ヒートポンプ装置、空気調和機および冷凍機

申请号 JP2014510988 申请日 2012-04-16 公开(公告)号 JPWO2013157074A1 公开(公告)日 2015-12-21
申请人 三菱電機株式会社; 发明人 庄太 神谷; 庄太 神谷; 和徳 畠山; 和徳 畠山; 健太 湯淺; 健太 湯淺; 真也 松下; 真也 松下; 真作 楠部; 真作 楠部; 牧野 勉; 勉 牧野;
摘要 冷媒と圧縮する圧縮機構7と圧縮機構1を駆動するモータ8とを有する圧縮機1と、モータ8を駆動する電圧を印加するインバータ9と、インバータ9に電圧を印加するコンバータ10と、インバータ9を駆動する駆動 信号 を生成するインバータ制御部12と、コンバータ10を駆動する駆動信号を生成するコンバータ制御部17と、を備え、インバータ制御部12は、圧縮機1を加熱運転する加熱運転モードと、圧縮機1を通常運転して冷媒を圧縮する通常運転モードを有し、コンバータ制御部17は、インバータ制御部12の加熱運転モードにおいて、モータ8に対する電圧指令値に基づいてインバータ9へ印加する電圧を設定する、ことを特徴とする。
权利要求

冷媒と圧縮する圧縮機構と前記圧縮機構を駆動するモータとを有する圧縮機と、 前記モータを駆動する電圧を印加するインバータと、 前記インバータに電圧を印加するコンバータと、 前記インバータを駆動する駆動信号を生成するインバータ制御部と、 前記コンバータを駆動する駆動信号を生成するコンバータ制御部と、 を備え、 前記インバータ制御部は、前記モータへ高周波交流電圧を印加することにより前記圧縮機を加熱運転する加熱運転モードと、前記圧縮機を通常運転して冷媒を圧縮する通常運転モードを有し、 前記コンバータ制御部は、前記インバータ制御部の前記加熱運転モードにおいて、前記モータに対する電圧指令値に基づいて前記インバータへ印加する電圧を設定する、ことを特徴とするヒートポンプ装置。前記インバータ制御部は、前記インバータ制御部の前記加熱運転モードにおいて前記モータへ印加する高周波交流電圧の周波数、位相、振幅のうち少なくともいずれか1つを使用者からの入により設定可能とすることを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ装置。前記コンバータは、前記インバータに印加する母線電圧を降圧する降圧コンバータであり、 前記コンバータ制御部は、前記モータに印加する電圧と前記母線電圧に対する電圧指令値との対応を保持し、前記対応に基づいて前記モータに印加する電圧に応じて前記母線電圧に対する電圧指令値を設定することを特徴とする請求項2に記載のヒートポンプ装置。前記コンバータ制御部は、前記インバータが前記モータに印加する電圧に対する前記インバータに印加する電圧の比率を50%以上とするよう制御することを特徴とする請求項1、2または3に記載のヒートポンプ装置。前記インバータを構成するスイッチング素子のうち、少なくとも1つがワイドバンドギャップ半導体で形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のヒートポンプ装置。前記インバータを構成しているスイッチング素子のダイオードのうち、少なくとも1つがワイドバンドギャップ半導体で形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載のヒートポンプ装置。前記ワイドバンドギャップ半導体は、炭化珪素、窒化ガリウム系材料又はダイヤモンドであることを特徴とする請求項5または6に記載のヒートポンプ装置。前記高周波交流電圧の周波数が10kHzを超える場合は、前記モータの入力電力を50W以下に制御することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載のヒートポンプ装置。請求項1〜8のいずれか1つに記載のヒートポンプ装置を備えることを特徴とする空気調和機。請求項1〜8のいずれか1つに記載のヒートポンプ装置を備えることを特徴とする冷凍機。

冷媒を圧縮する圧縮機構と前記圧縮機構を駆動するモータとを有する圧縮機と、 前記モータを駆動する電圧を印加するインバータと、 前記インバータに電圧を印加するコンバータと、 前記インバータを駆動する駆動信号を生成するインバータ制御部と、 前記コンバータを駆動する駆動信号を生成するコンバータ制御部と、 を備え、 前記インバータ制御部は、前記モータへ高周波交流電圧を印加することにより前記圧縮機を加熱運転する加熱運転モードを有し、 前記コンバータ制御部は、前記インバータ制御部の前記加熱運転モードにおいて、前記モータに対して印加される電圧に応じて前記インバータへ印加する電圧を変化させるヒートポンプ装置。前記インバータ制御部は、前記インバータ制御部の前記加熱運転モードにおいて前記モータへ印加する高周波交流電圧の周波数、位相、振幅のうち少なくともいずれか1つを変更可能とする請求項1に記載のヒートポンプ装置。前記コンバータは、前記インバータに印加する母線電圧を降圧する降圧コンバータである請求項1または2に記載のヒートポンプ装置。前記コンバータ制御部は、前記インバータが前記モータに印加する電圧に対する前記インバータに印加する電圧の比率を50%以上とするよう制御する請求項1、2または3に記載のヒートポンプ装置。前記インバータを構成するスイッチング素子のうち、少なくとも1つがワイドバンドギャップ半導体で形成されている請求項1から4のいずれか1つに記載のヒートポンプ装置。前記インバータを構成しているスイッチング素子のダイオードのうち、少なくとも1つがワイドバンドギャップ半導体で形成されている請求項1から5のいずれか1つに記載のヒートポンプ装置。前記ワイドバンドギャップ半導体は、炭化珪素、窒化ガリウム系材料又はダイヤモンドである請求項5または6に記載のヒートポンプ装置。前記高周波交流電圧の周波数が10kHzを超える場合は、前記モータの入力電力を50W以下に制御する請求項1から7のいずれか1つに記載のヒートポンプ装置。請求項1から8のいずれか1つに記載のヒートポンプ装置を備える空気調和機。請求項1から8のいずれか1つに記載のヒートポンプ装置を備える冷凍機。

说明书全文

本発明は、ヒートポンプ装置、空気調和機および冷凍機に関する。

従来のヒートポンプ装置として、空気調和機の暖房開始時の立ち上がりスピードを向上させるために、暖房時の運転停止中に高周波の低電圧を圧縮機に供給するものがある(例えば、特許文献1参照)。同様の技術として、空気調和機の周囲温度が低温状態を検知した際に、通常運転時より高周波数の単相交流電圧を圧縮機に供給するものがある(例えば、特許文献2参照)。

また、冷媒寝込み現象の発生を防止するために圧縮機を予備加熱する拘束通電において、圧縮機モータの駆動信号として、二相変調方式のPWM出にて、所定の位相で静止した出力を行う信号を生成するものがある(例えば、特許文献3参照)。また、インバータへの入力電圧をコンバータ部により降圧する技術が特許文献4に記載されている。

実開昭60−68341号公報

特開昭61−91445号公報

特開2007−166766号公報

特開2005−326054号公報

上記の特許文献1および2では、外気温度の低下に応じて圧縮機に高周波の交流電圧を印加することで圧縮機を加熱もしくは保温し、圧縮機内部の潤滑作用を円滑にする技術が示されている。

しかしながら、特許文献1には高周波の低電圧についての詳細な記載がなく、ロータの停止位置に依存する出力変化を考慮していないため、所望する圧縮機の加熱量を得られないおそれがある、という問題があった。

一方、上記特許文献2には、25kHzといった高周波の単相交流電源にて電圧を印加することが記載されているとともに、可聴域を外れることによる騒音抑制、共振周波数を外れることによる振動抑制、巻線のインダクタンス分による小電流化での入力低減と温度上昇防止、圧縮機の回転部の回転抑制といった効果が示されている。

しかしながら、特許文献2の技術では、高周波の単相交流電源であるため、特許文献2の図3に示されるように全てのスイッチング素子がオフとなる全オフ区間が比較的長く発生することになる。このとき、高周波電流は還流ダイオードを介して電動機を還流せずに直流電源に回生され、オフ区間の電流の減衰が早く、電動機に効率的に高周波電流が流れずに圧縮機の加熱効率が悪くなる、という問題があった。また、小型で鉄損の小さなモータを用いた場合に、印加電圧に対する発熱量が小さくなり使用可能範囲内の電圧で、必要な加熱量を得られないという問題もある。

また、特許文献3には、モータ巻線に直流電流を流す拘束通電を行うことにより、ロータが回転しないようにして予熱を行う技術が開示されている。

また、引用特許文献4には、引用特許文献4の図1に示すようにインバータへの入力電圧をコンバータ部により降圧する技術が開示されている。

しかし、近年のモータの高効率設計によりモータの巻線抵抗が小さくなる傾向にある。このため、特許文献3、4に示すモータ巻線に直流電流を流す予熱方法では、発熱量が巻線抵抗と電流の二乗で得られるため、巻線抵抗が減少した分、電流が増加することとなる。これにより、インバータの損失増大による発熱が問題となり、信頼性の低下や放熱構造へのコスト増加といった課題がある。

また、近年、厳しい環境配慮設計基準である欧州EuP指令(Directive on Eco−Design of Energy−using Products)や豪州MEPS(Minimum Energy Performance Standards)に適合するために、高効率な加熱が求められる。

本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、待機中の冷媒を効率良く加熱し、必要な加熱出力を安定にかつ効率的に実現することができ、圧縮機内軸受け振動および騒音を低減することができるヒートポンプ装置、空気調和機および冷凍機を得ることを目的とする。

上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、冷媒と圧縮する圧縮機構と前記圧縮機構を駆動するモータとを有する圧縮機と、前記モータを駆動する電圧を印加するインバータと、前記インバータに電圧を印加するコンバータと、前記インバータを駆動する第1の駆動信号を生成するインバータ制御部と、前記コンバータを駆動する第2の駆動信号を生成するコンバータ制御部と、を備え、前記インバータ制御部は、前記圧縮機を加熱運転する加熱運転モードと、前記圧縮機を通常運転して冷媒を圧縮する通常運転モードを有し、前記コンバータ制御部は、前記インバータ制御部の前記加熱運転モードにおいて、前記モータに対する電圧指令値に基づいて前記インバータへ印加する電圧を設定する、ことを特徴とする。

本発明にかかるヒートポンプ装置、空気調和機および冷凍機は、待機中の冷媒を効率良く加熱し、必要な加熱出力を安定にかつ効率的に実現することができ、圧縮機内軸受け振動および騒音を低減することができるという効果を奏する。

図1は、実施の形態1のヒートポンプ装置の構成例を示す図である。

図2は、ヒートポンプ装置の要部の詳細構成の一例を示す図である。

図3は、ヒートポンプ装置の加熱運転モードの実施判定処理手順の一例を示すフローチャートである。

図4は、加熱運転モードにおける動作手順の一例を示すフローチャートである。

図5は、PWM信号生成部の1相分の信号生成方法を示す図である。

図6は、実施の形態1の8通りのスイッチングパターン例を示す図である。

図7は、高周波位相指令θkとして0°と180°を切り替える場合のPWM信号の一例を示す図である。

図8は、図7に示した電圧ベクトルの変化の説明図である。

図9は、低変調率時の相電流、線間電圧、PWM信号の一例を示す図である。

図10は、電源電圧の変化の影響を示す図である。

図11は、SiデバイスとSiCデバイスの耐圧とオン抵抗の関係を示す図である。

図12は、実施の形態3のヒートポンプ装置の構成例を示す図である。

図13は、図12に示したヒートポンプ装置の冷媒の状態についてのモリエル線図である。

以下に、本発明にかかるヒートポンプ装置、空気調和機および冷凍機の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。

実施の形態1. 図1は、本発明にかかるヒートポンプ装置の実施の形態1の構成例を示す図である。本実施の形態のヒートポンプ装置100は、圧縮機1、四方弁2、熱交換器3、膨張機構4および熱交換器5が、冷媒配管6を介して、順次接続された冷凍サイクルを備える。圧縮機1の内部には冷媒を圧縮する圧縮機構7と、この圧縮機構7を駆動するモータ8とが設けられている。モータ8は、U相、V相、W相の三相の巻線を有する三相モータである。

モータ8に電圧を与え駆動させるインバータ9は、モータ8と電気的に接続されている。インバータ9は、直流電圧(母線電圧)Vdcを電源としてモータ8のU相、V相、W相の巻線に電圧Vu、Vv、Vwをそれぞれ印加する。また、インバータ9には、インバータ制御部12が電気的に接続されている。インバータ制御部12は通常運転モードと加熱運転モードの2つの運転モードを備え、それぞれのモードを制御する通常運転モード制御部13、加熱運転モード制御部14を備える。また、インバータ制御部12は駆動信号生成部16および冷媒寝込み検出部25を備える。駆動信号生成部16は、インバータ9を駆動するための信号を生成してインバータ9へ出力する。冷媒寝込み検出部25は、冷媒の寝込みを監視し、冷媒の寝込みを検出した場合、冷媒寝込みの信号を出力する。

インバータ制御部12では、通常運転モード制御部13は、ヒートポンプ装置100が通常の動作を行う場合に使用される。通常運転モード制御部13は、駆動信号生成部16を制御することにより、モータ8を回転駆動させるためのPWM(Pulse Width Modulation)信号をインバータ駆動信号として出力させる。

加熱運転モード制御部14は圧縮機1を加熱する場合(冷媒寝込み検出部25から冷媒寝込みの信号が出力された場合)に使用される。冷媒寝込み検出部25から冷媒寝込みの信号が出力された場合に、加熱運転モード制御部14は、駆動信号生成部16を制御することにより、モータ8が追従できない高周波電流を流すことによりモータ8を回転駆動させることなく圧縮機1を加熱するためのPWM信号をインバータ駆動信号として出力させる。その際、加熱運転モード制御部14の高周波通電部15が、駆動信号生成部16を制御し、駆動信号生成部16がPWM信号を出力してインバータ9を駆動することで、圧縮機1に滞留した液冷媒を短時間で温めて気化させ、圧縮機1外部へ排出させる。

インバータ9には、コンバータ10の出力電圧が印加される。コンバータ10は、コンバータ制御部17により駆動される。コンバータ制御部17は、母線電圧指令値推定部20、母線電圧制御部19および駆動信号生成部18を備える。コンバータ制御部17は、インバータ制御部12からの信号と母線電圧検出部11からの信号(母線電圧の検出値)を基に、コンバータ10に対する駆動信号を生成してコンバータ10へ出力する。このようにコンバータ10を制御することで、インバータ9へ任意の母線電圧を出力する。

図2は、ヒートポンプ装置の要部の詳細構成の一例を示す図である。図2は、インバータ9、コンバータ10及びインバータ制御部12、コンバータ制御部17の構成を示している。インバータ9は、6つのスイッチング素子(21a、21d、21b、21e、21c、21f)を備え、上側(上側素子を表す文字をPとする)と下側(下側素子を表す文字をNとする)のスイッチング素子の直列接続部が並列に3個接続された回路である。インバータ9はインバータ制御部12から送られるPWM信号UP、UN、VP、VN、WP、WNによりそれぞれに対応したスイッチング素子を駆動することで、三相の電圧Vu、Vv、Vwを発生させ、モータ8のU相、V相、W相の巻線それぞれに電圧を印加する。なお、インバータ9の入力側(母線電圧Vdcの供給側)にはVdcを検知するための母線電圧検出部11が設けられている。

インバータ制御部12の加熱運転モード制御部14は高周波通電部15を備える。なお、図2では、本実施の形態のヒートポンプ装置において特徴的な動作を行う構成要素のみを記載するようにしており、図1に示した通常運転モード制御部13等については記載を省略している。

加熱運転モード制御部14の高周波通電部15では、加熱指令部24により冷媒寝込み検出部25からの冷媒寝込みの信号を検出すると、高周波電圧指令Vkおよび高周波位相指令θkを生成する。駆動信号生成部16の電圧指令値生成部23は、高周波通電部15から入力される高周波電圧指令Vkおよび高周波位相指令θkに基づいて、三相(U相,V相,W相)それぞれの電圧指令Vu*,Vv*,Vw*を生成する。PWM信号生成部22は、三相電圧指令Vu*,Vv*,Vw*に基づいてPWM信号(UP,VP,WP,UN,VN,WN)を生成してインバータ9を駆動することにより、モータ8に電圧を印加させる。このとき、モータ8のロータが回転しないような高周波電圧を印加させ、モータ8を備えている圧縮機1を加熱する。

また、インバータ9には、コンバータ10の出力電圧が印加される。またインバータ9に入力される電圧は平滑コンデンサ32にて平滑され、印加される。コンバータ10は、たとえば、リアクトル34と、例えばMOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field-Effect Transistor)等のようなスイッチング素子33と、例えばファストリカバリダイオード等のような逆流防止素子35とにより構成された降圧コンバータである。スイッチング素子33は、コンバータ制御部17により、そのスイッチングを制御される。コンバータ10の出力電圧すなわちインバータ9への印加電圧は母線電圧検出部11によって検出される。

以下、本実施の形態のヒートポンプ装置100の詳細な動作について図1、2の構成図と図3、4のフローチャートを用いて説明する。図3は、ヒートポンプ装置100の加熱運転モードの実施判定処理手順の一例を示すフローチャートである。

インバータ制御部12は、待機状態(圧縮機1停止状態)か否かを判断し(ステップS1)、待機状態の場合(ステップS1 Yes)には、冷媒寝込み検出部25が、圧縮機1内に冷媒が寝込んだか否かを判定する(ステップS2)。圧縮機1内に冷媒が寝込んでいる場合(ステップS2 Yes)には、加熱運転モード制御部15による制御を行い、加熱運転モードへ移行して圧縮機1を加熱する動作を行い(ステップS3)、ステップS1に戻る。

圧縮機1内に冷媒が寝込んでいない場合(ステップS2 No)、加熱運転モードへは移行せずにステップS1へ戻る。待機状態でない場合(ステップS1 No)、実施判定処理の動作を終了し、通常運転モード等、待機状態以外の動作処理を開始する。

図4は、加熱運転モードにおける動作手順の一例を示すフローチャートである。加熱運転モードへ移行すると、加熱運転モード制御部15の高周波通電部15の加熱指令部24は、モータに与える電圧の振幅(出力線間電圧Vuv,Vvw、Vwu)を取得し(ステップS11)、高周波位相指令θkを生成して駆動信号生成部16の電圧指令値生成部23へ出力する(ステップS12)。高周波位相指令θkは、例えば、ユーザー操作などにより外部からθ1、θ2の2種類の角度が与えられ、所定の周期でその2つを交互に選択することにより生成する。この所定の周期もまた、ユーザー操作などにより外部から与えられるようにしてもよいし、高周波電圧指令Vkについてもユーザー操作などにより外部から与えられるようにしてもよい。

次に、加熱指令部24は、必要な加熱量に基づいてモータ8に与える電圧指令V*を求めて電圧指令値生成部23へ出力する(ステップS13)。必要な加熱量は、例えばあらかじめ設定しておいてもよいし、設計者により、圧縮機1温度や周囲環境温度等に応じて変更するよう設定してもよい。圧縮機1とモータ8の組合せが決まれば、モータ8に与える電圧指令V*と発熱量(すなわち加熱量)との関係は一意に決まる。したがって、例えば、加熱指令部24が、モータ8と圧縮機1の種類に応じて発熱量とモータ8に電圧指令V*との対応をテーブルデータとして保持しておき、必要な発熱量とテーブルデータとを用いて電圧指令V*を求める。なお、加熱のために必要な発熱量は、外気温度、圧縮機1温度、母線電圧等に依存する。このため、必要な発熱量と電圧指令V*との対応をテーブルデータとして保持する代わりに、モータ8と圧縮機1の種類に応じて外気温度、圧縮機1温度、母線電圧等と電圧指令V*との対応をテーブルデータとして保持し、モータ8と圧縮機1の種類と外気温度、圧縮機1温度、母線電圧等に対応するテーブルデータを参照して電圧指令V*を求めるようにしてもよい。なお、電圧指令V*の算出方法は、テーブルデータを用いる例に限定されず、例えば、あらかじめ定めた計算式などにより発熱量に応じて求めてもよい。

次に、加熱運転モード制御部15は、母線電圧検出部11により検出された母線電圧検出値Vdcを取得し(ステップS14)、母線電圧検出値Vdcに1/√2を乗算した値で電圧指令V*を除算することにより高周波電圧指令Vkを求める。加熱のために必要な発熱量は、外気温度、圧縮機1温度、母線電圧等に依存して変化するため、このように、母線電圧検出値Vdcを用いて高周波電圧指令Vkを求めることにより、より適切な電圧指令値を得ることができ、信頼性を向上させることが可能である。

電圧指令生成部23は、高周波電圧指令Vk、高周波位相指令θkに基づいて、モータ各相の電圧指令値Vu*、Vv*、Vw*を求め、PWM信号生成部22へ出力する(ステップS15)。PWM信号生成部22は、モータ各相の電圧指令値Vu*、Vv*、Vw*と、所定の周波数で振幅Vdc/2のキャリア信号と、を比較してPWM信号UP、VP、WP、UN、VN、WNを生成し、インバータ9のスイッチング素子21a〜21fを駆動して、処理を終了する(ステップS16)。これにより、スイッチング素子21a〜21fの駆動によりモータ8に電圧が印加される。

一方、コンバータ制御部17では、インバータ制御部12からモータ8に与える電圧振幅を取得し、母線電圧制御部19が、当該電圧振幅が母線電圧検出部11により検出された母線電圧検出値Vdcより小さいか否かを判断する(ステップS17)。電圧振幅の方が小さい場合(ステップS17 Yes)、母線電圧制御部19は母線電圧指令値をモータに与える電圧振幅の0.5倍に設定するよう制御する(ステップS18)。具体的には、母線電圧制御部19は母線電圧指令値をモータに与える電圧振幅の0.5倍に設定するよう母線電圧指令値推定部20へ指示し、母線電圧指令値推定部20は、母線電圧指令値をモータに与える電圧振幅の0.5倍に決定する。また、母線電圧制御部19は、母線電圧検出値Vdcと母線電圧指令値推定部20にて決定した母線電圧指令値とに基づいて、スイッチング素子33のオンデューティを演算して駆動信号生成部18へ出力する。

駆動信号生成部18は、オンデューティの値とキャリアとを比較して駆動パルス(駆動信号)を生成してコンバータ部10へ出力する(ステップS19)。ここで、オンデューティはキャリア周期におけるスイッチング素子33のオン時間の割合であり、0〜1の値とする。このため、ここでのキャリア振幅は1とすればよい。このように生成した駆動パルス信号に基づき、スイッチング素子33のオンオフを制御することでコンバータ動作により母線電圧の降圧を行う。

一方、モータ8に与える電圧振幅が母線電圧検出値以上である場合(ステップS17 No)、コンバータ制御部17はコンバータ10を停止とし(ステップS20)、母線電圧の降圧は行わない。

ここで、上記説明ではモータ8に与える電圧振幅(インバータ9がモータ8に印加する電圧)が母線電圧検出値Vdc(コンバータ10がインバータ9に印加する電圧)より小さい場合の母線電圧指令値を、当該電圧振幅の0.5倍としたが、この倍率は0.5倍に限定されない。実際には、モータの発熱状況等に応じて、モータパラメータが変化し、実際のモータの発熱量が、所望の発熱量と異なる場合も考えられる。この場合、予め発熱量のバラツキを考慮し、振幅の0.5倍の値を中心に増減してもよい。例えば、モータ8に与える電圧振幅と設定する母線電圧検出値とをテーブルとして保持しておき、テーブルを用いてモータ8に与える電圧振幅に応じて母線電圧検出値を設定するようにしてもよい。

次に、電圧指令生成部23における電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*の生成方法と、PWM信号生成部22におけるPWM信号の生成方法とについて説明する。

モータ8が三相モータの場合、一般的にUVWの位相は互いに120°(=2π/3)異なる。そのためVu*,Vv*,Vw*を以下の式(1)のように位相2π/3ずつ異なる余弦波(正弦波)と定義する。 Vu*=Vk×cosθ Vv*=Vk×cos(θ−2π/3) Vw*=Vk×cos(θ+2π/3) …(1)

電圧指令生成部23は、高周波電圧指令Vkと、高周波位相指令θkとに基づき、式(1)により各相の電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*を計算し、計算した電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*をPWM信号生成部22へ出力する。PWM信号生成部22は電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*と、所定の周波数で振幅Vdc(母線電圧の検出値)/2のキャリア信号(基準信号)とを比較し、相互の大小関係に基づきPWM信号UP,VP,WP,UN,VN,WNを生成する。

なお、式(1)では、単純な三角関数により電圧指令Vu*,Vv*,Vw*を求めているが、電圧指令Vu*,Vv*,Vw*の求め方はこれに限定されず、二相変調や、三次高調波重畳変調、空間ベクトル変調といった他の方法を用いても何ら問題は無い。

次に、PWM信号生成部22におけるPWM信号生成方法について説明する。図5は、PWM信号生成部22の1相分の信号生成方法を示す図である。図5に示す信号生成方法は一般に非同期PWMと称される手法に相当する。電圧指令信号Vu*と所定の周波数で振幅Vdc/2のキャリア信号とを比較し、相互の大小関係に基づきPWM信号UP,UNを生成する。

すなわち、キャリア信号が電圧指令値Vu*よりも大きいときは、UPをON、UNをOFFとし、それ以外はUPをOFF、UNをONにする。他の相も同様にPWM信号を生成する。

図6は、本実施の形態における8通りのスイッチングパターン例を示す図である。なお、図6では、各スイッチングパターンで発生する電圧ベクトルをV0〜V7として記載している。また、各電圧ベクトルの電圧の方向を各相の名称(U,V,W)に+または−を付して示し、電圧が発生しない場合には0であらわしている。ここで、+Uとは、U層を介してモータ8へ流入し、V相及び、W相を介してモータ8から流出するU層方向の電流を発生させる電圧であり、−Uとは、V相及びW相を介してモータ8へ流入し、U相を介してモータ8から流出する−U層方向の電流を発生させる電圧である。±V、±Wについても同様である。

図6に示すスイッチングパターンを組み合わせて電圧ベクトルを出力することでインバータ9に所望の電圧を出力させることができる。圧縮機1の冷媒をモータ8により圧縮動作させる場合(通常運転モード)には数10〜数kHz以下で動作することが一般的である。このときに、さらに加熱モードではθを高速で変化させることにより、数kHzを超える高調波電圧を出力し、圧縮機1に通電し加熱(加熱運転モード)することが可能となる。

ただし、一般的なインバータの場合、キャリア信号の周波数であるキャリア周波数はインバータのスイッチング素子のスイッチングスピードにより上限が決まっているため、搬送波であるキャリア周波数以上の高周波電圧を出力することは困難である。一般的なIGBT(Insulate Gate Bipolar Transistor)の場合、スイッチングスピードの上限が20kHz程度である。また、高周波電圧の周波数がキャリア周波数の1/10程度になると、高周波電圧の波形出力制度が悪化し、直流成分が重畳するなどの悪影響を及ぼす恐れがある。この点を考慮し、キャリア周波数を20kHzとした場合に高周波電圧の周波数をキャリア周波数の1/10の2kHz以下とすると、高周波電圧の周波数は可聴周波数領域となり、騒音悪化が懸念される。本実施の形態では、位相θを高速で変化させることにより、キャリア周波数に同期した交流電圧をモータ8の巻線に印加することができ、モータ8に印加する交流電圧を可聴周波数外とすることが可能である。

次に、高周波位相指令θkを用いて位相θを高速に変化させる動作について説明する。図7は、加熱指令部24が出力する高周波位相指令θkとして0°と180°を切り替える場合のPWM信号の一例を示す図である。高周波位相指令θkを、キャリア信号の頂もしくは底のタイミングで、0°または180°に切り替えることで、キャリア信号に同期したPWM信号を出力することが可能となる。このとき、電圧ベクトルはV0(UP=VP=WP=0)、V4(UP=1、VP=WP=0)、V7(UP=VP=WP=1)、V3(UP=0、VP=WP=1)、V0(UP=VP=WP=0)、…の順で変化する。

図8は、図7に示した電圧ベクトルの変化の説明図である。なお、図8では破線で囲まれたスイッチング素子21がオン、破線で囲まれていないスイッチング素子21がオフの状態であることを表している。図8に示すようにV0ベクトル、V7ベクトル印加時はモータ8の線間は短絡状態となり、電圧が出力されない。この場合、モータ8のインダクタンスに蓄えられたエネルギーが電流となって短絡回路中を流れる。また、V4ベクトル印加時には、U相を介してモータ8へ流入し、V相及び、W相を介してモータ8へ流入し、U相を介してモータ8へ流入し、V相及び、W相を介してモータ8から流出するU相方向の電流(+Iuの電流)が流れ、V3ベクトル印加時には、V相及びW相を介してモータ8へ流入し、U相を介してモータ8から流出する−U相方向の電流(−Iuの電流)がモータ8の巻線に流れる。つまり、V4ベクトル印加時と、V3ベクトル印加時とでは逆方向の電流がモータ8の巻線に流れる。そして、電圧ベクトルがV0、V4、V7、V3、V0、…の順で変化するため、+Iuの電流と−Iuの電流とが交互にモータ8の巻線に流れることになる。特に、図8に示すように、V4ベクトルとV3ベクトルとが1キャリア周期(1/fc)の間に現れるため、キャリア周波数fcに同期した交流電圧をモータ8の巻線に印加することが可能となる。また、V4ベクトル(+Iuの電流)とV3ベクトル(−Iuの電流)とが交互に出力されるため、正逆のトルクが瞬時に切り替わる。そのため、トルクが相殺されることによりロータの振動を抑えた制御が可能となる。

また、コンバータ制御に関しては、スイッチング素子33がオンした場合には、逆流防止素子35は導通が阻止され、リアクトル34には電源電圧が印加される。また、スイッチング素子33がオフした場合には、逆流防止素子35は導通し、リアクトル34には、スイッチング素子33がON時に蓄えられていたエネルギーによりスイッチング素子33オン時と同じ向きの極性で電圧が誘導される。このとき、電源電圧とコンバータの出力電圧との関係は式(2)で与えられ、オンデューティの調整によって母線電圧を調整可能であることが分かる。 Vdc=D×Vs …(2) Vdc:母線電圧、VS:電源電圧、D:ディーティ

なお、低変調率時に母線電圧が低くなることで無通電区間であるTd区間が生じる。Td区間は実ベクトル区間と違いPWM信号から制御することが難しい。図9に低変調率時の相電流、線間電圧、PWM信号の一例を示す。オンデューティが低いことで、Td区間が生じ、本来なら、たとえば実ベクトルV3、V4もしくはゼロベクトルV0、V7などを生じるはずがTd区間からTd区間、またTd区間からゼロベクトル区間への移行の期間が生じている。さらに図9の右側に示す相電流と線間電圧の拡大図に示すようにTd区間からTd区間、またはTd区間からゼロベクトルV7への移行区間において、線間電圧のdv/dtが急峻に増減し高周波時においてはIwに示すようなパルス電流が発生している。これは端子間容量、及び還流ダイオードのリカバリ特性による短絡現象と考えられる。

このようなパルス状の電流が発生することで、損失増加や装置の誤動作が発生しシステムの安定性が損なわれる問題がある。パルス上の電流は数百ナノ秒でありメガHzの高調波ノイズの発生源となる可能性も考えられる。このため、本実施の形態では、コンバータ制御部17では変調率を高く設定し、実ベクトル区間を長く設定するよう制御する。これにより、Td区間にモータのL成分に蓄えられるエネルギーを減少させ、また線間電圧のdv/dtを抑制することにより上記のパルス電流が抑制可能となる。なお、変調率をおよそ50%以上に設定することによりパルス状の電流の発生が抑制可能である。

図10は、電源電圧の変化の影響を示す図である。電源電圧にバラツキが生じた場合、図10に示すように線間電圧出力の面積は一定であるが、振幅が変化することによりモータ巻線に流れる出力電流のdi/dtが変化し加熱出力が変動してしまう問題が生じる。しかし、本実施の形態1ではコンバータ10を搭載し、電源電圧の変動が起きた際にも任意の出力電圧をインバータ9へ入力可能であるため、電源電圧のバラツキが生じた際にも使用者が所望する加熱出力を安定して供給可能となる。

また、加熱運転モードにおいて、圧縮動作時の運転周波数(〜1kHz)より高い周波数で動作させ、高周波電圧をモータ8に印加することで、回転トルクや振動が発生すること無く、また高周波電圧印加によるモータ8の鉄損と、巻線に流れる電流によって発生する銅損を利用することで、効率よくモータ8を加熱することが可能となる。前記のモータ8の加熱により圧縮機1内に滞留する液冷媒が加熱されて気化し、圧縮機1の外部へと漏出する。冷媒寝込み検出部25は、この冷媒漏出が所定量あるいは所定時間行われたことを判断して寝込み状態から正常状態への復帰を判別し、モータ8の加熱を終了する。

以上のように、本実施の形態のヒートポンプ装置100では、圧縮機1に液冷媒が滞留した状態である場合において、位相を高速に変化させることにより、高効率に、また使用者が所望する必要加熱量を満たす高周波通電により可聴周波数(20〜20kHz)外の周波数の電流をモータ8へ流すことにより騒音を抑えつつ、モータ8を加熱できる。これにより、圧縮機1内に滞留した液冷媒を効率的に加熱することができ、滞留した液冷媒を圧縮機1の外で漏出することができる。

また、降圧コンバータ(コンバータ10)により母線電圧と振幅の比率を高く設定することで、出力を一定に保ち、またパルス状の電流の発生を抑制することで、信頼性の高い装置を提供可能とする。

一般に、圧縮機動作時の運転周波数は高々1kHz程度である。そのため、高効率に加熱を行うには、1kHz以上の高周波電圧をモータ8に印加すればよい、また、例えば14kHz以上の高周波電圧をモータ8に印加すれば、モータ8の鉄心の振動音がほぼ可聴周波数上限に近づくため、騒音の低減にも効果がある。そこで、たとえば、可聴周波数外の20kHz程度の高周波電圧となるようモータ8を制御すればよい。

なお、高周波電圧の周波数はスイッチング素子21a〜21fの最大定格周波数を超えると素子破壊を起こし、負荷もしくは電源短絡を起こすことがある。そのため、信頼性確保を目的に高周波電圧の周波数は最大定格周波数以下とすることが望ましい。

また、周波数10kHz、出力50Wを超える加熱機器の場合、電波法百条による制約があるため、事前に50Wを超えないように電圧指令の振幅の調整や、流れる電流を検出して50W以下となるようにフィードバックすることで、電波法を遵守した圧縮機1の加熱が可能となる。

実施の形態2. 次に、本発明にかかる実施の形態2のヒートポンプ装置について説明する。本実施の形態のヒートポンプ装置100の構成は実施の形態1と同様である。以下、実施の形態1と異なる部分を説明する。

本実施の形態のヒートポンプ装置は、図2に示したスイッチング素子21a〜21fをワイドバンドギャップ半導体デバイスであるシリコンカーバイドデバイス(以下、SiCデバイス)のスイッチング素子としたものである。図11は、SiデバイスとSiCデバイスの耐圧とオン抵抗の関係を示す図である。現在、一般的には珪素(Si)を材料とする半導体を用いるのが主流である。Siデバイスと比較してSiCデバイスではバンドギャップが大きく、図11に示すように、大幅に耐圧とオン抵抗のトレードオフを改善できることが知られている。例えば、現在のSiデバイスを使った誘導加熱調理器では冷却装置や放熱ファンが必須とされているが、ワイドバンドギャップ半導体デバイスであるSiCデバイスを用いることにより大幅に素子損失が低減可能であり、従来の冷却装置や放熱フィンの小型化または削除が可能となる。

上記のようにスイッチング素子を従来のSiデバイスからSiCデバイスに変更することで大幅な低損失化が可能となり、冷却装置や放熱フィンの小型化、または削除が可能となり、装置自体の大幅な低コスト化ができる。また、高周波でのスイッチングが可能となることで、モータ8に更に高周波の電流を流すことが可能となり、モータ8の巻線インピーダンス増加による巻線電流低減によりインバータ9に流入する電流を低減し、より高効率なヒートポンプ装置を得ることが可能となる。高周波化することにより人間の可聴域である16kHz以上の高周波に駆動周波数を設定することが可能となり、騒音対策がしやすいといった利点もある。

また、SiCを使用した場合、従来のSiに比べ低損失で電流を格段に多く流すことができるため、冷却フィンを小型化するなどの効果を得ることができる。本実施の形態ではSiCデバイスを例に説明したが、SiCに代えて窒化ガリウム系材料やダイヤモンドなどのワイドバンドギャップ半導体デバイスを用いても同様であることは、当業者にとっては明らかである。なお、インバータが備えている各スイッチング素子のダイオードのみをワイドバンドギャップ半導体としてもよい。また、複数存在しているスイッチング素子のうちの一部(少なくとも1つ)をワイドバンドギャップ半導体で形成するようにしてもよい。一部の素子にワイドバンドギャップ半導体を適用した場合にも上述した効果を得ることができる。

また、実施の形態1および2では、スイッチング素子として主にIGBTを用いた場合を想定しているが、スイッチング素子はIGBTに限定されるものではなく、スーパージャンクション構造のパワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)やその他の絶縁ゲート半導体装置、バイポーラトランジスタでも同様であることは当業者にとっては明らかである。以上述べた以外の本実施の形態の構成および動作は、実施の形態1と同様である。

実施の形態3. 図12は、本発明にかかるヒートポンプ装置の実施の形態3の構成例を示す図である。本実施の形態では、実施の形態1、2で説明したヒートポンプ装置を空気調和機、ヒートポンプ給湯機、冷蔵庫、冷凍機等に搭載する際の構成および動作の一例について説明する。

図13は、図12に示したヒートポンプ装置の冷媒の状態についてのモリエル線図である。図13において、横軸は比エンタルピ、縦軸は冷媒圧力を示す。

本実施の形態のヒートポンプ装置では、圧縮機51、熱交換器52、膨張機構53、レシーバ54、内部熱交換器55、膨張機構56および熱交換器57は、配管により順次接続され、冷媒が循環する主冷媒回路58を構成している。なお、主冷媒回路58において、圧縮機51の吐出側には、四方弁59が設けられ、冷媒の循環方向が切り替え可能となっている。また、熱交換器57の近傍には、ファン60が設けられる。また、圧縮機51は、上記実施の形態1、2で説明した圧縮機1であり、インバータ9によって駆動されるモータ8と圧縮機構7とを有する圧縮機である。図13では図示を省略しているが、本実施の形態のヒートポンプ装置は、圧縮機51のモータ8を駆動するインバータ9、インバータ制御部12、母線電圧検出部11、コンバータ10、コンバータ制御部17を備える。

さらに、本実施の形態のヒートポンプ装置は、レシーバ54と内部熱交換器55との間から、圧縮機51のインジェクションパイプまでを配管により繋ぐインジェクション回路62を備える。インジェクション回路62には、膨張機構61、内部熱交換器55が順次接続されている。熱交換器52には、が循環する水回路63が接続される。なお、水回路63には、給湯器、ラジエータや床暖房等の放熱器等の水を利用する装置が接続される。

本実施の形態のヒートポンプ装置の動作について説明する。まず、暖房運転時の動作について説明する。暖房運転時には、四方弁59は実線方向に設定される。なお、この暖房運転には、空調で使われる暖房だけでなく、水に熱を与えて温水を作る給湯も含む。

圧縮機51で高温高圧となった気相冷媒(図13の点A)は、圧縮機51から吐出され、凝縮器であり放熱器となる熱交換器52で熱交換されて液化する(図13の点B)。このとき、冷媒から放熱された熱により、水回路63を循環する水が温められ、暖房や給湯に利用される。

熱交換器52で液化された液相冷媒は、膨張機構53で減圧され、気液二相状態になる(図13の点C)。膨張機構53で気液二相状態になった冷媒は、レシーバ54で圧縮機51へ吸入される冷媒と熱交換され、冷却されて液化される(図13の点D)。レシーバ54で液化された液相冷媒は、主冷媒回路58と、インジェクション回路62とに分岐して流れる。

主冷媒回路58を流れる液相冷媒は、インジェクション回路62を流れる冷媒(膨張機構61で減圧され気液二相状態となった冷媒)と内部熱交換器55で熱交換されて、さらに冷却される(図13の点E)。内部熱交換器55で冷却された液相冷媒は、膨張機構56で減圧されて気液二相状態になる(図13の点F)。膨張機構56で気液二相状態になった冷媒は、蒸発器となる熱交換器57で外気と熱交換され、加熱される(図13の点G)。そして、熱交換器57で加熱された冷媒は、レシーバ54でさらに加熱され(図13の点H)、圧縮機51に吸入される。

一方、インジェクション回路62を流れる冷媒は、上述したように、膨張機構61で減圧されて(図13の点I)、内部熱交換器55で熱交換される(図13の点J)。内部熱交換器55で熱交換された気液二相状態の冷媒(インジェクション冷媒)は、気液二相状態のまま圧縮機51のインジェクションパイプから圧縮機51内へ流入する。

圧縮機51では、主冷媒回路58から吸入された冷媒(図13の点H)が、中間圧まで圧縮、加熱される(図13の点K)。中間圧まで圧縮、加熱された冷媒(図13の点K)に、インジェクション冷媒(図13の点J)が合流して、温度が低下する(図13の点L)。そして、温度が低下した冷媒(図13の点L)が、さらに圧縮、加熱され高温高圧となり、吐出される(図13の点A)。

なお、インジェクション運転を行わない場合には、膨張機構61の開度を全閉にする。つまり、インジェクション運転を行う場合には、膨張機構61の開度が所定の開度よりも大きくなっているが、インジェクション運転を行わない際には、膨張機構61の開度を所定の開度より小さくする。これにより、圧縮機51のインジェクションパイプへ冷媒が流入しない。なお、膨張機構61の開度は、マイクロコンピュータ等を利用した電子制御により制御される。

次に、ヒートポンプ装置100の冷房運転時の動作について説明する。冷房運転時には、四方弁59は破線方向に設定される。なお、この冷房運転には、空調で使われる冷房だけでなく、水から熱を奪って冷水を作ることや、冷凍等も含む。

圧縮機51で高温高圧となった気相冷媒(図13の点A)は、圧縮機51から吐出されると四方弁59を経由して熱交換器57側に流れていき、凝縮器であり放熱器となる熱交換器57で熱交換されて液化する(図13の点B)。熱交換器57で液化された液相冷媒は、膨張機構56で減圧され、気液二相状態になる(図13の点C)。膨張機構56で気液二相状態になった冷媒は、内部熱交換器55において、インジェクション回路62を流れる冷媒と熱交換され、冷却されて液化される(図13の点D)。内部熱交換器55では、膨張機構56で気液二相状態になった冷媒と、内部熱交換器55で液化された液相冷媒を膨張機構61で減圧させて気液二相状態になった冷媒(図13の点I)とを熱交換させている。内部熱交換器55で熱交換された液相冷媒(図13の点D)は、主冷媒回路58と、インジェクション回路62とに分岐して流れる。

主冷媒回路58を流れる液相冷媒は、レシーバ54で圧縮機51に吸入される冷媒と熱交換されて、さらに冷却される(図13の点E)。レシーバ54で冷却された液相冷媒は、膨張機構53で減圧されて気液二相状態になる(図13の点F)。膨張機構53で気液二相状態になった冷媒は、蒸発器となる熱交換器52で熱交換され、加熱される(図13の点G)。このとき、冷媒が吸熱することにより、水回路63を循環する水が冷やされ、冷房や冷凍に利用される。そして、熱交換器52で加熱された冷媒は、四方弁59を経由してレシーバ54へ流入し、そこでさらに加熱され(図13の点H)、圧縮機51に吸入される。

一方、インジェクション回路62を流れる冷媒は、上述したように、膨張機構61で減圧され(図13の点I)、内部熱交換器55で熱交換される(図13の点J)。内部熱交換器55で熱交換された気液二相状態の冷媒(インジェクション冷媒)は、気液二相状態のまま圧縮機51のインジェクションパイプから圧縮機51内へ流入する。圧縮機51内での圧縮動作については、上述した暖房運転時と同様である。

なお、インジェクション運転を行わない際には、上述した暖房運転時と同様に、膨張機構61の開度を全閉にして、圧縮機51のインジェクションパイプへ冷媒が流入しないようにする。

また、上記説明では、熱交換器52は、冷媒と、水回路63を循環する水とを熱交換させるプレート式熱交換器のような熱交換器であるとして説明した。しかし、熱交換器52は、これに限らず、冷媒と空気を熱交換させるものであってもよい。また、水回路63は、水が循環する回路ではなく、他の流体が循環する回路であってもよい。

以上のように、実施の形態1、2、3で説明したヒートポンプ装置は、空気調和機、ヒートポンプ給湯機、冷蔵庫、冷凍機等のインバータ圧縮機を用いたヒートポンプ装置に利用することができる。

以上のように、本発明にかかるヒートポンプ装置は、冷媒寝込み現象を効率的に解消させることが可能なヒートポンプ装置として有用である。

1,51 圧縮機 2,59 四方弁 3,5,52,57 熱交換器 4,53,56,61 膨張機構 6 冷媒配管 7 圧縮機構 8 モータ 9 インバータ 10 コンバータ 11 母線電圧検出部 12 インバータ制御部 13 通常運転モード制御部 14 加熱運転モード制御部 15 高周波通電部 16 駆動信号生成部 17 コンバータ制御部 18 駆動信号生成部 19 母線電圧制御部 20 母線電圧指令値推定部 21a〜21f スイッチング素子 22 PWM信号生成部 23 電圧指令値生成部 24 加熱指令部 25 冷媒寝込み検出部 54 レシーバ 55 内部熱交換器 58 主冷媒回路 60 ファン 62 インジェクション回路 63 水回路 100 ヒートポンプ装置

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