Vacuum pump

申请号 JP2005368241 申请日 2005-12-21 公开(公告)号 JP4821308B2 公开(公告)日 2011-11-24
申请人 株式会社島津製作所; 发明人 正幹 大藤; 純一郎 小崎; 義夫 綱澤; 彰 荒川;
摘要
权利要求
  • ステータに対してロータを回転することによりガスを排気する真空ポンプにおいて、
    前記ロータ上のロータ回転軸を中心とした円周上に配設され、前記ロータの温度監視範囲内にキュリー温度を有する単数または複数の磁性体と、
    前記ロータ上の前記円周と対向するように隙間を設けて配設され、前記ロータの回転に伴って順に対向する前記磁性体の透磁率変化を、インダクタンス変化として検出するインダクタンス検出部と、
    前記インダクタンス検出部に供給する搬送波信号を生成する搬送波生成手段と、
    前記搬送波生成手段による搬送波生成と同期して前記インダクタンス検出部の検出信号をサンプリングし、前記検出信号をデジタル信号に変換するA/D変換手段と、
    前記A/D変換手段からのデジタル信号が入力され、前記インダクタンス検出部により検出される前記磁性体の透磁率変化に基づいて、前記ロータの温度が所定温度を越えたか否かを判定する判定手段とを備え、
    前記A/D変換手段によるサンプリング周波数fsが、前記搬送波生成手段によって生成される搬送波の周波数fcに対してfs=fc/nを満たすとともに、前記ロータの最大回転周波数frotmaxに対してfs≧frotmaxを満たすことを特徴とする真空ポンプ。 ただし、n=1/2、または、n=1,2,4,8,…である
  • 請求項1に記載の真空ポンプにおいて、
    前記ロータが1回転する間において、前記インダクタンス検出部で検出すべき検出の点数をfdivとしたときに、前記サンプリング周波数fsがfs≧frotmax×fdivを満たすことを特徴とする真空ポンプ。
  • 請求項1または2に記載の真空ポンプにおいて、
    前記検出手段が前記磁性体に対向する対向区間に関して、前記A/D変換手段のサンプリングにより得られる信号を前記ロータが複数回転する間に取得し、その取得された信号を平均化処理して前記対向区間の信号とする平均化手段を備え、
    前記判定手段は、前記平均化手段により平均化処理された信号に基づいて前記判定を行うことを特徴とする真空ポンプ。
  • 請求項1または2に記載の真空ポンプにおいて、
    前記ロータの前記円周上に配設され、前記温度監視範囲よりも高温側にキュリー温度を有する基準磁性体と、
    前記単数または複数の磁性体が前記インダクタンス検出部に対向したときの 検出信号を前記A/D変換手段で変換した第1信号と、前記基準磁性体が前記インダクタンス検出部に対向したときの 検出信号を前記A/D変換手段で変換した第2信号との 差分信号を生成する差分生成手段とをさらに備え、
    前記判定手段は、 前記差分信号に基づいて前記ロータの温度が所定温度を越えたか否かを判定することを特徴とする真空ポンプ。
  • 請求項1または2に記載の真空ポンプにおいて、
    前記ロータの前記円周上に前記インダクタンス検出部との各々の距離が異なるように設けられ、前記温度監視範囲よりも高温側にキュリー温度を有する一対の基準磁性体と、
    前記単数または複数の磁性体が前記インダクタンス検出部に対向したときの 検出信号を前記A/D変換手段で変換した第1信号を、前記一対の基準磁性体が前記インダクタンス検出部に対向したとき の各検出信号を前記A/D変換手段で変換した第2および第3信号の間の差分により補正し、その結果を補正後検出信号として出力する信号補正手段と をさらに備え、
    前記判定手段は、 前記補正後検出信号に基づいて前記ロータの温度が所定温度を越えたか否かを判定することを特徴とする真空ポンプ。
  • 請求項4または5に記載の真空ポンプにおいて、
    前記差分信号または前記補正後検出信号の微分演算を行う微分演算手段を備え、
    前記判定手段は、前記微分演算手段の演算結果が所定値以下か否かによって、前記ロータの温度が所定温度を越えたか否かを判定することを特徴とする真空ポンプ。
  • 請求項1〜6のいずれか一項に記載の真空ポンプにおいて、
    前記インダクタンス検出部の検出特性の非線形性を補正する補正パラメータで、前記インダクタンス検出部の検出信号を補正する非線形補正手段を備え、
    前記インダクタンス検出部の検出信号に代えて、前記非線形補正手段で補正された検出信号を用いることを特徴とする真空ポンプ。
  • 说明书全文

    本発明は、磁性体のキュリー温度を利用してロータ温度を判定する真空ポンプに関する。

    ターボ分子ポンプでは、ロータ材料としてアルミ合金が一般的に用いられている。 アルミ合金はクリープ変形の許容温度が比較的低い温度(約110℃〜120℃)であるため、ポンプ運転時にはロータ温度がこの許容温度以下になるように常に監視する必要がある。 そのため、強磁性体の透磁率がキュリー温度において大きく変化することを利用して、ロータ温度を非接触で検出する方法も知られている(例えば、特許文献1参照)。 この従来の方法では、リング状の強磁性体をロータ外周に装着し、キュリー温度における強磁性体の透磁率変化をインダクタンス検出用コイルにより検出するようにしている。

    特開平7−5051号公報

    ところで、コイルに印加する搬送波信号が低いと、透磁率の急激な変化や磁性体同士の隙間によりセンサ信号に乱れが生じやすく、これを防止するためには、一般的に搬送波信号を高く設定する必要がある。 一方、デジタル化の際のサンプリング定理を満たすためには、搬送波信号が高くなるとサンプリング周波数も高くする必要がある。 しかしながら、サンプリング周波数を高くすると、低周波数動作のDSPやCPUでは処理できない場合があり、高周波数対応の高価なDSPやCPUを用いるためにコストアップ要因となっていた。

    請求項1の発明は、ステータに対してロータを回転することによりガスを排気する真空ポンプに適用され、ロータ上のロータ回転軸を中心とした円周上に配設され、前記ロータの温度監視範囲内にキュリー温度を有する単数または複数の磁性体と、ロータ上の前記円周と対向するように隙間を設けて配設され、ロータの回転に伴って順に対向する磁性体の透磁率変化を、インダクタンス変化として検出するインダクタンス検出部と、インダクタンス検出部に供給する搬送波信号を生成する搬送波生成手段と、搬送波生成手段による搬送波生成と同期してインダクタンス検出部の検出信号をサンプリングし、検出信号をデジタル信号に変換するA/D変換手段と、A/D変換手段からのデジタル信号が入され、インダクタンス検出部により検出される磁性体の透磁率変化に基づいて、ロータの温度が所定温度を越えたか否かを判定する判定手段とを備え、A/D変換手段によるサンプリング周波数fsが、搬送波生成手段によって生成される搬送波の周波数fcに対してfs=fc/nを満たすとともに、ロータの最大回転周波数frotmaxに対してfs≧frotmaxを満たすことを特徴とする真空ポンプ。 ただし、n=1/2、または、n=1,2,4,8,…である。
    請求項2の発明は、請求項1に記載の真空ポンプにおいて、ロータが1回転する間において、インダクタンス検出部で検出すべき検出の点数をfdivとしたときに、サンプリング周波数fsがfs≧frotmax×fdivを満たすようにしたものである。
    請求項3の発明は、請求項1または2に記載の真空ポンプにおいて、検出手段が磁性体に対向する対向区間に関して、A/D変換手段のサンプリングにより得られる信号をロータが複数回転する間に取得し、その取得された信号を平均化処理して対向区間の信号とする平均化手段を備え、判定手段は、平均化手段により平均化処理された信号に基づいて判定を行う。
    請求項4の発明は、請求項1または2に記載の真空ポンプにおいて、ロータの円周上に配設され、温度監視範囲よりも高温側にキュリー温度を有する基準磁性体と単数または複数の磁性体がインダクタンス検出部に対向したときの検出信号をA/D変換手段で変換した第1信号と、基準磁性体がインダクタンス検出部に対向したときの検出信号をA/D変換手段で変換した第2信号との差分信号生成する差分生成手段とをさらに備え、判定手段は、 差分信号に基づいてロータの温度が所定温度を越えたか否かを判定する。
    請求項5の発明は、請求項1または2に記載の真空ポンプにおいて、ロータの円周上にインダクタンス検出部との各々の距離が異なるように設けられ、温度監視範囲よりも高温側にキュリー温度を有する一対の基準磁性体と単数または複数の磁性体がインダクタンス検出部に対向したときの検出信号をA/D変換手段で変換した第1信号を、一対の基準磁性体がインダクタンス検出部に対向したときの各検出信号をA/D変換手段で変換した第2および第3信号の間の差分により補正し、その結果を補正後検出信号として出力する信号補正手段とをさらに備え、判定手段は、 補正後検出信号に基づいてロータの温度が所定温度を越えたか否かを判定する。
    請求項6の発明は、請求項4または5に記載の真空ポンプにおいて、差分信号または補正後検出信号の微分演算を行う微分演算手段を備え、判定手段は、微分演算手段の演算結果が所定値以下か否かによって、ロータの温度が所定温度を越えたか否かを判定する。
    請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の真空ポンプにおいて、インダクタンス検出部の検出特性の非線形性を補正する補正パラメータで、インダクタンス検出部の検出信号を補正する非線形補正手段を備え、インダクタンス検出部の検出信号に代えて非線形補正手段で補正された検出信号を用いるようにしたものである。

    本発明によれば、磁性体のキュリー温度を利用してロータ温度を判定する真空ポンプにおいて、コストアップを抑えつつ、温度判定精度の向上を図ることができる。

    以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
    −第1の実施の形態−
    図1は本発明による真空ポンプの第1の実施の形態を示す図であり、磁気軸受式ターボ分子ポンプのポンプ本体1とコントローラ30の概略構成を示したものである。 ロータ2が取り付けられたシャフト3は、ベース4に設けられた電磁石51,52,53によって非接触支持されている。 シャフト3の浮上位置は、ベース4に設けられたラジアル変位センサ71,72およびアキシャル変位センサ73によって検出される。 ラジアル磁気軸受を構成する電磁石51,52と、アキシャル磁気軸受を構成する電磁石53と、変位センサ71〜73とで5軸制御型磁気軸受が構成される。

    シャフト3の下端には円形のディスク41が設けられており、このディスク41を上下に挟むように電磁石53が設けられている。 この電磁石53によりディスク41を吸引することにより、シャフト3がアキシャル方向に浮上する。 ディスク41はナット42によりシャフト3の下端部に固定されており、シャフト3と一体で回転する。 ナット42には磁性体ターゲット81,82が設けられている。

    ナット42と対向するステータ側には、磁性体ターゲット81,82と対向する位置にギャップセンサ44が設けられている。 ギャップセンサ44は、インダクタンス式のギャップセンサであって、ロータ温度が許容温度以上に上昇したときの磁性体ターゲット81,82の透磁率変化を、インダクタンス変化として検出するものである。 ここでは、ロータ2,シャフト3およびナット42等が設けられた回転体の温度を、ロータ温度と呼ぶことにする。

    ロータ2には、回転軸方向に沿って複数段の回転翼8が形成されている。 上下に並んだ回転翼8の間には固定翼9がそれぞれ配設されている。 これらの回転翼8と固定翼9とにより、ポンプ本体1のタービン翼段が構成される。 各固定翼9は、スペーサ10によって上下に挟持されるように保持されている。 スペーサ10は、固定翼9の保持機能とともに、固定翼9間のギャップを所定間隔に維持する機能を有している。

    さらに、固定翼9の後段(図示下方)にはドラッグポンプ段を構成するネジステータ11が設けられており、ネジステータ11の内周面とロータ2の円筒部12との間にはギャップが形成されている。 ロータ2およびスペーサ10によって保持された固定翼9は、吸気口13aが形成されたケーシング13内に納められている。 ロータ2が取り付けられたシャフト3を電磁石51〜53により非接触支持しつつモータ6により回転駆動すると、吸気口13a側のガスは矢印G1のように背圧側(空間S1)に排気される。 背圧側に排気されたガスは、排気口26に接続された補助ポンプにより排出される。

    ターボ分子ポンプ本体1は、コントローラ30によって駆動制御される。 コントローラ30には、磁気軸受を駆動制御する磁気軸受駆動制御部32およびモータ6を駆動制御するモータ駆動制御部33が設けられている。 検出部31は、上述したギャップセンサ44の出力信号に基づいて、磁性体ターゲット81,82の透磁率が変化したか否かを検出する。

    検出部31にはギャップセンサ44の出力信号が入力され、検出部31はロータ温度モニタ信号をモータ駆動制御部33および警報部34に出力する。 もちろん、ロータ温度モニタ信号をコントローラ30の外部に出力できる出力端子を設けるようにしても良い。 警報部34はロータ温度異常などの警報情報をオペレータに提示する警報手段であり、警告音を発生するスピーカや警告を表示する表示装置などにより構成される。

    図2(a)はシャフト下端部分のナット42とギャップセンサ44とを示す斜視図であり、図2(b)はギャップセンサ44側から見たナット42の平面図である。 ナット42の底面側には磁性体ターゲット81,82が、接着や焼き嵌め等によって埋め込まれている。 ナット42がシャフト3とともに高速回転すると磁性体ターゲット81,82に遠心力が作用するが、磁性体ターゲット81,82をシャフト3の端面部分に設けて回転体の軸近傍に配設することにより、遠心力の影響を低減することができる。 特に、磁性体ターゲット81,82を焼き嵌めした場合には、焼き嵌め時に加熱したナット42が冷えて収縮した際に磁性体ターゲット81,82に圧縮応力が働き、遠心力の影響を低減効果が高くなる。

    磁性体ターゲット81,82の材料には、検出したい温度域すなわち温度監視範囲にキュリー温度を有する材料が選ばれる。 一般的には、ロータ2(図1参照)に用いられるアルミ材のクリープ変形の許容上限温度Tmax(約110℃〜120℃)とほぼ同一か、または、それに近い温度を有する磁性材料が用いられる。 温度監視範囲としては、許容上限温度Tmaxの前後20℃程度の温度範囲が設定される。 キュリー温度Tcが120℃程度の磁性体材料としては、ニッケル・亜鉛フェライトやマンガン・亜鉛フェライト等がある。 なお、ここでは、磁性体ターゲット81,82に同一材料を用いているが、キュリー温度の異なる材料を用いて、2種類の温度を検出できるようにしても良い。

    磁性体ターゲット81,82の露出面はナット42の底面と同一平面となっており、磁性体ターゲット81,82が固定されているナット底面(以下では固定面と称する)42aとギャップセンサ44との隙間は1mm程度に設定されている。 ここでは、ナット42の材料には磁性体である純鉄が用いられるが、そのキュリー温度は、ここで問題としている許容温度110℃〜120℃よりも十分高く、温度監視範囲の高温側にある。

    《インダクタンス変化検出動作の説明》
    図3はギャップセンサ44のインダクタンス変化を説明する図であり、ギャップセンサ44と検出部31の詳細を示すブロック図である。 ギャップセンサ44の構造は、珪素鋼板などの透磁率の大きなコアの周囲にコイルを巻いたものである。 ギャップセンサ44のコイルには搬送波信号として一定周波数・一定電圧の高周波電圧が印加され、その結果、ギャップセンサ44と磁性体ターゲット81,82が設けられたナット42との間に磁気回路が形成される。

    図4(a)は、典型的な磁性体であるフェライトの場合の透磁率変化を示したものであり、磁性体ターゲット81も同様な性質を有している。 常温における透磁率はキュリー温度Tc付近の透磁率よりも低く、温度上昇とともに上昇してキュリー温度Tcを越えると急激に低下する。 ロータ温度上昇により磁性体ターゲット81の温度が上昇してキュリー温度Tcを越えると、図4(a)に示すように、磁性体ターゲット81の透磁率が真空の透磁率μ 程度まで急激に低下する。 ギャップセンサ44が形成する磁界中で磁性体ターゲット81の透磁率が変化すると、図4(b)のようにギャップセンサ44のインダクタンスが変化することになる。

    ギャップセンサ44のコア材料はフェライト等の磁性体が用いられるが、この透磁率がエアギャップの透磁率に比べてそれを無視できる程度に大きく、また、漏れ磁束が無視できる場合には、インダクタンスLと寸法d,d との関係は近似的に次式(1)のように表される。
    L=N /{d /(μ ・S)+d/(μ ・S)} …(1)
    なお、Nはコイルの巻き数、Sは磁性体ターゲット81と対向するコアの断面積、dはエアギャップ、d は磁性体ターゲット81の厚さ、μ は磁性体ターゲット81の透磁率であり、エアギャップの透磁率は真空の透磁率μ に等しいとする。

    ロータ温度(磁性体ターゲット81の温度と等しいとして考える)がキュリー温度Tcよりも低い温度のときには、磁性体ターゲット81の透磁率は真空の透磁率に比べて十分に大きい。 そのため、d /(μ ・S)はd/(μ ・S)に比べて無視できるほどに小さくなり、式(1)は次式(2)のように近似できる。
    L=N ・μ ・S/d …(2)

    一方、ロータ温度がキュリー温度Tcよりも上昇すると、近似的にμ =μ となる。 そのため、式(1)は次式(3)のように表される。
    L=N ・μ ・S/(d+d ) …(3)
    すなわち、エアギャップがdから(d+d )に変化したことに相当し、それに応じてギャップセンサ44のインダクタンスが変化することになる。

    ギャップセンサ44のコイルには、例えば、数十kHzの搬送波信号が印加され、インダクタンス変化により搬送波信号が振幅変調される。 振幅変調された搬送波信号はセンサ回路311により検出される。 そして、センサ回路311から出力されたセンサ信号は、A/D変換部312によりデジタル信号に変換された後、検波・整流部313において検波処理および整流処理される。 その結果、振幅変調された搬送波信号から振幅を取り出した信号が得られる。

    図5は検波・整流部313から出力される信号の一例を示したものであり、(a)は磁性体ターゲット81,82の温度TがT<Tcの場合で、(b)は磁性体ターゲット81,82の温度TがT>Tcの場合を示す。 図2に示すように、ナット42には2つの磁性体ターゲット81,82が設けられているので、シャフト3が1回転すると、ギャップセンサ44は、磁性体ターゲット81、固定面42a、ターゲット82、固定面42aの順に対向することになる。 T<Tcの場合、ギャップセンサ44が固定面42aと対向したときの信号S1、磁性体ターゲット81と対向したときの信号S2、固定面42aと対向したときの信号S1、磁性体ターゲット82と対向したときの信号S2が順に出力される。

    図5(a)に示す例では、T<Tcのときのナット42の透磁率と磁性体ターゲット81,82の透磁率とはほぼ等しく、信号S1,S2のレベルはほぼ等しい。 いずれの信号S1,S2も閾値よりも大きな値となっている。 一方、図5(b)はT>Tcの場合を示したものであり、磁性体ターゲット81の透磁率は小さくなり、ターゲット81区間における信号S2'は閾値よりも小さくなる。 図3のコンパレータ314は、検波・整流部313から出力された信号のレベルと、基準信号として入力される閾値信号のレベルとを比較し、その結果をロータ温度モニタ信号として出力する。 例えば、図5(b)のように、信号S2'のレベルが閾値レベルより小さくなったならば、信号を出力する。

    《サンプリング周波数についての説明》
    ところで、搬送波信号をA/D変換して図5のような信号を取得する場合、搬送波周波数が低いと、磁性体ターゲット81,82の境界付近における透磁率の急激な変化や、磁性体ターゲット81,82とナット42との隙間等の影響により、図6(a)に示すように、センサ出力が大きくばらつく。 一般的に、このようなばらつきを防止するためには、搬送波周波数を高く設定する必要がある。 その場合、サンプリング速度(サンプリング周波数)も大きくする必要があり、デジタル化された信号の処理を行うDSP(ディジタルシグナルプロセッサ)やCPUへの負荷が重くなる。 そのため、高速なDSPやCPUが必要になり、コストアップを招くという問題があった。

    そこで、本実施の形態では、搬送波周波数fcとサンプリング周波数fsとの関係を、次式(4)のように設定することにより、サンプリング周波数fsの低減および処理負荷の低減を図るようにした。
    fs=fc/n …(4)
    ただし、n=1/2、または、n=1,2,4,8,…を満たすものとする。

    図7は、上述のように周波数fc、fsを設定した場合の、検出部31の構成を示すブロック図である。 後述するように、検波・整流処理を簡略化することができる。 正弦波離散値生成部317,D/A変換部318およびフィルタ319は、搬送波生成手段を構成している。 正弦波離散値生成部317で生成された正弦波離散値はD/A変換部318によりアナログ信号に変換され、そのアナログ信号はフィルタ319へ出力される。

    D/A変換部318から出力された搬送波信号は高調波が含まれていて階段状になっているため、ローパスフィルタやバンドパスフィルタ等で構成されるフィルタ319でフィルタリングすることにより、滑らかな搬送波信号が得られる。 その搬送波信号は、抵抗Rを通して直列接続されたギャップセンサ44に印加される。 フィルタ319から出力される搬送波信号Fcarrier(t)は次式(5)で表される。
    Fcarrier(t)=Asin(2πfct) …(5)

    ギャップセンサ44に印加されたこの搬送波信号は、シャフト3の浮上位置に応じて変化するインピーダンス変化により振幅変調され、振幅変調波F AM (t)となる。 ここで、位置情報信号をFsig(t)とすると、振幅変調波F AM (t)は次式(6)のように表される。 なお、φは搬送波信号との位相差である。
    AM (t)=(A+Fsig(t))sin(2πfct+φ) …(6)

    図8は信号波形の一例を示す図であり、(a)は位置情報信号Fsig(t)を示し、(b)は搬送波信号Fcarrier(t)を示している。 図8(b)の搬送波信号Fcarrier(t)を図8(a)の位置情報信号Fsig(t)で変調すると、図8(c)に示すような振幅変調波F AM (t)が得られる。 この振幅変調波F AM (t)はギャップセンサ44から差動アンプ323に入力される。

    差動アンプ323には、振幅変調波F AM (t)とともに、次式(7)で表されるセンサ基準信号Fstd(t)が入力され、これらの差分信号Fsub(t)が差動アンプ323から出力される。 センサ基準信号Fstd(t)は、搬送波信号Fcarrier(t)をゲイン調整部321にてゲイン調整し、さらに位相シフト回路322で振幅変調波F AM (t)と同位相となるように位相調整することにより形成される。
    Fstd(t)=Csin(2πfct+φ) …(7)

    センサ基準信号Fstd(t)は図8(d)に示すような波形となり、次式(8)に示す差分信号Fsub(t)は図8(e)のような波形となる。 差動アンプ323から出力された差分信号Fsub(t)は、フィルタ324において搬送波周波数fcを中心周波数とするバンドパス処理が施される。
    Fsub(t)=F AM (t)−Fstd(t)
    =(A+Fsig(t)−C)sin(2πfct+φ) …(8)

    フィルタ324からA/D変換部312に入力された差分信号Fsub(t)は、A/D変換部312によりデジタル値へと変換される。 このデジタルサンプリングによりサンプリングされた離散化信号の周波数は、例えば、周波数faの正弦波をサンプリング周波数fbでサンプリングすると、得られる離散化信号は周波数(fa−fb)を有する信号で表される。

    なお、A/D変換部312でデジタル変換する際には、正弦波離散値生成部317で生成された正弦波離散値に基づいてサンプリングするが、搬送波信号がギャップセンサ44により変調されると位相がシフトする。 そのため、そのシフトに応じて位相シフト演算部316で正弦波離散値を位相シフトしたものを、A/D変換部312に入力する。 A/D変換部312では、変調波信号をデジタル信号へ変換するタイミングを、その変調波信号の包絡線とほぼ一致させるようにする。 すなわち、搬送波成分の最大位置と同期させるようにする。

    ここでは、A/D変換部312におけるサンプリング周波数fsを、搬送波信号の周波数fcと等しくした場合(fs=fc)について説明する。 このとき、差分信号Fsub(t)を周波数fcでサンプリングして得られる離散化センサ信号e(t)は、次式(9)のように表される。 なお、P=A−C、Q=sinφであり、PもQも定数になっている。
    e(t)=(A+Fsig(t)−C)sin{2π(fc−fc)t+φ}
    =(A+Fsig(t)−C)sinφ
    =QP+QFsig(t) …(9)

    式(9)からも分かるように、離散化センサ信号e(t)には搬送波が含まれておらず、復調演算処理を行う必要がないという特徴を有している。 図8(f)は離散センサ信号e(t)を示したものであり、この離散センサ信号e(t)をゲイン・オフセット調整部315でオフセット調整およびゲイン調整することにより、元の位置情報信号Fsig(t)を抽出することができる。 図8(g)はゲイン・オフセット調整後の離散化センサ信号e(t)を示したものであり、破線は位置情報信号Fsig(t)を重ねて示したものである。 コンパレータ314は、ゲイン・オフセット調整部315から出力された信号のレベルと閾値信号のレベルとを比較し、その結果をロータ温度モニタ信号として出力する。

    上述した例では、fs=fcとした場合について説明したが、サンプリング周波数fsと搬送波信号の周波数fcとの関係をfs=fc/nと設定した場合にも、離散化後の信号に搬送波成分が含まれず同様に復調演算処理やフィルタ処理を簡略化することができる。 ただし、nは1/2または1,2,4,8,…である。 差分信号Fsub(t)をサンプリング周波数fsでサンプリングして得られる離散値信号は、t=mTs(ただし、m=0,1,2,…)における値をサンプルすると考えれば次式のように表される。 ただし、Ts=1/fsである。
    (A+Fsig(mTs)−C)sin(2πfc・mTs+φ)

    fs=fc/nの場合(n=2,4,8,…)を考えると、次式に示すように、結果はfs=fcの場合と同様になる。
    (A+Fsig(mTs)−C)sin(2πfc・mTs+φ)
    =(A+Fsig(mTs)−C)sin(2πn・fs・m/fs+φ)
    =(A+Fsig(mTs)−C)sin(2πn・m+φ)
    =(A+Fsig(mTs)−C)sinφ
    =QP+QFsig(mTs)

    図9は、このように搬送波信号と同期してサンプリングを行った場合の、サンプリングタイミングを説明する図である。 図9において、(a)は上述した位置情報信号Fsig(t)に対応する変位信号であり、(b)は搬送波信号を、(c)は搬送波信号が位置情報信号により変調されたセンサ信号を示している。 センサ信号は、搬送波周波数で変化する搬送波成分を有している。 また、(d)〜(e)は、fc=fsの場合(すなわち、n=1の場合)のサンプリングされた離散値信号(丸印および三印で示す)を示したものであり、それぞれサンプリング開始タイミングが異なる。

    n=1の場合、搬送波成分の1周期Tc毎にサンプリングが行われ、図9の(d)ではサンプリングタイミングは搬送波成分が最大となる位置と同期しており、(e)では搬送波成分が最小となる位置と同期している。 (e)に示すサンプリングタイミングで取得される離散値信号は、信号の正負を反転するだけで(a)の変位信号を得ることができる。 (f)では、サンプリングタイミングは搬送波成分の最大位置および最小位置とずれた位置に同期している。

    また、n=2の場合には搬送波成分の2周期毎にサンプリングが行われるので、図9の丸印および三角印に関して1つおきにサンプリングされる。 さらに、n=4の場合には3つおきにサンプリングされる。 nがさらに大きい場合にも同様に考えればよい。

    一方、サンプリング周波数fsをfs=2・fcと設定した場合には、サンプリングされた離散値信号は次式のように表される。
    (A+Fsig(mTs)−C)sin(2πfc・mTs+φ)
    =(A+Fsig(mTs)−C)sin(π・m+φ)

    この場合は、搬送波成分の1/2周期毎にサンプリングが行われ、搬送波成分の最大位置に同期するようにサンプリングを開始すれば、1回目は図9(e)の丸印でサンプリングされ、2回目は図9(f)の三角印の位置でサンプリングが行われる。 すなわち、最大位置、最小位置、最大位置、最小位置、〜、の順にサンプリングが行われる。 この場合、最小位置の離散値信号を上下反転させることにより、図9(c)に示すセンサ信号の包絡線、すなわち図9(a)の信号が得られることになる。

    比較例として、サンプリング周波数fsを、搬送波周波数fcの4/3倍に設定した場合について考える。 ここでは、図10に示すような単純な正弦波(実線で示す)をサンプリングする場合について考察する。 図10に示す正弦波信号をfs=(4/3)fcでA/D変換すると、図10の三角印P11の位置でサンプリングが行われる。 サンプリングされた離散値信号は破線で示すような周期性を有しており、被サンプリング信号(実線で示す正弦波信号)の1/4の周波数となる。

    この場合、A/D変換後に復調演算処理が必要となり、被サンプリング信号の1/4周波数を有する正弦波をA/D変換されたデータに乗算する。 このときの被サンプリング信号は次式(10)で表され、それをA/D変換した信号は式(11)のように表される。 なお、Tsはサンプリング周期である。
    Fsample(t)=Ksin(2πfct+ξ) …(10)
    FADin=Ksin{2π(fs/4)・nTs+ξ'}
    =Ksin{π・n/2+ξ'} …(11)

    このときの、復調乗算用正弦波信号Fdecodeを次式(12)とすると、復調処理後の信号Fdetectは次式(13)のようになる。
    Fdecode=Lsin{2π(fs/4)・nTs+ξ'}
    =Lsin{(π/2)・n+ξ'} …(12)
    Fdetect=FADin×Fdecode
    =KLsin {(π/2)・n+ξ'}
    =KL{1−cos(πn+ξ')}/2 …(13)

    ここで、L=K=1、ξ'=0の場合を考えると、Fsample(t)=sin(2πfct)で振幅1の信号が、Fdetect=1/2に減衰していることが分かる。 なお、この処理の場合には、復調処理後にDC成分(=KL/2)を抽出するために、ローパスフィルタ処理が必要である。 図10の場合、三角印P11の位置でサンプリングが行われるので、取り込んだ信号は0,−1,0,1,0,−1,0,1,0,…となる。 これに同周波数の同期した信号を乗算すると0,1,0,1,0,1,0,1,…となり、これらの平均をとると信号は0.5に減衰する。

    一方、本実施の形態のようにfc=fsでサンプリングを行った場合、図10の四角印P12の位置で信号がサンプリングされ、上述したように取り込んだ信号をそのまま位置情報の信号として用いることができる。 このことは、図9の(d)や(e)からも分るように、搬送波周波数fcに対してサンプリング周波数fsをfs=fc/n(n≠1)やfs=2・fcのように設定した場合も同様であって、搬送波成分の最大位置または最小位置と同期させてサンプリングを行うとS/N比の低下を招くことがない。

    ところで、図6(a)に示したように、ターゲット81,82がギャップセンサ44との対向位置を通過したときの信号を各々取り出す時分割検出法を用いた場合、サンプリング周波数fsは上述した条件に加えて、次のような条件を満たす必要がある。 例えば、検出対象の磁性体を1回転の内の半周にわたって配置した場合、サンプリング点数が2であるので「回転数×2」以上のサンプリング周波数とし、1/4周にわたって配置した場合にはサンプリング点数が4となるので、「回転数×4」以上のサンプリング周波数とする必要がある。

    通常、ターボ分子ポンプの回転数は数万rpm程度であるので、1回転毎にサンプリングを1回行う場合でも、kHzオーダーのサンプリング周波数とする必要がある。 すなわち、サンプリング周波数fsは「(回転数)×(1回転あたりのサンプリング点数)」以上に設定しなければならない。 よって、ロータの最大回転数をfrotmax(Hz)、各磁性体におけるサンプリング点数をm、検出対象とする磁性体の1周に対する割合をRとすると、サンプリング周波数fsは、次式(14)を満足する必要がある。
    fs≧frotmax・m/R …(14)
    例えば、1つのターゲットを1回転に1回だけ検出する場合には、m=1,R=1なので、「fs≧frotmax」となる。

    よって、サンプリング周波数fsは、fs=fc/n(n=1/2or1,2,4,8,…)を満足し、かつ、次式(14)を満足するように設定する必要がある。

    上述した第1の実施の形態では、次のような作用効果を奏する。
    (1)センサ信号をA/D変換の際のサンプリング周波数fsが、搬送波の周波数fcに対してfs=fc/nを満たすとともに、ロータの最大回転周波数frotmaxに対してfs≧frotmaxを満たすように設定しているので、透磁率変化の検出精度を確保しつつ、CPUやDSPのコスト低減を図ることが可能となる。
    (2)インダクタンス検出部で検出すべき検出の点数、すなわち、1回転あたりのサンプリング点数をfdivとしたときに、サンプリング周波数fsがfs≧frotmax×fdivを満たすようにしたので、検出精度の向上をはかることができる。

    −第2の実施の形態−
    上述した第1の実施の形態では、図5に示すように、ギャップセンサ44が磁性体ターゲット81,82に対向したときのセンサ出力信号S2が、信号S2'のように閾値よりも小さくなった場合に、ロータ温度モニタ信号を出力するようにした。

    しかしながら、温度変化に伴って、熱膨張によりナット42が固定されているシャフト3が軸方向に伸び、磁性体ターゲット81,82とギャップセンサ44との間のギャップ寸法が変化する。 また、シャフト3の浮上位置の変動により、ギャップ寸法が変動する。 そのため、磁性体ターゲット81,82の透磁率が変化していないにも関わらず、このようなギャップ寸法の変化により信号S2が信号S2'のように変化し、温度TがTcを越えたと誤判定するおそれがある。

    また、図4(a)に示すように、温度Tc付近ではT>Tcの場合の透磁率はT<Tcの場合の透磁率と大きく異なっているが、常温付近の透磁率との間の差は小さくなっている。 そのため、設定される閾値とT>Tcにおける信号レベルとの差が小さくなり、ギャップ寸法の変化に伴う信号S2の変化による誤判定が生じやすくなる。

    そこで、第2の実施の形態では、磁性体ターゲット81,82に加えて、ポンプの許容上限温度Tmaxよりも十分に高いキュリー温度を有する磁性体をターゲットとして設け、ギャップセンサ44がそのターゲットと対向したときの信号を基準信号とし、基準信号と磁性体ターゲット81,82に関する信号S1との差分信号に基づいて、ロータ温度TがT>Tcと成ったか否かを判定するようにした。 この場合、図11に示すように、検波・整流部312とコンパレータ314との間に演算部330を設け、その演算部330において以下に述べるような信号処理を行う。

    ここでは、ナット42を十分に高いキュリー温度を有する磁性体で形成し、ギャップセンサ44が固定面42aに対向したときの信号S1を基準信号とする。 また、差分信号ΔSは、ΔS=(磁性体ターゲット81,82の信号)−S1とする。 浮上位置の変化によりギャップ寸法が大きくなった場合、センサ信号の出力値は小さくなる。 その減少量をΔ'とする。

    図12(a)において、曲線L1,L2はギャップ変化前の信号S1および信号(S2+S2')を示し、曲線L11,L21はギャップ変化後の信号S1および信号(S2+S2')を示している。 なお、信号(S2+S2')とは、曲線L2,L21が、キュリー温度より低い部分の信号S2とキュリー温度より高い部分の信号S2'とから成るので、このような符号を用いて示した。 キュリー温度Tcよりも低い常温部分においては、基準信号S1も信号S2と同様の変化傾向を有している。 曲線L11,L21の値は、変化前の曲線L1,L2に対してΔ'だけ出力値が小さくなっている。 曲線L21の場合、曲線左端の常温部分において、曲線L21が閾値レベルよりも小さくなっており、ロータ温度がキュリー温度Tcとなったと誤判定されてしまう。

    検出信号(S2+S2')と基準信号S1とによる差分信号ΔSは、変化前は曲線L2から曲線L1を差し引いたものである 一方、変化後の差分信号ΔSは曲線L21から曲線L11を差し引いたものであり差分を取ることにより減少量Δ'はキャンセルされる。 その結果、変化前の差分信号ΔSと変化後の差分信号ΔSとは等しくなる。 図12(b)は差分信号ΔSを示す図である。

    このように、信号S2に代えて差分信号ΔSをロータ温度モニタ信号として用いることにより、シャフト3の伸びや浮上位置の変動などの影響を受けることなく、磁性体ターゲット81,82のキュリー温度の検出を行うことができる。 また、図12(a)の曲線L2の場合、曲線L2の図示左側の部分で信号が減少しているため、閾値レベルの設定範囲が非常に狭く、上述したように常温部分で誤判定されるおそれがある。 一方、図12(b)に示す差分信号ΔSの場合、常温部分で同様の変化傾向のある基準信号S1との差分を取るため、曲線左側の減少傾向が無くなり、閾値設定範囲が広がるとともに、常温部分における誤判定を防止することができる。

    なお、閾値レベルに関しては、差分信号ΔSの変化が最も急峻なところを選ぶのが好ましい。 例えば、図12(b)における、常温時の出力レベルと高温時(変化後)の出力レベルとの差を1とした場合、実際の出力レベルと高温時の出力レベルとの差が0.4〜0.6以下となったならば、ロータ温度上昇の警告を出すようにする。 この差が1に近すぎると、わずかなセンサ出力の変動で警報は誤発生されやすくなり、逆に0に近すぎると、ロータ温度が許容温度を越えても警報が発生されないという状況が生じやすくなる。

    なお、図12(c)に示すように、図12(b)の微分信号を演算し、その微分信号が所定値以下となったならば、ロータ温度が許容温度(キュリー温度Tc)より高温となったと判定するようにしても良い。 この所定値は、磁性体材料のキュリー温度前後の透磁率変化特性に基づいて設定することができる。

    [変形例1]
    図13は第2の実施の形態の変形例1を説明する図であり、磁性体ターゲット81が設けられたナット42を示す。 ナット42の底面には高さhの段差が形成されており、段差の高くなっている方の固定面42aに磁性体ターゲット81が設けられている。 このような形状のナット42をセンサターゲットとして用いると、ロータを1回転させたときのセンサ出力は、図14に示すようなセンサ出力が得られる。 図14において、(a)はT<Tcの場合を示し、(b)はT>Tcの場合を示している。

    磁性体ターゲット81に対向した時のセンサ出力は、T<Tcの場合には信号S20となり、T>Tcの場合には透磁率が変化して信号21のようにレベルが低下する。 また、ギャップセンサ44が固定面42bに対向している場合は、固定面42aに対向している場合に比べてギャップ寸法が段差寸法hの分だけ大きくなるため、信号S11は信号S12よりも出力レベルが低くなっている。 なお、ここでは、差=S12−S11が変化=S20−S21と等しくなるように、段差寸法hを設定する。

    変形例1では、固定面42aに対向しているときの出力信号をA、固定面42bに対向しているときの出力信号をB、磁性体ターゲット81に対向しているときの出力信号をCとした場合、ロータ温度モニタ信号MSとして「MS=(C−B)/(A−B)」を使用する。 図14(a)のT<Tcの場合、A=S12、B=S11、C=S20なので、信号MSは次式(15)のようになる。
    MS=(S20−S11)/(S12−S11)
    =(S20−S11)/(S20−S21) …(15)

    一方、図14(b)に示すT>Tcの場合には、信号MSは次式(16)のようになる。
    MS=(S21−S11)/(S12−S11)
    =(S21−S11)/(S20−S21) …(16)

    図14に示す例では、S20≒S12のように設定されているので、S21≒S11となり、T<TcではMS≒1,T>TcではMS≒0となる。 このように、変形例1では、透磁率変化による信号変化=S20−S21を基準として出力信号Cがどの程度変化したかに基づいて、ロータ温度がキュリー温度Tcを越えたか否かを判定している。 そのため、ギャップ量の大小によるセンサ感度の高低の影響を防止することができる。

    図15(a)は、ギャップセンサ44およびターゲット間のギャップ量とセンサ出力との関係を示したものである。 ギャップセンサ44の感度はギャップ量が大きくなるほど鈍くなり、図15(a)に示すようにギャップ量が大きくなるほどセンサ出力は小さくなる。 そのため、磁性体ターゲット81の透磁率変化による見かけ上のギャップ量変化が同じΔGであった場合でも、ナット42がギャップセンサ44から遠ざかった場合(点P2:ギャップ量大)の出力変化Sbよりも、ナット42がギャップセンサ44に近づいた場合(点P1:ギャップ量小)の出力変化Saの方が大きくなる。

    その結果、磁性体ターゲット81の透磁率変化による出力変化は図16のようになる。 図16(a)は点P1におけるセンサ出力を示し、(b)は点P2におけるセンサ出力を示す。 図16(b)のようにセンサ出力の変化Saが小さくなると、閾値レベルの設定範囲が狭くなり、キュリー温度検出における誤判定を招きやすくなる。 また、基準信号S1との差分を取る場合も、図12(b)におけるセンサ出力の段差が小さくなり、閾値レベルの設定範囲も狭くなってしまう。

    一方、変形例1のように、ロータ温度モニタ信号MSを「MS=(C−B)/(A−B)」のように設定した場合には、ギャップ量が大きくなってセンサ感度が低下すると、分子のC−Bの低下と同様に、分母のA−Bも同じように低下するため、信号MSは感度低下の影響をほとんど受けることがない。 例えば、S20=S12と設定することで、T<TcではMS=1,T>TcではMS=0となり、信号MSは感度変化の影響を全く受けることがない。 その結果、高精度の温度測定が可能となる。

    なお、上述した例では、S12−S11=S20−S21となるように段差寸法hを設定したが、必ずしも、そのように設定する必要はない。 また、センサ出力信号に対して閾値レベルを設定し、センサ出力がそのレベルと交差したか否かで許容温度か否かを判定する代わりに、図12(c)の場合と同様にセンサ出力の微分信号に基づいて許容温度か否かを判定するようにしても良い。

    [変形例2]
    上述した変形例1では、ナット底面に段差を設けて、磁性体ターゲット81の透磁率変化によるセンサ出力差を、段差によるセンサ出力差で除算することによりセンサ出力の非線形性を補正するようにした。 以下に述べる変形例2では、予め測定されたセンサ特性を用いてセンサ出力を補正するようにした。

    まず、図15(a)に示すようなセンサ特性(センサ出力−ギャップ量)を、予め計測等により求めておく。 そして、このセンサ特性データから補正係数を求め、その補正係数を図11の記憶部332に記憶させておく。 図15(b)は補正係数を示す図である。 ここでは、点P1におけるセンサ出力Saを基準とし、Sa/Sbを補正係数とする。 図5(a)のようなセンサ特性の場合、点P1における補正係数はSa/Saとなるので1となり、点P2における補正係数は、Saを点P2の出力Sbで割った大きさ4となる。

    例えば、図16(b)に示す補正前の信号レベルに、補正係数Sa/Sbを乗算して図16(a)に示すような信号に補正する。 このような補正係数を用いることにより、ギャップセンサ44のセンサ特性を線形化することができ、変形例1の場合と同様の効果を奏することができる。

    [変形例3]
    ところで、ギャップセンサ44から検出部31までのケーブルのインダクタンスやキャパシタンスの影響により、ポンプ毎に検出特性がばらつくが、このばらつきを防止するためにも、可能な限り搬送波周波数fcは低く保つほうが良い。 しかし、搬送波周波数fcが低い場合や、サンプリング点数が少ない場合には、磁性体間の隙間や透磁率の急激な変化により、図6(a)に示したようなセンサ出力のばらつきが発生する。 図6(b)は、磁性体(磁性体ターゲット81,82)部分のセンサ出力を複数重ね合わせた図であり、磁性体のほぼ中心位置では一定の値が出力されるが、磁性体の両端部分に相当する部分のセンサ出力は大きくばらついている。

    この場合、サンプリング周波数fsが回転周波数よりも十分大きければ、1回転毎に同じ点をサンプリングすることができるので、回転毎のセンサ出力のばらつきを抑制することができる。 例えば、サンプリング点数が1回転に360点である場合には、角度で1度刻みにサンプリングができるので、回転毎のサンプリング位相ずれは1度以内となり、出力が安定な部分のセンサ出力を抽出することができる。

    しかし、上述したように搬送波周波数fcやサンプリング周波数fsをできるだけ低く設定する場合、センサ出力のばらつきを避けることができない。 そこで、変形例3では、この回転毎のセンサ出力のばらつきを低減する方法として、平均化処理を採用する。 具体的には、各磁性体毎に複数点サンプリングし、このサンプリングした値を1sec程度の長周期で平均化処理を行う。 その結果、図6(c)のような信号を得ることができる。

    さらに、図6(a)に示すように、磁性体検出範囲の中央部の信号、すなわち、磁性体の中心位置をサンプリングしたときのセンサ出力は変動が少ないので、この中央部のサンプリング信号のみを用いて平均化処理することで、さらに検出精度を向上させることができる。 なお、上述した例では平均化のスパンを1sec程度としたが、温度変化は秒単位よりも長いので、1min程度としてもかまわない。 また、単純な平均化処理の他に、移動平均や、ローパスフィルタ等によるAC変動成分の除去等を行っても良い。 その結果、ばらつきの少ないセンサ出力が得られ、温度判定を精度良く行うことができる。

    上述した第2の実施の形態では、以下のような作用効果を奏することができる。
    (1)温度監視範囲よりも高温側(T>Tmax)にキュリー温度を有する磁性体を基準ターゲットとして設け、ギャップセンサ44が複数の磁性体ターゲット81,82と対向したときの信号S1と、ギャップセンサ44が基準ターゲットと対向したときの信号との差分信号を求め、その差分信号に基づいてロータの温度が所定温度を越えたか否かを判定するようにしたので、シャフト3の伸びや浮上位置の変動などの影響を受けることなく判定を行うことができる。
    (2)ロータの温度が所定温度を越えたか否かを判定する際に、差分信号の微分値が所定値以下か否かであるかを判定することにより、より確実な判定を行うことができる。
    (3)また、許容温度Tmaxよりもキュリー温度が高く、ギャップセンサ44との距離が異なる磁性体(固定面42a,42b)を設け、磁性体42a,42bに関する信号S11,S12の差分(S11−S12)を用いて、ギャップセンサ44の検出信号を補正するようにしたので、ギャップ量の大小によるセンサ感度の高低の影響を除去することができる。
    (4)ギャップセンサ44の検出特性の非線形性を補正する補正パラメータで、ギャップセンサ44の検出値を補正するようにしたので、上述した(3)の場合と同様に、ギャップ量の大小によるセンサ感度の高低の影響を除去することができる。
    (5)ギャップセンサ44が磁性体ターゲット81,82に対向する対向区間に関して、ロータが複数回転する間にサンプリングにより得られる信号を平均化処理することにより、信号のばらつきが低減され温度判定の精度向上を図ることができる。

    なお、上述した実施の形態では、ターボ分子ポンプのロータ温度計測を例に説明したが、ターボ分子ポンプに限らずドラッグポンプ等の種々の真空ポンプにも本発明は適用できる。 また、磁性体をシャフト3の下端に設けられたナット42に設けたが、磁性体の配設場所はこの位置に限定されるものではなく、例えば、シャフト3とロータ2との締結部付近(シャフト上端部分)やロータ2そのものに配設しても良く、スペース的に配置可能であって、かつ、機械的強度において高速回転に耐えられる場所であれば、種々の場所に配設することが可能である。

    以上説明した実施の形態と特許請求の範囲の要素との対応において、ギャップセンサ44はインダクタンス検出手段を、正弦波離散値生成部317,D/A変換部318およびフィルタ319は搬送波生成手段を、コンパレータ314は判定手段を、演算部330は平均化手段,差分生成手段,信号補正手段,微分演算手段および非線形補正手段をそれぞれ構成する。

    なお、以上の説明はあくまでも一例であり、発明を解釈する際、上記実施の形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対応関係に何ら限定も拘束もされない。

    本発明による真空ポンプの第1の実施の形態を示す図であり、磁気軸受式ターボ分子ポンプのポンプ本体1とコントローラ30の概略構成を示したものである。

    ナット42とギャップセンサ44との関係を示す図であり、(a)は斜視図、(b)はギャップセンサ44側から見たナット42の平面図である。

    ギャップセンサ44および検出部31の詳細を示すブロック図である。

    磁性体温度に対する透磁率またはインダクタンスの変化を示す図であり、(a)は透磁率の温度変化を示し、(b)はインダクタンス変化を示したものである。

    検波・整流部313から出力される信号の一例を示す図であり、(a)はターゲット81,82の温度TがT<Tcの場合を、(b)はターゲット81,82の温度TがT>Tcの場合を示す。

    (a)はセンサ出力のばらつきを示す図であり、(b)は磁性体部分のセンサ出力を複数重ね合わせた図を示し、(c)は平均化処理後の信号を示す。

    検波・整流処理が省略される場合の検出部31の構成を示すブロック図である。

    (a)〜(g)は信号波形の一例を示す図である。

    サンプリングタイミングを説明する図である。

    fs=fcにおけるサンプリングを説明する図である。

    第2の実施の形態における、ギャップセンサ44および検出部31の詳細を示すブロック図である。

    (a)は差分を取る前の各信号を示す図であり、(b)は差分信号を示す図であり、(c)は微分信号を示す図である。

    第2の実施の形態の変形例1を示す図であり、(a)はナット42の斜視図、(b)はナット42の平面図である。

    変形例1におけるセンサ出力を示す図であり、(a)はT<Tcの場合を、(b)はT>Tcの場合を示す。

    (a)は、ギャップセンサ44およびターゲット間のギャップ量とセンサ出力との関係を示す図で、(b)は補正係数を示す図である。

    透磁率変化による出力変化を示す図であり、(a)は点P1におけるセンサ出力を示し、(b)は点P2におけるセンサ出力を示す。

    符号の説明

    1:ターボ分子ポンプ本体、2:ロータ、3:シャフト、30:コントローラ、31:検出部、42:ナット、44:ギャップセンサ、81,82:磁性体ターゲット、314:コンパレータ、317:正弦波離散値生成部、318:D/A変換部、319:フィルタ、330:演算部、332:記憶部

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