【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】この発明は、ドラム缶,ペール缶等の容器内に収容した内容物を排出(取出し)する際に用いられる竪型ポンプ装置、所謂ドラム缶ポンプに関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来から、液体を輸送するに際してドラム缶,ペール缶等の容器に収容して輸送する場合がある。 この場合、そのような液体収納容器内の液体を取り出す方法としては、ロータリーポンプ等のポンプ装置の吸込み側配管(ホースやパイプなど)を容器の上面一部に形成した小径の開口部,あるいは上面全体に形成した開口部に差込んでポンプを起動する方法が一般的である。 【0003】しかし、この方法では起動時にポンプ内や吸込み側配管中に液体が無くポンプが空運転となるため、液体の吸引力が弱く、液体を吸い上げ難かった。 特に前記液体が高粘度のもの(数10p 以上)である場合、 その吸い上げは一層困難であった。 【0004】そのため、このような場合、起動時のみポンプの回転数を大幅に増して、吸引力を高める等の手段を取ることも有るが、操作が繁雑であるのに加えて吸引性能に限界があるため、根本的な問題の解決にはなっていない。 【0005】一方、細長く形成したポンプ部を容器の開口部に差込んで液体を移送する一軸偏心ねじポンプが有るが、ポンプ部と駆動部との連結部や、ポンプ部そのものの構造が複雑で高価となる欠点があった。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】従って、この発明は、 構造が簡単で、呼び水操作の必要の無いポンプ装置を得ることにあり、そのためにはポンプ部を挿入した時点で呼水操作が終了するような構造が不可欠であり、しかも、この種のポンプ装置の用途を考えると、ドラム缶の口のように小径の孔から液体収納容器内にポンプ部を差込む必要があるため、ポンプ部をできるだけ小型に形成することが肝要である。 【0007】 【課題を解決するための手段】この発明は、前記課題に鑑みてなされたものであって、駆動機構部,駆動力伝達機構部,並びにポンプ機構部を備え、このポンプ機構部を液中に埋没させて使用する竪型ポンプ装置であって、 前記駆動力伝達機構部の内部に軸線方向に沿う吐出流路を形成して、この吐出流路内に動力伝達軸を配置し、前記ポンプ機構部を前記駆動力伝達機構部の軸線方向を略同一となるように配置して、このポンプ機構部のケーシング内部に歯車状ローターを偏心させて収容し、このケーシングの軸方向の一側端面部分に吸込孔を設けると共に、他方の端面部分に吐出孔を設け、吐出孔を吐出流路と連通させると共に、この吐出流路の駆動機構部寄り部分に吐出口を開口させ、前記動力伝達軸の先端を、前記歯車状ローターの上端に、抜き差し自在な状態で、かつ、回り止めした状態で接続したことを特徴とする竪型ポンプ装置である。 【0008】 【実施例】この発明に係る竪型ポンプ装置の一実施例を図1〜5を参照しながら、以下説明する。 図面において、竪型ポンプ装置は、駆動機構部(10),駆動力伝達機構部(20),並びにポンプ機構部(30)を主な構成としている。 【0009】前記駆動機構部(10)は、基台(11)に、電動式、油圧式等のモータ(M) を固定して構成したものである。 そして、この基台(11)には後述するように、使用に際してポンプ装置を吊下げるための吊金具(12)を設けてある。 【0010】前記駆動力伝達機構部(20)は、前記駆動機構部(10)の基台(11)の下端に接続されており、ケーシング(21)とその内部に収納される動力伝達軸(22)とで構成される。 前記のケーシング(21)は、パイプ状のもので、 後述するように吐出流路(29)を兼ねており、前記の基台 (11)に形成した吐出口(13)と連通している。 前記動力伝達軸(22)は、その上端部がジョイント(23)によってモータ軸(14)に連結され、その下端部はポンプ機構部(30)の歯車状ローター(32)に連結してある。 従って、前記動力伝達軸(22)下端のポンプ機構部(30)との接続部(24)は回り止め可能な断面形状、例えば、角錐形状に成形してある。 【0011】前記ポンプ機構部(30)は、前記動力伝達機構部(20)のケーシング(21)とほぼ同等の外径を有するケーシング(31)と、その内部に偏心させて収容される歯車状ローター(32)とで構成されており、前記の駆動力伝達機構部(20)を介して駆動力をが伝達される。 前記の歯車状ローター(32)には、可撓性を有するベーン(33)(33)が複数枚、放射状に一体的に形成されている。 【0012】前記ケーシング(31)は、図2,図4に示すように、下端壁面の内側周壁寄りに設けた吸込孔(37) と、上端壁面の内側周壁寄りに設けた吐出孔(38)を有し、これら吸込孔(37)並びに吐出孔(38)は前記歯車状ローター(32)の回転軸に対し互いに180度位相をずらせた状態で形成してある。 前記吐出孔(38)は、略三日月状断面を有する流路でもって前記駆動力伝達機構部(20)のケーシング(21)と連通しており、従って、前記吐出孔(3 8)は、駆動力伝達機構部(20)のケーシング(21)内の吐出流路(29)を介して、前記基台(11)に形成した吐出口(13) と連通する。 【0013】前記ケーシング(31)の内壁面は、径方向の断面形状のうち、前記吸込孔(37)並びに吐出孔(38)の形成位置近傍においては、カム曲面とし、その間を曲率半径を異にする円筒とし、全体として滑らかな略円筒面形状としてある。 【0014】ここで前記ケーシング(31)の内壁面の断面形状を式で表すと以下のようになる。 なお、各式中のθ は、前記歯車状ローター(32)の回転軸線を中心に、前記吸込孔(37)及び吐出孔(38)の間に位置する平面から反時計回りにとった角度である(図4参照)。 【0015】 式1:X 2 +Y 2 =R 1 2 ( 0°≦θ≦ 45°,315°≦θ≦360°) 式2:X 2 +Y 2 =(R 1 −(θ−A) 2 /B 2 ) 2 ( 45゜≦θ≦ 90°,270゜≦θ≦315°) 式3:X 2 +Y 2 =(R 2 −(180−A−θ) 2 /B 2 ) 2 ( 90°≦θ≦135°,225°≦θ≦270°) 式4:X 2 +Y 2 =R 2 2 (135°≦θ≦225°) 【0016】このように、前記ケーシング(31)の内壁面の断面形状を前記の数式で決定される曲面とすることにより、歯車状ローター(32)の回転による隣り合うベーン (33)(33)間の容積は、等加速度的に変化し、ポンプ効率を向上することができる。 【0017】前記歯車状ローター(32)の上部には、駆動力伝達機構部(20)との接続のための接続孔(36)を設けてある。 この接続孔(36)は、前記動力伝達軸(22)の接続部 (24)の形状に合せて断面四角形状としてあり、この接続孔(36)に動力伝達軸(22)の接続部(24)が抜き差し自在、 且つ、回り止め状態で挿入される。 【0018】前記構成のポンプ装置の機能を図5に示す具体的な使用例を参照しながら説明する。 なお、図示する実施例においてはポンプ装置の昇降装置(H) を用いてあり、この昇降装置(H) は、先端にアーム(51)を設けたマスト(52),マスト(52)に設けたウインチ機構(53)を備え、前記ウインチ機構(53)から延びアーム(51)先端から吊下したワイヤーロープ等の索状体(54)により、前記ポンプ装置の吊金具(12)を利用して支持する構成になっている。 【0019】先ず、前記昇降装置(H) の所定位置にドラム缶,ペール缶等の液体収納容器(B) を載置する。 【0020】次に、前記昇降装置(H) のウィンチ機構(5 3)を作動させ、竪型ポンプ装置のポンプ機構部(30)を液体収納容器(B) の上部開口部から内部に挿入する。 【0021】この状態で、ポンプ機構部(30)は、収納容器(B) 内の液体の水位より下に位置するため、呼び水操作をしなくとも、ポンプ機構部(30)内には、容器(B) 内の液体の水位と同等になるまで自然に液体が流入する。 【0022】この状態で、前記駆動機構部(10)を稼動すると、この駆動力は駆動力伝達機構部(20)を介してポンプ機構部(30)に伝達される。 そして、歯車状ローター(3 2)の回転によりベーン(33)(33)が一体に回転し、この回転に伴う隣り合うベーン(33)(33)間の容積変化によりポンプ作用を行う。 【0023】ここで、前記ポンプ機構部(30)の稼動状態において、ポンプ機構部(30)の下端部は、実質的に液体収納容器(B) の内部底面に当接しており、この下端部に設けた突出部(39)により、ポンプ機構部(30)の先端が液体収納容器(B) の底面と密接して吸込孔(37)が塞がれるのを防止しており、この突出部(39)によって形成された隙間を介してポンプ機構部(30)の吸込孔(37)から本体内に流入する。 また、この時、前記歯車状ローター(32)の回転中心軸と動力伝達軸(22)の軸線とが同軸上に位置していない場合、例えば、前記動力伝達軸(22)が、曲っていたり、前記モーター軸(14)と前記歯車状ローター(32) の軸線方向が一致していないような場合においても、前記歯車状ローター(32)の接続孔(36)と動力伝達軸(22)の接続部(24)とが抜き差し自在、且つ、回り止め状態で係合されているため、前記動力伝達軸(22)の撓みを利用して有効に動力が伝達される。 【0024】そして前記駆動機構部(10)から駆動力を与えられたベーン(33)(33)の回転により、ポンプ機構部(3 0)は液体を吐出孔(38)より排出する。 この吐出孔(38)から出た液体は、前記駆動力伝達機構部(20)のケーシング (21)内の吐出流路(29)を通って基台(11)の吐出口(13)から外部に導き出される。 【0025】前記のポンプ作用において、ポンプ機構部 (30)のケーシング(31)の断面形状の一部を非円筒面形状をなすカム形状に形成したことにより容積変化率を一定にすることができるため安定した送液を行うことができる。 【0026】この後は、前記昇降装置(H) によって竪型ポンプ装置を吊り上げ、液体収納容器(B) を搬出すればよい。 【0027】なお、前記の実施例においては、昇降装置 (H) を竪型ポンプ装置を吊り下げる形式のものとしたが、この発明においては、このような形式の以外のもの、例えば、シリンダ機構を用いて、竪型ポンプ装置を支持したアームを昇降させる形式の昇降装置でもよい。 また、前記の実施例において、ポンプ機構部(30)の歯車状ローター(32)は可撓性を有するベーン(33)(33)を一体に設けたものとしたが、図6に示すような歯車形状のものであってもよい。 なお、この図に示すポンプ機構部(3 0)は、ケーシング(21)も歯車状とした内接式歯車ポンプとしてある。 【0028】 【発明の効果】以上説明したようにこの発明に係る竪型ポンプ装置によれば、ポンプ内や吸込み側配管中のエア抜き操作,呼び水操作無しで低速回転で容器の小孔から高粘度の液体を移送することが可能となった。 特に粘度の高い液体は従来方法では移送できなかったが、この発明により可能となり、ポンプ吸込み側配管が不要になった。 更に、直接小孔にポンプ機構部を差込んで使用する従来形式のポンプ、例えば、一軸偏心ねじポンプなどと比べて構造が簡単で低コストのポンプを提供できる。 【図面の簡単な説明】 【図1】この発明に係る竪型ポンプ装置の一実施例を示す縦断面図である。 【図2】動力伝達機構部とポンプ機構部を示す図1のA 部矢視拡大断面図である。 【図3】ポンプ機構部の要部拡大分解斜視図である。 【図4】図1のB−B線に沿う横断面図である。 【図5】この発明に係る竪型ポンプ装置の使用形態の一例を説明するための概略側面図である。 【図6】この発明に係る竪型ポンプ装置の他の実施例を示す概略横断面図である。 【符号の説明】 (10) 駆動機構部 (13) 吐出口 (20) 駆動力伝達機構部 (22) 動力伝達軸 (29) 吐出流路 (30) ポンプ機構部 (31) ケーシング (32) 歯車状ローター (33) ベーン (37) 吸込孔 (38) 吐出孔 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 実開 平1−108384(JP,U) 実開 昭60−118393(JP,U) 実開 昭59−41680(JP,U) 実開 昭49−142603(JP,U) 実開 平4−6795(JP,U) 英国特許1113142(GB,A) |