Method for processing cut flower and cut flower processed by the method

申请号 JP2006180304 申请日 2006-06-29 公开(公告)号 JP2008007465A 公开(公告)日 2008-01-17
申请人 Saburo Muraki; Yoshitami Muraki; Yuriko Sunazaka; 三郎 村木; 良民 村木; 百合子 砂坂; 发明人 MURAKI SABURO; MURAKI YOSHITAMI; SUNAZAKA YURIKO;
摘要 PROBLEM TO BE SOLVED: To provide a method for processing a cut flower, by which the preservability of the cut flower can be enhanced and the flower portion and stem portion of the cut flower can be dyed in natural colors, respectively, without using a solvent harmful to human bodies.
SOLUTION: This method for processing the cut flower to dye the flower portion and stem portion of the cut flower into different colors, respectively, is characterized by comprising a stem portion-dyeing process for making the stem portion 12 to absorb a preservation solution 21 containing a dye G approximate to the color of the stem from the lower cut face 13 of the stem portion 12 of the cut power 1, a flower portion-dyeing process for making the flower portion 11 to absorb a preservation solution 22 containing a dye F approximate to the color of the flower from the surface of the flower portion 11, and a separation process for performing a treatment for blocking out a conduction between the flower portion 11 and stem portion 12 of the cut flower, before these dyeing processes are performed. The preservation solution 21 and the preservation solution 22 each comprises at least glycerol, a surfactant and a colorant, consisting mainly of a polyhydric alcohol, does not contain methanol and acetone harmful to human bodies, and is adjusted in response to the characteristics of a plant to be a processing target.
COPYRIGHT: (C)2008,JPO&INPIT
权利要求
  • 切り花の組織液を、着色剤を添加した保存液により置換して、切り花の保存性を高めると共に、切り花を着色する切り花の加工方法であって、
    前記保存液は、多価アルコールを主体とする少なくともグリセリン、界面活性剤及び着色剤を含み、且つ、人体に有害なメタノールやアセトンを含まず、加工対象とする植物の特性に合わせて調整された混合液から成り、
    前記切り花の茎部の下部の切り口から、該茎部の組織内に、前記着色剤として茎部の色に近似した染料を含む前記保存液を吸収させる茎部染色工程と、
    前記切り花の花部の表面から、前記着色剤として花部の色に近似した染料を含む前記保存液を吸収させる花部染色工程と、
    前記各染色工程が実施される前に、前記花部と茎部との間における前記保存液の導通を遮断するための処理を行う分離工程と、を備え、
    前記茎部及び花部を別々の色に着色することを特徴とする切り花の加工方法。
  • 前記分離工程は、前記切り花の萼の基部及びその周辺にシアノアクリレート液を注入して、前記茎部と花部とをつなぐ導管を閉塞させる工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の切り花の加工方法。
  • 前記分離工程は、前記切り花の花部と茎部とを前記萼の下部で切り離す工程を含み、
    前記各染色工程が実施された後に、前記分離工程において切り離された花部と茎部とを一体に継ぎ合せる工程を備えたことを特徴とする請求項1に記載の切り花の加工方法。
  • 切り花の組織液を、着色剤を添加した保存液により置換して、切り花の保存性を高めると共に、切り花を着色する切り花の加工方法であって、
    前記保存液は、多価アルコールを主体とする少なくともグリセリン、界面活性剤及び着色剤を含み、且つ、人体に有害なメタノールやアセトンを含まず、加工対象とする植物の特性に合わせて調整された混合液から成り、
    前記切り花の茎部の下部の切り口から、該茎部の組織内に、前記着色剤として茎部の色に近似した染料を含む前記保存液を吸収させる茎部染色工程と、
    前記茎部染色工程において、前記着色剤として茎部の色に近似した染料を含む前記保存液が、前記切り花の萼の基部まで吸収された後、該萼の基部から、前記着色剤として花部の色に近似した染料を含む前記保存液を注入することにより、前記花部に保存液を吸収させる花部染色工程と、を備え、
    前記茎部及び花部を別々の色に着色することを特徴とする切り花の加工方法。
  • 切り花の組織液を、着色剤を添加した保存液により置換して、切り花の保存性を高めると共に、切り花を着色する切り花の加工方法であって、
    前記保存液は、多価アルコールを主体とする少なくともグリセリン、界面活性剤及び着色剤を含み、且つ、人体に有害なメタノールやアセトンを含まず、加工対象とする植物の特性に合わせて調整された混合液から成り、
    前記切り花の茎部の下部の切り口から、該茎部の組織内に、前記着色剤として茎部の色に近似した染料を含む前記保存液を吸収させる茎部染色工程と、
    前記切り花の花部の表面から、前記着色剤として花部の色に近似した染料を含む前記保存液を吸収させる花部染色工程と、
    前記茎部又は花部の何れか一方の染色工程が実施された後であって、他方の染色工程が実施される前に、前記花部及び茎部を乾燥させる乾燥工程と、を備え、
    前記茎部及び花部を別々の色に着色することを特徴とする切り花の加工方法。
  • 切り花の組織液を、着色剤を添加した保存液により置換して、切り花の保存性を高めると共に、切り花を着色する切り花の加工方法であって、
    前記保存液は、多価アルコールを主体とする少なくともグリセリン、界面活性剤及び着色剤を含み、且つ、人体に有害なメタノールやアセトンを含まず、加工対象とする植物の特性に合わせて調整された混合液から成り、
    前記切り花の茎部の下部の切り口から、前記切り花の花部及び茎部の組織内に、前記着色剤として花部の色に近似した染料を含む前記保存液を吸収させる花部染色工程と、
    前記茎部全体から、該茎部の表面に、前記着色剤として茎部の色に近似した染料を含む前記保存液を吸収させる茎部染色工程と、
    前記花部染色工程が実施された後であって、前記茎部染色工程が実施される前に、前記花部及び茎部を乾燥させる乾燥工程と、を備え、
    前記茎部及び花部を別々の色に着色することを特徴とする切り花の加工方法。
  • 請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の加工方法により加工された切り花。
  • 切り花の組織液を、着色剤を添加した保存液及び着色剤を含まない保存液により置換して、切り花の保存性を高めると共に、切り花を着色する切り花の加工方法であって、
    前記保存液は、多価アルコールを主体とする少なくともグリセリン、界面活性剤及び着色剤を含み、且つ、人体に有害なメタノールやアセトンを含まず、加工対象とする植物の特性に合わせて調整された混合液から成り、
    前記切り花の茎部の下部の切り口から、前記茎部と前記切り花の葉部の組織内に、前記着色剤として茎部の色に近似した染料を含む前記保存液を吸収させる茎部染色工程と、
    前記茎部染色工程が実施された後に、前記茎部の下部の切り口から、前記茎部、葉部及び花部の組織内に、着色剤を含まず、開花促進剤として糖類を含む前記保存液を吸収させる開花促進剤吸収工程と、
    前記開花促進剤吸収工程が実施された後に、前記茎部、葉部及び花部を乾燥させると共に、前記花部を開花させる乾燥工程と、を備え、
    前記茎部及び葉部を、自然状態における前記茎部及び葉部の色に近似した色に着色すると共に、前記乾燥工程において開花した花部を着色することなく、自然状態における前記花部の色とすることを特徴とする切り花の加工方法。
  • 請求項8に記載の加工方法により加工されたカスミソウ。
  • 说明书全文

    本発明は、切り花の保存性を高めると共に、自然の色合いに着色する切り花の加工方法及びその方法により加工された切り花に関する。

    従来から、切り花を、生花と同様の外観を保持したまま長期保存できるようにする切り花の加工方法が知られている。 例えば、特許文献1に示されるように、エチレングリコールやグリセリン等の多価アルコールやメタノール等のアルコールを混合した浸漬溶液に、生花の花部を浸漬させて、この花部中に存在する組織液や空気を多価アルコールと置換する切り花の加工方法が知られている。

    また、特許文献2及び特許文献3に示されるように、多価アルコールや高分子化合物を含む保存剤に香料や着色剤を添加し、この保存剤の溶液中に植物の茎部を浸漬して保存剤を吸収させる植物の保存方法が知られている。

    更に、特許文献4に示されるように、植物の保湿性及び柔軟性の保持のため、シクロ環を持つ1,4−シクロヘキサンジメタノールに、グリセリン、グリコール類、水溶性ポリマー及びアルコールを混合した装飾用天然植物の処理剤を用いた天然植物の加工方法が知られている。

    特開2004−99605号公報

    特開平8−59401号公報

    特開2003−26501号公報

    特許2946305号公報

    しかし、上記の特許文献1に示される加工方法は、花部を長期保存できるようするものであり、花部を染色することはできず、また、加工に用いられる浸漬溶液は有害なメタノールを含み、加工作業者の健康を害する虞がある。 また、特許文献2に示される保存剤は、切り花の花部のみを着色するものであり、茎部を含む切り花を染色するには適しておらず、特許文献3に示される保存液は、茎部を染色するものであって、花部を染色するには適していないうえ、有害なアセトンを含んでいる。 更に、特許文献4に示される加工方法は、花部及び茎部を染色することができるが、花部と茎部の夫々を自然な別々の色に染め分けることを可能とするものではない。

    本発明は、上記課題を解決するものであって、メタノール等の人体に有害な溶媒を用いることなく、切り花の保存性を高めると共に、切り花の花部と茎部の夫々を自然な別々の色に染め分ける切り花の加工方法及びその方法を用いて加工された切り花を提供することを目的とする。

    上記課題を解決するため、請求項1の発明は、切り花の組織液を、着色剤を添加した保存液により置換して、切り花の保存性を高めると共に、切り花を着色する切り花の加工方法であって、前記保存液は、多価アルコールを主体とする少なくともグリセリン、界面活性剤及び着色剤を含み、且つ、人体に有害なメタノールやアセトンを含まず、加工対象とする植物の特性に合わせて調整された混合液から成り、前記切り花の茎部の下部の切り口から、該茎部の組織内に、前記着色剤として茎部の色に近似した染料を含む前記保存液を吸収させる茎部染色工程と、前記切り花の花部の表面から、前記着色剤として花部の色に近似した染料を含む前記保存液を吸収させる花部染色工程と、前記各染色工程が実施される前に、前記花部と茎部との間における前記保存液の導通を遮断するための処理を行う分離工程と、を備え、前記茎部及び花部を別々の色に着色するものである。

    また、請求項2の発明は、請求項1に記載の切り花の加工方法において、前記分離工程は、前記切り花の萼の基部及びその周辺にシアノアクリレート液を注入して、前記茎部と花部とをつなぐ導管を閉塞させる工程を含むものである。

    請求項3の発明は、請求項1に記載の切り花の加工方法において、前記分離工程は、前記切り花の花部と茎部とを前記萼の下部で切り離す工程を含み、前記各染色工程が実施された後に、前記分離工程において切り離された花部と茎部とを一体に継ぎ合せる工程を備えたものである。

    請求項4の発明は、切り花の組織液を、着色剤を添加した保存液により置換して、切り花の保存性を高めると共に、切り花を着色する切り花の加工方法であって、前記保存液は、多価アルコールを主体とする少なくともグリセリン、界面活性剤及び着色剤を含み、且つ、人体に有害なメタノールやアセトンを含まず、加工対象とする植物の特性に合わせて調整された混合液から成り、前記切り花の茎部の下部の切り口から、該茎部の組織内に、前記着色剤として茎部の色に近似した染料を含む前記保存液を吸収させる茎部染色工程と、前記茎部染色工程において、前記着色剤として茎部の色に近似した染料を含む前記保存液が、前記切り花の萼の基部まで吸収された後、該萼の基部から、前記着色剤として花部の色に近似した染料を含む前記保存液を注入することにより、前記花部に保存液を吸収させる花部染色工程と、を備え、前記茎部及び花部を別々の色に着色するものである。

    請求項5の発明は、切り花の組織液を、着色剤を添加した保存液により置換して、切り花の保存性を高めると共に、切り花を着色する切り花の加工方法であって、前記保存液は、多価アルコールを主体とする少なくともグリセリン、界面活性剤及び着色剤を含み、且つ、人体に有害なメタノールやアセトンを含まず、加工対象とする植物の特性に合わせて調整された混合液から成り、前記切り花の茎部の下部の切り口から、該茎部の組織内に、前記着色剤として茎部の色に近似した染料を含む前記保存液を吸収させる茎部染色工程と、前記切り花の花部の表面から、前記着色剤として花部の色に近似した染料を含む前記保存液を吸収させる花部染色工程と、前記茎部又は花部の何れか一方の染色工程が実施された後であって、他方の染色工程が実施される前に、前記花部及び茎部を乾燥させる乾燥工程と、を備え、前記茎部及び花部を別々の色に着色するものである。

    請求項6の発明は、切り花の組織液を、着色剤を添加した保存液により置換して、切り花の保存性を高めると共に、切り花を着色する切り花の加工方法であって、前記保存液は、多価アルコールを主体とする少なくともグリセリン、界面活性剤及び着色剤を含み、且つ、人体に有害なメタノールやアセトンを含まず、加工対象とする植物の特性に合わせて調整された混合液から成り、前記切り花の茎部の下部の切り口から、前記切り花の花部及び茎部の組織内に、前記着色剤として花部の色に近似した染料を含む前記保存液を吸収させる花部染色工程と、前記茎部全体から、該茎部の表面に、前記着色剤として茎部の色に近似した染料を含む前記保存液を吸収させる茎部染色工程と、前記花部染色工程が実施された後であって、前記茎部染色工程が実施される前に、前記花部及び茎部を乾燥させる乾燥工程と、を備え、前記茎部及び花部を別々の色に着色するものである。

    請求項7の発明は、請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の加工方法により加工された切り花である。

    請求項8の発明は、切り花の組織液を、着色剤を添加した保存液及び着色剤を含まない保存液により置換して、切り花の保存性を高めると共に、切り花を着色する切り花の加工方法であって、前記保存液は、多価アルコールを主体とする少なくともグリセリン、界面活性剤及び着色剤を含み、且つ、人体に有害なメタノールやアセトンを含まず、加工対象とする植物の特性に合わせて調整された混合液から成り、前記切り花の茎部の下部の切り口から、前記茎部と前記切り花の葉部の組織内に、前記着色剤として茎部の色に近似した染料を含む前記保存液を吸収させる茎部染色工程と、前記茎部染色工程が実施された後に、前記茎部の下部の切り口から、前記茎部、葉部及び花部の組織内に、着色剤を含まず、開花促進剤として糖類を含む前記保存液を吸収させる開花促進剤吸収工程と、前記開花促進剤吸収工程が実施された後に、前記茎部、葉部及び花部を乾燥させると共に、前記花部を開花させる乾燥工程と、を備え、前記茎部及び葉部を、自然状態における前記茎部及び葉部の色に近似した色に着色すると共に、前記乾燥工程において開花した花部を着色することなく、自然状態における前記花部の色とするものである。

    請求項9の発明は、請求項8に記載の加工方法により加工されたカスミソウである。

    請求項1の発明によれば、切り花の花部と茎部との間の導通を遮断するための処理を行うので、茎部及び花部を夫々別の色に着色することができ、且つ、切り花の萼の基部を強化し、更に花部の花弁の離脱及び変形を防止することができる。 また、切り花の組織液を置換する保存液は、人体に有害なメタノールやアセトンを含まないので、加工作業者の健康を害する虞がない。

    請求項2の発明によれば、茎部の切り口から吸収された茎部の色に近似した染料を含む保存液が花部に浸透することがなく、また、花部の表面から吸収された花部の色に近似した染料を含む保存液が茎部に浸透することもなくなるので、茎部及び花部の夫々を自然の色に近い別々の色に着色することができる。

    請求項3の発明によれば、茎部と花部とを切り離して別個に染色するため、茎部と花部とを同時的に染色することができ、作業効率が上がると共に、茎部及び花部の夫々を自然の色に近い別々の色に着色することができる。

    請求項4の発明によれば、萼の基部から、花部の色に近似した染料を含む保存液を注入するので、茎部及び花部の夫々を別々の色に着色することができ、特に、花部を自然な色に染色することができる。

    請求項5及び請求項6の発明によれば、乾燥工程を備えたことにより、ラベンダーやススキのように1つの茎部に対して多数の花部を有する切り花においても、茎部及び花部を夫々別の色に着色することができ、且つ、切り花の萼の基部を強化し、更に花部の花弁の離脱及び変形を防止することができる。

    請求項7の発明によれば、花部と茎部の夫々が自然に近い別々の色に染色され、且つ、自然な外観を長期間にわたって保持することができる切り花が提供される。

    請求項8の発明によれば、開花促進剤を用いたので、花部が十分に開花していない蕾状態の切り花について、特に効果的に花部と茎部の夫々を自然に近い別々の色に染色し、且つ、自然な外観を長期間にわたって保持することができる切り花が提供される。

    請求項9の発明によれば、花部は白色に、茎部は緑色に染色され、且つ、自然な外観を長期間にわたって保持することができるカスミソウが提供される。

    以下、本発明の第1の実施形態に係る切り花の加工方法について、図1を参照して説明する。 本実施形態の切り花の加工方法に用いられる切り花1は、花弁を有する植物であり、例えば、ハス、ユリ、キク、ヒマワリ等が挙げられる。 この切り花1は、花部11のみならず、茎部12を有するものであり、茎部12が所定の長さになるよう切り口13においてカットされている。 花部11は、萼14により茎部12とつながっている。 また、切り花1は、複数の葉部15を有してもよい。 なお、以下の実施形態において、特に記載のない限り、茎部12は、萼14及び葉部15を含むものとして説明する。

    まず、図1(a)に示されるように、切り花1の萼14の基部及びその周辺にシアノアクリレート液を、注射器3を用いて注入することにより、茎部12と花部11とをつなぐ導管を閉塞させて、茎部12と花部11との間における組織液の通導が遮断される(分離工程)。 上記のシアノアクリレート液は、例えば、2−シアノアクリレートを主成分とし、有害性の低い溶媒を基剤とした汎用の瞬間接着剤等が用いられる。 この2−シアノアクリルレートは、萼14の基部及びその周辺に注入されると、萼14の基部及びその周辺に存在する水分と反応して、重合・硬化してシアノアクリレートポリマーとなり、茎部12と花部11とをつなぐ導管を閉塞させる。

    次に、図1(b)に示されるように、切り花1の茎部12の組織液を、保存液21により置換して、茎部12の保存性を高めると共に、この保存液21に着色剤を添加することにより、茎部12を天然の茎部の色に近似した色に着色する。 なお、保存液21は、多価アルコールを主成分とする置換液2に、着色剤として茎部12の色に近似した染料Gを添加したものである。 本実施形態では、茎部12の下部を、保存液21に浸漬して、切り口13から茎部12の組織内に染料Gを含む保存液21を吸収させる(茎部染色工程)。 浸漬時間は切り花1の種類や茎部12の直径等によって異なるが、例えば、キクを加工する場合には、数時間程度の浸漬により、茎部12内の組織液が染料Gを含む保存液21に置換される。

    ここで、上記の置換液2の組成について説明する。 この置換液2は、多価アルコールを主要成分とする複数の溶剤を混合した水溶液であって、加工対象となる切り花1の特性や種類等に合わせて適宜に調整され、少なくともグリセリン、界面活性剤及び任意の着色剤を含む。 上記のグリセリンは、切り花1の保湿性を持続させるものであり、人体に対して毒性が非常に低い多価アルコールの一つとして知られる。 このグリセリンの他に、植物の保湿性を持続させる効果を有することが知られる多価アルコールとして、エチレングリコールも広く用いられるが、エチレングリコールは生体内で代謝を受けると中毒性を持つことが知られる。 従って、本実施形態においては、エチレングリコールよりもグリセリンを用いることが好ましい。 置換液2におけるグリセリンの添加量は、切り花の種類や加工した切り花の使用期間、使用環境等を想定して決定される。

    また、上記の界面活性剤は、切り花1の組織液と置換液2との親和性を高め、切り花1の細胞組織中に置換液2の吸収を促進させるものである。 この界面活性剤には、例えば、アリルスルホン酸塩や脂肪酸エステル類が用いられる。

    また、置換液2には、切り花1の保存性をより向上させるために、高分子化合物が添加される。 この高分子化合物には、例えば、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等が用いられる。 これらの高分子化合物は、化粧水等に用いられ、人体に対して無害であることが知られている。

    更に、置換液2には、加工対象の切り花1の種類や特性等に応じて、種々のミネラルや糖類、アミノ酸、アンモニウム塩が添加される。 これらは、切り花1の組織中への置換液2の吸収を促進させ、切り花1の保存性を高めると共に、切り花1の発色を向上させ、加工後の切り花の見栄えを良くするものである。 上記のミネラルとしては、例えば、カリウム塩及びナトリウム塩といったアルカリ金属塩やカルシウム塩及びマグネシウム塩といったアルカリ土類金属塩が用いられる。 また、上記の糖類としては、例えば、シュークロース、トレハロース等が用いられる。 上記のアミノ酸としては、例えば、グリシンやクエン酸が用いられる。 更に、切り花1の生長具合等によっては、置換液2に開花促進剤が添加されることもある。 なお、置換液2に難燃剤や防カビ剤を配合することにより、切り花1に難燃性や防カビ性といった天然の切り花が有さない特性を付加することもできる。

    また、置換液2には、上記の多価アルコールや高分子化合物等が切り花1の組織中に浸透するのを促進するために、有機溶媒として、イソプロピルアルコールが添加される。 一般に、植物の組織液を多価アルコールや高分子化合物に置換することにより、植物の保存性を高める技術においては、有機溶媒としてメタノールやアセトンが用いられる。 しかし、これらメタノールやアセトンは人体に対して毒性を有することが知られており、このような有害な有機溶媒を用いた植物の加工方法においては、加工作業者の安全のために、特別な換気システム等を設ける必要があった。 一方、イソプロピルアルコールは、高濃度の蒸気を吸収すると急性中毒を起こす可能性があるが、生態毒性は非常に低いので、加工作業者の安全を害する危険性が低く、また、使用済みの置換液2を下水等に廃棄することができるので、加工作業における利便性が向上する。

    染料Gには、人体に対する毒性の低い汎用の食用色素が用いられる。 上記の第1の染色工程においては、茎部12の色に近似した染料、例えば、食用色素緑色3号、食用色素青色1号及び食用色素黄色1号を、染色対象となる切り花1の茎部12の色に応じて適宜に混合された染料が用いられる。

    本実施形態によると、茎部12と花部11とをつなぐ導管が、シアノアクリレート液により閉塞されているので、茎部12を通導した保存液21が花部11へと浸透することがなく、花部11が保存液21に含まれる染料Gにより染色されることがない。

    次に、図1(c)に示されるように、切り花1の花部11の組織液を、保存液22より置換して、花部11の保存性を高めると共に、この保存液22に着色剤を添加することにより、花部11を天然の花部の色に近似した色に着色する。

    上記の保存液22は、上記茎部染色工程で用いた置換液2に、着色剤として花部11の色に近似した染料Fを添加したものである。 この花部の色に近似した染料Fも人体に害の少ない汎用の食用色素が用いられ、例えば、食用色素青色1号、食用色素黄色1号及び食用色素赤色101号等の色素が、染色対象となる切り花1の花部11の色に応じて適宜に混合されて用いられる。

    本実施形態では、花部11の略全体を、保存液22に浸漬して、花部11の表面から染料Fを含む保存液22を吸収させる(花部染色工程)。 浸漬時間は切り花1の種類や花部11の花弁の厚さや大きさ等によって異なり適宜に決定される。 なお、花部11の染色には、上記のように、花部11の略全体を保存液22に浸漬させる以外に、花部11の表面に染料Fを含む保存液22を噴霧することにより保存液22を吸収させてもよい(図示せず)。 また、萼14の基部に注射針を挿入して、染料Fを含む保存液22を点滴することにより花部11を染色することもできる。

    また、染料Fの添加量が異なる複数の保存液22に、花部11を、夫々所定時間ずつ浸漬させてもよい。 これにより、花部11の染色にグラデーションをかけて、より自然な花部11に近い微妙な色合いを実現することができる。 例えば、花部11の略全体を、はじめは染料Fの少ない保存液22に浸漬し、その後、花部11の花弁の先端部を、染料Fの多い保存液22へと浸漬する。 そうすると、花部11の萼14に近い部分は薄い色に染色され、花部11の花弁の先端は濃い色に染色される。

    なお、花部11の着色は、必ずしも自然界に存在する花の色に限られない。 例えば、近年、遺伝子組み換え技術の導入により、実験室的に青色の花弁を有するバラが生産されているが、本実施形態において、白色の花弁を有するバラに、青色系の染料を含む保存液22を吸収させることにより、保存性を高めた青色のバラを容易に生産することができる。

    この切り花の加工方法によれば、茎部12と花部11とをつなぐ導管が、シアノアクリレート液により閉塞されているので、花部11から吸収された保存液22が茎部12へと浸透することがなく、茎部12が保存液22に含まれる染料Fにより染色されることがない。 そのため、茎部12及び花部11は、自然の花に近似した別々の色に着色される。 また、切り花1の萼14の基部が強化され、花部11の花弁の離脱及び変形が防止される。 そのため、長期にわたって自然な外観を維持できる切り花が生産されるようになる。

    また、茎部12と葉部15との接続部にシアノアクリレート液を注入して、茎部12と葉部15とをつなぐ導管を閉塞させて、上記と同様の工程を実施することにより、茎部12と葉部15の夫々を別々の色に着色させることもできる。

    次に、本発明の第2の実施形態に係る切り花の加工方法について、図2を参照して説明する。 上記第1の実施形態に係る切り花の加工方法では、茎部及び花部染色工程が実施される前に、切り花1の萼14の基部及びその周辺にシアノアクリレート液を注入して、茎部12と花部11とをつなぐ導管を閉塞させる分離工程を実施したが、本実施形態に係る切り花の加工方法では、図2(a)に示されるように、切り花1の花部11と茎部12とを萼14の下部で切り離す分離工程が実施される。 そして、図2(b)に示されるように、花部11に対して上記の茎部染色工程を、茎部12に対して上記の花部染色工程を実施する。 その後、図2(c)に示されるように、切り離された花部11と茎部12とを一体に継ぎ合せる。 継ぎ合わせる方法としては、汎用の接着剤により接着される。 また、花部11の萼14と接する部分に針金を、その一部が露出するように埋設しておき、この針金を茎部12に差し込んで固定することにより、花部11と茎部12とを継ぎ合わせてもよい。

    この切り花の加工方法は、花部11と茎部12との分離及びつなぎ合わせが容易な、比較的大きな花部11を有する切り花1、例えば、バラやカーネーション、ツバキ等に適用される。 また、上記の茎部及び花部染色工程が同時的に実施可能なため、多量の切り花1を加工するのに適している。

    続いて、本発明の第3の実施形態に係る切り花の加工方法について、図3を参照して説明する。 本実施形態に係る切り花の加工方法では、まず、図3(a)に示されるように、上記第1の実施形態における茎部染色工程と同じく、茎部12の下部を、保存液21に浸漬して、切り口13から茎部12の組織内に染料Gを含む保存液21を吸収させる(茎部染色工程)。 そして、染料Gを含む保存液21が、切り花の萼14の基部まで吸収された後、図3(b)に示されるように、萼14の基部に、例えば、注射針4を差し込み、チューブ5を介して、保存液22を点滴することにより、花部11に染料Fを含む保存液22を吸収させる(花部染色工程)。 なお、上記の花部染色工程において、注射針4を差し込む方法の他、例えば、切り花の萼14の基部を吸水性スポンジで覆い、この吸水性スポンジにチューブ5を接続することにより、花部11を染色してもよい。

    本実施形態に係る切り花の加工方法は、上記第1及び第2の実施形態における分離離工程を含まないため、茎部12の一部に染料Fを含む保存液21が吸収されて、色の混じった部分が生じる可能性があるが、例えば、染料Gを含む保存液21と染料Fを含む保存液21の水分量に差異を設けて、萼14の基部の浸透圧を調節することにより、全体として花部11と茎部12とを別々の色に着色することができ、特に、花部11を自然に近い色に染色することができる。

    続いて、本発明の第4の実施形態に係る切り花の加工方法について、図4を参照して説明する。 本実施形態に係る切り花の加工方法は、例えば、ラベンダーのように、1つの茎部に対して多数の花部11を有しているため、上記第1及び第2の実施形態で説明した分離工程を実施できないような切り花1の加工に対して適用される。 なお、図4には、便宜上、単一の花部11を有する切り花1を示している。

    この加工方法では、まず、図4(a)に示されるように、上記第1の実施形態における茎部染色工程と同じく、茎部12の下部を、保存液21に浸漬して、切り口13から茎部12の組織内に染料Gを含む保存液21を吸収させる(茎部染色工程)。 そして、保存液21が茎部12の全体に浸透した後であって、花部11へと浸透する前に、図4(b)に示されるように、切り花1を保存液21から取り出して、室温で乾燥させることにより、茎部12への保存液21の吸着を促進させると共に、花部11への保存液21の浸透を防止する(乾燥工程)。 乾燥時間は、切り花1の種類や保存液21の組成により適宜に調整される。

    上記の乾燥工程の後、上記第1の実施形態における花部染色工程と同じく、花部11の略全体を、保存液22に浸漬して、花部11の表面から、花部11組織内に染料Fを含む保存液22を吸収させる(花部染色工程)。 本実施形態においては、上記の乾燥工程により、茎部12に保存液21が固着されているので、花部11の表面から吸収された保存液22が茎部12の組織内へ浸透することがない。 そのため、この切り花の加工方法によれば、茎部12及び花部11を自然の色に近い別々の色に着色することができると共に、前記花部の花弁の離脱及び変形が防止され、長期にわたって自然な外観を維持することができる切り花が生産される。

    続いて、本発明の第5の実施形態に係る切り花の加工方法について、図5を参照して説明する。 本実施形態に係る切り花の加工方法も、1つの茎部に対して多数の花部11を有しているため、上記の第1及び第2の実施形態で説明した分離工程を実施できないような切り花1の加工に対して適用される。 特に、この切り花の加工方法は、ススキのような、薄い色の花部を有する植物を加工するのに適している。 なお、図5も、便宜上、単一の花部11を有する切り花1を示している。

    この切り花の加工方法では、まず、図5(a)に示されるように、切り花1の茎部12の下部を、保存液22に浸漬して、切り口13から茎部12の組織内及び花部11に染料Fを含む保存液22を吸収させる(花部染色工程)。 切り口13から吸収された保存液22が、花部11まで浸透した後、切り花1を保存液22から取り出して、室温で乾燥させることにより、茎部12及び花部11への保存液21の吸着を促進させる(乾燥工程)。

    上記の乾燥工程の後、茎部12の略全体を、保存液21に浸漬して、茎部12の表面から染料Gを含む保存液21を吸収させる(茎部染色工程)。 本実施形態においては、上記の乾燥工程により、茎部12内部の導管には保存液22が固着されているので、切り口13を保存液21に浸漬しても、十分に茎部12に保存液21を吸収することができない。 そこで、上記の茎部染色工程は、茎部12の表面から染料Gを含む保存液21を吸収させたものである。 これにより、保存液21は、茎部12の表面にのみ吸収され、花部11へ浸透することはない。 そのため、この切り花の加工方法によると、切り花1の茎部12及び花部11を自然の色に近い別々の色に着色することができると共に、花部の花弁の離脱及び変形が防止され、長期にわたって自然な外観を維持することができる切り花が生産される。

    続いて、本発明の第6の実施形態に係る切り花の加工方法について、図6を参照して説明する。 本実施形態に係る切り花の加工方法は、特にカスミソウの加工に適している。 まず、図6(a)に示されるように、上記の第1の実施形態における茎部染色工程と同じく、茎部12の下部を、保存液21に浸漬して、切り口13から茎部12及び葉部15の組織中に染料Gを含む保存液21を吸収させる(茎部染色工程)。 切り花1は花部11が開花していない蕾の状態のものを使用することが望ましい。 この茎部染色工程は、染料Gを含む保存液21が茎部12及び葉部15に浸透して、これらを着色し、花部11の一部に到達したタイミングで終了する。 次に、図6(b)に示されるように、茎部12の下部を、開花促進剤を含む保存液23に浸漬して、切り口13から茎部12、葉部15花部及び11の組織中に開花促進剤として糖類Sを含む保存液23を吸収させる(開花促進剤吸収工程)。 糖類Sには、例えば、ショ糖が用いられる。 また、糖類S以外にも、アミノ酸や界面活性剤も開花促進剤として利用可能であり、保存液23には、加工対象の切り花1の種類に応じて、これらのアミノ酸や界面活性剤が適宜に混合される。 保存液23が花部11の組織中にまで吸収させた後、切り花1を保存液23から取り出して、室温で乾燥させることにより、茎部12及び花部11への保存液23の吸着を促進させると共に、上記の開花促進剤吸収工程で吸収された開花促進剤の作用により、蕾状態にあった花部11を開花させる(乾燥工程)。

    上記の乾燥工程において開花した花部11は、茎部染色工程において吸収された染料の影響を受けることなく、切り花1の花部11の本来の色となっている。 その結果、切り花1の茎部12及び花部11を自然の色に近い別々の色に着色することができると共に、花部の花弁の離脱及び変形が防止され、長期にわたって自然な外観を維持することができる切り花が生産される。

    なお、本発明は、上記構成に限られることなく種々の変形が可能である。 上述の第1乃至第6の実施形態に係る加工方法が組み合わせて実施されることにより、上記の花部、茎部及び葉部のみならず、萼やおしべ、めしべ等の切り花の各器官の夫々を別々の色に染色することもできる。

    (a)乃至(c)は本発明の第1の実施形態に係る切り花の加工方法の工程を説明する図。

    (a)乃至(c)は本発明の第2の実施形態に係る切り花の加工方法の工程を説明する図。

    (a)(b)は本発明の第3の実施形態に係る切り花の加工方法の工程を説明する図。

    (a)乃至(c)は本発明の第4の実施形態に係る切り花の加工方法の工程を説明する図。

    (a)乃至(c)は本発明の第5の実施形態に係る切り花の加工方法の工程を説明する図。

    (a)乃至(c)は本発明の第6の実施形態に係る切り花の加工方法の工程を説明する図。

    符号の説明

    1 切り花 11 花部 12 茎部 13 切り口 14 萼 15 葉部 2 置換液 21 茎部の色に近似した染料を含む保存液 22 花部の色に近似した染料を含む保存液 23 糖類を含む保存液 3 注射器 G 花部の色に近似した染料 F 花部の色に近似した染料 S 糖類

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