筐体のシール構造及びそれを備えた流体機械

申请号 JP2016144322 申请日 2016-07-22 公开(公告)号 JP2018013210A 公开(公告)日 2018-01-25
申请人 サンデン・オートモーティブコンポーネント株式会社; 发明人 飯塚 二郎;
摘要 【課題】Oリングを用いた筐体間のシール構造における筐体の腐食回避性能を向上させた筐体のシール構造を提供する。 【解決手段】筐体のシール構造は、シム15を介して相互に接合される固定スクロール24の接合面57とフロントハウジング4の接合面59間を、Oリング62によりシールする。シム15は、金属製の 母材 と、この母材の表面に形成され、当該母材よりも軟質の金属被膜とから成り、Oリング62より外側に 位置 し、全周に渡って設けられている。シム15の金属被膜は、接合面57、59における固定スクロール24、フロントハウジング4の面粗度を埋めうる膜厚を有する。 【選択図】図3
权利要求

シムを介して相互に接合される第1の筐体と第2の筐体の接合面間を、Oリングによりシールするシール構造において、 前記シムは、金属製の母材と、該母材の表面に形成され、当該母材よりも軟質の金属被膜とから成り、前記Oリングより外側に位置し、全周に渡って設けられていることを特徴とする筐体のシール構造。前記シムの金属被膜は、前記各筐体の接合面における面粗度を埋めうる膜厚を有することを特徴とする請求項1に記載の筐体のシール構造。前記シムは、前記各筐体の外周輪郭の近傍に位置した段差部を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の筐体のシール構造。前記第1の筐体は、前記第2の筐体よりも硬度が高く、前記シムの段差部は、前記第2の筐体に接近する方向の段差形状とされていることを特徴とする請求項3に記載の筐体のシール構造。前記母材は、鉄製であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の筐体のシール構造。前記金属被膜は、鉛、錫、アンチモン、亜鉛、ビスマス、又は、イリジウムのうちの何れかから構成されていることを特徴とする請求項5に記載の筐体のシール構造。前記金属被膜は、前記母材の全面にメッキされた錫被膜、又は、亜鉛被膜であることを特徴とする請求項6に記載の筐体のシール構造。前記第1の筐体としての圧縮ユニットと、前記第2の筐体としてのフロントハウジングをボルトにて締結し、接合して成ることを特徴とする請求項1乃至請求項7のうちの何れかに記載の筐体のシール構造を備えた流体機械。前記圧縮ユニットは、アルミニウム鍛造にて構成されており、前記フロントハウジングは、アルミニウム鋳造にて構成されていることを特徴とする請求項8に記載の流体機械。前記圧縮ユニットを構成する固定スクロール、及び、該固定スクロールに対して噛み合うように組み付けられた可動スクロールと、該可動スクロールと前記フロントハウジングとの間に設けられたスラストプレートとを備え、 前記固定スクロールと前記フロントハウジングとを前記ボルトにて締結し、接合したことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の流体機械。

说明书全文

本発明は、Oリングによりシールされる筐体の接合面への腐食の発生を回避する為の構造、及び、それを備えた流体機械に関するものである。

従来より例えばスクロール型圧縮機を構成する場合、第1の筐体としての固定スクロールを第2の筐体としてのフロントハウジングに複数のボルトにより締結して相互に接合するものであるが、内部は高圧となり、外部は大気圧となるため、両者の接合面間は通常Oリングによりシールされる(例えば、特許文献1を参照)。この場合、両筐体の接合面の面圧は、ボルト軸を受けるボルト直下に比べて、ボルトから離間した箇所では低くなるため、このような箇所では両者の間に隙間が生じる場合もあった。

また、このようなスクロール型圧縮機が車両に搭載される場合、塩(路面に散布された凍結防止剤等)による筐体の腐食が問題となる。このような腐食を回避する対策としては、筐体に塗装を施すことが従来一般的であるが、塗装による方法では塗膜に生じた僅かな凹凸や亀裂から腐食が発生すると共に、接合面の面圧が高いボルト直下ですら、両筐体の接合面の凹凸(切削目等)に沿って腐食が進行するとう問題があった。

そこで、Oリングの外方に軟質金属製の膜状の第2シール部材を配設したり(例えば、特許文献2参照)、金属板とゴム板から成るガスケットを配設してシール性を向上させる構造が提案されている(例えば、特許文献3参照)。

特開2014−202161号公報

特開2006−52811号公報

特開2002−317764号公報

特開平8−338380号公報

しかしながら、膜状の第2シール部材を設けた場合、耐冷媒ガス透過性は向上するものの、ボルトから離間した箇所の筐体間を完全にシールすることは困難であり、隙間からの腐食を回避できない。また、金属板とゴム板から成るガスケットでは厚みのバラつきが大きく、精度を重んじる圧縮機等の筐体への使用には不向きである。

一方、例えば前述したスクロール型圧縮機では、シムと称される隙間調整用のスペーサを固定スクロールとフロントハウジングとの接合面間に介装し、このシムによってフロントハウジングに対する固定スクロールの軸方向位置、即ち、可動スクロールと固定スクロールとの軸方向相対位置関係を調整していた(例えば、特許文献4参照)。

本発明は、上記の如き従来の状況を踏まえて成されたものであり、Oリングを用いた筐体間のシール構造における筐体の腐食回避性能を向上させた筐体のシール構造及びそれを用いた流体機械を提供することを目的とする。

本発明の筐体のシール構造は、シムを介して相互に接合される第1の筐体と第2の筐体の接合面間を、Oリングによりシールするものであって、シムは、金属製の母材と、この母材の表面に形成され、当該母材よりも軟質の金属被膜とから成り、Oリングより外側に位置し、全周に渡って設けられていることを特徴とする。

請求項2の発明の筐体のシール構造は、上記発明においてシムの金属被膜は、各筐体の接合面における面粗度を埋めうる膜厚を有することを特徴とする。

請求項3の発明の筐体のシール構造は、上記各発明においてシムは、各筐体の外周輪郭の近傍に位置した段差部を有することを特徴とする。

請求項4の発明の筐体のシール構造は、上記発明において第1の筐体は、第2の筐体よりも硬度が高く、シムの段差部は、第2の筐体に接近する方向の段差形状とされていることを特徴とする。

請求項5の発明の筐体のシール構造は、請求項3又は請求項4の発明において母材は、鉄製であることを特徴とする。

請求項6の発明の筐体のシール構造は、上記発明において金属被膜は、鉛、錫、アンチモン、亜鉛、ビスマス、又は、イリジウムのうちの何れかから構成されていることを特徴とする。

請求項7の発明の筐体のシール構造は、上記発明において金属被膜は、母材の全面にメッキされた錫被膜、又は、亜鉛被膜であることを特徴とする。

請求項8の発明の流体機械は、請求項1乃至請求項7の発明における第1の筐体としての圧縮ユニットと、第2の筐体としてのフロントハウジングをボルトにて締結し、接合して成ることを特徴とする。

請求項9の発明の流体機械は、上記発明において圧縮ユニットは、アルミニウム鍛造にて構成されており、フロントハウジングは、アルミニウム鋳造にて構成されていることを特徴とする。

請求項10の発明の流体機械は、請求項8又は請求項9の発明において圧縮ユニットを構成する固定スクロール、及び、この固定スクロールに対して噛み合うように組み付けられた可動スクロールと、この可動スクロールとフロントハウジングとの間に設けられたスラストプレートとを備え、固定スクロールとフロントハウジングとをボルトにて締結し、接合したことを特徴とする。

本発明によれば、シムを介して相互に接合される第1の筐体と第2の筐体の接合面間を、Oリングによりシールする筐体のシール構造において、シムを、金属製の母材と、この母材の表面に形成され、当該母材よりも軟質の金属被膜とから構成し、Oリングより外側に位置させ、全周に渡って設けたので、シムにより両筐体間の隙間を調整しながら、このシムの表面に形成された軟質の金属被膜により、各筐体の接合面の凹凸(切削目等)を全周に渡って埋めることが可能となる。

これによってOリングの外側におけるシール性が向上し、両筐体間の接合面からの塩水等の侵入を阻止して、筐体の腐食による錆がOリングに進行する不都合を効果的に回避することができるようになる。特に、シムはOリングより外側で両筐体に挟持されることになるので、両筐体の接合により各筐体に対して有効に面圧を生じさせることができるようになり、接合面における凹凸を埋め易くなる。また、係る筐体の腐食回避性能の向上に筐体間の隙間調整用のシムを兼用することができるので、部品点数を増加させることが無く、コストの高騰も最小限に抑制することができるようになる。

この場合、請求項2の発明の如くシムの金属被膜の膜厚を、各筐体の接合面における面粗度を埋めうる値とすることで、軟質の金属被膜で両筐体の接合面の凹凸(切削目等)を支障無く埋めて腐食の進行を防止することができるようになる。

また、請求項3の発明の如く各筐体の外周輪郭の近傍に位置するシムに、段差部を形成すれば、両筐体を接合するときにこの段差部が潰れることで、各筐体の外周輪郭に近い部位で、シムの反力により接触面圧を発生させることができるようになり、シムによるシール性が一段と向上する。

ここで、第1の筐体が第2の筐体よりも硬度が高いとき、請求項4の発明の如くシムの段差部を、第2の筐体に接近する方向の段差形状とすることで、より腐食が生じ易い第2の筐体側に接触面圧を生じさせることができるようになり、シムによるシール性が一層向上する。

特に、請求項5の発明の如くシムの母材を鉄製とすることで、シムにバネ性を持たせることができるので、より効果的に接触面圧を生じさせることができるようになる。尚、このようにシムの母材を鉄製とした場合には、金属被膜としては、請求項6の発明の如く鉛、錫、アンチモン、亜鉛、ビスマス、又は、イリジウムが採用可能である。特に、請求項7の発明の如く金属被膜を、母材の全面にメッキされた錫被膜、又は、亜鉛被膜とすれば、比較的使用し易い材料で軟質の金属被膜を構成することができるようになると共に、シム自体の防錆効果も向上する。

例えば、請求項8の発明の如く第1の筐体としての圧縮ユニットと、第2の筐体としてのフロントハウジングをボルトにて締結し、接合して成る流体機械では、例えば、請求項9の発明の如く圧縮ユニットがアルミニウム鍛造にて構成され、フロントハウジングはアルミニウム鋳造にて構成される。そして、圧縮ユニットを構成するアルミニウム鍛造はフロントハウジングを構成するアルミニウム鋳造よりも硬度が高いことから、本発明のシール構造は極めて有効なものとなる。

また、この場合シムは金属シールとなることから、圧縮ユニットで反応性の高いガスを圧縮する場合や、反応性の高い雰囲気となる環境で流体機械が使用される場合にも支障無く対応することができるようになる。

特に、請求項10の発明の如く流体機械が、圧縮ユニットを構成する固定スクロール、及び、この固定スクロールに対して噛み合うように組み付けられた可動スクロールと、この可動スクロールとフロントハウジングとの間に設けられたスラストプレートとを備え、固定スクロールとフロントハウジングとがボルトにて締結され、接合されたスクロール型流体機械であるときは、従来では厚さ寸法の異なるスラストプレートを選択して嵌合させることで、可動スクロールと固定スクロールとの軸方向相対位置を調整していたが、本発明の筐体のシール構造を採用することで、スラストプレートの厚さ寸法を一定とし、Oリングの外側で接合面の凹凸を埋めるシムによってフロントハウジングに対する固定スクロールの軸方向位置、即ち、可動スクロールと固定スクロールとの軸方向相対位置関係を調整することができるようになるので、生産コストの低減を図ることが可能となる。

本発明を適用した一実施形態のスクロール型圧縮機の縦断側面図である。

図1のスクロール型圧縮機の圧縮ユニットとしてのスクロールユニットを構成する固定スクロールと、フロントハウジングを模式的に示した場合のスクロールユニットの平面図である。

図2の固定スクロールとフロントハウジングを締結して接合する前の状態のA−A線断面図である。

図3のフロントハウジングの平面図である。

図4のB−B線断面図である。

図2の固定スクロールとフロントハウジング間に介設されたシムの平面図である。

図2の固定スクロールとフロントハウジングの分解斜視図である。

以下、図面に基づいて本発明の一実施形態について説明する。本発明における流体機械としての圧縮機の一実施例であるスクロール型圧縮機1は、車両の空調システムの冷媒回路に組み込まれる冷媒圧縮機であり、作動流体としての冷媒を冷媒回路から吸い込んで圧縮し、再び冷媒回路に吐出するものである。スクロール型圧縮機1内には潤滑用のオイルが封入されており、このオイルにより軸受や種々の摺動部分を潤滑する他、摺動面のシールも行う。

スクロール型圧縮機1は、リアハウジング2と、フロントハウジング4を備え、これらリアハウジング2とフロントハウジング4との間に本発明における圧縮ユニットとしてのスクロールユニット6が配置され、リアハウジング2とスクロールユニット6を構成する固定スクロール24(後述する)が複数のボルト5により相互に締結され、この固定スクロール24とフロントハウジング4が後述する如くシム15を介して複数のボルト7(図2)により相互に締結され、接合されている。

フロントハウジング4内には駆動軸8が水平配置され、この駆動軸8はスクロールユニット6側に位置した大径軸部10と、フロントハウジング4から突出した小径軸部12を有する。大径軸部10はニードル軸受14を介してフロントハウジング4に回転自在に支持され、小径軸部12はボール軸受16を介してフロントハウジング4に回転自在に支持されている。

小径軸部12の突出端には電磁クラッチ18を内蔵した駆動プーリ20が取り付けられており、この駆動プーリ20は軸受22を介してフロントハウジング4に回転自在に支持されている。駆動プーリ20には車両のエンジンの動力が図示しない駆動ベルトを介して伝達され、駆動プーリ20の回転は電磁クラッチ18を介して駆動軸8に伝達可能とされている。即ち、エンジンの駆動中、電磁クラッチ18がオン作動されると、駆動軸8は駆動プーリ20と一体的に回転する。

一方、スクロールユニット6は、リアハウジング2及びフロントハウジング4に挟持された前述した固定スクロール24と、この固定スクロール24に対して噛み合うように組み付けられた可動スクロール26を備えて構成されている。可動スクロール26は、駆動軸8に回転駆動されることにより固定スクロール24に対して公転旋回し、固定スクロール24及び可動スクロール26が噛み合って協働することにより、その内部にオイルを含む冷媒を圧縮するための圧力室である圧縮室28が形成され、この圧縮室28の容積が固定スクロール24に対する可動スクロール26の公転旋回運動に伴い増減される。

前記可動スクロール26に公転旋回運動を付与するため、可動スクロール26の基板30に突設されたボス32と駆動軸8の大径軸部10とは、クランクピン34、偏心ブッシュ36及びニードル軸受38を介して互いに連結されている。また、偏心ブッシュ36にはカウンタウエイト40が取り付けられている。そして、可動スクロール26とフロントハウジング4との間には、可動スクロール26を公転旋回可能に支持する円環状のスラストプレート42が配置されている。

また、固定スクロール24とリアハウジング2の端壁46との間には吐出室48が形成されている。固定スクロール24は圧縮室28と吐出室48とを互いに連通させる吐出孔56を有し、吐出室48には吐出孔56を開閉する吐出弁55が配置され、この吐出弁55はストッパプレート54によってその開度が規制されている。

スクロール型圧縮機1は、駆動軸8の回転に伴い、可動スクロール26が自転すること無く公転旋回運動する。このような可動スクロール26の旋回運動は、フロントハウジング4に形成された図示しない吸入ポートから圧縮室28内への冷媒の吸入工程や、吸入した冷媒の圧縮及び吐出工程をもたらし、この結果、高圧の冷媒が圧縮室28から吐出孔56、吐出室48及びリアハウジング2に形成された図示しない吐出ポートを順次経由してスクロール型圧縮機1から吐出されることになる。

次に、図2〜図7を参照しながら、上記スクロールユニット6(圧縮ユニット)の固定スクロール24とフロントハウジング4とのボルト7による締結・接合とシール構造について詳述する。尚、各図は図1のような固定スクロール24とフロントハウジング4の詳細形状では無く、それらを模式的に示している。

圧縮ユニットの実施例としてのスクロールユニット6の固定スクロール24が本発明の筐体のシール構造における第1の筐体となり、フロントハウジング4が第2の筐体となる。また、実施例の場合、スクロールユニット6(圧縮ユニット)を構成する固定スクロール24及び可動スクロール26はアルミニウム鍛造にて構成されている。一方、実施例の場合、フロントハウジング4はアルミニウム鋳造にて構成されており、従って、固定スクロール24(第1の筐体)は、フロントハウジング4(第2の筐体)よりも硬度が高い。

そして、固定スクロール24の外周部の接合面57に、ボルト7が挿通されるボルト孔58が複数形成されており、フロントハウジング4の外周部の接合面59には、固定スクロール24の各ボルト孔58の位置にそれぞれ合致して、ボルト7が螺合するボルト孔61が複数形成されている。また、このフロントハウジング4のボルト孔61の内側の接合面59には、Oリング62を収納する溝63が周方向(全周)に渡って形成されている。Oリング62はゴム等の高分子材料から構成されており、円環状を呈している。

一方、前述したシム15は隙間調整用のスペーサであり、固定スクロール24の接合面57とフロントハウジング4の接合面59間に介装される。そして、このシム15によってフロントハウジング4に対する固定スクロール24の軸方向位置、即ち、可動スクロール26と固定スクロール24との軸方向相対位置関係を調整するものである。

このシム15は、図6に示す如く円環状を呈しており、固定スクロール24とフロントハウジング4の各ボルト孔58、61の位置にそれぞれ合致して、ボルト7が挿通されるボルト孔64が複数形成されている。このシム15は図5に示す如く各ボルト孔64が各ボルト孔58、61に合致した状態で、Oリング62を収納する溝63よりも外側に位置し、即ち、シム15はOリング62の外側に位置し、全周に渡って固定スクロール24とフロントハウジング4間に介設されることになる。

また、シム15には固定スクロール24とフロントハウジング4の外周輪郭の近傍に位置するように段差部(ビード)66が周方向(全周)に渡って形成されている。そして、実施例では、この段差部66は図5に示す如く内周側から外周側に向かうに従い、フロントハウジング4に接近する方向の段差形状とされている。

このシム15は基本的に金属製であり、実施例では0.3mm程の厚みの鉄板を母材としている。そして、この鉄製の母材の全面には、当該母材(鉄)よりも軟質の金属、実施例では錫、又は、亜鉛から成る被膜(金属被膜:錫被膜、又は、亜鉛被膜)がメッキされている。尚、実施例の鉄よりも軟質の金属被膜の素材としては錫や亜鉛に限らず、例えば、鉛、アンチモン、ビスマス、イリジウムが採用可能である。そして、この金属被膜は、実施例では固定スクロール24とフロントハウジング4の各接合面57、59における面粗度を埋めうる膜厚(例えば、5ミクロン等)を有しているものとする。

以上の構成で、溝63内にOリング62を配置し、シム15をフロントハウジング4の接合面59上に配置する。このとき、段差部66が前述した如く内周側から外周側に向かうに従ってフロントハウジング4に接近すると共に、各ボルト孔64がフロントハウジング4の各ボルト孔61に合致するようにシム15を配置する。

次に、固定スクロール24の接合面57をフロントハウジング4の接合面59上のシム15に被せるかたちで重ね合わせ、固定スクロール24の各ボルト孔58をシム15及びフロントハウジング4の各ボルト孔64、61に合致させ、ボルト7を各ボルト孔58、64にそれぞれ挿通し、フロントハウジング4のボルト孔61に螺合させ、締め付けることで、シム15を介し、固定スクロール24とフロントハウジング4を締結する。

これにより、固定スクロール24とフロントハウジング4はシム15を介して相互に接合され、フロントハウジング4の接合面59に形成された溝63内のOリング62は、シム15より内側において固定スクロール24の接合面57に密接するので、固定スクロール24とフロントハウジング4の各接合面57、59間はこのOリング62の位置で先ずシールされる。

更に、シム15は鉄製であるので、そのバネ性によって段差部66は潰れて固定スクロール24とフロントハウジング4間に介在し、それらに挟持されたかたちとなる。このシム15の母材(鉄)によって固定スクロール24とフロントハウジング4間の隙間が調整されるが、シム15の母材の表面に形成された金属被膜は軟質であるので、固定スクロール24とフロントハウジング4の接合面57、59の凹凸(切削目等)を全周に渡って埋めるかたちとなる。

これによってOリング62の外側におけるシール性が向上し、固定スクロール24の接合面57とフロントハウジング4の接合面59の間からの塩水等の侵入を阻止して、固定スクロール24やフロントハウジング4の腐食による錆がOリング62に進行する不都合を効果的に回避することができるようになる。

特に、シム15はOリング62より外側で固定スクロール24とフロントハウジング4に挟持されることになるので、固定スクロール24とフロントハウジング4の接合によりそれらに対して有効に面圧を生じさせることができるようになり、接合面57、59における凹凸を埋め易くなる。また、固定スクロール24とフロントハウジング4の腐食回避性能の向上に、それらの間の隙間調整用のシム15を兼用することができるので、部品点数を増加させることが無く、コストの高騰も最小限に抑制することができるようになる。

ここで、固定スクロール24とフロントハウジング4の接合面57、59には、ミクロンレベルの凹凸(切削目等)があり、それら接合面57、59の面粗度は所定の値となっているが、シム15の金属被膜の膜厚は、固定スクロール24とフロントハウジング4の接合面57、59における係る面粗度を埋めうる値とされているので、軟質の金属被膜で固定スクロール24とフロントハウジング4の接合面57、59の凹凸を支障無く埋めて腐食の進行を防止することができるようになる。

また、シム15には固定スクロール24とフロントハウジング4の外周輪郭の近傍に位置する段差部66を形成しているので、固定スクロール24とフロントハウジング4を接合するときにこの段差部66が潰れることで、固定スクロール24とフロントハウジング4の外周輪郭に近い部位で、シム15の母材(鉄)の反力により接触面圧を発生させることができるようになり、シム15によるシール性が一段と向上する。

この場合、実施例のスクロール型圧縮機1では前述した如く固定スクロール24(第1の筐体)はアルミニウム鍛造で構成され、フロントハウジング4(第2の筐体)はアルミニウム鋳造で構成されているため、固定スクロール24はフロントハウジング4よりも硬度が高くなる。そして、実施例ではシム15の段差部66を、フロントハウジング4に接近する方向の段差形状としているので、より腐食が生じ易いフロントハウジング4側に接触面圧を生じさせ、シム15によるシール性を一層向上させることができるようになる。

特に、実施例ではシム15の母材を鉄製としているので、シム15にバネ性を持たせることができ、より効果的に接触面圧を生じさせることができるようになる。このシム15の母材を鉄製とした場合、金属被膜としては前述した鉛、錫、アンチモン、亜鉛、ビスマス、又は、イリジウムが採用可能であるが、実施例の如く金属被膜を、母材の全面にメッキされた錫被膜、又は、亜鉛被膜とすることで、比較的使用し易い材料で母材(鉄)よりも軟質の金属被膜を構成することができるようになると共に、シム15自体の防錆効果も向上する。

また、シム15は金属シールとなることから、スクロールユニット6で反応性の高いガスを圧縮する場合や、反応性の高い雰囲気となる環境でスクロール型圧縮機1が使用される場合にも支障無く対応することができるようになる。

ここで、実施例の如きスクロール型圧縮機1では、従来では厚さ寸法の異なるスラストプレート42を選択して嵌合させることで、可動スクロール26と固定スクロール24との軸方向相対位置を調整していたが、本発明によればスラストプレート42の厚さ寸法を一定とし、Oリング62の外側で接合面57、59の凹凸を埋めるシム15によってフロントハウジング4に対する固定スクロール24の軸方向位置、即ち、可動スクロール26と固定スクロール24との軸方向相対位置関係を調整することができるようになるので、生産コストの低減を図ることが可能となる。

尚、固定スクロール24とフロントハウジング4を接合したときのOリング62の潰し代に対するシム15による影響は、溝63の深さにシム15の厚さを予め反映しておくことで解消することができる。また、シム15の厚さ分、Oリング62より内側の接合面57、59間には隙間ができるが、シム15は通常0.5mm以下であるので、例えば、スクロール型圧縮機1内に冷媒を封入する際に内部が真空引きされ、大気圧でOリング62が内側に寄せられても、溝63からはみ出すことはなく、その際のシール性にも問題はない。

また、実施例ではスクロールユニットを構成する固定スクロールにフロントハウジングを締結するスクロール型圧縮機に本発明を適用したが、固定スクロールと可動スクロールを圧縮機構ハウジングに収納してスクロールユニットを構成し、この圧縮機構ハウジングとフロントハウジングとを締結する構造のスクロール型圧縮機では、スクロールユニット(圧縮ユニット)を構成する圧縮機構ハウジングが第1の筐体となる。

更に、実施例では筐体のシール構造をスクロール型圧縮機に適用したが、それに限らず、種々の金属製筐体間のシールを行う場合に請求項1乃至請求項7の発明は有効である。また、本発明を適用する流体機械は実施例のスクロール型圧縮機に限らず、斜板式の圧縮ユニットを備えた斜板式圧縮機や、ロータリ式の圧縮ユニットを備えたロータリ式圧縮機、膨張機等の流体機械にも本発明は有効である。

1 スクロール型圧縮機 4 フロントハウジング(第2の筐体) 6 スクロールユニット(圧縮ユニット、第1の筐体) 7 ボルト 15 シム 24 固定スクロール(第1の筐体) 57、59 接合面 58、61、64 ボルト孔 62 Oリング 63 溝 66 段差部

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