永久磁石埋込型電動機、圧縮機、冷凍空調装置

申请号 JP2016514581 申请日 2014-04-22 公开(公告)号 JP6188927B2 公开(公告)日 2017-08-30
申请人 三菱電機株式会社; 发明人 仁吾 昌弘; 土田 和慶;
摘要
权利要求

複数の永久磁石を有するロータと、ステータとを備える永久磁石埋込型電動機において、 前記ロータは、ロータ鉄心を備え、 前記ロータ鉄心は、複数の磁石挿入孔を有し、 複数のスリットが、前記ロータ鉄心における、前記磁石挿入孔の径方向外側の部分に、設けられており、 少なくとも2つの前記スリットは、当該2つのスリットで挟まれた鉄心部分が径方向外側に向けて広がる部分を有するように、設けられており、 前記スリットの最外端部は、当該スリットの幅中心線の外側に位置している、 永久磁石埋込型電動機。前記スリットはそれぞれ、第1の部分を備えており、 前記第1の部分はそれぞれ、対応する磁極中心線から離れており、前記スリットにおける前記磁極中心線側で且つロータ外周面側に位置しており、 前記磁極中心線から前記第1の部分までの距離は、径方向内側から径方向外側にむけて大きくなる、 請求項1の永久磁石埋込型電動機。前記永久磁石はそれぞれ、円弧状に湾曲しており、 前記永久磁石はそれぞれ、その円弧形状の凸部側が前記ロータの中心側に配置されている、 請求項1または2の永久磁石埋込型電動機。前記ロータの外周面の磁極中心部は、前記ロータの外周面の極間部よりも径方向外側に膨らんでおり、 前記ステータと前記ロータの前記極間部との間のエアギャップは、前記ステータと前記ロータの前記磁極中心部との間のエアギャップよりも大きい、 請求項1〜3の何れか一項の永久磁石埋込型電動機。前記永久磁石は、フェライト磁石、もしくは、希土類磁石である、 請求項1〜4の何れか一項の永久磁石埋込型電動機。密閉容器内に、電動機と、圧縮要素とを備えた圧縮機であって、 前記電動機は、請求項1〜5の何れか一項の永久磁石埋込型電動機である、 圧縮機。請求項6の圧縮機を冷凍回路の構成要素として含む、冷凍空調装置。

说明书全文

本発明は、永久磁石埋込型電動機、圧縮機、冷凍空調装置に関するものである。

従来の永久磁石埋込型電動機として、例えば、特許文献1には、複数のスリットのそれぞれと回転子鉄心外周部との間のスリット薄肉部の径方向の寸法を、永久磁石挿入孔の端部空隙と回転子鉄心外周部との間の挿入孔端部薄肉部の径方向の寸法よりも大きくし、複数のスリットのスリット薄肉部の径方向の寸法を、極間から磁極中心に向かって徐々に大きくするとともに、磁極中心に最も近いスリットのスリット薄肉部の径方向の寸法を、最も極間に近いスリットのスリット薄肉部の径方向の寸法よりも大きく、他のスリットのスリット薄肉部の径方向の寸法よりも小さくした構成が開示されている。

このような構成によれば、永久磁石挿入孔の径方向外側に配置されるスリットによる磁気飽和を低減し、さらに電機子反作用の影響を小さくし、トルクリップルを低減することができる。

特許第5208084号

しかしながら、上記のようにスリット薄肉部の径方向寸法を広くする形状において、ロータ外周の磁束密度の集中が大きい場合は、スリット薄肉部を広げて設計する必要がある。その際、広げた鉄心部にステータ磁束が鎖交しやすくなり、ステータ磁束により発生するロータ磁気吸引を低減するというスリットの効果が低減してしまう。

更に、スリット薄肉部を広げて、ロータ外周近傍にスリットが無い状態は、ロータ外周表面の磁束密度分布が不安定であり、鉄心部に局所的な磁束の集中が発生しやすく、ロータ外周表面の磁束密度分布がアンバランスになることによる磁気吸引力が発生し、振動の原因となる恐れもある。

本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、ステータ磁束により発生する磁気吸引力を低減する効果をほとんど変えることなく、ロータ外周表面の磁束密度のアンバランスを抑制し、振動を小さくすることができる、永久磁石埋込型電動機を提供することを目的とする。

上述した目的を達成するため、本発明は、複数の永久磁石を有するロータと、ステータとを備える永久磁石埋込型電動機において、前記ロータは、ロータ鉄心を備え、前記ロータ鉄心は、複数の磁石挿入孔を有し、複数のスリットが、前記ロータ鉄心における、前記磁石挿入孔の径方向外側の部分に、設けられており、少なくとも2つの前記スリットは、当該2つのスリットで挟まれた鉄心部分が径方向外側に向けて広がる部分を有するように、設けられている。 さらに、同目的を達成するための本発明の圧縮機は、密閉容器内に、電動機と、圧縮要素とを備えた圧縮機であって、前記電動機は、上述した本発明の永久磁石埋込型電動機である。 さらに、同目的を達成するための本発明の冷凍空調装置は、上述した本発明の圧縮機を冷凍回路の構成要素として含む。

本発明によれば、ステータ磁束により発生する磁気吸引力を低減する効果をほとんど変えることなく、ロータ外周表面の磁束密度のアンバランスを抑制し、振動を小さくすることができる。

本発明の実施の形態1に係る永久磁石埋込型電動機の回転中心線と直交する断面を示す図である。

図1において、ロータを拡大して示す図である。

図2において、磁石挿入孔および複数のスリットを拡大して示す図である。

図2において、複数のスリットをさらに拡大して示す図である。

図2において、ステータ磁束の鎖交を説明する図である。

本実施の形態1に関するスリットと、比較例に関するスリットとを図示した、図3と同態様の図である。

ロータの回転中心をステータの回転中心に対してずらした状態における、駆動時の振動解析結果のステータ外周部の加速度を抽出した結果(6次成分)を示すグラフである。

ロータの回転中心をステータの回転中心に対してずらした状態における、駆動時の振動解析結果のステータ外周部の加速度を抽出した結果(18次成分)である。

ロータの回転中心をステータの回転中心に対してずらした状態における、駆動時の振動解析結果のステータ外周部の加速度を抽出した結果(24次成分)である。

本発明の実施の形態2に関する、図2と同態様の図である。

本発明の実施の形態3に関し、ステータとロータとの関係を説明する図である。

本発明の実施の形態4に係る圧縮機の縦断面図である。

本発明の実施の形態5に係る冷凍空調装置を示す図である。

以下、本発明の実施の形態について添付図面に基づいて説明する。なお、図中、同一符号は同一又は対応部分を示すものとする。

実施の形態1. 図1は、本実施の形態1に係る永久磁石埋込型電動機の回転中心線と直交する断面を示す図である。図2は、図1において、ロータを拡大して示す図である。図3は、図2において、磁石挿入孔および複数のスリットを拡大して示す図である。図4は、図2において、複数のスリットをさらに拡大して示す図である。

図1〜図4に示されるように、永久磁石埋込型電動機1は、ステータ3と、そのステータ3に対向して回転可能に設けられたロータ5とを備えている。ステータ3は、複数のティース部7を有している。複数のティース部7はそれぞれ、対応するスロット部9を介して別のティース部7と隣り合っている。複数のティース部7と複数のスロット部9とが周方向に交互に且つ等間隔で並ぶように配置されている。複数のティース部7には、それぞれ、図示省略する公知のステータ巻線が公知の態様で巻回されている。

ロータ5は、ロータ鉄心11と、シャフト13とを有している。シャフト13は、ロータ鉄心11の軸心部に、焼嵌、圧入等により連結されており、ロータ鉄心11に回転エネルギーを伝達する。ロータの外周面と、ステータの内周面との間には、エアギャップ15が確保されている。

このような構成において、ロータ5は、エアギャップ15を介したステータ3の内側で、回転中心線(ロータの回転中心、シャフトの軸線)CLを中心に回転自在に保持されている。具体的には、ステータ3に、指令回転数に同期した周波数の電流を通電することにより、回転磁界を発生させ、ロータ5を回転させる。ステータ3とロータ5との間のエアギャップ15は、0.3〜1mmの空隙である。

次に、ステータ3と、ロータ5との構成を詳細に説明する。ステータ3は、ステータ鉄心17を有する。ステータ鉄心17は、一枚あたりの厚さが0.1〜0.7mm程度の電磁鋼板を所定の形状に打ち抜き、所定枚数の電磁鋼板をカシメで締結しながら積層して構成される。ここでは、板厚が0.35mmの電磁鋼板を用いている。

ステータ鉄心17には、その径方向内側に周方向に略等間隔に並ぶ9個のティース部7が形成されている。ティース部7は、放射状に形成されている。そして、ステータ鉄心17において隣り合うティース部7の間の領域に、対応するスロット部9が形成されている。

ティース部7はそれぞれ、径方向を延びており、回転中心線CLに向けて突出する。また、ティース部7の大部分は、径方向外側から径方向内側にかけて略等しい周方向の幅を有しているが、ティース部7の最も径方向内側となる先端部には、ティース歯先部7aが形成されている。ティース歯先部7aはそれぞれ、その両側部が周方向に広がる傘状の形状に形成されている。

ティース部7には、回転磁界を発生させるコイル(図示せず)を構成するステータ巻線(図示せず)が巻かれている。コイルは、マグネットワイヤーを、絶縁体を介してティース部に直接巻き付けて形成される。この巻線方式を、集中巻線という。そして、コイルは、3相Y結線に結線される。コイルのターン数や線径は、要求される特性(回転数やトルク等)、電圧仕様、スロットの断面積に応じて定まる。ここでは、巻線し易いように分割ティースを帯状に展開し、線径φ1.0mm程度のマグネットワイヤーを各磁極のティース部に80ターン程度巻き付け、巻線後、分割ティースを環状に丸め、溶接してステータを構成している。

ステータ3の中心付近には、回転可能に保持されたシャフト13が配置されている。そして、そのシャフト13にロータ5が嵌合されている。ロータ5は、ロータ鉄心11を有しており、そのロータ鉄心11もまた、ステータ鉄心17と同様、厚さ0.1〜0.7mm程度の電磁鋼板を所定の形状に打ち抜き、所定枚数の電磁鋼板をカシメで締結しながら積層して構成される。ここでは、板厚が0.35mmの電磁鋼板を用いている。

ロータ5は、磁石埋込型であり、ロータ鉄心11の内部には、N極とS極とが交互になるように着磁された複数の(本具体例では6個の)の永久磁石19が設けられている。永久磁石19はそれぞれ、円弧状に湾曲しており、その円弧形状の凸部側がロータ5の中心側に配置されている。また、永久磁石19はそれぞれ、対応する磁極中心線に対して線対称となるように湾曲している。より詳細には、ロータ鉄心11には、複数の永久磁石19に対応した数の磁石挿入孔21が形成されており、複数の磁石挿入孔21にはそれぞれ、対応する永久磁石19が挿入されている。一つの磁石挿入孔21につき一つの永久磁石19が挿入されている。

なお、ロータ5の磁極数は、2極以上であればいくつでもよいが、本例では、6極の場合を例示している。ここでは、永久磁石19にフェライト磁石を使用し、フェライト磁石の内周面と外周面とを一定の同心円弧状に形成し、フェライト磁石の湾曲径方向の厚みを一様に6mm程度に維持されるようにしている。

また、永久磁石19には、図3に矢印MOで示されるように同心円弧の中心から配向磁場を印加した磁石を用いており、且つ、その磁石に沿った形状の磁石挿入孔に対し、磁石を挿入している。なお、磁石の種類は、例えば、ネオジウム、鉄、ボロンを主成分とする希土類磁石を用いて良いし、磁石の形状に関しても、円弧形状に限定することは無く、平板状のものや、平板状のものを複数枚配置して磁極を構成した形でも良い。

磁石挿入孔21における永久磁石19の側面部が納まる磁石側面対向部23と、ロータ外周面5aとの間は、一様な肉厚の極間薄肉部25が存在する。これらの極間薄肉部25はそれぞれ、隣接する磁極間での漏れ磁束の経路となるため、できるだけ薄いことが好ましい。ここではプレス可能な最小幅として電磁鋼板の板厚に等しい0.35mm程度に設定している。また、永久磁石19が磁石挿入孔21に挿入されたとき、磁石挿入孔21における磁石側面対向部23と、永久磁石19の側面部との間には、側面側隙間21aが生じる。

本発明のロータ鉄心における少なくとも一つの磁石挿入孔の径方向外側の部分には、複数のスリットが設けられており、本実施の形態1では、磁石挿入孔21のそれぞれの径方向外側の部分に、複数のスリット31が設けられている。複数のスリット31はそれぞれ、対応する磁石挿入孔21の径方向外側の孔画定部からロータ外周面5a近傍まで延びる空隙部である。

図3および図4に示されるように、スリット31は、その長軸方向が、対応する磁極中心線MCに対して略平行な方向に向くように、磁極中心線MCに対し線対称な5本のスリットを形成している。ここでは、磁極中心線MC上に1本のスリットと、磁極中心線MCに対し線対称な位置に4本のスリットとが形成されている。

磁極中心線MC上のスリットの径方向内側(スリットと磁石挿入孔との間の鉄心部分)には、カシメ33が設けられており、これにより、ロータ5における磁石挿入孔21の径方向外側の鉄心部分の積層を固定し、製造時の変形を抑制している。本来、磁極中心線MC上のスリットは、磁石挿入孔21の径方向外側の孔画定部からロータ外周面5aの近傍まで延びるように形成するものであるが、ここでは、カシメ33を配置する関係上、カシメ33より外周側に設けている。

これらのカシメ33は、コア(鋼板)を変形させて、積層するコア間(鋼板間)を嵌め合いで固定しているため、カシメ部分の鉄心には大きな応力が発生している。コア(ロータ鉄心11)の透磁率は応力下で低下する特性を有しており、カシメを配置した部位は、透磁率が低下し、スリットを設けたのと同じような磁気特性を有する。

なお、磁石挿入孔21の径方向内側には、周方向に交互に等間隔で並ぶ複数の風穴35と複数のリベット穴37とが設けられており、カシメ33は、対応するリベット穴37と、対応する一対の磁石挿入孔21との間にも、設けられている。

さらに、スリットの役割を説明する。図5に示されるように、永久磁石埋込型電動機1は、ロータ5の永久磁石19の径方向外側に鉄心部分を有するため、符号Mdで示されるようにステータ磁束が鎖交し難い磁極中心線方向のd軸方向と、符号Mqで示されるようにステータ磁束が鎖交しやすい磁極中心線に垂直な方向のq軸方向とが存在する。その磁気抵抗の突極差によりリラクタンストルクを利用でき、d軸位相の電流を流すことで弱め界磁運転が出来るというメリットを有する。

しかし、ロータ5の回転中心がステータ3の回転中心に対してずれている場合や回転磁界にアンバランスが生じた場合、q軸位相のステータ磁束が、ロータの永久磁石の径方向外側の鉄心部分を鎖交する際のロータ磁気吸引力にアンバランスが生じ、振動を大きくするという課題があった。

具体的には、本例は6極のロータを用いており、永久磁石の径方向外側の鉄心部分が6箇所存在する。この場合、q軸位相のステータ磁束が、永久磁石の径方向外側の鉄心部分を鎖交する際のロータ磁気吸引力のアンバランスは、ロータの1回転中に6回発生し、回転数の6倍の次数成分の振動が発生する。また、異なる例を挙げると、4枚の磁石を用いた永久磁石埋め込み型電動機においては、ロータの回転中心がステータの回転中心に対してずれている場合や回転磁界にアンバランスが生じた場合、回転数の4倍の次数成分の振動が発生する。

そこで、上記の振動を抑制するために、ロータの永久磁石の径方向外側の鉄心部分に、磁石挿入孔の径方向外側からロータの外周面に延びるスリット(空隙部)を設けることにより、q軸位相のステータ磁束が、永久磁石の径方向外側の鉄心部分に鎖交し難くし、ロータ磁気吸引力のアンバランスを小さくし、振動を低減している。ステータ磁束により発生するロータの磁気吸引力のアンバランスを低減するためには、q軸位相のステータ磁束が鎖交し難いスリット形状が好ましく、具体的には、スリットは、磁石挿入孔の径方向外側からロータの外周面の近傍まで、対応する磁極中心線MCに対して略平行な方向(長軸方向)に延び、短軸方向(長軸方向と直交する方向)の幅が広い形状が効果的であり、特に磁路が広くステータ磁束が鎖交しやすい磁石近傍の鉄心部分の幅が狭くなるような配置が好ましい。

具体的に、スリット31と磁石挿入孔21との間は、鉄心薄肉部39で構成されており、スリット31とロータ外周面5aとの間も鉄心薄肉部39で構成されている。q軸位相のステータ磁束を鎖交し難くするために、鉄心薄肉部39はそれぞれ、できるだけ狭いことが好ましく、ここでは鉄心薄肉部の最小幅(スリットと磁石挿入孔との最小間隔、または、スリットとロータ外周面との最小間隔)が、プレス可能な最小幅である電磁鋼板の板厚0.35mm程度に設定している。スリットの幅(短軸方向)に関しては、最も広い部分の幅が0.5〜3mm程度である。つまり、スリットの幅や配置に関しては、ステータ磁束によるロータの磁気吸引力のアンバランス(6次成分の振動)が小さくなるような構成としている。

また、スリットは、永久磁石の磁束の向きを規制する役割を持ち、ロータ外周面の磁束密度分布は、ロータの磁極中心線で凸となる正弦波状の分布になることが好ましい。そのため、従来のスリットは、スリットの長軸方向の向きが、磁極中心線に対して略平行な方向、もしくは、スリットのロータ外周側の先端が磁極中心線側を向く方向に、磁極中心線に対し線対称な形で形成されるのが一般的である。すなわち、隣接するスリット間の鉄心部分の幅は、磁石挿入孔側からロータ外周面に向けて一定であるか、もしくは、磁石挿入孔側からロータ外周面に向けて狭くなるように形成されるのが一般的である。このようにして、ロータ外周面近傍の鉄心の磁束密度は、磁極中心線付近で高くなるよう構成され、スリットにより、ロータ外周面の磁束密度分布をロータの磁極中心線で凸となる正弦波状の分布にすることで、振動低減する効果も有している。

しかしながら、ロータの永久磁石の径方向外側の鉄心部分に、スリットを配置することにより、スリット間の鉄心部分に磁束が局所的に集中し、ロータ外周面の磁束密度分布がアンバランスになることによる磁気吸引力が発生し、振動の原因となることもある。

そこで、本発明では、少なくとも2つのスリットは、当該2つのスリットで挟まれた鉄心部分が径方向外側に向けて広がる部分を有するように、設けられており、本実施の形態1では、それぞれの磁石挿入孔の径方向外側において、複数(4つ)のスリット31は、隣り合うスリット31で挟まれた鉄心部分が何れも、径方向外側に向けて広がる部分を有するように、設けられている。よって、ロータ鉄心11は、隣り合うスリット31の間に、径方向外側にいくほど幅が広がる部分11aを有している。ロータ鉄心11にこのような部分11aが生じるようにスリット31を形成することで、永久磁石の径方向外側の鉄心部分に、磁束が集中することを緩和し、ロータ外周面の磁束密度のアンバランスを抑制している。

具体的に図4を用いて説明すると、ロータ鉄心11における隣り合うスリット31の間の部分11aにおいては、径方向外側部分の幅Wa>径方向内側部分の幅Wb、径方向外側部分の幅Wc>径方向内側部分の幅Wdとなっている。また、かかる構成を、スリットの視点から記述すると、磁極中心線MC上から離れているスリット31は、その磁極中心線側に、第1の部分41と、第2の部分43とを備えている。第1の部分41は、ロータ外周面側にあり、磁極中心線MCから第1の部分41までの距離D1、D2は、径方向内側から径方向外側にむけて大きくなる。第2の部分43は、磁石挿入孔21側にあり、磁極中心線MCから第2の部分43までの距離D3、D4は、一定である。ロータ外周面側の端部31aは、第1の部分41により、磁極中心線MC側が面取りされた形状になっており、スリット31の幅は、磁石挿入孔側では一定であり、ロータ外周面側では狭くなる。

ロータ外周面5の磁束密度は、径方向外側の鉄心部分の磁束密度の影響を受けやすいため、隣り合うスリット間の鉄心部分の幅がロータ外周面側で広がるようにスリットを形成することで、本来の目的であったステータ磁束により発生する磁気吸引力を低減する効果をほとんど変えることなく、ロータ外周面の磁束密度のアンバランスを抑制し、振動の小さい電動機を構成することが出来る。

なお、本発明は、複数のスリットのうち、全てのスリットにおいて、隣り合うスリット間の鉄心部分の幅が、ロータ外周面側で広がる態様を満たしていることには、限定されない。

また、ロータ外周面の磁束密度分布は、ロータの磁極中心線で凸となる正弦波状の分布になることが好ましく、ロータ外周面近傍の鉄心の磁束密度は、磁極中心線付近で高くなるよう構成されていることが多い。実施の形態1において、スリット31の最外端部31bは、スリット31の幅中心線CW(スリットの幅の中心を通り対応する磁極中心線MCと平行な線)の外側(対応する磁極中心線MCから離れる側)に位置する。最外端部31bは、スリット31におけるロータ外周面側の先細部の先端部であり、スリット31の幅中心線CWの方向の延びでみた場合、最もロータ外周面側に延びた先端部である。このように形成することで、特に磁極中心線側の磁路を広げ、磁束密度の集中を緩和することが出来、ロータ外周表面の磁束密度のアンバランス抑制に効果的である。

次に、図6〜図9に基づき、本実施の形態1の効果について説明する。図6は、本実施の形態1に関するスリットと、比較例に関するスリットとを図示した、図3と同態様の図である。

図6に示されるように、本実施の形態1に関するスリットは、符号EMで示されており、比較例に関するスリットは、符号RAで示す点線で図示されているように、ほぼ一定の幅を有している。

図7は、本実施の形態1のスリットを有するロータと、比較例のスリットを有するロータと、スリットを有しないロータとに関して、ロータの回転中心をステータの回転中心に対してずらした(偏心させた)状態における、駆動時の振動解析結果のステータ外周部の加速度(6次成分:回転数の6倍の周波数)を抽出した結果である。

図7の結果から分かるように、スリットが無いロータに対して、本実施の形態1のスリットを有するロータや比較例のスリットを有するロータでは、加速度の6次成分が大幅に減少していることが分かる。

q軸位相のステータ磁束がロータの永久磁石外周側の鉄心部に鎖交し難くし、ロータ磁気吸引力のアンバランスを小さくし、振動を低減する効果が大きいと言える。

また、図8および図9は、本実施の形態1のスリットを有するロータと、比較例のスリットを有するロータとに関して、ロータの回転中心をステータの回転中心に対してずらした(偏心させた)状態における、駆動時の振動解析結果のステータ外周部の加速度(18次:回転数の18倍の周波数、24次成分:回転数の24倍の周波数)を抽出した結果である。ここでは、代表例として、高次の中でステータ外周部の加速度が大きめの、18次と24次を選定している。

図8の結果から分かるように、本実施の形態1のスリットを有するロータの加速度の18次成分は、比較例のスリットを有するロータの加速度の18次成分の28%まで低減できていることが分かる。また、図9の結果から分かるように、本実施の形態1のスリットを有するロータの加速度の24次成分は、比較例のスリットを有するロータの加速度の24次成分の23%まで低減できていることが分かる。

この18次の振動や24次の振動は、q軸位相のステータ磁束が、ロータにおける磁石挿入孔の径方向外側の鉄心部分を鎖交する際のロータ磁気吸引力にアンバランスが生じて生じる6次成分とは異なり、ロータ外周面の磁束密度分布のアンバランスによって発生する次数成分であり、本実施の形態1のスリットは、比較例のスリットに対し、ロータにおける磁石挿入孔の径方向外側の鉄心部分の磁束の集中を緩和し、ロータ外周面の磁束密度のアンバランスを抑制することで、振動の加速度を抑制している。

また、本実施の形態1では、永久磁石はそれぞれ、円弧状に湾曲しており、その円弧形状の凸部側がロータの中心側に配置されている。すなわち、永久磁石の配置が、磁極中心線上で最も内径側に位置するように、磁極中心線に対して線対称に傾いている。

永久磁石の配置が、磁極中心線上で最も内径側に位置するように、磁極中心線に対して線対称に傾いているロータの場合、永久磁石の磁束は、磁極中心線上に集中するように構成されているため、ロータ外周近傍の鉄心の磁束密度は、特に磁極中心線近傍で高くなり、前記スリットはロータ外周表面の磁束密度のアンバランス抑制に非常に効果的である。

本実施の形態では、フェライト磁石を用いたロータとして説明しているが、希土類磁石を用いたロータの場合においても、希土類磁石の残留磁束密度はフェライト磁石よりも高く、ロータ外周近傍の鉄心の磁束密度は高くなるため、前述のスリットによる磁束密度の緩和は効果的である。

以上のように構成された本実施の形態1の永久磁石埋込型電動機によれば、隣接するスリット間の鉄心部の幅がロータ外周側で広がるようにスリットを形成することで、本来の目的であったステータ磁束により発生する磁気吸引力を低減する効果をほとんど変えることなく、ロータ外周表面の磁束密度のアンバランスを抑制し、振動の小さい電動機を構成することが出来る。

実施の形態2. 次に、本発明の実施の形態2について説明する。図10は、本実施の形態2に関する、図2と同態様の図である。なお、本実施の形態2は、以下に説明する部分を除いては、上述した実施の形態1と同様であるものとする。

本実施の形態2のロータ105では、スリット131のロータ外周面側の端部は、その対応する磁極中心線MC側と、磁極中心線MCの反対側との、両方が、面取りされた形状になっている。スリット131の長軸方向において、スリット131の幅は、磁石挿入孔側で一定であり、ロータ外周面側で狭くなるような形状となっている。

かかる形状のスリットによっても、ロータ外周面側の先細部(最外端部)は、スリットの磁極中心線に対して外側に寄るように配置されており、このように形成することで、特に磁極中心線側の磁路を広げ、磁束密度の集中を緩和することが出来、ロータ外周表面の磁束密度のアンバランス抑制に効果的である。

実施の形態3. 次に、本発明の実施の形態3について説明する。図11は、本実施の形態3に関し、ロータとステータとの関係を示す図である。なお、本実施の形態3は、以下に説明する部分を除いては、上述した実施の形態1または2と同様であるものとする。また、図11は、図示の便宜上、実施の形態1のスリットを例に図示しているが、実施の形態2のスリットを設けたものとして実施することもできる。

ロータの外周面5aの磁極中心部は、ロータの外周面5aの極間部よりも径方向外側に膨らんでいる。すなわち、ロータ外周面5aは、第1円弧51と、第2円弧52とを有しており、第1円弧51は、磁極中心線上の部分が最も径方向向外側に膨らんでいる。よって、ステータ3とロータ5の極間部との間のエアギャップは、ステータ3とロータ5の磁極中心部との間のエアギャップよりも大きい。具体例として、図12で説明すると、ロータ外周面5aの第1円弧51とステータ内周面との間のエアギャップ15のうち最小となる磁極中心線上のエアギャップは、0.6mmである。また、第1円弧51と第2円弧52との交点(接続点、境界点)を通る境界線上のエアギャップは、0.9mmである。第1円弧51とステータ内周面との間のエアギャップ15は、第1円弧51の範囲内において、極間中心線に向かうほど小さくなる一方、第2円弧52とステータ内周面との間のエアギャップは、第2円弧の範囲内において、一様である。なお、第1円弧51のそれぞれと、その両側に隣り合う一対の第2円弧とは、当該第1円弧の極間中心線に関して線対称に形成されている。

以上のように構成された永久磁石埋込型電動機によれば、スリットによりロータ外周面側で鉄心部分(磁路)が広がり、磁束の集中を緩和することが出来、更に、ロータ外周面とステータ内周面との間のエアギャップが磁極中心部から極間部に向かって大きくなるように構成されるため、ロータ表面の磁気抵抗は磁極中心部から極間部に向かって大きくなり、ロータ外表面の磁気抵抗は磁極中心部から極間部に向かって大きくなり、ロータ表面の磁束密度分布は磁極中心部で最大となる正弦波に近い分布となり、磁束密度の高調波成分を低減することができ、電動機の振動騒音を小さくすることができる。

実施の形態4. 次に、上述した実施の形態の永久磁石埋込型電動機を搭載したロータリ圧縮機について説明する。なお、本発明は、上述した実施の形態何れかの永久磁石埋込型電動機を搭載した圧縮機を含むものであるが、圧縮機の種別は、ロータリ圧縮機に限定されるものではない。

図12は、永久磁石埋込型電動機を搭載したロータリ圧縮機の縦断面図である。ロータリ圧縮機260は、密閉容器261内に、永久磁石埋込型電動機(電動要素)1と、圧縮要素262とを備えている。図示はしないが、密閉容器261の底部に、圧縮要素各摺動部を潤滑する冷凍機油が貯留されている。

圧縮要素262は、主な要素として、上下積層状態に設けられたシリンダ263と、永久磁石埋込型電動機1により回転するシャフト13である回転軸264と、回転軸264に嵌挿されるピストン265と、シリンダ263内を吸入側と圧縮側とに分けるベーン(図示せず)と、回転軸264が回転自在に嵌挿され、シリンダ263の軸方向端面を閉塞する上下一対の上部フレーム266及び下部フレーム267と、上部フレーム266及び下部フレーム267にそれぞれ装着されたマフラ268とを含んでいる。

永久磁石埋込型電動機1のステータ3は、密閉容器261に焼嵌または溶接等の方法により直接取り付けられ保持されている。ステータ3のコイルには、密閉容器261に固定されるガラス端子269から電力が供給される。

ロータ5は、ステータ3の内径側に、空隙(エアギャップ15)を介して配置されており、ロータ5の中心部の回転軸264を介して圧縮要素262の軸受け部(上部フレーム及び下部フレーム)により回転自在な状態で保持されている。

次に、かかるロータリ圧縮機の動作について説明する。アキュムレータ270から供給された冷媒ガスは、密閉容器261に固定された吸入パイプ271よりシリンダ263内へ吸入される。インバータの通電によって永久磁石埋込型電動機1が回転されていることで、回転軸264に嵌合されたピストン265がシリンダ263内で回転される。それにより、シリンダ263内では冷媒の圧縮が行われる。

冷媒は、マフラを経た後、密閉容器261内を上昇する。このとき、圧縮された冷媒には冷凍機油が混入している。この冷媒と冷凍機油との混合物は、ロータ鉄心に設けた風穴を通過する際に、冷媒と冷凍機油との分離を促進され、冷凍機油が吐出パイプ272へ流入するのを防止できる。このようにして、圧縮された冷媒が、密閉容器264に設けられた吐出パイプ272を通って冷凍サイクルの高圧側へと供給される。

尚、ロータリ圧縮機の冷媒には、従来からあるR410A、R407C、R22等を用いてもよいが、低GWP(地球温暖化係数)の冷媒等などいかなる冷媒も適用できる。地球温暖化防止の観点からは、低GWP冷媒が望まれている。低GWP冷媒の代表例として、以下の冷媒がある。 (1)組成中に炭素の二重結合を有するハロゲン化炭化素:例えば、HFO−1234yf(CF3CF=CH2)である。HFOは、Hydro−Fluoro−Olefinの略で、Olefinは、二重結合を一つ持つ不飽和炭化水素のことである。尚、HFO−1234yfのGWPは4である。 (2)組成中に炭素の二重結合を有する炭化水素:例えば、R1270(プロピレン)である。尚、GWPは3で、HFO−1234yfより小さいが、可燃性はHFO−1234yfより大きい。 (3)組成中に炭素の二重結合を有するハロゲン化炭化水素または組成中に炭素の二重結合を有する炭化水素の少なくともいずれかを含む混合物:例えば、HFO−1234yfとR32との混合物等である。HFO−1234yfは、低圧冷媒のため圧損が大きくなり、冷凍サイクル(特に、蒸発器において)の性能が低下しやすい。そのため、HFO−1234yfより高圧冷媒であるR32又はR41等との混合物が実用上は有力になる。

以上に構成されたロータリ圧縮機においても、上述した永久磁石埋込型電動機を用いれば、ロータの永久磁石の径方向外側の鉄心部分の磁束の集中を緩和し、ロータ外周面の磁束密度のアンバランスを抑制することで、振動を抑制できる。特に、圧縮機用のモータは、駆動時に圧縮機構による負荷変動が発生し、ロータ外周近傍の鉄心部分に局所的な磁束の集中が発生しやすく、前記スリットによる磁束密度の緩和は効果的である。

実施の形態5. また、本発明は、図13に例示するように、上述した圧縮機260を冷凍回路の構成要素として含む、冷凍空調装置380として実施することも可能である。なお、冷凍空調装置380の冷凍回路には、凝縮器381、蒸発器382、膨張装置383を少なくとも含むが、これら凝縮器381、蒸発器382、膨張装置383を含む圧縮機以外の構成要素の構成は、特に、限定されるものではない。

以上、好ましい実施の形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の改変態様を採り得ることは自明である。

1 永久磁石埋込型電動機、3 ステータ、5 ロータ、5a ロータ外周面、11 ロータ鉄心、15 エアギャップ、19 永久磁石、21 磁石挿入孔、31、131 スリット、41 第1の部分、260 ロータリ圧縮機、261 密閉容器、380 冷凍空調装置。

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