Fluorine-based elastic tube

申请号 JP2009054016 申请日 2009-03-06 公开(公告)号 JP5449803B2 公开(公告)日 2014-03-19
申请人 日本ゴア株式会社; 发明人 温雄 野見; 裕康 菊川;
摘要
权利要求
  • フッ素系ポリマーからなる弾性中空体と、この中空体の内面に直接密着する厚さ1μm以下のアモルファスパーフルオロ樹脂膜とから構成されているフッ素系弾性チューブ。
  • 前記アモルファスパーフルオロ樹脂が、環状構造を主鎖に有するパーフルオロ樹脂である請求項1に記載のフッ素系弾性チューブ。
  • 前記アモルファスパーフルオロ樹脂が、式(1)、式(2a)又は式(2b)を繰り返し単位として有する請求項1又は2に記載のフッ素系弾性チューブ。
    (式中、R 1 、R 2 、及びR 3は、それぞれ独立して、フッ素原子又はパーフルオロアルキル基を示す。p+q+rは1〜6の整数であり、pは0〜5の整数であり、qは0〜4の整数であり、rは0又は1である)
  • 前記アモルファスパーフルオロ樹脂膜の臨界表面張力が、20mN/m以下である請求項1〜3のいずれかに記載のフッ素系弾性チューブ。
  • 前記フッ素系ポリマーからなる弾性中空体が、多孔質フッ素樹脂と、この多孔質フッ素樹脂の細孔を充填するフッ素系エラストマーとから構成されている請求項1〜4のいずれかに記載のフッ素系弾性チューブ。
  • 前記フッ素系ポリマーからなる弾性中空体が、細孔にフッ素系エラストマーを充填した多孔質フッ素樹脂からなる第1層と、フッ素系エラストマーからなる第2層とが重なった渦巻き状物である請求項5に記載のフッ素系弾性チューブ。
  • 前記多孔質フッ素樹脂が、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンである請求項5又は6に記載のフッ素系弾性チューブ。
  • 請求項1〜7のいずれかに記載のフッ素系弾性チューブを用いたピンチバルブ。
  • 請求項1〜7のいずれかに記載のフッ素系弾性チューブを用いたローラーポンプ。
  • 说明书全文

    本発明は弾性チューブに関するものであり、好ましくはピンチバルブやローラーポンプに使用される弾性チューブなどのように、チューブ径方向の押圧によってチューブ内の流体の流通を制御するのに有用な弾性チューブに関するものである。

    ピンチバルブでは、弾性チューブを径方向に押圧することによって流体(液体など)の流通を停止し、前記押圧を解除することによって流体の流通を開始している。 またローラーポンプでは、弾性チューブを径方向にローラーで押圧し、この押圧状態を維持しながらローラーをチューブの軸方向に移動させることによって、流体(液体など)を送り出している。 これらピンチバルブやローラーポンプでは、一般のバルブやポンプに比べて流路の構造を簡単にでき、流体を汚染する虞が少ない。 そのため、食品や医療機器などの分野で利用されることが多く、近年では半導体を製造する際のフォトレジストの送液にも使用されている。

    弾性チューブには、弾性の持続性に優れることから、一般にシリコーンゴムが使用されている。 しかし、シリコーンゴムはフッ素樹脂等と比べて耐薬品性に劣る。 そのため特許文献1の弾性チューブでは、腐食性の強い流体(フォトレジスト液、プロセス機械装置を作動させる為の液体、製薬、食品、医療、化学などの分野で使用される高腐食性の液体など)を流通させると、チューブの耐久性が大きく損なわれる。

    チューブの耐久性を改善するため、シリコーンエラストマーチューブ内面をフッ素樹脂層で保護する技術(特許文献1など)や、フッ素系エラストマーでチューブを形成する技術(特許文献2など)が提案されている。 しかしシリコーンエラストマーチューブ内面をフッ素樹脂層で保護しても、エラストマー層と内面のフッ素樹脂層との間の密着性が十分ではない。 特にチューブの径方向に圧縮開放の繰り返しストレスを負荷すると、内面層とエラストマー層の接合界面に該ストレスが集中し、特に「チーク部」と言われる屈曲部において、層間剥離を発生し、十分な耐久性が得られない。

    一方、フッ素系エラストマーチューブは、シリコーンエラストマーなどと比較してタック性が高い。 タック性とは、自らと同じ材料の物や異なる材料の物に対して粘着しやすい性質を意味し、タック性が高い場合には、例えばローラーポンプのローラーで弾性チューブを押圧したままの状態で放置すると、内面同士がくっついて復元せず、チューブが閉塞してしまうことがある。 また繰り返し使用した場合に、タック性が高いためにチューブ内面が損傷しやすく、耐久性に劣る。

    フッ素系エラストマーチューブの耐久性を改善するため、特許文献3〜4は、チューブ内面を所定の硬度のフッ素樹脂層で被覆することを提案している。 フッ素樹脂層の厚さは、特許文献3では5〜300μmと規定しており、特許文献4ではチューブ母材の厚さの0.5〜70%(実施例では200μm)と規定している。 またフッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体などの結晶性の高い非アモルファスフッ素樹脂が使用されている。 しかし、これらの例でも、繰り返し使用すると、フッ素系エラストマーと内面のフッ素樹脂層との間で剥離が生じ、耐久性が十分であるとは言えない。

    本発明者らは、シリコーンエラストマーチューブの内面をフッ素樹脂層で被覆したときの剥離の問題、及びフッ素系エラストマーチューブの内面をフッ素樹脂層で被覆したときの剥離の問題の両方を解決するため、弾性チューブと内面のフッ素樹脂層との間に、細孔が弾性体で充填された多孔質フッ素樹脂を中間層として使用することを提案した(特許文献5)。 この技術により、チューブの耐久性は大きく向上したが、さらなる耐久性の向上が求められる。

    実開平4−47185号公報

    実開昭59−41687号公報

    特開2001−193659号公報

    特開2004−1467号公報

    特開2008−30471号公報

    本発明の目的は、耐溶剤性を確保しつつ、耐久性をさらに向上できる弾性チューブを提供することにある。

    本発明者らは、前記課題を解決するため、鋭意検討した結果、エラストマーとしてフッ素系エラストマーを選択し、このフッ素系エラストマーから構成される中空体の内面をアモルファスパーフルオロ樹脂で被覆するようにし、かつアモルファスパーフルオロ樹脂の溶媒溶解性を利用してその厚さを1μm以下にすると、繰り返しの押圧に対する耐久性を著しく向上できることを見出し、本発明を完成した。

    すなわち本発明に係るフッ素系弾性チューブは、フッ素系ポリマーからなる弾性中空体と、この中空体の内面に直接密着する厚さ1μm以下のアモルファスパーフルオロ樹脂膜とから構成されている点にその要旨がある。 アモルファスパーフルオロ樹脂膜の臨界表面張は、例えば、20mN/m以下である。 アモルファスパーフルオロ樹脂は、例えば、式(1)、式(2a)又は式(2b)を繰り返し単位として有している。

    (式中、R 1 、R 2 、及びR 3は、それぞれ独立して、フッ素原子又はパーフルオロアルキル基を示す。p+q+rは1〜6の整数であり、pは0〜5の整数であり、qは0〜4の整数であり、rは0又は1である)

    前記フッ素系ポリマーからなる弾性中空体は、例えば、多孔質フッ素樹脂(特に延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン)と、この多孔質フッ素樹脂の細孔を充填するフッ素系エラストマーとから構成されていてもよい。 好ましい弾性中空体は、細孔にフッ素系エラストマーを充填した多孔質フッ素樹脂からなる第1層と、フッ素系エラストマーからなる第2層とが重なった渦巻き状物である。
    本発明には、前記フッ素系弾性チューブを用いたピンチバルブやローラーポンプも含まれる。

    本発明では、弾性中空体内面に形成するフッ素樹脂膜としてアモルファスパーフルオロ樹脂膜を採用しているため、内面のフッ素樹脂膜を極めて薄くできる。 そして内面のフッ素樹脂膜(アモルファスパーフルオロ樹脂膜)を極めて薄くすると、接着のための中間層(接着層)を用いた場合よりも該中間層(接着層)を省略した場合の方が、むしろ内面フッ素樹脂膜(アモルファスパーフルオロ樹脂膜)の剥離を防止でき、耐久性を向上できる。 さらに本発明では、エラストマーとしてフッ素系エラストマーを選択しているため、内面を極めて薄いフッ素樹脂膜(アモルファスパーフルオロ樹脂膜)で被覆して、溶剤が被膜を透過し易くなっても、耐溶剤性を確保できる。

    図1は本発明のフッ素系弾性チューブの一例を示す概略断面図である。

    図2は本発明の弾性中空体の一例を示す概略断面図である。

    本発明のフッ素系弾性チューブ1は、例えば図1の断面図に示されるように、フッ素系ポリマーからなる弾性中空体10と、この中空体10の内面に直接密着するフッ素樹脂膜20とから構成されており、このフッ素樹脂膜20はアモルファスパーフルオロ樹脂膜であって、厚さは1μm以下である。 アモルファスパーフルオロ樹脂膜20を内面に形成することによって、弾性中空体10を押圧したときのタックを防止できる。 また弾性中空体10がフッ素系ポリマーから構成されていて該弾性中空体自体が耐溶剤性を備えているため、内面のアモルファスパーフルオロ樹脂膜20を1μm以下にまで薄くして、チューブ1内を流通させる液体が該アモルファスパーフルオロ樹脂膜20を透過しても、チューブ1の耐溶剤性を確保できる。 しかも内面のアモルファスパーフルオロ樹脂膜20を非常に薄くすると、チューブ1を繰り返し押圧してもアモルファスパーフルオロ樹脂膜20の剥離が極めて生じにくくなり、繰り返し押圧に対する耐久性を著しく向上できる。 この耐久性は、接着剤層(中間層)を介してフッ素樹脂膜20を弾性中空体10に接着した場合の耐久性を凌駕する。

    フッ素樹脂は一般に結晶化し易く、結晶化した部分は溶剤に溶けない。 そのため一般のフッ素樹脂は、例えば、溶融コーティングされるが、溶融コーティングでは膜が厚くなってしまう。 これに対して、本発明のフッ素樹脂膜20として使用するアモルファスパーフルオロ樹脂は溶剤(特にフッ素系溶剤)に溶解可能である。 そのため濃度を調節することで成膜後のフッ素樹脂膜20の厚さを極めて薄くできる。 またアモルファスパーフルオロ樹脂は、臨界表面張力がより低く、タック防止性がさらに高まる。

    アモルファスパーフルオロ樹脂は、主鎖に環状構造(例えば、5又は6員環構造、特に5員環構造)が導入されている点で通常のフッ素樹脂と区別される。 主鎖に環状構造が導入されたパーフルオロ樹脂としては、例えば、式(1)、式(2a)、又は式(2b)を繰り返し単位として有するフッ素樹脂が挙げられる。

    (式中、R 1 、R 2 、及びR 3は、それぞれ独立して、フッ素原子又はパーフルオロアルキル基(特にトリフルオロメチル基)を示す。p+q+rは1〜6の整数であり、pは0〜5の整数であり、qは0〜4の整数であり、rは0又は1である)

    繰り返し単位(1)を有する樹脂は、例えば、特開平3−252474号公報に記載の方法に従って製造できる。 好ましい繰り返し単位(1)は、R 1及びR 2の両方がトリフルオロメチル基である。 この好ましい繰り返し単位(1)を有するポリマーは、例えば、下記式(3)で表される。 式(3)のポリマーは、デュポン社から商品名「テフロン(登録商標)AF」として販売されている。

    繰り返し単位(2a)又は(2b)を有するポリマーは、例えば、特開平2−129254号公報、特開平3−252475号公報などに記載の方法に従って製造できる。 好ましい繰り返し単位は、下記式(4)で表される。 繰り返し単位(4)を有するポリマーは、旭硝子(株)から商品名「サイトップ」として販売されている。

    (式中、nは1又は2(好ましくは2)である)

    アモルファスパーフルオロ樹脂膜20の臨界表面張力は、例えば、20mN/m以下、好ましくは18mN/m以下、さらに好ましくは16mN/m以下である。 臨界表面張力が小さいほど、チューブ1を押圧したときに、内面のタックが生じにくくなる。 臨界表面張力の下限は特に限定されないが、例えば、6mN/m以上、特に9mN/m以上であってもよい。

    アモルファスパーフルオロ樹脂膜20の厚さは、1μm以下、好ましくは0.8μm以下、さらに好ましくは0.6μm以下である。 厚さの下限は、フッ素樹脂からなる弾性中空体のタックを防止できる限り特に限定されないが、例えば、0.01μm以上、特に0.1μm以上であってもよい。

    なおアモルファスパーフルオロ樹脂膜の厚さは、電子顕微鏡による断面画像に基づいて決定できる。

    一方、弾性中空体10は、フッ素系ポリマーから構成されている限り、フッ素系エラストマー単独の中空体であってもよく、フッ素系エラストマーと多孔質フッ素樹脂層とから構成される中空体であってもよい。 多孔質フッ素樹脂を用いると、弾性中空体10の耐薬品性を確保し、かつ弾性を損なうことなく、フッ素系エラストマーを補強することができる。

    前記フッ素系エラストマーには、フルオロメチレンを主鎖に有するポリマーの架橋体、フッ素系熱可塑性エラストマーなどが含まれる。 前記架橋体には、FKM(2元系FKM、3元系FKM、パーフルオロビニルエーテル含有FKM)、FFKM、TEF−Pr系フッ素ゴム、TFE−Pr−VdF系フッ素ゴム、フッ素系熱可塑性エラストマー、フッ素化ポリエーテル骨格がSi架橋されたゴム(液状フッ素ゴムなど)などが含まれる(下記式参照)。 なお液状フッ素ゴムは、「SIFEL」(商品名)として信越化学工業(株)から入手できる。

    また前記フッ素系エラストマーは、フルオロアルキル基が結合したポリシロキサンの架橋体(FMVQなど;下記式参照)などのフルオロシリコーンゴムであってもよい。

    架橋型エラストマーが架橋したり、熱効果性エラストマーのハードセグメント同士が相互作用することによって最終的に硬化(架橋に限定されず、広く三次元網目構造を形成することを意味する。以下、特に断りがない限り、同じ)する限り、前記フッ素系エラストマーは原料段階では硬化していなくてもよい。 フッ素系エラストマー原料は、固体状(混練状)であってもよく、液状であってもよい。

    フッ素系エラストマーは、単独で弾性中空体10を構成してもよいが、多孔質フッ素樹脂(特に延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン)で補強されるのが好ましい。 多孔質フッ素樹脂層を用いる場合、例えば、多孔質フッ素樹脂からなる中空体の細孔をフッ素系エラストマーで充填してもよいが、フッ素系エラストマーからなる第1の層12と、フッ素系エラストマーによって細孔が充填された多孔質フッ素樹脂層13(第2の層)とが重なった渦巻き状の積層構造が好ましい(以下、渦巻き状弾性中空体10という)。 図2はこの渦巻き状弾性中空体10の一例を示す概略断面図である。 渦巻き状弾性中空体10は、特表2002−502735号公報に記載されているように、多孔質フィルムの内部及び表面にフッ素系エラストマーを含浸(コーティング)したものを巻回することによって製造でき、弾性中空体10の機械的強度を飛躍的に高めることができる。 また渦巻き状弾性中空体10は、圧縮応力解放時の形状復元性の点でも顕著に優れている。

    フッ素系エラストマーからなる第1の層12と、フッ素系エラストマーによって細孔が充填された多孔質フッ素樹脂層からなる第2の層13との比(第1の層/第2の層)は、例えば、6.5/1以下、好ましくは1/1〜5/1である。

    多孔質フッ素樹脂の空孔率は、例えば、40〜98%程度、好ましくは50〜95%程度、さらに好ましくは60〜90%程度である。 空孔率が小さすぎると、フッ素系エラストマーの充填量が小さくなり、押圧力の緩衝機能が低下する。 一方、空孔率が大きすぎると、多孔質フッ素樹脂の機械的強度が低下する。

    なお空孔率は、多孔質フッ素樹脂の見掛け密度ρ 1 (単位:g/cm 3 、JIS K 6885に準じて測定される)と、多孔質化してない場合のフッ素樹脂本来の密度(真密度)ρ 2 (PTFEの場合は2.2g/cm 3 )から、下記式に基づいて算出される値である。
    空孔率(%)=(ρ 2 −ρ 1 )/ρ 2 ×100

    多孔質フッ素樹脂の最大細孔径は、充填すべきフッ素系エラストマーの特性(充填の容易さ)などの観点から、適宜設定すればよく、例えば、0.01μm以上、好ましくは0.1μm以上であって、20μm以下、好ましくは10μm以下である。 最大細孔径が小さすぎるとフッ素系エラストマーの充填が困難である。 また最大細孔径が大きすぎると、機械的強度が不十分となることがある。 なお最大細孔径は、ASTM F316−86の規定(使用薬剤:エタノール)に従って測定できる。

    弾性中空体10の厚さは、弾性中空体10の内径に対して、例えば、10〜200%程度、好ましくは20〜150%程度、さらに好ましくは25〜125%程度である。 また弾性中空体10の厚さは、例えば、0.5〜25mm程度、好ましくは0.7〜10mm程度、さらに好ましくは1.0〜5mm程度である。 弾性中空体10が薄すぎると、チューブ1をピンチバルブやローラーポンプに使用した際、チューブ1内の流体の内圧にチューブ1が耐えきれずに破裂する虞がある。 また圧縮応力(押圧力)を解放した時の形状回復性が不十分になる。 逆に弾性中空体10が厚すぎると、押圧によるチューブ1の閉塞が難しくなる。

    なお弾性中空体10の内径は、例えば、1〜40mm程度、好ましくは1〜20mm程度、好ましくは2〜10mm程度である。 弾性中空体10の外径は、例えば、3〜60mm程度、好ましくは4〜40mm程度、さらに好ましくは5〜20mm程度である。

    弾性中空体10のさらに外側には、必要に応じて、補強層及び/又は低摩擦層を積層してもよい。 補強層を積層することで、フッ素系弾性チューブ1に押圧力を作用させた時の外面の摩耗を防止できたり、フッ素系弾性チューブ1に強い内圧が作用したときのチューブ1の破裂を防止できたりする。 また低摩擦層を積層することで、フッ素系弾性チューブ1にずれを伴った押圧力を作用させた時に応力を分散させることができ、フッ素系弾性チューブ1外側の摩耗や破裂を防止できる。

    補強層には、塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレートなど)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリアミド、ポリイミド、フッ素樹脂などの高分子材料、ガラス繊維などの無機質材料などの各種材料が使用できる。

    また補強層は、塗布体、押出成形チューブ、押出延伸チューブ、延伸フィルムの巻回体、充実フィルムの巻回体、多孔質フィルムの巻回体、糸をチューブ状に編成した編成体、織物、編み物、組み物、レース、網などの巻回体などのいずれの形状であってもよい。

    補強層は弾性中空体10に、固定しなくてもよいが、耐摩耗性や耐破裂性をさらに向上する観点から固定するのが好ましい。 補強層と弾性中空体10とを固定する場合、固定方法は特に限定されず、例えば、接着剤を用いて固定してもよいが、弾性中空体10と同じ液状フッ素系エラストマー原料を接着剤として利用することによって補強層10を固定するのが好ましい。 また補強層10の収縮力を利用して、補強層を積層固定することも好ましい。 収縮力を利用すれば、チューブ1の弾性を損ねることがない。

    好ましい補強層は、フッ素樹脂のチューブ状物、特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のチューブ状物である。 フッ素樹脂のチューブ状物(特にPTFEのチューブ状物)は、耐摩耗性、耐薬品性、耐熱性などに優れている。

    フッ素樹脂(特にPTFE)で補強層を形成する場合、該補強層としては、多孔質フッ素樹脂フィルムの巻回体、フッ素樹脂製糸をチューブ状に編成した編成体、フッ素樹脂製糸からなる織物、編み物、組み物、レース、網などを巻回した巻回体などを使用するのが望ましい。 これらを使用すれば、空孔内又は繊維間に接着剤が浸透するため、補強層を弾性中空体10に強固に接合できる。

    低摩擦層には、低摩擦性材料で形成されるコーティング層、例えば、PTFEやPFAなどのフッ素樹脂系コーティング層、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン,グラファイトなど炭素系コーティング層が使用できる。 好ましい低摩擦補強層は、ダイヤモンドライクカーボンのコーティング層である。 ダイヤモンドライクカーボン層は、摩擦係数が低いだけでなく、相手材への攻撃性も小さいため、相手材に傷や削りが生じにくい。 低摩擦性材料のコーティング方法は特に限定されず、例えば、低摩擦性材料を含む液状物(溶液、融液など)を塗布してから固化する方法、低摩擦性材料を蒸着する方法(例えば、低摩擦性材料をイオン化したり、プラズマ化してから基材に蒸着する方法)などが挙げられる。 なおダイヤモンドライクカーボンの物理蒸着(PVD)層は、例えば、日本アイ・ティ・エフ株式会社が商標「ジニアスコートF」として実用化している。

    本発明のフッ素系弾性チューブ1は、公知の手法を適当に採用することによって、製造できる。 例えば、弾性中空体10がフッ素系エラストマーと多孔質フッ素樹脂層とから構成される場合、多孔質フッ素樹脂層にフッ素系エラストマーを充填してから、この充填物にアモルファスパーフルオロ樹脂膜20をコーティングしてもよく、多孔質フッ素樹脂層にアモルファスパーフルオロ樹脂膜20をコーティングしてからフッ素系エラストマーを多孔質フッ素樹脂層に充填してもよい。 また弾性体(又は多孔質フッ素樹脂層)を中空状に形成してからアモルファスパーフルオロ樹脂膜20をコーティングしてもよく、平面状の弾性体(又は多孔質フッ素樹脂層)にアモルファスパーフルオロ樹脂膜20をコーティングしてから、コーティング物を巻回してもよい。

    なお弾性中空体10、平面状弾性体又は多孔質フッ素樹脂層は、アモルファスパーフルオロ樹脂膜20との接合性を高めるため、エッチングやプライマー処理を施してもよいが、かかるエッチングやプライマー処理は必須ではない。

    多孔質フッ素樹脂層の細孔に液状フッ素系エラストマーを充填する場合、液状フッ素系エラストマーの粘度(25℃)は、例えば、1000Pa・s(10000ポアズ)以下、好ましくは100Pa・s以下、さらに好ましくは20Pa・s以下である。

    多孔質フッ素樹脂層にフッ素系エラストマーを充填してからアモルファスパーフルオロ樹脂膜20をコーティングするなど、フッ素系エラストマーを含む弾性体(弾性中空体10、平面状弾性体など)にアモルファスパーフルオロ樹脂膜20をコーティングする場合、アモルファスパーフルオロ樹脂を溶解した液を塗布してアモルファスパーフルオロ樹脂膜20を形成するのが望ましい。 フッ素系樹脂の分散液を塗布した場合には、塗布液を膜状化するためにフッ素樹脂の溶融温度域(約300℃)まで加熱する必要があるのに対して、アモルファスパーフルオロ樹脂を溶解した液を塗布した場合には、溶剤を揮発除去するだけで塗布液を膜状化できるため、フッ素系エラストマーが劣化する虞がない。

    アモルファスパーフルオロ樹脂を溶解するための溶媒としては、例えば、フッ素系溶媒が知られている。 かかるフッ素系溶媒は、例えば、住友スリーエム(株)から、商品名「フロリナート」、商品名「ノベック」などとして市販されている。

    本発明のフッ素系弾性チューブ1は、押圧することによって流体の流通を制御する部材として使用でき、例えばピンチバルブやローラーポンプの弾性チューブとして使用できる。 ピンチバルブとは、流体圧(空気圧、油圧など)や電気などで作動するピンチ弁によって弾性チューブを側方から径方向に押圧し、チューブ断面を扁平(特に閉塞)することにより、チューブ内の流体の流通を制御する装置である。 またローラーポンプとは、ローラーなどの押圧部材で弾性チューブを径方向に押圧し、この押圧状態を維持しながら押圧部材を弾性チューブの軸方向に移動(特に、上流側から下流側に繰り返して移動)することにより、チューブ内の流体を送り出す装置である。

    チューブ1内を流通する流体の種類は特に限定されず、気体、液体のいずれであってもよいが、好ましくは液体である。 特に本発明のチューブ1は、耐薬品性に優れているため、フォトレジスト液、プロセス機械装置を作動させる為の液体、製薬、食品、医療、化学などの分野で使用される高腐食性の液体などのような流体を流通させることも可能である。 また本発明のチューブ1は、タック性が低いため、チューブ内面に流通成分が付着するのを嫌う用途であっても使用できる。

    以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。

    実施例1
    二軸延伸多孔質PTFEフィルム(ジャパンゴアテックス(株)製「ePTFEフィルム」、幅:400mm、長さ(奥行き):816mm、空孔率:78%、最大細孔径:0.4μm、厚さ:18μm)に、片側から液状フッ素ゴム(信越化学工業(株)製「SIFEL−617」)を塗布し、多孔質PTFEフィルムの細孔に充填した。 塗布面を内側にしながら、かつ空気を巻き込まないようにしつつ、この塗布フィルムをステンレス鋼棒材(外径:5mm)に巻き付けた。 温度150℃で30分間加熱することにより、液状フッ素ゴムを架橋した。

    冷却後、巻回物を手でひねって、ステンレス鋼棒材との間の圧着を緩め、ステンレス鋼棒材を引き抜くことにより弾性中空体10を得た(内径:4.8mm、外径:9.6mm、フッ素ゴム層の厚さ/フッ素ゴムを充填した多孔質PTFE層の厚さ=3/1)。

    前記弾性中空体10を、アモルファスパーフルオロ樹脂(デュポン社製。商品名「テフロン(登録商標)AF−1600」)でディップコートして溶剤を除去することによって、厚さ0.5μmのアモルファスパーフルオロ樹脂膜20が内面に形成されたフッ素系弾性チューブ1を製造した。

    実施例2
    旭硝子(株)製のアモルファスパーフルオロ樹脂(商品名「サイトップ」)を使用して内面に厚さ0.5μmのアモルファスパーフルオロ樹脂膜20を形成する以外は、実施例1と同様にしてフッ素系弾性チューブ1を得た。

    比較例1
    アモルファスパーフルオロ樹脂膜20に代えて、旭硝子(株)製のアモルファス部分フッ素樹脂(商品名「ルミフロン」)を使用して内面に厚さ10μmのアモルファス部分フッ素樹脂膜を形成する以外は、実施例1と同様にして弾性チューブ1を得た。

    比較例2
    二軸延伸多孔質PTFEフィルムの細孔内に充填するゴムを液状シリコーンゴム(信越化学工業(株)製「KE106」)にする以外は、実施例1と同様にしてフッ素系弾性チューブ1を得た。

    比較例3
    外径:300mm、幅:600mm、耐圧延反力:1MN(最大)のカレンダーロール装置を用い、ロール温度:70℃、線圧:8N/mm 2 、送り速度:6m/分の条件で二軸延伸多孔質PTFEフィルム(ジャパンゴアテックス(株)製の「ePTFEフィルム」、幅:500mm、空孔率:90%、厚さ:20μm)を圧縮し、幅:500mm、長さ:500mm、空孔率:5%、厚さ2.1μmの白濁色のフィルムを得た。 この白濁フィルムを2枚のポリイミドフィルム(宇部興産(株)製の「ユーピレックス20S」(商品名))の間に挟み、プレス面の大きさ:750mm×750mm、最大加圧力:2MNのホットプレス装置を用いて、プレス板温度:400℃、面圧:10N/m 2の条件で5分間加熱プレスした後、面圧を保持した状態で60分かけて徐々にプレス板温度を25℃まで冷却することにより、幅:500mm、長さ:500mm、空孔率:0%、厚さ:2μmで、透明なPTFEフィルム(緻密化PTFEフィルム)を得た。

    前記緻密化PTFEフィルムを、幅:400mm、長さ(奥行き):158mmのサイズに切断し、その長さ(奥行き)方向が巻き取り方向(周方向)になるようにステンレス鋼棒材(外径:5mm)に10回巻き付けて、厚さ約20μmの内層を形成した。

    中間層にするための二軸延伸多孔質PTFEフィルム(ジャパンゴアテックス(株)製の「ePTFEフィルム」、幅:400mm、長さ(奥行き):81mm、空孔率:85%、最大細孔径:0.5μm、厚さ:20μm)を、その長さ(奥行き)方向が巻き取り方向(周方向)になる様に前記内層の上に巻回(巻回数:5)した。 この巻回物を強制熱風循環・換気方式の恒温恒湿器(エスペック(株)製、「STPH−201」)を用いて、温度375℃で30分間加熱し、内層のフィルム間、多孔質フッ素樹脂フィルムのフィルム間、及び内層フィルムと多孔質フッ素樹脂フィルムの間をそれぞれ熱融着し、外径5mmのステンレス鋼棒材を芯材とした外径5.2mmの円筒状中間体を得た。 加熱硬化型の液状フッ素ゴム(信越化学工業(株)製「SIFEL−8070A/B」)10gを、該円筒状中間体の多孔質フッ素樹脂フィルム面にゴムへらを用いて塗布し、細孔内に含浸させた。 余剰の液状フッ素ゴムは、ゴムへら及び不織布ワイパーでかき落として、円筒状中間体を形成した。

    別途、二軸延伸多孔質PTFEフィルム(ジャパンゴアテックス(株)製「ePTFEフィルム」、幅:400mm、長さ(奥行き):816mm、空孔率:78%、最大細孔径:0.4μm、厚さ:18μm)に、片側から加熱硬化型の液状フッ素ゴム(信越化学工業(株)製「SIFEL−617」)を塗布した。 塗布面を内側にしながら、かつ空気を巻き込まないようにしつつ、この塗布フィルムを前記円筒状中間体に巻き付けて外層にした(巻回数:35回)。

    温度150℃で30分間加熱することにより、中間層及び外層の液状シリコーンゴムを架橋した。 冷却後、外層(弾性層)を手でひねって、内層の緻密化PTFEと芯材(ステンレス鋼棒材)との間の圧着を緩め、ステンレス鋼棒材を引き抜くことによりフッ素系弾性チューブを得た(内径:5mm、外径:9.6mm、軸方向の長さ:400mm、内層の厚さ:20μm、中間層の厚さ:100μm、外層の厚さ:2.2mm、外層のフッ素ゴム層(第1の層)の厚さ:1550μm、外層のフッ素ゴムが充填されたPTFEフィルム層(第2の層)の厚さ:630μm、第1の層の厚さ/第2の層の厚さ=2.5/1)。

    実施例1〜2及び比較例1〜3で得られたフッ素系弾性チューブ1の耐久性、耐薬品性、及び閉塞性を以下のようにして評価した。

    1)耐久性 ウェットプロセス用樹脂製ピンチバルブ(旭有機材工業(株)製、商品名「Dymatrix AVPV3」)にフッ素系弾性チューブ1を装着した。 このピンチバルブは、15mm×10mmの柱状ピストン(先端の周縁部は、面取りされている(曲率0.4))を付属のスプリングで平板体に向けて押しつけつつ、圧縮空気で前記ピストンを押し戻すことで、ピストンの押圧力を制御できる様になっている。 ピストンと平板体との間にチューブを挿入し、チューブ内に液体を通液することなく、ピストンで弾性チューブを繰り返し押圧した。 押圧の条件は、以下の通りである。
    押圧時間:1.5秒/回 圧力解放時間:1.5秒/回 スプリングによる最大押圧力:1.3MPa
    圧縮空気圧:0.4MPa
    チューブ内面のフッ素樹脂膜が剥離するまでの繰り返し数をカウントした。

    2)耐薬品性 チューブ内にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を通液する以外は、前記1)耐久性と同様に試験した。

    3)閉塞性 前記ウェットプロセス用樹脂製ピンチバルブ(旭有機材工業(株)製、商品名「Dymatrix AVPV3」)の入口側配管と出口側配管をつなぐ様にフッ素系弾性チューブ1を装着し、ピストンで該チューブ1を押圧した。 出口側配管の開放端を深20mmの高さに水没させ、入口側配管の開放端を圧縮空気(0.4MPa)で30秒間加圧し、出口側配管からの気泡の発生を目視で確認した。 30秒間加圧しても気泡が発生しない場合を「良好」と判定し、30秒間の加圧中に気泡が発生した場合を「不良」と判定した。
    結果を表1に示す。

    表1より明らかなように、内面のアモルファスパーフルオロ樹脂膜を極めて薄くした例(実施例1、2)では、アモルファス部分フッ素樹脂膜が10μmの例(比較例1)や、接着のための中間層を形成する例(比較例3)よりも耐久性を高めることができる。 また比較例2との対比より明らかな様に、実施例1、2では弾性中空体10にフッ素ゴムを使用しているため、内面のアモルファスパーフルオロ樹脂膜を薄くしても、耐薬品性が劣化する虞はない。

    1 フッ素系弾性チューブ 10 弾性中空体 20 アモルファスパーフルオロ樹脂膜(フッ素樹脂膜)
    12 フッ素系エラストマーからなる層 13 フッ素系エラストマーを充填した多孔質フッ素樹脂からなる層

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