Screw compressor

申请号 JP2008320675 申请日 2008-12-17 公开(公告)号 JP4311500B2 公开(公告)日 2009-08-12
申请人 ダイキン工業株式会社; 发明人 モハモド アンワー ホセイン; 正典 増田; 治則 宮村;
摘要
权利要求
  • ケーシング(10)と、上記ケーシング(10)のシリンダ部(30)に挿入されて圧縮室(23)を形成するスクリューロータ(40)と、上記スクリューロータ(40)の回転軸と平行な方向へスライド可能に構成されて該スクリューロータ(40)の外周と対面する容量調節用のスライドバルブ(70)とを備え、
    上記スクリューロータ(40)が回転することによって上記圧縮室(23)へ吸入した流体が圧縮されるスクリュー圧縮機であって、
    上記スライドバルブ(70)における上記スクリューロータ(40)との対向面(66)には、該対向面(66)に接触する流体によって動圧を発生させる動圧発生部(64,65)が形成されており、
    上記スライドバルブ(70)は、上記動圧発生部(64,65)で発生した動圧によって上記スクリューロータ(40)との接触を回避するように構成されていることを特徴とするスクリュー圧縮機。
  • 請求項1において、
    上記スライドバルブ(70)では、上記スクリューロータ(40)との対向面(66)のうち該スクリューロータ(40)の回転方向の前寄りの部分に、該スクリューロータ(40)の回転方向の前側が高くなった前方段差部(64)が、上記動圧発生部として形成されていることを特徴とするスクリュー圧縮機。
  • 請求項2において、
    上記スライドバルブ(70)では、上記スクリューロータ(40)との対向面(66)のうち上記前方段差部(64)よりも該スクリューロータ(40)の回転方向の前側の部分が、上記シリンダ部(30)の内周面よりも該スクリューロータ(40)に近接していることを特徴とするスクリュー圧縮機。
  • 請求項2又は3において、
    上記スライドバルブ(70)では、上記スクリューロータ(40)との対向面(66)のうち該スクリューロータ(40)の回転方向の後ろ寄りの部分に、該スクリューロータ(40)の回転方向の前側が高くなった後方段差部(65)が、上記動圧発生部として形成されていることを特徴とするスクリュー圧縮機。
  • 請求項4において、
    上記スライドバルブ(70)では、上記スクリューロータ(40)との対向面(66)のうち上記後方段差部(65)よりも該スクリューロータ(40)の回転方向の後ろ側の部分が、上記シリンダ部(30)の内周面よりも該スクリューロータ(40)から離れていることを特徴とするスクリュー圧縮機。
  • 说明书全文

    本発明は、スクリュー圧縮機の信頼性向上策に関するものである。

    従来より、冷媒や空気を圧縮する圧縮機として、スクリュー圧縮機が用いられている。 例えば、特許文献1には、1つのスクリューロータと2つのゲートロータとを備えたシングルスクリュー圧縮機が開示されている。

    このシングルスクリュー圧縮機について説明する。 スクリューロータは、概ね円柱状に形成されており、その外周部に複数条の螺旋溝が刻まれている。 ゲートロータは、概ね平板状に形成されており、スクリューロータの側方に配置されている。 このゲートロータには、複数の長方形板状のゲートが放射状に設けられている。 ゲートロータは、その回転軸がスクリューロータの回転軸と直交する姿勢で設置され、ゲートがスクリューロータの螺旋溝と噛み合わされる。

    このシングルスクリュー圧縮機では、スクリューロータとゲートロータがケーシングに収容されており、スクリューロータの螺旋溝と、ゲートロータのゲートと、ケーシングの内壁面とによって圧縮室が形成される。 スクリューロータを電動機等で回転駆動すると、スクリューロータの回転に伴ってゲートロータが回転する。 そして、ゲートロータのゲートが、噛み合った螺旋溝の始端(吸入側の端部)から終端(吐出側の端部)へ向かって相対的に移動し、閉じきり状態となった圧縮室の容積が次第に縮小する。 その結果、圧縮室内の流体が圧縮される。

    特許文献1や特許文献2に開示されているように、スクリュー圧縮機には、容量調節用のスライドバルブが設けられている。 スライドバルブは、スクリューロータの外周に臨む位置に設けられ、スクリューロータの回転軸と平行な方向へスライド自在となっている。 一方、スクリュー圧縮機には、圧縮行程中の圧縮室と吸入側とを連通させるためのバイパス通路が形成されている。 スライドバルブが移動すると、スクリューロータが挿入されるシリンダ部の内周面におけるバイパス通路の開口面積が変化し、バイパス通路を通じて吸入側へ送り返される流体の流量が変化する。 その結果、最終的に圧縮室から圧縮されて吐出される流体の流量が変化し、スクリュー圧縮機から吐出される流体の流量(即ち、スクリュー圧縮機の容量)が変化する。

    特開2004−316586号公報

    特開2005−030361号公報

    上述したように、スライドバルブは、スクリューロータの螺旋溝によって形成される圧縮室に面している。 このため、圧縮室からの流体の漏れ量を低く抑えるには、スライドバルブとスクリューロータの隙間をできる限り狭くするのが望ましい。 ところが、スクリュー圧縮機の運転中にはスライドバルブにガス圧等の様々なが作用するため、スライドバルブが僅かに変形したり移動するおそれがある。 このため、スライドバルブとスクリューロータの隙間を狭くし過ぎると、運転中にスライドバルブの変形等が生じた際にスライドバルブがスクリューロータと接触し、焼き付き等のトラブルを招くおそれがある。 また、スライドバルブとスクリューロータの隙間を広くすれば両者の接触を回避できるが、それでは圧縮室からの流体の漏れ量が増大し、スクリュー圧縮機の効率が低下してしまう。

    本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、スライドバルブとスクリューロータの接触を回避しながら両者の隙間を狭め、スクリュー圧縮機の効率と信頼性の両方を向上させることにある。

    第1の発明は、ケーシング(10)と、上記ケーシング(10)のシリンダ部(30)に挿入されて圧縮室(23)を形成するスクリューロータ(40)と、上記スクリューロータ(40)の回転軸と平行な方向へスライド可能に構成されて該スクリューロータ(40)の外周と対面する容量調節用のスライドバルブ(70)とを備え、上記スクリューロータ(40)が回転することによって上記圧縮室(23)へ吸入した流体が圧縮されるスクリュー圧縮機を対象とする。 そして、上記スライドバルブ(70)における上記スクリューロータ(40)との対向面(66)には、該対向面(66)に接触する流体によって動圧を発生させる動圧発生部(64,65)が形成されており、上記スライドバルブ(70)は、上記動圧発生部(64,65)で発生した動圧によって上記スクリューロータ(40)との接触を回避するように構成されるものである。

    第1の発明のスクリュー圧縮機(1)では、ケーシング(10)のシリンダ部(30)にスクリューロータ(40)が挿入され、両者の間に圧縮室(23)が形成される。 スクリューロータ(40)が回転すると、圧縮室(23)へ流体が吸入されて圧縮される。 このスクリュー圧縮機(1)において、スライドバルブ(70)をスライドさせると、単位時間当たりにスクリュー圧縮機(1)から吐出される流体の量(即ち、スクリュー圧縮機(1)の容量)が変化する。 スライドバルブ(70)において、スクリューロータ(40)と向かい合う面(即ち、対向面(66))は、圧縮室(23)に臨んでいる。 このため、スライドバルブ(70)におけるスクリューロータ(40)との対向面(66)は、スクリューロータ(40)の回転に伴って移動する圧縮室(23)内の流体と接触する。

    第1の発明のスライドバルブ(70)では、スクリューロータ(40)との対向面(66)に動圧発生部(64,65)が形成される。 この動圧発生部(64,65)では、スクリューロータ(40)の回転に伴ってスライドバルブ(70)に接触する流体によって動圧が発生する。 スライドバルブ(70)には動圧発生部(64,65)で発生した動圧が作用し、その結果、スライドバルブ(70)とスクリューロータ(40)の接触が回避される。

    第2の発明は、上記第1の発明において、上記スライドバルブ(70)では、上記スクリューロータ(40)との対向面(66)のうち該スクリューロータ(40)の回転方向の前寄りの部分に、該スクリューロータ(40)の回転方向の前側が高くなった前方段差部(64)が、上記動圧発生部として形成されるものである。

    第2の発明のスライドバルブ(70)には、動圧発生部として前方段差部(64)が形成される。 前方段差部(64)では、スクリューロータ(40)の回転方向の前側が高くなっている。 このため、スクリューロータ(40)の回転に伴って移動する圧縮室(23)内の流体が前方段差部(64)に当たると動圧が発生し、この動圧がスライドバルブ(70)に作用する。 また、スライドバルブ(70)におけるスクリューロータ(40)との対向面(66)では、スクリューロータ(40)の回転方向の前寄りの部分に前方段差部(64)が形成されている。 このため、前方段差部(64)で発生した動圧は、スライドバルブ(70)のうちスクリューロータ(40)の回転方向の前寄りの部分をスクリューロータ(40)から引き離す方向へ作用する。

    第3の発明は、上記第2の発明において、上記スライドバルブ(70)では、上記スクリューロータ(40)との対向面(66)のうち上記前方段差部(64)よりも該スクリューロータ(40)の回転方向の前側の部分が、上記シリンダ部(30)の内周面よりも該スクリューロータ(40)に近接しているものである。

    第3の発明のスライドバルブ(70)では、スクリューロータ(40)の回転方向の前側に位置する部分とスクリューロータ(40)との間隔が、シリンダ部(30)とスクリューロータ(40)との間隔に比べて狭くなっている。 ここで、圧縮室(23)内の流体圧は、スクリューロータ(40)が回転するのにつれて次第に上昇してゆく。 このため、スライドバルブ(70)とスクリューロータ(40)の隙間では、スクリューロータ(40)の回転方向の前方の方が後方に比べて高い気密性が必要となる。 それに対し、この発明のスライドバルブ(70)では、スクリューロータ(40)の回転方向の前側に位置する部分とスクリューロータ(40)との間隔が狭くなっている。 このため、スライドバルブ(70)のうちスクリューロータ(40)の回転方向の前側に位置する部分とスクリューロータ(40)との隙間の気密性が、相対的に高くなる。

    第4の発明は、上記第2又は第3の発明において、上記スライドバルブ(70)では、上記スクリューロータ(40)との対向面(66)のうち該スクリューロータ(40)の回転方向の後ろ寄りの部分に、該スクリューロータ(40)の回転方向の前側が高くなった後方段差部(65)が、上記動圧発生部として形成されるものである。

    第4の発明のスライドバルブ(70)には、動圧発生部として後方段差部(65)が形成される。 つまり、このスライドバルブ(70)には、前方段差部(64)と後方段差部(65)の両方が動圧発生部として設けられる。 後方段差部(65)では、スクリューロータ(40)の回転方向の前側が高くなっている。 このため、スクリューロータ(40)の回転に伴って移動する圧縮室(23)内の流体が後方段差部(65)に当たると動圧が発生し、この動圧がスライドバルブ(70)に作用する。 また、スライドバルブ(70)におけるスクリューロータ(40)との対向面(66)では、スクリューロータ(40)の回転方向の後ろ寄りの部分に後方段差部(65)が形成されている。 このため、後方段差部(65)で発生した動圧は、スライドバルブ(70)のうちスクリューロータ(40)の回転方向の後ろ寄りの部分をスクリューロータ(40)から引き離す方向へ作用する。

    第5の発明は、上記第4の発明において、上記スライドバルブ(70)では、上記スクリューロータ(40)との対向面(66)のうち上記後方段差部(65)よりも該スクリューロータ(40)の回転方向の後ろ側の部分が、上記シリンダ部(30)の内周面よりも該スクリューロータ(40)から離れているものである。

    第5の発明では、スクリューロータ(40)の回転方向の後ろ側に位置する部分とスクリューロータ(40)との間隔が、シリンダ部(30)とスクリューロータ(40)との間隔に比べて広くなっている。 ここで、圧縮室(23)内の流体圧は、スクリューロータ(40)が回転するのにつれて次第に上昇してゆく。 このため、スライドバルブ(70)とスクリューロータ(40)の隙間では、スクリューロータ(40)の回転方向の後方の方が前方に比べて流体が漏れにくくなる。 従って、スライドバルブ(70)のうちスクリューロータ(40)の回転方向の後ろ側に位置する部分とスクリューロータ(40)との間隔が広くなっていても、スライドバルブ(70)とスクリューロータ(40)の隙間から漏れ出す流体の量は殆ど増加しない。

    本発明では、スライドバルブ(70)におけるスクリューロータ(40)との対向面(66)に設けられた動圧発生部(64,65)が、スライドバルブ(70)と接触ながら流れる圧縮室(23)内の流体によって動圧を発生させている。 そして、スライドバルブ(70)は、動圧発生部(64,65)で発生した動圧によってスクリューロータ(40)と非接触状態に保持される。 このため、スクリュー圧縮機(1)の運転中にスライドバルブ(70)の変形等が生じてスライドバルブ(70)がスクリューロータ(40)に接近しようとしても、スライドバルブ(70)には動圧発生部(64,65)で発生した動圧が作用するため、スライドバルブ(70)はスクリューロータ(40)と非接触状態に保たれる。 従って、本発明によれば、スライドバルブ(70)とスクリューロータ(40)の隙間をそれ程広く設定しなくても、スクリュー圧縮機(1)の運転中におけるスライドバルブ(70)とスクリューロータ(40)の接触を回避することができ、その結果、スクリュー圧縮機(1)の信頼性と効率の両方を向上させることができる。

    上記第2の発明では、簡素な形状の前方段差部(64)が動圧発生部としてスライドバルブ(70)に形成される。 このため、スライドバルブ(70)の構造の複雑化を抑えつつ、スライドバルブ(70)と接触する流体によって動圧を発生させることができる。 また、この発明のスライドバルブ(70)では、スクリューロータ(40)との対向面(66)のうちスクリューロータ(40)の回転方向の前寄りの部分に前方段差部(64)を形成している。 このため、スライドバルブ(70)のうちスクリューロータ(40)との接触が生じやすい部分に動圧を作用させることができ、スライドバルブ(70)とスクリューロータ(40)の接触を確実に防ぐことができる。

    上記第3の発明では、スライドバルブ(70)のうち前方段差部(64)よりもスクリューロータ(40)の回転方向の前側に位置する部分が、シリンダ部(30)の内周面よりも内側に突出している。 このため、スライドバルブ(70)のうちスクリューロータ(40)の回転方向の前側に位置する部分とスクリューロータ(40)との隙間の気密性を、動圧を発生させるための前方段差部(64)を利用して向上させることができる。 従って、この発明によれば、前方段差部(64)で生じた動圧を利用してスライドバルブ(70)とスクリューロータ(40)の接触を回避しつつ、両者の隙間を通って圧縮室(23)から漏れ出す冷媒量を削減してスクリュー圧縮機(1)の効率を向上させることができる。

    上記第4の発明のスライドバルブ(70)には、前方段差部(64)と後方段差部(65)が動圧発生部として設けられる。 上述したように、前方段差部(64)で発生した動圧は、スライドバルブ(70)のうちスクリューロータ(40)の回転方向の前寄りの部分をスクリューロータ(40)から引き離す方向へ作用する。 このため、前方段差部(64)で生じる動圧が大きくなりすぎると、スライドバルブ(70)のうちスクリューロータ(40)の回転方向の後ろ寄りの部分がスクリューロータ(40)と接触するおそれがある。 一方、後方段差部(65)で発生した動圧は、スライドバルブ(70)のうちスクリューロータ(40)の回転方向の後ろ寄りの部分をスクリューロータ(40)から引き離す方向へ作用する。 従って、この発明によれば、前方段差部(64)で生じる動圧と後方段差部(65)で生じる動圧とをバランスさせることによって、スライドバルブ(70)を確実にスクリューロータ(40)と非接触状態に保つことができる。

    以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。

    本実施形態のシングルスクリュー圧縮機(1)(以下、単にスクリュー圧縮機と言う。)は、冷凍サイクルを行う冷媒回路に設けられて冷媒を圧縮するためのものである。

    図1,図2に示すように、スクリュー圧縮機(1)は、半密閉型に構成されている。 このスクリュー圧縮機(1)では、圧縮機構(20)とそれを駆動する電動機とが1つのケーシング(10)に収容されている。 圧縮機構(20)は、駆動軸(21)を介して電動機と連結されている。 図1において、電動機は省略されている。 また、ケーシング(10)内には、冷媒回路の蒸発器から低圧のガス冷媒が導入されると共に該低圧ガスを圧縮機構(20)へ案内する低圧空間(S1)と、圧縮機構(20)から吐出された高圧のガス冷媒が流入する高圧空間(S2)とが区画形成されている。

    圧縮機構(20)は、ケーシング(10)内に形成された円筒壁(30)と、該円筒壁(30)の中に配置された1つのスクリューロータ(40)と、該スクリューロータ(40)に噛み合う2つのゲートロータ(50)とを備えている。 円筒壁(30)は、シリンダ部を構成している。 スクリューロータ(40)には、駆動軸(21)が挿通されている。 スクリューロータ(40)と駆動軸(21)は、キー(22)によって連結されている。 駆動軸(21)は、スクリューロータ(40)と同軸上に配置されている。 駆動軸(21)の先端部は、圧縮機構(20)の高圧側(図1における駆動軸(21)の軸方向を左右方向とした場合の右側)に位置する軸受ホルダ(35)に回転自在に支持されている。 この軸受ホルダ(35)は、玉軸受(36)を介して駆動軸(21)を支持している。

    図3に示すように、スクリューロータ(40)は、概ね円柱状に形成された金属製の部材である。 スクリューロータ(40)は、円筒壁(30)に回転可能に嵌合しており、その外周面が円筒壁(30)の内周面と摺接する。 スクリューロータ(40)の外周部には、スクリューロータ(40)の一端から他端へ向かって螺旋状に延びる螺旋溝(41)が複数(本実施形態では、6本)形成されている。

    スクリューロータ(40)の各螺旋溝(41)は、図3における手前側の端部が始端となり、同図における奥側の端部が終端となっている。 また、スクリューロータ(40)は、同図における手前側の端部(吸入側の端部)がテーパー状に形成されている。 図3に示すスクリューロータ(40)では、テーパー面状に形成されたその手前側の端面に螺旋溝(41)の始端が開口する一方、その奥側の端面に螺旋溝(41)の終端は開口していない。

    各ゲートロータ(50)は、樹脂製の部材である。 各ゲートロータ(50)には、長方形板状に形成された複数(本実施形態では、11枚)のゲート(51)が放射状に設けられている。 各ゲートロータ(50)は、円筒壁(30)の外側に、スクリューロータ(40)の回転軸に対して軸対称となるように配置されている。 つまり、本実施形態のスクリュー圧縮機(1)では、二つのゲートロータ(50)が、スクリューロータ(40)の回転中心軸周りに等度間隔(本実施形態では180°間隔)で配置されている。 各ゲートロータ(50)の軸心は、スクリューロータ(40)の軸心と直交している。 各ゲートロータ(50)は、ゲート(51)が円筒壁(30)の一部を貫通してスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に噛み合うように配置されている。

    ゲートロータ(50)は、金属製のロータ支持部材(55)に取り付けられている(図3を参照)。 ロータ支持部材(55)は、基部(56)とアーム部(57)と軸部(58)とを備えている。 基部(56)は、やや肉厚の円板状に形成されている。 アーム部(57)は、ゲートロータ(50)のゲート(51)と同数だけ設けられており、基部(56)の外周面から外側へ向かって放射状に延びている。 軸部(58)は、棒状に形成されて基部(56)に立設されている。 軸部(58)の中心軸は、基部(56)の中心軸と一致している。 ゲートロータ(50)は、基部(56)及びアーム部(57)における軸部(58)とは反対側の面に取り付けられている。 各アーム部(57)は、ゲート(51)の背面に当接している。

    ゲートロータ(50)が取り付けられたロータ支持部材(55)は、円筒壁(30)に隣接してケーシング(10)内に区画形成されたゲートロータ室(90)に収容されている(図2を参照)。 図2におけるスクリューロータ(40)の右側に配置されたロータ支持部材(55)は、ゲートロータ(50)が下端側となる姿勢で設置されている。 一方、同図におけるスクリューロータ(40)の左側に配置されたロータ支持部材(55)は、ゲートロータ(50)が上端側となる姿勢で設置されている。 各ロータ支持部材(55)の軸部(58)は、ゲートロータ室(90)内の軸受ハウジング(91)に玉軸受(92,93)を介して回転自在に支持されている。 なお、各ゲートロータ室(90)は、低圧空間(S1)に連通している。

    圧縮機構(20)では、円筒壁(30)の内周面と、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)と、ゲートロータ(50)のゲート(51)とによって囲まれた空間が圧縮室(23)になる。 スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)は、吸入側端部において低圧空間(S1)に開放しており、この開放部分が圧縮機構(20)の吸入口(24)になっている。

    スクリュー圧縮機(1)には、容量調節用のスライドバルブ(70)が設けられている。 このスライドバルブ(70)は、円筒壁(30)がその周方向の2カ所において径方向外側に膨出したスライドバルブ収納部(31)内に設けられている。 スライドバルブ(70)は、円筒壁(30)の軸心方向にスライド可能に構成されており、スライドバルブ収納部(31)へ挿入された状態でスクリューロータ(40)の周側面と対面する。 スライドバルブ(70)の詳細な構造は後述する。

    スライドバルブ(70)が高圧空間(S2)寄り(図1における駆動軸(21)の軸方向を左右方向とした場合の右側寄り)へスライドすると、スライドバルブ収納部(31)の端面(P1)とスライドバルブ(70)の端面(P2)との間に軸方向隙間が形成される。 この軸方向隙間は、圧縮室(23)から低圧空間(S1)へ冷媒を戻すためのバイパス通路(33)となっている。 このバイパス通路(33)は、その一端が低圧空間(S1)に連通している。 また、バイパス通路(33)の他端は、円筒壁(30)の内周面に開口可能となっている。 スライドバルブ(70)を移動させてバイパス通路(33)の開度を変更すると、圧縮機構(20)の容量が変化する。 また、スライドバルブ(70)は、圧縮室(23)と高圧空間(S2)とを連通させるための吐出口(25)が形成されている。

    上記スクリュー圧縮機(1)には、スライドバルブ(70)をスライド駆動させるためのスライドバルブ駆動機構(80)が設けられている。 このスライドバルブ駆動機構(80)は、軸受ホルダ(35)に固定されたシリンダ(81)と、該シリンダ(81)内に装填されたピストン(82)と、該ピストン(82)のピストンロッド(83)に連結されたアーム(84)と、該アーム(84)とスライドバルブ(70)とを連結する連結ロッド(85)と、アーム(84)を図1の右方向(アーム(84)をケーシング(10)から引き離す方向)に付勢するスプリング(86)とを備えている。

    図1に示すスライドバルブ駆動機構(80)では、ピストン(82)の左側空間(ピストン(82)のスクリューロータ(40)側の空間)の内圧が、ピストン(82)の右側空間(ピストン(82)のアーム(84)側の空間)の内圧よりも高くなっている。 そして、スライドバルブ駆動機構(80)は、ピストン(82)の右側空間の内圧(即ち、右側空間内のガス圧)を調節することによって、スライドバルブ(70)の位置を調整するように構成されている。

    スクリュー圧縮機(1)の運転中において、スライドバルブ(70)では、その軸方向の端面の一方に圧縮機構(20)の吸入圧が、他方に圧縮機構(20)の吐出圧がそれぞれ作用する。 このため、スクリュー圧縮機(1)の運転中において、スライドバルブ(70)には、常にスライドバルブ(70)を低圧空間(S1)側へ押す方向の力が作用する。 従って、スライドバルブ駆動機構(80)におけるピストン(82)の左側空間及び右側空間の内圧を変更すると、スライドバルブ(70)を高圧空間(S2)側へ引き戻す方向の力の大きさが変化し、その結果、スライドバルブ(70)の位置が変化する。

    スライドバルブ(70)の詳細な構造について説明する。 図4に示すように、スライドバルブ(70)は、弁体部(60)と、ガイド部(75)と、連結部(77)とによって構成されている。 このスライドバルブ(70)において、弁体部(60)の本体部(61)と、ガイド部(75)と、連結部(77)とは、1つの金属製の部材で構成されている。 つまり、弁体部(60)の本体部(61)と、ガイド部(75)と、連結部(77)とは、一体に形成されている。

    弁体部(60)は、図2にも示すように、中実の円柱の一部を削ぎ落としたような形状となっており、削ぎ落とされた部分がスクリューロータ(40)を向く姿勢でケーシング(10)内に設置されている。 弁体部(60)において、スクリューロータ(40)と向かい合う対向面(66)は、その曲率半径が円筒壁(30)の内周面の曲率半径と概ね等しい円弧面となっており、弁体部(60)の軸方向へ延びている。 また、弁体部(60)では、一方の端面が弁体部(60)の軸方向と直交する平坦面となり、他方の端面が弁体部(60)の軸方向に対して傾斜した傾斜面となっている。 この傾斜面となった弁体部(60)の他端面の傾きは、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)の傾きと同じである。

    ガイド部(75)は、断面がT字形の柱状に形成されている。 このガイド部(75)において、T字形の横棒に対応する側面(即ち、図4において手前側を向いている側面)は、その曲率半径が円筒壁(30)の内周面の曲率半径と概ね等しい円弧面となっており、軸受ホルダ(35)の外周面と摺接する摺動面(76)となっている。 スライドバルブ(70)において、ガイド部(75)は、その摺動面(76)が弁体部(60)の対向面(66)と同じ側を向く姿勢で、弁体部(60)の傾斜面となった端面から間隔をおいて配置されている。

    連結部(77)は、比較的短い柱状に形成され、弁体部(60)とガイド部(75)を連結している。 この連結部(77)は、弁体部(60)の対向面(66)やガイド部(75)の摺動面(76)とは反対側にオフセットした位置に設けられている。 そして、スライドバルブ(70)では、弁体部(60)とガイド部(75)の間の空間とガイド部(75)の背面側(即ち、摺動面(76)とは反対側)の空間とが吐出ガスの通路を形成し、弁体部(60)の対向面(66)とガイド部(75)の摺動面(76)との間が吐出口(25)となっている。

    弁体部(60)の対向面(66)には、前方段差部(64)と後方段差部(65)とが形成されている。 前方段差部(64)及び後方段差部(65)は、何れも弁体部(60)の軸方向へ延びる段差であって、動圧発生部を構成している。

    図5に示すように、弁体部(60)は、金属製の本体部(61)と、本体部(61)の表面に形成された樹脂製の被膜(62,63)とを備えている。 この弁体部(60)では、2つの段差部(64,65)が被膜(62,63)によって形成されている。 この弁体部(60)において、被膜(62,63)は、本体部(61)のうちスクリューロータ(40)と向かい合う面を覆うように形成されている。

    具体的に、本体部(61)のうちスクリューロータ(40)と向かい合う面では、図5における下端から同図における上端よりもやや下の位置に亘る領域に第1被膜(62)が形成されている。 つまり、本体部(61)のスクリューロータ(40)と向かい合う面では、同図における上端に沿った領域が所定幅に亘って露出し、残りの部分が第1被膜(62)に覆われる。 第1被膜(62)は、その膜厚が例えば5μm程度となっている。 弁体部(60)では、同図における第1被膜(62)の上端部が後方段差部(65)を構成している。

    また、図5に示すように、弁体部(60)では、第1被膜(62)の上に第2被膜(63)が形成されている。 この弁体部(60)では、第1被膜(62)の表面のうち同図における下端から所定幅に亘る領域に第2被膜(63)が形成されている。 つまり、第1被膜(62)の表面は、同図における下端に沿った領域が所定幅に亘って第2被膜(63)で覆われる。 第2被膜(63)は、その膜厚が例えば5μm程度となっている。 弁体部(60)では、同図における第2被膜(63)の上端部が前方段差部(64)を構成している。

    上述したように、弁体部(60)では、本体部(61)の表面に第1被膜(62)と第2被膜(63)が形成されている。 そして、弁体部(60)の対向面(66)は、本体部(61)の表面と、第1被膜(62)の表面と、第2被膜(63)の表面とによって構成される。 この対向面(66)では、前方段差部(64)よりも図5における下側の部分(即ち、第2被膜(63)の表面)が前方部(67)を構成し、前方段差部(64)と後方段差部(65)の間の部分(即ち、第1被膜(62)の表面のうち露出した部分)が中間部(68)を構成し、後方段差部(65)よりも同図における上側の部分(即ち、本体部(61)の表面のうち露出した部分)が後方部(69)を構成している。

    弁体部(60)の対向面(66)では、前方部(67)が中間部(68)よりも一段高くなり、中間部(68)が後方部(69)よりも一段高くなっている。 また、弁体部(60)の対向面(66)において、前方部(67)と後方部(69)とは同図の断面における幅が等しくなっている。 つまり、同図に示す弁体部(60)において、対向面(66)の下端から前方段差部(64)までの距離は、対向面(66)の上端から後方段差部(65)までの距離と等しくなっている。

    図6に示すように、スライドバルブ(70)は、弁体部(60)の対向面(66)の前方部(67)がスクリューロータ(40)の回転方向(同図における反時計方向)の前側に位置する姿勢で、ケーシング(10)のスライドバルブ収納部(31)に挿入されている。 上述したように、弁体部(60)の背面(即ち、対応面とは逆側の表面)は、円筒面となっている。 この弁体部(60)では、その背面の曲率中心軸Ovとスクリューロータ(40)の回転軸Orとを含む平面に対し、前方段差部(64)がスクリューロータ(40)の回転方向の前側に位置し、後方段差部(65)がスクリューロータ(40)の回転方向の後ろ側に位置している。

    弁体部(60)の対向面(66)では、前方部(67)の曲率半径が円筒壁(30)の内周面の曲率半径よりも僅かに小さくなり、中間部(68)及び後方部(69)の曲率半径が円筒壁(30)の内周面の曲率半径よりも僅かに大きくなっている。 また、後方部(69)の曲率半径は、中間部(68)の曲率半径よりも僅かに大きくなっている。

    前方部(67)、中間部(68)、及び後方部(69)の曲率中心が円筒壁(30)の内周面の曲率中心(即ち、スクリューロータ(40)の回転軸Or)と一致する状態において、前方部(67)は円筒壁(30)の内周面よりも内側(即ち、スクリューロータ(40)寄り)に位置し、中間部(68)及び後方部(69)は円筒壁(30)の内周面よりも外側(即ち、スクリューロータ(40)とは反対側)に位置している。 つまり、この状態において、前方部(67)とスクリューロータ(40)のクリアランスは、円筒壁(30)とスクリューロータ(40)のクリアランスよりも狭くなり、中間部(68)や後方部(69)とスクリューロータ(40)のクリアランスは、円筒壁(30)とスクリューロータ(40)のクリアランスよりも広くなっている。

    −運転動作−
    スクリュー圧縮機(1)の全体的な運転動作について、図7を参照しながら説明する。

    スクリュー圧縮機(1)において電動機を起動すると、駆動軸(21)が回転するのに伴ってスクリューロータ(40)が回転する。 このスクリューロータ(40)の回転に伴ってゲートロータ(50)も回転し、圧縮機構(20)が吸入行程、圧縮行程および吐出行程を繰り返す。 ここでは、図7においてドットを付した圧縮室(23)に着目して説明する。

    図7(A)において、ドットを付した圧縮室(23)は、低圧空間(S1)に連通している。 また、この圧縮室(23)が形成されている螺旋溝(41)は、同図の下側に位置するゲートロータ(50)のゲート(51)と噛み合わされている。 スクリューロータ(40)が回転すると、このゲート(51)が螺旋溝(41)の終端へ向かって相対的に移動し、それに伴って圧縮室(23)の容積が拡大する。 その結果、低圧空間(S1)の低圧ガス冷媒が吸入口(24)を通じて圧縮室(23)へ吸い込まれる。

    スクリューロータ(40)が更に回転すると、図7(B)の状態となる。 同図において、ドットを付した圧縮室(23)は、閉じきり状態となっている。 つまり、この圧縮室(23)が形成されている螺旋溝(41)は、同図の上側に位置するゲートロータ(50)のゲート(51)と噛み合わされ、このゲート(51)によって低圧空間(S1)から仕切られている。 そして、スクリューロータ(40)の回転に伴ってゲート(51)が螺旋溝(41)の終端へ向かって移動すると、圧縮室(23)の容積が次第に縮小する。 その結果、圧縮室(23)内のガス冷媒が圧縮される。

    スクリューロータ(40)が更に回転すると、図7(C)の状態となる。 同図において、ドットを付した圧縮室(23)は、吐出口(25)を介して高圧空間(S2)と連通した状態となっている。 そして、スクリューロータ(40)の回転に伴ってゲート(51)が螺旋溝(41)の終端へ向かって移動すると、圧縮された冷媒ガスが圧縮室(23)から高圧空間(S2)へ押し出されてゆく。

    スライドバルブ(70)を用いた圧縮機構(20)の容量調節について、図1を参照しながら説明する。 なお、圧縮機構(20)の容量とは、“単位時間当たりに圧縮機構(20)から高圧空間(S2)へ吐出される冷媒の量”を意味する。

    スライドバルブ(70)の端面(P2)がスライドバルブ収納部(31)の端面(P1)と密着した状態(即ち、スライドバルブ(70)が最も押し込まれた状態)では、圧縮機構(20)の容量が最大となる。 つまり、この状態では、バイパス通路(33)がスライドバルブ(70)の弁体部(60)によって完全に塞がれ、低圧空間(S1)から圧縮室(23)へ吸入された冷媒ガスの全てが高圧空間(S2)へ吐出される。

    一方、スライドバルブ(70)の端面(P2)がスライドバルブ収納部(31)の端面(P1)から離れた状態(即ち、スライドバルブ(70)が図1の右側へ退いた状態)になると、円筒壁(30)の内周面にバイパス通路(33)が開口する。 この状態において、低圧空間(S1)から圧縮室(23)へ吸入された冷媒ガスは、その一部が圧縮行程途中の圧縮室(23)からバイパス通路(33)を通って低圧空間(S1)へ戻り、残りが最後まで圧縮されて高圧空間(S2)へ吐出される。 そして、スライドバルブ(70)の端面(P2)とスライドバルブ収納部(31)の端面(P1)との間隔が広がると、それにつれてバイパス通路(33)を通って低圧空間(S1)へ戻る冷媒の量が増大し、高圧空間(S2)へ吐出される冷媒の量が減少する(つまり、圧縮機構(20)の容量が減少する)。

    なお、圧縮室(23)から高圧空間(S2)へ吐出される冷媒は、先ずスライドバルブ(70)に形成された吐出口(25)へ流入する。 その後、この冷媒は、スライドバルブ(70)のガイド部(75)の背面側に形成された通路を通って高圧空間(S2)へ流入する。

    スライドバルブ(70)に形成された段差部(64,65)の作用について、図6を参照しながら説明する。

    上述したように、スライドバルブ(70)では、ガイド部(75)の摺動面(76)が軸受ホルダ(35)の外周面と摺接している。 そして、スライドバルブ(70)がその軸心周りに回転しようとする動きは、ガイド部(75)が軸受ホルダ(35)と摺接することによって規制される。

    ところが、スクリュー圧縮機(1)の運転中には、スライドバルブ(70)に様々なガス圧が作用する。 例えば、ガイド部(75)には高圧空間(S2)内の高圧ガスの圧力が作用し、弁体部(60)の端面(P2)や背面には低圧空間(S1)内の低圧ガスの圧力が作用し、弁体部(60)の対向面(66)には圧縮室(23)内のガス圧が作用する。 このため、スクリュー圧縮機(1)の運転中には、スライドバルブ(70)がガス圧を受けて弾性変形し、図6に矢印で示すように、弁体部(60)がその軸心Ov周りに僅かに回転する場合がある。 弁体部(60)の対向面(66)とスクリューロータ(40)のクリアランスは極めて微小であるため、弁体が僅かに回転しただけでも、弁体部(60)がスクリューロータ(40)と接触するおそれがある。 なお、図6では、弁体部(60)の対向面(66)とスクリューロータ(40)のクリアランスが誇張して図示されている。

    それに対し、本実施形態のスライドバルブ(70)では、弁体部(60)の対向面(66)に、スクリューロータ(40)の回転方向の前側が一段高くなった段差部(64,65)が形成されている。 弁体部(60)の対向面(66)は圧縮室(23)内のガス冷媒と接触しており、圧縮室(23)を形成するスクリューロータ(40)は図6における反時計方向へ回転している。 このため、弁体部(60)では、段差部(64,65)に向かって圧縮室(23)内のガス冷媒が吹き付けられることになり、この段差部(64,65)に当たったガス冷媒の運動エネルギが圧力に変換される。 つまり、各段差部(64,65)では、ガス冷媒によって動圧が発生する。 そして、各段差部(64,65)で発生した動圧が弁体部(60)に作用し、弁体部(60)とスクリューロータ(40)の接触が回避される。

    例えば、スライドバルブ(70)にガス圧が作用することで弁体部(60)が図6(A)における反時計方向へ僅かに回転すると、対向面(66)の前方部(67)がスクリューロータ(40)に接近する。 一方、弁体部(60)の対向面(66)には、スクリューロータ(40)の回転方向の前側が一段高くなった前方段差部(64)が形成されており、この前方段差部(64)で動圧が発生する。 前方段差部(64)は、弁体部(60)の軸心Ovに対してスクリューロータ(40)の回転方向の前側に位置している。 このため、前方段差部(64)で発生した動圧が弁体部(60)に作用すると、弁体部(60)を図6(A)の時計方向へ回転させようとするモーメントが発生する。 その結果、同図の反時計方向へ回転しようとする弁体部(60)は、前方段差部(64)で発生した動圧によって同図の時計方向へ押し返され、弁体部(60)とスクリューロータ(40)の間隔が保たれる。

    また、前方段差部(64)で発生する動圧が大きすぎると、弁体部(60)の時計方向への回転角度が大きくなり過ぎ、図6(B)に示すように、対向面(66)の後方部(69)がスクリューロータ(40)に接近し過ぎる可能性がある。 それに対し、弁体部(60)の対向面(66)には、スクリューロータ(40)の回転方向の前側が一段高くなった後方段差部(65)が形成されており、この後方段差部(65)で動圧が発生する。 後方段差部(65)は、弁体部(60)の軸心Ovに対してスクリューロータ(40)の回転方向の後ろ側に位置している。 このため、後方段差部(65)で発生した動圧が弁体部(60)に作用すると、弁体部(60)を図6(B)の反時計方向へ回転させようとするモーメントが発生する。 その結果、同図の時計方向へ回転しようとする弁体部(60)は、後方段差部(65)で発生した動圧によって同図の反時計方向へ押し返され、弁体部(60)とスクリューロータ(40)の間隔が保たれる。

    −実施形態の効果−
    本実施形態のスライドバルブ(70)では、対向面(66)に動圧発生部として形成された段差部(64,65)が、この対向面(66)と接触ながら流れる圧縮室(23)内のガス冷媒によって動圧を発生させている。 そして、スライドバルブ(70)は、段差部(64,65)で発生した動圧によってスクリューロータ(40)と非接触状態に保持される。 このため、スクリュー圧縮機(1)の運転中にスライドバルブ(70)の変形等が生じてスライドバルブ(70)がスクリューロータ(40)に接近しようとしても、スライドバルブ(70)には段差部(64,65)で発生した動圧が作用するため、スライドバルブ(70)はスクリューロータ(40)と非接触状態に保たれる。

    従って、本実施形態によれば、スライドバルブ(70)とスクリューロータ(40)の隙間をそれ程広く設定しなくても、スクリュー圧縮機(1)の運転中におけるスライドバルブ(70)とスクリューロータ(40)の接触を回避することができ、その結果、スクリュー圧縮機(1)の信頼性と効率の両方を向上させることができる。

    また、本実施形態のスライドバルブ(70)では、弁体部(60)の対向面(66)のうちスクリューロータ(40)の回転方向の前寄りの部分に前方段差部(64)を形成している。 このため、スライドバルブ(70)のうちスクリューロータ(40)との接触が生じやすい部分に動圧を作用させることができ、スライドバルブ(70)とスクリューロータ(40)の接触を確実に防ぐことができる。

    上述したように、前方段差部(64)で発生した動圧は、スライドバルブ(70)のうちスクリューロータ(40)の回転方向の前寄りの部分をスクリューロータ(40)から引き離す方向(図6における時計方向)のモーメントを発生させる。 このため、前方段差部(64)で生じる動圧が大きくなりすぎると、スライドバルブ(70)のうちスクリューロータ(40)の回転方向の後ろ寄りの部分がスクリューロータ(40)と接触するおそれがある。

    それに対し、本実施形態のスライドバルブ(70)には、前方段差部(64)と後方段差部(65)の両方が動圧発生部として設けられる。 後方段差部(65)で発生した動圧は、スライドバルブ(70)のうちスクリューロータ(40)の回転方向の後ろ寄りの部分をスクリューロータ(40)から引き離す方向(図6における反時計方向)のモーメントを発生させる。 従って、本実施形態によれば、前方段差部(64)で生じる動圧と後方段差部(65)で生じる動圧とをバランスさせることによって、スライドバルブ(70)を確実にスクリューロータ(40)と非接触状態に保つことができる。

    また、本実施形態のスライドバルブ(70)では、弁体部(60)の対向面(66)の前方部(67)が円筒壁(30)の内周面よりも内側に突出している。 このため、弁体部(60)における対向面(66)の前方部(67)とスクリューロータ(40)とクリアランスを、動圧を発生させるための前方段差部(64)を利用して狭めることができ、その結果、対向面(66)の前方部(67)とスクリューロータ(40)の隙間の気密性を向上させることができる。 従って、本実施形態によれば、前方段差部(64)で生じた動圧を利用してスライドバルブ(70)とスクリューロータ(40)の接触を回避しつつ、両者の隙間を通って圧縮室(23)から漏れ出す冷媒量を削減してスクリュー圧縮機(1)の効率を向上させることができる。

    −実施形態の変形例1−
    上記実施形態のスライドバルブ(70)では、弁体部(60)に形成された各段差部(64,65)の高さが共に同じ値(約5μm)となっているが、これら段差部(64,65)の高さは互いに相違していてもよい。 例えば、弁体部(60)を図6の時計方向へ回転させようとするモーメントを反時計方向へ回転させようとするよりも大きくしたい場合は、前方段差部(64)を後方段差部(65)よりも高くすればよい。

    また、上記実施形態のスライドバルブ(70)では、弁体部(60)の軸心Ovから各段差部(64,65)までの距離が等しくなっているが、弁体部(60)の軸心Ovからの距離が段差部(64,65)毎に相違していてもよい。 例えば、弁体部(60)を図6の時計方向へ回転させようとするモーメントを反時計方向へ回転させようとするよりも大きくしたい場合は、弁体部(60)の軸心Ovから前方段差部(64)までの距離を、弁体部(60)の軸心Ovから後方段差部(65)までの距離よりも長くすればよい。

    このように、スライドバルブ(70)の弁体部(60)において、各段差部(64,65)の高さや弁体部(60)の軸心Ovから各段差部(64,65)までの距離は、弁体部(60)をスクリューロータ(40)と非接触状態に保つために弁体部(60)に作用させるべきモーメントの大きさや向きに応じて、適宜設定されるものである。 そして、場合によっては、弁体部(60)に前方段差部(64)だけを設ければ弁体部(60)とスクリューロータ(40)の接触を回避できることも有り得る。

    −実施形態の変形例2−
    上記実施形態のスライドバルブ(70)では、弁体部(60)の対向面(66)に樹脂製の被膜(62,63)を形成することによって段差部(64,65)を形成しているが、それ以外の手法を用いて弁体部(60)に段差部(64,65)を形成してもよい。 例えば、弁体部(60)の対向面(66)に切削や研磨などの機械加工を施すことで、弁体部(60)に段差部(64,65)を形成してもよい。

    なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。

    以上説明したように、本発明は、シングルスクリュー圧縮機について有用である。

    シングルスクリュー圧縮機の要部の構成を示す縦断面図である。

    図1のII−II線における横断面図である。

    シングルスクリュー圧縮機の要部を抜き出して示す斜視図である。

    スライドバルブの斜視図である。

    スライドバルブの弁体部の概略断面図である。

    シングルスクリュー圧縮機の要部を拡大して示す概略断面図であって、(A)はスライドバルブのうちスクリューロータの回転方向の前側部分がスクリューロータに近接した状態を示し、(B)はスライドバルブのうちスクリューロータの回転方向の後ろ側部分がスクリューロータに近接した状態を示す。

    シングルスクリュー圧縮機の圧縮機構の動作を示す平面図であって、(A)は吸込行程を示し、(B)は圧縮行程を示し、(C)は吐出行程を示す。

    符号の説明

    1 シングルスクリュー圧縮機
    10 ケーシング
    23 圧縮室
    30 円筒壁(シリンダ部)
    40 スクリューロータ
    64 前方段差部(動圧発生部)
    65 後方段差部(動圧発生部)
    66 対向面
    70 スライドバルブ

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