シングルスクリュー圧縮機

申请号 JP2017014081 申请日 2017-01-30 公开(公告)号 JP2018123687A 公开(公告)日 2018-08-09
申请人 ダイキン工業株式会社; 发明人 上野 広道;
摘要 【課題】ゲートロータの熱膨張に起因するゲートの摩耗を低減し、シングルスクリュー圧縮機の性能の低下を抑える。 【解決手段】シングルスクリュー圧縮機において、スクリューロータと噛み合うゲートロータ組立体に、第1ゲートロータ(60)と第2ゲートロータ(70)とを設ける。第1ゲートロータ(60)は、各ゲート(61)の前方側面(64)に、スクリューロータの螺旋溝(41)の前方側壁面(42)と摺動する前方シールライン(67)が形成される。第2ゲートロータ(70)は、各ゲート(71)の後方側面(75)に、スクリューロータの螺旋溝(41)の後方側壁面(43)と摺動する後方シールライン(77)が形成される。 【選択図】図6
权利要求

螺旋溝(41)が形成されたスクリューロータ(40)と、該スクリューロータ(40)と噛み合うゲートロータ組立体(50)と、上記スクリューロータ(40)及び上記ゲートロータ組立体(50)を収容するケーシング(10)とを備えたシングルスクリュー圧縮機であって、 上記ゲートロータ組立体(50)は、 上記スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に進入して圧縮室(37)を形成するゲート(61,71)がそれぞれに複数ずつ形成された第1ゲートロータ(60)及び第2ゲートロータ(70)と、 上記第1ゲートロータ(60)及び上記第2ゲートロータ(70)が取り付けられて上記ケーシング(10)に回転自在に支持されるロータ支持部材(55)とを備え、 上記スクリューロータ(40)の上記螺旋溝(41)の側壁面は、該スクリューロータ(40)の回転方向の前側に位置する側壁面が前方側壁面(42)であると共に、該スクリューロータ(40)の回転方向の後側に位置する側壁面が後方側壁面(43)であり、 上記第1ゲートロータ(60)の各ゲート(61)は、該ゲート(61)が進入した上記螺旋溝(41)の上記前方側壁面(42)と上記後方側壁面(43)のうち上記前方側壁面(42)だけと摺動し、 上記第2ゲートロータ(70)の各ゲート(71)は、該ゲート(71)が進入した上記螺旋溝(41)の上記前方側壁面(42)と上記後方側壁面(43)のうち上記後方側壁面(43)だけと摺動し、 上記ゲートロータ組立体(50)は、上記第1ゲートロータ(60)と上記第2ゲートロータ(70)が、同軸に配置されて周方向へ相対的に変位可能である ことを特徴とするシングルスクリュー圧縮機。請求項1において、 上記ゲートロータ組立体(50)の上記第1ゲートロータ(60)及び上記第2ゲートロータ(70)は、上記第1ゲートロータ(60)の前面(62)が上記圧縮室(37)に臨み、上記第2ゲートロータ(70)が上記第1ゲートロータ(60)の背面(63)側に位置するように重なり合っている ことを特徴とするシングルスクリュー圧縮機。請求項2において、 上記第2ゲートロータ(70)の各ゲート(71)は、上記螺旋溝(41)の上記後方側壁面(43)と向かい合う側面の上記第1ゲートロータ(60)側の縁部が、上記第2ゲートロータ(70)の径方向に延びる線状に形成されて上記後方側壁面(43)と摺動する後方シールライン(77)となる ことを特徴とするシングルスクリュー圧縮機。請求項2又は3において、 上記第1ゲートロータ(60)の各ゲート(61)は、上記螺旋溝(41)の上記前方側壁面(42)と向かい合う側面の上記第2ゲートロータ(70)側の縁部が、上記第1ゲートロータ(60)の径方向に延びる線状に形成されて上記前方側壁面(42)と摺動する前方シールライン(67)となる ことを特徴とするシングルスクリュー圧縮機。請求項2乃至4のいずれか一つにおいて、 上記第1ゲートロータ(60)の厚さが、上記第2ゲートロータ(70)の厚さよりも薄い ことを特徴とするシングルスクリュー圧縮機。

说明书全文

本発明は、流体を圧縮するシングルスクリュー圧縮機に関するものである。

従来より、流体を圧縮する圧縮機として、シングルスクリュー圧縮機が用いられている。例えば、特許文献1には、1つのスクリューロータと2つのゲートロータ組立体とを備えたシングルスクリュー圧縮機が開示されている。

シングルスクリュー圧縮機では、スクリューロータに複数の螺旋溝が形成され、ゲートロータ組立体のゲートロータに複数のゲートが放射状に形成される。このシングルスクリュー圧縮機では、スクリューロータとゲートロータ組立体とが噛み合わされ、スクリューロータの螺旋溝にゲートロータのゲートが進入することによって圧縮室が形成される。スクリューロータを電動機等によって回転駆動すると、スクリューロータと噛み合うゲートロータ組立体が回転する。そして、ゲートロータのゲートが進入した螺旋溝の始端から終端へ向かって相対的に移動し、圧縮室へ吸入された流体が圧縮される。

特開2010−001873号公報

従来のシングルスクリュー圧縮機では、ゲートロータ組立体に一つのゲートロータが設けられており、ゲートロータのゲートが螺旋溝の壁面と摺動することによって、圧縮室の気密性を保っている。一方、シングルスクリュー圧縮機の運転中は、ゲートロータの温度が上昇し、ゲートロータが熱膨張する。ゲートロータが熱膨張してゲートの幅が増加すると、熱膨張したゲートが螺旋溝の壁面に強く押しつけられることとなり、ゲートの摩耗量が増加してしまう。ゲートが摩耗すると、圧縮室の気密性が低下し、圧縮機の性能が低下してしまう。

本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ゲートロータの熱膨張に起因するゲートの摩耗を低減し、シングルスクリュー圧縮機の性能の低下を抑えることにある。

第1の発明は、螺旋溝(41)が形成されたスクリューロータ(40)と、該スクリューロータ(40)と噛み合うゲートロータ組立体(50)と、上記スクリューロータ(40)及び上記ゲートロータ組立体(50)を収容するケーシング(10)とを備えたシングルスクリュー圧縮機を対象とする。そして、上記ゲートロータ組立体(50)は、上記スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に進入して圧縮室(37)を形成するゲート(61,71)がそれぞれに複数ずつ形成された第1ゲートロータ(60)及び第2ゲートロータ(70)と、上記第1ゲートロータ(60)及び上記第2ゲートロータ(70)が取り付けられて上記ケーシング(10)に回転自在に支持されるロータ支持部材(55)とを備え、上記スクリューロータ(40)の上記螺旋溝(41)の側壁面は、該スクリューロータ(40)の回転方向の前側に位置する側壁面が前方側壁面(42)であると共に、該スクリューロータ(40)の回転方向の後側に位置する側壁面が後方側壁面(43)であり、上記第1ゲートロータ(60)の各ゲート(61)は、該ゲート(61)が進入した上記螺旋溝(41)の上記前方側壁面(42)と上記後方側壁面(43)のうち上記前方側壁面(42)だけと摺動し、上記第2ゲートロータ(70)の各ゲート(71)は、該ゲート(71)が進入した上記螺旋溝(41)の上記前方側壁面(42)と上記後方側壁面(43)のうち上記後方側壁面(43)だけと摺動し、上記ゲートロータ組立体(50)は、上記第1ゲートロータ(60)と上記第2ゲートロータ(70)が、同軸に配置されて周方向へ相対的に変位可能であるものである。

第1の発明では、ゲートロータ組立体(50)に、第1ゲートロータ(60)と第2ゲートロータ(70)とが設けられる。第1ゲートロータ(60)及び第2ゲートロータ(70)は、ロータ支持部材(55)に取り付けられる。スクリューロータ(40)が回転すると、スクリューロータ(40)と噛み合うゲートロータ組立体(50)は、スクリューロータ(40)によって駆動されて回転する。

第1の発明において、第1ゲートロータ(60)と第2ゲートロータ(70)は、それぞれが複数のゲート(61,71)を備えている。スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に進入した第1ゲートロータ(60)のゲート(61)は、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)の前方側壁面(42)と摺動するが、その後方側壁面(43)とは摺動しない。一方、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に進入した第2ゲートロータ(70)のゲート(71)は、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)の後方側壁面(43)と摺動するが、その前方側壁面(42)とは摺動しない。ゲートロータ組立体(50)は、第1ゲートロータ(60)のゲート(61)がスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)の前方側壁面(42)と摺動し、第2ゲートロータ(70)のゲート(71)がスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)の後方側壁面(43)と摺動することによって、圧縮室(37)の気密性を保持する。

ここで、ゲートロータが熱膨張すると、ゲートの幅が増加する。ゲートロータ組立体にゲートロータが一つだけ設けられる一般的なシングルスクリュー圧縮機では、スクリューロータの螺旋溝に進入したゲートが、螺旋溝の前方側壁面と後方側壁面の両方と摺動する。このため、ゲートロータが熱膨張してゲートの幅が増えると、ゲートに作用する接触面圧が増加し、ゲートが摩耗してしまう。

これに対し、第1の発明のゲートロータ組立体(50)は、ゲート(61)が螺旋溝(41)の前方側壁面(42)と摺動するが後方側壁面(43)とは摺動しない第1ゲートロータ(60)と、ゲート(71)が螺旋溝(41)の後方側壁面(43)と摺動するが前方側壁面(42)とは摺動しない第2ゲートロータ(70)とが、それぞれの周方向へ相対的に変位可能となっている。このため、ゲートロータ(60,70)が熱膨張してゲート(61,71)の幅が増加した場合でも、二つのゲートロータ(60,70)が相対的に変位することによって、各ゲートロータ(60,70)のゲート(61,71)が螺旋溝(41)の側壁面(42,43)から受けるの増加が抑えられ、ゲート(61,71)の摩耗量が減少する。

第2の発明は、上記第1の発明において、上記ゲートロータ組立体(50)の上記第1ゲートロータ(60)及び上記第2ゲートロータ(70)は、上記第1ゲートロータ(60)の前面(62)が上記圧縮室(37)に臨み、上記第2ゲートロータ(70)が上記第1ゲートロータ(60)の背面(63)側に位置するように重なり合っているものである。

第2の発明のゲートロータ組立体(50)では、第1ゲートロータ(60)と第2ゲートロータ(70)が重なり合う。第1ゲートロータ(60)は、圧縮室(37)側に配置される。第2ゲートロータ(70)は、第1ゲートロータ(60)に対して圧縮室(37)とは逆側に配置される。

第2の発明において、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に進入した第1ゲートロータ(60)のゲート(61)は、螺旋溝(41)の後方側壁面(43)と接触しないため、そのゲート(61)と螺旋溝(41)の後方側壁面(43)との間に隙間が形成される。このため、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に進入した第1ゲートロータ(60)のゲート(61)は、螺旋溝(41)の後方側壁面(43)と向かい合う側面に、圧縮室(37)の圧力(即ち、圧縮室(37)に存在する流体の圧力)が作用する。その結果、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に進入した第1ゲートロータ(60)のゲート(61)は、螺旋溝(41)の前方側壁面(42)へ向かって押され、螺旋溝(41)の前方側壁面(42)と確実に摺動する。

第3の発明は、上記第2の発明において、上記第2ゲートロータ(70)の各ゲート(71)は、上記螺旋溝(41)の上記後方側壁面(43)と向かい合う側面の上記第1ゲートロータ(60)側の縁部が、上記第2ゲートロータ(70)の径方向に延びる線状に形成されて上記後方側壁面(43)と摺動する後方シールライン(77)となるものである。

第3の発明のゲートロータ組立体(50)において、第2ゲートロータ(70)の各ゲート(71)は、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)の後方側壁面(43)と向かい合う側面の第1ゲートロータ(60)側の縁部が、後方側壁面(43)と摺動する後方シールライン(77)となる。また、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に進入した第2ゲートロータ(70)のゲート(71)と、螺旋溝(41)の前方側壁面(42)の間には隙間が形成される。このため、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に進入した第2ゲートロータ(70)のゲート(71)は、螺旋溝(41)の前方側壁面(42)と向かい合う側面の全体と、螺旋溝(41)の後方側壁面(43)と向かい合う側面の全体とに、同じ流体圧力が作用する。そして、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に進入した第2ゲートロータ(70)のゲート(71)では、螺旋溝(41)の前方側壁面(42)と向かい合う側面に作用する流体圧力と、螺旋溝(41)の後方側壁面(43)と向かい合う側面に作用する流体圧力とが打ち消し合う。

第4の発明は、上記第2又は第3の発明において、上記第1ゲートロータ(60)の各ゲート(61)は、上記螺旋溝(41)の上記前方側壁面(42)と向かい合う側面の上記第2ゲートロータ(70)側の縁部が、上記第1ゲートロータ(60)の径方向に延びる線状に形成されて上記前方側壁面(42)と摺動する前方シールライン(67)となるものである。

第4の発明では、第1ゲートロータ(60)と第2ゲートロータ(70)が重なり合い、第1ゲートロータ(60)が圧縮室(37)側に配置される。第1ゲートロータ(60)の各ゲート(61)は、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)の前方側壁面(42)と向かい合う側面の第2ゲートロータ(70)側の縁部が、前方側壁面(42)と摺動する前方シールライン(67)となる。

上述したように、上記第3の発明の第2ゲートロータ(70)では、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)の後方側壁面(43)と向かい合う側面の第1ゲートロータ(60)側の縁部が、後方側壁面(43)と摺動する後方シールライン(77)となる。このため、上記第3の発明と上記第4の発明を組み合わせた場合は、第1ゲートロータ(60)のゲート(61)に形成された前方シールライン(67)と、第2ゲートロータ(70)のゲート(71)に形成された後方シールライン(77)とが、実質的に同一の平面上に位置することになる。

第5の発明は、上記第2〜第4のいずれか一つの発明において、上記第1ゲートロータ(60)の厚さが、上記第2ゲートロータ(70)の厚さよりも薄いものである。

上述したように、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に進入した第1ゲートロータ(60)のゲート(61)と、螺旋溝(41)の後方側壁面(43)との間に隙間が形成される。第1ゲートロータ(60)は圧縮室(37)側に配置されているため、第1ゲートロータ(60)のゲート(61)と螺旋溝(41)の後方側壁面(43)の間に形成された隙間は、圧縮室(37)を圧縮室(37)の外部と連通させる通路となる。このため、この隙間が大きいと、この隙間を通って圧縮室(37)から漏れ出す流体の量が多くなり、シングルスクリュー圧縮機の効率の低下を招くおそれがある。

これに対し、第5の発明のゲートロータ組立体(50)では、圧縮室(37)に臨む第1ゲートロータ(60)の厚さが、第1ゲートロータ(60)の背面(63)側に配置された第2ゲートロータ(70)の厚さよりも薄くなっている。第1ゲートロータ(60)の厚さが薄いほど、第1ゲートロータ(60)のゲート(61)と螺旋溝(41)の後方側壁面(43)の間に形成された隙間が狭くなる。このため、第1ゲートロータ(60)を第2ゲートロータ(70)よりも薄くすれば、圧縮室(37)から漏れ出す流体の量が少なく抑えられ、シングルスクリュー圧縮機(1)の性能が高く保たれる。

本発明のゲートロータ組立体(50)は、ゲート(61)が螺旋溝(41)の前方側壁面(42)と摺動するが後方側壁面(43)とは摺動しない第1ゲートロータ(60)と、ゲート(71)が螺旋溝(41)の後方側壁面(43)と摺動するが前方側壁面(42)とは摺動しない第2ゲートロータ(70)とが、それぞれの周方向へ相対的に変位可能となっている。このため、本発明によれば、各ゲートロータ(60,70)が熱膨張した状態でも、ゲート(61,71)が螺旋溝(41)の側壁面(42,43)から受ける力の増加を抑えることができ、ゲート(61,71)の摩耗量を削減できる。従って、本発明によれば、ゲート(61,71)の摩耗に起因するシングルスクリュー圧縮機(1)の性能の低下を抑えることができる。

上記第2の発明のゲートロータ組立体(50)では、第1ゲートロータ(60)が圧縮室(37)に臨むように配置され、第2ゲートロータ(70)が第1ゲートロータ(60)の背面(63)側に配置される。このため、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に進入した第1ゲートロータ(60)のゲート(61)を、圧縮室(37)の流体圧力を利用して螺旋溝(41)の前方側壁面(42)側に押すことができ、このゲート(61)を螺旋溝(41)の前方側壁面(42)と確実に摺動させることができる。従って、この発明によれば、熱膨張や摩耗によってゲートロータ(60,70)のゲート(61,71)の幅が変化しても、第1ゲートロータ(60)のゲート(61)をスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)の前方側壁面(42)と摺動させて圧縮室(37)の気密性を確保することができる。

上記第3の発明において、第2ゲートロータ(70)の各ゲート(71)は、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)の後方側壁面(43)と向かい合う側面の第1ゲートロータ(60)側の縁部が、後方側壁面(43)と接する後方シールライン(77)となる。このため、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に進入した第2ゲートロータ(70)のゲート(71)では、螺旋溝(41)の後方側壁面(43)と向かい合う側面に作用する流体圧力(即ち、ゲート(71)を螺旋溝(41)の後方側壁面(43)から引き離す方向に作用する流体圧力)が、螺旋溝(41)の前方側壁面(42)と向かい合う側面に作用する流体圧力によって相殺される。従って、この発明によれば、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に進入した第2ゲートロータ(70)のゲート(71)を、螺旋溝(41)の後方側壁面(43)と確実に摺動させることができ、圧縮室(37)の気密性を確保できる。

上記第5の発明では、圧縮室(37)側に配置された第1ゲートロータ(60)の厚さが、ロータ支持部材(55)側に配置された第2ゲートロータ(70)の厚さよりも薄くなっている。このため、第1ゲートロータ(60)のゲート(61)と螺旋溝(41)の後方側壁面(43)の間に形成された隙間を狭くすることができ、この隙間を通って圧縮室(37)から漏れ出す流体の量を少なく抑えることができる。従って、この発明によれば、シングルスクリュー圧縮機(1)の性能を高く保つことが可能となる。

図1は、実施形態のシングルスクリュー圧縮機の縦断面図である。

図2は、図1のA−A断面を示すシングルスクリュー圧縮機(1)の断面図である。

図3は、噛み合った状態のスクリューロータとゲートロータ組立体とを示す斜視図である。

図4は、図1のA−A断面におけるスクリューロータと一方のゲートロータ組立体とを示す断面図である。

図5は、図4のC−C断面の要部を示すゲートロータ組立体の断面図である。

図6は、図4のD−D断面の要部を示すゲートロータ組立体とスクリューロータの断面図である。

図7Aは、図4と同じ断面図である。

図7Bは、ゲートロータ組立体が図7Aに示す位置から反時計方向へ回転した状態を示す図7Aに相当する断面図である。

図7Cは、ゲートロータ組立体が図7Bに示す位置から反時計方向へ回転した状態を示す図7Bに相当する断面図である。

図7Dは、ゲートロータ組立体が図7Cに示す位置から反時計方向へ回転した状態を示す図7Cに相当する断面図である。

図8は、実施形態の変形例のシングルスクリュー圧縮機における図6に相当する断面図である。

本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施形態および変形例は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。

本実施形態のシングルスクリュー圧縮機(1)(以下、単にスクリュー圧縮機と言う。)は、冷凍装置の冷媒回路に設けられて冷媒を圧縮する。つまり、本実施形態のスクリュー圧縮機(1)は、流体である冷媒を吸入して圧縮する。

−シングルスクリュー圧縮機− 図1に示すように、スクリュー圧縮機(1)では、圧縮機構(35)とそれを駆動する電動機(30)とが1つのケーシング(10)に収容されている。このスクリュー圧縮機(1)は、半密閉型に構成されている。

ケーシング(10)は、本体部(11)と、シリンダ部(20)とを備えている。

本体部(11)は、両端が閉塞された横長の円筒状に形成されている。本体部(11)の内部空間は、本体部(11)の一端側に位置する低圧空間(15)と、本体部(11)の他端側に位置する高圧空間(16)とに仕切られている。本体部(11)には、低圧空間(15)に連通する吸入口(12)と、高圧空間(16)に連通する吐出口(13)とが設けられている。冷凍装置の蒸発器から流れてきた低圧冷媒は、吸入口(12)を通って低圧空間(15)へ流入する。また、圧縮機構(35)から高圧空間(16)へ吐出された圧縮後の高圧冷媒は、吐出口(13)を通って冷凍装置の凝縮器へ供給される。

本体部(11)の内部では、低圧空間(15)に電動機(30)が配置され、低圧空間(15)と高圧空間(16)の間に圧縮機構(35)が配置されている。電動機(30)は、本体部(11)の吸入口(12)と圧縮機構(35)の間に配置されている。電動機(30)の固定子(31)は、本体部(11)に固定されている。一方、電動機(30)の回転子(32)は、圧縮機構(35)の駆動軸(36)に連結されている。電動機(30)に通電すると回転子(32)が回転し、後述する圧縮機構(35)のスクリューロータ(40)が電動機(30)によって駆動される。

本体部(11)の内部では、高圧空間(16)に油分離器(33)が配置されている。油分離器(33)は、圧縮機構(35)から吐出された高圧冷媒から冷凍機油を分離する。高圧空間(16)における油分離器(33)の下方には、潤滑油である冷凍機油を貯留するための油貯留室(18)が形成されている。油分離器(33)において冷媒から分離された冷凍機油は、下方へ流れ落ちて油貯留室(18)に蓄えられる。

図1,2に示すように、シリンダ部(20)は、概ね円筒状に形成されている。このシリンダ部(20)は、本体部(11)の長手方向の中央部に配置され、本体部(11)と一体に形成されている。シリンダ部(20)の内周面は、円筒面となっている。

シリンダ部(20)には、1つのスクリューロータ(40)が挿入された状態で設けられる。スクリューロータ(40)には、駆動軸(36)が同軸に連結されている。スクリューロータ(40)には、2つのゲートロータ組立体(50)が噛み合わされている。スクリューロータ(40)と、ゲートロータ組立体(50)とは、圧縮機構(35)を構成している。

ケーシング(10)には、隔壁部である軸受固定板(23)が設けられている。軸受固定板(23)は、概ね円板状に形成され、シリンダ部(20)の高圧空間(16)側の開口端を覆うように配置されている。軸受固定板(23)には、軸受ホルダ(24)が取り付けられている。この軸受ホルダ(24)は、シリンダ部(20)の端部(高圧空間(16)側の端部)に嵌め込まれている。軸受ホルダ(24)には、駆動軸(36)を支持するための玉軸受(25)が嵌め込まれている。

図3に示すように、スクリューロータ(40)は、概ね円柱状に形成された金属製の部材である。スクリューロータ(40)は、シリンダ部(20)に回転可能に嵌合しており、その外周面がシリンダ部(20)の内周面と摺接する。

スクリューロータ(40)の外周部には、複数の螺旋溝(41)が形成されている。各螺旋溝(41)は、スクリューロータ(40)の外周面に開口する凹溝であって、スクリューロータ(40)の一端から他端へ向かって螺旋状に延びている。スクリューロータ(40)の各螺旋溝(41)は、低圧空間(15)側の端部が始端となり、高圧空間(16)側の端部が終端となっている。

スクリューロータ(40)の外周面に開口する螺旋溝(41)は、一つの底壁面(44)と、向かい合う一対の側壁面とによって囲まれている。螺旋溝(41)の一対の側壁面は、スクリューロータ(40)の回転方向の前側に位置する側壁面が前方側壁面(42)であり、スクリューロータ(40)の回転方向の後側に位置する側壁面が後方側壁面(43)である。

詳しくは後述するが、ゲートロータ組立体(50)は、第1ゲートロータ(60)と、第2ゲートロータ(70)と、ロータ支持部材(55)とを備えている。各ゲートロータ(60,70)は、概ね長方形状の複数(本実施形態では、十一枚)のゲート(61,71)が放射状に設けられた板状の部材である。各ゲートロータ(60,70)の材質は、硬質の樹脂である。第1ゲートロータ(60)と第2ゲートロータ(70)は、重なり合った状態で金属製のロータ支持部材(55)に取り付けられている。

ケーシング(10)では、図2におけるシリンダ部(20)の左右に、ゲートロータ室(17)が一つずつ形成されている。ゲートロータ組立体(50)は、各ゲートロータ室(17)に一つずつ収容されている。なお、各ゲートロータ室(17)は、低圧空間(15)に連通している。

具体的に、各ゲートロータ室(17)には、軸受ハウジング(26)が設けられている。軸受ハウジング(26)は、概ね筒状に形成された金属製の部材であり、ケーシング(10)の本体部(11)に固定されている。ゲートロータ組立体(50)は、後述する軸部(58)が玉軸受(27)を介して軸受ハウジング(26)に回転自在に支持されている。

ゲートロータ組立体(50)は、シリンダ部(20)を貫通するように配置されている。ゲートロータ組立体(50)は、各ゲートロータ(60,70)のゲート(61,71)がスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)へ進入するように、スクリューロータ(40)と噛み合わされる。ケーシング(10)のシリンダ部(20)では、ゲートロータ組立体(50)が貫通する部分の壁面が、第1ゲートロータ(60)の前面と対面する側方シール面(21)を構成している。この側方シール面(21)は、スクリューロータ(40)の外周に沿ってスクリューロータ(40)の軸方向へ延びる平坦面であって、第1ゲートロータ(60)の前面と摺接する。

圧縮機構(35)では、シリンダ部(20)の内周面と、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)と、ゲートロータ(60,70)のゲート(61,71)とによって囲まれた空間が圧縮室(37)になる。そして、スクリューロータ(40)が回転すると、ゲートロータ(60,70)のゲート(61,71)が螺旋溝(41)の始端から終端へ向かって相対的に移動し、圧縮室(37)の容積が変化して圧縮室(37)内の冷媒が圧縮される。

図2に示すように、スクリュー圧縮機(1)には、容量調節用のスライドバルブ(90)が、各ゲートロータに対応して一つずつ設けられている。つまり、スクリュー圧縮機(1)には、ゲートロータと同数(本実施形態では、二つ)のスライドバルブ(90)が設けられている。

スライドバルブ(90)は、シリンダ部(20)に取り付けられている。シリンダ部(20)には、その軸方向へ延びる開口部(22)が形成されている。スライドバルブ(90)は、そのバルブ本体(91)がシリンダ部(20)の開口部(22)に嵌り込むように配置されている。バルブ本体(91)の前面がスクリューロータ(40)の周側面と対面する。スライドバルブ(90)は、シリンダ部(20)の軸心方向にスライド可能となっている。また、シリンダ部(20)の開口部(22)は、スライドバルブ(90)のバルブ本体(91)よりも軸受ホルダ(24)側の部分が、圧縮室(37)から圧縮後の冷媒を導出するための吐出ポートとなっている。

図示しないが、各スライドバルブ(90)には、スライドバルブ駆動機構(95)のロッドが連結されている。スライドバルブ駆動機構(95)は、各スライドバルブ(90)を駆動してシリンダ部(20)の軸心方向へ移動させるための機構である。各スライドバルブ(90)は、スライドバルブ駆動機構(95)によって駆動され、スライドバルブ(90)の軸方向へ往復動する。

−ゲートロータ組立体− 上述したように、ゲートロータ組立体(50)は、第1ゲートロータ(60)と、第2ゲートロータ(70)と、ロータ支持部材(55)とを備えている。ここでは、ゲートロータ組立体(50)の詳細な構成について説明する。

図3及び図4に示すように、各ゲートロータ(60,70)は、概ね円板状に形成された樹脂製の部材である。各ゲートロータ(60,70)には、その中心軸と同軸の円形の貫通孔である中央孔(69,79)が形成されている。各ゲートロータ(60,70)は、中央孔(69,79)が形成された円形の基部(68,78)と、概ね長方形状の複数(本実施形態では、十一枚)のゲート(61,71)とを備えている。各ゲートロータ(60,70)において、複数のゲート(61,71)は、基部(68,78)の外周から外側へ放射状に延びるように形成され、基部(68,78)の周方向に等度間隔で配置されている。第1ゲートロータ(60)と第2ゲートロータ(70)は、それぞれのゲート(61,71)の形状が異なっている。各ゲートロータ(60,70)のゲート(61,71)の詳細な形状は、後述する。

図5及び図6に示すように、第1ゲートロータ(60)の厚さは、第2ゲートロータ(70)の厚さよりも薄い。具体的に、第1ゲートロータ(60)の厚さは1mm〜2mm程度であり、第2ゲートロータ(70)の厚さは6mm〜7mm程度である。なお、ここに示したゲートロータ(60,70)の厚さは、単なる一例である。

図2及び図3に示すように、ロータ支持部材(55)は、円板部(56)とゲート支持部(57)と軸部(58)と、中央凸部(59)とを備えている。円板部(56)は、やや肉厚の円板状に形成されている。ゲート支持部(57)は、ゲートロータ(60,70)のゲート(61,71)と同数(本実施形態では十一本)だけ設けられており、円板部(56)の外周部から外側へ向かって放射状に延びている。複数のゲート支持部(57)は、円板部(56)の周方向に等角度間隔で配置されている。軸部(58)は、丸棒状に形成されて円板部(56)に立設されている。軸部(58)の中心軸は、円板部(56)の中心軸と一致している。中央凸部(59)は、円板部(56)における軸部(58)とは逆側の面に設けられている。この中央凸部(59)は、短い円柱状に形成され、円板部(56)と同軸に配置されている。中央凸部(59)の外径は、ゲートロータ(60,70)の中央孔(69,79)の内径と実質的に等しい。

第1ゲートロータ(60)と第2ゲートロータ(70)は、重ね合わされた状態でロータ支持部材(55)に取り付けられている。ゲートロータ組立体(50)では、ゲート支持部(57)側に第2ゲートロータ(70)が配置され、ゲート支持部(57)とは逆側に第1ゲートロータ(60)が配置されている。また、各ゲートロータ(60,70)は、それぞれの中央孔(69,79)にロータ支持部材(55)の中央凸部(59)が嵌まり込んでいる。各ゲートロータ(60,70)は、それぞれの中央孔(69,79)に中央凸部(59)が嵌まり込むことによって、ロータ支持部材(55)の径方向への移動が実質的に不能となっている。

ゲートロータ組立体(50)において、第1ゲートロータ(60)と第2ゲートロータ(70)は、第2ゲートロータ(70)の背面(73)がゲート支持部(57)の前面と接し、第1ゲートロータ(60)の背面(63)が第2ゲートロータ(70)の前面(72)と接するように、重なり合っている。第2ゲートロータ(70)の各ゲート(71)の背面(73)側には、ロータ支持部材(55)のゲート支持部(57)が一つずつ配置される。各ゲート支持部(57)は、対応する第2ゲートロータ(70)のゲート(71)を背面(73)側から支持する。一方、第2ゲートロータ(70)の各ゲート(71)の前面(72)側には、対応する第1ゲートロータ(60)のゲート(61)が一つずつ配置される。第1ゲートロータ(60)の各ゲート(61)は、対応する第2ゲートロータ(70)の各ゲート(71)を介して、ゲート支持部(57)に支持される。

図4及び図5に示すように、第2ゲートロータ(70)は、固定ピン(82)を介してロータ支持部材(55)に固定されている。固定ピン(82)は、基端部がロータ支持部材(55)の円板部(56)に埋め込まれている。固定ピン(82)の突端部は、円板部(56)の前面から突出している。また、固定ピン(82)は、突端部の外周面に円周溝が形成されており、この円周溝にOリング(83)が嵌め込まれている。第2ゲートロータ(70)は、基部(78)における中央孔(79)の側方に貫通孔が形成されており、この貫通孔に円筒状の金属製のスリーブ(81)が嵌め込まれている。

第2ゲートロータ(70)は、スリーブ(81)に固定ピン(82)の突端部が嵌まり込むことによって、ロータ支持部材(55)に固定されている。スリーブ(81)の内周面には、固定ピン(82)に取り付けられたOリング(83)が接している。そして、第2ゲートロータ(70)は、スリーブ(81)が固定ピン(82)のOリング(83)と接することによって、ロータ支持部材(55)の周方向への変位が規制される。ただし、Oリング(83)は弾性変形するので、第2ゲートロータ(70)は、ロータ支持部材(55)の周方向へ僅かに移動可能である。つまり、第2ゲートロータ(70)は、ロータ支持部材(55)の径方向と周方向の両方への変位が規制されている。

一方、第1ゲートロータ(60)は、その中央孔(69)にロータ支持部材(55)の中央凸部(59)が嵌まり込んでいるが、固定ピン(82)には係合していない。このため、第1ゲートロータ(60)は、ロータ支持部材(55)の径方向への変位は規制されるが、ロータ支持部材(55)の径方向への変位は可能である。

ただし、ゲートロータ組立体(50)は、スクリューロータ(40)と噛み合っており、各ゲートロータ(60,70)の一部のゲート(61,71)がスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に入り込んでいる。このため、第1ゲートロータ(60)は、螺旋溝(41)に入り込んだゲート(61)によって、第1ゲートロータ(60)の周方向への変位が制限される。

〈ゲートの詳細な形状〉 各ゲートロータ(60,70)のゲート(61,71)の詳細な形状について説明する。

図3及び図6に示すように、第1ゲートロータ(60)と第2ゲートロータ(70)のそれぞれに設けられたゲート(61,71)は、ゲートロータ組立体(50)の回転方向の前側に位置する側面が前方側面(64,74)であり、ゲートロータ組立体(50)の回転方向の後側に位置する側面が後方側面(65,75)であり、ゲートロータ(60,70)の外周側に位置する側面が突端側面(66,76)である。各ゲートロータ(60,70)の前面(62,72)及び背面(63,73)は、ゲートロータ(60,70)の中心軸と実質的に直交する平坦面である。

図4及び図6に示すように、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に進入した各ゲートロータ(60,70)のゲート(61,71)は、前方側面(64,74)が螺旋溝(41)の前方側壁面(42)と向かい合い、後方側面(65,75)が螺旋溝(41)の後方側壁面(43)と向かい合い、突端側面(66,76)が螺旋溝(41)の底壁面(44)と向かい合う。

図6に示すように、第1ゲートロータ(60)の各ゲート(61)は、前方側面(64)の第2ゲートロータ(70)側の縁部(即ち、前方側面(64)と背面(63)の境界となる縁部)が、前方シールライン(67)となっている。この前方シールライン(67)は、ゲート(61)の基端から突端に亘って形成された線状の部分である。ゲート(61)の前方シールライン(67)は、ゲート(61)がスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)へ進入してから抜け出すまでの間、螺旋溝(41)の前方側壁面(42)と摺動する。また、第1ゲートロータ(60)のゲート(61)の前方側面(64)は、傾斜面となっている。このため、ゲート(61)の前方側面(64)は、ゲート(61)がスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)へ進入してから抜け出すまでの間に、前方シールライン(67)だけが螺旋溝(41)の前方側壁面(42)と摺動する。

第1ゲートロータ(60)の各ゲート(61)の後方側面(65)は、がスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)の後方側壁面(43)と常に非接触となるような傾斜面である。第1ゲートロータ(60)のゲート(61)がスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に進入した状態において、ゲート(61)の後方側面(65)と螺旋溝(41)の後方側壁面(43)の間には隙間が形成される。

図示しないが、第1ゲートロータ(60)のゲート(61)の突端側面(66)は、第2ゲートロータ(70)側の縁部(即ち、突端側面(66)と背面(63)の境界となる縁部)が、突端シールラインとなっている。ゲート(61)の突端側面(66)は、ゲート(61)がスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)へ進入してから抜け出すまでの間、突端シールラインだけが螺旋溝(41)の底壁面(44)と摺動する。

図6に示すように、第2ゲートロータ(70)の各ゲート(71)の前方側面(74)は、がスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)の前方側壁面(42)と常に非接触となるような傾斜面である。第2ゲートロータ(70)のゲート(71)がスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に進入した状態において、ゲート(71)の前方側面(74)と螺旋溝(41)の前方側壁面(42)との間には隙間が形成される。

第2ゲートロータ(70)の各ゲート(71)は、後方側面(75)の第1ゲートロータ(60)側の縁部(即ち、後方側面(75)と前面(72)の境界となる縁部)が、後方シールライン(77)となっている。この後方シールライン(77)は、ゲート(71)の基端から突端に亘って形成された線状の部分である。ゲート(71)の後方シールライン(77)は、ゲート(71)がスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)へ進入してから抜け出すまでの間、螺旋溝(41)の後方側壁面(43)と摺動する。また、第2ゲートロータ(70)のゲート(71)の後方側面(75)は、傾斜面となっている。このため、ゲート(71)の後方側面(75)は、ゲート(71)がスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)へ進入してから抜け出すまでの間に、後方シールライン(77)だけが螺旋溝(41)の後方側壁面(43)と摺動する。

図示しないが、第2ゲートロータ(70)のゲート(61)の突端側面(76)は、第1ゲートロータ(60)側の縁部(即ち、突端側面(76)と前面(72)の境界となる縁部)が、突端シールラインとなっている。ゲート(71)の突端側面(76)は、ゲート(71)がスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)へ進入してから抜け出すまでの間、突端シールラインだけが螺旋溝(41)の底壁面(44)と摺動する。

上述したように、第1ゲートロータ(60)のゲート(61)は、前方側面(64)の第2ゲートロータ(70)側の縁部が前方シールライン(67)となり、第2ゲートロータ(70)のゲート(71)は、後方側面(75)の第1ゲートロータ(60)側の縁部が後方シールライン(77)となる。従って、第1ゲートロータ(60)の各ゲート(61)の前方シールライン(67)と、第2ゲートロータ(70)の各ゲート(71)の後方シールライン(77)は、第1ゲートロータ(60)及び第2ゲートロータ(70)の中心軸と直交する一つの平面上に位置している。

〈ゲートロータ組立体の配置〉 図2に示すように、ケーシング(10)内において、2つのゲートロータ組立体(50)は、スクリューロータ(40)の回転軸に対して互いに軸対称となる姿勢で設置されている。また、各ゲートロータ組立体(50)の回転軸(即ち、ロータ支持部材(55)の中心軸)と、スクリューロータ(40)の回転軸とのなす角度が、実質的に直角となっている。

具体的に、図2におけるスクリューロータ(40)の右側に配置されたゲートロータ組立体(50)は、ロータ支持部材(55)の軸部(58)が上方へ延びる姿勢で設置されている。一方、同図におけるスクリューロータ(40)の左側に配置されたゲートロータ組立体(50)は、ロータ支持部材(55)の軸部(58)が下方へ延びる姿勢で設置されている。そして、各ゲートロータ組立体(50)は、第1ゲートロータ(60)の前面が、ケーシング(10)の側方シール面(21)と摺接する。

−スクリュー圧縮機の運転動作− スクリュー圧縮機(1)の運転動作について説明する。

電動機(30)に通電すると、スクリューロータ(40)が電動機(30)によって駆動されて回転する。また、ゲートロータ組立体(50)は、スクリューロータ(40)によって駆動されて回転する。

圧縮機構(35)では、ゲートロータ組立体(50)がスクリューロータ(40)と噛み合っている。そして、スクリューロータ(40)とゲートロータ組立体(50)とが回転すると、ゲートロータ(60,70)のゲート(61,71)がスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)の始端から終端へ向かって相対的に移動し、圧縮室(37)の容積が変化する。その結果、圧縮機構(35)では、圧縮室(37)へ低圧冷媒を吸入する吸入行程と、圧縮室(37)内の冷媒を圧縮する圧縮行程と、圧縮した冷媒を圧縮室(37)から吐出する吐出工程とが行われる。

ケーシング(10)内の低圧空間(15)へは、蒸発器から流出した低圧ガス冷媒が、吸入口(12)を通って吸い込まれる。低圧空間(15)の冷媒は、圧縮機構(35)へ吸入されて圧縮される。圧縮機構(35)において圧縮された冷媒は、高圧空間(16)へ流入する。その後、冷媒は、油分離器(33)を通過後に、吐出口(13)を通ってケーシング(10)の外部へ吐出される。吐出口(13)から吐出された高圧ガス冷媒は、凝縮器へ向かって流れてゆく。

−ゲートロータに作用する力− 上述したように、ゲートロータ組立体(50)は、スクリューロータ(40)によって駆動されて回転する。スクリューロータ(40)がゲートロータ組立体(50)を駆動する力は、第2ゲートロータ(70)に作用する。また、ゲートロータ組立体(50)の各ゲートロータ(60,70)には、ケーシング(10)内の冷媒の圧力が作用する。ここでは、ゲートロータ組立体(50)の各ゲートロータ(60,70)に作用する力について説明する。

〈ゲートロータ組立体に作用する駆動力〉 図6に示すように、ゲートロータ組立体(50)は、第2ゲートロータ(70)のゲート(71)が、螺旋溝(41)の後方側壁面(43)と摺動する。従って、ゲートロータ組立体(50)は、螺旋溝(41)に入り込んでいる第2ゲートロータ(70)のゲート(71)が、スクリューロータ(40)によって押される。一方、図5に示すように、第2ゲートロータ(70)は、固定ピン(82)を介してロータ支持部材(55)に固定されている。このため、スクリューロータ(40)が第2ゲートロータ(70)を押す力(即ち、駆動力)は、固定ピン(82)を介してロータ支持部材(55)に伝わる。このため、ゲートロータ組立体(50)の全体が回転する。

〈第2ゲートロータに作用する冷媒圧力〉 図6に示すように、第1ゲートロータ(60)のゲート(61)は、前方側面(64)の第2ゲートロータ(70)側の縁部が前方シールライン(67)となり、第2ゲートロータ(70)のゲート(71)は、後方側面(75)の第1ゲートロータ(60)側の縁部が後方シールライン(77)となる。

図6において、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)のうち前方シールライン(67)及び後方シールライン(77)より下側(即ち、ゲート支持部(57)側)の部分は、低圧空間(15)及びゲートロータ室(17)に連通している。このため、第2ゲートロータ(70)の各ゲート(71)は、前方側面(74)の全体と後方側面(75)の全体とに低圧空間(15)の圧力(即ち、低圧空間(15)に存在する冷媒の圧力)が作用する。

第2ゲートロータ(70)の各ゲート(71)において、その前方側面(74)に作用する冷媒圧力はゲートロータ組立体(50)の回転方向とは逆向きに作用し、その後方側面(75)に作用する冷媒圧力はゲートロータ組立体(50)の回転方向に作用する。また、第2ゲートロータ(70)の各ゲート(71)は、前方側面(74)と後方側面(75)の長さが実質的に等しい。このため、第2ゲートロータ(70)の各ゲート(71)では、その前方側面(74)に作用する冷媒圧力に起因する力と、その後方側面(75)に作用する冷媒圧力に起因する力とが互いに打ち消し合う。

従って、第2ゲートロータ(70)には、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に入り込んだゲート(71)の後方シールライン(77)を螺旋溝(41)の後方側壁面(43)から引き離す方向の力は作用しない。このため、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に入り込んだ第2ゲートロータ(70)のゲート(71)の後方シールライン(77)と、螺旋溝(41)の後方側壁面(43)とのクリアランスが実質的にゼロに保たれる。その結果、圧縮室(37)の気密性が確保される。

〈第1ゲートロータに作用する冷媒圧力〉 図6において、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)のうち前方シールライン(67)及び後方シールライン(77)よりも上側(ゲート支持部(57)とは逆側)の部分は、冷媒が圧縮される圧縮室(37)である。このため、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に入り込んだ第1ゲートロータ(60)のゲート(61)は、前方側面(64)及び後方側面(65)のうち螺旋溝(41)の内部に位置する部分に、圧縮室(37)の圧力(即ち、圧縮室(37)に存在する冷媒の圧力)が作用する。

図7A〜図7Dに示すように、本実施形態の圧縮機構(35)では、第1ゲートロータ(60)のゲート(61)のうちの三つが、圧縮行程中または吐出工程中の圧縮室(37)に臨む。このため、第1ゲートロータ(60)をその周方向へ変位させようとする力は、これら三つのゲート(61a,61b,61c)に作用する力(FA,FB,FC)の合力となる。なお、図7A〜図7Dのそれぞれにおいて、第1ゲートロータ(60)は、反時計方向に回転する。

最初に、図7Aに示す状態の第1ゲートロータ(60)に作用する力について説明する。

ゲート(61a)は、前方側面(64)のうち図7Aに示す長さLLAの領域が螺旋溝(41)の前方側壁面(42)と対面し、後方側面(65)のうち図7Aに示す長さLTAの領域が螺旋溝(41)の後方側壁面(43)と対面する。ゲート(61a)は、前方側面(64)のうち前方側壁面(42)と対面する長さLLAの領域と、後方側面(65)のうち後方側壁面(43)と対面する長さLTAの領域とに、圧縮室(37)の圧力が作用する。図7Aに示すゲート(61a)では、長さLTAが、長さLLAよりも短い(LTA

LA)。このため、圧縮室(37)の圧力に起因してゲート(61a)に作用する力F

Aは、第1ゲートロータ(60)を図7Aにおける時計方向へ回転させる向きに作用する(F

A<0)。

ゲート(61b)は、前方側面(64)のうち図7Aに示す長さLLBの領域が螺旋溝(41)の前方側壁面(42)と対面し、後方側面(65)のうち図7Aに示す長さLTBの領域が螺旋溝(41)の後方側壁面(43)と対面する。ゲート(61b)は、前方側面(64)のうち前方側壁面(42)と対面する長さLLBの領域と、後方側面(65)のうち後方側壁面(43)と対面する長さLTBの領域とに、圧縮室(37)の冷媒圧力が作用する。図7Aに示すゲート(61b)では、長さLLBが、長さLTBと等しい(LTA=LLA)。このため、圧縮室(37)の圧力に起因してゲート(61b)に作用する力FBは、ゼロである(FB=0)。

ゲート(61c)は、前方側面(64)のうち図7Aに示す長さLLCの領域が螺旋溝(41)の前方側壁面(42)と対面し、後方側面(65)のうち図7Aに示す長さLTCの領域が螺旋溝(41)の後方側壁面(43)と対面する。ゲート(61c)は、前方側面(64)のうち前方側壁面(42)と対面する長さLLCの領域と、後方側面(65)のうち後方側壁面(43)と対面する長さLTCの領域とに、圧縮室(37)の圧力が作用する。図7Aに示すゲート(61c)では、長さLTCが、長さLLCよりも長い(LLC

TC)。このため、圧縮室(37)の圧力に起因してゲート(61c)に作用する力F

Cは、第1ゲートロータ(60)を図7Aにおける反時計方向へ回転させる向きに作用する(0

C)。

図7Aにおいて、第1ゲートロータ(60)のゲート(61)が臨む圧縮室(37)の圧力は、ゲート(61)が反時計方向へ移動するにつれて次第に上昇する。従って、ゲート(61c)が臨む圧縮室(37)の圧力PCは、ゲート(61a)が臨む圧縮室(37)の圧力PAよりも高い(PA

C)。このため、ゲート(61c)に作用する力F

Cの大きさ(力F

Cの絶対値)は、ゲート(61a)に作用する力F

Aの大きさ(力F

Aの絶対値)よりも大きい(|F

A|<|F

C|)。従って、図7Aに示す第1ゲートロータ(60)に作用する第1ゲートロータ(60)の周方向の力F(=F

A+F

B+F

C)は、第1ゲートロータ(60)を反時計方向に回転させる方向に作用する(0

次に、図7Bに示す状態の第1ゲートロータ(60)に作用する力について説明する。図7Bに示す第1ゲートロータ(60)は、図7Aに示す状態から反時計方向に回転移動している。

ゲート(61a)は、図7Aに示す状態と同様に、前方側面(64)が螺旋溝(41)の前方側壁面(42)と対面し、後方側面(65)が螺旋溝(41)の後方側壁面(43)と対面する。このゲート(61a)は、図7Aに示す状態と同様に、長さLTAが長さLLAよりも短い(LTA

LA)。このため、圧縮室(37)の圧力に起因してゲート(61a)に作用する力F

Aは、第1ゲートロータ(60)を図7Bにおける時計方向へ回転させる向きに作用する(F

A<0)。

ゲート(61b)は、図7Aに示す状態と同様に、前方側面(64)が螺旋溝(41)の前方側壁面(42)と対面し、後方側面(65)が螺旋溝(41)の後方側壁面(43)と対面する。このゲート(61b)は、図7Aに示す状態とは異なり、長さLTBが長さLLBよりも長い(LLB

TB)。このため、圧縮室(37)の圧力に起因してゲート(61b)に作用する力F

Bは、第1ゲートロータ(60)を図7Bにおける反時計方向へ回転させる向きに作用する(0

B)。

ゲート(61c)は、図7Aに示す状態と同様に、前方側面(64)が螺旋溝(41)の前方側壁面(42)と対面し、後方側面(65)が螺旋溝(41)の後方側壁面(43)と対面する。このゲート(61c)は、図7Aに示す状態と同様に、長さLTCが長さLLCよりも長い(LLC

TC)。このため、圧縮室(37)の圧力に起因してゲート(61c)に作用する力F

Cは、第1ゲートロータ(60)を図7Bにおける反時計方向へ回転させる向きに作用する(0

C)。

図7Aに示す状態と同様に、第1ゲートロータ(60)のゲート(61)が臨む圧縮室(37)の圧力は、ゲート(61)が反時計方向へ移動するにつれて次第に上昇する。従って、ゲート(61c)が臨む圧縮室(37)の圧力PCは、ゲート(61b)が臨む圧縮室(37)の圧力PBよりも高く、ゲート(61b)が臨む圧縮室(37)の圧力PBは、ゲート(61a)が臨む圧縮室(37)の圧力PAよりも高い(PA

B

C)。

ゲート(61b)に作用する力FBの大きさ(力FBの絶対値)とゲート(61c)に作用する力FCの大きさ(力FCの絶対値)の合計は、ゲート(61a)に作用する力FAの大きさ(力FAの絶対値)よりも大きい(|FA|<|FB+FC|)。従って、図7Bに示す第1ゲートロータ(60)に作用する第1ゲートロータ(60)の周方向の力F(=FA+FB+FC)は、第1ゲートロータ(60)を反時計方向に回転させる方向に作用する(0

続いて、図7C及び図7Dに示す状態の第1ゲートロータ(60)に作用する力について説明する。図7Cに示す第1ゲートロータ(60)は、図7Bに示す状態から反時計方向に回転移動している。また、図7Dに示す第1ゲートロータ(60)は、図7Cに示す状態から反時計方向に回転移動している。

ゲート(61a)は、図7Bに示す状態と同様に、前方側面(64)が螺旋溝(41)の前方側壁面(42)と対面し、後方側面(65)が螺旋溝(41)の後方側壁面(43)と対面する。このゲート(61a)は、図7Bに示す状態と同様に、長さLTAが長さLLAよりも短い(LTA

LA)。このため、圧縮室(37)の圧力に起因してゲート(61a)に作用する力F

Aは、第1ゲートロータ(60)を図7C及び図7Dにおける時計方向へ回転させる向きに作用する(F

A<0)。

ゲート(61b)は、図7Bに示す状態と同様に、前方側面(64)が螺旋溝(41)の前方側壁面(42)と対面し、後方側面(65)が螺旋溝(41)の後方側壁面(43)と対面する。このゲート(61b)は、図7Bに示す状態と同様に、長さLTBが長さLLBよりも長い(LLB

TB)。このため、圧縮室(37)の圧力に起因してゲート(61b)に作用する力F

Bは、第1ゲートロータ(60)を図7C及び図7Dにおける反時計方向へ回転させる向きに作用する(0

B)。

ゲート(61c)は、図7Bに示す状態とは異なり、前方側面(64)が螺旋溝(41)の前方側壁面(42)と対面しない一方、後方側面(65)が螺旋溝(41)の後方側壁面(43)と対面する。つまり、ゲート(61c)が臨む圧縮室(37)の圧力は、ゲート(61c)の後方側面(65)には作用するが、ゲート(61c)の前方側面(64)には作用しない。このため、圧縮室(37)の圧力に起因してゲート(61c)に作用する力FCは、第1ゲートロータ(60)を図7C及び図7Dにおける反時計方向へ回転させる向きに作用する(0

C)。

図7Bに示す状態と同様に、ゲート(61c)が臨む圧縮室(37)の圧力PCは、ゲート(61b)が臨む圧縮室(37)の圧力PBよりも高く、ゲート(61b)が臨む圧縮室(37)の圧力PBは、ゲート(61a)が臨む圧縮室(37)の圧力PAよりも高い(PA

B

C)。

ゲート(61b)に作用する力FBの大きさ(力FBの絶対値)とゲート(61c)に作用する力FCの大きさ(力FCの絶対値)の合計は、ゲート(61a)に作用する力FAの大きさ(力FAの絶対値)よりも大きい(|FA|<|FB+FC|)。従って、図7C及び図7Dに示す第1ゲートロータ(60)に作用する力F(=FA+FB+FC)は、第1ゲートロータ(60)を反時計方向に回転させる方向に作用する(0

このように、シングルスクリュー圧縮機(1)の作動中において、第1ゲートロータ(60)には、ゲートロータ組立体(50)の回転方向と同じ方向へ第1ゲートロータ(60)を回転させようとする力が、常に作用する。このため、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に入り込んだ第1ゲートロータ(60)のゲート(61)は、圧縮室(37)の圧力によって螺旋溝(41)の前方側壁面(42)側へ押され、その前方シールライン(67)と前方側壁面(42)のクリアランスが実質的にゼロに保たれる。その結果、圧縮室(37)の気密性が確保される。

−実施形態の効果1− シングルスクリュー圧縮機の運転中には、ゲートロータの温度が上昇し、ゲートロータが熱膨張するため、ゲートの幅が増加する。そして、従来のシングルスクリュー圧縮機においてゲートの幅が増加すると、スクリューロータの螺旋溝の壁面にゲートが強く押しつけられ、ゲートが急激に摩耗するおそれがある。

これに対し、本実施形態のシングルスクリュー圧縮機(1)では、ゲートロータ組立体(50)に二つのゲートロータ(60,70)が設けられている。そして、ゲートロータ組立体(50)は、ゲート(61)に前方シールライン(67)が形成された第1ゲートロータ(60)と、ゲート(71)に後方シールライン(77)が形成された第2ゲートロータ(70)とが、それぞれの周方向へ相対的に変位可能となっている。

このため、本実施形態のスクリュー圧縮機(1)では、各ゲートロータ(60,70)が熱膨張してゲート(61,71)の幅が増加した場合でも、二つのゲートロータ(60,70)が相対的に変位することによって、前方シールライン(67)から後方シールライン(77)までの距離が一定に保たれる。前方シールライン(67)から後方シールライン(77)までの距離が一定であれば、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)の側壁面(42,43)からゲート(61,71)が受ける力も実質的に変化しない。

従って、本実施形態によれば、ゲート(61,71)が熱膨張した場合でも、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)の側壁面(42,43)からゲート(61,71)が受ける力の増加を抑えることができ、熱膨張に起因するゲート(61)の摩耗を抑えることができる。そして、本実施形態によれば、ゲート(61,71)の摩耗に起因するスクリュー圧縮機(1)の性能の低下を抑えることができる。

−実施形態の効果2− シングルスクリュー圧縮機では、通常、スクリューロータの材質は金属であり、ゲートロータの材質は樹脂である。このため、シングルスクリュー圧縮機では、ゲートロータのゲートの摩耗を完全に無くすことはできない。そして、ゲートロータのゲートが摩耗すると、スクリューロータの螺旋溝の壁面とゲートのクリアランスが拡大し、圧縮室から漏れ出す冷媒の量が増加してシングルスクリュー圧縮機の性能が低下する。

これに対し、本実施形態のゲートロータ組立体(50)では、ゲート(61)に前方シールライン(67)が形成された第1ゲートロータ(60)と、ゲート(71)に後方シールライン(77)が形成された第2ゲートロータ(70)とが、それぞれの周方向へ相対的に変位可能となっている。更に、本実施形態のシングルスクリュー圧縮機(1)において、第1ゲートロータ(60)のゲート(61)は、圧縮室(37)の圧力によって、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)の前方側壁面(42)側へ押されている。

このため、ゲートロータ(60,70)のゲート(61,71)が摩耗してゲート(61,71)の幅が短くなっても、第1ゲートロータ(60)が周方向へ変位することによって、前方シールライン(67)から後方シールライン(77)までの距離が一定に保たれる。前方シールライン(67)から後方シールライン(77)までの距離が一定であれば、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)の側壁面(42,43)とゲート(61,71)のクリアランスが実質的に一定となる。

従って、本実施形態によれば、ゲートロータ(60,70)のゲート(61,71)が摩耗した状態でも、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)の側壁面(42,43)とゲート(61,71)のクリアランスを一定に保って、圧縮室(37)の気密性を高く保つことができる。その結果、スクリュー圧縮機(1)の性能を長期間に亘って高く保つことができる。

−実施形態の効果3− 本実施形態において、第2ゲートロータ(70)の各ゲート(71)は、後方側面(75)の第1ゲートロータ(60)側の縁部である後方シールライン(77)が、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)の後方側壁面(43)と摺動する。そして、第2ゲートロータ(70)の各ゲート(71)は、前方側面(74)の全体と後方側面(75)の全体とに、低圧空間(15)の圧力が作用する。

このため、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に進入した第2ゲートロータ(70)のゲート(71)では、螺旋溝(41)の後方側面(75)に作用する冷媒圧力(即ち、ゲート(71)を螺旋溝(41)の後方側壁面(43)から引き離す方向に作用する圧力)が、螺旋溝(41)の前方側面(74)に作用する冷媒圧力によって相殺される。従って、本実施形態によれば、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に進入した第2ゲートロータ(70)のゲート(71)を、螺旋溝(41)の後方側壁面(43)と確実に摺動させることができ、圧縮室(37)の気密性を確保ことができる。

−実施形態の効果4− 本実施形態では、第1ゲートロータ(60)のゲート(61)に形成された前方シールライン(67)と、第2ゲートロータ(70)のゲート(71)に形成された後方シールライン(77)とが、実質的に、ゲートロータ(60,70,)の中心軸と直交する一つの平面上に位置する。従って、本実施形態によれば、螺旋溝(41)の形状が従来と同じスクリューロータ(40)を用いることができ、シングルスクリュー圧縮機(1)の製造コストの上昇を抑えることが可能となる。

−実施形態の効果5− 図6に示すように、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に進入した第1ゲートロータ(60)のゲート(61)と、螺旋溝(41)の後方側壁面(43)の間に隙間が形成される。この隙間は、圧縮室(37)と連通しており、圧縮室(37)をゲートロータ室(17)と連通させる通路となる。そのため、この隙間が大きいと、この隙間を通って圧縮室(37)から漏れ出す流体の量が多くなり、シングルスクリュー圧縮機(1)の性能の低下を招くおそれがある。

これに対し、本実施形態のゲートロータ組立体(50)では、第1ゲートロータ(60)の厚さが、第2ゲートロータ(70)の厚さよりも薄くなっている。第1ゲートロータ(60)の厚さが薄いほど、第1ゲートロータ(60)のゲート(61)の後方側面(65)と螺旋溝(41)の後方側壁面(43)の間に形成された隙間が狭くなる。このため、第1ゲートロータ(60)を第2ゲートロータ(70)よりも薄くすれば、圧縮室(37)から漏れ出す流体の量を少なく抑えることができ、シングルスクリュー圧縮機(1)の性能を高く保つことが可能となる。

−実施形態の変形例− 図8に示すように、本実施形態のゲートロータ組立体(50)では、第1ゲートロータ(60)のゲート(61)において、その前方側面(64)の圧縮室(37)側の縁部(即ち、前方側面(64)と前面(62)の境界となる縁部)が前方シールライン(67)となっていてもよい。

本変形例において、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に進入した第1ゲートロータ(60)のゲート(61)は、後方側面(65)に圧縮室(37)の内圧が作用する一方、前方側面(64)には低圧空間(15)の圧力(即ち、低圧空間(15)に存在する冷媒の圧力)が作用する。このため、本変形例の第1ゲートロータ(60)のゲート(61)をスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)の前方側壁面(42)側に押す力は、図6に示す場合に比べて大きくなる。

以上説明したように、本発明は、シングルスクリュー圧縮機について有用である。

1 シングルスクリュー圧縮機 10 ケーシング 37 圧縮室 40 スクリューロータ 41 螺旋溝 42 前方側壁面 43 後方側壁面 50 ゲートロータ組立体 55 ロータ支持部材 60 第1ゲートロータ 61 ゲート 62 前面 63 背面 67 前方シールライン 72 前面 70 第2ゲートロータ 71 ゲート 77 後方シールライン

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