【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、単結晶引上げ機に供給された不活性ガスを吸引して排出する排気系に関する。 更に詳しくは排気系に設けられた水封式の真空ポンプに関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来、単結晶引上げ機の不活性ガス排気系では、図5に示すようにシリコン単結晶の引上げ機1 が排気管2を介して水封式の真空ポンプ3の吸込口に接続され、引上げ機1に供給された不活性ガス(例えば、 Arガス)が上記真空ポンプ3により排気管2を通して吸引され、引上げ機1の上部には不活性ガスを引上げ機1内に供給する吸気管4の一端が接続され、この吸気管4の他端は不活性ガスを貯留するタンク(図示せず)に接続される。 また真空ポンプ3内には水5が封入され、 この水は循環ポンプ4によりセパレータタンク6及び水冷却器7を通って循環して使用される。 セパレータタンク6の底壁にはこのタンク6内の水5を排出可能な水排出管8が接続され、この管8には水排出弁8aが設けられる。 更にセパレータタンク6の蓋には清浄水供給管9 が接続され、この管9には清浄水供給弁9aが設けられる。 【0003】このように構成された不活性ガス排気系では、引上げ機1によりシリコン単結晶を引上げるときには、吸気管4から引上げ機1内に不活性ガスを供給し、 この引上げ機1内の不活性ガスを真空ポンプ3により吸引して引上げ機1内が所定の負圧に保たれる。 一方、引上げ機1内の不活性ガスにはSiOやSiO 2等の粉塵が混入するため、この粉塵は排気管2を通って真空ポンプ3に封入された水5に混入する。 このため、引上げ機1による単結晶の引上げ完了毎(1バッチ毎)に真空ポンプ3を停止し、水排出弁8aを開いてセパレータタンク6内の水5を排出し、更に清浄水供給弁9aを開いてセパレータタンク6に粉塵を含まない清浄な水5を新たに供給している。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来の単結晶引上げ機の不活性ガス排気系では、不活性ガスに混入したSiOやSiO 2等の粉塵が真空ポンプの吸込口近傍に堆積して吸込口を狭め、真空ポンプによる不活性ガスの吸引力が低下する不具合があった。 また上記真空ポンプの吸込口に堆積した粉塵は、真空ポンプを頻繁に分解・洗浄して除去しなければならず、真空ポンプの保守作業が煩わしい問題点もあった。 本発明の目的は、不活性ガスに混入した粉塵が吸込口近傍に堆積するのを防止できるとともに、保守作業の間隔を長くすることができる、単結晶引上げ機の不活性ガス排気系の水封式真空ポンプを提供することにある。 【0005】 【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明は、 図1及び図4に示すように、単結晶引上げ機11に排気管14を介して連通接続されたガス導入室21と、複数のロータ羽根22が偏心した状態で回転可能に収容されかつ所定の流量の水が水供給手段35により供給されるロータ室24と、ガス導入室21とロータ室24とを区画しかつガス導入室とロータ室とを連通接続する吸込口27aを有するロータガイド板27とを備え、単結晶引上げ機11に供給された不活性ガスを吸込口27aから吸込みかつ圧縮して水23とともに排出するように構成された単結晶引上げ機の不活性ガス排気系の水封式真空ポンプの改良である。 その特徴ある構成は、先端が封止され長手方向に複数の噴射孔33aが形成されかつ基端が水供給手段35に接続された洗浄パイプ33が、複数の噴射孔33aをロータガイド板27に対向してガス導入室21の内部に設けられたところにある。 【0006】この請求項1に記載された単結晶引上げ機の不活性ガス排気系の水封式真空ポンプでは、単結晶を構成する元素の酸化物等からなる粉塵が不活性ガスに混入し、この粉塵が不活性ガスとともに真空ポンプ16のガス導入室21に流入してロータガイド板27に付着しても、水供給手段35から洗浄パイプ33に供給された水23が複数の噴射孔33aからロータガイド板27に向って噴射されるので、この噴射された水23によりロータガイド板27に付着した粉塵は洗い流される。 【0007】 【発明の実施の形態】次に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。 この実施の形態では、引上げ機により引上げられる単結晶はシリコン単結晶である。 図4に示すように、引上げ機11は、チャンバ12と、このチャンバの上端に接続されたケーシング13とを有する。 上記チャンバ12内には、図示しないがシリコン融液が貯留される石英るつぼや、この石英るつぼを包囲し上記シリコン融液を加熱するヒータ等が収容される。 またケーシング13にはシリコン単結晶を引上げる引上げ手段が設けられる。 チャンバ12の下面には排気管14を介して真空ポンプ16が接続され、ケーシング13の上部には吸気管17が接続される。 吸気管の一端はケーシング13の上面に接続され、吸気管の他端は不活性ガス(この実施の形態ではArガス)が貯留されるタンク(図示せず)に接続される。 また排気管14は一端がチャンバ12の下面にそれぞれ接続され他端が合流する一対の第1及び第2分岐管14a,14bと、一端が第1 及び第2分岐管の合流端に接続され他端が水封式の真空ポンプ16のガス導入室21に接続された集合管14c とを有する。 なお、水封式の真空ポンプはメカニカルブースタと組合せて用いてもよい。 【0008】真空ポンプ16より排気上流側の集合管1 4cには後述するサイクロン18(図1)が設けられ、 このサイクロンの下端にはダストチャンバ19が設けられる。 このサイクロン18によりArガスに含まれるS iOやSiO 2等の粉塵(単結晶を構成する元素の酸化物等からなる粉塵)がArガスから分離され、分離された粉塵はダストチャンバ19に貯留されるように構成される。 但し、上記サイクロン18は引上げ機11内を所定の負圧に保つために、排気管14の内径をサイクロン18の入口直前であまり絞らないようにして圧力損失を少なくしている。 このため、サイクロンによる粉塵の分離能力はあまり高くない。 【0009】真空ポンプ16は、図1〜図3に詳しく示すように、引上げ機11に排気管14を介して連通接続された上記ガス導入室21と、複数のロータ羽根22が偏心した状態で回転可能に収容されかつ所定の流量の水23が供給されるロータ室24と、ロータ室で圧縮されたArガス及びロータ室からオーバフローした水23が流入する排出室26と、ガス導入室21及び排出室26 とロータ室24とを区画するロータガイド板27とを備える。 ロータガイド板27の一方の面にはカバー体28 が取付けられ、このロータガイド板27とカバー体28 により第1空間31が形成される(図1及び図2)。 カバー体28の内部には一対の第1仕切り板41,41 (図2)が配設され、これらの仕切り板により第1空間31が狭いガス導入室21と広い排出室26に区画される(図1及び図2)。 【0010】上記カバー体28の側壁28a上部にはガス導入室21に臨む第1導入口28bが形成され、この第1導入口には集合管14cが接続される(図1)。 ガス導入室21の内部には洗浄パイプ33が設けられる(図1及び図2)。 この洗浄パイプ33は予め先端が封止されかつ長手方向に複数の噴射孔33a(図1)が形成される。 また洗浄パイプ33の基端はカバー体28の周壁28c上部を通って循環ポンプ35(水供給手段) に接続され(図4)、複数の噴射孔33aはロータガイド板27に対向して設けられる(図1)。 更にカバー体28の周壁28c下部には第2排出口28dが形成される(図1及び図2)。 この第2排出口には気水排出管3 4の一端が接続され、気水排出管の他端は不活性ガスと水23を分離するセパレータタンク36(図4)に接続される。 【0011】ロータ室24は、ロータガイド板27の他方の面にケーシング29の一方の面を取付けることにより形成され(図1及び図3)、ケーシングの他方の面には第1モータ51が取付けられる(図1)。 この第1モータ51はその出力軸51aがケーシング29の中心線から偏心した状態でケーシング29に取付けられ(図1 及び図3)、出力軸51aには複数のロータ羽根22と一体的に形成されたロータホルダ37が嵌着される(図1)。 これにより複数のロータ羽根22はケーシング2 9の中心線から偏心した状態でロータ室24に回転可能に収容される。 【0012】またロータガイド板27にはポートシリンダ38が一体的に設けられる(図1及び図3)。 このポートシリンダは第1モータ51の出力軸51aと中心線が一致し、かつロータ室24内に突出するように設けられる。 このポートシリンダ38は同心状の外筒38a及び内筒38bを有し、外筒及び内筒間の空間は一対の第2仕切り板42,42(図3)により狭い吸込室38c 及び広い吐出室38dに区画される。 上記一対の第2仕切り板42,42は一対の第1仕切り板41,41と第1モータ51の出力軸51aを中心としてそれぞれ同一角度になるように形成される、即ち一対の第2仕切り板42,42は一対の第1仕切り板41,41にそれぞれ重合するように形成される(図2及び図3)。 またロータガイド板27には、外筒38a及び内筒38bの間に位置しかつガス導入室21及び吸込室38cを連通接続する円弧状の吸込口27aと、外筒38a及び内筒38 bの間に位置しかつ排出室34及び吐出室38dを連通接続する円弧状の吐出口27bとが形成される(図2)。 更に外筒38aには、吸込室38c及びロータ室24を連通接続する第2導入口38eと、ロータ室24 及び吐出室38dを連通接続する第1排出口38fとがそれぞれ形成される(図1及び図3)。 なお、複数のロータ羽根22は外筒38aの外周面に接しかつ外筒の外周面を摺動しながら回転するようにロータホルダ37に等間隔に配設される。 【0013】一方、図4に示すように、セパレータタンク36の下部には循環パイプ53の一端が接続され、循環パイプの他端は第1及び第2分岐パイプ61,62の一端に接続される。 第1分岐パイプ61の他端は真空ポンプ16のケーシング29の上部に接続され、第2分岐パイプ62の他端は洗浄パイプ33の基端に接続される。 循環パイプ53には、水23を循環させる前述の循環ポンプ35(水供給手段)と、水23を冷却する水冷却器55とが設けられる。 また第1分岐パイプ61にはこのパイプを流れる水23の流量を測定する第1流量計71が設けられ、第2分岐パイプ62にはこのパイプを流れる水23の流量を測定する第2流量計72が設けられる。 なお、上記循環ポンプ35は第2モータ52により駆動される。 【0014】セパレータタンク36の側壁36a上部には清浄水供給管54が接続され、清浄水供給管にはこの管を開閉可能な清浄水供給弁56が設けられる。 セパレータタンク36の底壁36bには水排出管57が接続され、この水排出管にはこの管を開閉可能な水排出弁58 が設けられる。 清浄水供給弁56及び水排出弁58は2 ポート2位置切換の電磁弁であり、オンすると管54, 57を開き、オフすると管54,57を閉じるように構成される。 更にセパレータタンク36の蓋36cには回収管59の一端が接続され、回収管の他端はArガスを回収する回収タンク(図示せず)に接続される。 【0015】なお、図4の符号63及び64は吸気管1 7及び集合管14cを流れるArガスの流量をそれぞれ調整する電動式のコントロール弁であり、これらの弁6 3,64によりチャンバ12内の圧力が制御される。 また符号66及び67は集合管14cを開閉するエア作動式のアングル弁であり、符号68は集合管14cの途中から分岐する第3分岐管14dの上端に設けられたフラッパバルブである。 このバルブ68は排気管14内に堆積した粉塵が燃焼して排気管内の圧力が急激に上昇したときに排気管内を大気に開放するために設けられる。 更に第1分岐パイプ61には第1電磁弁81及び第1絞り弁91が設けられ、第2分岐パイプ62には第2電磁弁82及び第2絞り弁92が設けられる。 第1及び第2電磁弁81,82は第1及び第2分岐パイプ61,62を電磁気的にそれぞれ開閉する開閉弁であり、第1及び第2絞り弁91,92は第1及び第2分岐パイプ61,6 2を流れる水23の流量をそれぞれ調整する弁である。 【0016】このように構成されたシリコン単結晶引上げ機11の不活性ガス排気系の水封式真空ポンプ16の動作を説明する。 引上げ機11を稼働してシリコン単結晶を引上げるときには、吸気管17から引上げ機11内にArガスを供給し、この引上げ機内のArガスを真空ポンプ16により吸引して引上げ機内を所定の負圧に保つ。 第1モータ51により駆動されて真空ポンプ16のロータ羽根22が回転すると、ロータ室24に供給された水23がロータ室の内周面に沿って流れ、ロータ室2 4の略中央に、複数のロータ羽根22の間に位置しかつポートシリンダ38の外筒38aの外径より大径の略円柱状の第2空間32(ロータポケット)が発生する(図3)。 このとき第2空間の外周面に対して、即ちロータ室24内をリング状に流れる水23の内周面に対して、 複数のロータ羽根22の回転中心が偏心しているので、 ガス導入室21内のArガスは吸込口27a及び第2導入口38eを通ってロータ室24のロータ羽根22間に流入した後に、ロータ羽根の回転に伴って次第に圧縮され、第1排出口38f及び吐出口27bを通って排出室26に排出される。 同時にロータ室24からオーバフローした水23も第1排出口38f及び吐出口27bを通って排出室26に排出される。 【0017】一方、引上げ機11内のArガスには、S iOやSiO 2等の粉塵が混入するため、この粉塵はA rガスとともに排気管14を通って真空ポンプ16のガス導入室21に流入する。 このときArガスは第1導入口28bからガス導入室21に流入してロータガイド板27に吹付けられるため、Arガスに含まれる粉塵の多くはロータガイド板27に付着する。 しかし真空ポンプ16の稼働中には、循環ポンプ35により洗浄パイプ3 3に水23が供給されるので、洗浄パイプに形成された複数の噴射孔33aからロータガイド板27に向って水23が噴射される(図1)。 この結果、上記噴射された水によりロータガイド板27に付着した粉塵が洗い流され、Arガスに混入した粉塵が吸込口27a近傍に堆積するのを防止できるので、真空ポンプ16によるArガスの吸引力が低下することはない。 また真空ポンプ16 のガス導入室21の内面に粉塵が堆積しないので、真空ポンプを分解して洗浄する保守作業の間隔を長くし、保守作業の頻度を少なくすることができる。 【0018】上記噴射孔33aから噴射された水23は洗い流した粉塵とともに、吸込口27a及び第2導入口38eを通ってロータ室24に流入し、ロータ室24内の水23と混合される。 また排出室26に流入したAr ガス及び水23は気水排出管34を通ってセパレータタンク36に戻され、更に循環ポンプ35により再びロータ室24及びガス導入室21に送出される。 このため、 上記水23に含まれる粉塵は次第に増大するので、引上げ機11によるシリコン単結晶の引上げ完了毎(1バッチ毎)に真空ポンプ16を停止し、水排出弁58を開いてセパレータタンク36内の水23を排出した後に、水排出弁58を閉じ、更に清浄水供給弁56を開いてセパレータタンク36に、粉塵を含まない清浄な水23を新たに供給する。 なお、この実施の形態では、不活性ガスとしてArガスを挙げたが、窒素ガス等でもよい。 【0019】 【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、先端が封止され長手方向に複数の噴射孔が形成されかつ基端が水供給手段に接続された洗浄パイプを、複数の噴射孔をロータガイド板に対向してガス導入室の内部に設けたので、不活性ガスに混入した粉塵が不活性ガスとともに真空ポンプのガス導入室に流入してロータガイド板に付着しても、この粉塵は洗浄パイプの複数の噴射孔から噴射される水により洗い流される。 この結果、不活性ガスに混入した粉塵が真空ポンプの吸込口近傍に堆積するのを防止できるので、真空ポンプによる不活性ガスの吸引力が低下することはない。 また真空ポンプのガス導入室の内面に粉塵が堆積しないので、真空ポンプを分解して洗浄する保守作業の間隔を長くし、保守作業の頻度を少なくすることができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明実施形態の水封式真空ポンプの縦断面図。 【図2】図1のA−A線断面図。 【図3】図1のB−B線断面図。 【図4】その真空ポンプを含む単結晶引上げ機の不活性ガス排気系の回路構成図。 【図5】従来例を示す図4に対応する単結晶引上げ機の不活性ガス排気系の回路構成図。 【符号の説明】 11 単結晶引上げ機14 排気管21 ガス導入室22 ロータ羽根23 水24 ロータ室27 ロータガイド板27a 吸込口33 洗浄パイプ33a 噴射孔35 循環ポンプ(水供給手段) ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl. 7識別記号 FI テーマコート゛(参考) F04C 29/00 F04C 29/00 J (72)発明者 樋口 勉 東京都大田区下丸子2丁目36番40号 株式 会社宇野澤組鐵工所内Fターム(参考) 3H029 AA07 AA16 AB05 BB36 CC06 CC09 CC24 CC42 3H076 AA16 AA21 BB13 CC46 CC92 CC94 4G077 AA03 BA04 CF10 EG21 PA16 |