【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明はロータリー排送ポンプに係り、特にベーンまわりを潤滑する潤滑装置に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、ロータリー排送ポンプとして、例えば実開昭53−85603号公報に開示されるように、ロータ室を有し、このロータ室に連通する吸入口および吐出口を備えたケーシングと、上記ロータ室においてロータ室中心に対して偏心して回転可能に設けられ且つ回転半径方向にガイド溝を有するロータと、上記ガイド溝に回転半径方向に移動可能に嵌挿され、上記ケーシングとロータとの間の空間を複数の作動室に仕切るベーンとを備えたものが知られている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】このようなロータリー排送ポンプで例えばスラリー等を排送する場合、スラリーがガイド溝とベーンの間に入り込み、ベーンの動きが悪くなり、ポンプとして十分に機能しなくなるという問題がある。 【0004】一方、スラリー等を排送する場合には、スラリー等に含まれる水分を少なくした状態で、つまり含水率が低い状態で排送することが、輸送効率の面からは望ましい。 【0005】本発明は、このような点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、排送されたスラリーから泥水を分離し、この泥水によってガイド溝とベーンの間をシールし且つ潤滑することにより、スラリー等を含水率を低くして排送すると共に、ポンプとしての機能を長期に亘って維持することにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明は、ロータ室を有し、このロータ室に連通する吸入口および吐出口を備えたケーシングと、上記ロータ室においてロータ室中心に対して偏心して回転可能に設けられ且つ回転半径方向にガイド溝を有するロータと、上記ガイド溝に回転半径方向に移動可能に嵌挿され、上記ケーシングとロータとの間の空間を複数の作動室に仕切るベーンとを備えたロータリー排送ポンプを前提とする。 そして、これに対し、上記吐出口から吐出されたスラリーから泥水を分離する分離手段を設ける。 また、上記ロータに加圧室を設け、この加圧室を上記各ガイド溝内端に接続する。 さらに、上記分離手段で分離された泥水を上記加圧室に供給するように構成している。 【0007】 【作用】上記構成により、ロータが回転すると、作動室の容積が膨張、収縮し、これにつれてスラリー等が吸入口から吸入され、吐出口へ吐出されていく。 【0008】そのスラリー等の一部は分離手段に供給され、ここで分離された泥水が加圧室に供給され、さらにガイド溝内端に送られ、ガイド溝とベーンの間を通ってガイド溝先端から作動室に排出される。 このガイド溝を内端から先端に流れる泥水流により、スラリー等が作動室からガイド溝へ流入することが防止されると共に、ガイド溝とベーンの間が潤滑される。 【0009】また、上記泥水は作動室に供給されるが、 この泥水は排送するスラリー等から分離して得たものなので、排送するスラリー等の含水率は変動しない。 【0010】 【実施例】以下、実施例を説明する。 図1は実施例に係るロータリー排送ポンプの潤滑装置を示す。 この一連の装置群は浚渫船の上に設置されており、10は一端が水中のカッタに接続され、他端が船上に導かれたスラリー排送管である。 このスラリー排送管10の途中にはロータリー排送ポンプ20が設けられている。 【0011】上記ロータリー排送ポンプ20を図2及び図3により説明するに、21はケーシングであって、このケーシング21は断面円形のロータ室21aを有している。 また、ケーシング21の一側には吸入口21b が、他側には吐出口21cがそれぞれ上記ロータ室21 aに連通するように設けられている。 上記ケーシング2 1には、ロータ22が回転可能に枢支されている。 このロータ22は、上記ロータ室21aにおいてロータ室中心に対して偏心している。 ロータ22には回転半径方向にガイド溝22aが複数本形成されている。 【0012】そして、各ガイド溝22aにはベーン23 が回転半径方向に移動可能に嵌挿されており、上記ケーシング21とロータ22との間の空間を複数の作動室C に仕切っている。 また上記ロータ22には加圧室22c が設けられ、この加圧室22cが上記各ガイド溝22a の内端に接続している。 すなわち、上記ガイド溝22a の底部にはロータ半径方向にシリンダ部22bが、上記加圧室22cに連通するように形成され、一方、上記ベーン23の基端には円柱形のピストン部23aが連結され、このピストン部23aが上記シリンダ部22bに嵌入している。 【0013】また、船上にはスラリーから泥水を分離する分離手段30が設けられている。 すなわち、ロータリー排送ポンプ20下流のスラリー排送管10には分離機31が設けられており、排送されるスラリーから泥水を分離している。 この分離機31の泥水吐出口には還流管32が接続され、この還流管32が上記ロータリー排送ポンプ20のロータ軸端部に接続されている。 このロータ軸には一端が上記還流管32に連通し、他端が上記加圧室22cに連通する連通孔が設けられている。 また上記還流管32には泥水を濾過するフィルター33が設けられている。 このフィルター33のメッシュ幅は、フィルター下流の泥水粒子が上記シリンダ部22bとピストン部23aとの間に通常形成されるクリアランス(以下、基本クリアランス)を超えない程度に管理するように設定されている。 また、フィルター33下流のスラリー排送管10にはポンプ40が設けられており、泥水を圧送している。 【0014】従って、上記実施例においては、ロータ2 2が回転すると、作動室Cの容積が膨張、収縮し、これにつれて排送物が吸入口21bから吸入され、吐出口2 1cへ吐出されていく。 【0015】その場合、分離機31でスラリーから泥水が分離され、この泥水から上記フィルター33により、 基本クリアランスを超えない程度の粒子で構成された泥水が分離され、ポンプ40により加圧されて上記加圧室22cに送られる。 そのため、この加圧泥水によってベーン23が半径方向外方に押されて先端が確実にケーシング内周面に摺接するので、作動室Cの密閉性が確保される。 【0016】また、上記加圧室22cの加圧泥水は、上記シリンダ部22bとピストン部23aとの間を通り、 さらにガイド溝22aとベーン23の間を通ってガイド溝先端から作動室Cに排出される。 このガイド溝22a を内端から先端に流れる泥水流により、スラリーが作動室Cからガイド溝22aへ流入することが防止されると共に、ガイド溝22aとベーン23の間が潤滑される。 よって、ベーン23の動きを常にスムーズに維持し、ロータリー排送ポンプ20の機能を長期に亘って良好に発揮させることができる。 【0017】さらに、上記泥水は作動室Cに供給されるが、この泥水は排送するスラリーから分離して得たものなので、排送するスラリーの含水率は変動しない。 【0018】なお、上記実施例では、シリンダ部22b とピストン部23aとを設けたが、これを設けなくてもよい。 そのときには、上記加圧室22cを直接にガイド溝内端に接続すればよい。 また、分離手段としては種々のタイプのものが考えられるが、要は、分離された泥水粒子が、少なくともガイド溝とベーンの間に通常形成されるクリアランスを超えない程度に管理する機能を有していればよい。 【0019】 【発明の効果】以上説明したように、本発明のロータリー排送ポンプの潤滑装置は、ベーンタイプのロータリー排送ポンプの潤滑装置として、ポンプから吐出されたスラリーから泥水を分離し、この泥水でガイド溝とベーンの間をシールし且つ潤滑したので、ロータリー排送ポンプでスラリー等を排送する場合に、スラリー等を含水率を低くして排送しながら、ベーンの動きを常にスムーズに維持してロータリー排送ポンプの機能を長期に亘って良好に発揮させることができるものである。 【図面の簡単な説明】 【図1】実施例の全体構成図、 【図2】実施例のロータリー排送ポンプの縦断側面図、 【図3】図2のIII−III線断面図である。 【符号の説明】 20 ロータリー排送ポンプ 21 ケーシング 21a ロータ室 21b 吸入口 21c 吐出口 22 ロータ 22a ガイド溝 23 ベーン 30 分離手段 |