムギプロトプラストの形質転換の48時間後にゲノムDNAを抽出し、これをPCR/RE(ポリメラーゼ連鎖反応/制限消化)実験解析用テンプレートとして使用した。同時に、T−MLOプラスミドを用いて形質転換させたプロトプラストか、または野生型コムギ変種Bobwhiteのプロトプラストを、対照として使用した。PCR/RE解析方法は、Shan, Q. et al. Rapid and efficient gene modification in rice and Brachypodium using TALENs. Molecular Plant (2013)に基づく。コムギ内在性遺伝子MLOの標的断片は制限エンドヌクレアーゼAvaII認識配列を含むため、PCR/RE試験を行うために実験においてAvaIIを使用した。PCR増幅に用いたプライマーは、以下の通りであった: TaMLO−F:5’−TCATCGTCTCCGTCCTCCTGGAGCA−3’; TaMLO−R:5’−TGGTATTCCAAGGAGGCGGTCTCTGTCT−3’。

これらのPCR/RE実験の結果から、MLOの遺伝子の標的部位で変異が生じたことが判明した。バンドを回収してシーケンシングしたところ、これらのシーケンシング結果から、MLO遺伝子の標的部位で挿入/欠失(インデル)が生じたことが判明した(図3Bおよび図3C)。

IV.パーティクルボンバードメントを用いたTALENタンパク質の導入によるMLO遺伝子の部位特異的編集 一般には、発現プラスミドをパーティクルボンバードメントにより細胞に導入して形質転換を行う際に、細胞にDNAプラスミドを運ぶキャリアとして金粉末が用いられる。しかしタンパク質は金粉末に結合しにくいため、タンパク質にとって金粉末はキャリアとしては適さない。本発明においては、パーティクルボンバードメントを用いたタンパク質の導入による形質転換のためのキャリアとして、シリカを使用する。

1.シリカへのタンパク質の負荷 10nmの開口部を有するシリカAu−MSNを、キャリアとして使用した。音波処理のために、Au−MSN 20mgをpH7.4のリン酸バッファー(PBS)5mlに加え、次いで、精製されたTAL−MLO−Lタンパク質および精製されたTAL−MLO−Rタンパク質7mgを加えた。この混合物を22℃で24時間撹拌し、12000rpmで遠心分離した。上清を廃棄した。このペレットを、PBSバッファーで懸濁させた。

2.パーティクルボンバードメントを用いたコムギレシピエント材料の形質転換 1)コムギ変種Bobwhiteの未熟胚を採取し、高張培地を用いて4時間処理した。

2)ステップ1)で高張培養したコムギ未熟胚への撃込みを行うために、パーティクルボンバードメント装置を使用した。TALENタンパク質(5μl、20μg/μl)を負荷させたAu−MSNを膜上に負荷して撃ち込んだ。各撃込みの撃込み間隔は6cmであり、撃込み圧力は1100psiであり、撃込み直径は2cmであった。

3)ステップ2)で撃込みを行ったコムギ未熟胚を、16時間高張培養した。

4)次いで、ステップ3)で高張培養したコムギ未熟胚を順次、14日間のカルス組織誘導培養、28日間の分化培養および14〜28日間の発根培養に供して、コムギ植物を得た。

5)ステップ4)で生成させたコムギ実生からDNAを抽出し、遺伝子ノックアウト(部位特異的)を伴う変異体をPCR/RE試験により検出した(詳細な試験方法については、ステップIIIを参照)。野生型コムギ変種Bobwhiteを対照として用いた。

いくつかの変異体のこれらの検出結果から、コムギMLO遺伝子の標的部位で変異が生じたことが判明した。シーケンシングのためにバンドを回収した。これらのシーケンシング結果から、コムギMLO遺伝子の標的部位で挿入/欠失(インデル)が生じたことが判明した。

上記の結果から、ヌクレアーゼタンパク質をコムギに導入することにより標的部位の部位特異的編集を達成できることが実証された。この方法により得られた変異体は外来DNAを含まず、また導入されたタンパク質は植物細胞により分解されるものと考えられる。したがって、本方法により得られた変異体は、導入遺伝子を含まずかつ高い生物学的安全性を有する植物である。

実施例4 原核の発現系において発現および精製されたCas9タンパク質とインビトロでの転写により合成されたsgRNAとを導入して同時形質転換を行うことによる、TaGASR7遺伝子の部位特異的編集 I.標的断片:標的C5の設計 標的C5:(ジェンバンク登録番号EU095332の248〜268の位置に示されるTaGASR7遺伝子における)5’−CCGCCGGGCACCTACGGCAAC−3’。

II.Cas9タンパク質の、原核での発現および精製 1.Cas9遺伝子(コドン使用頻度を植物に最適化し、かつ両端にNLSを付加したもの)から原核の発現ベクターpGEX−4Tを構築し、このpGEX−4TベクターのBamHIとSpeIとの間に挿入された配列番号9のCas9遺伝子(コドン使用頻度を植物に最適化し、かつ両端にNLSを付加したもの)を有する組換えベクターを得た。この組換えベクターを大腸菌BL21に導入して形質転換させた。アンピシリンとクロラムフェニコールとを補充したLB培地に陽性コロニーを接種し、37℃で一晩培養した。次いで、この培養物を新鮮なLB培地5mlに1:100の割合で接種し、225rpmで37℃でOD600≒0.5となるように培養した。この培養物1mlを陰性対照(誘導なし)とした。誘導ありまたは誘導なしの空のpGEX−4Tベクターの対照も準備した。残りの培養のためにIPTGを加えて(最終濃度1mM)、発現を37℃で225rpmで8時間誘導した。

2.対照または誘導された培養物各1mlを採取し、12000rpmで10分間遠心分離して細菌細胞を収集し、上清を廃棄した。50μLタンパク質ローディングバッファーを加えることによりこれらの細胞を再懸濁させ、7分間沸騰させた。上清を、10%SDS−PAGEにより解析した。Cas9タンパク質の分子量は、約200Kdaである。Cas9タンパク質のアミノ酸配列を、配列番号10に示す。

2.Cas9タンパク質の精製 この細菌培養物を4℃で10分間遠心分離して、細菌細胞を収集した。このペレットに溶解バッファー(50mM Tris−HCl、2mM EDTA、100mM NaCl、1mg/mlリゾチーム、pH8.5)10mlを加え、氷上で45分間混合した。超音波処理後、遠心分離によりペレットを収集し、4Mイミダゾールで洗浄した。さらなる遠心分離後に得られたペレットを、pH7.4の50mMリン酸バッファー(8M尿素含有)に溶解させた(図4A)。

III.標的部位のsgRNAの、インビトロでの転写による合成 1.TaGASR7の標的部位から、pT7−gRNAベクターを構築した。

C5は、標的C5に相補的に結合しうるRNAをコードするDNA配列である。

以下の、粘着末端(下線)を有する1本鎖オリゴヌクレオチドを合成した: C5F:5’−CTTGTTGCCGTAGGTGCCCGG−3’; C5R:5’−AAACCCGGGCACCTACGGCAA−3’。

オリゴヌクレオチドのアニーリング処理により粘着末端を有する2本鎖DNAを形成させ、これをpT7−gRNAプラスミド中の2つのBbsI制限部位の間に挿入して、C5部位を含むpT7−gRNAプラスミドを得た。陽性プラスミドをシーケンシングによって確認した。5’−CTTGTTGCCGTAGGTGCCCGG−3’で示されるDNA断片をpT7−gRNAプラスミドのBbsI制限部位で順方向に挿入することにより得られた組換えプラスミドは陽性であり、これをpT7−gRNA−C5と命名した。

2.TaGASR7の標的部位を含むsgRNAの、インビトロでの転写による合成 転写を開始するためのT7プロモーターを用いて、mRNA転写キット(Ambion)を用いたインビトロでの転写により、TaGASR7遺伝子に対するsgRNAを合成してsgRNA−GASR7−C5(配列番号11)とし、そしてこのmRNAの安定性を高めるためにその3’末端にPolyA尾部を付加した。

IV.Cas9タンパク質とインビトロでの転写により合成されたsgRNAとをコムギプロトプラストに導入して同時形質転換を行うことによる、TaGASR7遺伝子の編集 1.プロトプラストの調製は、実施例3と同一である。

2.プロトプラストの形質転換 1)精製されたCas9タンパク質15μgとsgRNA−GASR7−C5 20μgとを、2ml遠沈管に加えた。プロトプラスト200μl(約4×105個の細胞)を加え、次いで新鮮なPEG溶液250μlを加えて混合した。形質転換を、暗所で30分間行った。

2)W5(室温)900μlを加え、反転により混合し、100×gの遠心分離を3分間行い、上清を廃棄した。

3)W5 1mlを加え、反転により混合し、内容物を(予めW5 1mlを加えておいた)6ウェルプレートに穏やかに移し、次いで23℃で一晩培養した。

3.精製されたCas9タンパク質とインビトロでの転写により合成されたsgRNAとにより生じたコムギ内在性遺伝子TaGASR7の変異誘発の、PCR/RE実験を用いた解析 コムギプロトプラストの形質転換の48時間後にゲノムDNAを抽出し、これをPCR/RE(ポリメラーゼ連鎖反応/制限消化)実験解析用テンプレートとして使用した。同時に、野生型コムギ変種Bobwhiteのプロトプラストを、対照として使用した。PCR/RE解析方法は、Shan, Q. et al. Rapid and efficient gene modification in rice and Brachypodium using TALENs. Molecular Plant (2013)に基づく。コムギ内在性遺伝子TaGASR7(ジェンバンク登録番号EU095332)の標的部位(ジェンバンク登録番号EU095332の248〜268の位置)は制限エンドヌクレアーゼNciI認識配列(5’−CCSGG−3’)を含むため、PCR/RE試験を行うために実験においてNciIを使用した。PCR増幅に用いたプライマーは、以下の通りであった: TaGASR7−F:5’−GGAGGTGATGGGAGGTGGGGG−3’; TaGASR7−R:5’−CTGGGAGGGCAATTCACATGCCA−3’。

これらのPCR/RE実験の結果から、TaGASR7遺伝子の標的部位で変異が生じたことが判明した。図中のバンドを回収してシーケンシングしたところ、これらのシーケンシング結果から、TaGASR7遺伝子の標的部位で挿入/欠失(インデル)が生じたことが判明した(図4Bおよび図4C)。

V.精製されたCas9タンパク質とインビトロでの転写により合成されたsgRNAとをパーティクルボンバードメントにより導入して形質転換を行うことによる、コムギTaGASR7遺伝子の部位特異的編集 1.精製されたCas9タンパク質とインビトロでの転写により合成されたsgRNAとの、シリカへの負荷 10nmの開口部を有するシリカAu−MSNを、キャリアとして使用した。音波処理のために、Au−MSN 20mgをpH7.4のリン酸バッファー(PBS)5mlに加えた。次いで、精製されたCas9タンパク質7mgを加えた。この混合物を22℃で24時間撹拌し、12000rpmで遠心分離した。上清を廃棄した。このペレットを、PBSバッファーで懸濁させた。インビトロでの転写により合成されたsgRNA(250ng/μl)4μlを、Cas9タンパク質−Au−MSN(10μg/μl)キャリア10μlに加えた。次いで、2.5M CaCl2 12.5μlと0.1Mスペルミジン5μlとを加え、5000rpmで15秒間遠心分離し、上清を廃棄した。このCas9タンパク質を担持しかつmRNAで被覆されたAu−MSNを、100%エタノールで2回洗浄し、100%エタノール5μl中に再懸濁させ、これをsgRNA−Cas9−Au−MSNと命名した。

2.パーティクルボンバードメントを用いたコムギレシピエント材料の形質転換 1)コムギ変種Bobwhiteの未熟胚を採取し、高張培地を用いて4時間処理した。

2)ステップ1)で高張培養したコムギ未熟胚への撃込みを行うために、パーティクルボンバードメント装置を使用した。sgRNA−Cas9−Au−MSN 5μlを膜上に負荷して撃ち込んだ。各撃込みの撃込み間隔は6cmであり、撃込み圧力は1100psiであり、撃込み直径は2cmであった。

3)ステップ2)で撃込みを行ったコムギ未熟胚を、16時間高張培養した。

4)次いで、ステップ3)で高張培養したコムギ未熟胚を順次、14日間のカルス組織誘導培養、28日間の分化培養および14〜28日間の発根培養に供して、コムギ植物を得た。

5)ステップ4)で生成させたコムギ実生からDNAを抽出し、遺伝子ノックアウト(部位特異的)を伴う変異体をPCR/RE試験により検出した(詳細な試験方法については、ステップIVを参照)。野生型コムギ変種Bobwhiteを対照として用いた。

いくつかの変異体のこれらの検出結果から、コムギTaGASR7遺伝子の標的部位で変異が生じたことが判明した。シーケンシングのためにバンドを回収した。これらのシーケンシング結果から、コムギTaGASR7遺伝子の標的部位で挿入/欠失(インデル)が生じたことが判明した。

実施例5 精製されたCas9タンパク質とsgRNAとを花粉管による手法により植物に導入することによる、トウモロコシ内在性ZmIPK遺伝子の部位特異的編集 I.標的断片:標的C2の設計 標的C2:5’−CCGAGCTCGACCACGCCGCCGAC−3’(ジェンバンク登録番号AY172635に示される遺伝子ZmIPKの393〜415の位置) II.Cas9タンパク質の、原核での発現および精製 実施例3のステップIIと同一である。

III.標的部位のsgRNAの、インビトロでの転写による合成 1.ZmIPKの標的部位から、pT7−gRNAベクターを構築した。

C2は、標的C2に相補的に結合しうるRNAをコードするDNA配列である。

以下の、粘着末端(下線)を有する1本鎖オリゴヌクレオチドを合成した: C2−1F:5’−AGCAGTCGGCGGCGTGGTCGAGCT−3’; C2−1R:5’−AAACAGCTCGACCACGCCGCCGAC−3’。

オリゴヌクレオチドのアニーリング処理により粘着末端を有する2本鎖DNAを形成させ、これをpT7−gRNAプラスミド中の2つのBbsI制限部位の間に挿入して、C2部位を含むpT7−gRNAプラスミドを得た。陽性プラスミドをシーケンシングによって確認した。5’−AGCAGTCGGCGGCGTGGTCGAGCT−3’で示されるDNA断片をpT7−gRNAプラスミドのBbsI制限部位で順方向に挿入することにより得られた組換えプラスミドは陽性であり、これをpT7−gRNA−C2と命名した。

2.ZmIPKの標的部位を含むsgRNAの、インビトロでの転写による合成 転写を開始するためのT7プロモーターを用いて、mRNA転写キット(Ambion)を用いたインビトロでの転写により、ZmIPK遺伝子に対するsgRNAを合成してsgRNA−IPK−C2(配列番号12)とし、そしてこのmRNAの安定性を高めるためにその3’末端にPolyA尾部を付加した。

IV.精製されたCas9タンパク質とインビトロでの転写により合成されたsgRNAとを花粉管による手法により導入することによる、トウモロコシ内在性ZmIPK遺伝子の部位特異的編集 野外のトウモロコシ近交系HiIIの強い植物を、レシピエント材料として選択した。これらの植物を、晴天日の14:00〜16:00に自家受精させた。受粉の16〜20時間後、すなわち翌日の10:00〜12:00に、これらのレシピエントの花柱を切断した。この切開部に、10μg/μl Cas9タンパク質と250ng/μl sgRNAとの混合物を滴下した。結実するまで、柱頭を袋に入れた。得られたトウモロコシ種子を生長させ、そしてPCR/RE実験においてテンプレートとして使用するためにゲノムDNAを抽出した。並行して、野生型トウモロコシ変種HiIIを対照として準備した。PCR/RE解析方法は、Shan, Q. et al. Rapid and efficient gene modification in rice and Brachypodium using TALENs. Molecular Plant (2013)に基づく。トウモロコシ内在性遺伝子ZmIPK(ジェンバンク登録番号AY172635)の標的断片(ジェンバンク登録番号AY172635の393〜415の位置)は制限エンドヌクレアーゼSacI認識配列(5’−GAGCTC−3’)を含むため、PCR/RE試験を行うために実験において制限エンドヌクレアーゼSacIを使用した。PCR増幅に用いたプライマーは、以下の通りであった: ZmIPK−1F:5’−TCGCAGCCCCTGGCAGAGCAA−3’; ZmIPK−1R:5’−GAGACCTGGGAGAAGGAGACGGATCC−3’。

PCR/RE実験の結果から、ZmIPK遺伝子の標的部位で変異が生じたことが判明した。未切断バンドを回収してシーケンシングしたところ、これらのシーケンシング結果から、ZmIPK遺伝子の標的部位で挿入/欠失(インデル)が生じたことが判明した。

実施例6 原核の発現系において発現および精製されたCas9タンパク質とインビトロでの転写により合成されたsgRNAとをタバコプロトプラストに導入して同時形質転換を行うことによるNtPVY遺伝子の部位特異的編集、ならびに植物への再生 I.標的断片:標的P4の設計 標的P4:5’−TGATACCAGCTGGCTATACACGG−3’ II.Cas9タンパク質の、原核での発現および精製は、実施例3と同一である。

III.標的部位のsgRNAの、インビトロでの転写による合成 1.NtPVYの標的部位から、pHSN401ベクターを構築した。

P4は、標的P4に相補的に結合しうるRNAをコードするDNA配列である。

以下の、粘着末端(下線)を有する1本鎖オリゴヌクレオチドを合成した: P4−F:5’−ATTGTGATACCAGCTGGCTATACA−3’; P4−R:5’−AAACTGTATAGCCAGCTGGTATCA−3’. オリゴヌクレオチドのアニーリング処理により粘着末端を有する2本鎖DNAを形成させ、これをpHSN401プラスミド中の2つのBsaI制限部位の間に挿入して、P4を含むpHSN401プラスミドを得た。陽性プラスミドをシーケンシングによって確認した。5’−ATTGTGATACCAGCTGGCTATACA−3’で示されるDNA断片をpHSN401プラスミドのBsaI制限部位で順方向に挿入することにより得られた組換えプラスミドは陽性であり、これをpHSN401−P4と命名した。

2.NTPVYの標的部位を含むsgRNAの、インビトロでの転写による合成 転写を開始するためのT7プロモーターを用いて、mRNA転写キット(Ambion)を用いたインビトロでの転写により、NTPVY遺伝子(配列番号13、配列番号14、配列番号15)に対するsgRNAを合成してsgRNA−PVY−P4(配列番号16)とした。

IV.Cas9タンパク質とインビトロでの転写により合成されたsgRNAとをタバコプラストに導入して同時形質転換を行うことによる、NtPVY遺伝子の編集 1.材料の調製 使用したタバコ変種は、Honghua Dajinyuanである。種子を20%次亜塩素酸ナトリウムで20分間処理し、滅菌水で5回超洗浄した。次いで、これらの種子を25℃で16時間明所で1/2MS培地上で培養した。

2.プロトプラストの単離 1)30日齢のタバコ植物の葉を6枚選択し、無菌条件下で切断して約1cmの切片とした。酵素分解溶液15mlを含む培養プレートに、これらの切片を入れた。このプレートを密封し、25℃で一晩(最も好ましくは12時間)暗所で保持した。

2)酵素分解反応の後、適量のW5溶液を加えた。このプレートを穏やかに振盪してプロトプラストを放出させた。次いで、このプロトプラスト懸濁液を100μmおよび40μmの滅菌フィルターでろ過し、70×gで5分間遠心分離し、上清を廃棄した。

3)22%スクロース溶液5mlを加えることにより、これらのプロトプラストを再懸濁させた。次いで、W5溶液2mlを加え、70×gで5分間遠心分離した。その際、これらのプロトプラストは界面で懸濁した。

4)これらのプロトプラストをこの界面から採取した。W5溶液5mlを加えて混合し、次いで70×gで5分間遠心分離した。

5)上清を廃棄した。MMG形質転換溶液1mlを加えて、これらのプロトプラストを再懸濁させた。顕微鏡検査によりプロトプラストの収量を調べた。

3.プロトプラストの形質転換および再生 1)精製されたCas9タンパク質20μgとmRNA−PVY−P4 20μgとを、14ml遠沈管に加えた。プロトプラスト300μl(約5×105個の細胞)を加え、次いで新鮮なPEG溶液300μlを加えて混合し、暗所で20分間保持した。

2)W5 10mlを加えて混合し、70×gで3分間遠心分離し、そして上清を廃棄した。このステップを繰り返した。

3)0.6%シープラーク(Sea Plaque)アガロース(使用前に40〜45℃の水浴中でインキュベートしたもの)を含むK3:H培地1mlを加えて混合した。この混合物を30mm滅菌培養プレートに導入して形質転換させた。

4)培地の固化後に、このプレートを24℃で暗所に24時間置き、最初の細胞分裂が生じるまでさらに6日間暗所で培養した。

5)このアガロースゲルを90mm培養プレートに移し、適量の液体培地を加えた。培養を24℃で暗所で継続した。

6)3〜4週間後、このプレートに、視認可能なカルスが出現した。そして、これらのカルスは5〜6週間の培養後に直径8〜10mmに達した。

7)これらのカルスを分化培地に移し、表面上に不定芽が形成されるまで1〜2週間培養した。

8)3〜4cmの不定芽を切断して発根培地に移し、インタクト植物が形成されるまで根の生成を誘導した。

9)根が一定の長さに達したら、これらの実生を土壌に移植した。

このトランスジェニックタバコのDNAを抽出し、これをPCR/RE(ポリメラーゼ連鎖反応/制限消化)解析用テンプレートとして使用した。並行して、野生型タバコDNAを対照として使用した。PCR/RE解析方法は、Shan, Q. et al. Rapid and efficient gene modification in rice and Brachypodium using TALENs. Molecular Plant (2013)に基づく。タバコ内在性遺伝子NtPVYの標的断片は制限エンドヌクレアーゼPvuII認識配列(5’−CAGCTG−3’)を含むため、PCR/RE試験において制限エンドヌクレアーゼPvuIIを使用した。PCR増幅に用いたプライマーは、以下の通りであった: NtPVY−F:5’−TGGATTAGATGTTTTCAAATGC−3’; NtPVY−R:5’−CATTCTTTTGGGGACGGACAAA−3’。

PCR/RE実験の結果から、Cas9タンパク質とインビトロでの転写により合成されたsgRNAとをタバコプロトプラストに導入して同時形質転換を行うことにより、NtPVY遺伝子の標的部位で変異が生じたことが判明した。未切断バンドを回収してシーケンシングしたところ、これらのシーケンシング結果から、NtPVY遺伝子の標的部位で挿入/欠失(インデル)が生じたことが判明した(図5Aおよび図5B)。さらに、再生されたトランスジェニックタバコ植物もNtPVY遺伝子の標的部位で変異を示した。これらのシーケンシング結果から、NtPVY遺伝子の標的部位で挿入/欠失(インデル)が生じたことが判明した(図5C)。

タバコプロトプラストの単離および培養のための溶液を、以下の表6から表10までに列挙する。

表6 酵素分解溶液50ml

表7 W5 500ml

表8 形質転換溶液10ml

表9 PEG溶液4ml

表10 タバコプロトプラストの単離および培養のためのストック溶液

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