Controller of motor

申请号 JP2006199332 申请日 2006-07-21 公开(公告)号 JP2008029123A 公开(公告)日 2008-02-07
申请人 Honda Motor Co Ltd; 本田技研工業株式会社; 发明人 SHIN HIROBUMI; IWATA KAZUYUKI;
摘要 PROBLEM TO BE SOLVED: To prevent sludge from being accumulated in a hydraulic chamber by cleaning the hydraulic chamber generating a hydraulic pressure for altering the phase difference between two rotors appropriately. SOLUTION: A motor 1 having a first rotor 3 and a second rotor 4 rotating relatively to the first rotor is provided with a means 23 for altering the phase difference between both rotors 3 and 4 by operating the pressure in hydraulic chambers 24 and 25 which are filled with working oil. Furthermore, a means 54 for judging necessity of cleaning of the hydraulic chambers 24 and 25, and a means 55 for controlling the phase difference alteration drive means 23 such that the second rotor 4 is rotated relatively to the first rotor 3 and alternately in forward direction and reverse direction if the judgment result is affirmative are provided. COPYRIGHT: (C)2008,JPO&INPIT
权利要求
  • 永久磁石によりそれぞれ界磁を発生する第1ロータおよび第2ロータと、両ロータのうちの第1ロータと一体に回転可能な出力軸とを互いに同軸に備えると共に、前記第2ロータが前記第1ロータに対して相対回転可能に設けられ、該第2ロータの相対回転によって両ロータ間の位相差を変更することにより、各ロータの永久磁石の界磁を合成してなる合成界磁の強さを変更可能とした電動機の制御装置であって、
    前記第2ロータの相対回転に連動して容積が変化する油圧室を有し、該油圧室に充填する作動油の圧力により該第2ロータを前記第1ロータに対して相対回転させる位相差変更駆動手段と、
    前記油圧室のクリーニングの必要性の有無を判断するクリーニング要求判断手段と、
    該クリーニング要求判断手段によりクリーニングの必要性があると判断されたとき、前記第2ロータを、前記第1ロータに対して正転方向および逆転方向に交互に相対回転させるように前記位相差変更駆動手段を制御するクリーニング用位相差制御手段とを備えたことを特徴とする電動機の制御装置。
  • 前記クリーニング用位相差制御手段は、前記クリーニング要求判断手段によりクリーニングの必要性があると判断されたとき、前記電動機の運転状態が該電動機の電機子への通電を遮断したと仮定した場合の運転状態と同等であるか否かを判断する第1運転状態判断手段を備え、該第1運転状態判断手段の判断結果が肯定的であるときに、前記電動機の電機子への通電を遮断するように該電機子の通電回路を制御しつつ、前記第2ロータを前記第1ロータに対して正転方向および逆転方向に交互に相対回転させるように前記位相差変更駆動手段を制御することを特徴とする請求項1記載の電動機の制御装置。
  • 前記クリーニング用位相差制御手段は、前記クリーニング要求判断手段によりクリーニングの必要性があると判断されたとき、前記電動機の運転状態が該電動機の電機子を短絡したと仮定した場合の運転状態と同等であるか否かを判断する第2運転状態判断手段を備え、該第2運転状態判断手段の判断結果が肯定的であるときに、前記電動機の電機子を短絡するように該電機子の通電回路を制御しつつ、前記第2ロータを前記第1ロータに対して正転方向および逆転方向に交互に相対回転させるように前記位相差変更駆動手段を制御することを特徴とする請求項1記載の電動機の制御装置。
  • 少なくとも前記クリーニング用位相差制御手段が前記第2ロータを前記第1ロータに対して正転方向および逆転方向に交互に相対回転させるように前記位相差変更駆動手段を制御しているときに、前記両ロータの間の位相差、または、該位相差に対して所定の相関関係を有する前記電動機の特性パラメータの値を、推定もしくは検出し、その推定または検出された位相差または特性パラメータの値を用いて、前記電動機の電機子の通電電流を制御する通電制御手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の電動機の制御装置。
  • 前記クリーニング要求判断手段は、前記電動機の出力軸の回転速度と該電動機の運転時間とのうちの少なくともいずれか一方に基づいて、前記油圧室のクリーニングの必要性の有無を判断することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電動機の制御装置。
  • 说明书全文

    本発明は、永久磁石によりそれぞれ界磁を発生する2つのロータを有し、両ロータ間の位相差を変更可能とした電動機の制御装置に関する。

    永久磁石型の電動機においては、同軸に配置された2つのロータのそれぞれに界磁を発生する永久磁石を備えた2重ロータ構造の電動機が従来より知られている(例えば特許文献1を参照)。 この種の電動機では、2つのロータは、それらの軸心回りに相対回転可能とされ、その相対回転によって、両ロータ間の位相差を変更可能としている。 そして、両ロータ間の位相差を変更することによって、各ロータの永久磁石により発生する界磁を合成してなる合成界磁の強さ(磁束の大きさ)を変化させることが可能となる。

    前記特許文献1に見られる電動機では、該電動機の回転速度に応じて機構的に両ロータ間の位相差が変化するようになっている。 すなわち、両ロータが遠心の作用により電動機の径方向に変位する部材を介して接続されている。 なお、両ロータのうちの一方のロータは、電動機の発生トルクを外部に出力する出力軸と一体に回転可能とされている。 そして、上記部材の変位に伴い、他方のロータが、出力軸と一体に回転可能な一方のロータに対して相対的に回転し、両ロータ間の位相差が変化するように構成されている。 この場合、電動機が停止状態にあるときに、両ロータにそれぞれ備えた永久磁石の磁極の向き(磁束の向き)が互いに同一となって、それらの永久磁石の合成界磁の強さが最大となるように、各ロータの永久磁石が配列されている。 そして、電動機の回転速度が高くなるに従って、遠心力により両ロータの間の位相差が変化して、両ロータの永久磁石の合成界磁の強さが弱くなる。

    特開2002−204541号公報

    ところで、上記の如く、2つのロータの永久磁石の合成界磁の強さを変更可能な電動機では、その合成界磁を適切に変化させることによって、電動機の運転領域の拡大や電動機のエネルギー効率の向上などを効果的に図ることが可能である。

    しかるに前記特許文献1に見られる電動機では、単に出力軸の回転速度に応じて機構的にロータ間の位相差が変更されるだけなので、きめ細かな制御を行なうことが困難である。 このため、電動機の運転領域の拡大や電動機のエネルギー効率の向上などを効果的に図ることが困難であった。

    そこで、本願出願人は、ロータ間の位相差を例えば油圧装置を使用して、能動的に制御することを試みている。 例えば、前記第2ロータの相対回転に連動して容積が変化する油圧室を形成しておき、この油圧室に充填する作動油の圧力により該第2ロータを前記第1ロータに対して相対回転させる。

    このような油圧装置を使用することで、前記油圧室の圧力を調整することによって、ロータ間の位相差を所望の位相差に制御することが可能となる。 ひいては、両ロータの合成界磁の強さを所望の強さに制御することが可能となる。

    ところが、両ロータ間の位相差の変更は、一般的には、頻繁に行なう必要はなく該位相差を一定に維持する機会が多い。 このため、前記油圧室にスラッジが蓄積しやすい。 そして、このようなスラッジの蓄積は、ロータ間の位相差を変化させる機構の動作不良(例えば、両ロータのうちの他方のロータが、出力軸と一体に回転可能な一方のロータに対して回転し難くなるなどの動作不良)の原因となる恐れがある。 従って、該スラッジを必要に応じて除去するための方策が望まれていた。

    本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、2つのロータ間の位相差を変更するための油圧を発生する油圧室を適宜クリーニングし、該油圧室にスラッジが蓄積するのを防止することができる電動機の制御装置を提供することを目的とする。 そして、そのクリーニングを行いつつ、電動機の所要の運転を行なうことができる電動機の制御装置を提供することを目的とする。

    かかる目的を達成するために、本発明の電動機の制御装置は、永久磁石によりそれぞれ界磁を発生する第1ロータおよび第2ロータと、両ロータのうちの第1ロータと一体に回転可能な出力軸とを互いに同軸に備えると共に、前記第2ロータが前記第1ロータに対して相対回転可能に設けられ、該第2ロータの相対回転によって両ロータ間の位相差を変更することにより、各ロータの永久磁石の界磁を合成してなる合成界磁の強さを変更可能とした電動機の制御装置であって、前記第2ロータの相対回転に連動して容積が変化する油圧室を有し、該油圧室に充填する作動油の圧力により該第2ロータを前記第1ロータに対して相対回転させる位相差変更駆動手段と、前記油圧室のクリーニングの必要性の有無を判断するクリーニング要求判断手段と、該クリーニング要求判断手段によりクリーニングの必要性があると判断されたとき、前記第2ロータを、前記第1ロータに対して正転方向および逆転方向に交互に相対回転させるように前記位相差変更駆動手段を制御するクリーニング用位相差制御手段とを備えたことを特徴とする(第1発明)。

    かかる第1発明によれば、前記位相差変更駆動手段を備えるので、前記両ロータ間の位相差を、該位相差変更駆動手段を介して所望の位相差に制御できる。 そして、第1発明では、前記クリーニング要求判断手段により、前記油圧室のクリーニングの必要性があると判断されたときに、前記クリーニング用位相差制御手段による前記位相差変更駆動手段の制御によって、前記第2ロータが前記第1ロータに対して正転方向および逆転方向に交互に相対回転される(以下、このような第2ロータの相対回転動作を正逆交互回転ということがある)。 このとき、この第2ロータの正逆交互回転は、前記油圧室への作動油の供給、該油圧室からの作動油の排出を交互に行い、該油圧室の容積を拡縮することで行なわれることとなる。 これにより、油圧室内のスラッジを該油圧室の外部に流出させることができる。 ひいては、該油圧室にスラッジが蓄積するのを防止できる。

    前記第1発明では、前記クリーニング用位相差制御手段による前記位相差変更駆動手段の制御によって(第2ロータの正逆交互回転によって)、前記両ロータの永久磁石の合成界磁の強さが振動的に変動するここととなるので、その変動が電動機の発生トルクなどの運転状態に影響を及ぼさないように、前記油圧室のクリーニングのための第2ロータの正逆交互回転を行なうことが望ましい。

    この場合、例えば、前記クリーニング用位相差制御手段は、前記クリーニング要求判断手段によりクリーニングの必要性があると判断されたとき、前記電動機の運転状態が該電動機の電機子への通電を遮断したと仮定した場合の運転状態と同等であるか否かを判断する第1運転状態判断手段を備え、該第1運転状態判断手段の判断結果が肯定的であるときに、前記電動機の電機子への通電を遮断するように該電機子の通電回路を制御しつつ、前記第2ロータを前記第1ロータに対して正転方向および逆転方向に交互に相対回転させるように前記位相差変更駆動手段を制御する(第2発明)。

    この第2発明によれば、前記油圧室のクリーニングの必要性がある場合において、前記電動機の運転状態が該電動機の電機子への通電を遮断したと仮定した場合の運転状態と同等であるときに、前記第2ロータの正逆交互回転を行なわせるのと並行して、前記電動機の電機子への通電を遮断する。 この場合、その通電の遮断状態では、第2ロータの正逆交互回転に伴う前記合成界磁の変動は、電動機の運転状態に影響を及ぼさない。 従って、電動機の本来のあるべき運転状態を実質的に維持しながら、第2ロータの正逆交互回転を行なって、前記油圧室のクリーニングを行なうことができる。

    なお、この第2発明において、前記電機子の通電の遮断は、前記通電回路として例えばインバータ回路を使用した場合、該インバータ回路の全てのゲート素子(スイッチング素子)をOFFにすることにより行なわれる。

    また、前記電動機の電機子への通電を遮断したと仮定した場合の運転状態と同等な運転状態は、該電動機の要求トルクが0で、且つ該電動機の出力軸の回転速度が所定値以下の低速となるような運転状態である。

    また、例えば前記クリーニング用位相差制御手段は、前記クリーニング要求判断手段によりクリーニングの必要性があると判断されたとき、前記電動機の運転状態が該電動機の電機子を短絡したと仮定した場合の運転状態と同等であるか否かを判断する第2運転状態判断手段を備え、該第2運転状態判断手段の判断結果が肯定的であるときに、前記電動機の電機子を短絡するように該電機子の通電回路を制御しつつ、前記第2ロータを前記第1ロータに対して正転方向および逆転方向に交互に相対回転させるように前記位相差変更駆動手段を制御する(第3発明)。

    この第3発明によれば、前記油圧室のクリーニングの必要性がある場合において、前記電動機の運転状態が該電動機の電機子を短絡したと仮定した場合の運転状態と同等であるときに、前記第2ロータの正逆交互回転を行なわせるのと並行して、前記電動機の電機子を短絡する。 なお、電機子の短絡は、電機子の巻き線(複数相の電機子では各相毎の巻き線)の一対の電圧印加端子を短絡することを意味する。 この場合、その電機子の短絡状態では、第2ロータの正逆交互回転に伴う前記合成界磁の変動は、電動機の運転状態に影響を及ぼさない。 従って、電動機の本来のあるべき運転状態を実質的に維持しながら、第2ロータの正逆交互回転を行なって、前記油圧室のクリーニングを行なうことができる。

    なお、この第3発明において、前記電機子の通電の遮断は、前記通電回路として例えばインバータ回路を使用した場合、該インバータ回路の上アームおよび下アームのうちの少なくともいずれか一方のアームの全てのゲート素子(スイッチング素子)をONにすることにより行なわれる。

    また、前記電動機の電機子を短絡したと仮定した場合の運転状態と同等な運転状態は、該電動機の要求トルクが所定の回生トルクとなるような運転状態(好ましくは、電動機の出力軸の回転速度が所定値以上となる高速域での運転状態)である。

    補足すると、第3発明は前記第2発明と併用してもよい。

    また、少なくとも前記クリーニング用位相差制御手段が前記第2ロータを前記第1ロータに対して正転方向および逆転方向に交互に相対回転させるように前記位相差変更駆動手段を制御しているときに、前記両ロータの間の位相差、または、該位相差に対して所定の相関関係を有する前記電動機の特性パラメータの値を、推定もしくは検出し、その推定または検出された位相差または特性パラメータの値を用いて、前記電動機の電機子の通電電流を制御する通電制御手段を備えるようにしてもよい(第4発明)。

    この第4発明によれば、前記油圧室のクリーニングのために前記第2ロータを正逆交互回転させるのと並行して、前記両ロータの間の位相差、または該位相差に対して所定の相関関係を有する前記電動機の特性パラメータ(例えば誘起電圧定数)の値を、推定もしくは検出し、その推定または検出された位相差または特性パラメータの値を用いて、前記電動機の電機子の通電電流を制御するので、第2ロータの正逆交互回転を行いながら、所要のトルク(要求トルク)を電動機に発生させるように該電動機の電機子の通電電流を制御することが可能となる。

    なお、第4発明は、第2発明および第3発明のいずれか、または、その両者と併用してもよい。 その場合、例えば、第2発明における第1運転状態判断手段の判断結果が否定的となり、あるいは、第3発明における第2運転状態判断手段の判断結果が否定的となる場合、あるいは、それらの運転状態判断手段の両者の判断結果が否定的となる場合に、第4発明に如く、第2ロータの正逆交互回転を行いながら、電動機の電機子の通電電流を制御するようにすればよい。

    前記第1〜第4発明では、前記クリーニング要求判断手段は、前記電動機の出力軸の回転速度と該電動機の運転時間とのうちの少なくともいずれか一方に基づいて、前記油圧室のクリーニングの必要性の有無を判断することが好ましい(第5発明)。

    すなわち、前記油圧室のスラッジの蓄積量は、電動機の出力軸の回転速度や、該電動機の運転時間に依存する傾向が高いので、該回転速度と運転時間とのうちの少なくともいずれか一方に基づいて、前記油圧室のクリーニングの必要性の有無を的確に判断することができる。

    本発明の一実施形態を図1〜図10を参照して以下に説明する。 図1は、本実施形態における電動機の要部の断面図、図2は図1の電動機のドライブプレート19を外した状態で該電動機の軸心方向で見た図である。

    図1を参照して、この電動機1は、2重ロータ構造のDCブラシレスモータであり、出力軸2、外ロータ3、および内ロータ4とを同軸に備える。 外ロータ3および内ロータ4はそれぞれ本発明における第1ロータ、第2ロータに相当する。 外ロータ3の外側には、電動機1のハウジング(図示省略)に固定されたステータ5を有し、このステータ5には図示を省略する電機子(3相分の電機子)が装着されている。 なお、電動機1は、例えば、ハイブリッド車両や電動自動車の走行用動力源として車両に搭載され、電動機としての動作(力行動作)と、発電機としての動作(回生動作)とが可能とされている。

    外ロータ3は環状に形成されており、その周方向にほぼ等間隔で配列された複数の永久磁石6を備える。 この永久磁石6は、長尺の方形板状に形成されており、その長手方向を外ロータ3の軸方向に向け、且つ、法線方向を外ロータ3の径方向に向けた状態で、外ロータ3に埋め込まれている。 また、外ロータ3には、その軸心と平行な軸心を有する複数のネジ穴7が穿設されている。 これらのネジ穴7は、外ロータ3の周方向に等間隔で配列されている。

    内ロータ4も環状に形成されている。 この内ロータ4は、その外周面を外ロータ3の内周面に摺接させた状態で、外ロータ3の内側に該外ロータ3と同軸に配置されている。 なお、内ロータ4の外周面と外ロータ3の内周面との間に若干のクリアランスが設けられていてもよい。 さらに、この内ロータ4の軸心部を、該内ロータ4および外ロータ3と同軸に出力軸2が貫通している。 この場合、内ロータ4の内径は、出力軸2の外径よりも大きく、出力軸2の外周面と内ロータ4の内周面との間に間隔を有する。

    また、内ロータ4は、その周方向にほぼ等間隔で配列された複数の永久磁石8を備える。 この永久磁石8は、外ロータ3の永久磁石6と同形状で、外ロータ3の場合と同様の形態で、内ロータ4に埋め込まれている。 内ロータ4の永久磁石8の個数は、外ロータ3の永久磁石8の個数と同じである。

    ここで、図2を参照して、外ロータ3の永久磁石6のうちの白抜きで示す永久磁石6aと、点描を付した永久磁石6bとは、外ロータ3の径方向における磁極の向きが互いに逆になっている。 例えば、永久磁石6aは、その外側(外ロータ4の外周面側)の面がN極、内側(外ロータ3の内周面側)の面がS極とされ、永久磁石6bは、その外側の面がS極、内側の面がN極とされている。 同様に、内ロータ4の永久磁石8のうちの白抜きで示す永久磁石8aと、点描を付した永久磁石8bとは、内ロータ4の径方向での磁極の向きが互いに逆になっている。 例えば、永久磁石8aは、その外側(内ロータ4の外周面側)の面がN極、内側(内ロータ4の内周面側)の面がS極とされ、永久磁石8bは、その外側の面がS極、内側の面がN極とされている。

    そして、本実施形態では、外ロータ4においては、図2に示す如く、互いに隣り合された永久磁石6a,6aの対と、互いに隣り合わされた永久磁石6b,6bの対とが、外ロータ3の周方向に交互に配列されている。 同様に、内ロータ4においては、互いに隣り合された永久磁石8a,8aの対と、互いに隣り合わされた永久磁石8b,8bの対とが、内ロータ4の周方向に交互に配列されている。

    内ロータ4の内側には、出力軸2の外周面との間で、第1部材9と第2部材10とが設けられている。 これらの第1部材9および第2部材10は、内ロータ4の内側に複数の油圧室24、25を形成するものである。

    第2部材10は、環状部11と、この環状部11の内周面から該環状部11の中心部に向かって径方向に突設された複数の突起部12(以下、第2部材側突起部12ということがある)とを有する。 第2部材10は、その環状部11を内ロータ4に同軸に嵌入することにより、該内ロータ4に同軸に固定されている。 また、第2部材側突起部12は、周方向に等間隔で設けられている。

    第1部材9は、ベーンロータ状のものであり、その軸部としての環状部13と、この環状部13の外周面から径方向に突設された複数の突起部14(以下、第1部材側突起部14ということがある)とを有する。 第1部材9の環状部13は、第2部材10の環状部11の内側に該環状部11と同軸に設けられ、その外周面に、第2部材10の各突起部12の先端部がシール部材15を介して摺接されている。 また、第1部材9の環状部13は、出力軸2に外挿されており、その内周面が出力軸2の外周面に形成されたスプライン16に嵌合されている。 このスプライン嵌合により第1部材9が出力軸2と一体に回転可能とされている。

    第1部材側突起部14の個数は、第2部材側突起部12の個数と同数であり、周方向に等間隔で配列されている。 この場合、この各第1部材側突起部14は、周方向に隣り合う2つの第2部材側突起部12,12の間の箇所に介装されている。 換言すれば、第1部材9と第2部材10とは、それらの突起部14,12が周方向で交互に並ぶように係合されている。 そして、各第1部材側突起部14の先端部は、シール部材17を介して第2部材10の環状部11の内周面に摺接されている。 また、各第1部材側突起部14には、環状部13の軸心と平行な軸心を有するネジ穴18が穿設されている。

    図1を参照して、外ロータ3の軸心方向の両端面部には、円板状のドライブプレート19,19が該外ロータ3と同軸に装着されている。 これらのドライブプレート19,19は、それぞれ、その中心部(軸心部)に出力軸2の外径よりも大径の穴20を有し、この穴20を出力軸2が同軸に貫通していると共に、該穴20に第1部材9の環状部13の各端部が嵌入されている。 そして、各ドライブプレート19は、外ロータ3の各ネジ穴7と、第1部材9の各突起部14のネジ穴18とにそれぞれボルト21により締結されている。 これにより、外ロータ3および第1部材9は、一体に回転可能に連結されている。 この場合、前記したように第1部材9は、スプライン嵌合により出力軸2と一体に回転可能であるので、外ロータ3も出力軸2と一体に回転可能とされている。

    また、ドライブプレート19,19は、それらの間に、前記内ロータ4および第2部材10を支承している。 具体的には、ドライブレート19,19の互いに相対する面には、それぞれ、同軸に環状溝22が形成されている。 そして、この環状溝22に前記第2部材10の環状部11の各端部が摺動自在に挿入されている。 これにより、内ロータ4および第2部材10は、環状部11を介してドライブプレート19,19に支承されると共に、ドライブプレート19,19の環状溝22に沿って、外ロータ3、第1部材9および出力軸2に対して相対回転可能とされている。

    前記第1部材9と第2部材10とは、内ロータ3を外ロータ4に対して相対的に回転させることにより両ロータ3,4間の位相差を変化させる位相差変更駆動手段23の構成要素である。 この位相差変更駆動手段23は、前記第1部材9と第2部材10とによって、第1部材9の環状部13と、第2部材10の環状部11と、ドライブプレート19,19とで囲まれた空間内に、図2に示す如く形成された複数対(突起部12,14と同数の対)の油圧室24,25を有する。 さらに詳細には、第2部材10の環状部11と第1部材9の環状部13との間の空間のうち、各第2部材側突起部12と、該突起部12の両側(周方向での両側)に存する2つの第1部材側突起部14,14との間の空間が、それぞれ、作動油を流入・流出させる油圧室24,25となっている。 この場合、各第2部材側突起部12の一方の側の油圧室24は、出力軸2の内部に設けられた油通路26に、第1部材9の環状部13に穿設されている図示しない油通路を介して連通されて、作動油が充填されている。 同様に、各第2部材側突起部12の他方の側の圧力室25は、出力軸2の内部に油通路26とは別に設けられた油通路27に、第1部材9の環状部13に穿設されている図示しない油通路を介して連通されて、作動油が充填されている。 この場合、油圧室24の油圧は、それを増圧したとき、内ロータ4を外ロータ3に対して図2の時計まわり方向に相対回転させようとする圧力となる。 また、圧力室24の圧力(油圧)は、それを増圧したとき、内ロータ4を外ロータ3に対して図2の反時計まわり方向に相対回転させようとする圧力となる。 時計まわり方向および反時計まわり方向は、その一方が、内ロータ4の正転方向を意味し、他方が、逆転方向を意味する。

    また、図1に示す如く、位相差変更駆動手段23は、出力軸2の油通路26,27に、電動機1の外部で接続された油圧源装置30を備えている。 この油圧源装置30は、各油圧室24,25への作動油の供給を制御することで、各油圧室24,25の圧力を増減させる。 この場合、油圧室24,25の圧力差によって、第2部材10と共に内ロータ4を外ロータ3および第1部材9に対して回転させようとする回転力が発生する。 すなわち、油圧室24の圧力を油圧室25よりも大きくすることで、それらの圧力差によって、内ロータ4を外ロータ3に対して図2の時計まわり方向に回転させようとする回転力が発生する。 逆に油圧室25の圧力を油圧室24よりも大きくすることで、それらの圧力差によって、内ロータ4を外ロータ3に対して図2の反時計まわり方向に回転させようとする回転力が発生する。 従って、位相差変更駆動手段23は、各油圧室24,25の圧力を増減させて、それらの圧力差を操作することによって、内ロータ4を外ロータ3に対して回転させる(両ロータ3,4間の位相差を変化させる)。

    補足すると、内ロータ4の永久磁石8a,8bと、外ロータ3の永久磁石6a,6bとの間に作用する磁力によって、内ロータ4は、その永久磁石8a,8bと、外ロータ3の永久磁石6a,6bとが異極同士を対向させた状態(永久磁石8a,8bがそれぞれ永久磁石6a,6bに対向する状態)で平衡しようとする。 このため、その平衡状態から、内ロータ4を外ロータ3に対して回転させると、内ロータ4を平衡状態に戻そうとするトルク(以下、磁力トルクということがある)が発生する。 このため、前記油圧室24,25の圧力差によって、内ロータ4を外ロータ3に対して回転させるときには、前記磁力トルクに抗する回転力を第2部材10を介して内ロータ4に作用させるように、油圧室24,25の圧力を操作する必要がある。 なお、磁力トルクは、内ロータ4と外ロータ3との間の位相差(以下、ロータ間位相差θdという)に応じて変化する。

    以上が、電動機1および位相差変更駆動手段23の機構的な構成である。

    なお、本実施形態では、電動機1の出力軸2と外ロータ3とが一体に回転するように構成したが、出力軸と内ロータとが一体に回転するようにして、これらの出力軸および内ロータに対して外ロータが相対回転し得るように構成してもよい。 また、位相差変更駆動手段23の構成は、上記した構成に限られるものではない。 例えば直動シリンダのピストンの直動運動を回転運動に変換する機構を介して内ロータを外ロータに対して相対回転させるようにしてもよい。 その場合、例えば遊星歯車機構を介して内ロータを外ロータに対して相対回転させるようにしてもよい。

    前記位相差変更駆動手段23によって、内ロータ4を外ロータ3に対して回転させ、両ロータ3,4間の位相差(ロータ間位相差θd)を変化させることで、内ロータ4の永久磁石8a,8bによって発生する界磁と外ロータ3の永久磁石6a,6bによって発生する界磁とを合成してなる合成界磁の強さ(ステータ5に向かう径方向の磁束の強さ)が変化することとなる。 以降、その合成界磁の強さが最大となる状態を界磁最大状態、該合成界磁の強さが最小となる状態を界磁最小状態という。 図3(a)は界磁最大状態での内ロータ4と外ロータ3との位相関係を示す図であり、図3(b)は界磁最小状態での内ロータ4と外ロータ3との位相関係を示す図である。

    図3(a)に示す如く、界磁最大状態は、内ロータ4の永久磁石8a,8bと、外ロータ3の永久磁石6a,6bとが異極同士を対向させた状態である。 より詳しくは、この界磁最大状態では、内ロータ4の永久磁石8aが外ロータ3の永久磁石6aに対向すると共に、内ロータ4の永久磁石8bが外ロータ3の永久磁石6bに対向する。 この状態では、径方向において、内ロータ4の永久磁石8a,8bのそれぞれの磁束Q1の向きと、外ロータ3の永久磁石6a,6bのそれぞれの磁束Q2の向きとが同一となるため、それらの磁束Q1,Q2の合成磁束Q3の強さ(合成界磁の強さ)が最大となる。 なお、この界磁最大状態は、前記平衡状態である。

    また、図3(b)に示す如く、界磁最小状態は、内ロータ4の永久磁石8a,8bと、外ロータ3の永久磁石6a,6bとが同極同士を対向させた状態である。 より詳しくは、この界磁最小状態では、内ロータ4の永久磁石8aが外ロータ3の永久磁石6bに対向すると共に、内ロータ4の永久磁石8bが外ロータ3の永久磁石6aに対向する。 この状態では、径方向において、内ロータ4の永久磁石8a,8bのそれぞれの磁束Q1の向きと、外ロータ3の永久磁石6b,6aのそれぞれの磁束Q2の向きとが逆向きとなるため、それらの磁束Q1,Q2の合成磁束Q3の強さ(合成界磁の強さ)が最小となる。

    本実施形態では、前記界磁最大状態におけるロータ間位相差θdを0[deg]、前記界磁最小状態におけるロータ間位相差θdを180[deg]と定義する。 なお、この定義によるロータ間位相差θdは、内ロータ4と外ロータ3との間の機械的な回転度差とは一般には相違する。

    図4は、前記界磁最大状態と界磁最小状態とにおいて、電動機1の出力軸2を所定回転速度で作動させた場合に、ステータ5の電機子に誘起される誘起電圧を比較したグラフである。 このグラフの縦軸と横軸とは、それぞれ、誘起電圧[V]、電気角での出力軸2の回転角度[度]である。 参照符号aを付したグラフが、界磁最大状態(ロータ間位相差θd=0[deg]の状態)でのグラフであり、参照符号bを付したグラフが、界磁最小状態(ロータ間位相差θd=180[deg]の状態)でのグラフである。 図4から判るように、ロータ間位相差θdを0[deg]と180[deg]との間で変化させることで、誘起電圧のレベル(振幅レベル)を変化させることができる。 なお、ロータ間位相差θdを0[deg]と180[deg]まで増加させていくと、合成界磁の強さが減少していき、これに伴い、誘起電圧のレベルが減少していく。

    このようにロータ間位相差θdを変化させて、合成界磁の強さを増減させることにより、電動機1の特性パラメータの1つである誘起電圧定数Keを変化させることができる。 なお、誘起電圧定数Keは、電動機1の出力軸2の角速度と、この角速度に応じて電機子に生じる誘起電圧との関係を規定する比例定数である。 誘起電圧定数Keの値は、後述する如く、ロータ間位相差θdを0[deg]から180[deg]まで増加させていくに伴い、小さくなる。

    次に、図5〜図10を参照して、本実施形態における電動機1の制御装置51を説明する。 図5は、電動機1の制御装置50(以下、単に制御装置50という)の機能的構成を示すブロック図、図6〜図8は制御装置50に備えた位相差推定部74の処理を説明するための図、図9は制御装置50に備えたクリーニング制御部55の処理を説明するフローチャート、図10は図9のSTEP3の処理を説明するためのグラフである。 なお、図5では、電動機1を模式化して記載し、前記第1部材9および第2部材10から構成される機構を「位相可変機構」と表現している。

    本実施形態の制御装置50は、基本的には、いわゆるd−qベクトル制御により電動機1の電機子の通電を制御する。 すなわち、制御装置50は、電動機1を、界磁方向をd軸としてd軸と直交する方向をq軸とする2相直流の回転座標系であるd−q座標系での等価回路に変換して取り扱う。 その等価回路は、d軸上の電機子(以下、d軸電機子という)と、q軸上の電機子(以下、q軸電機子という)とを有する。 d−q座標系は、電動機1の出力軸2に対して固定された座標系である。 そして、制御装置50は、外部から与えられるトルク指令値Tr_c(電動機1の出力軸2に発生させるトルクの指令値)に応じたトルクを電動機1の出力軸2に発生させるように電動機1の電機子(3相分の電機子)の通電電流を制御する。 また、制御装置50は、この通電制御と並行して、電動機1のロータ間位相差θdを前記位相差変更駆動手段23を介して制御する。

    これらの制御を行なうために、本実施形態では、センサとして、電動機1の電機子の3相のうちの2つの相、例えばU相およびW相のそれぞれの電流を検出する電流センサ41,42(電流検出手段)と、電動機1の出力軸2の回転位置θm(回転角度)(=外ロータ3の回転角度)を検出する回転位置検出用センサとしてのレゾルバ43とが備えられている。

    制御装置50は、CPU、メモリ等により構成される電子ユニットであり、その制御処理が所定の演算処理周期で逐次実行される。 以下に、制御装置50の機能的な手段を具体的に説明する。

    制御装置50は、レゾルバ43で検出された回転位置θmを微分することで、電動機1の出力軸2の回転速度ωm(=外ロータ3の回転速度)を求める回転速度算出部44と、電動機1の各相の電機子の通電電流をインバータ回路45を介して制御する通電制御部51とを備える。 インバータ回路45は、周知であるので、その図示は省略するが、上アームと下アームとに3相分(3個)のスイッチング素子(FETなど)と、各スイッチング素子に並列に接続された還流ダイオードとを有するものである。 なお、通電制御部51は、本発明における通電制御手段に相当し、インバータ回路45は、本発明における通電回路に相当するものである。

    通電制御部51は、前記電流センサ41,42の出力信号から不要成分を除去することで、電動機1の電機子のU相、W相のそれぞれの電流検出値Iu,Iwを得るバンドパスフィルタ61と、該電流検出値Iu,Iwと前記レゾルバ43により検出された電動機1の出力軸2の回転位置θmとに基づいて、3相−dq変換によりd軸電機子の電流(以下、d軸電流という)の検出値Id_sおよびq軸電機子の電流(以下、q軸電流という)の検出値Iq_sを算出する3相−dq変換部62とを備える。

    また、通電制御部51は、d軸電流の指令値であるd軸電流指令値Id_cとq軸電流の指令値であるq軸電流指令値Iq_cとを決定する電流指令算出部63と、d軸電流指令値Id_cに後述する位相差追従判定部75で決定されるd軸電流補正値ΔId_vol_2(前回の演算処理周期で決定された値)を加えることでd軸電流指令値Id_cを補正してなる補正後d軸電流指令値Id_caを求める演算部64と、補正後d軸電流指令値Id_caとd軸電流の検出値Id_sとの偏差ΔId(=Id_ca−Id_s。以下、d軸電流偏差ΔIdという)を求める演算部65と、q軸電流指令値Iq_cとq軸電流の検出値Iq_sとの偏差ΔIq(Iq_c−Iq_s。以下、q軸電流偏差ΔIqという)を求める演算部66とを備える。 なお、d軸電流補正値ΔId_vo2は、d軸電機子の電圧とq軸電機子に電圧との合成ベクトルの大きさが所要の電源電圧Vdcを超えないようにするためのd軸電流の操作量を意味する。

    ここで、電流指令算出部63には、制御装置50に外部から与えられるトルク指令値Tr_c(電動機1の出力軸2に発生させるトルクの指令値)と、後述する位相差推定部74で求められるロータ間位相差θdの推定値θd_e(前回の演算処理周期で求められた値)とが入力される。 そして、電流指令算出部63は、これらの入力値から、あらかじめ設定されたマップに基づいて、前記d軸電流指令値Id_cおよびq軸電流指令値Iq_cを決定する。 このd軸電流指令値Id_cおよびq軸電流指令値Iq_cは、トルク指令値Tr_cのトルクを電動機1に発生させるためのd軸電流およびq軸電流のフィードフォワード値としての意味を持つ。

    なお、トルク指令値Tr_cは、例えば電動機1を走行用動力源として搭載した車両(ハイブリッド車両や電動車両)のアクセル操作量(アクセルペダルの踏み込み量)や走行速度に応じて決定される。 また、トルク指令値Tr_cには、力行トルクの指令値と回生トルクの指令値とがあり、本実施形態では、力行トルクのトルク指令値Tr_cを正の値、回生トルクのトルク指令値Tr_cを負の値とする。

    また、通電制御部51は、前記d軸電流偏差ΔIdに応じて、このΔIdを0に収束させるようにPI則などのフィードバック制御則によりd軸電圧基本指令値Vd_c1(d軸電機子の電圧指令値の基本値)を求めるd軸電流制御部67と、前記q軸電流偏差ΔIqに応じて、このΔIqを0に収束させるようにPI則などのフィードバック制御則によりq軸電圧基本指令値Vq_c1(q軸電機子の電圧指令値の基本値)を求めるq軸電流制御部68と、前記補正後d軸電流指令値Id_caおよびq軸電流指令値Iq_cに応じて、d軸とq軸との間で干渉し合う速度起電力の影響を打ち消すための非干渉成分ΔVd,ΔVq(ΔVd:d軸側の非干渉成分、ΔVq:q軸側の非干渉成分)を求める非干渉制御部69と、d軸電圧基本指令値Vd_c1に非干渉成分ΔVdを加える(Vd_c1をΔVdにより補正する)ことで、最終的なd軸電圧指令値Vd_cを決定する演算部70と、q軸電圧基本指令値Vd_c1に非干渉成分ΔVqを加える(Vq_c1をΔVqにより補正する)ことで、最終的なq軸電圧指令値Vq_cを決定する演算部71とを備える。

    さらに、通電制御部51は、d軸電圧指令値Vd_cとq軸電圧指令値Vq_cとを成分とするベクトルを、その大きさV1の成分と、角度θ1の成分とに変換するrθ変換部72と、その大きさV1および角度θ1の成分を3相の交流電圧に変換し、その3相の交流電圧に応じてPWM制御によりインバータ回路45を介して電動機1の各相の電機子に通電するPWM演算部73とを備える。 この場合、PWM演算部73は、インバータ回路45の各スイッチング素子(図示せず)のON・OFFを制御することで、各相の電機子に通電する。 なお、図5では図示を省略しているが、PWM演算部73には、上記V1、θ1を電動機1の各相の電機子の交流電圧に変換するために、前記レゾルバ43で検出された出力軸2の回転位置θmが入力される。

    また、PWM演算部73には、後述するクリーニング制御部55から、インバータ回路45のスイッチング素子の制御形態を規定する動作モード指令F1が入力される。

    ここで、本実施形態では、動作モード指令F1としては、短絡モード指令とゲートオフモード指令と通常モード指令とがある。 短絡モード指令は、電動機1の各相の電機子を短絡させるように、インバータ回路45の上アームおよび下アームの少なくともいずれか一方のアームの全てのスイッチング素子をONにする動作モードの指令である。 また、ゲートオフモード指令は、電動機1の各相の電機子の通電を遮断するようにインバータ回路45の全てのスイッチング素子をOFFする動作モードの指令である。 また、通常モード指令は、前記V1、θ1を変換してなる3相の交流電圧に応じて(d軸電圧指令値Vd_cおよびq軸電圧指令値Vq_cの組に応じて)、インバータ回路45のスイッチング素子を動作させるd−qベクトル制御モードの指令である。 そして、PWM演算部73は、入力された動作モード指令に従って、インバータ回路45の各スイッチング素子のON・OFFを制御する。 この場合、短絡モード指令またはゲートオフモード指令がPWM演算部73に入力されている状態では、d軸電圧指令値Vd_cおよびq軸電圧指令値Vq_cの組に依存せずに、インバータ回路45のスイッチイング素子のON・OFFが制御されることとなる。

    なお、前記動作モード指令F1が、通常モード指令であるときには、上記した通電制御部51の処理機能によって、トルク指令値Tr_cのトルクが電動機1の出力軸2に発生するように、電動機1の各相の電機子の通電電流が制御されることとなる。

    また、通電制御部51は、電動機1のロータ間位相差θdを推定する位相差推定部74と、前記d軸電流補正値ΔId_vol_2を決定する位相差追従判定部75とを備える。

    位相差推定部74は、本実施形態では、次のように電動機1のロータ間位相差θdを推定する。

    図6は、d−q座標系における電流と電圧との関係を示す図であり、縦軸がq軸(トルク軸)、横軸がd軸(界磁軸)とされている。

    図6において、Keは電動機1の誘起電圧定数、ωは電動機1の出力軸2の回転速度(角速度)、Rはd軸電機子およびq軸電機子の抵抗値、Ldはd軸電機子のインダクタンス、Lqはq軸電機子のインダクタンス、Idはd軸電流、Iqはq軸電流、Vdはd軸電圧、Vqはq軸電圧である。 なお、Cは、電動機1の電源電圧Vdc(目標値)を半径とする電圧円である。

    図示の如く、VdとVqとIdとIqとの間には、次の式(1)、(2)の関係式が成立する。

    Ke・ω+R・Iq=Vq−ω・Ld・Id ……(1)
    Vd=R・Id−ω・Lq・Iq ……(2)

    ここで、電動機1の誘起電圧定数Keは、外ロータ3の永久磁石6と内ロータ4の永久磁石8との合成界磁の強さ(磁束の強さ)と顕著な相関性を有する。 この場合、該合成界磁の強さは、ロータ間位相差θdに応じて定まるので、誘起電圧定数Keは、ロータ間位相差θdと顕著な相関性を有することとなる。 本実施形態では、電動機1の誘起電圧定数Keとロータ間位相差θdとの間には、図7のグラフで示すような相関性を有する。 すなわち、ロータ間位相差θdが0[deg]から180[deg]まで増加するに伴い(合成界磁の強さが最大の強さから最小の強さまで低下していくに伴い)、誘起電圧定数Keの値は、単調に減少していく。

    そこで、本実施形態では、位相差推定部74は、前記式(1)から得られる次式(3)に基づいて、誘起電圧定数Keを求める。 そして、この誘起電圧定数Keから、図7のグラフで示す如くあらかじめ設定されたデータテーブルに基づいて、ロータ間位相差θdの推定値θd_eを求める。

    Ke=(Vq−ω・Ld・Id−R・Iq)/ω ……(3)

    この場合、式(3)の演算の値に必要なVq,Id,Iqの値として、それぞれ前記演算部71により算出されるq軸電圧指令値Vq_c、前記3相−dq変換部62により求められるd軸電流の検出値Id_sおよびq軸電流の検出値Iq_sが用いられる。 また、Ldの値としてはあらかじめ定められた固定値が用いられる。 また、Rの値としては、例えば前記式(2)から得られる次式(4)により決定される値が用いられる。

    R=(Vd+ω・Lq・Iq)/Id ……(4)

    この式(4)の演算に必要なVd、Iq、ωの値としては、前記演算部70により算出されるd軸電圧指令値Vd、前記3相−dq変換部62により算出されるq軸電流の検出値Iq_s、前記回転速度算出部75で算出される回転速度ωmを用いればよい。 また、Lqの値としては、本実施形態では、トルク指令値Tr_cから、図8のグラフで示す如くあらかじめ定められたデータテーブルに基づいて、Lqの値を決定し、その値を式(4)の演算に使用する。 図8のグラフは電動機1の出力軸2の発生トルクと、Lqの値との相関関係を表している。 図示の如く、電動機1の発生トルクと、Ldとの間には顕著な相関性がある。 そこで、本実施形態では、上記の如く、この相関性を利用して、トルク指令値Tr_cからLdの値を決定する。

    なお、式(4)によりRの値を求める場合、d軸電流Idが0近傍の値であるときには、Rの値を精度よく求めることができない。 これに対する対策として、例えば次のようにRの値を求めるようにしてもよい。 すなわち、前記演算部64により算出されるd軸電流指令値Id_caが0近傍の値に維持される状況において、d軸電流指令値を0近傍で正の値と負の値とに周期的に変化し、且つ、その時間平均値が0近傍に維持されるように設定し直す。 そして、この状態において、次式(5)によりRの値を算出する。

    R={(Vd1−Vd2)+ω・Lq・(Iq1−Iq2)}/(Id1−Id2) ……(5)

    ここで、Vd1,Iq1,Id1は、それぞれd軸電流指令値が正の値(または負の値)となる時刻(以下、時刻1という)に対応するd軸電圧、q軸電流、d軸電流を意味し、Vd2,Iq2,Id2は、それぞれd軸電流指令値がVd1,Iq1,Id1の場合と逆極性になる時刻(以下、時刻2という)に対応するd軸電圧、q軸電流、d軸電流を意味する。 それらの値としては、各時刻1,2におけるd軸電圧指令値Vd_c、q軸電流の検出値Iq_s、d軸電流の検出値Id_sを使用すればよい。 また、d軸電流指令値を変化させる1周期内での電動機1の出力軸2の実際の回転速度およびq軸電機子の実際のインダクタンスの変化がほぼ0であるとみなし、式(5)のωの値としては、時刻1または時刻2で前記回転速度算出部44で算出される回転速度ωmの値を用いればよい。 さらに、式(5)のLqの値としては、時刻1または時刻2でのトルク指令値Tr_cから前記図8のグラフで示すデータテーブルに基づき決定される値を使用すればよい。

    このようにRの値を決定することにより、d軸電流Idが0近傍の値となる状況でも、Rの値を適正に決定することができる。

    補足すると、前記式(3)により誘起電圧定数Keの値を推定する場合、Rの値をあらかじめ定めた固定値にしてもよい。 また、ロータ間位相差θdを推定する場合、その推定精度を高めるために、Keの値だけでなく、Lqの値を考慮してもよい。 例えば、式(3)により求めたKeの値と、前記図8のデータテーブルを基に求めたLqの値とからあらかじめ設定されたマップに基づいてロータ間位相差θdの推定値θd_eを求めるようにしてもよい。 また、Rの値やLqの値は、電動機1の電機子あるいは永久磁石6,8の温度の影響を受けるので、その温度を検出または推定し、その温度に基づいて、RやLqの値を推定するようにしてもよい。 そして、その推定したRやLqの値を用いて、Keの値や、ロータ間位相差θdを前記した如く推定するようにしてもよい。

    なお、前記位相差追従判定部75の処理については、詳細を後述する。

    制御装置50は、前記回転速度算出部44および通電制御部51のほか、前記d軸電圧指令値Vd_cおよびq軸電圧指令値Vq_cの合成ベクトルの大きさ(合成電圧)が、制御装置50に与えられる電動機1の電源電圧Vdc(目標値)を超えないようにようにするための界磁の操作量としての界磁操作電流ΔId_volを決定する界磁制御部52と、この界磁操作電流ΔId_volに応じて電動機1のロータ間位相差θdの第1指令値である第1位相差指令値θd_c1を決定する位相差指令決定部53と、前記位相差変更駆動手段23の油圧室24,25のクリーニングの必要性の有無を判断するクリーニング要求判断部54と、そのクリーニング要求判断部54の判断結果に応じて、前記動作モード指令F1を決定したり、ロータ間位相差θdの第2指令値である第2位相差指令値θd_c2を決定するなどの処理を実行するクリーニング制御部55と、第1位相差指令値θd_c1および第2位相差指令値θd_c2のうちの一方を、位相差指令値θd_cとして選択し、この選択した位相差指令値θd_cを位相差変更駆動手段23の油圧源装置30に出力する位相差指令選択部56とを備える。 なお、クリーニング要求判断部54は本発明におけるクリーニング要求判断手段に相当し、クリーニング制御部55は本発明におけるクリーニング用位相差制御手段に相当する。

    界磁制御部52には、界磁操作電流ΔId_volを決定するために、制御装置50に与えられる電動機1の電源電圧Vdc(目標値)と、前記通電制御部51で決定されるd軸電圧指令値Vd_cおよびq軸電圧指令値Vd_qとが逐次入力される。 そして、界磁制御部52は、入力されたVd_cおよびVd_qの合成ベクトルの大きさ(=√(Vd_c 2 +Vd_q 2 ))と、電源電圧Vdcとの偏差に応じて、この偏差を0に近づけるようにフィードバック制御則により、界磁操作電流ΔId_volを決定する。 なお、電源電圧Vdcは、電動機1の電源としての蓄電器(図示省略)の出力電圧の検出値などに応じて設定される。

    ここで、Vd_cおよびVd_qの合成ベクトルの大きさを電源電圧Vdcに一致させる(すなわち、該合成ベクトルを図6の電圧円の円周にトレースさせる)ためには、d軸電流を調整することで、擬似的にロータ3,4と電機子との間の界磁を操作する手法と、ロータ間位相差θdを調整する(ひいては、誘起電圧定数Keを調整する)ことで、前記永久磁石6,8の合成界磁を直接的に操作する手法とがある。 前記界磁操作電流ΔId_volは、これらの界磁の操作量をd軸電流の操作量で表したものである。

    なお、界磁制御部52では、界磁操作電流ΔId_volの代わりに、ロータ間位相差θdまたは誘起電圧定数Keの操作量を決定するようにしてもよい。

    前記位相差指令決定部53には、上記の如く界磁制御部52で決定された界磁操作電流ΔId_volが入力される。 そして、該位相差指令決定部53は、この界磁操作電流ΔId_volを、該界磁操作電流Id_volによってd軸電流を操作した場合と同等の界磁変化を生じるロータ間位相差θdの操作量(補正量)に変換し、そのロータ間位相差θdの操作量によって、現在の第1位相差指令値θd_c1を補正することで、新たな第1位相差指令値θd_c1を決定する。 この場合、Id_volからロータ間位相差θdの操作量への変換は、例えば現在の第1位相差指令値θd_c1に応じて設定されるゲインをId_volに乗じることで行なわれる。

    前記クリーニング要求判断部54は、本実施形態では、前記回転速度算出部44で算出される電動機1の出力軸2の回転速度ωmに基づいて、前記油圧室24,25のクリーニング(油圧室24,25内に蓄積するスレラッジの除去)の必要性を判断する。 ここで、油圧室24,25に単位時間当たりに蓄積するスラッジの量は、概ね、電動機1の出力軸2の回転速度ωmの2乗に比例する。 そこで、本実施形態では、クリーニング要求判断部54は、回転速度ωmの2乗値ωm 2 (あるいは、ωm 2に比例する値)を制御装置51の演算処理周期毎に累積加算する。 そして、その累積加算値Σωm 2があらかじめ定めた所定値を超えたときに、油圧室24,25のクリーニングの必要性があると判断し、その旨をクリーニング制御部55に出力する。

    なお、累積加算値Σωm 2は、車両の運転停止中も失われることがないようにEEPROMなどの不揮発性メモリに記憶保持される。 また、累積加算値Σωm 2は、後述するクリニング動作の終了後に、0に初期化される。

    補足すると、本実施形態では、クリーニングの必要性の有無を判断するために、累積加算値Σωm 2を用いたが、例えば電動機1の出力軸2が回転している時間を計時し、その計時時間が、所定値を超えたときに、クリーニングの必要性があると判断してもよい。 あるいは、例えば、その計時時間と累積加算値Σωm 2との両者を基に、クリーニングの必要性の有無を判断するようにしてもよい。

    クリーニング制御部55には、前記回転速度算出部44で算出される回転速度ωmと、トルク指令値Tr_cと、電動機1の電源電圧Vdcの値とが入力される。 そして、クリーニング制御部55は、詳細は後述するが、これらの入力値を基に、電動機1の運転状況を判断し、それに応じて前記動作モード指令F1を決定し、それを前記通電制御部51のPWM演算部73に出力する。 また、クリーニング制御部55は、油圧室24,25のクリーニングを行なうためのロータ間位相差θdの指令値として、前記第2位相差指令値θd_c2を決定し、それを位相差指令選択部56に出力する。 また、クリーニング制御部55は、位相差指令選択部56で第1位相差指令値θd_c1と第2位相差指令値θd_c2のうちのいずれを選択すべきかを規定する位相差指令選択フラグの値を設定し、それを位相差指令選択部56に出力する。

    ここで、本実施形態では、位相差指令選択フラグの値は、その値が「0」であるときに、前記位相差指令決定部53で決定される第1位相差指令値θd_c1を選択すべきことを意味し、値が「1」であるときに、クリーニング制御部55で決定される第2位相差指令値θd_c2を選択すべきことを意味する。

    そして、前記位相差指令選択部56は、前記位相差指令選択フラグの値に応じて、第1位相差指令値θd_c1および第2位相差指令値θd_c2のうちの一方を選択し、その選択した値を位相差指令値θd_cとして、前記位相差変更駆動手段23の油圧源装置30に出力する。

    なお、油圧源装置30では、入力される位相差指令値θd_cに実際のロータ間位相差θdを追従させるように、各油圧室24,25の油圧を操作する。 この場合、例えば位相差指令値θd_cからあらかじめ設定されたデータテーブルに基づいて、各油圧室24,25の油圧(互いに隣合う油圧室24,25の油圧の差により前記第1部材9と第2部材10との間で発生する回転力が前記磁力トルクに釣り合うような油圧)を決定し、その油圧に各油圧室24,25の油圧を制御することで、ロータ間位相差θdを位相差指令値θd_cに追従させる。

    ここで、説明を後回しにした前記通電制御部51の位相差追従判定部75の処理を説明しておく。 本実施形態では、d軸電圧指令値Vd_cとq軸電圧指令値Vq_cとの合成ベクトルの大きさが電源電圧Vdc(目標値)になるにようにするために、基本的には、ロータ間位相差θdを調整して、前記永久磁石6,8の合成界磁を操作する。 この場合、実際のロータ間位相差θdは、一般に、前記位相差指令値θd_cに対して追従遅れを生じるため、位相差指令値θd_cと、前記位相差推定部74で推定されるロータ間位相差θd_eとが一致していない状況では、d軸電流を調整する。 そして、位相差追従判定部75は、上記のように位相差指令値θd_cと、前記位相差推定部74で推定されるロータ間位相差θd_eとが一致していない状況で、d軸電流を調整するための前記d軸電流補正値ΔId_vol_2を決定する。

    この処理を行なうために、位相差追従判定部75には、前記位相差推定部74で推定されたロータ間位相差θd_eと、前記位相差指令選択部56で選択された位相差指令値θd_cと、前記界磁制御部52で決定された界磁操作電流ΔId_volとが逐次入力される。

    そして、位相差追従判定部75は、入力されたロータ間位相差θdの推定値θd_eと、位相差指令値θd_cとが一致しているときには、d軸電流補正値ΔId_vol2の値を0に設定し、一致していない場合には、前記界磁操作電流ΔId_volをそのまま、d軸電流補正値ΔId_vol2として設定する。 このように設定されたd軸電流補正値ΔId_vol2が前記演算部64に入力される。

    次に、前記クリーニング制御部55の処理と、それによる油圧室24,25のクリーニング動作を図9および図10を参照して説明する。

    図9のフローチャートで示す如く、クリーニング制御部55は、まず、油圧室24,25のクリーニング(スラッジの除去)の要求があるか否かを判断する(STEP1)。 この場合、クリーニング制御部55は、前記クリーニング要求判断部54の判断結果が、クリーニングの必要性があるとの判断であるときには、クリーニングの要求があると判断する。 また、クリーニング要求判断部54の判断結果が、クリーニングの必要性が無いとの判断であるときには、クリーニング制御部54は、クリーニングの要求が無いと判断する。 なお、前記クリーニング要求判断部54の処理は、クリーニング制御部54で行なうようにしてもよい。

    STEP1の判断結果が否定的である場合(クリーニングの要求が無い場合)には、クリーニング制御部54は、STEP9にて、動作モード指令を通常モード指令にすると共に、STEP10にて、位相差指令選択フラグの値を「0」に設定する。 設定された動作モード指令は、前記通電制御部51のPWM演算部73に出力され、位相差指令選択フラグの値は、前記位相差指令選択部56に出力される。

    従って、クリーニングの要求が無い場合には、PWM演算部73は、前記d軸電圧指令値Vd_cおよびq軸電圧指令値Vq_cに応じてインバータ回路45の各スイッチング素子のON・OFFを制御することとなる。 これにより、電動機1の電機子の通電電流は、d−qベクトル制御によって、トルク指令値Tc_rに対応する電流(d軸電流およびq軸電流がそれぞれ補正後d軸電流指令値Id_ca、q軸電流指令値Iq_cに従う電流)に制御される。 ひいては、該電動機1の出力軸2にトルク指令値Tr_cのトルクが発生する。

    また、前記位相差指令選択部56は、前記位相差指令決定部53から入力される第1位相差指令値θd_c1を位相差指令値θd_cとして選択し、これを前記位相差変更駆動手段23の油圧源装置30に出力する。 従って、油圧源装置30により、実際のロータ間位相差θdが、第1位相差指令値θd_c1になるように油圧室24,25の油圧が操作される。

    なお、このとき、第1位相差指令値θd_c1がほぼ一定に維持され、前記位相差推定部74で求められたロータ間位相差θdの推定値θd_eが定常的にθd_c1に一致している状態では、前記位相差追従判定部75の処理によって、前記d軸電流補正値ΔId_vol2は、0に維持される。 そして、第1位相差指令値θd_c1が変化し、ロータ間位相差θdの推定値θd_eとの間に差が生じると、その差分に伴う界磁の過不足分をd軸電流による界磁で補うように、d軸電流補正値ΔId_vol2が、前記界磁制御部52で決定される界磁操作電流ΔId_volに設定されることとなる。

    前記STEP1の判断結果が肯定的である場合(クリーニングの要求がある場合)には、クリーニング制御部52は、次に、電動機1の運転状態が、トルク指令値Tr_cが0で、且つ、電動機1の出力軸2の回転速度ωm(前記回転速度算出部44で算出されるωm)と、電動機1の前記界磁最大状態における誘起電圧定数の値である最大誘起電圧定数Kemaxとの積(=Kemax・ωm)が、電源電圧Vdcを所定値αで除算してなる値(=Vdc/α)よりも小さくなる運転状態であるか否かを判断する(STEP2)。 ここで、所定値αは、電動機1の変調率で、本実施形態では、√6である。 なお、Kemax・ωm<Vdc/αであるか否かということは、ωmが所定値(Vdc/(α・Kemax))よりも小さいか否かということと同等である。

    STEP2の判断結果が肯定的である状況では、Tr_c=0であるので、電動機1の出力軸2に発生するトルクが0になるように、電機子の各相の通電電流が制御されている状況であり、この状況では、電機子の通電電流はほぼ0に維持される。 そして、この状況では、前記インバータ回路45の全てのスイッチング素子をOFFにしても、電動機1の運転状態は影響を受けない。 つまり、STEP2の判断結果が肯定的となる状況での電動機1の運転状態は、前記インバータ回路45の全てのスイッチング素子をOFFにした場合における電動機1の運転状態と同様である。 なお、Tr_c=0であっても、Kemax・ωm≧Vdc/αとなる状況では、インバータ回路45の上アームまたは下アームの全てのスイッチング素子をOFFにすると、該インバータ回路45が有する還流ダイオードの影響で、電動機1に回生トルクを発生させる電流が流れてしまう。 そのため、STEP2では、Kemax・ωm<Vdc/αであるか否かという条件を付加している。

    そこで、本実施形態では、STEP2の判断結果が肯定的となる場合には、クリーニング制御部55は、前記動作モード指令をゲートオフモード指令にする(STEP4)。 さらに、クリーニング制御部55は、STEP7で位相差指令選択フラグを「1」に設定した後、ロータ間位相差θdの増加・減少(詳しくは、ロータ間位相差θdを増加または減少させ、これに続いてロータ間位相差θdを減少または増加させること)を所定回数、繰り返させるように第2位相差指令値θd_c2を生成する(STEP8)。 例えば第2位相差指令値θd_c2を、所定数のサイクル分、三角波状あるいは正弦波状に変化させるように生成する。 なお、ロータ間位相差θdを増加・減少を繰り返すということは、内ロータ4を外ロータ3に対して正転方向および逆転方向に交互に相対回転させることを繰り返すことと同等である。

    この場合、ロータ間位相差θdの増加・減少における上限値および下限値は、あらかじめ定めた値(例えば180[deg]と0[deg])でよいが、ロータ間位相差θdの増加・減少の開始直前におけるロータ間位相差θdの推定値θd_eに応じて決定してもよい。 また、ロータ間位相差θdの増加・減少の周期は、あらかじめ定めた値でよいが、車両の走行状態などに応じて決定してもよい。

    以上説明したSTEP4,7,8の処理によって、通電制御部51のPWM演算部73は、インバータ回路45の全てのスイッチング素子をOFFにする。 これにより、電動機1の電機子の通電電流が遮断され、出力軸2に発生するトルクがトルク指令値Tr_cと等しい「0」に維持されることとなる。

    また、位相差指令選択フラグの値が「1」に設定されることで、前記位相差指令選択部56は、クリーニング制御部55により上記の如く生成される第2位相差指令値θd_c2を位相差指令値θd_cとして選択し、それを油圧源装置30に出力する。 そして、該油圧源装置30は、該第2位相差指令値θd_c2に従って、実際のロータ間位相差θdの増加・減少を所定回数繰り返させるように油圧室24,25の油圧を制御する。 これにより、油圧室24,25の容積の増加・減少が繰り返され、油圧室24,25とその外部との間で作動油が流れることとなる。 その結果、油圧室24,25に蓄積しているスラッジが油圧室24,25から流出し、該スラッジの蓄積を解消することができる。 また、この場合、インバータ回路45の全てのスイッチング素子をOFFにしているので、電動機1の電機子の通電電流は、ロータ間位相差θdの増加・減少(合成界磁の増加・減少)の影響を受けず、電動機1の出力軸2に発生するトルクを安定に0に維持することができる。

    なお、クリーニング制御部55は、上記の如くロータ間位相差θdの増加・減少を所定回数繰り返させた後には、前記STEP9で動作モード指令を通常モード指令に戻し、さらに、前記STEP10で、位相差指令選択フラグの値を「0」にリセットする。 これにより油圧室24,25のクリーニング動作が終了する。

    補足すると、前記STEP2の判断処理は、本発明における第1運転状態判断手段に相当するものである。

    前記STEP2の判断結果が否定的である場合には、クリーニング制御部55は、次に、電動機1の運転状態が、トルク指令値Tr_cが後述する如く決定される所定値TRQ1にほぼ等しく(Tr_cとTRQ1との差の絶対値が0近傍の所定値以下であり)、且つ、電動機1の出力軸2の回転速度ωmが所定値ωm以上となる運転状態であるか否かを判断する(STEP3)。

    ここで、トルクに関する上記所定値TRQ1は、インバータ回路45の上アームおよび下アームのいずれか、もしくは両アームの全てスイッチング素子をONにして、電動機1の各相の電機子を短絡した状態で、電動機1の出力軸2に発生するトルク値を意味する。 以下、所定値TRQ1を短絡トルク値TRQ1という。

    この短絡トルク値TRQ1は、一般的には、次式(6)により与えられる。

    なお、式(6)の右辺のωeは、電動機1の出力軸2の電気角速度であり、前記回転速度算出部44により算出される回転速度ωmに比例する値(ωmにロータ3,4の極対数を乗じた値)である。 式(6)の右辺のその他の変数R,Ld,Lqの意味は、前記位相差推定部74の処理に関して説明した通りである。

    図10は、この式(6)により与えられる短絡トルク値TRQ1と、回転速度ωmとの関係を示すグラフである。 図示の如く、短絡トルク値TRQ1は、負のトルク(回生トルク)となり、その値は、回転速度ωmが所定値ωmx以上になると概ね一定値となる(正確にはωmもしくはωeの逆数に比例する)。

    本実施形態では、STEP3でトルク指令値Tr_cと比較する短絡トルク値TRQ1は、前記式(6)により決定される。 この場合、式(6)の右辺の演算に必要なLd,Lqの値としては、例えば、STEP1の判断結果がYESとなった時刻での前記位相差推定部74の処理で使用する値をそのまま用いればよい。 また、R,Keの値としては、STEP1の判断結果がYESとなった時刻での前記位相差推定部74の処理で推定された値を使用すればよい。 ただし、回転速度ωmが所定値ωmx以上の高速域にある状態では、Ld,Lq,R,Keの変化に対する短絡トルク値TQR1の変化は十分に小さい。 従って、式(6)の演算におけるLd,Lq,R,Keの値とし、あらかじめ定めた固定値を使用してもよい。

    補足すると、回転速度ωmが所定値ωmx以上であるときの、短絡トルク値TRQ1と回転速度ωmとの関係をあらかじめデータテーブルとして定めておき、そのデータテーブルを基に、回転速度ωm(回転速度算出部44で算出された値)から短絡トルク値TRQ1を決定するようにしてもよい。

    STEP3の判断結果が肯定的となる状況では、インバータ回路45の上アームおよび下アームのいずれか、もしくは両アームの全てスイッチング素子をONにして、電動機1の各相の電機子を短絡しても、電動機1の運転状態は影響を受けない。 つまり、STEP3の判断結果が肯定的となる状況での電動機1の運転状態は、電動機1の各相の電機子を短絡した場合における電動機1の運転状態と同等である。

    そこで、本実施形態では、STEP3の判断結果が肯定的となる場合には、クリーニング制御部55は、前記動作モード指令を短絡モード指令にする(STEP5)。 さらに、クリーニング制御部55は、STEP7で位相差指令選択フラグを「1」に設定した後、ロータ間位相差θdの増加・減少を所定回数、繰り返させるように第2位相差指令値θd_c2を生成する(STEP8)。 このSTEP8の処理は、動作モード指令をゲートオフモード指令にする場合と同様に行なわれる。

    以上説明したSTEP5,7,8の処理によって、通電制御部51のPWM演算部73は、インバータ回路45の上アームまたは下アームの全てのスイッチング素子をONにする。 これにより、電動機1の各相の電機子が短絡され、出力軸2に発生するトルクがトルク指令値Tr_cとほぼ等しい短絡トルク値TRQ1に維持されることとなる。

    また、位相差指令選択フラグの値が「1」に設定されることで、動作モード指令がゲートオフモード指令とされる場合と同様に、位相差指令選択部56から第2位相差指令値θd_c2が位相差指令値θd_cとして油圧源装置30に出力される。 そして、該油圧源装置30は、該第2位相差指令値θd_c2に従って、実際のロータ間位相差θdの増加・減少を所定回数繰り返させるように油圧室24,25の油圧を制御する。 これにより、動作モード指令がゲートオフモード指令とされる場合と同様に、油圧室24,25に蓄積しているスラッジが油圧室24,25から流出し、該スラッジの蓄積を解消することができる。

    また、この場合、電動機1の各相の電機子を短絡しているので、電動機1の電機子の通電電流は、ロータ間位相差θdの増加・減少(合成界磁の増加・減少)の影響を受けず、電動機1の出力軸2に発生するトルクを安定にトルク指令値Tr_cにほぼ等しい短絡トルク値TRQ1に維持することができる。

    なお、クリーニング制御部55は、上記の如くロータ間位相差θdの増加・減少を所定回数繰り返させた後には、前記STEP9で動作モード指令を通常モード指令に戻し、さらに、前記STEP10で、位相差指令選択フラグの値を「0」にリセットする。 これにより油圧室24,25のクリーニング動作が終了する。

    補足すると、前記STEP3の判断処理は、本発明における第2運転状態判断手段に相当するものである。

    前記STEP3の判断結果が否定的である場合には、クリーニング制御部55は、動作モード指令を通常モード指令にする(STEP6)。 さらに、クリーニング制御部55は、STEP7で位相差指令選択フラグを「1」に設定した後、ロータ間位相差θdの増加・減少を所定回数、繰り返させるように第2位相差指令値θd_c2を生成する(STEP8)。 このSTEP8の処理は、動作モード指令をゲートオフモード指令にする場合と同様に行なわれる。 ただし、この場合、ロータ間位相差θdの増加・減少における第2位相差指令値θd_c2の上限値および下限値は、トルク指令値Tr_cのトルクを電動機1の出力軸2に支障なく発生させることが可能な範囲内で設定される。 あるいは、例えば、第2位相差指令値θd_c2の上限値および下限値を固定値とし、トルク指令値Tr_cが、該上限値および下限値間のロータ間位相差θdの範囲内で電動機1の出力軸に発生させ得るトルク値の範囲内に存在する状況でのみ、STEP7,8の処理を実行するようにしてもよい。

    以上説明したSTEP6,7,8の処理によって、通電制御部51のPWM演算部73は、d軸電圧指令値Vd_cおよびq軸電圧指令値Vq_cに応じてインバータ回路45の各スイッチング素子のON・OFFを制御することとなる。 これにより、電動機1の各相の電機子の通電電流のd軸成分およびq軸成分がそれぞれd軸電流指令値Id_ca、q軸電流指令値Iq_cに制御される。 ひいては、電動機1の出力軸2に発生するトルクが、トルク指令値Tr_cに従って制御される。

    また、位相差指令選択フラグの値が「1」に設定されることで、動作モード指令がゲートオフモード指令あるいは短絡モード指令とされる場合と同様に、位相差指令選択部56から第2位相差指令値θd_c2が位相差指令値θd_cとして油圧源装置30に出力される。 そして、該油圧源装置30は、該第2位相差指令値θd_c2に従って、実際のロータ間位相差θdの増加・減少を所定回数繰り返させるように油圧室24,25の油圧を制御する。 これにより、動作モード指令がゲートオフモード指令とされる場合と同様に、油圧室24,25に蓄積しているスラッジが油圧室24,25から流出し、該スラッジの蓄積を解消することができる。

    この場合、第2位相差指令値θd_c2の増加・減少に対する実際のロータ間位相差θdの増加・減少の遅れの影響は、前記d軸電流補正値ΔId_vol2(=界磁操作電流ΔId_vol)によって補償されるので、トルク指令値Tr_cのトルクを適切に電動機1の出力軸2に発生させることができる。 従って、油圧室24,25のクリーニングを行いながら、トルク指令値Tr_cのトルクを電動機1の出力軸2に適切に発生することができる。

    なお、クリーニング制御部55は、上記の如くロータ間位相差θdの増加・減少を所定回数繰り返させた後には、前記STEP9で動作モード指令を通常モード指令とし、さらに、前記STEP10で、位相差指令選択フラグの値を「0」にリセットする。 これにより油圧室24,25のクリーニング動作が終了する。 補足すると、動作モード指令が通常モード指令とされる場合におけるクリーニング動作の終了時には、STEP9の処理は、省略してもよい。

    以上のように、本実施形態によれば、油圧室24,25のクリーニングの必要性が有る場合に、ロータ間位相差θdの増加・減少を繰り返すことで、油圧室24,25に蓄積するスラッジを除去することができる。 その結果、電動機1の位相差変更駆動手段23の動作不良、特に前記第1部材9に対する第2部材10の相対回転動作の不良の発生を防止できる。 また、油圧室24,25のクリーニングを行いながら、電動機1の所望の運転を継続できる。

    なお、以上説明した実施形態では、ゲートオフモード、短絡モード、通常モードの3種類の形態で、油圧室24,25のクリーニングを行なうようにしたが、いずれか一つのモード、あるいは、二つのモードだけで油圧室24,25のクリーニングを行なうようにしてもよい。

    また、前記実施形態では、通電制御部51の電流指令算出部53でd軸電流指令値Id_cおよびq軸電流指令値Iq_cを決定するときに、前記位相差推定部74で推定されたロータ間位相差θd_eを使用したが、実際のロータ間位相差θdを適宜のセンサを用いて検出し、その検出値を推定値θd_eの代わりに使用してもよい。 あるいは、ロータ間位相差θdの推定値または検出値の代わりに、該ロータ間位相差θdと前記図7に示したような相関関係を有する特性パラメータとしての誘起電圧定数Keを使用して、電流指令算出分53でd軸電流指令値Id_cおよびq軸電流指令値Iq_cを決定するようにしてもよい。 この場合、誘起電圧定数Keの値しては、位相差推定部74で前記の如く推定される値、あるいは、実際のロータ間位相差θdの検出値から図7に示すようなデータテーブルを基に求めた値を使用すればよい。

    本発明の一実施形態における電動機の要部の断面図。

    図1の電動機のドライブプレート19を外した状態で該電動機の軸心方向で見た図。

    図3(a)は界磁最大状態での電動機の内ロータと外ロータとの位相関係を示す図であり、図3(b)は界磁最小状態での電動機の内ロータと外ロータとの位相関係を示す図。

    界磁最大状態と界磁最小状態とにおける電動機の電機子の誘起電圧を示すグラフ。

    図1の電動機の制御装置の機能的構成を示すブロック図。

    図1の電動機のdq座標系における電流と電圧との関係を示す図。

    図1の電動機の両ロータ間の位相差と誘起電圧定数との関係を示すグラフ。

    図1の電動機の出力軸の発生トルクとd軸電機子のインダクタンスLqとの関係を示すグラフ。

    図5の制御装置に備えたクリーニング制御部55の処理を示すフローチャート。

    図9のフローチャートのSTEP3の処理を説明するためのグラフ。

    符号の説明

    1…電動機、2…出力軸、3…外ロータ(第1ロータ)、4…内ロータ(第2ロータ)、6(6a,6b)…外ロータの永久磁石、8(8a,8b)…内ロータの永久磁石、23…位相差変更駆動手段、24,25…油圧室、45…インバータ回路(通電回路)、51…通電制御部(通電制御手段)、54…クリーニング要求判断部(クリーニング要求判断手段)、55…クリーニング制御部(クリーニング用位相差制御手段)、STEP2…第1運転状態判断手段、STEP3…第2運転状態判断手段。

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