車両用内接歯車式オイルポンプ

申请号 JP2013542780 申请日 2011-11-10 公开(公告)号 JP5747999B2 公开(公告)日 2015-07-15
申请人 トヨタ自動車株式会社; 发明人 本田 裕康;
摘要
权利要求

ポンプボデーとポンプカバーとにより形成された円形のポンプ室と、内周歯と該ポンプ室を形成する内周面に対向する外周面とを有し、該ポンプ室を形成する内周面により回動可能に支持された円環状のドリブンギヤと、該ドリブンギヤの内周歯と噛み合う外周歯を有して該ドリブンギヤの回転中心から偏心した回転中心回りに回転可能に設けられ、該ドリブンギヤを回転駆動するドライブギヤとを備える車両用内接歯車式オイルポンプであって、 前記ドリブンギヤの外周面に局所的に凹む複数の第1動圧発生溝が設けられており、 前記第1動圧発生溝の径方向の深さは、前記第1動圧発生溝の最深部から前記内周面までの隙間の、前記ドリブンギヤの外周面から前記内周面までの隙間に対する比の値である隙間比が、該第1動圧発生溝により発生し且つ前記隙間比の関数である発生動圧の極大値と前記第1動圧発生溝に基づいて発生し且つ前記隙間比の関数である流体摩擦係数の極小値とを含む予め定められた範囲内となるように設けられていることを特徴とする車両用内接歯車式オイルポンプ。前記第1動圧発生溝は、前記ドリブンギヤの外周面から該第1動圧発生溝の最深部へ向かう傾斜面を有し、該傾斜面を前記ポンプ室の内周面との間で楔形状を成すように形成されている請求項1の車両用内接歯車式オイルポンプ。前記第1動圧発生溝は、前記ドリブンギヤの外周面において該ドリブンギヤの回転中心まわりの等度間隔で複数個形成されている請求項1または2の車両用内接歯車式オイルポンプ。前記第1動圧発生溝は、前記隙間比が2乃至3の範囲内となる深さに形成されている請求項1乃至3のいずれか1の車両用内接歯車式オイルポンプ。前記ドリブンギヤの両側面に局所的に凹む複数の第2動圧発生溝が設けられており、 前記第2動圧発生溝の厚み方向の深さは、前記第2動圧発生溝の最深部から前記ポンプ室の内壁面までの隙間の、前記ドリブンギヤの側面から前記ポンプ室の内壁面までの隙間に対する比の値である隙間比が、該第2動圧発生溝により発生する発生動圧の極大値と前記第2動圧発生溝に基づいて発生する流体摩擦係数の極小値とを含む予め定められた範囲内となるように設けられている請求項1乃至4のいずれか1の車両用内接歯車式オイルポンプ。前記ドライブギヤの両側面に局所的に凹む複数の第3動圧発生溝が設けられており、 前記第3動圧発生溝の厚み方向の深さは、前記第3動圧発生溝の最深部から前記ポンプ室の内壁面までの隙間の、前記ドライブギヤの側面から前記ポンプ室の内壁面までの隙間に対する比の値である隙間比が、該第3動圧発生溝により発生する発生動圧の極大値と前記第3動圧発生溝に基づいて発生する流体摩擦係数の極小値とを含む予め定められた範囲内となるように設けられている請求項1乃至5のいずれか1の車両用内接歯車式オイルポンプ。

说明书全文

本発明は、ドリブンギヤを備える車両用内接歯車式オイルポンプに関し、特にそのドリブンギヤの外周面に凹む複数の溝の深さを最適化する技術に関するものである。

車両用内接歯車式オイルポンプは、(a) ポンプボデーとポンプカバーとにより形成されたポンプ室と、(b) 内周歯とそのポンプ室を形成する内周面に対向する外周面とを有し、そのポンプ室を形成する内周面により回動可能に支持された円環状のドリブンギヤと、(c) そのドリブンギヤの内周歯と噛み合う外周歯を有してそのドリブンギヤの回転中心から偏心した回転中心回りに回転可能に設けられ、そのドリブンギヤを回転駆動するドライブギヤとを備えている。例えば、特許文献1および2がそれである。

一般に、上記のような車両用内接歯車式オイルポンプにおいては、前記ドリブンギヤの回転が停止している場合には、前記ドリブンギヤがその自重により前記ポンプ室の内周面と接触する状態となる。しかし、前記ドリブンギヤが回転駆動される場合には、前記ドリブンギヤの外周面と前記ポンプ室の内周面との間に形成される環状の隙間に介在された作動油がそのドリブンギヤの回転に引きずられてその隙間内を周方向に移動して、前記ドリブンギヤの外周面と前記ポンプ室の内周面との近接部位に向けて漸次狭くなる隙間に流れ込むことにより、その近接部位付近において最大となる動圧が発生して、前記ドリブンギヤの外周面が前記ポンプ室の内周面に非接触状態で支持されるようになっている。なお、上記動圧は、前記ドリブンギヤの外周面をそのドリブンギヤの内周側に向けて押圧するように作用する圧である。

しかし、上記のような車両用内接歯車式オイルポンプにおいては、例えば、低速回転時や高油圧発生時等に、前記ドリブンギヤの外周面と前記ポンプ室の内周面との間に発生する動圧のバランスが不充分となり、前記ドリブンギヤがふらついたり、前記ドリブンギヤの回転中心が振れるという問題があった。このドリブンギヤの回転中心の振れは、前記ドリブンギヤの外周面と前記ポンプ室の内周面との潤滑状態が境界潤滑状態となることで摩擦損失が発生して前記ドリブンギヤの回転抵抗が増大することに繋がる。

ところで、特許文献3および4には、前記ドリブンギヤの外周面が前記ポンプ室の内周面に接近する方向に突き出す凸部が設けられた車両用内接歯車式オイルポンプが記載されている。これによれば、前記ドリブンギヤが回転駆動させられると、上記凸部に、その凸部を持たない車両用内接歯車式オイルポンプに比較して大きい動圧が発生する。このため、その大きい動圧が前記ドリブンギヤに作用することによって、上記凸部を持たない車両用歯車式オイルポンプのドリブンギヤに比較して前記ドリブンギヤの自動調心効果が高められているので、前記ドリブンギヤの回転中心の振れが抑制される。また、例えば、特許文献5の動圧軸受構造をオイルポンプに適用させることによって、ポンプボデーの内周面にくさび形状の溝を形成させた車両用内接歯車式オイルポンプを構成し、前記ドリブンギヤの回転中心の振れが抑制されると考えられる。

特開2003−120550号公報

特開平6−229448号公報

特開2011−052644号公報

特開2010−285979号公報

特開平5−106632号公報

しかしながら、上記のような特許文献3および4の車両用内接歯車式オイルポンプ、或いは特許文献5の動圧軸受構造を適用した車両用内接歯車式オイルポンプにおいては、上記凸部の前記ドリブンギヤの径方向の高さによって、すなわち見方を変えれば上記凸部の先端部から前記ドリブンギヤの回転中心に接近する方向に凹む溝の深さによって、前記ドリブンギヤに発生する上記動圧が小さくなって前記ドリブンギヤの自動調心効果が低下したり、前記ドリブンギヤに作用する流体摩擦も増加して摩擦損失が大きくなったりしてしまう可能性があった。

本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的とするところは、ドリブンギヤに作用する流体摩擦の増加を抑制しつつ、ドリブンギヤの自動調心効果が得られるドリブンギヤを備えた車両用内接歯車式オイルポンプを提供することにある。

かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、(a) ポンプボデーとポンプカバーとにより形成された円形のポンプ室と、(b) 内周歯とそのポンプ室を形成する内周面に対向する外周面とを有し、そのポンプ室を形成する内周面により回動可能に支持された円環状のドリブンギヤと、(c) そのドリブンギヤの内周歯と噛み合う外周歯を有してそのドリブンギヤの回転中心から偏心した回転中心回りに回転可能に設けられ、そのドリブンギヤを回転駆動するドライブギヤとを備える車両用内接歯車式オイルポンプであって、(d) 前記ドリブンギヤの外周面に局所的に凹む複数の第1動圧発生溝が設けられており、(e) 前記第1動圧発生溝の径方向の深さは、前記第1動圧発生溝の最深部から前記内周面までの隙間の、前記ドリブンギヤの外周面から前記内周面までの隙間に対する比の値である隙間比が、その第1動圧発生溝により発生し且つ前記隙間比の関数である発生動圧の極大値と前記第1動圧発生溝に基づいて発生し且つ前記隙間比の関数である流体摩擦係数の極小値とを含む予め定められた範囲内となるように設けられている。

本発明の車両用内接歯車式オイルポンプによれば、(d) 前記ドリブンギヤの外周面に局所的に凹む複数の第1動圧発生溝が設けられており、(e) 前記第1動圧発生溝の径方向の深さは、前記第1動圧発生溝の最深部から前記内周面までの隙間の、前記ドリブンギヤの外周面から前記内周面までの隙間に対する比の値である隙間比が、その第1動圧発生溝により発生し且つ前記隙間比の関数である発生動圧の極大値と前記第1動圧発生溝に基づいて発生し且つ前記隙間比の関数である流体摩擦係数の極小値とを含む予め定められた範囲内となるように設けられている。このため、前記ドリブンギヤは、そのドリブンギヤが回転駆動されている時において、そのドリブンギヤの外周面に作用する流体摩擦係数が最小になり且つ前記第1動圧発生溝により発生する発生動圧が最大になるので、前記ドリブンギヤに作用する流体摩擦の増加を抑制しつつ、前記ドリブンギヤの径方向の自動調心効果が得られる。

ここで、好適には、前記第1動圧発生溝は、前記ドリブンギヤの外周面からその第1動圧発生溝の最深部へ向かう傾斜面を有し、その傾斜面と前記ポンプ室の内周面との間で楔形状を成すように形成されているので、効率良く前記ドリブンギヤに作用する流体摩擦係数が小さくなり且つ前記第1動圧発生溝により発生する発生動圧が大きくなる。

また、好適には、前記第1動圧発生溝は、前記ドリブンギヤの外周面においてそのドリブンギヤの回転中心まわりの等度間隔で複数個形成されているので、前記ドリブンギヤの自動調心効果が好適に向上する。

また、好適には、前記第1動圧発生溝は、前記隙間比が2乃至3の範囲内となる深さに形成されているので、前記ドリブンギヤに作用する流体摩擦係数が最小付近になり且つ前記第1動圧発生溝により発生する発生動圧が最大付近になる。

また、好適には、(a) 前記ドリブンギヤの両側面に局所的に凹む複数の第2動圧発生溝が設けられており、(b) 前記第2動圧発生溝の厚み方向の深さは、前記第2動圧発生溝の最深部から前記ポンプ室の内壁面までの隙間の、前記ドリブンギヤの側面から前記ポンプ室の内壁面までの隙間に対する比の値である隙間比が、その第2動圧発生溝により発生する発生動圧の極大値と前記第2動圧発生溝に基づいて発生する流体摩擦係数の極小値とを含む予め定められた範囲内となるように設けられている。このため、前記ドリブンギヤは、そのドリブンギヤが回転駆動されている時において、そのドリブンギヤの両側面に作用する流体摩擦係数が最小になり且つ前記第2動圧発生溝により発生する発生動圧が最大になるので、前記ドリブンギヤに作用する流体摩擦の増加を抑制しつつ、前記ドリブンギヤの軸心方向の自動調心効果が得られる。

また、好適には、(a) 前記ドライブギヤの両側面に局所的に凹む複数の第3動圧発生溝が設けられており、(b) 前記第3動圧発生溝の厚み方向の深さは、前記第3動圧発生溝の最深部から前記ポンプ室の内壁面までの隙間の、前記ドライブギヤの側面から前記ポンプ室の内壁面までの隙間に対する比の値である隙間比が、その第3動圧発生溝により発生する発生動圧の極大値と前記第3動圧発生溝に基づいて発生する流体摩擦係数の極小値とを含む予め定められた範囲内となるように設けられている。このため、前記ドライブギヤは、そのドライブギヤが回転駆動されている時において、そのドライブギヤの両側面に作用する流体摩擦係数が最小になり且つ前記第3動圧発生溝により発生する発生動圧が最大になるので、前記ドライブギヤに作用する流体摩擦の増加を抑制しつつ、前記ドライブギヤの自動調心効果が得られる。

本発明の一実施例の車両用内接歯車式オイルポンプを含む車両用動力伝達装置の一部を示す部分断面図である。

図1に示すポンプボデーの組合せ面から、そのポンプボデーに組付けられたドリブンギヤおよびドライブギヤを示す図である。

図2のドリブンギヤおよびドライブギヤを拡大する拡大図である。

図3のドリブンギヤを示す斜視図である。

図2の一点鎖線で示された円内を拡大した拡大図であり、図3のドリブンギヤの第1動圧発生溝の形状を説明する図である。

図3のA-A視断面図であり、図3のドリブンギヤの両側面に凹む第2動圧発生溝の形状を示す断面図である。

図3の一点鎖線で示された円内を拡大する拡大図であり、図3のドリブンギヤの第2動圧発生溝の形状を説明する図である。

図3のA-A視断面図であり、図3のドライブギヤの両側面に凹む第3動圧発生溝の形状を示す断面図である。

ドリブンギヤの回転時においてそのドリブンギヤの径方向に発生する推力を説明する図である。

ドリブンギヤの回転時においてそのドリブンギヤの厚み方向に発生する推力を説明する図である。

ドライブギヤの回転時においてそのドリブンギヤの厚み方向に発生する推力を説明する図である。

ドリブンギヤの回転時において、ポンプ室の軸心に一致する位置からそのドリブンギヤが偏心した時における、ドリブンギヤの外周面からポンプ室の内周面までの隙間とその隙間に発生する動圧の大きさとの関係を示す図である。

ドリブンギヤがそのドリブンギヤの径方向に偏心した時に生じる、そのドリブンギヤに作用するラジアル方向自動調心力を説明する図である。

ドリブンギヤがそのドリブンギヤの厚み向に偏心した時に生じる、そのドリブンギヤに作用するスラスト方向自動調心力を説明する図である。

ドリブンギヤがそのドリブンギヤの厚み向に偏心し、ドリブンギヤの中心線がポンプ室の中心線に対して傾斜した時において、そのドリブンギヤに作用するスラスト方向自動調心力を説明する図である。

ドライブギヤがそのドライブギヤの厚み向に偏心した時に生じる、そのドライブギヤに作用するスラスト方向自動調心力を説明する図である。

隙間比と、第1動圧発生溝による発生動圧の大きさおよび流体摩擦係数の大きさとの関係を示す図である。

本発明の他の実施例の車両用内接歯車式オイルポンプにおいて、ドリブンギヤの外周面に形成された第1動圧発生溝の形状を示す図であり、図5に対応する図である。

本発明の他の実施例の車両用内接歯車式オイルポンプにおいて、ドリブンギヤの外周面に形成された第1動圧発生溝の形状を示す図であり、図5に対応する図である。

本発明の他の実施例の車両用内接歯車式オイルポンプを示す図であり、図3に対応する図である。

図20の車両用内接歯車式オイルポンプに備えられたドリブンギヤを示す斜視図であり、図4に対応する図である。

以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は理解を容易とするために適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。

図1は、本発明の一実施例の車両用内接歯車式オイルポンプ(以下、オイルポンプと記載する)10を含む車両用動力伝達装置12の一部を示す部分断面図である。車両用動力伝達装置12は、車両の駆動源としてのエンジンのクランク軸14の後段に設けられたトルクコンバータ16および有段式の自動変速機18を備えている。

図1において、トルクコンバータ16は、クランク軸14に動力伝達可能に連結されたポンプ翼車20と、そのポンプ翼車20に対して相対回転可能に設けられ自動変速機18の入力軸22に動力伝達可能に連結されたタービン翼車24と、それらポンプ翼車20とタービン翼車24との間に配置されて一方向クラッチ26を介して回転可能に支持されたステータ翼車28とを備えている。このように構成されたトルクコンバータ16では、クランク軸14と一体的に回転するポンプ翼車20の回転が作動流体を介してタービン翼車24へ伝達されるようになっている。ここで、ポンプ翼車20は、入力軸22の外周側においてそのポンプ翼車20から自動変速機18に接近する方向へ突き出す円筒状のスリーブ20aを備えている。オイルポンプ10は、このポンプ翼車20のスリーブ20aによって回転駆動される。

図1に示すように、トルクコンバータ16および自動変速機18は、その図1において仮想的に2点鎖線で示すエンジンブロック30に固定される筒状の変速機ケース32内に収容されている。そして、入力軸22は、変速機ケース32内のトルクコンバータ16を収容する収容空間32aと自動変速機18を収容する収容空間32bとの間に設けられた隔壁を貫通して設けられている。

オイルポンプ10は、上記隔壁の一部を構成する部材として、スリーブ20aの外周側に円環状に形成され、変速機ケース32の内周面の一部が円筒形状に凹む嵌合穴32cに嵌合されたポンプボデー34と、入力軸22の外周側に円環状に形成され、ポンプボデー34のトルクコンバータ16とは反対側の端面に比較的大径に且つ比較的に浅く凹む嵌合穴34aに嵌合されたポンプカバー36とを備えている。なお、ポンプボデー34は、第1ボルト38によって変速機ケース32に一体的に固定されている。また、ポンプカバー36は、第2ボルト40によってポンプボデー34に一体的に固定されている。

ポンプボデー34は、そのポンプボデー34の嵌合穴34aの底面にその嵌合穴34aよりも小径であり且つその嵌合穴34aよりも深く凹む円筒形状の穴34bが設けられており、その円筒形状の穴34bの軸心O1は、入力軸22およびスリーブ20aの回転中心C1に対して偏心させられている。また、オイルポンプ10には、ポンプボデー34とポンプカバー36とにより形成された円形のポンプ室42が備えられている。このポンプ室42は、スリーブ20aの外周側において、ポンプボデー34の円筒状の穴34bの内周面34cと、その内周面34cの軸心O1方向の両側に位置する内壁面34d、36aとにより囲まれて形成された、スリーブ20aの回転中心C1に対して偏心する軸心O1を有する円筒形状の空間である。

図2は、図1に示すポンプボデー34の組合せ面側から見たオイルポンプ10を示す図である。なお、図1のオイルポンプ10は、図2のI-I矢視部断面を示している。図1および図2において、オイルポンプ10は、内周歯46aとポンプ室42を形成する内周面34cに対向する外周面46bとを有し、その内周面34cにより回動可能に支持された円環状のドリブンギヤ46と、そのドリブンギヤ46の内周歯46aと噛み合う外周歯48aを有してそのドリブンギヤ46の回転中心C2から偏心した回転中心C1回りに回転可能に設けられ、そのドリブンギヤ46を回転駆動するドライブギヤ48とを備えている。

ドライブギヤ48には、スリーブ20aと相対回転不能且つそのスリーブ20aの回転中心C1方向の移動可能に、スリーブ20aが嵌め入れられている。そして、スリーブ20aが回転中心C1まわり図2に示す矢印a方向に回転駆動すると、ドリブンギヤ46は、そのドライブギヤ48により回転中心C2まわり図2に示す矢印b方向に回転駆動させられる。

オイルポンプ10は、図2および図3に示すように、ドライブギヤ48の外周歯48aとその外周歯48aより歯が1つ多く形成されたドリブンギヤ46の内周歯46aとが図2および図3で示すポンプ室42の下方で互いに噛み合わされている内接歯車型である。ポンプ室42内において内周歯46aと外周歯48aとにより仕切られて形成される複数の空間すなわち圧力室は、ドライブギヤ48およびドリブンギヤ46が回転することでドリブンギヤ46の周方向へ移動し、その圧力室の容積は、ポンプ室42の図2および図3に示す下側から上側に移動するに従って増加し、ポンプ室42の図2に示す上側から下側に移動するに従って減少するようになっている。

ポンプボデー34の外周部の変速機ケース32との組合せ面には、例えば自動変速機18のオイルパン等に還流する作動油を吸入するための図示しない吸入油路に接続される吸入側接続口50と、例えば油圧式摩擦係合装置等を制御する油圧制御回路へ作動油を圧送するための図示しないライン油路に接続される圧送側接続口52とが形成されている。また、ポンプボデー34には、吸入側接続口50とポンプ室42のポンプボデー34側に開口する第1吸入口54とを連通させる第1導入油路56と、圧送側接続口52とポンプ室42のポンプボデー34側に開口する第1吐出口58とを連通させる第1導出(吐出)油路60とが形成されている。そして、ポンプカバー36には、吸入側接続口50とポンプ室42のポンプカバー36側に開口する図示しない第2吸入口とを連通させる図示しない第2導入油路と、圧送側接続口52とポンプ室42のポンプカバー36側に開口する図示しない第2吐出口とを連通させる図示しない第2導出(吐出)油路とが設けられている。

前記第2導入油路は、ポンプボデー34の嵌合穴34aの底面に開口された第1連通口62により第1導入油路56と連通させられており、また、前記第2導出油路は、ポンプボデー34の嵌合穴34aの底面に開口された第2連通口64により第1導出油路60と連通させられている。なお、第1吸入口54および前記第2吸入口は、ドリブンギヤ46の周方向において、前記圧力室がドリブンギヤ46の周方向に移動することでその圧力室の容積が増加する周方向位置に位置するように設けられている。そして、第1吐出口58および前記第2吐出口は、ドリブンギヤ46の周方向において、前記圧力室がドリブンギヤ46の周方向に移動することでその圧力室の容積が減少する周方向位置に位置するように設けられている。

このように構成されたオイルポンプ10では、ドライブギヤ48がスリーブ20aにより図2の矢印a方向に回転されて、ドリブンギヤ46がそのドライブギヤ48により図2の矢印b方向に回転させるに伴って、前記オイルパンの作動油が吸入側接続口50、および第1導入油路56又は前記第2導入油路を経て第1吸入口54又は前記第2吸入口からポンプ室42内へ吸入される。そして、上記吸入された作動油は、ポンプ室42内において内周歯46aと外周歯48aとにより仕切られて形成される複数の空間のいずれか1に取り込まれる。そして、上記空間内に取り込まれた作動油は、その空間の容積がドライブギヤ48の回転とともに減少する周方向位置に運ばれることで、圧縮される。そして、上記圧縮により圧力が高められた作動油は、第1吐出口58又は前記第2吐出口、および第1導出油路60又は前記第2導出口を経て圧送側接続口52から前記油圧制御回路へ圧送される。

図4および図5に示すように、ドリブンギヤ46には、そのドリブンギヤ46の外周面46bに局所的に凹む複数の第1動圧発生溝46cが設けられている。図4に示すように、第1動圧発生溝46cは、ドリブンギヤ46の外周面46bにおいてそのドリブンギヤ46の回転中心C2まわりの等角間隔で複数個形成されている。

図5に示すように、第1動圧発生溝46cのドリブンギヤ46の径方向の深さD1は、その第1動圧発生溝46cの最深部からポンプボデー34の内周面34cまでの隙間H1の径方向の距離h1の、ドリブンギヤ46の外周面46bからポンプボデー34の内周面34cまでの隙間H2の径方向の距離h2に対する比の値である隙間比m1(=h1/h2)が予め定められた範囲内となるように設けられている。なお、図5に示すように、第1動圧発生溝46cのドリブンギヤ46の径方向の深さD1は、距離h1から距離h2を引いた差h1−h2である。本実施例において、例えば、隙間H1の距離h1は、125μmであり、隙間H2の距離h2は、55μmであり、第1動圧発生溝46cの深さD1は、70μmである。

図5に示すように、ドリブンギヤ46の外周面46bは、第1動圧発生溝46cにおいて、略三角形状に凹んでいる。そして、ドリブンギヤ46の外周面46bには、第1動圧発生溝46cにおいて、ドリブンギヤ46の回転方向b後方に向かうほどその第1動圧発生溝46cの最深部に向かう傾斜面46dと、その第1動圧発生溝46cの最深部からドリブンギヤ46の回転方向b後方に向かうほどポンプ室42の内周面34bとの隙間の距離が短くなる傾斜面46hとが形成されている。図5に示すように、第1動圧発生溝46cは、ドリブンギヤ46の周方向において、ドリブンギヤ46の外周面46bから第1動圧発生溝46cの最深部へ向かう傾斜面46dを有し、その傾斜面46dとポンプ室42の内周面34cとの間で楔形状を成すように形成されている。

図2乃至図4に示すように、ドリブンギヤ46には、そのドリブンギヤ46のポンプ室42の内壁面36aと対向する側面46eとドリブンギヤ46のポンプ室42の内壁面34dと対向する側面46fとに局所的に凹む複数の楔形状の第2動圧発生溝46gが設けられている。図3に示すように、第2動圧発生溝46gは、例えば図7に示す形状を有し、ドリブンギヤ46の側面46eおよび側面46fにおいて、そのドリブンギヤ46の回転中心C2まわりの等角間隔で複数個形成されている。

図6に示すように、第2動圧発生溝46gのドリブンギヤ46の厚み方向の深さD2は、その第2動圧発生溝46gの最深部からポンプ室42の内壁面34dおよび36aまでの隙間H3の距離h3の、ドリブンギヤ46の側面46eおよび46fからポンプ室42の内壁面34dおよび36aまでの隙間H4の距離h4に対する比の値である隙間比m2(=h3/h4)が予め定められた範囲内となるように設けられている。なお、図6に示すように、第2動圧発生溝46gのドリブンギヤ46の厚み方向の深さD2は、距離h3から距離h4を引いた差h3−h4である。本実施例において、例えば、隙間H3の距離h3は、36μmであり、隙間H4の距離h4は、16μmであり、第2動圧発生溝46gの深さD2は、20μmである。

図2および図3に示すように、ドライブギヤ48には、そのドライブギヤ48のポンプ室42の内壁面36aと対向する側面48b(図1参照)とドライブギヤ48のポンプ室42の内壁面34dと対向する側面48c(図1参照)とに局所的に凹む複数の楔形状の第3動圧発生溝48dが設けられている。図3に示すように、第3動圧発生溝48dは、ドライブギヤ48の側面48bおよび側面48cにおいて、そのドライブギヤ48の回転中心C1まわりの等角間隔で複数個形成されている。

図8に示すように、第3動圧発生溝48dのドライブギヤ48の厚み方向の深さD3は、その第3動圧発生溝48dの最深部からポンプ室42の内壁面34dおよび36aまでの隙間H5の距離h5の、ドライブギヤ48の側面48bおよび48cからポンプ室42の内壁面34dおよび36aまでの隙間H6の距離h6に対する比の値である隙間比m3(=h5/h6)が予め定められた範囲内となるように設けられている。なお、図8に示すように、第3動圧発生溝48dのドライブギヤ48の厚み方向の深さD3は、距離h5から距離h6を引いた差h5−h6である。本実施例において、例えば、隙間H5の距離h5は、36μmであり、隙間H6の距離h6は、16μmであり、第3動圧発生溝48dの深さD3は、20μmである。

以上のように構成されたオイルポンプ10によれば、スリーブ20aが回転することによってドリブンギヤ46およびドライブギヤ48が回転駆動させられると、ドリブンギヤ46の外周面46bとポンプボデー34の内周面34cとの間に形成される環状の隙間H2、ドリブンギヤ46の側面46fとポンプ室42の内壁面34dとの間およびドリブンギヤ46の側面46eとポンプ室42の内壁面36aとの間に形成される一対の環状の隙間H4、およびドライブギヤ48の側面48cとポンプ室42の内壁面34dとの間およびドライブギヤ48の側面48bとポンプ室42の内壁面36aとの間に形成される一対の環状の隙間H6に介在された作動油が、そのドリブンギヤ46とドライブギヤ48との回転に引きずられて周方向に移動する。

これによって、ドリブンギヤ46においては、図5に示すように、ドリブンギヤ46の外周面46bにおける第1動圧発生溝46cとポンプボデー34の内周面34cとの隙間H2内に粘性で流入する作動油が充満することにより、最も間隔が狭まる箇所付近にて最大となる動圧(発生動圧)P1が発生する。また、ドリブンギヤ46においては、図6に示すように、ドリブンギヤ46の側面46eにおける第2動圧発生溝46gとポンプ室42の内壁面36aとの隙間H4、およびドリブンギヤ46の側面46fにおける第2動圧発生溝46gとポンプ室42の内壁面34dとの隙間H4内に粘性により流入する作動油が充満することにより、最も間隔が狭まる箇所付近にて最大となる動圧(発生動圧)P2が発生する。また、ドライブギヤ48においては、図8に示すように、ドライブギヤ48の側面48bにおける第3動圧発生溝48dとポンプ室42の内壁面36aとの隙間H6、およびドライブギヤ48の側面48cにおける第3動圧発生溝48dとポンプ室42の内壁面34dとの隙間H6内に粘性により流入する作動油が充満することにより、最も間隔が狭まる箇所付近にて最大となる動圧(発生動圧)P3が発生する。

このため、動圧P1は、図9に示すように、ドリブンギヤ46の外周面46bをそのドリブンギヤ46の回転中心C2に向けて押圧する推力を発生させる。これによって、ドリブンギヤ46は、図9に示すように、そのドリブンギヤ46の回転時において、ドリブンギヤ46の外周面46bとポンプボデー34の内周面34cとが非接触状態で支持される。また、動圧P2は、図10に示すように、ドリブンギヤ46の側面46fをポンプ室42の内壁面34dに接近する方向に向けて押圧し且つドリブンギヤ46の側面46eをポンプ室42の内壁面36aに接近する方向に向けて押圧する推力を発生させる。これによって、ドリブンギヤ46は、そのドリブンギヤ46の回転時において、ドリブンギヤ46の側面46eおよび46fとポンプ室42の内壁面34dおよび36aとが非接触状態で支持される。また、動圧P3は、図11に示すように、ドライブギヤ48の側面48bをポンプ室42の内壁面34dに接近する方向に向けて押圧し且つドライブギヤ48の側面48cをポンプ室42の内壁面36aに接近する方向に向けて押圧する推力を発生させる。これによって、ドライブギヤ48は、そのドライブギヤ48の回転時においてドライブギヤ48の側面48bおよび48cとポンプ室42の内壁面34dおよび36aとが非接触状態で支持される。

図12は、ドリブンギヤ46の回転時において、ドリブンギヤ46の回転中心C2が図9に示すポンプ室42の軸心O1に一致するドリブンギヤ中心位置A1から、そのドリブンギヤ46に図9に示す偏心力Fが作用してそのドリブンギヤ46の回転軸心C2がポンプ室42の軸心O1から離れて偏心した時における、ドリブンギヤ46の外周面46bからポンプボデー34の内周面34dまでの隙間H2の距離h2とその隙間H2内に粘性により流入する作動油が充満することによって発生する動圧P1の大きさとの関係を示す図である。また、図12に示す動圧増加偏心側とは、ドリブンギヤ46がそのドリブンギヤ中心位置A1から偏心してドリブンギヤ46の外周面46bとポンプボデー34の内周面34cとの隙間H2が狭くなり、動圧P1の大きさが増加する側である。また、図12に示す動圧減少偏心側とは、ドリブンギヤ46がそのドリブンギヤ中心位置A1から偏心してドリブンギヤ46の外周面46bとポンプボデー34の内周面34cとの隙間H2が広くなり、動圧P1の大きさが減少する側である。

このため、図13に示すように、ドリブンギヤ46がそのドリブンギヤ46の径方向において偏心すると、ドリブンギヤ46の回転中心C2がポンプ室42の軸心O1から偏心する偏心量に応じて2次曲線的に大きくなる動圧P1が狭くなっているドリブンギヤ46の外周面46bとポンプボデー34の内周面34dとの隙間に発生し、ドリブンギヤ46の周方向における隙間H2を一定とするようにすなわちドリブンギヤ46の回転中心C2をポンプ室42の軸心O1に戻すようにドリブンギヤ46にラジアル方向自動調心力が作用する。

これによって、例えば、ドリブンギヤ46が偏心してドリブンギヤ46の外周面46bとポンプボデー34の内周面34cとの潤滑状態が境界潤滑状態となったとしても、上記ラジアル方向自動調心力によって、潤滑状態が境界潤滑状態から流体潤滑状態に戻る。更に、ドリブンギヤ46を調心することで隙間H2の距離h2が拡大し、上記流体潤滑状態の粘性応力(τ=η(du/dy))を低減できる。なお、ドリブンギヤ46の厚み方向におけるそのドリブンギヤ46の側面46eおよび46fと、ドライブギヤ48の厚み方向におけるそのドライブギヤ48の側面48bおよび48cとにも第1動圧発生溝46cと同様な第2動圧発生溝46g、第3動圧発生溝48dが設けられているので、上記と略同様なスラスト方向自動調心力が得られる。

図14に示すように、ドリブンギヤ46が、ドリブンギヤ46の厚み方向において、そのドリブンギヤ46の中心線C4がポンプ室42の中心線C3から離れて偏心すると、ドリブンギヤ46の中心線C4がポンプ室42の中心線C3から離れる離間量すなわち偏心量に応じて2次曲線的に大きくなる動圧P2が狭くなっているドリブンギヤ46の側面46eとポンプボデー34の内周面34dとの隙間に発生し、ドリブンギヤ46の厚み方向における隙間H4を一定とするようにすなわちドリブンギヤ46の中心線C4をポンプ室42の中心線C3に戻すようにドリブンギヤ46にスラスト方向自動調心力が作用する。なお、ドリブンギヤ46の中心線C4とは、ドリブンギヤ46の厚み方向におけるドリブンギヤ46の側面46eおよび46fとの間の中心を示す直線である。また、ポンプ室42の中心線C3とは、ドリブンギヤ46の厚み方向におけるポンプ室42の内壁面34dおよび36aとの間の中心を示す直線である。

図15に示すように、ドリブンギヤ46が、そのドリブンギヤ46の中心線C4がポンプ室42の中心線C3に対して傾斜すると、狭くなっているドリブンギヤ46の側面46eとポンプ室42の内壁面34dとの間の上部と、狭くなっているドリブンギヤ46の側面46fとポンプ室42の内壁面36aとの間の下部に比較的に大きな動圧P2が発生し、ドリブンギヤ46の厚み方向における隙間H4を一定とするようにすなわちドリブンギヤ46の中心線C4をポンプ室42の中心線C4に一致させるようにドリブンギヤ46にスラスト方向自動調心力が作用する。

図16に示すように、ドライブギヤ48が、そのドライブギヤ48の厚み方向において、そのドライブギヤ48の中心線C5がポンプ室42の中心線C3から離れて偏心すると、ドライブギヤ48の中心線C5がポンプ室42の中心線C3から離れる離間量すなわち偏心量に応じて2次曲線的に大きくなる動圧P3が狭くなっているドライブギヤ48の側面48cとポンプボデー34の内周面34dとの間に発生し、ドライブギヤ48の厚み方向における隙間H6を一定とするようにすなわちドライブギヤ48の中心線C5をポンプ室42の中心線C3に戻すようにドライブギヤ48にスラスト方向自動調心力が作用する。なお、ドライブギヤ48の中心線C5は、ドライブギヤ48の厚み方向におけるドライブギヤ48の側面48bおよび48cとの間の中心を示す直線である。

図17は、隙間比m1と、その隙間比m1を有する第1動圧発生溝46cにより発生する動圧P1の大きさおよび流体摩擦係数μ1の大きさとの関係を示す図である。この図17によれば、動圧P1の大きさは隙間比m1の関数であり、隙間比m1が所定の範囲内で動圧P1が極大となっている。また、流体摩擦係数μ1の大きさは隙間比m1の関数であり、隙間比m1が所定の範囲内で流体摩擦係数μ1が極小となっている。

第1動圧発生溝46cのドリブンギヤ46の径方向の深さD1は、図17に示すように、上記隙間比m1が、第1動圧発生溝46cにより発生する動圧P1の極大値と、第1動圧発生溝46cに基づいて作用する流体摩擦係数μ1の極小値とを含む、予め定められた範囲内となるように設けられている。なお、図17に示すように、隙間比m1が1.5乃至4好適には2乃至3の時には、第1動圧発生溝46cに基づいて作用する流体摩擦係数μ1が最小付近になり、第1動圧発生溝46cにより発生する動圧P1が最大付近となっている。

ここで、図17における隙間比m1における動圧P1の数値および隙間比m1における流体摩擦係数μ1の数値は、以下のように算出できる。

動圧P1は、3次元レイノルズ方程式を示す数式1から無次元圧力Kpを算出し数式2に代入することによって算出したものである。なお、Lは図4に示すドリブンギヤ46の幅であり、Bは図5に示す第1動圧発生溝46cの楔形状の楔部の長さ、Uは図5に示すドリブンギヤ外周面流速、ηは作動油の粘性である。

ここで、無次元圧力Kpの算出方法を説明する。先ず、数式1をxについて微分し、数式3を算出する。そして、無次元膜厚H(=h/h2)、無次元座標X(=x/B)、無次元座標Z(=z/L)、無次元圧力P=(ph22)/(ηUB)、油膜形状の式dH/dX=1−mを代入して数式4を算出する。そして、数式4を差分方にて数値解析を行い、無次元圧力Kpを算出する。

また、流体摩擦係数μ1は、数式5によって算出される。なお、数式5に記載されているKWおよびKF0は、数式6および数式7によって算出された値である。

本実施例において、第2動圧発生溝46gのドリブンギヤ46の厚み方向の深さD2は、隙間比m2がその第2動圧発生溝46gにより発生する動圧P2の極大値と、第2動圧発生溝46gに基づいて作用する流体摩擦係数μ2の極小値とを含む、予め定められた範囲内となるように設けられている。また、本実施例では、上述した動圧P1と流体摩擦係数μ1とを算出する算出方法を参照して、隙間比m2と、その隙間比m2によって設けられた深さD2の第2動圧発生溝46gにより発生する動圧P2の大きさおよびその第2動圧発生溝46gに基づいて作用する流体摩擦係数μ2の大きさとの関係を図17と同様な図に示して、隙間比m2を決定している。なお、図示しないが、隙間比m2が1.5乃至4好適には2乃至3の時には、第2動圧発生溝46gに基づいて作用する流体摩擦係数μ2が最小付近になり、第2動圧発生溝46gにより発生する動圧P2が最大付近となる。

本実施例において、第3動圧発生溝48dのドライブギヤ48の厚み方向の深さD3は、隙間比m3がその第3動圧発生溝48dにより発生する動圧P3の極大値と、第3動圧発生溝48dに基づいて作用する流体摩擦係数μ3の極小値とを含む、予め定められた範囲内となるように設けられている。また、本実施例では、上述した動圧P1と流体摩擦係数μ1とを算出する算出方法を参照して、隙間比m3と、その隙間比m3によって設けられた深さD3の第3動圧発生溝48dにより発生する動圧P3の大きさおよびその第3動圧発生溝48dに基づいて作用する流体摩擦係数μ3の大きさとの関係を図17と同様に図に示して、隙間比m3を決定している。なお、図示しないが、隙間比m3が1.5乃至4好適には2乃至3の時には、第3動圧発生溝48dに基づいて作用する流体摩擦係数μ3が最小付近になり、第3動圧発生溝48dにより発生する動圧P3が最大付近となる。

本実施例のオイルポンプ10によれば、ドリブンギヤ46の外周面46bに局所的に凹む複数の第1動圧発生溝46cが設けられており、第1動圧発生溝46cのドリブンギヤ46の径方向の深さD1は、第1動圧発生溝46cの最深部からポンプボデー34の内周面34bまでの隙間H1の距離h1の、ドリブンギヤ46の外周面46bからポンプボデー34の内周面34cまでの隙間H2の距離h2に対する比の値である隙間比m1(=h1/h2)が、その第1動圧発生溝46cにより発生し且つ隙間比m1の関数である動圧P1の極大値と第1動圧発生溝46cに基づいて発生し且つ隙間比m1の関数である流体摩擦係数μ1の極小値とを含む予め定められた範囲例えば隙間比m1が1.5〜4、好適には2〜3の範囲内となるように設けられている。このため、ドリブンギヤ46は、そのドリブンギヤ46が回転駆動されている時において、そのドリブンギヤ46の外周面46bに作用する流体摩擦係数μ1が最小付近になり且つ第1動圧発生溝46cにより発生する動圧P1が最大付近になるので、ドリブンギヤ46に作用する流体摩擦の増加を抑制しつつ、ラジアル方向自動調心力によりドリブンギヤ46のそのドリブンギヤ46の径方向の自動調心効果が得られる。

また、本実施例のオイルポンプ10によれば、第1動圧発生溝46cは、ドリブンギヤ46の外周面46bからその第1動圧発生溝46cの最深部へ向かう傾斜面46dを有し、その傾斜面46dとポンプ室42の内周面34cとの間で楔形状を成すように形成されているので、効率良く前記ドリブンギヤ46に作用する流体摩擦係数μ1が小さくなり且つ第1動圧発生溝46cにより発生する動圧P1が大きくなる。

また、本実施例のオイルポンプ10によれば、第1動圧発生溝46cは、ドリブンギヤ46の外周面46bにおいてそのドリブンギヤ46の回転中心C2まわりの等角度間隔で複数個形成されているので、ドリブンギヤ46の自動調心効果が好適に向上する。

また、本実施例のオイルポンプ10によれば、第1動圧発生溝46cは、隙間比m1が2乃至3の範囲内となる深さD1に形成されているので、ドリブンギヤ46に作用する流体摩擦係数μ1が最小付近になり且つ第1動圧発生溝46cにより発生する動圧P1が最大付近になる。

また、本実施例のオイルポンプ10によれば、ドリブンギヤ46の両側面46fおよび46eに局所的に凹む複数の第2動圧発生溝46gが設けられており、第2動圧発生溝46gのドリブンギヤ46の厚み方向の深さD2は、第2動圧発生溝46gの最深部からポンプ室42の内壁面36aおよび34dまでの隙間H3の距離h3の、ドリブンギヤ46の側面46fおよび46eからポンプ室42の内壁面36aおよび34dまでの隙間H4の距離h4に対する比の値である隙間比m2(=h3/h4)が、その第2動圧発生溝46gにより発生する動圧P2の極大値と、第2動圧発生溝46gに基づいて発生する流体摩擦係数μ2の極小値とを含む、予め定められた範囲内となるように設けられている。このため、ドリブンギヤ46は、そのドリブンギヤ46が回転駆動されている時において、そのドリブンギヤ46の両側面46eおよび46fに作用する流体摩擦係数μ2が最小になり且つ第2動圧発生溝46gにより発生する動圧P2が最大になるので、ドリブンギヤ46に作用する流体摩擦の増加を抑制しつつ、スラスト方向自動調心力によりドリブンギヤ46の厚み方向すなわちドリブンギヤ46の軸心C2方向の自動調心効果が得られる。

また、本実施例のオイルポンプ10によれば、ドライブギヤ48の両側面48bおよび48cに局所的に凹む複数の第3動圧発生溝48dが設けられており、第3動圧発生溝48dのドライブギヤ48の厚み方向の深さD3は、第3動圧発生溝48dの最深部からポンプ室42の内壁面36aおよび34dまでの隙間H5の距離h5の、ドライブギヤ48の側面48bおよび48cからポンプ室42の内壁面36aおよび34dまでの隙間H6の距離h6に対する比の値である隙間比m3(=h5/h6)が、その第3動圧発生溝48dにより発生する動圧P3の極大値と、第3動圧発生溝48dに基づいて発生する流体摩擦係数μ3の極小値とを含む、予め定められた範囲内となるように設けられている。このため、ドライブギヤ48は、そのドライブギヤ48が回転駆動されている時において、そのドライブギヤ48の両側面48bおよび48cに作用する流体摩擦係数μ3が最小になり且つ第3動圧発生溝48dにより発生する動圧P3が最大になるので、ドライブギヤ48に作用する流体摩擦の増加を抑制しつつ、ドライブギヤ48の厚み方向すなわちドライブギヤ48の軸心C1方向の自動調心効果が得られる。

次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において実施例相互間で共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。

本実施例のオイルポンプは、前述の実施例1のオイルポンプ10に比較して、第1動圧発生溝46iの形状が実施例1の第1動圧発生溝46cと異なる点で相違し、それ以外は略同様に構成されている。

図18に示すように、第1動圧発生溝46iのドリブンギヤ46の径方向の深さD1は、実施例1と同様に、その第1動圧発生溝46iの最深部からポンプボデー34の内周面34cまでの隙間H1の距離h1の、ドリブンギヤ46の外周面46bからポンプボデー34の内周面34cまでの隙間H2の距離h2に対する比の値である隙間比m1(=h1/h2)が予め定められた範囲内となるように設けられている。

図18に示すように、ドリブンギヤ46の外周面46bは、第1動圧発生溝46iにおいて、楔形状に凹んでいる。そして、ドリブンギヤ46の外周面46bには、第1動圧発生溝46iにおいて、ドリブンギヤ46の周方向における第1動圧発生溝46iの最深部からドリブンギヤ46の回転方向b後方に向かうほどポンプ室42の内周面34bとの隙間の距離が短くなる傾斜面46jが形成されている。なお、流体の流れの性質の観点では第1動圧発生溝46iにより流路の隙間が急拡大する本実施例は、流体剥離が起きてしまうので、定性的には実施例1の第1動圧発生溝46cが有利である。しかし、第1動圧発生溝46iが設けられる自動変速機18用のオイルポンプ10に用いられるのに適切な溝深さは、μmのオーダーであり、このレベルの隙間流れにおいては定量的な有意差は発生しない。

本実施例のオイルポンプは、前述の実施例1のオイルポンプ10に比較して、第1動圧発生溝46kの形状が実施例1の第1動圧発生溝46cと異なる点で相違し、それ以外は略同様に構成されている。

図19に示すように、第1動圧発生溝46kのドリブンギヤ46の径方向の深さD1は、実施例1と同様に、その第1動圧発生溝46kの最深部からポンプボデー34の内周面34cまでの隙間H1の距離h1の、ドリブンギヤ46の外周面46bからポンプボデー34の内周面34cまでの隙間H2の距離h2に対する比の値である隙間比m1(=h1/h2)が予め定められた範囲内となるように設けられている。

図19に示すように、ドリブンギヤ46の外周面46bは、第1動圧発生溝46kにおいて、局所的に略長方形状に凹んでいる。なお、流体の流れの性質の観点では第1動圧発生溝46kにより流路の隙間が急拡大する本実施例は、流体剥離が起きてしまうので、定性的には実施例1の第1動圧発生溝46cが有利である。しかし、第1動圧発生溝46kが設けられる自動変速機18用のオイルポンプ10に用いられるのに適切な溝深さは、μmのオーダーであり、このレベルの隙間流れにおいては定量的な有意差は発生しない。

本実施例のオイルポンプ66は、図20および図21に示すように、前述の実施例1のオイルポンプ10に比較して、実施例1に設けられた第2動圧発生溝46gが備えられていないドリブンギヤ68と、実施例1に設けられた第3動圧発生溝48dが備えられていないドライブギヤ70とを備える点で相違し、それ以外は略同様に構成されている。

このように構成されたオイルポンプ66によれば、ドリブンギヤ68の厚み方向におけるドリブンギヤ68の自動調心効果およびドライブギヤ70の厚み方向におけるドライブギヤ70の自動調心効果が実施例1のドリブンギヤ46およびドライブギヤ48に比較して低下する。しかし、ドリブンギヤ68は、実施例1のドリブンギヤ46と同様に、そのドリブンギヤ68が回転駆動されている時において、そのドリブンギヤ68に作用する流体摩擦係数μ1が最小になり且つ第1動圧発生溝46cにより発生する動圧P1が最大になるので、ドリブンギヤ68に作用する流体摩擦の増加を抑制しつつ、ドリブンギヤ68のそのドリブンギヤ68の径方向の自動調心効果が最大化される。

以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。

本実施例のオイルポンプ10において、第1動圧発生溝46c、第2動圧発生溝46g、第3動圧発生溝48dの形状は、それら溝の最深部の深さすなわち隙間H1、H3、H5の距離h1、h3、h5と、隙間H2、H4、H6の距離h2、h4、h6との隙間比m1、m2、m3が重要であり、それら溝形状自体はどのような形で有っても良い。自動変速機用のオイルポンプ10に用いられるμmオーダーの隙間では溝形状による性能差は殆ど無い。

また、本実施例のオイルポンプ10において、第2動圧発生溝46gはドリブンギヤ46の両側面46eおよび46fに凹んで設けられたが、そのドリブンギヤ46の一方の側面46eおよび46fだけに設けられても良い。また、第3動圧発生溝48dはドライブギヤ48の両側面48bおよび48cに凹んで設けられたが、そのドライブギヤ48の一方の側面48bおよび48cだけに設けられても良い。

また、本実施例のオイルポンプ10において、第2動圧発生溝46gの形状は、図7に示すような形状であったが、ドリブンギヤ46の側面46eおよび46fのシール部を確保する形状であれば実施例以外の形状も可能である。なお、第2動圧発生溝46gの形状をシール部を貫通するような形状にしてしまうと、漏れ流用が多くなりポンプの容積効率が悪化する。

また、本実施例のオイルポンプ10において、オイルポンプ10は、有段式自動変速機用のオイルポンプであったが、例えば、CVTやHVの自動変速機にオイルポンプ10を適用させることができる。

なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。

10、66:オイルポンプ 34:ポンプボデー 34c:内周面 34d:内壁面 36:ポンプカバー 36a:内壁面 42:ポンプ室 46:ドリブンギヤ 46a:内周歯 46b:外周面 46c、46i、46k:第1動圧発生溝 46d:傾斜面 46e、46f:側面 46g:第2動圧発生溝 48:ドライブギヤ 48a:外周歯 48b、48c:側面 48d:第3動圧発生溝 C1:ドライブギヤの回転中心 C2:ドリブンギヤの回転中心 D1:第1動圧発生溝の径方向の深さ D2:第2動圧発生溝の厚み方向の深さ D3:第3動圧発生溝の厚み方向の深さ H1〜H6:隙間 m1〜m3:隙間比 P1〜P3:動圧(発生動圧) μ1〜μ3:流体摩擦係数

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