Refrigerant compressor

申请号 JP2012251795 申请日 2012-11-16 公开(公告)号 JP2013127243A 公开(公告)日 2013-06-27
申请人 Panasonic Corp; パナソニック株式会社; 发明人 KAWABATA JUNTA; HAYASHI YASUSHI; SAKAUCHI RIE;
摘要 PROBLEM TO BE SOLVED: To provide a sealed refrigerant compressor increasing a member formed by employing a phthalic ester-free nitrile rubber (internal member) therein which can suppress deterioration in the quality of the member and achieve enhanced reliability.SOLUTION: The refrigerant compressor is configured so that at least one member constituting an electric element 20 and a compression element 30 is formed of a rubber material. The rubber material is the nitrile rubber in which Condition 1: a bound acrylonitrile content is within a range of 35 to 51% by weight, Condition 2: an organic compound having a carbon atom which creates double bond with a sulfur atom, a nitrogen atom or a carbon atom and creates single bond with a sulfur atom or a nitrogen atom is not used as a vulcanizing accelerator in the process for creating cross-linkage, and Condition 3: no phthalic ester is contained.
权利要求
  • 密閉容器内に、粘度がVG3〜VG22の潤滑油を貯留するとともに、電動要素と、当該電動要素によって駆動され、冷媒を圧縮する圧縮要素とを収容し、
    前記電動要素を構成する部材および前記圧縮要素を構成する部材のうち、少なくとも一つの部材がゴム材料で構成され、
    当該ゴム材料として、
    結合アクリロニトリル含有量が35〜51重量%の範囲内であり、
    架橋時に、加硫促進剤として、硫黄原子、窒素原子、または炭素原子と二重結合を形成し、かつ、硫黄原子または窒素原子と単結合を形成する炭素原子を含む有機化合物を使用せず、かつ、フタル酸エステルを含まないニトリルゴムを用いた、
    冷媒圧縮機。
  • 前記ニトリルゴムは、
    100℃におけるムーニー粘度ML 1+4 50〜150の範囲内にあり、
    硬度が55°〜80°の範囲内にある、
    請求項1に記載の冷媒圧縮機。
  • 前記ニトリルゴムは、前記結合アクリロニトリル含有量が40〜51重量%の範囲内にある、
    請求項2に記載の冷媒圧縮機。
  • 前記冷媒が、ハイドロフルオロカーボン(HFC)系冷媒であるか、当該HFC系冷媒を含有する混合冷媒であり、
    前記潤滑油は、エステル油、アルキルベンゼン油、ポリビニルエーテル、ポリアルキレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種である、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の冷媒圧縮機。
  • 前記ニトリルゴムは、過酸化物加硫により加硫されたものである、
    請求項1または2に記載の冷媒圧縮機。
  • 前記冷媒が、R600aおよびR290の少なくとも一方の炭化水素系冷媒であるか、当該炭化水素系冷媒を含有する混合冷媒であり、
    前記潤滑油は、鉱油、エステル油、アルキルベンゼン油、ポリビニルエーテル、ポリアルキレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種である、
    請求項5に記載の冷媒圧縮機。

  • 说明书全文

    本発明は、冷蔵庫、エアーコンディショナー等に使用される冷媒圧縮機に関するものである。

    近年、密閉型の冷媒圧縮機の高効率化が進められている。 これは、主として、地球環境保護の観点から化石燃料の使用を少なくするためである。 高効率化の手法の一つとしては、吸入時の冷媒の温度を低減することにより冷凍能の向上を図る技術が知られている。 この技術では、一般に、冷媒圧縮機内に設けられる部材(説明の便宜上「内部部材」と称する。)に、エラストマー製の部材が用いられている。

    例えば、特許文献1または特許文献2には、密閉容器内に冷媒を導入する吸入管と、密閉容器内に設けられる吸入マフラー(または消音器)との間に、ゴム製のガイドを設ける技術が開示されている。 このゴム製のガイドは、前述した内部部材に該当し、例えば特許文献1に開示されるようにニトリルゴムが好ましく用いられる。

    ここで、ニトリルゴム製の内部部材は、通常、ニトリルゴムの可塑剤等としてフタル酸エステルを含んでいる。 フタル酸エステルについては、近年、人体並びに自然環境に対して影響を及ぼす可能性が指摘されている。

    特開2008−223605号公報

    特開2008−215194号公報

    そこで、フタル酸エステルを含まないニトリルゴムを用いた内部部材を製造すれば、内部部材の品質が低下するおそれがある。

    例えば、冷媒圧縮機に用いられる冷媒としては、R600a等の炭化素系冷媒、あるいは、ハイドロフルオロカーボン(HFC)等のいわゆる代替フロンが挙げられる。 また、密閉容器内では、潤滑油等の油系材料も用いられる。 これら冷媒または油系材料、もしくはこれらの混合物が、フタル酸エステルを含まないニトリルゴムに接触すると、ニトリルゴムの表面に付着物が生じたりブリスターが生じたりすることがある。 これらの表面異常は、内部部材の品質の低下を招く。

    本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、フタル酸エステルを含有しないニトリルゴムを用いた部材(内部部材)を内部に備える、密閉型の冷媒圧縮機において、当該部材の品質の低下を抑制し、良好な信頼性を実現することを目的とする。

    本発明に係る冷媒圧縮機は、密閉容器内に、粘度がVG3〜VG22の潤滑油を貯留するとともに、電動要素と、当該電動要素によって駆動され、冷媒を圧縮する圧縮要素とを収容し、前記電動要素を構成する部材および前記圧縮要素を構成する部材(内部部材)のうち少なくとも一つの部材がゴム材料で構成され、当該ゴム材料として、結合アクリロニトリル含有量が35〜51重量%の範囲内であり、架橋時に、加硫促進剤として、硫黄原子、窒素原子、または炭素原子と二重結合を形成し、かつ、硫黄原子または窒素原子と単結合を形成する炭素原子を含む有機化合物を使用せず、かつ、フタル酸エステルを含まないニトリルゴムを用いた構成である。

    前記構成によれば、ニトリルゴムが、前記加硫促進剤を使用せず(条件1)、フタル酸エステルを含まず(条件2)、さらに、結合アクリロニトリル含有量が前記範囲内にある(条件3)ので、内部部材が、例えばHFC系冷媒に接触しても、品質の低下が抑制される。 その結果、密閉型の冷媒圧縮機の信頼性をより一層良好なものとすることができる。

    前記冷媒圧縮機においては、前記ニトリルゴムは、過酸化物加硫により加硫されたものであってもよい。

    前記構成によれば、ニトリルゴムが、さらに過酸化物加硫(条件4)という条件を満たしているので、内部部材が、例えば炭化水素系冷媒に接触しても品質の低下が抑制される。 その結果、密閉型の冷媒圧縮機の信頼性をより一層良好なものとすることができる。

    本発明では、以上の構成により、フタル酸エステルを含有しないニトリルゴムを用いた部材(内部部材)を内部に備える、密閉型の冷媒圧縮機において、当該部材の品質の低下を抑制し、良好な信頼性を実現することができる、という効果を奏する。

    本発明に係る冷媒圧縮機の構成の代表的な一例を示す横断面図である。

    図1に示す冷媒圧縮機において、吸入管の軸心方向から見た断面を示す縦断面図である。

    ニトリルゴムの結合アクリロニトリル含有量とガラス転移温度との関係を示すグラフである。

    本発明の比較例1の結果であって、フタル酸エステルを含有しないニトリルゴムを用いた内部部材のサンプルにおいて、その表面に生じた付着物をフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)で分析した結果を示すIRスペクトルである。

    本発明の比較例2の結果であって、フタル酸エステルを含有しないニトリルゴムを用いた内部部材のサンプルにおいて、その表面に生じた付着物をFT−IRで分析した結果を示すIRスペクトルである。

    以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。 なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。

    本発明に係る冷媒圧縮機は、密閉容器内に、粘度がVG3〜VG22の潤滑油を貯留するとともに、電動要素と、当該電動要素によって駆動され、冷媒を圧縮する圧縮要素とを収容し、前記電動要素を構成する部材および前記圧縮要素を構成する部材のうち、少なくとも一つの部材(内部部材)がゴム材料で構成され、当該ゴム材料として、結合アクリロニトリル含有量が35〜51重量%の範囲内であり、架橋時に、加硫促進剤として、硫黄原子、窒素原子、または炭素原子と二重結合を形成し、かつ、硫黄原子または窒素原子と単結合を形成する炭素原子を含む有機化合物を使用せず、かつ、フタル酸エステルを含まないニトリルゴムを用いた構成である。

    前記構成によれば、ニトリルゴムが、条件1:前記加硫促進剤を使用せず、条件2:フタル酸エステルを含まず、さらに、条件3:結合アクリロニトリル含有量が前記範囲内にあるので、内部部材が、例えばHFC系冷媒に接触しても、品質の低下が抑制される。 その結果、密閉型の冷媒圧縮機の信頼性をより一層良好なものとすることができる。

    前記構成の冷媒圧縮機においては、前記ニトリルゴムは、100℃におけるムーニー粘度ML 1+4が50〜150の範囲内にあり、硬度が55°〜80°の範囲内にあってもよい。

    前記構成によれば、ニトリルゴムは、前記ムーニー粘度の範囲および前記硬度の範囲という追加条件を満たしているので、内部部材の種類によっては製造および装着が容易となる。 それゆえ、冷媒圧縮機の信頼性をより一層良好なものとすることができる。

    また、前記構成の冷媒圧縮機においては、前記ニトリルゴムは、前記結合アクリロニトリル含有量が40〜51重量%の範囲内にあってもよい。

    前記構成によれば、結合アクリロニトリル含有量が前記範囲内であれば、ニトリルゴムの物性をより良好なものとすることができる。 それゆえ、冷媒圧縮機の信頼性をより一層良好なものとすることができる。

    また、前記構成の冷媒圧縮機においては、前記冷媒が、ハイドロフルオロカーボン(HFC)系冷媒であるか、当該HFC系冷媒を含有する混合冷媒であり、前記潤滑油は、エステル油、アルキルベンゼン油、ポリビニルエーテル、ポリアルキレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。

    前記構成によれば、ニトリルゴムが前記条件1〜3を満たしている場合に、特に、冷媒圧縮機の信頼性をより一層良好なものとすることができる。

    また、前記構成の冷媒圧縮機においては、前記ニトリルゴムは、過酸化物加硫により加硫されたものであってもよい。

    前記構成によれば、ニトリルゴムが、前記条件1〜3に加えて、さらに条件4:過酸化物加硫を満たしているので、内部部材が、例えば炭化水素系冷媒に接触しても品質の低下が抑制される。 その結果、密閉型の冷媒圧縮機の信頼性をより一層良好なものとすることができる。

    また、前記構成の冷媒圧縮機においては、前記冷媒が、R600aおよびR290の少なくとも一方の炭化水素系冷媒であるか、当該炭化水素系冷媒を含有する混合冷媒であり、前記潤滑油は、鉱油、エステル油、アルキルベンゼン油、ポリビニルエーテル、ポリアルキレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。

    前記構成によれば、ニトリルゴムが前記1〜4の条件を満たしている場合に、特に、冷媒圧縮機の信頼性をより一層良好なものとすることができる。

    以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。 なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。

    (実施の形態1)
    [冷媒圧縮機の構成例]
    図1の横断面図および図2の縦断面図に示すように、本実施の形態に係る冷媒圧縮機100は、密閉容器10、電動要素20、および圧縮要素30を備えている。

    密閉容器10は、電動要素20および圧縮要素30を内部に収容した状態で密閉する筐体であり、その底部で潤滑油11が貯留可能となっている。 本実施の形態では、この潤滑油11は、ISO粘度分類でVG3〜VG22の範囲内、好ましくはVG5〜VG22の範囲内の粘度を有するものである。 また、密閉容器10の内外は、吸入管40で連通されている。

    潤滑油11の具体的な種類は特に限定されないが、本発明では、エステル油、アルキルベンゼン油、ポリビニルエーテル、ポリアルキレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種のオイル材料が好ましく用いられる。 これらオイル材料は、単独で潤滑油11として用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせた混合物を潤滑油11として用いてもよい。

    一般的に、冷媒圧縮機100に用いられる潤滑油11は、粘度の異なるオイル材料をブレンドして粘度を調整する。 そのため、本発明においても、潤滑油11としては、前記オイル材料を2種類以上ブレンドして、VG3〜VG22の範囲内に入るように調整すればよい。 また、粘度がVG3〜VG22の範囲内に入るオイル材料を1種類のみ潤滑油11として用いることもできる。

    電動要素20は、少なくとも固定子21および回転子22から構成され、圧縮要素30を回転駆動する。 圧縮要素30は、電動要素20とともに一体的に組み立てられており、シリンダーブロック31、ピストン32、および吸入マフラー33を備えている。 シリンダーブロック31は、円筒状の圧縮室311を形成するよう設けられている。 ピストン32は、シリンダーブロック31の内部空間を往復運動するように設けられている。 吸入マフラー33は、圧縮室311に連通する消音空間331を有している。

    吸入マフラー33は、吸入管40からの冷媒を導入可能とする吸入口332をさらに有している。 この吸入口332は、吸入管40の軸心方向から見た投影図において、吸入管40と重ならない位置(吸入管40の投影位置から外れた位置)に設けられている。 また、吸入口332には、ニトリルゴム製のガイド333が設けられている。

    ガイド333は、吸入口332から延出するような状態で吸入マフラー33に固定されている。 また、吸入管40と密閉容器10との接続個所は、吸入管40内と密閉容器10内を連通する開口となっているが、ガイド333は、この吸入管40の開口に対向する位置に配置されている。

    それゆえ、吸入管40から吸入される冷媒は、このガイド333を介して吸入口332内に導入可能となっている。 吸入口332は、吸入マフラー33における冷媒の「導入開口」であるので、吸入マフラー33内に導入された冷媒は、さらに吸入マフラー33の消音空間331から圧縮室311に導入されることになる。

    なお、図1および図2に示す冷媒圧縮機100は一般的な構成であり、前述した密閉容器10、電動要素20、圧縮要素30および吸入管40以外にも公知の様々な機構または部材等を備えている。 また、密閉容器10、電動要素20、圧縮要素30、および吸入管40の具体的な構成は特に限定されず、公知のものが好適に用いられる。

    また、本発明で使用可能な冷媒も特に限定されず、R600a、R290等の炭化水素系冷媒;R134a等のHFC系冷媒;これら冷媒に混合可能な他の公知の冷媒;等を挙げることができる。 これら冷媒は、1種類のみを用いてもよいし、複数種類を適宜組み合わせた混合物として用いてもよい。 なお、R600a、R290、R134a等は、いずれもISO817で定義された冷媒番号である。

    前記構成の密閉型の冷媒圧縮機100について、その動作の一例を具体的に説明する。

    まず、図1および図2には図示しない外部電源を電動要素20に接続することにより、電動要素20に電力が供給されると、当該電動要素20の回転子22が回転する。 回転子22の回転に伴って、圧縮要素30のピストン32は、シリンダーブロック31の内部空間で圧縮のための往復運動を行う。

    冷媒を吸入する工程では、圧縮要素30が前記のような動作を行うことで、圧縮室311内の圧力が低下する。 これにより、密閉容器10の内部圧力も低下する。 図1および図2には図示しないが、吸入管40には、外部冷凍システムが接続されているので、当該外部冷凍システムからの冷媒は、吸入管40を通過して、一旦、密閉容器10内に導入されて、ガイド333の前方に開放される。

    密閉容器10内では潤滑油11が飛散している。 それゆえ、多くの冷媒は、飛散した潤滑油11とともに、吸入管40に対向するガイド333に衝突する。 あるいは、液状の冷媒が直接ガイド333に衝突する。 ここで、ガイド333は、吸入マフラー33の吸入口332につながっているので、ガイド333に衝突した冷媒(および潤滑油11)は、圧力の低い吸入口332に導かれ、吸入マフラー33内に吸入される。

    吸入マフラー33に吸入された冷媒は、吸入マフラー33の消音空間331を通過して圧縮要素30の圧縮室311内に吸入される。 圧縮室311に吸入された冷媒(および潤滑油11)は、ピストン32の往復運動により、当該圧縮室311内で圧縮される。 圧縮された冷媒は、再び、外部冷凍システムに吐出されることになる。

    前記構成では、ガイド333と吸入管40とが近接した状態で対向している。 それゆえ、外部冷凍システムから導入された冷媒は、比較的低温のまま吸入マフラー33内に吸入されて、圧縮室311内で圧縮される。 これにより、冷媒の単位時間内の吸入質量(冷媒循環量)が大きくなる。 その結果、冷媒圧縮機100は良好な効率を実現することができ、外部冷凍システムの冷凍能力を向上させることが可能となる。

    [ニトリルゴム製の内部部材]
    本実施の形態では、前述したガイド333が、冷媒圧縮機100の内部に設けられる、ニトリルゴム製の内部部材に相当する。

    ガイド333に用いられるゴム材料は、公知のニトリルゴム、すなわちニトリルブタジエンゴム(NBR,アクリロニトリルおよび1,3−ブタジエンの共重合体)であればよいが、本発明においては、不飽和結合を水素化した水素化ニトリルゴム;カルボキシル基変性ニトリルゴム、シリコーン変性ニトリルゴム、マレイン酸変性ニトリルゴム、水酸基変性ニトリルゴム等の変性ニトリルゴムあるいはこれらを水素化したもの;ブタジエンの一部をイソプレンに置き換えたアクリロニトリルーブタジエンーイソプレン共重合体;等も「ニトリルゴム」に含まれるものとする。

    また、本発明において、ガイド333等の内部部材として用いられるゴム材料は、ニトリルゴムを用いたものであればよく、それゆえ、前述したニトリルゴム以外のゴム材料を含んでいてもよいし、フタル酸エステルを除いて種々の添加剤を含んでいてもよい。 したがって、内部部材に用いられるゴム材料は、ニトリルゴムを主成分として含むニトリルゴム組成物であればよい。 それゆえ、本明細書においては、「ニトリルゴム製の内部部材」または「ニトリルゴム製のガイド333」とは、「ニトリルゴム組成物を用いて製造された内部部材またはガイド333」を指すものとする。

    ニトリルゴム以外のゴム材料としては、天然ゴム、エチレンプロピレンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム等の公知のゴムを挙げることができるが、特に限定されない。

    また、添加剤としては、カーボン、タルク、クレー、グラファイトなどの無機充填剤;パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、パラフィンワックス等の加工助剤:酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト等の受酸剤;キノリン系、アミン系、フェノール系等の老化防止剤;フタル酸エステルを除く可塑剤;等が挙げられるが、特に限定されない。

    さらに、ニトリルゴムを製造するためには加硫剤が用いられるが、この加硫剤としても公知のものを用いることができる。 例えば、加硫剤として硫黄または硫黄系化合物を用いた硫黄加硫、または、加硫剤として有機過酸化物等を用いた過酸化物加硫、もしくは、硫黄加硫および過酸化物加硫の併用を挙げることができる。

    過酸化物加硫に用いられる有機化酸化物の具体的な種類は特に限定されず、例えば、アルキル系過酸化物、アシル系過酸化物、ケトンパーオキサイド系過酸化物、ジアシルパーオキサイド系過酸化物、ハイドロパーオキサイド系過酸化物、ジアルキルパーオキサイド系過酸化物、パーオキシケタール系過酸化物、アルキルパーエステル系過酸化物、パーカーボネート系過酸化物等が挙げられる。 これら過酸化物は1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。

    また、ニトリルゴムの製造に際しては、加硫剤とともに加硫促進剤を併用してもよい。 この加硫促進剤としては公知のものを好適に用いることができるが、本発明では、チウラム等の有機化合物については、加硫促進剤として使用しない。 この点については後述する。

    なお、前述した添加剤の中には加硫促進作用を示すもの(すなわち加硫促進剤としても使用可能な成分)も含まれている(例えば、酸化亜鉛等の受酸剤、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸(加工助剤)等)。 それゆえ、これら添加剤が加硫促進剤としても機能する場合には、別途加硫促進剤を添加しなくてもよい。

    また、ニトリルゴムの受酸剤として用いられる酸化亜鉛等は、無機化合物系の加硫剤としても使用可能であるが、本発明においては、加硫剤は、前述した硫黄加硫または過酸化物加硫に限定され、これら以外の加硫剤を用いた加硫は行わない。

    また、本実施の形態では、ニトリルゴム製の内部部材として、ガイド333を例示しているが、本発明はこれに限定されない。 本発明における内部部材は、電動要素20を構成する部材および圧縮要素30を構成する部材であって、(i)冷媒圧縮機100の密閉容器10内に位置しており、(ii)冷媒、または、冷媒が溶け込んだ潤滑油11が接触しやすい、(iii)ゴム製の部材またはゴム材料を用いて製造できる部材であれば、どのような部材であってもよい。 ガイド333以外の内部部材としては、例えば、吸入マフラー33の吸入口332を挙げることができる。 すなわち、この吸入口332をニトリルゴム製の開口部材とすれば、本発明における内部部材に該当する。

    [ニトリルゴムを満たす条件]
    ここで、本発明で内部部材(ガイド333)に用いられるニトリルゴムは、条件1:加硫促進剤として、硫黄原子、窒素原子、または炭素原子と二重結合を形成し、かつ、硫黄原子または窒素原子と単結合を形成する炭素原子を含む有機化合物を使用せず、かつ、条件2:フタル酸エステルを含まないで製造されたものとなっている。 さらに、本発明においては、条件3:ニトリルゴムの結合アクリロニトリルの含有量が35〜51重量%の範囲内となっている。

    ここで、「硫黄原子、窒素原子、または炭素原子と二重結合を形成し、かつ、硫黄原子または窒素原子と単結合を形成する炭素原子を含む有機化合物」とは、本発明においては、分子構造中に、−C(=S)−N,−C(=N)−N,−C(=C)−N,−C(=N)−S,−C(=S)−S等の構造を含む化合物を指す。 具体的には、例えば、チウラム(−C(=S)−N構造および−C(=S)−S構造を含む)、チアゾール(−C(=C)−N構造および−C(=N)−S構造を含む)、チオウレア(−C(=S)−N構造を含む)、ジチオカルバミン酸(−C(=S)−N構造および−C(=S)−S構造を含む)、およびグアニジン(−C(=N)−N構造を含む)等を挙げることができる。

    なお、本発明における「ジチオカルバミン酸」とは、ジチオカルバミン酸の基本構造(N−C(=S)−S)を有する化合物を含む。 具体的には、種々のジチオカルバミン酸塩は、本発明における「ジチオカルバミン酸」に含まれる。 また、本発明における「ジチオカルバミン酸」は、基本構造の窒素原子(N)に水素原子が2つ結合した「狭義のジチオカルバミン酸(塩)」に限定されず、窒素原子にアルキル基等の有機基が結合したものも含む。

    本発明者らの検討によれば、前記条件1〜3を満たすニトリルゴムを用いることにより、フタル酸エステルを含まなくても、ニトリルゴムの耐油性および耐薬品性が良好なものとなる。 そのため、ニトリルゴム製の内部部材に冷媒が接触しても、その品質低下を有効に回避することができる。 それゆえ、冷媒圧縮機100の信頼性を維持しつつ、高効率化を実現することができる。

    各条件について検討する。 まず、条件1については、前記加硫促進剤を用いた場合には、後述する実施例に示すように、ニトリルゴム製の内部部材の表面に付着物の発生が認められる。 この付着物は、加硫促進剤の一部が表面にブリードアウトしたものと判断される。 したがって、条件1を満たしていないと、ニトリルゴム製の内部部材に加硫促進剤のブリードアウトが生じ、当該内部部材の品質の低下を招くことになる。

    また、条件2については、フタル酸エステルを含まないことで、フタル酸エステルに由来する種々の懸念事項を回避することができる。 なお、本発明において、ニトリルゴムに含有させないフタル酸エステルとは、オルト−フタル酸とアルコールとのエステルを指し、特定の化合物のみに限定されず、包括的なものとして定義される。 フタル酸エステルの代表的なものとしては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジノルマルオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ブチルベンジル等を挙げられるが、これらに限定されない。

    また、条件3については、ニトリルゴムの結合アクリロニトリル含有量が35〜51重量%の範囲内であれば、ゴムとしての良好な物性を発揮できるとともに、ゴム分子中に、アクリロニトリルに由来するニトリル基(−CN)が多くなる。 これによりニトリルゴムそのものの極性が高くなるので、極性の低い冷媒(または冷媒が混入した潤滑油11等)に対する親和性が低くなる。 その結果、冷媒等がニトリルゴム製の内部部材に過剰に浸透することを抑制することができる。

    一方、ニトリルゴムの結合アクリロニトリル含有量が35重量%未満であると、冷媒等が内部部材に過剰に浸透しやすくなり、表面異常の発生を有効に抑制することができない可能性がある。 一方、結合アクリロニトリルの含有量が51重量%を超えると、図3に示すように、ニトリルゴムのガラス転移温度が−10℃以上となるため、周囲の温度が低下すると脆性が高くなり、ゴムとしての特性が維持できなくなる。 したがって、結合アクリロニトリルの含有量は35〜51重量%の範囲内であればよく、好ましくは、実施例に示すように、40〜51重量%の範囲内であればよい。

    次に、密閉容器10内でのガイド333の環境を例に挙げて、前記条件1〜3を満たすニトリルゴムによる、内部部材の品質低下の抑制について具体的に説明する。

    前述したように、フタル酸エステルは、ニトリルゴムの可塑剤等として用いられているが、近年では使用が制限されている。 ここで、ニトリルゴムに添加されたフタル酸エステルは、可塑剤として機能するだけでなく、冷媒の浸透を防止する機能も有している。 すなわち、フタル酸エステルがニトリルゴムに添加されると、鎖状高分子であるニトリルゴムのゴム分子の間隙に入り込んだ状態で保持される。 それゆえ、内部部材が冷媒、または、冷媒が溶け込んだ潤滑油11に接触しても、ゴム分子の間のフタル酸エステルが冷媒の浸透を阻害する。

    これに対して、ニトリルゴムにフタル酸エステルを添加しない場合には、ゴム分子の間隙を埋める存在がなくなる。 そのため、内部部材が冷媒または潤滑油11(冷媒を含む)に接触すると、冷媒がゴム分子の間に浸透しやすくなる。 その結果、ニトリルゴム製の内部部材の表面に付着物が生じたりブリスター等の材料欠陥が発生したりするおそれがある。 これらの表面異常は、内部部材の品質を低下させることになる。

    特に、ガイド333は、吸入管40に対向する位置に、当該吸入管40に近接して設けられている。 そのため、吸入管40から冷媒が導入されると、当該冷媒が直接衝突する。 したがって、ガイド333は、高濃度の冷媒に高頻度で曝露されることになる。 また、冷媒が液体状態のままガイド333に衝突すれば、衝突によって冷媒が蒸発する。 そのため、ガイド333が冷媒の蒸発によって温度が低下することもある。

    これに対して、本発明では、内部部材(例えばガイド333)は、前述した条件1〜3を満たすニトリルゴムを用いて製造されている。 それゆえ、後述する実施例に示すように、冷媒が内部部材に接触しても、当該内部部材に表面異常が発生するおそれを回避できるとともに、条件3により、ニトリルゴム製の内部部材の温度が低下しても、ゴム材料として十分な物性を発揮することもできる。 その結果、冷媒圧縮機の信頼性を良好なものとすることができる。 特に、本実施の形態では、後述の実施例に示すように、冷媒がR134a等のHFC系冷媒である場合に、表面異常の発生をより有効に抑制することができる。

    さらに本発明においては、ニトリルゴムが、前記の条件1〜3に加えて、追加条件1:100℃におけるムーニー粘度ML 1+4が50〜150の範囲内にあり、かつ、追加条件2:硬度が55°〜80°の範囲内にあることが好ましい。 なお、ニトリルゴムのムーニー粘度は、JISK6300−1に基づいて測定され、ニトリルゴムの硬度は、JISK6253−3に基づいて測定される。

    ニトリルゴムが追加条件1・2を満たせば、当該ニトリルゴムの引張強度等の機械的性質が向上する。 それゆえ、内部部材がガイド333であれば、その製造および装着が容易となる。 したがって、ニトリルゴムが条件1〜3および追加条件1・2を満たすものであれば、表面異常の発生を抑制できることに加え、内部部材の品質も良好なものとすることができる。 その結果、冷媒圧縮機100の信頼性をさらに良好なものとすることができる。

    (実施の形態2)
    前記実施の形態1では、冷媒圧縮機100の内部部材に用いられるニトリルゴムが、前記条件1〜3を少なくとも満たすものとなっていたが、本実施の形態2では、ニトリルゴムが、条件1〜3に加えて条件4を満たすものとなっている。

    なお、本実施の形態で用いられる冷媒圧縮機100は、前記実施の形態1で説明したものと同じである(図1および図2参照)。 また、内部部材に用いられるニトリルゴムの構成も、前記実施の形態1で説明したものと同じである。

    本実施の形態では、冷媒が、R600aおよび/またはR290であるか、これらを含む場合に、前記条件1〜3も加えて、条件4:ニトリルゴムが過酸化物加硫により加硫されたものであると、冷媒の浸透を良好に抑制することができる。

    前記実施の形態1では、ニトリルゴムの加硫は、硫黄加硫であっても過酸化物加硫であってもよい。 これに対して、本実施の形態では、条件4により加硫を過酸化物加硫に特定している。 これにより、後述する実施例に示すように、炭化水素系冷媒がニトリルゴムに浸透しても、表面異常の発生を良好に抑制することができる。

    具体的には、条件1〜3を満たすニトリルゴムが、R600aまたはR290等の炭化水素系溶媒に接触すると、後述する実施例に示すように、付着物およびブリスターの発生は抑制できるものの表面荒れが生じるおそれがある。 本実施の形態では、ニトリルゴムが条件4の過酸化物加硫を満たすことで、表面荒れという表面異常の発生も実質的に防止することができる。 そのため、ニトリルゴム製の内部部材(ガイド333等)の品質低下を有効に回避することができので、信頼性の高い冷媒圧縮機100を提供することができる。

    また、本実施の形態においても、ニトリルゴムは、前記条件1〜4に加えて、前記追加条件1:100℃におけるムーニー粘度ML 1+4が50〜150の範囲内にあること、並びに、前記追加条件2:硬度が55°〜80°の範囲内にあることを満たすことが好ましい。 ニトリルゴムが条件1〜4および追加条件1・2の全てを満たせば、冷媒の浸透を一層有効に抑制することができるとともに、内部部材の品質も良好なものとすることができるので、冷媒圧縮機100の信頼性をさらに良好なものとすることができる。

    また、前記実施の形態では、潤滑油11として好適に使用可能なオイル材料としては、エステル油、アルキルベンゼン油、ポリビニルエーテル、ポリアルキレングリコールを挙げたが、本実施の形態では、これらオイル材料に加えて、鉱油も好適に用いることができる。

    なお、前記実施の形態1および本実施の形態2において例示した冷媒圧縮機100は、図1および図2に示すように、往復動式であるが、本発明はもちろんこれに限定されない。 本発明で使用可能な冷媒圧縮機100は、摺動部、吐出弁等を有する構成であって、例えば、回転式、スクロール式、振動式等であってもよいことはいうまでもない。

    本発明について、実施例、比較例および従来例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。 当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。

    (従来例1)
    フタル酸エステルを含有し、硫黄加硫で加硫し、加硫促進剤としてチウラムを用いた従来のニトリルゴムを用いて、試料を準備した。 このニトリルゴムの結合アクリロニトリル含有量は32重量%であった。 この試料を、R134aおよびポリオールエステルとともに密閉容器内に封入し、125℃、2時間の条件でエージング処理を行った。 その後、目視により試料の表面を観察した。 その結果を表1に示す。

    (比較例1)
    フタル酸エステルを含有させず、硫黄加硫で加硫し、加硫促進剤としてチウラムを用いた比較のニトリルゴム(結合アクリロニトリル含有量は32重量%)を用いて、従来例1と同様の試料を作製した。 この試料を従来例1と同じ条件でエージング処理を行った。 その後、目視により試料の表面を観察した。 その結果を表1に示す。

    (実施例1)
    ニトリルゴムとして、硫黄加硫で加硫し、フタル酸エステルを含有させず(条件2)、加硫促進剤としてチウラムを含有させず(条件1)、結合アクリロニトリル含有量を40重量%とした(条件3)ものを用いて、従来例1と同様の試料を作製した。 この試料を従来例1と同じ条件でエージング処理を行った。 その後、目視により試料の表面を観察した。 その結果を表1に示す。

    (実施例2)
    加硫を硫黄加硫ではなく過酸化物加硫とした以外は、実施例1と同様のニトリルゴムを用いて、従来例1と同様の試料を作製し、従来例1と同様の条件でエージング処理を行った。 その後、目視により試料の表面を観察した。 その結果を表1に示す。

    比較例1の結果を見れば、フタル酸エステルを含有させないだけのニトリルゴムを用いても、試料の表面に付着物が認められた。 この付着物をフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)で分析したところ、図4のIRスペクトルに示すように、加硫促進剤に特徴的な硫黄−炭素の二重結合(C=S)のピークが認められた。 それゆえ、単にフタル酸エステルを含有させないだけ(条件2だけ)では、加硫促進剤(チウラム)の一部が表面にブリードアウトするという問題が生じる。

    これに対して、実施例1および2の結果を見れば、フタル酸エステルを含有させない(条件2)とともに、加硫促進剤(チウラム)を使用せず(条件1)、結合アクリロニトリル含有量が35〜51重量%の範囲内にある(条件3)ニトリルゴムを用いれば、加硫が硫黄加硫であっても過酸化物加硫であっても、試料に付着物の発生が認められなかった。

    したがって、従来例1、比較例1、実施例1および2の結果に基づけば、条件1〜3を満たすニトリルゴムをHFC系冷媒(R134a)に接触させたときには、次のように考察される。

    フタル酸エステルを含有しないニトリルゴムを用いた試料(比較例1)では、ゴム分子の間隙に冷媒の浸透を阻害するものが存在しなくなる。 特に、R134aが溶け込んだポリオールエステルは、R134aの溶け込みによって粘度が低下してゴム分子の間隙に入り込みやすくなる。 それゆえ、ゴム分子の間隙に入り込んだR134a、あるいは、ポリオールエステルは、ゴム分子の間隙に先に存在していた加硫促進剤の一部を表面に押し出す。 その結果、ニトリルゴム製の試料の表面に付着物が生じたと考えられる。

    これに対して、加硫促進剤を使用しないニトリルゴムを用いた試料(実施例1および2)では、加硫促進剤がニトリルゴムの表面に押し出されるようなことがなくなり、付着物がブリードアウトしなくなる。

    また、ニトリルゴムの加硫が硫黄加硫であっても(実施例1)過酸化物加硫であっても、(実施例2)いずれも、付着物のブリードアウトは認められなかった。 硫黄加硫の場合では、硫黄同士の結合(−S−S−)によりゴム分子間に架橋が生成する。 一方、過酸化物加硫の場合では、ゴム分子は、炭素同士の結合(−C−C−)によりゴム分子間に架橋が生成する。 これら2種類の架橋のうち、−C−C−結合の方が−S−S−結合より結合エネルギーが高い。 それゆえ、−S−S−結合の架橋を有する実施例1のニトリルゴムにおいて、表面に付着物の発生が防止できれば、当然、−C−C−結合の架橋を有する実施例2のニトリルゴムにおいても有効となる。

    (従来例2)
    フタル酸エステルを含有し、硫黄加硫で加硫し、加硫促進剤としてチウラムを用いた従来のニトリルゴムを用いて、試料を準備した。 このニトリルゴムの結合アクリロニトリル含有量は32重量%であった。 この試料を、R600aとともに密閉容器内に封入し、125℃、2時間の条件でエージング処理を行った。 その後、目視により試料の表面を観察した。 その結果を表2に示す。

    (比較例2)
    フタル酸エステルを含有させず、硫黄加硫で加硫し、加硫促進剤としてチウラムを用いた比較のニトリルゴム(結合アクリロニトリル含有量は32重量%)を用いて、従来例1と同様の試料を作製した。 この試料を従来例2と同じ条件でエージング処理を行った。 その後、目視により試料の表面を観察した。 その結果を表2に示す。

    (比較例3)
    ニトリルゴムの結合アクリロニトリル含有量を40重量%とした以外は、比較例2と同様にして試料を作製した。 この試料を従来例2と同じ条件でエージング処理を行った。 その後、目視により試料の表面を観察した。 その結果を表2に示す。

    (比較例4)
    ニトリルゴムの加硫時に加硫促進剤を用いなかった以外は、比較例3と同様にして試料を作製した。 この試料を従来例2と同じ条件でエージング処理を行った。 その後、目視により試料の表面を観察した。 その結果を表2に示す。

    (実施例3)
    ニトリルゴムとして、フタル酸エステルを含有させず(条件2)、加硫促進剤としてチウラムを含有させず(条件1)、結合アクリロニトリル含有量を40重量%とし(条件3)、過酸化物加硫で加硫した(条件4)ものを用いて、従来例2と同様の試料を作製した。 この試料を従来例2と同じ条件でエージング処理を行った。 その後、目視により試料の表面を観察した。 その結果を表2に示す。

    (実施例4)
    ニトリルゴムの結合アクリロニトリル含有量を51重量%とした以外は、実施例2と同様にして試料を作製した。 この試料を従来例2と同様の条件でエージング処理を行った。 その後、目視により試料の表面を観察した。 その結果を表2に示す。

    従来例2および比較例2の結果から明らかなように、ニトリルゴムの試料に曝露させる媒体を、R134aおよびポリオールエステルからR600aに代えても、フタル酸エステルを含有させないだけのニトリルゴムを用いれば、試料の表面に付着物が認められるとともに、ブリスターの発生も認められた。

    試料の付着物をFT−IRで分析したところ、図5のIRスペクトルに示すように、加硫促進剤に特徴的な硫黄−炭素の二重結合(C=S)のピークが認められた。 それゆえ、単にフタル酸エステルを含有させないだけ(条件2だけ)では、比較例1の結果と同様に、加硫促進剤(チウラム)の一部が表面にブリードアウトするという問題が生じる。

    次に、比較例3の結果を見れば、試料の表面にはブリスターは認められないものの、付着物は認められた。 それゆえ、ニトリルゴムの結合アクリロニトリル含有量を32重量%から40重量%に増加させただけ(条件2、3)では、付着物の発生を有効に回避できないことになる。 次に、比較例4の結果を見ると、加硫促進剤(チウラム)を使用しない(条件1〜3)ことで、付着物の発生を回避できるものの、新たな表面異常として、表面荒れが認められた。

    ここで、比較例2〜4の結果を比較すれば、フタル酸エステルを含有させずに(条件2)加硫促進剤を使用しない(条件1)ことにより、付着物のブリードアウトを回避できること、ニトリルゴムの結合アクリロニトリル含有量を増加すれば、ブリスターの発生を防止できることが明らかとなった。

    結合アクリロニトリル含有量を増加させると、ニトリルゴムのゴム分子において、アクリロニトリルに由来するニトリル基(−CN)の数が多くなる。 ニトリル基は極性を有しているので、ニトリルゴム全体として見ても極性が強くなる。 ここで、R600aは炭化水素系冷媒であるため極性が低い。 そのため、ニトリルゴムの極性が相対的に高ければ、R600aは、ニトリルゴム材料中への浸透が有効に抑制される。 これにより、ブリスターの発生を実質的に防止することができる。

    これに対して、実施例3および4の結果を見れば、ニトリルゴムの加硫を硫黄加硫ではなく過酸化物加硫とすると(条件1〜4)、ブリスター、付着物、および表面荒れのいずれも認められなかった。

    ニトリルゴムの加硫が硫黄加硫である場合、チウラム等の加硫促進剤を使用しないと、ニトリルゴムの耐油性等が低下する。 耐油性が低下すると、R600a等の炭化水素系冷媒に接触することで、表面荒れが生じやすくなる。 これに対して、実施例3および4では、ニトリルゴムの加硫は過酸化物加硫である。 前述したように、硫黄加硫では、架橋は硫黄同士の結合(−S−S−)であるが、過酸化物加硫では、架橋は、炭素同士の結合(−C−C−)である。 これら2種類の架橋のうち、−C−C−結合の方が−S−S−結合より結合エネルギーが高い。 それゆえ、実施例3および4ではニトリルゴムの表面荒れを実質的に防止することができる。

    なお、本発明は前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。

    以上のように、本発明によれば、信頼性の高い冷媒圧縮機を提供することが可能となるので、冷凍サイクルを用いた機器に幅広く適用することができる。

    10 密閉容器 11 潤滑油 20 電動要素 21 固定子 22 回転子 30 圧縮要素 31 シリンダーブロック 32 ピストン 33 吸入マフラー 40 吸入管100 冷媒圧縮機311 圧縮室331 消音空間332 吸入口333 ガイド

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