【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、内面が円筒又はまゆ形状のケーシング内に偏心又は同心に取付けられる羽根車を有し、該ケーシング内の回転液膜の作動で気体を吸気・排気するようにした液封式ポンプに関し、特にその軸封機構に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、液封式ポンプには、内面が円筒形に形成されたケーシング内に、前向きになった羽根を多数有する羽根車を中心をずらして位置したものと、内面が上下に膨らみを有するまゆ形状(楕円形)に形成されたケーシング内に、上記の羽根車を同心状に設置したものとがあり、何れの型式のものも、予めケーシングのほぼ半分位入れられた水その他の液体を、運転時、羽根車によってひっかくように回転し、遠心力によってケーシング内面に沿って液膜を形成し、該液膜が羽根車の隣り合った2枚の羽根と両側板とによって形成される各部屋内を出入りするときのポンプ作用(ピストン作用)によって気体の吸気・排気作用を行わせるようになっている。 【0003】図3は、上記前者に属する従来例を示す縦断面図であり、図4は、図3のIV−IV線断面図である。 図において、ケーシング(胴体)1は円筒形に形成されており、その両側にはケーシングカバー2,2が取付けられ、これらの両ケーシングカバー2,2の外側には軸受ブラケット3,3が取付けられている。 一方、ケーシング1の内部には、前向きになった羽根を多数有する羽根車4が頂部をケーシング内面に近接するように上方に偏心して収容され、軸5を介し軸受6によって支持されている。 【0004】運転時、ケーシング内面に沿って形成される、内面が図の破線7aで示された液封リング7で周辺部を封じられた各羽根室の容積変化によって、ポンプ作用させるようになっており、空気(気体)が羽根車4へ半径方向に出入りするポートシリンダ8が羽根車4の内面に接するようにして設けられている。 該ポートシリンダ8は、図4において液膜内面7aに沿って右側ほぼ1 80°の角度範囲に吸気口が、また左側ほぼ180°の角度範囲に排気口がそれぞれ設けられており、ケーシングカバー2の内側に形成される吸排気通路9に連通されている。 【0005】他方、当該液封式ポンプの軸封手段(機構)は、軸5が両ケーシングカバー2を貫通する部分に設けられた軸封部10によって行われ、該軸封部10 は、ケーシング1の最下部に設けられた水室11へ補給水弁12を通り、矢印aのように補給された圧力水を、 矢印bのように補給水通路13、ケーシングカバー2の内側通路14を経て注水して軸封効果が図られている。 なお、一般に上記圧力水は、外部から供給される作動水の補給水を、一部分岐して軸封側へ回すようになっており、この際、補給水通路が正圧となるようにケーシング内部への補給水口を絞っている。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】上記のように、従来例における液封式ポンプの軸封装置においては、外部からの圧力水を軸封部へ注水して軸封効果を図って来たため、圧力水が供給されないときや、圧力水の圧力が低いかポンプ真空度が高いときなどには、軸封効果が充分でなく、真空が低下する場合があるという問題点があった。 【0007】本発明は、外部の軸封用圧力水がないときでも、常に安定した軸封効果が期待でき、高真空域での性能が向上し、高真空維持が容易となる液封式ポンプを提供することを目的としている。 【0008】 【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明は、内面が円筒又はまゆ形状のケーシング内に、偏心又は同心に取付けられる羽根車を有し、該ケーシング内の回転液膜の作動で気体を吸気・排気するようにした液封式ポンプにおいて、上記ケーシングの死点に相当する最偏心位置部と、該ケーシングの両側のケーシングカバーの一部に形成された圧力室とを導通させ、 上記死点部の液膜圧力水の一部を、該圧力室を経て軸封部の封水リングへ導いて軸封するようにしたことを特徴としている。 【0009】 【作用】本発明は上記のように構成されているので、ポンプ運転時、羽根車の回転により、ケーシング内面に沿って形成された液封リングの水膜で外側を封じられた各羽根室の容積変化によってポンプ作用を行なうことは従来のものと変りはないが、本発明では、ケーシングの死点に相当する最偏心位置部の正圧水の一部が、ケーシングカバーの一部に形成された圧力室へ導かれ、該圧力室から軸封部の封水リングへ通水される。 このようにして、外部の圧力水を必要とせずに、運転中、常にケーシング内の液封リング圧力水の一部を利用して確実な軸封効果が得られる。 【0010】 【実施例】次に、本発明の実施例を図面と共に説明する。 図1は、本発明の一実施例を示す液封式ポンプの縦断面図であり、図2は、図1のII−II線による矢視図で、ケーシング内の羽根車と側板の吸気口及び排気口との位置関係、並びにケーシングカバー内部に形成された吸込室、吐出室及び圧力室を示す説明図であり、図中、 図3、図4に記載した符号と同一の符号は同一ないし同類部分を示すものとする。 【0011】図において、ケーシング21は円筒形に形成されており、上部に、吸気フランジ31と排気フランジ32の各開口31aと32aにそれぞれ通じる通路2 1aと21bを有し、両側面はそれぞれ側板(サイドプレート)22,22によって閉鎖されており、これら各側板22には、図2に示すように、左右両側に両端部を除いてほぼ半円角度に近く吸込ポート23と吐出ポート24が穿設されている。 【0012】また、上記ケーシング21の両側には、ケーシングカバー25,25が取付けられており、該カバーの内部は、左右に吸込室26と吐出室27と、及びケーシング21の死点に相当する最偏心位置Aに対向して、下方に圧力室28がそれぞれ区画して形成されている。 そして該吸込室26は前記吸込ポート23に、また吐出室27は吐出ポート24にそれぞれ連通され、また圧力室28は、通孔29を経てケーシング内の最偏心位置Aと連通されると共に、軸5が両ケーシングカバー2 5を貫通する個所に設けられたグランドパッキンからなる軸封部10の封水リング10aに連通している。 【0013】一方、上記ケーシング21の内部には、前向きになった羽根を多数(12枚〜24枚)有し、且つ両側が開放された羽根車30が、頂部をケーシング内面に近接するように上方に偏心して収容され、軸5を介し軸受6によって支持されている。 図中、15は振切り板(フリンガ)である。 【0014】次に、作用について説明すると、ポンプ運転時、羽根車30の図2で時計方向の回転により、ケーシング21の内面に沿って液封リング7が形成され、該液封リング7で外側を封じられた各羽根室の容積変化によってポンプ作用を行ない、空気(気体)は、図2で右側の吸込行程で、吸込フランジ31の入口31a(イ) →通路21a(ロ)→ケーシングカバー25の吸込室2 6(ハ)→側板22の吸込ポート23(ニ)の経路で羽根車30内に吸引され、次いで、図2で左側の吐出行程で、吐出ポート24(ホ)→ケーシングカバー25の吐出室27(ヘ)→通路21b(ト)→吐出フランジ32 の出口32a(チ)から排気される。 【0015】この際、ケーシング21内の死点に相当する最低偏心位置Aに穿設された通孔29を通って、液封リング7の圧力水(正圧水)の一部が、両側のケーシングカバー25の圧力室28へ導かれ、これらの圧力水は、軸封部10のグランド部の封水リング10aへ通水される。 このようにして、外部の圧力水を必要とせずに、運転中、常にケーシング液封リング圧力水の一部を利用して確実な軸封効果が得られる。 【0016】なお、上記した実施例において、本発明の軸封機構を空気、水の通気、通水を両ケーシング側板2 2から行なうようにした、いわゆるポートプレート型液封式ポンプに適用した構造について説明したが、図3、 図4に示されたポートシリンダ型に適用することも可能である。 この場合も、シリンダカバーの一部に、ケーシングの死水部と軸封部の溝リングとを連通する圧力室を形成することに変りはない。 また、ケーシングをまゆ形状(楕円形)とし、羽根車を同心状に設置したいわゆるナッシュ型真空ポンプにも同様に適用できることは勿論である。 【0017】 【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、 液封式ポンプのケーシングの死水部と、ケーシングカバーに形成された圧力室とを導通させ、液封式ポンプ特有のケーシング中の液封リングの正圧水の一部を軸封水として利用するようにしたことにより、次のような効果が奏される。 【0018】(i) 軸封水として必要な圧力水に外部からの通水を必要とせず、常に安定した軸封効果が得られ、また、そのための外部配管も不要となる。 (ii) 外部に圧力水がない現場においても、確実に軸封(シール)作用を行なうことができる。 (iii) 液封リングが、高真空においても常に正圧であるので、軸封作用が確実で、高真空での性能向上が大となる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の一実施例を示す液封式ポンプの縦断面図である。 【図2】図1のII−II線による矢視図で、ケーシング及びケーシングカバーの内部を示す説明図である。 【図3】従来例を示す縦断面図である。 【図4】図3のIV−IV線による断面図である。 【符号の説明】 7 液封リング 10 軸封部 10a 封水リング 21 ケーシング 22 側板 23 吸込ポート 24 吐出ポート 25 ケーシングカバー 26 吸込室 27 吐出室 28 圧力室 29 通孔 30 羽根車 31 吸込フランジ 32 吐出フランジ |