スクロール型圧縮機の自転防止機構

申请号 JP2013123849 申请日 2013-06-12 公开(公告)号 JP6171601B2 公开(公告)日 2017-08-02
申请人 株式会社豊田自動織機; 发明人 山下 拓郎; 水藤 健; 元浪 博之;
摘要
权利要求

自転防止リングと、 前記自転防止リングに挿入され、自転防止リングの内周面と摺接するピンと、を備えたスクロール型圧縮機の自転防止機構であって、 前記自転防止リングは、プレスによる金属鋼板の絞り加工により有底筒状の第1中間成形体を得る絞り工程と、前記第1中間成形体の底部を打ち抜いて無底筒状の第2中間成形体を得る打ち抜き工程と、前記第2中間成形体をリング成形するリング成形工程と、を有する製造過程において内周面に周方向に形成されるショックラインを備え、 前記ピンは延在方向の両端に端部を有し、前記自転防止リングに挿入される側の前記ピンの端部は、前記自転防止リング内に配置され、 前記ピンの外周面が前記ピンの軸方向において前記ショックラインを跨ぐ位置まで挿入されていることを特徴とするスクロール型圧縮機の自転防止機構。前記ピンは、回転軸の端部を軸支する軸支部材に固定され、可動スクロールへ向けて突出する固定側ピンであり、 前記自転防止リングは、前記可動スクロールに形成した有底円孔に回転自在に挿入されていることを特徴とする請求項1記載のスクロール型圧縮機の自転防止機構。前記ピンは、回転軸の端部を軸支する軸支部材に固定され、可動スクロールへ向けて突出する固定側ピンと、前記固定側ピンの軸心と平行となるように前記可動スクロールに固定された可動側ピンであり、 前記自転防止リングは、前記可動側ピンと前記固定側ピンの外周を覆うように設けられていることを特徴とする請求項1記載のスクロール型圧縮機の自転防止機構。

说明书全文

この発明は、スクロール型圧縮機の自転防止機構に関する。

スクロール型圧縮機では、一般的に、ハウジング内に固定スクロールが収容されており、固定スクロールは基板と基板に形成された渦巻部を備えている。 回転軸が軸受を介してハウジングに支持されており、回転軸の固定スクロール側の端部には、回転軸の軸心と偏心する偏心軸が設けられている。 偏心軸はブシュおよび軸受を介して可動スクロールと回動可能に嵌合されている。 可動スクロールは、偏心軸が嵌合されるボス部を備えた基板と、固定スクロールの渦巻部と噛合する渦巻部を備えている。 可動スクロールの基板の背面とハウジングとの間に自転防止機構が設けられている。 自転防止機構は可動スクロールの旋回を許容しつつ可動スクロールの自転を防止する。 固定スクロールの渦巻部と可動スクロールの渦巻部との間には密閉状の圧縮室が形成され、可動スクロールの旋回により圧縮室内の圧縮媒体が圧縮される。

自転防止機構は、例えば、特許文献1では自転阻止機構として開示されている。 特許文献1に開示されている自転阻止機構は、ハウジングに嵌合孔に挿入されたスリーブと、可動スクロールの基板に圧入され、スリーブの内周面に対して摺接する自転阻止ピンを有する。 スクロール型圧縮機において複数の自転阻止機構が設けられている。 可動スクロールは、スリーブの規制孔の内周面に沿って移動する自転阻止ピンにより自転が阻止された状態で公転運動を行う。

また、特許文献2に開示された公転型圧縮機の自転防止機構は、プレート部材に圧入されたプレートピンと、可動スクロール基板部に圧入され、プレートピンの周囲を公転する可動ピンと、プレートピンと可動ピンを外側より覆う環状リングを備えている。 プレートピンおよび可動ピンは環状リングの内周面と線接触しており、環状リングを介して規制される。 従って、可動スクロールは自転運動を防止されながら公転運動を行う。

特開平7−151071号公報

特開昭62−199983号公報

特許文献1に開示されたスリーブや特許文献2に開示された環状リング(以下、「自転防止リング」と表記する)は挿入される剛性の高いピンと摺接するため、高い加工精度や耐摩耗性が要求される。 通常、自転防止リングは、金属棒材の切削加工により形成され、切削加工後のリングに焼き入れ・焼き戻し等の熱処理を施し、熱処理後に研磨を行うことにより製造される。 しかしながら、従来の自転防止リングの製造方法は、製造コストが高くなるほか、製造に必要な時間が多大であるという問題がある。 特に、金属棒材を切断し、切断された金属棒材から円筒状に切削するため、切削加工に時間がかかるほか、無駄になる材料も多くなる。

本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、自転防止リングの製造コストの大幅な削減と製造時間の短縮化を図ることができるスクロール型圧縮機の自転防止機構の提供にある。

上記の課題を解決するために、本発明は、自転防止リングと、前記自転防止リングに挿入され、自転防止リングの内周面と摺接するピンと、を備えたスクロール型圧縮機の自転防止機構であって、前記自転防止リングは、プレスによる金属鋼板の絞り加工により有底筒状の第1中間成形体を得る絞り工程と、前記第1中間成形体の底部を打ち抜いて無底筒状の第2中間成形体を得る打ち抜き工程と、前記第2中間成形体をリング成形するリング成形工程と、を有する製造過程において内周面に周方向に形成されるショックラインを備え、前記ピンは延在方向の両端に端部を有し、前記自転防止リングに挿入される側の前記ピンの端部は、前記自転防止リング内に配置され、前記ピンの外周面が前記ピンの軸方向において前記ショックラインを跨ぐ位置まで挿入されていることを特徴とする。

本発明では、ピンが自転防止リングにおける内周面のショックラインを跨ぐ位置まで挿入されていることから、ピンの外周面はショックラインを除く自転防止リングの内周面と摺接する。 従って、自転防止リングにおける内周面にショックラインが存在しても、自転防止リングの内周面とピンの外周面との平行度を保つことができ、ショックラインが自転防止機構の機能を妨げることがない。絞り工程を含む製造工程により製造した自転防止リングを使用することができる。 本発明によれば、製造コストを大幅な削減することができるほか、製造時間を大幅に短縮することができる。

また、上記のスクロール型圧縮機の自転防止機構において、前記ピンは、回転軸の端部を軸支する軸支部材に固定され、可動スクロールへ向けて突出する固定側ピンであり、前記自転防止リングは、前記可動スクロールに形成した有底円孔に回転自在に挿入されている構成としてもよい。 この場合、固定側ピンが自転防止リングにおける内周面のショックラインを跨ぐ位置まで挿入されていることから、固定側ピンの外周面はショックラインを除く自転防止リングの内周面と摺接する。従って、自転防止リングにおける内周面にショックラインが存在しても、自転防止リングの内周面と固定側ピンの外周面との平行度を保つことができ、製造過程において形成されるショックラインLが自転防止機構の機能を妨げることがない。

また、上記のスクロール型圧縮機の自転防止機構において、前記ピンは、回転軸の端部を軸支する軸支部材に固定され、可動スクロールへ向けて突出する固定側ピンと、前記固定側ピンの軸心と平行となるように前記可動スクロールに固定された可動側ピンであり、前記自転防止リングは、前記可動側ピンと前記固定側ピンの外周を覆うように設けられている構成としてもよいこの場合、固定側ピンおよび可動側ピンが自転防止リングにおける内周面のショックラインを跨ぐ位置まで挿入されている。このため、固定側ピンおよび可動側ピンの外周面はショックラインを除く自転防止リングの内周面と摺接する。従って、自転防止リングにおける内周面にショックラインが存在しても、自転防止リングの内周面と固定側ピンおよび可動側ピンの外周面との平行度を保つことができ、ショックラインが自転防止機構の機能を妨げることがない。

本発明によれば、自転防止リングの製造コストの大幅な削減と製造時間の短縮化を図ることができるスクロール型圧縮機の自転防止機構を提供することができる。

第1の実施形態に係るスクロール型圧縮機を示す縦断面図である。

図1におけるA−A線矢視図である。

第1の実施形態に係るスクロール型圧縮機の自転防止機構を示す縦断面図である。

自転防止リングの製造工程を説明する説明図である。

プレス機による絞り工程を説明する説明図である。

(a)はリング成形前の第2中間成形体の要部を示す縦断面図であり、(b)はリング成形後の第3中間成形体の要部を示す縦断面図である。

第2の実施形態に係るスクロール型圧縮機の自転防止機構を示す縦断面図である。

(第1の実施形態) 以下、第1の実施形態に係るスクロール型圧縮機の自転防止リングの製造方法およびスクロール型圧縮機の自転防止機構について図面を参照して説明する。 本実施形態に係るスクロール型圧縮機は、走行用の電動モータと内燃機関を走行駆動源とするハイブリッド車に搭載される車載用のスクロール型の電動圧縮機である。 スクロール型圧縮機は、車両用空調装置における冷媒回路の一部を構成している。 車両用空調装置は、スクロール型圧縮機のほか、図示はしないが、凝縮器としてのコンデンサと、レシーバと、膨張弁及びエバポレータを備えたクーリングユニットと、これらの機器を接続する配管を備えている。

スクロール型圧縮機について説明する。 図1に示すように、スクロール型圧縮機10は、流体としての冷媒を圧縮する圧縮機構11と、圧縮機構11を駆動する圧縮機用の電動モータ12が一体化された圧縮機である。 スクロール型圧縮機10のハウジング13は金属製のハウジングであり、本実施形態ではアルミ系金属材料により形成されている。 ハウジング13は、第1ハウジング体14と、第2ハウジング体15を有している。 第1ハウジング体14の端面と第2ハウジング体15の端面は接合され、第1ハウジング体14および第2ハウジング体15はボルト16により一体的に固定されている。 因みに、この実施形態のスクロール型圧縮機10は、エンジンルーム内において横置き状態にて設置される。

スクロール型圧縮機10の第1ハウジング体14の内部には、圧縮機構11と電動モータ12とが収容されている。 圧縮機構11は固定スクロール17および可動スクロール18を備え、圧縮機構11には固定スクロール17および可動スクロール18により圧縮室19が形成されている。 固定スクロール17および可動スクロール18の詳細については後述する。 第1ハウジング体14の上部側には吸入口20が形成されている。 吸入口20は外部冷媒回路(図示せず)と接続されており、外部冷媒回路は第1ハウジング体14の内部と連通する。 スクロール型圧縮機10の圧縮運転時には、低圧の冷媒は外部冷媒回路から吸入口20を通過し、第1ハウジング体14の内部に送入される。

第2ハウジング体15の内部には圧縮室19と連通する吐出室21が形成されている。 第2ハウジング体15の上部には吐出口22が形成されており、吐出口22は外部冷媒回路と連通する。 第2ハウジング体15には、吐出室21と吐出口22との間を連通する連通路23が形成されている。

第1ハウジング体14内における固定スクロール17と電動モータ12との間には、軸支部材24が設けられている。 軸支部材24は、圧縮機構11の一部を構成し、電動モータ12が備える回転軸25の一方の端部を軸支する軸受26を備えている。 回転軸25の他方の端部は、軸受27を介して第1ハウジング体14に支持されている。 軸支部材24には圧縮室19と連通する吸入ポート28が形成されており、吸入口20から第1ハウジング体14内に取り込まれた冷媒は、吸入ポート28を通じて圧縮室19へ導入される。 また、軸支部材24には、ピンとしての固定側ピン29が圧入により固定されており、固定側ピン29は可動スクロール18へ向けて突出している。

回転軸25の固定スクロール17側の端部には、固定スクロール17側へ突出する偏心軸30が設けられている。 偏心軸30の軸心Qは回転軸25の軸心Pに対して偏心した位置に設定されており、回転軸25が回転すると偏心軸30は回転軸25の軸心Pに対して偏心して回転する。 偏心軸30の外周には、ドライブブシュ31が相対回動可能に嵌合されている。 ドライブブシュ31は、回転軸25の回転による偏心軸30およびドライブブシュ31の偏心回転による回転のアンバランスを調整するバランスウエイト部を有している。

ドライブブシュ31の外周には、可動スクロール18が軸受32を介して旋回自在に連結されている。 可動スクロール18は、円板状の可動側基板33と、渦巻き状の可動側壁体34を備えている。 可動側基板33の面は、軸心Pに対して直に配置されており、可動側基板33における固定スクロール17側の面から渦巻き状の可動側壁体34が突出して形成されている。 可動側壁体34は軸心Pと平行な壁面を有している。

図1、図2に示すように、可動側基板33の周縁付近には、複数の有底円孔35が形成されている。 図3に示すように、有底円孔35には自転防止リング36が挿入されている。 自転防止リング36は円筒状の形状であって、有底円孔35において回転自在である。 また、有底円孔35から自転防止リング36が抜け出さないように抜け止め部材(図示せず)が可動側基板33に設けられている。 軸支部材24の有底円孔35に対応する位置には固定側ピン29が位置する。 固定側ピン29は軸支部材24から有底円孔35へ向けて突出し、自転防止リング36の内部に挿入されている。 固定側ピン29の軸心は回転軸25の軸心Pと平行である。 本実施形態では、自転防止リング36および固定側ピン29は、可動スクロール18の回転(自転)を防止する自転防止機構を構成する。 このため、回転軸25が回転するとき、可動スクロール18は回転(自転)を行うことなく、軸心Pの周囲を旋回する。 つまり、可動スクロール18は軸心Pの周囲を非自転状態にて旋回可能に設けられている。

可動スクロール18と対向して噛合する固定スクロール17が第1ハウジング体14に固定されている。 固定スクロール17は、円盤状の固定側基板37と、渦巻き状の固定側壁体38と、を有しており、固定側基板37および固定側壁体38は一体形成されている。 固定側基板37は、第1ハウジング体14の開口側の端部を塞ぐように配置されており、固定側基板37における可動スクロール18側の面から渦巻き状の固定側壁体38が突出して形成されている。

本実施形態のスクロール型圧縮機10では、固定スクロール17の固定側壁体38と可動スクロール18の可動側壁体34が接触して噛み合うことにより、固定側壁体38と可動側壁体34との間に圧縮室19が形成される。 冷媒が吸入ポート28を通じて圧縮室19へ導入され、圧縮室19の容積減少により圧縮室19の冷媒は圧縮される。 固定スクロール17の中心に吐出室21と連通する吐出ポート39が形成されており、吐出ポート39を開閉する吐出弁40が備えられている。 圧縮された冷媒は、吐出ポート39を通じて吐出室21へ吐出される。

電動モータ12は、三相交流電により駆動されるモータである。 電動モータ12は、ステータ41を備えるほか、ステータ41内に挿入され、回転軸25に固定されたロータ42を備えている。 ロータ42は、回転軸25の軸芯方向に設けた複数の挿入孔を備えたロータコア43と、ロータコア43の磁石挿入孔(図示せず)に挿入された永久磁石(図示せず)を有している。 ステータ41は、第1ハウジング体14の内壁に固定されるステータコア44とステータコア44に巻回されたU相、V相、W相の各相のステータコイル45を有する。 各相のステータコイル45を形成する巻線の一方の端部は電力の供給を受けるリード線46としてステータコイル45から引き出されている。

電動モータ12は、第1ハウジング体14の外側に設けられた駆動回路47の電力供給の制御を受けて駆動される。 駆動回路47は、インバータおよびその他の電子部品と、インバータおよびその他の電子部品が固定される基板等を備えている。 インバータは、スイッチング素子を備えており、外部からスクロール型圧縮機10の駆動に必要な電力の供給を受け、供給される直流電力を交流電力に変換する。

スクロール型圧縮機10は、第1ハウジング体14に接合される駆動回路ケース48を備えている。 駆動回路ケース48は、駆動回路47を保護するケースである。 本実施形態では、駆動回路47および駆動回路ケース48はボルト49により第1ハウジング体14に固定される。 第1ハウジング体14と駆動回路ケース48とにより形成された密閉空間には、駆動回路47が設置され、駆動回路47と電気的に接続された気密端子50が設置されている。

第1ハウジング体14の内部にはクラスタブロック51が設けられ、気密端子50はクラスタブロック51を介して各相のステータコイル45から引き出されているリード線46と電気的に接続されている。 このように、電動モータ12と駆動回路47は電気的に接続されており、駆動回路47から気密端子50を介して電動モータ12のステータコイル45に通電されると、ロータ42が回転され、回転軸25と連結された圧縮機構11が作動される。

次に、自転防止機構の自転防止リング36の製造方法について説明する。 本実施形態の自転防止リング36は、図4に示す製造工程により製造される。 最初の工程である絞り工程は、金属鋼板36Aの絞り加工により第1中間成形体36Bを得る工程である。 本実施形態の金属鋼板36Aは、クロムモリブデン鋼(SCM415)を用いる。

絞り加工は、図5に示すプレス機52を用いて行われるが、プレス機52の機台53には、円柱状のパンチ54を取り付けたパンチホルダ55が設置されている。 パンチホルダ55の上方にはしわ押さえとしてのブランクホルダ56が設けられている。 ブランクホルダ56の上面は、金属鋼板36Aが載置される載置面である。 ブランクホルダ56にはパンチ54が挿通される挿通孔57が形成されているほか、ブランクホルダ56を機台53に対してスライド可能とするガイド58が設けられている。 ガイド58は機台53の下部に設けた緩衝機構59と接続されており、緩衝機構59はブランクホルダ56が下降する力を受けない状態では、ブランクホルダ56を最上位に位置させる。 緩衝機構59は、急激なブランクホルダ56の下降を規制する。 なお、ブランクホルダ56が最上位に位置するとき、ブランクホルダ56の上面はパンチ54の上面より僅かに上方に位置する。 ブランクホルダ56の上方には昇降自在のラム60が設けられ、ラム60にはダイ61が取り付けらており、ダイ61にはパンチ54が挿入される空間が形成されている。

絞り工程では、図5に示すように、ブランクホルダ56の上面に金属鋼板36Aを載置した後、ラム60を下降させるとダイ61が金属鋼板36Aと当接し、さらにラム60を下降させるとブランクホルダ56も下降してパンチ54がダイ61に押し込まれる。 パンチ54のダイ61への押し込みに伴い金属鋼板36Aは塑性変形し、有底筒状の第1中間成形体36Bが形成される。 金属鋼板36Aから第1中間成形体36Bを得る絞り加工では、ラム60の一度の下降によるパンチ54の押し込みではなく、ラム60の下降を複数回に分けたパンチ54の押し込みにより行う。

次に、図4に示す打ち抜き工程において第1中間成形体36Bの底部を打ち抜いて無底筒状の第2中間成形体36Cを得る。 打ち抜き工程においても絞り工程と同様にプレス機52を用い、プレス機52のラム60には打ち抜き用のパンチ(図示せず)が取り付けられている。 パンチの外径は第1中間成形体36Bの内径よりも僅かに小さく設定されている。 プレス機52の機台53には第1中間成形体36Bが保持されるホルダ(図示せず)が取り付けられている。 打ち抜き工程においては、ラム60を下降させて打ち抜き用のパンチにより第1中間成形体36Bの底部を打ち抜き、第1中間成形体36Bの底部を打ち抜くことにより無底筒状の第2中間成形体36Cが得られる。 第1中間成形体36Bの底部を打ち抜きはラム60の一度の下降により行われる。 図6(a)は底部が打ち抜かれて得られた第2中間成形体36Cの拡大図であり、第2中間成形体36Cの打ち抜き側の端部寄り内周面には打ち抜きによるバリBが残っている。

次の図4に示すリング成形工程では、第2中間成形体36Cをリング成形する。 リング成形工程は、第2中間成形体36Cにおける打ち抜きによるバリBを無くした形状的な仕上げを行う工程である。 リング成形工程では、リング成形型(図示せず)を用いてバリBを無くしてことにより平滑な内周面を形成する。 第2中間成形体36Cの内周面にリング成形型を複数回挿入することによりバリBを徐々に塑性変形させ、バリBが存在した部位を第2中間成形体36Cの内周面と同じ内径となる面に形成する。

図6(b)に示すように、リング成形により形成される第3中間成形体36Dの内周面には、微小な溝(ショックライン)Lが周方向に形成される。 ショックラインLは、リング成形によっても解消されない溝であり、第3中間成形体36Dの打ち抜き側の端部から板厚分の距離に相当する位置に形成される。 なお、リング成形を終了した時点では、第3中間成形体36Dは自転防止リング36としての形状は完成した状態にある。 因みに、第3中間成形体36Dの寸法精度は切削加工により形成される従来の自転防止リングと同程度である。

本実施形態では、リング成形後の第3中間成形体36Dに軟窒化処理を施す。 図4に示す軟窒化処理は、アンモニアガスと浸炭性ガスによる熱処理であり、自転防止リング36に必要な耐疲労性の向上を図ることが目的である。 一般的に、軟窒化処理は、焼き入れと比較すると低温であるため、処理対象物の熱による変形が小さい。 リング成形後の第3中間成形体36Dに軟窒化処理が施されると自転防止リング36として完成する。 自転防止リング36の内周面にはショックラインLが形成されている。

次に、図4に示す製造工程により製造された自転防止リング36と固定側ピン29を用いた自転防止機構について説明する。 自転防止リング36を用いた自転防止機構では、自転防止リング36の内周面と固定側ピン29の位置についてショックラインLが自転防止機能に影響を与えない条件が設定される。 ショックラインLが自転防止機能に影響を与えない条件として、自転防止リング36に挿入される固定側ピン29の外周面が固定側ピン29の軸方向においてショックラインLを跨ぐ位置まで挿入されることである。 つまり、固定側ピン29の軸方向の端面がショックラインLと干渉しないように自転防止リング36の内周面に対する固定側ピン29の位置が設定されていればよい。

例えば、図3に示すように、固定側ピン29の外周面が固定側ピン29の軸方向においてショックラインLを跨ぐ位置にある状態では、可動スクロール18の旋回時において固定側ピン29の外周面は自転防止リング36の内周面と平行となって適切に摺接する。 従って、図3の状態では、自転防止リング36のショックラインLは自転防止機構の可動スクロール18の自転防止機能に対して影響を与えることがない。

本実施形態は以下の作用効果を奏する。 (1)金属鋼板36Aをプレスにより絞り加工することにより有底筒状の第1中間成形体36Bが形成され、形成された第1中間成形体36Bの底部を打ち抜くことにより無底筒状の第2中間成形体36Cが得られる。そして、第2中間成形体36Cをリング成形してリング成形により形成される第3中間成形体36Dを得て、さらに、第3中間成形体36Dに対して軟窒化処理を施すことにより自転防止リング36を得ることができる。金属鋼板36Aから自転防止リング36を製造するから、金属棒材の切削加工により自転防止リングの製造と比較して、製造コストの大幅な削減を図ることができるほか、製造時間を大幅に短縮することができる。

(2)固定側ピン29が自転防止リング36における内周面のショックラインLを跨ぐ位置まで挿入されていることから、固定側ピン29の外周面はショックラインLを除く自転防止リング36の内周面と摺接する。従って、自転防止リング36における内周面にショックラインLが存在しても、自転防止リング36の内周面と固定側ピン29の外周面との平行度を保つことができ、製造過程において形成されるショックラインLが自転防止機構の機能を妨げることがない。このため、絞り工程を含む製造工程により製造した自転防止リング36を使用することができる。

(3)熱処理として軟窒化処理を行うため、固定側ピン29との摺接に必要な表面硬度および耐摩耗性の向上を図ることができる。また、熱処理時における第3中間成形体36Dの温度を低温とすることができるから、熱処理の熱による歪を小さくすることができ、熱処理後において歪を取り除く研磨等の工程を必要とせず、製造時間を短縮化することができる。 (4)絞り工程を含む製造工程により自転防止リング36を製造するから、切削により自転防止リングの製造と比較すると、材料の無駄を少なくすることができる。

(第2の実施形態) 次に、第2の実施形態に係るスクロール型圧縮機の自転防止機構について説明する。 本実施形態のスクロール圧縮機の自転防止機構は、固定側基板に設けたピンの他に可動側基板に設けたピンを設け、これらのピンを外側から覆う自転防止リングとから構成される点で第1の実施形態と異なる。 本実施形態では、第1の実施形態と共通する要素については、第1の実施形態の説明を援用し、符号を共通して用いる。

図7に示すように、可動スクロール18における可動側基板33の周縁付近には、ピン挿入孔71が形成されており、ピン挿入孔71に可動側ピン72が圧入により固定されている。 可動側ピン72の先端は軸支部材24へ向けて突出し、可動側ピン72と固定側ピン29は軸心が互いに平行となるように配置されている。 可動側ピン72および固定側ピン29の外周を覆うように自転防止リング36が設けられている。 可動側ピン72および固定側ピン29は、自転防止リング36の内周面と摺接するピンに相当する。

本実施形態の自転防止機構は、自転防止リング36、固定側ピン29および可動側ピン72を備え、可動スクロール18の回転(自転)を防止する。 このため、回転軸25が回転するとき、可動スクロール18は回転(自転)を行うことなく、軸心Pの周囲を旋回する。 つまり、可動スクロール18は軸心Pの周囲を非自転状態にて旋回可能に設けられている。

図7に示すように、本実施形態では、自転防止リング36に挿入される可動側ピン72の外周面が可動側ピン72の軸方向においてショックラインLを跨ぐ位置まで挿入されている。 つまり、可動側ピン72の端面がショックラインLと干渉しないように自転防止リング36の内周面に対する可動側ピン72の位置が設定されている。 従って、可動側ピン72および固定側ピン29の外周面が軸方向においてショックラインLを跨ぐ位置まで挿入されている。

本実施形態によれば、固定側ピン29および可動側ピン72が自転防止リング36における内周面のショックラインLを跨ぐ位置まで挿入されている。 このため、固定側ピン29および可動側ピン72の外周面はショックラインLを除く自転防止リング36の内周面と摺接する。 従って、自転防止リング36における内周面にショックラインLが存在しても、自転防止リング36の内周面と固定側ピン29および可動側ピン72の外周面との平行度を保つことができ、ショックラインLが自転防止機構の機能を妨げることがない。 絞り工程を含む製造工程により製造した自転防止リング36を使用することができる。

なお、上記の実施形態は、本発明の一実施形態を示すものであり、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、下記のように発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能である。

○ 上記の実施形態では、金属鋼板としてクロムモリブデン鋼(SCM415)を用いた例を説明したが、クロムモリブデン鋼(SCM415)以外のクロムモリブデン鋼(SCM435、SCM414)を用いてもよい。さらに言うと、金属鋼板としては絞り加工が可能なクロムモリブデン鋼以外の金属鋼板を用いてもよく、例えば、金属鋼板として冷間圧延鋼板(SPCC)、炭素鋼(SC)、高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)を用いてもよい。 ○ 上記の実施形態では、リング成形後により形成される第3中間成形体に対する熱処理として軟窒化処理を用いたが、熱処理は軟窒化処理に限定されない。例えば、熱処理として窒化処理を採用してもよい。熱処理としては表面の硬度および耐磨耗性の向上を図ることができる熱処理とするが、リング成形により形成される第3中間成形体の熱による歪が可能な限り小さい熱処理が好ましい。 ○ 上記の実施形態では、6個の自転防止機構を設けたスクロール型圧縮機としたが、スクロール型圧縮機に設ける自転防止機構は複数以上であれば特に限定されない。実用上は自転防止機構を4個以上設けることが好ましい。

10 電動圧縮機 11 圧縮機構 12 電動モータ 13 ハウジング 17 固定スクロール 18 可動スクロール 19 圧縮室 20 吸入口 22 吐出口 24 軸支部材 25 回転軸 29 固定側ピン 30 偏心軸 35 有底円孔 36 自転防止リング 36A 金属鋼板 36B 第1中間成形体 36C 第2中間成形体 36D 第3中間成形体 41 ステータ 42 ロータ 46 駆動回路 51 プレス機 52 機台 53 パンチ 55 ブランクホルダ 59 ラム 60 ダイ 71 ピン挿入孔 72 可動側ピン L 溝(ショックライン) P 軸心 Q 軸心

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